「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 8】Step2

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Step 2

109 運動量と力積

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「時間変化する力が与える力積」と「力積と運動量の関係」です。力が一定でない場合の力積の求め方と、それによる物体の運動の変化を計算する、基本的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. F-tグラフと力積の関係: 力が時間的に変化する場合、物体が受けた力積の大きさは、F-tグラフと時間軸で囲まれた部分の面積に等しくなります。
  2. 力積と運動量の変化の関係: 物体が受けた力積は、その物体の運動量の変化に等しいという、力学における重要な関係式です。(\(I = \Delta p = mv’ – mv\))
  3. 単位の換算: 物理計算では、質量はキログラム(kg)、時間は秒(s)など、基本的な単位(SI単位系)に揃えて計算する必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題で与えられたF-tグラフの面積を計算して、ボールが受けた力積の大きさを求めます。
  2. 次に、「力積 = 運動量の変化」の関係式を立てます。
  3. 最後に、求めた力積の値と、与えられた質量(単位換算後)を代入して、ボールの最終的な速さを計算します。

思考の道筋とポイント
この問題は、「力積はいくらか」「速さはいくらになったか」という2つの問いから構成されています。これらは順番に解いていくのが自然な流れです。

まず、力積を求めます。力が一定なら力積は「力×時間」で簡単に計算できますが、今回は力が時間と共に変化しています。このような場合に力積を求めるための重要な知識が「F-tグラフの面積が力積を表す」ということです。グラフの形状は三角形なので、面積は容易に計算できます。

次に、速さを求めます。力積が分かれば、「力積と運動量の変化は等しい」という関係式を使って、運動量の変化を計算できます。ボールは初め静止しているので、運動量の変化はそのまま「後の運動量」と等しくなります。運動量は「質量×速さ」なので、質量で割ることで最終的な速さが求まります。この際、質量の単位をグラム(g)からキログラム(kg)へ換算することを忘れないように注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • F-tグラフの面積は力積の大きさに等しい。
  • 力積は運動量の変化に等しい (\(I = mv’ – mv\))。
  • 質量の単位をグラム(g)からキログラム(kg)に換算する (\(1 \, \text{g} = 10^{-3} \, \text{kg}\))。

具体的な解説と立式
この問題は2つのパートに分かれています。

1. ボールが受けた力積の大きさの計算

力が時間的に変化する場合、力積の大きさ \(I\) は、F-tグラフと時間軸(t軸)で囲まれた部分の面積に等しくなります。

グラフは、底辺が \(0.20 \, \text{s}\)、高さが \(12 \, \text{N}\) の三角形です。

したがって、力積 \(I\) は三角形の面積公式を用いて次のように立式できます。
$$ I = \frac{1}{2} \times \text{底辺} \times \text{高さ} $$

2. ボールの速さの計算

力積と運動量の関係式 \(I = mv’ – mv\) を用います。

  • 力積 \(I\): 上で計算した値
  • 質量 \(m\): \(60 \, \text{g} = 60 \times 10^{-3} \, \text{kg}\)
  • 初速度 \(v\): 静止しているので \(v = 0 \, \text{m/s}\)
  • 後の速さ \(v’\): 求める値

これらの値を関係式に代入して立式します。
$$ I = (60 \times 10^{-3}) \times v’ – (60 \times 10^{-3}) \times 0 $$

使用した物理公式

  • 力積とF-tグラフの関係: \(I =\) F-tグラフの面積
  • 力積と運動量の関係: \(I = \Delta p = p_{\text{後}} – p_{\text{前}} = mv’ – mv\)
計算過程

力積の大きさの計算:
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{1}{2} \times 0.20 \times 12 \\[2.0ex]
&= 1.2 \, [\text{N} \cdot \text{s}]
\end{aligned}
$$

ボールの速さの計算:

力積と運動量の関係式に、求めた力積 \(I=1.2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
1.2 &= (60 \times 10^{-3}) \times v’ – 0 \\[2.0ex]
1.2 &= 0.060 \times v’
\end{aligned}
$$
この式を \(v’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v’ &= \frac{1.2}{0.060} \\[2.0ex]
&= \frac{120}{6} \\[2.0ex]
&= 20 \, [\text{m/s}]
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、ボールが受けた衝撃の合計(力積)を求めます。これは、グラフの三角形の面積を計算すればOKです。「底辺(0.20) × 高さ(12) ÷ 2」で、力積は \(1.2\) となります。
次に、この力積によってボールがどれだけ速くなったかを計算します。「力積 = 運動量の変化」というルールを使います。運動量は「質量 × 速さ」です。最初は止まっていたので運動量は0でした。力積 \(1.2\) を受けた結果、運動量も \(1.2\) になりました。ボールの質量は \(60 \, \text{g} = 0.06 \, \text{kg}\) なので、「速さ = 運動量 ÷ 質量」から、\(1.2 \div 0.06\) を計算して、速さは \(20 \, \text{m/s}\) と求まります。

結論と吟味

ボールが受けた力積の大きさは \(1.2 \, \text{N} \cdot \text{s}\)、その結果、ボールの速さは \(20 \, \text{m/s}\) になりました。
単位の換算(g→kg)を忘れずに行い、力積と運動量の関係を正しく適用することで、妥当な結果が得られました。

解答 力積の大きさ: \(1.2 \, \text{N} \cdot \text{s}\), ボールの速さ: \(20 \, \text{m/s}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • F-tグラフの面積と力積の関係:
    • 核心: 力が時間的に変化する場合、力積は単純な「力×時間」では計算できません。その代わりに、縦軸を力F、横軸を時間tとする「F-tグラフ」を描いたとき、そのグラフと横軸で囲まれた部分の面積が、物体が受けた力積の総量に等しくなる、という関係を理解することが核心です。これは、微小時間 \(\Delta t\) の力積 \(F \Delta t\) を足し合わせる(積分する)という考え方に基づいています。
  • 力積と運動量の関係:
    • 核心: 算出した力積が、物体の運動状態にどのような変化をもたらすかを結びつける法則です。すなわち、「力積は運動量の変化に等しい (\(I = \Delta p\))」という、力学における最も重要な関係式の一つを適用することです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • v-tグラフからの情報読み取り: 縦軸が速度v、横軸が時間tの「v-tグラフ」が与えられる問題。この場合、グラフの傾きが「加速度」、グラフと軸で囲まれた面積が「移動距離」を表します。F-tグラフの面積が力積であることと対比して覚えておくことが重要です。
    • 力が負になる場合: F-tグラフの一部がt軸の下側(F<0)にある場合。これは、物体の運動方向とは逆向きの力(ブレーキなど)が働いたことを意味します。その部分の面積は「負の力積」として計算し、全体の力積は各部分の面積の代数和(符号を考慮した足し算)で求めます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を確認: まず、縦軸が力Fなのか、速度vなのか、位置xなのかを絶対に確認します。これを間違えると、面積や傾きが意味する物理量が全く変わってしまいます。
    2. グラフの面積を計算: F-tグラフであることを確認したら、グラフとt軸で囲まれた図形(三角形、四角形など)の面積を計算します。これが力積 \(I\) となります。
    3. 初期の運動状態を確認: 問題文から、物体が「静止している」のか、あるいは「初速度を持っている」のかを読み取ります。これにより、運動量の変化 \(\Delta p = mv’ – mv\) のうち、初めの運動量 \(mv\) の値が決まります。
    4. 単位の確認: 質量がグラム(g)で与えられていないかなど、単位が基本単位(SI単位系)になっているかを確認します。必要であれば、計算前に必ず換算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位の換算忘れ:
    • 誤解: 質量 \(60 \, \text{g}\) を、そのまま \(m=60\) として計算してしまい、速さが非常に小さい値になってしまう。
    • 対策: 物理の問題を解き始める前に、与えられた数値の単位をチェックする習慣をつける。「質量はkg」「長さはm」「時間はs」を基本と心得る。特にグラム(g)やセンチメートル(cm)は頻出のひっかけなので注意する。
  • F-tグラフとv-tグラフの混同:
    • 誤解: F-tグラフの面積が「移動距離」であると勘違いしてしまう(v-tグラフの面積が移動距離)。
    • 対策: 「F-tグラフ \(\rightarrow\) 面積は力積」「v-tグラフ \(\rightarrow\) 面積は移動距離、傾きは加速度」という対応関係を、セットで明確に暗記する。なぜそうなるのか(力積の定義 \(I = \int F dt\)、移動距離の定義 \(x = \int v dt\))を理解しておくと、混同しにくくなります。
  • 面積計算のミス:
    • 誤解: 三角形の面積計算で、1/2を掛け忘れる。あるいは、台形などの複雑な図形の面積計算を間違える。
    • 対策: 図形の面積を求める際は、公式を正確に思い出し、どの数値が底辺でどの数値が高さに対応するのかを慎重に確認する。単純な計算でも油断しない。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力積 = F-tグラフの面積:
    • 選定理由: 問題では、力が一定ではなく時間的に変化しています。このような状況で、ある時間区間にわたる力の累積的な効果(=力積)を求めるための唯一の方法が、F-tグラフの面積を計算することだからです。
    • 適用根拠: 力積は、数学的には力Fを時間tで積分したもの (\(I = \int F(t) dt\)) です。定積分がグラフの面積に対応するという数学的な事実が、この公式の根拠となります。
  • 力積と運動量の関係 (\(I = \Delta p\)):
    • 選定理由: 問題の後半では、力積を受けた結果として「ボールの速さ」がどうなったかを問われています。力積という「原因」と、速さの変化という「結果」を結びつける関係式が、この「力積と運動量の関係」です。
    • 適用根拠: この関係式は、運動方程式 \(F=ma = m \frac{dv}{dt}\) を変形した \(Fdt = m dv\) を時間で積分したものであり、運動の第二法則と等価です。したがって、あらゆる力学現象に適用できる普遍的な法則です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位換算の徹底: \(60 \, \text{g} = 60 \times 10^{-3} \, \text{kg} = 0.060 \, \text{kg}\) のような単位換算は、計算の一番最初に行う。計算の途中で換算しようとすると、忘れたり間違えたりするリスクが高まります。
  • 指数の計算: \(10^{-3}\) のような指数を含む計算は、慎重に行う。\(v’ = 1.2 / (60 \times 10^{-3})\) のような計算では、\(10^{-3}\) を分母から分子に移項すると \(10^3\) になることを利用すると、\(v’ = (1.2 \times 1000) / 60 = 1200 / 60 = 20\) と計算しやすくなります。
  • 検算: 最終的に得られた速さ \(v’ = 20 \, \text{m/s}\) を使って、運動量の変化 \(\Delta p = mv’ = 0.060 \times 20 = 1.2 \, \text{N} \cdot \text{s}\) を逆算し、F-tグラフの面積と一致するかを確認する。この一手間で、計算ミスを大幅に減らすことができます。

110 運動量と力積

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「力積と運動量の関係」の応用です。一直線上の運動と平面上の運動の両方で、力積と運動量の変化を正しく計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力積と運動量の変化の関係: 物体が受けた力積は、その物体の運動量の変化に等しい (\(\vec{I} = \Delta \vec{p}\))。これはベクトルについての関係式です。
  2. ベクトル量の扱い: 一直線上の運動では、向きを正負の符号で表現します。平面上の運動では、ベクトル図を描いて幾何学的に考えるか、成分に分解して考えます。
  3. 力積と平均の力の関係: 力積は、物体に働いた平均の力と、力が働いた時間の積に等しい (\(I = F_{\text{平均}} \Delta t\))。
  4. 単位の換算: 質量をグラム(g)からキログラム(kg)に換算する必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、運動が一直線上(東西方向)で起こるため、一方の向きを正として運動量の変化を計算し、力積を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた力積と、力が作用した時間を用いて、力積と平均の力の関係式から平均の力を計算します。
  3. (3)では、運動が平面上で起こるため、運動量の変化をベクトルとして扱います。打つ前と打った後の運動量ベクトルを図示し、その差をベクトル作図によって求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
ラケットがボールに加えた力積を求める問題です。力積は「運動量の変化」に等しいという関係を利用します。運動は一直線上(東向きから西向きへ)で起こるため、向きを正負の符号で表現することが重要です。
この設問における重要なポイント

  • 力積は運動量の変化に等しい: \(I = \Delta p = p_{\text{後}} – p_{\text{前}}\)。
  • 運動量はベクトル量であり、一直線上の運動では向きを正負で区別する。
  • 後の運動量と前の運動量を、符号に注意して正しく計算する。

具体的な解説と立式
運動が東西の一直線上で起こっているため、西向きを正の向きとします。(東向きを正としても構いませんが、ここでは解答に合わせます)

  • 打つ前の速度 \(v\): 東向きに \(20 \, \text{m/s}\) なので、\(v = -20 \, \text{m/s}\)。
  • 打った後の速度 \(v’\): 西向きに \(30 \, \text{m/s}\) なので、\(v’ = +30 \, \text{m/s}\)。
  • ボールの質量 \(m\): \(60 \, \text{g} = 60 \times 10^{-3} \, \text{kg}\)。

ラケットがボールに加えた力積 \(I\) は、運動量の変化 \(\Delta p\) に等しくなります。
$$ I = p_{\text{後}} – p_{\text{前}} = mv’ – mv $$

使用した物理公式

  • 力積と運動量の変化の関係: \(I = \Delta p = mv’ – mv\)
計算過程

立式した式に、それぞれの値を代入して力積 \(I\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I &= (60 \times 10^{-3}) \times (+30) – (60 \times 10^{-3}) \times (-20) \\[2.0ex]
&= 60 \times 10^{-3} \times (30 – (-20)) \\[2.0ex]
&= 60 \times 10^{-3} \times 50 \\[2.0ex]
&= 3000 \times 10^{-3} \\[2.0ex]
&= 3.0 \, [\text{N} \cdot \text{s}]
\end{aligned}
$$
計算結果が正の値なので、力積の向きは設定した正の向き、すなわち西向きです。

計算方法の平易な説明

「力積」は「運動量の変化」のことです。運動量は「質量×速度」で、向きも重要です。西向きをプラスと決めると、打つ前の東向きの運動量はマイナス、打った後の西向きの運動量はプラスになります。運動量の変化は「後の運動量 – 前の運動量」で計算します。マイナスの値を引くことになるので、結果的に足し算となり、運動量の変化は大きくなります。

結論と吟味

ラケットがボールに加えた力積の大きさは \(3.0 \, \text{N} \cdot \text{s}\) で、向きは西向きです。ボールの進行方向を逆向きに変え、さらに速くするために大きな力積が西向きに加わったという結果は、物理的に妥当です。

解答 (1) 大きさ: \(3.0 \, \text{N} \cdot \text{s}\), 向き: 西向き

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の状況で、ラケットがボールに加えた「平均の力」を求める問題です。力積、平均の力、作用時間の間には単純な関係式があり、それを利用します。
この設問における重要なポイント

  • 力積、平均の力、時間の関係: \(I = F_{\text{平均}} \Delta t\)。
  • (1)で求めた力積の値を使用する。

具体的な解説と立式
力積 \(I\) は、ラケットがボールに加えた平均の力 \(F_{\text{平均}}\) と、接触していた時間 \(\Delta t\) の積で表されます。
$$ I = F_{\text{平均}} \Delta t $$
この式を \(F_{\text{平均}}\) について解くと、次のようになります。
$$ F_{\text{平均}} = \frac{I}{\Delta t} $$
(1)より力積 \(I = 3.0 \, \text{N} \cdot \text{s}\)、問題文より時間 \(\Delta t = 0.20 \, \text{s}\) です。

使用した物理公式

  • 力積と平均の力の関係: \(I = F_{\text{平均}} \Delta t\)
計算過程

立式した式に、値を代入して平均の力 \(F_{\text{平均}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{平均}} &= \frac{3.0}{0.20} \\[2.0ex]
&= \frac{30}{2} \\[2.0ex]
&= 15 \, [\text{N}]
\end{aligned}
$$
力の向きは力積の向きと同じなので、西向きです。問題では大きさのみ問われています。

計算方法の平易な説明

力積は「平均の力 × 時間」で計算できます。今回は力積と時間がわかっているので、逆に割り算をすれば平均の力が求まります。\(3.0\) という力積を \(0.20\) 秒という時間で生み出すには、\(15 \, \text{N}\) の力が必要だとわかります。

結論と吟味

ラケットがボールに加えた平均の力の大きさは \(15 \, \text{N}\) です。短時間に速度を大きく変化させるには、相応の力が必要であることを示しており、妥当な値です。

解答 (2) \(15 \, \text{N}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
打ち返されたボールが、元の進行方向と垂直な北向きに進んだ場合の力積を求める問題です。運動が平面上で起こるため、運動量をベクトルとして扱い、その変化(引き算)を正しく計算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 運動量と力積はベクトル量である: \(\vec{I} = \Delta \vec{p} = \vec{p’} – \vec{p}\)。
  • ベクトルの引き算 \(\vec{p’} – \vec{p}\) は、\(\vec{p’} + (-\vec{p})\) というベクトルの足し算として考えることができる。
  • 打つ前と後の運動量ベクトルが直交する場合、三平方の定理を用いて力積の大きさを計算できる。

具体的な解説と立式
運動量の変化 \(\Delta \vec{p} = \vec{p’} – \vec{p}\) をベクトル図で考えます。

  • 打つ前の運動量 \(\vec{p}\): 東向き。大きさは \(p = mv = (60 \times 10^{-3}) \times 20 = 1.2 \, [\text{N} \cdot \text{s}]\)。
  • 打った後の運動量 \(\vec{p’}\): 北向き。大きさは \(p’ = mv’ = (60 \times 10^{-3}) \times 20 = 1.2 \, [\text{N} \cdot \text{s}]\)。

力積 \(\vec{I}\) は \(\vec{p’} – \vec{p}\) です。これは、\(\vec{p} + \vec{I} = \vec{p’}\) と変形できます。

ベクトル図を描くと、\(\vec{p}\) (東向き)と \(\vec{p’}\) (北向き)は直交しています。

\(\vec{I} = \vec{p’} + (-\vec{p})\) と考えて作図すると、\((-\vec{p})\) は西向きのベクトルです。

したがって、力積 \(\vec{I}\) は、北向きのベクトル \(\vec{p’}\) と西向きのベクトル \((-\vec{p})\) のベクトル和となります。

この2つのベクトルは直交しており、大きさも等しい(\(p = p’ = 1.2\))。

したがって、これらのベクトルを2辺とする直角三角形を考え、その斜辺の長さとして力積の大きさ \(|\vec{I}|\) を三平方の定理で求めます。
$$ |\vec{I}|^2 = |-\vec{p}|^2 + |\vec{p’}|^2 $$
$$ |\vec{I}| = \sqrt{p^2 + (p’)^2} $$

使用した物理公式

  • 力積と運動量の変化の関係(ベクトル): \(\vec{I} = \vec{p’} – \vec{p}\)
  • 三平方の定理
計算過程

まず、運動量の大きさ \(p\) と \(p’\) を計算します。
$$ p = p’ = (60 \times 10^{-3}) \times 20 = 1.2 \, [\text{N} \cdot \text{s}] $$
三平方の定理を用いて力積の大きさ \(|\vec{I}|\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
|\vec{I}| &= \sqrt{1.2^2 + 1.2^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2 \times 1.2^2} \\[2.0ex]
&= 1.2 \sqrt{2}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
|\vec{I}| &\approx 1.2 \times 1.41 \\[2.0ex]
&= 1.692
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、四捨五入して \(1.7 \, \text{N} \cdot \text{s}\) となります。

力積の向きは、西向きのベクトル \((-\vec{p})\) と北向きのベクトル \(\vec{p’}\) の合成方向です。これらのベクトルの大きさが等しいので、合成ベクトルの向きはちょうど中間、すなわち北西向きとなります。

計算方法の平易な説明

ボールの運動が平面上になったので、運動量を矢印(ベクトル)で考えます。力積は「後の運動量の矢印 – 前の運動量の矢印」です。この引き算は、「後の矢印 + (前の矢印の逆向き)」という足し算と同じです。前の運動量は東向きだったので、その逆は西向きです。後の運動量は北向きです。つまり、力積は「北向きの矢印」と「西向きの矢印」を合わせたものになります。この2つの矢印は直角なので、三平方の定理を使って力積の矢印の長さを計算できます。

結論と吟味

ラケットがボールに加えた力積の大きさは \(1.7 \, \text{N} \cdot \text{s}\)、向きは北西向きです。東から来たボールを北へ打ち返すには、東向きの運動を打ち消すための「西向きの力積」と、新たに北向きの運動を与えるための「北向きの力積」が必要になります。その合成結果が北西向きになるというのは、直感的にも妥当です。

解答 (3) 大きさ: \(1.7 \, \text{N} \cdot \text{s}\), 向き: 北西向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力積と運動量の関係(ベクトルとしての適用):
    • 核心: この問題は、一直線上と平面上の両方の状況で「力積は運動量の変化に等しい (\(\vec{I} = \Delta \vec{p}\))」という、物理学の基本法則を正しく適用できるかを問うています。特に重要なのは、運動量と力積が向きを持つベクトル量であることを理解し、状況に応じて適切に処理する能力です。
    • 理解のポイント:
      • (1) 一直線上の運動: ベクトルの向きを正負の符号で表現し、代数的な引き算(\(p_{\text{後}} – p_{\text{前}}\))として計算します。
      • (3) 平面上の運動: ベクトルを図に描き、ベクトルの引き算(\(\vec{p’} – \vec{p}\))を幾何学的に解釈します。特に、\(\vec{p’} + (-\vec{p})\) のように「逆ベクトルの和」として捉えると考えやすくなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 任意の角度への打ち返し: (3)で、北向きではなく「北東向き」など、任意の角度に打ち返された場合。この場合は、運動量ベクトルをx成分(東西方向)とy成分(南北方向)に分解し、「x方向の力積 = x方向の運動量の変化」「y方向の力積 = y方向の運動量の変化」として、各成分について計算する必要があります。
    • 壁との斜め衝突: ボールが壁に斜めに衝突する問題。壁に平行な方向と垂直な方向に運動を分解して考えるのが定石です。本問の(3)は、ラケットの面が北東-南西方向を向いている斜め衝突と等価な問題と見なすこともできます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 運動の次元を把握する: まず、運動が一直線上で完結しているか((1))、平面上に広がっているか((3))を判断します。
    2. 座標軸(または正の向き)を設定する: (1)では「西向きを正」などと決め、(3)では東西方向をx軸、南北方向をy軸と設定します。
    3. 「前」と「後」の運動量ベクトルを整理する: 衝突前後の速度と質量から、運動量ベクトルの大きさと向きを明確にします。単位換算(g→kg)をこの段階で済ませておくと良いでしょう。
    4. 計算方法を選択する:
      • 一直線上の場合: 符号に注意して代数計算。
      • 平面上で直交する場合((3)): ベクトル図を描き、三平方の定理を利用するのが速い。
      • 平面上で一般角の場合: 各ベクトルを成分分解し、成分ごとに運動量の変化を計算する。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位換算のミス:
    • 誤解: 質量 \(60 \, \text{g}\) を \(0.6 \, \text{kg}\) や \(0.006 \, \text{kg}\) と間違える、あるいは換算を忘れて \(m=60\) で計算してしまう。
    • 対策: 「\(1 \, \text{kg} = 1000 \, \text{g}\) なので、\(60 \, \text{g} = 60/1000 \, \text{kg} = 0.06 \, \text{kg}\)」という換算を、計算の最初に必ず行う癖をつける。
  • ベクトルの引き算のミス((3)):
    • 誤解: 力積 \(\vec{I} = \vec{p’} – \vec{p}\) を、ベクトルの足し算 \(\vec{p’} + \vec{p}\) と勘違いし、北東向きの力積を計算してしまう。
    • 対策: \(\vec{p} + \vec{I} = \vec{p’}\) の関係式を思い出し、「最初の運動量 \(\vec{p}\) に、力積 \(\vec{I}\) を加えたら、後の運動量 \(\vec{p’}\) になった」という因果関係で理解する。図を描いて、「\(\vec{p}\) の矢印の先から \(\vec{p’}\) の矢印の先へ向かうベクトルが力積 \(\vec{I}\) だ」と視覚的に確認する。
  • 平方根の計算ミス:
    • 誤解: (3)で \(1.2\sqrt{2}\) の計算をする際に、\(\sqrt{2}\) の近似値(1.4, 1.41, 1.414など)の選択や、掛け算でミスをする。
    • 対策: 問題で特に指定がなければ、\(\sqrt{2}=1.41\) を使うのが一般的。\(1.2 \times 1.41\) のような小数同士の筆算は、桁を間違えないよう慎重に行う。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力積と運動量の関係 (\(\vec{I} = \Delta \vec{p}\)):
    • 選定理由: (1)と(3)は、どちらも「力積」を求める問題です。ラケットがボールに与える力は瞬間的に大きく変化するため、力の大きさ \(F\) を直接扱うのは困難です。しかし、運動の前後での速度変化は分かっているため、その結果から原因(力積)を逆算できるこの関係式が最適です。
    • 適用根拠: この法則は運動の第二法則と等価であり、衝突や撃力のように力の詳細が不明な場合に、運動状態の変化から力の累積効果(力積)を求めるための最も基本的なツールです。
  • 力積と平均の力の関係 (\(I = F_{\text{平均}}\Delta t\)):
    • 選定理由: (2)では、接触時間 \(\Delta t\) が与えられ、「平均の力」を求めることが要求されています。力積 \(I\) は(1)で求まっているため、力積の定義式そのものであるこの公式を使えば、直接的に \(F_{\text{平均}}\) を算出できます。
    • 適用根拠: 平均の力とは、時間的に変動する力を、同じ力積を与えるような一定の力で仮想的に置き換えたものです。この定義に基づいてこの公式が成り立っています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位換算を最初に行う: \(60 \, \text{g} = 0.06 \, \text{kg}\) の換算を、問題用紙の余白に大きく書いておく。計算の各段階でこの値を使うように意識する。
  • 符号ルールの徹底((1)): 一直線上の運動では、最初に「西向きを正」などと軸の向きを宣言し、それに従って速度に符号(+, -)を付ける。特に、\(mv’ – mv\) の計算で、\(v\) が負の値を持つ場合の符号の扱いに注意する。
  • 作図の習慣化((3)): 平面運動では、必ず運動量ベクトルの図を描く。特に、\(\vec{I} = \vec{p’} + (-\vec{p})\) の関係を図示することで、求める力積ベクトルの向き(北西)や、計算に使うべき図形(直角二等辺三角形)が明確になり、ミスを防げる。
  • 有効数字の意識: 問題文で与えられている数値(20m/s, 60g, 30m/s, 0.20s)は、いずれも有効数字2桁です。したがって、最終的な答えも \(\sqrt{2}\) の近似値計算の後、\(1.7\) のように2桁に丸めることを忘れない。

111 合体

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「完全非弾性衝突(合体)と運動量保存の法則」です。2つの物体が衝突後に一体となる、衝突問題の基本的なパターンです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 運動量保存の法則: 2物体が衝突する際、外力が働かなければ、衝突の前後で系全体の運動量の和は保存されます。
  2. 完全非弾性衝突(合体): 衝突後に2物体が一体となって同じ速度で運動する衝突のことです。これは、反発係数が \(e=0\) の場合に相当します。
  3. 運動量の定義: 運動量は質量と速度の積で定義されます (\(p=mv\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 運動の方向(右向き)を正と定めます。
  2. 衝突前のAとBの運動量の和を計算します。
  3. 衝突後はAとBが一体となるため、質量を合計し、合体後の速度を未知数 \(v’\) としておきます。
  4. 「衝突前の運動量の和 = 衝突後の運動量の和」という運動量保存の法則を立式します。
  5. 立てた方程式を解いて、合体後の速さを求めます。

思考の道筋とポイント
2つの台車が衝突して「一体となって動いた」という記述がこの問題の最大のポイントです。これは「完全非弾性衝突」または「合体」と呼ばれる状況で、衝突後の2物体の速度が等しくなることを意味します。

求める未知数は、合体後の速さ \(v’\) の1つだけです。したがって、物理法則の式が1本あれば解くことができます。衝突現象で基本となる「運動量保存の法則」を適用すれば、未知数 \(v’\) を含む方程式が1本だけ得られるため、問題を解くことができます。反発係数の式は、衝突後の速度が等しい(\(v’_A = v’_B = v’\))ことが分かっているので、使う必要がありません。
この設問における重要なポイント

  • 運動量保存の法則: \(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’\)
  • 「一体となって動いた」 \(\rightarrow\) 完全非弾性衝突であり、衝突後の速度はAもBも同じ \(v’\) になる。
  • 運動の方向が同じなので、速度はすべて正の値として扱える。

具体的な解説と立式
右向きを正の向きとします。

衝突前の各物体の情報は以下の通りです。

  • 台車A: 質量 \(m_A = 2.0 \, \text{kg}\), 速度 \(v_A = +5.0 \, \text{m/s}\)
  • 台車B: 質量 \(m_B = 4.0 \, \text{kg}\), 速度 \(v_B = +2.0 \, \text{m/s}\)

衝突後、AとBは一体となって、質量は \(m_A + m_B\)、速度は \(v’\) となります。

運動量保存の法則「衝突前の運動量の和 = 衝突後の運動量の和」を適用します。
$$ m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’ $$

使用した物理公式

  • 運動量保存の法則(合体): \(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’\)
計算過程

立式した運動量保存の法則の式に、それぞれの数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
2.0 \times 5.0 + 4.0 \times 2.0 &= (2.0 + 4.0) v’ \\[2.0ex]
10 + 8.0 &= 6.0 v’ \\[2.0ex]
18 &= 6.0 v’
\end{aligned}
$$
この式を \(v’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v’ &= \frac{18}{6.0} \\[2.0ex]
&= 3.0 \, [\text{m/s}]
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

2つの台車がぶつかって合体する問題では、「運動量の合計は、ぶつかる前と後で変わらない」というルールを使います。運動量は「質量×速さ」で計算します。
・ぶつかる前の運動量の合計は、「Aの運動量(\(2.0 \times 5.0\)) + Bの運動量(\(4.0 \times 2.0\))」で \(18\) です。
・ぶつかった後は、2台がくっついて1つの大きな台車(質量は \(2.0+4.0=6.0 \, \text{kg}\))になったと考えます。
「前の合計(\(18\)) = 後の合計(\(6.0 \times v’\))」という式を立てて、後の速さ \(v’\) を計算すると、\(18 \div 6.0 = 3.0 \, \text{m/s}\) と求まります。

結論と吟味

合体後の速さは \(3.0 \, \text{m/s}\) です。この速さは、衝突前の2つの物体の速さ \(5.0 \, \text{m/s}\) と \(2.0 \, \text{m/s}\) の間の値になっています。速い物体が遅い物体に追突して一体となったので、速さがその中間的な値になるのは物理的に妥当です。また、計算結果が正の値なので、向きは最初に定めた右向きで正しいことが確認できます。

解答 \(3.0 \, \text{m/s}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 運動量保存の法則の適用(合体という特殊ケース):
    • 核心: この問題は、2物体の衝突の中でも「合体(完全非弾性衝突)」という最も単純なケースを扱っています。核心は、この特殊な状況を正しく理解し、運動量保存の法則を適用することです。
    • 理解のポイント:
      • 「一体となって動いた」というキーワード: この言葉を見たら、衝突後の2物体の速度が等しくなる(\(v’_A = v’_B = v’\))と即座に判断します。これにより、未知数が1つ(合体後の速度 \(v’\))だけになり、問題が単純化されます。
      • 運動量保存則の適用: 衝突後の物体を「質量が \(m_A+m_B\) の一つの物体」と見なして、運動量保存の式 (\(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’\)) を立てます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 逆向きの合体: 2つの物体が互いに逆向きに進んできて衝突・合体する場合。この場合は、一方の速度を正、もう一方を負として運動量保存則に代入する必要があります。合体後の進行方向は、運動量の大きい方の物体の初期の向きになります。
    • 静止物体への合体: 静止している物体に、動いている物体が衝突して合体する場合。静止物体の初速度を0として計算します。
    • 分裂: 合体は「分裂」の逆の過程と見なせます。静止した物体が2つに分裂する場合、分裂前の運動量が0であるため、分裂後の2つの物体の運動量の和も0になります (\(m_A v’_A + m_B v’_B = 0\))。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 衝突の種類を特定: 問題文から「一体となって」「合体した」などのキーワードを探し、完全非弾性衝突であることを確認します。
    2. 運動の方向を確認: 全ての物体が同じ方向に動いているか、逆向きの物体がいるかを確認します。これにより、速度の符号が決まります。(この問題では全て同方向なので、全て正として扱えます)
    3. 運動量保存則を立式: 合体のケースにおける運動量保存の式 \(m_A v_A + m_B v_B = (m_A + m_B) v’\) を書き出します。
    4. 数値を代入して解く: 各質量と速度を式に代入し、未知数である合体後の速度 \(v’\) を求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 衝突後の質量を間違える:
    • 誤解: 運動量保存の式の右辺で、質量を \(m_A\) や \(m_B\) のままにしてしまう。(例: \(… = m_A v’ + m_B v’\) と書くべきところを \(… = m_A v’\) のように片方しか書かない)
    • 対策: 「合体」とは、2つの物体が1つの物体になることだと強く意識する。衝突後の質量は必ず質量の和 (\(m_A + m_B\)) になると機械的に覚える。
  • 運動エネルギー保存則を誤って適用する:
    • 誤解: 衝突問題なので、運動エネルギー保存則も成り立つと勘違いしてしまう。
    • 対策: 運動エネルギーが保存されるのは、反発係数 \(e=1\) の「完全弾性衝突」の場合のみです。合体(完全非弾性衝突, \(e=0\))では、物体の変形や熱、音の発生により、運動エネルギーは必ず減少します。衝突問題でエネルギー保存を安易に使わないように注意する。運動量保存則は、ほぼ全ての衝突・分裂で使えます。
  • 計算ミス:
    • 誤解: \(2.0 \times 5.0 + 4.0 \times 2.0\) のような単純な四則演算でのミス。
    • 対策: 計算過程を丁寧に書き出す。\(10 + 8 = 18\) のように、各項の計算結果を一度書き出してから足し算を行うと、ミスが減ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 運動量保存の法則:
    • 選定理由: 衝突現象を記述する最も基本的な法則だからです。衝突の際に台車同士が及ぼしあう力は、作用・反作用の法則により、2台を一つの系として見れば内部で相殺されます。床との摩擦などの外力が無視できる場合、系の全運動量は保存されます。
    • 適用根拠: 問題は2台の台車の衝突であり、外力は無視できる状況です。また、求める未知数が合体後の速度1つであるため、この法則だけで方程式が解けます。
  • 反発係数の式(今回は使わない理由):
    • 不要な理由: 「一体となって動いた」という条件から、衝突後の速度が \(v’_A = v’_B\) であることが既に分かっています。反発係数の定義式 \(e = -\frac{v’_A – v’_B}{v_A – v_B}\) にこれを代入すると、分子が0になるため \(e=0\) となります。このように、合体は反発係数が0の特殊なケースであり、反発係数の式から新たな情報を得ることはできないため、使用する必要がありません。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の構造を理解する: 運動量保存の式は「(Aの前の運動量) + (Bの前の運動量) = (合体後の全体の運動量)」という構造になっています。この構造を意識しながら、各項に「質量×速度」を当てはめていくと、立式ミスが減ります。
  • 暗算を避ける: \(2.0 \times 5.0 = 10\), \(4.0 \times 2.0 = 8.0\), \(2.0+4.0=6.0\) のように、計算の各ステップをきちんと書き出す。焦って暗算すると、簡単な計算でも間違えることがあります。
  • 物理的な妥当性の確認: 最終的に得られた答え \(v’ = 3.0 \, \text{m/s}\) が、衝突前の速度 \(v_A = 5.0 \, \text{m/s}\) と \(v_B = 2.0 \, \text{m/s}\) の間の値になっていることを確認する。もし、これより大きいか小さい値が出た場合は、計算ミスを疑うべきです。これは良い検算方法になります。
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112 分裂

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