17 速度の分解
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、川を横切る船の運動を題材とした、速度の合成・分解に関する典型的な問題です。岸から見た船の運動が、船自身の運動(静水上の運動)と、川の流れの運動という2つの独立した運動の重ね合わせで記述されることを理解することが核心となります。
- 川幅: \(30 \text{ m}\)
- 船首の向き: 川岸に対して直角
- 実際の進路: 川岸に対して \(30^\circ\) の方向
- 対岸への到達時間: \(t = 15 \text{ s}\)
- (1) 船の岸に対する速さ \(v\)
- (2) 船の静水上での速さ \(v_1\)
- (3) 川の流れの速さ \(v_2\)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、物理現象のより本質的な理解を促すため、模範解答とは設問を解く順序とアプローチが異なります。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- 模範解答の解法順序: (1) 岸に対する速さ \(v\) → (2) 静水上の速さ \(v_1\) → (3) 川の流れの速さ \(v_2\)
- この解説の解法順序: (2) 静水上の速さ \(v_1\) → (3) 川の流れの速さ \(v_2\) → (1) 岸に対する速さ \(v\)
- この方針を取る理由
- 「川を横切る運動」と「川に沿って流される運動」を独立して考えるアプローチは、速度の合成・分解の基本原理をより直接的に適用するものであり、教育的価値が高いと判断したためです。
- 特に、「川を横切るのにかかる時間は、川の流れの速さには依存しない」という重要な物理概念を最初に用いることで、現象の理解が深まります。
- 結果への影響
- 設問を解く順番は異なりますが、各設問で求められる物理量の値は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「速度の合成・分解」です。岸に対する速度 \(\vec{v}\) が、静水上の船の速度 \(\vec{v}_1\) と川の流れの速度 \(\vec{v}_2\) のベクトル和 \(\vec{v} = \vec{v}_1 + \vec{v}_2\) で表されることを理解するのが基本です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度のベクトル合成: 岸から見た速度は、静水上の速度と川の流れの速度のベクトル的な足し算で表されます。
- 運動の分解: 川を横切る方向(川岸に垂直)の運動と、川に沿って流される方向(川岸に平行)の運動は、互いに独立していると考えることができます。
- 三角比と三平方の定理: 速度ベクトルがなす直角三角形の幾何学的な関係を解くために利用します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、川を横切る運動は静水上の速さ \(v_1\) のみで決まることに着目し、川幅と到達時間から \(v_1\) を計算します(問2)。
- 次に、速度ベクトルの関係(\(\vec{v} = \vec{v}_1 + \vec{v}_2\))と、実際の進路の角度から、川の流れの速さ \(v_2\) を計算します(問3)。
- 最後に、三平方の定理を用いて、\(v_1\) と \(v_2\) から岸に対する合成速度 \(v\) を計算します(問1)。
問(2)
思考の道筋とポイント
まず、船の静水上での速さ \(v_1\) を求めます。この問題の最大のポイントは、「川を横切る」という運動と「川に流される」という運動を分けて考えることです。船が対岸に到達する、つまり川を横切るという運動は、船首が向いている川岸に垂直な方向の速度成分、すなわち静水上の速さ \(v_1\) のみによって決まります。川の流れ \(v_2\) は川岸に平行な方向の運動であり、川を横切る時間には影響しません。
この設問における重要なポイント
- 運動の分解: 川を横切る方向の運動(距離: 川幅 \(30 \text{ m}\)、速度: \(v_1\)、時間: \(15 \text{ s}\))と、川に流される方向の運動を分離して考えます。
- 時間の共通性: 船が川を横切り終わる時間と、川に流され終わる時間は同じ \(15 \text{ s}\) です。
- 立式: 「(川を横切る方向の距離) = (その方向の速さ) × (時間)」という関係式を立てます。
具体的な解説と立式
船が川を横切る運動(川岸に垂直な方向の運動)に注目します。
この方向の移動距離は、川幅そのものである \(30 \text{ m}\) です。
この方向の速度成分は、船の静水上での速さ \(v_1\) です。
対岸に到達するまでにかかった時間は \(t = 15 \text{ s}\) です。
したがって、これらの間には次の関係式が成り立ちます。
$$ (\text{川幅}) = v_1 \times t $$
使用した物理公式
- 等速直線運動: \(x = vt\)
上記で立てた式を \(v_1\) について解き、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
30 &= v_1 \times 15 \\[2.0ex]v_1 &= \frac{30}{15} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
船が向こう岸にたどり着く、という現象だけを考えます。この「まっすぐ進む」動きは、船自身のエンジンが出す速さ(静水上の速さ)によるものです。川の流れは船を横に流すだけで、向こう岸に着くまでの時間には関係ありません。川の幅が \(30 \text{ m}\) で、渡るのに \(15 \text{ s}\) かかったので、船自身の速さは「距離 ÷ 時間」で \(30 \div 15 = 2.0 \text{ m/s}\) と計算できます。
船の静水上での速さは \(2.0 \text{ m/s}\) です。この考え方は、運動を互いに直交する成分に分解して独立に扱うという、物理学における非常に重要なアプローチに基づいています。
問(3)
思考の道筋とポイント
次に、川の流れの速さ \(v_2\) を求めます。岸から見た船の実際の速度 \(\vec{v}\) は、静水上の速度 \(\vec{v}_1\)(川を横切る方向)と川の流れの速度 \(\vec{v}_2\)(川に沿う方向)のベクトル和で表されます。問題文から、\(\vec{v}_1\) と \(\vec{v}_2\) は直角をなします。そして、合成された速度 \(\vec{v}\) の方向が、川岸と \(30^\circ\) の角度をなすことが分かっています。この速度ベクトルのなす直角三角形の幾何学的な関係を利用して \(v_2\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 速度のベクトル図: \(\vec{v}_1\), \(\vec{v}_2\), \(\vec{v}\) の関係をベクトル図(直角三角形)で正しく描きます。
- 三角比の利用: 速度ベクトルのなす直角三角形において、角度 \(30^\circ\) と辺の長さ(速度の大きさ)の関係を三角比(特にタンジェント)で表します。
- 既知の値の利用: (2)で求めた \(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\) を利用します。
具体的な解説と立式
速度の合成の関係 \(\vec{v} = \vec{v}_1 + \vec{v}_2\) をベクトル図で考えます。
\(\vec{v}_1\) は川岸に垂直、\(\vec{v}_2\) は川岸に平行なので、この2つのベクトルは直角をなします。合成ベクトル \(\vec{v}\) は、この直角三角形の斜辺にあたります。
問題の図から、合成速度 \(\vec{v}\) の向き(船が実際に進む向き)と川岸(\(\vec{v}_2\) の向き)とのなす角が \(30^\circ\) です。
この速度ベクトルの直角三角形において、辺の長さの比は三角比で表すことができます。
$$ \tan 30^\circ = \frac{(\text{対辺の長さ})}{(\text{底辺の長さ})} = \frac{v_1}{v_2} $$
使用した物理公式
- 速度の合成
- 三角比
上記で立てた式を \(v_2\) について解き、(2)で求めた \(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \frac{v_1}{\tan 30^\circ} \\[2.0ex]&= \frac{2.0}{1/\sqrt{3}} \\[2.0ex]&= 2.0 \times \sqrt{3} \\[2.0ex]&\approx 2.0 \times 1.73 \\[2.0ex]&= 3.46 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(3.5 \text{ m/s}\) となります。
船がまっすぐ対岸へ進む速さ(\(v_1\))と、川に横へ流される速さ(\(v_2\))の結果、船は斜め \(30^\circ\) の方向に進みました。この「速さの三角形」の関係を使い、(2)で求めた「まっすぐ進む速さ」と角度 \(30^\circ\) の情報から、「横へ流される速さ」、つまり川の流れの速さを計算します。
川の流れの速さは \(3.5 \text{ m/s}\) です。静水上の速さ \(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\) よりも速い流れであることがわかります。そのため、船は対岸にまっすぐ進むよりも、かなり下流に流されて進むことになり、進路が \(30^\circ\) という比較的小さな角度になったことも物理的に妥当です。
問(1)
思考の道筋とポイント
最後に、船の岸に対する速さ \(v\) を求めます。これは、(2)で求めた静水上の速さ \(v_1\) と(3)で求めた川の流れの速さ \(v_2\) の合成速度の大きさです。\(v_1\) と \(v_2\) は互いに直角なので、速度ベクトルがなす直角三角形において三平方の定理を用いることで、斜辺の長さにあたる \(v\) を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 速度の合成: 岸に対する速さ \(v\) は、\(v_1\) と \(v_2\) の合成速度の大きさです。
- 三平方の定理: 互いに直交する2つの速度 \(v_1\), \(v_2\) から合成速度 \(v\) を求める際に、\(v^2 = v_1^2 + v_2^2\) の関係を使います。
- 既知の値の利用: (2)で求めた \(v_1\) と(3)で求めた \(v_2\) の値を用います。
具体的な解説と立式
速度ベクトルのなす直角三角形において、三平方の定理を適用します。
斜辺が \(v\)、他の二辺が \(v_1\) と \(v_2\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ v^2 = v_1^2 + v_2^2 $$
したがって、\(v\) は次のように求められます。
$$ v = \sqrt{v_1^2 + v_2^2} $$
使用した物理公式
- 速度の合成
- 三平方の定理
上記で立てた式に、\(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\) と \(v_2 = 2.0\sqrt{3} \text{ m/s}\) を代入します。(計算の途中であるため、近似値ではなく \(\sqrt{3}\) を用います)
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{(2.0)^2 + (2.0\sqrt{3})^2} \\[2.0ex]&= \sqrt{4.0 + (4.0 \times 3)} \\[2.0ex]&= \sqrt{4.0 + 12.0} \\[2.0ex]&= \sqrt{16.0} \\[2.0ex]&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
岸から見た船の本当の速さは、船が自分で進む速さ(対岸方向)と川に流される速さ(下流方向)を合わせたものです。この2つの速さは直角の関係にあるので、「三平方の定理」という数学の公式を使って、2つの速さから合成された速さを計算することができます。
船の岸に対する速さは \(4.0 \text{ m/s}\) です。
また、この速度ベクトルの三角形は、角度が \(30^\circ, 60^\circ, 90^\circ\) の特別な直角三角形であり、辺の比は \(v_1 : v_2 : v = 1 : \sqrt{3} : 2\) となります。
(2)で求めた \(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\) を基準にすると、\(v = 2 \times v_1 = 4.0 \text{ m/s}\)、\(v_2 = \sqrt{3} \times v_1 = 2.0\sqrt{3} \approx 3.5 \text{ m/s}\) となり、すべての計算結果が整合していることが確認できます。
思考の道筋とポイント
まず、(1)の岸に対する速さ \(v\) を求めます。船が実際に進んだ距離(AからBまでの距離)を、川幅と進んだ角度から幾何学的に求め、かかった時間で割ることで計算します。次に、その速さ \(v\) を川岸に垂直な成分 \(v_1\) と平行な成分 \(v_2\) に分解することで、(2)と(3)を解きます。
この設問における重要なポイント
- 幾何学的な考察: 川幅、実際の進路、川岸が作る直角三角形(移動距離の三角形)に着目します。
- 三角比の利用: この直角三角形の辺の比から、船が実際に進んだ距離を求めます。
- 速度の分解: (1)で求めた合成速度 \(v\) を、三角比を用いて \(v_1\) と \(v_2\) に分解します。
具体的な解説と立式
(1) 岸に対する速さ \(v\) の計算
船の移動経路と川岸が作る直角三角形を考えます。川幅が \(30 \text{ m}\) で、これは直角三角形の高さに相当します。船の進路は川岸と \(30^\circ\) の角度をなすので、実際に進んだ距離を \(L\) とすると、
$$ \sin 30^\circ = \frac{(\text{川幅})}{L} $$
この \(L\) を時間 \(t=15 \text{ s}\) で進んだので、岸に対する速さ \(v\) は、
$$ v = \frac{L}{t} $$
(2), (3) 成分速度 \(v_1\), \(v_2\) の計算
(1)で求めた岸に対する速さ \(v\) を、川岸に垂直な成分(静水上の速さ \(v_1\))と平行な成分(川の流れの速さ \(v_2\))に分解します。速度ベクトルのなす直角三角形を考えると、
$$ v_1 = v \sin 30^\circ $$
$$ v_2 = v \cos 30^\circ $$
使用した物理公式
- 等速直線運動: \(x = vt\)
- 速度の分解
- 三角比
(1)の計算:
まず、進んだ距離 \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{(\text{川幅})}{\sin 30^\circ} \\[2.0ex]&= \frac{30}{1/2} \\[2.0ex]&= 60 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
次に、速さ \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{L}{t} \\[2.0ex]&= \frac{60}{15} \\[2.0ex]&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
(2)の計算:
$$
\begin{aligned}
v_1 &= v \sin 30^\circ \\[2.0ex]&= 4.0 \times \frac{1}{2} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
(3)の計算:
$$
\begin{aligned}
v_2 &= v \cos 30^\circ \\[2.0ex]&= 4.0 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]&= 2.0\sqrt{3} \\[2.0ex]&\approx 2.0 \times 1.73 \\[2.0ex]&= 3.46 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(3.5 \text{ m/s}\) となります。
このアプローチでも、すべての答えが一致することが確認できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の分解と合成(ベクトルの考え方):
- 核心: この問題の全ての現象は、「岸から見た船の運動(合成運動)」が、「船が自力で進む運動(静水上の運動)」と「川が流れる運動」という2つの独立した運動のベクトル的な重ね合わせ(合成)で表される、という一点に集約されます。
- 理解のポイント: \(\vec{v}_{\text{岸から見た船}} = \vec{v}_{\text{静水上の船}} + \vec{v}_{\text{川の流れ}}\) というベクトル関係式が物理的背景です。この問題では、\(\vec{v}_{\text{静水上の船}}\)と\(\vec{v}_{\text{川の流れ}}\)が直角なので、速度ベクトルは直角三角形を形成します。
- 各方向の運動の独立性:
- 核心: 川を横切る方向(川岸に垂直)の運動と、川に沿って流される方向(川岸に平行)の運動は、互いに影響を与えません。
- 理解のポイント: 「川を横切るのにかかる時間」は、川を横切る方向の速度成分(この問題では\(v_1\))と川幅だけで決まり、川の流れの速さ(\(v_2\))には一切依存しません。この原理を理解することが、この種の問題を効率的に解く鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 風の中を飛ぶ飛行機: 「川の流れ」が「風」に、「船」が「飛行機」に置き換わっただけで、考え方は全く同じです。対地速度 = 対気速度 + 風速 のベクトル和で考えます。
- 斜方投射: 物体を斜めに投げ上げた運動も、水平方向の「等速直線運動」と鉛直方向の「等加速度運動(自由落下)」という2つの独立した運動の合成として扱います。運動を直交する2方向に分解して考える点で、本質は同じです。
- 最短時間で川を渡る問題: 川を最短時間で渡るには、船首を常に対岸にまっすぐ向ける必要があります。これは、川を横切る速度成分を最大にするためであり、まさにこの問題の状況設定そのものです。
- 最短距離で川を渡る問題: 川を最短距離で渡る(まっすぐ対岸に到達する)には、あらかじめ上流側に船首を向けて、川に流される分を相殺する必要があります。この場合、速度ベクトルの三角形は直角三角形になりますが、斜辺が静水上の速さ \(v_1\) になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 基準となる座標系を明確にする: 「岸に対する速度」「静水に対する速度」など、誰から見た速度なのかを常に意識します。
- 運動を分解する軸を設定する: 通常は「川の流れに平行な方向」と「垂直な方向」に分解するのが最も有効です。
- 時間は共通のパラメータ: 分解した2つの方向の運動で、経過時間 \(t\) は共通です。この時間 \(t\) を媒介にして、2つの方向の運動を結びつけることができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 速度のベクトル関係の誤解:
- 誤解: 岸に対する速さ \(v\)、静水上の速さ \(v_1\)、川の流れの速さ \(v_2\) の関係を、単純な足し算や引き算(\(v = v_1 + v_2\))で計算してしまう。
- 対策: 速度は向きを持つベクトル量であることを常に意識し、必ずベクトル図を描いて考える習慣をつけましょう。この問題のように直角に交わる場合は、三平方の定理や三角比を使います。
- 「川を横切る時間」の計算ミス:
- 誤解: 川を横切る時間を計算する際に、岸に対する速さ \(v\) を使ってしまう。(例: \(t = (\text{川幅}) / v\))
- 対策: 「川を横切る」という運動に寄与するのは、川岸に垂直な速度成分(この問題では \(v_1\))のみである、という「運動の独立性」の原理を徹底しましょう。正しくは \(t = (\text{川幅}) / v_1\) です。
- 角度の取り違え:
- 誤解: 問題文の「川岸に対して \(30^\circ\) の方向に進み」という記述を、速度ベクトルのどの部分の角度かを取り違える。
- 対策: 必ず速度のベクトル図を描き、\(\vec{v}\)(合成速度)と川岸(\(\vec{v}_2\) の方向)のなす角が \(30^\circ\) であることを図中に明記しましょう。これにより、三角比の適用ミスを防げます。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 2つの世界の重ね合わせ: 「もし川が流れていなかったら、船は \(15 \text{ s}\) でまっすぐ \(30 \text{ m}\) 進む世界」と、「船が止まったままで、川の水だけが流れている世界」を想像します。実際の現象は、この2つの世界での出来事が同時に起こった結果として現れます。
- 速度のベクトル図: すべての速度ベクトルを、同じ始点から矢印で描くことが極めて重要です。静水上の速度 \(\vec{v}_1\)(川岸に垂直)と川の流れの速度 \(\vec{v}_2\)(川岸に平行)を描き、この2つのベクトルで作られる長方形の対角線として、岸に対する速度 \(\vec{v}\) を描きます。この図を描くことで、すべての速度の関係性が一目瞭然となります。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 速度と距離の図を区別する: この問題では、速度ベクトルが作る三角形(\(\vec{v}_1, \vec{v}_2, \vec{v}\))と、移動距離が作る三角形(川幅 \(30 \text{ m}\)、流された距離、実際の移動距離 \(L\))は相似形になります。どちらの図で考えているのかを意識することが重要です。
- 角度を正確に記入する: どの角が \(30^\circ\) なのか、どの角が直角なのかを明確に図に書き込みましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 等速直線運動の式 (\(x = vt\)):
- 選定理由: (2)を先に解くアプローチでは、「川を横切る」という運動が、川岸に垂直な方向の等速直線運動とみなせるため。
- 適用根拠: 川を横切る方向には力が働いていない(と仮定される)ため、速度 \(v_1\) は一定です。したがって、距離、速さ、時間の関係式が適用できます。
- 三角比 (\(\tan\theta, \sin\theta, \cos\theta\)):
- 選定理由: 速度ベクトルがなす直角三角形において、既知の辺(速度の大きさ)と角度から、未知の辺を求めるため。
- 適用根拠: 速度ベクトル図が幾何学的な直角三角形を形成しているため、その辺の比の関係を数式化する数学的なツールとして三角比が最適です。
- 三平方の定理 (\(c^2 = a^2 + b^2\)):
- 選定理由: (1)を最後に解くアプローチでは、互いに直交する2つの速度成分 \(v_1\) と \(v_2\) から、合成速度 \(v\) の大きさを求めるため。
- 適用根拠: 速度ベクトル図が直角三角形であるため、その3辺の長さ(速度の大きさ)の関係を表す最も基本的な定理として適用します。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- アプローチ1(物理的に素直な解法):
- (2) \(v_1\) の計算: 川を横切る運動に着目。\((\text{川幅}) = v_1 \times t\) より \(v_1 = 30 / 15 = 2.0 \text{ m/s}\)。
- (3) \(v_2\) の計算: 速度ベクトルの三角形に着目。\(\tan 30^\circ = v_1 / v_2\) より \(v_2 = v_1 / \tan 30^\circ = 2.0 / (1/\sqrt{3}) \approx 3.5 \text{ m/s}\)。
- (1) \(v\) の計算: 三平方の定理より \(v = \sqrt{v_1^2 + v_2^2} = \sqrt{2.0^2 + (2.0\sqrt{3})^2} = 4.0 \text{ m/s}\)。
- アプローチ2(模範解答の解法):
- (1) \(v\) の計算: 移動距離の三角形に着目。実際の移動距離 \(L = (\text{川幅}) / \sin 30^\circ = 60 \text{ m}\)。よって \(v = L / t = 60 / 15 = 4.0 \text{ m/s}\)。
- (2) \(v_1\) の計算: 速度の分解。\(\vec{v}\) の川岸垂直成分が \(\vec{v}_1\) なので、\(v_1 = v \sin 30^\circ = 4.0 \times (1/2) = 2.0 \text{ m/s}\)。
- (3) \(v_2\) の計算: 速度の分解。\(\vec{v}\) の川岸平行成分が \(\vec{v}_2\) なので、\(v_2 = v \cos 30^\circ = 4.0 \times (\sqrt{3}/2) \approx 3.5 \text{ m/s}\)。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 特殊な直角三角形の辺の比を活用する: この問題の速度三角形は、角度が \(30^\circ, 60^\circ, 90^\circ\) なので、辺の比は \(v_1 : v_2 : v = 1 : \sqrt{3} : 2\) となります。どれか一つでも速度が分かれば(例えば \(v_1=2.0\))、他の速度は \(v=2 \times 2.0 = 4.0\), \(v_2=\sqrt{3} \times 2.0 \approx 3.5\) のように、比の関係から暗算レベルで求めることができ、計算ミスを減らせます。
- \(\sqrt{3}\) の近似値: \(\sqrt{3} \approx 1.73\) は物理の問題で頻出します。覚えておくと計算がスムーズになります。
- 有効数字の意識: 問題文で与えられている数値(30 m, 15 s など)は2桁なので、最終的な答えも有効数字2桁(例: 3.5 m/s)に揃えるのが基本です。計算途中では、\(\sqrt{3}\) のような無理数はそのまま使い、最後の最後に近似値を代入して丸めるようにすると、誤差が蓄積しにくくなります。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- \(v_1 = 2.0 \text{ m/s}\), \(v_2 \approx 3.5 \text{ m/s}\), \(v = 4.0 \text{ m/s}\) という結果を見てみましょう。
- 川の流れの速さ \(v_2\) が静水上の速さ \(v_1\) より大きいので、船は横切る距離よりも下流に流される距離の方が長くなるはずです。これは、進路の角度が \(30^\circ\) と、\(45^\circ\) よりも岸に近い角度になっていることと整合します。
- 合成速度 \(v\) は、成分である \(v_1\) や \(v_2\) よりも大きくなければなりません。\(4.0 > 2.0\) かつ \(4.0 > 3.5\) なので、この点も妥当です。
- 別解との比較:
- 「川を横切る運動から \(v_1\) を先に求める」アプローチと、「実際の移動距離から \(v\) を先に求める」アプローチの2通りで計算しました。全く異なる道筋をたどったにもかかわらず、すべての答え(\(v_1, v_2, v\))が完全に一致しました。これは、計算の正しさと物理法則の理解が正しいことを強力に裏付けています。
18 等加速度直線運動
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、一定の加速度で運動する列車の通過を題材とした、等加速度直線運動の公式を応用する問題です。「列車の前端がA地点を通過」してから「後端がA地点を通過する」までの間に、列車は自身の長さ \(l\) だけ進む、という状況設定を正しく理解することが出発点となります。
- 加速度: \(a\) (一定)
- A地点を前端が通過するときの速さ(初速度): \(u\)
- A地点を後端が通過するときの速さ(終速度): \(v\)
- (1) 列車がA地点を通過するのに要した時間 \(t\)
- (2) 列車の長さ \(l\)
- (3) 列車の中点がA地点を通過するときの速さ \(v’\)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、模範解答に記載されている別解をより詳細に解説し、さらに物理的な意味合いを深く掘り下げることで、学習者の多角的な理解を促進することを目的としています。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- (2) 列車の長さ \(l\) の計算: 模範解答では \(v^2 – u^2 = 2al\) の公式を直接用いていますが、この解説では、その公式を用いる解法に加え、模範解答で「別解」として示されている2つの方法(\(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を使う方法、平均の速さを使う方法)を、それぞれ独立した解法として、思考プロセスから丁寧に解説します。
- (3) 中点の速さ \(v’\) の計算: 模範解答と同様のアプローチに加え、時間についての考察を深める別解を追加します。
- この方針を取る理由
- 等加速度直線運動の問題は、複数の公式を適切に使い分ける能力が問われます。様々なアプローチを学ぶことで、問題の条件に応じて最適な解法を選択する応用力が養われるためです。
- 特に「平均の速さ」を用いた解法は、計算が簡潔になるだけでなく、等加速度運動の性質を直感的に理解する上で非常に教育的価値が高いと判断したためです。
- 結果への影響
- どの解法を用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「等加速度直線運動」です。どの物理量(初速度、終速度、加速度、時間、移動距離)が与えられていて、どの物理量を求めたいのかを正確に把握し、3つの等加速度直線運動の公式から最適なものを選択する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の公式: 以下の3つの公式を状況に応じて使い分けます。
- \(v = v_0 + at\)
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
- 運動の区間の設定: 「前端通過」から「後端通過」までを一つの運動区間と捉え、初速度 \(u\)、終速度 \(v\)、移動距離 \(l\) を対応させます。
- 物理量の読み替え: (3)では、「中点が通過する」という状況を「移動距離が \(l/2\) のとき」と読み替えることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、初速度 \(u\)、終速度 \(v\)、加速度 \(a\) が分かっているので、\(v=v_0+at\) を用いて時間 \(t\) を求めます(問1)。
- 次に、(1)で求めた \(t\) を使って移動距離 \(l\) を計算するか、あるいは時間 \(t\) を含まない公式 \(v^2-v_0^2=2ax\) を使って \(l\) を直接求めます(問2)。
- 最後に、「前端通過」から「中点通過」までを新たな運動区間として設定し、移動距離が \(l/2\) であることを利用して、中点通過時の速さ \(v’\) を求めます(問3)。
問(1)
思考の道筋とポイント
列車がA地点を通過するのに要した時間 \(t\) を求める問題です。この運動は、初速度が \(u\)、終速度が \(v\)、加速度が \(a\) の等加速度直線運動です。これらの4つの物理量(\(t, u, v, a\))の関係を表す公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 物理量の整理: 初速度 \(v_0 = u\)、終速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) の関係を考えます。
- 公式の選択: 移動距離 \(l\) を含まない公式 \(v = v_0 + at\) が最適であると判断します。
具体的な解説と立式
列車の前端がA地点を通過してから、後端がA地点を通過するまでの運動を考えます。
この運動の初速度は \(u\)、終速度は \(v\)、加速度は \(a\)、かかった時間は \(t\) です。
等加速度直線運動の公式のうち、速度と時間の関係を表す式は以下です。
$$ v = u + at $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(v = v_0 + at\)
上記で立てた式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
at &= v – u \\[2.0ex]t &= \frac{v-u}{a}
\end{aligned}
$$
「後の速さ」は「初めの速さ」に「加速度と時間の積」を足したものです。この関係式を使って、時間について解くことで、列車がA地点を通り過ぎるのにかかった時間を計算します。
列車がA地点を通過するのに要した時間は \(t = \displaystyle\frac{v-u}{a}\) です。加速度 \(a\) が大きいほど、また速度差 \(v-u\) が小さいほど、通過時間は短くなるという、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
列車の長さ \(l\) を求める問題です。列車がA地点を通過する間に進む距離が、列車の長さ \(l\) に相当します。この運動区間(移動距離 \(l\))における初速度は \(u\)、終速度は \(v\)、加速度は \(a\) です。これらの物理量と \(l\) を結びつける公式を選択します。
この設問における重要なポイント
- 物理量の整理: 移動距離 \(x = l\)、初速度 \(v_0 = u\)、終速度 \(v\)、加速度 \(a\) の関係を考えます。
- 公式の選択: 時間 \(t\) を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うと、(1)の結果を使わずに直接計算できます。
具体的な解説と立式
列車の前端がA地点を通過してから後端が通過するまでの移動距離は \(l\) です。
この間の初速度は \(u\)、終速度は \(v\)、加速度は \(a\) です。
等加速度直線運動の公式のうち、時間を含まずに距離と速度の関係を表す式は以下です。
$$ v^2 – u^2 = 2al $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
上記で立てた式を \(l\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{v^2 – u^2}{2a}
\end{aligned}
$$
等加速度運動では、「(後の速さの2乗)引く(初めの速さの2乗)は、2倍の加速度と移動距離の積に等しい」という便利な関係式があります。これを使って、列車の長さ(移動距離)を計算します。
列車の長さは \(l = \displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2a}\) です。この式は、(1)で求めた \(t\) を使わずに導出できるため、(1)の計算にミスがあったとしても影響を受けないという利点があります。
思考の道筋とポイント
(1)で求めた時間 \(t\) を利用して、移動距離 \(l\) を計算します。移動距離、初速度、加速度、時間の関係を表す公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を用います。
具体的な解説と立式
移動距離 \(l\) は、初速度 \(u\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) を用いて次のように表せます。
$$ l = ut + \frac{1}{2}at^2 $$
この式に、(1)で求めた \(t = \displaystyle\frac{v-u}{a}\) を代入します。
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
$$
\begin{aligned}
l &= u \left( \frac{v-u}{a} \right) + \frac{1}{2}a \left( \frac{v-u}{a} \right)^2 \\[2.0ex]&= \frac{u(v-u)}{a} + \frac{1}{2}a \frac{(v-u)^2}{a^2} \\[2.0ex]&= \frac{uv – u^2}{a} + \frac{v^2 – 2uv + u^2}{2a} \\[2.0ex]&= \frac{2(uv – u^2) + (v^2 – 2uv + u^2)}{2a} \\[2.0ex]&= \frac{2uv – 2u^2 + v^2 – 2uv + u^2}{2a} \\[2.0ex]&= \frac{v^2 – u^2}{2a}
\end{aligned}
$$
メインの解法と同じ結果が得られました。
思考の道筋とポイント
等加速度直線運動では、「移動距離 = 平均の速さ × 時間」という関係が成り立ちます。平均の速さ \(\bar{v}\) は、初速度と終速度の算術平均で \(\bar{v} = \displaystyle\frac{u+v}{2}\) と表せます。これと(1)で求めた時間 \(t\) を使って \(l\) を計算します。この方法は計算が非常に簡潔になるため、強力な武器になります。
具体的な解説と立式
等加速度直線運動の移動距離 \(l\) は、平均の速さ \(\bar{v}\) と時間 \(t\) の積で表せます。
$$ l = \bar{v} t $$
ここで、平均の速さ \(\bar{v}\) は、
$$ \bar{v} = \frac{u+v}{2} $$
です。また、(1)より時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{v-u}{a} $$
です。
使用した物理公式
- 移動距離 = 平均の速さ × 時間
- 平均の速さ(等加速度運動): \(\bar{v} = \displaystyle\frac{v_0+v}{2}\)
$$
\begin{aligned}
l &= \left( \frac{u+v}{2} \right) \left( \frac{v-u}{a} \right) \\[2.0ex]&= \frac{(v+u)(v-u)}{2a} \\[2.0ex]&= \frac{v^2 – u^2}{2a}
\end{aligned}
$$
和と差の積の公式を使うことで、非常にすっきりとメインの解法と同じ結果が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
列車の中点がA地点を通過するときの速さ \(v’\) を求める問題です。これは、「列車の前端がA地点を通過してから、列車が \(l/2\) だけ進んだときの速さ」を求めることと同じです。
運動の区間を「前端通過」から「中点通過」までに設定し、初速度 \(u\)、移動距離 \(l/2\)、加速度 \(a\) から、終速度である \(v’\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 運動区間の再設定: 「前端通過 \(\rightarrow\) 中点通過」という新しい運動区間を考えます。
- 物理量の設定: この区間では、初速度は \(u\)、移動距離は \(x = l/2\)、終速度は \(v’\) となります。加速度 \(a\) は常に一定です。
- 公式の選択: 時間が不明なので、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) の公式が適しています。
具体的な解説と立式
「前端通過」から「中点通過」までの運動を考えます。
この運動の初速度は \(u\)、終速度は \(v’\)、加速度は \(a\)、移動距離は \(l/2\) です。
時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を適用すると、
$$ (v’)^2 – u^2 = 2a \left( \frac{l}{2} \right) $$
$$ (v’)^2 – u^2 = al $$
この式に、(2)で求めた \(l = \displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2a}\) を代入します。
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
$$
\begin{aligned}
(v’)^2 – u^2 &= a \left( \frac{v^2 – u^2}{2a} \right) \\[2.0ex](v’)^2 – u^2 &= \frac{v^2 – u^2}{2} \\[2.0ex](v’)^2 &= u^2 + \frac{v^2 – u^2}{2} \\[2.0ex]&= \frac{2u^2 + (v^2 – u^2)}{2} \\[2.0ex]&= \frac{u^2 + v^2}{2}
\end{aligned}
$$
速さ \(v’\) は正なので、
$$ v’ = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}} $$
列車が半分の長さだけ進んだときの速さを求めます。ここでも「(後の速さの2乗)引く(初めの速さの2乗)は、2倍の加速度と移動距離の積に等しい」という関係を使います。移動距離を「列車の長さの半分」として式を立て、(2)で求めた列車の長さを代入して計算します。
中点通過時の速さは \(v’ = \sqrt{\displaystyle\frac{u^2 + v^2}{2}}\) です。この形は、\(u^2\) と \(v^2\) の「相加平均」の平方根になっています。
ここで注意すべきは、中点通過時の速さ \(v’\) は、初速度 \(u\) と終速度 \(v\) の平均 \(\displaystyle\frac{u+v}{2}\) ではない、ということです。等加速度運動では、速さは時間に対して線形に増加しますが、距離に対しては線形に増加しないためです。つまり、半分の距離を進んだ時点では、まだ半分の時間は経過していません(速度が遅い前半の方が時間がかかるため)。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 等加速度直線運動の3公式:
- 核心: この問題は、等加速度直線運動を記述する3つの基本公式を、問題の状況に応じて適切に選択し、適用することに尽きます。
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) (距離と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (速度と距離の関係)
- 理解のポイント: どの公式にどの物理量が含まれているか(あるいは含まれていないか)を把握することが、解法の選択を迅速かつ正確に行うための鍵です。例えば、(2)で \(l\) を求める際に、時間 \(t\) を使いたくなければ3番目の式を、(1)で求めた \(t\) を活用したければ1番目や2番目の式から導出された関係を使う、といった戦略が立てられます。
- 核心: この問題は、等加速度直線運動を記述する3つの基本公式を、問題の状況に応じて適切に選択し、適用することに尽きます。
- 運動区間の設定:
- 核心: 「列車がA地点を通過する」という現象を、「列車の前端がA地点に達してから、後端がA地点を通過するまでの運動」と捉え、この区間における初速度、終速度、移動距離を正しく設定することが、立式の前提となります。
- 理解のポイント: この問題では、移動距離 \(x\) が列車の長さ \(l\) に等しいと読み替えることが重要です。同様に、(3)では「中点が通過する」を「移動距離が \(l/2\) の運動」と読み替えることで、同じ公式を適用できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- トンネルを通過する電車: 「A地点」が「トンネルの入り口」に、「列車の長さ」が「トンネルの長さ+列車の長さ」に変わるだけで、全く同じ考え方が適用できます。
- ブレーキをかけて停止するまでの運動: 終速度 \(v=0\) となる等加速度直線運動(加速度は負)です。停止するまでの時間や距離を求める問題は、この問題の変形と見なせます。
- 自由落下・投げ上げ: 加速度が重力加速度 \(g\) で一定の等加速度直線運動です。初速度や高さを求める問題で、同じ3公式が活躍します。
- 初見の問題での着眼点:
- 既知の物理量と未知の物理量をリストアップする: 問題文から \(v_0, v, a, t, x\) のうち、何が与えられていて、何を求めたいのかを整理します。
- 最適な公式を選択する: リストアップした物理量を見て、最も少ない手間で解ける公式を選びます。「求めたい未知数」と「既知の量」だけが含まれている公式(あるいは、他の設問で既に求めた量を使える公式)が理想的です。特に、時間 \(t\) が不要な場面で \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使えると、計算が大幅に楽になることが多いです。
- 「平均の速さ」の活用を検討する: 等加速度直線運動では、移動距離は「平均の速さ \(\times\) 時間」で求められます。平均の速さは \(\bar{v} = (v_0+v)/2\) と簡単に計算できるため、時間 \(t\) が分かっている場合、移動距離 \(x\) を求めるのに非常に有効です。(問(2)の別解2参照)
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 移動距離の誤認:
- 誤解: 「列車がA地点を通過する」という状況で、移動距離をゼロや他の値と勘違いしてしまう。
- 対策: 図を描いて、運動の始点と終点を明確にしましょう。列車の前端がA地点にある状態(始点)と、後端がA地点にある状態(終点)を描けば、前端が列車の長さ \(l\) だけ進んだことが視覚的に理解できます。
- (3)での安易な平均計算:
- 誤解: 列車の中点が通過するときの速さ \(v’\) を、初速度 \(u\) と終速度 \(v\) の単純な平均(相加平均)である \(\frac{u+v}{2}\) だと考えてしまう。
- 対策: 等加速度運動では、速さは「時間」に対しては線形に(比例して)変化しますが、「距離」に対しては線形に変化しません(\(v^2\) が \(x\) に比例)。したがって、半分の距離を進んだからといって、速さがちょうど中間になるとは限りません。この問題の答えが \(\sqrt{\frac{u^2+v^2}{2}}\)(2乗の平均の平方根)という特殊な形になることを理解し、安易な類推をしないようにしましょう。
- 符号のミス:
- 誤解: 減速する場合(ブレーキをかけるなど)に、加速度 \(a\) を正の値として計算してしまう。
- 対策: 最初に決めた正の向き(この問題では右向き)に対して、速度が増加しているなら \(a>0\)、速度が減少しているなら \(a<0\) と、符号を正しく設定する習慣をつけましょう。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- v-tグラフの活用: この運動をv-tグラフで描くと、傾きが加速度 \(a\)、切片が初速度 \(u\) の直線になります。時間 \(t\) のときの速度が \(v\) です。
- (1) 時間 \(t\): グラフの傾きが \(a = \frac{v-u}{t}\) であることから、\(t = \frac{v-u}{a}\) が導かれます。
- (2) 列車の長さ \(l\): グラフとt軸で囲まれた台形の面積が移動距離 \(l\) に相当します。面積は \(l = \frac{1}{2}(u+v)t\) であり、これに(1)の \(t\) を代入すると \(l = \frac{v^2-u^2}{2a}\) が得られます。これは「平均の速さ \(\times\) 時間」の考え方そのものです。
- (3) 中点の速さ \(v’\): 移動距離が半分 (\(l/2\)) になる時間 \(t’\) を考え、そのときの速度が \(v’\) です。v-tグラフの面積が \(l/2\) となる \(t’\) を見つけることで \(v’\) を求めることも可能ですが、計算が複雑になるため、\(v^2-v_0^2=2ax\) を使う方が賢明です。
- v-tグラフの活用: この運動をv-tグラフで描くと、傾きが加速度 \(a\)、切片が初速度 \(u\) の直線になります。時間 \(t\) のときの速度が \(v\) です。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 運動の各段階を図示する: ①前端がA地点、②中点がA地点、③後端がA地点、という3つのスナップショットを描くと、それぞれの区間での移動距離(①→②は \(l/2\)、①→③は \(l\))が明確になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = v_0 + at\):
- 選定理由: (1)で、移動距離 \(x\) を情報として使わずに、\(v, u, a, t\) の4者関係から \(t\) を求めるため。
- 適用根拠: 加速度の定義 \(a = \frac{\Delta v}{\Delta t}\) を変形したものであり、等加速度運動の最も基本的な関係式です。
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\):
- 選定理由: (2)と(3)で、時間 \(t\) という媒介変数を介さずに、速度と距離の関係から直接答えを求めるため。計算が簡潔になり、(1)の答えに依存しない独立した解法となります。
- 適用根拠: この公式は、\(v=v_0+at\) と \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) から \(t\) を消去して導かれる関係式です。時間情報が不要な場合に極めて有効です。
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\):
- 選定理由: (2)の別解1で、(1)で求めた \(t\) を使って \(l\) を求めるために使用。終速度 \(v\) の情報を使わずに計算できます。
- 適用根拠: 等加速度運動における移動距離を、時間 \(t\) の関数として直接的に表現する基本公式です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 時間 \(t\) の計算:
- 戦略: 距離を含まない公式 \(v=u+at\) を選択。
- フロー: ①公式を \(t\) について解く (\(t = (v-u)/a\))。
- (2) 列車の長さ \(l\) の計算:
- 戦略: 時間を含まない公式 \(v^2-u^2=2al\) を選択。
- フロー: ①公式を \(l\) について解く (\(l = (v^2-u^2)/2a\))。
- (3) 中点の速さ \(v’\) の計算:
- 戦略: 運動区間を「前端→中点」に再設定し、移動距離を \(l/2\) として、時間を含まない公式を適用。
- フロー: ①「前端→中点」の運動で公式を立てる (\((v’)^2-u^2 = 2a(l/2)\)) → ②式を整理 (\((v’)^2 = u^2+al\)) → ③(2)で求めた \(l\) を代入 → ④\(v’\) について解く。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める: この問題のように、最終的な答えを文字式で表す場合は、途中で数値を代入する必要がないため、計算ミスは主に式変形の過程で起こります。特に、分数の計算や符号の扱いに注意が必要です。
- 別解による検算: (2)では3通りの解法を示しました。もし時間に余裕があれば、メインの解法で得た答えを、別の解法(例えば平均の速さを使う方法)で再計算してみることで、検算ができます。異なるアプローチで同じ答えが得られれば、結果の信頼性は非常に高まります。
- 単位の次元を確認する: 例えば(2)で求めた \(l = \frac{v^2-u^2}{2a}\) の単位を考えます。分子は(速度)\(^2\) ([m²/s²])、分母は加速度 ([m/s²]) なので、全体の単位は \(\frac{[\text{m}^2/\text{s}^2]}{[\text{m}/\text{s}^2]} = [\text{m}]\) となり、確かに長さの単位と一致します。このような次元解析は、式変形のミスを発見するのに役立ちます。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (3) 中点の速さ: \(v’ = \sqrt{\frac{u^2+v^2}{2}}\) という答えについて考えます。もし \(u=3, v=5\) なら、\(v’ = \sqrt{\frac{9+25}{2}} = \sqrt{17} \approx 4.12\) となります。これは、相加平均 \(\frac{3+5}{2}=4\) よりも少し大きい値です。これは、列車が加速しているため、運動の前半(速さが遅い)により多くの時間がかかり、後半(速さが速い)は短い時間で進むため、ちょうど半分の距離を進んだ時点では、速さは時間的な中間点よりも速くなっている、という物理的直感と一致します。
- 極端な場合を考える(思考実験):
- もし初速度 \(u=0\) だったらどうなるでしょう?
(1) \(t = v/a\)
(2) \(l = v^2/(2a)\)
(3) \(v’ = \sqrt{v^2/2} = v/\sqrt{2} \approx 0.707v\)
静止状態から発車した列車が、ある地点を通過し終わるときの速さが \(v\) なら、その中点が通過するときの速さは \(v\) の約7割になる、という具体的なイメージが湧きます。
- もし初速度 \(u=0\) だったらどうなるでしょう?
19 等加速度直線運動
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、2台の自動車AとBの運動を追跡する、等加速度直線運動の応用問題です。それぞれの自動車が異なるタイミングで異なる運動(減速、等速、加速)をするため、各時間帯における運動の状態を正確に把握し、立式することが求められます。特に、「車間距離が最も短くなる」という条件が、物理的にどのような状態に対応するのかを理解することが核心となります。
- 自動車Bの運動:
- \(t=0 \text{ s}\) でブレーキ開始。初速度 \(v_{\text{B0}} = 24.0 \text{ m/s}\)。
- \(t=0 \text{ s}\) から \(t=2.0 \text{ s}\) まで一定の加速度 \(a_{\text{B}}\) で減速。
- \(t=2.0 \text{ s}\) のときの速度 \(v_{\text{B}(2.0)} = 18.0 \text{ m/s}\)。
- 自動車Aの運動:
- \(t=0 \text{ s}\) から \(t=2.0 \text{ s}\) までは等速運動。速度 \(v_{\text{A0}} = 8.0 \text{ m/s}\)。
- \(t=2.0 \text{ s}\) からアクセルを踏み、一定の加速度 \(a_{\text{A}}\) で加速。
- 2台の関係:
- \(t=4.0 \text{ s}\) のとき、車間距離が最短になり、その値は \(5.0 \text{ m}\)。
- 進行方向を正とする。
- (1) Bの加速度 \(a_{\text{B}}\) と、\(t=2.0 \text{ s}\) 以後のAの加速度 \(a_{\text{A}}\)。
- (2) \(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間の車間距離 \(l\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、模範解答の解法に加え、物理現象を別の視点から捉える「相対速度」を用いた別解を能動的に考案し、追加しています。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- (2) 車間距離 \(l\) の計算: 模範解答は、各自動車の絶対的な移動距離を計算し、その差から初期の車間距離を求めるアプローチを取っています。この解説では、その解法に加えて、「自動車Aから見た自動車Bの相対運動」を考えることで、車間距離の変化を直接的に計算する別解を提示します。
- この方針を取る理由
- 2物体の追跡問題において、「相対速度」や「相対加速度」の概念は、問題を劇的に簡略化し、物理的状況をより直感的に理解するための非常に強力なツールです。
- 一方の物体を基準(静止しているとみなす)として考えることで、複雑な2物体の運動を、より単純な1物体の運動として捉え直すことができます。この思考法は応用範囲が広く、教育的価値が非常に高いと判断したためです。
- 結果への影響
- どの解法を用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「2物体の等加速度直線運動」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の公式: 各物体の各区間での運動を記述するために、3つの公式を使い分けます。
- 車間距離が最短になる条件: 後ろの物体Bが前の物体Aに最も近づくのは、Bから見たAの速度(相対速度)がゼロになるとき、すなわち2台の速度が等しくなるときです。\(v_{\text{A}} = v_{\text{B}}\)。
- 運動の時間区間ごとの整理: \(t=0 \sim 2.0 \text{ s}\) の区間と、\(t=2.0 \sim 4.0 \text{ s}\) の区間で、各自動車の運動(初速度、加速度)が異なるため、分けて考える必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、\(t=0 \sim 2.0 \text{ s}\) のBの運動に着目し、速度変化から加速度 \(a_{\text{B}}\) を求めます。
- 次に、「\(t=4.0 \text{ s}\) で車間距離が最短 \(\Rightarrow\) \(t=4.0 \text{ s}\) で \(v_{\text{A}} = v_{\text{B}}\)」という条件を使って、Aの加速度 \(a_{\text{A}}\) を求めます(問1)。
- 最後に、\(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間を基準として、\(t=4.0 \text{ s}\) までの2台の移動距離を計算し、最終的な位置関係から \(t=2.0 \text{ s}\) 時点の車間距離 \(l\) を逆算します(問2)。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずBの加速度 \(a_{\text{B}}\) を求め、次にAの加速度 \(a_{\text{A}}\) を求めます。
\(a_{\text{B}}\) の計算: \(t=0 \text{ s}\) から \(t=2.0 \text{ s}\) までのBの運動に注目します。初速度、終速度、時間が分かっているので、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を使って \(a_{\text{B}}\) を計算します。
\(a_{\text{A}}\) の計算: この問題の核心である「車間距離が最短になる条件」を使います。2台の車間距離が最短になるのは、2台の速度が等しくなるときです。問題文から \(t=4.0 \text{ s}\) で最短になるので、この瞬間に \(v_{\text{A}(4.0)} = v_{\text{B}(4.0)}\) が成り立ちます。それぞれの速度を \(t=2.0 \text{ s}\) の状態を基準に計算し、等式を立てて \(a_{\text{A}}\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- Bの加速度: \(t=0 \sim 2.0 \text{ s}\) の区間で、初速度 \(24.0 \text{ m/s}\)、終速度 \(18.0 \text{ m/s}\)、時間 \(2.0 \text{ s}\) という条件を使います。
- Aの加速度:
- 最短距離の条件: \(t=4.0 \text{ s}\) で \(v_{\text{A}} = v_{\text{B}}\) となることを理解します。
- 各速度の計算: \(t=4.0 \text{ s}\) におけるAとBの速度を、それぞれが等加速度運動を始めた \(t=2.0 \text{ s}\) 時点の速度を初速度として計算します。
- Bの運動: \(t=0 \text{ s}\) から一定の加速度 \(a_{\text{B}}\) で運動を続けます。
- Aの運動: \(t=2.0 \text{ s}\) から加速度 \(a_{\text{A}}\) で運動を始めます。
具体的な解説と立式
Bの加速度 \(a_{\text{B}}\) の計算:
\(t=0 \sim 2.0 \text{ s}\) のBの運動について、公式 \(v = v_0 + at\) を適用します。
初速度 \(v_0 = 24.0\)、終速度 \(v = 18.0\)、時間 \(t = 2.0\)。
$$ 18.0 = 24.0 + a_{\text{B}} \times 2.0 \quad \cdots ① $$
Aの加速度 \(a_{\text{A}}\) の計算:
\(t=4.0 \text{ s}\) で車間距離が最短なので、このときの両者の速度は等しい。
$$ v_{\text{A}(4.0)} = v_{\text{B}(4.0)} \quad \cdots ② $$
それぞれの速度を計算します。
Bの速度: \(t=0 \text{ s}\) を基準に、\(t=4.0 \text{ s}\) 後の速度を計算します。
$$ v_{\text{B}(4.0)} = 24.0 + a_{\text{B}} \times 4.0 \quad \cdots ③ $$
Aの速度: \(t=2.0 \text{ s}\) から加速を始めるので、加速時間は \(4.0 – 2.0 = 2.0 \text{ s}\) です。\(t=2.0 \text{ s}\) 時点の速度 \(8.0 \text{ m/s}\) を初速度として計算します。
$$ v_{\text{A}(4.0)} = 8.0 + a_{\text{A}} \times (4.0 – 2.0) \quad \cdots ④ $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(v = v_0 + at\)
まず、①式から \(a_{\text{B}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2.0 a_{\text{B}} &= 18.0 – 24.0 \\[2.0ex]2.0 a_{\text{B}} &= -6.0 \\[2.0ex]a_{\text{B}} &= -3.0 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
次に、②、③、④式から \(a_{\text{A}}\) を求めます。
まず、③式に求めた \(a_{\text{B}}\) を代入して \(v_{\text{B}(4.0)}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{B}(4.0)} &= 24.0 + (-3.0) \times 4.0 \\[2.0ex]&= 24.0 – 12.0 \\[2.0ex]&= 12.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
②より \(v_{\text{A}(4.0)} = v_{\text{B}(4.0)} = 12.0 \text{ m/s}\) なので、これを④式に代入します。
$$
\begin{aligned}
12.0 &= 8.0 + a_{\text{A}} \times 2.0 \\[2.0ex]2.0 a_{\text{A}} &= 12.0 – 8.0 \\[2.0ex]2.0 a_{\text{A}} &= 4.0 \\[2.0ex]a_{\text{A}} &= 2.0 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
Bの加速度は、\(t=0\) から \(t=2.0\) までの速度の変化(\(24.0 \rightarrow 18.0\))から計算します。
Aの加速度は、「車間距離が一番近くなったとき(\(t=4.0\))、2台のスピードは同じになる」というルールを使います。\(t=4.0\) のときのBの速さを計算し、Aも同じ速さになるはずだ、という等式を立てて、Aの加速度を逆算します。
Bの加速度は \(a_{\text{B}} = -3.0 \text{ m/s}^2\)、Aの加速度は \(a_{\text{A}} = 2.0 \text{ m/s}^2\) です。Bは減速しているので加速度が負、Aは加速しているので正となり、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
\(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間の車間距離 \(l\) を求める問題です。\(t=2.0 \text{ s}\) から \(t=4.0 \text{ s}\) までの2秒間に、AとBがそれぞれどれだけ進むかを計算し、\(t=4.0 \text{ s}\) のときの最終的な位置関係(車間距離 \(5.0 \text{ m}\))から、\(t=2.0 \text{ s}\) のときの初期位置関係(車間距離 \(l\))を逆算します。
この設問における重要なポイント
- 基準時点の設定: \(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間を運動の開始点として考えます。
- 各物体の移動距離の計算: \(t=2.0 \sim 4.0 \text{ s}\) の2秒間におけるAとBの移動距離 \(x_{\text{A}}\), \(x_{\text{B}}\) を、公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を用いて計算します。
- 位置関係の立式: \(t=2.0 \text{ s}\) のBの位置を原点 \(0\) とすると、Aの位置は \(l\) です。\(t=4.0 \text{ s}\) のとき、Bの位置は \(x_{\text{B}}\)、Aの位置は \(l + x_{\text{A}}\) となります。このときの車間距離が \(5.0 \text{ m}\) なので、\((l + x_{\text{A}}) – x_{\text{B}} = 5.0\) という関係式を立てます。
具体的な解説と立式
\(t=2.0 \text{ s}\) から \(t=4.0 \text{ s}\) までの \(2.0 \text{ s}\) 間の運動を考えます。
この区間の初速度は、Aが \(v_{\text{A0}} = 8.0 \text{ m/s}\)、Bが \(v_{\text{B0}} = 18.0 \text{ m/s}\) です。
加速度は、Aが \(a_{\text{A}} = 2.0 \text{ m/s}^2\)、Bが \(a_{\text{B}} = -3.0 \text{ m/s}^2\) です。
この \(2.0 \text{ s}\) 間のそれぞれの移動距離を \(x_{\text{A}}\), \(x_{\text{B}}\) とすると、
$$ x_{\text{A}} = 8.0 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times (2.0)^2 \quad \cdots ⑤ $$
$$ x_{\text{B}} = 18.0 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times (-3.0) \times (2.0)^2 \quad \cdots ⑥ $$
\(t=2.0 \text{ s}\) のときの車間距離を \(l\) とします。\(t=4.0 \text{ s}\) のときの車間距離は \(5.0 \text{ m}\) なので、位置関係は次のようになります。
$$ (\text{t=2.0sでのAの位置} + x_{\text{A}}) – (\text{t=2.0sでのBの位置} + x_{\text{B}}) = 5.0 $$
\(t=2.0 \text{ s}\) でのAとBの位置の差が \(l\) なので、
$$ l + x_{\text{A}} – x_{\text{B}} = 5.0 \quad \cdots ⑦ $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動: \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
まず、⑤、⑥式から \(x_{\text{A}}\) と \(x_{\text{B}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{A}} &= 16.0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 16.0 + 4.0 = 20.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x_{\text{B}} &= 36.0 + \frac{1}{2} \times (-3.0) \times 4.0 \\[2.0ex]&= 36.0 – 6.0 = 30.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
これらの値を⑦式に代入して \(l\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
l + 20.0 – 30.0 &= 5.0 \\[2.0ex]l – 10.0 &= 5.0 \\[2.0ex]l &= 15.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
\(t=2.0\) の瞬間から \(t=4.0\) の瞬間までの2秒間に、AとBがそれぞれ何メートル進んだかを計算します。その結果、2台の間の距離がどれだけ縮まった(あるいは開いた)かが分かります。最終的に車間距離が \(5.0 \text{ m}\) になったことから、逆算してスタート時点(\(t=2.0\))での車間距離を求めます。
\(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間の車間距離は \(15 \text{ m}\) です。この2秒間でBは \(30.0 \text{ m}\)、Aは \(20.0 \text{ m}\) 進んでいるので、BはAより \(10.0 \text{ m}\) 多く進んでいます。つまり、車間距離は \(10.0 \text{ m}\) 縮まったことになります。初期の車間距離 \(15 \text{ m}\) から \(10 \text{ m}\) 縮まって、最終的に \(5.0 \text{ m}\) になった、という計算結果はつじつまが合っています。
思考の道筋とポイント
自動車Aを基準として、Aから見たBの運動(相対運動)を考えます。この視点では、Aは常に静止していると見なせます。\(t=2.0 \text{ s}\) から \(t=4.0 \text{ s}\) の間に、BがAに対してどれだけ近づいたか(相対移動距離)を計算し、最終的な車間距離との関係から初期の車間距離 \(l\) を求めます。
具体的な解説と立式
Aに対するBの相対的な運動を考えます。\(t=2.0 \text{ s}\) から \(t=4.0 \text{ s}\) の区間に注目します。
この区間の開始時(\(t=2.0 \text{ s}\))における、Aから見たBの相対速度(初速度)は、
$$ v_{\text{BA0}} = v_{\text{B0}} – v_{\text{A0}} = 18.0 – 8.0 = 10.0 \text{ [m/s]} $$
Aから見たBの相対加速度は、
$$ a_{\text{BA}} = a_{\text{B}} – a_{\text{A}} = -3.0 – 2.0 = -5.0 \text{ [m/s}^2] $$
この \(2.0 \text{ s}\) 間にBがAに近づいた距離(相対移動距離 \(x_{\text{BA}}\))は、
$$ x_{\text{BA}} = v_{\text{BA0}} t + \frac{1}{2} a_{\text{BA}} t^2 $$
で計算できます。
初期の車間距離が \(l\)、最終的な車間距離が \(5.0 \text{ m}\) なので、相対移動距離は \(l – 5.0\) となります。
$$ l – 5.0 = x_{\text{BA}} $$
使用した物理公式
- 相対速度: \(v_{\text{BA}} = v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\)
- 相対加速度: \(a_{\text{BA}} = a_{\text{B}} – a_{\text{A}}\)
- 等加速度直線運動: \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
相対移動距離 \(x_{\text{BA}}\) を計算します。時間は \(t=2.0 \text{ s}\) です。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{BA}} &= 10.0 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times (-5.0) \times (2.0)^2 \\[2.0ex]&= 20.0 – \frac{1}{2} \times 5.0 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 20.0 – 10.0 \\[2.0ex]&= 10.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
この値は、この2秒間で車間距離が縮んだ量を表します。
したがって、
$$
\begin{aligned}
l – 5.0 &= 10.0 \\[2.0ex]l &= 15.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
メインの解法と同じ結果が得られました。相対運動で考えると、計算量が少なく、状況をシンプルに捉えられることがわかります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 車間距離が最短になる条件(速度が等しくなる):
- 核心: 後方を走る物体Bが前方を走る物体Aに最も接近するのは、Bの速度がAの速度まで落ちた(あるいはAの速度がBの速度まで上がった)瞬間、すなわち \(v_{\text{A}} = v_{\text{B}}\) となるときです。これ以降はAの方が速くなるため、車間距離は開いていきます。この物理的条件を数式に置き換えられるかが、(1)を解く最大の鍵です。
- 理解のポイント: これは、Aから見たBの相対速度 \(v_{\text{BA}} = v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\) が \(0\) になる瞬間、と考えるとより本質的です。相対速度が正の間は近づき、負になると遠ざかるので、\(0\) になる瞬間が距離の極値(この場合は最短)となります。
- 時間区間ごとの運動の分離:
- 核心: 自動車AとBは、問題の中で運動の状態(等速か、等加速度か、その加速度の値)を変化させます。特にAは \(t=2.0 \text{ s}\) を境に運動が変わります。したがって、\(t=0 \sim 2.0 \text{ s}\) の区間と \(t=2.0 \text{ s}\) 以降の区間とで、適用する初速度や加速度の値を明確に区別して立式する必要があります。
- 理解のポイント: 複雑な運動は、運動形態が一定の区間に分割して考えるのが基本です。ある区間の「終状態」が、次の区間の「始状態」になることを意識して、情報を引き継いでいくことが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 追いつく・追い越す問題: 2つの物体が同じ位置に来る(追いつく)条件は、移動距離が等しくなることです。本問題は「最も近づく」ですが、考え方は共通しています。
- 衝突するかしないかの判断問題: 車間距離の最小値を計算し、それが \(0\) 以下になるかどうかで衝突を判断します。本問題で、もし最短距離が負の値になれば、それは衝突したことを意味します。
- 相対運動の問題全般: 電車の中から見た外の景色の動きや、動く歩道上の人の運動など、ある座標系から別の座標系の運動を記述する問題全般に、本問題の「相対速度」の考え方が応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 時間軸とイベントを整理する: \(t=0, t=2.0, t=4.0\) といった重要な時刻で、各物体A, Bがどのような運動をしているか(速度、加速度)を表にまとめると、状況が整理しやすくなります。
- 「誰から見た運動か」を意識する: 地面から見た絶対的な運動で解くのか、一方の物体から見た相対的な運動で解くのか、最初に方針を立てると思考がぶれません。相対運動で解く場合、計算が大幅に簡略化できることが多いです。
- グラフを描いてみる(v-tグラフ): AとBのv-tグラフを同じ座標軸上に描くと、2つのグラフの交点が「速度が等しくなる」瞬間(=車間距離が最短になる時刻)に対応します。また、2つのグラフで囲まれた部分の面積が「縮まった車間距離」に相当し、現象を視覚的に理解するのに非常に役立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 運動区間の取り違え:
- 誤解: Aが加速を始めるのは \(t=2.0 \text{ s}\) からなのに、\(t=0 \text{ s}\) からの運動として計算してしまう。あるいは、\(t=4.0 \text{ s}\) での速度を計算する際に、加速時間を \(4.0 \text{ s}\) と勘違いする(正しくは \(2.0 \text{ s}\))。
- 対策: 問題文の「\(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間から」といったキーワードに印をつけ、時間区間ごとに運動方程式を立てることを徹底しましょう。時間軸の図を描くのが有効です。
- 相対速度の符号ミス:
- 誤解: Aに対するBの相対速度 \(v_{\text{BA}}\) を計算する際に、\(v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\) のように引き算の順序を間違える。
- 対策: 「Aに対するBの速度」は「Bの速度 – Aの速度」のように、「(対象の物体) – (基準の物体)」という語順と式の順序を一致させて覚えるとミスが減ります。
- 位置と移動距離の混同:
- 誤解: (2)の計算で、\(t=4.0 \text{ s}\) のときのAの位置を、\(t=2.0 \sim 4.0 \text{ s}\) の間の「移動距離」そのものだと考えてしまう。
- 対策: 必ず基準となる原点(例えば \(t=2.0 \text{ s}\) のBの位置)を定め、「位置 = 初期の位置 + 移動距離」という関係を正しく使いましょう。図を描いて位置関係を視覚化することが最も確実です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- v-tグラフの威力:
- Bのグラフ: \(t=0\) で \(v=24.0\)、\(t=2.0\) で \(v=18.0\) を通り、そのまま伸びる右下がりの直線。
- Aのグラフ: \(t=0 \sim 2.0\) までは \(v=8.0\) の水平線。\(t=2.0\) からは傾き \(a_{\text{A}}\) の右上がりの直線。
- この2本の線が \(t=4.0\) で交わることが、「車間距離最短」の条件を意味します。この交点の速度が \(12.0 \text{ m/s}\) であることもグラフから読み取れます。
- \(t=2.0 \sim 4.0\) の区間で、BのグラフとAのグラフで囲まれた台形の面積が、この間に縮まった車間距離 \(10.0 \text{ m}\) に対応します。
- 相対運動の世界観:
- 「自分はAに乗っていて、世界からAの運動が引き算されている」とイメージします。すると、Bは \(t=2.0 \text{ s}\) の瞬間、前方 \(10.0 \text{ m/s}\) の速さで近づいてくるように見えます。しかし、Bは相対的に \(-5.0 \text{ m/s}^2\) という猛烈なブレーキをかけているように見えるため、いずれ止まって(相対速度ゼロ)、その後は後退していくように見えます。この「相対的な停止」までに進んだ距離が、縮まった車間距離です。
- v-tグラフの威力:
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = v_0 + at\):
- 選定理由: (1)で、既知の初速度・終速度・時間から加速度を求める、あるいは既知の初速度・加速度・時間から終速度を求める、という基本的な計算に最適だから。
- 適用根拠: 加速度の定義そのものであり、等加速度運動における速度と時間の関係を最も直接的に表す公式です。
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\):
- 選定理由: (2)で、ある時間区間における各物体の移動距離を計算するために使用。初速度、加速度、時間が分かっている状況で距離を求めるのに最も適しています。
- 適用根拠: 等加速度運動の移動距離を時間の関数として表す基本公式です。v-tグラフの面積を積分計算した結果に相当します。
- 相対速度・相対加速度:
- 選定理由: (2)の別解で、2物体の運動を1物体の運動として単純化するために使用。2物体間の距離や速度差が問題になる場合に極めて有効です。
- 適用根拠: ガリレイの相対性原理に基づき、ある慣性系から見た運動は、別の慣性系から見た運動に単純な速度の足し算・引き算で変換できる、という物理法則を応用しています。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 加速度の計算:
- 戦略: ①Bの運動、②AとBの速度が等しくなる条件、の2段階で考える。
- フロー: ①\(t=0 \sim 2.0\) のBの運動で \(v=v_0+at\) を使い \(a_{\text{B}}\) を計算 → ②\(t=4.0\) で \(v_{\text{A}}=v_{\text{B}}\) となる条件式を立てる → ③A, Bそれぞれの \(t=4.0\) での速度を、適切な初速度と加速時間で計算する式を立てる → ④これらを連立して \(a_{\text{A}}\) を解く。
- (2) 車間距離の計算:
- 戦略: \(t=2.0 \sim 4.0\) の区間に着目し、各物体の移動距離から初期の車間距離を逆算する。
- フロー: ①\(t=2.0 \sim 4.0\) でのA, Bの移動距離 \(x_{\text{A}}, x_{\text{B}}\) を \(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\) でそれぞれ計算 → ②位置関係の式 \((l+x_{\text{A}}) – x_{\text{B}} = 5.0\) を立てる → ③計算した \(x_{\text{A}}, x_{\text{B}}\) を代入して \(l\) を解く。
- (別解フロー): ①相対初速度 \(v_{\text{BA0}}\) と相対加速度 \(a_{\text{BA}}\) を計算 → ②相対移動距離 \(x_{\text{BA}}\) を計算 → ③\(l – x_{\text{BA}} = 5.0\) の関係から \(l\) を解く。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の徹底: この問題ではBが減速するため、加速度 \(a_{\text{B}}\) は負になります。計算の全ての段階で、この負号を正しく扱うことが重要です。特に、\(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\) のような式に代入する際に符号を落とさないよう注意が必要です。
- 数値を代入するタイミング: (1)で \(a_{\text{B}}\) や \(a_{\text{A}}\) を求めた後、(2)の計算ではこれらの具体的な数値を代入します。計算過程が複雑になるため、各ステップで何の値を計算しているのかを明確にしながら進めましょう。
- 検算: (2)の答え \(l=15 \text{ m}\) が出た後、メインの解法と別解(相対速度)の両方で同じ答えになるかを確認することは、非常に有効な検算手段です。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- \(t=2.0 \text{ s}\) のとき、Bの速度は \(18.0 \text{ m/s}\)、Aの速度は \(8.0 \text{ m/s}\)。Bの方が速いので、車間距離は縮まっていきます。
- \(t=4.0 \text{ s}\) のとき、両者の速度は \(12.0 \text{ m/s}\) で等しくなります。
- この2秒間で、Bは \(30 \text{ m}\) 進み、Aは \(20 \text{ m}\) 進みます。Bの方が \(10 \text{ m}\) 多く進んだので、車間距離は \(10 \text{ m}\) 縮まったはずです。
- 初期の車間距離を \(15 \text{ m}\) とすると、\(10 \text{ m}\) 縮まった結果、最終的な車間距離は \(15 – 10 = 5 \text{ m}\) となり、問題文の条件とぴったり一致します。このように、得られた答えを使って物語を再構成し、矛盾がないかを確認する習慣は非常に重要です。
20 等加速度直線運動のグラフ
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、2つの物体AとBの運動がv-tグラフで与えられている状況を読み解く問題です。v-tグラフの「傾き」が加速度を、「面積」が移動距離を表すという、グラフの物理的な意味を正しく理解し、計算に応用する能力が問われます。
- 物体Aと物体Bは、同じ向きに一直線上を運動する。
- 運動の様子はv-tグラフで示される。
- 物体A: 常に一定の速度で運動する。
- 物体B: 時刻 \(t=0\) で静止しており、一定の加速度で加速する。
- 時刻 \(t=0 \text{ s}\) において、AとBは同じ位置にいる。
- (ア) 物体Aの加速度
- (イ) 物体Bの加速度
- (ウ) 時刻 \(t=2 \text{ s}\) におけるAとBの距離
- (エ) 時刻 \(t=0 \text{ s}\) の後、AとBの位置が再び同じになる時刻
- (オ) (エ)で求めた時刻における、物体Bに対する物体Aの相対速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、模範解答の解法に加え、物理現象を別の視点から捉える「相対運動」の考え方を積極的に導入し、別解として提示します。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- (ウ) 距離の計算: 模範解答は、各物体の移動距離を個別に計算し、その差を求めています。この解説では、その解法に加え、「相対速度のグラフ」を考えることで、2物体間の距離をより直感的に計算する別解を提示します。
- (エ) 再び同じ位置になる時刻の計算: 模範解答は、各物体の移動距離が等しくなる方程式を解いています。この解説では、その解法に加え、「相対運動」の観点から、「Bから見てAが離れた後、再び元の位置に戻ってくる」と解釈し、相対移動距離が0になる時刻を求める別解を提示します。
- この方針を取る理由
- v-tグラフの問題において、2物体の運動を扱う場合、「相対速度」のグラフを考えるアプローチは非常に強力です。2つのグラフの差を取ることで、2物体間の関係性(距離の変化)を1つのグラフで表現でき、物理的状況の理解が深まります。
- 特に、2物体の距離が最大になる時刻や、再び出会う時刻などを求める問題では、相対運動の考え方が計算を簡略化し、本質的な理解を助けるため、教育的価値が高いと判断しました。
- 結果への影響
- どの解法を用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「v-tグラフの解釈」です。グラフから物理的な情報を正確に読み取ることがすべての基本となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- v-tグラフの傾き: グラフの傾きは加速度 (\(a = \Delta v / \Delta t\)) を表します。傾きが0なら等速直線運動、傾きが一定の正の値なら等加速度直線運動(加速)です。
- v-tグラフの面積: グラフと時間軸(t軸)で囲まれた部分の面積は、移動距離を表します。
- 相対速度: 一方の物体から見たもう一方の物体の速度です。\(v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\) で計算されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア), (イ)では、v-tグラフの傾きを計算して、それぞれの加速度を求めます。
- (ウ)では、\(t=0 \sim 2 \text{ s}\) の間のグラフの面積をそれぞれ計算し、移動距離を求め、その差から2物体間の距離を計算します。
- (エ)では、時刻 \(t\) までにAとBが進んだ距離が等しくなるという方程式を立てて、\(t\) を求めます。
- (オ)では、(エ)で求めた時刻におけるAとBの速度をグラフから読み取るか計算し、相対速度の定義式に代入します。
問(ア), (イ)
思考の道筋とポイント
物体Aと物体Bの加速度を求めます。v-tグラフにおいて、傾きは加速度を表します。それぞれのグラフの傾きを計算します。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフと加速度の関係: 傾き \( = \displaystyle\frac{\text{縦の変化量(速度の変化)}}{\text{横の変化量(時間の変化)}} = \) 加速度。
- 物体Aのグラフ: 時間軸に平行な直線であり、傾きは0です。
- 物体Bのグラフ: 原点を通る直線であり、傾きは一定です。グラフ上の読み取りやすい2点(例: (0, 0)と(4, 2))を使って傾きを計算します。
具体的な解説と立式
(ア) 物体Aの加速度 \(a_{\text{A}}\)
物体Aのv-tグラフは、常に \(v=2\) の水平な直線です。速度が変化していないため、傾きは0です。
$$ a_{\text{A}} = 0 \text{ [m/s}^2] $$
(イ) 物体Bの加速度 \(a_{\text{B}}\)
物体Bのv-tグラフは、原点(0, 0)と点(4, 2)を通る直線です。その傾きは、
$$ a_{\text{B}} = \frac{2 – 0}{4 – 0} $$
使用した物理公式
- v-tグラフの傾き = 加速度
(イ)の計算を行います。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{B}} &= \frac{2}{4} \\[2.0ex]&= 0.5 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
v-tグラフの「傾き」が「加速度」に相当します。Aのグラフは真横なので傾きは0、つまり加速度は0です。Bのグラフは、4秒間で速さが2m/s増えているので、傾きは \(2 \div 4 = 0.5\) となり、これがBの加速度です。
物体Aの加速度は \(0 \text{ m/s}^2\)、物体Bの加速度は \(0.5 \text{ m/s}^2\) です。Aは等速直線運動、Bは静止状態から始まる等加速度直線運動であることがグラフから読み取れ、計算結果と一致します。
問(ウ)
思考の道筋とポイント
時刻 \(t=2 \text{ s}\) におけるAとBの距離を求めます。v-tグラフにおいて、グラフと時間軸で囲まれた面積は移動距離を表します。\(t=0 \sim 2 \text{ s}\) の区間で、それぞれのグラフが作る面積を計算し、その差を求めます。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフと移動距離の関係: 面積 = 移動距離。
- 物体Aの移動距離 \(x_{\text{A}}\): \(t=0 \sim 2 \text{ s}\) における、Aのグラフ(高さ2の水平線)が作る長方形の面積。
- 物体Bの移動距離 \(x_{\text{B}}\): \(t=0 \sim 2 \text{ s}\) における、Bのグラフ(直線)が作る三角形の面積。
- 2物体の距離: \(t=0\) で同じ位置にいたので、\(t=2 \text{ s}\) での距離は、それぞれの移動距離の差 \(|x_{\text{A}} – x_{\text{B}}|\) となります。
具体的な解説と立式
\(t=0 \sim 2 \text{ s}\) までの移動距離を、グラフの面積から求めます。
物体Aの移動距離 \(x_{\text{A}}\) は、底辺2、高さ2の長方形の面積です。
$$ x_{\text{A}} = 2 \times 2 $$
物体Bの移動距離 \(x_{\text{B}}\) は、底辺2の三角形の面積です。三角形の高さを求めるために、まず \(t=2 \text{ s}\) のときのBの速度 \(v_{\text{B}(2)}\) を求めます。
$$ v_{\text{B}(2)} = a_{\text{B}} \times 2 $$
この速度を高さとして、三角形の面積を計算します。
$$ x_{\text{B}} = \frac{1}{2} \times 2 \times v_{\text{B}(2)} $$
求める距離は、\(x_{\text{A}} – x_{\text{B}}\) です。
使用した物理公式
- v-tグラフの面積 = 移動距離
まず、\(t=2 \text{ s}\) のときのBの速度 \(v_{\text{B}(2)}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{B}(2)} &= 0.5 \times 2 \\[2.0ex]&= 1 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
次に、それぞれの移動距離を計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{A}} &= 2 \times 2 \\[2.0ex]&= 4 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x_{\text{B}} &= \frac{1}{2} \times 2 \times 1 \\[2.0ex]&= 1 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
よって、2物体間の距離は、
$$
\begin{aligned}
x_{\text{A}} – x_{\text{B}} &= 4 – 1 \\[2.0ex]&= 3 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
v-tグラフで、時間軸とグラフで囲まれた「面積」が「進んだ距離」になります。\(t=2\) までの面積をAとBそれぞれで計算します。Aが進んだ距離(長方形の面積)から、Bが進んだ距離(三角形の面積)を引いたものが、2台の間の距離になります。
時刻 \(t=2 \text{ s}\) におけるAとBの距離は \(3 \text{ m}\) です。
思考の道筋とポイント
Bから見たAの相対速度 \(v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\) のグラフを考えます。この相対速度のグラフが作る面積は、2物体間の距離(相対的な位置の変化)を表します。
具体的な解説と立式
相対速度 \(v_{\text{AB}}\) は、\(v_{\text{A}} = 2\)、\(v_{\text{B}} = 0.5t\) なので、
$$ v_{\text{AB}}(t) = 2 – 0.5t $$
これは、\(t=0\) で \(v_{\text{AB}}=2\)、\(t=4\) で \(v_{\text{AB}}=0\) となる、右下がりの直線のグラフです。
\(t=0 \sim 2 \text{ s}\) における2物体間の距離は、この \(v_{\text{AB}}-t\) グラフが \(t=0 \sim 2 \text{ s}\) の間に作る面積(台形)に等しくなります。面積を求めるには、台形の公式を用います。
$$ (\text{距離}) = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times (\text{高さ}) $$
ここで上底は \(v_{\text{AB}}(2)\)、下底は \(v_{\text{AB}}(0)\)、高さは時間 \(2 \text{ s}\) です。
まず、\(t=0\) と \(t=2\) のときの相対速度を求めます。
$$ v_{\text{AB}}(0) = 2 – 0.5 \times 0 = 2 \text{ [m/s]} $$
$$ v_{\text{AB}}(2) = 2 – 0.5 \times 2 = 1 \text{ [m/s]} $$
これらを台形の面積の公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
(\text{距離}) &= \frac{1}{2} \times (1 + 2) \times 2 \\[2.0ex]&= 3 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
メインの解法と同じ結果が得られました。
問(エ), (オ)
思考の道筋とポイント
(エ) AとBの位置が再び同じになる時刻を求めます。\(t=0\) で同じ位置にいたので、再び同じ位置になるということは、\(t=0\) からその時刻までの移動距離がAとBで等しくなるということです。
(オ) (エ)で求めた時刻における、Bに対するAの相対速度を求めます。それぞれの速度を計算し、定義式 \(v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\) に代入します。
この設問における重要なポイント
- (エ) 再び同じ位置になる条件: 移動距離が等しくなる。\(x_{\text{A}} = x_{\text{B}}\)。
- (オ) 相対速度の定義: Bに対するAの相対速度は \(v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\)。
具体的な解説と立式
(エ) 時刻 \(t\) における移動距離をそれぞれ \(x_{\text{A}}(t)\), \(x_{\text{B}}(t)\) とします。
Aは等速直線運動なので、
$$ x_{\text{A}}(t) = 2t \quad \cdots ① $$
Bは初速度0、加速度0.5の等加速度直線運動なので、
$$ x_{\text{B}}(t) = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 \quad \cdots ② $$
\(x_{\text{A}}(t) = x_{\text{B}}(t)\) となる時刻 \(t\) を求めます。
(オ) (エ)で求めた時刻を \(t_{\text{meet}}\) とします。このときのAの速度 \(v_{\text{A}}\) とBの速度 \(v_{\text{B}}\) を求めます。
Aの速度は常に一定です。
$$ v_{\text{A}} = 2 \text{ [m/s]} $$
Bの速度は \(v_{\text{B}} = a_{\text{B}}t\) で計算できます。
$$ v_{\text{B}} = 0.5 \times t_{\text{meet}} $$
求める相対速度 \(v_{\text{AB}}\) は、
$$ v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}} $$
使用した物理公式
- 等速直線運動: \(x = vt\)
- 等加速度直線運動: \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\), \(v = v_0 + at\)
- 相対速度: \(v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\)
(エ)の計算:
まず、②式に \(v_0=0, a=0.5\) を代入して \(x_{\text{B}}(t)\) の式を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{B}}(t) &= 0 \times t + \frac{1}{2} \times 0.5 \times t^2 \\[2.0ex]&= 0.25t^2
\end{aligned}
$$
\(x_{\text{A}}(t) = x_{\text{B}}(t)\) より、
$$ 2t = 0.25t^2 $$
この方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
0.25t^2 – 2t &= 0 \\[2.0ex]t(0.25t – 2) &= 0
\end{aligned}
$$
解は \(t=0\) または \(0.25t – 2 = 0\)。
\(t=0\) はスタート時点なので、再び同じ位置になるのは、
$$
\begin{aligned}
0.25t &= 2 \\[2.0ex]t &= \frac{2}{0.25} \\[2.0ex]&= 8 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
(オ)の計算: \(t=8 \text{ s}\) のときの速度を計算します。
\(v_{\text{A}} = 2 \text{ m/s}\) は一定です。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{B}} &= 0.5 \times 8 \\[2.0ex]&= 4 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
よって、Bに対するAの相対速度は、
$$
\begin{aligned}
v_{\text{AB}} &= v_{\text{A}} – v_{\text{B}} \\[2.0ex]&= 2 – 4 \\[2.0ex]&= -2 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
(エ) Aが進んだ距離とBが進んだ距離が等しくなる、という方程式を立てて、時間を求めます。
(オ) (エ)で求まった時刻のときの、Aの速さとBの速さをそれぞれ計算します。Bから見たAの相対速度は、「Aの速度」から「Bの速度」を引き算して求めます。
再び同じ位置になる時刻は \(8 \text{ s}\) で、そのときのBに対するAの相対速度は \(-2 \text{ m/s}\) です。
v-tグラフを見ると、\(t=4 \text{ s}\) でAとBの速度が等しくなり、それ以降はBの方が速くなります。最初はAがBを引き離しますが、\(t=4 \text{ s}\) を境にBが追い上げ始め、\(t=8 \text{ s}\) で追いつくというストーリーが読み取れます。追いついた瞬間、Bの方が速いので、AはBから見て後ろ向きに遠ざかっていくように見えます。相対速度が負の値であることは、この状況と一致しており妥当です。
思考の道筋とポイント
Bから見たAの相対運動を考えます。\(t=0\) で同じ位置にいた2物体が、再び同じ位置になるということは、Bから見たAの「相対移動距離」が0になるということです。
具体的な解説と立式
Bから見たAの相対初速度は \(v_{\text{AB}}(0) = v_{\text{A}}(0) – v_{\text{B}}(0) = 2 – 0 = 2 \text{ m/s}\)。
Bから見たAの相対加速度は \(a_{\text{AB}} = a_{\text{A}} – a_{\text{B}} = 0 – 0.5 = -0.5 \text{ m/s}^2\)。
時刻 \(t\) までの相対移動距離 \(x_{\text{AB}}(t)\) が0になる時刻を求めます。
$$ x_{\text{AB}}(t) = v_{\text{AB}}(0) t + \frac{1}{2} a_{\text{AB}} t^2 $$
$$ x_{\text{AB}}(t) = 0 $$
上の式に値を代入すると、
$$ 2t + \frac{1}{2}(-0.5)t^2 = 0 $$
この方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
2t – 0.25t^2 &= 0 \\[2.0ex]t(2 – 0.25t) &= 0
\end{aligned}
$$
\(t>0\) の解は \(2 – 0.25t = 0\) なので、
$$
\begin{aligned}
0.25t &= 2 \\[2.0ex]t &= \frac{2}{0.25} \\[2.0ex]&= 8 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
メインの解法と同じ結果が得られます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- v-tグラフの物理的意味の完全な理解:
- 核心: この問題は、v-tグラフという形で与えられた情報を、物理的な意味を持つ数値(加速度、移動距離)に変換できるかを試すものです。以下の2つの関係が核心となります。
- グラフの傾き = 加速度: グラフがどれだけ急か(あるいは平らか)が、速度の変化率、すなわち加速度を表します。
- グラフの面積 = 移動距離: グラフと時間軸で囲まれた部分の面積が、その時間内に物体が進んだ距離を表します。
- 理解のポイント: 物体Aのグラフは傾きが0なので加速度0(等速運動)、物体Bのグラフは傾きが一定なので等加速度運動であると、一目で運動の種類を判別できることが重要です。
- 核心: この問題は、v-tグラフという形で与えられた情報を、物理的な意味を持つ数値(加速度、移動距離)に変換できるかを試すものです。以下の2つの関係が核心となります。
- 相対運動の概念:
- 核心: 2つの物体の運動を比較する際、一方を基準として「相手がどう見えるか」を考える「相対運動」の視点は非常に強力です。特に、2物体間の距離や再び出会う時刻を考える上で核心的なアプローチとなります。
- 理解のポイント: 2物体の距離の変化は、相対速度のグラフの面積に等しくなります。また、2物体が再び出会うのは、相対的な移動距離が0になるとき、と問題を読み替えることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 距離が最も離れる(または近づく)時刻を問う問題: 2物体のv-tグラフが交差する点、すなわち2物体の速度が等しくなる(相対速度が0になる)時刻が、距離が極大または極小になる時刻です。この問題では \(t=4 \text{ s}\) がそれに当たります。
- 追い越しに関する問題: 「AがBを追い越す」とは、「AとBの位置が同じになり、かつその瞬間にAの方がBより速い」ことを意味します。v-tグラフ上では、移動距離(面積)が等しくなり、かつその時刻でAのグラフがBのグラフより上にある点を探すことになります。
- グラフの形が複雑な問題: 例えば、途中で加速度が変わる(グラフが折れ曲がる)ような問題でも、「傾き=加速度」「面積=距離」という基本原則は変わりません。区間ごとに分けて考えれば対応できます。
- 初見の問題での着眼点:
- まずグラフの概形から運動の種類を把握する: 水平なら等速、直線なら等加速度、曲線ならそれ以外の加速度運動、といった大枠を掴みます。
- 「傾き」と「面積」に注目する: 問題で問われているのが加速度なら傾きを、距離や位置なら面積を計算する、という思考回路を即座に作動させます。
- 2物体の場合は「差」に注目する: 2つのグラフの差(\(v_{\text{A}}-v_{\text{B}}\))が相対速度を表します。この差が0になる点(グラフの交点)や、差のグラフが作る面積(=距離の変化)に注目すると、問題の見通しが良くなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 面積計算のミス:
- 誤解: 三角形の面積計算で \(1/2\) を忘れる、台形の面積計算を間違えるなど、単純な計算ミス。
- 対策: 面積を求める際は、図形の種類(長方形、三角形、台形)を明確に意識し、公式を正確に適用しましょう。特に、\(t=2 \text{ s}\) のときのBの速度など、面積計算に必要な値をグラフから正しく読み取る(または計算する)ことが前提となります。
- 相対速度の定義の混同:
- 誤解: (オ)で「Bに対するAの相対速度」を問われているのに、\(v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\) と計算してしまう。
- 対策: 「Bに対するAの」とあれば、「基準はB、主役はA」なので「Aの速度 – Bの速度」と、式の順番を言語の順番と一致させて覚えましょう。基準となる方の物理量を後から引く、と覚えるのが確実です。
- 位置と移動距離の混同:
- 誤解: グラフの面積は「位置」そのものであると勘違いする。
- 対策: グラフの面積は、あくまで「移動距離(位置の変化量)」です。位置を求めるには、必ず「初期位置」に「移動距離」を足し合わせる必要があります。この問題では初期位置が同じ(0と置ける)なので結果的に一致しますが、初期位置が異なる問題では致命的なミスになります。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 2つのグラフの間の面積: v-tグラフ上で、物体Aのグラフと物体Bのグラフに挟まれた部分の面積は、2物体間の距離の変化量を表します。
- \(t=0 \sim 4 \text{ s}\) の間: Aのグラフが上にあるので、この間の面積は「AがBをどれだけ引き離したか」を表します。この面積が最大になるのが \(t=4 \text{ s}\) です。
- \(t=4 \sim 8 \text{ s}\) の間: Bのグラフが上に来ます。この区間の面積は「BがAとの差をどれだけ縮めたか」を表します。
- \(t=0 \sim 4 \text{ s}\) の引き離した距離と、\(t=4 \sim 8 \text{ s}\) の縮めた距離が等しくなったとき、2物体は再び出会います。この対称性から、出会う時刻が \(t=4 \text{ s}\) の2倍である \(t=8 \text{ s}\) になることが、計算せずとも直感的に予測できます。
- 2つのグラフの間の面積: v-tグラフ上で、物体Aのグラフと物体Bのグラフに挟まれた部分の面積は、2物体間の距離の変化量を表します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 傾きの計算 (\(a = \Delta v / \Delta t\)):
- 選定理由: (ア), (イ)で、v-tグラフから加速度という物理量を抽出するため。
- 適用根拠: 加速度の定義そのものであり、v-tグラフの傾きと加速度を直接結びつける最も基本的な関係式です。
- 面積の計算 (長方形、三角形):
- 選定理由: (ウ)で、v-tグラフから移動距離という物理量を抽出するため。
- 適用根拠: v-tグラフの面積が移動距離を表すという積分的な関係に基づきます。等速運動なら長方形、初速ゼロの等加速度運動なら三角形の面積計算に帰着します。
- 移動距離の公式 (\(x=vt\), \(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\)):
- 選定理由: (エ)で、任意の時刻 \(t\) における移動距離を数式で表現し、等式を立てるため。グラフの面積を、時刻 \(t\) の関数として代数的に表現する方法です。
- 適用根拠: これらはv-tグラフの面積計算を一般化した公式であり、特定の数値ではなく変数 \(t\) を使って議論を進める際に必要となります。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (ア), (イ) 加速度の計算:
- 戦略: v-tグラフの傾きを計算する。
- フロー: ①Aのグラフの傾きを読み取る → ②Bのグラフから2点を読み取り、傾きを計算する。
- (ウ) 距離の計算:
- 戦略: \(t=0 \sim 2 \text{ s}\) のv-tグラフの面積をそれぞれ求め、差を取る。
- フロー: ①Aの移動距離(長方形の面積)を計算 → ②Bの移動距離(三角形の面積)を計算 → ③両者の差を計算する。
- (エ) 再会時刻の計算:
- 戦略: 時刻 \(t\) における両者の移動距離を数式で表し、それらが等しくなる方程式を解く。
- フロー: ①Aの移動距離 \(x_{\text{A}}(t)\) を立式 → ②Bの移動距離 \(x_{\text{B}}(t)\) を立式 → ③\(x_{\text{A}}(t) = x_{\text{B}}(t)\) の方程式を立て、\(t>0\) の解を求める。
- (オ) 相対速度の計算:
- 戦略: (エ)で求めた時刻における各物体の速度を求め、定義に従って引き算する。
- フロー: ①Aの速度をグラフから読み取る → ②Bの速度を \(v=at\) で計算 → ③\(v_{\text{AB}} = v_{\text{A}} – v_{\text{B}}\) を計算する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフの数値を正確に読み取る: 座標軸の目盛りをよく確認し、点の座標を正確に読み取ることがすべての基本です。
- 単位を意識する: 傾きを計算する際は「(m/s) / (s) = m/s²」、面積を計算する際は「(m/s) \(\times\) (s) = m」と、計算結果の単位が求めたい物理量の単位と一致しているかを確認する習慣をつけると、立式の誤りを減らせます。
- 方程式の解の吟味: (エ)で \(t(t-8)=0\) という方程式を解くと、\(t=0\) と \(t=8\) という2つの解が出てきます。\(t=0\) は問題文の「時刻0sにおける」出発点に対応し、問われている「再び同じになる時刻」は \(t=8\) の方である、と物理的な意味を考えて解を選択することが重要です。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- グラフの対称性を利用した検算:
- この問題では、\(t=4 \text{ s}\) で2物体の速度が等しくなります。v-tグラフにおいて、\(t=0 \sim 4 \text{ s}\) の間にAがBをリードした距離(AとBのグラフで囲まれた三角形の面積)と、\(t=4 \text{ s}\) 以降にBがAに追いつくために縮めるべき距離は等しくなります。グラフの形状から、この「縮める」のにかかる時間も同じ \(4 \text{ s}\) であると予測できます。したがって、再会時刻は \(4+4=8 \text{ s}\) となり、(エ)の計算結果と一致します。このような対称性からの考察は、強力な検算ツールになります。
21 等加速度直線運動のグラフ
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、加速度のx成分のグラフ(a-tグラフ)と、速度のy成分のグラフ(v-tグラフ)という形で与えられた情報から、飛行機の2次元運動を解析する問題です。x方向(水平方向)とy方向(鉛直方向)の運動を独立に扱い、それぞれのグラフが持つ物理的な意味(傾きや面積)を正確に読み解く能力が問われます。
- 図1: 加速度のx成分 \(a_x\) と時間 \(t\) の関係を示すa-tグラフ
- 図2: 速度のy成分 \(v_y\) と時間 \(t\) の関係を示すv-tグラフ
- 初期条件: \(t=0 \text{ s}\) で原点Aから初速度 \(0 \text{ m/s}\) で出発
- 運動方向: AからBへの向きがx軸正方向、鉛直上向きがy軸正方向
- (1) 飛行機が最高高度に達したときの水平面からの高さ
- (2) AB間の水平距離
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、問題で与えられたグラフの情報をより詳細に分析し、物理的に一貫性のある解釈に基づいて解説を作成しています。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- (1) 最高高度の計算: 模範解答に示されている計算式は、図2のグラフの形状を「上底100、下底300、高さ20の台形」と解釈したものです。本解説では、この解釈に至る思考プロセスを丁寧に説明します。
- (2) 水平距離の計算: 模範解答では、まず\(v_x-t\)グラフを描き、その面積を求める方法が示されています。本解説では、その方法をメインの解法としつつ、各区間の移動距離を等加速度運動の公式で個別に計算し合計する別解も、思考プロセスを含めて詳細に解説します。
- この方針を取る理由
- 単に計算式を示すだけでなく、なぜそのようにグラフを解釈できるのかという論理的根拠を明示することが、学習者の深い理解につながると判断したためです。
- (2)については、複数のアプローチを学ぶことで、グラフを用いる方法と公式を用いる方法の関連性を理解し、問題に応じて最適な解法を選択する応用力を養うことができるためです。
- 結果への影響
- どの解法を用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「グラフで与えられた2次元の運動の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の分解: 水平方向(x方向)と鉛直方向(y方向)の運動は、互いに独立に扱うことができます。
- v-tグラフと移動距離: v-tグラフと時間軸で囲まれた面積は、その方向の移動距離(変位)を表します。
- a-tグラフと速度変化: a-tグラフと時間軸で囲まれた面積は、速度の変化量を表します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、鉛直方向(y方向)の運動に注目します。最高高度に達する条件を考え、図2のv-tグラフの面積を計算して高さを求めます。
- (2)では、水平方向(x方向)の運動に注目します。まず図1のa-tグラフから\(v_x-t\)グラフを作成し、次にそのグラフの面積を計算して水平距離を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
飛行機が最高高度に達したときの高さを求める問題です。高さは鉛直方向(y方向)の移動距離に対応します。最高高度に達するのは、鉛直上向きの速度 \(v_y\) が正から0になるときです。図2のv-tグラフを見ると、\(v_y > 0\) となるのは \(t=0 \text{ s}\) から \(t=300 \text{ s}\) までの区間であり、\(t=300 \text{ s}\) で \(v_y=0\) となっています。したがって、最高高度は、この \(300 \text{ s}\) 間に上昇した距離に等しく、図2のグラフで \(t=0 \sim 300 \text{ s}\) の部分と時間軸で囲まれた面積を求めることで計算できます。
この設問における重要なポイント
- 最高高度の条件: 鉛直方向の速度 \(v_y\) が0になるとき。
- v-tグラフと面積: グラフと時間軸で囲まれた面積が移動距離を表す。
- グラフの形状の解釈: 図2の \(t=0 \sim 300 \text{ s}\) のグラフ領域は台形とみなせます。この台形の上底は速度が \(20 \text{ m/s}\) で一定の部分の時間幅、下底は \(v_y>0\) である全区間の時間幅、高さは速度の最大値に対応します。
具体的な解説と立式
最高高度 \(h_{\text{最大}}\) は、\(t=0 \sim 300 \text{ s}\) までのv-tグラフの面積です。この領域を台形と解釈し、その寸法をグラフから読み取ります。
- 高さ: 速度の最大値なので \(20 \text{ m/s}\)。
- 下底: \(v_y\) が正である全時間なので、\(300 – 0 = 300 \text{ s}\)。
- 上底: 速度が \(20 \text{ m/s}\) で一定の部分の時間。グラフの形状から、これは \(t=100 \text{ s}\) から \(t=200 \text{ s}\) までの区間と解釈でき、その長さは \(200 – 100 = 100 \text{ s}\)。
求める高さは、この台形の面積です。
$$ h_{\text{最大}} = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times (\text{高さ}) $$
使用した物理公式
- v-tグラフの面積 = 移動距離
台形の面積の公式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
h_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} \times (100 + 300) \times 20 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times 400 \times 20 \\[2.0ex]&= 4000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(4.0 \times 10^3 \text{ m}\) となります。
飛行機が一番高く上がるときは、上向きのスピードがゼロになるときです。グラフから、それは出発して300秒後だと分かります。そのときまでの高さは、速度のグラフ(図2)が時間軸と囲む部分の面積を計算することで求められます。この部分の形は台形なので、台形の面積の公式「(上底+下底)×高さ÷2」を使って一気に計算できます。
飛行機が最高高度に達したときの高さは \(4.0 \times 10^3 \text{ m}\) です。
問(2)
思考の道筋とポイント
AB間の水平距離を求める問題です。これは、\(t=0\) から飛行が終了する \(t=1000 \text{ s}\) までのx方向の総移動距離です。まず、図1のa-tグラフを用いて、速度のx成分 \(v_x\) と時間 \(t\) の関係を表す\(v_x-t\)グラフを作成します。次に、その\(v_x-t\)グラフが \(t=0 \sim 1000 \text{ s}\) の間に時間軸と囲む面積を計算することで、水平距離を求めます。
この設問における重要なポイント
- a-tグラフからv-tグラフへの変換: a-tグラフの面積は速度の変化量 \(\Delta v_x\) を表します。\(t=0\) で \(v_x=0\) なので、時刻 \(t\) での速度 \(v_x(t)\) は \(0 \sim t\) までのa-tグラフの面積に等しくなります。
- v-tグラフの面積と移動距離: 作成した\(v_x-t\)グラフの面積が、水平方向の移動距離 \(L\) となります。
具体的な解説と立式
まず、\(v_x-t\)グラフを作成します。
- \(0 \le t \le 100\) s: \(a_x=3 \text{ m/s}^2\) で一定なので、\(v_x\) は線形に増加します。\(t=100\) s での速度 \(v_{x(100)}\) は、a-tグラフの面積から求めます。
$$ v_{x(100)} = 3 \times 100 $$ - \(100 < t < 900\) s: \(a_x=0\) なので、\(v_x\) は \(v_{x(100)}\) の値で一定の等速直線運動となります。
- \(900 \le t \le 1000\) s: \(a_x=-3 \text{ m/s}^2\) で一定なので、\(v_x\) は線形に減少します。\(t=1000\) s での速度 \(v_{x(1000)}\) は、\(t=900\)sでの速度から、\(900 \sim 1000\)sのa-tグラフの面積分だけ変化します。
$$ v_{x(1000)} = v_{x(900)} + (-3) \times (1000-900) $$
この\(v_x-t\)グラフは台形になります。水平距離 \(L\) はこの台形の面積です。
$$ L = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times (\text{高さ}) $$
使用した物理公式
- a-tグラフの面積 = 速度の変化量
- v-tグラフの面積 = 移動距離
まず、各時刻での速度を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{x(100)} &= 300 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
\(100 < t < 900\)s では \(v_x = 300 \text{ m/s}\) で一定なので、\(v_{x(900)} = 300 \text{ m/s}\) です。
$$
\begin{aligned}
v_{x(1000)} &= 300 + (-3) \times 100 \\[2.0ex]&= 300 – 300 \\[2.0ex]&= 0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
作成された\(v_x-t\)グラフは、上底が \(900-100=800 \text{ s}\)、下底が \(1000 \text{ s}\)、高さが \(300 \text{ m/s}\) の台形です。
台形の面積の公式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{1}{2} \times (800 + 1000) \times 300 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times 1800 \times 300 \\[2.0ex]&= 900 \times 300 \\[2.0ex]&= 270000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(2.7 \times 10^5 \text{ m}\) となります。
水平方向の距離を求めるには、まず水平方向の速度が時間とともにどう変わるかを知る必要があります。加速度のグラフ(図1)から速度のグラフを作ります。出来上がった速度のグラフが時間軸と囲む面積が、進んだ水平距離になります。
AB間の水平距離は \(2.7 \times 10^5 \text{ m}\) です。
思考の道筋とポイント
水平方向の運動を、①加速区間(\(0 \sim 100\)s)、②等速区間(\(100 \sim 900\)s)、③減速区間(\(900 \sim 1000\)s)の3つに分け、それぞれの区間の移動距離を等加速度直線運動や等速直線運動の公式で計算し、最後に合計する方法です。
具体的な解説と立式
各区間の移動距離を \(L_1, L_2, L_3\) とします。
- \(L_1 (0 \to 100\text{s})\): 初速度 \(v_0=0\), 加速度 \(a=3\) の等加速度運動。
$$ L_1 = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 $$ - \(L_2 (100 \to 900\text{s})\): 速度 \(v_x=300\) の等速運動。時間は \(800\)s。
$$ L_2 = v t $$ - \(L_3 (900 \to 1000\text{s})\): 初速度 \(v_0=300\), 加速度 \(a=-3\) の等加速度運動。時間は \(100\)s。
$$ L_3 = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 $$
総距離 \(L\) はこれらの和です。
$$ L = L_1 + L_2 + L_3 $$
$$
\begin{aligned}
L_1 &= 0 \times 100 + \frac{1}{2} \times 3 \times (100)^2 \\[2.0ex]&= 15000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
L_2 &= 300 \times (900 – 100) \\[2.0ex]&= 300 \times 800 \\[2.0ex]&= 240000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
L_3 &= 300 \times 100 + \frac{1}{2} \times (-3) \times (100)^2 \\[2.0ex]&= 30000 – 15000 \\[2.0ex]&= 15000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
総距離 \(L\) は、
$$
\begin{aligned}
L &= 15000 + 240000 + 15000 \\[2.0ex]&= 270000 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(2.7 \times 10^5 \text{ m}\) となり、メインの解法と一致します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の分解:
- 核心: 飛行機の運動のような2次元の運動は、水平方向(x成分)と鉛直方向(y成分)の2つの独立した1次元運動の集まりとして考えることができます。この問題では、x方向の運動は図1のa-tグラフ、y方向の運動は図2のv-tグラフにそれぞれ対応しており、互いに影響を与えません。
- グラフの物理的意味の理解:
- 核心: 加速度・速度・変位の関係をグラフ上で理解することが重要です。
- a-tグラフ: グラフの面積が速度の変化量 \(\Delta v\) を表します。
- v-tグラフ: グラフの傾きが加速度 \(a\) を、グラフの面積が移動距離(変位)\(x\) を表します。
この関係性(微分・積分の関係)を使いこなし、あるグラフから別のグラフの情報を引き出すことが問題解決の鍵です。
- 核心: 加速度・速度・変位の関係をグラフ上で理解することが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 斜方投射: 地上から斜めに投げ上げた物体の運動も、水平方向の「等速直線運動」と鉛直方向の「等加速度直線運動(重力)」に分解して考えます。本質的に同じアプローチです。
- グラフの変換問題: x-tグラフが与えられてv-tグラフやa-tグラフを描く問題、あるいはその逆など、グラフ間の関係性を問う問題全般に応用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- x方向とy方向を完全に分離する: 問題を解く際は、まず「x方向だけの情報」「y方向だけの情報」をそれぞれ整理します。混同しないように注意することが第一歩です。
- 問われている物理量はどのグラフから得られるか判断する:
- 「高さ」や「距離」を問われたら → v-tグラフの「面積」を計算する。
- 「速度」を問われたら → v-tグラフの値を読み取るか、a-tグラフの「面積」から計算する。
- 「加速度」を問われたら → a-tグラフの値を読み取るか、v-tグラフの「傾き」を計算する。
- グラフがない場合は自分で描く: (2)のように、a-tグラフからv-tグラフを自分で描くことで、問題の見通しが格段に良くなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- x方向とy方向の情報の混同:
- 誤解: y方向の高さ(問1)を計算するのに、図1のx方向の加速度を使ってしまうなど、2つの運動をごちゃ混ぜにしてしまう。
- 対策: 計算を始める前に、問題用紙の余白に「y方向:図2を見る」「x方向:図1を見る」などとメモ書きし、思考を明確に分離する習慣をつけましょう。
- グラフの面積と値の混同:
- 誤解: v-tグラフの \(t=300\)s での「値(\(v_y=0\))」を高さと勘違いする。
- 対策: 「高さ」は「移動距離」であり、v-tグラフの「面積」に相当することを常に意識しましょう。「値」はあくまでその瞬間の「速度」です。
- グラフの形状の誤読:
- 誤解: (1)の図2のグラフを、単純な三角形や台形と早合点してしまう。
- 対策: グラフの各点がどの時刻に対応するのか、軸の目盛りを丁寧に確認しましょう。この問題のように目盛りが省略されている場合は、物理的に自然な運動(加速→等速→減速など)を想定し、辻褄が合うように解釈する必要があります。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 飛行機の軌跡をイメージする:
- \(t=0 \sim 100\)s: x方向にもy方向にも加速。斜め右上にぐんぐん加速していくイメージ。
- \(t=100 \sim 200\)s: x方向は等速、y方向も等速。斜め右上に一定の角度でまっすぐ飛んでいく。
- \(t=200 \sim 300\)s: x方向は等速、y方向は減速。だんだん水平飛行に近づいていき、\(t=300\)sで一瞬水平になる(最高点)。
- このように、xとyの運動を組み合わせることで、実際の飛行機の軌跡(パス)を頭の中に描くことができます。
- \(v_x-t\)グラフの作成: (2)を解く上で、a-tグラフから\(v_x-t\)グラフを自分で描く作業は、現象理解と計算の両面で非常に有効です。グラフ化することで、運動の全体像(加速→等速→減速)が一目瞭然となり、面積計算も視覚的に行えます。
- 飛行機の軌跡をイメージする:
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 面積計算:
- 選定理由: v-tグラフから移動距離を、a-tグラフから速度変化を求める最も直接的な方法だから。
- 適用根拠: 物理学における積分(時間で足し合わせる操作)に相当します。速度を時間で積分すると移動距離、加速度を時間で積分すると速度になるという関係を、グラフの面積という形で利用しています。
- 等加速度運動の公式 (\(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\), etc.):
- 選定理由: (2)の別解のように、グラフの面積計算の代わりに、代数的な計算で移動距離を求めるために使用。
- 適用根拠: これらの公式自体が、v-tグラフの面積計算を数式化したものです。グラフが単純な直線で表せる区間(加速度が一定の区間)では、公式を用いた方が速い場合もあります。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 最高高度の計算:
- 戦略: y方向の運動にのみ着目。最高高度 \(\iff\) \(v_y=0\) となる時刻までの移動距離。
- フロー: ①図2のv-tグラフで \(v_y>0\) となる領域(\(t=0 \sim 300\)s)を特定 → ②その領域を台形と解釈し、面積を計算する。
- (2) 水平距離の計算:
- 戦略: x方向の運動にのみ着目。全時間(\(t=0 \sim 1000\)s)での移動距離を求める。
- フロー(グラフ利用): ①図1(a-tグラフ)の面積から各時刻の \(v_x\) を計算し、\(v_x-t\)グラフを作成 → ②作成した\(v_x-t\)グラフ(台形)の面積を計算する。
- フロー(公式利用): ①運動を3区間(加速、等速、減速)に分割 → ②各区間の移動距離を公式で計算 → ③3つの距離を合計する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 桁数の多い計算: この問題では、\(10^3\) や \(10^5\) といった大きな桁の数値が出てきます。ゼロの数を間違えないよう、慎重に計算しましょう。\(2.7 \times 10^5\) のような指数表記を適切に使うことで、ミスを減らせます。
- 有効数字: 問題文に「有効数字2桁で答えよ」と明記されています。最終的な答えを出す際には、必ず指示に従って四捨五入しましょう。例えば、4000は \(4.0 \times 10^3\)、270000は \(2.7 \times 10^5\) と表記します。
- 別解による検算: (2)では、グラフの面積で求める方法と、公式で区間ごとに計算する方法の2通りで解きました。両者で同じ答えが得られたことは、計算の正しさを裏付ける強力な証拠となります。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 対称性の確認:
- x方向の運動では、\(0 \sim 100\)sの加速(\(a_x=3\))と \(900 \sim 1000\)sの減速(\(a_x=-3\))は、加速度の大きさが同じで時間も同じ(100s)です。したがって、加速区間の移動距離 \(L_1\) と減速区間の移動距離 \(L_3\) は等しくなるはずです。別解の計算で \(L_1=15000\), \(L_3=15000\) となり、実際に等しくなっていることが確認でき、計算の妥当性が高まります。
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