Step1
① コンデンサー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの基本公式の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの基本公式: 電気量\(Q\)、電圧\(V\)、電気容量\(C\)の間に成り立つ関係式 \(Q=CV\)。
- 電気容量: 電荷をどれだけ蓄えやすいかを示す量。単位はファラド(\(\text{F}\))。
- 単位の接頭語: \(\mu\)(マイクロ)は\(10^{-6}\)を意味する接頭語。
- 物理量の関係性: 電気容量が一定なら、蓄えられる電気量は電圧に比例する。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、電気容量 \(C\) と電気量 \(Q\) の値を特定する。
- 電気容量の単位 \(\mu\text{F}\) を基本単位である \(\text{F}\) に変換する。
- コンデンサーの基本公式 \(Q=CV\) を、求める電圧 \(V\) についての式 \(V = \displaystyle\frac{Q}{C}\) に変形する。
- 式に数値を代入し、電圧 \(V\) を計算する。
思考の道筋とポイント
この問題は、コンデンサーの3つの基本量である電気量 \(Q\)、電圧 \(V\)、電気容量 \(C\) の関係を問う、最も基本的な計算問題です。公式 \(Q=CV\) を正しく記憶し、それぞれの文字がどの物理量を指すのかを正確に理解していることが重要です。また、計算ミスを防ぐために、単位の接頭語 \(\mu\) (マイクロ) を \(10^{-6}\) へ正確に変換するステップを忘れないようにしましょう。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本公式: \(Q = CV\)。この式は、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) は、極板間の電圧 \(V\) に比例し、その比例定数が電気容量 \(C\) であることを示します。
- 各物理量の単位:
- 電気量 \(Q\): クーロン [C]
- 電気容量 \(C\): ファラド [F]
- 電圧 \(V\): ボルト [V]
- 単位の接頭語: 物理計算では、基本単位(SI単位)に揃えて計算するのが原則です。特に \(\mu\) (マイクロ) は \(10^{-6}\) を意味します。\(1 \mu\text{F} = 1 \times 10^{-6} \text{F}\)
- 有効数字: 問題文で与えられている数値が \(0.50\) (2桁) と \(2.0\) (2桁) であるため、計算結果も有効数字2桁で答えるのが適切です。
具体的な解説と立式
この問題で求めるのは、コンデンサーの極板間の電圧 \(V\) です。
問題文から、以下の物理量が与えられています。
- 電気容量: \(C = 0.50 \mu\text{F}\)
- 蓄えられた電気量: \(Q = 2.0 \times 10^{-4} \text{C}\)
コンデンサーの電気量 \(Q\)、電気容量 \(C\)、電圧 \(V\) の間には、次の基本公式が成り立ちます。
$$ Q = CV $$
この式を、求めたい電圧 \(V\) について解くと、以下のようになります。
$$ V = \frac{Q}{C} $$
この式に、与えられた値を代入することで電圧を計算できます。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本公式: \(Q = CV\)
まず、電気容量 \(C\) の単位を、計算しやすいように基本単位のファラド [F] に変換します。
$$ C = 0.50 \mu\text{F} = 0.50 \times 10^{-6} \text{F} $$
次に、「具体的な解説と立式」で導出した式 \(V = \displaystyle\frac{Q}{C}\) に、\(Q\) と \(C\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{2.0 \times 10^{-4}}{0.50 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]&= \frac{2.0}{0.50} \times \frac{10^{-4}}{10^{-6}} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-4 – (-6)} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{2}
\end{aligned}
$$
したがって、極板間の電圧は \(4.0 \times 10^2 \text{ V}\) となります。
この問題は、コンデンサーの基本ルール「\(Q = C \times V\)」を使って解きます。これは「(たまった電気の量)=(電気のためやすさ)×(電圧)」という意味です。
今回は電圧 \(V\) を知りたいので、式を「\(V = Q \div C\)」の形に変形します。
問題文から、\(Q = 2.0 \times 10^{-4}\)、\(C = 0.50 \mu\text{F}\) です。
計算の前に、単位を揃えるのがお約束です。\(\mu\text{F}\) の \(\mu\) (マイクロ) は「100万分の1」、つまり \(10^{-6}\) のことなので、\(C = 0.50 \times 10^{-6} \text{F}\) と直します。
あとは、この数値を \(V = Q \div C\) に当てはめて計算するだけです。
\(V = (2.0 \times 10^{-4}) \div (0.50 \times 10^{-6})\)
これを計算すると、\(4.0 \times 10^2\)、つまり \(400 \text{ V}\) となります。
② 平行板コンデンサーの電気容量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平行板コンデンサーの電気容量と内部の電界」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 平行板コンデンサーの電気容量を決定する要因(極板面積、極板間隔、誘電率)の理解。
- 平行板コンデンサーの電気容量の公式 \(C_0 = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) の適用。
- コンデンサー内部に生じる一様な電界と電圧の関係式 \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\) の適用。
- 単位の接頭語「ピコ(\(\text{p}\))」の正しい理解と単位換算。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1)では、問題文で与えられた極板の面積 \(S\)、間隔 \(d\)、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を電気容量の公式に代入して計算する。その後、得られた値をファラド(\(\text{F}\))からピコファラド(\(\text{pF}\))へ変換する。
- 設問(2)では、与えられた電圧 \(V\) と極板の間隔 \(d\) を、一様な電界の強さを求める公式に代入して計算する。
(1) 電気容量の計算
思考の道筋とポイント
設問(1)は、平行板コンデンサーの形状や材質から、その性能(電気容量)を計算する問題です。電気容量が「極板の面積 \(S\) が大きいほど、また極板間の間隔 \(d\) が小さいほど大きくなる」という物理的なイメージと、公式 \(C_0 = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) を結びつけて理解することが大切です。また、計算結果の単位を指示通りに変換する作業も重要です。「ピコ(\(\text{p}\))」が \(10^{-12}\) を意味することを正確に覚えておきましょう。
この設問における重要なポイント
- 平行板コンデンサーの電気容量の公式: \(C_0 = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)。電気容量 \(C_0\) は、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) と極板の面積 \(S\) に比例し、極板間の間隔 \(d\) に反比例します。
- 各物理量の単位: 計算はすべて基本単位(SI単位)で行うのが原則です。面積は \(\text{m}^2\)、間隔は \(\text{m}\)、誘電率は \(\text{F/m}\) で与えられているため、そのまま公式に代入できます。
- 単位の接頭語: ピコ(\(\text{p}\))は \(10^{-12}\) を表します。したがって、\(1 \text{ pF} = 10^{-12} \text{ F}\) です。
具体的な解説と立式
設問(1)では、コンデンサーの電気容量 \(C_0\) を求めます。
問題文から、以下の物理量が与えられています。
- 極板の面積: \(S = 2.0 \times 10^{-2} \text{ m}^2\)
- 極板の間隔: \(d = 2.0 \times 10^{-3} \text{ m}\)
- 真空の誘電率: \(\varepsilon_0 = 8.9 \times 10^{-12} \text{ F/m}\)
極板間が真空の平行板コンデンサーの電気容量 \(C_0\) は、次の公式で与えられます。
$$ C_0 = \varepsilon_0 \frac{S}{d} $$
この式に、与えられた値を代入することで電気容量を計算できます。
使用した物理公式
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C_0 = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
「具体的な解説と立式」で立てた公式に、各数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
C_0 &= (8.9 \times 10^{-12}) \times \frac{2.0 \times 10^{-2}}{2.0 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]&= 8.9 \times 10^{-12} \times 10^{-2 – (-3)} \\[2.0ex]&= 8.9 \times 10^{-12} \times 10^{1} \\[2.0ex]&= 8.9 \times 10^{-11} \, (\text{F})
\end{aligned}
$$
次に、この結果をピコファラド(\(\text{pF}\))に変換します。\(1 \text{ pF} = 10^{-12} \text{ F}\) の関係を利用して、指数の部分を \(-12\) に揃えます。
$$
\begin{aligned}
C_0 &= 8.9 \times 10^{-11} \text{ F} \\[2.0ex]&= 89 \times 10^{-12} \text{ F} \\[2.0ex]&= 89 \text{ pF}
\end{aligned}
$$
よって、電気容量は \(8.9 \times 10^{-11} \text{ F}\)、または \(89 \text{ pF}\) となります。
コンデンサーの電気のためやすさ(電気容量)は、公式「\(C_0 = \varepsilon_0 \times S \div d\)」で計算できます。ここで \(\varepsilon_0\) は真空の性質を表す定数、\(S\) は板の広さ、\(d\) は板と板のすき間の距離です。
問題文の値をそのまま公式に当てはめると、\(C_0 = (8.9 \times 10^{-12}) \times (2.0 \times 10^{-2}) \div (2.0 \times 10^{-3})\) となります。
これを計算すると、\(8.9 \times 10^{-11} \text{ F}\) が得られます。
問題では「何 \(\text{pF}\) か」とも聞かれています。「\(\text{p}\)(ピコ)」は \(10^{-12}\) のことなので、\(8.9 \times 10^{-11}\) を \(89 \times 10^{-12}\) という形に書き直すことで、\(89 \text{ pF}\) と換算できます。
(2) 電界の強さの計算
思考の道筋とポイント
設問(2)は、コンデンサーに電圧をかけたときに内部に生じる電界の強さを求める問題です。平行板コンデンサーの極板間では、電界は一様(場所によらず強さと向きが同じ)であると考えることができます。この「一様な電界」と「電位差(電圧)」の関係式 \(V=Ed\) を正しく適用することが鍵となります。求めるのは電界の強さ \(E\) なので、式を \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\) の形に変形して計算します。
この設問における重要なポイント
- 一様な電界と電位差の関係: \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)。電界の強さ \(E\) は、極板間の電圧 \(V\) に比例し、極板間の距離 \(d\) に反比例します。
- 無関係な情報: この設問を解く上で、設問(1)で求めた電気容量 \(C_0\) や、極板の面積 \(S\)、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) の値は必要ありません。問題解決に必要な情報だけを的確に選び出すことが重要です。
具体的な解説と立式
設問(2)では、極板間にできる電界の強さ \(E\) を求めます。
問題文から、以下の物理量が与えられています。
- 極板間の電圧: \(V = 50 \text{ V}\)
- 極板の間隔: \(d = 2.0 \times 10^{-3} \text{ m}\)
平行板コンデンサーの極板間にできる電界は一様とみなせるため、電界の強さ \(E\)、電圧 \(V\)、間隔 \(d\) の間には次の関係が成り立ちます。
$$ E = \frac{V}{d} $$
この式に、与えられた値を代入することで電界の強さを計算できます。
使用した物理公式
- 一様な電界と電位差の関係: \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
「具体的な解説と立式」で立てた公式に、各数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{50}{2.0 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]&= \frac{50}{2.0} \times \frac{1}{10^{-3}} \\[2.0ex]&= 25 \times 10^{3} \\[2.0ex]&= 2.5 \times 10^{4} \, (\text{V/m})
\end{aligned}
$$
したがって、電界の強さは \(2.5 \times 10^4 \text{ V/m}\) となります。
コンデンサーの板と板の間にできる電気的な場の強さ(電界の強さ)は、簡単な割り算で求めることができます。公式は「\(E = V \div d\)」です。ここで \(V\) はコンデンサーにかけた電圧、\(d\) は板と板のすき間の距離です。
問題文から \(V=50 \text{ V}\)、\(d = 2.0 \times 10^{-3} \text{ m}\) なので、これを公式に当てはめて \(E = 50 \div (2.0 \times 10^{-3})\) を計算します。
結果は \(2.5 \times 10^4 \text{ V/m}\) となります。この計算では、(1)で求めた電気容量や板の面積は使わない、という点に注意しましょう。
③ 誘電体
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「誘電体による電気容量の変化と比誘電率」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 誘電体の役割: コンデンサーの極板間に誘電体を挿入すると、電気容量が増加するという現象の理解。
- 比誘電率の定義: 誘電体を挿入した後の電気容量が、真空のときの電気容量の何倍になるかを示す値。
- 誘電体を満たしたコンデンサーの電気容量の公式: \(C = \varepsilon_r C_0\)。
- 比の計算: 求める比誘電率は、変化後の電気容量と元の電気容量の比で計算できる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、真空のときの電気容量 \(C_0\) と、誘電体で満たしたときの電気容量 \(C\) の値を特定する。
- 比誘電率 \(\varepsilon_r\) を求めるための関係式 \(C = \varepsilon_r C_0\) を立てる。
- この式を \(\varepsilon_r\) について解き、\(\varepsilon_r = \displaystyle\frac{C}{C_0}\) の形にする。
- 数値を代入して比誘電率を計算する。
思考の道筋とポイント
この問題の核心は、「比誘電率」という言葉の物理的な意味を正しく理解しているかどうかにあります。比誘電率 \(\varepsilon_r\) とは、真空状態を基準(1倍)としたときに、誘電体を満たすことで電気容量が何倍になるかを示す「倍率」そのものです。したがって、誘電体を満たした後の電気容量 \(C\) と、真空のときの電気容量 \(C_0\) の比を計算するだけで答えが求まります。公式 \(C = \varepsilon_r C_0\) は、この物理的な意味をそのまま数式にしたものと捉えることができます。
この設問における重要なポイント
- 誘電体: コンデンサーの極板間に挿入すると、内部に分極が生じ、極板間の電界を弱める働きをする絶縁体。これにより、同じ電圧でもより多くの電荷を蓄えられるようになり、電気容量が増大します。
- 比誘電率 \(\varepsilon_r\): 誘電体の性質を表す量で、単位はありません。真空の比誘電率は \(\varepsilon_r = 1\) です。
- 電気容量の変化の公式: 誘電体(比誘電率 \(\varepsilon_r\))で極板間を完全に満たしたコンデンサーの電気容量 \(C\) は、真空のときの電気容量 \(C_0\) を用いて \(C = \varepsilon_r C_0\) と表されます。
- 計算のポイント: \(C\) と \(C_0\) の比を求めるので、両者の単位が同じ(この問題では \(\mu\text{F}\))であれば、基本単位のファラド(\(\text{F}\))に変換しなくても、そのまま計算できます。
具体的な解説と立式
この問題で求めるのは、誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) です。
問題文から、以下の物理量が与えられています。
- 真空のときの電気容量: \(C_0 = 2.0 \mu\text{F}\)
- 誘電体で満たしたときの電気容量: \(C = 6.0 \mu\text{F}\)
これらの物理量の間には、次の関係式が成り立ちます。
$$ C = \varepsilon_r C_0 $$
この式を、求めたい比誘電率 \(\varepsilon_r\) について解くと、以下のようになります。
$$ \varepsilon_r = \frac{C}{C_0} $$
この式に、与えられた値を代入することで比誘電率を計算できます。
使用した物理公式
- 誘電体を満たしたコンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_r C_0\)
「具体的な解説と立式」で導出した式 \(\varepsilon_r = \displaystyle\frac{C}{C_0}\) に、\(C_0\) と \(C\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_r &= \frac{6.0 \mu\text{F}}{2.0 \mu\text{F}} \\[2.0ex]&= \frac{6.0 \times 10^{-6}}{2.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]&= \frac{6.0}{2.0} \\[2.0ex]&= 3.0
\end{aligned}
$$
したがって、この誘電体の比誘電率は \(3.0\) となります。
「比誘電率」とは、簡単に言うと「誘電体を入れたことで、電気のためやすさ(電気容量)が何倍になりましたか?」という倍率のことです。
この問題では、もともと \(2.0 \mu\text{F}\) だった電気容量が、誘電体を入れたことで \(6.0 \mu\text{F}\) になりました。
何倍になったかを知るには、変化後の値を元の値で割ればよいので、\(6.0 \div 2.0 = 3.0\) となります。
つまり、この誘電体は電気容量を3倍にする性質を持っているということで、比誘電率は \(3.0\) です。
④ コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの静電エネルギーと操作による変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの静電エネルギーの3つの公式(\(U = \displaystyle\frac{1}{2}QV\), \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\), \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\))と、状況に応じた使い分け。
- 平行板コンデンサーの電気容量 \(C\) が、極板間隔 \(d\) に反比例することの理解(\(C \propto \displaystyle\frac{1}{d}\))。
- 「電池を切り離す」操作(蓄えられた電気量 \(Q\) が一定に保たれる)と、「電池を接続したまま」の操作(極板間の電圧 \(V\) が一定に保たれる)の違いの明確な区別。
- コンデンサーの基本公式 \(Q=CV\) の適用。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1)では、与えられた電気容量 \(C\) と電圧 \(V\) を用いて、基本公式 \(Q=CV\) と \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) から初期の電気量とエネルギーを計算します。
- 設問(2)では、「電池を切り離した」ため電気量 \(Q\) が一定であることに着目します。極板間隔が2倍になると電気容量 \(C\) は半分になるため、\(Q\) と \(C\) のみで表されるエネルギー公式 \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を用いて変化後のエネルギーを計算します。
- 設問(3)では、「電池を接続したまま」のため電圧 \(V\) が一定であることに着目します。極板間隔が2倍になると電気容量 \(C\) は半分になるため、\(C\) と \(V\) のみで表されるエネルギー公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を用いて変化後のエネルギーを計算します。
(1) 初期状態の電気量とエネルギー
思考の道筋とポイント
設問(1)は、コンデンサーの基本性能を問う問題です。与えられた電気容量 \(C\) と電圧 \(V\) から、蓄えられる電気量 \(Q\) と静電エネルギー \(U\) を公式に当てはめて計算します。静電エネルギーの公式は3種類ありますが、問題で与えられている物理量(\(C\) と \(V\))を直接使える \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を選択するのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本公式: \(Q=CV\)。
- 静電エネルギーの公式: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)。
- 単位の変換: 電気容量が \(\mu\text{F}\) で与えられているため、計算前に基本単位の \(\text{F}\) に変換します。\(1 \mu\text{F} = 10^{-6} \text{F}\)。
具体的な解説と立式
問題文で与えられた初期状態の物理量は以下の通りです。
- 電気容量: \(C = 4.0 \mu\text{F} = 4.0 \times 10^{-6} \text{F}\)
- 電圧: \(V = 5.0 \text{V}\)
まず、蓄えられる電気量 \(Q\) を求めます。
$$ Q = CV $$
次に、蓄えられる静電エネルギー \(U\) を求めます。
$$ U = \frac{1}{2}CV^2 $$
これらの式に数値を代入して計算します。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本公式: \(Q=CV\)
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
電気量 \(Q\) の計算:
$$
\begin{aligned}
Q &= (4.0 \times 10^{-6}) \times 5.0 \\[2.0ex]&= 20 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-5} \, (\text{C})
\end{aligned}
$$
静電エネルギー \(U\) の計算:
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \times (4.0 \times 10^{-6}) \times (5.0)^2 \\[2.0ex]&= (2.0 \times 10^{-6}) \times 25 \\[2.0ex]&= 50 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-5} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$
(1)は公式に数字を当てはめるだけの問題です。
電気のたまる量 \(Q\) は「\(Q = C \times V\)」で計算します。\(Q = (4.0 \times 10^{-6}) \times 5.0 = 2.0 \times 10^{-5} \text{ C}\) です。
たまったエネルギー \(U\) は「\(U = \frac{1}{2} \times C \times V^2\)」で計算します。\(U = \frac{1}{2} \times (4.0 \times 10^{-6}) \times 5.0^2 = 5.0 \times 10^{-5} \text{ J}\) となります。
(2) 電池を切り離した後のエネルギー
思考の道筋とポイント
設問(2)の最大のポイントは、「電池から切りはなしてから」という操作の意味を理解することです。電池を切り離すと、電荷の供給源がなくなり、コンデンサーの極板は電気的に孤立します。これにより、極板に蓄えられた電気量 \(Q\) は変化しようがなく、一定に保たれます。
一方で、極板の間隔を2倍にすると、電気容量 \(C\) は \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\) の関係から半分になります。
この「\(Q\)が一定で\(C\)が変化する」状況でエネルギーの変化を考えるには、\(Q\)と\(C\)だけで表される公式 \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を使うのが最も見通しが良くなります。
この設問における重要なポイント
- 操作の条件: 電池から切り離す \(\rightarrow\) 電気量 \(Q\) が一定。
- 形状の変化: 極板間隔 \(d\) が2倍 \(\rightarrow\) 電気容量 \(C\) が \(\displaystyle\frac{1}{2}\)倍。
- エネルギー公式の選択: \(Q\)が一定なので、\(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を用いると、エネルギー \(U\) は電気容量 \(C\) に反比例することがわかります。
具体的な解説と立式
まず、操作による電気容量の変化を考えます。極板間隔を \(d\) から \(d’ = 2d\) にすると、新しい電気容量 \(C’\) は、
$$ C’ = \varepsilon_0 \frac{S}{d’} = \varepsilon_0 \frac{S}{2d} = \frac{1}{2} \left( \varepsilon_0 \frac{S}{d} \right) = \frac{1}{2}C $$
となり、元の半分になります。
電池から切り離されているため、電気量 \(Q\) は設問(1)で求めた値のまま不変です。
$$ Q = 2.0 \times 10^{-5} \text{ C} $$
変化後のエネルギー \(U’\) を求めるには、\(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の公式を使います。
$$ U’ = \frac{Q^2}{2C’} $$
使用した物理公式
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\)
元の電気容量 \(C = 4.0 \times 10^{-6} \text{ F}\) なので、変化後の電気容量 \(C’\) は、
$$ C’ = \frac{1}{2}C = \frac{1}{2} \times (4.0 \times 10^{-6}) = 2.0 \times 10^{-6} \text{ F} $$
これと不変の電気量 \(Q = 2.0 \times 10^{-5} \text{ C}\) をエネルギーの公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
U’ &= \frac{(2.0 \times 10^{-5})^2}{2 \times (2.0 \times 10^{-6})} \\[2.0ex]&= \frac{4.0 \times 10^{-10}}{4.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-4} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$
エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) において、\(Q\) が一定なので、エネルギー \(U\) は電気容量 \(C\) に反比例します (\(U \propto \displaystyle\frac{1}{C}\))。
電気容量が \(C’ = \displaystyle\frac{1}{2}C\) と半分になったので、エネルギーは \(U’ = 2U\) と2倍になります。
設問(1)の結果 \(U = 5.0 \times 10^{-5} \text{ J}\) を使うと、
$$
\begin{aligned}
U’ &= 2 \times (5.0 \times 10^{-5}) \\[2.0ex]&= 10 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-4} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$
電池を外すと、コンデンサーにたまった電気の粒(電荷)は逃げ場がないので、量は変わりません。
しかし、極板のすき間を2倍に広げると、電気をためる能力(電気容量)は半分になってしまいます。
エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を見ると、\(Q\)が同じなら、分母の\(C\)が半分になると、エネルギー\(U\)は2倍になることがわかります。
したがって、(1)で求めたエネルギー \(5.0 \times 10^{-5} \text{ J}\) を2倍して、\(1.0 \times 10^{-4} \text{ J}\) となります。
(3) 電池を接続したままのエネルギー
思考の道筋とポイント
設問(3)の最大のポイントは、「電池を切りはなさずに(接続したまま)」という操作の意味を理解することです。電池に接続されている限り、コンデンサーの両極板の電位差は電池の電圧と等しくなるように保たれます。つまり、電圧 \(V\) が一定です。
この状態で極板の間隔を2倍にすると、設問(2)と同様に電気容量 \(C\) は半分になります。
この「\(V\)が一定で\(C\)が変化する」状況でエネルギーの変化を考えるには、\(V\)と\(C\)だけで表される公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を使うのが最も見通しが良くなります。
この設問における重要なポイント
- 操作の条件: 電池を接続したまま \(\rightarrow\) 電圧 \(V\) が一定。
- 形状の変化: 極板間隔 \(d\) が2倍 \(\rightarrow\) 電気容量 \(C\) が \(\displaystyle\frac{1}{2}\)倍。
- エネルギー公式の選択: \(V\)が一定なので、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を用いると、エネルギー \(U\) は電気容量 \(C\) に比例することがわかります。
具体的な解説と立式
設問(2)と同様に、極板間隔を2倍にすると、新しい電気容量 \(C”\) は元の半分になります。
$$ C” = \frac{1}{2}C $$
電池を接続したままなので、電圧 \(V\) は電池の電圧 \(5.0 \text{ V}\) のまま不変です。
変化後のエネルギー \(U”\) を求めるには、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) の公式を使います。
$$ U” = \frac{1}{2}C”V^2 $$
使用した物理公式
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
元の電気容量 \(C = 4.0 \times 10^{-6} \text{ F}\) なので、変化後の電気容量 \(C”\) は、
$$ C” = \frac{1}{2}C = \frac{1}{2} \times (4.0 \times 10^{-6}) = 2.0 \times 10^{-6} \text{ F} $$
これと不変の電圧 \(V = 5.0 \text{ V}\) をエネルギーの公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
U” &= \frac{1}{2} \times (2.0 \times 10^{-6}) \times (5.0)^2 \\[2.0ex]&= (1.0 \times 10^{-6}) \times 25 \\[2.0ex]&= 2.5 \times 10^{-5} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$
エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) において、\(V\) が一定なので、エネルギー \(U\) は電気容量 \(C\) に比例します (\(U \propto C\))。
電気容量が \(C” = \displaystyle\frac{1}{2}C\) と半分になったので、エネルギーも \(U” = \displaystyle\frac{1}{2}U\) と半分になります。
設問(1)の結果 \(U = 5.0 \times 10^{-5} \text{ J}\) を使うと、
$$
\begin{aligned}
U” &= \frac{1}{2} \times (5.0 \times 10^{-5}) \\[2.0ex]&= 2.5 \times 10^{-5} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$
今度は電池をつないだままなので、電圧はずっと \(5.0 \text{ V}\) のままです。
この状態で極板のすき間を2倍に広げると、やはり電気をためる能力(電気容量)は半分になります。
エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を見ると、\(V\)が同じなら、\(C\)が半分になると、エネルギー\(U\)も半分になることがわかります。
したがって、(1)で求めたエネルギー \(5.0 \times 10^{-5} \text{ J}\) を半分にして、\(2.5 \times 10^{-5} \text{ J}\) となります。
⑤ コンデンサーの接続
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの直列接続と並列接続における合成容量の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの並列接続の合成容量の公式。
- コンデンサーの直列接続の合成容量の公式。
- 抵抗の合成抵抗の公式との違いの認識。
- 回路図から接続方法(直列か並列か)を正しく読み取る能力。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各設問の回路図を見て、コンデンサーが直列接続か並列接続かを判断する。
- 並列接続の場合は、各コンデンサーの電気容量を単純に足し合わせる。
- 直列接続の場合は、各コンデンサーの電気容量の逆数の和を計算し、その結果のさらに逆数をとる。
- それぞれの公式に与えられた値を代入して合成容量を計算する。
(1) 2個の並列接続
思考の道筋とポイント
設問(1)は、2つのコンデンサーの並列接続です。回路図から接続方法を正しく読み取り、並列接続用の合成容量の公式を適用します。コンデンサーの並列接続の計算は、抵抗の直列接続の計算と同じく、単純な和で求められることを覚えておくと混乱しにくいです。
この設問における重要なポイント
- 並列接続の定義: 複数のコンデンサーの対応する極板(+側と+側、-側と-側)がそれぞれ共通の導線で結ばれている接続方法。
- 並列接続の合成容量の公式: \(C = C_1 + C_2 + \dots\)。
- 物理的イメージ: 並列接続は、極板の面積を合算するのと同じ効果があり、電気容量は増加します。
具体的な解説と立式
図(1)は、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の並列接続です。
並列接続の合成容量を \(C\) とすると、その値は各コンデンサーの電気容量の和で与えられます。
$$ C = C_1 + C_2 $$
問題文より、\(C_1 = 6.0 \mu\text{F}\)、\(C_2 = 6.0 \mu\text{F}\) です。
使用した物理公式
- コンデンサーの並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2 + \dots\)
上記の公式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
C &= 6.0 + 6.0 \\[2.0ex]&= 12.0 \, (\mu\text{F})
\end{aligned}
$$
コンデンサーの並列つなぎは、コンデンサーの極板の面積を合体させて大きくするようなイメージです。面積が広くなると、電気をためる能力(電気容量)も大きくなるので、単純にそれぞれの容量を足し算するだけでOKです。
\(6.0 \mu\text{F} + 6.0 \mu\text{F} = 12.0 \mu\text{F}\) となります。
(2) 2個の直列接続
思考の道筋とポイント
設問(2)は、2つのコンデンサーの直列接続です。直列接続の公式は、各容量の「逆数」の和を計算し、最後にその結果をもう一度「逆数」にするという、少し複雑な手順を踏みます。計算の最後の逆数変換を忘れないように注意することが最も重要です。この計算方法は、抵抗の並列接続の計算と同じ形式です。
この設問における重要なポイント
- 直列接続の定義: 複数のコンデンサーを一本の導線で数珠つなぎにする接続方法。
- 直列接続の合成容量の公式: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\)。
- 物理的イメージ: 直列接続は、極板の間隔を広げるのに似た効果があり、合成容量は個々のコンデンサーの容量よりも小さくなります。
- 特例: 同じ容量 \(C_1\) のコンデンサーを2個直列接続した場合、合成容量は \(\displaystyle\frac{C_1}{2}\) となります。
具体的な解説と立式
図(2)は、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の直列接続です。
直列接続の合成容量を \(C’\) とすると、その逆数は各コンデンサーの電気容量の逆数の和で与えられます。
$$ \frac{1}{C’} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} $$
問題文より、\(C_1 = 6.0 \mu\text{F}\)、\(C_2 = 6.0 \mu\text{F}\) です。
使用した物理公式
- コンデンサーの直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\)
上記の公式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C’} &= \frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{2}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{3.0}
\end{aligned}
$$
これは \(\displaystyle\frac{1}{C’}\) の値なので、両辺の逆数をとって \(C’\) を求めます。
$$ C’ = 3.0 \, (\mu\text{F}) $$
直列つなぎの計算は、少し手順が必要です。
1. まず、それぞれの容量を逆数にします。\(6.0 \rightarrow \displaystyle\frac{1}{6.0}\)。
2. それらを足し合わせます。\(\displaystyle\frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} = \frac{2}{6.0} = \frac{1}{3.0}\)。
3. 最後に、出てきた答えをもう一度逆数にします。 \(\displaystyle\frac{1}{3.0} \rightarrow 3.0\)。
この最後のステップを忘れないようにしましょう。答えは \(3.0 \mu\text{F}\) です。
(3) 3個の並列接続
思考の道筋とポイント
設問(3)は、3つのコンデンサーの接続です。回路図の形はひし形ですが、電気的な接続関係をよく見ることが重要です。3つのコンデンサーの左側の端子がすべて1点に、右側の端子もすべて別の1点に集まっています。これは並列接続の定義そのものです。接続方法さえ見抜ければ、計算は設問(1)と同様の単純な足し算になります。
この設問における重要なポイント
- 回路の等価性: 回路図の見た目に惑わされず、各素子がどのようにつながっているかという接続関係を正しく把握することが大切です。図(3)は3つのコンデンサーの並列接続と等価です。
- 並列接続の公式の拡張: コンデンサーが3つ以上になっても、公式は \(C = C_1 + C_2 + C_3 + \dots\) と単純に拡張されます。
具体的な解説と立式
図(3)は、コンデンサー \(C_1, C_2, C_3\) の並列接続です。
並列接続の合成容量を \(C”\) とすると、その値は各コンデンサーの電気容量の和で与えられます。
$$ C” = C_1 + C_2 + C_3 $$
問題文より、\(C_1 = C_2 = C_3 = 6.0 \mu\text{F}\) です。
使用した物理公式
- コンデンサーの並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2 + C_3 + \dots\)
上記の公式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
C” &= 6.0 + 6.0 + 6.0 \\[2.0ex]&= 18.0 \, (\mu\text{F})
\end{aligned}
$$
図(3)は一見複雑に見えますが、3つのコンデンサーが横に並んでつながっているのと同じ「並列つなぎ」です。並列つなぎの合成容量は単純な足し算で求められるので、
\(6.0 + 6.0 + 6.0 = 18.0 \mu\text{F}\) となります。
(4) 3個の直列接続
思考の道筋とポイント
設問(4)は、3つのコンデンサーの直列接続です。設問(2)の考え方を3つのコンデンサーの場合に拡張して適用します。計算手順は同じで、①逆数をとる、②和を求める、③もう一度逆数をとる、という流れです。
この設問における重要なポイント
- 直列接続の公式の拡張: コンデンサーが3つ以上になっても、公式は \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3} + \dots\) と拡張されます。
- 特例: 同じ容量 \(C_1\) のコンデンサーを \(n\) 個直列接続した場合、合成容量は \(\displaystyle\frac{C_1}{n}\) となります。この問題では \(n=3\) なので、\(\displaystyle\frac{6.0}{3} = 2.0 \mu\text{F}\) と暗算することも可能です。
具体的な解説と立式
図(4)は、コンデンサー \(C_1, C_2, C_3\) の直列接続です。
直列接続の合成容量を \(C”’\) とすると、その逆数は各コンデンサーの電気容量の逆数の和で与えられます。
$$ \frac{1}{C”’} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3} $$
問題文より、\(C_1 = C_2 = C_3 = 6.0 \mu\text{F}\) です。
使用した物理公式
- コンデンサーの直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3} + \dots\)
上記の公式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C”’} &= \frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{3}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2.0}
\end{aligned}
$$
これは \(\displaystyle\frac{1}{C”’}\) の値なので、両辺の逆数をとって \(C”’\) を求めます。
$$ C”’ = 2.0 \, (\mu\text{F}) $$
図(4)は、3つのコンデンサーをまっすぐにつないだ「直列つなぎ」です。
計算方法は(2)と同じです。まず逆数を足し算します。
\(\displaystyle\frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} + \frac{1}{6.0} = \frac{3}{6.0} = \frac{1}{2.0}\)。
最後にこの結果をもう一度逆数にするのを忘れずに。答えは \(2.0 \mu\text{F}\) です。
ちなみに、同じ容量のものを3つ直列につなぐと、全体の容量は元の \(\displaystyle\frac{1}{3}\) になります。\(6.0 \div 3 = 2.0\) と簡単に計算することもできます。
例題
例題70 コンデンサーの並列・直列
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの合成容量と電圧・電荷の分配」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの並列接続の合成容量
- コンデンサーの直列接続の合成容量
- 直列接続における電気量と電圧の関係(電気量一定、電圧は容量に反比例)
- 並列接続における電気量と電圧の関係(電圧一定、電気量は容量に比例)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、並列接続された\(C_1\)と\(C_2\)を一つの合成コンデンサー\(C_{12}\)とみなします。
- 次に、\(C_{12}\)と\(C_3\)の直列接続として回路全体を捉え、それぞれの電圧を求めます。
- 最後に、並列接続の性質から\(V_1\)と\(V_2\)の関係を明らかにし、全ての電圧を決定します。
- 別解として、回路全体の合成容量から総電荷を求める方法や、電気量保存則と電圧則(キルヒホッフの法則)を用いる方法も検討します。
思考の道筋とポイント
複雑な回路は、まず合成容量を計算してより単純な回路に置き換えて考えるのが基本です。この問題では、\(C_1\)と\(C_2\)が並列接続、その合成コンデンサー\(C_{12}\)と\(C_3\)が直列接続という構造を見抜くことが第一歩です。次に、直列接続では「蓄えられる電気量が等しい」という重要な性質を利用します。この性質から、各コンデンサーにかかる電圧は電気容量に反比例することが導かれ、全体の電圧を比例配分することで各電圧を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 並列接続の合成容量:\(C_{\text{並列}} = C_1 + C_2 + \dots\)
- 直列接続の電圧分配:電圧は電気容量に反比例する。\(V_1 : V_2 = \displaystyle\frac{1}{C_1} : \frac{1}{C_2} = C_2 : C_1\)
- 並列接続の電圧:各コンデンサーにかかる電圧は等しい。
具体的な解説と立式
まず、コンデンサー\(C_1\)と\(C_2\)は並列に接続されているため、その合成容量を\(C_{12}\)とすると、
$$ C_{12} = C_1 + C_2 $$
この合成コンデンサー\(C_{12}\)とコンデンサー\(C_3\)は直列に接続されています。直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しくなります。この電気量を\(Q\)とすると、\(C_{12}\)にかかる電圧\(V_{12}\)と\(C_3\)にかかる電圧\(V_3\)は、基本式\(Q=CV\)より、それぞれ
$$ V_{12} = \frac{Q}{C_{12}} \quad \cdots ① $$
$$ V_3 = \frac{Q}{C_3} \quad \cdots ② $$
と表せます。したがって、電圧は電気容量に反比例する関係、すなわち \(V_{12} : V_3 = \displaystyle\frac{1}{C_{12}} : \frac{1}{C_3} = C_3 : C_{12}\) が成り立ちます。
全体の電圧\(V\)は\(V_{12}\)と\(V_3\)の和であるため、
$$ V_{12} + V_3 = V \quad \cdots ③ $$
この電圧\(V\)を、\(C_3\)と\(C_{12}\)の大きさの逆比で比例配分します。
$$ V_{12} = \frac{C_3}{C_{12} + C_3} V $$
$$ V_3 = \frac{C_{12}}{C_{12} + C_3} V $$
また、\(C_1\)と\(C_2\)は並列接続なので、それらにかかる電圧\(V_1\), \(V_2\)は等しく、合成コンデンサー\(C_{12}\)にかかる電圧\(V_{12}\)に等しくなります。
$$ V_1 = V_2 = V_{12} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
- 直列接続の電圧則: \(V = V_1 + V_2\)
まず、合成容量\(C_{12}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
C_{12} &= C_1 + C_2 \\[2.0ex]&= 2.0 + 4.0 \\[2.0ex]&= 6.0 \text{ [μF]}
\end{aligned}
$$
次に、この\(C_{12}\)と\(C_3\)の直列接続に加わる電圧を、比例配分により求めます。\(C_{12}\)にかかる電圧を\(V_{12}\)とします。
$$
\begin{aligned}
V_{12} &= \frac{C_3}{C_{12} + C_3} V \\[2.0ex]&= \frac{9.0}{6.0 + 9.0} \times 50 \\[2.0ex]&= \frac{9.0}{15.0} \times 50 \\[2.0ex]&= 0.60 \times 50 \\[2.0ex]&= 30 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
同様に、\(C_3\)にかかる電圧\(V_3\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= \frac{C_{12}}{C_{12} + C_3} V \\[2.0ex]&= \frac{6.0}{6.0 + 9.0} \times 50 \\[2.0ex]&= \frac{6.0}{15.0} \times 50 \\[2.0ex]&= 0.40 \times 50 \\[2.0ex]&= 20 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
\(C_1\)と\(C_2\)は並列接続であり、その両端の電圧は\(V_{12}\)に等しいので、
$$ V_1 = V_2 = V_{12} = 30 \text{ [V]} $$
まず、隣り合って並んでいる\(C_1\)と\(C_2\)を合体させて、一つの大きなコンデンサー\(C_{12}\)と考えます。並列なので容量は単純な足し算で \(2.0 + 4.0 = 6.0 \text{ μF}\) です。これで回路は、\(C_{12}\)と\(C_3\)がまっすぐにつながった直列回路になります。直列回路では、電圧は「容量が小さい方」に「大きく」かかります(反比例の関係)。全体の電圧\(50 \text{ V}\)を、\(C_{12}(6.0 \text{ μF})\)と\(C_3(9.0 \text{ μF})\)の容量の逆比、つまり \(9.0 : 6.0 = 3 : 2\) の比で分け合います。\(C_{12}\)にかかる電圧は \(50 \text{ V} \times \displaystyle\frac{3}{3+2} = 30 \text{ V}\)、\(C_3\)にかかる電圧は \(50 \text{ V} \times \displaystyle\frac{2}{3+2} = 20 \text{ V}\)となります。\(C_1\)と\(C_2\)はもともと並列で、合体した\(C_{12}\)に\(30 \text{ V}\)かかっているので、\(C_1\)と\(C_2\)にもそれぞれ\(30 \text{ V}\)がかかります。
以上より、各コンデンサーにかかる電圧は \(V_1 = 30 \text{ V}\), \(V_2 = 30 \text{ V}\), \(V_3 = 20 \text{ V}\) となります。
検算として、直列部分の電圧の和は \(V_{12} + V_3 = 30 + 20 = 50 \text{ V}\) となり、電源電圧\(V\)と一致します。また、並列部分の電圧が等しい(\(V_1=V_2\))という条件も満たしており、結果は物理的に妥当であると言えます。
思考の道筋とポイント
この別解では、まず回路全体の合成容量を求め、そこから回路全体で蓄えられる総電荷を計算します。総電荷がわかれば、それを各部分に分配して電圧を求めることができます。特に、直列接続された部分では蓄えられる電気量が等しく、それが回路全体の電荷に等しいという性質を利用するのが鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 直列接続の合成容量:\(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\)
- 回路全体の電荷:\(Q_{\text{全体}} = C_{\text{全体}} V_{\text{全体}}\)
- 直列部分の電荷は、回路全体の電荷に等しい。
具体的な解説と立式
まず、並列部分\(C_1\), \(C_2\)の合成容量\(C_{12}\)を求めます。
$$ C_{12} = C_1 + C_2 $$
次に、回路全体の合成容量\(C_{123}\)を求めます。\(C_{12}\)と\(C_3\)は直列接続なので、
$$ \frac{1}{C_{123}} = \frac{1}{C_{12}} + \frac{1}{C_3} $$
回路全体で蓄えられる総電荷\(Q\)は、電源電圧を\(V\)として、
$$ Q = C_{123} V $$
この電荷\(Q\)は、直列接続されている合成コンデンサー\(C_{12}\)とコンデンサー\(C_3\)にそれぞれ蓄えられる電荷量に等しくなります。
$$ Q_{12} = Q, \quad Q_3 = Q $$
各部分の電圧は、基本式\(V = Q/C\)の関係から求めます。
$$ V_{12} = \frac{Q_{12}}{C_{12}} $$
$$ V_3 = \frac{Q_3}{C_3} $$
\(C_1\)と\(C_2\)は並列接続なので、かかる電圧は等しく\(V_{12}\)となります。
$$ V_1 = V_2 = V_{12} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2\)
- 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
並列部分の合成容量\(C_{12}\)は、
$$ C_{12} = 2.0 + 4.0 = 6.0 \text{ [μF]} $$
次に、回路全体の合成容量\(C_{123}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C_{123}} &= \frac{1}{C_{12}} + \frac{1}{C_3} \\[2.0ex]&= \frac{1}{6.0} + \frac{1}{9.0} \\[2.0ex]&= \frac{3 + 2}{18} = \frac{5}{18}
\end{aligned}
$$
よって、
$$ C_{123} = \frac{18}{5} = 3.6 \text{ [μF]} $$
回路全体で蓄えられる総電荷\(Q\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= C_{123} V \\[2.0ex]&= 3.6 \times 50 \\[2.0ex]&= 180 \text{ [μC]}
\end{aligned}
$$
この電荷\(Q=180 \text{ μC}\)が、\(C_{12}\)と\(C_3\)にそれぞれ蓄えられます。各電圧を計算すると、
$$ V_{12} = \frac{Q}{C_{12}} = \frac{180}{6.0} = 30 \text{ [V]} $$
$$ V_3 = \frac{Q}{C_3} = \frac{180}{9.0} = 20 \text{ [V]} $$
したがって、\(V_1 = V_2 = V_{12}\)より、
$$ V_1 = 30 \text{ [V]}, \quad V_2 = 30 \text{ [V]}, \quad V_3 = 20 \text{ [V]} $$
まず、回路全体を一つの巨大なコンデンサーと見なして、その容量を計算します。\(C_1\)と\(C_2\)の並列部分が\(6.0 \text{ μF}\)、それと\(C_3(9.0 \text{ μF})\)が直列なので、全体の容量は\(3.6 \text{ μF}\)になります。次に、この回路全体にどれだけの電荷が蓄えられるかを計算すると、\(Q=CV\)より\(180 \text{ μC}\)です。この\(180 \text{ μC}\)という電荷は、直列につながっている\(C_{12}\)の塊と\(C_3\)に、それぞれ同じだけ蓄えられます。あとは\(V=Q/C\)を使って、それぞれの電圧を計算します。\(C_{12}\)の塊には \(180 \text{ μC} / 6.0 \text{ μF} = 30 \text{ V}\)、\(C_3\)には \(180 \text{ μC} / 9.0 \text{ μF} = 20 \text{ V}\) がかかります。\(C_1\)と\(C_2\)は並列なので、どちらにも塊と同じ\(30 \text{ V}\)がかかります。
\(V_1 = 30 \text{ V}\), \(V_2 = 30 \text{ V}\), \(V_3 = 20 \text{ V}\)となり、メインの解法と同じ結果が得られました。計算過程は異なりますが、物理的に正しいアプローチです。
思考の道筋とポイント
この解法は、キルヒホッフの法則に相当する考え方を用いる、より原理的なアプローチです。回路中の「孤立部分」に着目し、電気量保存則の式を立てます。そして、回路のループに着目し、電圧降下の和が電源電圧に等しいという電圧則の式を立てます。これら2つの独立した法則から導かれる式を連立させて解くことで、未知数である各電圧を決定します。この方法は、より複雑な回路にも応用できる汎用性の高い考え方です。
この設問における重要なポイント
- 電気量保存則:外部と導線で繋がっていない閉じた部分(孤立部分)の電荷の総和は、常に一定に保たれる。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):回路の任意の閉ループにおいて、電圧上昇(電源)の和と電圧降下(コンデンサーなど)の和は等しい。
具体的な解説と立式
\(C_1\)と\(C_2\)の合成容量を\(C_{12}\)とし、その電圧を\(V_{12}\)とします。\(C_3\)にかかる電圧を\(V_3\)とします。
図において、\(C_{12}\)の下側の極板と\(C_3\)の上側の極板をつなぐ導線部分は、スイッチを入れる前は電荷が0であり、回路の他の部分から孤立しています。したがって、スイッチを入れた後も、この部分の電気量の総和は0に保たれます(電気量保存則)。
\(C_{12}\)の下側の極板には電荷\(-Q_{12} = -C_{12}V_{12}\)が、\(C_3\)の上側の極板には電荷\(+Q_3 = +C_3V_3\)が蓄えられます。よって、電気量保存則より、
$$ -C_{12}V_{12} + C_3V_3 = 0 \quad \cdots ① $$
また、回路全体について電圧の関係を考えると(キルヒホッフの第2法則)、電源電圧\(V\)は\(C_{12}\)での電圧降下と\(C_3\)での電圧降下の和に等しくなります。
$$ V_{12} + V_3 = V \quad \cdots ② $$
①、②を\(V_{12}\)と\(V_3\)についての連立方程式として解きます。
最後に、並列接続の性質から \(V_1 = V_2 = V_{12}\) であることを用いて、\(V_1, V_2\)を求めます。
使用した物理公式
- 電気量保存則
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(V = V_1 + V_2\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
まず、合成容量\(C_{12}\)を計算します。
$$ C_{12} = C_1 + C_2 = 2.0 + 4.0 = 6.0 \text{ [μF]} $$
次に、連立方程式を解きます。式①に\(C_{12}=6.0 \text{ μF}\), \(C_3=9.0 \text{ μF}\)を代入すると、
$$ -6.0 V_{12} + 9.0 V_3 = 0 $$
これを変形して、
$$ V_{12} = \frac{9.0}{6.0} V_3 = 1.5 V_3 $$
この関係を式② \(V_{12} + V_3 = 50\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
1.5 V_3 + V_3 &= 50 \\[2.0ex]2.5 V_3 &= 50 \\[2.0ex]V_3 &= \frac{50}{2.5} \\[2.0ex]&= 20 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
\(V_{12}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{12} &= 50 – V_3 \\[2.0ex]&= 50 – 20 \\[2.0ex]&= 30 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
並列接続部分の電圧は等しいので、
$$ V_1 = V_2 = V_{12} = 30 \text{ [V]} $$
\(C_1\)と\(C_2\)を合体させた\(C_{12}\)と、\(C_3\)の間に挟まれた導線部分に注目します。この部分は回路の他の部分から孤立しているので、スイッチを入れる前と後で、電気量の合計は変わりません(最初は0なので、後も0のまま)。\(C_{12}\)の下側にはマイナスの電荷、\(C_3\)の上側にはプラスの電荷がたまりますが、この合計が0なので、二つのコンデンサーにたまる電気の量(の絶対値)は等しいことがわかります。また、\(C_{12}\)にかかる電圧と\(C_3\)にかかる電圧を足すと、電源の電圧\(50 \text{ V}\)になります。この2つの関係(「電気量が等しい」と「電圧の和が50V」)から連立方程式を解くと、それぞれの電圧が求まります。
\(V_1 = 30 \text{ V}\), \(V_2 = 30 \text{ V}\), \(V_3 = 20 \text{ V}\)となり、他の解法と同じ結果が得られました。この方法は、より複雑な回路(例えばブリッジ回路など)にも応用できる汎用性の高い考え方です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- コンデンサーの接続と合成容量
- 核心: 回路が与えられたとき、どの部分が「並列接続」で、どの部分が「直列接続」なのかを正確に見抜き、それぞれに対応する公式を用いて合成容量を計算できることが、問題を解く上での出発点となります。
- 理解のポイント:
- 並列接続: 電位が等しい2点間に複数のコンデンサーが接続されている状態。電圧は共通で、電荷は各容量に比例して分配されます。合成容量は単純な和 \(C_{\text{並列}} = C_1 + C_2 + \dots\) となります。
- 直列接続: 複数のコンデンサーが一本の導線で数珠つなぎに接続されている状態。蓄えられる電気量は共通で、電圧は各容量に反比例して分配されます。合成容量は逆数の和 \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\) で計算します。
- 電荷と電圧の分配法則
- 核心: 合成容量を計算した後、回路全体または各部分にどのように電荷と電圧が分配されるかを理解していることが重要です。
- 理解のポイント:
- 直列では電気量\(Q\)が共通: この性質から、電圧\(V\)は\(Q=CV\)より\(V=Q/C\)となり、電気容量\(C\)に反比例します。(\(V_1:V_2 = C_2:C_1\))
- 並列では電圧\(V\)が共通: この性質から、電気量\(Q\)は\(Q=CV\)より、電気容量\(C\)に比例します。(\(Q_1:Q_2 = C_1:C_2\))
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- スイッチの切り替え問題: スイッチを切り替えることで接続状態が変化する問題。切り替え前の各コンデンサーの電荷を計算し、切り替え後の回路で「電気量保存則」を適用するのが定石です。
- コンデンサーへの誘電体の挿入: コンデンサー間に誘電体を挿入すると電気容量が変化します(\(C’ = \epsilon_r C\))。挿入前後の電荷や電圧の変化を問う問題では、挿入による容量変化をまず計算し、その上で回路の法則を適用します。
- ブリッジ回路: コンデンサーがひし形に配置された回路。対角線上のコンデンサーの容量の積が等しい(\(C_1 C_4 = C_2 C_3\))場合、中央の検流計(またはコンデンサー)には電流が流れず(電圧が0)、無視して計算できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 回路の構造を単純化: まず、どこが並列でどこが直列かを見極め、合成できる部分から合成して回路図を単純なものに描き直します。
- 「孤立部分」を探す: 回路内に、電源や他の部分から導線で直接つながっていない「浮島」のような部分がないか探します。この部分の電荷の総和は常に保存されるため、「電気量保存則」を立式する強力な手がかりになります。
- 未知数は何かを確認: 問題が求めているのは電圧か、電荷か、エネルギーかを確認します。それに応じて、\(V\)を求めるのか、\(Q=CV\)で\(Q\)を求めるのか、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)でエネルギーを求めるのか、戦略を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 直列と並列の合成容量公式の混同:
- 誤解: 直列接続なのに容量を足し算してしまう(\(C = C_1 + C_2\))、あるいは並列接続なのに逆数の和を計算してしまう。
- 対策: 「直列は抵抗の並列、並列は抵抗の直列」のように、抵抗の合成公式と逆の関係にあると覚える。また、並列にすると電荷を蓄える面積が広がるから容量は増える(足し算)、直列にすると極板間隔が広がるようなものだから容量は減る(逆数の和)と、物理的なイメージと結びつけて覚えることが有効です。
- 電圧分配の比例計算ミス:
- 誤解: 直列接続の電圧分配を、容量に比例する(\(V_1:V_2 = C_1:C_2\))と勘違いする。
- 対策: 必ず基本式\(Q=CV\)に立ち返る。「直列→\(Q\)が一定→\(V=Q/C\)だから\(V\)は\(C\)に反比例」という論理の流れを毎回確認する癖をつける。
- 単位の換算ミス:
- 誤解: 電気容量がマイクロファラド(μF)で与えられているのに、クーロン(C)やボルト(V)と計算する際に\(10^{-6}\)をかけ忘れる。
- 対策: 問題で与えられた単位(μF, V)のまま計算を進め、最終的な答えの単位(μC, Vなど)を正しくつけることを意識する。例えば、\(Q[\text{μC}] = C[\text{μF}] \times V[\text{V}]\) のように、単位を含めて計算する習慣をつけるとミスが減ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 合成容量の公式:
- 選定理由: 複雑な回路を、より単純な等価回路に置き換えるために使用します。これにより、回路全体の挙動(総電荷など)や、部分的な電圧・電荷の分配を考えやすくなります。
- 適用根拠:
- 並列: 電圧\(V\)が共通なので、総電荷\(Q = Q_1 + Q_2 = C_1V + C_2V = (C_1+C_2)V\)。よって全体の容量は\(C = C_1+C_2\)。
- 直列: 電気量\(Q\)が共通なので、総電圧\(V = V_1 + V_2 = \displaystyle\frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = Q(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2})\)。全体の容量を\(C\)とすると\(V = Q/C\)なので、\(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)。
- 電気量保存則と電圧則(キルヒホッフの法則):
- 選定理由: 合成容量の考え方が使いにくい、より複雑な回路(スイッチの切り替えやブリッジ回路など)で、最も基本的かつ普遍的に成り立つ法則として使用します。
- 適用根拠:
- 電気量保存則: 電荷は勝手に生まれたり消えたりしないという物理学の大原則に基づきます。孤立した導体系の総電荷は不変です。
- 電圧則: エネルギー保存則の電位表現です。回路を一周して同じ場所に戻ってきたら、電位は元の値に戻る(電位差の合計がゼロ)という原理に基づきます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 分数の計算を丁寧に: 合成容量の計算では、\(\displaystyle\frac{1}{C} = \frac{1}{6.0} + \frac{1}{9.0}\) のような分数の足し算が頻出します。通分を焦らず、最小公倍数(この場合は18)を正確に見つけて計算する。最後に逆数にするのを忘れないように注意する。
- 比例配分の確認: \(V_1 = V \times \displaystyle\frac{C_2}{C_1+C_2}\) のような比例配分の式を使った後、必ず検算する。\(V_2 = V \times \displaystyle\frac{C_1}{C_1+C_2}\) も計算し、\(V_1+V_2\)が本当に\(V\)になるかを確認する。
- 図の描き直し: 複雑な回路は、自分で分かりやすいように描き直すことが非常に有効です。並列部分は横に並べ、直列部分は縦に並べるなど、自分なりのルールで整理すると、接続関係の誤認を防げます。
- 単位を意識した立式: \(Q=CV\)の計算で、\(Q = (3.6 \times 10^{-6}) \times 50\) のように、早い段階で\(10^{-6}\)を代入すると計算が煩雑になりがちです。\(C_{123}=3.6 \text{ [μF]}\) のように単位を保持したまま計算を進め、\(Q = 3.6 \times 50 = 180 \text{ [μC]}\) と、最後に単位を合わせる方がミスが少ないです。
例題71 初めに電荷を蓄えているコンデンサーを含む接続
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「初期電荷を持つコンデンサーを含む回路における電荷の再配分」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電気量保存則:回路中の外部から孤立した部分では、電荷の総和は操作の前後で一定に保たれます。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):回路の任意の閉ループを一周するとき、電位差の総和はゼロになります(電源の起電力の和は、回路素子での電圧降下の和に等しい)。
- コンデンサーの基本式:コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)、電気容量\(C\)、電圧\(V\)の間には \(Q=CV\) の関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- スイッチを閉じた後の、各コンデンサーにかかる電圧を未知数として設定します。
- 回路内の「孤立部分」を見つけ出し、スイッチを入れる前と後で電気量の総和が等しいとして「電気量保存則」の式を立てます。
- 回路の閉ループについて「電圧則」の式を立てます。
- これら2つの式を連立方程式として解き、各コンデンサーの電圧を求めます。
- 求めた電圧から、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を用いて蓄えられる電気量を計算します。
思考の道筋とポイント
この問題の最大の特徴は、スイッチを入れる前にコンデンサー\(C_1\)が電荷を蓄えている点です。スイッチを閉じると、電池の電圧によって電荷が移動し、再配分が起こります。このとき、単純な合成容量の計算は使えません。
このような問題では、物理学の基本法則に立ち返るのが最も確実な解法です。具体的には、回路の「孤立部分」における「電気量保存則」と、回路全体での「電圧則(キルヒホッフの第2法則)」の2つの法則を立式し、連立させて解きます。
最終的に各コンデンサーにかかる電圧を\(V_1, V_2\)と未知数で置き、計算を進めるのが定石です。その際、電圧の向き(極性)を仮定しますが、計算結果の符号によって仮定が正しかったか、あるいは逆だったかが判明します。
この設問における重要なポイント
- 電気量保存則:(孤立部分の電荷の和) = (スイッチON前の和) = (スイッチON後の和)
- 電圧則:(電源の電圧) = (各コンデンサーの電圧降下の和)
- \(Q=CV\)の関係を使い、電荷を電圧で表現して式を立てる。
具体的な解説と立式
スイッチを閉じた後の\(C_1\), \(C_2\)にかかる電圧をそれぞれ\(V_1\), \(V_2\)とします。電池の正極側から見て、\(C_1\)の上側極板、\(C_2\)の上側極板がそれぞれ正に帯電すると仮定します。
1. 電気量保存則の立式
\(C_1\)の下側極板と\(C_2\)の上側極板をつなぐ導線部分は、回路の他の部分から孤立しています。したがって、この部分の電気量の総和は、スイッチを閉じる前後で保存されます。
- スイッチを閉じる前の総電荷:
\(C_1\)の下側極板の電荷は \(-2CV\)。
\(C_2\)は帯電していないので、上側極板の電荷は \(0\)。
よって、孤立部分の総電荷は \(-2CV + 0 = -2CV\)。 - スイッチを閉じた後の総電荷:
仮定より、\(C_1\)の下側極板には \(-CV_1\) の電荷が蓄えられます。
仮定より、\(C_2\)の上側極板には \(+CV_2\) の電荷が蓄えられます。
よって、孤立部分の総電荷は \(-CV_1 + CV_2\)。
電気量保存則より、
$$ -2CV = -CV_1 + CV_2 $$
両辺を\(C\)で割ると、
$$ -2V = -V_1 + V_2 \quad \cdots ① $$
2. 電圧則(キルヒホッフの第2法則)の立式
回路全体を一つの閉ループとして考えます。電池による電圧上昇\(V\)は、\(C_1\)と\(C_2\)での電圧降下の和に等しくなります。
$$ V = V_1 + V_2 \quad \cdots ② $$
これで、未知数\(V_1, V_2\)に関する2つの式が導かれました。
使用した物理公式
- 電気量保存則
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(V_{\text{電源}} = \sum V_{\text{降下}}\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
式①と②を\(V_1, V_2\)についての連立方程式として解きます。
まず、式②から式①を引くと、
$$
\begin{aligned}
(V_1 + V_2) – (-V_1 + V_2) &= V – (-2V) \\[2.0ex]2V_1 &= 3V \\[2.0ex]V_1 &= \frac{3}{2}V
\end{aligned}
$$
次に、この結果を式②に代入して\(V_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{2}V + V_2 &= V \\[2.0ex]V_2 &= V – \frac{3}{2}V \\[2.0ex]&= -\frac{1}{2}V
\end{aligned}
$$
\(V_2\)が負の値となったため、\(C_2\)の極性は最初に仮定した向きとは逆であることがわかります。つまり、\(C_2\)の上側極板が負、下側極板が正に帯電します。
各コンデンサーにかかる電圧の大きさは、それぞれの絶対値をとって、
\(C_1\)の電圧: \(|V_1| = \displaystyle\frac{3}{2}V\)
\(C_2\)の電圧: \(|V_2| = \displaystyle\frac{1}{2}V\)
次に、蓄えられる電気量\(Q_1, Q_2\)を求めます。電気量は正の値で表すのが普通なので、電圧の大きさ(絶対値)を用います。
\(C_1\)に蓄えられる電気量\(Q_1\)は、
$$ Q_1 = C |V_1| = C \cdot \frac{3}{2}V = \frac{3CV}{2} $$
\(C_2\)に蓄えられる電気量\(Q_2\)は、
$$ Q_2 = C |V_2| = C \cdot \frac{1}{2}V = \frac{CV}{2} $$
この問題は、すでに電気がたまっているコンデンサーを含む回路のパズルです。スイッチを入れると電気が動き回って新しいバランス状態になりますが、そこには2つの絶対的なルールがあります。
ルール1「孤立部分の電気量は不変」:\(C_1\)と\(C_2\)の間に挟まれた導線部分は、他から孤立した「島」のようなものです。この島の電気量の合計は、スイッチを入れる前と後で変わりません。最初は\(-2CV\)だったので、後も\(-2CV\)のままです。
ルール2「電圧のつじつま」:回路をぐるっと一周したとき、電池が供給する電圧\(V\)と、2つのコンデンサーで消費される電圧の合計は等しくなります。
この2つのルールを連立方程式にして解くと、各コンデンサーにかかる電圧がわかります。計算結果で電圧がマイナスになったら、それは「プラスとマイナスの向きが、最初に考えたのと逆だった」というサインです。電圧がわかれば、おなじみの\(Q=CV\)の式で、蓄えられた電気量も計算できます。
スイッチを閉じたとき、各コンデンサーにかかる電圧と蓄えられる電気量は以下のようになります。
- \(C_1\)にかかる電圧: \(\displaystyle\frac{3}{2}V\) [V]
- \(C_2\)にかかる電圧: \(\displaystyle\frac{1}{2}V\) [V]
- \(C_1\)に蓄えられる電気量: \(\displaystyle\frac{3CV}{2}\) [C]
- \(C_2\)に蓄えられる電気量: \(\displaystyle\frac{CV}{2}\) [C]
結果を吟味します。\(V_2 = -\frac{1}{2}V\)という結果は、\(C_2\)の電位が、仮定とは逆に上側が下側より\(\frac{1}{2}V\)だけ低いことを示します。回路を一周するときの電位の変化を確認すると、電池で\(+V\)上昇し、\(C_1\)で\(V_1=\frac{3}{2}V\)下降し、\(C_2\)で\(V_2=-\frac{1}{2}V\)下降(つまり\(\frac{1}{2}V\)上昇)します。合計の電位変化は \(V – V_1 – V_2 = V – \frac{3}{2}V – (-\frac{1}{2}V) = V – \frac{2}{2}V = 0\)となり、キルヒホッフの法則を正しく満たしています。したがって、得られた結果は物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電気量保存則
- 核心: スイッチの切り替えや接続の変更があるコンデンサー回路において、最も強力な武器となる法則です。回路中で外部の回路と導線で接続されていない「孤立部分」を見つけ出し、その部分の電荷の総和が操作の前後で不変であることを利用します。
- 理解のポイント:
- 孤立部分の特定: 回路図上で、スイッチや電池をまたがずに繋がっている、閉じた導線部分を探します。この問題では「\(C_1\)の下側極板と\(C_2\)の上側極板をつなぐ導線」がそれに該当します。
- 操作前後の電荷の計算: 操作前の各極板の電荷と、操作後の(未知数を含んだ)各極板の電荷をそれぞれ計算し、それらの和が等しいと立式します。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
- 核心: 回路の任意の閉ループ(一周する経路)において、起電力の総和と電圧降下の総和は等しい、という法則です。これはエネルギー保存則の電位における表現です。
- 理解のポイント:
- ループの選択: 回路図から、一周できる経路を選びます。この問題では、電池、\(C_1\)、\(C_2\)を含むループが唯一存在します。
- 電位の追跡: ループを一周する際に、電池を通過すると電位が上昇し、コンデンサーを(正極から負極へ)通過すると電位が下降すると考え、電位差の総和がゼロになるように立式します。(\(V – V_1 – V_2 = 0\))
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 複数のコンデンサーとスイッチ切り替え: 複数のコンデンサーが複雑に接続され、スイッチの切り替えによって接続状態が変わる問題。各スイッチの状態ごとに孤立部分を見つけ、電気量保存則を繰り返し適用することが多いです。
- 接地(アース)を含む回路: 回路の一部が接地されている場合、その点の電位は\(0 \text{ V}\)となります。これを基準に各点の電位を未知数として設定し、\(Q=C\Delta V\)(\(\Delta V\)は極板間の電位差)の関係と電気量保存則を連立させます。
- 十分時間が経過した後のRC回路: コンデンサーと抵抗を含む直流回路で、スイッチを入れてから十分時間が経過した場合、コンデンサーへの充電が完了し、コンデンサーを含む部分には電流が流れなくなります。このとき、コンデンサーは「断線」していると見なせ、その両端の電圧は、並列に接続された抵抗部分の電圧に等しくなります。
- 初見の問題での着眼点:
- 初期状態の把握: スイッチを入れる前に、各コンデンサーに電荷が蓄えられているか、その量と極性はどうかを正確に把握します。これが電気量保存則の「操作前の電荷」の計算に不可欠です。
- 孤立部分のマーキング: 回路図に色ペンなどで孤立部分を明確に囲み、視覚的に認識できるようにします。これにより、立式ミスを防ぎます。
- 電圧の向き(極性)の仮定: 最終状態の各コンデンサーの電圧の向きを仮定し、図に矢印や `+`, `-` を書き込みます。計算結果が負になれば、仮定が逆だったと判断すればよいので、恐れずに仮定を置くことが重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電気量保存則の適用部分の誤り:
- 誤解: 孤立していない部分(電池に直接つながっている部分など)で電気量保存則を適用しようとしてしまう。
- 対策: 「孤立部分」とは、電荷が外部から流入したり、外部へ流出したりできない部分であると定義を徹底する。電池やスイッチを介して他の部分とつながっている極板は孤立部分には含まれないことを確認する。
- 電荷の符号のミス:
- 誤解: 電気量保存則の式を立てる際に、極板の電荷の正負を間違える。例えば、\(C_1\)の下側極板の電荷を \(+CV_1\) としてしまう。
- 対策: 電圧の向きを仮定したら、必ず「電圧が高い方が正極(+Q)、低い方が負極(-Q)」というルールに従って電荷の符号を決定する。図に `+Q`, `-Q` を書き込んでから立式する習慣をつける。
- 連立方程式の計算ミス:
- 誤解: \( -2V = -V_1 + V_2 \) と \( V = V_1 + V_2 \) のような簡単な連立方程式でも、焦って計算ミスをする。
- 対策: 筆算で丁寧に行う。加減法で一方の変数を消去した後、得られた結果を元の式の一方に代入してもう一方の変数を求めるだけでなく、もう一方の式にも代入して検算する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電気量保存則と電圧則の選択
- 選定理由: この問題のように、初期電荷が存在し、単純な直列・並列接続として扱えない回路では、合成容量の公式は適用できません。このような場合、回路の挙動を支配するより根源的な法則である「電気量保存則」と「電圧則」に頼るのが唯一かつ最強のアプローチとなります。これらはどんな複雑な回路にも適用できる普遍的な法則です。
- 適用根拠:
- 電気量保存則: 物理学の基本法則であり、閉じた系での電荷の総量は不変であるという事実に基づいています。
- 電圧則: エネルギー保存則が電場・電位の世界で現れた形です。電荷が回路を一周して元の位置に戻るとき、そのエネルギー(電位)も元に戻るという原理に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 未知数の明確化: 最初に「\(V_1\)を\(C_1\)の電圧とする」など、自分で設定した未知数が何を表すのかを明確に定義し、図にも書き込む。
- 符号のルールを徹底: 電圧の向きを仮定したら、電荷の符号、電圧則での符号(上昇か下降か)のルールを一貫して適用する。途中でルールを変えない。
- 単位の省略: この問題のように、文字式で計算を進める場合は、途中で単位(V, C, F)を書くと式が煩雑になるため、省略して計算し、最終的な答えに正しい単位を付記するのが効率的でミスも少ないです。
- 検算の習慣: 連立方程式を解いた後、得られた解(\(V_1, V_2\))を元の両方の式(①と②)に代入して、等式が成り立つかを確認する。この一手間が、致命的なミスを防ぎます。例えば、\(V_1 = \displaystyle\frac{3}{2}V, V_2 = -\frac{1}{2}V\) を①に代入すると \(-(\displaystyle\frac{3}{2}V) + (-\displaystyle\frac{1}{2}V) = -\displaystyle\frac{4}{2}V = -2V\) となり、正しいことが確認できます。
例題72 コンデンサーの接続
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「スイッチの切り替え操作を伴うコンデンサー回路」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電気量保存則:回路中の外部から孤立した部分では、電荷の総和は操作の前後で一定に保たれます。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):回路の任意の閉ループにおいて、電圧上昇と電圧降下の総和は等しくなります。
- コンデンサーの直列接続:各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しく、電圧は電気容量に反比例します。
- コンデンサーの並列接続:各コンデンサーにかかる電圧は等しく、電気量は電気容量に比例します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、スイッチ\(S_1\)を閉じたときの回路が\(C_1\)と\(C_2\)の直列接続であることを見抜き、電圧を求めます。電気量保存則と電圧則を用いる方法と、直列接続の性質を用いる方法があります。
- (2)では、まず(1)の状態で\(C_2\)に蓄えられた電荷を計算します。次に\(S_1\)を開いて\(S_2\)を閉じることで、\(C_2\)と\(C_3\)が並列接続され、電荷が再配分されると考えます。この過程で、\(C_2\)と\(C_3\)からなる系が孤立しているため、電気量保存則が適用できます。
問(1)
思考の道筋とポイント
スイッチ\(S_1\)のみを閉じたとき、回路は電池\(V\)、コンデンサー\(C_1\)、コンデンサー\(C_2\)からなる閉回路となります。これは\(C_1\)と\(C_2\)の直列接続です。この回路について、未知数である各コンデンサーの電圧\(V_1, V_2\)を求めるために、電気量保存則と電圧則を用いて連立方程式を立てるのが基本アプローチです。
この設問における重要なポイント
- 回路の孤立部分を見つけ、電気量保存則を適用する。
- 回路の閉ループについて、キルヒホッフの電圧則を適用する。
- 初期状態ではコンデンサーの電荷は0である。
具体的な解説と立式
\(S_1\)を閉じた後の\(C_1, C_2\)にかかる電圧をそれぞれ\(V_1, V_2\)とします。電池の正極につながる\(C_1\)の上側極板が正に帯電すると仮定します。
1. 電圧則の立式
電池、\(C_1\)、\(C_2\)を含む閉ループについて、電圧則を適用します。
$$ V = V_1 + V_2 \quad \cdots ① $$
2. 電気量保存則の立式
\(C_1\)の下側極板と\(C_2\)の上側極板をつなぐ導線部分は、回路の他の部分から孤立しています。スイッチを閉じる前の総電荷は0でした。閉じた後、\(C_1\)の下側極板には\(-C_1V_1 = -CV_1\)、\(C_2\)の上側極板には\(+C_2V_2 = +2CV_2\)の電荷が蓄えられるので、
$$ 0 = -CV_1 + 2CV_2 \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
- 電気量保存則
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
式①と②を連立して解きます。
式②より、\(CV_1 = 2CV_2\)、すなわち\(V_1 = 2V_2\)となります。
この関係を式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= (2V_2) + V_2 \\[2.0ex]V &= 3V_2
\end{aligned}
$$
したがって、\(C_2\)の電圧\(V_2\)は、
$$ V_2 = \frac{1}{3}V $$
スイッチ\(S_1\)を閉めると、\(C_1\)と\(C_2\)が直列につながります。このとき、間に挟まれた導線部分は電気的に孤立しているので、\(C_1\)の下側と\(C_2\)の上側の極板の電荷の合計は、最初と同じく0のままです。このことから、\(C_1\)にたまる電気量と\(C_2\)にたまる電気量の比がわかります。また、\(C_1\)と\(C_2\)の電圧を足すと、電池の電圧\(V\)になります。この2つの条件から、それぞれの電圧を計算できます。
\(S_1\)のみを閉じたとき、\(C_2\)の電圧は\(\displaystyle\frac{1}{3}V\)です。
ちなみに\(V_1 = 2V_2 = \frac{2}{3}V\)となり、\(V_1+V_2 = \frac{2}{3}V + \frac{1}{3}V = V\)となって電圧則を満たしており、結果は妥当です。
思考の道筋とポイント
\(S_1\)のみを閉じたとき、\(C_1\)と\(C_2\)は直列接続と見なせます。直列接続されたコンデンサーでは、蓄えられる電気量が等しくなり、電圧は電気容量に反比例して分配されるという性質を利用すると、より簡潔に計算できます。
この設問における重要なポイント
- 直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しい。
- 直列接続では、電圧は電気容量に反比例して分配される。(\(V_1:V_2 = C_2:C_1\))
具体的な解説と立式
\(C_1\)と\(C_2\)は直列接続されているため、それぞれの電圧\(V_1, V_2\)は電気容量に反比例します。
$$ V_1 : V_2 = C_2 : C_1 = 2C : C = 2 : 1 $$
全体の電圧\(V\)が、この\(2:1\)の比で\(V_1\)と\(V_2\)に分配されます。
したがって、\(V_2\)は全体の電圧\(V\)を\(2+1=3\)で分け、そのうちの1の割合を受け取ります。
$$ V_2 = V \times \frac{1}{2+1} $$
使用した物理公式
- コンデンサーの直列接続における電圧分配
立式した比例配分の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V \times \frac{1}{2+1} \\[2.0ex]&= \frac{1}{3}V
\end{aligned}
$$
\(C_1\)と\(C_2\)は直列につながっているので、電圧は電気容量の「逆比」で分け合います。\(C_1\)の容量は\(C\)、\(C_2\)の容量は\(2C\)なので、容量の比は\(1:2\)です。したがって、電圧の比はその逆の\(2:1\)になります。全体の電圧\(V\)を\(2:1\)で分けるので、\(C_2\)が受け取る電圧は全体の\(1/3\)となり、\(\frac{1}{3}V\)です。
\(C_2\)の電圧は\(\displaystyle\frac{1}{3}V\)となり、メインの解法と一致しました。回路が単純な直列接続であることを見抜ければ、この方法が最も速く解けます。
問(2)
思考の道筋とポイント
この設問は2段階の操作からなります。
1. \(S_1\)を開く:この瞬間、\(C_1\)と\(C_2\)は電池から切り離されます。\(C_2\)には(1)で求めた電圧がかかっており、その分の電荷が蓄えられた状態で固定されます。
2. \(S_2\)を閉じる:電荷を蓄えた\(C_2\)と、電荷のない\(C_3\)が接続されます。これにより、\(C_2\)と\(C_3\)からなる系が新たな孤立回路を形成し、\(C_2\)の電荷が\(C_3\)へ再配分されます。この孤立系について電気量保存則を適用することで、最終的な電圧を求めます。
この設問における重要なポイント
- スイッチ操作の各段階で、どの部分が孤立し、電荷が保存されるかを正確に把握する。
- \(S_2\)を閉じた後は、\(C_2\)と\(C_3\)が並列接続になり、両端の電圧が等しくなる。
具体的な解説と立式
まず、\(S_2\)を閉じる直前の状態を考えます。このとき\(C_2\)に蓄えられている電荷\(Q_2\)は、(1)の結果を用いて、
$$ Q_2 = C_2 V_2 = 2C \times \left(\frac{1}{3}V\right) = \frac{2}{3}CV $$
この電荷は、\(C_2\)の上側極板に\(+Q_2\)、下側極板に\(-Q_2\)として蓄えられています。\(C_3\)の電荷は0です。
次に、\(S_2\)を閉じた後の状態を考えます。\(C_2\)と\(C_3\)にかかる電圧をそれぞれ\(V_2′, V_3’\)とします。
\(C_2\)と\(C_3\)は並列接続になるため、その電圧は等しくなります。
$$ V_2′ = V_3′ \quad \cdots ③ $$
\(C_2\)の上側極板と\(C_3\)の上側極板からなる部分は、外部から孤立しています。この部分の電気量保存則を考えます。
- \(S_2\)を閉じる前の総電荷: \(Q_2 + 0 = \displaystyle\frac{2}{3}CV\)
- \(S_2\)を閉じた後の総電荷: \(Q_2′ + Q_3′ = C_2V_2′ + C_3V_3′ = 2CV_2′ + 3CV_3’\)
電気量保存則より、
$$ \frac{2}{3}CV = 2CV_2′ + 3CV_3′ \quad \cdots ④ $$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
- 並列接続の電圧の関係
- 電気量保存則
式③の関係を式④に代入して、\(V_2’\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{3}CV &= 2CV_2′ + 3C(V_2′) \\[2.0ex]\frac{2}{3}CV &= 5CV_2′
\end{aligned}
$$
両辺を\(5C\)で割ると、
$$
\begin{aligned}
V_2′ &= \frac{1}{5C} \times \frac{2}{3}CV \\[2.0ex]&= \frac{2}{15}V
\end{aligned}
$$
(1)の状態で\(C_2\)に蓄えられた電気の量をまず計算します。これが\(\frac{2}{3}CV\)です。次に\(S_1\)を開き、\(S_2\)を閉じると、この電気が\(C_2\)と\(C_3\)の2つのコンデンサーで分け合われることになります。分け合った後は、並列接続なので両者の電圧は等しくなります。電気の総量は変わらないというルール(電気量保存則)を使って、最終的な電圧を計算します。
\(S_1\)を開いてから\(S_2\)を閉じたとき、\(C_2\)の電圧は\(\displaystyle\frac{2}{15}V\)となります。この値は正であり、物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
(2)の操作は、電荷\(Q_2 = \frac{2}{3}CV\)を蓄えたコンデンサー\(C_2\)と、電荷のないコンデンサー\(C_3\)を並列に接続する操作と見なせます。並列接続の合成容量の考え方を用いると、計算を簡略化できます。
この設問における重要なポイント
- 並列接続の合成容量は、各容量の和で与えられる。(\(C_{\text{並列}} = C_2 + C_3\))
- 保存される総電荷を、合成容量で割ることで最終的な電圧が求まる。
具体的な解説と立式
\(S_2\)を閉じる前の、孤立系(\(C_2\)と\(C_3\))が持つ総電荷は、\(C_2\)が蓄えている電荷\(Q_2\)のみです。
$$ Q_{\text{総}} = Q_2 = \frac{2}{3}CV $$
\(S_2\)を閉じた後、\(C_2\)と\(C_3\)は並列接続となり、一つの合成コンデンサーと見なせます。その合成容量\(C_{23}\)は、
$$ C_{23} = C_2 + C_3 = 2C + 3C = 5C $$
この合成コンデンサー\(C_{23}\)に、総電荷\(Q_{\text{総}}\)が蓄えられているときの電圧が、求める電圧\(V_2’\)に等しくなります。
$$ V_2′ = \frac{Q_{\text{総}}}{C_{23}} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成容量: \(C = C_1 + C_2\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
立式した関係式に値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V_2′ &= \frac{\frac{2}{3}CV}{5C} \\[2.0ex]&= \frac{2CV}{3 \times 5C} \\[2.0ex]&= \frac{2}{15}V
\end{aligned}
$$
(1)の状態で\(C_2\)に蓄えられた電気の総量 \(\frac{2}{3}CV\) を、\(C_2\)と\(C_3\)を合体させた巨大なコンデンサー(容量は\(2C+3C=5C\))で分け合うと考えます。電圧は「電気量 ÷ 容量」なので、\(\frac{2}{3}CV\)を\(5C\)で割ることで、最終的な電圧を求めることができます。
\(C_2\)の電圧は\(\displaystyle\frac{2}{15}V\)となり、メインの解法と一致しました。電荷の再配分を合成容量で考えることで、見通しよく計算できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電気量保存則の的確な適用
- 核心: スイッチの切り替えによって回路の接続状態が変化する問題では、「どの部分が新たに孤立したか」を見抜き、その部分で電気量保存則を立てることが最も重要です。
- 理解のポイント:
- (1) S₁を閉じたとき: 「\(C_1\)の下側極板」と「\(C_2\)の上側極板」をつなぐ導線部分が孤立します。初期電荷が0なので、操作後のこの部分の総電荷も0となります。(\( -C_1V_1 + C_2V_2 = 0 \))
- (2) S₁を開きS₂を閉じたとき: 今度は「\(C_2\)の上側極板」と「\(C_3\)の上側極板」をつなぐ導線部分が孤立します。この部分の総電荷は、操作前(\(S_2\)を閉じる直前)の\(C_2\)の上側極板の電荷に等しくなります。
- 状態の引き継ぎ
- 核心: (1)の操作が終了した時点での各コンデンサーの電荷や電圧が、(2)の操作を開始する直前の「初期状態」となります。このように、一連の操作をステップごとに追い、状態量(特に電荷)を正しく次のステップに引き継いでいく思考が不可欠です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 充電済みコンデンサーの再接続: (2)の操作は、電荷を蓄えたコンデンサーを別のコンデンサー(または回路)に接続する典型的なパターンです。接続前の電荷を正確に計算し、接続後の新しい孤立系で電気量保存則を適用するのが定石です。
- 電池の取り外し・再接続: 一度充電した後、電池を取り外して別のコンデンサーを接続したり、電池の向きを逆にして再接続したりする問題。いずれも、操作の前後で孤立部分の電荷が保存されることを利用します。
- 初見の問題での着眼点:
- 操作を時系列で分解する: 「\(S_1\)のみ閉じる」「次に\(S_1\)を開く」「そして\(S_2\)を閉じる」という一連の操作を、個別のイベントとして分解し、各イベントの前後で回路がどう変化するかを考えます。
- 各段階の回路図を描く: 操作によって回路のトポロジー(接続関係)が変わるため、各段階における有効な回路図を自分で描き直すことが非常に有効です。これにより、直列・並列の関係や孤立部分が一目瞭然になります。
- 保存される物理量に着目する: スイッチ操作で何が起こるかを考えるとき、「何が変化し、何が保存されるか」を意識します。電圧や各コンデンサーの電荷は変化しますが、孤立系の総電荷は保存されます。この不変量を見つけることが解法の鍵です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 孤立部分の誤認:
- 誤解: (2)の操作後も、(1)と同じ「\(C_1\)と\(C_2\)の間の部分」で電気量保存を考えてしまう。
- 対策: スイッチ操作は「孤立部分」そのものを変える可能性があることを常に意識する。\(S_1\)が開かれた時点で\(C_1\)は回路から切り離され、\(S_2\)が閉じられると\(C_2\)と\(C_3\)が新たにつながるため、孤立部分も「\(C_2\)と\(C_3\)の間の部分」に変化します。
- 電荷ではなく電圧を引き継いでしまう:
- 誤解: (2)の計算を始める際に、(1)で求めた\(C_2\)の電圧\(V_2 = \frac{1}{3}V\)が、\(S_2\)を閉じた後も何らかの形で関係すると思ってしまう。
- 対策: スイッチを開いてコンデンサーを孤立させたときに保存されるのは「電荷」です。電圧は再接続によって変化します。必ず(1)の電圧から(2)の初期「電荷」(\(Q_2 = C_2V_2\))を計算し、その電荷が再配分される、というストーリーで考える癖をつけましょう。
- 直列・並列の性質の混同:
- 誤解: (1)の直列接続で、電圧が容量に比例する(\(V_1:V_2=C_1:C_2\))と間違える。
- 対策: 「直列接続 → 電気量\(Q\)が等しい → \(V=Q/C\)より電圧\(V\)は容量\(C\)に反比例」という論理を毎回思い出す。自信がなければ、別解のように電圧則と電気量保存則の基本に立ち返って解くのが安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電気量保存則と電圧則(メイン解法)
- 選定理由: スイッチ操作によって回路構成が変化する問題に対して、最も普遍的で強力なツールです。どのような接続状態にも対応できるため、解法の基本としてマスターすべき考え方です。
- 適用根拠: (1)では直列回路、(2)では電荷の再配分と、状況が異なりますが、どちらの物理現象もこの2つの基本法則によって記述できます。特に(2)のように、単純な合成容量の計算だけでは解けない状況で真価を発揮します。
- 直列・並列接続の性質(別解)
- 選定理由: (1)の回路は単純な直列接続、(2)の最終状態は単純な並列接続と、回路の形が典型的なパターンに帰着できる場合、計算を大幅に簡略化できます。
- 適用根拠: (1)では、電圧則と電気量保存則を組み合わせた結果が「電圧は容量に反比例する」という性質に集約されています。(2)では、電気量保存則と「並列接続では電圧が等しい」という条件を組み合わせた結果が「総電荷を合成容量で割る」という計算に集約されています。これらの性質は、基本法則から導かれる便利なショートカットと理解すると良いでしょう。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 段階的な計算の明記: (2)を解くために、まず「(1)の操作後の\(C_2\)の電荷\(Q_2\)」を計算するステップを省略せずに書き出すことが重要です。
\(Q_2 = C_2 V_2 = 2C \times (\frac{1}{3}V) = \frac{2}{3}CV\)
この中間結果を明確にしてから、次の計算に進むことで、思考が整理されミスが減ります。 - 繁分数の処理: (2)の別解で出てくる \( \displaystyle\frac{\frac{2}{3}CV}{5C} \) のような計算では、分母と分子をはっきりさせ、\( \displaystyle\frac{2CV}{3 \cdot 5C} \) のように一段階挟んでから約分すると、計算ミスを防げます。
- 文字式の約分: 計算の最終段階で、\(C\)や\(V\)などの文字を消し忘れないように注意深く確認する。特に、分母と分子の両方に同じ文字がある場合は要注意です。
例題73 平行板コンデンサー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平行板コンデンサーの基本公式と、極板間距離を変化させたときの物理量の変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 平行板コンデンサーの電気容量の公式: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
- コンデンサーの静電エネルギーの公式: \(U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = \frac{Q^2}{2C}\)
- 仕事とエネルギーの関係
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)から(4)は、平行板コンデンサーに関する基本的な公式を正しく適用できるかを問う問題です。
- (5)から(7)は、コンデンサーを「電池から切り離した」後の操作に関する問題です。この場合、「電気量\(Q\)が一定に保たれる」という条件が全ての計算の出発点となります。
- (5)では、電気量\(Q\)が一定のときの電界の強さを考えます。
- (6)では、極板間距離が変わったことによる静電エネルギーの変化を、\(Q\)が一定の条件で計算します。
- (7)では、「外力がした仕事が静電エネルギーの増加分に等しい」というエネルギー保存則の関係を用いて、極板間に働く引力を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
平行板コンデンサーの電気容量を求める、最も基本的な公式を適用します。
この設問における重要なポイント
- 平行板コンデンサーの電気容量は、極板の面積\(S\)に比例し、極板間距離\(d\)に反比例する。
具体的な解説と立式
真空中に置かれた平行板コンデンサーの電気容量\(C\)は、真空の誘電率を\(\epsilon_0\)、極板の面積を\(S\)、極板間距離を\(d\)とすると、以下の公式で与えられます。
$$ C = \epsilon_0 \frac{S}{d} $$
使用した物理公式
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
この設問は公式を記述するものであり、具体的な計算は不要です。
コンデンサーがどれだけ電気を蓄えられるかを示す「器の大きさ」が電気容量です。これは、板の面積が広いほど、また板の間の距離が狭いほど大きくなります。その関係を表す基本公式を答えます。
コンデンサーの電気容量は \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\) [F] となります。
問(2)
思考の道筋とポイント
コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)、電気容量\(C\)、電圧\(V\)の関係を表す基本式 \(Q=CV\) を用います。(1)で求めた\(C\)の式を代入して\(Q\)を求めます。
この設問における重要なポイント
- 蓄えられる電気量は、電気容量と電圧の両方に比例する。
具体的な解説と立式
コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)は、電気容量\(C\)とコンデンサーにかかる電圧\(V\)の積で表されます。
$$ Q = CV $$
(1)で求めた \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\) をこの式に代入します。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
$$
\begin{aligned}
Q &= \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) \times V \\[2.0ex]&= \frac{\epsilon_0 S V}{d}
\end{aligned}
$$
コンデンサーに蓄えられる電気の量は、「器の大きさ(容量\(C\))」と「電気を押し込む圧力(電圧\(V\))」の掛け算で決まります。(1)で求めた容量の式を使って計算します。
蓄えられる電気量は \(Q = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S V}{d}\) [C] となります。
問(3)
思考の道筋とポイント
平行板コンデンサーの極板間の電界は、極板から十分に離れた場所を除き、一様であると見なせます。一様な電界\(E\)と電位差\(V\)、距離\(d\)の関係式 \(V=Ed\) を用いて\(E\)を求めます。
この設問における重要なポイント
- 一様な電界中では、電位差は「電界の強さ × 距離」で表される。
具体的な解説と立式
一様な電界\(E\)の中で、電界の向きに\(d\)だけ離れた2点間の電位差\(V\)は、\(V=Ed\)と表されます。これを\(E\)について解きます。
$$ E = \frac{V}{d} $$
使用した物理公式
- 一様な電界と電位差の関係: \(V=Ed\)
この設問は式変形のみであり、具体的な計算は不要です。
電界は「電気的な坂道の傾き」、電圧は「坂道の始点と終点の高低差」に例えられます。高低差を距離で割れば、坂道の傾きが求まるのと同じ考え方です。
極板間の電界の強さは \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\) [V/m] となります。
問(4)
思考の道筋とポイント
コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー\(U\)を求める公式を用います。\(U\)には \(U=\frac{1}{2}CV^2\), \(U=\frac{1}{2}QV\), \(U=\frac{Q^2}{2C}\) の3つの形がありますが、ここでは\(C\)と\(V\)が分かっているので \(U=\frac{1}{2}CV^2\) を使うのが便利です。
この設問における重要なポイント
- 静電エネルギーの3つの公式を理解し、問題に応じて使い分ける。
具体的な解説と立式
静電エネルギー\(U\)を、(1)で求めた\(C\)と与えられた\(V\)で表します。
$$ U = \frac{1}{2}CV^2 $$
この式に \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\) を代入します。
使用した物理公式
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) V^2 \\[2.0ex]&= \frac{\epsilon_0 S V^2}{2d}
\end{aligned}
$$
コンデンサーに電気を蓄えるには仕事が必要で、その仕事がエネルギーとして蓄えられます。そのエネルギー量は、容量\(C\)と電圧\(V\)の2乗に比例します。
コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーは \(U = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S V^2}{2d}\) [J] となります。
問(5)
思考の道筋とポイント
「コンデンサーを電池から切りはなして」という記述が最重要ポイントです。これにより、極板上の電気量\(Q\)は移動先がないため、一定に保たれます。極板間の電界の強さ\(E\)は、極板上の電荷が作るものであり、ガウスの法則から \(E = \frac{Q}{\epsilon_0 S}\) と表せます。\(Q\)と\(\epsilon_0, S\)はすべて不変なので、極板間距離を広げても電界の強さ\(E’\)は変わりません。
この設問における重要なポイント
- 電池から切り離す \(\rightarrow\) 電気量\(Q\)が一定。
- 電池に接続したまま \(\rightarrow\) 電圧\(V\)が一定。
- 平行板コンデンサーの電界は、極板上の電荷のみで決まり、極板間距離にはよらない。
具体的な解説と立式
コンデンサーを電池から切り離したため、電気量\(Q\)は(2)で求めた値のまま一定です。
極板間の電界の強さ\(E\)は、単位面積あたりの電気量(電荷密度\(\sigma = Q/S\))に比例し、\(E = \sigma / \epsilon_0 = Q / (\epsilon_0 S)\) と表されます。
\(Q, \epsilon_0, S\)はすべて変化しないため、極板間距離を\(d\)から\(d+x\)に広げても、電界の強さ\(E’\)は元の\(E\)と等しくなります。
$$ E’ = E = \frac{V}{d} $$
使用した物理公式
- 電界と電荷の関係: \(E = \frac{Q}{\epsilon_0 S}\)
上記の説明より、計算は不要です。
電池を外したので、コンデンサーの板の上にある電気の粒(電荷)はどこにも逃げられず、量は一定です。電界は、この電気の粒が作る電気的な空間の強さなので、粒の量が変わらなければ電界の強さも変わりません。
極板間の電界の強さは変わらず、\(E’ = \displaystyle\frac{V}{d}\) [V/m] です。
問(6)
思考の道筋とポイント
静電エネルギーの増加分 \(\Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}}\) を計算します。この操作では電気量\(Q\)が一定なので、エネルギーの公式は \(U = \frac{Q^2}{2C}\) を使うと計算が簡便になります。なぜなら、変化する物理量が電気容量\(C\)のみになるからです。
この設問における重要なポイント
- \(Q\)が一定の変化では、エネルギーの公式として \(U = \frac{Q^2}{2C}\) を選択すると見通しが良い。
具体的な解説と立式
極板間距離を広げた後の電気容量を\(C’\)とすると、\(C’ = \epsilon_0 \frac{S}{d+x}\) です。
エネルギーの増加分\(\Delta U\)は、後のエネルギー\(U_{\text{後}}\)から前のエネルギー\(U_{\text{前}}\)を引いたものです。
$$ \Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}} = \frac{Q^2}{2C’} – \frac{Q^2}{2C} $$
この式に\(C, C’\)の式を代入し、(2)で求めた\(Q\)の値を最後に用います。
$$ \Delta U = \frac{Q^2}{2} \left( \frac{1}{C’} – \frac{1}{C} \right) $$
使用した物理公式
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \frac{Q^2}{2C}\)
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= \frac{Q^2}{2} \left( \frac{d+x}{\epsilon_0 S} – \frac{d}{\epsilon_0 S} \right) \\[2.0ex]&= \frac{Q^2}{2} \left( \frac{x}{\epsilon_0 S} \right) \\[2.0ex]&= \frac{Q^2 x}{2\epsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
ここに、(2)の結果 \(Q = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S V}{d}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta U &= \frac{\left( \frac{\epsilon_0 S V}{d} \right)^2 x}{2\epsilon_0 S} \\[2.0ex]&= \frac{\epsilon_0^2 S^2 V^2 x}{2\epsilon_0 S d^2} \\[2.0ex]&= \frac{\epsilon_0 S V^2 x}{2d^2}
\end{aligned}
$$
板の距離を広げた後のエネルギーと、広げる前のエネルギーの差を計算します。電池が外されているので電気の量は同じです。エネルギーの公式 \(U = \frac{Q^2}{2C}\) を使うと、容量\(C\)の変化だけを考えればよいので計算が楽になります。
コンデンサーの静電エネルギーの増加分は \(\Delta U = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S V^2 x}{2d^2}\) [J] となります。
問(7)
思考の道筋とポイント
問題文に「極板を引きはなすときの仕事がコンデンサーの静電エネルギーの増加になった」とあるので、仕事とエネルギーの関係を利用します。ゆっくりと極板を距離\(x\)だけ引き離すとき、極板間の引力\(F\)とつりあう大きさの外力\(f\)(\(f=F\))がする仕事\(W = fx = Fx\)は、静電エネルギーの増加分\(\Delta U\)に等しくなります。
この設問における重要なポイント
- 仕事とエネルギーの関係:(外力がした仕事) = (系のエネルギーの変化)
- ゆっくり動かす場合、外力は常に内部の力(ここでは引力)とつりあっている。
具体的な解説と立式
極板間の引力の大きさを\(F\)とします。極板をゆっくりと距離\(x\)だけ引き離すには、この引力\(F\)とつりあう外力\(f\)(大きさは\(F\))を加え続ける必要があります。この外力がする仕事\(W\)は、
$$ W = Fx $$
この仕事が静電エネルギーの増加分\(\Delta U\)に等しいので、
$$ Fx = \Delta U $$
この式に(6)で求めた\(\Delta U\)を代入して\(F\)を求めます。
使用した物理公式
- 仕事の定義: \(W=Fx\)
- 仕事とエネルギーの関係: \(W = \Delta U\)
$$
\begin{aligned}
Fx &= \frac{\epsilon_0 S V^2 x}{2d^2}
\end{aligned}
$$
両辺を\(x\)で割ると、
$$ F = \frac{\epsilon_0 S V^2}{2d^2} $$
板と板は電気的に引き合っています。この力に逆らって板をぐっと引き離すには、仕事が必要です。この「仕事」の分だけ、コンデンサーに蓄えられる「エネルギー」が増えます。(6)でエネルギーの増加分は計算済みなので、「仕事 = 力 × 距離」の関係から、引き合う力の大きさを逆算することができます。
極板が引き合う力の大きさは \(F = \displaystyle\frac{\epsilon_0 S V^2}{2d^2}\) [N] となります。この力は距離によらず一定であるという仮定とも整合します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 平行板コンデンサーの基本公式群
- 核心: この問題は、平行板コンデンサーに関する4つの基本公式を理解し、自在に使いこなせるかを試すものです。
- 電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
- 基本式: \(Q = CV\)
- 電界と電位差: \(V = Ed\)
- 静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = \frac{Q^2}{2C}\)
- 理解のポイント: これら4つの公式は相互に関連しています。例えば、\(C\)の公式を\(Q=CV\)に代入すれば\(Q\)が求まり、\(V=Ed\)を\(U=\frac{1}{2}CV^2\)に代入すればエネルギーを電界で表すこともできます。どの物理量が与えられ、何を求めるべきかに応じて、これらの式を適切に組み合わせる能力が求められます。
- 核心: この問題は、平行板コンデンサーに関する4つの基本公式を理解し、自在に使いこなせるかを試すものです。
- 操作条件による不変量の見極め
- 核心: コンデンサーの操作において、「電池に接続したまま」なのか「電池から切り離した」のかで、一定に保たれる物理量が異なります。この違いを正確に理解することが、(5)以降の問題を解く上での絶対的な鍵となります。
- 理解のポイント:
- 電池から切り離す: 極板上の電荷は移動先を失うため、電気量\(Q\)が一定に保たれます。
- 電池に接続したまま: 極板は常に電池と同じ電位差に保たれるため、電圧\(V\)が一定に保たれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 電池に接続したまま極板間距離を変える問題: この場合、電圧\(V\)が一定に保たれます。距離\(d\)を広げると容量\(C\)が減少し、\(Q=CV\)より電荷\(Q\)も減少します(電荷は電池に逃げる)。電界\(E=V/d\)は減少し、エネルギー\(U=\frac{1}{2}CV^2\)も減少します。
- 極板間に誘電体を挿入する問題: 誘電率\(\epsilon_r\)の誘電体を挿入すると、容量は\(C’ = \epsilon_r C\)となります。このときも「電池から切り離して挿入」か「電池に接続したまま挿入」かで、\(Q\)一定か\(V\)一定かが分かれ、その後の物理量変化の計算が変わってきます。
- 極板間に働く力の導出: (7)のように、エネルギーと仕事の関係(\(W=\Delta U\))から力を求める方法は、保存力全般に使える重要なテクニックです。微小距離\(\Delta x\)だけ動かしたときのエネルギー変化\(\Delta U\)を計算し、\(F \Delta x = \Delta U\)から力\(F\)を求める(微分を用いた\(F = -\frac{dU}{dx}\)の関係)という考え方は、大学物理にもつながります。
- 初見の問題での着眼点:
- 操作条件の確認: 問題文中の「電池から切り離して」「電池に接続したまま」というキーワードに真っ先に線を引きます。これにより、その後の計算でどの物理量を不変として扱うべきかが決まります。
- エネルギー公式の選択: エネルギーを計算する際、3つの公式(\(\frac{1}{2}CV^2, \frac{1}{2}QV, \frac{Q^2}{2C}\))のうち、どれを使えば最も計算が楽になるかを見極めます。\(Q\)が一定なら\(Q\)が入っている式、\(V\)が一定なら\(V\)が入っている式を選ぶのが基本です。
- 仕事とエネルギーの関係: 「力を求めよ」という問題で、直接力を計算する方法が思いつかない場合、「仕事とエネルギーの関係」が使えないかを考えます。微小に変位させたときのエネルギー変化を計算することで、力を間接的に求めることができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(Q\)一定と\(V\)一定の混同:
- 誤解: (5)で電池から切り離したにもかかわらず、電圧\(V\)が一定だと勘違いし、\(E’ = V/(d+x)\)としてしまう。
- 対策: 操作の前に「今はQ一定?V一定?」と自問自答する癖をつける。「切り離し→電荷が孤立→Q一定」「接続中→電池が電圧を供給→V一定」と、理由とセットで覚える。
- エネルギー公式の選択ミス:
- 誤解: (6)で\(Q\)が一定なのに、\(U=\frac{1}{2}CV^2\)を使おうとしてしまう。これでも解けますが、\(V\)も\(V=Q/C\)で変化するため、\(C\)と\(V\)の両方の変化を考慮する必要があり、計算が複雑化しミスを誘発します。
- 対策: 「不変量を含む公式を選ぶ」という原則を徹底する。\(Q\)が一定なら\(U=\frac{Q^2}{2C}\)か\(U=\frac{1}{2}QV\)、\(V\)が一定なら\(U=\frac{1}{2}CV^2\)か\(U=\frac{1}{2}QV\)を選ぶと、変数が一つ減り計算が楽になります。
- 仕事と力の関係の誤解:
- 誤解: (7)で、エネルギーの増加分\(\Delta U\)そのものが力\(F\)であると勘違いしてしまう。
- 対策: 単位を意識する。エネルギーの単位はジュール[J]、力の単位はニュートン[N]であり、両者は全く異なる物理量です。仕事の定義 \(W[\text{J}] = F[\text{N}] \times x[\text{m}]\) を常に念頭に置き、エネルギーと力は「仕事」を介して結びついていることを理解する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電界の強さ \(E = Q/(\epsilon_0 S)\)
- 選定理由: (5)で、なぜ電界が変わらないのかを根本的に説明するための公式です。
- 適用根拠: この式はガウスの法則から導かれます。コンデンサーの極板のような無限に広いと見なせる平面上の電荷が作る電界は、その面からの距離によらない、という重要な性質を表しています。したがって、\(Q\)が一定であれば、極板間距離を変えても電界は変化しません。
- 静電エネルギー \(U = Q^2/(2C)\)
- 選定理由: (6)で、\(Q\)が一定の条件下でエネルギー変化を計算するために、最も合理的な公式です。
- 適用根拠: この公式を選ぶことで、変化する変数が\(C\)のみに限定されます。\(C\)は\(d\)の簡単な関数(\(C=\epsilon_0 S/d\))なので、エネルギー変化の計算が非常に見通し良くなります。もし\(U=\frac{1}{2}CV^2\)を選ぶと、\(C\)と\(V\)の両方が\(d\)の関数として変化するため、計算が煩雑になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の整理: (6)の計算のように、分数の中にさらに分数が入るような式変形では、焦らず一段階ずつ整理する。
\( \Delta U = \frac{Q^2}{2\epsilon_0 S} ((d+x) – d) = \frac{Q^2 x}{2\epsilon_0 S} \) のように、共通因数を括りだしてから計算すると見通しが良くなります。 - 代入は最後に行う: (6)の計算で、\(Q\)の具体的な式を最初から代入すると、式が非常に複雑になります。まずは\(Q\)のまま計算を進め、最も整理された形になってから最後に \(Q = \frac{\epsilon_0 S V}{d}\) を代入する方が、計算ミスを減らせます。
- 次元(単位)の確認: (7)で求めた力の式 \(F = \frac{\epsilon_0 S V^2}{2d^2}\) の単位が本当に力[N]になっているかを確認する(次元解析)。これにより、大きな間違いをしていないかをチェックできます。
例題74 極板間への物体の挿入
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーへの金属板・誘電体の挿入と電気容量の変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 平行板コンデンサーの電気容量の基本公式: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
- 誘電体を挿入したときの電気容量の変化: 真空中の容量を\(C_0\)とすると、比誘電率\(\epsilon_r\)の誘電体で満たしたときの容量は \(C = \epsilon_r C_0\) となります。
- コンデンサーの合成容量の考え方(直列接続・並列接続)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、金属板を挿入したことによる実質的な極板間隔の変化として捉えます。
- (2)では、極板の面積を分割して異なる物質を挿入する状況を、2つのコンデンサーの「並列接続」と見なして合成容量を計算します。
- (3)では、極板の間隔を分割して異なる物質を挿入する状況を、2つのコンデンサーの「直列接続」と見なして合成容量を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
導体である金属板の内部では電界は常に0であり、金属板全体が等電位となります。このため、厚さ\(d/2\)の金属板を挿入することは、極板間の距離がその厚みの分だけ狭くなったことと等価であると考えることができます。
この設問における重要なポイント
- 金属板の挿入は、その厚さの分だけ極板間隔が減少する効果をもたらす。
- 金属板を挿入する位置によらず、結果は同じになる。
具体的な解説と立式
元のコンデンサーの極板の面積を\(S\)、極板間隔を\(d\)、真空の誘電率を\(\epsilon_0\)とすると、その電気容量\(C\)は、
$$ C = \epsilon_0 \frac{S}{d} $$
と表せます。
ここに厚さ\(d/2\)の金属板を挿入すると、電界が存在する空間の合計の厚さは \(d – d/2 = d/2\) となります。したがって、求める電気容量\(C’\)は、極板間隔が\(d/2\)になったコンデンサーの容量と考えることができます。
$$ C’ = \epsilon_0 \frac{S}{d/2} $$
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
$$
\begin{aligned}
C’ &= \epsilon_0 \frac{S}{d/2} \\[2.0ex]&= 2 \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) \\[2.0ex]&= 2C
\end{aligned}
$$
コンデンサーの間に金属の板を入れると、その金属板の厚みの分だけ、プラス極板とマイナス極板が実質的に近づいたのと同じ効果になります。この問題では、間隔の半分の厚さの金属板を入れたので、極板間の距離が半分になったと考えられます。電気容量は距離に反比例するので、距離が半分になれば容量は2倍になります。
求める電気容量は\(2C\)となります。金属板は導体なので、挿入する位置が中央でも、どちらかの極板に接していても、電界が存在する空間の合計の厚みは変わらないため、結果は同じになります。
問(2)
思考の道筋とポイント
極板の面積を半分に分けて、片方に誘電体を満たす場合、これは2つの異なるコンデンサーが「並列接続」されていると見なすことができます。なぜなら、左右の領域で極板間の電位差(電圧)が共通になるからです。
この設問における重要なポイント
- 面積の分割は、コンデンサーの「並列接続」と等価である。
- 並列接続の合成容量は、各コンデンサーの容量の和で求められる。
具体的な解説と立式
このコンデンサーは、以下の2つのコンデンサーが並列に接続されたものと考えることができます。
- コンデンサーA(真空部分): 面積が\(S/2\)、間隔が\(d\)。その容量\(C_A\)は、
$$ C_A = \epsilon_0 \frac{S/2}{d} = \frac{1}{2} \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) = \frac{1}{2}C $$ - コンデンサーB(誘電体部分): 面積が\(S/2\)、間隔が\(d\)、比誘電率が\(\epsilon_r\)。その容量\(C_B\)は、
$$ C_B = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S/2}{d} = \frac{\epsilon_r}{2} \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) = \frac{\epsilon_r}{2}C $$
求める電気容量\(C”\)は、これら2つの並列接続の合成容量なので、単純な和で計算できます。
$$ C” = C_A + C_B $$
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
- 誘電体を含むコンデンサーの容量: \(C_{\text{誘電体}} = \epsilon_r C_{\text{真空}}\)
- 並列接続の合成容量: \(C_{\text{合成}} = C_1 + C_2\)
$$
\begin{aligned}
C” &= \frac{1}{2}C + \frac{\epsilon_r}{2}C \\[2.0ex]&= \left( \frac{1+\epsilon_r}{2} \right) C
\end{aligned}
$$
面積を半分に分けて考えるのは、2つのコンデンサーを横に並べてつなぐ「並列接続」と同じです。片方は真空のままのコンデンサー(容量は元の半分)、もう片方は誘電体が入ったコンデンサー(容量は元の\(\epsilon_r\)倍の、さらに半分)です。並列接続なので、全体の容量は2つの容量を単純に足し合わせることで求まります。
求める電気容量は \(\displaystyle\frac{1+\epsilon_r}{2}C\) となります。
問(3)
思考の道筋とポイント
極板の間隔を半分に分けて、片方に誘電体を満たす場合、これは2つの異なるコンデンサーが「直列接続」されていると見なすことができます。なぜなら、もしコンデンサーに電荷を蓄えると、一方のコンデンサーの極板と他方のコンデンサーの極板が向かい合う面には、同じ大きさで逆符号の電荷が誘導され、結果として各コンデンサーを通過する電気量が等しくなるからです。
この設問における重要なポイント
- 間隔の分割は、コンデンサーの「直列接続」と等価である。
- 直列接続の合成容量は、各コンデンサーの容量の逆数の和の、さらに逆数で求められる。
具体的な解説と立式
このコンデンサーは、以下の2つのコンデンサーが直列に接続されたものと考えることができます。
- コンデンサーA(真空部分): 面積が\(S\)、間隔が\(d/2\)。その容量\(C_A\)は、
$$ C_A = \epsilon_0 \frac{S}{d/2} = 2 \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) = 2C $$ - コンデンサーB(誘電体部分): 面積が\(S\)、間隔が\(d/2\)、比誘電率が\(\epsilon_r\)。その容量\(C_B\)は、
$$ C_B = \epsilon_r \epsilon_0 \frac{S}{d/2} = 2\epsilon_r \left( \epsilon_0 \frac{S}{d} \right) = 2\epsilon_r C $$
求める電気容量\(C”’\)は、これら2つの直列接続の合成容量なので、逆数の和の公式を使います。
$$ \frac{1}{C”’} = \frac{1}{C_A} + \frac{1}{C_B} $$
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon_0 \frac{S}{d}\)
- 誘電体を含むコンデンサーの容量: \(C_{\text{誘電体}} = \epsilon_r C_{\text{真空}}\)
- 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C”’} &= \frac{1}{2C} + \frac{1}{2\epsilon_r C} \\[2.0ex]&= \frac{\epsilon_r + 1}{2\epsilon_r C}
\end{aligned}
$$
したがって、この逆数をとって\(C”’\)を求めます。
$$ C”’ = \frac{2\epsilon_r C}{1+\epsilon_r} $$
間隔を半分に分けて考えるのは、2つのコンデンサーを縦にまっすぐつなぐ「直列接続」と同じです。片方は真空のコンデンサー(距離が半分なので容量は2倍)、もう片方は誘電体が入ったコンデンサー(こちらも距離が半分で、さらに誘電率の分だけ容量が増える)です。直列接続の容量は、それぞれの容量の逆数を足し算し、最後にその結果をもう一度ひっくり返す(逆数をとる)という、少し面倒な計算で求まります。
求める電気容量は \(\displaystyle\frac{2\epsilon_r}{1+\epsilon_r}C\) となります。誘電体を挿入する位置が中央でも、どちらかの極板に接していても、直列接続であることに変わりはないため、結果は同じになります。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 挿入方法と等価回路モデルの対応
- 核心: コンデンサーの極板間に物体を挿入する問題は、その挿入の仕方によって「2つのコンデンサーの合成容量」の問題に置き換えることができます。どの接続(直列・並列)に対応するのかを正しく見抜くことが全てです。
- 理解のポイント:
- 金属板の挿入(問1): これは特殊ケースとして扱います。導体内部は電界が0で等電位になるため、金属板の厚さの分だけ極板間隔が実質的に狭くなったと見なすのが最も簡単です。
- 面積の分割(問2): 極板と垂直に仕切りを入れ、面積を分割するような挿入は「並列接続」と等価です。なぜなら、分割された各領域にかかる電圧(電位差)が共通になるためです。
- 間隔の分割(問3): 極板と平行に仕切りを入れ、間隔を分割するような挿入は「直列接続」と等価です。なぜなら、各領域を通過する電気量が等しくなる(電荷が次々と誘導されていく)ためです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 複合的な挿入: 面積と間隔の両方を分割するような複雑な挿入問題。例えば、面積の半分に、間隔の半分の厚さの誘電体を入れる場合など。この場合は、「まず面積で並列に分割し、その片方がさらに真空部分と誘電体部分の直列になっている」というように、段階的に合成容量を計算していきます。
- 挿入後の電荷・エネルギー計算: この問題で求めた容量を持つコンデンサーを、電池に接続したり、充電後に切り離したりする問題。これは例題73の知識との融合問題です。まず本問の方法で等価的な容量を求め、その上で「電圧\(V\)一定」か「電荷\(Q\)一定」かの条件を適用して、電荷やエネルギーを計算します。
- 誘電体に働く力: コンデンサーに誘電体を挿入する途中に働く力を求める問題。挿入した長さを\(x\)として、全体の静電エネルギー\(U(x)\)を\(x\)の関数で表し、仕事とエネルギーの関係(\(F = -\frac{dU}{dx}\))を用いて力を導出します。
- 初見の問題での着眼点:
- 挿入方向の確認: まず図を見て、物体が「面積を分割」しているのか、「間隔を分割」しているのかを判断します。これが並列か直列かを決める最初のステップです。
- 等価回路図を描く: 問題の状況を、複数のコンデンサーを組み合わせた回路図(等価回路)として自分で描き直します。「並列」なら横に並べ、「直列」なら縦に並べる。この一手間で、思考が整理され、適用すべき公式が明確になります。
- 各部分のパラメータを整理: 分割された各コンデンサーについて、「面積」「間隔」「比誘電率」が元のコンデンサーとどう違うのかを一つずつ正確に把握し、それぞれの容量を計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 並列接続と直列接続の混同:
- 誤解: 面積の分割(図b)を直列、間隔の分割(図c)を並列と考えてしまう。
- 対策: 「電圧が共通なら並列、電気量が共通なら直列」という原理に立ち返ることが重要です。極板に電池をつないだ状態を想像し、面積分割では左右の領域にかかる電圧は等しい(→並列)、間隔分割では電荷がリレーのように伝わっていくので電気量が等しい(→直列)、という物理的イメージを持つと間違いにくくなります。
- 金属板と誘電体の扱いの混同:
- 誤解: (1)の金属板の挿入を、(3)の誘電体の挿入と同じように直列接続として考えてしまい、混乱する。
- 対策: 「金属板(導体)は特別」と区別して覚えるのが最も安全です。「導体内部は電界ゼロで等電位 → その空間はショートカットされたのと同じ → 結果として極板間隔が狭まる効果」と、シンプルに考えるのが高校物理の範囲では適切です。
- 直列接続の合成容量の計算ミス:
- 誤解: (3)で、各容量の逆数の和 \(\frac{1}{C”’} = \frac{1}{C_A} + \frac{1}{C_B}\) を計算しただけで満足し、最後にその結果をもう一度逆数にするのを忘れてしまう。
- 対策: 直列接続の計算は「逆数の和を計算して、最後にひっくり返す」と一連の操作として覚える。計算後に必ず「逆数にしたか?」と指差し確認する癖をつける。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 並列接続モデルの選択(問2)
- 選定理由: 極板に電圧\(V\)をかけると、真空部分と誘電体部分は、どちらも同じ電位差\(V\)の極板に接続されています。回路の定義上、複数の素子に共通の電圧がかかる接続は「並列接続」であるため、このモデルを選択します。
- 適用根拠: 全体に蓄えられる電荷\(Q”\)は、各部分の電荷の和 \(Q_A + Q_B\) です。\(Q=CV\)の関係を用いると、\(C”V = C_A V + C_B V\) となります。この式の両辺を\(V\)で割ることで、並列接続の合成容量の公式 \(C” = C_A + C_B\) が論理的に導かれます。
- 直列接続モデルの選択(問3)
- 選定理由: 上の極板に電荷\(+Q\)を蓄えると、静電誘導により、真空部分と誘電体部分の境界に電荷が偏り、最終的に下の極板には\(-Q\)の電荷が現れます。結果として、真空部分のコンデンサーと誘電体部分のコンデンサーを流れる(ように見える)電気量は等しくなります。電気量が共通な接続は「直列接続」であるため、このモデルを選択します。
- 適用根拠: 全体の電圧\(V\)は、各部分の電圧の和 \(V_A + V_B\) です。\(V=Q/C\)の関係を用いると、\(\frac{Q}{C”’} = \frac{Q}{C_A} + \frac{Q}{C_B}\) となります。この式の両辺を\(Q\)で割ることで、直列接続の合成容量の公式 \(\frac{1}{C”’} = \frac{1}{C_A} + \frac{1}{C_B}\) が論理的に導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 元の容量\(C\)を基準に計算する: 各問いで、分割された部分の容量を計算する際に、まず元のコンデンサーの容量\(C\)を用いて表す(例:(2)の真空部分は\(\frac{1}{2}C\)、誘電体部分は\(\frac{\epsilon_r}{2}C\))。これにより、式全体がシンプルになり、計算ミスを減らすことができます。
- 分数の通分を正確に: (3)の直列接続の計算 \(\frac{1}{C”’} = \frac{1}{2C} + \frac{1}{2\epsilon_r C}\) では、最小公分母が \(2\epsilon_r C\) であることを見抜き、正確に通分する。
- 逆数化の徹底確認: 直列接続の計算では、逆数の和を求めた後に、必ず最終的な答えとしてその逆数をとることを忘れない。これはこの種の計算で最も頻発するミスの一つです。
- 等価回路図の活用: 複雑に感じたら、必ず等価回路図を描く。図と式を対応させながら計算を進めることで、自分が何をしているのかを見失わずに済みます。
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