基本例題
基本例題44 気体分子の運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 分子の平均運動エネルギーとボルツマン定数を用いる解法
- 模範解答が圧力の式と状態方程式を連立させるのに対し、別解では分子の平均運動エネルギーと絶対温度の関係式から直接導出します。
- 設問(3)の別解: エネルギー等分配則を用いる解法
- 模範解答が(2)で導出した式を利用するのに対し、別解ではより根源的な「エネルギー等分配則」から直接答えを導きます。
- 設問(2)の別解: 分子の平均運動エネルギーとボルツマン定数を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 温度の正体が分子の運動エネルギーであることや、熱平衡状態ではエネルギーが均等に分配されるといった、気体分子運動論の核心的な概念への理解が深まります。
- 思考の柔軟性向上: 一つの問題に対して、異なる物理法則からアプローチする経験を積むことで、問題解決能力の幅が広がります。
- 解法の効率化: (3)の別解のように、問題の本質を捉えることで、より少ない計算ステップで簡潔に解に至る強力な手法を学ぶことができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「気体分子運動論の基本法則の応用」です。ミクロな分子の運動(質量、速度)と、我々が測定できるマクロな物理量(圧力、体積、温度)とを結びつける関係式を正しく扱えるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 分子量と分子1個の質量の関係: 分子量 \(M_0\)、アボガドロ定数 \(N_A\)、分子1個の質量 \(m\) の間の量的関係を理解していること。特に単位(gとkg)の扱いに注意が必要です。
- 気体圧力の分子運動論的表現: 圧力 \(p\) が、分子の数 \(N\)、質量 \(m\)、速さの2乗平均 \(\overline{v^2}\)、体積 \(V\) でどのように表されるか (\(p = \displaystyle\frac{Nm\overline{v^2}}{3V}\)) を知っていること。
- 理想気体の状態方程式: マクロな物理量である圧力 \(p\)、体積 \(V\)、物質量 \(n\)、絶対温度 \(T\) の関係 (\(pV=nRT\)) を理解していること。
- 二乗平均速度と絶対温度の関係: 分子の平均的な速さが、気体の絶対温度と分子自身の質量(分子量)によって決まることを理解していること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、分子量とアボガドロ定数の定義に基づいて、分子1個の質量を式で表現します。単位換算がポイントです。
- (2)では、問題文で与えられた圧力の式と理想気体の状態方程式を連立させ、\(pV\) を消去することで、ミクロな量とマクロな量を結びつけ、二乗平均速度を求めます。
- (3)では、(2)で得られた結果から、二乗平均速度が何に依存するのかを分析し、水素と酸素の速度比を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
気体分子1個の質量 \(m\) を、マクロな量である分子量 \(M_0\) と、定数であるアボガドロ定数 \(N_A\) を用いて表す問題です。分子量 \(M_0\) の定義が「1 mol あたりの質量をグラム単位で表した数値」であることを正確に理解し、SI基本単位である kg に変換することが鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 分子量 \(M_0\) は、1 mol あたりの質量を g 単位で表した数値。
- 1 mol は \(N_A\) 個の粒子の集まりである。
- 物理計算の基本単位は kg なので、g から kg への単位換算 (\(\times 10^{-3}\)) が必要。
具体的な解説と立式
分子量 \(M_0\) の定義より、1 mol の気体分子の質量は \(M_0\) [g] です。これを国際単位系(SI)の基本単位である kg に変換すると、\(M_0 \times 10^{-3}\) [kg] となります。
一方、気体分子1個の質量を \(m\) [kg] とすると、1 mol、すなわち \(N_A\) 個の気体分子の質量は、\(m \times N_A\) [kg] と表すことができます。
これらは同じ量(1 mol の気体の質量)を表しているので、等しいとおくことができます。
$$ m N_A = M_0 \times 10^{-3} $$
使用した物理公式
- モル質量と分子1個の質量の関係: \((\text{モル質量}) = (\text{分子1個の質量}) \times (\text{アボガドロ定数})\)
上記で立式した \(m N_A = M_0 \times 10^{-3}\) の両辺を \(N_A\) で割ることで、\(m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}
\end{aligned}
$$
これ以上の計算は不要です。
分子量 \(M_0\) というのは、「分子が \(N_A\) 個(約 \(6.02 \times 10^{23}\) 個)集まったときの重さ(グラム)」のことです。今知りたいのは、分子たった1個の重さ \(m\) (キログラム) です。
手順としては、まず \(N_A\) 個分の重さである \(M_0\) [g] を、単位をそろえるために \(M_0 \times 10^{-3}\) [kg] に直します。これが \(N_A\) 個分のキログラムでの重さなので、1個分の重さを出すには、この値を \(N_A\) で割ればよい、というわけです。
気体分子1個の質量 \(m\) は \(\displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}\) [kg] と表せます。この式は、分子量 \(M_0\) が大きいほど分子1個が重いことを示しており、直感とも一致する妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
この設問は、気体分子運動論(ミクロな視点)と熱力学(マクロな視点)の橋渡しをする重要な問題です。問題文で与えられた圧力の式と、理想気体の状態方程式は、どちらも気体の圧力 \(p\) や体積 \(V\) を含んでいます。この共通項 \(pV\) を介して2つの式を連結し、ミクロな速さ \(\sqrt{\overline{v^2}}\) をマクロな量である温度 \(T\) や分子量 \(M_0\) で表すことを目指します。
この設問における重要なポイント
- \(p = \displaystyle\frac{Nm\overline{v^2}}{3V}\) は、分子の運動というミクロな原因から圧力を説明する式。
- \(pV=nRT\) は、測定可能なマクロな量 \(p, V, n, T\) の関係を表す実験式。
- これら2つの式を \(pV\) で結びつけることで、温度 \(T\) の正体が分子の運動の激しさ(運動エネルギー)であることを導出できる。
- 総分子数 \(N\) と物質量 \(n\) の関係 \(N=nN_A\) を用いて式を整理する。
具体的な解説と立式
問題文で与えられた、気体の圧力に関する式を変形します。
$$ pV = \frac{1}{3}Nm\overline{v^2} \quad \cdots ① $$
一方で、この気体は理想気体として扱えるので、状態方程式が成り立ちます。
$$ pV = nRT \quad \cdots ② $$
①と②の左辺はどちらも \(pV\) なので、右辺同士を等しいとおくことができます。
$$ \frac{1}{3}Nm\overline{v^2} = nRT $$
この式を \(\overline{v^2}\) について解くことを目指します。まず、\(\overline{v^2}\) 以外の項を右辺に移します。
$$ \overline{v^2} = \frac{3nRT}{Nm} $$
この式にはまだ \(n, N, m\) が含まれているため、問題の要求に合わせて \(M_0, T, R\) で表すために式変形を行います。ここで、総分子数 \(N\) と物質量 \(n\) の関係式 \(N=nN_A\) と、(1)で求めた分子1個の質量 \(m = \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}\) を代入します。
使用した物理公式
- 気体圧力の分子運動論的表現: \(p = \displaystyle\frac{Nm\overline{v^2}}{3V}\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
- アボガドロ定数の定義: \(N = nN_A\)
立式した \(\overline{v^2} = \displaystyle\frac{3nRT}{Nm}\) に、\(N=nN_A\) と \(m = \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\overline{v^2} &= \frac{3nRT}{Nm} \\[2.0ex]
&= \frac{3nRT}{(nN_A) \left( \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A} \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{3nRT}{n(M_0 \times 10^{-3})} \\[2.0ex]
&= \frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}
\end{aligned}
$$
分母の \(nN_A\) と分子の \(N_A\) がうまく打ち消し合って \(n\) が消去されるのがポイントです。
最後に、二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) を求めるために、両辺の正の平方根をとります。
$$ \sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}} $$
この問題は、いわば「翻訳」作業です。分子の世界の言葉で書かれた式(圧力の式)と、人間の世界の言葉で書かれた式(状態方程式)があります。幸い、どちらの式にも「\(pV\)」という共通の単語があるので、これを使って2つの式をドッキングさせます。すると「分子の速さ」と「温度」が1つの式に入ってきます。あとは、求めたい「二乗平均速度」イコールの形になるように式を整理し、(1)で準備した「分子1個の質量」の表現を代入すれば、求められている形の答えに翻訳完了です。
二乗平均速度は \(\sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\displaystyle\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}}\) と表されます。この結果は非常に重要で、気体分子の平均的な速さは、絶対温度 \(T\) の平方根に比例し、分子量 \(M_0\)(分子の重さ)の平方根に反比例することを示しています。つまり、温度が高いほど、また分子が軽いほど、速く動き回るという直感的なイメージと一致する、物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
気体分子運動論のもう一つの重要な結論である「分子1個の平均運動エネルギーは絶対温度に比例する」という関係式から出発する別解です。このアプローチにより、圧力の式を経由せずに、より直接的に速度と温度の関係を導くことができます。
この設問における重要なポイント
- 気体分子1個の平均運動エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\) で与えられる。
- このエネルギーは絶対温度 \(T\) のみで決まり、\(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T\) という関係が成り立つ。(\(k_B\) はボルツマン定数)
- ボルツマン定数 \(k_B\) は、気体定数 \(R\) とアボガドロ定数 \(N_A\) を用いて \(k_B = \displaystyle\frac{R}{N_A}\) と表せる。
具体的な解説と立式
気体分子1個あたりの平均の並進運動エネルギーは、絶対温度 \(T\) とボルツマン定数 \(k_B\) を用いて以下のように表されます。
$$ \frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T $$
この式を \(\overline{v^2}\) について解くと、
$$ \overline{v^2} = \frac{3k_B T}{m} $$
ここで、ボルツマン定数を \(k_B = \displaystyle\frac{R}{N_A}\) を用いて気体定数 \(R\) で、また、分子1個の質量 \(m\) を(1)の結果 \(m = \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}\) を用いて分子量 \(M_0\) で書き換えます。
使用した物理公式
- 絶対温度と運動エネルギーの関係: \(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T\)
- ボルツマン定数の定義: \(k_B = \displaystyle\frac{R}{N_A}\)
- (1)の結果: \(m = \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A}\)
$$
\begin{aligned}
\overline{v^2} &= \frac{3k_B T}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{3 \left( \displaystyle\frac{R}{N_A} \right) T}{\left( \displaystyle\frac{M_0 \times 10^{-3}}{N_A} \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{3RT}{N_A} \cdot \frac{N_A}{M_0 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= \frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}
\end{aligned}
$$
両辺の正の平方根をとると、
$$ \sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}} $$
物理学には「分子1個の平均運動エネルギーは、その気体の絶対温度だけで決まる」という便利な法則があります。この法則を数式 \(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T\) で表し、これを「速さ=」の形に変形します。すると、専門的な定数「ボルツマン定数 \(k_B\)」や「分子1個の質量 \(m\)」が出てきますが、これらを問題で使われている「気体定数 \(R\)」や「分子量 \(M_0\)」に書き換えることで、主たる解法と同じ答えにたどり着きます。
主たる解法と全く同じ \(\sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\displaystyle\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}}\) という結果が得られました。異なる物理的な出発点から同じ結論が導かれることは、物理法則の一貫性を示しており、理解を深める上で非常に有益です。
問(3)
思考の道筋とポイント
(2)で導出した二乗平均速度の式が、温度 \(T\) と分子量 \(M_0\) の関数であることを利用します。問題の条件は「温度が一様」、すなわち \(T\) が一定であることです。この条件下で、\(\sqrt{\overline{v^2}}\) が \(M_0\) とどのような関係にあるかを読み取り、水素(分子量2)と酸素(分子量32)の速度の比を計算します。
この設問における重要なポイント
- 温度 \(T\) が一定のとき、二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) は分子量 \(M_0\) の平方根の逆数 (\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{M_0}}\)) に比例する。
- この関係は「軽い分子ほど、同じ温度でも速く運動している」ことを意味する。
- 水素の分子量は \(M_{0, \text{水素}}=2\)、酸素の分子量は \(M_{0, \text{酸素}}=32\)。
具体的な解説と立式
(2)で求めた二乗平均速度の式は以下の通りです。
$$ \sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}} $$
この式において、気体定数 \(R\) は定数です。問題の条件より温度 \(T\) も一定なので、分子 \(3, R, T, 10^{-3}\) はすべて定数とみなせます。したがって、二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) は、分子量 \(M_0\) の平方根の逆数に比例します。
$$ \sqrt{\overline{v^2}} \propto \frac{1}{\sqrt{M_0}} $$
この比例関係を用いて、水素の二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}\) と酸素の二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}\) の比を考えます。
$$ \frac{\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}}{\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}} = \frac{1/\sqrt{M_{0, \text{水素}}}}{1/\sqrt{M_{0, \text{酸素}}}} $$
この式を整理すると、
$$ \frac{\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}}{\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}} = \sqrt{\frac{M_{0, \text{酸素}}}{M_{0, \text{水素}}}} $$
使用した物理公式
- (2)で導出した二乗平均速度の式: \(\sqrt{\overline{v^2}} = \sqrt{\displaystyle\frac{3RT}{M_0 \times 10^{-3}}}\)
立式した比の式に、水素の分子量 \(M_{0, \text{水素}} = 2\) と酸素の分子量 \(M_{0, \text{酸素}} = 32\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}}{\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}} &= \sqrt{\frac{32}{2}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{16} \\[2.0ex]
&= 4
\end{aligned}
$$
したがって、水素分子の二乗平均速度は、酸素分子の4倍となります。
(2)でわかったように、分子の速さは「温度」と「分子の重さ(分子量)」で決まります。今回は「温度は同じ」という条件なので、速さの違いは分子の重さだけで決まることになります。
(2)の式をよく見ると、速さは「分子量が大きいほど遅くなる」という関係(分母にあるので逆数の関係)で、しかもルートが付いています。
水素(分子量2)と酸素(分子量32)では、酸素の方が16倍重いです。速さは重さの平方根に反比例するので、軽い水素の方が \(\sqrt{16} = 4\) 倍速い、と計算できます。
水素分子の二乗平均速度は酸素分子の4倍である、という結果が得られました。軽い気体である水素が、重い酸素よりもずっと高速で飛び回っているというこの結果は、物理的に非常に妥当です。
思考の道筋とポイント
設問(2)の結果を使わずに、より根源的な物理法則から直接答えを導くアプローチです。熱平衡状態にある混合気体では、成分気体の種類(質量の大小)にかかわらず、分子1個あたりの平均運動エネルギーは等しくなる、という「エネルギー等分配則」を利用します。
この設問における重要なポイント
- エネルギー等分配則:温度が均一な混合気体中では、各成分分子の平均並進運動エネルギーは等しい。
- つまり、\(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\) の値が、水素分子と酸素分子で等しくなる。
- 分子1個の質量 \(m\) は分子量 \(M_0\) に比例する (\(m \propto M_0\))。
具体的な解説と立式
問題の条件より、混合気体の温度は一様です。このような熱平衡状態では、エネルギー等分配則により、水素分子1個の平均運動エネルギーと、酸素分子1個の平均運動エネルギーは等しくなります。
$$ \frac{1}{2}m_{\text{水素}}\overline{v_{\text{水素}}^2} = \frac{1}{2}m_{\text{酸素}}\overline{v_{\text{酸素}}^2} $$
両辺の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) を消去すると、
$$ m_{\text{水素}}\overline{v_{\text{水素}}^2} = m_{\text{酸素}}\overline{v_{\text{酸素}}^2} $$
この式から、速度の2乗の比を求めると、
$$ \frac{\overline{v_{\text{水素}}^2}}{\overline{v_{\text{酸素}}^2}} = \frac{m_{\text{酸素}}}{m_{\text{水素}}} $$
ここで、分子1個の質量 \(m\) はその分子量 \(M_0\) に比例します。したがって、質量の比は分子量の比で置き換えることができます。
$$ \frac{m_{\text{酸素}}}{m_{\text{水素}}} = \frac{M_{0, \text{酸素}}}{M_{0, \text{水素}}} $$
よって、二乗平均速度の比は、
$$ \frac{\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}}{\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}} = \sqrt{\frac{M_{0, \text{酸素}}}{M_{0, \text{水素}}}} $$
使用した物理公式
- エネルギー等分配則: \(\displaystyle\frac{1}{2}m_1\overline{v_1^2} = \frac{1}{2}m_2\overline{v_2^2}\) (温度が等しい場合)
- 分子質量と分子量の比例関係: \(m \propto M_0\)
立式した比の式に、水素の分子量 \(M_{0, \text{水素}} = 2\) と酸素の分子量 \(M_{0, \text{酸素}} = 32\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sqrt{\overline{v_{\text{水素}}^2}}}{\sqrt{\overline{v_{\text{酸素}}^2}}} &= \sqrt{\frac{32}{2}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{16} \\[2.0ex]
&= 4
\end{aligned}
$$
したがって、水素分子の二乗平均速度は、酸素分子の4倍となります。
物理の面白い法則に、「温度が同じなら、どんな分子も平均の運動エネルギーは同じになる」というものがあります。運動エネルギーは「\(\displaystyle\frac{1}{2} \times (\text{質量}) \times (\text{速さ})^2\)」で計算されます。この値が、軽い水素と重い酸素で同じになる、ということです。
等式を成り立たせるためには、質量が小さい水素は、その分だけ速さが大きくならなければなりません。この「エネルギーが等しい」という関係から速さの比を計算すると、やはり水素は酸素の4倍の速さだということがわかります。この考え方は、(2)の答えを知らなくても使える強力な方法です。
主たる解法と全く同じく、水素分子の二乗平均速度は酸素分子の4倍であるという結論が得られました。この別解は、(2)の複雑な式を経由せず、より本質的な物理法則から直接答えを導けるため、思考のショートカットとして非常に有効です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ミクロとマクロの橋渡し:
- 核心: この問題の根幹は、目に見えない分子の世界(ミクロ)の物理量と、我々が測定できる世界(マクロ)の物理量を結びつける法則を理解し、応用することにあります。
- 理解のポイント:
- ミクロの法則(原因): 気体分子運動論の圧力の式 \(p = \displaystyle\frac{Nm\overline{v^2}}{3V}\) は、無数の分子の衝突というミクロな現象が、圧力というマクロな現象を生み出す原因であることを示しています。
- マクロの法則(結果): 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) は、実験的に観測される圧力・体積・温度といったマクロな量の関係性をまとめたものです。
- 橋渡し: これら2つの式を共通項 \(pV\) で結びつけることで、ミクロな分子の運動の激しさ (\(\overline{v^2}\)) が、マクロな量である温度 \(T\) の正体であることが明らかになります。
- 温度の物理的本質:
- 核心: 「絶対温度 \(T\) とは、気体分子1個あたりの平均運動エネルギーの指標である」という物理的意味を深く理解することが重要です。
- 理解のポイント:
- 関係式: \(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T\) (\(k_B\) はボルツマン定数)
- 応用: この本質を理解していれば、(3)のような「温度が一定」な状況では、「分子の種類(重さ)によらず、平均運動エネルギーは等しい」というエネルギー等分配則を直感的に適用でき、より簡潔に問題を解くことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 内部エネルギーを求める問題: 単原子分子理想気体の内部エネルギー \(U\) は、全分子の運動エネルギーの合計です。\(U = N \times (\text{分子1個の平均運動エネルギー}) = N \times (\displaystyle\frac{3}{2}k_B T) = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) という関係式を用いて、温度や物質量から内部エネルギーを計算する問題に応用できます。
- 気体の混合: 異なる温度・圧力の気体を混合する問題では、混合前後の「内部エネルギーの和の保存」や「物質量の保存」を考え、状態方程式と組み合わせて混合後の状態を求めます。
- 音速との関連: 気体中を伝わる音の速さは、実は分子の二乗平均速度と密接な関係があります (\(c_s \propto \sqrt{\overline{v^2}}\))。したがって、温度や分子量によって音速がどう変わるかを問う問題は、本質的にこの問題と同じ考え方で解くことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 登場人物の分類: 問題に出てくる物理量が、マクロな量(\(p, V, T, n, R\))か、ミクロな量(\(m, N, \overline{v^2}, N_A, k_B\))かをまず整理します。
- 関係式の選択: ミクロとマクロを結びつける必要があるか、マクロな世界だけで完結するか、ミクロな世界だけで完結するかを見極めます。両者を結びつける場合は、(2)のように「\(pV\)で連結する」か「エネルギーで連結する」かの2つのルートを考えます。
- 単位系の統一: 特に分子量 \(M_0\) が与えられたら、機械的に「モル質量 [kg/mol] は \(M_0 \times 10^{-3}\)」と変換する準備をします。全ての計算はSI基本単位(kg, m, s, K, mol)で行うことを徹底します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 分子量 \(M_0\) の単位の罠:
- 誤解: 分子量 \(M_0\) の数値を、そのままモル質量として計算式に代入してしまう(例: \(m = M_0/N_A\) とする)。
- 対策: 「分子量 \(M_0\) は、1 mol あたりの質量を グラム(g)単位 で表した数値」と定義を正確に覚えることが不可欠です。物理計算で用いるモル質量 [kg/mol] は、必ず \(M_0 \times 10^{-3}\) [kg/mol] に変換する、という一手間を絶対に忘れないようにします。
- 二乗平均速度と温度の関係の混同:
- 誤解: 二乗平均速度 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) が、絶対温度 \(T\) に比例すると勘違いしてしまう。
- 対策: 比例関係の出発点は「エネルギー」と覚えるのが最も安全です。まず「分子の平均運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}m\overline{v^2}\) が絶対温度 \(T\) に比例する」という大原則を思い出します。この式から、\(\overline{v^2}\) は \(T\) に比例し、したがって速さ \(\sqrt{\overline{v^2}}\) は \(T\) の平方根に比例する、と段階的に導く癖をつけましょう。
- 定数 \(N, n, N_A, R, k_B\) の混乱:
- 誤解: 分子数 \(N\)、物質量 \(n\)、アボガドロ定数 \(N_A\)、気体定数 \(R\)、ボルツマン定数 \(k_B\) の関係が曖昧で、式変形の際に間違った定数を使ってしまう。
- 対策: \(N=nN_A\)(総数 = モル数 × 1モルあたりの数)と \(R=N_A k_B\)(マクロな気体定数 = 1モルあたりの数 × 分子1個あたりの気体定数)という2つの基本的な関係式をセットで正確に記憶します。\(k_B\) は「分子1個バージョンの気体定数」というイメージを持つと、使い分けがしやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 圧力の式と状態方程式の連結:
- 選定理由: (2)では、未知のミクロな量 \(\sqrt{\overline{v^2}}\) を、既知のマクロな量 \(T\) や \(M_0\) で表現することが目的でした。この目的を達成するには、ミクロの世界とマクロの世界をつなぐ「橋」が必要です。圧力の式と状態方程式は、それぞれがミクロとマクロの世界を代表する法則であり、両者に共通して含まれる \(pV\) がその「橋」の役割を果たします。
- 適用根拠: 同一の気体という系に対して、分子運動論的な視点から導かれた関係式と、熱力学的な(実験的な)視点から導かれた関係式は、両方同時に成り立っているはずです。したがって、両者を連立させて未知数を消去するという数学的な操作が、物理的に正当化されます。
- エネルギー等分配則:
- 選定理由: (3)の別解では、(2)で導いた複雑な式を使わずに、よりシンプルに答えを出すためにこの法則を選びました。「温度が一定」という条件を聞いた瞬間に、「分子の種類によらず平均運動エネルギーが等しい」というこの法則を連想できると、思考のステップを大幅に短縮できます。
- 適用根拠: この法則が適用できるのは、「熱平衡状態」にあるからです。混合気体中で分子同士が十分に衝突を繰り返すことで、エネルギーが均等に分配され、どの種類の分子も平均的には同じ運動エネルギーを持つ状態に落ち着く、というのがこの法則の物理的な背景です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位換算の儀式化: 分子量 \(M_0\) を見たら、計算を始める前に、ページの隅にでも「モル質量 \( = M_0 \times 10^{-3}\) [kg/mol]」と書き出すことを習慣(儀式)にしましょう。この一手間が致命的なミスを防ぎます。
- 文字式の整理戦略: (2)のように多くの記号が登場する計算では、いきなり数値を代入せず、文字式のまま整理を進めるのが鉄則です。
- まず、求めたい量(例: \(\overline{v^2}\))について式を解く。
- 次に、消去したい文字(例: \(n, N, m\))を、使いたい文字(例: \(M_0, R, T\))で置き換える関係式を、一つずつ丁寧に代入していく。
- 分数の割り算(分母に分数がくる形)は、逆数を掛ける形に直してから約分すると、ミスが減ります。
- 比例式を味方につける: (3)のように「何倍か?」を問う問題では、比例関係を見抜くことが最強の武器になります。(2)の答えから \(\sqrt{\overline{v^2}} \propto \displaystyle\frac{1}{\sqrt{M_0}}\) という関係を見つけ出せば、面倒な定数 (\(3, R, T, 10^{-3}\)) を一切計算する必要がなくなり、思考も計算もシンプルになります。常に「何が定数で、何が変数か」を意識する癖をつけましょう。
基本例題45 内部エネルギーの保存
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 別解1: 内部エネルギーを \(U=\frac{3}{2}nRT\) の形で扱う解法
- 模範解答が \(U=\frac{3}{2}pV\) を用いて先に圧力 \(p\) を求めるのに対し、別解ではまず物質量を計算し、\(U=\frac{3}{2}nRT\) を用いて先に温度 \(T\) を求めます。
- 別解1: 内部エネルギーを \(U=\frac{3}{2}nRT\) の形で扱う解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的定義への忠実さ: 内部エネルギーが物質量と絶対温度に比例するという、より根源的な定義に沿って計算を進めるため、物理法則の理解が深まります。
- 異なる解法戦略: 未知数(\(p, T\))を求める順番が逆になり、連立方程式を解く上での異なる戦略を学ぶことができます。
- 概念の再確認: 物質量保存則を明示的に計算することで、気体の混合における基本的な保存則の重要性を再認識できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「断熱容器内での気体の混合と保存則」です。異なる状態の気体を混合した後の状態を求める典型問題で、どの物理量が保存されるかを見抜くことが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 内部エネルギー保存則: 容器全体が断熱されており、外部との熱のやりとりや仕事のやりとりがないため、系全体の内部エネルギーの総和は混合の前後で保存されます。
- 物質量保存則: コックを開いて気体を混ぜるだけなので、気体分子が外部に漏れたり、化学変化で増減したりすることはありません。したがって、系全体の物質量(分子の数)の総和も保存されます。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: 内部エネルギーの具体的な式 \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) を知っている必要があります。また、状態方程式 \(pV=nRT\) を用いて \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) と変形できることもポイントです。
- 理想気体の状態方程式: 気体の状態(\(p, V, n, T\))を結びつける基本法則 \(pV=nRT\) を用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 未知数が混合後の圧力 \(p\) と温度 \(T\) の2つであるため、式を2本立てる必要があります。
- 「内部エネルギー保存則」から1本目の式を立てます。
- 「物質量保存則」から2本目の式を立てます。
- この2本の連立方程式を解いて、\(p\) と \(T\) を求めます。
思考の道筋とポイント
コックを開いて2つの気体を混合する問題です。求める物理量は、混合後の圧力 \(p\) と温度 \(T\) の2つです。未知数が2つなので、独立した関係式が2つ必要になります。
まず、容器は断熱されており、コックを開くだけで外部から仕事をされたり、外部へ仕事をしたりすることはありません。熱力学第一法則 \(\Delta U = Q + W\) において、\(Q=0\) (断熱), \(W=0\) (仕事なし) なので、\(\Delta U = 0\) となります。これは、AとBを一つの系として考えたとき、系全体の内部エネルギーが保存されることを意味します。これが1つ目の式(内部エネルギー保存則)になります。
次に、気体は容器内に閉じ込められており、分子が漏れ出ることはありません。したがって、Aに入っていた気体の物質量とBに入っていた気体の物質量の和は、混合後の全体の物質量に等しくなります。これが2つ目の式(物質量保存則)です。
この2つの保存則の式を連立して解くことで、\(p\) と \(T\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 断熱容器内での混合では、内部エネルギーの総和が保存される: \(U_{\text{A前}} + U_{\text{B前}} = U_{\text{全体後}}\)
- 気体の混合では、物質量の総和が保存される: \(n_{\text{A前}} + n_{\text{B前}} = n_{\text{全体後}}\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギーは、\(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) と \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) の2通りで表現できる。問題に応じて使い分ける。
具体的な解説と立式
模範解答では、内部エネルギーを \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) の形で扱い、先に圧力 \(p\) を求めます。
1. 内部エネルギー保存則
混合前のAの内部エネルギーを \(U_A\)、Bの内部エネルギーを \(U_B\)、混合後の全体の内部エネルギーを \(U\) とすると、内部エネルギー保存則より、
$$ U_A + U_B = U $$
単原子分子理想気体の内部エネルギーは \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) と表せるので、この関係を代入すると、
$$ \frac{3}{2}p_A V_A + \frac{3}{2}p_B V_B = \frac{3}{2}p V_{\text{全体}} \quad \cdots ① $$
ここで、与えられた条件は \(p_A=2p_0, V_A=3V_0\)、\(p_B=p_0, V_B=2V_0\) です。混合後の全体の体積 \(V_{\text{全体}}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{\text{全体}} &= V_A + V_B \\[2.0ex]
&= 3V_0 + 2V_0 \\[2.0ex]
&= 5V_0
\end{aligned}
$$
となります。
2. 物質量保存則
混合前のAの物質量を \(n_A\)、Bの物質量を \(n_B\)、混合後の全体の物質量を \(n\) とすると、物質量保存則より、
$$ n_A + n_B = n $$
理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) より \(n = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) と表せるので、この関係を代入すると、
$$ \frac{p_A V_A}{R T_A} + \frac{p_B V_B}{R T_B} = \frac{p V_{\text{全体}}}{R T} \quad \cdots ② $$
ここで、与えられた条件は \(T_A=T_0, T_B=3T_0\) です。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q + W\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\), \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
まず、式①から圧力 \(p\) を求めます。式①の両辺から \(\displaystyle\frac{3}{2}\) を消去し、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
p_A V_A + p_B V_B &= p V_{\text{全体}} \\[2.0ex]
(2p_0)(3V_0) + (p_0)(2V_0) &= p (5V_0) \\[2.0ex]
6p_0V_0 + 2p_0V_0 &= 5pV_0 \\[2.0ex]
8p_0V_0 &= 5pV_0
\end{aligned}
$$
両辺を \(5V_0\) で割ると、
$$ p = \frac{8}{5}p_0 $$
次に、この結果を式②に代入して温度 \(T\) を求めます。式②の両辺から \(R\) を消去し、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{(2p_0)(3V_0)}{T_0} + \frac{(p_0)(2V_0)}{3T_0} &= \frac{p(5V_0)}{T} \\[2.0ex]
\frac{6p_0V_0}{T_0} + \frac{2p_0V_0}{3T_0} &= \frac{5pV_0}{T} \\[2.0ex]
\frac{18p_0V_0 + 2p_0V_0}{3T_0} &= \frac{5pV_0}{T} \\[2.0ex]
\frac{20p_0V_0}{3T_0} &= \frac{5pV_0}{T}
\end{aligned}
$$
ここで、先に求めた \(p = \displaystyle\frac{8}{5}p_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{20p_0V_0}{3T_0} &= \frac{5 \left( \displaystyle\frac{8}{5}p_0 \right) V_0}{T} \\[2.0ex]
\frac{20p_0V_0}{3T_0} &= \frac{8p_0V_0}{T}
\end{aligned}
$$
この式を \(T\) について解きます。両辺から \(p_0V_0\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{20}{3T_0} &= \frac{8}{T} \\[2.0ex]
20T &= 24T_0 \\[2.0ex]
T &= \frac{24}{20}T_0 \\[2.0ex]
T &= \frac{6}{5}T_0
\end{aligned}
$$
この問題は、2つの部屋の空気を混ぜたら、最終的に圧力と温度はどうなるか?という問題です。物理には便利な「保存則」というルールがあり、今回は「エネルギーの合計は変わらない」「分子の数の合計は変わらない」という2つのルールを使います。
まず「エネルギー保存」のルールを数式にすると、圧力 \(p\) が計算できます。次に「分子の数保存」のルールを数式にして、先ほど計算した圧力 \(p\) の結果を当てはめると、温度 \(T\) が計算できる、という二段構えの作戦です。
混合後の圧力は \(p = \displaystyle\frac{8}{5}p_0\)、温度は \(T = \displaystyle\frac{6}{5}T_0\) となります。
圧力は \(1.6p_0\) で、初期圧力 \(2p_0\) と \(p_0\) の間の値です。温度は \(1.2T_0\) で、初期温度 \(T_0\) と \(3T_0\) の間の値になっています。これは物理的に妥当な結果と言えます。
思考の道筋とポイント
模範解答とは異なり、内部エネルギーをその基本定義である \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) の形で扱います。このアプローチでは、まず物質量保存則を用いて各気体の物質量を計算し、それを内部エネルギー保存則に代入することで、先に温度 \(T\) を求めます。最後に状態方程式を用いて圧力 \(p\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- まず物質量保存則を処理し、各部分の物質量を基準となる量で表す。
- 内部エネルギー保存則を \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) の形で立式し、温度 \(T\) を求める。
- 最後に、混合後の気体全体について状態方程式を立て、圧力 \(p\) を求める。
具体的な解説と立式
1. 物質量の計算
まず、混合前のA、Bの物質量 \(n_A, n_B\) を状態方程式 \(n = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) から求めます。
$$
\begin{aligned}
n_A &= \frac{(2p_0)(3V_0)}{RT_0} \\[2.0ex]
&= \frac{6p_0V_0}{RT_0}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
n_B &= \frac{(p_0)(2V_0)}{R(3T_0)} \\[2.0ex]
&= \frac{2p_0V_0}{3RT_0}
\end{aligned}
$$
物質量保存則より、混合後の全物質量 \(n\) は、
$$
\begin{aligned}
n &= n_A + n_B \\[2.0ex]
&= \frac{6p_0V_0}{RT_0} + \frac{2p_0V_0}{3RT_0} \\[2.0ex]
&= \frac{18p_0V_0 + 2p_0V_0}{3RT_0} \\[2.0ex]
&= \frac{20p_0V_0}{3RT_0} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
2. 内部エネルギー保存則
内部エネルギー保存則 \(U_A + U_B = U\) を \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) の形で立式します。
$$ \frac{3}{2}n_A R T_A + \frac{3}{2}n_B R T_B = \frac{3}{2}n R T $$
両辺の \(\displaystyle\frac{3}{2}R\) を消去すると、より簡単な式になります。
$$ n_A T_A + n_B T_B = n T \quad \cdots ④ $$
3. 状態方程式
混合後の圧力 \(p\) は、混合後の気体全体に対する状態方程式から求めます。
$$ p V_{\text{全体}} = n R T \quad \cdots ⑤ $$
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\)
- 物質量保存則、内部エネルギー保存則
まず、式④に \(T_A=T_0, T_B=3T_0\) と、計算済みの \(n_A, n_B, n\) を代入して、温度 \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{6p_0V_0}{RT_0} \right) T_0 + \left( \frac{2p_0V_0}{3RT_0} \right) (3T_0) &= \left( \frac{20p_0V_0}{3RT_0} \right) T \\[2.0ex]
\frac{6p_0V_0}{R} + \frac{2p_0V_0}{R} &= \frac{20p_0V_0}{3RT_0} T \\[2.0ex]
\frac{8p_0V_0}{R} &= \frac{20p_0V_0}{3RT_0} T
\end{aligned}
$$
この式を \(T\) について解きます。両辺から \(\displaystyle\frac{p_0V_0}{R}\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
8 &= \frac{20}{3T_0} T \\[2.0ex]
T &= 8 \times \frac{3T_0}{20} \\[2.0ex]
T &= \frac{24}{20}T_0 \\[2.0ex]
T &= \frac{6}{5}T_0
\end{aligned}
$$
次に、この \(T\) の結果と、式③の \(n\) を、式⑤に代入して圧力 \(p\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
p (5V_0) &= \left( \frac{20p_0V_0}{3RT_0} \right) R \left( \frac{6}{5}T_0 \right) \\[2.0ex]
5pV_0 &= \frac{20p_0V_0}{3} \times \frac{6}{5} \\[2.0ex]
5pV_0 &= 4p_0V_0 \times 2 \\[2.0ex]
5pV_0 &= 8p_0V_0 \\[2.0ex]
p &= \frac{8}{5}p_0
\end{aligned}
$$
こちらの作戦では、まずAとBの部屋にそれぞれ何個の分子が入っているか(物質量)を計算します。そして、それらを足し合わせ、混ぜた後の合計の分子の数を求めておきます。
次に「エネルギー保存」のルールを使いますが、今回は「分子の数と温度」で表されるエネルギーの式を使います。すると、先に温度 \(T\) が計算できます。
最後に、気体の基本ルールである状態方程式に、計算した「合計の分子の数」と「温度」を当てはめることで、圧力 \(p\) を求めます。
混合後の温度は \(T = \displaystyle\frac{6}{5}T_0\)、圧力は \(p = \displaystyle\frac{8}{5}p_0\) となり、主たる解法と完全に一致しました。解く順番は異なりますが、同じ物理法則に基づいているため、当然同じ結果に至ります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 閉鎖系における2大保存則の適用:
- 核心: この問題は、外部からエネルギーや物質の出入りがない「孤立系(閉鎖系)」において、何が保存されるのかを理解し、それを数式で表現できるかが全てです。鍵となるのは以下の2つの保存則です。
- 理解のポイント:
- 内部エネルギー保存則: 問題文の「断熱容器」という記述から、外部との熱のやりとりがない(\(Q=0\))ことがわかります。また、「コックを開くだけ」という操作では、気体が外部に仕事をしたり、されたりすることもない(\(W=0\))。熱力学第一法則 \(\Delta U = Q+W\) より、系全体の内部エネルギーの変化はゼロ、すなわち内部エネルギーの総和は保存されます。
- 物質量保存則: 気体が外部に漏れたり、化学反応で増減したりしない限り、系内の分子の総数(物質量)は常に一定です。これは気体の混合問題を解く上での大前提となります。
- 内部エネルギーの2つの顔:
- 核心: 単原子分子理想気体の内部エネルギーを、\(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\) と \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\) の2つの形で自在に使い分ける能力が求められます。
- 理解のポイント:
- \(U = \displaystyle\frac{3}{2}nRT\): 内部エネルギーが物質量と絶対温度に比例するという、物理的な本質を表す式です。
- \(U = \displaystyle\frac{3}{2}pV\): 状態方程式 \(pV=nRT\) を用いて変形した、計算上有用な式です。模範解答のようにこの式を使うと、内部エネルギー保存則の式から \(n\) と \(T\) が消去され、未知数 \(p\) だけのシンプルな方程式を立てることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 二原子分子気体の混合: 問題文が「二原子分子」の場合、内部エネルギーの式が \(U = \displaystyle\frac{5}{2}nRT = \displaystyle\frac{5}{2}pV\) に変わるだけで、解法の骨格(2大保存則)は全く同じです。
- ピストンで仕切られた容器: 断熱シリンダーが可動ピストンで仕切られている場合、ピストンが動くと気体は仕事をする(される)ため、内部エネルギーは保存しません。この場合は、ピストンが静止するための「圧力のつりあい」が3つ目の条件式として重要になります。
- 熱を通す容器: 容器が断熱材でなく、外部の熱浴(温度が一定の巨大な熱源)に接している場合、最終的な温度は熱浴の温度になります。この場合は内部エネルギーは保存せず、「物質量保存則」と「最終温度が確定していること」を使って解きます。
- 初見の問題での着眼点:
- 系の設定と境界の確認: まず、どこからどこまでを一つの「系」として考えるか(この問題では容器A+B全体)を明確にします。次に、その系の境界(容器の壁)がどのような性質を持つか(断熱か、熱を通すか、固定か、動くか)を問題文から読み取ります。
- 保存則の特定: 上記の境界条件から、どの物理量が保存されるかを判断します。「断熱」→内部エネルギー保存?、「コックを開くだけ」→物質量保存、といった具合にキーワードと保存則を結びつけます。
- 未知数の数と式の数の確認: 求める未知数が \(p, T\) の2つであることを確認し、それに対応して「内部エネルギー保存」と「物質量保存」という2本の独立した式を立てる、という解法の設計図を描きます。
- 式の表現を選択する: 内部エネルギーの式を \(U=\frac{3}{2}pV\) でいくか、\(U=\frac{3}{2}nRT\) でいくか、どちらが計算が楽になりそうかを見極めます。迷ったら両方試してみるのも良い練習になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 安易な平均化:
- 誤解: 混合後の温度や圧力を、単純に初期値の平均で求めてしまう。(例: \(T = \displaystyle\frac{T_0+3T_0}{2}\) や \(p = \displaystyle\frac{2p_0+p_0}{2}\))
- 対策: 保存されるのは温度や圧力ではなく、内部エネルギーと物質量です。温度や圧力は、これらの保存則の結果として決まる従属的な量であり、単純な平均にはなりません。特に内部エネルギーは物質量にも比例するため、量の多い方の気体の影響を強く受けることを意識しましょう。
- 内部エネルギーの式の誤用:
- 誤解: 問題文をよく読まず、二原子分子気体なのに単原子分子用の \(U=\displaystyle\frac{3}{2}nRT\) を使ってしまう。
- 対策: 問題文の「単原子分子」「二原子分子」という記述は、内部エネルギーの係数を決定する最重要情報です。必ずチェックする癖をつけましょう。
- 分数の計算ミス:
- 誤解: 物質量保存の式を立てる際の \(\displaystyle\frac{6p_0V_0}{T_0} + \displaystyle\frac{2p_0V_0}{3T_0}\) のような通分で計算を間違う。
- 対策: 焦らず、まずは共通の文字(\(p_0V_0/T_0\))でくくり出すなどして、係数部分の計算に集中します。\(6 + \displaystyle\frac{2}{3} = \displaystyle\frac{18+2}{3} = \displaystyle\frac{20}{3}\) のように、段階を追って丁寧に計算することが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 内部エネルギー保存則と物質量保存則の連立:
- 選定理由: この問題のゴールは、未知数 \(p, T\) を特定することです。数学の基本として、2つの未知数を決定するには2つの独立した方程式が必要です。物理法則の中で、この状況に適用可能で、かつ独立した関係式を与えてくれるのが「内部エネルギー保存則」と「物質量保存則」のペアなのです。
- 適用根拠: 前述の通り、「断熱」「仕事なし」という条件が内部エネルギー保存を、「分子の出入りなし」という条件が物質量保存を、それぞれ論理的に保証しています。問題の物理的状況を正しく分析した結果、これらの法則が適用できると判断するわけです。
- 内部エネルギーの表現 \(U = \frac{3}{2}pV\) の戦略的選択:
- 選定理由: 模範解答がこの形を選んだのは、計算を効率化するためです。内部エネルギー保存則の式 \(U_A+U_B=U\) に \(U=\frac{3}{2}pV\) を代入すると、\(\frac{3}{2}(p_AV_A+p_BV_B) = \frac{3}{2}pV\) となり、両辺の \(\frac{3}{2}\) が消え、式の中に \(n, R, T\) が一切登場しません。これにより、まずは \(p\) だけを単独で求めることができ、連立方程式を解く手間が省けます。
- 適用根拠: この変形が許されるのは、理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) が常に成り立つからです。この方程式が \(nRT\) と \(pV\) の等価性を保証しているため、どちらの表現を使っても物理的に正しい結果が得られます。計算のしやすさという観点から、最適な「公式の顔」を選ぶ思考法は非常に実践的です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字定数は最後まで残す: \(p_0, V_0, T_0, R\) といった記号は、計算の最終段階まで文字のまま扱います。これにより、式全体の見通しが良くなり、途中で現れる共通因子を約分しやすくなります。
- 式の構造を意識する: 例えば、物質量保存の式 \(\displaystyle\frac{p_AV_A}{RT_A} + \displaystyle\frac{p_BV_B}{RT_B} = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) では、両辺に \(R\) が共通して含まれているので、最初に消去してしまいます。これにより、計算が大幅に簡略化されます。
- 単位・次元のチェック: 最終的に得られた答え、例えば \(p = \displaystyle\frac{8}{5}p_0\) は、左辺が圧力の次元、右辺も圧力の次元(\(p_0\))を持ち、次元的に整合性がとれています。もし \(p = \displaystyle\frac{8}{5}T_0\) のような答えが出たら、次元が合わないのでどこかで間違えたと気づくことができます。
- 物理的な妥当性の吟味: 計算後、得られた値が物理的にあり得る範囲に収まっているかを確認します。混合後の温度 \(T\) は、初期温度 \(T_0\) と \(3T_0\) の間の値になるはずです。同様に、圧力 \(p\) も初期圧力 \(p_0\) と \(2p_0\) の間のどこか(体積や物質量を考慮した加重平均的な値)に落ち着くはずです。この吟味によって、大きな計算ミスを発見できることがあります。
基本例題46 定圧変化
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 仕事の定義 \(W’=p\Delta V\) から導出する解法
- 模範解答が公式 \(W’=nR\Delta T\) を直接用いるのに対し、別解では状態方程式を用いて体積変化 \(\Delta V\) を求め、仕事の基本定義 \(W’=p\Delta V\) に従って計算します。
- 設問(4)の別解: マイヤーの関係式 \(C_p = C_v + R\) を用いる解法
- 模範解答が設問(1)〜(3)の結果を用いて \(C_p\) を算出するのに対し、別解では気体の種類(単原子分子)から定積モル比熱 \(C_v\) を特定し、マイヤーの関係式を用いて直接 \(C_p\) を求めます。
- 設問(2)の別解: 仕事の定義 \(W’=p\Delta V\) から導出する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の根本理解: (2)の別解は \(W’=nR\Delta T\) という便利な公式がなぜ成り立つのか、その導出過程を追体験させます。(4)の別解は、定圧モル比熱が個別の熱力学過程によらず、気体の種類によって決まる普遍的な物理量であることを示し、概念の体系的な理解を促します。
- 解法の多様性: 設問(4)の別解のように、前の設問の答えを使わずに解けるアプローチを知ることで、検算や、より効率的な解法選択の能力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「定圧変化における熱力学第一法則の応用」です。ピストンがなめらかに動くことで圧力が一定に保たれる「定圧変化」を舞台に、内部エネルギー、仕事、熱量の関係を問う、熱力学の基本が詰まった問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定圧変化の特定: 「なめらかに動くピストン」は、シリンダー内外の圧力が常につりあっていることを意味し、外部の圧力が一定ならば内部の圧力も一定、すなわち「定圧変化」であることを見抜くことが出発点です。
- 熱力学第一法則: 気体の状態変化におけるエネルギー保存則である \(\Delta U = Q + W\) を正しく理解し、特に気体が「した仕事」\(W’\) と気体が「された仕事」\(W\) の関係 (\(W = -W’\)) を用いて \(\Delta U = Q – W’\) と書き換えられることが重要です。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: 内部エネルギーが絶対温度のみに依存し、その変化量が \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) で与えられることを知っている必要があります。
- 定圧変化における仕事: 気体が外部にする仕事は \(W’ = p\Delta V\) で定義されます。定圧変化の場合、状態方程式を用いると \(W’ = nR\Delta T\) という便利な関係式が導かれます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、与えられた温度変化 \(\Delta T\) を用いて、内部エネルギーの増加量 \(\Delta U\) を公式から直接計算します。
- (2)では、定圧変化における仕事の公式 \(W’ = nR\Delta T\) を用いて、気体がした仕事 \(W’\) を計算します。
- (3)では、(1)と(2)で求めた \(\Delta U\) と \(W’\) を熱力学第一法則の式に代入し、気体が吸収した熱量 \(Q\) を求めます。
- (4)では、(3)で求めた \(Q\) と温度変化 \(\Delta T\) を、定圧モル比熱の定義式 \(Q = nC_p\Delta T\) に代入して \(C_p\) を算出します。
問(1)
思考の道筋とポイント
内部エネルギーの増加量 \(\Delta U\) を求める問題です。理想気体の内部エネルギーは、気体の種類(単原子分子か二原子分子かなど)と絶対温度だけで決まります。体積や圧力には直接依存しません。したがって、温度変化 \(\Delta T\) が分かれば、公式を用いて \(\Delta U\) を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 理想気体の内部エネルギーは絶対温度 \(T\) のみの関数である。
- 単原子分子理想気体の場合、内部エネルギーの増加量は \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) で計算できる。
具体的な解説と立式
まず、気体の温度変化 \(\Delta T\) を計算します。初期温度が \(T_0\)、最終温度が \(3T_0\) なので、
$$
\begin{aligned}
\Delta T &= (\text{最終温度}) – (\text{初期温度}) \\[2.0ex]
&= 3T_0 – T_0
\end{aligned}
$$
次に、単原子分子理想気体の内部エネルギーの増加量の公式に、この \(\Delta T\) を代入します。
$$ \Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T $$
使用した物理公式
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー変化: \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)
温度変化 \(\Delta T\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta T &= 3T_0 – T_0 \\[2.0ex]
&= 2T_0
\end{aligned}
$$
この結果を内部エネルギーの公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= \frac{3}{2}nR\Delta T \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}nR(2T_0) \\[2.0ex]
&= 3nRT_0
\end{aligned}
$$
気体の内部エネルギーは、その気体の「元気のよさ」のようなもので、温度が高いほど元気(エネルギーが大きい)になります。今回は温度が \(T_0\) から \(3T_0\) へ、\(2T_0\) だけ上がりました。単原子分子の場合、内部エネルギーの増加量は「\(\displaystyle\frac{3}{2} \times nR \times (\text{温度の上昇分})\)」という式で計算できるので、これに \(2T_0\) を当てはめるだけで答えが求まります。
内部エネルギーの増加量 \(\Delta U\) は \(3nRT_0\) [J] です。温度が上昇しているので、内部エネルギーが増加(\(\Delta U > 0\))するという結果は物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
気体が外部に対してした仕事 \(W’\) を求める問題です。「なめらかに動くピストン」から、この変化が定圧変化であることを見抜くのが第一歩です。定圧変化で気体がする仕事は \(W’ = p\Delta V\) と定義されますが、状態方程式を用いると、より便利な \(W’ = nR\Delta T\) という関係式が使えます。温度変化 \(\Delta T\) は(1)で求めているので、これを使えば簡単に計算できます。
この設問における重要なポイント
- なめらかに動くピストン → 定圧変化
- 定圧変化で気体がする仕事は \(W’ = p\Delta V\) であり、これは \(W’ = nR\Delta T\) と等しい。
具体的な解説と立式
この変化は定圧変化なので、気体が外部にした仕事 \(W’\) は、圧力 \(p\) と体積変化 \(\Delta V\) を用いて \(W’ = p\Delta V\) と表せます。
ここで、理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) を変化の前後で考えると、
変化前: \(pV_{\text{初}} = nRT_{\text{初}}\)
変化後: \(pV_{\text{終}} = nRT_{\text{終}}\)
これらの差をとると、\(p(V_{\text{終}} – V_{\text{初}}) = nR(T_{\text{終}} – T_{\text{初}})\) となります。
左辺は \(p\Delta V = W’\)、右辺は \(nR\Delta T\) なので、定圧変化においては以下の関係式が成り立ちます。
$$ W’ = nR\Delta T $$
温度変化 \(\Delta T\) は(1)で求めた \(2T_0\) です。
使用した物理公式
- 仕事の定義(定圧変化): \(W’ = p\Delta V\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
- 上記から導かれる定圧変化での仕事の公式: \(W’ = nR\Delta T\)
公式 \(W’ = nR\Delta T\) に、\(\Delta T = 2T_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W’ &= nR\Delta T \\[2.0ex]
&= nR(2T_0) \\[2.0ex]
&= 2nRT_0
\end{aligned}
$$
気体が膨張するとき、ピストンを押して外部に仕事をします。この仕事の量は、定圧変化という特殊な状況では、便利な公式「\(nR \times (\text{温度の上昇分})\)」で計算できます。温度の上昇分は \(2T_0\) なので、これを公式に当てはめるだけで仕事が求まります。
気体が外部に対してした仕事 \(W’\) は \(2nRT_0\) [J] です。気体は加熱されて膨張しているので、外部に正の仕事をする(\(W’ > 0\))という結果は物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
仕事の基本定義である \(W’=p\Delta V\) に忠実に従って計算するアプローチです。このためには、まず変化前後の体積を求める必要があります。圧力は一定ですが、その値は未知なので文字 \(p\) のまま計算を進めます。
この設問における重要なポイント
- 仕事の定義は \(W’=p\Delta V\)。
- 変化前後の体積は、状態方程式 \(V = \displaystyle\frac{nRT}{p}\) を使って求める。
具体的な解説と立式
気体の圧力を \(p\)(一定)とします。
初期状態(温度 \(T_0\))の体積を \(V_{\text{初}}\)、最終状態(温度 \(3T_0\))の体積を \(V_{\text{終}}\) とすると、状態方程式より、
$$ V_{\text{初}} = \frac{nRT_0}{p} $$
$$ V_{\text{終}} = \frac{nR(3T_0)}{p} $$
気体がした仕事 \(W’\) は、
$$
\begin{aligned}
W’ &= p \Delta V \\[2.0ex]
&= p(V_{\text{終}} – V_{\text{初}})
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事の定義(定圧変化): \(W’ = p\Delta V\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
立式した仕事の式に、\(V_{\text{初}}\) と \(V_{\text{終}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W’ &= p(V_{\text{終}} – V_{\text{初}}) \\[2.0ex]
&= p \left( \frac{3nRT_0}{p} – \frac{nRT_0}{p} \right) \\[2.0ex]
&= p \left( \frac{2nRT_0}{p} \right) \\[2.0ex]
&= 2nRT_0
\end{aligned}
$$
途中で圧力 \(p\) がうまく約分されて消えることがわかります。
仕事は「力 × 距離」で、気体の場合は「圧力 × 体積の変化」で計算するのが基本です。まず、状態方程式を使って「変化前の体積」と「変化後の体積」を求めます。次にその差(体積の変化)を計算し、一定である圧力 \(p\) を掛けることで仕事が求まります。計算の途中で圧力がうまく消えて、主たる解法と同じ結果になります。
主たる解法と全く同じ \(W’ = 2nRT_0\) [J] という結果が得られました。この別解は、便利な公式 \(W’=nR\Delta T\) がどのように導かれるかを示しており、物理法則のつながりを理解する上で有益です。
問(3)
思考の道筋とポイント
気体が吸収した熱量 \(Q\) を求める問題です。内部エネルギーの増加量 \(\Delta U\)、吸収した熱量 \(Q\)、気体が外部にした仕事 \(W’\) の間には、エネルギー保存則である「熱力学第一法則」が成り立ちます。すでに(1)で \(\Delta U\)、(2)で \(W’\) を求めているので、これらを法則の式に代入するだけで \(Q\) が求まります。
この設問における重要なポイント
- 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q – W’\) (\(Q\): 吸収した熱量, \(W’\): した仕事)
- この法則は、吸収した熱量 \(Q\) が、内部エネルギーの増加 \(\Delta U\) と外部への仕事 \(W’\) の2つに分配されることを意味する。
具体的な解説と立式
熱力学第一法則は、気体が吸収した熱量を \(Q\)、気体が外部にした仕事を \(W’\) とすると、
$$ \Delta U = Q – W’ $$
と表せます。この式を \(Q\) について解くと、
$$ Q = \Delta U + W’ $$
(1)で求めた \(\Delta U = 3nRT_0\) と、(2)で求めた \(W’ = 2nRT_0\) をこの式に代入します。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q – W’\)
$$
\begin{aligned}
Q &= \Delta U + W’ \\[2.0ex]
&= 3nRT_0 + 2nRT_0 \\[2.0ex]
&= 5nRT_0
\end{aligned}
$$
気体に熱を加えると、その熱エネルギーは2つのことに使われます。一つは気体自身の元気を増やすこと(内部エネルギーの増加)、もう一つはピストンを押して外部に仕事をすることです。したがって、「加えた熱」は「増えた元気」と「した仕事」の合計になります。今回は、(1)と(2)でその2つをすでに計算しているので、単純に足し算するだけで答えが出ます。
気体が吸収した熱量 \(Q\) は \(5nRT_0\) [J] です。加熱しているので \(Q>0\) となるのは当然です。また、吸収した熱量の一部(\(3nRT_0\))が内部エネルギーの増加に、残り(\(2nRT_0\))が外部への仕事に使われたことがわかります。
問(4)
思考の道筋とポイント
定圧モル比熱 \(C_p\) を求める問題です。定圧モル比熱は、定圧変化において気体 1 mol の温度を 1 K 上昇させるのに必要な熱量として定義されます。この定義は \(Q = nC_p\Delta T\) という式で表されます。(3)で求めた熱量 \(Q\) と、既知の物質量 \(n\)、温度変化 \(\Delta T\) をこの式に代入すれば、\(C_p\) を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 定圧モル比熱の定義式: \(Q = nC_p\Delta T\)
具体的な解説と立式
定圧モル比熱 \(C_p\) の定義式は、
$$ Q = nC_p\Delta T $$
です。この式を \(C_p\) について解くと、
$$ C_p = \frac{Q}{n\Delta T} $$
この式に、(3)で求めた \(Q=5nRT_0\) と、(1)で求めた \(\Delta T = 2T_0\) を代入します。
使用した物理公式
- 定圧モル比熱の定義: \(Q = nC_p\Delta T\)
$$
\begin{aligned}
C_p &= \frac{Q}{n\Delta T} \\[2.0ex]
&= \frac{5nRT_0}{n(2T_0)} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R
\end{aligned}
$$
計算の過程で \(n\) と \(T_0\) が消去され、\(C_p\) が気体定数 \(R\) の定数倍で表されることがわかります。
「定圧モル比熱 \(C_p\)」とは、物質の温まりにくさを表す指標の一つで、「圧力一定の条件で、1 mol の気体の温度を 1 K 上げるのに必要な熱量」のことです。この定義を数式にすると \(Q = nC_p\Delta T\) となります。この式を \(C_p\) イコールの形に変形し、これまで計算してきた \(Q\)(加えた熱)と \(\Delta T\)(温度の上昇分)の値を代入すれば、\(C_p\) が求まります。
この気体の定圧モル比熱 \(C_p\) は \(\displaystyle\frac{5}{2}R\) [J/(mol・K)] です。これは単原子分子理想気体の定圧モル比熱として知られている値と一致しており、妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
(1)〜(3)の計算結果を一切使わずに、より普遍的な物理法則から \(C_p\) を求めるアプローチです。定圧モル比熱 \(C_p\) と定積モル比熱 \(C_v\) の間には、気体の種類によらず \(C_p = C_v + R\) という「マイヤーの関係式」が成り立ちます。そして、単原子分子理想気体の \(C_v\) は \(\displaystyle\frac{3}{2}R\) であることが知られています。これらを用いると、\(C_p\) を直接計算できます。
この設問における重要なポイント
- 定積モル比熱 \(C_v\): \(\Delta U = nC_v\Delta T\) で定義される。
- 単原子分子理想気体では、\(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) なので、\(C_v = \displaystyle\frac{3}{2}R\)。
- マイヤーの関係式: \(C_p = C_v + R\)。
具体的な解説と立式
まず、定積モル比熱 \(C_v\) を求めます。\(C_v\) は、内部エネルギーの増加量の式 \(\Delta U = nC_v\Delta T\) で定義されます。
一方、単原子分子理想気体の内部エネルギーの増加量は、
$$ \Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T $$
です。この2つの式を比較すると、
$$ nC_v\Delta T = \frac{3}{2}nR\Delta T $$
となり、ここから \(C_v\) が求まります。
次に、マイヤーの関係式にこの \(C_v\) を代入して \(C_p\) を求めます。
$$ C_p = C_v + R $$
使用した物理公式
- 定積モル比熱の定義: \(\Delta U = nC_v\Delta T\)
- マイヤーの関係式: \(C_p = C_v + R\)
まず \(C_v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
nC_v\Delta T &= \frac{3}{2}nR\Delta T \\[2.0ex]
C_v &= \frac{3}{2}R
\end{aligned}
$$
次に、マイヤーの関係式に代入します。
$$
\begin{aligned}
C_p &= C_v + R \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R + R \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R
\end{aligned}
$$
物理学には「マイヤーの関係式」という便利な法則があり、\(C_p = C_v + R\) という形で表されます。ここで \(C_v\) は「定積モル比熱」と呼ばれる、\(C_p\) の兄弟のようなものです。単原子分子の場合、この \(C_v\) は \(\displaystyle\frac{3}{2}R\) であることがわかっているので、これをマイヤーの関係式に代入するだけで、\(C_p\) が \(\displaystyle\frac{5}{2}R\) であると計算できます。この方法は、(1)から(3)の答えが分からなくても使える強力なテクニックです。
主たる解法と全く同じく、\(C_p = \displaystyle\frac{5}{2}R\) という結果が得られました。この別解は、\(C_p\) がこの気体に固有の物理量であり、特定の変化の様子(\(T_0\) から \(3T_0\) への加熱)によらない普遍的な値であることを明確に示しています。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 熱力学第一法則の具体的な適用:
- 核心: この問題は、エネルギー保存則である熱力学第一法則 \(\Delta U = Q – W’\) を、具体的な物理過程(今回は定圧変化)に当てはめて解釈・計算できるかを問うています。法則を単に覚えるだけでなく、各項(内部エネルギー変化 \(\Delta U\)、熱量 \(Q\)、仕事 \(W’\))が何を意味し、どう計算されるかを理解することが核心です。
- 理解のポイント:
- 過程の特定: 問題文の「なめらかに動くピストン」という記述から、これは「定圧変化」であると特定することが全ての出発点です。これにより、仕事の計算方法などが決まります。
- エネルギーの分配: 吸収した熱量 \(Q\) は、気体の温度を上げる(内部エネルギーを増やす \(\Delta U\))ことと、気体が膨張して外部に仕事をする(\(W’\))ことの2つに使われます。\(Q = \Delta U + W’\) という関係は、このエネルギーの使い道の「内訳」を示していると理解することが重要です。
- 状態量と過程量:
- 核心: 物理量が、状態のみで決まる「状態量」か、変化の経路に依存する「過程量」かを区別する意識が不可欠です。
- 理解のポイント:
- 状態量: 内部エネルギー \(U\) は、温度 \(T\) だけで決まる状態量です。そのため、変化の仕方(定圧か定積かなど)によらず、温度変化 \(\Delta T\) が同じなら \(\Delta U\) も同じ値 (\(\frac{3}{2}nR\Delta T\)) になります。
- 過程量: 熱量 \(Q\) と仕事 \(W’\) は、どのような経路で変化したかによって値が変わる過程量です。同じ温度変化でも、定圧変化と定積変化では \(Q\) や \(W’\) の値は異なります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 定積変化: ピストンが固定されている場合。体積変化がないので \(\Delta V=0\)、よって仕事 \(W’=0\)。熱力学第一法則は \(\Delta U = Q\) となり、吸収した熱は全て内部エネルギーの増加に使われます。
- 等温変化: 温度が一定に保たれている場合。温度変化がないので \(\Delta T=0\)、よって内部エネルギー変化 \(\Delta U=0\)。熱力学第一法則は \(Q = W’\) となり、吸収した熱は全て外部への仕事に使われます。
- 断熱変化: 熱の出入りがない場合。\(Q=0\)。熱力学第一法則は \(\Delta U = -W’\) となり、気体が外部に仕事 (\(W’>0\)) をすると、その分だけ内部エネルギーが減少(温度が下降)します。
- 熱力学サイクル: 気体がいくつかの変化を経て元の状態に戻る場合。一周すると温度が元に戻るので、系全体の内部エネルギー変化は \(\Delta U = 0\)。したがって、サイクル全体で吸収した正味の熱量が、サイクル全体で外部にした正味の仕事に等しくなります。
- 初見の問題での着眼点:
- 変化の種類を特定する: まず、問題文のキーワードから「定圧」「定積」「等温」「断熱」のどれに該当するかを判断します。(例:「なめらかに動くピストン」→定圧、「固定容器」→定積、「ゆっくり温度を保ちながら」→等温、「断熱材で囲み急激に」→断熱)
- 熱力学第一法則の各項をチェック: 特定した変化の種類に応じて、\(\Delta U, Q, W’\) のうち、どれかが0になる、あるいは簡単に計算できるものはないかを確認します。
- 気体の種類を確認: 「単原子分子」か「二原子分子」かを確認します。これにより内部エネルギーやモル比熱の式の係数 (\(\frac{3}{2}\) か \(\frac{5}{2}\) かなど) が決まります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 仕事の符号の混同:
- 誤解: 気体が「した仕事」\(W’\) と、気体が「された仕事」\(W\) を混同し、熱力学第一法則の符号を間違える。
- 対策: \(W = -W’\) の関係を常に意識し、自分が使っている第一法則の式 (\(\Delta U = Q+W\) なのか \(\Delta U = Q-W’\) なのか) を明確にします。問題文がどちらの仕事について問うているかを確認する癖をつけましょう。
- 内部エネルギーの式の勘違い:
- 誤解: 定圧変化だからという理由で、内部エネルギーの変化を \(\Delta U = nC_p\Delta T\) と計算してしまう。
- 対策: 「理想気体の内部エネルギーは温度のみに依存する」という大原則を徹底します。内部エネルギーの変化は、いかなる過程であっても \(\Delta U = nC_v\Delta T\) で計算されます(単原子分子なら \(C_v=\frac{3}{2}R\))。\(C_p\) は熱量 \(Q\) の計算に使うものと区別しましょう。
- モル比熱の定義の混同:
- 誤解: 定圧モル比熱 \(C_p\) と定積モル比熱 \(C_v\) のどちらがどちらか分からなくなる。
- 対策: 英語の頭文字で覚えます。\(C_p\) の \(p\) は pressure (圧力)、\(C_v\) の \(v\) は volume (体積) です。また、定圧変化では外部に仕事をする分だけ余計に熱が必要になるため、必ず \(C_p > C_v\) となる、とイメージで覚えておくと混同を防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\) (単原子分子):
- 選定理由: (1)で内部エネルギーの変化量を計算するために必須の公式です。
- 適用根拠: これは単原子分子理想気体の内部エネルギーの定義そのものです。気体分子運動論から、内部エネルギーは分子の並進運動エネルギーの総和であり、それが絶対温度に比例することに由来します。この関係は変化の過程(定圧、定積など)によらず常に成り立ちます。
- \(W’ = nR\Delta T\) (定圧変化):
- 選定理由: (2)で仕事を計算する際に、\(p\Delta V\) を計算するよりも温度変化 \(\Delta T\) だけで計算できるため、非常に効率的です。
- 適用根拠: この公式が使えるのは「定圧変化」かつ「理想気体」という2つの条件が満たされている時のみです。状態方程式 \(pV=nRT\) の変化前と変化後の差をとることで、\(p\Delta V = nR\Delta T\) という関係が導かれるため、論理的に正当化されます。
- \(Q = nC_p\Delta T\) (定圧変化):
- 選定理由: (4)で定圧モル比熱 \(C_p\) を求めるための定義式です。
- 適用根拠: モル比熱は「1molの物質の温度を1K上げるのに必要な熱量」として定義されます。これを数式にしたものがこの公式です。特に \(C_p\) は「圧力を一定に保ったまま」という条件付きの定義であるため、定圧変化の熱量計算にのみ適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(\Delta\)(デルタ)の計算順序: 変化量を計算する際は、必ず「後の量 – 前の量」を徹底します。今回の場合、\(\Delta T = 3T_0 – T_0 = 2T_0\) であり、この符号が \(\Delta U\) や \(W’\) の符号を決定します。
- 係数の再確認: 計算を始める前に、問題文の「単原子分子」という記述に丸をつけ、使う係数が \(\Delta U\) なら \(\frac{3}{2}\)、\(C_p\) なら \(\frac{5}{2}\) であることを頭の中で再確認する習慣をつけましょう。
- 比の関係による検算: 単原子分子理想気体の定圧変化では、\(\Delta U : W’ : Q = \frac{3}{2}nR\Delta T : nR\Delta T : \frac{5}{2}nR\Delta T = 3:2:5\) という美しい整数比が常に成り立ちます。設問(1)〜(3)の答えがこの比になっているかを確認することで、計算ミスを発見できます。
- 単位を意識する: \(C_p\) の単位は [J/(mol・K)] です。(4)の計算 \(C_p = \frac{Q}{n\Delta T}\) で、右辺の単位が \(\frac{[\text{J}]}{[\text{mol}][\text{K}]}\) となり、左辺と一致することを確認するだけでも、式の立て間違いを防ぐ一助となります。
基本例題47 p-V図の見方
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、物理的理解を多角的に深めるための別のアプローチや補足説明を提示します。
- 提示する別解・補足
- 設問(1)の別解: 状態方程式 \(T \propto pV\) を用いた代数的解法
- 模範解答が等温曲線の視覚的な位置関係で判断するのに対し、別解では各点の圧力と体積の値から \(pV\) 積の大小を直接比較し、論理的に温度の大小関係を導きます。
- 設問(2)の補足: 各変化の物理的性質からの熱量 \(Q\) の符号判断
- 熱力学第一法則による計算だけでなく、「定積加熱」や「等温圧縮」といった各過程の物理的イメージから、熱の出入り(\(Q\)の符号)を直感的に判断する方法を補足します。
- 設問(1)の別解: 状態方程式 \(T \propto pV\) を用いた代数的解法
- 上記の別解・補足が有益である理由
- 論理的思考の強化: 視覚的な解法(等温曲線)と、数式に基づく代数的な解法(\(pV\)積の比較)の両方を学ぶことで、より盤石な理解を築くことができます。
- 物理的直感の養成: 熱力学第一法則を単なる計算ツールとして使うだけでなく、物理現象の直感的なイメージ(加熱・冷却・仕事)と結びつけることで、法則の本質的な意味を深く理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「\(p-V\)図の解釈と熱力学サイクルの解析」です。定積・定圧・断熱・等温という4つの基本的な熱力学過程を組み合わせたサイクルについて、各状態の温度や、各過程における物理量の変化を正しく理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(p-V\)図と温度の関係: 状態方程式 \(pV=nRT\) より、温度 \(T\) は \(pV\) 積に比例します。\(p-V\)図上で原点から遠い右上にある点ほど高温であることを理解していることが重要です。
- 内部エネルギー変化 \(\Delta U\): 理想気体の内部エネルギーは絶対温度のみに依存するため、\(\Delta U\) の符号は温度変化 \(\Delta T\) の符号と一致します。
- 気体がした仕事 \(W’\): 気体が膨張(\(\Delta V > 0\))すれば \(W’ > 0\)、圧縮(\(\Delta V < 0\))されれば \(W’ < 0\) となります。\(p-V\)図では、グラフとV軸で囲まれた面積が仕事の大きさに対応します。
- 熱力学第一法則: エネルギー保存則である \(\Delta U = Q – W’\) (\(Q\)は気体が吸収した熱量、\(W’\)は気体がした仕事)を用いて、\(\Delta U\) と \(W’\) から \(Q\) を求めることができます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、\(p-V\)図に等温曲線(\(pV=\text{一定}\)のグラフ)を補助線として描き、各点がどの温度の等温線上にあるかを比較して、温度の大小関係を判断します。
- (2)では、各過程について、(1)で判断した温度変化から \(\Delta U\) の符号を、グラフの体積変化(左右への移動)から \(W’\) の符号を判断します。最後に、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) を使って \(Q\) の符号を決定します。
問(1)
思考の道筋とポイント
\(p-V\)図上の4つの点A, B, C, Dの温度の大小関係を比較する問題です。理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) から、温度 \(T\) は \(pV\) 積に比例することがわかります。したがって、\(p-V\)図上で \(pV\) の値が大きい点ほど温度が高いと言えます。同じ温度の点を結んだ曲線(等温曲線)は \(p = \frac{nRT}{V}\) の反比例のグラフとなり、グラフの右上の領域にある曲線ほど温度が高いことを利用します。
この設問における重要なポイント
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)。
- 温度と \(pV\) 積の関係: \(T = \displaystyle\frac{pV}{nR}\) より、\(T \propto pV\)。
- 等温曲線: \(p-V\)図上で、同じ温度の点は \(pV = \text{一定}\) の反比例のグラフ上に乗る。
- 等温曲線は、原点から遠い(右上にある)ほど高温。
具体的な解説と立式
まず、D→Aの変化は問題文より「等温変化」なので、定義から \(T_A = T_D\) です。
次に、A, B, Cの3点を通る等温曲線を考えます。状態方程式 \(pV=nRT\) より、\(T\) が大きいほど \(pV\) 積は大きくなり、等温曲線は \(p-V\) 図の右上に位置します。
図から、点Cは点Bよりも右上にあり、点Bは点Aよりも右上にあります。したがって、それぞれの点を通る等温曲線も、Cを通るものが最も高温、次いでB、Aの順になります。
よって、温度の大小関係は \(T_C > T_B > T_A\) となります。
これらと \(T_A = T_D\) を合わせると、最終的な大小関係が求まります。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
この問題は大小関係を問う定性的な問題なので、具体的な計算は不要です。
\(p-V\)図では、点がグラフの右上にいるほど「圧力\(p\) × 体積\(V\)」の値が大きくなります。温度は、この「\(p \times V\)」の値に比例するので、点が右上にいるほど高温だと判断できます。
グラフを見ると、C点が一番右上にあり、次にB点、そしてA点とD点は同じ高さのグループにいます。したがって、温度はCが一番高く、次にB、そしてAとDは同じで一番低い、という順番になります。
各点の温度の大小関係は \(T_C > T_B > T_A = T_D\) となります。
A→B(定積加熱)、B→C(定圧膨張)では温度が上昇し、C→D(断熱膨張)では温度が下降、D→A(等温圧縮)では温度が一定という、各過程の性質とも矛盾しない妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
等温曲線の視覚的な比較の代わりに、状態方程式 \(T \propto pV\) を用いて、各過程での \(p\) と \(V\) の変化から \(pV\) 積の大小を直接比較し、温度の大小関係を論理的に導きます。
この設問における重要なポイント
- \(T \propto pV\) を利用する。
- 各過程(定積、定圧、断熱、等温)の性質を理解している。
具体的な解説と立式
各過程ごとに温度変化を考えます。
- A→B (定積変化): 体積 \(V\) は一定で、圧力 \(p\) が増加しています。(\(V_B=V_A, p_B>p_A\))
\(p_B V_B > p_A V_A\) となるので、\(T \propto pV\) より \(T_B > T_A\)。 - B→C (定圧変化): 圧力 \(p\) は一定で、体積 \(V\) が増加しています。(\(p_C=p_B, V_C>V_B\))
\(p_C V_C > p_B V_B\) となるので、\(T \propto pV\) より \(T_C > T_B\)。 - D→A (等温変化): 問題文の定義より、\(T_A = T_D\)。
- C→D (断熱変化): 断熱膨張では、気体は外部に仕事をするために内部エネルギーを消費します。内部エネルギーが減少するため、温度は下降します。よって \(T_C > T_D\)。
以上の関係をすべて統合すると、\(T_C > T_B > T_A = T_D\) という結論が得られます。
主たる解法と同じ結果が得られました。視覚的な解法と論理的な解法の両方で同じ結論に至ることを確認することで、理解がより確実になります。
問(2)
思考の道筋とポイント
各過程とサイクル一周について、内部エネルギーの増加量 \(\Delta U\)、気体がした仕事 \(W’\)、気体が吸収した熱量 \(Q\) の符号を決定する問題です。
判断の順序として、まず定義から直接符号がわかる \(\Delta U\) と \(W’\) を確定させ、最後にそれらの和として \(Q\) を求めるのが最も確実で間違いが少ない方法です。
この設問における重要なポイント
- \(\Delta U\) の符号は温度変化 \(\Delta T\) の符号で決まる(温度上昇 → \(\Delta U > 0\)、温度下降 → \(\Delta U < 0\)、温度一定 → \(\Delta U = 0\))。
- \(W’\) の符号は体積変化 \(\Delta V\) の符号で決まる(膨張 \(\Delta V > 0\) → \(W’ > 0\)、圧縮 \(\Delta V < 0\) → \(W’ < 0\)、体積一定 \(\Delta V = 0\) → \(W’ = 0\))。
- \(Q\) の符号は熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) の計算結果で決まる。
- 一周(サイクル)では、元の状態に戻るので状態量である内部エネルギーの変化はゼロ (\(\Delta U=0\))。
具体的な解説と立式
各過程について、\(\Delta U\), \(W’\), \(Q\) の符号を順に判断していきます。
- 過程 A → B (定積変化)
- \(\Delta U\): (1)より \(T_B > T_A\) なので温度は上昇。よって \(\Delta U\) は +。
- \(W’\): 定積変化なので体積は一定。よって \(W’\) は 0。
- \(Q\): 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) より、\(Q = (+) + 0\)。よって \(Q\) は +。
- 過程 B → C (定圧変化)
- \(\Delta U\): (1)より \(T_C > T_B\) なので温度は上昇。よって \(\Delta U\) は +。
- \(W’\): 体積が増加(膨張)しているので、\(W’\) は +。
- \(Q\): \(Q = \Delta U + W’\) より、\(Q = (+) + (+)\)。よって \(Q\) は +。
- 過程 C → D (断熱変化)
- \(Q\): 「断熱」変化なので、定義より熱の出入りはなし。よって \(Q\) は 0。
- \(W’\): 体積が増加(膨張)しているので、\(W’\) は +。
- \(\Delta U\): 熱力学第一法則 \(\Delta U = Q – W’\) より、\(\Delta U = 0 – (+)\)。よって \(\Delta U\) は –。((1)の \(T_D < T_C\) とも一致)
- 過程 D → A (等温変化)
- \(\Delta U\): 「等温」変化なので温度は一定。よって \(\Delta U\) は 0。
- \(W’\): 体積が減少(圧縮)しているので、\(W’\) は –。
- \(Q\): \(Q = \Delta U + W’\) より、\(Q = 0 + (-)\)。よって \(Q\) は –。
- 一周 (サイクル)
- \(\Delta U\): 状態がAに戻るので、温度も元に戻る。状態量である内部エネルギーの変化は一周すればゼロ。よって \(\Delta U\) は 0。
- \(W’\): サイクルが時計回りなので、膨張時の仕事(B→C→D)が圧縮時の仕事(D→A)より大きい。したがって、全体として気体は正味の仕事をする。\(p-V\)図でサイクルが囲む面積が正味の仕事の大きさに相当し、これは正。よって \(W’\) は +。
- \(Q\): 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) より、\(Q = 0 + (+)\)。よって \(Q\) は +。
使用した物理公式
- 内部エネルギー変化と温度変化の関係: \(\Delta U \propto \Delta T\)
- 仕事と体積変化の関係: \(W’ \propto \Delta V\) (膨張で正)
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
符号の判断なので、具体的な計算は不要です。
表を埋めるゲームだと考えましょう。ルールは3つです。
1. \(\Delta U\)(元気の変化): 温度が上がれば+、下がれば-、同じなら0。
2. \(W’\)(した仕事): 膨らんだら+、縮んだら-、体積が変わらなければ0。
3. \(Q\)(もらった熱): \(Q\) は、\(\Delta U\) と \(W’\) の足し算で決まります。
このルールに従って、各過程を一つずつチェックしていけば、表は完成します。
以上の結果を表にまとめると、模範解答の表と一致します。各過程の物理的なイメージ(定積加熱、定圧膨張、断熱膨張、等温圧縮)とも整合性がとれており、妥当な結果です。
解答 (2)
\(\Delta U\) | \(W’\) | \(Q\) | |
A → B (定積) | + | 0 | + |
B → C (定圧) | + | + | + |
C → D (断熱) | – | + | 0 |
D → A (等温) | 0 | – | – |
一周 | 0 | + | + |
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(p-V\)図と熱力学第一法則の統合的理解:
- 核心: この問題は、\(p-V\)図というグラフ情報と、エネルギー保存則である熱力学第一法則 \(\Delta U = Q – W’\) を結びつけ、気体の状態変化を多角的に分析する能力を問うています。
- 理解のポイント:
- グラフから読み取ること: \(p-V\)図からは、圧力 \(p\) と体積 \(V\) の変化が直接読み取れます。これにより、温度 \(T\) (\(\propto pV\)) の変化や、仕事 \(W’\) (体積変化 \(\Delta V\)) の符号が判断できます。
- 法則で判断すること: 内部エネルギー \(\Delta U\) は温度変化に、熱量 \(Q\) は \(\Delta U\) と \(W’\) の和に、それぞれ結びついています。
- 統合: これらを組み合わせ、「グラフ(\(p,V\)) → 温度(\(T\))と仕事(\(W’\)) → 内部エネルギー(\(\Delta U\))と熱量(\(Q\))」という一連の論理の流れを構築することが、この問題の核心です。
- 4つの基本変化の性質の完全な把握:
- 核心: 定積・定圧・等温・断熱という、熱力学における基本的な4つの状態変化について、それぞれの物理的特徴と、\(\Delta U, W’, Q\) がどうなるかを即座に判断できる知識が不可欠です。
- 理解のポイント:
- 定積 (\(\Delta V=0\)): 仕事をしない (\(W’=0\))。加えた熱は全て内部エネルギーになる (\(Q=\Delta U\))。
- 定圧 (\(\Delta p=0\)): 熱、仕事、内部エネルギー変化の全てが起こりうる。
- 等温 (\(\Delta T=0\)): 内部エネルギーが変化しない (\(\Delta U=0\))。加えた熱は全て仕事になる (\(Q=W’\))。
- 断熱 (\(Q=0\)): 熱の出入りがない。外部への仕事は内部エネルギーを消費して行われる (\(W’=-\Delta U\))。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 逆サイクル(反時計回り): 本問のサイクルを逆向きにたどる問題。これは冷凍機やヒートポンプの原理を表します。サイクル全体で外部から仕事をされ (\(W'<0\)), 低温部から熱を吸収し高温部へ放出します。
- 異なる熱力学サイクル: オットーサイクル(ガソリンエンジン)やディーゼルサイクルなど、他のサイクルも基本的な解析方法は同じです。各過程がどの変化(定積、定圧、断熱など)に対応するかを正確に把握し、第一法則を適用します。
- 定量計算問題: 各点の \(p, V, T\) の具体的な値が与えられ、\(\Delta U, W’, Q\) の数値を計算する問題。本問の符号判断の考え方をベースに、\(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\) や \(W’ = p\Delta V\) などの具体的な計算式を適用します。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認する: まず、与えられたグラフが \(p-V\)図なのか、\(p-T\)図なのか、\(V-T\)図なのかを絶対に確認します。軸が異なれば、グラフの線の意味も全く異なります。
- 各過程を特定する: グラフの形状と問題文の記述から、A→B, B→C,… がそれぞれ定積・定圧・等温・断熱のどれにあたるかを特定し、グラフに書き込みます。
- 温度比較は補助線で: \(p-V\)図上の温度比較では、原点を通る放射線(\(p/V\)が一定)や、反比例のグラフである等温曲線(\(pV\)が一定)を補助線として描くと、大小関係が視覚的に分かりやすくなります。
- 符号判断の鉄則を守る: \(\Delta U\) は温度変化、\(W’\) は体積変化から先に判断し、\(Q\) は最後に熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) で決定する、という手順を機械的に守ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 断熱曲線と等温曲線の混同:
- 誤解: \(p-V\)図上で、2本の右下がりの曲線のうち、どちらが断熱変化でどちらが等温変化かを見分けられない。
- 対策: 断熱変化の曲線は、等温変化の曲線よりも傾きが急になります。物理的なイメージとして「断熱膨張では、仕事をするために内部エネルギーを消費して温度が下がるので、同じ体積変化でも等温変化より圧力が大きく下がる」と理解しておくと忘れにくくなります。
- サイクル一周の仕事の符号:
- 誤解: サイクル全体で気体がした仕事 \(W’\) の符号を、膨張と圧縮のどちらが大きいか混乱して間違える。
- 対策: 「時計回りのサイクルは熱機関(エンジン)で、外部に正の仕事をする (\(W’>0\))」「反時計回りのサイクルは冷凍機で、外部から仕事をされる (\(W'<0\))」と覚えましょう。仕事の大きさは、サイクルが囲む面積に相当します。
- 熱量 \(Q\) の直感による誤判断:
- 誤解: 例えば、断熱圧縮(C→Dの逆)では、熱を加えていないのに温度が上がるため、\(Q>0\) と勘違いしやすい。
- 対策: 熱量 \(Q\) の符号は、直感に頼らず、必ず熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) に基づいて、\(\Delta U\) と \(W’\) の符号の足し算で決定する、というルールを徹底してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(T \propto pV\) (状態方程式):
- 選定理由: (1)の温度比較で用います。これは、\(p-V\)図から直接読み取れる情報 (\(p, V\)) と、求めたい物理量 (\(T\)) を結びつける最も基本的な関係式だからです。
- 適用根拠: 理想気体というモデルの定義そのものである状態方程式 \(pV=nRT\) に基づいています。\(n\) と \(R\) が定数であるため、この比例関係が成立します。
- \(\Delta U\) の符号 \(\iff \Delta T\) の符号:
- 選定理由: (2)で内部エネルギー変化の符号を判断する際の根拠です。
- 適用根拠: 理想気体の内部エネルギーは、分子の運動エネルギーの総和であり、これは絶対温度 \(T\) のみに依存するという物理法則に基づきます。したがって、温度が上がれば内部エネルギーは増え、下がれば減ります。この関係は、変化の過程(定積、定圧など)にはよりません。
- \(Q = \Delta U + W’\) (熱力学第一法則):
- 選定理由: (2)で熱量 \(Q\) の符号を判断するために用います。\(\Delta U\) と \(W’\) はグラフから比較的容易に判断できますが、\(Q\) は直接判断が難しい場合があるため、エネルギー保存則であるこの式を介して求めるのが最も確実です。
- 適用根拠: これは物理学における最も基本的な法則の一つ、エネルギー保存則の熱現象における表現です。いかなる熱力学過程においても、この関係は厳密に成り立ちます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 表を作成して思考を整理する: (2)のような複数の過程・物理量を扱う問題では、解答欄と同じ形式の表を自分で作り、一行ずつ、一列ずつ丁寧に埋めていくことが非常に有効です。思考の抜け漏れや混同を防ぐことができます。
- グラフへの書き込み: (1)の温度比較では、問題の図に直接、等温曲線の概形を点線で描き込むと視覚的に判断しやすくなります。また、各過程の矢印の横に「定積」「定圧」などを書き込むことも、思考の整理に役立ちます。
- 一周の計算で検算する: 表の一番下の「一周」の行は、優れた検算ツールです。各列の和を計算し、「\(\Delta U\) の和は0になるか?」「\(Q\) の和と \(W’\) の和は等しくなるか? (\(\Delta U = Q – W’\) より \(Q_{\text{一周}} = W’_{\text{一周}}\))」を確認することで、各過程の判断ミスを発見できる可能性があります。
- 物理的ストーリーとの照合: 各過程の符号を決定した後、「A→Bは、体積を変えずに加熱したから、圧力と温度が上がった。仕事はせず、熱は吸収した。なるほど。」というように、具体的な物理現象を頭の中で再現し、自分の答えと矛盾がないかを確認する習慣をつけると、理解が深まり、ミスも減ります。
基本例題48 気体の状態変化
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 状態方程式を用いた解法
- 模範解答がシャルルの法則を用いるのに対し、別解ではより基本的な状態方程式から温度を導出します。
- 設問(2)の別解: 定圧モル比熱を用いた熱量の計算
- 模範解答が熱力学第一法則から熱量を求めるのに対し、別解では定圧変化の性質を利用して、定圧モル比熱の公式から直接熱量を計算します。
- 設問(3)の別解: 定積モル比熱を用いた熱量の計算
- 模範解答が熱力学第一法則から熱量を求めるのに対し、別解では定積変化の性質を利用して、定積モル比熱の公式から直接熱量を計算します。
- 設問(1)の別解: 状態方程式を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の体系的理解: シャルルの法則が状態方程式から導かれることや、熱力学第一法則とモル比熱の関係性を確認することで、法則間のつながりを深く理解できます。
- 計算の効率化: (2)や(3)の別解のように、その過程に特化した公式(\(Q=nC_p\Delta T\)など)を用いることで、より少ないステップで簡潔に計算できる場合があることを学べます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「p-V図で表された熱力学サイクルの解析」です。定圧・定積・等温という基本的な熱力学過程を組み合わせたサイクルについて、各状態量や仕事、熱量を計算し、最終的に熱効率を求める総合的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 気体の状態方程式とボイル・シャルルの法則: 各状態(A, B, C)や過程(A→Bなど)における圧力、体積、温度の関係を把握するために用います。
- 熱力学第一法則: エネルギー保存則である \(\Delta U = Q – W’\) を用いて、内部エネルギー変化、吸収熱量、外部にした仕事の関係を整理します。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: 内部エネルギーの変化量が \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) で与えられることを利用します。
- 各過程における仕事の計算: 定圧変化では \(W’ = p\Delta V\)、定積変化では \(W’ = 0\)、等温変化では \(Q=W’\) となるなど、各過程の性質を理解していることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、A→Bが定圧変化であることに着目し、状態方程式またはシャルルの法則を用いて状態Bの温度を求めます。
- (2)から(4)では、各過程の性質(定圧、定積、等温)を特定し、\(\Delta U\), \(W’\)をそれぞれの定義式から計算し、熱力学第一法則を用いて\(Q\)を求めます。
- 最後の問いでは、熱効率の定義式 \(e = \displaystyle\frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}}\) に、各過程で求めた値を代入して計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
状態Bの温度 \(T_B\) を求める問題です。p-V図から、過程A→Bは圧力が \(3p_0\) で一定の「定圧変化」であることがわかります。定圧変化では、シャルルの法則「\(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\)」が成り立ちます。状態Aの温度 \(T_A\) は、過程C→Aが温度 \(T_0\) の等温変化であることから、\(T_A=T_0\) となります。これらを用いて \(T_B\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- A→Bは定圧変化であり、シャルルの法則が適用できる。
- C→Aは等温変化なので、\(T_C = T_A = T_0\)。
- p-V図から各状態の体積を読み取る: \(V_A=V_0\), \(V_B=3V_0\)。
具体的な解説と立式
過程A→Bは定圧変化なので、シャルルの法則が成り立ちます。
$$ \frac{V_A}{T_A} = \frac{V_B}{T_B} $$
この式を \(T_B\) について解くと、
$$ T_B = T_A \times \frac{V_B}{V_A} $$
ここに、\(T_A=T_0\), \(V_A=V_0\), \(V_B=3V_0\) を代入します。
使用した物理公式
- シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\) (定圧変化)
$$
\begin{aligned}
T_B &= T_0 \times \frac{3V_0}{V_0} \\[2.0ex]
&= 3T_0
\end{aligned}
$$
AからBへの変化は、圧力を一定に保ったまま、体積を \(V_0\) から \(3V_0\) へと3倍にする操作です。シャルルの法則によれば、このとき気体の絶対温度も同じく3倍になります。状態Aの温度は \(T_0\) なので、状態Bの温度は \(3T_0\) となります。
状態Bの温度 \(T_B\) は \(3T_0\) です。定圧下で気体を膨張させているので、温度が上昇するのは物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
シャルルの法則の代わりに、より基本的な理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) を状態Aと状態Bでそれぞれ立式し、2つの式を比較して \(T_B\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 状態方程式 \(pV=nRT\) は、いかなる状態でも成り立つ。
- 2つの状態の式を立て、共通の物理量を消去して未知数を求める。
具体的な解説と立式
気体の物質量は \(n=1\) [mol] です。
状態A (\(p_A=3p_0, V_A=V_0, T_A=T_0\)) での状態方程式は、
$$ 3p_0 V_0 = 1 \cdot R T_0 \quad \cdots ① $$
状態B (\(p_B=3p_0, V_B=3V_0, T_B=?\)) での状態方程式は、
$$
\begin{aligned}
(3p_0)(3V_0) &= 1 \cdot R T_B \\[2.0ex]
9p_0 V_0 &= R T_B \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
式①と②を連立して \(T_B\) を求めます。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
式①より \(p_0V_0 = \displaystyle\frac{RT_0}{3}\) です。これを式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
9 \left( \frac{RT_0}{3} \right) &= RT_B \\[2.0ex]
3RT_0 &= RT_B \\[2.0ex]
T_B &= 3T_0
\end{aligned}
$$
状態Aと状態Bについて、それぞれ「圧力×体積=物質量×気体定数×温度」という基本式を立てます。状態Aの式から「\(p_0V_0\)」が「\(RT_0/3\)」に相当することがわかるので、これを状態Bの式に代入することで、\(T_B\) が \(T_0\) の3倍であることが計算できます。
主たる解法と完全に同じ結果 \(T_B=3T_0\) が得られました。
問(2)
思考の道筋とポイント
過程A→Bにおける仕事 \(W_{AB}\) と熱量 \(Q_{AB}\) を求めます。
仕事 \(W_{AB}\) は、定圧変化なので \(W’=p\Delta V\) で計算します。
熱量 \(Q_{AB}\) は、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) を用いて求めます。そのためには、まず内部エネルギーの変化 \(\Delta U_{AB}\) を \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) で計算する必要があります。
この設問における重要なポイント
- 定圧変化の仕事は \(W’ = p\Delta V\)。
- 単原子分子の内部エネルギー変化は \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)。
- 熱力学第一法則は \(Q = \Delta U + W’\)。
具体的な解説と立式
仕事 \(W_{AB}\) の計算
過程A→Bは圧力 \(p=3p_0\) の定圧変化です。体積は \(V_0\) から \(3V_0\) に変化します。
$$
\begin{aligned}
W_{AB} &= p \Delta V \\[2.0ex]
&= 3p_0 (3V_0 – V_0)
\end{aligned}
$$
この式に出てくる \(p_0V_0\) を消去するため、問(1)の別解で用いた状態Aの状態方程式 \(3p_0V_0 = RT_0\) を利用します。
熱量 \(Q_{AB}\) の計算
まず内部エネルギーの変化 \(\Delta U_{AB}\) を計算します。温度は \(T_A=T_0\) から \(T_B=3T_0\) に変化します。
$$ \Delta U_{AB} = \frac{3}{2}nR(T_B – T_A) $$
次に、熱力学第一法則を用いて \(Q_{AB}\) を求めます。
$$ Q_{AB} = \Delta U_{AB} + W_{AB} $$
使用した物理公式
- 仕事の定義(定圧変化): \(W’ = p\Delta V\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー変化: \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
仕事 \(W_{AB}\) の計算
$$
\begin{aligned}
W_{AB} &= 3p_0 (3V_0 – V_0) \\[2.0ex]
&= 3p_0 (2V_0) \\[2.0ex]
&= 6p_0V_0
\end{aligned}
$$
ここで \(3p_0V_0 = RT_0\) の関係を用いると、
$$
\begin{aligned}
W_{AB} &= 2 \times (3p_0V_0) \\[2.0ex]
&= 2RT_0
\end{aligned}
$$
熱量 \(Q_{AB}\) の計算
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{AB} &= \frac{3}{2} \cdot 1 \cdot R (3T_0 – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R(2T_0) \\[2.0ex]
&= 3RT_0
\end{aligned}
$$
したがって、熱量は
$$
\begin{aligned}
Q_{AB} &= \Delta U_{AB} + W_{AB} \\[2.0ex]
&= 3RT_0 + 2RT_0 \\[2.0ex]
&= 5RT_0
\end{aligned}
$$
仕事は「圧力 × 体積の変化」で計算します。圧力は \(3p_0\)、体積の変化は \(2V_0\) なので、掛け合わせると \(6p_0V_0\) となります。これを問題で指定された文字(\(R, T_0\))で表すために、状態Aでの状態方程式を使って変換すると \(2RT_0\) となります。
熱量は「内部エネルギーの増加」と「した仕事」の足し算です。内部エネルギーの増加は温度の上昇分から計算でき、\(3RT_0\) となります。これに先ほど計算した仕事 \(2RT_0\) を足して、熱量は \(5RT_0\) と求まります。
仕事 \(W_{AB}\) は \(2RT_0\)、吸収した熱量 \(Q_{AB}\) は \(5RT_0\) です。気体は膨張しているので仕事は正、加熱されて温度が上がっているので吸収熱量も正となり、物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
過程A→Bは定圧変化なので、吸収した熱量 \(Q_{AB}\) は、定圧モル比熱 \(C_p\) を用いた公式 \(Q=nC_p\Delta T\) で直接計算することができます。単原子分子理想気体の場合、\(C_p = \displaystyle\frac{5}{2}R\) です。
この設問における重要なポイント
- 定圧変化の熱量は \(Q=nC_p\Delta T\) で計算できる。
- 単原子分子理想気体の定圧モル比熱は \(C_p = \displaystyle\frac{5}{2}R\)。
具体的な解説と立式
$$ Q_{AB} = nC_p(T_B – T_A) $$
ここに \(n=1\), \(C_p=\displaystyle\frac{5}{2}R\), \(T_A=T_0\), \(T_B=3T_0\) を代入します。
使用した物理公式
- 定圧変化における熱量: \(Q=nC_p\Delta T\)
$$
\begin{aligned}
Q_{AB} &= 1 \cdot \left( \frac{5}{2}R \right) \cdot (3T_0 – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}R \cdot (2T_0) \\[2.0ex]
&= 5RT_0
\end{aligned}
$$
主たる解法と完全に同じ結果 \(Q_{AB} = 5RT_0\) が得られました。定圧変化であることがわかっていれば、こちらの計算の方がより迅速です。
問(3)
思考の道筋とポイント
過程B→Cにおける仕事 \(W_{BC}\) と熱量 \(Q_{BC}\) を求めます。
p-V図から、過程B→Cは体積が \(3V_0\) で一定の「定積変化」です。
仕事 \(W_{BC}\) は、体積が変化しないので0となります。
熱量 \(Q_{BC}\) は、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) より、\(Q_{BC} = \Delta U_{BC}\) となります。内部エネルギーの変化 \(\Delta U_{BC}\) は \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\) で計算します。
この設問における重要なポイント
- 定積変化では体積変化がゼロなので、仕事もゼロ (\(W’=0\))。
- 定積変化では、吸収した熱量はすべて内部エネルギーの変化に使われる (\(Q=\Delta U\))。
具体的な解説と立式
仕事 \(W_{BC}\) の計算
過程B→Cは定積変化なので、\(\Delta V = 0\)。したがって、
$$ W_{BC} = 0 $$
熱量 \(Q_{BC}\) の計算
熱力学第一法則より \(Q_{BC} = \Delta U_{BC} + W_{BC} = \Delta U_{BC}\)。
\(\Delta U_{BC}\) を計算します。温度は \(T_B=3T_0\) から \(T_C=T_0\) に変化します。
$$ \Delta U_{BC} = \frac{3}{2}nR(T_C – T_B) $$
使用した物理公式
- 仕事の定義(定積変化): \(W’ = 0\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー変化: \(\Delta U = \displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{BC} &= \frac{3}{2} \cdot 1 \cdot R (T_0 – 3T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R(-2T_0) \\[2.0ex]
&= -3RT_0
\end{aligned}
$$
したがって、熱量は
$$ Q_{BC} = \Delta U_{BC} = -3RT_0 $$
BからCへの変化は、体積を一定に保ったまま圧力を下げる操作です。体積が変わらないので、気体はピストンを押すなどの仕事を全くしません。したがって仕事はゼロです。
このとき、加えた(あるいは奪われた)熱は、すべて内部エネルギーの変化になります。温度が \(3T_0\) から \(T_0\) へ下がっているので、内部エネルギーは減少し、その分だけ熱を外部に放出したことになります。計算すると、放出した熱量は \(3RT_0\)(吸収した熱量としては \(-3RT_0\))となります。
仕事 \(W_{BC}\) は \(0\)、吸収した熱量 \(Q_{BC}\) は \(-3RT_0\) です。熱量が負なので、実際には \(3RT_0\) の熱を放出していることを意味します。定積で冷却されているので、これは物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
過程B→Cは定積変化なので、吸収した熱量 \(Q_{BC}\) は、定積モル比熱 \(C_v\) を用いた公式 \(Q=nC_v\Delta T\) で直接計算することができます。単原子分子理想気体の場合、\(C_v = \displaystyle\frac{3}{2}R\) です。
この設問における重要なポイント
- 定積変化の熱量は \(Q=nC_v\Delta T\) で計算できる。
- 単原子分子理想気体の定積モル比熱は \(C_v = \displaystyle\frac{3}{2}R\)。
具体的な解説と立式
$$ Q_{BC} = nC_v(T_C – T_B) $$
ここに \(n=1\), \(C_v=\displaystyle\frac{3}{2}R\), \(T_C=T_0\), \(T_B=3T_0\) を代入します。
使用した物理公式
- 定積変化における熱量: \(Q=nC_v\Delta T\)
$$
\begin{aligned}
Q_{BC} &= 1 \cdot \left( \frac{3}{2}R \right) \cdot (T_0 – 3T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R \cdot (-2T_0) \\[2.0ex]
&= -3RT_0
\end{aligned}
$$
主たる解法と完全に同じ結果 \(Q_{BC} = -3RT_0\) が得られました。定積変化であることがわかっていれば、こちらの計算の方がより迅速です。
問(4)
思考の道筋とポイント
過程C→Aにおける仕事 \(W_{CA}\) を求めます。この過程は温度 \(T_0\) で一定の「等温変化」です。等温変化では、温度が変化しないため、内部エネルギーの変化 \(\Delta U_{CA}\) はゼロです。
また、問題文に「外部へ熱量 \(Q_0\) を放出した」とあります。これは、気体が吸収した熱量で考えると \(Q_{CA} = -Q_0\) となります。
これらの情報を熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) に代入することで、\(W_{CA}\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 等温変化では内部エネルギーは変化しない (\(\Delta U = 0\))。
- 「放出」した熱量は、吸収した熱量 \(Q\) で考えると負の値になる。
具体的な解説と立式
過程C→Aは等温変化なので、
$$ \Delta U_{CA} = 0 $$
気体が吸収した熱量 \(Q_{CA}\) は、放出した熱量 \(Q_0\) の符号を逆にしたものなので、
$$ Q_{CA} = -Q_0 $$
熱力学第一法則 \(Q_{CA} = \Delta U_{CA} + W_{CA}\) にこれらの値を代入します。
使用した物理公式
- 内部エネルギー変化(等温変化): \(\Delta U = 0\)
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
$$
\begin{aligned}
Q_{CA} &= \Delta U_{CA} + W_{CA} \\[2.0ex]
-Q_0 &= 0 + W_{CA} \\[2.0ex]
W_{CA} &= -Q_0
\end{aligned}
$$
CからAへの変化は、温度を一定に保ったまま気体を圧縮する操作です。温度が変わらないので、気体の元気(内部エネルギー)は変化しません。このとき、熱力学のルールにより「吸収した熱」と「した仕事」は等しくなります。問題文から、この過程で \(Q_0\) の熱を捨てている(吸収した熱は \(-Q_0\))ことがわかっているので、した仕事も同じく \(-Q_0\) となります。仕事がマイナスなのは、気体が外部から仕事をされた(圧縮された)ことを意味します。
仕事 \(W_{CA}\) は \(-Q_0\) です。過程C→Aでは体積が \(3V_0\) から \(V_0\) へと減少(圧縮)しているので、気体がした仕事が負になるのは物理的に妥当です。
問
思考の道筋とポイント
1サイクルの熱効率 \(e\) を求める問題です。熱効率は、エンジンが1サイクルで外部にした正味の仕事 \(W’_{\text{net}}\) を、そのサイクルの間に吸収した熱量の総和 \(Q_{\text{in}}\) で割ることで定義されます。
まずは \(W’_{\text{net}}\) と \(Q_{\text{in}}\) を、(2)から(4)で求めた値を使って計算します。
この設問における重要なポイント
- 熱効率の定義: \(e = \displaystyle\frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}}\)
- 正味の仕事 \(W’_{\text{net}}\) は、サイクル全体の仕事の代数和 (\(W_{AB}+W_{BC}+W_{CA}\))。
- 吸収熱量 \(Q_{\text{in}}\) は、サイクル中で \(Q\) が正の値となる過程の熱量の和。負の値(放出熱量)は含めない。
具体的な解説と立式
正味の仕事 \(W’_{\text{net}}\) の計算
$$ W’_{\text{net}} = W_{AB} + W_{BC} + W_{CA} $$
吸収熱量 \(Q_{\text{in}}\) の計算
各過程の熱量は \(Q_{AB}=5RT_0\), \(Q_{BC}=-3RT_0\), \(Q_{CA}=-Q_0\) です。このうち、正の値を持つのは \(Q_{AB}\) のみです。
$$ Q_{\text{in}} = Q_{AB} $$
熱効率 \(e\) の計算
$$ e = \frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}} $$
最後に、問題で与えられた条件 \(Q_0 = 1.1RT_0\) を代入して数値を求めます。
使用した物理公式
- 熱効率の定義: \(e = \displaystyle\frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}}\)
$$
\begin{aligned}
W’_{\text{net}} &= W_{AB} + W_{BC} + W_{CA} \\[2.0ex]
&= 2RT_0 + 0 + (-Q_0) \\[2.0ex]
&= 2RT_0 – Q_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{in}} &= Q_{AB} \\[2.0ex]
&= 5RT_0
\end{aligned}
$$
熱効率の式に代入します。
$$ e = \frac{2RT_0 – Q_0}{5RT_0} $$
ここに \(Q_0 = 1.1RT_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{2RT_0 – 1.1RT_0}{5RT_0} \\[2.0ex]
&= \frac{0.9RT_0}{5RT_0} \\[2.0ex]
&= \frac{0.9}{5} \\[2.0ex]
&= 0.18
\end{aligned}
$$
熱効率とは「このエンジンが、投入された燃料(熱)に対して、どれくらいの割合を有効な仕事に変換できたか」を示す指標です。
まず「有効な仕事」を計算します。これは、3つの過程で気体がした仕事をすべて足し合わせたものです。
次に「投入された熱」を計算します。これは、3つの過程のうち、気体が熱を吸収した(Qがプラスの)過程の熱量だけを合計します。
最後に「有効な仕事 ÷ 投入された熱」を計算すれば、熱効率が求まります。
熱効率 \(e\) は \(0.18\) となります。熱効率は必ず0から1の間の値をとるため、この結果は妥当です。有効数字は与えられた \(1.1\) に合わせて2桁とします。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 熱力学第一法則を軸としたサイクル分析:
- 核心: この問題は、熱力学第一法則 \(\Delta U = Q – W’\) を羅針盤として、熱力学サイクルという航海を乗り切る能力を試しています。各過程(定圧、定積、等温)の性質を理解し、それらを第一法則の各項(\(\Delta U, Q, W’\))に正しく翻訳していくことが全ての基本です。
- 理解のポイント:
- \(\Delta U\) (内部エネルギー変化): 温度変化 \(\Delta T\) だけで決まる。過程によらず \(\Delta U = nC_v\Delta T\)。
- \(W’\) (仕事): 体積変化 \(\Delta V\) で決まる。過程ごとに計算方法が異なる(定圧: \(p\Delta V\), 定積: 0)。
- \(Q\) (熱量): \(\Delta U\) と \(W’\) の結果を受けて、第一法則から算出される。
- 熱効率の物理的意味:
- 核心: 熱効率 \(e = \displaystyle\frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}}\) の定義を、単なる公式としてではなく、その物理的意味と共に理解することが重要です。
- 理解のポイント:
- \(Q_{\text{in}}\) (投入コスト): エンジンを動かすために外部から吸収した熱量の総和です。燃料を燃やして得たエネルギーに相当します。放出した熱量(排熱)はコストに含めません。
- \(W’_{\text{net}}\) (得られた成果): 1サイクル全体で、気体が外部に対して正味でした仕事です。膨張時の仕事から圧縮時の仕事を差し引いた、実質的な働きに相当します。
- 効率 \(e\) (コストパフォーマンス): 投入したエネルギーのうち、どれだけの割合を有益な仕事に変換できたか、というエンジンの性能指標です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- \(p-T\)図や\(V-T\)図での出題: グラフの軸が変わっても、各状態点について状態方程式を立て、各過程が何の変化かを特定し、\(p-V\)図に描き直すか、あるいは各グラフから直接 \(\Delta U, W’, Q\) を読み取る練習が有効です。
- 二原子分子のサイクル: 気体が二原子分子の場合、内部エネルギーやモル比熱の係数が変わります (\(\Delta U = \frac{5}{2}nR\Delta T\), \(C_v=\frac{5}{2}R\), \(C_p=\frac{7}{2}R\))。基本的な解法の流れは全く同じです。
- カルノーサイクル: 断熱変化と等温変化のみで構成される、理論上最も熱効率が高いサイクル。本問のサイクルと比較して、なぜ効率が異なるのか(熱の出入りが等温過程だけでないため)を考察する問題に応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 状態量の基準を設定する: まず、最も情報が少ない状態(この問題では状態A)の物理量を \(p_A, V_A, T_A\) のように文字で置き、他の状態(B, C)の物理量をこれらの基準量で表す、という方針を立てます。
- 状態方程式で状態点を結びつける: 各状態点(A, B, C)について状態方程式を立て、それらの関係式を整理します。これにより、未知の温度などを既知の量で表現できます。
- 熱効率の問いを見たら: 問題文に「熱効率」という言葉を見たら、機械的に「目標は \(W’_{\text{net}}\) と \(Q_{\text{in}}\) の2つを計算すること」と頭を切り替えます。そのために、各過程の \(W’\) と \(Q\) を計算する必要がある、と逆算して作業計画を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 熱効率の分母 \(Q_{\text{in}}\) の誤解:
- 誤解: 吸収した熱量 \(Q_{AB}\) と放出した熱量 \(Q_{BC}, Q_{CA}\) の総和 (\(Q_{AB}+Q_{BC}+Q_{CA}\)) を分母にしてしまう。
- 対策: 熱効率は「投入したエネルギーに対する仕事の割合」です。エンジンを動かすために「投入」したのは、外部から熱を吸収した過程(\(Q>0\))の熱量のみです。放出した熱量(\(Q<0\))は、仕事をせずに捨てられた「排熱」であり、コストには含めません。「\(Q_{\text{in}}\) は、\(Q\)がプラスの項だけを足し合わせる」と機械的に覚えましょう。
- シャルルの法則の適用範囲:
- 誤解: A→Bが定圧変化であることに気づかず、ボイルの法則や状態方程式だけで解こうとして混乱する。あるいは、定圧変化でない過程にシャルルの法則を適用してしまう。
- 対策: ボイル・シャルルの法則は、状態方程式の特別な場合に過ぎません。迷ったら、いつでもどこでも使える万能な「状態方程式 \(pV=nRT\)」に立ち返るのが最も安全で確実です。
- 仕事の正負と内部エネルギーの関係:
- 誤解: C→Aの等温圧縮で、外部から仕事をされているのに(\(W_{CA}<0\))、温度が一定であることに違和感を覚え、計算をためらう。
- 対策: 等温変化 \(\Delta U=0\) は、熱力学第一法則で \(Q=W’\) となることを意味します。C→Aでは、気体は圧縮されて仕事をされる(\(W_{CA}<0\))ので、そのエネルギー分だけ内部エネルギーが増加しようとします。しかし、温度を一定に保つためには、その増加分と全く同じ量の熱を外部に放出しなければなりません(\(Q_{CA}<0\))。このエネルギーの出入りが完璧につりあっているのが等温変化である、と理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- シャルルの法則 \(\frac{V}{T}=\text{一定}\) (問1):
- 選定理由: 過程A→Bが「定圧変化」であることが分かっているため、状態方程式よりも直接的に温度と体積の関係を結びつけられる、特化型の便利な公式として選択されました。
- 適用根拠: 状態方程式 \(pV=nRT\) において、\(p, n, R\) が定数であれば、\(V = (\frac{nR}{p})T\) となり、\(V\) は \(T\) に比例します。これがシャルルの法則の根拠であり、定圧変化という条件が適用を正当化します。
- 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\):
- 選定理由: 各過程の熱量 \(Q\) を求めるために使用します。\(Q\) は過程に依存するため直接計算が難しい場合が多いですが、状態量である \(\Delta U\) と、比較的計算しやすい \(W’\) から間接的に求めることができる、非常に強力なツールです。
- 適用根拠: エネルギー保存則という、物理学全体を貫く大原則に基づいているため、いかなる熱力学過程にも無条件で適用できます。
- 熱効率の定義式 \(e = \frac{W’_{\text{net}}}{Q_{\text{in}}}\):
- 選定理由: 熱効率を計算するための、まさにその定義式です。
- 適用根拠: これは物理法則というより、熱機関の性能を評価するための「定義」です。「得られた成果(正味の仕事)」を「費やしたコスト(吸収熱量)」で割るという、工学的な観点からこの形が定義されています。この定義の背景を理解することが、\(Q_{\text{in}}\) の意味を間違えないために重要です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 表を作成して情報を一元管理する: この問題のように複数の過程と物理量を扱う場合、解説にあるような表を自分で作成し、計算結果を一つずつ書き込んでいくのが最も効果的です。これにより、どの値が求まっていて、次に何を計算すべきかが一目瞭然になります。
- 基準量で式を統一する: 計算の途中で \(p_0V_0\) のような項が出てきたら、すぐに状態Aの状態方程式 \(3p_0V_0=RT_0\) を使って \(RT_0\) を含む表現に書き換えるなど、使う文字を問題文で指定されたもの(\(T_0, Q_0, R\))に統一していくと、最終的な計算が楽になります。
- サイクルの検算テクニック: サイクル一周では、必ず \(\Delta U_{\text{一周}} = 0\) となります。したがって、各過程の \(\Delta U\) の和がゼロになるかを確認しましょう。(\(\Delta U_{AB} + \Delta U_{BC} + \Delta U_{CA} = 3RT_0 – 3RT_0 + 0 = 0\))。さらに、第一法則から \(Q_{\text{一周}} = W’_{\text{一周}}\) も成り立ちます。(\(Q_{\text{一周}} = 5RT_0 – 3RT_0 – Q_0 = 2RT_0 – Q_0\)、\(W’_{\text{一周}} = 2RT_0 + 0 – Q_0 = 2RT_0 – Q_0\))。これらの検算を行うことで、計算ミスを劇的に減らすことができます。
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基本問題
246 平均運動エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「気体分子の平均運動エネルギーと絶対温度の関係」です。目に見えないミクロな分子の運動エネルギーが、我々が測定できるマクロな物理量である「絶対温度」によって一意に決まる、という気体分子運動論の根幹をなす法則の理解が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 絶対温度の物理的意味: 絶対温度とは、気体分子の熱運動の激しさを示す尺度であり、分子の平均運動エネルギーに直接比例します。
- 気体分子の平均運動エネルギー: 理想気体の分子1個あたりの平均の並進運動エネルギーは、気体の種類や分子の質量によらず、絶対温度 \(T\) だけで決まります。
- ボルツマン定数: 温度という物理量を、エネルギーという物理量に変換するための比例定数であり、ミクロな世界とマクロな世界を結びつける重要な役割を果たします。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 気体分子1個の平均運動エネルギーと絶対温度の関係式 \(\bar{E} = \displaystyle\frac{3}{2}k_B T\) を正しく選択します。
- 問題文で与えられた絶対温度 \(T\) とボルツマン定数 \(k_B\) の値を代入し、計算を実行します。