「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第12章】基礎CHECK

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基礎CHECK

1 気体の圧力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ピストンにはたらく力のつり合いを利用した気体の圧力計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつり合いの法則: 物体が静止しているとき、物体にはたらく力の合力はゼロである。
  2. 圧力と力の関係: 圧力 \(p\) の気体が面積 \(S\) の面に及ぼす力は \(F=pS\) である。
  3. 重力: 質量 \(M\) の物体にはたらく重力の大きさは \(Mg\) である。
  4. 大気圧: 大気が及ぼす圧力。大気も気体と同様に、面に力を及ぼす。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)の各場合について、ピストンにはたらく力をすべて図示する。
  2. 鉛直方向または水平方向の力のつり合いの式を立てる。
  3. 式を整理して、内部の気体の圧力 \(p\) を求める。

問(1)

思考の道筋とポイント
ピストンが水平に置かれている場合を考えます。このとき、ピストンにはたらく重力は鉛直下向きであり、水平方向の運動には影響しません。したがって、水平方向の力、すなわち「内部の気体が押す力」と「大気が押す力」の2つだけに着目し、これらの力がつり合っているという式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • ピストンが静止しているため、水平方向の力がつり合っています。
  • 圧力 \(p\) と面積 \(S\) から力 \(F\) を計算する関係式 \(F=pS\) を使います。
  • 内部の気体が押す力と大気が押す力は、互いに逆向きにはたらきます。

具体的な解説と立式
ピストンにはたらく水平方向の力は、以下の2つです。

  1. 内部の気体がピストンを押す力: 大きさ \(pS\)。向きは右向き。
  2. 大気がピストンを押す力: 大きさ \(p_0S\)。向きは左向き。

ピストンは静止しているので、これらの力がつり合っています。水平方向右向きを正とすると、力のつり合いの式は以下のようになります。
$$ pS – p_0S = 0 \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: 物体にはたらく力のベクトル和はゼロ。
  • 圧力と力の関係: \(F = pS\)
計算過程

式①を \(p\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
pS – p_0S &= 0 \\[2.0ex]pS &= p_0S \\[2.0ex]p &= p_0
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

ピストンを一枚の板と考えます。この板が動かないのは、右から押す力と左から押す力が同じ大きさだからです。この問題では、右から内部の気体が、左から外の大気が押しています。両者の力が等しいので、内部の気体の圧力 \(p\) は大気圧 \(p_0\) と同じになります。

解答 (1) \(p_0\) [Pa]

問(2)

思考の道筋とポイント
次に、円筒を鉛直に立て、ピストンが上になるように置いた場合を考えます。このとき、ピストンにはたらく力はすべて鉛直方向です。問(1)と異なり、ピストン自身の「重力」も考慮に入れる必要があります。ピストンを支えているのは内部の気体なので、その圧力は重力と大気圧の両方に抗うだけの大きさを持つはずです。

この設問における重要なポイント

  • ピストンにはたらく力は、(a)内部気体が押す力(上向き)、(b)大気が押す力(下向き)、(c)ピストンの重力(下向き)の3つです。
  • これら3つの力がつり合っていることから立式します。
  • 力の向きを正しく設定することが重要です。上向きを正とすると、下向きの力は負として式に現れます。

具体的な解説と立式
ピストンにはたらく鉛直方向の力は、以下の3つです。

  1. 内部の気体がピストンを押す力: 大きさ \(pS\)。向きは上向き。
  2. 大気がピストンを押す力: 大きさ \(p_0S\)。向きは下向き。
  3. ピストンの重力: 大きさ \(Mg\)。向きは鉛直下向き。

ピストンは静止しているので、これらの力がつり合っています。鉛直上向きを正とすると、力のつり合いの式は以下のようになります。
$$ pS – p_0S – Mg = 0 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: 物体にはたらく力のベクトル和はゼロ。
  • 圧力と力の関係: \(F = pS\)
  • 重力: \(F_g = Mg\)
計算過程

式②を \(p\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
pS – p_0S – Mg &= 0 \\[2.0ex]pS &= p_0S + Mg \\[2.0ex]p &= p_0 + \displaystyle\frac{Mg}{S}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この状態は、下から気体がピストンを押し上げている状態です。ピストンの上からは大気が押しているだけでなく、ピストン自身の重さもかかっています。したがって、内部の気体は「大気圧」と「ピストンの重さ」という2つの下向きの力に打ち勝ってピストンを支えなければなりません。そのため、気体の圧力 \(p\) は、大気圧 \(p_0\) にピストンの重さ分の圧力(\(Mg/S\))を加えたものになります。

解答 (2) \(p_0 + \displaystyle\frac{Mg}{S}\) [Pa]

問(3)

思考の道筋とポイント
最後に、円筒を逆さまにして、ピストンが下になるように置いた場合を考えます。この場合も、ピストンにはたらく力はすべて鉛直方向です。問(2)との違いは、内部気体と大気がピストンを押す力の向きです。今回は大気が下からピストンを支え、内部気体とピストンの重さが下向きにはたらきます。

この設問における重要なポイント

  • ピストンにはたらく力は、(a)大気が押す力(上向き)、(b)内部気体が押す力(下向き)、(c)ピストンの重力(下向き)の3つです。
  • 問(2)と同様に、3つの力のつり合いを考えますが、力の向きが変化している点に注意が必要です。
  • 大気圧がピストンを支える力の一部を担っている、と解釈することもできます。

具体的な解説と立式
ピストンにはたらく鉛直方向の力は、以下の3つです。

  1. 大気がピストンを押す力: 大きさ \(p_0S\)。向きは上向き。
  2. 内部の気体がピストンを押す力: 大きさ \(pS\)。向きは下向き。
  3. ピストンの重力: 大きさ \(Mg\)。向きは鉛直下向き。

ピストンは静止しているので、これらの力がつり合っています。鉛直上向きを正とすると、力のつり合いの式は以下のようになります。
$$ p_0S – pS – Mg = 0 \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: 物体にはたらく力のベクトル和はゼロ。
  • 圧力と力の関係: \(F = pS\)
  • 重力: \(F_g = Mg\)
計算過程

式③を \(p\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_0S – pS – Mg &= 0 \\[2.0ex]p_0S – Mg &= pS \\[2.0ex]pS &= p_0S – Mg \\[2.0ex]p &= p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この状態では、ピストンは重力によって下に落ちようとしますが、下から大気が押し上げて支えています。しかし、大気の力だけでは支えきれず、上にある内部の気体もピストンを吸い付けるように下向きに力を加えて、ようやくつり合っています(実際には吸い付けているのではなく、圧力が低いだけです)。見方を変えると、上向きの力(大気圧)と下向きの力(気体の圧力+ピストンの重さ)がつり合っています。したがって、気体の圧力 \(p\) は、大気圧 \(p_0\) からピストンの重さ分の圧力(\(Mg/S\))を引いたものになります。

解答 (3) \(p_0 – \displaystyle\frac{Mg}{S}\) [Pa]

2 気体の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「理想気体の基本的な法則であるボイルの法則とシャルルの法則の理解」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ボイルの法則(等温変化): 温度が一定のとき、圧力と体積は反比例する。
  2. シャルルの法則(定圧変化): 圧力が一定のとき、体積は絶対温度に比例する。
  3. 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) との関係
  4. 「比例」と「反比例」の数学的な意味

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文の前半(温度一定)がどの法則に対応するかを判断する。
  2. その法則における圧力と体積の関係(比例 or 反比例)を答える。
  3. 問題文の後半(圧力一定)がどの法則に対応するかを判断する。
  4. その法則における体積と絶対温度の関係(比例 or 反比例)を答える。

空欄(ア), (イ)について

思考の道筋とポイント
問題文の前半「温度が一定のとき、一定質量の気体の体積は圧力に[ア]する。これを[イ]の法則という。」に着目します。これは、気体の状態変化のうち、温度を一定に保つ「等温変化」に関する法則を問うています。どの科学者が発見した法則で、その内容は圧力と体積がどのような関係になるのかを正確に思い出すことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • ボイルの法則: 一定質量の気体において、温度が一定ならば、圧力 \(p\) と体積 \(V\) の積は一定である。(\(pV = \text{一定}\))
  • この数式 \(pV = k\) (\(k\)は定数)は、\(V = k/p\) と変形でき、数学的には「反比例」の関係を示します。
  • 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) において、物質量 \(n\) と温度 \(T\) が一定だとすると、右辺の \(nRT\) が定数となるため、\(pV=\text{一定}\) が導かれます。

具体的な解説と立式
「温度が一定」の条件下での圧力 \(p\) と体積 \(V\) の関係を表すのはボイルの法則です。
ボイルの法則は、数式で次のように表されます。
$$ pV = \text{一定} $$
この式を体積 \(V\) について変形すると、
$$ V = \frac{\text{一定}}{p} $$
となります。この式は、体積 \(V\) が圧力 \(p\) に反比例することを意味します。
したがって、[ア]には「反比例」、[イ]には「ボイル」が入ります。

使用した物理公式

  • ボイルの法則: \(pV = \text{一定}\) (温度 \(T\) が一定のとき)
計算過程

この問題には計算過程はありません。法則の定義を数式で表現し、その数式が示す関係(反比例)を読み取ることが解答プロセスとなります。

計算方法の平易な説明

注射器の先を指でふさいでピストンを押す場面を想像してみましょう。強く押す(圧力を上げる)ほど、中の空気は縮んで小さく(体積が減り)なります。逆に引くと(圧力を下げる)、空気は膨らみます(体積が増え)ます。このように、圧力と体積は一方が増えるともう一方が減るという逆の動きをするので、「反比例」の関係にあると分かります。この法則を発見したのが「ボイル」です。

解答 (ア) 反比例 (イ) ボイル

空欄(ウ), (エ)について

思考の道筋とポイント
問題文の後半「圧力が一定のとき、一定質量の気体の体積は絶対温度に[ウ]する。これを[エ]の法則という。」に着目します。これは、圧力を一定に保つ「定圧変化」に関する法則です。体積と温度の間にどのような関係が成り立つか、そしてその法則名を答えます。特に、ここで使われる温度が「絶対温度」であることが重要なヒントです。

この設問における重要なポイント

  • シャルルの法則: 一定質量の気体において、圧力が一定ならば、体積 \(V\) は絶対温度 \(T\) に比例する。(\(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\))
  • この数式 \(\displaystyle\frac{V}{T} = k\) (\(k\)は定数)は、\(V = kT\) と変形でき、数学的には「比例」の関係を示します。
  • 絶対温度(K)を使うことが必須です。セルシウス温度(℃)では比例関係は成り立ちません。
  • 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) において、物質量 \(n\) と圧力 \(p\) が一定だとすると、\(V = \displaystyle\frac{nR}{p}T\) となり、係数部分が定数となるため \(V \propto T\) が導かれます。

具体的な解説と立式
「圧力が一定」の条件下での体積 \(V\) と絶対温度 \(T\) の関係を表すのはシャルルの法則です。
シャルルの法則は、数式で次のように表されます。
$$ \frac{V}{T} = \text{一定} $$
この式を体積 \(V\) について変形すると、
$$ V = (\text{一定}) \times T $$
となります。この式は、体積 \(V\) が絶対温度 \(T\) に比例することを意味します。
したがって、[ウ]には「比例」、[エ]には「シャルル」が入ります。

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\) (圧力 \(p\) が一定のとき)
計算過程

この問題には計算過程はありません。法則の定義を数式で表現し、その数式が示す関係(比例)を読み取ることが解答プロセスとなります。

計算方法の平易な説明

パンパンに膨らんだポテトチップスの袋を想像してみましょう。夏場の暑い車内に置くとさらにパンパンに膨らみ、冬の寒い屋外に置くと少ししぼんでしまいます。これは、温度が上がると気体の体積も増え、温度が下がると体積も減ることを示しています。このように、温度と体積が同じように増減するので、「比例」の関係にあると分かります。この法則を発見したのが「シャルル」です。

解答 (ウ) 比例 (エ) シャルル

3 ボイルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ボイルの法則を用いた具体的な計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ボイルの法則: 温度と物質量が一定のとき、気体の圧力と体積は反比例する。
  2. ボイルの法則の数式表現: \(pV = \text{一定}\) または \(p_1V_1 = p_2V_2\)。
  3. 変化前と変化後の状態を文字で置き、関係式を立てるアプローチ。
  4. 「〜倍になる」という問いの答え方。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 変化前の圧力と体積を \(p_1\), \(V_1\) とおく。
  2. 問題文の条件に従って、変化後の体積 \(V_2\) を \(V_1\) を用いて表す。
  3. ボイルの法則の式 \(p_1V_1 = p_2V_2\) に代入する。
  4. 変化後の圧力 \(p_2\) が変化前の圧力 \(p_1\) の何倍になるかを計算する。

思考の道筋とポイント
問題文にある「温度を一定に保って」という記述が、この問題を解くための最大のヒントです。この条件は、気体の法則の中でも特に「ボイルの法則」が適用できることを示しています。ボイルの法則は、圧力 \(p\) と体積 \(V\) の積が一定値になる(\(pV = \text{一定}\))という関係です。これは、\(p\) と \(V\) が反比例することを意味します。
したがって、体積が2倍になれば、圧力は反比例して \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になる、と直感的に結論を出すことも可能です。ここでは、その直感を数式で正確に裏付けるプロセスを解説します。

この設問における重要なポイント

  • ボイルの法則は、変化前の状態(圧力 \(p_1\), 体積 \(V_1\))と変化後の状態(圧力 \(p_2\), 体積 \(V_2\))の関係を \(p_1V_1 = p_2V_2\) という形で表すと、計算問題に応用しやすくなります。
  • 変化前の状態を基準(例:\(p_1, V_1\))とし、変化後の状態をその基準を使って(例:\(V_2 = 2V_1\))表現することが、立式を簡単にするコツです。
  • 最終的に求めたいのは「圧力は何倍になるか」なので、変化後の圧力 \(p_2\) を変化前の圧力 \(p_1\) を使って \(p_2 = k \times p_1\) の形に整理し、係数 \(k\) を求めることがゴールとなります。

具体的な解説と立式
変化前の気体の圧力を \(p_1\)、体積を \(V_1\) とします。
変化後の気体の圧力を \(p_2\)、体積を \(V_2\) とします。

問題文の条件より、「温度を一定に保って」いるので、ボイルの法則が成り立ちます。
$$ p_1V_1 = p_2V_2 \quad \cdots ① $$
また、「体積を2倍にする」ので、変化後の体積 \(V_2\) は変化前の体積 \(V_1\) の2倍です。
$$ V_2 = 2V_1 \quad \cdots ② $$
式①と②を用いて、\(p_2\) が \(p_1\) の何倍になるかを求めます。

使用した物理公式

  • ボイルの法則: \(p_1V_1 = p_2V_2\) (温度と物質量が一定のとき)
計算過程

ボイルの法則の式①に、条件式②を代入します。
$$
\begin{aligned}
p_1V_1 &= p_2 V_2 \\[2.0ex]p_1V_1 &= p_2 \times (2V_1)
\end{aligned}
$$
両辺に \(V_1\) があるので、これで割ります(体積は0ではないので割ることができます)。
$$
\begin{aligned}
p_1 &= 2p_2
\end{aligned}
$$
求めたいのは変化後の圧力 \(p_2\) なので、この式を \(p_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_2 &= \frac{1}{2}p_1
\end{aligned}
$$
この結果は、変化後の圧力 \(p_2\) が、変化前の圧力 \(p_1\) の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍であることを示しています。

計算方法の平易な説明

ボイルの法則は、「圧力 × 体積」の値が常に一定になる、というルールです。
例えば、はじめ「圧力 \(6\), 体積 \(2\)」だったとします。このとき、掛け算の結果は \(6 \times 2 = 12\) です。
次に、この気体の体積を2倍にして \(4\) にしたとします。
ボイルの法則によれば、体積を変えても「圧力 × 体積」の値は \(12\) のままでなければなりません。
つまり、「新しい圧力 × \(4 = 12\)」となるはずです。
これを解くと、新しい圧力は \(12 \div 4 = 3\) となります。
元の圧力は \(6\) でしたので、新しい圧力 \(3\) は元の圧力の半分、つまり \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になっています。

別解: 理想気体の状態方程式からのアプローチ

思考の道筋とポイント
ボイルの法則やシャルルの法則は、より普遍的な「理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\)」から導き出すことができます。したがって、この問題も状態方程式を用いて解くことが可能です。変化前と変化後のそれぞれについて状態方程式を立て、2つの式を比較することで答えを導きます。

この設問における重要なポイント

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
  • 方程式の中の変数のうち、何が変化し、何が一定であるかを正確に把握します。
  • この問題では、「一定量の気体」なので物質量 \(n\) は一定。「温度を一定に保って」いるので絶対温度 \(T\) も一定。気体定数 \(R\) はもちろん定数です。
  • したがって、右辺の \(nRT\) は変化の前後で完全に同じ値となります。

具体的な解説と立式
変化前の状態(圧力 \(p_1\), 体積 \(V_1\))における状態方程式は、
$$ p_1V_1 = nRT \quad \cdots ③ $$
変化後の状態(圧力 \(p_2\), 体積 \(V_2\))における状態方程式は、
$$ p_2V_2 = nRT \quad \cdots ④ $$
ここで、問題の条件から \(V_2 = 2V_1\) です。

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
計算過程

式③と④は、右辺がどちらも同じ \(nRT\) です。したがって、左辺どうしも等しくなります。
$$ p_1V_1 = p_2V_2 $$
この式はボイルの法則そのものであり、これ以降の計算は主解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
p_1V_1 &= p_2 \times (2V_1) \\[2.0ex]p_1 &= 2p_2 \\[2.0ex]p_2 &= \frac{1}{2}p_1
\end{aligned}
$$
よって、圧力は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。

計算方法の平易な説明

気体の状態を支配する万能ルールが \(pV=nRT\) です。この問題では、気体の量(\(n\))も温度(\(T\))も変えないので、右辺の \(nRT\) の値は変化しません。ということは、左辺の \(pV\) の値も変化してはいけない、ということになります。これはまさにボイルの法則 (\(pV=\text{一定}\)) と同じ意味です。体積 \(V\) を2倍にしたなら、掛け算の結果を同じにするために、相方の圧力 \(p\) は半分にする必要があります。

解答 \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍

4 シャルルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「シャルルの法則を用いた具体的な計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. シャルルの法則: 圧力と物質量が一定のとき、気体の体積は絶対温度に比例する。
  2. シャルルの法則の数式表現: \(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\) または \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\)。
  3. 変化前と変化後の状態を文字で置き、関係式を立てるアプローチ。
  4. 比例関係の理解。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 変化前の体積と絶対温度を \(V_1\), \(T_1\) とおく。
  2. 問題文の条件に従って、変化後の絶対温度 \(T_2\) を \(T_1\) を用いて表す。
  3. シャルルの法則の式 \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\) に代入する。
  4. 変化後の体積 \(V_2\) が変化前の体積 \(V_1\) の何倍になるかを計算する。

思考の道筋とポイント
問題文の「圧力を一定に保って」という記述が、この問題を解くための鍵です。この条件は、気体の法則の中でも「シャルルの法則」が適用できることを示しています。シャルルの法則は、体積 \(V\) が絶対温度 \(T\) に比例する(\(V \propto T\))という関係です。
したがって、絶対温度が2倍になれば、体積も比例して2倍になる、と直感的に結論を出すことが可能です。ここでは、その直感を数式で正確に裏付けるプロセスを解説します。

この設問における重要なポイント

  • シャルルの法則は、変化前の状態(体積 \(V_1\), 絶対温度 \(T_1\))と変化後の状態(体積 \(V_2\), 絶対温度 \(T_2\))の関係を \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\) という形で表すと、計算問題に応用しやすくなります。
  • 変化前の状態を基準(例:\(V_1, T_1\))とし、変化後の状態をその基準を使って(例:\(T_2 = 2T_1\))表現することが、立式を簡単にするコツです。
  • 最終的に求めたいのは「体積は何倍になるか」なので、変化後の体積 \(V_2\) を変化前の体積 \(V_1\) を使って \(V_2 = k \times V_1\) の形に整理し、係数 \(k\) を求めることがゴールとなります。

具体的な解説と立式
変化前の気体の体積を \(V_1\)、絶対温度を \(T_1\) とします。
変化後の気体の体積を \(V_2\)、絶対温度を \(T_2\) とします。

問題文の条件より、「圧力を一定に保って」いるので、シャルルの法則が成り立ちます。
$$ \frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2} \quad \cdots ① $$
また、「絶対温度を2倍にする」ので、変化後の絶対温度 \(T_2\) は変化前の絶対温度 \(T_1\) の2倍です。
$$ T_2 = 2T_1 \quad \cdots ② $$
式①と②を用いて、\(V_2\) が \(V_1\) の何倍になるかを求めます。

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\) (圧力と物質量が一定のとき)
計算過程

シャルルの法則の式①に、条件式②を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{V_1}{T_1} &= \frac{V_2}{T_2} \\[2.0ex]\frac{V_1}{T_1} &= \frac{V_2}{2T_1}
\end{aligned}
$$
両辺に \(2T_1\) を掛けて整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{V_1}{T_1} \times 2T_1 &= \frac{V_2}{2T_1} \times 2T_1 \\[2.0ex]2V_1 &= V_2
\end{aligned}
$$
この結果は、変化後の体積 \(V_2\) が、変化前の体積 \(V_1\) の \(2\) 倍であることを示しています。

計算方法の平易な説明

シャルルの法則は、「体積 ÷ 絶対温度」の値が常に一定になる、というルールです。
例えば、はじめ「体積が \(10\), 絶対温度が \(5\)」だったとします。このとき、割り算の結果は \(10 \div 5 = 2\) です。
次に、この気体の絶対温度を2倍にして \(10\) にしたとします。
シャルルの法則によれば、温度を変えても「体積 ÷ 絶対温度」の値は \(2\) のままでなければなりません。
つまり、「新しい体積 ÷ \(10 = 2\)」となるはずです。
これを解くと、新しい体積は \(2 \times 10 = 20\) となります。
元の体積は \(10\) でしたので、新しい体積 \(20\) は元の体積の \(2\) 倍になっています。

別解: 理想気体の状態方程式からのアプローチ

思考の道筋とポイント
シャルルの法則は、より普遍的な「理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\)」から導き出すことができます。したがって、この問題も状態方程式を用いて解くことが可能です。変化前と変化後のそれぞれについて状態方程式を立て、2つの式を比較することで答えを導きます。

この設問における重要なポイント

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
  • 方程式の中の変数のうち、何が変化し、何が一定であるかを正確に把握します。
  • この問題では、「一定量の気体」なので物質量 \(n\) は一定。「圧力を一定に保って」いるので圧力 \(p\) も一定。気体定数 \(R\) はもちろん定数です。
  • したがって、\(V = \left(\displaystyle\frac{nR}{p}\right)T\) と変形でき、カッコ内が定数であることから \(V\) と \(T\) の比例関係がわかります。

具体的な解説と立式
変化前の状態(圧力 \(p\), 体積 \(V_1\), 絶対温度 \(T_1\))における状態方程式は、
$$ pV_1 = nRT_1 \quad \cdots ③ $$
変化後の状態(圧力 \(p\), 体積 \(V_2\), 絶対温度 \(T_2\))における状態方程式は、
$$ pV_2 = nRT_2 \quad \cdots ④ $$
ここで、問題の条件から \(T_2 = 2T_1\) です。

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
計算過程

式③から \(\displaystyle\frac{V_1}{T_1} = \frac{nR}{p}\) が、式④から \(\displaystyle\frac{V_2}{T_2} = \frac{nR}{p}\) が得られます。
右辺がどちらも同じ \(\displaystyle\frac{nR}{p}\) なので、左辺どうしも等しくなります。
$$ \frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2} $$
この式はシャルルの法則そのものであり、これ以降の計算は主解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{V_1}{T_1} &= \frac{V_2}{2T_1} \\[2.0ex]V_2 &= 2V_1
\end{aligned}
$$
よって、体積は \(2\) 倍になります。

計算方法の平易な説明

気体の万能ルール \(pV=nRT\) を考えます。この問題では、気体の量(\(n\))も圧力(\(p\))も変えないので、\(V = \left(\displaystyle\frac{nR}{p}\right)T\) のカッコの中身は一定です。これは、体積 \(V\) が絶対温度 \(T\) に単純に比例することを意味します。したがって、絶対温度 \(T\) を2倍にすれば、体積 \(V\) もそのまま2倍になります。

解答 2倍

5 ボイル・シャルルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ボイル・シャルルの法則を用いた具体的な計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ボイル・シャルルの法則: 一定量の気体において、\(\displaystyle\frac{pV}{T}\) の値は一定である。
  2. 変化前と変化後の状態を比較する考え方。
  3. 圧力、体積、絶対温度の3つの物理量が関わる計算。
  4. 分数の計算。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 変化前の圧力、体積、絶対温度を \(p_1, V_1, T_1\) とおく。
  2. 問題文の条件に従って、変化後の圧力 \(p_2\) と絶対温度 \(T_2\) を \(p_1, T_1\) を用いて表す。
  3. ボイル・シャルルの法則の式 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) に代入する。
  4. 変化後の体積 \(V_2\) が変化前の体積 \(V_1\) の何倍になるかを計算する。

思考の道筋とポイント
これまでの問題では、温度が一定(ボイルの法則)または圧力が一定(シャルルの法則)という条件がありましたが、この問題では圧力と絶対温度の両方が変化します。このように、複数の状態量が同時に変化する状況で非常に強力なツールとなるのが「ボイル・シャルルの法則」です。
この法則は、「\(\displaystyle\frac{圧力 \times 体積}{絶対温度}\)」という組み合わせで作った値が、気体の状態が変化しても常に一定に保たれることを主張しています。この法則を利用して、変化前と変化後の状態で等式を立て、未知の量を求めます。

この設問における重要なポイント

  • ボイル・シャルルの法則の式 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) を正しく使いこなすことが全てです。
  • 変化後の圧力が \(1.5\) 倍になるということは、\(p_2 = 1.5 p_1\) と表現できます。
  • 変化後の絶対温度が \(3\) 倍になるということは、\(T_2 = 3 T_1\) と表現できます。
  • 最終的に求めたいのは「体積は何倍になるか」なので、変化後の体積 \(V_2\) と変化前の体積 \(V_1\) の比、つまり \(\displaystyle\frac{V_2}{V_1}\) の値を求めることがゴールです。

具体的な解説と立式
変化前の気体の圧力、体積、絶対温度をそれぞれ \(p_1, V_1, T_1\) とします。
変化後の気体の圧力、体積、絶対温度をそれぞれ \(p_2, V_2, T_2\) とします。

「一定量の気体」が変化するので、ボイル・シャルルの法則が成り立ちます。
$$ \frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2} \quad \cdots ① $$
問題文の条件から、圧力は \(1.5\) 倍、絶対温度は \(3\) 倍になるので、次のように書けます。
$$ p_2 = 1.5 p_1 \quad \cdots ② $$
$$ T_2 = 3 T_1 \quad \cdots ③ $$
これらの式を使って、\(V_2\) が \(V_1\) の何倍になるかを求めます。

使用した物理公式

  • ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\)
計算過程

ボイル・シャルルの法則の式①に、条件式②と③を代入します。計算を簡単にするため、\(1.5 = \displaystyle\frac{3}{2}\) と分数で考えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{p_1V_1}{T_1} &= \frac{p_2V_2}{T_2} \\[2.0ex]\frac{p_1V_1}{T_1} &= \frac{ \left( \displaystyle\frac{3}{2}p_1 \right) V_2 }{ (3T_1) }
\end{aligned}
$$
この式を、求めたい \(V_2\) について整理していきます。まず、両辺にある \(p_1\) と \(T_1\) を消去します(これらは0ではないので消去できます)。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{ \displaystyle\frac{3}{2} }{3} V_2 \\[2.0ex]V_1 &= \left( \frac{3}{2} \times \frac{1}{3} \right) V_2 \\[2.0ex]V_1 &= \frac{1}{2} V_2
\end{aligned}
$$
最後に、この式を \(V_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= 2V_1
\end{aligned}
$$
この結果は、変化後の体積 \(V_2\) が、変化前の体積 \(V_1\) の \(2\) 倍であることを示しています。

計算方法の平易な説明

ボイル・シャルルの法則は、「\(\displaystyle\frac{圧力 \times 体積}{絶対温度}\)」という計算結果が、気体の状態を変えても常に同じ値になる、というルールです。
この値を、簡単のために \(1\) に保つゲームだと考えてみましょう。
はじめの状態は \(\displaystyle\frac{p_1 V_1}{T_1} = 1\) です。
次に、圧力を \(1.5\) 倍、絶対温度を \(3\) 倍にしました。このときの体積を \(V_2\) とすると、
$$ \frac{1.5 \times V_2}{3} = 1 $$
という関係が成り立っていなければなりません。
\(\displaystyle\frac{1.5}{3} = 0.5\) なので、式は \(0.5 \times V_2 = 1\) となります。
これを解くと、\(V_2 = 1 \div 0.5 = 2\) となります。
つまり、体積を \(2\) 倍にすれば、法則が成り立つことがわかります。

別解: 理想気体の状態方程式からのアプローチ

思考の道筋とポイント
ボイル・シャルルの法則は、より普遍的な「理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\)」から導き出すことができます。したがって、この問題も状態方程式を用いて解くことが可能です。変化前と変化後のそれぞれについて状態方程式を立て、2つの式を比較することで答えを導きます。

この設問における重要なポイント

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
  • 方程式の中の変数のうち、何が変化し、何が一定であるかを正確に把握します。
  • この問題では、「一定量の気体」なので物質量 \(n\) は一定。気体定数 \(R\) はもちろん定数です。
  • したがって、\(\displaystyle\frac{pV}{T} = nR = \text{一定}\) という関係が導かれます。これがボイル・シャルルの法則そのものであることを理解するのがポイントです。

具体的な解説と立式
変化前の状態(圧力 \(p_1\), 体積 \(V_1\), 絶対温度 \(T_1\))における状態方程式は、
$$ p_1V_1 = nRT_1 \quad \cdots ④ $$
変化後の状態(圧力 \(p_2\), 体積 \(V_2\), 絶対温度 \(T_2\))における状態方程式は、
$$ p_2V_2 = nRT_2 \quad \cdots ⑤ $$
ここで、問題の条件から \(p_2 = 1.5 p_1\), \(T_2 = 3 T_1\) です。

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
計算過程

式④を変形すると \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = nR\) となります。
同様に、式⑤を変形すると \(\displaystyle\frac{p_2V_2}{T_2} = nR\) となります。
両式の右辺はどちらも同じ \(nR\) なので、左辺どうしも等しくなります。
$$ \frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2} $$
この式はボイル・シャルルの法則そのものであり、これ以降の計算は主解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{p_1V_1}{T_1} &= \frac{(1.5p_1)V_2}{3T_1} \\[2.0ex]V_1 &= \frac{1.5}{3}V_2 \\[2.0ex]V_1 &= 0.5V_2 \\[2.0ex]V_2 &= 2V_1
\end{aligned}
$$
よって、体積は \(2\) 倍になります。

計算方法の平易な説明

気体の万能ルール \(pV=nRT\) を変形すると \(\displaystyle\frac{pV}{T} = nR\) となります。この問題では、気体の量(\(n\))は変わらないので、右辺の \(nR\) はずっと同じ値です。つまり、\(\displaystyle\frac{pV}{T}\) の値は常に一定でなければならない、ということになります。これは主解法で使ったボイル・シャルルの法則と全く同じことを言っています。あとは主解法と同じように計算すれば答えが求まります。

解答 2倍

6 物質量

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「物質量、アボガドロ定数、粒子数の関係の理解と計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 物質量 (mol) の定義の理解
  2. アボガドロ定数 \(N_A\) の定義の理解
  3. 粒子数 \(N\)、物質量 \(n\)、アボガドロ定数 \(N_A\) の関係式
  4. 有効数字を考慮した計算

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた物質量 \(n\) とアボガドロ定数 \(N_A\) の値を確認する。
  2. 粒子数、物質量、アボガドロ定数の関係式 \(N = nN_A\) を用いて立式する。
  3. 計算を実行し、有効数字に注意して答えを求める。

思考の道筋とポイント
この問題は、化学でも物理でも基本となる「mol(モル)」という単位の概念を正しく理解しているかを問うています。「mol」は、鉛筆を「ダース」で数えるように、非常に多数の原子や分子をひとまとめにして扱うための便利な単位です。
「1ダースが12個」であるのと同様に、「1 mol は \(6.0 \times 10^{23}\) 個」という関係が定義されています。この「1 mol あたりの個数」がアボガドロ定数 \(N_A\) です。
問題では気体の物質量が \(0.50 \text{ mol}\) と与えられています。これは「1 mol の半分」の量です。したがって、そこに含まれる分子の数も、1 mol あたりの分子の数(アボガドロ定数)の半分になるはずだ、という見通しを立てることができます。

この設問における重要なポイント

  • 物質量 \(n\) [mol]: 粒子の個数を、アボガドロ定数を1セットとして数えたときの量。
  • アボガドロ定数 \(N_A\) [/mol]: 粒子が 1 mol 集まったときの、その粒子の個数。定数であり、その値は \(N_A \approx 6.02 \times 10^{23} \text{ /mol}\) ですが、この問題では \(6.0 \times 10^{23} \text{ /mol}\) として計算します。
  • 粒子数 \(N\) [個]: 実際の粒子の総数。
  • これらの間には、\((\text{粒子数}) = (\text{物質量}) \times (\text{アボガドロ定数})\) という関係が成り立ちます。数式で書くと \(N = n N_A\) です。
  • 有効数字: 問題で与えられている数値は \(0.50\) (2桁) と \(6.0 \times 10^{23}\) (2桁) です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。

具体的な解説と立式
求めたい気体の分子の数を \(N\) [個]、気体の物質量を \(n\) [mol]、アボガドロ定数を \(N_A\) [/mol] とします。
これらの物理量の間には、次の関係式が成り立ちます。
$$ N = n \times N_A \quad \cdots ① $$
問題文から、与えられている値は以下の通りです。
$$ n = 0.50 \text{ mol} $$
$$ N_A = 6.0 \times 10^{23} \text{ /mol} $$
これらの値を式①に代入して、分子の数 \(N\) を求めます。

使用した物理公式

  • 粒子数と物質量の関係: \(N = nN_A\)
    • \(N\): 粒子数 [個]
    • \(n\): 物質量 [mol]
    • \(N_A\): アボガドロ定数 [/mol]
計算過程

立式した \(N = n N_A\) に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
N &= 0.50 \times (6.0 \times 10^{23}) \\[2.0ex]&= (0.50 \times 6.0) \times 10^{23} \\[2.0ex]&= 3.0 \times 10^{23}
\end{aligned}
$$
計算結果は \(3.0 \times 10^{23}\) となります。有効数字は、\(0.50\) (2桁) と \(6.0\) (2桁) の計算なので、結果も2桁で表すのが適切です。

計算方法の平易な説明

「1ダースは12本」という関係を知っていれば、「半ダースは何本?」と聞かれたら、\(12 \times 0.5 = 6\) 本と計算できます。
これと全く同じ考え方です。
「1 mol は \(6.0 \times 10^{23}\) 個」という関係が、この世界のルールです。
問題は「0.50 mol は何個?」と聞いています。これは「半 mol は何個?」ということです。
したがって、1 mol あたりの個数である \(6.0 \times 10^{23}\) に \(0.50\) を掛ければ答えが出ます。
計算すると、\(6.0 \times 10^{23} \times 0.50 = 3.0 \times 10^{23}\) 個となります。

解答 \(3.0 \times 10^{23}\) 個

7 気体の状態方程式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「理想気体の状態方程式を用いた物質量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) の理解
  2. 方程式を移項して、未知の物理量を求める計算スキル。
  3. 各物理量(圧力、体積、物質量、気体定数、絶対温度)の単位の確認。
  4. 指数や小数を含む数値計算のテクニック。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) を書き出す。
  2. 求めたい物理量である物質量 \(n\) について、式を \(n = \dots\) の形に変形する。
  3. 問題文で与えられた圧力 \(p\)、体積 \(V\)、絶対温度 \(T\)、気体定数 \(R\) の値を代入する。
  4. 計算を実行して、物質量 \(n\) を求める。

思考の道筋とポイント
この問題は、理想気体の状態を記述する最も重要な公式である「理想気体の状態方程式」を正しく使えるかを試す、基本的な問題です。問題文で圧力 \(p\)、体積 \(V\)、絶対温度 \(T\) という3つの状態量が与えられ、物質量 \(n\) が問われていることから、これらの物理量を一括で結びつける \(pV=nRT\) を利用することを考えます。
計算を実行する際には、与えられた数値の間に約分しやすい関係(例えば、\(0.083\) と \(8.3\)、\(3.0\) と \(300\))が隠されていることに気づくと、計算を大幅に簡略化できます。

この設問における重要なポイント

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\) は、気体の問題を解く上での万能ツールです。各文字が何を表すか(\(p\):圧力, \(V\):体積, \(n\):物質量, \(R\):気体定数, \(T\):絶対温度)を正確に覚えておく必要があります。
  • 単位の統一: 状態方程式を用いる際は、各物理量の単位を基本単位系(圧力: Pa, 体積: m³, 温度: K)に揃えることが大原則です。この問題では、すべての値が基本単位で与えられているため、そのまま使用できます。
  • 計算の工夫: \(0.083 = 8.3 \times 10^{-2}\) や \(300 = 3 \times 10^2\) のように、数値を「(1桁の数) × (10のべき乗)」の形に分解すると、指数計算に持ち込めて計算ミスを減らせます。

具体的な解説と立式
理想気体の状態方程式は、以下の式で与えられます。
$$ pV = nRT $$
この問題では、物質量 \(n\) を求めたいので、この式を \(n\) について解く形に変形します。
$$ n = \frac{pV}{RT} \quad \cdots ① $$
問題文から与えられている値は以下の通りです。

  • 圧力 \(p = 3.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
  • 体積 \(V = 0.083 \text{ m}^3\)
  • 絶対温度 \(T = 300 \text{ K}\)
  • 気体定数 \(R = 8.3 \text{ J/(mol}\cdot\text{K)}\)

これらの値を式①に代入して、物質量 \(n\) を計算します。

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
計算過程

式①に、与えられた数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{pV}{RT} \\[2.0ex]&= \frac{(3.0 \times 10^5) \times 0.083}{8.3 \times 300}
\end{aligned}
$$
このまま計算すると複雑なので、数値を整理して約分しやすくします。
分子の \(0.083\) を \(8.3 \times 10^{-2}\) に、分母の \(300\) を \(3 \times 10^2\) に書き換えます。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{(3.0 \times 10^5) \times (8.3 \times 10^{-2})}{8.3 \times (3 \times 10^2)}
\end{aligned}
$$
ここで、分子と分母で共通する \(3.0\) (と \(3\))、および \(8.3\) を約分します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{10^5 \times 10^{-2}}{10^2}
\end{aligned}
$$
最後に、指数の計算を行います。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{10^{5-2}}{10^2} \\[2.0ex]&= \frac{10^3}{10^2} \\[2.0ex]&= 10^{3-2} \\[2.0ex]&= 10^1 \\[2.0ex]&= 10
\end{aligned}
$$
したがって、この理想気体の物質量は \(10 \text{ mol}\) となります。

計算方法の平易な説明

気体の状態を表す万能の公式 \(pV=nRT\) を使います。この公式は、いくつかのピース(物理量)が分かっていれば、残りのピースを求めることができる便利なパズルのようなものです。
今回は、物質量 \(n\) というピースが分かりません。そこで、公式を「\(n = \dots\)」の形に並べ替えます。
$$ n = \frac{pV}{RT} $$
あとは、問題文に書かれている数値というピースを、式の正しい場所にはめていくだけです。
$$ n = \frac{(3.0 \times 10^5) \times 0.083}{8.3 \times 300} $$
この分数の計算は、一見難しそうですが、うまく約分できるペア(「\(3.0\)と\(300\)」、「\(0.083\)と\(8.3\)」)を見つけると、驚くほど簡単になります。ペアで消していくと、最終的に \(10\) という答えだけが残ります。

解答 10 mol
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