熱力学範囲 26~30
26 代表的変化のまとめ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は、\(P-V\)グラフの基本的な解釈を問うものであり、模範解答で示されているアプローチが最も教育的で効率的であるため、本解説では有益な別解の提示は行いません。「相違点に関する注記」は省略します。
この問題のテーマは「\(P-V\)グラフにおける基本的な4つの状態変化の同定と性質」です。\(P-V\)グラフ上に描かれた熱サイクルを見て、どの部分が定積・定圧・等温・断熱変化に対応するのかを判断し、それぞれの過程における熱の吸収・放出や内部エネルギーの変化を考察する、熱力学の総合的な理解力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(P-V\)グラフの形状と状態変化の対応:
- 垂直な直線 → 定積変化(体積一定)
- 水平な直線 → 定圧変化(圧力一定)
- 双曲線 → 等温変化または断熱変化
- 等温線と断熱線の傾きの比較: \(P-V\)グラフ上で、断熱変化を表す曲線(断熱線)は、等温変化を表す曲線(等温線)よりも傾きが急である。
- 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q + W\) (または \(Q = \Delta U + W’\))。各過程で \(\Delta U, Q, W\) の符号がどうなるかを判断する。
- 温度と\(PV\)積の関係: 絶対温度 \(T\) は \(PV\) 積に比例する (\(T \propto PV\))。グラフ上で原点から遠ざかるほど温度は上昇し、近づくほど下降する。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まずグラフの形状から定積・定圧変化を特定します。残った2つの曲線のうち、傾きが急な方が断熱変化、緩やかな方が等温変化であると判断します。
- (2)では、各過程について熱力学第一法則を適用し、熱の吸収・放出 (\(Q\)の符号) を調べます。
- (3)では、各過程について温度変化 (\(\Delta T\) の符号、すなわち \(\Delta U\) の符号) を調べます。これは、\(T \propto PV\) の関係を用いて、グラフ上で点が原点から遠ざかるか近づくかを考察することで判断できます。
問(1) 断熱変化はどれか。
思考の道筋とポイント
まず、グラフの形状から、それぞれの過程がどの種類の変化に対応する可能性があるかを分類します。
- 過程\(\mathrm{II}\): グラフが垂直な直線なので、体積一定の定積変化です。
- 過程\(\mathrm{III}\): グラフが水平な直線なので、圧力一定の定圧変化です。
- 過程\(\mathrm{I}\)と\(\mathrm{IV}\): どちらも曲線なので、等温変化または断熱変化のどちらかです。
ここで、等温変化と断熱変化を区別するための重要な知識が必要になります。それは、「\(P-V\)グラフにおいて、断熱線は等温線よりも傾きが急である」という性質です。
グラフを見ると、過程\(\mathrm{I}\)と過程\(\mathrm{IV}\)では、明らかに過程\(\mathrm{IV}\)の方が傾きが急です。
したがって、過程\(\mathrm{IV}\)が断熱変化、過程\(\mathrm{I}\)が等温変化であると結論できます。
この設問における重要なポイント
- \(P-V\)グラフの形状から、定積変化(垂直線)と定圧変化(水平線)をまず特定する。
- 残った曲線のうち、傾きが急な方が断熱変化、緩やかな方が等温変化である。
具体的な解説と立式
グラフの形状から、各過程は以下のように分類されます。
- 過程\(\mathrm{II}\): 定積変化
- 過程\(\mathrm{III}\): 定圧変化
- 過程\(\mathrm{I}\), \(\mathrm{IV}\): 等温変化または断熱変化
等温変化では \(PV = \text{一定}\)、断熱変化では \(PV^\gamma = \text{一定}\) (\(\gamma > 1\)) の関係が成り立ちます。これらの曲線の傾きを数学的に比較すると、任意の点において、断熱線の方が等温線よりも傾きが急になることが知られています。
グラフ上で過程\(\mathrm{I}\)と過程\(\mathrm{IV}\)を比較すると、過程\(\mathrm{IV}\)の方が傾きが急です。
よって、過程\(\mathrm{IV}\)が断熱変化です。
使用した物理公式
- ポアソンの法則: \(PV^\gamma = \text{一定}\) (\(\gamma > 1\))
- ボイルの法則: \(PV = \text{一定}\)
定性的な判断なので、計算は不要です。
\(P-V\)グラフには4種類の基本的な道筋があります。
- まっすぐ下に降りる道 → 定積変化(過程\(\mathrm{II}\))
- まっすぐ左に進む道 → 定圧変化(過程\(\mathrm{III}\))
- なだらかなカーブの道 → 等温変化
- 急なカーブの道 → 断熱変化
グラフを見ると、カーブしている道は\(\mathrm{I}\)と\(\mathrm{IV}\)の2つですが、\(\mathrm{IV}\)の方が急な坂道になっています。したがって、\(\mathrm{IV}\)が断熱変化だとわかります。
断熱変化は過程\(\mathrm{IV}\)です。それに伴い、過程\(\mathrm{I}\)は等温変化であることも確定します。
問(2) 熱を吸収した過程はどれか。
思考の道筋とポイント
各過程について、熱の出入り \(Q\) の符号を調べます。熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) を使うのが基本です。\(Q>0\) となる過程が答えです。
- 過程\(\mathrm{I}\) (等温変化): 等温なので内部エネルギーは変化しません (\(\Delta U = 0\))。グラフを見ると、体積が減少(圧縮)しているので、気体は外部から仕事をされます (\(W’ < 0\))。よって、\(Q = 0 + W’ < 0\)。したがって、熱を放出します。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積変化): 定積なので仕事はゼロです (\(W’ = 0\))。温度変化を調べると、グラフは原点から遠ざかる方向に進んでいる(\(PV\)積が増加している)ので、温度は上昇します。したがって、内部エネルギーは増加します (\(\Delta U > 0\))。よって、\(Q = \Delta U + 0 > 0\)。したがって、熱を吸収します。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧変化): グラフは原点から遠ざかる方向に進んでいる(\(PV\)積が増加している)ので、温度は上昇します (\(\Delta U > 0\))。また、体積が増加(膨張)しているので、気体は外部へ仕事をします (\(W’ > 0\))。よって、\(Q = \Delta U + W’ = (\text{正}) + (\text{正}) > 0\)。したがって、熱を吸収します。
- 過程\(\mathrm{IV}\) (断熱変化): 断熱変化の定義そのものが、熱のやりとりがないこと (\(Q=0\)) です。
以上より、熱を吸収したのは過程\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。
この設問における重要なポイント
- 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) の各項の符号を判断する。
- \(\Delta U\) の符号は温度変化で判断 (\(T \propto PV\))。
- \(W’\) の符号は体積変化で判断(膨張なら \(W’>0\)、圧縮なら \(W'<0\))。
具体的な解説と立式
各過程について \(Q\) の符号を調べます。
- 過程\(\mathrm{I}\) (等温圧縮): \(\Delta U = 0\), \(W’ < 0\)。よって \(Q = W’ < 0\)。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積加熱): \(W’ = 0\), \(\Delta U > 0\)。よって \(Q = \Delta U > 0\)。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧加熱): \(\Delta U > 0\), \(W’ > 0\)。よって \(Q = \Delta U + W’ > 0\)。
- 過程\(\mathrm{IV}\) (断熱膨張): \(Q = 0\)。
したがって、熱を吸収した過程は\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
定性的な判断なので、計算は不要です。
気体が熱を吸収するかどうかは、エネルギーの収支で決まります。
- 過程\(\mathrm{I}\): 温度は変わらないのに、圧縮されて仕事をされています(臨時収入)。貯金(内部エネルギー)を増やさずに臨時収入があったのは、その分だけ熱を外に捨てた(放出した)からです。→ 放出
- 過程\(\mathrm{II}\): 仕事はしていないのに、温度が上がっています。これは、外部から熱をもらった(吸収した)ことを意味します。→ 吸収
- 過程\(\mathrm{III}\): 温度が上がり、さらに膨張して仕事をしています。貯金を増やし(内部エネルギー増)、さらに支出もした(仕事)のですから、かなりの量の熱を外部からもらった(吸収した)はずです。→ 吸収
- 過程\(\mathrm{IV}\): 「断熱」という名前の通り、熱の出入りはありません。
熱を吸収した過程は\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。それぞれ定積加熱、定圧加熱と呼ばれる過程であり、外部から熱が供給されることで温度が上昇したり、膨張したりします。
問(3) 内部エネルギーが増加した過程はどれか。
思考の道筋とポイント
「内部エネルギーが増加した」とは、「温度が上昇した」ことと同じ意味です。したがって、各過程で温度が上昇しているものを探します。
温度の変化は、\(P-V\)グラフ上で点が原点から遠ざかるか(温度上昇)、近づくか(温度下降)で判断できます。
- 過程\(\mathrm{I}\) (等温変化): 温度は一定なので、内部エネルギーは変化しません。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積変化): グラフの矢印は、原点から遠ざかる向き(\(PV\)積が増加する向き)に進んでいます。よって、温度は上昇し、内部エネルギーは増加します。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧変化): グラフの矢印は、原点から遠ざかる向き(\(PV\)積が増加する向き)に進んでいます。よって、温度は上昇し、内部エネルギーは増加します。
- 過程\(\mathrm{IV}\) (断熱変化): これは「断熱膨張」です。外部に仕事をするエネルギーを内部エネルギーから供給するため、内部エネルギーは減少します。したがって、温度は下降します。グラフ上でも、矢印は原点に近づく向きに進んでいることが確認できます。
以上より、内部エネルギーが増加したのは過程\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギーの増加 ⇔ 温度の上昇
- 温度の上昇 ⇔ \(PV\)積の増加 ⇔ \(P-V\)グラフ上で原点から遠ざかる動き
具体的な解説と立式
各過程について \(\Delta U\) の符号を調べます。
- 過程\(\mathrm{I}\) (等温変化): \(\Delta T = 0\) なので \(\Delta U = 0\)。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積変化): \(PV\)積が増加するので \(\Delta T > 0\)、よって \(\Delta U > 0\)。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧変化): \(PV\)積が増加するので \(\Delta T > 0\)、よって \(\Delta U > 0\)。
- 過程\(\mathrm{IV}\) (断熱膨張): 膨張して仕事をする(\(W’>0\))が、熱は入ってこない(\(Q=0\))。熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) より、\(\Delta U = -W’ < 0\)。
したがって、内部エネルギーが増加した過程は\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。
使用した物理公式
- 内部エネルギーと温度の関係: \(\Delta U \propto \Delta T\)
- 温度とPV積の関係: \(T \propto PV\)
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W’\)
定性的な判断なので、計算は不要です。
内部エネルギーが増えるのは、温度が上がるときです。温度が上がるかどうかは、\(P-V\)グラフで点が原点から遠ざかっているかどうかでわかります。
- 過程\(\mathrm{I}\): 等温なので温度は変わりません。
- 過程\(\mathrm{II}\), \(\mathrm{III}\): どちらも矢印は原点から離れる向きに進んでいるので、温度は上がっています。
- 過程\(\mathrm{IV}\): 矢印は原点に向かって進んでいるので、温度は下がっています。
したがって、内部エネルギーが増加したのは過程\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。
内部エネルギーが増加した過程は\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)です。これは、(2)で熱を吸収した過程と一致しており、物理的に妥当な結論です(断熱圧縮の場合を除く)。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(P-V\)グラフの総合的な解釈能力:
- 核心: この問題の根幹は、\(P-V\)グラフという一つの図から、「仕事」「熱」「内部エネルギー」という熱力学第一法則の3要素に関する情報を、多角的に引き出す能力です。
- 理解のポイント:
- 形状 → 変化の種類: グラフの線の形状(垂直、水平、緩やかな曲線、急な曲線)から、4つの基本的な状態変化(定積、定圧、等温、断熱)を即座に同定できることが全ての出発点です。
- 面積 → 仕事: グラフの下側の面積が「仕事」を表し、体積が増加(膨張)すれば気体が仕事をし、体積が減少(圧縮)すれば気体が仕事をされる、という関係を理解していること。
- \(PV\)積 → 温度: グラフ上の点の \(PV\) 積が「絶対温度」の指標となり、原点からの距離で温度の高低を視覚的に判断できること。
- 熱力学第一法則の定性的な応用:
- 核心: 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) を、具体的な数値計算ではなく、各項の符号(プラス、マイナス、ゼロ)の組み合わせを考えることで、定性的な判断に用いる能力が問われます。
- 理解のポイント:
- エネルギー収支: この法則は「収入(\(Q\))=貯金(\(\Delta U\))+支出(\(W’\))」というエネルギーの収支関係を表しています。
- 論理的推論: 例えば、「貯金がゼロ(\(\Delta U=0\))なのに支出があった(\(W’>0\))」ならば、「必ず収入があった(\(Q>0\))はずだ」というように、2つの項の符号が分かれば、残りの1つの項の符号を論理的に推論することができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 熱サイクルの効率を問う問題: (例:カルノーサイクル)。各過程で吸収・放出する熱量や、1サイクルでする正味の仕事をグラフから考察し、熱効率 \(\eta = \frac{W’}{Q_{\text{in}}}\) を計算または比較する問題。
- \(P-T\)グラフや\(V-T\)グラフの読み取り: 同じ状態変化を、異なる種類のグラフ(\(P-T\)グラフや\(V-T\)グラフ)で表現させたり、読み取らせたりする問題。各グラフで、定圧・定積・等温・断熱変化がどのような線で描かれるかを整理しておく必要があります。
- 状態変化の組み合わせ: 複数の状態変化を組み合わせた過程全体での \(\Delta U, Q, W’\) の総和を求める問題。各過程でそれぞれの値を計算・判断し、最後に足し合わせます。
- 初見の問題での着眼点:
- まず全過程を分類する: グラフを見たら、まず機械的に過程\(\mathrm{I}\)〜\(\mathrm{IV}\)がそれぞれ何変化なのかを特定し、グラフに書き込みます。
- 温度変化を矢印で書き込む: 各過程の始点と終点で、原点に近づいているか遠ざかっているかを判断し、温度の上昇(↗)または下降(↘)を示す矢印を書き込むと、\(\Delta U\) の符号が一目瞭然になります。
- 仕事の有無を判断する: 体積が変化している過程(膨張・圧縮)と、変化していない過程(定積)を区別し、\(W’\) がプラス、マイナス、ゼロのどれになるかを判断します。
- 熱力学第一法則の表を作る: 各過程について、\(\Delta U, W’, Q\) の符号を表にまとめると、思考が整理され、ミスを防げます。
過程 変化の種類 \(\Delta U\) \(W’\) \(Q = \Delta U + W’\) \(\mathrm{I}\) 等温圧縮 \(0\) \(-\) \(-\) (放出) \(\mathrm{II}\) 定積加熱 \(+\) \(0\) \(+\) (吸収) \(\mathrm{III}\) 定圧加熱 \(+\) \(+\) \(+\) (吸収) \(\mathrm{IV}\) 断熱膨張 \(-\) \(+\) \(0\)
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 断熱線と等温線の混同:
- 誤解: どちらの曲線が断熱で、どちらが等温かを見分けられない。
- 対策: 「断熱の方が傾きが急」と覚えるのが基本です。物理的な理由としては、断熱膨張では内部エネルギーを消費して仕事をするため、同じだけ膨張しても等温変化より温度が下がり、圧力がより大きく低下するからです。
- 温度変化の判断ミス:
- 誤解: 過程\(\mathrm{II}\)や\(\mathrm{III}\)で、圧力が上がっているからといって、必ずしも温度が上がるとは限らない、などと混乱してしまう。
- 対策: 温度変化の判断基準は、ただ一つ「\(PV\)積の変化」です。グラフ上で点が原点に近づくか遠ざかるか、という幾何学的なイメージで判断するのが最も確実で簡単です。
- 熱の吸収・放出の判断ミス:
- 誤解: 過程\(\mathrm{I}\)(等温圧縮)で、圧縮されて仕事をされている(\(W'<0\))から、エネルギーをもらっているはずだ、と勘違いし、熱を吸収すると判断してしまう。
- 対策: 必ず熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W’\) に立ち返ります。過程\(\mathrm{I}\)では、温度が一定なので \(\Delta U\) はゼロ、圧縮されているので \(W’\) はマイナスです。したがって、\(Q = 0 + (\text{負})\) となり、\(Q\) は明らかに負(放出)です。直感に頼らず、法則に基づいて判断する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- グラフ形状による変化の同定:
- 選定理由: (1)の問いに答えるため、まず各過程がどの種類の変化かを特定する必要があります。\(P-V\)グラフの線の形状は、状態変化の種類を視覚的に表現したものであり、これを読み取ることが第一歩です。
- 適用根拠: 定圧(\(P=\text{一定}\))、定積(\(V=\text{一定}\))、等温(\(PV=\text{一定}\))、断熱(\(PV^\gamma=\text{一定}\))という各変化の定義式が、そのままグラフ上の線の形(水平線、垂直線、双曲線など)に対応しているためです。
- 熱力学第一法則の定性的利用:
- 選定理由: (2)の「熱を吸収したか」という問いに答えるためです。熱の出入り \(Q\) は、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と仕事 \(W’\) の両方に関係するため、これらの収支をまとめる法則である熱力学第一法則が必要です。
- 適用根拠: エネルギー保存則という物理学の大原則に基づいているため、あらゆる過程に適用できます。
- \(T \propto PV\) の関係の利用:
- 選定理由: (3)の「内部エネルギーが増加したか」という問いに答えるためです。内部エネルギーの変化は温度変化と等価であり、\(P-V\)グラフから温度変化を読み取るための最も直接的な手段がこの比例関係です。
- 適用根拠: 理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) から直接導かれる、厳密な関係式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 4つの変化の性質を完璧に覚える: 定積・定圧・等温・断熱の4つの変化について、グラフの形状、仕事の有無、熱力学第一法則の式の形をセットで完璧に暗記しておくことが、この種の問題を迅速かつ正確に解くための最大の鍵です。
- グラフに情報を書き込む: 問題のグラフのコピーを取り、各過程の横に「定積」「断熱」などの種類、\(\Delta U, W’, Q\) の符号(+, -, 0)を書き込んでいくと、頭の中が整理され、ケアレスミスを防げます。
- 消去法で考える: (2)で熱を吸収した過程を探す際、「まず断熱(\(\mathrm{IV}\))は\(Q=0\)だから除外」「次に温度が一定で圧縮されている\(\mathrm{I}\)は\(Q<0\)なので除外」「残った\(\mathrm{II}\)と\(\mathrm{III}\)が答えだ」というように、消去法で考えると論理的に間違いなく答えにたどり着けます。
27 代表的変化のまとめ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は、\(P-V\)グラフ、\(V-T\)グラフ、\(P-T\)グラフの相互変換に関する標準的な問題であり、模範解答で示されているアプローチが最も教育的で効率的であるため、本解説では有益な別解の提示は行いません。「相違点に関する注記」は省略します。
この問題のテーマは「状態変化を表す各種グラフの相互変換」です。気体の状態変化(定積、定圧、等温)が、\(P-V\)グラフ、\(V-T\)グラフ、\(P-T\)グラフ上でそれぞれどのような線として描かれるかを理解し、あるグラフから別のグラフへと描き直す能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 理想気体の状態方程式: すべてのグラフの変換は、理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) に基づいて行われます。この式を、各グラフの軸に対応する変数についての関係式に変形することが基本です。
- 各状態変化のグラフ上の表現:
- 定積変化 (\(V=\text{一定}\)): \(P-V\)グラフでは垂直線、\(V-T\)グラフでは水平線、\(P-T\)グラフでは原点を通る直線。
- 定圧変化 (\(P=\text{一定}\)): \(P-V\)グラフでは水平線、\(V-T\)グラフでは原点を通る直線、\(P-T\)グラフでは水平線。
- 等温変化 (\(T=\text{一定}\)): \(P-V\)グラフでは双曲線、\(V-T\)グラフでは垂直線、\(P-T\)グラフでは垂直線。
- 気体の仕事と体積変化: 気体が仕事をするのは体積が増加(膨張)する過程、仕事をされるのは体積が減少(圧縮)する過程です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 図a (\(P-V\)→\(V-T\)):
- まず、元の\(P-V\)グラフから各過程\(\mathrm{I}, \mathrm{II}, \mathrm{III}\)が何変化(定積、等温、定圧)であるかを特定します。
- 各過程について、\(V-T\)グラフ上ではどのような線になるかを、上記の対応関係に基づいて考えます。
- 各過程の始点と終点がつながるように、矢印の向きに注意しながらグラフを描きます。
- 図b (\(P-T\)→\(P-V\)):
- 同様に、元の\(P-T\)グラフから各過程\(\mathrm{I}, \mathrm{II}, \mathrm{III}\)が何変化であるかを特定します。
- 各過程について、\(P-V\)グラフ上ではどのような線になるかを考えます。
- グラフを描き、体積が減少(圧縮)している過程を特定して、仕事に関する問いに答えます。
図aのグラフ変換 (\(P-V\)グラフ → \(V-T\)グラフ)
思考の道筋とポイント
まず、元の\(P-V\)グラフ(図a)の各過程が何変化であるかを特定します。
- 過程\(\mathrm{I}\): グラフが垂直な直線なので、体積一定の定積変化です。矢印は上向きなので、圧力は上昇しています。
- 過程\(\mathrm{II}\): 問題文より等温変化です。矢印は右下向きなので、体積は増加(膨張)、圧力は減少しています。
- 過程\(\mathrm{III}\): グラフが水平な直線なので、圧力一定の定圧変化です。矢印は左向きなので、体積は減少(圧縮)しています。
次に、これらの変化を\(V-T\)グラフ(縦軸\(V\)、横軸\(T\))に描き直します。
- 過程\(\mathrm{I}\) (定積加熱): 体積\(V\)が一定なので、グラフは水平な直線になります。また、定積変化で圧力が上昇しているので、状態方程式 \(P=\frac{nR}{V}T\) より、温度\(T\)も上昇しているはずです。したがって、グラフは左から右への水平な矢印になります。
- 過程\(\mathrm{II}\) (等温膨張): 温度\(T\)が一定なので、グラフは垂直な直線になります。体積は増加しているので、グラフは下から上への垂直な矢印になります。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧冷却): 圧力\(P\)が一定なので、状態方程式 \(V=\frac{nR}{P}T\) より、体積\(V\)と温度\(T\)は比例関係にあります。したがって、グラフは原点を通る直線になります。体積が減少しているので、矢印は原点に向かう向きになります。
これらの3つの過程を、サイクルが閉じるようにつなぎ合わせることで、求めるグラフが完成します。
この設問における重要なポイント
- \(P-V\)グラフの形状から、各過程の種類(定積、等温、定圧)を正確に読み取る。
- 各変化が、\(V-T\)グラフ上でどのような線に対応するかを理解している。
- 状態方程式を用いて、各過程での温度変化の向き(上昇か下降か)を判断する。
具体的な解説と立式
- 過程\(\mathrm{I}\) (定積変化): \(V=\text{一定}\)。\(P-V\)グラフで\(P\)が増加。状態方程式 \(PV=nRT\) で\(V\)が一定なので、\(P \propto T\)。よって\(T\)は上昇。→ \(V-T\)グラフでは、\(V\)が一定のまま\(T\)が増加するので、右向きの水平線。
- 過程\(\mathrm{II}\) (等温変化): \(T=\text{一定}\)。\(P-V\)グラフで\(V\)が増加。→ \(V-T\)グラフでは、\(T\)が一定のまま\(V\)が増加するので、上向きの垂直線。
- 過程\(\mathrm{III}\) (定圧変化): \(P=\text{一定}\)。\(P-V\)グラフで\(V\)が減少。状態方程式 \(PV=nRT\) で\(P\)が一定なので、\(V \propto T\)。よって\(T\)も減少。→ \(V-T\)グラフでは、\(V\)と\(T\)が比例関係を保ちながら減少するので、原点に向かう直線。
これらの線をつなぎ合わせると、模範解答の図aのグラフが得られます。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(PV=nRT\)
グラフの概形を描く問題なので、計算は不要です。
\(P-V\)グラフのサイクルを、各過程の性質を正しく解釈することで、\(V-T\)グラフに変換することができました。各過程の始点と終点がうまくつながり、閉じたサイクルになっていることを確認します。
図bのグラフ変換 (\(P-T\)グラフ → \(P-V\)グラフ) と仕事
思考の道筋とポイント
グラフの変換
まず、元の\(P-T\)グラフ(図b)の各過程が何変化であるかを特定します。
- 過程\(\mathrm{I}\): グラフが水平な直線なので、圧力一定の定圧変化です。矢印は右向きなので、温度は上昇しています。
- 過程\(\mathrm{II}\): グラフが原点を通る直線なので、\(P \propto T\) の関係があります。状態方程式 \(P=\frac{nR}{V}T\) と比較すると、これは体積\(V\)が一定の定積変化であることがわかります。矢印は左下向きなので、圧力・温度ともに下降しています。
- 過程\(\mathrm{III}\): グラフが垂直な直線なので、温度一定の等温変化です。矢印は上向きなので、圧力は上昇しています。
次に、これらの変化を\(P-V\)グラフ(縦軸\(P\)、横軸\(V\))に描き直します。
- 過程\(\mathrm{I}\) (定圧加熱): 圧力\(P\)が一定なので、グラフは水平な直線になります。温度が上昇しているので、状態方程式 \(V=\frac{nR}{P}T\) より、体積\(V\)も増加しているはずです。したがって、グラフは左から右への水平な矢印になります。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積冷却): 体積\(V\)が一定なので、グラフは垂直な直線になります。圧力が下降しているので、グラフは上から下への垂直な矢印になります。
- 過程\(\mathrm{III}\) (等温圧縮): 温度\(T\)が一定なので、グラフは双曲線(等温線)になります。圧力が上昇しているので、状態方程式 \(V=\frac{nRT}{P}\) より、体積\(V\)は減少しているはずです。したがって、矢印は双曲線に沿って左上に向かう向きになります。
仕事について
「気体が仕事をされた」過程とは、体積が減少する「圧縮」の過程です。上記で描き直した\(P-V\)グラフを見て、体積\(V\)(横軸)が減少している(矢印が左向きの)過程を探します。
この設問における重要なポイント
- \(P-T\)グラフの形状から、各過程の種類(定圧、定積、等温)を正確に読み取る。
- 特に「原点を通る直線」が定積変化に対応することを見抜く。
- 各変化が、\(P-V\)グラフ上でどのような線に対応するかを理解している。
- 「仕事をされた」過程は「圧縮」(体積減少)の過程である。
具体的な解説と立式
- 過程\(\mathrm{I}\) (定圧変化): \(P=\text{一定}\)。\(P-T\)グラフで\(T\)が増加。状態方程式 \(PV=nRT\) で\(P\)が一定なので、\(V \propto T\)。よって\(V\)も増加。→ \(P-V\)グラフでは、\(P\)が一定のまま\(V\)が増加するので、右向きの水平線。
- 過程\(\mathrm{II}\) (定積変化): \(P-T\)グラフで原点を通る直線なので \(P \propto T\)。状態方程式 \(P=\frac{nR}{V}T\) と比較して、\(V=\text{一定}\)。\(P\)が減少しているので、\(P-V\)グラフでは、\(V\)が一定のまま\(P\)が減少するので、下向きの垂直線。
- 過程\(\mathrm{III}\) (等温変化): \(T=\text{一定}\)。\(P-T\)グラフで\(P\)が増加。状態方程式 \(PV=nRT\) で\(T\)が一定なので、\(PV=\text{一定}\)。\(P\)が増加すれば\(V\)は減少。→ \(P-V\)グラフでは、双曲線に沿って左上向き。
これらの線をつなぎ合わせると、模範解答の図bのグラフが得られます。
気体が仕事をされたのは、体積が減少する圧縮の過程です。グラフより、体積が減少しているのは過程\(\mathrm{III}\)です。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(PV=nRT\)
グラフの概形を描く問題なので、計算は不要です。
\(P-T\)グラフのサイクルを、各過程の性質を正しく解釈することで、\(P-V\)グラフに変換することができました。
仕事に関する問いでは、体積が減少する過程\(\mathrm{III}\)が圧縮過程であり、気体が仕事をされた過程であると正しく判断できました。
気体が仕事をされた過程は、過程\(\mathrm{III}\)。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 理想気体の状態方程式の多様な表現:
- 核心: この問題の根幹は、理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) を、考察の対象となるグラフの軸に合わせて自在に変形し、変数間の関係を読み取る能力です。
- 理解のポイント:
- \(P-V\)グラフ: \(T = \frac{PV}{nR}\) → 温度は\(PV\)積に比例。
- \(V-T\)グラフ: \(V = \frac{nR}{P}T\) → 定圧変化では、\(V\)は\(T\)に比例し、グラフは原点を通る直線になる。
- \(P-T\)グラフ: \(P = \frac{nR}{V}T\) → 定積変化では、\(P\)は\(T\)に比例し、グラフは原点を通る直線になる。
このように、どの変数を定数と見なすかによって、残りの2変数の関係(比例、反比例、一定など)が導かれ、それがグラフ上の線の形を決定します。
- 3種類のグラフにおける状態変化の表現:
- 核心: 定積・定圧・等温という3つの基本的な状態変化が、\(P-V\), \(V-T\), \(P-T\) という3種類のグラフ上で、それぞれどのような線として描かれるかを体系的に理解していることが、この問題を解くための直接的な知識となります。
- 理解のポイント: 以下の対応表を頭の中で整理できているかが重要です。
変化の種類 \(P-V\)グラフ \(V-T\)グラフ \(P-T\)グラフ 定積 (\(V=\text{一定}\)) 垂直線 水平線 原点を通る直線 定圧 (\(P=\text{一定}\)) 水平線 原点を通る直線 水平線 等温 (\(T=\text{一定}\)) 双曲線 垂直線 垂直線
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- グラフの相互変換の全パターン: \(P-V \leftrightarrow V-T\), \(V-T \leftrightarrow P-T\) など、あらゆる組み合わせの変換問題。上記の対応表を使いこなす練習になります。
- 断熱変化を含むグラフ変換: 断熱変化(\(PV^\gamma=\text{一定}\))がサイクルに含まれる場合のグラフ変換。断熱線は等温線より傾きが急な曲線になることや、\(TV^{\gamma-1}=\text{一定}\) などの関係式を用いて、他のグラフ上での軌跡を考察します。
- グラフから熱効率を求める問題: 描かれたサイクルについて、各過程での熱の吸収・放出量を計算し、熱効率 \(\eta = \frac{W’}{Q_{\text{in}}}\) を求める問題。グラフの変換能力は、その前段階として不可欠です。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認する: まず、与えられたグラフが \(P-V\), \(V-T\), \(P-T\) のどれであるかを確認します。
- 各過程を分類する: グラフの線の形状から、各過程が定積・定圧・等温のどれに対応するかを特定します。特に、\(V-T\)グラフや\(P-T\)グラフにおける「原点を通る直線」が、それぞれ「定圧」「定積」に対応することを見抜くのが鍵です。
- 変化の向き(矢印)を確認する: 各過程で、グラフ上の変数がどのように変化しているか(増加/減少)を確認します。これは、変換後のグラフでの矢印の向きや、仕事の正負を判断する上で重要です。
- 対応表を元に変換する: 頭の中の対応表に従って、変換後のグラフの各過程の線の形状を決定し、サイクルがつながるように描きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(V-T\)グラフと\(P-T\)グラフの混同:
- 誤解: どちらのグラフでも「原点を通る直線」が登場するため、どちらが定圧でどちらが定積か混乱してしまう。
- 対策: 状態方程式 \(PV=nRT\) に立ち返るのが最も確実です。
- \(V-T\)グラフ(\(V\)が縦軸、\(T\)が横軸): \(V = (\frac{nR}{P})T\)。傾きが \(\frac{nR}{P}\) であり、\(P\) が一定(定圧)のときに原点を通る直線になります。
- \(P-T\)グラフ(\(P\)が縦軸、\(T\)が横軸): \(P = (\frac{nR}{V})T\)。傾きが \(\frac{nR}{V}\) であり、\(V\) が一定(定積)のときに原点を通る直線になります。
- グラフの形状の暗記ミス:
- 誤解: 例えば、等温変化を\(P-V\)グラフ上で直線だと勘違いするなど、対応関係を間違えて覚えてしまう。
- 対策: すべての基本は状態方程式 \(PV=nRT\) です。もし暗記に自信がなければ、その都度、状態方程式から関係式を導き出す練習をしましょう。例えば、等温変化なら \(T\) が定数なので \(PV = (\text{一定})\)。これは反比例のグラフ(双曲線)である、というように論理的に導けます。
- 「仕事」の判断を元のグラフで行うミス:
- 誤解: 図bの\(P-T\)グラフを見て、仕事の有無や正負を判断しようとして混乱する。
- 対策: 気体がした(された)仕事は、体積の変化によって決まります。したがって、仕事に関する考察は、必ず横軸が体積 \(V\) である\(P-V\)グラフ上で行う、という原則を徹底しましょう。他のグラフから仕事について問われた場合は、まず\(P-V\)グラフに変換してから考えるのが最も安全で確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 理想気体の状態方程式の選択:
- 選定理由: この問題は、気体の3つの状態量 \(P, V, T\) が相互にどのように関係しながら変化するかを問うています。これら3つの量を結びつける唯一の基本法則が、理想気体の状態方程式だからです。
- 適用根拠: グラフ変換のすべてのロジックは、この方程式に基づいています。例えば、「\(P-T\)グラフで原点を通る直線 (\(P \propto T\))」がなぜ「定積変化」なのか、という問いに対する唯一の答えは、「状態方程式 \(P = (\frac{nR}{V})T\) において、傾き \(\frac{nR}{V}\) が一定になるのは \(V\) が一定のときだから」という説明になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- サイクルが一巡することを確認する: グラフを変換した際、始点と終点がきちんとつながり、閉じたループを描いているかを確認しましょう。もしサイクルが閉じなければ、どこかの過程の解釈を間違えている可能性があります。
- 変化の方向(矢印)を一致させる: 変換前のグラフでのサイクルの回転方向(時計回り/反時計回り)と、変換後のグラフでの回転方向は、必ずしも一致しません。各過程の始点と終点の対応関係を一つ一つ確認し、矢印の向きを正しく記入することが重要です。
- 頂点の状態量をメモする: サイクルを構成する各頂点(例:\(\mathrm{I}\)の始点、終点など)の圧力、体積、温度の相対的な大小関係をメモしておくと、グラフ変換の際の矛盾に気づきやすくなります。例えば、図aの\(\mathrm{I}\)の始点を \((V_1, P_1)\) とすると、終点は \((V_1, P_2)\) で \(P_2 > P_1\)。したがって、温度も \(T_2 > T_1\) となり、\(V-T\)グラフでは左から右へ進むことが確定します。
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28 代表的変化のまとめ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2)の別解: 各気体の仕事量を個別に計算する解法
- 主たる解法が、AとBの熱力学第一法則の式を連立させて仕事\(W’\)を消去するのに対し、別解では、まずBの等温変化から仕事の量を具体的に計算し、その結果を用いてAに与えられた熱量\(Q_1\)を求め、最終的に\(Q_2\)を導出します。
- 問(2)の別解: 各気体の仕事量を個別に計算する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理プロセスの具体化: Aがした仕事とBがされた仕事が、具体的にどのような物理量で表されるのかを計算過程を通して明確に理解できます。
- 思考の多角化: 「系全体で見て仕事を消去する」という抽象的なアプローチと、「個別の仕事量を計算して収支を合わせる」という具体的なアプローチの両方を学ぶことで、問題解決能力の幅が広がります。
- 計算練習: 等温変化における仕事の計算(\(W’ = nRT \ln(V_2/V_1)\))は、大学レベルの物理学にもつながる重要な計算であり、その考え方に触れる良い機会となります。(ただし、高校物理の範囲で解けるように対数を使わない方法で解説します)
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「連結された気体の状態変化と熱力学第一法則」です。ピストンで連結された2つの気体が、互いに影響を及ぼしながら状態変化する複雑な状況を、状態方程式と熱力学第一法則を駆使して分析する、総合的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力のつりあい: なめらかに動くピストンで仕切られた2つの気体は、ピストンが静止している限り、常に圧力が等しくなります。
- 理想気体の状態方程式: 各気体の状態変化を追跡するための基本法則 (\(PV=nRT\))。
- 等温変化(ボイルの法則): B内は温度が \(T_0\) に保たれているため、等温変化 (\(PV=\text{一定}\)) をします。
- 熱力学第一法則: 各気体、および系全体におけるエネルギーの保存則 (\(Q = \Delta U + W’\))。
- 単原子分子気体の内部エネルギー: 内部エネルギーの変化が \(\Delta U = nC_V\Delta T\) で与えられること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まずBの等温変化に着目し、変化後の圧力 \(P\) を求めます。Aの圧力もこれに等しいことを利用し、Aの体積変化と合わせて、Aの状態方程式から変化後の温度 \(T_A\) を求めます。最後に、内部エネルギーの公式に温度変化を代入します。
- (2)では、AとBそれぞれについて熱力学第一法則の式を立てます。Aがした仕事とBがされた仕事の大きさが等しいことを利用して2つの式を連立させ、未知の仕事の項を消去することで、\(Q_1\) と \(Q_2\) の関係式を導きます。