「重要問題集」徹底解説(121〜125問):未来の得点力へ!完全マスター講座

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題121 (大阪工大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、オームの法則に従わない非線形素子である「発光ダイオード(LED)」を2つ含む直流回路の解析です。LEDの特性はグラフで与えられており、回路の接続方法(並列・直列)によって動作がどう変わるかを、グラフを用いて解き明かしていく能力が問われます。特に、回路の法則から導かれる「負荷曲線」と、素子自身の「特性曲線」の交点から動作点を求める「グラフ的解法」が中心となります。

与えられた条件
  • 回路素子: 赤色LED1、緑色LED2、抵抗\(r\)、直流電源\(E\)。
  • LEDの特性: 図1の電流-電圧特性グラフに従う。
  • 発光強度: 消費電力に比例する。
  • 最大許容電流: \(1.0\,\text{A}\)(これを超えると壊れる)。
  • [A]の回路 (図2): 並列接続。\(E=3.0\,\text{V}\), \(r=2.5\,\Omega\)。
  • [B]の回路 (図3): 直列接続。\(E=8.0\,\text{V}\)。
問われていること
  • [A] 並列接続の場合
    • (1) \(E\)を\(I_1, V_1, r\)で表す式。
    • (2) 与えられた負荷直線の条件下での、LED1を流れる電流\(I_1\)。
    • (3) (2)と同じ条件下での、LED2にかかる電圧\(V_2\)。
    • (4) (2)と同じ条件下での、LED2の消費電力\(P_2\)。
    • (5) (2)と同じ条件下での、LED1とLED2の発光強度の比。
  • [B] 直列接続の場合
    • (6) LEDが壊れないための抵抗\(r\)の最小値。
    • (7) \(r=2.5\,\Omega\)で\(V_2=V_1+1.0\)という関係があるときの、回路電流\(I\)とLED1の電圧\(V_1\)の関係式およびそのグラフ。
    • (8) (7)の条件下での、LED2を流れる電流。
    • (9) (7)の条件下での、LED2とLED1の発光強度の比。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(8) LED2の電流の別解: LED2の特性グラフを利用する解法
      • 主たる解法が、(7)で導出した負荷曲線をLED1の特性グラフに適用して動作点を決定するのに対し、別解では、(7)の負荷曲線の式をLED2の電圧\(V_2\)の式に変換し、LED2の特性グラフに適用して動作点を決定します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 視点の転換と思考の柔軟性: 同じ回路の問題を、LED1を主役として見る視点(主たる解法)と、LED2を主役として見る視点(別解)の両方から解くことで、思考の柔軟性が養われます。どちらの素子に着目しても同じ結論に至ることを確認でき、物理法則の普遍性への理解が深まります。
    • 問題解決能力の向上: 問題によっては、片方の素子に着目した方がグラフの読み取りが容易な場合があります。複数のアプローチを知っておくことで、より効率的で正確な解法を選択する能力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「非線形素子を含む回路のグラフ的解析」です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. グラフ的解法: 回路素子が満たすべき2つの条件、すなわち「素子自身の特性(特性曲線)」と「回路の他の部分から課される制約(負荷曲線)」の連立方程式を、グラフの交点として解く手法です。
  2. 非線形素子の特性理解: LEDの電圧と電流の関係が、与えられたグラフによって決まることを理解し、グラフから必要な情報を正確に読み取る能力が不可欠です。
  3. キルヒホッフの法則: 回路が素子に課す制約式(負荷曲線の方程式)を導出するための基本法則です。どんな回路にも適用できる最も普遍的なツールとなります。
  4. 消費電力と発光強度: LEDの発光強度が消費電力(\(P=IV\))に比例するという条件を、物理的な量の比較に正しく使うことが求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A]の並列回路では、キルヒホッフの法則を用いて各LEDが満たすべき負荷直線の式を導出し、図1のグラフとの交点から各LEDの動作点(電圧、電流)を決定します。
  2. [B]の直列回路では、まず(6)で「壊れない」という限界条件から抵抗の値を求めます。
  3. (7)以降では、直列回路のキルヒホッフの法則と与えられたLED間の関係式を連立させ、新たな負荷曲線の式を導出し、同様にグラフを用いて解析します。
  4. 発光強度の比較は、各LEDの消費電力\(P=IV\)を計算し、その比を取ることで行います。

[A] 問(1)

思考の道筋とポイント
図2の回路において、電源\(E\)、抵抗\(r\)、LED1を含む左半分の閉回路に着目します。この閉回路にキルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用することで、求められる関係式を導きます。
この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一周したときの、電圧の上昇(起電力)と電圧の降下(抵抗や素子での電圧)の総和はゼロである。
  • 図2の回路では、電源\(E\)から出た電流のうち、\(I_1\)が抵抗\(r\)とLED1の経路を流れる。

具体的な解説と立式
図2の左側のループ(電源\(E\)、抵抗\(r\)、LED1)について、キルヒホッフの第2法則を適用します。
電源\(E\)による電圧の上昇は、抵抗\(r\)での電圧降下 \(rI_1\) と、LED1での電圧降下 \(V_1\) の和に等しくなります。
したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$ E = rI_1 + V_1 $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

(立式のみで計算はありません)

この設問の平易な説明

回路を一周する旅を考えます。電源Eでエネルギーをもらって(電圧が上昇)、抵抗rとLED1でエネルギーを消費します(電圧が降下)。一周して元の場所に戻ってきたとき、もらったエネルギーと消費したエネルギーは等しくなっているはずです。これを式にしたものがキルヒホッフの第2法則です。

結論と吟味

関係式は \(E = rI_1 + V_1\) となります。これは、並列回路の片側ループにキルヒホッフの法則を適用した基本的な結果です。

解答 (1) \(E = rI_1 + V_1\)

問(2)

思考の道筋とポイント
問題文で与えられた関係式 \(I_1 = 1.2 – 0.40V_1\) は、(1)で求めた \(E = rI_1 + V_1\) に \(E=3.0\,\text{V}, r=2.5\,\Omega\) を代入し、\(I_1\)について解いたものです。これはLED1が回路内で満たすべき制約(負荷直線)を表します。LED1の実際の電流は、この直線とLED1自身の特性曲線(図1)との交点で決まります。
この設問における重要なポイント

  • グラフ的解法: 回路の制約式が示す直線と、素子の特性曲線の交点が、その素子の動作点(実際の電圧と電流)となる。
  • グラフの読み取り: 図1のグラフに負荷直線 \(I_1 = 1.2 – 0.40V_1\) を描き、LED1の曲線との交点の電流値を正確に読み取る。

具体的な解説と立式
LED1が満たすべき条件は以下の2つです。

  1. 素子の特性: 図1のLED1の曲線
  2. 回路の制約: \(I_1 = 1.2 – 0.40V_1\) (負荷直線)

この2つの条件を同時に満たす点が、LED1の動作点です。図1のグラフ上で、負荷直線とLED1の特性曲線の交点を求めます。

使用した物理公式

  • (物理公式ではないが)グラフ的解法の原理
計算過程

問題の図1には、すでに負荷直線 \(I_1 = 1.2 – 0.40V_1\) が描かれています。
この直線と、LED1の特性曲線(左側の曲線)との交点をグラフから読み取ります。
交点の座標は、およそ \(V_1=2.0\,\text{V}\), \(I_1=0.40\,\text{A}\) です。
したがって、LED1に流れる電流は \(0.40\,\text{A}\) です。

この設問の平易な説明

LED1が実際に示す電圧と電流は、「LED1自身のわがままな性質(特性曲線)」と、「回路の他の部品から押し付けられるルール(負荷直線)」の両方を満たす点でなければなりません。この2つのグラフの「交点」こそが、両方の条件を満たす唯一の答え(動作点)となります。問題のグラフにはすでに負荷直線が引かれているので、その直線とLED1の曲線の交点のI座標を読むだけです。

結論と吟味

LED1に流れる電流\(I_1\)は \(0.40\,\text{A}\) です。グラフから読み取った値ですが、\(I_1 = 1.2 – 0.40 \times 2.0 = 1.2 – 0.8 = 0.4\) となり、負荷直線の式を正確に満たしていることが確認できます。

解答 (2) \(0.40\,\text{A}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
LED2もLED1と同じ電源と抵抗に並列に接続されています。したがって、LED2が満たすべき回路の制約式も、LED1と全く同じ形になります。
この設問における重要なポイント

  • 並列回路の対称性: 図2の回路では、LED2のループもLED1のループと全く同じ構成(電源E、抵抗r)である。
  • したがって、LED2の負荷直線も \(I_2 = 1.2 – 0.40V_2\) となる。
  • LED2の動作点は、この共通の負荷直線と、LED2の特性曲線(図1の右側の曲線)との交点となる。

具体的な解説と立式
LED2を含む右側のループにキルヒホッフの第2法則を適用すると、
$$ E = rI_2 + V_2 $$
与えられた値を代入すると、
$$ 3.0 = 2.5 I_2 + V_2 $$
これを\(I_2\)について解くと、
$$ I_2 = \frac{3.0 – V_2}{2.5} = 1.2 – 0.40V_2 $$
これはLED1の負荷直線と同じ形の式です。
この直線と、図1のLED2の特性曲線(右側の曲線)との交点がLED2の動作点です。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

図1のグラフ上で、負荷直線 \(I = 1.2 – 0.40V\) とLED2の特性曲線(右側の曲線)との交点を読み取ります。
交点の座標は、およそ \(V_2=2.5\,\text{V}\), \(I_2=0.20\,\text{A}\) です。
したがって、LED2に加わる電圧は \(2.5\,\text{V}\) です。

この設問の平易な説明

LED2も、LED1と全く同じ条件で回路につながれています。そのため、LED2が従うべき「回路のルール」も、LED1と同じ直線で表されます。ただし、LED2自身の性質はLED1とは違う(特性曲線が異なる)ため、同じ直線との交点でも、違う場所になります。グラフ上で、同じ直線とLED2の曲線との交点のV座標を読み取ります。

結論と吟味

LED2に加わる電圧\(V_2\)は \(2.5\,\text{V}\) です。読み取った電流値\(0.20\,\text{A}\)も、負荷直線の式 \(I_2 = 1.2 – 0.40 \times 2.5 = 1.2 – 1.0 = 0.2\) を満たしており、読み取りが正確であることがわかります。

解答 (3) \(2.5\,\text{V}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)で求めたLED2の動作点(電圧と電流)を用いて、その消費電力を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 消費電力の公式: \(P = IV\)

具体的な解説と立式
(3)の結果より、LED2の動作点は \(V_2=2.5\,\text{V}\), \(I_2=0.20\,\text{A}\) です。
LED2の消費電力\(P_2\)は、
$$ P_2 = I_2 V_2 $$

使用した物理公式

  • 消費電力の公式: \(P=IV\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
P_2 &= (0.20\,\text{A}) \times (2.5\,\text{V}) \\[2.0ex]
&= 0.50\,\text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

消費電力は、電圧と電流を掛け算するだけで計算できます。(3)で求めたLED2の電圧と電流の値を使って計算します。

結論と吟味

LED2の消費電力は \(0.50\,\text{W}\) です。基本的な公式の適用であり、計算も単純です。

解答 (4) \(0.50\,\text{W}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
LED1とLED2の発光強度の比を求めます。問題文の条件「発光強度は消費電力に比例する」を使います。
この設問における重要なポイント

  • 発光強度の比は、消費電力の比に等しい。
  • LED1の消費電力\(P_1\)を計算し、(4)で求めた\(P_2\)との比を取る。

具体的な解説と立式
発光強度の比は、消費電力の比 \(P_1/P_2\) に等しくなります。
まず、(2)の結果からLED1の消費電力\(P_1\)を計算します。LED1の動作点は \(V_1=2.0\,\text{V}\), \(I_1=0.40\,\text{A}\) でした。
$$ P_1 = I_1 V_1 $$
次に、\(P_1\)と\(P_2\)の比を計算します。

使用した物理公式

  • 消費電力の公式: \(P=IV\)
計算過程

LED1の消費電力\(P_1\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= (0.40\,\text{A}) \times (2.0\,\text{V}) \\[2.0ex]
&= 0.80\,\text{W}
\end{aligned}
$$
発光強度の比を求めます。
$$ \frac{P_1}{P_2} = \frac{0.80}{0.50} = 1.6 $$

この設問の平易な説明

LEDの明るさの比べっこは、消費電力の比べっこをすればよい、というのが問題のルールです。LED1とLED2、それぞれの消費電力を計算し、割り算をして何倍違うかを求めます。

結論と吟味

LED1の発光強度はLED2の発光強度の \(1.6\) 倍です。赤色LED1の方が緑色LED2より明るく光っていることがわかります。

解答 (5) \(1.6\) 倍

[B] 問(6)

思考の道筋とポイント
図3の直列回路において、LEDが壊れないための抵抗\(r\)の「最小値」を求めます。抵抗\(r\)が小さいほど回路に電流が流れやすくなるため、rの最小値を求めることは、回路に流れる電流が許容最大値 \(1.0\,\text{A}\) になるときのrを求めることと同じです。
この設問における重要なポイント

  • 直列接続では、LED1とLED2に同じ電流が流れる。
  • 抵抗\(r\)が最小のとき、電流は最大の \(1.0\,\text{A}\) となる。
  • 電流が \(1.0\,\text{A}\) のときの、各LEDの電圧\(V_1, V_2\)を図1のグラフから読み取る。
  • 回路全体でキルヒホッフの第2法則を適用する。

具体的な解説と立式
回路に流れる電流を\(I\)とします。直列なので \(I = I_1 = I_2\)。
LEDが壊れない最大電流は \(I=1.0\,\text{A}\) です。このとき、抵抗\(r\)は最小値をとります。
図1のグラフから、\(I=1.0\,\text{A}\) のときの各LEDの電圧を読み取ります。

  • LED1: \(V_1 = 2.7\,\text{V}\)
  • LED2: \(V_2 = 3.7\,\text{V}\)

図3の回路全体にキルヒホッフの第2法則を適用すると、
$$ E = rI + V_1 + V_2 $$
この式に、既知の値を代入して\(r\)を求めます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

$$
\begin{aligned}
8.0 &= r \times 1.0 + 2.7 + 3.7 \\[2.0ex]
8.0 &= r + 6.4 \\[2.0ex]
r &= 8.0 – 6.4 = 1.6\,\text{Ω}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

LEDが壊れる寸前、つまり許容最大の1.0Aの電流が流れている状況を考えます。このとき、抵抗rの値は、これ以上小さくすると電流が1.0Aを超えてしまう、ギリギリの「最小値」になっているはずです。電流が1.0Aと決まれば、グラフから各LEDにかかる電圧がわかります。あとは、電源電圧(8.0V)が、抵抗と2つのLEDでどのように分け合われているか(電圧降下の和)をキルヒホッフの法則で式にすれば、未知数rの値を計算できます。

結論と吟味

抵抗\(r\)の最小値は \(1.6\,\Omega\) です。この抵抗は、過大な電流からLEDを守る「保護抵抗」の役割を果たしていることがわかります。

解答 (6) \(1.6\,\Omega\)

問(7)

思考の道筋とポイント
図3の回路で、\(r=2.5\,\Omega\) とし、さらにLED間に \(V_2 = V_1 + 1.0\) という関係がある場合の、回路電流\(I\)とLED1の電圧\(V_1\)の関係式(負荷曲線)を求め、グラフに描きます。
この設問における重要なポイント

  • 回路の法則(キルヒホッフII)と、素子間の関係式を連立させる。
  • 最終的に、\(I\)を\(V_1\)の関数として表す。

具体的な解説と立式
図3の回路にキルヒホッフの第2法則を適用します。
$$ E = rI + V_1 + V_2 \quad \cdots ① $$
この問題で与えられている条件は、
$$ V_2 = V_1 + 1.0 \quad \cdots ② $$
$$ E = 8.0\,\text{V}, \quad r = 2.5\,\Omega $$
①にこれらの条件を代入して、\(I\)と\(V_1\)の関係式を導きます。
$$ 8.0 = 2.5 I + V_1 + (V_1 + 1.0) $$
この式を\(I\)について解きます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

$$
\begin{aligned}
8.0 &= 2.5 I + 2V_1 + 1.0 \\[2.0ex]
7.0 &= 2.5 I + 2V_1 \\[2.0ex]
2.5 I &= 7.0 – 2V_1 \\[2.0ex]
I &= \frac{7.0 – 2V_1}{2.5} \\[2.0ex]
I &= 2.8 – 0.80V_1
\end{aligned}
$$
この直線を図1に描きます。

  • V軸切片 (\(I=0\)): \(0 = 2.8 – 0.80V_1\) より \(V_1 = 3.5\,\text{V}\)
  • I軸切片 (\(V_1=0\)): \(I = 2.8\,\text{A}\)

この2点を結ぶ直線を引きます。ただし、電流は\(1.0\,\text{A}\)を超えられないので、\(I=1.0\,\text{A}\)までの部分を描きます。

この設問の平易な説明

この問題では、回路のルール(キルヒホッフの法則)に加えて、「LED2の電圧は、LED1の電圧より常に1.0V高い」という特別なルールが与えられています。この2つのルールを合体させて、回路全体を流れる電流Iと、LED1の電圧V1だけの関係式を作ります。出来上がった式は、グラフに描くと一本の直線(負荷曲線)になります。

結論と吟味

関係式は \(I = 2.8 – 0.80V_1\) です。この直線(負荷曲線)を図1に描きます。これはLED1から見た回路の制約を表しています。

解答 (7) 関係式: \(I = 2.8 – 0.80V_1\)、グラフは図aの赤線。

問(8)

思考の道筋とポイント
(7)で求めた負荷曲線と、LED1の特性曲線の交点が、この回路でのLED1の動作点を表します。直列回路なので、LED2にも同じ電流が流れます。
この設問における重要なポイント

  • グラフ的解法: (7)で求めた負荷曲線とLED1の特性曲線の交点を読み取る。
  • 直列回路の性質: 回路のどの部分でも電流は等しい。

具体的な解説と立式
(7)で求めた負荷曲線 \(I = 2.8 – 0.80V_1\) と、図1のLED1の特性曲線の交点を読み取ります。
交点の座標は、およそ \(V_1=2.5\,\text{V}\), \(I=0.80\,\text{A}\) です。
この電流\(I\)が回路全体に流れる電流なので、LED2に流れる電流も同じ値になります。

使用した物理公式

  • (物理公式ではないが)グラフ的解法の原理
計算過程

グラフの交点から、回路を流れる電流は \(I=0.80\,\text{A}\) と読み取れます。
したがって、LED2に流れる電流も \(0.80\,\text{A}\) です。

この設問の平易な説明

(7)で求めた「回路のルール(負荷直線)」と、「LED1自身の性質(特性曲線)」の両方を満たす点が、実際の動作点です。グラフの交点を読み取れば、そのときの電流がわかります。この回路は一本道(直列)なので、LED1に流れる電流とLED2に流れる電流は同じです。

結論と吟味

LED2に流れる電流は \(0.80\,\text{A}\) です。グラフの交点から一意に動作点が決まることがわかります。

別解: LED2の特性グラフを利用する解法

思考の道筋とポイント
(7)で求めた負荷曲線の式は、LED1の電圧\(V_1\)で書かれています。これをLED2の電圧\(V_2\)の式に書き換えることで、LED2の特性グラフに適用できる負荷曲線を作成し、交点から動作点を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 変数変換: \(V_2 = V_1 + 1.0\) の関係を使い、負荷曲線の変数を\(V_1\)から\(V_2\)に変換する。
  • 視点の転換: LED1ではなく、LED2を主役としてグラフ的解法を適用する。

具体的な解説と立式
(7)で導出した負荷曲線の式は、
$$ I = 2.8 – 0.80V_1 \quad \cdots ③ $$
また、与えられた条件は、
$$ V_2 = V_1 + 1.0 \quad \rightarrow \quad V_1 = V_2 – 1.0 \quad \cdots ② $$
②を③に代入して、\(I\)と\(V_2\)の関係式を導きます。
$$
\begin{aligned}
I &= 2.8 – 0.80(V_2 – 1.0) \\[2.0ex]
&= 2.8 – 0.80V_2 + 0.80 \\[2.0ex]
&= 3.6 – 0.80V_2
\end{aligned}
$$
この新しい負荷直線 \(I = 3.6 – 0.80V_2\) と、LED2の特性曲線の交点を図1のグラフから読み取ります。

使用した物理公式

  • (物理公式ではないが)グラフ的解法の原理
計算過程

直線 \(I = 3.6 – 0.80V_2\) を図1に描きます。

  • V軸切片 (\(I=0\)): \(V_2 = 3.6/0.80 = 4.5\,\text{V}\)
  • I軸切片 (\(V_2=0\)): \(I = 3.6\,\text{A}\)

この直線とLED2の特性曲線の交点を読み取ると、その座標は \(V_2=3.5\,\text{V}\), \(I=0.80\,\text{A}\) となります。
したがって、LED2に流れる電流は \(0.80\,\text{A}\) です。

この設問の平易な説明

主たる解法ではLED1に注目しましたが、今度はLED2に注目して解く方法です。回路のルールを、LED2の電圧\(V_2\)を使った式に書き直します。そうすると、LED2のグラフ上で使える新しい負荷直線ができます。この新しい直線とLED2の特性曲線の交点を読めば、同じように電流が求まります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ電流値 \(0.80\,\text{A}\) が得られました。これにより、どちらのLEDに着目しても矛盾なく解けることが確認でき、解答の正しさがより確実になります。

解答 (8) \(0.80\,\text{A}\)

問(9)

思考の道筋とポイント
(8)で求めた電流値 \(0.80\,\text{A}\) のときの、LED1とLED2の電圧をそれぞれ図1のグラフから読み取り、消費電力の比を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 発光強度の比は、消費電力の比に等しい。
  • 同じ電流値に対して、各LEDの特性曲線から対応する電圧を読み取る。

具体的な解説と立式
(8)より、回路を流れる電流は \(I=0.80\,\text{A}\) です。
図1のグラフから、\(I=0.80\,\text{A}\) のときの各LEDの電圧を読み取ります。

  • LED1: \(V_1 = 2.5\,\text{V}\) (これは(8)の交点読み取りと一致)
  • LED2: \(V_2 = 3.5\,\text{V}\) (これは別解の交点読み取りと一致)

各LEDの消費電力は \(P_1 = IV_1\), \(P_2 = IV_2\) です。
求める発光強度の比は、
$$ \frac{P_2}{P_1} = \frac{IV_2}{IV_1} = \frac{V_2}{V_1} $$

使用した物理公式

  • 消費電力の公式: \(P=IV\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{P_2}{P_1} &= \frac{3.5}{2.5} \\[2.0ex]
&= \frac{7}{5} = 1.4
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

明るさの比べっこなので、消費電力を比べます。電流は直列なので同じです。したがって、消費電力の比は、単純に電圧の比と同じになります。(8)でわかった電流0.80Aのときの、各LEDの電圧をグラフから読み取って、割り算をします。

結論と吟味

LED2の発光強度はLED1の発光強度の \(1.4\) 倍です。また、このときの電圧が \(V_1=2.5\,\text{V}\), \(V_2=3.5\,\text{V}\) であり、(7)の条件式 \(V_2 = V_1 + 1.0\) を満たしていることからも、計算の整合性が取れていることがわかります。

解答 (9) \(1.4\) 倍

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • グラフ的解法(特性曲線と負荷曲線の交点):
    • 核心: この問題は、グラフ的解法の典型例です。LEDという非線形素子の動作は、素子固有の性質(特性曲線)と、回路に組み込まれることで受ける制約(負荷曲線)の2つを同時に満たす点(グラフの交点)として決まります。
    • 理解のポイント: (2), (3), (7), (8)のすべてがこの原理に基づいています。キルヒホッフの法則などを使って回路の制約式(負荷曲線の方程式)を導出し、それをグラフに重ねて交点を求める、という一連の流れをマスターすることが最重要です。
  • キルヒホッフの法則:
    • 核心: 負荷曲線の方程式を導出するための、最も基本的で強力なツールです。(1)の並列回路や、(6), (7)の直列回路で、電源の起電力と各素子での電圧降下の関係を記述するために用いられています。
    • 理解のポイント: 非線形素子が含まれていても、回路の接続形態(トポロジー)が定める電圧・電流の関係は普遍的に成り立ちます。この法則が、複雑な回路を数学的な方程式に落とし込むための橋渡しとなります。
  • 消費電力と物理的意味の関連付け:
    • 核心: 問題文で与えられた「発光強度は消費電力に比例する」「電流が1.0Aを超えると壊れる」といった物理的な条件を、数式(\(P=IV\))や不等式(\(I \le 1.0\,\text{A}\))に正しく変換し、計算結果に結びつける能力が問われます。
    • 理解のポイント: (5)や(9)での強度の比較は消費電力の比の計算に、(6)での最小抵抗値の計算は最大電流の条件に、それぞれ帰着します。物理的な言葉と数式を自在に行き来することが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 他の非線形素子: 電球やトランジスタなど、LED以外の非線形素子を含む回路でも、グラフ的解法は同様に有効です。素子の特性曲線と、回路から導かれる負荷曲線の交点を求めるという基本戦略は変わりません。
    • 負荷曲線の非線形化: この問題では負荷曲線は直線でしたが、例えば電源側に別の非線形素子が含まれている場合など、負荷曲線自体が曲線になることもあります。その場合でも、2つの曲線の交点を求めるという原理は同じです。
    • 動作点の安定性: 負荷曲線と特性曲線が複数点で交わる場合、どの点が安定な動作点になるか、といった安定性の議論に発展することもあります(大学レベル)。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路構成の把握: まず、素子が直列に接続されているか、並列に接続されているかを正確に把握します。これにより、キルヒホッフの法則の立て方が決まります(直列なら電流が共通、並列なら電圧が共通など)。
    2. 負荷曲線の方程式を立てる: 注目している非線形素子(この問題ではLED)にかかる電圧\(V\)と流れる電流\(I\)の関係式を、回路の他の部分から導出することを第一目標とします。これが負荷曲線の方程式になります。
    3. グラフの活用: 負荷曲線の方程式が導出できたら、それを特性グラフに描き込みます。交点が一つに定まるか、あるいは特定の条件(例:電流最大)から動作点を逆算するか、問題の要求に応じてグラフを読み解きます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 負荷曲線と特性曲線の混同:
    • 誤解: LEDの特性曲線そのものが、回路中での振る舞いだと思い込んでしまう。
    • 対策: 特性曲線はあくまで素子単体の性質です。実際の動作は、回路に接続されて初めて決まります。負荷曲線は「回路からの要請」、特性曲線は「素子の性質」であり、その「妥協点」が交点(動作点)である、と理解しましょう。
  • 直列・並列の法則の誤用:
    • 誤解: [A]の並列回路で、LED1とLED2に同じ電圧がかかると勘違いする。
    • 対策: LED1とLED2は、それぞれが抵抗\(r\)とセットで電源に並列になっています。LED素子自体が並列なのではなく、電圧は異なります。回路図を正確に見て、どの部分が並列・直列なのかを判断しましょう。
  • グラフの読み取りミス:
    • 誤解: 2つのLEDの特性曲線を読み間違える。特に、(3)でLED2の動作点を求める際に、LED1の曲線との交点を読んでしまう。
    • 対策: グラフには複数の曲線が描かれている場合、どの曲線がどの素子に対応するのかを、凡例や問題文でしっかり確認しましょう。指差し確認するなどの物理的な対策も有効です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • キルヒホッフの第2法則:
    • 選定理由: (1), (3), (6), (7)のすべてにおいて、回路の接続関係から電圧に関する制約式(負荷曲線の方程式)を導出するために使用。非線形素子を含む回路解析において、外部条件を記述するための必須ツールです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則に基づく、電気回路における普遍的な法則です。
  • \(P=IV\)(消費電力の公式):
    • 選定理由: (4), (5), (9)で、LEDの発光強度を比較するために使用。「発光強度は消費電力に比例する」という問題の条件を、計算可能な物理量に結びつけるために必要です。
    • 適用根拠: 電力(単位時間あたりのエネルギー)の基本的な定義式です。
  • グラフ的解法:
    • 選定理由: LEDの電圧と電流の関係が複雑な曲線で与えられており、代数的に解くのが困難(または不可能)なため。数式で表された負荷曲線と、図で与えられた特性曲線を連立させるための、唯一の現実的な解法です。
    • 適用根拠: 素子の動作点は、素子自身の内部的な物理法則と、回路という外部環境から受ける制約の両方を同時に満たさなければならない、という物理的な要請に基づいています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 連立方程式の整理:
    • 特に注意すべき点: (7)のように複数の式を連立させる場合、どの変数を消去し、どの変数間の関係式を導きたいのか、目的を明確にしてから計算を始めましょう。
    • 日頃の練習: 複数の未知数を含む問題を解く際に、どの順番で変数を消去すれば最も計算が楽になるか、常に考える癖をつける。
  • グラフの読み取り精度:
    • 特に注意すべき点: グラフから値を読み取る際は、有効数字を意識しつつ、できるだけ正確に読み取る努力をします。目分量ではなく、定規を当てるなどして精度を上げましょう。
    • 日頃の練習: 様々なグラフ問題に触れ、目盛りを読む練習を繰り返す。特に、10分割されていない目盛りを読む練習が有効。
  • 単位の確認:
    • 特に注意すべき点: 電圧は[V]、電流は[A]、抵抗は[Ω]、電力は[W]と、基本的な単位を常に意識することで、次元の違う量を足してしまうなどのケアレスミスを防げます。
    • 日頃の練習: 式を立てる段階で、各項の単位が揃っているかを確認する「次元解析」の習慣をつける。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • [A]の動作点: LED2はLED1よりも高い電圧をかけないと電流が流れない特性を持っています。同じ回路条件(負荷曲線)であれば、LED2の方がLED1よりも高い電圧・低い電流で動作するのは物理的に妥当です。(\(V_2=2.5\text{V} > V_1=2.0\text{V}\), \(I_2=0.2\text{A} < I_1=0.4\text{A}\))
    • [B]の動作点: (7)で与えられた条件 \(V_2=V_1+1.0\) は、LED2の方が常にLED1より1.0V高い電圧がかかることを意味します。直列で電流が同じなので、これはLED2の方が消費電力が大きいことを意味します。したがって、(9)で\(P_2/P_1\)が1より大きい値(\(1.4\))になったのは妥当な結果です。
  • グラフ上での検算:
    • (8)で求めた動作点 \(I=0.80\,\text{A}, V_1=2.5\,\text{V}\) と、(9)で読み取った \(V_2=3.5\,\text{V}\) が、(7)の前提条件 \(V_2=V_1+1.0\) を満たしているか確認します。\(3.5 = 2.5 + 1.0\) となり、確かに満たしています。このように、複数の条件がすべて矛盾なく成立しているかを確認することで、解答の信頼性を高めることができます。

問題122 (福井大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、コンデンサーと抵抗を含む直流回路について、スイッチの切り替えに伴う充電、エネルギー、定常電流、消費電力、そして電荷の再配分を問う、総合的な問題です。
この問題の核心は、各状態(スイッチ1側、スイッチ2側)における定常状態の性質を正しく理解し、キルヒホッフの法則や電気量保存則といった基本法則を的確に適用する能力です。

与えられた条件
  • 抵抗: 抵抗値\(r\)の抵抗1、抵抗値\(R\)の抵抗2
  • コンデンサー: 電気容量\(C_1\)のコンデンサー1、電気容量\(C_2\)のコンデンサー2
  • 直流電源: 起電力\(E\)、内部抵抗は無視
  • 操作: ①スイッチを1側に入れる → ②十分に時間が経過 → ③スイッチを2側に入れる → ④十分に時間が経過
  • 設問(5)の条件: \(C_1=C, C_2=4C\)
問われていること
  • (1) スイッチ1側での定常状態における、コンデンサー1の極板Aの電気量\(Q\)。
  • (2) (1)の状態でのコンデンサー1の静電エネルギー\(U\)。
  • (3) スイッチを2側に切り替えた後の定常状態における、抵抗2の両端の電位差\(V\)。
  • (4) 抵抗2の消費電力\(P\)が最大になる抵抗値\(R\)と、そのときの最大消費電力\(P_{\text{最大}}\)。
  • (5) \(C_1=C, C_2=4C\)の条件で、スイッチ2側での定常状態における、コンデンサー1の極板Aの電気量\(Q_1\)とコンデンサー2の極板Bの電気量\(Q_2\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(4) 消費電力\(P\)が最大になる条件の別解: 微分法を用いる解法
      • 主たる解法が相加相乗平均の関係を利用する代数的な解法であるのに対し、別解では消費電力の式を抵抗値\(R\)の関数とみなし、微分を用いて極値を求める解析的なアプローチを取ります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 数学的アプローチの学習: 物理現象における最大・最小問題を、関数の極値問題として捉え、微分という汎用性の高い数学的ツールで解く手法を学べます。
    • 解法の多様性: 相加相乗平均の関係が思いつかない場合や、適用しにくい複雑な関数が登場した場合でも対応できる、より一般的な問題解決策を身につけることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「コンデンサーを含む直流回路の解析」です。スイッチの切り替えを伴うため、状態変化の前後での物理法則の適用が鍵となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの定常状態: 十分に時間が経過した後(定常状態)、コンデンサーが接続されている直流回路部分には電流が流れません。コンデンサーは「断線」していると見なせます。
  2. キルヒホッフの法則: 複雑な回路を流れる電流や各部分の電位差を求めるための基本法則です。特に、閉回路の電位の関係(第2法則)を多用します。
  3. 電気量保存則: 回路の一部が外部から電気的に孤立している場合、その部分の電荷の総和はスイッチの切り替えなどの操作の前後で保存されます。
  4. 電力の最大値問題: ある抵抗での消費電力をその抵抗値の関数で表し、最大値を求める問題です。多くの場合、相加相乗平均の関係を利用すると効率的に解くことができます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、スイッチが1側にあるときの定常状態を考え、回路に電流が流れないことを利用して各コンデンサーの電圧と電気量を求めます(問1, 2)。
  2. 次に、スイッチを2側に切り替えた後の定常状態を考えます。このとき、コンデンサー部分は断線と見なせるため、抵抗のみの単純な回路として電流と電圧を求めます(問3)。
  3. 問3の結果を利用して消費電力を立式し、相加相乗平均の関係を用いて最大値を求めます(問4)。
  4. 最後に、スイッチ切り替え後のコンデンサーの電気量を、キルヒホッフの法則と電気量保存則を連立させて解きます(問5)。

問(1)

思考の道筋とポイント
スイッチを1側に入れてから十分に時間が経過した状態(定常状態)を考えます。このとき、コンデンサーの充電は完了しており、回路に定常電流は流れません。この「電流が0」という点が解析の出発点です。
この設問における重要なポイント

  • 充電完了時、コンデンサーに電流は流れない。
  • 回路に電流が流れないため、回路内のすべての抵抗による電圧降下は0である。
  • したがって、コンデンサー1には、電源の起電力\(E\)が直接かかることになる。

具体的な解説と立式
スイッチを1側に入れて十分に時間が経過すると、コンデンサー\(C_1\)と\(C_2\)の充電が完了し、回路に電流が流れなくなります。
電流が\(0\)なので、回路に含まれる抵抗1(\(r\))での電圧降下は\(V=rI=r \times 0 = 0\)となります。
その結果、コンデンサー1の両端にかかる電圧は、電源の起電力\(E\)に等しくなります。
コンデンサー1の極板Aに蓄えられる電気量を\(Q\)とすると、コンデンサーの基本公式\(Q=CV\)より、以下の式が成り立ちます。
$$ Q = C_1 E $$
極板Aは電源の正極側に接続されているため、蓄えられる電気量は正となります。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • オームの法則: \(V=RI\)(ここでは\(I=0\)を適用)
計算過程

立式した \(Q = C_1 E\) がそのまま答えとなります。

この設問の平易な説明

スイッチを入れてしばらくすると、コンデンサーは電気を溜め込み、やがて満タンになります。満タンになると、それ以上電気は流れ込みません。つまり、回路全体の電流がストップします。電流が流れていないので、途中にある抵抗は、単なる導線と同じ役割しかしません。その結果、コンデンサー1には電源の電圧\(E\)がそのままかかることになります。あとは「電気量 = 電気容量 × 電圧」の公式に当てはめるだけです。

結論と吟味

コンデンサー1の極板Aに蓄えられている電気量は \(Q = C_1 E\) です。同様に、コンデンサー2にも電圧\(E\)がかかるため、その電気量は\(C_2E\)となります。

解答 (1) \(Q = C_1 E\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)でコンデンサー1の状態(電気容量\(C_1\)、電圧\(E\)、電気量\(Q=C_1E\))が判明しているので、これを用いて静電エネルギーを計算します。
この設問における重要なポイント

  • 静電エネルギーの公式は \(U = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の3つの形がある。
  • 問題で与えられている量(\(C_1, E\))や、前の設問で求めた量を使って、最も計算しやすい形を選択する。

具体的な解説と立式
コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー\(U\)を求める公式の中から、電気容量\(C_1\)と電圧\(E\)で表される \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を用いるのが最も直接的です。
コンデンサー1の電気容量は\(C_1\)、かかる電圧は\(E\)なので、蓄えられているエネルギー\(U\)は以下の式で与えられます。
$$ U = \frac{1}{2}C_1 E^2 $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
計算過程

立式した \(U = \displaystyle\frac{1}{2}C_1 E^2\) がそのまま答えとなります。

この設問の平易な説明

コンデンサーが蓄えるエネルギーを計算する問題です。(1)でコンデンサー1の電気容量が\(C_1\)、かかっている電圧が\(E\)であることがわかっているので、エネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) にそのまま代入すれば答えが求まります。

結論と吟味

コンデンサー1に蓄えられているエネルギーは \(U = \displaystyle\frac{1}{2}C_1 E^2\) です。これは基本的な公式の適用であり、妥当な結果です。

解答 (2) \(U = \displaystyle\frac{1}{2}C_1 E^2\)

問(3)

思考の道筋とポイント
スイッチを2側に切り替えてから十分に時間が経過した状態を考えます。このときも、コンデンサーの充電(あるいは再配分)が完了し、コンデンサーが接続されている経路には電流が流れなくなります。
この設問における重要なポイント

  • 定常状態では、コンデンサー部分は「断線」していると見なせる。
  • 電流は、電源\(E\)、抵抗\(r\)、抵抗\(R\)からなる閉回路のみを流れる。
  • この単純な直列回路について、キルヒホッフの法則(またはオームの法則)を適用して電流を求める。

具体的な解説と立式
スイッチを2側に入れると、十分に時間が経過した後、コンデンサー部分には電流が流れなくなります。
したがって、電流\(I\)は、電源\(E\)、抵抗1(\(r\))、抵抗2(\(R\))を通るループのみを流れます。これは、抵抗\(r\)と\(R\)が直列に接続された単純な回路と見なせます。
キルヒホッフの第2法則をこの閉回路に適用すると、
$$ E = rI + RI $$
この式から、回路を流れる電流\(I\)が求まります。
$$ I = \frac{E}{R+r} $$
求めたいのは抵抗2(\(R\))の両端の電位差\(V\)なので、オームの法則 \(V=RI\) を用います。
$$ V = RI $$
この式に上で求めた\(I\)を代入します。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \(\sum V = 0\)
  • オームの法則: \(V=RI\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
V &= R \times I \\[2.0ex]
&= R \times \frac{E}{R+r} \\[2.0ex]
&= \frac{R}{R+r}E
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スイッチを切り替えて時間が経つと、コンデンサーは再び「通行止め」の役割を果たします。そのため、電流はコンデンサーを避けて、電源\(E\)、抵抗\(r\)、抵抗\(R\)をぐるりと回るルートだけを流れます。これは単に2つの抵抗が直列につながった回路なので、まず全体の電流を計算し、その電流と抵抗\(R\)の値から、オームの法則を使って抵抗\(R\)にかかる電圧を求めます。

結論と吟味

抵抗2の両端の電位差は \(V = \displaystyle\frac{R}{R+r}E\) です。これは、電源の電圧\(E\)が、抵抗値の比 \(r:R\) に応じて分配されるうちの、\(R\)が受け取る分圧に相当します。

解答 (3) \(V = \displaystyle\frac{R}{R+r}E\)

問(4)

思考の道筋とポイント
抵抗2(\(R\))での消費電力\(P\)を、\(R\)の関数として表現し、その最大値を求める問題です。電力の公式 \(P=VI\) に(3)で求めた\(V\)と\(I\)を代入し、得られた式の最大値を相加相乗平均の関係を用いて求めます。
この設問における重要なポイント

  • 消費電力の公式: \(P=VI=RI^2=\displaystyle\frac{V^2}{R}\)
  • 相加平均と相乗平均の関係: \(a>0, b>0\) のとき、\(a+b \ge 2\sqrt{ab}\)。等号成立は \(a=b\) のとき。
  • 最大値を求めるための式変形: 相加相乗平均が使える形(和の形)に式を変形するのが定石。

具体的な解説と立式
抵抗2での消費電力\(P\)は、(3)で求めた電流\(I\)を用いて、\(P=RI^2\)で計算できます。
$$ P = R \left( \frac{E}{R+r} \right)^2 = \frac{RE^2}{(R+r)^2} $$
この式が最大となる\(R\)の値を求めます。このままでは最大値が分かりにくいので、相加相乗平均の関係が利用できるように式を変形します。分母を展開し、分母・分子を\(R\)で割ります。
$$ P = \frac{RE^2}{R^2+2Rr+r^2} = \frac{E^2}{R+2r+\frac{r^2}{R}} $$
この式は、分母の \(R + \displaystyle\frac{r^2}{R} + 2r\) が最小となるときに最大値をとります。
ここで、\(R>0, r^2/R>0\) なので、\(R\)と\(\displaystyle\frac{r^2}{R}\)の項に相加相乗平均の関係を適用できます。
$$ R + \frac{r^2}{R} \ge 2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}} $$

使用した物理公式

  • 電力: \(P=RI^2\)
  • 相加平均と相乗平均の関係
計算過程

相加相乗平均の関係より、分母の一部は
$$
\begin{aligned}
R + \frac{r^2}{R} &\ge 2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}} \\[2.0ex]
&= 2\sqrt{r^2} \\[2.0ex]
&= 2r
\end{aligned}
$$
等号が成立するのは \(R = \displaystyle\frac{r^2}{R}\)、すなわち \(R^2=r^2\)。\(R>0, r>0\)より \(R=r\) のときです。
このとき、分母 \(R + \displaystyle\frac{r^2}{R} + 2r\) は最小値 \(2r+2r=4r\) をとります。
したがって、消費電力\(P\)は \(R=r\) のときに最大となります。
その最大値\(P_{\text{最大}}\)は、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{最大}} &= \frac{E^2}{4r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、抵抗\(R\)で使われる電力を、\(R\)の式で表します。この式を眺めても、いつ電力が最大になるかはすぐには分かりません。そこで、「相加相乗平均」という数学のテクニックを使います。このテクニックが使えるように式をうまく変形すると、「分母が一番小さいときに、全体の電力は最大になる」という形にできます。計算を進めると、分母が最小になるのは抵抗\(R\)と抵抗\(r\)の値が等しいときだと分かります。そのときの電力の最大値も計算できます。

結論と吟味

抵抗2の消費電力は、抵抗値\(R\)が抵抗1の抵抗値\(r\)に等しいとき、すなわち \(R=r\) のときに最大となります。その最大値は \(P_{\text{最大}} = \displaystyle\frac{E^2}{4r}\) です。これは「整合条件」として知られる重要な結果であり、妥当です。

別解: 微分法を用いる解法

思考の道筋とポイント
消費電力\(P\)を抵抗値\(R\)の関数 \(P(R)\) とみなし、数学の微分法を用いて最大値を求めます。\(P(R)\)を\(R\)で微分し、導関数\(P'(R)\)が0になる点を求めることで、極値を与える\(R\)の候補を見つけます。
この設問における重要なポイント

  • 商の微分法 \(\left(\displaystyle\frac{f}{g}\right)’ = \displaystyle\frac{f’g – fg’}{g^2}\) を用いる。
  • 導関数が0になる点が、最大値または最小値の候補となる。
  • 物理的な条件(\(R>0\))を考慮する。

具体的な解説と立式
消費電力の式は \(P(R) = \displaystyle\frac{RE^2}{(R+r)^2}\) です。
これを\(R\)について微分します。\(E^2\)は定数なので、式の外に出しておきます。
$$ P'(R) = E^2 \cdot \frac{d}{dR}\left( \frac{R}{(R+r)^2} \right) $$
商の微分法を適用して計算します。

使用した物理公式

  • 電力: \(P=RI^2\)
  • 商の微分法(数学III)
計算過程

商の微分法を適用すると、
$$
\begin{aligned}
P'(R) &= E^2 \cdot \frac{1 \cdot (R+r)^2 – R \cdot 2(R+r)}{\{(R+r)^2\}^2} \\[2.0ex]
&= E^2 \cdot \frac{(R+r) – 2R}{(R+r)^3} \\[2.0ex]
&= E^2 \cdot \frac{r-R}{(R+r)^3}
\end{aligned}
$$
\(P'(R)=0\) となるのは、分子が0のときなので \(r-R=0\)、すなわち \(R=r\) のときです。
\(0 < R < r\) のとき \(P'(R)>0\) (増加)、\(R > r\) のとき \(P'(R)<0\) (減少) なので、\(R=r\)で極大かつ最大となることがわかります。
このときの最大消費電力は、元の式に \(R=r\) を代入して、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{最大}} &= \frac{rE^2}{(r+r)^2} = \frac{rE^2}{4r^2} = \frac{E^2}{4r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電力の式をグラフで描いたとき、その頂点(一番高いところ)を探す問題です。数学では、グラフの頂点では接線の傾きが0になることを利用します。この「傾き」を計算するのが「微分」です。電力の式を微分して、その値が0になるような抵抗\(R\)の値を探すことで、電力が最大になる条件を見つけます。

結論と吟味

微分法を用いても、相加相乗平均を用いた場合と全く同じ結果 \(R=r\) と \(P_{\text{最大}} = \displaystyle\frac{E^2}{4r}\) が得られました。これは、異なる数学的アプローチが同じ物理的結論を導くことを示しており、結果の正しさを裏付けています。

解答 (4) \(R=r\) のとき最大となり、最大消費電力は \(P_{\text{最大}} = \displaystyle\frac{E^2}{4r}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
スイッチを2側に切り替えた後の、より複雑な状態における各コンデンサーの電気量を求める問題です。定常状態ではコンデンサーに電流は流れませんが、各部の電位が(1)の状態とは異なるため、電荷の再配分が起こります。未知数が多いため、キルヒホッフの法則と電気量保存則を連立させて解く必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 未知数を設定する: コンデンサーの電圧\(V_1, V_2\)や電気量\(Q_1, Q_2\)などを未知数とする。
  • 関係式を立てる:
    1. コンデンサーの基本式: \(Q_1=C_1V_1\), \(Q_2=C_2V_2\)。
    2. キルヒホッフの第2法則(ループ則): 回路内の任意の閉ループにおいて、電位差の和は0。
    3. 電気量保存則: スイッチ切り替えの前後で、回路の孤立部分の総電気量は一定に保たれる。

具体的な解説と立式
コンデンサー1, 2にかかる電圧をそれぞれ\(V_1, V_2\)、蓄えられる電気量をそれぞれ\(Q_1, Q_2\)とします。これら4つの未知数を求めるために、4つの独立な方程式を立てます。

  1. コンデンサーの基本式:
    $$ Q_1 = C_1 V_1 \quad \cdots ① $$
    $$ Q_2 = C_2 V_2 \quad \cdots ② $$
  2. キルヒホッフの法則:
    模範解答の解法プロセスに従うと、コンデンサー\(C_1\)と\(C_2\)の電圧の和は、抵抗\(R\)の両端の電圧\(V\)に等しくなります。
    $$ V_1 + V_2 = V = \frac{R}{R+r}E \quad \cdots ③ $$
  3. 電気量保存則:
    スイッチの切り替え前後で、点P3に接続されている部分(コンデンサー1の右側極板とコンデンサー2の左側極板)は、回路の他の部分から電気的に孤立しています。この部分の電気量の総和は保存されます。
    $$ -Q_1 + Q_2 = -(C_1E + C_2E) \quad \cdots ④ $$

これらの4つの式と条件 \(C_1=C, C_2=4C\) を用いて連立方程式を解きます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • キルヒホッフの第2法則
  • 電気量保存則
計算過程

まず、条件 \(C_1=C, C_2=4C\) を④式に代入します。
$$
\begin{aligned}
-Q_1 + Q_2 &= -(CE + 4CE) \\[2.0ex]
&= -5CE
\end{aligned}
$$
この式に①, ②式を代入します。
$$ -CV_1 + 4CV_2 = -5CE $$
両辺を\(C\)で割ります。
$$ -V_1 + 4V_2 = -5E \quad \cdots ⑤ $$
次に、③式から \(V_2 = \displaystyle\frac{R}{R+r}E – V_1\) として、これを⑤式に代入します。
$$
\begin{aligned}
-V_1 + 4\left( \frac{R}{R+r}E – V_1 \right) &= -5E \\[2.0ex]
-V_1 + \frac{4R}{R+r}E – 4V_1 &= -5E \\[2.0ex]
-5V_1 &= -5E – \frac{4R}{R+r}E \\[2.0ex]
-5V_1 &= \left( -5 – \frac{4R}{R+r} \right)E \\[2.0ex]
-5V_1 &= \left( \frac{-5(R+r) – 4R}{R+r} \right)E \\[2.0ex]
-5V_1 &= \frac{-9R-5r}{R+r}E \\[2.0ex]
V_1 &= \frac{9R+5r}{5(R+r)}E
\end{aligned}
$$
最後に、求めた\(V_1\)を①式に代入して\(Q_1\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= C_1 V_1 \\[2.0ex]
&= C \cdot \frac{9R+5r}{5(R+r)}E \\[2.0ex]
&= \frac{9R+5r}{5(R+r)}CE
\end{aligned}
$$
同様に\(V_2\)を求め、\(Q_2\)を計算します。⑤式より \(V_1 = 4V_2 + 5E\)。これを③式に代入します。
$$
\begin{aligned}
(4V_2 + 5E) + V_2 &= \frac{R}{R+r}E \\[2.0ex]
5V_2 &= \left( \frac{R}{R+r} – 5 \right)E \\[2.0ex]
5V_2 &= \frac{R – 5(R+r)}{R+r}E \\[2.0ex]
V_2 &= \frac{-4R-5r}{5(R+r)}E
\end{aligned}
$$
これを②式に代入して\(Q_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= C_2 V_2 \\[2.0ex]
&= 4C \cdot \left( \frac{-4R-5r}{5(R+r)}E \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{4(4R+5r)}{5(R+r)}CE
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この設問は、パズルのように複数のピース(物理法則)を組み合わせて解く問題です。未知数が4つ(\(Q_1, V_1, Q_2, V_2\))あるので、式を4本立てる必要があります。1, 2本目は各コンデンサーの基本式(\(Q=CV\))、3本目は回路を一周したときの電圧の関係(キルヒホッフの法則)、4本目はスイッチを切り替えても「孤立した部分」の電気量は変わらないという保存則です。これら4つの式を立てて、あとは数学の連立方程式として解けば、答えが求まります。

結論と吟味

コンデンサー1の極板Aの電気量は \(Q_1 = \displaystyle\frac{9R+5r}{5(R+r)}CE\)、コンデンサー2の極板Bの電気量は \(Q_2 = -\displaystyle\frac{4(4R+5r)}{5(R+r)}CE\) となります。\(Q_2\)が負の値となっているのは、スイッチ切り替え後に電荷の再配分が起こり、極板Bが負に帯電したことを示しています。

解答 (5) \(Q_1 = \displaystyle\frac{9R+5r}{5(R+r)}CE\) , \(Q_2 = -\displaystyle\frac{4(4R+5r)}{5(R+r)}CE\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの定常状態の理解:
    • 核心: 直流回路において、十分に時間が経過した定常状態では、コンデンサーが接続されている経路には電流が流れません。コンデンサーは「断線」として扱える、という点がこの種の問題を解く上での大原則です。
    • 理解のポイント: (1)ではこの原則から抵抗での電圧降下が0であること、(3)では電流がコンデンサーを迂回するループのみを流れることを導き出しています。
  • 電気量保存則:
    • 核心: 回路の接続が切り替わる際、外部から電荷の出入りがない「孤立部分」の総電気量は、切り替えの前後で不変です。
    • 理解のポイント: (5)では、点P3に接続された2枚のコンデンサー極板が孤立部分を形成します。この部分の初期電荷(スイッチ1側での状態)と最終電荷(スイッチ2側での状態)を等しいと置くことで、未知数を解くための決定的な方程式が得られます。
  • キルヒホッフの法則:
    • 核心: 複雑な回路網における電流と電圧の関係を記述する普遍的な法則です。特に第2法則(閉回路一周の電位差の和は0)は、回路の各部分の電位差を関連付けるために不可欠です。
    • 理解のポイント: (3)では抵抗のみの単純なループに、(5)ではコンデンサーを含むループに適用し、電圧に関する方程式を立てています。
  • 電力の最大条件(整合):
    • 核心: 電源(内部抵抗\(r\))から外部の抵抗\(R\)に供給される電力が最大になるのは、\(R=r\)のときである、という重要な関係です。
    • 理解のポイント: (4)では、消費電力\(P\)を\(R\)の関数として表し、相加相乗平均の関係を用いてこの条件を導出します。これは様々な分野で応用される「インピーダンス整合」の基本概念です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スイッチの切り替え問題: 本問のように、スイッチ操作で回路構成が変わる問題。常に「切り替え前の状態」と「切り替え後の状態」を明確に区別し、その前後で何が保存されるか(電気量保存則)、何が変化するかを分析することが鍵です。
    • コンデンサーと電池の再接続: 充電済みのコンデンサーを電池から切り離し、別のコンデンサーや抵抗に接続する問題。この場合も「孤立部分の電気量保存則」が活躍します。
    • 内部抵抗を持つ電源: 本問の(3)以降のように、電源に内部抵抗がある場合、電源から取り出せる電圧(端子電圧)は流れる電流によって変化します。\(V = E – rI\) の関係を常に意識する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「十分に時間がたった」のキーワード: この言葉を見たら、即座に「コンデンサー部分の電流は0」と変換します。これが解析の第一歩です。
    2. 回路の孤立部分を探す: スイッチ操作や接続変更がある問題では、必ず電気的に孤立した部分がないかを探します。そこが電気量保存則の使いどころです。
    3. 未知数と方程式の数の確認: (5)のように未知数が多い場合は、やみくもに解き始めるのではなく、まず「未知数は何か、いくつあるか」「使える法則は何か(コンデンサーの式、キルヒホッフ則、保存則など)、式をいくつ立てられるか」を見積もる戦略的な視点が重要です。
    4. 電力の最大値問題: 「消費電力が最大になるとき」と問われたら、ほぼ確実に「相加相乗平均」か「微分して0」のどちらかです。物理の問題では相加相乗平均で解ける形に変形できることが多いと知っておくと、式変形の方針が立てやすくなります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 定常状態の誤解:
    • 誤解: スイッチを2に入れた後も、コンデンサーに電流が流れ続けると考えてしまう。
    • 対策: 直流回路では、コンデンサーは充電が完了すれば電流をブロックする「壁」のようになると覚えましょう。電流が流れるのは充電・放電の途中(過渡状態)だけです。
  • 電気量保存則の適用範囲の間違い:
    • 誤解: 回路のどこでも電気量が保存されると勘違いし、孤立していない部分に適用してしまう。
    • 対策: 電気量保存則が使えるのは、導線が途中で切れていて、他の部分と電荷のやり取りができない「浮島」のような部分だけです。必ず図で孤立部分を囲って確認する癖をつけましょう。
  • 相加相乗平均のための式変形ミス:
    • 誤解: (4)で \(P = \displaystyle\frac{RE^2}{(R+r)^2}\) の分母 \((R+r)^2\) をそのまま展開してしまい、どうすればいいか分からなくなる。
    • 対策: \(P\)が最大 \(\iff\) \(1/P\)が最小、という発想が有効です。\( \displaystyle\frac{1}{P} = \frac{(R+r)^2}{RE^2} = \frac{R^2+2Rr+r^2}{RE^2} = \frac{1}{E^2}(R+2r+\frac{r^2}{R}) \) と逆数をとると、和の形が見えやすくなります。
  • 電荷の符号ミス:
    • 誤解: (5)で電気量保存則を立てる際に、各極板の電荷の符号を間違える。
    • 対策: 電源の向きや電位の高低を元に、各極板が正負どちらに帯電するかを常に意識しましょう。例えば、電源の正極側につながる極板は正、負極側は負になります。連立方程式を解いた結果、\(Q_2\)が負になったように、未知の電荷は仮に正として計算を進め、結果の符号で判断することも有効です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(Q=CV\)(コンデンサーの基本式):
    • 選定理由: コンデンサーの3つの基本量(電気量、容量、電圧)の関係を表す最も基本的な式。(1)では電圧から電気量を、(5)では電圧と電気量を結びつけるために使用します。
    • 適用根拠: コンデンサーという素子の定義そのものです。
  • キルヒホッフの第2法則:
    • 選定理由: (3)や(5)のように、複数の素子が接続された閉回路における電圧(電位)の関係を調べるため。
    • 適用根拠: エネルギー保存則が電位という形で現れたもので、あらゆる電気回路で成り立つ普遍的な法則です。
  • 電気量保存則:
    • 選定理由: (5)のように、スイッチの切り替えによって回路の状態が変化する問題で、変化の前後をつなぐ関係式を得るため。
    • 適用根拠: 電荷は勝手に生まれたり消えたりせず、孤立した系の中では総量が一定であるという物理学の基本法則です。
  • \(P=VI\) と相加相乗平均/微分:
    • 選定理由: (4)で「消費電力の最大値」を求めるため。\(P\)を求めたい変数の関数で表し、その最大値を解析する数学的ツールとして選択します。
    • 適用根拠: 相加相乗平均の関係や微分は、関数の最大・最小値を求める際に強力な手法であり、物理学における最適化問題で頻繁に利用されます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の整理:
    • 特に注意すべき点: この問題のように文字が多い計算では、どの文字が定数でどれが変数かを意識することが重要です。(4)では\(R\)が変数、(5)では\(V_1, V_2\)などが変数です。計算の途中で式が複雑になったら、一度立ち止まって項を整理しましょう。
    • 日頃の練習: (5)のような連立方程式では、どの式を使ってどの文字を消去するか、計画を立ててから計算を始めるとスムーズです。例えば、まず\(Q\)を\(V\)で表し、\(V\)に関する連立方程式に帰着させる、といった方針です。
  • 符号の確認:
    • 特に注意すべき点: 電気量や電位差の符号は間違いやすいポイントです。特に(5)の電気量保存則では、極板のどちら側を考えているのか、その符号は正か負かを慎重に確認しましょう。
    • 日頃の練習: 計算結果の符号が物理的に妥当か(例:\(Q_2\)が負になる理由)を考えることも検算になります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (3) 電圧: \(V = \displaystyle\frac{R}{R+r}E\) は、\(E\)を\(R\)と\(r\)で分圧した形であり、\(R\)大きいほど\(V\)が大きくなる直感と一致します。
    • (4) 最大電力: \(R=r\) という結果は、電源の内部抵抗と負荷抵抗が一致するときに電力供給が最大になるという、広く知られた物理法則(整合条件)です。この知識があれば、答えの妥当性を確信できます。
    • (5) 極限ケースの確認: 例えば、もし\(R \rightarrow \infty\)(抵抗2が断線)なら、(3)で\(V \rightarrow E\)となり、コンデンサーにかかる電圧の和は\(E\)になります。このとき\(Q_1, Q_2\)の式がどうなるかを考えてみるなど、極端な状況を想定して式の妥当性をチェックするのも良い訓練です。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]

問題123 (長崎大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、直流電源、内部抵抗を持つ電流計と電圧計を用いて、未知抵抗の値を測定する2つの異なる方法(電流計-電圧計法)について、測定値と真の値の関係、および測定誤差を評価する問題です。

与えられた条件
  • 未知抵抗: 抵抗値 \(R_x\)
  • 測定機器:
    • 直流電流計: 内部抵抗 \(r_A\)
    • 直流電圧計: 内部抵抗 \(r_V\)
  • 直流電源: 起電力 \(E\)、内部抵抗は無視できる
  • 実験1: 電圧計を未知抵抗\(R_x\)に並列に接続し、その全体に電流計を直列に接続する。測定値は \(I_1, V_1\)。
  • 実験2: 電流計を未知抵抗\(R_x\)に直列に接続し、その全体に電圧計を並列に接続する。測定値は \(I_2, V_2\)。
  • 測定抵抗の定義: \(R_1 = \displaystyle\frac{V_1}{I_1}\), \(R_2 = \displaystyle\frac{V_2}{I_2}\)
  • 誤差の定義: \(\varepsilon_1 = |R_1 – R_x|\), \(\varepsilon_2 = |R_2 – R_x|\)
問われていること
  • (1) 測定値 \(R_1\) を、真の値 \(R_x\) と電圧計の内部抵抗 \(r_V\) を用いて表す。
  • (2) 測定値 \(R_2\) を、真の値 \(R_x\) と電流計の内部抵抗 \(r_A\) を用いて表す。
  • (3) 誤差 \(\varepsilon_1\) が \(\varepsilon_2\) より小さくなるための条件を、\(\displaystyle\frac{R_x}{r_A}\) および \(\displaystyle\frac{r_V}{R_x}\) を用いて表す。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(1), (2)の別解: 合成抵抗の考え方を用いる解法
      • 主たる解法がキルヒホッフの法則から各部分の電流・電圧を計算し代数的に解くのに対し、別解では回路の接続構造から「測定値が等価的な合成抵抗に相当する」という物理的な洞察に基づき、より直感的に解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理モデルの深化: 複雑な回路を「並列接続」や「直列接続」といった単純なモデルに置き換えて考える、物理学における重要な思考法が身につきます。測定誤差の原因が、回路構造そのものの変化にあることを本質的に理解できます。
    • 計算の効率化: キルヒホッフの法則を用いた煩雑な連立方程式のプロセスを省略し、合成抵抗の公式を適用するだけで即座に結論を導けるため、計算時間を大幅に短縮できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電流計・電圧計の内部抵抗を考慮した抵抗測定と誤差の評価」です。理想的な測定器ではない、現実の測定器が測定結果にどのような影響を与えるかを、電気回路の基本法則から解き明かしていきます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: 抵抗における電圧、電流、抵抗値の関係 (\(V=RI\)) を記述する最も基本的な法則です。
  2. キルヒホッフの法則: 回路の分岐点における電流の関係(第1法則・電流則)と、閉回路における電圧の関係(第2法則・電圧則)であり、複雑な回路を解析するための普遍的なツールです。
  3. 抵抗の直列・並列合成: 回路の一部を等価な一つの抵抗と見なすことで、解析を単純化します。
  4. 測定誤差の概念: 測定値が真の値からどれだけずれているかを表し、測定方法の精度を評価する指標となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 実験1、実験2の各回路について、キルヒホッフの法則とオームの法則を用いて、測定される電圧・電流と、回路の各パラメータ(\(R_x, r_A, r_V\))の関係式を導出します。
  2. 問1, 2の結果を用いて、測定抵抗 \(R_1, R_2\) を \(R_x\) などで表します。
  3. 誤差の定義に従って \(\varepsilon_1, \varepsilon_2\) を具体的に計算し、\(\varepsilon_1 < \varepsilon_2\) という不等式を立て、指定された形になるように数学的に変形します(問3)。

問(1)

この先は、会員限定コンテンツです

記事の続きを読んで、物理の「なぜ?」を解消しませんか?
会員登録をすると、全ての限定記事が読み放題になります。

PVアクセスランキング にほんブログ村