問題の確認
wave#07各設問の思考プロセス
この問題は、2つの同位相の波源から発せられる波が干渉し、直線上(波源間)に形成される節(振動しない点)の数を求めるものです。
- 節ができる条件の理解:
- 2つの波源が同位相で、同じ波長の波を出すとき、ある点が節(全く振動しない点)になるのは、その点までの各波源からの距離の差(経路差)が、波長の半整数倍(例: \(\frac{1}{2}\lambda, \frac{3}{2}\lambda, \frac{5}{2}\lambda, \dots\))になるときです。
- 数式で表すと、経路差を \(\Delta L\) とすると、\(\Delta L = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda\) (ここで \(m = 0, 1, 2, \dots\))となります。
- 直線AB上の点の経路差の表現:
- 波源Aを原点 (\(z=0\))、波源Bを \(z=8.5 \, \text{cm}\) とします。直線AB上の任意の点Pの座標を \(z\) とします。
- 点PがAとBの間 (\(0 \le z \le 8.5\)) にあるとき、Aからの距離は \(z\)、Bからの距離は \(8.5-z\) です。
- したがって、経路差 \(\Delta L = |z – (8.5-z)| = |2z – 8.5|\) となります。
- 経路差の取りうる範囲の確認:
- 点Pが線分AB上を動くとき、経路差 \(\Delta L\) は最小で \(0\)(ABの中点)、最大で \(8.5 \, \text{cm}\)(点Aまたは点Bの位置)となります。
- 条件を満たす経路差の特定:
- 節の条件 \(\Delta L = (m + \frac{1}{2})\lambda\) に \(\lambda = 3 \, \text{cm}\) を代入し、\(\Delta L\) が手順3で求めた範囲内にあるものをリストアップします。
- 節の位置の計算と個数の集計:
- 特定された各経路差 \(\Delta L\) について、\(|2z – 8.5| = \Delta L\) を満たす \(z\) の値を求めます。
- 得られた \(z\) の値が \(0 < z < 8.5\)(波源の間)の範囲にある点の数を数えます。波源自身が節になるかどうかも検討しますが、通常、波源は振動しているため節とはみなしません。
各設問の具体的な解説と解答
問われている内容の明確化:
波源AとB(距離 \(8.5 \, \text{cm}\)、同位相、波長 \(\lambda = 3 \, \text{cm}\))を結ぶ直線AB上で、波の干渉により全く振動しない点(節)がいくつ存在するかを求めます。
具体的な解説と計算手順:
波源Aを座標 \(z=0\)、波源Bを座標 \(z=8.5 \, \text{cm}\) とします。直線AB上の点Pの座標を \(z\) とします。
点PまでのAからの距離を \(r_A = z\)、Bからの距離を \(r_B = 8.5-z\) とします (ただし \(0 \le z \le 8.5\))。
経路差 \(\Delta L\) は、
$$\Delta L = |r_A – r_B| = |z – (8.5-z)| = |2z – 8.5|$$
波源A, Bが同位相なので、点Pが節となる条件は、経路差 \(\Delta L\) が波長の半整数倍のときです。
$$\Delta L = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)$$
与えられた波長 \(\lambda = 3 \, \text{cm}\) を代入すると、節となる経路差は:
- \(m=0\): \(\Delta L_0 = (0 + \frac{1}{2}) \times 3 = 1.5 \, \text{cm}\)
- \(m=1\): \(\Delta L_1 = (1 + \frac{1}{2}) \times 3 = 4.5 \, \text{cm}\)
- \(m=2\): \(\Delta L_2 = (2 + \frac{1}{2}) \times 3 = 7.5 \, \text{cm}\)
- \(m=3\): \(\Delta L_3 = (3 + \frac{1}{2}) \times 3 = 10.5 \, \text{cm}\)
点Pが線分AB上 (\(0 \le z \le 8.5\)) にあるとき、経路差 \(\Delta L = |2z – 8.5|\) の取りうる範囲は \(0 \le \Delta L \le 8.5 \, \text{cm}\) です。
したがって、条件を満たす可能性のある経路差は \(\Delta L_0 = 1.5 \, \text{cm}\), \(\Delta L_1 = 4.5 \, \text{cm}\), \(\Delta L_2 = 7.5 \, \text{cm}\) です (\(\Delta L_3 = 10.5 \, \text{cm}\) は \(8.5 \, \text{cm}\) を超えるため除外)。
これらの経路差に対応する点Pの座標 \(z\) を求めます。
- \(\Delta L = 1.5 \, \text{cm}\) の場合:
\(|2z – 8.5| = 1.5\)\(2z – 8.5 = 1.5 \Rightarrow 2z = 10.0 \Rightarrow z = 5.0 \, \text{cm}\)\(2z – 8.5 = -1.5 \Rightarrow 2z = 7.0 \Rightarrow z = 3.5 \, \text{cm}\)
(これらの点は \(0 < z < 8.5\) を満たします)
- \(\Delta L = 4.5 \, \text{cm}\) の場合:
\(|2z – 8.5| = 4.5\)\(2z – 8.5 = 4.5 \Rightarrow 2z = 13.0 \Rightarrow z = 6.5 \, \text{cm}\)\(2z – 8.5 = -4.5 \Rightarrow 2z = 4.0 \Rightarrow z = 2.0 \, \text{cm}\)
(これらの点は \(0 < z < 8.5\) を満たします)
- \(\Delta L = 7.5 \, \text{cm}\) の場合:
\(|2z – 8.5| = 7.5\)\(2z – 8.5 = 7.5 \Rightarrow 2z = 16.0 \Rightarrow z = 8.0 \, \text{cm}\)\(2z – 8.5 = -7.5 \Rightarrow 2z = 1.0 \Rightarrow z = 0.5 \, \text{cm}\)
(これらの点は \(0 < z < 8.5\) を満たします)
得られた節の位置は、Aから測った距離で \(0.5 \, \text{cm}\), \(2.0 \, \text{cm}\), \(3.5 \, \text{cm}\), \(5.0 \, \text{cm}\), \(6.5 \, \text{cm}\), \(8.0 \, \text{cm}\) です。
これらはすべて異なる6つの点であり、線分AB上にあります(波源A, B自身は含まない)。
したがって、振動しない点は6個並びます。
計算方法の平易な説明:
AとBから同じ波が出ていて、それらが途中で出会います。弱め合って全く揺れない場所(節)がいくつできるかを考えます。
- 節ができる条件: Aからの距離とBからの距離の差が、「波長の半分 (\(\lambda/2\))」の奇数倍になるときです。波長は \(3 \, \text{cm}\) なので、\(\lambda/2 = 1.5 \, \text{cm}\)。つまり、距離の差が \(1.5 \, \text{cm}\), \(1.5 \times 3 = 4.5 \, \text{cm}\), \(1.5 \times 5 = 7.5 \, \text{cm}\), … のときです。
- 距離の差の範囲: AとBの間の線上では、距離の差は一番小さいときで \(0 \, \text{cm}\) (真ん中)、一番大きいときで \(8.5 \, \text{cm}\) (AまたはBのすぐそば)です。
- 当てはまる距離の差: 上記のうち、\(8.5 \, \text{cm}\) 以下なのは \(1.5 \, \text{cm}\), \(4.5 \, \text{cm}\), \(7.5 \, \text{cm}\) の3種類です。
- それぞれの場所:
- 距離の差が \(1.5 \, \text{cm}\) となる場所は、ABの間に2ヶ所あります (Aから \(3.5 \, \text{cm}\) と \(5.0 \, \text{cm}\) の点)。
- 距離の差が \(4.5 \, \text{cm}\) となる場所も、ABの間に2ヶ所あります (Aから \(2.0 \, \text{cm}\) と \(6.5 \, \text{cm}\) の点)。
- 距離の差が \(7.5 \, \text{cm}\) となる場所も、ABの間に2ヶ所あります (Aから \(0.5 \, \text{cm}\) と \(8.0 \, \text{cm}\) の点)。
- 合計の数: \(2 + 2 + 2 = 6\) 個の節があります。
この設問における重要なポイント:
- 同位相の2波源による干渉で節ができる条件は、経路差が波長の半整数倍 \(\left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda\)。
- 直線AB上の点の経路差 \(\Delta L = |2z – D|\) (ここで \(D\) はAB間距離、\(z\) は一方の端からの距離) の取りうる範囲を考える。
- 条件を満たす経路差に対して、それぞれ2つの節の位置が対応することが多い(対称性のため)。
直線AB上で振動しない点は6個並ぶ。
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 波の干渉: 複数の波が同じ空間領域で重なり合う現象。重ね合わせの原理に従う。
- 同位相と逆位相: 波源の振動のタイミングが一致している場合を同位相、半周期ずれている場合を逆位相という。これにより干渉の条件(強め合い・弱め合いの場所)が変わる。
- 経路差: 干渉を考える点までの、複数の波源からの距離の差。位相差を生じさせる主な要因。
- 干渉条件(同位相波源の場合):
- 強め合い(腹): 経路差が \(m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い(節): 経路差が \(\left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 定常波: 特に逆向きに進む同じ波が干渉すると、腹と節が空間的に固定された定常波が形成される。節と節(または腹と腹)の間隔は \(\lambda/2\)。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 図示による状況把握: 波源の位置関係、干渉を考える点の位置などを図に描いて整理すると、経路差の計算などが容易になる。
- 経路差の範囲の確認: 注目している領域(例えば線分AB上)で、経路差が取りうる値の範囲をまず把握することで、条件を満たす \(m\) の値を効率的に見つけられる。
- 対称性の利用: 波源の配置や条件が対称的な場合、干渉模様も対称的に現れることが多い。例えば、2つの同位相波源の中点は必ず強め合い(腹)になる。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 強め合いと弱め合いの条件の混同: 特に波源が同位相の場合と逆位相の場合で、条件式が入れ替わることを忘れないようにする。
- 経路差の計算ミス: 距離の引き算や絶対値の扱いで誤る。
- \(m\) の値の取り扱い: \(m\) が \(0\) から始まるのか \(1\) から始まるのか、条件式によって異なる場合があるので注意する(本解説の式では \(m=0\) から)。
- 波源自身を節や腹として数えるか: 通常、波源は振動しているので節とはみなさない。問題の文脈で「波源間にできる」などと指定されていればそれに従う。
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