問題の確認
dynamics#16各設問の思考プロセス
この問題は、圧力の基本定義 \(P = F/S\) を用い、複数の人が台に及ぼす力が作る圧力が、指定された大気圧と等しくなる条件から人数を求めるものです。
- 圧力の定義の適用:
- 圧力 \(P\) は、力 \(F\) をその力が作用する面積 \(S\) で割ったもの (\(P = F/S\)) です。
- 目標とする圧力は \(P_{\text{atm}} = 1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\) です。
- 台にかかる力の計算:
- 台にかかる力 \(F\) は、台にのった \(N\) 人の人の総重量に等しいです。
- 一人の人の質量を \(m_p\) とすると、\(N\) 人の総質量は \(N \cdot m_p\)。
- 総重量 \(F\) は、\(F = (N \cdot m_p) \cdot g\) となります。
- 方程式の立式:
- 台にかかる圧力 \(P_{\text{people}} = \frac{F}{S} = \frac{N \cdot m_p \cdot g}{S}\) が、大気圧 \(P_{\text{atm}}\) と等しくなるという条件から、\(P_{\text{atm}} = \frac{N \cdot m_p \cdot g}{S}\) という方程式を立てます。
- 人数の算出:
- 上記の方程式を \(N\) について解き、人数を求めます。
- 問題文に「およそ何人」とあるため、計算結果を適切な有効数字で丸めるか、最も近い整数値として解釈します。
各設問の具体的な解説と解答
問われている内容の明確化:
質量 \(60 \, \text{kg}\) の人が \(N\) 人、面積 \(5.0 \, \text{m}^2\) の台にのったときに生じる圧力が、大気圧 \(1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\) と等しくなるような \(N\) の値を求めます。
具体的な解説と計算手順:
1. \(N\) 人の人が台におよぼす力の大きさ \(F\):
一人の人の質量 \(m_p = 60 \, \text{kg}\)、重力加速度 \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)。
\(N\) 人の総質量 \(M_{\text{total}} = N \cdot m_p = 60N \, \text{kg}\)。
台におよぼす力の大きさ(総重量)\(F\) は、
$$F = M_{\text{total}} \cdot g = (60N) \times 9.8 = 588N \, \text{[N]}$$
2. \(N\) 人の人が台におよぼす圧力 \(P_{\text{people}}\):
台の面積 \(S = 5.0 \, \text{m}^2\)。
$$P_{\text{people}} = \frac{F}{S} = \frac{588N}{5.0} \, \text{[Pa]}$$
3. 圧力が大気圧に等しくなる条件:
この圧力 \(P_{\text{people}}\) が大気圧 \(P_{\text{atm}} = 1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\) と等しくなるので、
$$\frac{588N}{5.0} = 1.0 \times 10^5$$
4. 人数 \(N\) の計算:
方程式を \(N\) について解きます。
$$588N = 5.0 \times (1.0 \times 10^5)$$
$$588N = 5.0 \times 10^5$$
$$N = \frac{5.0 \times 10^5}{588} = \frac{500000}{588} \approx 850.3401…$$
問題文では「およそ何人」と問われており、与えられた数値の有効数字は主に2桁です(\(S=5.0\), \(m_p=60\), \(g=9.8\), \(P_{\text{atm}}=1.0 \times 10^5\))。
したがって、結果を有効数字2桁に丸めると、
$$N \approx 8.5 \times 10^2 \, \text{人}$$
つまり、およそ \(850\) 人となります。
計算方法の平易な説明:
- 一人あたりの重さ(力)を計算: 一人の質量は \(60 \, \text{kg}\) なので、重さは \(60 \, \text{kg} \times 9.8 \, \text{m/s}^2 = 588 \, \text{N}\)。
- \(N\) 人の合計の重さ(力): \(N\) 人なら \(588 \times N \, \text{N}\)。
- \(N\) 人が台に与える圧力: 圧力は「力 \(\div\) 面積」。台の面積は \(5.0 \, \text{m}^2\) なので、圧力は \(\frac{588N}{5.0} \, \text{Pa}\)。
- 圧力が大気圧と等しくなる: この圧力が \(1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\) になればよいので、
\(\frac{588N}{5.0} = 1.0 \times 10^5\)。 - 人数 \(N\) を求める: 上の式から \(N\) を計算すると、\(N = \frac{5.0 \times 1.0 \times 10^5}{588} \approx 850.34\)。
問題文で「およそ」と聞かれているので、約 \(850\) 人です。
この設問における重要なポイント:
- 圧力の基本定義 \(P = F/S\) を理解し、適用すること。
- 台にかかる力 \(F\) は、乗っている人々の総重量であること。
- 単位の一貫性(力は \(\text{N}\)、面積は \(\text{m}^2\)、圧力は \(\text{Pa}\))を保つこと。
- 「およそ」という指示に従い、計算結果を適切な有効数字で示すこと。
およそ \(850\) 人(有効数字2桁で \(8.5 \times 10^2\) 人)が台にのった場合である。
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 圧力 (\(P\)): 単位面積あたりに垂直に作用する力の大きさ。\(P = F/S\)。単位はパスカル[\(\text{Pa}\)] (\(1 \, \text{Pa} = 1 \, \text{N/m}^2\))。
- 力 (\(F\)): 物体の運動状態を変化させたり、物体を変形させたりする原因。単位はニュートン[\(\text{N}\)]。
- 質量 (\(m\)): 物体の慣性の大きや物質の量を表す。単位はキログラム[\(\text{kg}\)]。
- 重量: 物体にはたらく重力の大きさ (\(mg\))。力の一種。
- 大気圧: 地球の大気の重さによって生じる圧力。地表付近では約 \(1.0 \times 10^5 \, \text{Pa}\)。
- 有効数字: 測定や計算において意味のある数字の桁数。計算結果は、用いた数値の中で最も信頼性の低い(有効数字の桁数が少ない)ものに合わせることが多い。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 単位の確認と換算: 圧力計算では、力は \(\text{N}\)、面積は \(\text{m}^2\) に統一するのが基本。他の単位で与えられた場合は適切に換算する。
- 力の方向: 圧力を定義する力 \(F\) は、面に垂直な成分である。本問では人の重量が台に垂直に作用する。
- 問題文のキーワード: 「およそ」「約」などの言葉は、有効数字の扱いや概算での解答を示唆している。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 圧力と力の混同: 圧力は「単位面積あたりの力」であり、力そのものではない。同じ力でも作用面積が異なれば圧力は変わる。
- 質量の単位: 重量 (\(mg\)) を計算する際、質量 \(m\) はキログラム[\(\text{kg}\)]、重力加速度 \(g\) はメートル毎秒毎秒[\(\text{m/s}^2\)] を用いると、力の単位がニュートン[\(\text{N}\)]になる。
- 面積の単位換算ミス: 例えば、\(\text{cm}^2\) から \(\text{m}^2\) への換算 (\(1 \, \text{m}^2 = 10000 \, \text{cm}^2\)) を誤る。
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