Step 2
139 単振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の基本事項の総まとめ」です。単振動が等速円運動の正射影として理解できること、そして単振動の変位、速度、加速度の式や、それらの関係性、用語の定義など、単振動を学ぶ上での根幹となる知識が網羅的に問われています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動と等速円運動の関係: 単振動は、等速円運動する物体を真横から光で照らしたときの「影」の運動と見なせます。
- 三角関数による運動の記述: 等速円運動の位置を三角関数で表し、その射影成分を計算することで、単振動の変位、速度、加速度の式が導出されます。
- 単振動の運動方程式: 単振動は、復元力 \(F=-Kx\) によって引き起こされる運動であり、その運動方程式は \(ma=-Kx\) となります。
- 単振動の用語の定義: 振幅、角振動数、周期、復元力といった基本的な用語の意味を正確に理解していることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各空欄について、単振動の定義や公式を思い出し、当てはまる語句や数式を答えていきます。
- 等速円運動の正射影というモデルから、変位、速度、加速度の式を導出します。
- 単振動の運動方程式と、等速円運動の加速度の関係式を結びつけ、周期の公式を導出します。
思考の道筋とポイント
この問題は、単振動に関する知識を一つずつ確認していく形式です。各空欄が何を問うているのかを正確に把握し、対応する公式や定義を当てはめていきます。
- ①〜④:等速円運動の正射影モデル
- ①:単振動の元となる運動は何か。
- ②:図の等速円運動において、時刻\(t\)での角度は\(\omega t\)です。このときの物体のx座標を三角関数で表します。
- ③, ④:②で求めた変位\(x\)の式を時刻\(t\)で微分すると速度\(v\)が、さらに微分すると加速度\(a\)が求まります。
- ⑤:加速度と変位の関係
- ②と④の式から、\(\sin\omega t\)を消去して、\(a\)を\(x\)で表します。
- ⑥, ⑦:振動の端点での物理量
- \(x\)が正に最大になるのは、振動の端点です。このとき、速度と加速度はどうなるかを考えます。
- ⑧, ⑨:用語の定義
- 単振動の式における\(A\)と\(\omega\)が、それぞれ何という物理量を表すか。
- ⑩, ⑪:単振動の動力学
- 単振動を引き起こす力の名称と、その力と質量から周期を求める公式を答えます。
この設問における重要なポイント
- 単振動は等速円運動の正射影である。
- 変位、速度、加速度の関係は微分の関係にある。
- 単振動の運動方程式 \(ma=-Kx\) と、等速円運動の加速度 \(a=-\omega^2 x\) の関係を理解する。
具体的な解説と立式
① 単振動の定義
単振動は、等速円運動をする物体の、ある直線(スクリーン)上への正射影の運動として定義されます。
② 変位\(x\)の式
図のモデルでは、時刻\(t=0\)にx軸の正方向へ原点を通過する単振動を表しています。これは、等速円運動において時刻\(t=0\)にy軸の正方向(位相\(\pi/2\))から運動を開始し、そのx軸への正射影を考えたものに対応します。円運動する物体のx座標は \(A\cos(\omega t – \pi/2) = A\sin(\omega t)\) となります。よって、変位は \(A\sin(\omega t)\) です。
③ 速度\(v\)の式
速度\(v\)は変位\(x\)を時刻\(t\)で微分して求めます。
$$ v = \frac{dx}{dt} = \frac{d}{dt}(A\sin(\omega t)) = A\omega\cos(\omega t) $$
④ 加速度\(a\)の式
加速度\(a\)は速度\(v\)を時刻\(t\)で微分して求めます。
$$ a = \frac{dv}{dt} = \frac{d}{dt}(A\omega\cos(\omega t)) = -A\omega^2\sin(\omega t) $$
⑤ 加速度\(a\)と変位\(x\)の関係
④の式 \(a = -A\omega^2\sin(\omega t)\) に、②の式 \(x = A\sin(\omega t)\) を代入すると、
$$ a = -\omega^2 (A\sin(\omega t)) = -\omega^2 x $$
⑥, ⑦ 振動の端での速度と加速度
\(x\)が正に最大になるのは、\(x=A\)のときです。これは振動の端点です。
- 速度\(v\): 端点では一瞬静止するので、\(v=0\)。
- 加速度\(a\): \(a=-\omega^2 x\) に \(x=A\) を代入すると、\(a = -A\omega^2\)。加速度の大きさは最大になります。
⑧, ⑨ 用語の定義
- \(A\)は振動の中心からの最大変位なので、振幅と呼びます。
- \(\omega\)は振動の速さ(位相の変化の速さ)を表す量で、角振動数と呼びます。
⑩ 単振動を引き起こす力
\(F=-Kx\) のように、変位に比例し、常に中心を向く力を復元力と呼びます。
⑪ 周期\(T\)の公式
単振動の運動方程式は \(ma=F\) なので、\(ma = -Kx\)。
一方、⑤で求めた関係式 \(a=-\omega^2 x\) を代入すると、
$$ m(-\omega^2 x) = -Kx $$
$$ m\omega^2 = K $$
よって、角振動数\(\omega\)は \(\omega = \sqrt{K/m}\) となります。
周期\(T\)と角振動数\(\omega\)の関係は \(T=2\pi/\omega\) なので、
$$ T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}} $$
使用した物理公式
- 単振動の変位、速度、加速度の式
- 単振動の運動方程式: \(ma=-Kx\)
- 周期と角振動数の関係: \(T=2\pi/\omega\)
この問題は、公式や定義を当てはめるものであり、具体的な数値計算は不要です。
この問題は、単振動の「公式集」を穴埋め形式で確認するものです。
- 単振動は、円運動の影の動きです。
- 位置、速度、加速度は、三角関数(\(\sin, \cos\))を使って表せます。
- 加速度は、常に位置と反対向きで、中心から遠いほど大きくなります。
- 振動の端っこでは、速さはゼロになり、加速度は最大になります。
- 振動の中心では、速さは最大になり、加速度はゼロになります。
- 単振動を引き起こす、中心に戻そうとする力を「復元力」と呼びます。
- 1往復にかかる時間(周期)は、おもりが重いほど長く、ばねが硬い(復元力が強い)ほど短くなります。
各空欄に当てはまる語句と式は以下の通りです。
- 等速円
- \(A\sin\omega t\)
- \(A\omega\cos\omega t\)
- \(-A\omega^2\sin\omega t\)
- \(-\omega^2 x\)
- 0
- \(-A\omega^2\)
- 振幅
- 角振動数
- 復元
- \(2\pi\sqrt{m/K}\)
単振動の運動学的側面(等速円運動との関係)と、動力学的側面(復元力と運動方程式)の両方を体系的に理解しているかを確認する良い問題です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 単振動の運動学的定義(等速円運動の正射影)
- 核心: 単振動という一見複雑な往復運動が、実は単純な「等速円運動」の「正射影(影の動き)」として完全に記述できるという、運動学的なモデルを理解することが第一の核心です。
- 理解のポイント:
- 等速円運動のパラメータ(半径\(A\)、角速度\(\omega\))が、そのまま単振動のパラメータ(振幅\(A\)、角振動数\(\omega\))に対応します。
- 変位\(x\)、速度\(v\)、加速度\(a\)の式は、すべて等速円運動の三角関数表示と、それを時間微分することで導出されます。
- 単振動の動力学的定義(復元力)
- 核心: ある運動が単振動であるための力学的な条件は、物体にはたらく合力が、つり合いの位置からの変位\(x\)に比例し、常に中心を向く力、すなわち「復元力 \(F=-Kx\)」で与えられること。この法則を理解することが第二の核心です。
- 理解のポイント:
- 運動方程式 \(ma=F\) に、\(F=-Kx\) を代入した \(ma=-Kx\) が、単振動の運動を支配する最も基本的な方程式となります。
- この運動方程式と、運動学的に導かれた関係式 \(a=-\omega^2 x\) を結びつけることで、\(m\omega^2=K\) という、力学(\(m, K\))と運動学(\(\omega\))をつなぐ重要な関係が導かれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばね振り子(水平・鉛直・斜面): ばねの弾性力(と重力の合力)が復元力 \(F=-kx\) となるため、単振動します。
- 単振り子: 振れ角が小さいとき、重力の接線成分が近似的に \(F \approx – (mg/L)x\) となり、単振動と見なせます。
- U字管の液面振動、水に浮かぶ物体の振動: これらも、つり合いの位置からの変位に比例する復元力がはたらくため、単振動のモデルを適用できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 単振動であることの確認: まず、その運動が単振動と見なせるかを確認します。物体にはたらく合力が、つり合いの位置からの変位\(x\)に比例する復元力 \(F=-Kx\) の形で書けるかを確認するのが王道です。
- パラメータの特定: 振幅\(A\)、角振動数\(\omega\)(または周期\(T\))、初期位相\(\phi\)を特定します。
- \(A\)と\(\phi\)は、振動の開始条件(どこから、どの向きに動き始めたか)で決まります。
- \(\omega\)と\(T\)は、復元力の比例定数\(K\)と質量\(m\)で決まります(\(\omega=\sqrt{K/m}\))。
- 公式の適用: 求めたい物理量(特定時刻の変位、速度、加速度、最大値など)に応じて、適切な公式を選択し、特定したパラメータを代入します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 変位・速度・加速度の式の混同:
- 誤解: \(x, v, a\) の式がそれぞれ \(\sin\) なのか \(\cos\) なのか、符号が `+` なのか `-` なのかを混同してしまう。
- 対策: 等速円運動の図を思い浮かべ、各瞬間の物理的な状況と式の対応を確認します。例えば、中心(\(x=0\))では速度が最大、端(\(x=A\))では加速度の大きさが最大、といった関係から、式の形を推測・確認する癖をつけます。丸暗記ではなく、等速円運動のモデルから毎回導出できるようにしておくのが理想です。
- 角振動数\(\omega\)と振動数\(f\)の混同:
- 誤解: \(\omega\) と \(f\) は同じようなものだと考え、\(T=1/\omega\) のような間違いをする。
- 対策: 言葉の定義を明確に区別します。「振動数\(f\)」は1秒あたりの振動回数[Hz]、「角振動数\(\omega\)」は2\(\pi\)秒(周期Tの円運動で1周する時間)あたりの振動回数、あるいは円運動の角速度[rad/s]です。関係式は \(\omega = 2\pi f = 2\pi/T\) です。
- 復元力の比例定数\(K\)とばね定数\(k\)の混同:
- 誤解: どんな単振動でも、周期の公式の\(K\)にばね定数\(k\)を代入してしまう。
- 対策: \(K\)はあくまで「復元力の比例定数」です。ばね振り子の場合はたまたま\(K=k\)となりますが、単振り子では \(K=mg/L\) となるなど、状況によって異なります。必ず、合力を計算して \(F=-Kx\) の形にしてから\(K\)を特定する、という手順を踏むことが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 変位・速度・加速度の公式 (\(x=A\sin\omega t\) など):
- 選定理由: これらは、単振動という運動そのものを時間\(t\)の関数として記述するための、最も基本的な運動学的表現です。
- 適用根拠: 等速円運動という単純なモデルの座標成分(射影)を数学的に(三角関数を用いて)表現したものです。物理現象を数学の言葉に翻訳した結果と言えます。
- 加速度と変位の関係式 (\(a=-\omega^2 x\)):
- 選定理由: この式は、単振動に共通する、時刻\(t\)に依存しない普遍的な性質を表しています。
- 適用根拠: 変位と加速度の時刻\(t\)の関数から、三角関数の部分を消去することで導かれます。この式があるからこそ、運動方程式 \(ma=-Kx\) と結びつき、\(\omega\) と \(m, K\) の関係が明らかになります。
- 周期の公式 (\(T=2\pi\sqrt{m/K}\)):
- 選定理由: 単振動の最も重要な特徴の一つである「周期性」を、その運動を引き起こす力学的な要因(質量\(m\)と復元力の強さ\(K\))から計算するための公式です。
- 適用根拠: 上述の通り、運動方程式と運動学的な関係式を組み合わせることで導出されます。物理法則(運動方程式)と運動の幾何学的な性質(等速円運動の射影)の融合によって得られる、単振動理論の集大成とも言える公式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- この問題は知識の確認が主であり、計算ミスは生じにくいですが、単振動の計算問題全般に共通する注意点は以下の通りです。
- 単位の確認: 角振動数\(\omega\)の単位は[rad/s]、周期\(T\)は[s]、振幅\(A\)は[m]など、各物理量の単位を常に意識する。
- 三角関数の値: \(\sin, \cos\) の値が必要な計算では、角度の単位が度(degree)なのかラジアン(radian)なのかを確認する。物理ではラジアンが基本です。
- パラメータの整理: 問題を解き始める前に、与えられた情報から \(m, K, A, \omega, T\) などの値をリストアップしておくと、計算の際に参照しやすく、ミスが減ります。
140 単振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の運動の解析」です。与えられた情報(特定の位置での速度や加速度)から、その単振動の特性(角振動数、振幅)を決定し、運動全体を数式で表現する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動の基本公式: 変位、速度、加速度の間の関係式を理解し、使いこなすことが必須です。
- 加速度と変位の関係: \(a = -\omega^2 x\)
- 最大速度と振幅・角振動数の関係: \(v_{\text{max}} = A\omega\)
- 単振動の運動の記述: 時刻\(t=0\)の初期条件(位置と速度)から、変位\(x\)と速度\(v\)を時刻\(t\)の関数として正しく表現できることが重要です。
- 単振動の各点での特徴:
- 振動の中心(\(x=0\)): 速度が最大、加速度はゼロ。
- 振動の端(\(x=\pm A\)): 速度はゼロ、加速度の大きさが最大。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、特定の位置\(x\)とそのときの加速度\(a\)が与えられているので、関係式 \(a = -\omega^2 x\) を用いて角振動数\(\omega\)を求めます。
- (2)では、振動の中心での速さ(=最大速度)が与えられているので、関係式 \(v_{\text{max}} = A\omega\) と(1)で求めた\(\omega\)を用いて振幅\(A\)を求めます。
- (3)では、(1),(2)で求めた\(\omega, A\)と、初期条件(\(t=0\)で原点を正の向きに通過)から、変位と速度の式を完成させます。
問(1)
思考の道筋とポイント
角振動数\(\omega\)を求める問題です。問題文には「\(x=0.10\,\text{m}\)の位置における加速度の大きさは\(0.40\,\text{m/s}^2\)」という情報があります。単振動において、加速度\(a\)と変位\(x\)は \(a = -\omega^2 x\) という関係で結びついています。この公式に与えられた値を代入することで、\(\omega\)を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 加速度と変位の関係式 \(a = -\omega^2 x\) を利用する。
- 加速度の向きに注意する。変位が正(\(x>0\))のとき、加速度は負(\(a<0\))となる。
具体的な解説と立式
求める角振動数を\(\omega\)とします。
単振動の加速度\(a\)と変位\(x\)の関係式は、
$$ a = -\omega^2 x $$
問題文より、\(x=0.10\,\text{m}\) のとき、加速度の「大きさ」が\(0.40\,\text{m/s}^2\)です。
変位\(x\)が正なので、加速度\(a\)は負の向きになります。したがって、\(a = -0.40\,\text{m/s}^2\)です。
これらの値を関係式に代入します。
$$ -0.40 = -\omega^2 \times 0.10 $$
使用した物理公式
- 単振動の加速度: \(a = -\omega^2 x\)
上記で立てた式を\(\omega\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{-0.40}{-0.10} = 4.0 \\[2.0ex]
\omega &= \sqrt{4.0} = 2.0
\end{aligned}
$$
角振動数\(\omega\)は正の値をとるので、\(\omega = 2.0 \, [\text{rad/s}]\) となります。
単振動では、「加速度の大きさは、中心からの距離に比例する」というルールがあります。その比例定数が\(\omega^2\)です。つまり、\((\text{加速度の大きさ}) = \omega^2 \times (\text{中心からの距離})\)という関係が成り立ちます。この式に、問題で与えられた加速度\(0.40\)と距離\(0.10\)を代入して\(\omega\)を求めます。
この単振動の角振動数は \(2.0\,\text{rad/s}\) です。公式に数値を正しく代入して計算できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
振幅\(A\)を求める問題です。問題文には「原点(\(x=0\))を最大の速さ\(0.30\,\text{m/s}\)で通過した」とあります。原点(振動の中心)での速さは、単振動における最大速度\(v_{\text{max}}\)に相当します。最大速度は、振幅\(A\)と角振動数\(\omega\)を用いて \(v_{\text{max}} = A\omega\) と表されます。この公式と(1)で求めた\(\omega\)の値を使えば、\(A\)を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 振動の中心(\(x=0\))で速さは最大になる。
- 最大速度の公式 \(v_{\text{max}} = A\omega\) を利用する。
具体的な解説と立式
求める振幅を\(A\)とします。
最大速度\(v_{\text{max}}\)と振幅\(A\)、角振動数\(\omega\)の関係式は、
$$ v_{\text{max}} = A\omega $$
問題文より \(v_{\text{max}} = 0.30\,\text{m/s}\)、(1)より \(\omega = 2.0\,\text{rad/s}\) なので、
$$ 0.30 = A \times 2.0 $$
使用した物理公式
- 単振動の最大速度: \(v_{\text{max}} = A\omega\)
上記で立てた式を\(A\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
A &= \frac{0.30}{2.0} \\[2.0ex]
A &= 0.15 \, [\text{m}]
\end{aligned}
$$
単振動の「最高速度」は、「振幅 × 角振動数」で計算できます。問題文から最高速度は\(0.30\)、(1)で角振動数は\(2.0\)とわかっているので、この式から振幅を逆算します。
この単振動の振幅は \(0.15\,\text{m}\) です。公式に正しく値を代入して計算できました。
問(3)
思考の道筋とポイント
変位\(x\)と速度\(v\)を、時刻\(t\)の関数として表す問題です。そのためには、単振動の一般式 \(x = A\sin(\omega t + \phi)\) におけるパラメータ \(A, \omega, \phi\) をすべて決定する必要があります。
\(A\)と\(\omega\)は(1),(2)で求めました。残るは初期位相\(\phi\)ですが、これは\(t=0\)のときの物体の状態から決まります。問題文に「\(t=0\)のとき、原点をx軸の正の向きに通過した」とあるので、この条件に合うように式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 初期条件(\(t=0\)での位置と速度の向き)から、運動の式を決定する。
- \(t=0\)で \(x=0\), \(v>0\) となるのは、\(x=A\sin(\omega t)\) の形。
具体的な解説と立式
(1), (2)の結果より、\(A=0.15\,\text{m}\), \(\omega=2.0\,\text{rad/s}\) です。
初期条件は「\(t=0\)で\(x=0\)、かつ正の向きに運動(\(v>0\))」です。
変位\(x\)の式:
この初期条件を満たす変位の式は、\(x = A\sin(\omega t)\) の形です。
(もし \(x=A\cos(\omega t)\) だと \(t=0\)で\(x=A\) となり、条件に合いません。)
したがって、
$$ x = 0.15 \sin(2.0t) $$
速度\(v\)の式:
速度の式は、変位の式を時刻\(t\)で微分して得られます。
$$ v = \frac{dx}{dt} = A\omega\cos(\omega t) $$
値を代入すると、
$$ v = 0.15 \times 2.0 \cos(2.0t) = 0.30\cos(2.0t) $$
使用した物理公式
- 単振動の変位の式: \(x = A\sin(\omega t)\)
- 単振動の速度の式: \(v = A\omega\cos(\omega t)\)
上記立式の通り、各パラメータを公式に代入するのみです。
単振動の動きを数式で表現します。
(1), (2)で、この振動の大きさ(振幅\(A=0.15\))と速さのペース(角振動数\(\omega=2.0\))がわかりました。
あとはスタート地点の情報(\(t=0\)で原点を正の向きに出発)を考慮します。この「原点からスタート」という動きは、三角関数の\(\sin\)カーブに相当します。
したがって、位置の式は \(x = 0.15\sin(2.0t)\) となります。速度の式は、これを微分(数学の知識)して求めます。
変位の式は \(x = 0.15\sin(2.0t)\)、速度の式は \(v = 0.30\cos(2.0t)\) です。
\(t=0\)を代入してみると、\(x=0.15\sin(0)=0\)、\(v=0.30\cos(0)=0.30\) となり、問題文の初期条件と一致することが確認できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 単振動の運動学的関係式
- 核心: 単振動における、変位(\(x\))、速度(\(v\))、加速度(\(a\))、振幅(\(A\))、角振動数(\(\omega\))といった物理量の間に成り立つ、時刻\(t\)に依存しない普遍的な関係式を理解し、使いこなすことが全てです。
- 理解のポイント:
- \(a = -\omega^2 x\) (加速度と変位の関係): 加速度は変位に比例し、向きは常に逆である。これは単振動を特徴づける最も重要な関係式です。
- \(v_{\text{max}} = A\omega\) (最大速度): 速度は振動の中心(\(x=0\))で最大値をとる。
- \(v = \pm \omega \sqrt{A^2 – x^2}\) (任意の位置での速さ): これは力学的エネルギー保存則から導かれる関係式で、どの位置でも速さを計算できます。
- 単振動の初期条件と運動の記述
- 核心: 単振動の運動の様子を時刻\(t\)の関数(\(x(t), v(t)\))として完全に記述するためには、振動のパラメータ(\(A, \omega\))に加えて、\(t=0\)での物体の状態(初期条件)が必要であるという概念を理解すること。
- 理解のポイント:
- \(t=0\)で \(x=0, v>0\) (中心から正方向へ) の場合は \(x=A\sin(\omega t)\)
- \(t=0\)で \(x=A\) (正の端) の場合は \(x=A\cos(\omega t)\)
- これらの代表的なパターンを覚えておくと、式の決定がスムーズになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばね振り子や単振り子の具体的な数値計算問題: ばね定数や質量、糸の長さなどから角振動数\(\omega\)を求め、与えられた初期条件から振幅\(A\)を決定し、特定の時刻や位置での物理量を計算する問題。
- グラフの読み取り問題: \(x-t\), \(v-t\), \(a-t\)グラフが与えられ、そこから振幅、周期、角振動数などを読み取り、他の物理量を計算する問題。
- エネルギー保存則との融合問題: ある位置での速さを求める際に、単振動の公式だけでなく、力学的エネルギー保存則を用いて解く問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた情報を整理する: 問題文から、「どの位置で、どの物理量が、いくらか」という情報を正確に抜き出し、リストアップします。(例: \(x=0\)で\(v=v_{\text{max}}=0.30\)、\(x=0.10\)で\(|a|=0.40\))
- 求める物理量と、手持ちの情報を結びつける公式を選ぶ:
- \(x\)と\(a\)の情報がある → \(a=-\omega^2 x\) を使えば\(\omega\)が求まるな、と判断する。
- \(v_{\text{max}}\)と\(\omega\)の情報がある → \(v_{\text{max}}=A\omega\) を使えば\(A\)が求まるな、と判断する。
- 運動の式を立てる際は、初期条件を確認する: \(x(t)\)の式を立てる際には、必ず\(t=0\)の状況を確認し、\(\sin\)型か\(\cos\)型か、あるいは位相\(\phi\)が必要かを判断します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 加速度の符号のミス:
- 誤解: (1)で、\(a=0.40\)をそのまま \(a=-\omega^2 x\) の式に代入してしまう。
- 対策: 「加速度は常につり合いの中心を向く」という基本に立ち返ります。変位\(x\)が正のとき、加速度\(a\)は必ず負になります。したがって、大きさの情報しかなくても、符号を自分で判断して \(a=-0.40\) とする必要があります。
- 最大速度と任意の位置の速度の混同:
- 誤解: どの位置でも \(v=A\omega\) が使えると思ってしまう。
- 対策: \(v=A\omega\) は、速さが最大になる振動の中心(\(x=0\))でのみ成り立つ特別な式であると認識します。それ以外の位置での速さを求めるには、\(v=\pm\omega\sqrt{A^2-x^2}\) やエネルギー保存則を使う必要があります。
- 変位の式の形の選択ミス:
- 誤解: 初期条件を考慮せず、常に \(x=A\sin(\omega t)\) や \(x=A\cos(\omega t)\) を機械的に使ってしまう。
- 対策: \(t=0\)を代入して、問題文の初期条件(位置と速度の向き)を再現できるか必ず検算します。例えば、\(x=A\cos(\omega t)\) に \(t=0\) を代入すると \(x=A, v=0\) となり、この問題の条件とは異なります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 加速度と変位の関係式 (\(a=-\omega^2 x\)):
- 選定理由: (1)では、角振動数\(\omega\)を求める必要があり、与えられている情報は特定の位置\(x\)とそこでの加速度\(a\)です。この3つの物理量を直接結びつける唯一の公式がこれだからです。
- 適用根拠: この式は、単振動の運動学的定義(等速円運動の正射影)から導かれる、時刻\(t\)を含まない普遍的な関係式です。単振動である限り、どの瞬間、どの位置でもこの関係は成り立っています。
- 最大速度の公式 (\(v_{\text{max}}=A\omega\)):
- 選定理由: (2)では、振幅\(A\)を求める必要があり、与えられている情報は最大速度\(v_{\text{max}}\)です。すでに\(\omega\)は求まっているので、これら3つの物理量を結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: この式も、等速円運動のモデルから導かれます。単振動の速度は \(v=A\omega\cos(\omega t)\) であり、その最大値は\(\cos(\omega t)=1\)のとき、すなわち振動の中心を通過するときに \(A\omega\) となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の確認: 計算の各段階で、物理量の符号が物理的な状況と合っているかを確認します。特に加速度の向きは間違えやすいので注意が必要です。
- 単位の確認: 角振動数\(\omega\)の単位は[rad/s]、振幅\(A\)は[m]、速度\(v\)は[m/s]など、計算結果の単位が正しいかを確認する癖をつけます。
- 小数の計算: \(0.30/2.0\) のような簡単な割り算でも、焦るとミスをします。筆算するか、電卓が許されていれば必ず検算します。
- 式の検算: (3)で求めた式 \(x=0.15\sin(2.0t)\) と \(v=0.30\cos(2.0t)\) が、問題文の条件をすべて満たしているか、最後に確認します。
- \(t=0\)で \(x=0, v=0.30\) (OK)
- \(x=0.10\)のときの\(a\)を計算してみる: \(x=0.15\sin(2.0t)=0.10\) より \(\sin(2.0t)=2/3\)。このとき \(a=-A\omega^2\sin(2.0t) = -0.15 \times (2.0)^2 \times (2/3) = -0.6 \times (2/3) = -0.4\)。加速度の大きさは0.4となり、条件を満たしています。
141 単振動の周期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「単振動の動力学」です。単振動を引き起こす力である「復元力」の性質を理解し、それを用いて単振動の周期や振動数を計算する基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 復元力: 単振動において、物体にはたらく力は、振動の中心からの変位に比例し、常に中心を向く力(復元力)\(F=-Kx\)で与えられます。
- 復元力の比例定数\(K\): この値は、単振動の「復元する力の強さ」を表し、ばね振り子ではばね定数\(k\)に相当します。
- 単振動の周期: 周期\(T\)は、質量\(m\)と復元力の比例定数\(K\)によって決まり、公式 \(T=2\pi\sqrt{m/K}\) で計算できます。
- 周期と振動数の関係: 振動数\(f\)は周期\(T\)の逆数であり、\(f=1/T\) の関係があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず問題文の情報から復元力の比例定数\(K\)を求めます。次に、質量\(m\)と求めた\(K\)を周期の公式に代入して周期\(T\)を計算します。
- (2)では、(1)で求めた周期\(T\)を使い、\(f=1/T\) の関係式から振動数\(f\)を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
単振動の周期\(T\)を求める問題です。周期の公式 \(T=2\pi\sqrt{m/K}\) を使うためには、質量\(m\)と復元力の比例定数\(K\)が必要です。質量\(m\)は問題文で与えられています。比例定数\(K\)は、復元力の定義式 \(F=-Kx\) から求めることができます。
問題文には「中心から0.10mの位置で、中心に向かう向きに80Nの力」がはたらくとあります。これが復元力に他なりません。この情報を使って\(K\)を計算し、周期の公式に代入します。
この設問における重要なポイント
- 復元力の式 \(F=-Kx\) を理解している。
- 周期の公式 \(T=2\pi\sqrt{m/K}\) を知っている。
- 問題文から、変位\(x\)と復元力\(F\)の値を正しく読み取る。
具体的な解説と立式
単振動する物体にはたらく復元力は \(F=-Kx\) と表せます。ここで、\(x\)は振動の中心からの変位、\(K\)は復元力の比例定数です。
問題文より、\(x=0.10\,\text{m}\) の位置で、中心に向かう向きの力、すなわち復元力の大きさが \(80\,\text{N}\) であったことがわかります。
復元力の式にこれらの値を代入します。力の向きが中心向き(変位と逆向き)なので、\(F=-80\,\text{N}\) となります。
$$ -80 = -K \times 0.10 $$
この式から、復元力の比例定数\(K\)を求めます。
次に、単振動の周期\(T\)の公式に、質量 \(m=0.50\,\text{kg}\) と上で求めた\(K\)の値を代入します。
$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{K}} $$
使用した物理公式
- 復元力: \(F=-Kx\)
- 単振動の周期: \(T=2\pi\sqrt{m/K}\)
まず、復元力の比例定数\(K\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
-80 &= -K \times 0.10 \\[2.0ex]
K &= \frac{-80}{-0.10} = 800 \, [\text{N/m}]
\end{aligned}
$$
次に、この\(K\)を用いて周期\(T\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2 \times 3.14 \times \sqrt{\frac{0.50}{800}} \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \sqrt{\frac{1}{1600}} \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \frac{1}{40} \\[2.0ex]
&= 0.157
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(T \approx 0.16 \, [\text{s}]\) となります。
- まず、この単振動の「復元する力の強さ(比例定数\(K\))」を求めます。\(F=-Kx\) という関係から、\(80 = K \times 0.10\) なので、\(K=800\)とわかります。
- 次に、周期を計算します。周期は、おもりが重い(\(m\))ほど長くなり、復元する力が強い(\(K\))ほど短くなるという性質があり、\(T=2\pi\sqrt{m/K}\) という公式で表せます。
- この公式に、質量\(m=0.50\)と、先ほど求めた\(K=800\)を代入して計算します。
この単振動の周期は \(0.16\,\text{s}\) です。復元力の定義から比例定数を求め、周期の公式に適用するという、単振動の動力学の基本的な流れに沿って正しく計算できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
単振動の振動数\(f\)を求める問題です。振動数は、1秒間に振動する回数を表し、周期(1回の振動にかかる時間)の逆数として定義されます。(1)で求めた周期\(T\)を使えば、簡単に計算できます。
この設問における重要なポイント
- 振動数と周期の関係式 \(f=1/T\) を知っている。
具体的な解説と立式
振動数\(f\)と周期\(T\)の間には、以下の関係があります。
$$ f = \frac{1}{T} $$
(1)で求めた周期 \(T \approx 0.157\,\text{s}\) を代入して計算します。
使用した物理公式
- 振動数と周期の関係: \(f=1/T\)
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T} \\[2.0ex]
&\approx \frac{1}{0.157} \\[2.0ex]
&\approx 6.369…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(f \approx 6.4 \, [\text{Hz}]\) となります。
(解答のように \(T=6.28/40 = 3.14/20\) を使って \(f=20/3.14\) と計算するとより正確です。)
$$ f = \frac{20}{3.14} \approx 6.369… \approx 6.4 \, [\text{Hz}] $$
振動数は「1秒間に何回振動するか」を表す量です。周期は「1回の振動に何秒かかるか」なので、両者はちょうど逆数の関係にあります。(1)で求めた周期を逆数にすることで、振動数が求まります。
この単振動の振動数は \(6.4\,\text{Hz}\) です。周期と振動数の関係を正しく理解し、計算できています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 単振動の動力学的定義(復元力)
- 核心: ある運動が単振動であるための力学的な条件は、物体にはたらく合力が、つり合いの位置からの変位\(x\)に比例し、常に中心を向く力、すなわち「復元力 \(F=-Kx\)」で与えられること。この法則を理解し、問題文の情報から復元力の比例定数\(K\)を特定できることが、この問題を解くための第一歩です。
- 理解のポイント:
- 問題文の「振動の中心に向かう向きに80Nの力」という記述が、まさに復元力そのものを指していることを見抜く必要があります。
- \(K\)は、ばね振り子における「ばね定数」に相当する、振動の「硬さ」や「復元する力の強さ」を表す重要なパラメータです。
- 単振動の周期の公式
- 核心: 単振動の周期\(T\)は、運動の力学的な要因である質量\(m\)と復元力の比例定数\(K\)のみによって決まり、\(T=2\pi\sqrt{m/K}\) という公式で与えられること。
- 理解のポイント:
- この公式は、単振動の運動方程式 \(ma=-Kx\) を解くことで導かれる、単振動理論の根幹をなす結果です。
- 質量\(m\)が大きい(慣性が大きい)ほど周期は長く(ゆっくり振動)、比例定数\(K\)が大きい(復元力が強い)ほど周期は短く(素早く振動)なる、という物理的な意味を理解しておくことが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばね振り子: ばね定数\(k\)が与えられていれば、それがそのまま復元力の比例定数\(K\)になります (\(K=k\))。
- 単振り子: 振れ角が小さいとき、復元力の比例定数は \(K=mg/L\) となります(\(L\)は振り子の長さ)。
- U字管の液面振動: 液体の密度\(\rho\)、断面積\(S\)とすると、復元力の比例定数は \(K=2\rho gS\) となります。
- これらの問題はすべて、見かけは違っても「復元力の比例定数\(K\)を特定し、周期の公式に代入する」という同じ思考プロセスで解くことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 単振動であることの確認: 問題文に「単振動」と明記されているか、あるいは復元力がはたらく状況であるかを確認します。
- 復元力の比例定数\(K\)を求める:
- この問題のように、特定の変位\(x\)とそのときの力\(F\)が与えられている場合は、\(K = |F/x|\) から直接計算します。
- ばね振り子のように、力の原因が明らかな場合は、その物理法則(フックの法則など)から\(K\)を導出します。
- 周期の公式に代入する: 質量\(m\)と求めた\(K\)を、\(T=2\pi\sqrt{m/K}\) に代入して計算します。
- 振動数や角振動数を求める: 必要であれば、\(f=1/T\) や \(\omega=2\pi/T\) の関係式を使って変換します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 復元力の比例定数\(K\)とばね定数\(k\)の混同:
- 誤解: 単振動の問題で、復元力の比例定数\(K\)を常に「ばね定数」だと思い込んでしまう。
- 対策: \(K\)はあくまで「復元力の比例定数」であり、単振動の種類によってその正体は異なります。ばね振り子では\(K=k\)ですが、単振り子など他の単振動では異なるため、必ず \(F=-Kx\) の定義に立ち返って考える癖をつけます。
- 周期の公式の分子・分母の混同:
- 誤解: 周期の公式を \(T=2\pi\sqrt{K/m}\) と間違えて覚えてしまう。
- 対策: 物理的な意味を考えて覚えます。「質量\(m\)が重いほどゆっくり(周期が長く)なる」ので、\(m\)は分子。「復元力\(K\)が強いほど素早く(周期が短く)なる」ので、\(K\)は分母、と覚えると間違いにくくなります。
- 周期\(T\)と振動数\(f\)の混同:
- 誤解: 周期を求められているのに振動数を答えたり、その逆をしてしまう。
- 対策: 言葉の定義を正確に覚えます。「周期\(T\)」は1回あたりの時間[s]、「振動数\(f\)」は1秒あたりの回数[Hz]です。両者は逆数の関係 (\(f=1/T\)) にあります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 復元力の式 (\(F=-Kx\)):
- 選定理由: (1)で周期を計算するためには、復元力の比例定数\(K\)が必要です。問題文には、特定の変位\(x\)とそのときの力\(F\)が与えられているため、\(K\)を特定するためにこの定義式を用いるのが最も直接的です。
- 適用根拠: 「単振動」という運動は、力学的には「物体にはたらく力が\(F=-Kx\)で表せる運動」として定義されます。したがって、問題文で与えられた力と変位の関係は、この定義式に当てはまるはずです。
- 周期の公式 (\(T=2\pi\sqrt{m/K}\)):
- 選定理由: (1)で求められているのが「周期」であり、単振動の周期を力学的な量(\(m, K\))から計算するための公式がこれだからです。
- 適用根拠: この公式は、単振動の運動方程式 \(ma=-Kx\) を解くことで得られる、単振動の本質を表す関係式です。質量\(m\)と復元力の比例定数\(K\)が分かれば、振幅の大きさや初期条件によらず、周期が一意に決まることを示しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認: 計算に使うすべての物理量が、SI基本単位(kg, m, N)で与えられているかを確認します。
- 有効数字の意識: 問題文の数値(0.50kg, 0.10m, 80N)は有効数字2桁です。計算途中の\(\pi=3.14\)は3桁ですが、最終的な答えは問題文の桁数に合わせて2桁に丸めるのが適切です。
- 平方根の計算: \(\sqrt{1600}\)のような計算は、\(\sqrt{16 \times 100} = \sqrt{16} \times \sqrt{100} = 4 \times 10 = 40\) のように、平方根を分解すると計算しやすくなります。
- 逆数の計算: (2)で振動数を求める際、\(f=1/T\) の計算で、(1)の最終的な答えである \(0.16\) を使うと丸め誤差が大きくなる可能性があります。可能であれば、\(T=3.14/20\) のような計算途中の分数を用いると、\(f=20/3.14\) となり、より正確な計算ができます。
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