「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第11章】基本例題~基本問題219

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

基本例題

基本例題41 熱量の保存

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説では、模範解答で採用されている「高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量」というアプローチを主たる解法として解説します。
それに加え、教育的に有益な別解として、以下の解法を提示します。

  1. 設問(1)および(2)の別解
    • 別解: 「はじめの熱量の和 = あとの熱量の和」というエネルギー保存の考え方に基づく解法

この別解の意義は以下の通りです。

  • どの物体が熱を失い、どの物体が得たかを個別に判断する必要がなく、機械的に立式できるため、符号ミスなどのケアレスミスを減らすことができます。
  • 熱現象をより普遍的な「エネルギー保存則」の一例として捉える視点が得られ、物理の理解が深まります。

いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と一致することを申し添えます。

この問題のテーマは「熱量の保存」です。異なる温度の物体間で熱が移動する際に、外部に熱が逃げなければ、高温の物体が失った熱量と低温の物体が得た熱量が等しくなる、という非常に重要な法則を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱量保存則: 外部と熱の出入りがない場合、「高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量」という関係が成り立ちます。
  2. 熱量の計算式(比熱): 質量\(m\)、比熱\(c\)の物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、\(Q = mc\Delta T\)で計算されます。
  3. 熱量の計算式(熱容量): 熱容量\(C\)の物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、\(Q = C\Delta T\)で計算されます。熱容量は「質量×比熱」に相当する量です。
  4. 熱平衡: 異なる温度の物体を接触させておくと、やがて熱の移動がなくなり、全体が同じ温度になります。この状態を熱平衡といいます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、高温の47℃の水が失った熱量と、低温の27℃の水および熱量計が得た熱量をそれぞれ計算し、熱量保存則の式を立てて熱量計の熱容量\(C\)を求めます。
  2. (2)では、(1)の結果を利用します。高温の100℃の金属球が失った熱量と、低温の31℃の水(合計180g)および熱量計が得た熱量を計算し、熱量保存則の式を立てて金属球の比熱\(c\)を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
高温の物体(47℃の水)と低温の物体(27℃の水と熱量計)の間で熱の移動が起こり、最終的に全体が31℃の熱平衡状態になります。外部との熱のやりとりは無視できるものとして、「熱量保存則」を適用します。「高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量」という等式を立てることがゴールです。このとき、低温側では「水」と「熱量計」の両方が熱を得る点に注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存則 \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) を正しく立式する。
  • 低温側は「140gの水」と「熱量計」の2つの物体が熱を得ることを考慮する。
  • 温度変化\(\Delta T\)は、\(Q_{\text{失}}\)と\(Q_{\text{得}}\)のどちらも正の値になるように「高温側の温度 – 低温側の温度」で計算する。

具体的な解説と立式
熱量保存則に基づき、高温物体が失った熱量\(Q_{\text{失}}\)と、低温物体が得た熱量\(Q_{\text{得}}\)をそれぞれ立式します。

高温物体(47℃の水)が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\)
質量\(m_1 = 40 \text{ g}\)、比熱\(c_{\text{水}} = 4.2 \text{ J/(g・K)}\)の水が、温度\(T_1 = 47 \text{ ℃}\)から\(T_3 = 31 \text{ ℃}\)に下がったので、失った熱量は次のようになります。
$$ Q_{\text{失}} = m_1 c_{\text{水}} (T_1 – T_3) $$

低温物体(27℃の水と熱量計)が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)
質量\(m_2 = 140 \text{ g}\)の水と、熱容量\(C\)の熱量計が、ともに温度\(T_2 = 27 \text{ ℃}\)から\(T_3 = 31 \text{ ℃}\)に上がりました。得た熱量は、水が得た熱量と熱量計が得た熱量の和になります。
$$ Q_{\text{得}} = m_2 c_{\text{水}} (T_3 – T_2) + C (T_3 – T_2) $$
共通因数でまとめると、
$$ Q_{\text{得}} = (m_2 c_{\text{水}} + C) (T_3 – T_2) $$

熱量保存則
\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ m_1 c_{\text{水}} (T_1 – T_3) = (m_2 c_{\text{水}} + C) (T_3 – T_2) $$

使用した物理公式

  • 熱量(比熱): \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量(熱容量): \(Q = C\Delta T\)
  • 熱量保存則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して\(C\)を求めます。
$$ 40 \times 4.2 \times (47 – 31) = (140 \times 4.2 + C) \times (31 – 27) $$
各項を計算していきます。
$$
\begin{aligned}
40 \times 4.2 \times 16 &= (588 + C) \times 4 \\[2.0ex]
168 \times 16 &= (588 + C) \times 4 \\[2.0ex]
2688 &= 2352 + 4C \\[2.0ex]
4C &= 2688 – 2352 \\[2.0ex]
4C &= 336 \\[2.0ex]
C &= \frac{336}{4} \\[2.0ex]
C &= 84 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題は「お湯が失った熱」と「もともとあった水と容器が得た熱」が釣り合う、という天秤のような関係式を立てます。
左の皿(失った熱)は、40gのお湯が(47℃ – 31℃) = 16℃だけ冷えた分の熱で、その量は「\(40 \times 4.2 \times 16\)」ジュールです。
右の皿(得た熱)は、140gの水と熱量計が(31℃ – 27℃) = 4℃だけ温まった分の熱で、その量は「\((140 \times 4.2 + C) \times 4\)」ジュールです。
この2つの量が等しいので、イコールで結んで方程式を解くと、容器の熱容量\(C\)が求まります。

結論と吟味

計算の結果、容器の熱容量は \(84 \text{ J/K}\) となります。これは、この容器の温度を1K(または1℃)上昇させるのに84Jの熱量が必要であることを意味します。水の比熱が \(4.2 \text{ J/(g・K)}\) なので、この熱量計は \(84 \div 4.2 = 20 \text{ g}\) の水に相当する熱容量(水換算)を持つことになり、物理的に妥当な値です。

解答 (1) \(84 \text{ J/K}\)
別解: エネルギー総和の保存による解法

思考の道筋とポイント
熱量保存則を「系のエネルギー保存」の観点から捉え直すアプローチです。「混合前の系全体の熱エネルギーの総和」と「混合後の系全体の熱エネルギーの総和」が等しい、という式を立てます。この方法では、どの物体が熱を失い、どの物体が得たかを考える必要がありません。熱エネルギーの基準(ここでは0℃)を決め、各物体の状態における熱量を足し合わせるだけです。
この設問における重要なポイント

  • 熱エネルギーの基準温度を一つに定める(ここでは0℃とする)。
  • 「はじめの状態」と「あとの状態」に関わる全ての物体の熱量をリストアップし、計算漏れを防ぐ。
  • はじめの熱量の総和 = あとの熱量の総和、という等式を立てる。

具体的な解説と立式
基準温度を\(0 \text{ ℃}\)として、熱の移動の前後で熱量の総和が保存されると考えます。

はじめの状態(混合前)の熱量の総和 \(Q_{\text{はじめ}}\)
はじめの状態には、「\(47 \text{ ℃}\)の水」「\(27 \text{ ℃}\)の水」「\(27 \text{ ℃}\)の熱量計」の3つが存在します。それぞれの\(0 \text{ ℃}\)を基準とした熱量の和は、
$$ Q_{\text{はじめ}} = 40 \times 4.2 \times (47 – 0) + 140 \times 4.2 \times (27 – 0) + C \times (27 – 0) $$

あとの状態(混合後)の熱量の総和 \(Q_{\text{あと}}\)
あとの状態では、水は合計\(140+40=180 \text{ g}\)になり、熱量計とともに一様に\(31 \text{ ℃}\)になっています。その熱量の総和は、
$$ Q_{\text{あと}} = (140 + 40) \times 4.2 \times (31 – 0) + C \times (31 – 0) $$

熱量保存則
\(Q_{\text{はじめ}} = Q_{\text{あと}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ 40 \times 4.2 \times 47 + (140 \times 4.2 + C) \times 27 = 180 \times 4.2 \times 31 + C \times 31 $$

使用した物理公式

  • 熱量(比熱): \(Q = mc(T – T_0)\) (\(T_0\)は基準温度)
  • 熱量(熱容量): \(Q = C(T – T_0)\)
  • 熱エネルギー保存: \(Q_{\text{はじめの総和}} = Q_{\text{あとの総和}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を解いて\(C\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
40 \times 4.2 \times 47 + (140 \times 4.2 + C) \times 27 &= 180 \times 4.2 \times 31 + C \times 31 \\[2.0ex]
7896 + 15876 + 27C &= 23436 + 31C \\[2.0ex]
23772 + 27C &= 23436 + 31C \\[2.0ex]
23772 – 23436 &= 31C – 27C \\[2.0ex]
336 &= 4C \\[2.0ex]
C &= 84 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$
この計算は、主たる解法で立てた式 \(40 \times 4.2 \times (47 – 31) = (140 \times 4.2 + C) \times (31 – 27)\) を展開・移項したものと全く同じです。

計算方法の平易な説明

「混ぜる前の全員の熱エネルギーの合計」と「混ざった後の全員の熱エネルギーの合計」が同じになる、という考え方です。0℃の状態をエネルギー0の地面だとします。
はじめの状態:
・47℃の水は、地面から「\(40 \times 4.2 \times 47\)」の高さにいます。
・27℃の水と容器は、地面から「\((140 \times 4.2 + C) \times 27\)」の高さにいます。
これらの合計が、はじめの全エネルギーです。
あとの状態:
・全員が混ざって31℃になったので、地面から「\((180 \times 4.2 + C) \times 31\)」の高さにいます。
「はじめの合計」と「あとの合計」をイコールで結んで方程式を解くと、容器の熱容量\(C\)が求まります。

結論と吟味

計算の結果、容器の熱容量は \(84 \text{ J/K}\) となり、主たる解法の結果と一致します。立式のアプローチは異なりますが、物理的に等価な式を解いているため、当然同じ答えが得られます。どちらの方法でも解けるようにしておくと、検算にも役立ちます。

解答 (1) \(84 \text{ J/K}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の操作後の状態、つまり180gの水と熱量計が31℃になっているところに、100℃の金属球を入れます。すると再び熱が移動し、最終的に40℃の熱平衡状態になります。ここでも(1)と同様に「熱量保存則」を適用します。今回は、高温物体が「金属球」、低温物体が「180gの水」と「熱量計」です。「金属球が失った熱量 = 水と熱量計が得た熱量」という式を立て、未知数である金属球の比熱\(c\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • (1)で求めた熱量計の熱容量\(C = 84 \text{ J/K}\)を使用する。
  • 低温側の水は、初めの140gと追加した40gを合わせて、合計\(180 \text{ g}\)になっていることを正しく把握する。
  • 各物体の初期温度と最終温度を正確に代入する(金属球: 100℃→40℃、水と熱量計: 31℃→40℃)。

具体的な解説と立式
熱量保存則に基づき、高温物体が失った熱量\(Q’_{\text{失}}\)と、低温物体が得た熱量\(Q’_{\text{得}}\)をそれぞれ立式します。

高温物体(100℃の金属球)が失った熱量 \(Q’_{\text{失}}\)
質量\(m_{\text{金属}} = 150 \text{ g}\)、比熱\(c\)の金属球が、温度\(T_{\text{金属}} = 100 \text{ ℃}\)から\(T’_{\text{平衡}} = 40 \text{ ℃}\)に下がったので、失った熱量は次のようになります。
$$ Q’_{\text{失}} = m_{\text{金属}} c (T_{\text{金属}} – T’_{\text{平衡}}) $$

低温物体(31℃の水と熱量計)が得た熱量 \(Q’_{\text{得}}\)
(1)の結果、水は合計で質量\(m’_{\text{水}} = 140 + 40 = 180 \text{ g}\)になっています。この水と熱容量\(C = 84 \text{ J/K}\)の熱量計が、ともに温度\(T_3 = 31 \text{ ℃}\)から\(T’_{\text{平衡}} = 40 \text{ ℃}\)に上がりました。得た熱量は、水が得た熱量と熱量計が得た熱量の和になります。
$$ Q’_{\text{得}} = (m’_{\text{水}} c_{\text{水}} + C) (T’_{\text{平衡}} – T_3) $$

熱量保存則
\(Q’_{\text{失}} = Q’_{\text{得}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ m_{\text{金属}} c (T_{\text{金属}} – T’_{\text{平衡}}) = (m’_{\text{水}} c_{\text{水}} + C) (T’_{\text{平衡}} – T_3) $$

使用した物理公式

  • 熱量(比熱): \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量(熱容量): \(Q = C\Delta T\)
  • 熱量保存則: \(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、数値を代入して\(c\)を求めます。
$$ 150 \times c \times (100 – 40) = (180 \times 4.2 + 84) \times (40 – 31) $$
各項を計算していきます。
$$
\begin{aligned}
150 \times c \times 60 &= (756 + 84) \times 9 \\[2.0ex]
9000 c &= 840 \times 9 \\[2.0ex]
9000 c &= 7560 \\[2.0ex]
c &= \frac{7560}{9000} \\[2.0ex]
c &= \frac{756}{900} \\[2.0ex]
c &= \frac{84}{100} \\[2.0ex]
c &= 0.84 \text{ [J/(g・K)]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)と同じように、熱のやり取りの釣り合いを考えます。
左の皿(失った熱)は、150gの金属球が(100℃ – 40℃) = 60℃だけ冷えた分の熱で、その量は「\(150 \times c \times 60\)」ジュールです。
右の皿(得た熱)は、180gの水と熱量計が(40℃ – 31℃) = 9℃だけ温まった分の熱です。熱量計の熱容量は(1)で求めた84を使います。その量は「\((180 \times 4.2 + 84) \times 9\)」ジュールです。
この2つの量が等しいので、イコールで結んで方程式を解くと、金属球の比熱\(c\)が求まります。

結論と吟味

計算の結果、金属球の比熱は \(0.84 \text{ J/(g・K)}\) となります。水の比熱 \(4.2 \text{ J/(g・K)}\) と比べて小さな値であり、一般的な金属の比熱(例えばアルミニウムが約0.9 J/(g・K))に近い値です。したがって、物理的に妥当な結果であると言えます。

解答 (2) \(0.84 \text{ J/(g・K)}\)
別解: エネルギー総和の保存による解法

思考の道筋とポイント
(1)の別解と同様に、「系のエネルギー保存」の観点から立式します。(2)の操作における「はじめの状態」と「あとの状態」を正確に把握することが重要です。「はじめ」は100℃の金属球と、(1)の操作後である31℃の水・熱量計です。「あと」は全体が40℃になった状態です。
この設問における重要なポイント

  • 熱エネルギーの基準温度を(1)と同じく0℃に定める。
  • (2)の操作における「はじめの状態」を正しく設定する(100℃の金属球、31℃の水180g、31℃の熱量計)。
  • はじめの熱量の総和 = あとの熱量の総和、という等式を立てる。

具体的な解説と立式
基準温度を\(0 \text{ ℃}\)として、熱の移動の前後で熱量の総和が保存されると考えます。

はじめの状態(金属球投入前)の熱量の総和 \(Q’_{\text{はじめ}}\)
はじめの状態には、「\(100 \text{ ℃}\)の金属球」「\(31 \text{ ℃}\)の水(180g)」「\(31 \text{ ℃}\)の熱量計」が存在します。それぞれの\(0 \text{ ℃}\)を基準とした熱量の和は、
$$ Q’_{\text{はじめ}} = 150 \times c \times (100 – 0) + (180 \times 4.2 + 84) \times (31 – 0) $$

あとの状態(熱平衡後)の熱量の総和 \(Q’_{\text{あと}}\)
あとの状態では、金属球、水、熱量計がすべて一様に\(40 \text{ ℃}\)になっています。その熱量の総和は、
$$ Q’_{\text{あと}} = 150 \times c \times (40 – 0) + (180 \times 4.2 + 84) \times (40 – 0) $$

熱量保存則
\(Q’_{\text{はじめ}} = Q’_{\text{あと}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ 150 \times c \times 100 + (180 \times 4.2 + 84) \times 31 = 150 \times c \times 40 + (180 \times 4.2 + 84) \times 40 $$

使用した物理公式

  • 熱量(比熱): \(Q = mc(T – T_0)\) (\(T_0\)は基準温度)
  • 熱量(熱容量): \(Q = C(T – T_0)\)
  • 熱エネルギー保存: \(Q_{\text{はじめの総和}} = Q_{\text{あとの総和}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を解いて\(c\)を求めます。\(c\)を含む項と含まない項に分けて整理すると計算が楽になります。
$$
\begin{aligned}
150 \times c \times 100 – 150 \times c \times 40 &= (180 \times 4.2 + 84) \times 40 – (180 \times 4.2 + 84) \times 31 \\[2.0ex]
150 \times c \times (100 – 40) &= (180 \times 4.2 + 84) \times (40 – 31) \\[2.0ex]
150 \times c \times 60 &= (756 + 84) \times 9 \\[2.0ex]
9000 c &= 840 \times 9 \\[2.0ex]
9000 c &= 7560 \\[2.0ex]
c &= \frac{7560}{9000} \\[2.0ex]
c &= 0.84 \text{ [J/(g・K)]}
\end{aligned}
$$
この式変形の2行目は、主たる解法で立てた式と全く同じ形になっています。

計算方法の平易な説明

(1)の別解と同じく、エネルギーの総和で考えます。0℃の地面を基準にします。
はじめの状態:
・100℃の金属球は「\(150 \times c \times 100\)」の高さにいます。
・31℃の水と容器は「\((180 \times 4.2 + 84) \times 31\)」の高さにいます。
これらの合計が、はじめの全エネルギーです。
あとの状態:
・全員が混ざって40℃になったので、地面から「\((150 \times c + 180 \times 4.2 + 84) \times 40\)」の高さにいます。
「はじめの合計」と「あとの合計」をイコールで結んで方程式を解くと、金属球の比熱\(c\)が求まります。

結論と吟味

計算の結果、金属球の比熱は \(0.84 \text{ J/(g・K)}\) となり、主たる解法の結果と一致します。このアプローチは、一見すると計算が複雑に見えますが、式を整理すると主たる解法と同じ式に行き着きます。立式の際に「失う側」「得る側」を考えなくてよいため、機械的に問題を解くことができるという利点があります。

解答 (2) \(0.84 \text{ J/(g・K)}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 熱量保存則:
    • 核心: 外部との熱の出入りがない断熱された系では、内部で熱の移動があっても、系全体のエネルギーの総量は変わらない、というエネルギー保存則の考え方が根底にあります。
    • 理解のポイント: この法則は2通りの表現で立式できます。
      1. 熱の移動に着目: 「高温物体が失った熱量 \(Q_{\text{失}}\) = 低温物体が得た熱量 \(Q_{\text{得}}\)」。熱の「やりとり」に注目した、直感的で分かりやすいアプローチです。
      2. エネルギーの総和に着目: 「はじめの熱エネルギーの総和 = あとの熱エネルギーの総和」。どの物体が熱を失い、得たかを判断する必要がなく、機械的に立式できる利点があります。
  • 熱量の定義式:
    • 核心: 物体の温度を変化させるのに必要な熱量\(Q\)を計算するための基本式です。
    • 理解のポイント:
      • 比熱\(c\)を用いる場合: \(Q = mc\Delta T\)。物質の種類と質量に依存します。
      • 熱容量\(C\)を用いる場合: \(Q = C\Delta T\)。物体全体として、温度を1K上げるのに必要な熱量を表します。\(C=mc\)の関係があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 状態変化を含む熱量計算: 氷を水蒸気に変えるなど、温度変化だけでなく「融解」や「蒸発」が絡む問題。この場合、状態変化に必要な熱量(融解熱、蒸発熱)も考慮に入れる必要があります。熱量保存の式に \(Q=mL\) (\(L\)は融解熱や蒸発熱)の項が加わります。
    • 熱の仕事当量: 摩擦や電気抵抗で熱が発生する問題や、逆に熱機関が仕事をする問題。仕事\(W\)と熱量\(Q\)が \(W=JQ\)(\(J\)は熱の仕事当量)の関係で変換されることを利用します。
    • 放射(輻射)が関わる問題: 高温の物体が電磁波として熱を放出する現象。シュテファン・ボルツマンの法則などが関わってきますが、高校範囲では熱量保存の応用として出題されることが多いです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 登場人物と状態の整理: まず、問題に関わる全ての物体(水、金属、容器など)をリストアップします。次に、それぞれの「操作前」と「操作後」の温度、質量、そして状態(固体、液体、気体)を明確に区別して書き出します。
    2. 熱の出入りを確認: 「断熱された容器」や「熱量計」という言葉があれば、外部との熱のやりとりは無視し、内部での熱量保存を考えます。逆に、熱が外部に逃げる場合はその分のエネルギー損失も考慮します。
    3. 立式方法の選択: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」と「エネルギー総和の保存」のどちらで立式するかを決めます。前者は物理的イメージが掴みやすく、後者は機械的に立式できるため、問題の状況や自分の得意な方で使い分けると良いでしょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 熱量計(容器)の熱容量の無視:
    • 誤解: 水や金属球の熱のやりとりに集中してしまい、それらを入れている容器自身の温度変化、つまり容器が得たり失ったりする熱量を計算から除外してしまう。
    • 対策: 問題文に「熱量計」や「容器」という言葉が出てきたら、必ずその熱容量を考慮に入れるという習慣をつけましょう。「容器も水も一様に温度が…」という記述は、容器の熱容量を考慮せよという明確なサインです。
  • 温度変化 \(\Delta T\) の計算ミス:
    • 誤解: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」の式を立てる際に、温度変化をすべて「後の温度 – 前の温度」で計算してしまい、失った側の熱量が負の値になってしまう。
    • 対策: 「\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)」の式では、熱量\(Q\)が常に正の値になるように、温度変化\(\Delta T\)は必ず「高温側の温度 – 低温側の温度」で計算するとルール化しましょう。
  • 連続する設問での状態の引き継ぎミス:
    • 誤解: (2)の計算で、低温側の水の質量を、(1)の初期状態である140gのまま計算してしまう。
    • 対策: 設問が(1), (2)と続く場合、(2)は(1)の操作後の状態からスタートすることがほとんどです。各設問の「開始時点」での状態(水の総質量は140g+40g=180g、温度は31℃)を正確に把握することが不可欠です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 熱量保存則 (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\) または エネルギー総和の保存):
    • 選定理由: 本問は「断熱された容器の中で、異なる温度の物体を混合する」という典型的な状況設定です。これは、外部とのエネルギーのやりとりがない「孤立系(閉じた系)」とみなせます。物理学の大原則である「エネルギー保存則」を、熱現象に適用したものが熱量保存則です。
    • 適用根拠: 「熱量計」という装置は、外部環境との熱の出入りを極力遮断するように作られています。したがって、「系(熱量計+中身)の外部への熱の流出は無視できる」という仮定のもと、系内部でのエネルギー(熱量)の総和は一定に保たれる、という法則を適用するのが最も論理的です。
  • 熱量の式 (\(Q=mc\Delta T\), \(Q=C\Delta T\)):
    • 選定理由: 熱量保存則はあくまで「量の関係性」を示す法則であり、具体的な熱量の値を計算するためには、その定義式が必要です。
    • 適用根拠: 物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、その物体の質量\(m\)と温度変化\(\Delta T\)に比例するという実験事実に基づいています。その比例定数が物質固有の値である「比熱\(c\)」です。熱容量\(C\)は、この質量と比熱をひとまとめにした(\(C=mc\))、物体全体としての熱のためやすさを表す便利な量です。問題で与えられた物理量に応じて、これらの式を適切に選択・適用します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式で立式してから代入: いきなり \(40 \times 4.2 \times (47-31) = \dots\) と書き始めるのではなく、まず \(m_1 c_{\text{水}} (T_1 – T_3) = (m_2 c_{\text{水}} + C)(T_3 – T_2)\) のように、物理記号を使って関係式を立てましょう。どの部分がどの物理量に対応するかが明確になり、代入ミスや立式そのものの間違いを防げます。
  • 単位の確認を徹底: 比熱の単位が「J/(g・K)」なのか「J/(kg・K)」なのかを必ず確認します。本問では「g」が基準なので質量の単位はグラムのままでOKですが、もし「kg」基準なら、質量をkgに換算する必要があります。この一手間が致命的なミスを防ぎます。
  • 計算の工夫で楽をする:
    • (1)の式 \(40 \times 4.2 \times 16 = (588 + C) \times 4\) では、右辺の「\(\times 4\)」に注目します。左辺の \(16\) は \(4 \times 4\) なので、両辺を \(4\) で割ることで、\(40 \times 4.2 \times 4 = 588 + C\) となり、計算する数値が小さくなります。
    • (2)の式 \(9000c = 7560\) では、まず両辺を10で割って \(900c = 756\) とします。次に、両辺が9で割り切れそうだと気づけば(7+5+6=18で9の倍数)、\(100c = 84\) となり、暗算レベルで \(c=0.84\) が導けます。大きな数で一気に割ろうとせず、公約数で段階的に割っていくのがコツです。
  • 別解による検算: 主たる解法(\(Q_{\text{失}}=Q_{\text{得}}\))で解いた後、別解(エネルギー総和の保存)でもう一度解いてみましょう。計算過程は異なりますが、同じ答えにたどり着くはずです。これにより、計算ミスや考え方の間違いを高い確率で発見できます。

基本例題42 熱と仕事

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「仕事と熱の等価性」です。おもりの落下という力学的な仕事が、羽根車の回転による水の攪拌を通じて熱エネルギーに変換される、という物理学の根幹に関わる重要な概念を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 仕事の計算: 物体にはたらく力\(F\)と同じ向きに距離\(x\)だけ動かしたときの仕事\(W\)は、\(W=Fx\)で計算されます。特に、質量\(m\)の物体が重力によって高さ\(h\)だけ落下するとき、重力がする仕事は物体の位置エネルギーの変化量\(mgh\)に等しくなります。
  2. 熱量の計算(熱容量): 熱容量\(C\)の物体の温度を\(\Delta T\)だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)は、\(Q = C\Delta T\)で計算されます。
  3. エネルギー保存則(仕事と熱の関係): 仕事と熱はどちらもエネルギーの一形態であり、互いに変換可能です。この問題では、「重力がおもりにした仕事は、すべて温度の上昇に使われる」という条件から、仕事\(W\)がそのまま熱量\(Q\)に変換されると考えます (\(W=Q\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、おもりが1.5mの落下を50回繰り返す間に、重力がした仕事の総量\(W\)を計算します。
  2. 次に、この仕事\(W\)がすべて熱量\(Q\)に変換されたとして、\(Q=W\)の関係式を立てます。
  3. 最後に、熱量の式\(Q = C\Delta T\)を用いて、水、容器、羽根車からなる系全体の温度上昇\(\Delta T\)を求めます。

思考の道筋とポイント
この問題は、おもりの落下という「力学的な現象」と、水の温度上昇という「熱的な現象」を結びつけて考える必要があります。この2つの現象をつなぐ架け橋が「エネルギー」という普遍的な概念です。
おもりが落下することで失われた力学的エネルギー(位置エネルギー)が、羽根車を介して水や容器の内部エネルギー(熱エネルギー)に変換された、と解釈します。問題文の「重力がおもりにした仕事は、すべて温度の上昇に使われるものとする」という一文が、このエネルギー変換が100%の効率で行われることを保証しています。したがって、「重力がした仕事の総量 = 発生した熱量」という等式を立てることが、この問題を解くための中心的な戦略となります。
この設問における重要なポイント

  • 仕事\(W\)と熱量\(Q\)が等価であること (\(W=Q\)) を理解する。
  • 重力がした仕事は、位置エネルギーの変化量\(mgh\)で計算できる。
  • 実験は50回繰り返されているため、仕事量を50倍することを忘れない。
  • 熱容量\(C\)は「水+容器+羽根車」を一体として考えた値であるため、発生した熱量\(Q\)がこの系全体の温度を上昇させると考える。

具体的な解説と立式
まず、おもりが1回落下するときに重力がする仕事\(W_1\)を求めます。
おもりにはたらく重力の大きさは\(mg\)、落下距離は\(h\)なので、1回の落下で重力がする仕事は、位置エネルギーの変化量に等しくなります。
$$ W_1 = mgh $$
この実験を\(N=50\)回繰り返すので、重力がした仕事の総量\(W_{\text{総}}\)は、
$$ W_{\text{総}} = N \times W_1 = N mgh $$
問題の条件より、この仕事がすべて熱量\(Q\)に変換されるので、
$$ Q = W_{\text{総}} $$
この熱量\(Q\)によって、熱容量\(C\)の「水+容器+羽根車」の温度が\(\Delta T\)だけ上昇したとすると、熱量の式は次のようになります。
$$ Q = C \Delta T $$
したがって、\(Q\)を介して仕事と温度上昇を結びつけると、以下の関係式が成り立ちます。
$$ C \Delta T = N mgh $$

使用した物理公式

  • 重力がする仕事(位置エネルギーの変化): \(W = mgh\)
  • 熱量(熱容量): \(Q = C\Delta T\)
  • 仕事と熱の等価性: \(W = Q\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式 \(C \Delta T = N mgh\) を\(\Delta T\)について解き、与えられた数値を代入します。
$$ \Delta T = \frac{N mgh}{C} $$
ここで、\(N=50\)、\(m=2.0 \text{ kg}\)、\(g=9.8 \text{ m/s}^2\)、\(h=1.5 \text{ m}\)、\(C=2.1 \times 10^2 \text{ J/K}\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta T &= \frac{50 \times 2.0 \times 9.8 \times 1.5}{2.1 \times 10^2} \\[2.0ex]
&= \frac{100 \times 9.8 \times 1.5}{210} \\[2.0ex]
&= \frac{980 \times 1.5}{210} \\[2.0ex]
&= \frac{1470}{210} \\[2.0ex]
&= \frac{147}{21} \\[2.0ex]
&= 7.0 \text{ [K]}
\end{aligned}
$$
温度「変化」の大きさは、セルシウス度(℃)で表してもケルビン(K)で表しても同じ値になります。したがって、温度上昇は \(7.0 \text{ ℃}\) です。

計算方法の平易な説明

この問題は、おもりが落ちることで生み出されたエネルギーが、すべて水を温めるために使われる、というシンプルなエネルギー変換の話です。
ステップ1:まず、おもりが落ちることでどれだけのエネルギーが生み出されたか(仕事がされたか)を計算します。
1回あたりのエネルギーは「質量 \(m\) × 重力加速度 \(g\) × 高さ \(h\)」で、\(2.0 \times 9.8 \times 1.5 = 29.4\) ジュールです。
ステップ2:この操作を50回繰り返したので、総エネルギーは \(29.4 \times 50 = 1470\) ジュールになります。
ステップ3:この1470ジュールのエネルギーが、すべて水を温める「熱」に変わります。
ステップ4:問題文から、水と容器全体を1℃温めるのに \(2.1 \times 10^2 = 210\) ジュールの熱が必要だとわかっています(これが熱容量の意味です)。
ステップ5:では、1470ジュールの熱があれば、全体を何℃温めることができるでしょうか? これは割り算で、「発生した総熱量 ÷ 1℃温めるのに必要な熱量」を計算すればよく、\(1470 \div 210 = 7.0\) となります。

結論と吟味

計算の結果、水温は \(7.0 \text{ ℃}\) 上昇します。これは、19世紀にジュールが行った、熱の仕事当量を求める有名な実験に基づいた問題です。力学的エネルギーが摩擦や抵抗によって熱エネルギーに変換されるという、エネルギー保存則の重要な一例を具体的に計算する問題であり、物理的に妥当な結果です。

解答 7.0 ℃

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 仕事と熱の等価性(エネルギー保存則):
    • 核心: 力学的な仕事\(W\)と熱エネルギー\(Q\)は、互いに変換可能な同じ「エネルギー」という土俵の上の存在である、という物理学の根幹をなす概念です。この問題では、おもりの落下によって重力がした仕事が、すべて水の温度上昇(熱)に変わります。
    • 理解のポイント: この変換関係は、エネルギー保存則によって「重力がした仕事の総量 \(W\) = 発生した熱量 \(Q\)」という単純な等式で結びつけられます。異なる物理現象(力学と熱学)を「エネルギー」という共通の言葉でつなぐ視点が重要です。
  • 仕事と熱量の具体的な計算式:
    • 核心: 上記の \(W=Q\) という関係式を立てた後、\(W\)と\(Q\)をそれぞれ具体的な物理量で計算するための「道具」となる公式です。
    • 理解のポイント:
      • 仕事の計算: 重力がした仕事は、位置エネルギーの変化量として \(W = mgh\) で計算します。
      • 熱量の計算: 温度上昇に必要な熱量は、熱容量を用いて \(Q = C\Delta T\) で計算します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電気エネルギーと熱: 電熱線に電流を流して水を温める問題。消費電力量(仕事)\(W = Pt = IVt\) が、熱量 \(Q = mc\Delta T\) に変換されると考え、\(IVt = mc\Delta T\) の式を立てます。
    • 運動エネルギーと熱: 摩擦のある面を物体が滑って止まる問題。初めに持っていた運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) が、すべて摩擦によって発生する熱 \(Q\) に変換されたと考えます。
    • 状態変化を伴う場合: 落下したおもりのエネルギーで氷を溶かす問題。仕事 \(W = mgh\) が、温度上昇ではなく、氷を溶かすための融解熱 \(Q = mL\) (\(L\)は融解熱)に使われると考え、\(mgh = mL\) の式を立てます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギー変換の経路を特定する: まず、「何エネルギー」が「何エネルギー」に変わったのか、問題文からエネルギーの変換ストーリーを読み取ります。例:「おもりの落下(位置エネルギー)」→「羽根車の回転(仕事)」→「水の温度上昇(熱エネルギー)」。
    2. 「すべて〜に使われる」という文言に注目: この一文は、エネルギー変換効率が100%であることを意味し、\(W=Q\) のような単純な等式を立ててよいという許可証です。もし「仕事の80%が熱になった」とあれば、\(0.8W=Q\) のように補正が必要です。
    3. 単位系を統一する: 仕事や熱量の単位はジュール(J)に統一します。熱容量の単位が J/K、質量が kg、重力加速度が m/s²、距離が m であることを確認し、一貫した単位(SI基本単位系)で計算することが重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 仕事の回数を掛け忘れる:
    • 誤解: 1回分の仕事 \(mgh\) だけで計算してしまい、温度上昇を非常に小さく見積もってしまう。
    • 対策: 問題文の「50回くり返した」という部分に必ず下線や丸印をつけるなど、目立たせる工夫をしましょう。計算の最後に、この回数を掛けたか再確認する癖をつけることが有効です。
  • 熱容量と比熱の混同:
    • 誤解: 問題で与えられているのが「熱容量 \(C\)」なのに、水の質量を探して比熱の式 \(Q=mc\Delta T\) を使おうとしてしまう。
    • 対策: 「熱容量」は「質量×比熱」がすでに計算された、物体全体としての熱のためやすさを表す量だと理解しましょう。単位が「J/K」なら熱容量、「J/(g・K)」や「J/(kg・K)」なら比熱、と単位で区別するのが確実です。この問題では「水と容器と羽根車」をひとまとめにした熱容量が与えられているため、個別の質量や比熱は不要です。
  • 指数表記の計算ミス:
    • 誤解: 熱容量が \(2.1 \times 10^2\) J/K と与えられているのに、計算時に \(2.1\) だけで計算してしまうなど、\(10^2\) の部分を忘れる。
    • 対策: 指数表記は、計算を始める前に \(210\) のように普通の数値に直してから式に代入すると、ケアレスミスを減らせます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • エネルギー保存則 (\(W=Q\)):
    • 選定理由: この問題は、異なる形態のエネルギー(力学的エネルギーと熱エネルギー)の間の変換を扱っています。物理学の最も根源的な法則であるエネルギー保存則を適用するのが、最も自然で論理的な思考の流れです。
    • 適用根拠: 問題文に「重力がおもりにした仕事は、すべて温度の上昇に使われるものとする」と明記されています。これは、途中で音や光などの他のエネルギーに変換されたり、外部に熱が逃げたりすることなく、仕事が100%熱に変換されるという理想的な状況設定を示しています。この仮定があるからこそ、単純な等式 \(W=Q\) が成立するのです。
  • 仕事の式 (\(W=mgh\)) と熱量の式 (\(Q=C\Delta T\)):
    • 選定理由: エネルギー保存則はエネルギーの「収支」を表す関係式です。その収支計算の各項目(収入としての仕事、支出としての熱量)を具体的に計算するために、それぞれの定義式が必要になります。
    • 適用根拠:
      • \(W=mgh\): 重力という一定の力 \(mg\) が、力の向きに距離 \(h\) だけ物体を動かすときの仕事であり、これは位置エネルギーの定義そのものです。
      • \(Q=C\Delta T\): 物体の温度上昇 \(\Delta T\) が、それに与えられた熱量 \(Q\) に比例するという実験事実に基づく定義式です。その比例定数 \(C\) が熱容量です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の計算を工夫する:
    • 計算式 \(\Delta T = \displaystyle\frac{50 \times 2.0 \times 9.8 \times 1.5}{210}\) を見て、いきなり分子を全部掛け算してはいけません。
    • まず、\(50 \times 2.0 = 100\) のように計算しやすい部分から手をつけると、式は \(\displaystyle\frac{100 \times 9.8 \times 1.5}{210}\) となります。
    • 次に、分母の \(210\) と分子の \(100\) を10で割って、\(\displaystyle\frac{10 \times 9.8 \times 1.5}{21}\) とします。
    • 分母の \(21\) は \(3 \times 7\) です。分子の \(1.5\) は \(3 \times 0.5\)、\(9.8\) は \(7 \times 1.4\) と分解できることに気づくと、計算が非常に楽になります。
    • \(\displaystyle\frac{10 \times (7 \times 1.4) \times (3 \times 0.5)}{3 \times 7}\) となり、3と7をきれいに約分できます。
    • 残るのは \(10 \times 1.4 \times 0.5 = 10 \times 0.7 = 7.0\) です。大きな数を掛ける前に、素因数分解を意識して約分するのが賢い方法です。
  • 有効数字を意識する:
    • 問題で与えられている数値(2.0 kg, 1.5 m, 9.8 m/s², 2.1 × 10² J/K)はすべて有効数字2桁です。したがって、最終的な答えも有効数字2桁で \(7.0\) ℃と答えるのが適切です。計算途中で割り切れても、\(7\) ではなく \(7.0\) と書く意識を持ちましょう。
  • 概算で検算する:
    • 計算を始める前に、おおよその値を予測します。\(g \approx 10 \text{ m/s}^2\), \(C \approx 200 \text{ J/K}\) とすると、
    • 仕事の総量 \(W \approx 50 \times 2.0 \times 10 \times 1.5 = 1500\) J。
    • 温度上昇 \(\Delta T = W/C \approx 1500 / 200 = 7.5\) ℃。
    • この概算値と、最終的に計算した \(7.0\) ℃が近い値なので、桁を間違えるような大きな計算ミスはなさそうだと判断できます。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]

基本問題

212 熱容量

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱容量の定義と計算」です。熱容量という物理量の意味と、それを用いた基本的な計算式を正しく理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 熱容量の定義: ある物体の温度を 1K (または 1℃) 上昇させるのに必要な熱量のことです。単位は [J/K] で表されます。
  2. 熱量と温度変化の関係式: 物体に与えた熱量 \(Q\)、物体の熱容量 \(C\)、物体の温度変化 \(\Delta T\) の間には、\(Q = C\Delta T\) という関係が成り立ちます。
  3. 単位の関係: 熱量 \(Q\) の単位は [J]、熱容量 \(C\) の単位は [J/K]、温度変化 \(\Delta T\) の単位は [K] であり、公式の各項の単位が整合していることを確認することが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題で与えられている熱量 \(Q\) と熱容量 \(C\) の値を、関係式 \(Q = C\Delta T\) に代入します。
  2. この式を、求める物理量である温度上昇 \(\Delta T\) について解きます。

この先は、会員限定コンテンツです

記事の続きを読んで、物理の「なぜ?」を解消しませんか?
会員登録をすると、全ての限定記事が読み放題になります。

PVアクセスランキング にほんブログ村