245 反射の法則
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、ホイヘンスの原理を用いて、波の反射において入射角と反射角が等しくなる「反射の法則」を、作図と幾何学的な考察によって証明する過程を穴埋め形式で問うものです。物理法則の根本的な導出プロセスを理解しているかが試されます。
- ホイヘンスの原理に基づく、反射の法則の導出過程(文章と図)
- 波の速さ: \(v\)
- 点Bが点B’に達するまでの時間: \(t\)
- 入射角: \(i = \angle\text{BAB’}\)
- 文章中の空欄①〜④に当てはまる適切な語句、式、または記号。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ホイヘンスの原理を用いた反射の法則の導出」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ホイヘンスの原理: 波面上の各点が新しい波源(素元波)となり、それらの波の共通接線が次の波面を形成するという考え方。
- 素元波: 波面上の各点から発生する二次的な球面波(あるいは円形波)。
- 波の伝播: 波は速さ\(v\)で進み、時間\(t\)の間に\(vt\)の距離を進む。
- 幾何学(三角形の合同): 反射の法則を証明するための数学的な道具。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、問題文と図を照らし合わせ、ホイヘンスの原理による作図のプロセスを順に追っていきます。
- 次に、各空欄について、物理法則や幾何学的な関係から、最も適切な語句や式を導き出します。
問(1) 空欄①について
思考の道筋とポイント
ホイヘンスの原理の最も基本的な用語を問う問題です。波面上の各点から次々と発生し、次の波面を形成する元となる波が何と呼ばれるかを理解しているかがポイントです。
この設問における重要なポイント
- ホイヘンスの原理では、ある瞬間の波面上のすべての点が、それぞれを中心とする新しい波を出す「波源」になると考えます。
- この新しい波源から発生する波を「素元波(そげんは)」または「二次波」と呼びます。
具体的な解説と立式
問題文の「Aに近いほうから順に①波が出ていく」という記述は、ホイヘンスの原理そのものを説明しています。波面が媒質の各点に到達すると、その点が新たな波源となり、そこから球面状(あるいは円状)の波が広がっていきます。この個々の波のことを「素元波」と呼びます。
使用した物理公式
- (物理用語の定義)
(なし)
波の面が壁にぶつかると、ぶつかった点から次々と新しい小さな波が生まれていく、と考えるのがホイヘンスの原理です。この「新しい小さな波」のことを物理用語で「素元波」と呼びます。
したがって、空欄①には「素元」が入ります。
問(2) 空欄②について
思考の道筋とポイント
点Aから出た素元波が、ある時間\(t\)の間に進む距離を求める問題です。波の速さが与えられているので、基本的な「距離・速さ・時間」の関係を用います。
この設問における重要なポイント
- 波は、媒質中を一定の速さ\(v\)で伝わります。
- 距離、速さ、時間の関係式は「距離 = 速さ × 時間」です。
具体的な解説と立式
問題文によると、入射波の波面上の点Bが反射面上の点B’に到達するのにかかる時間が\(t\)です。この時間\(t\)の間に、点Aで発生した素元波も、同じ速さ\(v\)で周囲に広がっていきます。素元波は円形(または球状)に広がるため、その半径は波が進んだ距離に等しくなります。
使用した物理公式
- 距離 = 速さ × 時間
$$
\begin{aligned}
\text{半径} &= \text{速さ} \times \text{時間} \\[2.0ex]&= v \times t \\[2.0ex]&= vt
\end{aligned}
$$
点Bが点B’まで進むのにかかった時間と、点Aから新しい波(素元波)が広がっていく時間は同じ\(t\)です。波の速さは\(v\)なので、時間\(t\)の間に進む距離は「速さ\(v\) × 時間\(t\)」、つまり\(vt\)となります。これが、点Aを中心として広がる素元波の円の半径になります。
したがって、空欄②には「\(vt\)」が入ります。
問(3) 空欄③について
思考の道筋とポイント
反射角\(i’\)が、図中のどの角で表現されるかを特定する問題です。入射角\(i\)の定義 \(i=\angle\text{BAB’}\) を参考に、反射角も同様の形式で表現します。
この設問における重要なポイント
- 入射角・反射角は、本来は「波の進行方向」と「面の法線」とのなす角です。
- 幾何学的には、「波面」と「面」とのなす角とも等しくなります。
- この問題では、特定の三角形の角として定義されています。
具体的な解説と立式
まず、反射角\(i’\)の基本的な定義を確認します。図において、反射角\(i’\)は、点Aにおける反射波の進行方向(波面A’B’に垂直な方向)と、反射面の法線(反射面に垂直な破線)とのなす角として示されています。
次に、この角\(i’\)が、三角形のどの角に等しいかを幾何学的に考えます。
反射波の波面はA’B’、反射面はAB’です。この2つの線分のなす角は∠AB’A’です。
点A’において、半径AA’と接線A’B’は垂直なので、∠AA’B’ = 90°です。
直角三角形△AA’B’において、∠B’AA’ + ∠AB’A’ = 90° です。
一方、反射波の進行方向は波面A’B’に垂直であり、法線は反射面AB’に垂直です。「2つの直線がなす角は、それぞれの直線の法線がなす角に等しい」という幾何学的な性質から、反射角\(i’\)は、波面A’B’と反射面AB’のなす角に等しくなります。
したがって、反射角\(i’\)は∠AB’A’と等しくなります。
使用した物理公式
- (なし。幾何学的な考察)
(なし)
入射角が図中の特定の角 \(\angle\text{BAB’}\) で表されているのと同様に、反射角も図中の角で表すことを考えます。図形をよく見ると、反射波の進行方向と法線のなす角\(i’\)は、反射波の波面A’B’と反射面AB’のなす角 \(\angle\text{AB’A’}\) と等しいことがわかります。
したがって、空欄③には「∠AB’A’」が入ります。
問(4) 空欄④について
思考の道筋とポイント
反射の法則 \(i=i’\) を証明するために、2つの三角形がどのような関係にあるかを答える問題です。辺の長さなどを比較し、三角形の合同条件を適用して結論を導きます。
この設問における重要なポイント
- 証明のゴールは \(i=i’\)、すなわち \(\angle\text{BAB’} = \angle\text{AB’A’}\) を示すことです。
- この2つの角を含む2つの三角形を見つけ、それらが合同であることを示します。
- 直角三角形の合同条件「斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい」を利用します。
具体的な解説と立式
反射の法則 \(i=i’\) を証明するため、図中の2つの三角形に着目します。問題文では「△A’AB’と△BB’A」とありますが、これは頂点の順序が一般的でなく、比較対象が分かりにくいため、図形的に対応関係が明確な △B’AA’ と △AB’B を比較して考えます。
- 辺の長さの比較:
- 辺AA’は、点Aから出た素元波が時間\(t\)で進む距離なので、その長さは \(AA’ = vt\) です。
- 辺BB’は、点Bにいた波が点B’に到達するまでの距離で、時間\(t\)、速さ\(v\)で進むので、その長さは \(BB’ = vt\) です。
- よって、\(AA’ = BB’\) となります。
- 辺AB’は、2つの三角形で共通の辺です。
- 角度の比較:
- ∠B’A’A: 点Aを中心とする円と、点B’からの接線A’B’の接点がA’なので、半径AA’と接線は垂直に交わります。よって、∠B’A’A = 90°です。
- ∠ABB’: 波の進行方向(線分BB’の方向)と、その波の波面(線分AB)は常に垂直です。よって、∠ABB’ = 90°です。
- 合同の証明:
- 以上のことから、△B’AA’と△AB’Bは、共に直角三角形です。
- 斜辺AB’が共通です。
- 他の一辺が \(AA’ = BB’ = vt\) で等しいです。
- 「直角三角形において、斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい」という合同条件を満たすため、△B’AA’と△AB’Bは合同です。
使用した物理公式
- (なし。三角形の合同条件)
(なし)
反射の法則(入射角=反射角)を証明するために、図の中に隠れている2つの直角三角形(△B’AA’と△AB’B)を見つけます。この2つの三角形は、(1)斜辺の長さが共通で、(2)もう一つの辺の長さがどちらも\(vt\)で等しい、という条件を満たします。したがって、この2つの三角形は形も大きさも全く同じ「合同」であると言えます。
したがって、空欄④には「合同」が入ります。2つの三角形が合同であるため、対応する角は等しくなり、\(\angle\text{BAB’} = \angle\text{AB’A’}\)、すなわち \(i=i’\) が成立することが証明されます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ホイヘンスの原理:
- 核心: 波の伝播を説明するための基本原理です。「波面上の各点が、それぞれ新しい波源(素元波)となり、それらの無数の素元波に共通して接する面(包絡面)が、次の瞬間の新しい波面となる」という考え方です。この原理によって、波の直進、反射、屈折、回折といったすべての現象を統一的に説明できます。
- 理解のポイント: この問題では、反射面上の点Aに到達した波が素元波を出し、その素元波が広がる様子と、遅れて点B’に到達した波面とを組み合わせることで、反射波の新しい波面A’B’が作図されています。この作図プロセスそのものがホイヘンスの原理の応用です。
- 波の基本性質(距離=速さ×時間):
- 核心: 波が媒質中を一定の速さ\(v\)で伝播するという性質です。これにより、時間\(t\)が経過した後に波が進む距離は\(vt\)と計算できます。
- 理解のポイント: この問題では、点Bの波が点B’に到達する時間\(t\)の間に、点Aから出た素元波が広がる半径を\(vt\)と計算するために用いられています。これが、反射の法則を幾何学的に証明する上での重要な辺の長さを与えています。
- 三角形の合同条件(幾何学):
- 核心: 物理法則である反射の法則(\(i=i’\))を、数学的な厳密さで証明するための道具です。
- 理解のポイント: 物理現象を作図した結果、2つの直角三角形(△B’AA’と△AB’B)が現れます。これらの三角形が「斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい」という合同条件を満たすことを示すことで、対応する角である入射角\(i\)と反射角\(i’\)が等しいことを論理的に導き出します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 屈折の法則の導出: この問題と全く同じアプローチで、屈折の法則も証明できます。違いは、反射面が媒質の境界面になり、境界面を通過した後の波の速さが\(v_2\)に変わる点です。これにより、2つの三角形は合同にはなりませんが、辺の比の関係から \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) という関係式を導出できます。
- 回折現象の説明: 狭いスリットを通過した波が、スリットの向こう側で円形に広がっていく現象も、スリットを一つの素元波の波源と考えることで、ホイヘンスの原理から説明されます。
- 初見の問題での着眼点:
- 波面の動きを時間追跡する: ホイヘンスの原理を扱う問題では、波面上の代表的な2点(この問題ではAとB)の動きを時間\(t\)の間、追いかけることが基本です。
- 「時間」を共通の媒介変数とする: 一方の点が移動する時間と、もう一方の点から素元波が広がる時間は等しい、という関係が鍵になります。この共通の時間\(t\)を使って、各部が進む距離(\(v_1t\), \(v_2t\)など)を計算します。
- 図形的な関係性を見抜く: 作図した結果できあがる図形(多くは直角三角形)に着目し、辺の長さや角度の関係を三角比や合同・相似の知識を使って解き明かします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 入射角・反射角の定義の混同:
- 誤解: 入射角や反射角を、「波面」と「法線」の間の角や、「進行方向」と「面」の間の角と勘違いしてしまう。
- 対策: 角度の定義は「波の進行方向と、面の法線とのなす角」であることを常に意識しましょう。ただし、幾何学的な関係から「波面と、面そのものとのなす角」に等しくなることも理解しておくと、作図問題では非常に便利です。この問題では、後者の定義(\(i=\angle\text{BAB’}\))が使われています。
- 三角形の対応関係の間違い:
- 誤解: 合同な三角形を比較する際に、対応する頂点や辺、角を取り違えてしまう。問題文の表記「△A’AB’と△BB’A」は頂点の対応が分かりにくく、混乱の原因になり得ます。
- 対策: 自分で図を描き直し、対応する頂点の順序を揃えて(例:△B’AA’と△AB’B)考える習慣をつけましょう。斜辺、直角、そして計算で求めた辺(\(vt\))がそれぞれどの部分に対応するのかを明確に意識することで、ミスを防げます。
- 素元波の半径の誤認:
- 誤解: 素元波の半径を、何となく与えられた辺の長さ(AB’など)と勘違いしてしまう。
- 対策: 素元波の半径は、あくまで「波が広がった距離」です。必ず「速さ×時間」で計算される物理量であることを徹底しましょう。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 波面を「兵士の列」でイメージする: 入射波の波面ABを、横一列に並んで行進する兵士の列だと想像します。反射面AB’は、彼らが向きを変えるべき壁です。
- まず、列の左端の兵士Aが壁に到達します。彼はその場で方向転換を開始します(素元波の発生)。
- その間も、列の右側の兵士たちはまだ前進を続けています。右端の兵士Bが壁のB’点に到達した瞬間を考えます。
- 兵士BがBからB’まで進むのにかかった時間と、兵士Aが方向転換して新しい方向に進んだ時間は同じです。
- 最終的に、壁に到達した兵士たちが作る新しい列の向き(反射波の波面A’B’)が決まります。このイメージは、時間の経過と各点の動きを直感的に理解するのに役立ちます。
- 波面を「兵士の列」でイメージする: 入射波の波面ABを、横一列に並んで行進する兵士の列だと想像します。反射面AB’は、彼らが向きを変えるべき壁です。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 垂直関係を明確に描く: 「波の進行方向と波面は垂直」「半径と接線は垂直」といった、図の中の90°になる箇所を直角記号で明記することが極めて重要です。これが直角三角形を見つけるための最大のヒントになります。
- 等しい長さを明記する: 計算によって等しいと分かった辺(AA’とBB’)には、同じ印(チョンチョンなど)を付けると、合同条件が一目で分かるようになります。
- 角度を正しく記入する: 入射角\(i\)と反射角\(i’\)が、図形のどの部分に対応するのかを正確に書き込みましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ホイヘンスの原理:
- 選定理由: この問題は、反射の法則というマクロな現象を、波の基本的な性質というミクロな視点から説明・証明することが目的だからです。ホイヘンスの原理は、そのための唯一無二の理論的道具です。
- 適用根拠: 波の伝播に関するあらゆる現象(反射、屈折、回折)の根源的なモデルとして確立されている原理です。
- 距離 = 速さ × 時間 (\(L=vt\)):
- 選定理由: ホイヘンスの原理に基づいて作図する際、素元波が広がる半径や、波面が移動する距離を具体的に決定する必要があるため。
- 適用根拠: 等速直線運動における最も基本的な関係式であり、波の伝播にもそのまま適用できます。
- 三角形の合同条件:
- 選定理由: 最終的に証明したいのが「角度が等しい(\(i=i’\))」ことであるため、その角度を含む2つの図形が同じ形・大きさであること(合同)を示せば、結論を導けるからです。
- 適用根拠: ユークリッド幾何学における基本的な定理であり、図形の性質を論理的に証明するための数学的なツールです。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1)〜(4) 穴埋めの論理フロー:
- ① 素元波の特定: ホイヘンスの原理の定義から、波面上の各点から出る波は「素元波」であると特定する。
- ② 半径の計算: 点BがB’に達する時間\(t\)と、波の速さ\(v\)から、点Aから出た素元波の半径(進んだ距離)は\(vt\)であると計算する。
- ③ 反射角の特定: 反射角\(i’\)の定義(進行方向と法線のなす角)と、図形的な関係(波面と面のなす角)から、\(i’ = \angle\text{AB’A’}\) であると特定する。
- ④ 合同の証明: 2つの直角三角形(△B’AA’と△AB’B)に着目する。
- 斜辺AB’が共通。
- 他の一辺が AA’ = BB’ = \(vt\) で等しい。
- 直角三角形の合同条件を満たすため、2つの三角形は「合同」であると結論づける。
- 結論: 合同な図形の対応する角は等しいので、\(i=i’\)が成立する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題は計算を含まないが、類似問題(屈折の法則)への応用を考える:
- 文字式のまま計算を進める: 屈折の法則を導く際は、\(\sin i = \displaystyle\frac{BB’}{AB’} = \frac{v_1 t}{AB’}\) や \(\sin r = \displaystyle\frac{AA’}{AB’} = \frac{v_2 t}{AB’}\) のように、各要素を文字で表現します。
- 比を取って不要な文字を消去する: 上記の2つの式の比を取ることで、共通の辺AB’や時間\(t\)が消去され、\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) という本質的な関係式だけが残ります。途中で数値を代入せず、最後にまとめて整理するのが、見通しを良くし、ミスを減らすコツです。
- 定義の正確な理解: この問題では、計算ミスよりも「素元波」「入射角」といった物理用語や幾何学的な定義の誤解がミスの原因となります。言葉の定義を一つ一つ正確に覚えることが、結果的に正解への近道です。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) 素元波: ホイヘンスの原理を説明する文脈で「素元波」という言葉が出てくるのは、極めて自然であり、妥当です。
- (2) vt: 半径は距離の次元を持つ必要があります。速さ\(v\) [m/s] と時間\(t\) [s] の積\(vt\)は、単位が [m] となり、距離を表す量として妥当です。
- (3) ∠AB’A’: 入射角が波面と面のなす角で定義されているため、反射角も同様に反射波の波面と面のなす角で表現されるはずだ、という類推が働き、妥当な答えだと判断できます。
- (4) 合同: もし2つの三角形が合同でなければ、角度が等しいという結論は導けません。反射の法則を証明するという目的から逆算しても、「合同」という結論は論理的に必須であり、妥当です。
- 思考プロセスの自己検証:
- ホイヘンスの原理から出発し、作図を行い、幾何学的な証明を経て、最終的に反射の法則という既知の法則を導き出せました。この一連の流れに論理的な飛躍や矛盾がないかを確認することで、自分の理解の確かさを検証できます。「なぜこの手順で証明できるのか?」を自分の言葉で説明できるかどうかが、理解度を測る良いバロメーターになります。
246 波の屈折
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、水面波が水深の異なる領域に進む際の「屈折」現象を扱っています。与えられた図と条件から、波の基本的な性質(周期、波長、速さ)がどのように変化するかを、屈折の法則と関連付けて解き明かす能力が問われます。
- 水深9.0mの領域から浅瀬へ進む波の様子(図)
- 水深9.0m領域の波面と境界面のなす角: \(60^\circ\)
- 浅瀬の波面と境界面のなす角: \(30^\circ\)
- 点P(水深9.0m領域)での周期: \(T = 2.0 \text{ s}\)
- 波の速さ\(v\)は、水深\(h\)の平方根に比例する (\(v \propto \sqrt{h}\))。
- (1) 点Q(浅瀬)での周期。
- (2) 浅瀬での波長は、入射波の波長の何倍か。
- (3) 浅瀬の水深。
- (4) 遠浅の海岸で、波が海岸線と平行に打ち寄せる理由の説明。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「水面波の屈折と、水深による速さの変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の屈折の基本法則: 波が異なる媒質に進むとき、振動数(周期)は変化しないが、速さと波長は変化する。
- 屈折の法則: 入射角を\(i\)、屈折角を\(r\)、各領域での波の速さを\(v_1, v_2\)、波長を\(\lambda_1, \lambda_2\)とすると、\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) が成り立つ。
- 角度の定義: 入射角・屈折角は「波の進行方向」と「境界面の法線」のなす角であるが、これは「波面」と「境界面」のなす角に等しい。
- 問題固有の条件: 波の速さ\(v\)は、水深\(h\)の平方根に比例する (\(v \propto \sqrt{h}\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、屈折現象で不変な量(周期)について答えます(問1)。
- 次に、図から入射角と屈折角を読み取り、屈折の法則を用いて波長の変化率を計算します(問2)。
- 屈折の法則と、与えられた速さと水深の関係式を組み合わせて、浅瀬の水深を求めます(問3)。
- 最後に、水深がゼロに近づく極限状況を考え、屈折の法則を適用して現象を説明します(問4)。
問(1)
思考の道筋とポイント
波が屈折するとき、変化する物理量と変化しない物理量を正しく理解しているかを問う、基本的な問題です。波の周期や振動数は、波を発生させている波源の振動によって決まる量です。
この設問における重要なポイント
- 波が異なる媒質へ進む(屈折する)とき、波を送り出している波源の振動は変わらないため、振動数\(f\)は一定に保たれます。
- 周期\(T\)は振動数\(f\)の逆数 (\(T = \displaystyle\frac{1}{f}\)) なので、振動数が一定ならば周期も一定です。
- 一方で、媒質の性質が変わると波の伝わる速さ\(v\)が変化し、関係式 \(v=f\lambda\) にしたがって波長\(\lambda\)も変化します。
具体的な解説と立式
点Pは水深\(9.0 \text{ m}\)の領域、点Qは浅瀬の領域にあり、波はPからQの方向へ屈折しながら進みます。このとき、波の振動数\(f\)は変化しません。
周期\(T\)と振動数\(f\)の関係は \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\) です。
点Pでの周期を\(T_P\)、点Qでの周期を\(T_Q\)とすると、振動数が変化しないため、周期も変化しません。
$$ T_Q = T_P $$
使用した物理公式
- 屈折における振動数・周期の不変性
与えられた点Pでの周期は \(T_P = 2.0 \text{ s}\) です。
したがって、点Qでの周期は、
$$ T_Q = 2.0 \text{ [s]} $$
波が深いところから浅いところへ進んでも、波が1秒間に振動する回数(振動数)は変わりません。したがって、1回の振動にかかる時間(周期)も変わることはありません。点Pで周期が2.0秒なら、点Qでも同じく2.0秒です。
点Qで観測される周期は \(2.0 \text{ s}\) です。
問(2)
思考の道筋とポイント
屈折の法則を用いて、浅瀬での波長が入射してきた波長の何倍になるかを計算します。そのためには、まず図から入射角と屈折角を正しく読み取ることが第一歩です。
この設問における重要なポイント
- 角度の特定: 入射角\(i\)と屈折角\(r\)は、それぞれ「波面」と「境界面」のなす角として図から読み取れます。
- 入射角 \(i\): 水深9.0m領域の波面と境界面のなす角なので、\(i = 60^\circ\)。
- 屈折角 \(r\): 浅瀬の波面と境界面のなす角なので、\(r = 30^\circ\)。
- 屈折の法則: 波長と角度の関係は \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) で与えられます。ここで\(\lambda_1\)が水深9.0mでの波長、\(\lambda_2\)が浅瀬での波長です。
具体的な解説と立式
水深\(9.0 \text{ m}\)の領域(媒質1)と浅瀬(媒質2)の境界面で波が屈折します。
図より、入射角\(i\)と屈折角\(r\)は、
$$ i = 60^\circ $$
$$ r = 30^\circ $$
と読み取れます。
水深\(9.0 \text{ m}\)での波長を\(\lambda_1\)、浅瀬での波長を\(\lambda_2\)とすると、屈折の法則より以下の関係が成り立ちます。
$$ \frac{\lambda_1}{\lambda_2} = \frac{\sin i}{\sin r} $$
求めたいのは「浅瀬における波の波長(\(\lambda_2\))が、境界に入射してきた波の波長(\(\lambda_1\))の何倍か」なので、\(\displaystyle\frac{\lambda_2}{\lambda_1}\)の値を計算します。
$$ \frac{\lambda_2}{\lambda_1} = \frac{\sin r}{\sin i} $$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\)
上記の式に値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda_2}{\lambda_1} &= \frac{\sin 30^\circ}{\sin 60^\circ} \\[2.0ex]&= \frac{1/2}{\sqrt{3}/2} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{3}}{3} \\[2.0ex]&\approx \frac{1.732}{3} \\[2.0ex]&\approx 0.577…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(0.58\)倍となります。
波が浅瀬に入ると、進行方向が変わり(屈折し)、波長も変化します。波長の比は、入射角と屈折角のサイン(\(\sin\))の比に等しくなります。図から角度を読み取り、三角関数の値を代入して計算することで、浅瀬の波長が元の波長の何倍になるかが分かります。
浅瀬における波の波長は、入射してきた波の波長の\(0.58\)倍です。波は速さが遅くなる浅瀬に入るため、波長が短くなるという物理的な直感とも一致する結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
波の速さが水深の平方根に比例するという条件と、屈折の法則を結びつけて、浅瀬の水深を求めます。
この設問における重要なポイント
- 速さと水深の関係: 問題文より \(v = k\sqrt{h}\)(\(k\)は比例定数)。
- 屈折の法則: 速さと角度の関係は \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) で与えられます。ここで\(v_1\)が水深9.0mでの速さ、\(v_2\)が浅瀬での速さです。
具体的な解説と立式
水深\(9.0 \text{ m}\)の領域を添字1、浅瀬を添字2で表します。
水深は \(h_1 = 9.0 \text{ m}\)、求めたい水深は \(h_2\) です。
波の速さは \(v_1 = k\sqrt{h_1}\)、\(v_2 = k\sqrt{h_2}\) と書けます。
屈折の法則より、
$$ \frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin i}{\sin r} $$
この2つの関係式を組み合わせます。
$$ \frac{k\sqrt{h_1}}{k\sqrt{h_2}} = \frac{\sin i}{\sin r} $$
比例定数\(k\)は消去できるので、
$$ \sqrt{\frac{h_1}{h_2}} = \frac{\sin i}{\sin r} $$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 問題の条件: \(v = k\sqrt{h}\)
(2)と同様に、\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{\sin 60^\circ}{\sin 30^\circ} = \sqrt{3}\) です。
したがって、
$$ \sqrt{\frac{h_1}{h_2}} = \sqrt{3} $$
両辺を2乗します。
$$ \frac{h_1}{h_2} = 3 $$
この式を \(h_2\) について解き、\(h_1 = 9.0 \text{ m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
h_2 &= \frac{h_1}{3} \\[2.0ex]&= \frac{9.0}{3} \\[2.0ex]&= 3.0 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
波の速さの比は、水深の平方根の比に等しくなります。また、速さの比は屈折の角度から計算できます。この2つの関係を結びつけることで、未知の浅瀬の水深を計算することができます。
浅瀬の水深は \(3.0 \text{ m}\) です。水深が浅くなっていることは物理的に妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
遠浅の海岸では、水深が岸に近づくにつれて連続的に、そして最終的にはゼロになる、という状況を考えます。この連続的な屈折の果てに、波の進行方向と波面がどうなるかを、屈折の法則の極限状態として説明します。
この設問における重要なポイント
- 遠浅の海岸では、岸に近づくほど水深\(h\)はゼロに近づきます。
- それに伴い、波の速さ\(v\)もゼロに近づきます (\(v \propto \sqrt{h}\) のため)。
- 屈折の法則 \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) を、\(v_2 \to 0\) となる極限で考えます。
具体的な解説と立式
遠浅の砂浜では、海岸線に近づくにつれて水深\(h\)が連続的に小さくなり、最終的に \(h \to 0\) となります。
波の速さは水深の平方根に比例するため、水深がゼロに近づくと、波の速さ\(v\)もゼロに近づきます (\(v \to 0\))。
沖から岸へ向かう波を考え、ある水深の領域(速さ\(v_1\))から、それより岸に近い領域(速さ\(v_2\))へ波が進むときの屈折を考えます。屈折の法則は、
$$ \frac{\sin r}{\sin i} = \frac{v_2}{v_1} $$
と書けます。ここで \(i\) は入射角、\(r\) は屈折角です。
海岸線のごく近くでは、波の速さ \(v_2\) はほぼゼロになります (\(v_2 \to 0\))。
したがって、
$$ \frac{\sin r}{\sin i} \to 0 $$
\(\sin i\) は有限の値なので、この式が成り立つためには \(\sin r \to 0\) でなければなりません。
これは、屈折角 \(r\) が \(0^\circ\) に近づくことを意味します。
屈折角は、波の進行方向と海岸線(境界面)の法線とのなす角です。この角が\(0^\circ\)になるということは、波の進行方向が法線と一致する、つまり海岸線に対して垂直になるということです。
波面は常に波の進行方向と垂直なので、進行方向が海岸線に垂直ならば、波面は海岸線と平行になります。
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 問題の条件: \(v \propto \sqrt{h}\)
(定性的な説明のため、なし)
波は、水深が浅い場所ほど進むのが遅くなる性質があります。遠浅の海岸では、岸に近づくほどどんどん水深が浅くなるため、波は連続的に進行方向を曲げられます。具体的には、より遅く進む岸の方向へ吸い寄せられるように曲がっていきます。その結果、沖でどんな方向から来た波も、最終的には海岸線に対してまっすぐ(垂直に)進むようになり、波の峰の連なり(波面)は海岸線と平行に打ち寄せることになります。
遠浅の海岸では、岸に近づくにつれて水深がゼロに近づくため、波の速さもゼロに近づく。屈折の法則により、屈折角がゼロに近づき、波の進行方向が海岸線に垂直になる。その結果、波面は海岸線と平行になる。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 屈折の法則:
- 核心: 波が速さの異なる領域へ進む際に、進行方向を変える現象を記述する法則です。入射角\(i\)と屈折角\(r\)の正弦(sin)の比が、各領域での波の速さの比、および波長の比に等しいという関係 (\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\)) がこの問題の全ての設問を解くための根幹となります。
- 理解のポイント: この法則は、速さ、波長、角度という、屈折によって変化する3つの物理量を一つの式で結びつけている点が重要です。どれか2つの関係が分かれば、残りの1つも導き出せます。
- 屈折における不変量(振動数・周期):
- 核心: 波が屈折しても、波源の振動数が変わらない限り、波の振動数\(f\)と周期\(T\)は一定に保たれます。これは波の最も基本的な性質の一つです。
- 理解のポイント: (1)で問われているのは、まさにこの性質です。速さや波長が変化する中で、何が変わらないのかを明確に区別することが重要です。
- 問題固有の条件(速さと水深の関係):
- 核心: この問題特有の条件として、「波の速さ\(v\)は水深\(h\)の平方根に比例する (\(v=k\sqrt{h}\))」という関係が与えられています。
- 理解のポイント: この関係式があることで、屈折の法則(速さの比)と水深(媒質の性質)を結びつけることが可能になります。(3)や(4)を解くための鍵となる、応用的な要素です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光の屈折: 空気中から水中へ、あるいはガラスへ光が進む問題は、この問題と全く同じ構造です。光の速さが媒質の屈折率\(n\)に反比例する (\(v=c/n\)) ことを利用して、屈折の法則を \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{n_2}{n_1}\) と変形して用います。
- 音の屈折: 温度によって音速が異なる空気中(例:日中の上空と地表付近)を音が進む問題も、同様に屈折現象として扱われます。温度と音速の関係式が、この問題での水深と速さの関係式に相当します。
- 初見の問題での着眼点:
- 角度の定義を正確に把握する: まず、入射角と屈折角がどこになるかを図から正確に読み取ります。「波面と境界面のなす角」が、定義である「進行方向と法線のなす角」と等しいことを利用するのが定石です。
- 不変量と変化量を整理する: 屈折現象において、何が一定で(振動数、周期)、何が変化するのか(速さ、波長、進行方向)を最初に明確にします。
- 与えられた条件式と屈折の法則を結びつける: 問題特有の条件(速さと水深、速さと温度など)が与えられていたら、それを屈折の法則 \(\displaystyle\frac{v_1}{v_2}\) の部分に代入することで、問題が解けるよう設計されています。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 入射角と屈折角の取り違え:
- 誤解: 図に複数の角度(\(60^\circ, 30^\circ\))が描かれていると、どちらが入射角でどちらが屈折角か、あるいは分子分母を逆にしてしまうミスが起こりがちです。
- 対策: 波が進んでいく方向を矢印で確認し、「入射側(媒質1)の角が入射角\(i\)」、「屈折後(媒質2)の角が屈折角\(r\)」という対応を徹底しましょう。屈折の法則の式 \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) の添字(1と2)が分子分母で対応していることを意識するのも有効です。
- 波長の比の計算ミス:
- 誤解: (2)で問われているのは \(\displaystyle\frac{\lambda_2}{\lambda_1}\) ですが、屈折の法則の式から \(\displaystyle\frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) を計算してしまい、逆数の答えを書いてしまう。
- 対策: 「何が」「何の」何倍か、という問題文を正確に読み取り、求めるべきが \(\displaystyle\frac{\lambda_2}{\lambda_1}\) なのか \(\displaystyle\frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) なのかを立式の段階で明確にしましょう。
- 平方根の扱い:
- 誤解: (3)で、\(\sqrt{\displaystyle\frac{h_1}{h_2}} = \sqrt{3}\) という式を立てた後、2乗するのを忘れたり、計算を間違えたりする。
- 対策: 根号を含む計算では、まず両辺を2乗して根号を外してから整理するのが基本です。計算プロセスを焦らず丁寧に行う習慣をつけましょう。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- ショッピングカートのイメージ: 平らな床(深い場所)から、絨毯(浅瀬)に斜めにショッピングカートを乗り入れる状況を想像します。
- まず片方の車輪が絨毯に乗ると、その車輪だけが急に遅くなります。
- もう片方の車輪はまだ速いままなので、カートは遅くなった車輪の側にぐいっと向きを変えます。
- これが屈折のメカニズムです。波面も同様に、先に浅瀬に入って遅くなった部分の方へ曲がっていきます。
- (4)の連続的な屈折のイメージ: 遠浅の海岸は、絨毯の毛足が岸に近づくほど長くなっていく(進みにくくなっていく)ようなものです。カートは岸に近づくにつれて連続的に向きを変え、最終的には絨毯の端に対してまっすぐ進むようになります。これが、波が海岸線に平行に打ち寄せる理由の直感的なイメージです。
- ショッピングカートのイメージ: 平らな床(深い場所)から、絨毯(浅瀬)に斜めにショッピングカートを乗り入れる状況を想像します。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 波の進行方向を矢印で描く: 波面(実線)に対して垂直な矢印を描き、波がどちらに進んでいるのかを明確にします。これにより、入射・屈折の区別が容易になります。
- 法線を描き加える: 境界面に垂直な法線(点線)を描き加えると、定義通りの入射角・屈折角がどこになるかを確認でき、ミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 周期・振動数の不変性:
- 選定理由: (1)で、屈折という現象における普遍的な性質を問われているため。
- 適用根拠: 波の周期・振動数は波源によって決定され、伝播する媒質には依存しないという、波の基本原理に基づきます。
- 屈折の法則 (\(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\)):
- 選定理由: (2)と(3)で、波の角度、速さ、波長、そして媒質の性質(水深)という複数の物理量の関係性を問われているため。これらの量を結びつける唯一の法則が屈折の法則です。
- 適用根拠: ホイヘンスの原理から導出される、波の屈折現象を定量的に記述する普遍的な法則です。
- 速さと水深の関係式 (\(v=k\sqrt{h}\)):
- 選定理由: (3)と(4)で、波の性質と媒質の物理量(水深)を直接結びつける必要があるため。
- 適用根拠: 問題文で与えられた、この実験状況における固有の経験則・関係式です。物理の入試問題では、このように問題固有の条件式が与えられることがよくあります。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 周期の計算:
- 戦略: 屈折で周期は不変であるという法則を適用する。
- フロー: ①屈折の前後で周期は変わらないことを確認 → ②点Pの周期がそのまま点Qの周期となる。
- (2) 波長の比の計算:
- 戦略: 図から角度を読み取り、屈折の法則を適用する。
- フロー: ①図から入射角\(i=60^\circ\)、屈折角\(r=30^\circ\)を特定 → ②屈折の法則 \(\displaystyle\frac{\lambda_2}{\lambda_1} = \frac{\sin r}{\sin i}\) を立式 → ③数値を代入して比を計算。
- (3) 水深の計算:
- 戦略: 屈折の法則と、速さと水深の関係式を連立させる。
- フロー: ①屈折の法則 \(\displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin i}{\sin r}\) と、条件式 \(\displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \sqrt{\frac{h_1}{h_2}}\) を用意 → ②2式を等しいとおき、\(\sqrt{\displaystyle\frac{h_1}{h_2}} = \frac{\sin i}{\sin r}\) を導出 → ③数値を代入して\(h_2\)を計算。
- (4) 現象の説明:
- 戦略: 水深がゼロに近づく極限を、屈折の法則を用いて考える。
- フロー: ①岸に近づくと\(h \to 0\)、よって\(v \to 0\)となることを確認 → ②屈折の法則 \(\sin r = \sin i \cdot \displaystyle\frac{v_2}{v_1}\) において、\(v_2 \to 0\) となるため \(\sin r \to 0\) となることを示す → ③\(r \to 0^\circ\) は、波の進行方向が海岸線に垂直になることを意味し、波面は海岸線と平行になると結論づける。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角関数の値の正確性: \(\sin 60^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\), \(\sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\) といった基本的な値を瞬時に、かつ正確に使えることが必須です。
- 分数の計算: \(\displaystyle\frac{1/2}{\sqrt{3}/2}\) のような繁分数の計算は、分母・分子に同じ数を掛けて(この場合は2を掛けて)簡略化するとミスが減ります。
- 有効数字の意識: 問題文で与えられている数値(2.0s, 9.0m)が2桁であることから、最終的な答えも有効数字2桁((2)の0.58倍、(3)の3.0m)で答える意識を持ちましょう。特に(3)で「3m」ではなく「3.0m」と答える点が重要です。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (2) 波長の比: 答えは\(0.58\)倍であり、1より小さい。波は速い媒質から遅い媒質(深い場所から浅い場所)に進むと波長が短くなる、という物理的直感と一致しており、妥当です。
- (3) 水深: 答えは\(3.0\text{ m}\)であり、元の水深\(9.0\text{ m}\)より浅くなっています。これも「浅瀬」という設定と矛盾せず、妥当です。
- 極端な場合を考える:
- もし、入射角\(i\)が\(0^\circ\)だったら(波が境界面に垂直に入射したら)、屈折の法則から \(\sin r = 0\)、つまり\(r=0^\circ\)となり、波は直進します。これは物理的に正しいです。
- もし、\(v_1=v_2\)だったら(水深が変わらなかったら)、屈折の法則から \(\sin i = \sin r\)、つまり\(i=r\)となり、これも波が直進することを示します。自分の立てた式が、このような自明な状況でも正しく成立するかを確認する(検算する)ことで、式の妥当性を吟味できます。
247 波の反射と干渉
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、一つの波源から出た波が壁で反射し、その反射波と直接波が干渉して定常波を作る状況を扱っています。特に、観測線分OB上で弱め合う点(節)がいくつ存在するかを問う問題です。
- 波源: O
- 波長: \(\lambda\)
- 波源Oと壁の間の距離(OA): \(3\lambda\)
- 観測線分OBの長さ: \(8\lambda\) (OBは壁と平行)
- 反射の条件: 位相は変わらない(自由端反射)
- 線分OB上(両端を含む)で、直接波と反射波が弱め合う点の個数。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この解説は、模範解答とは異なるアプローチで問題を解きます。模範解答は強め合う線(腹線)の数を数えてから弱め合う線(節線)の数を推定していますが、本解説では直接、弱め合いの条件式を用いて立式し、条件を満たす点の個数を求めます。この方がより直接的で、物理的な意味も明確になります。
- 解説の方針が模範解答と異なる点
- 模範解答: まず強め合いの条件を考え、点Oと点Bが何番目の腹線上に位置するかを計算し、その間にある腹線の数から節線の数を推定している。
- 本解説: 直接、弱め合いの条件式を立て、線分OB上でその条件を満たす整数がいくつ存在するかを調べる。
- この方針を取る理由
- 直接的で論理的: 問いで求められているのは「弱め合う点」の個数なので、弱め合いの条件式を直接用いる方が、思考のプロセスとして自然で分かりやすい。
- 応用が効く: この方法は、強め合い・弱め合いを問わず、あらゆる干渉問題に応用できる汎用性の高い解法である。
- 結果への影響
- 計算過程は模範解答と大きく異なりますが、最終的な答え(4個)は一致します。
この問題のテーマは「反射による波の干渉」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鏡像波源(仮想波源): 壁による反射波は、壁に対して波源と対称な位置にある「鏡像波源」から出た波とみなすことができます。これにより、問題を「2つの波源による干渉」として扱うことができます。
- 波の干渉条件: 2つの波源からの距離の差(経路差)が、波長の整数倍か半整数倍かによって、波が強め合うか弱め合うかが決まります。
- 強め合い(腹): 経路差 = \(m\lambda\) (\(m\)は整数)
- 弱め合い(節): 経路差 = \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m\)は整数)
- 反射の位相: 問題文より「壁で反射するとき位相は変わらない」とあります。これは自由端反射に相当し、鏡像波源は元の波源と「同位相」であると考えることができます。もし位相が反転する固定端反射の場合は、鏡像波源は「逆位相」となり、強め合いと弱め合いの条件式が逆になります。
- 三平方の定理: 観測点と各波源との距離を計算するために、幾何学的な知識(三平方の定理)を用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、壁による反射を、壁の向こう側にある鏡像波源O’からの波に置き換えて考えます。
- 次に、線分OB上の任意の点Pについて、2つの波源OとO’からの距離の差(経路差)を、点Pの位置の関数として表します。
- そして、経路差が弱め合いの条件を満たすような方程式を立て、その方程式が線分OB上でいくつの解を持つかを調べます。
思考の道筋とポイント
この問題は、波源Oから出た直接波と、壁で反射した反射波の干渉を考えます。この種の「反射を伴う干渉」問題は、「鏡像波源」という考え方を用いるのが定石です。
この設問における重要なポイント
- 鏡像波源の導入: 壁による反射波は、壁に関して波源Oと対称な位置にある仮想的な波源O’から来た波と考えることができます。これにより、問題は「2つの波源OとO’から出る波の干渉」という、より単純なモデルに変換されます。
- 位相の確認: 問題文に「壁で反射するとき位相は変わらない」とあるため、波源Oと鏡像波源O’は同位相であるとみなせます。
- 弱め合いの条件式: 2つの同位相の波源からの波が弱め合う(節となる)条件は、経路差が波長の半整数倍になることです。
$$ \text{経路差} = |\text{O’P} – \text{OP}| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$ - 経路差の範囲を調べる: 線分OB上で、経路差がどの範囲の値を取りうるかを計算します。具体的には、線分の両端である点Oと点Bでの経路差を求めます。
具体的な解説と立式
壁に関して波源Oと対称な点をO’とします。O’は鏡像波源(仮想波源)であり、波源Oと同位相です。
図より、波源Oと壁の距離は\(3\lambda\)なので、OとO’の間の距離は\(6\lambda\)となります。
線分OB上の任意の点Pを考えます。点Pの座標を、Oを原点として、壁に平行な方向をy軸、垂直な方向をx軸とすると、O(0, 0), B(0, 8\(\lambda\)), O'(-6\(\lambda\), 0)となります。線分OB上の点Pは(0, y)と表せます(ただし \(0 \le y \le 8\lambda\))。
点Pにおける、波源Oと鏡像波源O’からの経路差 \(\Delta L\) は、
$$ \Delta L = |\text{O’P} – \text{OP}| $$
ここで、各距離は三平方の定理より、
$$ \text{OP} = y $$
$$ \text{O’P} = \sqrt{(-6\lambda – 0)^2 + (0 – y)^2} = \sqrt{(6\lambda)^2 + y^2} $$
よって、経路差は
$$ \Delta L = \sqrt{36\lambda^2 + y^2} – y $$
弱め合う条件は、この経路差が波長の半整数倍になることなので、
$$ \sqrt{36\lambda^2 + y^2} – y = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$
この方程式を満たす\(y\)が \(0 \le y \le 8\lambda\) の範囲にいくつ存在するかを調べます。
そのため、線分OBの両端(点Oと点B)での経路差を計算し、経路差\(\Delta L\)の取りうる値の範囲を求めます。
1. 点O (y=0) での経路差:
$$ \Delta L_O = \sqrt{36\lambda^2 + 0^2} – 0 = 6\lambda $$
2. 点B (y=8\(\lambda\)) での経路差:
$$ \Delta L_B = \sqrt{36\lambda^2 + (8\lambda)^2} – 8\lambda = \sqrt{36\lambda^2 + 64\lambda^2} – 8\lambda = \sqrt{100\lambda^2} – 8\lambda = 10\lambda – 8\lambda = 2\lambda $$
点PがOからBへ移動するにつれて、経路差\(\Delta L\)は \(6\lambda\) から \(2\lambda\) まで単調に減少します。
したがって、線分OB上で弱め合う点が存在する条件は、
$$ 2\lambda \le (m + \frac{1}{2})\lambda \le 6\lambda $$
使用した物理公式
- 波の干渉条件(弱め合い・節): 経路差 = \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
- 三平方の定理
上記の不等式の両辺を\(\lambda\)で割り、整理します。
$$ 2 \le m + \frac{1}{2} \le 6 $$
各辺から \(\displaystyle\frac{1}{2}\) を引きます。
$$ 2 – 0.5 \le m \le 6 – 0.5 $$
$$ 1.5 \le m \le 5.5 $$
この範囲に含まれる整数 \(m\) は、\(m = 2, 3, 4, 5\) の4つです。
整数\(m\)が4つ存在するということは、弱め合いの条件を満たす点が線分OB上に4個存在することを意味します。
壁からの反射波は、壁の向こう側にある「もう一人の自分(鏡像)」から来る波だと考えます。この「自分」と「鏡像」の2人から届く波が打ち消し合う(弱め合う)場所を探します。弱め合う条件は、2人からの距離の差が「波長の半分、1.5個分、2.5個分…」となるときです。観測する線分OBの両端(O点とB点)で、この「距離の差」がそれぞれ「波長6個分」と「波長2個分」になることを計算します。線分OB上では、この距離の差が2個分から6個分まで連続的に変化するので、その間に「2.5個分、3.5個分、4.5個分、5.5個分」となる点が合計4ヶ所ある、と結論できます。
思考の道筋とポイント
まず、波源Oから出た直接波と反射波が「強め合う」条件を考え、観測線分OBが何本の強め合う線(腹線)を横切るかを調べます。2本の隣り合う腹線の間には必ず1本の弱め合う線(節線)が存在することを利用して、弱め合う点の個数を推定します。
この設問における重要なポイント
- 鏡像波源の導入: メインの解法と同様に、鏡像波源O’を考え、2つの同位相波源O, O’による干渉問題として扱います。
- 強め合いの条件式: 2つの同位相の波源からの波が強め合う(腹となる)条件は、経路差が波長の整数倍になることです。
$$ \text{経路差} = |\text{O’P} – \text{OP}| = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$ - 経路差の範囲を調べる: メインの解法と同様に、線分の両端である点Oと点Bでの経路差を求めます。
- 点Oでの経路差: \(\Delta L_O = 6\lambda\)
- 点Bでの経路差: \(\Delta L_B = 2\lambda\)
- 腹線と節線の関係: 隣り合う腹線と腹線のちょうど中間に、節線が1本存在します。
具体的な解説と立式
メインの解法と同様に、鏡像波源O’を導入し、線分OB上の点P(0, y)における経路差\(\Delta L\)が \(2\lambda \le \Delta L \le 6\lambda\) の範囲を取ることを確認します。
次に、強め合いの条件を考えます。
$$ \Delta L = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$
この条件が線分OB上で満たされる、つまり、
$$ 2\lambda \le m\lambda \le 6\lambda $$
を満たす整数\(m\)を探します。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(強め合い・腹): 経路差 = \(m\lambda\)
- 三平方の定理
上記の不等式の両辺を\(\lambda\)で割ります。
$$ 2 \le m \le 6 $$
この範囲に含まれる整数 \(m\) は、\(m = 2, 3, 4, 5, 6\) の5つです。
これは、線分OB(両端を含む)が、\(m=2\)から\(m=6\)までの合計5本の強め合う線(腹線)と交わることを意味します。
- 点Bは、経路差が\(2\lambda\)なので、\(m=2\)の腹線上にあります。
- 点Oは、経路差が\(6\lambda\)なので、\(m=6\)の腹線上にあります。
線分OB上には、\(m=2, 3, 4, 5, 6\) の腹線が通ります。
隣り合う2本の腹線の間には、必ず1本の弱め合う線(節線)が存在します。
- \(m=2\)の腹線と\(m=3\)の腹線の間に、1本の節線
- \(m=3\)の腹線と\(m=4\)の腹線の間に、1本の節線
- \(m=4\)の腹線と\(m=5\)の腹線の間に、1本の節線
- \(m=5\)の腹線と\(m=6\)の腹線の間に、1本の節線
したがって、これらの腹線の間に存在する節線の数は、合計で4本となります。
まず、波が強め合う場所(腹)が線分OB上にいくつあるかを数えます。計算すると、点Bが2番目の腹、点Oが6番目の腹の上にあることがわかります。つまり、線分OBは2番目、3番目、4番目、5番目、6番目の合計5本の腹のラインを横切ります。波が弱め合う場所(節)は、必ず強め合う場所(腹)と強め合う場所(腹)の間に存在します。5本の腹のラインの間(「間」は4ヶ所)に、それぞれ1本ずつ節のラインが存在するため、弱め合う点は合計で4個あると分かります。
線分OB上で弱め合う点の個数は4個です。
m=2, 3, 4, 5 に対応する点がそれぞれ存在します。点Oでの経路差が\(6\lambda\)、点Bでの経路差が\(2\lambda\)であり、その間に\(m=2,3,4,5\)に対応する弱め合いの条件を満たす点が存在するのは妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の干渉条件:
- 核心: 2つの波が重なるとき、その場所での経路差(2つの波源からの距離の差)によって強め合うか弱め合うかが決まるという原理です。これがこの問題の根幹をなす最重要法則です。
- 理解のポイント:
- 同位相の波源の場合(本問はこちら):
- 強め合い(腹): 経路差 = \(m\lambda\) (波長の整数倍)
- 弱め合い(節): 経路差 = \((m+\displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (波長の半整数倍)
- 逆位相の波源の場合:
- 強め合い(腹): 経路差 = \((m+\displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
- 弱め合い(節): 経路差 = \(m\lambda\)
(\(m=0, 1, 2, \dots\))
どの条件を使うかは、波源の位相関係によって決まります。 - 同位相の波源の場合(本問はこちら):
- 鏡像波源(仮想波源)の考え方:
- 核心: 平面での反射波は、その平面に対して波源と対称な位置にある「鏡像波源」から出たかのように振る舞う、という考え方です。これにより、複雑な「反射を伴う干渉」の問題を、単純な「2波源の干渉」問題に置き換えることができます。
- 理解のポイント: 反射面の性質によって鏡像波源の位相が決まります。
- 自由端反射(本問のように「位相が変わらない」場合): 鏡像波源は同位相。
- 固定端反射(「位相が\(\pi\)ずれる、反転する」場合): 鏡像波源は逆位相。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 2つのスピーカーからの音の干渉: 2つのスピーカーを波源O, O’と見なせば、本問と全く同じ構造の問題になります。
- ヤングの実験(光の干渉): 2つのスリットS₁, S₂が同位相の波源となり、スクリーン上の明線(強め合い)・暗線(弱め合い)の数を数える問題です。経路差の近似式(\(d\sin\theta\)や\(dx/L\))を使う点が異なりますが、干渉条件を適用する本質は同じです。
- 薄膜による光の干渉: シャボン玉や水に浮いた油膜が色づいて見える現象です。膜の表面で反射する光と、裏面で反射する光の2つの波の干渉を考えます。この場合は、経路差に加えて反射時の位相変化も考慮する必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の数を特定する: 問題には波源がいくつあるか? 反射によって実質的に波源が増えていないか? をまず確認します。本問は「1つの波源+反射」なので、「実質2波源」と見抜くことが第一歩です。
- 波源の位相関係を確認する: 波源同士は同位相か、逆位相か? 反射がある場合は、自由端反射(同位相)か、固定端反射(逆位相)か? これによって適用すべき干渉条件の式が決まります。
- 経路差を立式する: 観測点Pと各波源との距離を、座標や三平方の定理を用いて数式で表現し、その差(経路差)を計算します。
- 観測範囲での経路差の変化を調べる: 観測する線分や領域の両端で経路差がいくつになるかを計算し、その範囲内に干渉条件を満たす点がいくつあるかを数え上げます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 干渉条件式の混同:
- 誤解: 同位相と逆位相の場合の、強め合い・弱め合いの条件式(\(m\lambda\)と\((m+1/2)\lambda\))を逆に覚えてしまう。
- 対策: 「同位相の波源から等距離の点は、山と山、谷と谷が重なって強め合う。このとき経路差は0。だから経路差が\(0, \lambda, 2\lambda, \dots\) (\(m\lambda\)) のときが強め合い」という基本イメージを常に思い出すようにしましょう。
- 鏡像波源の距離の間違い:
- 誤解: 鏡像波源O’と元の波源Oの距離を、Oと壁の距離(本問では\(3\lambda\))と勘違いしてしまう。
- 対策: 鏡像波源は「壁に関して対称な点」なので、O-O’間の距離はO-壁間の距離の2倍(\(6\lambda\))になります。必ず図を描いて視覚的に確認しましょう。
- mの範囲の数え間違い:
- 誤解: \(1.5 \le m \le 5.5\) のような不等式を満たす整数の個数を数える際に、端を含めるか含めないかなどで混乱し、1個多く、あるいは少なく数えてしまう。
- 対策: 焦らずに、条件を満たす整数を具体的に書き出してみる(\(m=2, 3, 4, 5\))のが最も確実な方法です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 等高線マップのアナロジー: 干渉の様子は、2つの山(波源O, O’)がある地形の等高線マップに似ています。
- 経路差一定の線(双曲線): 2つの山頂からの距離の差が一定の地点を結んだ線は「双曲線」を描きます。これが強め合いの線(腹線)や弱め合いの線(節線)に相当します。
- 観測線分OB: このマップ上を、点Oから点Bまでまっすぐ歩くのが観測線分OBです。
- 点の個数を数える: 歩いている途中で、何本の「弱め合いの等高線(節線)」を横切るかを数えるのがこの問題の本質です。
- 等高線マップのアナロジー: 干渉の様子は、2つの山(波源O, O’)がある地形の等高線マップに似ています。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 鏡像波源を明確にプロットする: まず、壁を描き、波源Oと、壁に関して対称な位置に鏡像波源O’をプロットします。
- 距離を書き込む: O-壁間(\(3\lambda\))、O-O’間(\(6\lambda\))、O-B間(\(8\lambda\))など、分かっている距離をすべて図に書き込みます。
- 経路差を計算する三角形をハイライトする: 任意の点Pについて、O’PとOPの長さを求めるために使う直角三角形(本問ではO’とPと(0,0)を結ぶ三角形)を意識して描くと、立式がスムーズになります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 弱め合いの条件式 (\(|\text{O’P} – \text{OP}| = (m + \frac{1}{2})\lambda\)):
- 選定理由: 問題が「弱め合う点」の個数を直接問うているため、この条件式を立てるのが最も直接的な解法だからです。
- 適用根拠: 波の重ね合わせの原理に基づき、2つの波が常に逆向きに変位を打ち消し合うための数学的な条件です。「同位相」の波源であるため、経路差が半波長ずれると山と谷が重なる、という物理的状況を数式化しています。
- 三平方の定理:
- 選定理由: 経路差を計算するために、波源と観測点との間の直線距離を求める必要があるからです。図が直交座標系で考えられるため、三平方の定理が有効な数学的ツールとなります。
- 適用根拠: ユークリッド幾何学における、直角三角形の3辺の長さの関係を示す基本的な定理です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (メイン解法) 弱め合いの条件で直接解くフロー:
- 戦略: 弱め合いの条件式を立て、観測線分上でその式が成り立つ点の個数を数える。
- フロー: ①鏡像波源O’を導入。OとO’は同位相と判断。 → ②線分OB上の任意の点P(0, y)について、経路差 \(\Delta L = \sqrt{(6\lambda)^2+y^2} – y\) を立式。 → ③弱め合いの条件式 \(\Delta L = (m+\frac{1}{2})\lambda\) を立てる。 → ④線分OBの両端、点O(\(y=0\))と点B(\(y=8\lambda\))での経路差を計算し、\(\Delta L\)の範囲 (\(2\lambda \le \Delta L \le 6\lambda\)) を求める。 → ⑤ \(2\lambda \le (m+\frac{1}{2})\lambda \le 6\lambda\) を満たす整数\(m\)の個数を数え、それが答えとなる。
- (別解) 強め合いの線から推定するフロー:
- 戦略: まず強め合う線の本数を数え、その間にある弱め合う線の本数を推定する。
- フロー: ①〜④はメイン解法と同じ。 → ⑤強め合いの条件式 \(\Delta L = m\lambda\) を立てる。 → ⑥ \(2\lambda \le m\lambda \le 6\lambda\) を満たす整数\(m\)の個数を数える(5個)。 → ⑦これは5本の腹線がOBを横切ることを意味する。 → ⑧5本の腹線の「間」は4つあるので、節線(弱め合う点)は4個あると結論づける。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字\(\lambda\)の扱い: 計算過程では、\(\lambda\)を一つの文字として扱います。すべての長さが\(\lambda\)の倍数で与えられているため、最終的に不等式を解く段階で両辺の\(\lambda\)を消去できます。途中で\(\lambda\)を書き忘れないように注意しましょう。
- 三平方の定理の計算: \(\sqrt{(6\lambda)^2 + (8\lambda)^2}\) のような計算では、\((6\lambda)^2 = 36\lambda^2\) のように、係数と文字をそれぞれ2乗することを忘れないようにします。また、\(6^2+8^2 = 36+64=100=10^2\) のように、3:4:5の直角三角形の辺の比の関係に気づくと計算が速くなります。
- 不等式の整理: \(2 \le m + 0.5 \le 6\) のような不等式を解く際は、各辺に同じ操作(この場合は-0.5)を慎重に行い、計算ミスを防ぎましょう。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 経路差は点Oで最大(\(6\lambda\))、点Bで最小(\(2\lambda\))となります。この範囲に、弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) を満たす \(m=2,3,4,5\) が含まれるのは自然な結果です。もし計算結果が負になったり、整数が存在しなかったりした場合は、どこかで計算ミスをしている可能性が高いです。
- 別解との比較:
- 弱め合いの条件を直接使って求めた答え(4個)と、強め合いの線の数から推定した答え(4個)が一致しました。異なる2つのアプローチで同じ結論に至ったことは、計算の正しさと物理的理解の確かさを強力に裏付けます。
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