「重要問題集」徹底解説(141〜145問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題141 (徳島大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、一様な磁場中で正方形コイルを回転させることで生じる交流電圧について、2つの異なるアプローチ([A] ローレンツ力による起電力、[B] ファラデーの法則)で考察し、さらにその交流によって生じる電流、力、消費電力を解析する、交流発電機の原理に関する総合的な問題です。

与えられた条件
  • コイル:一辺の長さが \(l\) の正方形、1回巻き (\(N=1\))
  • 磁場:一様で磁束密度 \(B\)
  • 運動:磁力線に垂直な軸の周りを、一定の角速度 \(\omega\) で回転
  • 回路:コイルの両端は抵抗 \(R\) に接続されている
  • 角度の定義:時刻 \(t=0\) でコイル面と磁場が平行な状態を \(\theta=0\) とする。時刻 \(t\) での角度は \(\theta = \omega t\)。
問われていること
  • [A] ローレンツ力によるアプローチ
    • (1) 辺abの速さ \(v_{\text{ab}}\)。
    • (2) 辺abに生じる誘導起電力の大きさ。
    • (3) コイル全体に生じる誘導起電力 \(V\) の大きさ。
  • [B] ファラデーの法則によるアプローチ
    • (4) コイルを貫く磁束 \(\Phi\)。
    • (5) コイル全体に生じる誘導起電力 \(V\) の大きさ。
  • [C] 発生した交流の解析
    • (6) 時刻 \(t_0\) における電流の向きと、コイルが受ける力の向き。
    • (7) 消費電力の最大値 \(P_{\text{最大}}\) と、\(P\) と \(\omega t\) の関係を表すグラフ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流発電の原理」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 誘導起電力(ローレンツ力): 導体棒が磁場を横切ることで生じる起電力 \(V=v_{\perp}Bl\) を計算する。
  2. 誘導起電力(ファラデーの法則): コイルを貫く磁束の時間変化率から起電力 \(V = -N\displaystyle\frac{d\Phi}{dt}\) を計算する。
  3. 円運動の運動学: 速さと角速度の関係式 \(v=r\omega\) を用いる。
  4. 交流回路の解析: 発生した交流電圧によって回路に流れる電流、ローレンツ力、消費電力を求める。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A]では、コイルの各辺を運動する導体棒とみなし、ローレンツ力によって生じる誘導起電力を辺ごとに計算し、それらを足し合わせることでコイル全体の起電力を求めます。
  2. [B]では、コイル全体を一つの閉回路とみなし、回転に伴う磁束の変化率をファラデーの法則に適用して、コイル全体の起電力を一括で求めます。
  3. [C]では、[A]や[B]で求めた起電力を用いて、抵抗に流れる電流や消費電力を解析します。

問(1)

思考の道筋とポイント
辺abは、回転軸から距離 \(r = l/2\) の位置で、角速度 \(\omega\) の円運動をしています。円運動における速さと角速度の関係式 \(v=r\omega\) を用いて、辺abの速さを求めます。
この設問における重要なポイント

  • 円運動の速さと角速度の関係: \(v=r\omega\)
  • 回転半径の特定: 辺abの回転半径はコイルの一辺の長さの半分、\(l/2\) であることを正しく認識する。

具体的な解説と立式
辺abの回転半径を \(r\) とすると、図1から \(r = \displaystyle\frac{l}{2}\) です。
速さ \(v_{\text{ab}}\) は、関係式 \(v=r\omega\) より、
$$ v_{\text{ab}} = \left(\frac{l}{2}\right) \omega $$

使用した物理公式

  • 円運動の速度: \(v=r\omega\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{ab}} = \frac{l\omega}{2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

辺abは、コイルの中心を軸としてぐるぐる回っています。このとき、辺abの速さは「回転軸からの距離 × 角速度」で計算できます。回転軸からの距離は辺の長さの半分 \(l/2\) なので、これに角速度 \(\omega\) を掛けるだけで速さが求まります。

結論と吟味

辺ab部分の速さは \(v_{\text{ab}} = \displaystyle\frac{l\omega}{2}\) です。速さが角速度 \(\omega\) と半径 \(l/2\) に比例するという、基本的な関係式に基づいた妥当な結果です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{l\omega}{2}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
導体棒が磁場を横切るときに生じる誘導起電力の公式は \(V=v_{\perp}Bl\) です。ここで \(v_{\perp}\) は、導体棒の速度のうち、磁場の向きと垂直な成分の大きさです。時刻 \(t\) における辺abの速度ベクトルと磁場のなす角を考え、\(v_{\perp}\) を求めて公式に代入します。
この設問における重要なポイント

  • 誘導起電力の公式: \(V=v_{\perp}Bl\)
  • 速度の成分分解: 速度 \(v_{\text{ab}}\) を磁場に垂直な成分と平行な成分に分解する。
  • 角度の把握: 時刻 \(t\) におけるコイルの回転角が \(\theta = \omega t\) であることを利用する。

具体的な解説と立式
時刻 \(t\) において、コイル面は水平から角度 \(\omega t\) だけ回転しています。辺abの速度 \(v_{\text{ab}}\) は円の接線方向を向いています。磁場は水平方向(図1の右向き)です。
速度 \(v_{\text{ab}}\) のうち、磁場に垂直な成分 \(v_{\perp}\) は、図aからわかるように、
$$ v_{\perp} = v_{\text{ab}} |\cos(\omega t)| $$
したがって、辺abに生じる誘導起電力の大きさ \(|V_{\text{ab}}|\) は、
$$ |V_{\text{ab}}| = B l v_{\perp} = B l (v_{\text{ab}} |\cos(\omega t)|) $$
ここに(1)で求めた \(v_{\text{ab}} = \displaystyle\frac{l\omega}{2}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 誘導起電力: \(V=v_{\perp}Bl\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
|V_{\text{ab}}| &= B l \left( \frac{l\omega}{2} \right) |\cos(\omega t)| \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)|
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

導体棒が磁場を「切る」ことで電圧が発生します。最も効率よく切るのは、磁場に対して垂直に動くときです。コイルが回転すると、辺abが磁場を切る角度が刻々と変わるため、速度の「磁場を真横に切る成分」だけを考えます。この成分は \(\cos(\omega t)\) で変化するので、発生する電圧もそれに比例して変化します。

結論と吟味

辺abに生じる誘導起電力の大きさは \(\displaystyle\frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\) です。起電力が時間と共に周期的に変化する交流電圧であることがわかります。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\)

問(3)

思考の道筋とポイント
コイル全体に生じる誘導起電力は、各辺に生じる誘導起電力の総和です。
1. 辺abと辺cd: 磁場を横切るため、起電力が生じます。
2. 辺bcと辺da: 速度の向きが磁場と平行なため、磁場を横切らず、起電力は生じません。
辺cdに生じる起電力の大きさを(2)と同様に求め、辺abの起電力と足し合わせます。このとき、2つの起電力が強め合う向きか、打ち消し合う向きかを正しく判断する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 起電力の重ね合わせ: コイル全体の起電力は、各部分の起電力の代数和。
  • 起電力の向き: レンツの法則やフレミングの右手の法則で判断する。

具体的な解説と立式
辺cdも辺abと同様に、回転軸から距離 \(l/2\) で円運動しており、速さも \(v_{\text{cd}} = \displaystyle\frac{l\omega}{2}\) で同じです。したがって、辺cdに生じる誘導起電力の大きさ \(|V_{\text{cd}}|\) も辺abと同じになります。
$$ |V_{\text{cd}}| = \frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)| $$
次に、起電力の向きを考えます。\(0 < \omega t < \pi/2\) のとき、レンツの法則より、コイルを貫く磁束(右向き)の増加を妨げるため、左向きの磁場を作るような電流(d→c→b→a→dの向き)が流れようとします。これは、辺abではb→aの向き、辺cdではd→cの向きに起電力が生じていることを意味します。この2つの起電力は、コイルを一周する経路で見ると直列に接続された電池のように同じ向きであり、足し合わされます。
したがって、pq間に発生する誘導起電力の大きさ \(V\) は、
$$ V = |V_{\text{ab}}| + |V_{\text{cd}}| $$

使用した物理公式

  • 誘導起電力: \(V=v_{\perp}Bl\)
  • レンツの法則
計算過程

$$
\begin{aligned}
V &= \frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)| + \frac{1}{2}Bl^2\omega |\cos(\omega t)| \\[2.0ex]&= Bl^2\omega |\cos(\omega t)|
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

コイルの上下の辺(abとcd)は発電する部分ですが、左右の辺(bcとda)は発電しません。上下の辺は、互いに逆方向に動きながらも、回路全体で見ると同じ向きの電圧(d→c→b→a)を発生させる「協力関係」にあります。したがって、コイル全体の電圧は、片方の辺が作る電圧のちょうど2倍になります。

結論と吟味

pq間に発生する誘導起電力の大きさは \(V = Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\) です。これは交流発電機で発生する電圧の基本式です。

解答 (3) \(Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\)

問(4)

思考の道筋とポイント
ここからは、ファラデーの電磁誘導の法則 \(V = -d\Phi/dt\) を用いるアプローチです。まず、コイルを貫く磁束 \(\Phi\) を時刻 \(t\) の関数として求めます。磁束は \(\Phi = B S_{\perp}\) で計算できます。ここで \(S_{\perp}\) は、磁場に垂直なコイル面の射影面積です。
この設問における重要なポイント

  • 磁束の定義: \(\Phi = BS_{\perp}\)
  • 射影面積の計算: コイルの回転角 \(\theta = \omega t\) を用いて、磁場に垂直な面の面積を求める。

具体的な解説と立式
コイルの面積は \(S=l^2\) です。時刻 \(t=0\) でコイル面は磁場と平行(\(\theta=0\))です。時刻 \(t\) でコイル面は角度 \(\omega t\) だけ回転します。
磁場(右向き)に対して垂直な面の面積、すなわち射影面積 \(S_{\perp}\) は、図bからわかるように、
$$ S_{\perp} = S \sin(\omega t) = l^2 \sin(\omega t) $$
したがって、コイルを貫く磁束 \(\Phi\) は、
$$ \Phi = B S_{\perp} = B l^2 \sin(\omega t) $$
ただし、これは \(0 < \omega t < \pi\) の範囲で磁束の向きを正とした場合です。

使用した物理公式

  • 磁束: \(\Phi = BS_{\perp}\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。
$$
\begin{aligned}
\Phi = Bl^2 \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

磁束とは、コイルを「貫く」磁力線の本数のようなものです。コイルが磁場と平行なとき(\(t=0\))は1本も貫かないので磁束は0です。コイルが回転して磁場に対して傾くと、貫く磁力線が増えていきます。その本数は、コイルの傾き \(\sin(\omega t)\) に比例して変化します。

結論と吟味

コイルを貫く磁束は \(\Phi = Bl^2 \sin(\omega t)\) です。磁束が時間と共に正弦波状に変化することがわかります。

解答 (4) \(Bl^2 \sin(\omega t)\)

問(5)

思考の道筋とポイント
ファラデーの電磁誘導の法則 \(V = -N\displaystyle\frac{d\Phi}{dt}\) を用いて、コイル全体の誘導起電力を求めます。コイルは1回巻きなので \(N=1\) です。(4)で求めた磁束 \(\Phi\) の式を時間 \(t\) で微分します。
この設問における重要なポイント

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N\displaystyle\frac{d\Phi}{dt}\)
  • 三角関数の微分: \(\displaystyle\frac{d}{dt}(\sin(\omega t)) = \omega \cos(\omega t)\)

具体的な解説と立式
ファラデーの法則に、\(N=1\) と(4)で求めた \(\Phi = Bl^2 \sin(\omega t)\) を代入します。
$$ V = – \frac{d\Phi}{dt} = – \frac{d}{dt} (Bl^2 \sin(\omega t)) $$
\(B\) と \(l\) は定数なので、微分の外に出せます。
$$ V = -Bl^2 \frac{d}{dt}(\sin(\omega t)) $$

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N\displaystyle\frac{d\Phi}{dt}\)
計算過程

問題文で与えられた微分公式を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= -Bl^2 (\omega \cos(\omega t)) \\[2.0ex]&= -Bl^2\omega \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
問題では起電力の「大きさ」を問われているので、絶対値をとります。
$$ |V| = |-Bl^2\omega \cos(\omega t)| = Bl^2\omega |\cos(\omega t)| $$

計算方法の平易な説明

ファラデーの法則によれば、電圧は「磁束の変化の速さ」に比例します。磁束がサインカーブで変化するとき、その変化の速さ(グラフの傾き)はコサインカーブになります。したがって、(4)で求めた磁束の式を時間で微分するだけで、電圧の式が求まります。

結論と吟味

誘導起電力の大きさは \(V = Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\) です。この結果は、(3)でローレンツ力から導いた結果と完全に一致します。異なる2つの物理的アプローチが同じ結論に至ることは、電磁気学の理論の整合性を示す美しい例であり、計算の妥当性を強く裏付けています。

解答 (5) \(Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\)

問(6)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t_0\) では \(0 < \omega t_0 < \pi/2\) です。このとき、コイルを貫く右向きの磁束は増加しています。
1. **電流の向き**: レンツの法則を用いて、誘導電流が作る磁場の向きを考え、そこから電流の向きを決定します。
2. **力の向き**: フレミングの左手の法則を用いて、辺abと辺cdに流れる電流が磁場から受ける力の向きを決定します。
この設問における重要なポイント

  • レンツの法則: 誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる。
  • フレミングの左手の法則: 電流が磁場から受ける力の向きを決定する。

具体的な解説と立式
電流の向き:
時刻 \(t_0\) では、コイルを貫く右向きの磁束が増加しています。レンツの法則により、誘導電流はこの磁束の増加を妨げるため、左向きの磁場を作ろうとします。右ねじの法則から、左向きの磁場を作るには、コイルを上から見て時計回りの向きに電流が流れる必要があります。したがって、辺abには aからbの向き に電流が流れます。

力の向き:
この a→b の向きの電流 \(I\) が、右向きの磁場 \(B\) から受ける力を考えます。フレミングの左手の法則を適用すると、辺abには 下向き の力が働きます。
同様に、辺cdにはc→dの向きに電流が流れるため、上向き の力が働きます。
これらの力は、コイルの中心軸に対して偶力となり、コイルの回転(図1の矢印の向き)を 妨げる向き のトルクを生じさせます。

計算方法の平易な説明

磁石のN極をコイルに近づけると、コイルは反発してN極になろうとします。この問題でも同じで、右向きの磁束が増えているので、コイルはそれに抵抗して左向きの磁場を作ろうとします。その結果、a→bの向きに電流が流れます。この電流が流れると、今度はモーターのように磁場から力を受けます。フレミングの左手の法則を使うと、この力はコイルの回転を邪魔する「ブレーキ」として働くことがわかります。

結論と吟味

電流の向きはa→b。この電流により、コイルは回転を妨げる向きの力を受けます。これは、発電するには外部からエネルギーを供給し続けなければならないというエネルギー保存則(外部がした仕事が電気エネルギーになる)と一致しており、物理的に正しい現象です。

解答 (6) 電流の向き: a→b。力の向き: コイルの回転を妨げる向き。

問(7)

思考の道筋とポイント
抵抗 \(R\) での消費電力 \(P\) は、公式 \(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) を用いて計算するのが最も効率的です。ここで \(V\) は(3)や(5)で求めた誘導起電力です。
1. **最大値**: \(P\) の式を立て、それが最大となる条件(\(\cos^2(\omega t)=1\))から \(P_{\text{最大}}\) を求めます。
2. **グラフ**: \(P\) の時間変化の式を、グラフが描きやすいように三角関数の倍角の公式 \(\cos^2\theta = \displaystyle\frac{1+\cos(2\theta)}{2}\) を用いて変形し、その形からグラフの概形を判断します。
この設問における重要なポイント

  • 消費電力の公式: \(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\)
  • 三角関数の最大値・最小値
  • 倍角の公式: \(\cos^2\theta = \displaystyle\frac{1+\cos(2\theta)}{2}\)

具体的な解説と立式
消費電力 \(P\) は、起電力 \(V = -Bl^2\omega \cos(\omega t)\) を用いて、
$$ P = \frac{V^2}{R} = \frac{(-Bl^2\omega \cos(\omega t))^2}{R} = \frac{B^2 l^4 \omega^2}{R} \cos^2(\omega t) \quad \cdots ① $$
最大値 \(P_{\text{最大}}\):
電力 \(P\) は \(\cos^2(\omega t)\) に比例します。\(\cos^2(\omega t)\) の最大値は1なので、\(P\) の最大値 \(P_{\text{最大}}\) は、
$$ P_{\text{最大}} = \frac{B^2 l^4 \omega^2}{R} $$
グラフ:
式①に倍角の公式を適用すると、
$$ P = \frac{B^2 l^4 \omega^2}{R} \left( \frac{1+\cos(2\omega t)}{2} \right) = \frac{P_{\text{最大}}}{2} (1+\cos(2\omega t)) $$
この式は、

  • 平均値(振動の中心)が \(\displaystyle\frac{P_{\text{最大}}}{2}\)
  • 振幅が \(\displaystyle\frac{P_{\text{最大}}}{2}\)
  • 角振動数が \(2\omega\)(周期が電圧の半分)

のコサインカーブであることを示しています。\(P\) は常に0以上です。

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P = V^2/R\)
  • 三角関数の倍角の公式
計算過程

最大値の計算は立式の通りです。
グラフは、\(y=P\) 軸、\(x=\omega t\) 軸で描きます。

  • \(\omega t = 0, \pi, 2\pi\) で最大値 \(P_{\text{最大}}\) をとる。
  • \(\omega t = \pi/2, 3\pi/2\) で \(\cos(2\omega t)=-1\) となり、最小値 \(P=0\) をとる。
  • 常に \(P \ge 0\) で、山の頂上が平らではなく尖った形になる \(\cos^2\) のグラフを描きます。
計算方法の平易な説明

電力は電圧の2乗に比例します。電圧がコサインで変化するので、電力はコサインの2乗で変化します。コサインの2乗が最大になるのは1のときなので、そのときの電力が最大値です。グラフを描くとき、2乗のグラフは少し描きにくいですが、「マイナスの部分がプラスに折り返される」「周期が半分になる」という特徴を覚えておくと便利です。電圧がプラスでもマイナスでも、抵抗は常に熱を発生させる(電力を消費する)ので、電力のグラフが常に0以上になるのは当然と言えます。

結論と吟味

消費電力の最大値は \(P_{\text{最大}} = \displaystyle\frac{B^2 l^4 \omega^2}{R}\) です。
\(P\) と \(\omega t\) の関係グラフは、周期が \(\pi\)、振幅が \(\frac{P_{\text{最大}}}{2}\) で、\(y=\frac{P_{\text{最大}}}{2}\) を中心に振動し、常に0以上の値をとる曲線となります。電圧の周波数の2倍の周波数で電力が脈動するという、交流電力の重要な特徴を示しています。

解答 (7) 最大値: \(P_{\text{最大}} = \displaystyle\frac{B^2 l^4 \omega^2}{R}\)
グラフ: 上記の考察に基づく、周期が\(\pi\)で\(0 \le P \le P_{\text{最大}}\)の範囲で変化するグラフ。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 誘導起電力の2つの表現:
    • 核心: この問題の最大のポイントは、誘導起電力を2つの異なる視点から導出できることを示している点です。
      1. ローレンツ力描像(ミクロな視点): コイルの各辺を運動する導体棒とみなし、荷電粒子が受けるローレンツ力から起電力 \(V=v_{\perp}Bl\) を計算し、足し合わせる方法([A]のアプローチ)。
      2. ファラデーの法則描像(マクロな視点): コイル全体を一つの閉回路とみなし、回路を貫く磁束 \(\Phi\) の時間変化率から起電力 \(V = -N\frac{d\Phi}{dt}\) を計算する方法([B]のアプローチ)。
    • 理解のポイント: この2つのアプローチが全く同じ結果 \(V = Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\) を与えることを確認することは、電磁気学の理論体系の整合性を深く理解する上で非常に重要です。
  • レンツの法則とフレミングの左手の法則:
    • 核心: (6)で問われたように、誘導電流の「向き」と、その電流が受ける力の「向き」を正しく判断することが、現象の因果関係を理解する鍵となります。
    • 理解のポイント: レンツの法則(変化を妨げる向き)は原因(磁束変化)と結果(誘導電流)の関係を、フレミングの左手の法則は原因(電流)と結果(力)の関係を示します。これらは「作用・反作用」や「エネルギー保存則」の電磁気学的な現れと捉えることができます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • N回巻きコイル: この問題は1回巻きでしたが、N回巻きのコイルであれば、誘導起電力は単純にN倍になります。\(V = NBl^2\omega |\cos(\omega t)|\)。
    • 回転軸が異なる場合: コイルの中心ではなく、一辺を軸として回転させる問題。この場合、もう一方の辺の回転半径が \(l\) となり、速さや起電力の計算が変わります。
    • コイルの形状が異なる場合: 長方形コイル(辺の長さが \(l_1, l_2\))や円形コイルなど。基本的な考え方は同じで、ローレンツ力描像では起電力が生じる辺を特定し、ファラデー描像では面積 \(S\) と磁束 \(\Phi\) を正しく計算することが重要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 起電力の計算方法を選択する: 問題の誘導に応じて、ローレンツ力(\(V=vBl\))とファラデーの法則(\(V=-d\Phi/dt\))のどちらを使うか、あるいは両方を使うかを判断します。一般に、コイル全体の起力を問われた場合はファラデーの法則が計算しやすいことが多いです。
    2. 角度の定義を正確に把握する: \(\theta = \omega t\) の基準(\(t=0\)で\(\theta=0\))がどこに設定されているか(コイル面が磁場と平行か、垂直か)を最初に確認します。これにより、磁束の式が \(\sin\) になるか \(\cos\) になるかが決まり、その後の計算全体に影響します。
    3. 瞬時値か、実効値か、最大値か: 交流の問題では、電圧や電流、電力の何を問われているのかを明確に区別する必要があります。「時刻tにおける値」は瞬時値、「最大値」は振幅、「実効値」は直流換算したときの値です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 速度成分 \(v_{\perp}\) の取り間違い:
    • 誤解: (2)で、誘導起電力の計算に辺abの速さ \(v_{\text{ab}}\) をそのまま使ってしまう。
    • 対策: 公式は \(V=v_{\perp}Bl\) であり、\(v_{\perp}\) は速度のうち磁場と垂直な成分であることを徹底しましょう。図を描いて、速度ベクトルを磁場に平行な成分と垂直な成分に分解する癖をつけることが有効です。
  • 磁束計算での面積の取り間違い:
    • 誤解: (4)で、磁束の計算にコイルの面積 \(S\) をそのまま使ってしまう。
    • 対策: 磁束の公式は \(\Phi = B S_{\perp}\) であり、\(S_{\perp}\) は磁場に垂直な「射影面積」です。コイルが回転している場合、この射影面積は \(S\sin(\omega t)\) や \(S\cos(\omega t)\) のように時間変化します。
  • 電力の周期の勘違い:
    • 誤解: (7)で、電圧の周期と電力の周期が同じだと考えてしまう。
    • 対策: 電力は電圧の2乗(\(P=V^2/R\))に比例します。三角関数を2乗すると、角振動数が2倍(周期は半分)になります(例: \(\cos^2(\omega t) = \frac{1+\cos(2\omega t)}{2}\))。電圧がプラスでもマイナスでも電力はプラスになるため、振動数が倍になる、とイメージで覚えておくと間違いにくいです。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 回転の断面図: 問題の図2のように、回転軸に沿って見た断面図を描くことは、角度 \(\omega t\) と速度成分 \(v_{\perp}\) や射影面積 \(S_{\perp}\) の関係を視覚的に理解する上で極めて有効です。
    • グラフの重ね描き: 電圧 \(V(t)\) のグラフと電力 \(P(t)\) のグラフを同じ時間軸上に描いてみると、\(P(t)\) が常に0以上であることや、周期が半分になっていることが一目瞭然となります。磁束 \(\Phi(t)\) のグラフも重ねると、\(\Phi(t)\) の傾きが \(V(t)\) に対応している関係(微分・積分の関係)も見て取れます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 3次元的な向きの表現: フレミングの法則などを適用する際、紙面に垂直な向きを ⦿(手前向き)と ⊗(奥向き)で明確に表現すると、力の向きや電流の向きの判断がしやすくなります。
    • ベクトルの分解: (2)のように速度ベクトルを成分分解する場合、元のベクトルと分解後のベクトルを点線や色で区別し、直角三角形と角度を明記すると、三角関数の選択ミスを防げます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V=v_{\perp}Bl\) (ローレンツ力描像):
    • 選定理由: [A]で、コイルの「辺」という部分に生じる起電力を計算するため。導体棒1本に注目したミクロなアプローチに適しています。
    • 適用根拠: 導体内の自由電子が導体棒と共に運動することでローレンツ力を受け、導体の両端に偏ることで電位差(起電力)が生じる、という物理現象に基づきます。
  • \(V = -N\frac{d\Phi}{dt}\) (ファラデー描像):
    • 選定理由: [B]で、コイル「全体」に生じる起電力を一括で計算するため。閉回路全体の磁束変化というマクロなアプローチに適しています。
    • 適用根拠: 閉回路を貫く磁束が時間変化すると、その周りに渦状の電場(誘導電場)が生じるという、電磁気学の基本法則です。
  • \(P = V^2/R\) (消費電力):
    • 選定理由: (7)で、抵抗での消費電力を計算するため。\(P=IV\) や \(P=I^2R\) も正しいですが、この問題では電圧 \(V\) が先に求まっているので、この形が最も計算しやすいです。
    • 適用根拠: 抵抗に電圧 \(V\) をかけたときに流れる電流が \(I=V/R\) であり、その仕事率が \(P=VI = V(V/R) = V^2/R\) となることから導かれます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. [A] ローレンツ力アプローチ:
    • 戦略: 辺ごとに起電力を計算し、足し合わせる。
    • フロー: ①辺abの速さ \(v\) を求める。 ②磁場に垂直な速度成分 \(v_{\perp}\) を求める。 ③辺abの起電力 \(|V_{\text{ab}}|=Blv_{\perp}\) を計算。 ④辺cdも同様に計算し、向きを考慮して足し合わせる。
  2. [B] ファラデーの法則アプローチ:
    • 戦略: コイル全体の磁束を求め、時間微分する。
    • フロー: ①磁場に垂直な射影面積 \(S_{\perp}\) を求める。 ②磁束 \(\Phi = BS_{\perp}\) を計算。 ③\(V = -d\Phi/dt\) を計算し、大きさをとる。
  3. [C] 回路解析:
    • 戦略: 求めた起電力 \(V\) を使って、電流、力、電力を解析する。
    • フロー: ①電流の向きをレンツの法則で、力の向きをフレミングの左手の法則で判断する。 ②消費電力 \(P=V^2/R\) を計算。 ③\(P\) の式から最大値を求め、倍角公式でグラフの形を分析する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 微分計算の確認: \(\sin(\omega t)\) の時間微分は \(\omega \cos(\omega t)\)、\(\cos(\omega t)\) の時間微分は \(-\omega \sin(\omega t)\) です。特に、内部の \(\omega\) が外に出てくる点と、符号の変化を忘れないようにしましょう。
  • 絶対値の扱い: 問題で「大きさ」を問われている場合、計算結果が負になる可能性があれば、最後に絶対値をとることを忘れないようにしましょう。\(|\cos(\omega t)|\) のように、常に正の値をとることを明確にすることが重要です。
  • グラフの要点: (7)のグラフを描く際は、最大値、最小値、周期、そして特定の点(\(\omega t = 0, \pi/2, \pi\) など)での値をプロットすることで、正確な概形を描くことができます。特に、\(\cos^2\) のグラフは下に凸の滑らかな曲線であり、山の頂点も滑らかになる点に注意しましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • [A]と[B]の一致: (3)と(5)で、全く異なる方法で計算した起電力が \(Bl^2\omega |\cos(\omega t)|\) という同じ結果になりました。これは偶然ではなく、物理法則の整合性を示しています。この一致を確認することで、計算の正しさに強い確信が持てます。
    • (6) 回転を妨げる力: 発電するということは、運動エネルギーや外部からの仕事が電気エネルギーに変換されることを意味します。したがって、その変換の反作用として、運動を妨げる向きの力(トルク)が発生するのはエネルギー保存則から考えて当然です。
    • (7) 消費電力: 消費電力が常に0以上であることは、抵抗が常にエネルギーを消費する素子であることと一致します。もし計算結果が負になる瞬間があれば、それは物理的にありえないため、計算ミスを疑うべきです。

問題142 (九州工大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、交流送電の根幹をなす「変圧器」の原理と、実際の送電における「電力損失」と「送電効率」について学ぶ問題です。前半では変圧器の基本法則を、後半ではそれを利用した電力輸送モデルを扱います。

与えられた条件
  • 変圧器:理想的で電力損失がない。
  • コイル:1次コイル(巻数 \(n_1\))、2次コイル(巻数 \(n_2\))。
  • 相互インダクタンス:\(M\)。
  • 物理量の定義:
    • (1)~(4):瞬時値 \(v_1, v_2, i_1\) を扱う。
    • (5)~(7):実効値 \(V_1, V_2, V_3, I_1, I_2\) と平均電力 \(P, P’\) を扱う。
  • 送電線:抵抗値 \(R\)。
問われていること
  • (1) 1次コイルの誘導起電力 \(|v_1|\)。
  • (2) 1次、2次コイルの誘導起電力の比 \(|v_2/v_1|\)。
  • (3) 2次コイルの誘導起電力 \(v_2\) を相互インダクタンス \(M\) を用いて表す式。
  • (4) \(i_1\) の時間変化(図2)に対する \(v_2\) の時間変化のグラフ(図3)。
  • (5) 送電線の終端電圧 \(V_3\)。
  • (6) 送電効率 \(e\)。
  • (7) 送電効率を高くする方法。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「変圧器の原理と高電圧送電の仕組み」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束の時間変化が誘導起電力を生むという基本法則。自己誘導・相互誘導の根源です。
  2. 相互誘導: 1次コイルの電流変化が2次コイルに誘導起電力を生じさせる現象。
  3. 理想的な変圧器の性質: 電圧は巻数に比例し(\(V_1:V_2 = n_1:n_2\))、電流は巻数に反比例する(\(I_1:I_2 = n_2:n_1\))。そして、電力が保存される(\(P_1=P_2\))。
  4. オームの法則とジュール熱: 送電線における電圧降下(\(V=IR\))と電力損失(\(P=I^2R\))を理解する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)~(3)では、ファラデーの法則と相互誘導の定義式を正確に適用し、変圧器の基本関係を導きます。
  2. (4)では、(3)の関係を使い、グラフから電流の変化率を読み取って計算し、グラフを作成します。
  3. (5)~(7)では、理想的な変圧器の性質と送電線での電圧降下を組み合わせ、送電効率の式を導出し、その意味を考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
1次コイルに生じる誘導起電力は、コイル自身を貫く磁束の変化によって生じるため、自己誘導の一種です。ファラデーの電磁誘導の法則を、巻数\(n_1\)の1次コイルに適用します。
この設問における重要なポイント

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N \frac{d\Phi}{dt}\)
  • 1巻きあたりの磁束変化が \(\Delta \Phi\) であるため、\(n_1\)回巻きのコイル全体では磁束鎖交数が \(n_1 \Phi\) となる。

具体的な解説と立式
1次コイルの1巻きあたりを貫く磁束が時間 \(\Delta t\) の間に \(\Delta \Phi\) 変化します。
ファラデーの電磁誘導の法則によれば、1巻きあたりに生じる起電力の大きさは \(\left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) です。
1次コイルは \(n_1\) 回巻きなので、コイル全体で生じる誘導起電力 \(v_1\) の大きさは、各巻きで生じる起電力の和となります。
$$ |v_1| = n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right| $$

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N\frac{d\Phi}{dt}\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。
$$ |v_1| = n_1 \frac{|\Delta \Phi|}{|\Delta t|} $$

計算方法の平易な説明

コイルの1巻き1巻きが小さな電池のように振る舞うとイメージしてください。磁石を近づけたり遠ざけたりすると(磁束が変化すると)、まず1巻きのコイルに電圧が発生します。変圧器のコイルは、その小さな電池をたくさん直列につないだものなので、全体の電圧は「1巻きあたりの電圧 × 巻数」になります。

結論と吟味

1次コイルに生じる誘導起電力の大きさは \(|v_1| = n_1 \frac{|\Delta \Phi|}{|\Delta t|}\) です。起電力が巻数と磁束の時間変化率に比例するという、ファラデーの法則の基本形です。

解答 (1) \(n_1 \frac{|\Delta \Phi|}{|\Delta t|}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
理想的な変圧器では、鉄心によって1次コイルで作られた磁束がすべて2次コイルを貫くと考えます。したがって、2次コイルの「1巻きあたりを貫く磁束の変化」も、1次コイルと同じ \(\Delta \Phi\) になります。この考え方に基づき、ファラデーの法則を2次コイルに適用し、(1)の結果との比を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 理想的な変圧器の仮定:1巻きあたりの磁束変化は1次側と2次側で等しい。
  • 電圧比と巻数比の関係を導出する過程である。

具体的な解説と立式
2次コイルも1次コイルと同じ鉄心に巻かれているため、1巻きあたりを貫く磁束の変化は同じ \(\Delta \Phi\) です。
2次コイルの巻数は \(n_2\) なので、(1)と同様にファラデーの法則を適用すると、2次コイルに生じる誘導起電力 \(v_2\) の大きさは、
$$ |v_2| = n_2 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right| $$
(1)で求めた \(|v_1| = n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) との比をとると、
$$ \frac{|v_2|}{|v_1|} = \frac{n_2 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|}{n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|} $$

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{|v_2|}{|v_1|} = \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

変圧器で電圧が変わる根本的な理由は、1次側と2次側のコイルの巻数の違いにあります。1巻きあたりに発生する電圧はどちらのコイルでも同じです。したがって、全体の電圧は単純に巻数の比になります。巻数を2倍にすれば電圧も2倍、半分にすれば電圧も半分になります。

結論と吟味

起電力の比は巻数比に等しく、\(\frac{|v_2|}{|v_1|} = \frac{n_2}{n_1}\) となります。これは変圧器の最も重要な公式の一つです。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{n_2}{n_1}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
1次コイルに流れる電流の変化が、2次コイルに誘導起電力を生じさせる現象を「相互誘導」と呼びます。その関係を表す定義式をそのまま用います。
この設問における重要なポイント

  • 相互誘導の公式: \(V_2 = -M \frac{d i_1}{dt}\)
  • \(M\) は相互インダクタンスと呼ばれる比例定数。
  • 負の符号はレンツの法則(変化を妨げる向き)を表す。

具体的な解説と立式
1次コイルの電流 \(i_1\) が時間 \(\Delta t\) の間に \(\Delta i_1\) だけ変化するとき、2次コイルに生じる誘導起電力 \(v_2\) は、相互インダクタンス \(M\) を用いて次のように表されます。
$$ v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t} $$

使用した物理公式

  • 相互誘導の公式
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

1次コイルに電流が流れると電磁石になります。その電流が変化すると、電磁石の強さも変化し、周りの磁場が変化します。その磁場の変化が、隣にある2次コイルを貫くことで、2次コイルに電圧が発生します。この「隣のコイルに影響を与える能力」の大きさを表すのが相互インダクタンス \(M\) です。

結論と吟味

2次コイルに生じる誘導起電力は \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) です。これは相互誘導の定義式そのものです。

解答 (3) \(v_2 = -M \displaystyle\frac{\Delta i_1}{\Delta t}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)で導いた関係式 \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) を用いて、グラフを作成します。図2の \(i_1-t\) グラフから、各時間区間における「電流の変化率(グラフの傾き)」\(\frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) を読み取り、\(v_2\) の値を計算します。計算した値を元に、\(v_2-t\) グラフを図3に描きます。
この設問における重要なポイント

  • グラフの傾きが物理的な意味(電流の時間変化率)を持つことを理解する。
  • \(v_2\) は傾きに比例するが、負の符号が付くため、傾きが正の区間では \(v_2\) は負になる。

具体的な解説と立式
与えられた \(M=5\text{H}\) と、(3)の式 \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) を使います。
各区間の傾きを計算します。

  • \(0 \le t \le 1\text{s}\) の区間:
    $$ \frac{\Delta i_1}{\Delta t} = \frac{2\text{A} – 0\text{A}}{1\text{s} – 0\text{s}} = 2 \text{ A/s} $$
  • \(1 \le t \le 3\text{s}\) の区間:
    $$ \frac{\Delta i_1}{\Delta t} = \frac{2\text{A} – 2\text{A}}{3\text{s} – 1\text{s}} = 0 \text{ A/s} $$
  • \(3 \le t \le 5\text{s}\) の区間:
    $$ \frac{\Delta i_1}{\Delta t} = \frac{0\text{A} – 2\text{A}}{5\text{s} – 3\text{s}} = -1 \text{ A/s} $$
  • \(5 \le t \le 7\text{s}\) の区間:
    $$ \frac{\Delta i_1}{\Delta t} = \frac{0\text{A} – 0\text{A}}{7\text{s} – 5\text{s}} = 0 \text{ A/s} $$

使用した物理公式

  • 相互誘導の公式
計算過程

各区間の \(v_2\) を計算します。

  • \(0 \le t \le 1\text{s}\) の区間:
    $$ v_2 = -5\text{H} \times (2 \text{ A/s}) = -10 \text{ V} $$
  • \(1 \le t \le 3\text{s}\) の区間:
    $$ v_2 = -5\text{H} \times (0 \text{ A/s}) = 0 \text{ V} $$
  • \(3 \le t \le 5\text{s}\) の区間:
    $$ v_2 = -5\text{H} \times (-1 \text{ A/s}) = 5 \text{ V} $$
  • \(5 \le t \le 7\text{s}\) の区間:
    $$ v_2 = -5\text{H} \times (0 \text{ A/s}) = 0 \text{ V} $$

これらの値を元に、図3に方形波のグラフを描きます。

計算方法の平易な説明

2次側に発生する電圧は、1次側の電流グラフの「傾き」に比例します。ただし、マイナス符号が付くので、傾きの正負がひっくり返ります。

  • 0秒から1秒:傾きが「+2」なので、電圧は「-10V」で一定。
  • 1秒から3秒:傾きが「0」なので、電圧も「0V」。
  • 3秒から5秒:傾きが「-1」なので、電圧は「+5V」で一定。
  • 5秒から7秒:傾きが「0」なので、電圧も「0V」。

このように計算した値を時間ごとにプロットすれば、グラフが完成します。

結論と吟味

グラフは、\(0<t<1\)で-10V、\(1<t<3\)で0V、\(3<t<5\)で+5V、\(5<t<7\)で0Vとなる方形波を描きます。電流が変化しているときだけ電圧が誘導され、その向きはレンツの法則に従うという物理現象を正しく反映しています。

解答 (4) 上記の考察に基づくグラフ。

問(5)

思考の道筋とポイント
送電線の終端電圧 \(V_3\) は、変圧器Aから送り出された電圧 \(V_2\) から、送電線(抵抗\(R\))で生じる電圧降下分を引いたものになります。まず送電線を流れる電流 \(I_2\) を求め、次に電圧降下を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 理想的な変圧器では電力が保存される: \(P = V_2 I_2\)。
  • 送電線での電圧降下はオームの法則で計算: \(V_{\text{降下}} = I_2 R\)。
  • 電圧、電流、電力はすべて実効値または平均電力として扱われている。

具体的な解説と立式
発電所で生み出された電力 \(P\) は、理想的な変圧器Aによって電力損失なく2次側に伝えられます。したがって、変圧器Aの2次側から送り出される電力も \(P\) です。このときの電圧が \(V_2\)、電流が \(I_2\) なので、
$$ P = V_2 I_2 $$
この式から、送電線を流れる電流 \(I_2\) は、
$$ I_2 = \frac{P}{V_2} \quad \cdots ① $$
この電流 \(I_2\) が抵抗 \(R\) の送電線を流れることで、電圧降下 \(V_{\text{降下}}\) が生じます。
$$ V_{\text{降下}} = I_2 R \quad \cdots ② $$
送電線の終端電圧 \(V_3\) は、始端の電圧 \(V_2\) からこの電圧降下分を引いたものなので、
$$ V_3 = V_2 – V_{\text{降下}} = V_2 – I_2 R $$

使用した物理公式

  • 電力の式: \(P=VI\)
  • オームの法則: \(V=IR\)
計算過程

\(V_3 = V_2 – I_2 R\) の式に、①で求めた \(I_2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_3 = V_2 – \left( \frac{P}{V_2} \right) R = V_2 – \frac{PR}{V_2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

電気を送るための長い電線にも抵抗があります。電流がこの電線を流れると、そこでエネルギーが消費され、電圧が少し下がってしまいます。これを「電圧降下」と呼びます。目的地(変圧器B)に着いたときの電圧 \(V_3\) は、出発点(変圧器A)での電圧 \(V_2\) から、この途中で下がった分の電圧を引いたものになります。

結論と吟味

送電線の終端電圧は \(V_3 = V_2 – \displaystyle\frac{PR}{V_2}\) です。送る電力が大きいほど、また送電線の抵抗が大きいほど、電圧降下が大きくなることを示しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (5) \(V_2 – \displaystyle\frac{PR}{V_2}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
送電効率 \(e\) は、届けられた電力 \(P’\) を、送り出した電力 \(P\) で割ったものです (\(e = P’/P\))。届けられた電力 \(P’\) は、送電線の終端における電圧 \(V_3\) と電流 \(I_2\) の積で計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 送電効率の定義: \(e = \frac{P’}{P}\)
  • 届けられた電力: \(P’ = I_2 V_3\)
  • 送電線で失われる電力(ジュール熱): \(P_{\text{損失}} = I_2^2 R\)

具体的な解説と立式
送電線の終端で受け取れる電力 \(P’\) は、
$$ P’ = I_2 V_3 $$
この式に、\(I_2 = P/V_2\) と、(5)で求めた \(V_3 = V_2 – \frac{PR}{V_2}\) を代入します。
$$ P’ = \left( \frac{P}{V_2} \right) \left( V_2 – \frac{PR}{V_2} \right) $$
これを整理して、送電効率 \(e = P’/P\) を計算します。

使用した物理公式

  • 電力の式: \(P=VI\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
P’ &= \frac{P}{V_2} \cdot V_2 – \frac{P}{V_2} \cdot \frac{PR}{V_2} \\[2.0ex]&= P – \frac{P^2 R}{V_2^2}
\end{aligned}
$$
したがって、送電効率 \(e\) は、
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{P’}{P} = \frac{P – \frac{P^2 R}{V_2^2}}{P} \\[2.0ex]&= 1 – \frac{PR}{V_2^2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

送電効率とは、発電所で発電した電力のうち、何パーセントが無事に家庭や工場に届いたかを示す割合です。100%から、途中の電線で熱として捨てられてしまった電力の割合を引いたものと考えられます。この「失われた電力の割合」が \(\frac{PR}{V_2^2}\) にあたります。

結論と吟味

送電効率は \(e = 1 – \displaystyle\frac{PR}{V_2^2}\) です。この式は、送電効率を1に近づける(100%に近づける)ためには、損失項である \(\frac{PR}{V_2^2}\) を小さくする必要があることを明確に示しています。

解答 (6) \(1 – \displaystyle\frac{PR}{V_2^2}\)

問(7)

思考の道筋とポイント
(6)で導出した送電効率の式 \(e = 1 – \frac{PR}{V_2^2}\) を最大にする(1に近づける)ための方法を考察します。
この設問における重要なポイント

  • 損失項 \(\frac{PR}{V_2^2}\) を最小化する方法を考える。
  • \(P\)(送電電力)と \(R\)(送電線の抵抗)は、通常、簡単には変えられない定数とみなす。

具体的な解説と立式
送電効率 \(e\) を高くするには、損失を表す項 \(\frac{PR}{V_2^2}\) をできるだけ小さくする必要があります。
送る電力 \(P\) と送電線の抵抗 \(R\) は所与の条件であると考えると、この値を小さくするためには、分母である \(V_2^2\) を大きくするしかありません。
つまり、送電電圧 \(V_2\) を高くすればよいことになります。

計算方法の平易な説明

(6)の結論の式を見ると、電力の損失は送電電圧 \(V_2\) の2乗に反比例することがわかります。つまり、電圧を2倍にすれば損失は1/4に、10倍にすれば損失は1/100に激減します。したがって、送電効率を良くするための最も効果的な方法は、できるだけ高い電圧で電気を送ることです。

結論と吟味

送電効率を高くするためには、送電電圧 \(V_2\) を高くすればよい。これが、発電所から街の近くの変電所までが超高圧の送電線で結ばれている理由であり、変圧器が電力輸送に不可欠である根拠です。物理的現実と完全に一致する結論です。

解答 (7) 送電電圧\(V_2\)を高くする。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ファラデーの電磁誘導の法則:
    • 核心: 変圧器の動作原理の根幹をなす法則です。1次コイルの電流変化が鉄心内の磁束を変化させ、その磁束変化が1次コイル自身と2次コイルの両方に誘導起電力を生じさせます。\(v_1 = -n_1 \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) と \(v_2 = -n_2 \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) という関係が、変圧器の電圧比の基本となります。
    • 理解のポイント: (1), (2)はこの法則を直接的に適用する問題です。理想的な変圧器では「1巻きあたりの磁束変化が共通」であることが、電圧比が巻数比になる理由です。
  • 相互誘導:
    • 核心: 1つのコイルの電流変化が、隣接する別のコイルに起電力を生じさせる現象で、\(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) という式で表されます。(3), (4)はこの法則の応用です。
    • 理解のポイント: ファラデーの法則がより根源的な法則であり、相互誘導はそれを2つのコイル系に適用した具体的な表現と考えることができます。
  • 電力輸送におけるエネルギー保存:
    • 核心: (5)以降の送電問題では、「理想的な変圧器では電力が保存される(\(P_1=P_2\))」ことと、「送電線では電力が損失する(\(P_{\text{損失}}=I^2R\))」ことの2点を区別して考える必要があります。
    • 理解のポイント: (6)で導出された送電効率 \(e = 1 – \frac{PR}{V_2^2}\) は、このエネルギー保存と損失を定量的に表したものであり、高電圧送電の重要性を示す結論として極めて重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 自己誘導: 1つのコイルで、自身の電流変化によって起電力が生じる現象(\(v = -L \frac{di}{dt}\))。相互誘導と自己誘導は、現象としては同じ電磁誘導であり、式の形も酷似しています。
    • 非理想的な変圧器: 鉄心でのエネルギー損失(ヒステリシス損、渦電流損)や、コイルの抵抗を考慮する問題。この場合、\(P_1 > P_2\) となります。
    • 直流回路とコイル: 直流回路にコイルを接続し、スイッチを入れた直後や十分に時間が経った後の電流を問う問題。(4)のように、電流の時間変化率が重要になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 瞬時値か実効値か: 問題で使われている記号(小文字か大文字か)や文脈から、瞬時値(時刻 \(t\) での値)を扱うのか、実効値(交流の平均的な大きさ)を扱うのかをまず見極めます。(1)~(4)は瞬時値、(5)~(7)は実効値の問題です。
    2. グラフの傾きと面積: (4)のように時間変化のグラフが与えられた場合、グラフの「傾き」が \(di/dt\) や \(dv/dt\) といった時間微分に、「面積」が \(\int i dt\)(電気量)や \(\int v dt\) といった時間積分に対応することを意識すると、解法の糸口が見つかりやすいです。
    3. エネルギーの流れを追う: 送電の問題では、発電所 → 変圧器A → 送電線 → 変圧器B → 消費地というエネルギーの流れを図に書き込み、各段階で「何が保存され、何が失われるか」を整理すると、立式が容易になります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 相互誘導の式の符号:
    • 誤解: \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) のマイナス符号の意味を理解せず、大きさだけを考えてしまう。
    • 対策: このマイナスはレンツの法則に由来し、「1次コイルの電流変化を妨げる向きに2次コイルの起電力が生じる」ことを意味します。(4)のグラフ作成では、この符号の有無で結果が正負逆転するため、極めて重要です。
  • 電圧と電流の関係の混同:
    • 誤解: 変圧器で電圧が上がると電流も上がると勘違いする。
    • 対策: 理想的な変圧器では電力 \(P=VI\) が保存されます。したがって、電圧 \(V\) を高くすると、電流 \(I\) は逆に小さくなります(\(I=P/V\))。この「電圧と電流が反比例の関係」にあることが、高電圧送電の鍵です。
  • 電力損失の式の選択ミス:
    • 誤解: 送電線での電力損失を \(P_{\text{損失}} = V_2 I_2\) や \(P_{\text{損失}} = V_3 I_2\) のように計算してしまう。
    • 対策: 電力損失は送電線の抵抗 \(R\) で発生するジュール熱です。したがって、必ず抵抗 \(R\) を含んだ式、すなわち \(P_{\text{損失}} = I_2^2 R\) で計算する必要があります。\(V_2\) や \(V_3\) は送電線の両端の電圧であり、送電線自体にかかる電圧(電圧降下 \(I_2R\))とは異なります。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 磁束の可視化: 変圧器の鉄心の中に、磁力線がループを描いている様子をイメージします。1次コイルの電流が増えると磁力線が密になり、減ると疎になる。この磁力線の「混み具合の変化」が2次コイルに影響を与える、と考えると相互誘導が直感的に理解できます。
    • 送電の模式図: (5)以降では、問題の図4のような模式図を自分で描いてみることが有効です。各点での電圧(\(V_1, V_2, V_3\))、電流(\(I_1, I_2\))、電力(\(P, P’\))を書き込み、送電線部分に「電圧降下 \(I_2R\)」と「電力損失 \(I_2^2R\)」を明記すると、関係性が一目瞭然になります。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 電流と電圧の向き: (4)のグラフ作成のように符号が重要になる問題では、あらかじめ回路図に電流や電圧の正の向きを矢印で定義しておくと、計算結果の正負の判断が容易になります。
    • グラフの対応関係: (4)では、図2(\(i_1-t\))と図3(\(v_2-t\))のグラフを上下に並べて描き、図2の各区間の「傾き」が図3の「値」にどう対応するかを矢印などで結びつけると、思考のプロセスが明確になります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(|v_2|/|v_1| = n_2/n_1\) (電圧比):
    • 選定理由: (2)で変圧器の基本的な性質を問われているため。
    • 適用根拠: ファラデーの法則と「1巻きあたりの磁束変化は共通」という理想変圧器の仮定から導出される、最も重要な関係式です。
  • \(v_2 = -M \Delta i_1 / \Delta t\) (相互誘導):
    • 選定理由: (3)で相互インダクタンス \(M\) を使って \(v_2\) を表すよう指定されているため。また、(4)で具体的な電流変化から電圧を計算するために必要です。
    • 適用根拠: 相互誘導という物理現象の定義式です。
  • \(P = V_2 I_2\) (電力保存):
    • 選定理由: (5)で送電電流 \(I_2\) を、与えられた電力 \(P\) と電圧 \(V_2\) で表すため。
    • 適用根拠: 「理想的な変圧器ではエネルギーが保存される」という前提に基づきます。
  • \(e = 1 – PR/V_2^2\) (送電効率):
    • 選定理由: (6)で送電効率を求め、(7)でその改善策を議論するため。
    • 適用根拠: 送電効率の定義 \(e=P’/P\) と、エネルギー保存則(\(P’ = P – P_{\text{損失}}\))から導出されます。この式自体を覚えるのではなく、導出できることが重要です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1)-(3) 変圧器の基本:
    • 戦略: 定義式を正確に適用する。
    • フロー: ①ファラデーの法則から \(|v_1|\) を求める。②同様に \(|v_2|\) を求め、比をとる。③相互誘導の定義式を書く。
  2. (4) グラフ作成:
    • 戦略: \(i_1-t\) グラフの傾きを読み取り、\(v_2\) を計算する。
    • フロー: ①各区間の \(\Delta i_1 / \Delta t\) を計算。②\(v_2 = -M (\Delta i_1 / \Delta t)\) に代入して \(v_2\) の値を求める。③結果をプロットする。
  3. (5)-(7) 送電問題:
    • 戦略: エネルギーの流れを追い、効率の式を導出・評価する。
    • フロー: ①電力保存 \(P=V_2I_2\) から送電電流 \(I_2\) を求める。②電圧降下 \(V_3 = V_2 – I_2R\) を計算する(5)。③送電効率 \(e = P’/P = (I_2V_3)/P\) を計算し、整理する(6)。④効率の式を最大化する条件を考察する(7)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の確認: (4)で \(M=5\text{H}\) と与えられています。ヘンリー[H]は \([V \cdot s / A]\) の次元を持つことを知っていると、計算結果の単位がボルト[V]になることを確認でき、検算に役立ちます。
  • グラフの読み取り: (4)では、グラフの座標を正確に読み取ることが計算の前提となります。特に変化量 \(\Delta i_1, \Delta t\) を計算する際の引き算のミスに注意しましょう。
  • 文字式の整理: (6)の送電効率の計算では、複数の式を代入して整理します。どの文字を消去し、どの文字で最終的な答えを表すのか(問題文の指示は「P, V2, R」)を常に意識しながら式変形を行うと、迷子になりにくいです。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (4) グラフの形: 電流が一定の区間(\(1<t<3\))では、磁束が変化しないため、誘導起電力は0になります。これは物理的に正しいです。また、電流が増加する区間(\(0<t<1\))と減少する区間(\(3<t<5\))で、起電力の符号が逆転するのもレンツの法則と一致しており、妥当です。
    • (7) 高電圧送電の結論: 「送電効率を上げるには送電電圧を高くする」という結論は、我々の社会の電力インフラのあり方そのものです。物理法則から導かれた結論が、現実世界で大規模に実用化されている例として、理解を深めることができます。
  • 極端な場合を考える:
    • もし送電線の抵抗 \(R=0\) なら、電力損失は0になり、送電効率 \(e=1\) (100%)になるはずです。(6)の式で \(R=0\) とすると、確かに \(e=1\) となり、つじつまが合います。
    • もし送電電圧 \(V_2\) を無限に大きくできれば、損失項 \(\frac{PR}{V_2^2}\) は0に近づき、効率は1に近づきます。これも式の上で成り立っており、結論の正しさを補強します。

問題143 (大阪教育大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、RLC直列回路の基本的な性質を、直流と交流の両方の場合について実験的に考察していく形式の問題です。各素子(抵抗、コンデンサー、コイル)の基本的な振る舞い、インピーダンス、位相差、共振、消費電力といった交流回路の重要概念が網羅されています。

与えられた条件
  • 回路素子:100Ωの抵抗、電気容量\(C\)のコンデンサー、自己インダクタンス\(L\)のコイル、1Ωの抵抗。
  • 電源:周波数\(f\)と電圧を可変できる。
  • 測定:a-b間の電圧\(V_0\)と1Ωの抵抗の電圧\(V_1\)を測定。\(V_1\)は回路電流\(I\)に比例する(\(V_1=1\Omega \times I\))。
問われていること
  • (1) 直流電源(1V)を接続したときの、1Ω抵抗の電圧\(V_1\)が最大・最小になる素子。
  • (2) コンデンサー接続時、\(V_0\)と\(V_1\)の波形(図2)から、どちらが\(V_0\)か。
  • (3) 図2の測定値から、コンデンサーの電気容量\(C\)の値。
  • (4) 図3の測定値から、コイルの自己インダクタンス\(L\)の値。
  • (5) LとCを直列接続したときの共振周波数\(f\)。
  • (6) R, L, Cを直列接続し、共振状態で電源電圧の最大値を10Vとしたときの、各素子の平均消費電力。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「RLC直列回路の基本特性の理解」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 各素子の直流・交流での振る舞い: 直流定常状態ではコイルは導線、コンデンサーは断線として扱える。交流では、各素子は周波数に応じたリアクタンス(抵抗のようなもの)を持つ。
  2. 位相差: コンデンサーでは電流が電圧より\(\pi/2\)進み、コイルでは電圧が電流より\(\pi/2\)進むという、電圧と電流のタイミングのずれを理解する。
  3. インピーダンスとオームの法則: 交流回路全体の抵抗を表すインピーダンス \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) と、交流版オームの法則 \(V_0 = Z I_0\) を用いる。
  4. 共振: コイルとコンデンサーのリアクタンスが打ち消し合い(\(X_L=X_C\))、インピーダンスが最小になる現象。
  5. 消費電力: 回路で実際にエネルギーを消費するのは抵抗だけであり、その平均消費電力は \(P = R I_e^2\) で計算される。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、直流定常状態でのLとCの性質を思い出します。
  2. (2)~(4)では、オシロスコープの波形から位相差を読み取り、電圧と電流の最大値から各素子のリアクタンスを計算し、CとLの値を求めます。
  3. (5)では、(3)(4)の結果を用いて共振周波数の公式に代入します。
  4. (6)では、共振状態の特性を利用して回路電流を求め、各素子での平均消費電力を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
周波数が0Hz、すなわち直流電源を接続し、十分に時間が経過した定常状態を考えます。このとき、各素子が直流電流に対してどのように振る舞うかがポイントです。

  • 抵抗: そのまま抵抗として機能します。
  • コンデンサー: 充電が完了すると、それ以上電流を流さなくなるため「断線」と同じ状態になります。
  • コイル: 電流の変化がない定常状態では、自己誘導起電力が生じないため、単なる「導線」(抵抗0)として振る舞います。

これらの性質から、各素子を接続したときの回路全体の抵抗を計算し、電流と電圧\(V_1\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 直流定常状態でのコンデンサーの扱いは「断線(無限大の抵抗)」。
  • 直流定常状態でのコイル(理想的)の扱いは「導線(抵抗0)」。
  • キルヒホッフの法則II(オームの法則)。

具体的な解説と立式
電源電圧を\(V=1\)V、1Ωの抵抗を\(R_1=1\Omega\)、100Ωの抵抗を\(R_{100}=100\Omega\)とします。回路に流れる電流を\(I\)とすると、電圧\(V_1\)は\(V_1 = R_1 I = I\)となります。

  • 抵抗(100Ω)を接続したとき:
    回路の全抵抗は \(R_{\text{全}} = R_{100} + R_1 = 100 + 1 = 101 \, \Omega\)。
    キルヒホッフの法則IIより、\(V = R_{\text{全}} I\)。
    $$ I = \frac{V}{R_{\text{全}}} = \frac{1}{101} \, \text{A} $$
  • コンデンサーを接続したとき:
    十分時間が経つとコンデンサーは断線とみなせるので、回路に電流は流れません。
    $$ I = 0 \, \text{A} $$
  • コイルを接続したとき:
    十分時間が経つとコイルは導線(抵抗0)とみなせるので、回路の全抵抗は \(R_{\text{全}} = 0 + R_1 = 1 \, \Omega\)。
    $$ I = \frac{V}{R_{\text{全}}} = \frac{1}{1} = 1 \, \text{A} $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則II: \(\sum V = \sum RI\)
計算過程

各場合の電圧\(V_1\)を計算します。

  • 抵抗接続時: \(V_1 = I = \frac{1}{101} \approx 0.01 \, \text{V}\)
  • コンデンサー接続時: \(V_1 = I = 0 \, \text{V}\)
  • コイル接続時: \(V_1 = I = 1 \, \text{V}\)

これらの値を比較すると、\(V_1\)が最も大きくなるのはコイルを接続したとき、最も小さくなるのはコンデンサーを接続したときです。

計算方法の平易な説明

直流電源に対して、十分時間が経った後では、コンデンサーは「道が途切れている」のと同じで電流が流れず、コイルは「ただの電線」と同じで電流を全く妨げません。電流が一番流れるのはコイルのとき、全く流れないのはコンデンサーのときです。1Ωの抵抗にかかる電圧は電流に比例するので、電流が最大のとき電圧も最大、電流がゼロなら電圧もゼロになります。

結論と吟味

電圧\(V_1\)が最も大きくなるのはコイルを接続したとき、最も小さくなるのはコンデンサーを接続したときです。これは直流における各素子の基本的な性質を問う問題であり、結果は妥当です。

解答 (1) 最大:コイル、最小:コンデンサー

問(2)

思考の道筋とポイント
1Ωの抵抗にかかる電圧\(V_1\)は、回路を流れる電流\(I\)に比例します(\(V_1=1\times I\))。したがって、\(V_1\)の波形は電流の波形とみなすことができます。問題は、コンデンサーにかかる電圧\(V_0\)と電流\(I\)の位相関係を問うています。コンデンサーでは、電流の位相が電圧の位相より\(\pi/2\)(90°)進みます。言い換えると、電圧は電流より位相が\(\pi/2\)遅れます。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗における電圧と電流は同位相。
  • コンデンサーにおける電圧は、電流より位相が\(\pi/2\)遅れる。
  • オシロスコープの横軸は時間であり、波形の左右のずれが位相差を表す。

具体的な解説と立式
図2において、波形Bは原点から立ち上がる正弦波のような形をしています。一方、波形Aは、波形Bがピークを迎えたあたりでようやく0から増加し始めており、全体的にBより右にずれています。これは、Aの位相がBの位相より遅れていることを意味します。
1Ωの抵抗の電圧\(V_1\)は電流\(I\)と同位相なので、電流の波形は\(V_1\)の波形と同じです。
コンデンサーにかかる電圧\(V_0\)は、電流\(I\)より位相が\(\pi/2\)遅れます。
したがって、電流(と同位相の\(V_1\))の波形に対して、位相が遅れている波形が\(V_0\)を示します。
図2でBを電流の波形と考えると、Aは位相が遅れているので、Aがコンデンサーの電圧\(V_0\)の波形となります。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電圧と電流の位相関係
計算過程

波形の比較による定性的な判断なので、計算はありません。

計算方法の平易な説明

コンデンサーは、まず電流が流れ込んで電荷が蓄えられ、その結果として電圧が発生します。つまり、「電流が先、電圧が後」という順番になります。オシロスコープのグラフでは、先に山が来る波形が「進んでいる」位相、後から山が来る波形が「遅れている」位相です。図2ではBの山がAの山より先に来ているので、Bが電流(または電流と同じタイミングの\(V_1\))、Aが遅れてやってくる電圧\(V_0\)となります。

結論と吟味

Aが電圧\(V_0\)を示す波形です。コンデンサーの電圧と電流の位相差という基本的な知識と一致しており、妥当な判断です。

解答 (2) A

問(3)

思考の道筋とポイント
(2)の考察から、Aがコンデンサーの電圧\(V_0\)、Bが1Ω抵抗の電圧\(V_1\)(つまり電流波形)です。それぞれの波形の最大値を読み取り、交流回路におけるオームの法則(最大値バージョン)を適用します。コンデンサーのリアクタンスを\(X_C = \frac{1}{\omega C}\)として、\(V_{C0} = X_C I_0\)の関係から\(C\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 電流の最大値\(I_0\)は、\(V_1\)の最大値から求める: \(I_0 = V_{1,\text{最大}} / 1\Omega\)。
  • コンデンサーのリアクタンス: \(X_C = \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi f C}\)。
  • 交流のオームの法則: \(V_{C0} = X_C I_0\)。

具体的な解説と立式
図2から、各電圧の最大値を読み取ります。
コンデンサーの電圧の最大値: \(V_{0,\text{最大}} = V_{C0} = 40 \, \text{V}\)。
1Ω抵抗の電圧の最大値: \(V_{1,\text{最大}} = 40 \, \text{mV} = 40 \times 10^{-3} \, \text{V}\)。

1Ω抵抗の電圧から、回路を流れる電流の最大値\(I_0\)を求めます。
$$ I_0 = \frac{V_{1,\text{最大}}}{1\Omega} = \frac{40 \times 10^{-3} \, \text{V}}{1 \, \Omega} = 40 \times 10^{-3} \, \text{A} $$
電源の周波数は \(f=100\) Hz なので、角周波数 \(\omega\) は、
$$ \omega = 2\pi f = 2\pi \times 100 = 200\pi \, \text{rad/s} $$
コンデンサーについて、電圧と電流の最大値の関係式を立てます。
$$ V_{C0} = \frac{1}{\omega C} I_0 $$

使用した物理公式

  • 交流におけるオームの法則: \(V=ZI\)
  • コンデンサーのリアクタンス: \(X_C = 1/(\omega C)\)
計算過程

上記の関係式を\(C\)について解き、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
C &= \frac{I_0}{\omega V_{C0}} \\[2.0ex]&= \frac{40 \times 10^{-3}}{200\pi \times 40} \\[2.0ex]&= \frac{10^{-3}}{200\pi} = \frac{1}{2\pi} \times 10^{-5} \\[2.0ex]&\approx \frac{1}{2 \times 3.14} \times 10^{-5} \approx 0.159 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&\approx 1.6 \times 10^{-6} \, \text{F}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、測定データから「電流の最大値」と「コンデンサー電圧の最大値」を確定させます。次に、交流版のオームの法則 \(V=RI\) の抵抗Rの部分を、コンデンサーの「交流に対する抵抗(リアクタンス)」に置き換えた式を立てます。リアクタンスは周波数と容量Cで決まるので、この式を解くことでCの値を求めることができます。

結論と吟味

電気容量Cの値は \(1.6 \times 10^{-6}\) F です。計算過程は物理法則に忠実であり、妥当な結果です。

解答 (3) \(1.6 \times 10^{-6}\) F

問(4)

思考の道筋とポイント
今度はコイルを接続した場合です。コイルでは、電圧の位相が電流の位相より\(\pi/2\)進みます。図3の波形を見ると、Bの位相がAより進んでいるため、Bがコイルの電圧\(V_0\)、Aが電流波形(\(V_1\))となります。コンデンサーの場合と同様に、それぞれの最大値を読み取り、コイルのリアクタンス\(X_L = \omega L\)を用いた関係式 \(V_{L0} = X_L I_0\) から\(L\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • コイルにおける電圧は、電流より位相が\(\pi/2\)進む。
  • コイルのリアクタンス: \(X_L = \omega L = 2\pi f L\)。
  • 交流のオームの法則: \(V_{L0} = X_L I_0\)。

具体的な解説と立式
図3から、各電圧の最大値を読み取ります。
1Ω抵抗の電圧の最大値(電流波形A): \(V_{1,\text{最大}} = 4 \, \text{V}\)。
コイルの電圧の最大値(電圧波形B): \(V_{0,\text{最大}} = V_{L0} = 10 \, \text{V}\)。

電流の最大値\(I_0\)を求めます。
$$ I_0 = \frac{V_{1,\text{最大}}}{1\Omega} = \frac{4 \, \text{V}}{1 \, \Omega} = 4 \, \text{A} $$
周波数は \(f=100\) Hz なので、角周波数 \(\omega = 200\pi\) rad/s です。
コイルについて、電圧と電流の最大値の関係式を立てます。
$$ V_{L0} = \omega L I_0 $$

使用した物理公式

  • 交流におけるオームの法則: \(V=ZI\)
  • コイルのリアクタンス: \(X_L = \omega L\)
計算過程

上記の関係式を\(L\)について解き、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{V_{L0}}{\omega I_0} \\[2.0ex]&= \frac{10}{200\pi \times 4} = \frac{10}{800\pi} = \frac{1}{80\pi} \\[2.0ex]&\approx \frac{1}{8 \times 3.14} \times 10^{-1} \approx 0.0398 \times 10^{-1} \\[2.0ex]&\approx 4.0 \times 10^{-3} \, \text{H}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

コイルは「電流の変化を妨げる」性質があるため、まず電圧をかけてから電流が流れ始めます。つまり「電圧が先、電流が後」です。図3ではBの波形がAより先に来ているので、Bがコイルの電圧\(V_0\)、Aが電流\(V_1\)です。あとはコンデンサーの時と同様に、電圧と電流の最大値からコイルのリアクタンスを求め、Lの値を逆算します。

結論と吟味

自己インダクタンスLの値は \(4.0 \times 10^{-3}\) H です。計算過程は物理法則に忠実であり、妥当な結果です。

解答 (4) \(4.0 \times 10^{-3}\) H

問(5)

思考の道筋とポイント
コンデンサーとコイルを直列に接続したとき、特定の周波数で回路のインピーダンスが最小になり、電流が最大になります。この現象を「直列共振」といい、そのときの周波数を共振周波数と呼びます。共振は、コイルのリアクタンス\(X_L\)とコンデンサーのリアクタンス\(X_C\)が等しくなる条件で起こります。
この設問における重要なポイント

  • 共振条件: \(X_L = X_C\)、すなわち \(\omega L = \frac{1}{\omega C}\)。
  • 共振周波数の公式: \(f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\)。

具体的な解説と立式
共振周波数を\(f_0\)とすると、そのときの角周波数\(\omega_0 = 2\pi f_0\)において、以下の共振条件が成り立ちます。
$$ \omega_0 L = \frac{1}{\omega_0 C} $$
これを\(\omega_0\)について解くと、\(\omega_0^2 = \frac{1}{LC}\)、よって \(\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) となります。
したがって、共振周波数\(f_0\)は、
$$ f_0 = \frac{\omega_0}{2\pi} = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} $$
この式に、(3)と(4)で求めた\(C\)と\(L\)の値を代入します。

使用した物理公式

  • 共振周波数の公式: \(f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\)
計算過程

\(C = \frac{1}{2\pi} \times 10^{-5}\) F と \(L = \frac{1}{80\pi}\) H を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_0 &= \frac{1}{2\pi\sqrt{\left(\frac{1}{80\pi}\right) \times \left(\frac{1}{2\pi \times 10^5}\right)}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2\pi\sqrt{\frac{1}{160\pi^2 \times 10^5}}} = \frac{1}{2\pi\sqrt{\frac{1}{16\pi^2 \times 10^6}}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2\pi \times \frac{1}{4\pi \times 10^3}} \\[2.0ex]&= \frac{4\pi \times 10^3}{2\pi} = 2 \times 10^3 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(2.0 \times 10^3\) Hz となります。

計算方法の平易な説明

コイルとコンデンサーを直列につなぐと、互いの「電流を妨げる性質」が逆向きに働くため、ある周波数でちょうど打ち消し合います。このとき、回路には電流を妨げるものが(理想的には)なくなり、非常に大きな電流が流れます。この特別な周波数が共振周波数で、LとCの値だけで決まります。

結論と吟味

共振周波数は \(2.0 \times 10^3\) Hz です。LとCの値から一意に決まる物理量であり、計算も正しく行われています。

解答 (5) \(2.0 \times 10^3\) Hz

問(6)

思考の道筋とポイント
共振周波数では、コイルとコンデンサーのリアクタンスが打ち消し合うため、回路全体のインピーダンスは抵抗成分のみになります。このときの回路電流を計算し、各素子での平均消費電力を求めます。重要なのは、エネルギーを消費するのは抵抗だけであり、理想的なコイルとコンデンサーの平均消費電力は0であるという点です。
この設問における重要なポイント

  • 共振時のインピーダンス: \(Z=R\)。
  • 平均消費電力は抵抗でのみ生じる: \(P = R I_e^2\)。
  • コイルとコンデンサーの平均消費電力は0。
  • 実効値と最大値の関係: \(I_e = I_0 / \sqrt{2}\)。

具体的な解説と立式
共振状態なので、回路のインピーダンス\(Z\)は、a-b間に接続された100Ωの抵抗と、回路にもともとある1Ωの抵抗の和になります。
$$ Z = R_{\text{全}} = 100 \, \Omega + 1 \, \Omega = 101 \, \Omega $$
電源電圧の最大値は \(V_{\text{最大}} = 10\) V なので、電流の最大値 \(I_0\) は、
$$ I_0 = \frac{V_{\text{最大}}}{Z} = \frac{10}{101} \, \text{A} $$
消費電力の計算には電流の実効値 \(I_e\) が必要です。
$$ I_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}} = \frac{10}{101\sqrt{2}} \, \text{A} $$
a-b間に接続された各素子の平均消費電力を計算します。

  • 抵抗(100Ω)の消費電力 \(P_R\):
    $$ P_R = R_{100} I_e^2 $$
  • コンデンサーの消費電力 \(P_C\):
    理想コンデンサーはエネルギーを消費しないので、平均消費電力は0です。
  • コイルの消費電力 \(P_L\):
    理想コイルはエネルギーを消費しないので、平均消費電力は0です。

使用した物理公式

  • インピーダンス: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L-X_C)^2}\)
  • 平均消費電力: \(P = R I_e^2\)
計算過程

抵抗の消費電力を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_R &= 100 \times \left( \frac{10}{101\sqrt{2}} \right)^2 \\[2.0ex]&= 100 \times \frac{100}{101^2 \times 2} \\[2.0ex]&= \frac{10000}{10201 \times 2} \approx \frac{10000}{20402} \\[2.0ex]&\approx 0.490 \, \text{W}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(4.9 \times 10^{-1}\) W となります。

計算方法の平易な説明

共振状態の回路は、コイルとコンデンサーが見えなくなり、ただの抵抗回路として振る舞います。まず、回路全体の抵抗を足し合わせて、オームの法則で電流を計算します。次に、各部品がどれだけ電力を消費するかを考えます。電気を熱に変えて「消費」するのは抵抗だけです。コイルとコンデンサーは電気エネルギーを蓄えたり放出したりするだけで、長い目で見れば消費はゼロです。したがって、100Ωの抵抗の消費電力だけを計算すればよいことになります。

結論と吟味

抵抗の平均消費電力は \(4.9 \times 10^{-1}\) W、コンデンサーとコイルの平均消費電力はそれぞれ 0 W です。共振状態の回路の特性と、各素子のエネルギー消費に関する基本知識を正しく適用した結果です。

解答 (6) 抵抗: \(4.9 \times 10^{-1}\) W、コンデンサー: 0 W、コイル: 0 W

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 素子の直流・交流における振る舞いの違い:
    • 核心: この問題全体を貫く最も重要なテーマです。
      • 直流定常状態 (問1): コイルは単なる導線(抵抗ゼロ)、コンデンサーは断線(抵抗無限大)として扱います。
      • 交流状態 (問2以降): コイルとコンデンサーは、周波数に依存する「リアクタンス」という抵抗のような働きをします。コイルは \(X_L = \omega L\)、コンデンサーは \(X_C = 1/(\omega C)\) です。
    • 理解のポイント: なぜそうなるのか、という理由(コイルは電流変化を妨げ、コンデンサーは充放電する)まで含めて理解することが、応用問題への対応力を高めます。
  • 電圧と電流の位相差:
    • 核心: 交流回路では、電圧と電流のタイミング(位相)がずれることが本質的です。
      • 抵抗: 電圧と電流は同位相(タイミングが同じ)。
      • コンデンサー: 電流が電圧より \(\pi/2\) 進む(電流が先、電圧が後)。
      • コイル: 電圧が電流より \(\pi/2\) 進む(電圧が先、電流が後)。
    • 理解のポイント: (2)や(4)のオシロスコープの波形読解は、この位相差の知識がなければ解けません。グラフの左右のずれが位相差に対応することを視覚的に理解しましょう。
  • 直列共振:
    • 核心: RLC直列回路において、コイルのリアクタンスとコンデンサーのリアクタンスが等しくなる(\(X_L = X_C\))特定の周波数(共振周波数)で、回路のインピーダンスが最小(抵抗Rのみ)になり、電流が最大になる現象です。
    • 理解のポイント: (5), (6)はこの共振現象を扱っています。共振時には、コイルとコンデンサーが互いの働きを打ち消し合い、回路全体としては純粋な抵抗回路のように振る舞う、というイメージが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • RLC並列回路: 各素子を並列に接続した回路。並列の場合は、各素子にかかる電圧が共通になります。共振(並列共振)の条件は異なりますが、各素子の基本的な性質は同じです。
    • 過渡現象: 直流回路でスイッチを入れた直後の電流や電圧の時間変化を問う問題。微分方程式を解く必要があり、より高度な解析が求められます。
    • フィルター回路: RLC回路が特定の周波数の信号だけを通したり(バンドパスフィルター)、遮断したり(バンドストップフィルター)する性質を利用した電子回路の問題。共振の概念が応用されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電源の種類を確認: まず、直流電源か交流電源かを確認します。これにより、各素子の扱い方が根本的に決まります。
    2. 回路の接続形態を把握: 直列か並列か、あるいはその組み合わせかを確認します。直列なら電流が共通、並列なら電圧が共通という基本原則に立ち返ります。
    3. \(V_1\)の役割を理解する: この問題の \(V_1\) のように、小さな抵抗を直列に入れてその両端の電圧を測る手法は、回路電流を測定するための常套手段です。「\(V_1\)の波形 = 電流の波形」と読み替えることが、(2)や(4)の読解の鍵です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 最大値と実効値の混同:
    • 誤解: (6)の消費電力の計算で、電流の最大値 \(I_0\) をそのまま使ってしまう。
    • 対策: 消費電力や仕事率の計算で使うのは、常に「実効値」です。正弦波交流の場合、実効値 = 最大値 / \(\sqrt{2}\) の関係を必ず使いましょう。オシロスコープで読み取れるのは最大値(振幅)である点も注意が必要です。
  • リアクタンスと抵抗の単位:
    • 誤解: リアクタンス \(X_L, X_C\) やインピーダンス \(Z\) が、抵抗 \(R\) とは異なる単位を持つと勘違いする。
    • 対策: これらはすべて、交流回路における「電流の流れにくさ」を表す量であり、単位はすべてオーム[Ω]です。単位が同じだからこそ、ベクトル的に足し合わせたり(インピーダンスの計算)、オームの法則 \(V=ZI\) が成り立ったりします。
  • 共振時のインピーダンス:
    • 誤解: (6)で、共振していてもLやCが接続されているから、インピーダンスの計算に含めてしまう。
    • 対策: 共振とは、まさに \(X_L\) と \(X_C\) の効果が完全に打ち消し合う状態です。インピーダンスの式 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) において、\(X_L – X_C = 0\) となるため、\(Z=R\) となります。この単純化が共振問題のポイントです。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • ベクトル図(フェーザ図): 電圧と電流の位相関係を視覚的に理解するために、各素子の電圧と電流を回転ベクトルで表現するベクトル図は非常に有効です。抵抗の電圧は電流と同じ向き、コンデンサーの電圧は電流から90°遅れた向き、コイルの電圧は電流から90°進んだ向きのベクトルとして描くことで、回路全体の電圧(ベクトルの和)と電流の位相差が一目瞭然となります。
    • インピーダンスの直角三角形: インピーダンスの公式 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) は、底辺が\(R\)、高さが\(X_L – X_C\)、斜辺が\(Z\)の直角三角形として図示できます。これにより、インピーダンスの大きさと位相角の関係を視覚的に捉えることができます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 時間軸の共有: (2)や(3)のように複数の波形を比較する場合、必ず時間軸を揃えて描きましょう。波形の山の位置やゼロになる点の左右のずれから、位相の進み・遅れを正確に読み取ることができます。
    • 基準の明確化: ベクトル図を描く際は、基準となるベクトル(通常は回路で共通な電流ベクトル)を水平右向きに描くなど、基準を明確にすると、他のベクトルとの相対的な角度関係が分かりやすくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V_{C0} = \frac{1}{\omega C} I_0\) (問3):
    • 選定理由: コンデンサーの電気的特性(リアクタンス)と、測定された電圧・電流の最大値を結びつけ、未知の電気容量\(C\)を求めるため。
    • 適用根拠: 交流におけるオームの法則 \(V=ZI\) を、コンデンサー素子に適用したものです。\(Z\)がコンデンサーのリアクタンス \(X_C\) に対応します。
  • \(V_{L0} = \omega L I_0\) (問4):
    • 選定理由: コイルの電気的特性(リアクタンス)と、測定された電圧・電流の最大値を結びつけ、未知の自己インダクタンス\(L\)を求めるため。
    • 適用根拠: 交流におけるオームの法則を、コイル素子に適用したものです。\(Z\)がコイルのリアクタンス \(X_L\) に対応します。
  • \(f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) (問5):
    • 選定理由: LとCが直列に接続された回路の共振周波数を求めるため。
    • 適用根拠: 共振条件 \(X_L = X_C\) すなわち \(\omega L = 1/(\omega C)\) を、周波数 \(f = \omega/(2\pi)\) について解くことで導出される公式です。
  • \(P = R I_e^2\) (問6):
    • 選定理由: 抵抗で消費される「時間平均」の電力を計算するため。
    • 適用根拠: 瞬時電力 \(p(t) = R i(t)^2\) を1周期にわたって平均した結果です。交流では電圧・電流が常に変動するため、平均値として評価する必要があり、その計算には実効値が用いられます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 直流:
    • 戦略: 直流定常状態でのL, Cの性質を適用する。
    • フロー: ①Lは導線、Cは断線と見なす。②各場合の全抵抗を計算。③オームの法則で電流を求め、\(V_1\)を比較。
  2. (2)-(4) 交流・単一素子:
    • 戦略: 位相差から波形を特定し、リアクタンスの式からC, Lを求める。
    • フロー: ①位相差から\(V_0\)と\(V_1\)の波形を特定。②グラフから\(V_{0,\text{最大}}\)と\(I_0=V_{1,\text{最大}}/1\Omega\)を読み取る。③\(V_0=XI_0\)の関係を使い、\(X_C=1/(\omega C)\)または\(X_L=\omega L\)からC, Lを逆算。
  3. (5) 共振周波数:
    • 戦略: 共振周波数の公式に(3)(4)の値を代入する。
    • フロー: \(f = 1/(2\pi\sqrt{LC})\) に値を代入して計算。
  4. (6) 共振時の消費電力:
    • 戦略: 共振時のインピーダンスと電流を求め、抵抗での消費電力を計算する。
    • フロー: ①共振時 \(Z=R_{\text{全}}\) を計算。②\(I_0 = V_{\text{最大}}/Z\) を計算。③実効値 \(I_e=I_0/\sqrt{2}\) を計算。④抵抗の消費電力 \(P_R=R_{100}I_e^2\) を計算。L, Cの消費電力は0。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の換算: (3)でmV(ミリボルト)が使われています。\(1\text{mV} = 10^{-3}\text{V}\) の換算を忘れないようにしましょう。
  • 円周率\(\pi\)の近似: 問題によっては\(\pi \approx 3.14\)などの近似計算が求められます。計算のどの段階で代入するかを見極め、計算ミスを減らしましょう。(5)のように、\(\pi\)が約分で消える場合もあるので、最後まで文字のまま計算する方が楽なことも多いです。
  • 有効数字: 問題文に「有効数字2桁で答えよ」という指示がある場合、最終的な答えを出すときに必ず指定された桁数に丸めることを忘れないようにしましょう。途中の計算では、1桁多くとっておくと精度が保てます。
  • 平方根の計算: (5)の\(\sqrt{LC}\)の計算では、指数法則(\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\), \(\sqrt{10^c} = 10^{c/2}\))を正しく使うことが重要です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2)と(4)の位相関係: コンデンサーでは電流が進み、コイルでは電圧が進むという結果は、それぞれの素子の物理的性質(コンデンサーは電荷を溜めてから電圧が上がり、コイルは電流を流すまいとして先に電圧を発生させる)と一致しており、妥当です。
    • (6) 消費電力: 共振時にLとCの消費電力が0になるのは、これらがエネルギーを蓄えたり放出したりするだけで、熱として消費しない「無消費電力素子」であるためです。エネルギーを消費するのは抵抗のみ、という結果は物理的に正しいです。
  • 別のアプローチでの検算:
    • (3)や(4)で、もし周波数が2倍になれば、コンデンサーのリアクタンスは半分に、コイルのリアクタンスは2倍になるはずです。その結果、電圧の最大値はどう変化するか、といった思考実験をしてみるのも、理解を深める良い練習になります。

問題144 (福井大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、交流電源にコイル、コンデンサー、抵抗を並列に接続した「RLC並列回路」について、各素子を流れる電流、回路全体を流れる電流、インピーダンス、そして共振現象を解析する問題です。直列回路との違いを意識しながら、並列回路の特性を理解することが求められます。

与えられた条件
  • 交流電源:電圧の瞬時値 \(V=V_0 \sin(\omega t)\)、最大値 \(V_0\)、角周波数 \(\omega\)。
  • 回路素子:自己インダクタンス \(L\) のコイル、電気容量 \(C\) のコンデンサー、抵抗値 \(R\) の抵抗。
  • 接続:コイル、コンデンサー、抵抗が並列に接続されている。
  • 電流:電源から流れる電流を \(I\)、各素子に流れる電流を \(I_L, I_C, I_R\) とする。それぞれの最大値を \(I_{L0}, I_{C0}, I_{R0}\) とする。
問われていること
  • (1) 各電流の最大値 \(I_{L0}, I_{C0}, I_{R0}\)。
  • (2) 各電流の瞬時値 \(I_L, I_C, I_R\)。
  • (3) 全電流 \(I\) と各電流の関係式。
  • (4) 全電流 \(I\) の瞬時値の式と、電圧 \(V\) に対する位相の遅れ \(\theta\) の正接 \(\tan\theta\)。
  • (5) 並列回路部分のインピーダンス \(Z\)。
  • (6) インピーダンス \(Z\) が最大となる角周波数 \(\omega_0\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「RLC並列回路の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 並列回路の特性: 各素子にかかる電圧が共通であること。この問題では、すべての素子に電源電圧 \(V=V_0 \sin(\omega t)\) がかかります。
  2. 各素子のリアクタンスと位相差: 交流に対する各素子の抵抗(リアクタンス)と、それによって生じる電圧と電流の位相のずれを正しく理解する。
  3. キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の分岐点において、流れ込む電流の和と流れ出す電流の和は等しい。これを用いて、各素子の電流を合成します。
  4. 並列共振: 特定の周波数で回路全体のインピーダンスが最大になり、電源から流れる電流が最小になる現象。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、並列回路の「電圧共通」という特性を利用し、各素子に交流版オームの法則を適用して電流の最大値を求めます。
  2. (2)では、共通の電圧を基準として、各素子の電流の位相差(進み・遅れ)を考慮し、瞬時値を記述します。
  3. (3)と(4)では、キルヒホッフの電流則で各電流を足し合わせ、三角関数の合成公式を用いて回路全体の電流の振幅と位相を求めます。
  4. (5)と(6)では、インピーダンスの定義 \(Z=V_0/I_0\) から式を立て、その式が最大となる条件(並列共振)を考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
並列回路なので、コイル、コンデンサー、抵抗のそれぞれに、同じ電源電圧 \(V=V_0 \sin(\omega t)\) がかかります。したがって、各素子に流れる電流の最大値は、交流におけるオームの法則 \(I_0 = V_0 / (\text{リアクタンス or 抵抗})\) を用いて個別に計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 並列回路では、各素子にかかる電圧の最大値はすべて \(V_0\) で共通。
  • コイルのリアクタンス: \(X_L = \omega L\)。
  • コンデンサーのリアクタンス: \(X_C = \frac{1}{\omega C}\)。
  • 抵抗の抵抗値: \(R\)。

具体的な解説と立式
各素子について、電圧の最大値 \(V_0\) と各素子のリアクタンスまたは抵抗を用いて、電流の最大値を求めます。

  • コイルに流れる電流の最大値 \(I_{L0}\):
    $$ I_{L0} = \frac{V_0}{X_L} = \frac{V_0}{\omega L} $$
  • コンデンサーに流れる電流の最大値 \(I_{C0}\):
    $$ I_{C0} = \frac{V_0}{X_C} = \frac{V_0}{1/(\omega C)} = \omega C V_0 $$
  • 抵抗に流れる電流の最大値 \(I_{R0}\):
    $$ I_{R0} = \frac{V_0}{R} $$

使用した物理公式

  • 交流におけるオームの法則: \(I_0 = V_0 / Z\)
  • コイルのリアクタンス: \(X_L = \omega L\)
  • コンデンサーのリアクタンス: \(X_C = 1/(\omega C)\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

並列回路は、家庭のコンセントに複数の家電をつなぐのと同じです。どの家電にも同じ100Vの電圧がかかります。この問題でも、コイル、コンデンサー、抵抗の3つの部品に、すべて同じ \(V_0\) という最大電圧がかかります。それぞれの部品の「流れにくさ(リアクタンスや抵抗)」が分かっているので、オームの法則を使って、それぞれの部品に流れる電流の最大値を計算します。

結論と吟味

各電流の最大値は、\(I_{L0} = \frac{V_0}{\omega L}\), \(I_{C0} = \omega C V_0\), \(I_{R0} = \frac{V_0}{R}\) です。各素子のリアクタンスの定義に基づいた、基本的な関係式です。

解答 (1) \(I_{L0} = \displaystyle\frac{V_0}{\omega L}\), \(I_{C0} = \omega C V_0\), \(I_{R0} = \displaystyle\frac{V_0}{R}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
並列回路では電圧が共通なので、基準として電圧の位相 \(\sin(\omega t)\) を考えます。各素子を流れる電流の位相は、この基準電圧に対してどれだけ進んでいるか、あるいは遅れているかを考慮して記述します。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗を流れる電流 \(I_R\) は、電圧 \(V\) と同位相。
  • コイルを流れる電流 \(I_L\) は、電圧 \(V\) より位相が \(\pi/2\) 遅れる。
  • コンデンサーを流れる電流 \(I_C\) は、電圧 \(V\) より位相が \(\pi/2\) 進む。

具体的な解説と立式
各電流の瞬時値は、(1)で求めた最大値と、電圧 \(V=V_0 \sin(\omega t)\) との位相差を用いて表します。

  • 抵抗を流れる電流 \(I_R\):
    電圧と同位相なので、
    $$ I_R = I_{R0} \sin(\omega t) $$
  • コイルを流れる電流 \(I_L\):
    電圧より位相が \(\pi/2\) 遅れるので、
    $$ I_L = I_{L0} \sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right) = -I_{L0} \cos(\omega t) $$
  • コンデンサーを流れる電流 \(I_C\):
    電圧より位相が \(\pi/2\) 進むので、
    $$ I_C = I_{C0} \sin\left(\omega t + \frac{\pi}{2}\right) = I_{C0} \cos(\omega t) $$

使用した物理公式

  • 各素子の電圧と電流の位相関係
  • 三角関数の公式: \(\sin(x \pm \pi/2) = \pm \cos(x)\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

電圧の波を基準の波と考えます。抵抗を流れる電流は、この基準の波と完全に同じタイミングで振動します。コイルを流れる電流は、基準の波より90°分だけ遅れて振動します。コンデンサーを流れる電流は、逆に90°分だけ早く振動します。この「タイミングのずれ」を三角関数の位相の項(\(\sin\)の中身)で表現します。

結論と吟味

各電流の瞬時値は、\(I_R = I_{R0} \sin(\omega t)\), \(I_L = -I_{L0} \cos(\omega t)\), \(I_C = I_{C0} \cos(\omega t)\) です。並列回路における各素子の位相関係を正しく表しています。

解答 (2) \(I_L = -I_{L0} \cos(\omega t)\), \(I_C = I_{C0} \cos(\omega t)\), \(I_R = I_{R0} \sin(\omega t)\)

問(3)

思考の道筋とポイント
回路全体を流れる電流 \(I\) は、回路の合流点(または分岐点)で、各素子に分かれて流れる電流の和に等しくなります。これはキルヒホッフの第1法則(電流則)に基づいています。
この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): ある点に流れ込む電流の総和と、流れ出す電流の総和は等しい。

具体的な解説と立式
キルヒホッフの第1法則より、電源から流れ出す電流 \(I\) は、各並列分岐に流れる電流 \(I_L, I_C, I_R\) の和となります。
$$ I = I_L + I_C + I_R $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

電源から出てきた電流が、途中でコイル、コンデンサー、抵抗の3つの道に分かれます。したがって、元の電流は、3つの道に分かれた電流をすべて足し合わせたものになります。これは、水の流れが分岐しても全体の流量は変わらないのと同じです。

結論と吟味

回路全体を流れる電流は \(I = I_L + I_C + I_R\) です。これは電流則の基本であり、物理的に妥当です。

解答 (3) \(I = I_L + I_C + I_R\)

問(4)

思考の道筋とポイント
(1), (2), (3) の結果を組み合わせて、全電流 \(I\) を \(V_0, \omega, C, L, R, t\) を用いて表します。その式を、問題文で与えられた三角関数の合成公式 \(a\sin x – b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\sin(x-\theta)\) が使える形に変形します。係数を比較することで、合成後の電流 \(I\) の式と、位相の遅れ \(\theta\) の正接 \(\tan\theta\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 三角関数の合成公式を正しく適用する。
  • 公式の \(a, b, x\) に対応する部分を、電流の式から正確に見つけ出す。

具体的な解説と立式
(3)の式 \(I = I_L + I_C + I_R\) に、(1)と(2)で求めた式を代入します。
$$
\begin{aligned}
I &= (-I_{L0} \cos(\omega t)) + (I_{C0} \cos(\omega t)) + (I_{R0} \sin(\omega t)) \\[2.0ex]&= I_{R0} \sin(\omega t) + (I_{C0} – I_{L0}) \cos(\omega t) \\[2.0ex]&= \frac{V_0}{R} \sin(\omega t) + \left(\omega C V_0 – \frac{V_0}{\omega L}\right) \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
この式を、与えられた公式 \(a\sin x – b\cos x\) の形に合わせるため、\(\cos\) の項の符号をマイナスにします。
$$ I = \frac{V_0}{R} \sin(\omega t) – \left(\frac{V_0}{\omega L} – \omega C V_0\right) \cos(\omega t) $$
この式と公式を比較すると、
\(x = \omega t\), \(a = \frac{V_0}{R}\), \(b = V_0\left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)\) と対応します。
したがって、合成後の電流 \(I\) は、
$$ I = \sqrt{\left(\frac{V_0}{R}\right)^2 + \left(V_0\left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)\right)^2} \sin(\omega t – \theta) $$
また、\(\tan\theta\) は、
$$ \tan\theta = \frac{b}{a} $$

使用した物理公式

  • 三角関数の合成公式
計算過程

\(I\) の式:
$$
\begin{aligned}
I &= V_0 \sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)^2} \sin(\omega t – \theta)
\end{aligned}
$$
\(\tan\theta\) の式:
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{V_0\left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)}{\frac{V_0}{R}} \\[2.0ex]&= R\left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

3つの異なる波(\(I_L, I_C, I_R\))を足し算すると、結局は1つの新しい波になります。三角関数の合成は、この新しい波の「振幅(波の高さ)」と「位相(タイミングのずれ)」を計算するための数学的な道具です。問題文に便利な公式が与えられているので、自分の計算した電流の式を、公式の \(a \sin x – b \cos x\) という形に無理やり変形し、\(a\) と \(b\) にあたる部分を見つけ出します。あとは公式通りに計算すればOKです。

結論と吟味

全電流は \(I = V_0 \sqrt{(\frac{1}{R})^2 + (\frac{1}{\omega L} – \omega C)^2} \sin(\omega t – \theta)\)、位相の遅れは \(\tan\theta = R(\frac{1}{\omega L} – \omega C)\) で表されます。

解答 (4) \(I = V_0 \sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)^2} \sin(\omega t – \theta)\), \(\tan\theta = R\left(\frac{1}{\omega L} – \omega C\right)\)

問(5)

思考の道筋とポイント
回路のインピーダンス \(Z\) は、交流における回路全体の抵抗のようなもので、\(Z = V_0 / I_0\) の関係を満たします。ここで \(I_0\) は回路全体を流れる電流 \(I\) の最大値(振幅)です。(4)で求めた合成後の電流の式の振幅部分が \(I_0\) にあたります。
この設問における重要なポイント

  • インピーダンスの定義: \(Z = V_0 / I_0\)。
  • (4)で求めた電流の最大値 \(I_0\) を利用する。

具体的な解説と立式
(4)の結果より、電流の最大値 \(I_0\) は、
$$ I_0 = V_0 \sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\omega C – \frac{1}{\omega L}\right)^2} $$
インピーダンス \(Z\) の定義式 \(Z = V_0 / I_0\) に代入します。
$$ Z = \frac{V_0}{V_0 \sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\omega C – \frac{1}{\omega L}\right)^2}} $$

使用した物理公式

  • インピーダンスの定義: \(Z = V_0 / I_0\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
Z = \frac{1}{\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\omega C – \frac{1}{\omega L}\right)^2}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

インピーダンスは、回路全体の「電流の流れにくさ」を表します。オームの法則 \(R=V/I\) を交流回路に拡張したものが \(Z=V_0/I_0\) です。(4)で計算した回路全体の電流の最大値 \(I_0\) をこの式に代入することで、インピーダンス \(Z\) を求めることができます。

結論と吟味

並列回路のインピーダンスは \(Z = \frac{1}{\sqrt{(\frac{1}{R})^2 + (\omega C – \frac{1}{\omega L})^2}}\) となります。直列回路のインピーダンスの式 \(Z=\sqrt{R^2+(\omega L – \frac{1}{\omega C})^2}\) とは形が大きく異なることを確認できます。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\omega C – \frac{1}{\omega L}\right)^2}}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
(5)で求めたインピーダンス \(Z\) の式が最大になる条件を考えます。\(Z\) は分数の形をしているため、分母が最小になるときに \(Z\) は最大になります。
この設問における重要なポイント

  • 分母 \(\sqrt{(\frac{1}{R})^2 + (\omega C – \frac{1}{\omega L})^2}\) を最小化する。
  • \((\frac{1}{R})^2\) は定数なので、\((\omega C – \frac{1}{\omega L})^2\) が最小、すなわち0になるときを考えればよい。

具体的な解説と立式
インピーダンス \(Z\) が最大になるのは、分母の根号の中身が最小になるときです。
$$ \left(\frac{1}{R}\right)^2 + \left(\omega C – \frac{1}{\omega L}\right)^2 $$
この式で、第1項の \((\frac{1}{R})^2\) は角周波数 \(\omega\) によらない定数です。したがって、式全体が最小になるのは、第2項の \((\omega C – \frac{1}{\omega L})^2\) が最小値である0をとるときです。
このときの角周波数を \(\omega_0\) とすると、
$$ \omega_0 C – \frac{1}{\omega_0 L} = 0 $$

使用した物理公式

  • 特になし(数学的な最小値の考え方)
計算過程

共振条件の式を \(\omega_0\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\omega_0 C &= \frac{1}{\omega_0 L} \\[2.0ex]\omega_0^2 &= \frac{1}{LC} \\[2.0ex]\omega_0 &= \frac{1}{\sqrt{LC}}
\end{aligned}
$$
(\(\omega_0 > 0\) より)

計算方法の平易な説明

インピーダンス(電流の流れにくさ)が最大になるのは、回路に電流が最も流れにくくなる「並列共振」という状態です。これは、コイルを流れようとする電流とコンデンサーを流れようとする電流が、互いに逆向きで大きさが等しくなり、回路の分岐点で打ち消し合ってしまうために起こります。その結果、電源から見ると、コイルとコンデンサーの部分にはほとんど電流が流れず、抵抗部分にしか流れないように見えます。この「打ち消し合い」が起こる条件を数式で解くと、特別な角周波数 \(\omega_0\) が求まります。

結論と吟味

インピーダンスが最大となる角周波数は \(\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) です。これは「並列共振」の条件であり、興味深いことに、インピーダンスが最小になる「直列共振」の角周波数と全く同じ式になります。しかし、起こる現象(インピーダンスが最大になる)は正反対です。

解答 (6) \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 並列回路の基本特性(電圧共通):
    • 核心: RLC並列回路を解く上での絶対的な出発点です。すべての素子(コイル、コンデンサー、抵抗)に、電源電圧 \(V=V_0 \sin(\omega t)\) がそのままかかります。この「電圧共通」という事実から、各素子を流れる電流を個別に計算することができます。
    • 理解のポイント: 直列回路では「電流共通」でしたが、並列回路では「電圧共通」です。この違いが、インピーダンスの式の形や共振時の現象の違いに直結します。
  • キルヒホッフの第1法則(電流則):
    • 核心: 回路全体を流れる電流 \(I\) は、各素子を流れる電流 \(I_L, I_C, I_R\) の和に等しい(\(I = I_L + I_C + I_R\))という法則です。
    • 理解のポイント: 各電流は位相が異なるため、単純な大きさの足し算ではなく、瞬時値(三角関数)の和、あるいはベクトル(フェーザ)の和として計算する必要があります。(4)の三角関数の合成は、この位相を考慮した足し算を実行していることに他なりません。
  • 並列共振:
    • 核心: コイルを流れる電流とコンデンサーを流れる電流のリアクタンス成分が互いに打ち消し合う(\(I_{C0} = I_{L0}\) となる)現象です。このとき、回路全体のインピーダンスが最大となり、電源から流れ出す電流が最小になります。
    • 理解のポイント: (6)で求めた共振条件 \(\omega_0 C – \frac{1}{\omega_0 L} = 0\) は、まさに \(I_{C0} = \omega_0 C V_0\) と \(I_{L0} = \frac{V_0}{\omega_0 L}\) が等しくなる条件です。直列共振ではインピーダンスが最小になりましたが、並列共振では最大になるという対照的な結果をしっかり区別して覚えましょう。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • LC並列回路(タンク回路): 抵抗がないLC並列回路。共振周波数ではインピーダンスが無限大(理論上)となり、外部から電流が流れ込めなくなります。このとき、LとCの間で電気エネルギーと磁気エネルギーを交換し続ける「電気振動」が起こります。
    • アドミタンス・サセプタンス: 並列回路では、インピーダンスの逆数である「アドミタンス \(Y=1/Z\)」を考えると解析が容易になることがあります。\(Y = \sqrt{G^2 + (B_C – B_L)^2}\) のように、直列インピーダンスと双対的な関係になります(\(G=1/R\)はコンダクタンス、\(B\)はサセプタンス)。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 接続方法の確認: まず回路図を見て、直列か並列かを確認します。これが解析の第一歩です。
    2. 共通な物理量を見つける: 並列なら「電圧」、直列なら「電流」が共通です。この共通な物理量を基準(位相の基準)にして、他の物理量の位相の進み・遅れを考えます。
    3. 電流のベクトル図(フェーザ図)を描く: (4)の計算は、ベクトル図を描くと非常に見通しが良くなります。基準となる電圧ベクトルを水平右向きに描き、それに対して同位相の \(I_R\)、90°進んだ \(I_C\)、90°遅れた \(I_L\) の電流ベクトルを描きます。これらのベクトルを合成することで、全電流 \(I\) の大きさと位相を求めることができます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 直列回路と並列回路の混同:
    • 誤解: 並列回路なのに、直列回路のインピーダンスの公式 \(Z=\sqrt{R^2+(\omega L – 1/\omega C)^2}\) を使ってしまう。
    • 対策: 「直列はインピーダンスの合成、並列は電流の合成」と明確に区別しましょう。並列回路のインピーダンスは、(5)で導出したように、各素子の「流れやすさ(コンダクタンスやサセプタンス)」を合成したものの逆数、という複雑な形になります。公式を丸暗記するのではなく、導出過程(電流を合成して \(Z=V_0/I_0\))を理解することが重要です。
  • 三角関数の合成の符号ミス:
    • 誤解: (4)で、与えられた公式 \(a\sin x – b\cos x\) に合わせる際に、符号の扱いでミスをする。
    • 対策: 自分の立てた式 \(I = A\sin(\omega t) + B\cos(\omega t)\) を、公式の形 \(a\sin x – b\cos x\) に変形する際には、\(a=A\), \(b=-B\) のように、係数を慎重に対応させましょう。特に、\(\tan\theta = b/a\) の計算で符号を間違えやすいので注意が必要です。
  • 共振条件の混同:
    • 誤解: 並列共振でインピーダンスが「最小」になると勘違いする。
    • 対策: 「直列共振はインピーダンス最小(電流最大)、並列共振はインピーダンス最大(電流最小)」と対比させて覚えましょう。直列ではLとCが協力して抵抗を打ち消しますが、並列ではLとCが互いの電流を打ち消し合う、というイメージを持つと覚えやすいです。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電流のベクトル図(フェーザ図): この問題の解析に最も適した図です。
      1. 基準として電圧ベクトル \(\vec{V}\) を水平右向きに描く。
      2. 抵抗の電流 \(\vec{I_R}\) は \(\vec{V}\) と同じ向きに描く。
      3. コンデンサーの電流 \(\vec{I_C}\) は \(\vec{V}\) より90°進んだ上向きに描く。
      4. コイルの電流 \(\vec{I_L}\) は \(\vec{V}\) より90°遅れた下向きに描く。
      5. これらのベクトルを合成(\(\vec{I} = \vec{I_R} + \vec{I_C} + \vec{I_L}\))すると、(4)の計算と同じ結果が図形的に得られます。
    • 共振状態のベクトル図: 並列共振のときは、\(\vec{I_C}\) と \(\vec{I_L}\) の長さが等しくなり、互いに打ち消し合います。その結果、合成電流 \(\vec{I}\) は \(\vec{I_R}\) と同じになり、電圧と同位相で、かつ大きさが最小になることが図から一目瞭然です。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • ベクトルの長さ: 各電流ベクトルの長さは、それぞれの電流の最大値 \(I_{R0}, I_{C0}, I_{L0}\) に比例するように描くと、合成後のベクトルの大きさや角度の大小関係が直感的に把握しやすくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(I_0 = V_0/X\) (各素子のオームの法則):
    • 選定理由: (1)で、共通の電圧 \(V_0\) から各素子を流れる電流の最大値を求めるため。並列回路解析の第一歩です。
    • 適用根拠: 交流におけるオームの法則を、各素子に個別に適用したものです。
  • \(I = I_L + I_C + I_R\) (キルヒホッフの電流則):
    • 選定理由: (3)で、回路全体を流れる電流を、各部分を流れる電流の和として表現するため。
    • 適用根拠: 電荷保存則に基づく、電気回路の普遍的な法則です。
  • 三角関数の合成公式:
    • 選定理由: (4)で、位相の異なる複数の正弦波(\(I_L, I_C, I_R\))の和を、単一の正弦波として表現し、その振幅(最大値)と位相を求めるため。
    • 適用根拠: 数学的な恒等式であり、波の重ね合わせを解析する際の標準的な手法です。
  • \(Z = V_0/I_0\) (インピーダンスの定義):
    • 選定理由: (5)で、回路全体の「電流の流れにくさ」を定量的に評価するため。
    • 適用根拠: インピーダンスという物理量の定義そのものです。(4)で求めた \(I_0\) を用いて、この定義から \(Z\) を導出します。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 各電流の最大値:
    • 戦略: 各素子にオームの法則を適用。
    • フロー: ①電圧は共通で \(V_0\)。②\(I_{L0}=V_0/X_L\), \(I_{C0}=V_0/X_C\), \(I_{R0}=V_0/R\) をそれぞれ計算。
  2. (2) 各電流の瞬時値:
    • 戦略: 電圧を基準に、各素子の位相差を考慮する。
    • フロー: ①\(I_R\)は同位相。②\(I_L\)は\(\pi/2\)遅れ。③\(I_C\)は\(\pi/2\)進み。それぞれの最大値と組み合わせて式を立てる。
  3. (3)-(4) 全電流の合成:
    • 戦略: キルヒホッフの電流則と三角関数の合成を用いる。
    • フロー: ①\(I = I_L+I_C+I_R\) を計算。②\(\sin\)と\(\cos\)の項に整理。③三角関数の合成公式を適用し、振幅と位相を求める。
  4. (5) インピーダンス:
    • 戦略: インピーダンスの定義式に(4)の結果を代入。
    • フロー: ①\(I_0\)は(4)で求めた振幅。②\(Z=V_0/I_0\) を計算し、整理する。
  5. (6) 並列共振:
    • 戦略: インピーダンスZが最大になる条件(分母が最小)を求める。
    • フロー: ①Zの式の分母にある \((\omega C – 1/\omega L)^2\) が0になる条件を考える。②\(\omega C = 1/\omega L\) を \(\omega\) について解く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 分数の扱い: (4)以降、\(\omega L\) や \(\omega C\) が分母や分子に現れ、式が複雑になります。分数の計算、特に逆数をとる際にミスをしないよう、慎重に式変形を行いましょう。
  • 文字の区別: \(I\)(瞬時値)と \(I_0\)(最大値)、\(V\) と \(V_0\) を明確に区別して記述する習慣をつけましょう。
  • 直列と並列の式の確認: 最終的な答えが出た後、それが直列回路の公式とどう違うかを見比べてみるのも良い復習になります。例えば、インピーダンスの式は、直列では抵抗やリアクタンスの「和」の形、並列では「逆数の和」の逆数のような形になり、構造が全く異なります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (4) \(\tan\theta\) の符号: \(\tan\theta = R(\frac{1}{\omega L} – \omega C)\) の符号は、\(\frac{1}{\omega L}\) と \(\omega C\) の大小関係で決まります。これは、コイルを流れる電流 \(I_L\) とコンデンサーを流れる電流 \(I_C\) のどちらが大きいかに対応し、回路全体として誘導性(電流が遅れる)になるか、容量性(電流が進む)になるかを決定しており、物理的に妥当です。
    • (6) 共振周波数: 並列共振の角周波数 \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\) は、直列共振の角周波数と全く同じ式です。これは、どちらの共振も「コイルとコンデンサーのリアクタンス(あるいはサセプタンス)の効果が打ち消し合う」という点で本質が同じであるためです。しかし、その結果として起こる現象(インピーダンスが最小か最大か)は正反対である、という点が重要です。
  • 極端な場合を考える:
    • もし \(\omega \rightarrow 0\)(直流)なら、\(X_L \rightarrow 0\), \(X_C \rightarrow \infty\) となります。コイルは短絡、コンデンサーは開放となり、電流はすべてコイルに流れようとします(理論上は無限大)。
    • もし \(\omega \rightarrow \infty\) なら、\(X_L \rightarrow \infty\), \(X_C \rightarrow 0\) となります。コイルは開放、コンデンサーは短絡となり、電流はすべてコンデンサーに流れようとします。これらの極端な振る舞いを、導出した式が再現できるか確認するのも良い検算になります。

問題145 (東京農工大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、まず直流電源と抵抗、コンデンサーからなるRC回路の過渡現象を扱い、次にその充電されたコンデンサーをコイルに接続してLC回路を構成し、そこで起こる「電気振動」を考察するものです。特に後半では、電気振動と力学における単振動(ばね振り子)とのアナロジー(類似性)に焦点を当てて理解を深める構成になっています。

与えられた条件
  • 回路素子:直流電源(電圧\(E\))、抵抗(\(R\))、コンデンサー(\(C\))、コイル(\(L\))。
  • 初期状態:スイッチ\(S_1, S_2\)は開いており、コンデンサーの電気量\(Q\)は0。
  • [A] RC回路の充電過程
    • (1) \(S_1\)を閉じた直後。
    • (2) \(S_1\)を閉じて十分な時間が経過した後(充電完了後)。
  • [B] LC回路の電気振動
    • (1) LC回路に蓄えられる全エネルギー\(U\)。
    • (2) 電気振動と単振動のアナロジー。
    • (3) 電気振動の周期\(T\)。
    • (4) 電気量\(Q_a\)と電流\(I_2\)の時間変化のグラフ。
問われていること
  • (1) \(S_1\)を閉じた直後の電流\(I_1\)とコンデンサーの電圧\(V_C\)。
  • (2) \(S_1\)を閉じて十分時間が経過した後の電流\(I_1\)とコンデンサーの電圧\(V_C\)。
  • [B](1) LC回路のエネルギー\(U\)の式。
  • [B](2) ばね定数\(k\)と質量\(m\)に対応する電気量の文字式。
  • [B](3) 電気振動の周期\(T\)。
  • [B](4) 電気量\(Q_a\)と電流\(I_2\)のグラフ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「RC回路の過渡現象とLC回路の電気振動」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. RC回路の過渡応答: スイッチを入れた直後と十分時間が経過した後のコンデンサーの振る舞いを理解する。直後は電荷0で電圧0(導線と同じ)、十分時間経過後は充電完了で電流0(断線と同じ)。
  2. LC回路のエネルギー保存: 抵抗がないLC回路では、コンデンサーの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーの和が一定に保たれる。
  3. 電気振動と単振動のアナロジー: LC回路の電気振動は、力学における単振動と数式上、非常によく似た形をしている。この類似性を用いることで、周期などの特性を類推できる。
  4. エネルギーと位相: エネルギーが最大になる状態とゼロになる状態、そして電流と電気量の位相が\(\pi/2\)ずれる関係を理解する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A]では、RC回路におけるスイッチ操作の「直後」と「十分時間後」という2つの極限状態でのコンデンサーの性質を適用し、キルヒホッフの法則から電流と電圧を求めます。
  2. [B]では、まずLC回路のエネルギー保存則を立式します。次に、そのエネルギーの式と単振動の力学的エネルギーの式を比較し、対応する物理量を見つけ出します。そのアナロジーを利用して周期を求め、最後にエネルギーの移り変わりと位相関係からグラフを描きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
スイッチ\(S_1\)を閉じた「直後」を考えます。コンデンサーはまだ充電されておらず、蓄えられている電気量は0です。コンデンサーの電圧は \(V_C = Q/C\) で与えられるため、この瞬間の電圧は0です。電圧が0ということは、電気的には単なる導線(ショート状態)と見なせます。この状態でキルヒホッフの法則IIを適用します。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを閉じた直後のコンデンサーは、電荷が0なので電圧も0。電気的には「導線」として扱える。
  • キルヒホッフの法則II: \(\sum (\text{起電力}) = \sum (\text{電圧降下})\)。

具体的な解説と立式
スイッチ\(S_1\)を閉じた直後、コンデンサーの電気量\(Q\)は0です。したがって、コンデンサーの極板間の電圧\(V_C\)は、
$$ V_C = \frac{Q}{C} = \frac{0}{C} = 0 \, \text{V} $$
このとき、回路は電源\(E\)、抵抗\(R\)、そして電圧0のコンデンサー(導線とみなせる)が直列に接続された状態です。キルヒホッフの法則IIを適用すると、
$$ E – V_C – RI_1 = 0 $$
$$ E – 0 – RI_1 = 0 $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • キルヒホッフの法則II
計算過程

上記の関係式を\(I_1\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
RI_1 &= E \\[2.0ex]I_1 &= \frac{E}{R}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、空っぽのコンデンサーは電気を欲しがって、まるで抵抗がないかのように電流を流します。そのため、この瞬間だけはコンデンサーをただの電線と考えて回路を計算できます。回路には電源\(E\)と抵抗\(R\)しかないので、オームの法則から電流は \(E/R\) となります。

結論と吟味

閉じた直後の電流は \(I_1 = E/R\)、コンデンサーの電圧は \(V_C = 0\) Vです。これはRC回路の充電開始時の特性として基本的な結果です。

解答 (1) 電流: \(\displaystyle\frac{E}{R}\)、電圧: 0 V

問(2)

思考の道筋とポイント
スイッチ\(S_1\)を閉じて「十分に時間が経過した」後を考えます。この状態では、コンデンサーの充電が完了しています。充電が完了すると、コンデンサーはそれ以上電荷を蓄えることができず、回路に電流が流れなくなります。つまり、コンデンサー部分は「断線」していると見なせます。
この設問における重要なポイント

  • 十分時間が経過した後のコンデンサーは、充電が完了し電流が流れなくなるため「断線」として扱える。
  • 電流が0のとき、抵抗での電圧降下は0。

具体的な解説と立式
十分に時間が経過すると、コンデンサーの充電が完了し、電流\(I_1\)は流れなくなります。
$$ I_1 = 0 \, \text{A} $$
このとき、キルヒホッフの法則IIを回路に適用すると、
$$ E – V_C – RI_1 = 0 $$
\(I_1=0\) なので、抵抗\(R\)での電圧降下 \(RI_1\) は0になります。
$$ E – V_C – R \times 0 = 0 $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則II
計算過程

上記の関係式を\(V_C\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
V_C = E
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

スイッチを入れてしばらくすると、コンデンサーはお腹いっぱい(充電完了)になり、もう電気を受け付けなくなります。その結果、回路全体に電流が流れなくなります(\(I_1=0\))。電流が流れないので、抵抗\(R\)では電圧のロス(電圧降下)が起こりません。したがって、電源の電圧\(E\)が、そのままコンデンサーの電圧\(V_C\)としてかかります。

結論と吟味

十分時間が経過した後の電流は \(I_1 = 0\) A、コンデンサーの電圧は \(V_C = E\) Vです。コンデンサーが電源電圧と同じ電圧まで充電されるという、RC回路の充電完了時の基本的な結果です。

解答 (2) 電流: 0 A、電圧: \(E\) V

[B]問(1)

思考の道筋とポイント
[A](2)の操作の後、\(S_1\)を開き\(S_2\)を閉じると、充電されたコンデンサーとコイルからなるLC回路ができます。この回路には抵抗がないため、エネルギーは保存されます。回路に蓄えられる全エネルギー\(U\)は、コンデンサーに蓄えられる「静電エネルギー」と、コイルに蓄えられる「磁気エネルギー」の和で与えられます。
この設問における重要なポイント

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式: \(U_C = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C}\)
  • コイルの磁気エネルギーの公式: \(U_L = \frac{1}{2}LI^2\)
  • LC回路の全エネルギーは、これらの和で表される。

具体的な解説と立式
ある時刻において、コンデンサーの電気量が\(Q\)、コイルを流れる電流が\(I_2\)であるとします。
コンデンサーに蓄えられている静電エネルギー\(U_C\)は、
$$ U_C = \frac{1}{2C}Q^2 $$
コイルに蓄えられている磁気エネルギー\(U_L\)は、
$$ U_L = \frac{1}{2}LI_2^2 $$
LC回路全体に蓄えられているエネルギー\(U\)は、これらの和なので、
$$ U = U_C + U_L = \frac{1}{2C}Q^2 + \frac{1}{2}LI_2^2 $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U_C = \frac{Q^2}{2C}\)
  • コイルの磁気エネルギー: \(U_L = \frac{1}{2}LI^2\)
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

LC回路のエネルギーは、コンデンサーとコイルの間を行ったり来たりします。コンデンサーは電気を「電荷」の形で、コイルは電気を「電流(磁場)」の形で蓄えます。回路全体のエネルギーは、この2種類のエネルギーの合計値になります。

結論と吟味

LC回路に蓄えられるエネルギーは \(U = \frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2}LI_2^2\) です。これは電気振動におけるエネルギー保存則を表す基本式です。

解答 [B](1) \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2}LI_2^2\)

[B]問(2)

思考の道筋とポイント
電気振動と、ばね振り子の単振動とのアナロジー(類似性)を考えます。それぞれの系のエネルギー保存則の式を比較し、対応する物理量を見つけ出します。
この設問における重要なポイント

  • 単振動の力学的エネルギー: \(E = \frac{1}{2}kx^2 + \frac{1}{2}mv^2\)
  • 電気振動のエネルギー: \(U = \frac{1}{2C}Q^2 + \frac{1}{2}LI_2^2\)
  • 変位\(x\)が電気量\(Q\)に、速度\(v\)が電流\(I_2\)に対応する。

具体的な解説と立式
ばね定数\(k\)のばねにつながれた質量\(m\)の質点の単振動を考えます。質点の変位が\(x\)、速度が\(v\)のとき、力学的エネルギー\(E\)は、ばねの弾性エネルギーと運動エネルギーの和で表されます。
$$ E = \frac{1}{2}kx^2 + \frac{1}{2}mv^2 $$
一方、[B](1)で求めたLC回路のエネルギーは、
$$ U = \frac{1}{2C}Q^2 + \frac{1}{2}LI_2^2 $$
問題文の指示より、電気量の変化\(\Delta Q\)が変位\(\Delta x\)に、電流\(I_2 = \Delta Q / \Delta t\)が速度\(v = \Delta x / \Delta t\)に対応します。
この対応関係で2つのエネルギーの式を比較すると、

  • ばね定数\(k\)に対応するのは、\(\frac{1}{C}\)
  • 質量\(m\)に対応するのは、\(L\)

となります。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
  • LC回路のエネルギー保存則
計算過程

式の比較による考察なので、計算はありません。

計算方法の平易な説明

電気の世界で起きている「電気振動」と、力学の世界で起きている「ばねの振動」は、見た目は全く違いますが、数式の上ではそっくりな双子のような関係です。

  • ばねの「伸び縮み(変位\(x\))」は、コンデンサーの「電荷のたまり具合(電気量\(Q\))」に対応します。
  • おもりの「速さ(速度\(v\))」は、回路の「電気の流れ(電流\(I\))」に対応します。
  • ばねの「硬さ(ばね定数\(k\))」は、コンデンサーの「電荷のため込みにくさ(\(1/C\))」に対応します。
  • おもりの「慣性(質量\(m\))」は、コイルの「電流を変化させまいとする性質(インダクタンス\(L\))」に対応します。
結論と吟味

ばね定数\(k\)に対応するのは\(1/C\)、質量\(m\)に対応するのは\(L\)です。このアナロジーは電気振動を理解する上で非常に強力なツールです。

解答 [B](2) \(k\)に対応: \(\displaystyle\frac{1}{C}\)、\(m\)に対応: \(L\)

[B]問(3)

思考の道筋とポイント
単振動の周期の公式と、(2)で確立したアナロジーを利用して、電気振動の周期を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 単振動の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}\)
  • (2)のアナロジー: \(m \rightarrow L\), \(k \rightarrow 1/C\) を代入する。

具体的な解説と立式
ばね振り子の周期\(T\)は、
$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}} $$
この式の\(m\)を\(L\)に、\(k\)を\(1/C\)に置き換えることで、LC回路の電気振動の周期を求めることができます。
$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{L}{1/C}} $$

使用した物理公式

  • 単振動の周期の公式
計算過程

$$
\begin{aligned}
T = 2\pi\sqrt{L \times C} = 2\pi\sqrt{LC}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(2)で見つけたアナロジーを使えば、力学で覚えている公式を電気の公式に翻訳できます。ばねの周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{m/k}\) の \(m\) を \(L\) に、\(k\) を \(1/C\) に入れ替えるだけで、電気振動の周期の公式が完成します。

結論と吟味

電気振動の周期は \(T = 2\pi\sqrt{LC}\) です。これは電気振動の周期を求める基本公式であり、アナロジーからも正しく導出できています。

解答 [B](3) \(T = 2\pi\sqrt{LC}\)

[B]問(4)

思考の道筋とポイント
電気量\(Q_a\)と電流\(I_2\)の時間変化をグラフに描きます。
1. 初期状態(\(t=0\)): スイッチ\(S_2\)を閉じた瞬間を考えます。このとき、コンデンサーは[A](2)の状態で、電圧\(E\)まで充電されています。極板aは正に帯電しており、電気量は最大値\(Q_0 = CE\)です。まだ電流は流れていないので\(I_2=0\)です。
2. エネルギーの移り変わり: コンデンサーの放電が始まり、静電エネルギーが磁気エネルギーに変換されます。\(Q_a\)が減少し、\(I_2\)が増加します。
3. \(t=T/4\): コンデンサーの電荷が0になり、静電エネルギーが0になります。このとき、エネルギーはすべて磁気エネルギーに変換され、電流\(I_2\)が最大値(ただし、図の矢印とは逆向きなので負の最大値\(-I_0\))をとります。
4. \(t=T/2\): 今度はコイルからエネルギーが放出され、コンデンサーが逆向きに充電されます。電流が0になり、極板aの電気量は負の最大値\(-Q_0\)になります。
このサイクルを繰り返します。
この設問における重要なポイント

  • 電気量\(Q\)が最大(または最小)のとき、電流\(I\)は0。
  • 電流\(I\)が最大(または最小)のとき、電気量\(Q\)は0。
  • 電流\(I\)の位相は、電気量\(Q\)の位相より\(\pi/2\)進む(\(I = dQ/dt\)の関係)。

具体的な解説と立式

  • 電気量\(Q_a\)のグラフ:
    \(t=0\)で最大値\(Q_0\)から始まり、\(\cos\)カーブを描いて振動します。
    \(Q_a(t) = Q_0 \cos(\omega t)\) (ただし \(\omega = 2\pi/T\))
  • 電流\(I_2\)のグラフ:
    \(t=0\)で0から始まります。コンデンサーの放電により、極板aから電荷が流れ出すので、電流の向きは図の矢印と逆向き(負)になります。したがって、\(-\sin\)カーブを描いて振動します。
    \(I_2(t) = \frac{dQ_a}{dt} = -Q_0\omega \sin(\omega t) = -I_0 \sin(\omega t)\)
計算方法の平易な説明

ばね振り子のアナロジーで考えます。

  • \(t=0\): ばねが最も伸びた状態(変位が最大、速度は0)から手を離したのと同じです。コンデンサーの電荷は最大、電流は0です。
  • その後: おもりが加速し、自然長の位置(変位0)で速度が最大になります。同様に、コンデンサーの電荷が0になったとき、電流が最大になります。
  • さらにその後: おもりは反対側に移動し、ばねを最も縮めます(変位が負で最大、速度は0)。同様に、コンデンサーは逆向きに充電され、電荷が負で最大になり、電流は0になります。

この動きをグラフにすると、変位(電荷)は\(\cos\)カーブ、速度(電流)は\(-\sin\)カーブになります。

結論と吟味

\(Q_a\)のグラフは\(t=0\)で\(Q_0\)から始まる\(\cos\)カーブ。\(I_2\)のグラフは\(t=0\)で0から始まり、負の方向に振れる\(-\sin\)カーブとなります。電気量と電流の位相が\(\pi/2\)ずれている関係を正しく表現したグラフです。

解答 [B](4) 上記の考察に基づくグラフ。

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • RC回路の過渡現象:
    • 核心: スイッチを操作した「直後」と「十分な時間が経過した後」で、コンデンサーの振る舞いが劇的に変わる点です。
      • 直後: 電荷が蓄えられていないコンデンサーは、電圧が0V。電気的には「導線(ショート)」と等価。
      • 十分時間後: 充電が完了したコンデンサーは、電流を流さない。電気的には「断線(オープン)」と等価。
    • 理解のポイント: (A)の設問は、この2つの極端な状態を正しく理解し、キルヒホッフの法則を適用できるかを問うています。
  • LC回路のエネルギー保存則:
    • 核心: 抵抗がない理想的なLC回路では、コンデンサーの静電エネルギー \(U_C = \frac{Q^2}{2C}\) とコイルの磁気エネルギー \(U_L = \frac{1}{2}LI^2\) の和が常に一定に保たれます。
    • 理解のポイント: このエネルギー保存則が、コンデンサーとコイルの間でエネルギーが行き来する「電気振動」の原動力です。[B](1)はこの法則の立式そのものです。
  • 電気振動と単振動のアナロジー(類似性):
    • 核心: LC回路のエネルギー保存の式と、ばね振り子の力学的エネルギー保存の式が、数式上ほとんど同じ形をしているという事実です。
      • 電気量 \(Q\) ⇔ 変位 \(x\)
      • 電流 \(I\) ⇔ 速度 \(v\)
      • インダクタンス \(L\) ⇔ 質量 \(m\)
      • 容量の逆数 \(1/C\) ⇔ ばね定数 \(k\)
    • 理解のポイント: [B](2),(3)はこのアナロジーを利用する問題です。力学の単振動で得た知識(周期の公式など)を、電気振動にそのまま「翻訳」して適用できる、非常に強力な考え方です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • RLC直列回路の減衰振動: LC回路に抵抗Rが加わると、エネルギーがジュール熱として消費されるため、振動が時間とともに減衰していきます。エネルギー保存則が成り立たなくなり、解析には微分方程式が必要になります。
    • 直流RL回路の過渡現象: コイルと抵抗からなる回路。スイッチを入れた直後、コイルは電流の変化を妨げるため「断線」のように振る舞い、十分時間が経つと「導線」になります。コンデンサーとは逆の振る舞いをします。
    • 強制振動: LC回路に交流電源を接続する問題。電源の周波数と回路の固有周波数(共振周波数)が一致すると、共振現象が起こります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 時間スケールを意識する: 問題文が「スイッチを入れた直後」なのか、「十分時間が経過した後」なのか、あるいは「振動している最中」なのかを正確に読み取ります。それによって適用すべき物理法則や素子の扱い方が決まります。
    2. エネルギーの出入りを確認する: 回路に抵抗が含まれているかどうかが重要です。抵抗がなければエネルギーは保存され(LC振動)、抵抗があればエネルギーは失われます(減衰振動や直流回路での熱発生)。
    3. アナロジーの活用: 電気回路の問題で行き詰まったら、力学の類似モデル(特に単振動)を考えてみるのが有効な場合があります。逆に、力学の問題を電気回路のアナロジーで考えることもできます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • スイッチ直後のコイルの扱い:
    • 誤解: スイッチを入れた直後、コイルを導線と考えてしまう。
    • 対策: コイルは「電流の変化を嫌う」素子です。スイッチを入れた直後は、電流が0から急に流れ込もうとするのを妨げるため、無限大の抵抗(断線)のように振る舞います。コンデンサーとは逆の特性を持つことをしっかり区別しましょう。
  • エネルギーの式の混同:
    • 誤解: コンデンサーのエネルギーを \(\frac{1}{2}CV^2\) ではなく \(\frac{1}{2}QV\) や \(\frac{Q^2}{2C}\) のどれを使えばいいか混乱する。
    • 対策: 3つの式はすべて等価ですが、問題で与えられている変数に応じて使い分けるのが基本です。[B](1)では\(Q\)と\(I_2\)で表すよう指示があるので、\(\frac{Q^2}{2C}\) と \(\frac{1}{2}LI_2^2\) を選択するのが適切です。
  • グラフの位相の間違い:
    • 誤解: (4)で、電気量と電流のグラフを同位相(両方\(\cos\)や両方\(\sin\))で描いてしまう。
    • 対策: 電流は電気量の時間変化率(\(I=dQ/dt\)、微分の関係)です。三角関数では、微分すると位相が\(\pi/2\)進みます。したがって、\(Q\)が\(\cos\)カーブなら、\(I\)は\(-\sin\)カーブになります。コンデンサーの電荷が最大のとき(ばねが最も伸びたとき)、電流は0(速度0)になる、という物理的イメージを持つと間違いを防げます。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 水タンクと水車のモデル(LC振動のアナロジー):
      • コンデンサーを「水タンク」、電気量を「水量」、電圧を「水圧」とイメージします。
      • コイルを「水車(慣性を持つ)」、電流を「水の流量」とイメージします。
      • \(t=0\): タンクの水位が最大(電荷最大)、水は流れていない(電流0)。
      • \(t=T/4\): タンクが空になり(電荷0)、水車の回転が最も速くなる(電流最大)。
      • \(t=T/2\): 水車の勢いで水が逆側のタンク(コンデンサーの逆充電)に汲み上げられ、水位が最大になる(電荷が負で最大)。

      このイメージは、エネルギーが静電エネルギー(位置エネルギー)と磁気エネルギー(運動エネルギー)の間を行き来する様子を直感的に理解するのに役立ちます。

  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 回路状態の図示: (1)や(2)のように状態が変化する問題では、「直後の等価回路」と「十分時間後の等価回路」をそれぞれ描くと、思考が整理されます。例えば、(1)ではコンデンサーを導線で描き直し、(2)ではコンデンサー部分を断線として描き直すと分かりやすいです。
    • グラフの軸と初期値: (4)のグラフを描く際は、縦軸が\(Q_a\)なのか\(I_2\)なのかを明確にし、\(t=0\)での初期値(\(Q_a=Q_0, I_2=0\))をプロットしてから描き始めると、位相のずれを間違えにくくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V_C=0\) (問1):
    • 選定理由: スイッチを入れた「直後」という時間的条件から、コンデンサーの物理状態を判断するため。
    • 適用根拠: 電荷の移動には時間がかかるため、\(t=0\)の瞬間には電荷はまだ蓄積されていません(\(Q=0\))。コンデンサーの定義式 \(V=Q/C\) から、電圧も0であると論理的に導かれます。
  • \(I_1=0\) (問2):
    • 選定理由: 「十分時間が経過した」という時間的条件から、コンデンサーの物理状態を判断するため。
    • 適用根拠: 直流回路において、コンデンサーの充電が完了すると、その先の回路は電位差がなくなって電流が流れなくなります。これはコンデンサーが断線として機能することと等価です。
  • \(U = \frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2}LI^2\) (B-1):
    • 選定理由: LC回路に蓄えられる2種類のエネルギー(静電エネルギーと磁気エネルギー)を数式で表現するため。
    • 適用根拠: それぞれのエネルギー公式は、電場や磁場にエネルギーが蓄えられるという電磁気学の基本原理から導出されます。抵抗がないため、これらの和は保存されます。
  • \(T = 2\pi\sqrt{LC}\) (B-3):
    • 選定理由: 電気振動の周期を求めるため。
    • 適用根拠: LC回路の回路方程式(キルヒホッフの法則II)を立てると、\(L\frac{dI}{dt} + \frac{Q}{C} = 0\) となり、\(I=dQ/dt\) を代入すると \(L\frac{d^2Q}{dt^2} + \frac{1}{C}Q = 0\) という単振動と同じ形の微分方程式が得られます。これを解くことで周期が導出されますが、高校物理では単振動とのアナロジーから求めるのが一般的です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (A) RC回路:
    • 戦略: 「直後」と「十分時間後」のコンデンサーの等価的な扱いを理解し、キルヒホッフの法則を適用する。
    • フロー: ①(1)直後→\(Q=0, V_C=0\)。回路はRのみ。オームの法則で\(I_1\)を計算。②(2)十分時間後→\(I_1=0\)。キルヒホッフの法則から\(V_C=E\)。
  2. (B) LC回路:
    • 戦略: エネルギー保存則と単振動のアナロジーを活用する。
    • フロー: ①(1)静電エネルギーと磁気エネルギーの和の式を立てる。②(2)力学的エネルギーの式と比較し、\(k \leftrightarrow 1/C\), \(m \leftrightarrow L\) の対応を見つける。③(3)単振動の周期の公式 \(T=2\pi\sqrt{m/k}\) にアナロジーを適用して \(T=2\pi\sqrt{LC}\) を導く。④(4)初期条件(\(t=0\)で\(Q=Q_0, I=0\))と位相のずれ(\(I\)は\(Q\)の微分)から、\(Q\)が\(\cos\)型、\(I\)が\(-\sin\)型のグラフを描く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • アナロジーの対応関係の暗記: \(L \leftrightarrow m\), \(C \leftrightarrow 1/k\) ではなく、\(L \leftrightarrow m\), \(1/C \leftrightarrow k\) という対応を正確に覚えておくことが重要です。「Cが大きいほど電荷をためやすい(ばねが柔らかい)」とイメージすると、\(C\)と\(k\)が逆数の関係にあると覚えやすいです。
  • グラフの初期値と傾き: (4)のグラフを描く際、\(t=0\)での値だけでなく、その瞬間の傾きも考えるとより正確になります。\(I_2 = dQ_a/dt\) なので、\(I_2\) の値は \(Q_a-t\) グラフの傾きに対応します。\(t=0\) では \(Q_a\) は最大値(山の頂上)なので傾きは0、よって \(I_2=0\) となります。同様に、\(Q_a=0\) の点では傾きが最大(負)になるため、\(I_2\) は負の最大値をとります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (B-3) 周期: 周期 \(T=2\pi\sqrt{LC}\) は、\(L\)や\(C\)が大きいほど長くなることを示しています。\(L\)が大きい(慣性が大きい)ほど、また\(C\)が大きい(電荷をたくさんためられる=タンクが大きい)ほど、振動がゆっくりになるというのは直感的に理解しやすく、妥当な結果です。
    • (B-4) グラフ: コンデンサーのエネルギーが最大(\(Q\)が最大)のとき、コイルのエネルギーは0(\(I=0\))。逆にコイルのエネルギーが最大(\(I\)が最大)のとき、コンデンサーのエネルギーは0(\(Q=0\))。グラフがこのエネルギーのやり取りを正しく表現しているかを確認します。
  • 極端な場合を考える:
    • もし\(L=0\)なら、周期は0になり振動しません。これはコンデンサーがただショートされるだけなので、物理的に正しいです。
    • もし\(C \rightarrow \infty\)(無限に大きなコンデンサー)なら、周期は無限大になり、これも振動しません。これは、電圧が全く上がらず、コイルに電流が流れ続けないため、振動が始まらないことに対応します。
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