「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(力学111〜116問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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力学範囲 111~116

111 万有引力の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 近似計算の別解: 1次近似(マクローリン展開)を用いる解法
      • 模範解答が \(R+h \approx R\) という直接的な近似を用いるのに対し、別解では \((1+x/R)^{-1}\) の形にしてから1次近似式を適用します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 数学的厳密性の向上: 近似計算の数学的な背景(テイラー展開)を学ぶことで、物理で頻出する近似式の妥当性への理解が深まります。
    • 思考の深化: なぜ単純な近似がうまくいくのかを、より高次の数学的視点から確認することができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「万有引力による位置エネルギーの基準点の変更」と「近似計算」です。通常、万有引力による位置エネルギーは無限遠点を基準(\(0\))としますが、この問題では地表を基準(\(0\))とした場合に、位置エネルギーがどのように表現されるかを考えます。さらに、その結果が、我々が地上付近で使っている位置エネルギーの公式\(mgh\)とどのようにつながるのかを、近似計算を通して理解することが目標です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力による位置エネルギー: 無限遠点を基準としたときの位置エネルギーが \(U(r) = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) で与えられること。
  2. 位置エネルギーの差の不変性: 位置エネルギーの基準点をどこに取っても、2点間の位置エネルギーの「差」は変わらないこと。
  3. 基準点の変更: 基準点を変更するということは、すべての点の位置エネルギーの値に、ある一定値を足したり引いたりすることと同じである。
  4. 近似計算: \(h \ll R\) という条件を用いて、複雑な式を単純化するテクニック。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、無限遠点を基準としたときの位置エネルギーの公式を用いて、地表(\(r=R\))と高さ\(h\)の点(\(r=R+h\))での位置エネルギーをそれぞれ計算します。
  2. 「地表を基準にする」とは、地表での位置エネルギーが\(0\)になるように、すべての点の位置エネルギーの値を補正することです。具体的には、高さ\(h\)の点での(無限遠基準の)位置エネルギーから、地表での(無限遠基準の)位置エネルギーを差し引きます。
  3. 得られた結果を、\(h \ll R\) の条件を用いて近似し、簡略化します。

地表を基準とした位置エネルギー

思考の道筋とポイント
位置エネルギーは、基準点をどこに置くかでその値が変わりますが、2つの点の間の「高さの差」ならぬ「エネルギーの差」は、基準点の取り方によらず常に一定です。この性質を利用します。
「地表を基準とした、高さ\(h\)の点の位置エネルギー」とは、言い換えれば「地表から高さ\(h\)の点まで物体を持ち上げるのに必要な仕事」であり、これは「高さ\(h\)の点と地表との位置エネルギーの差」に他なりません。
したがって、無限遠点を基準とした位置エネルギーの公式を使って、高さ\(h\)の点での値と地表での値を計算し、その差を求めることで答えが得られます。
この設問における重要なポイント

  • 地表基準の位置エネルギー \(U’_{\text{h}}\) = (無限遠基準での高さ\(h\)の位置エネルギー) – (無限遠基準での地表の位置エネルギー)。
  • \(U’_{\text{h}} = U(R+h) – U(R)\) を計算する。
  • 位置エネルギーの公式の負号(マイナス)の扱いに注意する。

具体的な解説と立式
無限遠点を基準としたとき、地球の中心から距離\(r\)の点にある質量\(m\)の物体の位置エネルギーは、
$$ U(r) = -G\frac{Mm}{r} $$
です。
この公式を用いて、地表と高さ\(h\)の点での位置エネルギーを計算します。

  • 地表での位置エネルギー: \(U(R) = -G\displaystyle\frac{Mm}{R}\)
  • 高さ\(h\)の点での位置エネルギー: \(U(R+h) = -G\displaystyle\frac{Mm}{R+h}\)

地表を新たな基準(\(0\))としたとき、高さ\(h\)の点での位置エネルギーを\(U’_{\text{h}}\)とすると、これは2点間の位置エネルギーの差に等しいので、
$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &= U(R+h) – U(R)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 万有引力による位置エネルギー: \(U(r) = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)
  • 位置エネルギーの基準点の変更
計算過程

上記で立式した \(U’_{\text{h}} = U(R+h) – U(R)\) に、具体的な式を代入します。
$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &= \left(-G\frac{Mm}{R+h}\right) – \left(-G\frac{Mm}{R}\right) \\[2.0ex]
&= G\frac{Mm}{R} – G\frac{Mm}{R+h}
\end{aligned}
$$
共通因数 \(GMm\) で括り、通分します。
$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &= GMm\left(\frac{1}{R} – \frac{1}{R+h}\right) \\[2.0ex]
&= GMm\left(\frac{(R+h) – R}{R(R+h)}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{GMmh}{R(R+h)}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

位置エネルギーは、どこを「高さ0メートル」と決めるかで値が変わる「高さ」のようなものです。宇宙スケールでは、普通は「無限に遠い場所」を高さ0メートルと決めます。このルールだと、地表も高さ\(h\)の点も、どちらもマイナスの高さ(エネルギー)になります。
この問題は、「地表を新しい高さ0メートル地点と決めたら、高さ\(h\)の点の高さは何メートルになりますか?」と聞いているのと同じです。
答えは単純に、2つの地点の「高さの差」を計算すれば求まります。

結論と吟味

地表を基準としたとき、高さ\(h\)の点での万有引力の位置エネルギーは \(U’_{\text{h}} = \displaystyle\frac{GMmh}{R(R+h)}\) と表せます。
地表より高い位置(\(h>0\))なので、位置エネルギーは正の値となっており、物理的に妥当です。

解答 (地表を基準とした位置エネルギー) \(\displaystyle\frac{GMmh}{R(R+h)}\)

\(h \ll R\)の場合の近似

思考の道筋とポイント
次に、得られた結果を \(h \ll R\) の条件で近似します。これは、物体の高さ\(h\)が地球の半径\(R\)に比べて非常に小さい、つまり地表付近での運動を考えることに相当します。
この条件を用いると、式の分母に含まれる \(R+h\) は、ほとんど\(R\)と変わらないと見なすことができます。この近似を適用し、式を整理します。
この設問における重要なポイント

  • 近似条件 \(h \ll R\) を適用すると、\(R+h \approx R\) となる。
  • 問題の指示通り、答えは\(G, M, R\)を用いて表現する。

具体的な解説と立式
地表を基準とした位置エネルギーの厳密な式は、
$$ U’_{\text{h}} = \frac{GMmh}{R(R+h)} $$
です。
ここで、\(h \ll R\) という条件を適用します。これは、\(R\)に比べて\(h\)が非常に小さいので、分母の \(R+h\) はほとんど\(R\)と変わらない、と見なすことを意味します。
$$ R+h \approx R $$
この近似を、\(U’_{\text{h}}\)の式に適用します。

使用した物理公式

  • 近似: \(h \ll R\) のとき \(R+h \approx R\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &\approx \frac{GMmh}{R(R)} \\[2.0ex]
&= \frac{GMm}{R^2}h
\end{aligned}
$$
これが、\(G, M, R\)を用いた近似結果となります。
(参考: ここで地表での重力加速度\(g = G\displaystyle\frac{M}{R^2}\) の関係を使うと、\(U’_{\text{h}} \approx mgh\) となり、我々がよく知る位置エネルギーの公式と一致します。)

この設問の平易な説明

先ほど求めた位置エネルギーの厳密な式は、少し複雑です。しかし、もし考える高さ\(h\)が、地球の半径\(R\)(約6400km)に比べて、ビルの高さや山の高さのように、ごくわずかなものであれば、式を簡単にすることができます。
式の分母にある「\(R+h\)」は、巨大な\(R\)に小さな\(h\)を足したものなので、だいたい\(R\)と同じ、と見なせます(\(6400\text{km} + 1\text{km} \approx 6400\text{km}\))。
この近似を使って式を整理することで、よりシンプルな形で答えを表すことができます。

結論と吟味

\(h \ll R\) の場合、万有引力による位置エネルギー(地表基準)は \(\displaystyle\frac{GMm}{R^2}h\) と近似できることが示されました。
この結果は、我々が普段使っている位置エネルギーの公式\(mgh\)が、実は万有引力の法則を地表付近という限られた範囲で近似したものに他ならない、という物理学の重要な事実を示しています(\(g = GM/R^2\)と対応)。

解答 (\(h \ll R\)の場合) \(\displaystyle\frac{GMm}{R^2}h\)
別解: 近似計算に1次近似(マクローリン展開)を用いる解法

思考の道筋とポイント
主たる解法で行った近似 \(R+h \approx R\) を、より数学的に厳密な1次近似を用いて行う別解です。
この設問における重要なポイント

  • 位置エネルギーの式を \((1+h/R)^{-1}\) の形に変形する。
  • 近似式 \((1+x)^n \approx 1+nx\) (ただし \(|x| \ll 1\))を利用する。

具体的な解説と立式
位置エネルギーの厳密な式を変形します。
$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &= \frac{GMmh}{R(R+h)} \\[2.0ex]
&= \frac{GMmh}{R^2(1+h/R)} \\[2.0ex]
&= \frac{GMmh}{R^2} \cdot (1+h/R)^{-1}
\end{aligned}
$$
条件 \(h \ll R\) は \(|h/R| \ll 1\) と同じ意味なので、近似式 \((1+x)^n \approx 1+nx\) が使えます。
\(x = h/R\), \(n=-1\) と考えると、
$$
\begin{aligned}
(1+h/R)^{-1} &\approx 1 + (-1)\left(\frac{h}{R}\right) \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{h}{R}
\end{aligned}
$$
これを元の式に代入します。

使用した物理公式

  • 1次近似式: \((1+x)^n \approx 1+nx\) (for \(|x| \ll 1\))
計算過程

$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &\approx \frac{GMmh}{R^2} \left(1 – \frac{h}{R}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{GMmh}{R^2} – \frac{GMmh^2}{R^3}
\end{aligned}
$$
ここで、\(h \ll R\) なので、\(h/R\) は非常に小さい値です。したがって、第1項に比べて第2項はさらに \(h/R\) 倍だけ小さいため、無視することができます。
$$
\begin{aligned}
U’_{\text{h}} &\approx \frac{GMmh}{R^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

主たる解法で行った「分母の\(h\)を無視する」という近似は、実は数学で習う「1次近似」という操作とほぼ同じ結果になります。位置エネルギーの式を数学の近似公式を使って変形することで、同じ結論を導くことができます。より丁寧な計算方法、というわけです。

結論と吟味

主たる解法と同じ結果が得られました。この問題においては、分母を直接近似する方が、1次近似式を形式的に適用するよりも直感的で簡単です。しかし、より精密な計算が必要な場合には、この1次近似の方法が役立ちます。

解答 (\(h \ll R\)の場合) \(\displaystyle\frac{GMm}{R^2}h\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 位置エネルギーの基準点の任意性:
    • 核心: この問題の根幹は、物理的に意味があるのは2点間の「位置エネルギーの差」であり、位置エネルギーの基準点(どこをエネルギー\(0\)とするか)は、計算の都合に合わせて任意に選ぶことができる、というエネルギーの基本性質を理解することにあります。
    • 理解のポイント:
      • 無限遠基準: 万有引力では、力が及ばなくなる無限遠点を基準(\(0\))とするのが最も自然で、公式 \(U(r) = -G\frac{Mm}{r}\) が導かれます。
      • 地表基準: この問題のように地表を基準(\(0\))とすることも可能です。その場合、ある点の位置エネルギーは、「無限遠基準でのその点のエネルギー」から「無限遠基準での地表のエネルギー」を差し引くことで計算できます。(\(U’_{\text{h}} = U(R+h) – U(R)\))
      • 差の不変性: どちらの基準を使っても、2点間の位置エネルギーの差は常に同じ値になります。
  • \(mgh\)の正体:
    • 核心: 我々が地表付近で当たり前のように使っている位置エネルギーの公式 \(mgh\) が、実は万有引力による位置エネルギーを「地表を基準」とし、さらに「高さ\(h\)が地球半径\(R\)に比べて非常に小さい」という条件下で近似したものである、という物理学の階層構造を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 厳密な式: 地表基準の位置エネルギーは、厳密には \(U’_{\text{h}} = \frac{GMmh}{R(R+h)}\) です。
      • 近似: \(h \ll R\) のとき、分母の \(R+h \approx R\) と近似できるため、\(U’_{\text{h}} \approx \frac{GMmh}{R^2}\) となります。
      • \(g\)との関係: 地表での重力加速度が \(g=GM/R^2\) と書けることを利用すると、近似された位置エネルギーは \(U’_{\text{h}} \approx mgh\) となり、見慣れた公式に帰着します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 一様な電場中の位置エネルギー: 一様な電場\(E\)中での電気的な位置エネルギーは \(U=qEx\) と表せますが、これも点電荷が作る電場(距離の2乗に反比例)を、非常に狭い範囲で「一様」と近似したものです。本問の重力と万有引力の関係とよく似た構造をしています。
    • 第二宇宙速度(問題110): 地表から無限遠まで飛ぶ問題を解く際には、無限遠基準の位置エネルギーが\(0\)になることを利用します。本問の考え方は、その逆の操作(基準点を無限遠から地表へ変更)と見なすこともできます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 位置エネルギーの基準を確認する: 問題文で位置エネルギーの基準点が指定されているか(「地表を基準とする」など)、あるいは暗黙の了解(万有引力なら無限遠基準)があるかを確認します。
    2. 基準点が異なる場合の対処: もし基準点を変更する必要があるなら、「新しい基準での位置エネルギー = 元の基準での位置エネルギー – 元の基準での新しい基準点のエネルギー」という計算を行います。
    3. 近似条件の確認: 問題文に「\(h \ll R\)」「微小振動」などの言葉があれば、近似計算が必要になるサインです。どの項が他の項に比べて無視できるほど小さいかを見極めます。
    4. \(g\)との関係式を常に意識する: 万有引力の問題では、\(g=GM/R^2\) という関係式は非常に頻繁に使われます。\(G, M\)で表された式を\(g\)で書き直す、あるいはその逆の操作がいつでもできるように準備しておきましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 位置エネルギーの符号ミス:
    • 誤解: 万有引力による位置エネルギーの公式 \(U = -G\frac{Mm}{r}\) の負号(マイナス)を忘れたり、基準点を変更する際の引き算で符号を間違えたりする。
    • 対策: 「無限遠基準では、重力に引かれている物体は必ず負の位置エネルギーを持つ」という基本を徹底しましょう。\(U’_{\text{h}} = U(R+h) – U(R)\) の計算では、\((-G\frac{Mm}{R+h}) – (-G\frac{Mm}{R})\) となり、結果的に正の値になることを丁寧に確認します。
  • 近似の仕方の誤り:
    • 誤解: \(h \ll R\) という条件から、分子にある\(h\)も無視してしまい、答えが\(0\)になってしまう。
    • 対策: 近似は、和や差の形で現れる項に対して適用するのが基本です。「\(R+h\)」という和において、\(R\)に比べて\(h\)が小さいので無視できますが、「\(h\)」単独の項は、それ自体が結果の大きさを決める重要な量なので、無視することはできません。
  • \(mgh\)を万能だと思い込む:
    • 誤解: どんな高さでも位置エネルギーは\(mgh\)で計算できると勘違いし、人工衛星の問題などにも適用してしまう。
    • 対策: \(mgh\)は、あくまで「地表付近で」「重力加速度\(g\)が一定と見なせる範囲での」「近似式」であることを強く認識しましょう。運動のスケールが大きくなれば、必ず万有引力の厳密な位置エネルギーの公式に立ち返る必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 万有引力による位置エネルギー \(U = -G\frac{Mm}{r}\):
    • 選定理由: 物体の移動範囲が広く、重力(万有引力)の大きさが一定と見なせないため、厳密な位置エネルギーの定義式を用いる必要があるからです。
    • 適用根拠: 位置エネルギーの定義は、基準点からその位置まで、保存力に逆らって物体を運ぶのに必要な仕事です。万有引力\(F(r)=G\frac{Mm}{r^2}\)に逆らって、無限遠(基準点)から距離\(r\)の点まで物体を運ぶ仕事を計算(積分)すると、\(\int_\infty^r (-F(r’)) dr’ = -G\frac{Mm}{r}\) となり、この公式が導かれます。
  • 位置エネルギーの差の不変性:
    • 選定理由: 基準点が異なる2つの位置エネルギー表現(無限遠基準と地表基準)をつなぐための、最も基本的な原理だからです。
    • 適用根拠: 位置エネルギーの定義そのものに由来します。基準点を変更することは、すべての点のエネルギーに同じ定数を加えることに相当します。したがって、2点間のエネルギーの差をとると、この定数は相殺され、結果は基準点の選び方によらなくなります。
  • 近似式 \(R+h \approx R\) :
    • 選定理由: 厳密な式を、物理的に意味のある、より単純な形(この場合は\(mgh\)につながる形)にするために必要だからです。
    • 適用根拠: \(h \ll R\) という条件は、数学的には \(h/R\) が\(1\)に比べて非常に小さい微小量であることを意味します。したがって、\(R+h = R(1+h/R)\) において、括弧の中はほぼ\(1\)と見なすことができます。これが、この近似の数学的な根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 通分の計算を丁寧に行う:
    • \(U’_{\text{h}}\)を計算する過程で、\(\frac{1}{R} – \frac{1}{R+h}\) のような分数の引き算が出てきます。ここで焦らず、分母を\(R(R+h)\)として丁寧に
      通分し、分子が \((R+h)-R = h\) となる計算を正確に行いましょう。
  • 近似のプロセスを段階的に踏む:
    1. まず、厳密な式を導出する: \(U’_{\text{h}} = \frac{GMmh}{R(R+h)}\)
    2. 次に、どの近似を使うかを明記する: 「\(h \ll R\) より \(R+h \approx R\) と近似すると」
    3. 近似を適用した式を書く: \(U’_{\text{h}} \approx \frac{GMmh}{R(R)}\)
    4. 最後に、式を整理する: \(U’_{\text{h}} \approx \frac{GMm}{R^2}h\)

    このように、思考のプロセスを段階的に記述することで、論理が明確になり、ミスを防ぐことができます。

  • \(g\)を用いた表現との往復練習:
    • \(G, M, R\)で表された万有引力の問題を解いた後、練習として、その答えを\(g\)を用いて書き直してみる、という習慣をつけると良いでしょう。逆に、\(g\)で表された答えを\(G, M, R\)に戻してみるのも有効です。この往復練習を通じて、両者の関係性が深く理解でき、どちらの形式で問われても対応できるようになります。

112 万有引力の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(角速度\(\omega\)を用いた運動方程式)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: ケプラーの第3法則を用いる解法
      • 主たる解法が運動方程式から直接半径を導出するのに対し、別解では、より一般的な惑星の運動法則である「ケプラーの第3法則」を用いて、より簡潔に答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理法則の関連性の理解: 円運動の運動方程式から、ケプラーの第3法則が導出できるという、物理法則間の階層的な関係を理解することができます。
    • 解法の効率化: ケプラーの第3法則を知っていれば、運動方程式を立てる手間を省き、より少ない計算ステップで簡潔に解に至ることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「人工衛星の円運動とケプラーの法則」です。人工衛星が安定して円軌道を周回するためには、地球からの万有引力が、円運動に必要な向心力としてちょうど供給される必要があります。この力学的な条件と、周期に関する運動学的な条件を結びつけることで、軌道半径を求めます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力の法則: 地球と人工衛星の間に働く引力の大きさが \(F = G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) で与えられること。
  2. 円運動の運動方程式: 円運動をする物体には、向心力\(F\)が働き、\(ma=F\)の関係が成り立つこと。
  3. 向心加速度: 向心加速度の大きさが、角速度\(\omega\)を用いて \(a=r\omega^2\) と表せること。
  4. 周期と角速度の関係: 周期\(T\)と角速度\(\omega\)の間に、\(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\) の関係があること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 人工衛星が円運動するための運動方程式を立てます。このとき、「万有引力 = 向心力」という関係になります。
  2. 向心力を角速度\(\omega\)を用いて表現します(\(F=mr\omega^2\))。
  3. 周期\(T\)が与えられているので、\(\omega\)を\(T\)で書き換えます(\(\omega = 2\pi/T\))。
  4. 最終的に得られた方程式を、求めたい回転半径\(r\)について解きます。

思考の道筋とポイント
静止衛星は、地球の周りを円運動しています。物体が円運動を続けるためには、常に円の中心に向かって引っ張る力(向心力)が必要です。この重要な役割を果たしているのが、地球と衛星の間に働く「万有引力」です。
したがって、「万有引力の大きさ」=「円運動に必要な向心力の大きさ」という関係式を立てることが、この問題の出発点となります。
問題では周期\(T\)が与えられているため、向心力を速さ\(v\)ではなく、周期と直接関係のある角速度\(\omega\)を用いて表現するのが賢明です。
運動方程式を立てた後、角速度\(\omega\)を周期\(T\)で書き換え、求めたい半径\(r\)について式を整理していきます。
この設問における重要なポイント

  • 万有引力が向心力の役割を担っている。
  • 運動方程式: \(ma = F_{\text{万有引力}}\)。
  • 向心加速度を \(a=r\omega^2\) で表現する。
  • 角速度と周期の関係式 \(\omega = 2\pi/T\) を用いて、\(\omega\)を消去する。

具体的な解説と立式
人工衛星の質量を\(m\)、回転半径を\(r\)、角速度を\(\omega\)とします。
人工衛星は、地球からの万有引力を向心力として円運動をしています。
円運動の運動方程式 \(ma=F\) は、
$$
\begin{aligned}
m(r\omega^2) &= G\frac{Mm}{r^2}
\end{aligned}
$$
となります。
問題では、周期\(T\)を用いて答えを表すことが求められているので、角速度\(\omega\)と周期\(T\)の関係式
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} $$
を用いて、\(\omega\)を消去します。

使用した物理公式

  • 円運動の運動方程式: \(mr\omega^2 = F\)
  • 万有引力の法則: \(F = G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)
  • 周期と角速度の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
計算過程

まず、運動方程式の両辺から人工衛星の質量\(m\)を消去します。
$$
\begin{aligned}
r\omega^2 &= G\frac{M}{r^2}
\end{aligned}
$$
この式に、\(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
r\left(\frac{2\pi}{T}\right)^2 &= G\frac{M}{r^2} \\[2.0ex]
r\frac{4\pi^2}{T^2} &= \frac{GM}{r^2}
\end{aligned}
$$
この方程式を、求めたい半径\(r\)について解きます。両辺に \(r^2 T^2\) を掛け、\(4\pi^2\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
r^3 \cdot 4\pi^2 &= GMT^2 \\[2.0ex]
r^3 &= \frac{GMT^2}{4\pi^2}
\end{aligned}
$$
最後に、両辺の3乗根をとります。
$$
\begin{aligned}
r &= \left(\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

人工衛星が地球から落ちてこずに回り続けられるのは、地球が引っぱる力(万有引力)と、円運動によって外に飛び出そうとする勢い(向心力で記述される)が、ちょうどつり合っているからです。
この「万有引力=向心力」という力のバランスの式を立てます。
問題では、1周するのにかかる時間(周期\(T\))がわかっているので、この情報を使うために、向心力の式を周期\(T\)が入った形に書き換えます。
あとは、この式を数学的に変形して、「半径\(r\) = …」の形にすれば答えが求まります。

結論と吟味

静止衛星の回転半径は \(r = \left(\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}\) と求められました。
この式から、中心天体の質量\(M\)が大きいほど、また周期\(T\)が長いほど、より遠くの軌道を回る必要があることがわかります。これは物理的に妥当な結果です。
また、計算過程で得られた \(r^3 = \displaystyle\frac{GM}{4\pi^2}T^2\) という式は、\(r^3\)が\(T^2\)に比例することを示しており、これはケプラーの第3法則として知られています。

解答 \(r = \left(\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}\)
別解: ケプラーの第3法則を用いる解法

思考の道筋とポイント
運動方程式から導かれる重要な結論の一つに、「ケプラーの第3法則」があります。これは、惑星や衛星の運動について、軌道半径の3乗と周期の2乗が比例するという法則です。この法則を公式として知っていれば、運動方程式を立てるプロセスを省略し、より直接的に答えを導くことができます。
この設問における重要なポイント

  • ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{r^3} = \frac{4\pi^2}{GM} = \text{一定}\)。
  • この法則を、求めたい半径\(r\)について解く。

具体的な解説と立式
万有引力を受けて円運動する物体の運動方程式 \(mr\omega^2 = G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) に、\(\omega = 2\pi/T\) を代入して整理すると、
$$ r^3 = \frac{GM}{4\pi^2}T^2 $$
という関係が得られます。これを変形したものがケプラーの第3法則です。
$$ \frac{T^2}{r^3} = \frac{4\pi^2}{GM} \quad (\text{一定}) $$
この法則の式を、求めたい半径\(r\)について解きます。

使用した物理公式

  • ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{r^3} = \frac{4\pi^2}{GM}\)
計算過程

ケプラーの第3法則の式を、まず\(r^3\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
r^3 &= \frac{GMT^2}{4\pi^2}
\end{aligned}
$$
最後に、両辺の3乗根をとります。
$$
\begin{aligned}
r &= \left(\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

天体の周りを回る星や人工衛星には、「軌道の大きさ(半径)の3乗は、1周にかかる時間(周期)の2乗に比例する」という、ケプラーの第3法則という便利な法則が成り立ちます。
この法則を公式として知っていれば、運動の力のバランスをいちいち考えなくても、周期と半径の関係式をすぐに立てることができます。あとは、その式を半径\(r\)について解くだけで、答えが求まります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。ケプラーの第3法則は、円運動の運動方程式と万有引力の法則から導かれる便利な帰結であり、これを知っていると問題をより迅速に解くことができます。

解答 \(r = \left(\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 万有引力と向心力の関係:
    • 核心: この問題の根幹は、人工衛星が地球の周りを安定して円運動し続けるための力学的な条件を理解することにあります。その条件とは、地球が衛星を引く「万有引力」が、円運動を維持するために必要な「向心力」として、過不足なくぴったり供給されている、ということです。
    • 理解のポイント:
      • 運動方程式: この力学的なバランスは、「万有引力 = 向心力」という運動方程式で表されます。
      • 数式表現: \(G\frac{Mm}{r^2} = m a_{\text{向心}}\) となります。ここで、\(a_{\text{向心}}\)は向心加速度です。この1本の式が、この問題の物理的な核心をすべて含んでいます。
  • 運動学的な関係式の利用:
    • 核心: 上記の運動方程式には、運動の状態を表す量(加速度)が含まれています。問題で与えられているのは周期\(T\)なので、加速度を周期\(T\)と関連付ける運動学的な知識が必要になります。
    • 理解のポイント:
      • 加速度と角速度: 向心加速度は、角速度\(\omega\)を用いて \(a_{\text{向心}} = r\omega^2\) と表せます。
      • 角速度と周期: 角速度\(\omega\)は、周期\(T\)と \(\omega = 2\pi/T\) という直接的な関係があります。
      • 連携: これらの関係式を順に運動方程式に代入していくことで、力学的な条件(万有引力)と運動学的な条件(周期)が結びつき、未知数である半径\(r\)を求めることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 惑星の質量を求める問題: ある惑星の周りを公転する衛星の「軌道半径」と「周期」が観測できれば、本問の式(ケプラーの第3法則)を変形することで、中心にある惑星の質量\(M\)を計算することができます。これは、天文学で遠い星の質量を推定する際の基本的な手法です。
    • ブラックホールの質量推定: 銀河の中心にある星々の動きを観測し、その軌道半径と周期から、中心にある超大質量ブラックホールの質量を推定する、といった現代天文学のトピックも、本質的にはこの問題と同じ物理法則に基づいています。
    • 原子模型: 古典的な原子模型(ラザフォード模型)では、電子が原子核の周りをクーロン力を向心力として円運動すると考えます。万有引力をクーロン力に置き換えるだけで、同様の計算ができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 向心力の源泉を特定する: まず、円運動をしている物体に対して、何が向心力の役割を果たしているのかを特定します(万有引力、クーロン力、張力、垂直抗力など)。
    2. 運動方程式を立てる: 「向心力の源泉となる力 = 向心力」という運動方程式を立てます。
    3. 運動学的な量を変換する: 問題で与えられている量(周期\(T\)、速さ\(v\)、角速度\(\omega\)など)に応じて、向心力の表現(\(m v^2/r\) や \(m r\omega^2\))を使い分けたり、関係式(\(v=2\pi r/T\), \(\omega=2\pi/T\))を使って文字を変換したりします。
    4. 未知数について解く: 最終的に得られた方程式を、求めたい未知数について代数的に解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 向心力と万有引力を別の力として数えてしまう:
    • 誤解: 運動方程式を立てる際に、万有引力と向心力を別々の力として両辺に書いてしまう(例: \(ma = F_{\text{万有引力}} – F_{\text{向心力}}\))。
    • 対策: 「向心力」は、力の種類ではなく、力の「役割」や「合力」に付けられた名前であると理解することが重要です。この問題では、万有引力という「実在する力」が、向心力という「役割」を100%担っています。したがって、運動方程式は「(質量)×(加速度)=(実際に働く力)」であり、\(ma = G\frac{Mm}{r^2}\) となります。
  • 角速度\(\omega\)と周期\(T\)の関係の混乱:
    • 誤解: \(\omega = 2\pi T\) や \(\omega = T/(2\pi)\) のように、公式を逆に覚えてしまう。
    • 対策: 単位を考えれば、混同を防ぐことができます。\(\omega\)の単位は [rad/s]、\(T\)の単位は [s] です。\(2\pi\) [rad] を \(T\) [s] で割ることで、正しい単位 [rad/s] が得られる、と確認できます。また、「周期\(T\)が長い(ゆっくり回る)ほど、角速度\(\omega\)は小さい」という直感的な関係からも、\(T\)が分母に来ることがわかります。
  • 3乗根の計算:
    • 誤解: \(r^3 = C\) という式から、\(r = \sqrt[3]{C}\) または \(r=C^{1/3}\) と正しく変形できず、平方根をとってしまうなど、数学的な処理でミスをする。
    • 対策: 物理の問題であっても、最終的な計算は数学のルールに従います。\(r^3\) が出てきたら、答えは3乗根になる、ということを意識しておきましょう。指数の形 \((\dots)^{1/3}\) で書くことに慣れておくと、より複雑な計算にも対応しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 円運動の運動方程式 \(ma=F\):
    • 選定理由: 人工衛星の運動が、力が常に中心を向く「等速円運動」という理想的なモデルで記述できるからです。この運動を支配する基本法則が運動方程式です。
    • 適用根拠: ニュートンの第二法則であり、力学の根幹をなす法則です。円運動の場合、加速度\(a\)が「向心加速度」、力\(F\)が「向心力」という特別な名前で呼ばれますが、法則の本質は全く同じです。
  • 向心加速度の表現としての \(a=r\omega^2\):
    • 選定理由: 問題で与えられているのが周期\(T\)であり、周期は角速度\(\omega\)と直接的な関係(\(\omega=2\pi/T\))にあるため、速さ\(v\)を用いた表現(\(a=v^2/r\))よりも、角速度\(\omega\)を用いた表現の方が計算の見通しが良いからです。
    • 適用根拠: 向心加速度の定義は、速度ベクトルの時間変化率から導かれます。等速円運動では、速度の「大きさ」は変わりませんが、「向き」が常に変化しています。この向きの変化率を計算すると、加速度の大きさが \(v^2/r\) となります。ここに \(v=r\omega\) の関係を代入することで、\(a = (r\omega)^2/r = r\omega^2\) という、もう一つの表現が導かれます。
  • ケプラーの第3法則(別解):
    • 選定理由: 惑星や衛星の円運動(または楕円運動)における、周期と軌道半径の関係を直接与えてくれる、非常に強力で便利な法則だからです。
    • 適用根拠: この法則は、歴史的にはティコ・ブラーエの観測データをケプラーがまとめた経験則ですが、後にニュートンが、自ら発見した「万有引力の法則」と「運動方程式」から数学的に導出できることを示しました。したがって、この法則は、ニュートン力学の論理的な帰結であり、公式として用いることは完全に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字の消去を丁寧に行う:
    • 運動方程式 \(mr\omega^2 = G\frac{Mm}{r^2}\) を立てた後、まず両辺に共通して含まれる衛星の質量\(m\)を消去しましょう。これにより、軌道が衛星自身の質量によらない、という重要な物理的性質が明確になり、式もシンプルになります。
  • 未知数について整理する:
    • 最終的に求めたいのは半径\(r\)なので、式変形の目標は「\(r = \dots\)」の形にすることです。\(r\frac{4\pi^2}{T^2} = \frac{GM}{r^2}\)という式が得られたら、まず\(r\)を含む項をすべて左辺に、それ以外を右辺に集めます。\(r \cdot r^2 = GM \cdot \frac{T^2}{4\pi^2}\)\(r^3 = \frac{GMT^2}{4\pi^2}\)このように、段階的に整理することで、計算ミスを防ぐことができます。
  • 単位による検算:
    • 最終的な答え \(r = (\frac{GMT^2}{4\pi^2})^{1/3}\) の中身の単位を確認します。\(G\)の単位は \([\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{kg}^2]\)、\(M\)は\([\text{kg}]\)、\(T\)は\([\text{s}]\)です。\(GMT^2\)の単位は \([\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{kg}^2] \cdot [\text{kg}] \cdot [\text{s}^2] = [\text{N}\cdot\text{m}^2\cdot\text{s}^2/\text{kg}]\)ここで \([\text{N}]=[\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}^2]\) なので、\(= [(\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}^2)\cdot\text{m}^2\cdot\text{s}^2/\text{kg}] = [\text{m}^3]\) となります。\(4\pi^2\)は無次元なので、括弧の中身全体の単位は\([\text{m}^3]\)です。その3乗根をとるので、単位は\([\text{m}]\)となり、半径の単位と一致します。
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113 万有引力の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「静止衛星の軌道半径の具体的な計算」です。前問(問題112)で導出した、人工衛星の軌道半径と周期の関係式に、具体的な数値を代入して計算する問題です。万有引力定数\(G\)や地球の質量\(M\)が与えられていないため、地表での重力加速度\(g\)を用いてこれらの量を消去するテクニックが鍵となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 静止衛星の軌道半径と周期の関係: 前問で導出した関係式 \(r = \left(\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\right)^{\frac{1}{3}}\) を利用すること。
  2. 万有引力定数と重力加速度の関係: 地表での重力と万有引力が等しいという関係 (\(mg = G\frac{Mm}{R^2}\)) から導かれる、\(GM=gR^2\) という重要な関係式を使いこなせること。
  3. 単位系の統一: 計算を行う前に、与えられた数値をすべてSI基本単位(メートル、秒、キログラム)に統一することの重要性を理解していること。
  4. 概算を含む数値計算: 大きな桁数の数値を、指数計算や因数分解などを利用して効率的に処理し、最終的に有効数字を守って答えを導出できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 前問で求めた軌道半径\(r\)の公式を、\(GM=gR^2\) の関係式を用いて、問題で与えられている\(g, R, T\)で表現し直します。
  2. 求めたい量が「地球半径\(R\)の何倍か」なので、\(r/R\) という比の形になるように式を変形します。
  3. 与えられた数値 \(g, R, T, \pi\) を、すべてSI単位系に直してから式に代入します。
  4. 3乗根の計算を、整数の3乗と比較することで概算し、有効数字1桁で答えます。

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