無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「熱容量と比熱の計算 – 複合体の扱いと有効数字」【高校物理対応】

今回の問題

thermodynamicsall#01

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複合体の熱容量と比熱」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 熱容量と比熱の定義: 物体全体の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げるのに必要な熱量が「熱容量 \(C\)\)」、物質\(1\)\(\text{g}\)あたりの熱容量が「比熱 \(c\)\)」です。両者の関係式 \(C=mc\) を理解していることが基本です。
  • 熱容量の加法性: 複数の物質で構成される物体全体の熱容量は、各構成物質の熱容量の単純な和で求めることができます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まずガラス容器と砂、それぞれの熱容量を \(C=mc\) の公式で計算します。次に、それらを足し合わせることで、物体全体の熱容量を求めます。
  2. (2)では、物体全体の質量を計算し、(1)で求めた物体全体の熱容量を全体の質量で割ることで、物体全体の比熱を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体全体の熱容量を求める問題です。物体は「ガラス容器」と「砂」という2つの部分から構成されています。物体全体の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げるのに必要な熱量は、ガラス容器の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げる熱量と、砂の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げる熱量の合計になります。したがって、各部分の熱容量を計算し、それらを足し合わせることで全体の熱容量を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 熱容量の定義式 \(C = mc\) (熱容量 = 質量 × 比熱)を正しく使える。
  • 複合体の熱容量は、各部分の熱容量の和で計算できる(熱容量の加法性)。
  • 計算結果の有効数字を問題文に合わせて処理できる。

具体的な解説と立式
ガラス容器の質量を \(m_{\text{ガラス}}\)、比熱を \(c_{\text{ガラス}}\) とし、その熱容量を \(C_{\text{ガラス}}\) とします。
同様に、砂の質量を \(m_{\text{砂}}\)、比熱を \(c_{\text{砂}}\) とし、その熱容量を \(C_{\text{砂}}\) とします。
それぞれの熱容量は、公式 \(C=mc\) を用いて次のように表せます。
$$ C_{\text{ガラス}} = m_{\text{ガラス}} c_{\text{ガラス}} \quad \cdots ① $$
$$ C_{\text{砂}} = m_{\text{砂}} c_{\text{砂}} \quad \cdots ② $$
物体全体の熱容量 \(C_{\text{全体}}\) は、これらの和となります。
$$ C_{\text{全体}} = C_{\text{ガラス}} + C_{\text{砂}} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 熱容量: \(C = mc\)
計算過程

問題文で与えられた値を代入して、まず各部分の熱容量を計算します。
ガラス容器の熱容量 \(C_{\text{ガラス}}\) は、
$$ C_{\text{ガラス}} = 200 \times 0.92 = 184 \text{ [J/K]} $$
砂の熱容量 \(C_{\text{砂}}\) は、
$$ C_{\text{砂}} = 300 \times 0.76 = 228 \text{ [J/K]} $$
物体全体の熱容量 \(C_{\text{全体}}\) は、これらの和なので、
$$
\begin{aligned}
C_{\text{全体}} &= C_{\text{ガラス}} + C_{\text{砂}} \\
&= 184 + 228 \\
&= 412 \text{ [J/K]}
\end{aligned}
$$
問題で与えられた比熱の値 (0.92, 0.76) は有効数字2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁に丸める必要があります。
$$ C_{\text{全体}} \approx 4.1 \times 10^2 \text{ [J/K]} $$

計算方法の平易な説明

物体全体の熱容量は、各部分の熱容量を足し合わせることで求められます。まず、ガラスと砂の熱容量をそれぞれ計算します。熱容量は「質量 × 比熱」で計算できるので、ガラスは \(200 \text{ g} \times 0.92 \text{ J/(g}\cdot\text{K)} = 184 \text{ J/K}\)、砂は \(300 \text{ g} \times 0.76 \text{ J/(g}\cdot\text{K)} = 228 \text{ J/K}\) となります。これらを合計すると \(184 + 228 = 412 \text{ J/K}\) です。問題で使われている比熱が有効数字2桁なので、答えも2桁にそろえて \(4.1 \times 10^2 \text{ J/K}\) とします。

結論と吟味

物体全体の熱容量は \(4.1 \times 10^2 \text{ J/K}\) となります。これは、ガラスと砂を合わせた物体全体の温度を \(1 \text{ K}\) 上昇させるのに \(410 \text{ J}\) の熱量が必要であることを意味します。有効数字の処理も適切です。

解答 (1) \(4.1 \times 10^2\) J/K

問(2)

思考の道筋とポイント
物体全体の比熱を求める問題です。比熱は「単位質量あたりの熱容量」と考えることができます。したがって、(1)で求めた物体全体の熱容量を、物体全体の質量で割ることで求めることができます。まずは物体全体の質量を計算することが第一歩です。
この設問における重要なポイント

  • 比熱と熱容量の関係式 \(c = \displaystyle\frac{C}{m}\) を理解している。
  • 物体全体の質量は、各部分の質量の和で計算できる。
  • 除算における有効数字の処理を正しく行える。

具体的な解説と立式
物体全体の質量を \(m_{\text{全体}}\)、(1)で求めた全体の熱容量を \(C_{\text{全体}}\) とすると、物体全体の比熱 \(c_{\text{全体}}\) は次の式で求められます。
$$ c_{\text{全体}} = \frac{C_{\text{全体}}}{m_{\text{全体}}} \quad \cdots ④ $$
ここで、物体全体の質量 \(m_{\text{全体}}\) は、ガラス容器の質量と砂の質量の和です。
$$ m_{\text{全体}} = m_{\text{ガラス}} + m_{\text{砂}} \quad \cdots ⑤ $$

使用した物理公式

  • 比熱: \(c = \displaystyle\frac{C}{m}\)
計算過程

まず、式⑤を用いて物体全体の質量を計算します。
$$ m_{\text{全体}} = 200 \text{ [g]} + 300 \text{ [g]} = 500 \text{ [g]} $$
次に、式④に値を代入して全体の比熱を計算します。このとき、(1)で求めた熱容量の丸める前の値 \(C_{\text{全体}} = 412 \text{ J/K}\) を用いると、より正確な計算ができます。
$$
\begin{aligned}
c_{\text{全体}} &= \frac{412 \text{ [J/K]}}{500 \text{ [g]}} \\
&= 0.824 \text{ [J/(g}\cdot\text{K)]}
\end{aligned}
$$
計算に用いた熱容量の元となる比熱が有効数字2桁なので、この結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ c_{\text{全体}} \approx 0.82 \text{ [J/(g}\cdot\text{K)]} $$

計算方法の平易な説明

物体全体の比熱を求めるには、「全体の熱容量 ÷ 全体の質量」を計算します。(1)で全体の熱容量は \(412 \text{ J/K}\) と計算しました。全体の質量は、ガラス \(200 \text{ g}\) と砂 \(300 \text{ g}\) を足して \(500 \text{ g}\) です。したがって、\(412 \div 500 = 0.824\) となります。この計算の元になった数値の有効数字が2桁なので、答えも2桁にそろえて \(0.82 \text{ J/(g}\cdot\text{K)}\) とします。

結論と吟味

物体全体の比熱は \(0.82 \text{ J/(g}\cdot\text{K)}\) となります。この値は、ガラスの比熱(0.92)と砂の比熱(0.76)の間の値になっており、物理的に妥当な結果です。具体的には、質量の大きい砂の比熱に近い値になっています。

解答 (2) \(0.82\) J/(g・K)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 熱容量の定義と加法性:
    • 核心: この問題の根幹は、①熱容量 \(C\) が質量 \(m\) と比熱 \(c\) の積 (\(C=mc\)) で定義されること、②複数の物体からなる系の全熱容量は、各部分の熱容量の単純な和 (\(C_{\text{全体}} = C_1 + C_2\)) で与えられること、という2つの基本原則を理解し、適用できるかどうかにあります。
    • 理解のポイント: なぜ熱容量は足し算できるのかを理解することが重要です。これは、系全体の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げるのに必要な「エネルギー」は、各部分の温度を\(1\)\(\text{K}\)上げるのに必要な「エネルギー」の合計である、というエネルギーの加法性に基づいています。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 熱量保存則の問題: この問題で求めた「物体全体」を、温度の異なる水などの中に入れる熱量保存の問題が頻出です。その際、失った熱量と得た熱量を等しいとおく (\(Q_{\text{失}} = Q_{\text{得}}\)) 式の中で、この物体がやりとりする熱量 \(Q\) は \(Q = C_{\text{全体}}\Delta T\) として計算できます。個別に \(m_{\text{ガラス}}c_{\text{ガラス}}\Delta T + m_{\text{砂}}c_{\text{砂}}\Delta T\) と計算するより、\(C_{\text{全体}}\) を使った方が式が簡潔になります。
    • 状態変化を含む問題: 容器に入れた氷が融けて水になるような、状態変化を伴う熱の問題でも、容器の熱容量を考慮する必要があります。この場合も、容器の熱容量を計算し、熱のやりとりに含めることが必要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 構成要素の特定: まず、熱をやりとりする系がいくつの部分(物質)から構成されているかを確認します。(例:この問題ではガラスと砂の2つ)
    2. 求めるものの確認: 「熱容量」を問われているのか、「比熱」を問われているのかを明確に区別します。
    3. 熱容量の計算: 「全体の熱容量」を求めるなら、各部分の熱容量 (\(mc\)) を計算して足し合わせます。
    4. 比熱の計算: 「全体の比熱」を求めるなら、まず「全体の熱容量」と「全体の質量」を計算し、その後で割り算 (\(c = C/m\)) を行います。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 比熱と熱容量の混同:
    • 誤解: 比熱は物質\(1\)\(\text{g}\)あたりの性質、熱容量は物体そのものの性質です。単位(比熱: J/(g・K), 熱容量: J/K)で区別する癖をつけましょう。
    • 対策: 「比」という字がついたら「単位量あたり」と覚えるのが有効です。比熱は「単位質量あたりの熱容量」です。
  • 全体の比熱の計算ミス:
    • 誤解: 全体の比熱を、各物質の比熱の単純な平均 (\((0.92+0.76)/2\)) で計算してしまう。
    • 対策: 全体の比熱は、質量の重みを考慮した「加重平均」になります。必ず「全体の熱容量 ÷ 全体の質量」という定義に戻って計算しましょう。
  • 有効数字の処理ミス:
    • 誤解: 計算の途中で値を丸めてしまい、最終的な答えに誤差が生じる。
    • 対策: (1)で求めた \(C_{\text{全体}}=412\) のように、途中の計算結果は丸めずに(あるいは有効数字より1桁多く残して)次の計算に使い、最終的な答えを出す段階で初めて有効数字を考慮して丸めるようにしましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(C_{\text{全体}} = C_1 + C_2\) (熱容量の加法性):
    • 選定理由: この問題の核心です。物体全体を温めるという現象を、部分の集合として捉えるために不可欠な考え方です。
    • 適用根拠: 熱量とはエネルギーの一形態です。物体全体に与えた熱エネルギー \(Q_{\text{全体}}\) は、各部分に分配されます (\(Q_{\text{全体}} = Q_1 + Q_2\))。温度変化が同じ \(\Delta T\) のとき、\(C_{\text{全体}}\Delta T = C_1 \Delta T + C_2 \Delta T\) となり、両辺を \(\Delta T\) で割ることで \(C_{\text{全体}} = C_1 + C_2\) が導かれます。これはエネルギー保存則の考え方に基づいています。
  • \(c_{\text{全体}} = \displaystyle\frac{C_{\text{全体}}}{m_{\text{全体}}}\) (全体の比熱の定義):
    • 選定理由: 「比熱」という物理量の定義そのものです。複合体をあたかも一つの均質な物質と見なしたとき、その物質の比熱はいくらになるか、を計算するための式です。
    • 適用根拠: 比熱 \(c\) は、熱容量 \(C\) と質量 \(m\) の間の比例定数 (\(C=cm\)) として定義されます。この定義を物体全体に適用したものがこの式です。これにより、異なる物質の混合物を、ある特定の比熱を持つ単一物質として扱うことが可能になります。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位を書きながら計算する: \(C = 200\text{ g} \times 0.92\text{ J/(g}\cdot\text{K)}\) のように、計算式に単位を書き込むことで、単位が正しく約分されて目的の単位(この場合は J/K)になるかを確認でき、立式のミスを防げます。
  • 和と積の有効数字ルールを区別する: この問題では、(1)で積と和、(2)で和と商の計算が出てきます。乗除算は「桁数」、加減算は「末位」でルールが異なることを常に意識しましょう。ただし、迷ったら「最も信頼性の低い数値(有効数字の桁数が最も少ないもの)に合わせる」という大原則に立ち返ると安全です。
  • 概算で見当をつける:
    • \(C_{\text{全体}}\) の計算: \(200 \times 0.9 \approx 180\), \(300 \times 0.8 \approx 240\)。合計で \(420\) 程度。実際の答え \(412\) と近いので、大きな間違いはなさそうです。
    • \(c_{\text{全体}}\) の計算: \(412/500 \approx 400/500 = 0.8\)。実際の答え \(0.824\) と近いので、桁違いのミスは防げます。
  • 物理的な妥当性を確認する: (2)で求めた全体の比熱 \(0.82\) が、構成物質の比熱 \(0.76\) と \(0.92\) の間にあることを確認します。もしこの範囲から外れていたら、計算ミスの可能性が高いです。

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