「重要問題集」徹底解説(116〜120問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題116 (東京農大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、複数の電池と抵抗、スイッチで構成された直流回路に関する問題です。スイッチの状態によって回路の接続が変わり、それぞれの状況でキルヒホッフの法則を用いて電流を求めます。キルヒホッフの法則を正しく適用し、連立方程式を解く計算力が試される、電気回路の基本問題です。

与えられた条件
  • 抵抗: \(R_1=1.0 \, \text{Ω}\), \(R_2=2.0 \, \text{Ω}\), \(R_3=3.0 \, \text{Ω}\)
  • 電池: \(E_1=2.0 \, \text{V}\), \(E_2=7.0 \, \text{V}\)
  • その他: 電池の内部抵抗は無視できる。
問われていること
  • (1) S1, S3を閉じ、S2を開いたときの、R3を流れる電流の大きさ。
  • (2) (1)のときの、R2を流れる電流の大きさ。
  • (3) S1, S2を閉じ、S3を開いたときの、R1に流れる電流の向きと大きさ。
  • (4) (3)のときの、R2とR3に流れる電流の大きさ。
  • (5) (3)の状態で、R1に電流が流れないようにR3を交換した場合の新しい抵抗値。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(1),(2)の別解: 合成抵抗を利用する解法
      • 主たる解法がキルヒホッフの法則で2つのループから連立方程式を立てるのに対し、別解ではR1とR2が並列接続であることに着目し、合成抵抗の考え方を用いて計算を簡略化します。
    • 問(5)の別解: 電位の考え方を用いる解法
      • 主たる解法がキルヒホッフの法則の式に「電流が0」という条件を代入して解くのに対し、別解では「抵抗に電流が流れない」という条件を「抵抗の両端の電位が等しい」と物理的に読み替え、電位の式から直接抵抗値を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 回路構造の洞察: 「並列接続」や「電流が0」といった回路の特定の状態を見抜き、それを物理法則(合成抵抗、等電位)に結びつけることで、より効率的で物理的な洞察に富んだ解法を学ぶことができます。
    • 物理概念の深化: 特に問(5)の別解は、電流が電位差によって駆動されるという電気回路の根本原理への理解を深めます。これはホイートストンブリッジの平衡条件にも通じる重要な考え方です。
    • 計算の効率化: 回路の性質をうまく利用することで、複雑な連立方程式を回避し、計算ミスを減らすことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「キルヒホッフの法則を用いた直流回路解析」です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの法則I(電流則): 回路の任意の分岐点において、流れ込む電流の和と流れ出す電流の和は等しい。これは電荷の保存則を表します。
  2. キルヒホッフの法則II(電圧則): 回路の任意の閉じたループ(閉路)を一周するとき、起電力の和と電圧降下の和は等しい。これはエネルギーの保存則を表します。
  3. 未知電流の仮定: 回路の各部分を流れる電流の大きさと向きを未知数として仮定し、連立方程式を立てます。解が負になった場合は、仮定した向きが逆だったことを意味します。
  4. 回路の等価変換: (1)のように単純な並列接続が見抜ける場合や、(5)のように特定の条件で回路が単純化される場合、それを見抜くことで計算を簡略化できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問のスイッチの状態に応じて、有効な回路図を描き直します。
  2. 各抵抗を流れる電流を未知数として、向きを仮定します。
  3. キルヒホッフの法則IとIIを用いて、未知数の数だけ独立した方程式を立てます。
  4. 得られた連立方程式を解いて、電流の値を求めます。

問(1), (2)

思考の道筋とポイント
スイッチS1とS3を閉じ、S2を開いた状態の回路を考えます。このとき、電池E2とスイッチS2は回路から切り離されているため、実質的な回路は電池E1と抵抗R1, R2, R3から構成されます。S3が閉じているため、R1とR2は並列接続になっています。この並列部分とR3がE1に接続された回路です。キルヒホッフの法則を用いて解くのが基本です。
この設問における重要なポイント

  • スイッチの状態を反映した正しい回路図を描くこと。
  • 未知電流の向きを仮定し、キルヒホッフの法則I(電流則)とII(電圧則)を適用して連立方程式を立てること。
  • S3が閉じていることにより、R1とR2が並列接続になっていることを見抜くこと。

具体的な解説と立式
模範解答の図aのように、R2を左向きに流れる電流を\(I_2\)、R3を右向きに流れる電流を\(I_3\)と仮定します。
キルヒホッフの法則Iより、分岐点に注目すると、R1を流れる電流は左向きに \(I_3 – I_2\) となります。
次に、キルヒホッフの法則IIを2つの閉路に適用します。

  • 閉路1 (R1, R2を含むループ): R1とR2は並列なので、両端の電圧は等しいです。
    $$ R_1 (I_3 – I_2) = R_2 I_2 \quad \cdots ① $$
  • 閉路2 (E1, R2, R3を含むループ): 電池E1の正極(右側)から出て、R3、R2を通り、負極(左側)に戻るループを考えます。起電力の和は\(E_1\)、電圧降下の和は\(R_3 I_3 + R_2 I_2\)です。
    $$ E_1 = R_3 I_3 + R_2 I_2 \quad \cdots ② $$

この2つの連立方程式を解くことで、\(I_2\)と\(I_3\)が求まります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則I(電流則)
  • キルヒホッフの法則II(電圧則)
  • オームの法則
計算過程

与えられた値を代入します。
①式:
$$
\begin{aligned}
1.0 (I_3 – I_2) &= 2.0 I_2 \\[2.0ex]
I_3 – I_2 &= 2.0 I_2 \\[2.0ex]
I_3 &= 3.0 I_2 \quad \cdots ①’
\end{aligned}
$$
②式:
$$
2.0 = 3.0 I_3 + 2.0 I_2 \quad \cdots ②’
$$
①’を②’に代入します。
$$
\begin{aligned}
2.0 &= 3.0 (3.0 I_2) + 2.0 I_2 \\[2.0ex]
2.0 &= 9.0 I_2 + 2.0 I_2 \\[2.0ex]
2.0 &= 11.0 I_2 \\[2.0ex]
I_2 &= \frac{2}{11} \approx 0.181 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
次に\(I_3\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_3 &= 3.0 \times \frac{2}{11} \\[2.0ex]
&= \frac{6}{11} \approx 0.545 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この回路は少し複雑なので、キルヒホッフの法則という万能ツールを使います。まず、各抵抗を流れる電流を「未知数」として文字で置きます。次に、回路内に2つの「周回コース」(ループ)を見つけ、それぞれのコースで「電池による電圧の上昇」と「抵抗による電圧の降下」の合計がゼロになる、というルール(電圧則)を使って式を2本立てます。あとは、この連立方程式を解けば、未知数だった電流の値が分かります。

結論と吟味

(1) R3を流れる電流\(I_3\)の大きさは \(\frac{6}{11} \, \text{A} \approx 0.55 \, \text{A}\)。
(2) R2を流れる電流\(I_2\)の大きさは \(\frac{2}{11} \, \text{A} \approx 0.18 \, \text{A}\)。
どちらも正の値で求まったので、最初に仮定した電流の向きは正しかったことがわかります。

別解: 合成抵抗を利用する方法

思考の道筋とポイント
R1とR2が並列接続、それとR3が直列接続になっていると見なして、回路全体の合成抵抗を求めます。これにより、回路全体を流れる電流(この場合は\(I_3\))を直接計算し、そこから各部分の電流を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 並列部分の合成抵抗 \(R_{12}\) は \(\displaystyle\frac{1}{R_{12}} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\) で計算できる。
  • 回路全体の合成抵抗 \(R_{all}\) は \(R_{12} + R_3\)。
  • 回路全体にオームの法則を適用し、\(E_1 = R_{all} I_3\)。

具体的な解説と立式
R1とR2の並列部分の合成抵抗を\(R_{12}\)とすると、
$$ \frac{1}{R_{12}} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} $$
回路全体の合成抵抗\(R_{all}\)は、\(R_{12}\)と\(R_3\)の直列接続なので、
$$ R_{all} = R_{12} + R_3 $$
回路全体を流れる電流は\(I_3\)なので、オームの法則より、
$$ E_1 = R_{all} I_3 $$
\(I_3\)が求まった後、R1とR2にかかる電圧\(V_{12}\)を計算し、\(I_2 = V_{12} / R_2\)として\(I_2\)を求めます。

使用した物理公式

  • 抵抗の並列接続: \(\displaystyle\frac{1}{R_{\text{合成}}} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
  • 抵抗の直列接続: \(R_{\text{合成}} = R_1 + R_2\)
  • オームの法則: \(V=IR\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{12}} &= \frac{1}{1.0} + \frac{1}{2.0} = \frac{2+1}{2.0} = \frac{3}{2.0} \\[2.0ex]
R_{12} &= \frac{2.0}{3} \, \text{[Ω]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
R_{all} &= \frac{2.0}{3} + 3.0 = \frac{2.0 + 9.0}{3} = \frac{11.0}{3} \, \text{[Ω]}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_3 &= \frac{E_1}{R_{all}} = \frac{2.0}{11.0/3} = \frac{6.0}{11.0} = \frac{6}{11} \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
次に、並列部分にかかる電圧\(V_{12}\)は、
$$
\begin{aligned}
V_{12} &= R_{12} I_3 = \frac{2}{3} \times \frac{6}{11} = \frac{4}{11} \, \text{[V]}
\end{aligned}
$$
よって、\(I_2\)は、
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{V_{12}}{R_2} = \frac{4/11}{2.0} = \frac{2}{11} \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この回路は、R1とR2を合体させて一つの抵抗と見なすことができます。合体後の抵抗とR3が直列につながった単純な回路になるので、中学校で習ったオームの法則だけで全体の電流(\(I_3\))が計算できます。全体の電流が分かれば、それを使って各部分の電圧や電流も計算できます。

結論と吟味

主解法と全く同じ結果が得られました。回路の構造を単純化できる場合は、この方法が計算も少なく効率的です。

解答 (1) \(0.55 \, \text{A}\)
解答 (2) \(0.18 \, \text{A}\)

問(3), (4)

思考の道筋とポイント
スイッチS1とS2を閉じ、S3を開いた状態の回路を考えます。今度は電池E1とE2の両方が回路に接続され、抵抗R1, R2, R3がT字型に接続された2電源の回路となります。このような回路は単純な直列・並列に分解できないため、キルヒホッフの法則が必須となります。
この設問における重要なポイント

  • 2つの電源を含む回路では、電流の向きを直感的に判断するのが難しい場合がある。仮に設定して計算し、結果の符号で判断する。
  • キルヒホッフの法則IIを適用する際、ループを回る向きと、電池の起電力・抵抗の電圧降下の向きに細心の注意を払う。

具体的な解説と立式
模範解答の図bのように、R1を左向きに流れる電流を\(I_1\)、R2を左向きに流れる電流を\(I_2\)と仮定します。
キルヒホッフの法則Iより、R3を流れる電流は右向きに \(I_1 + I_2\) となります。
キルヒホッフの法則IIを2つの閉路に適用します。

  • 左ループ (E1, R1, R3): E1の正極(右側)から出て、R1、R3を通り、負極(左側)に戻るループを考えます。
    $$ E_1 – R_1 I_1 – R_3 (I_1 + I_2) = 0 \quad \cdots ④ $$
  • 右ループ (E2, R2, R3): E2の正極(右側)から出て、R2、R3を通り、負極(左側)に戻るループを考えます。
    $$ E_2 – R_2 I_2 – R_3 (I_1 + I_2) = 0 \quad \cdots ⑤ $$

この2つの連立方程式を解くことで、\(I_1\)と\(I_2\)が求まります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則I(電流則)
  • キルヒホッフの法則II(電圧則)
計算過程

与えられた値を代入します。
④式:
$$
\begin{aligned}
2.0 – 1.0 I_1 – 3.0 (I_1 + I_2) &= 0 \\[2.0ex]
2.0 – 4.0 I_1 – 3.0 I_2 &= 0 \\[2.0ex]
4I_1 + 3I_2 &= 2.0 \quad \cdots ④’
\end{aligned}
$$
⑤式:
$$
\begin{aligned}
7.0 – 2.0 I_2 – 3.0 (I_1 + I_2) &= 0 \\[2.0ex]
7.0 – 3.0 I_1 – 5.0 I_2 &= 0 \\[2.0ex]
3I_1 + 5I_2 &= 7.0 \quad \cdots ⑤’
\end{aligned}
$$
④’\( \times 5 – \)⑤’\( \times 3 \) を計算して\(I_2\)を消去します。
$$ (20 I_1 + 15 I_2) – (9 I_1 + 15 I_2) = (10.0) – (21.0) $$
$$
\begin{aligned}
11 I_1 &= -11.0 \\[2.0ex]
I_1 &= -1.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
この結果を④’に代入して\(I_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
4.0(-1.0) + 3.0 I_2 &= 2.0 \\[2.0ex]
-4.0 + 3.0 I_2 &= 2.0 \\[2.0ex]
3.0 I_2 &= 6.0 \\[2.0ex]
I_2 &= 2.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
R3を流れる電流\(I_3\)は、
$$
\begin{aligned}
I_3 &= I_1 + I_2 \\[2.0ex]
&= -1.0 + 2.0 \\[2.0ex]
&= 1.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

今度は電池が2つになりましたが、やることは同じです。2つの未知数(\(I_1, I_2\))を設定し、2つの周回コース(左のループと右のループ)で電圧則の式を2本作ります。計算の結果、\(I_1\)がマイナスになりましたが、これは慌てずに「最初に仮定した向きと逆だった」と解釈すればOKです。

結論と吟味

(3) R1を流れる電流\(I_1\)は \(-1.0 \, \text{A}\) なので、向きは仮定した左向きとは逆の「右向き」、大きさは「\(1.0 \, \text{A}\)」です。
(4) R2を流れる電流\(I_2\)の大きさは「\(2.0 \, \text{A}\)」、R3を流れる電流\(I_3\)の大きさは「\(1.0 \, \text{A}\)」です。
E2(\(7.0 \, \text{V}\))がE1(\(2.0 \, \text{V}\))より強力なため、E1を押し返すように電流が流れるという結果は物理的に妥当です。

解答 (3) 右向きに \(1.0 \, \text{A}\)
解答 (4) R2: \(2.0 \, \text{A}\), R3: \(1.0 \, \text{A}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
(3)の回路状態で、抵抗R3を新しい抵抗\(R’_3\)に交換し、「R1に電流が流れない」ようにします。この条件をキルヒホッフの法則の式に適用して、未知の抵抗値\(R’_3\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 「R1に電流が流れない」という条件(\(I_1=0\))を、立てた連立方程式に代入する。
  • 抵抗値が\(R_3\)から\(R’_3\)に変わるので、方程式を立て直す必要がある。

具体的な解説と立式
問(3)で立てたキルヒホッフの法則の式で、抵抗\(R_3\)を\(R’_3\)に置き換えます。
$$ E_1 – R_1 I_1 – R’_3 (I_1 + I_2) = 0 \quad \cdots ⑥ $$
$$ E_2 – R_2 I_2 – R’_3 (I_1 + I_2) = 0 \quad \cdots ⑦ $$
ここに、「R1に電流が流れない」という条件 \(I_1=0\) を代入します。
⑥式は、
$$ E_1 – R’_3 I_2 = 0 \quad \cdots ⑥’ $$
⑦式は、
$$ E_2 – R_2 I_2 – R’_3 I_2 = 0 \quad \cdots ⑦’ $$
この2つの式から、未知数である\(I_2\)と\(R’_3\)を求めます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則I(電流則)
  • キルヒホッフの法則II(電圧則)
計算過程

⑥’に値を代入します。
$$ 2.0 – R’_3 I_2 = 0 $$
$$ R’_3 I_2 = 2.0 $$
この関係を⑦’に代入します。
$$
\begin{aligned}
7.0 – 2.0 I_2 – (R’_3 I_2) &= 0 \\[2.0ex]
7.0 – 2.0 I_2 – 2.0 &= 0 \\[2.0ex]
5.0 – 2.0 I_2 &= 0 \\[2.0ex]
I_2 &= \frac{5.0}{2.0} = 2.5 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
この\(I_2\)の値を \(R’_3 I_2 = 2.0\) に代入して\(R’_3\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
R’_3 \times 2.5 &= 2.0 \\[2.0ex]
R’_3 &= \frac{2.0}{2.5} = \frac{20}{25} = \frac{4}{5} \\[2.0ex]
&= 0.80 \, \text{[Ω]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

R1に電流が流れないように、R3を別の抵抗に取り替える問題です。キルヒホッフの法則で立てた式に、「\(I_1=0\)」という条件と、抵抗が「\(R’_3\)」に変わったことを反映させます。すると、未知数が\(I_2\)と\(R’_3\)の2つ、式が2本の連立方程式になるので、これを解けば答えが求まります。

結論と吟味

交換した抵抗の値は \(0.80 \, \text{Ω}\) です。この結果は物理的に妥当な正の値です。

別解: 電位の考え方を用いる解法

思考の道筋とポイント
「R1に電流が流れない」という条件を、文字通り「R1の両端の電位が等しい」という式で直接表現します。これにより、物理的な意味がより明確になります。
この設問における重要なポイント

  • 電位の基準点を設定する。
  • 各点の電位を、基準点からの電位差として計算する。
  • 電位が等しいという条件で方程式を立てる。

具体的な解説と立式
回路の最下部(E1とE2の負極側)の電位を基準(\(0 \, \text{V}\))とします。

  • R1の左端の電位 \(V_A\): E1の正極に接続されているので、\(V_A = E_1 = 2.0 \, \text{V}\) です。
  • R1の右端の電位 \(V_B\): この点は、E2の電圧(\(7.0 \, \text{V}\))を、R2とR3’で分圧した点です。B点の電位は、R3’にかかる電圧に等しいです。
    $$ V_B = \frac{R’_3}{R_2 + R’_3} E_2 $$

「R1に電流が流れない」条件は \(V_A = V_B\) なので、
$$ E_1 = \frac{R’_3}{R_2 + R’_3} E_2 $$

使用した物理公式

  • 抵抗の分圧の式: \(V_{R2} = \displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2} V_{\text{全体}}\)
  • 電位の考え方
計算過程

$$
\begin{aligned}
2.0 &= \frac{R’_3}{2.0 + R’_3} \times 7.0 \\[2.0ex]
2.0 (2.0 + R’_3) &= 7.0 R’_3 \\[2.0ex]
4.0 + 2.0 R’_3 &= 7.0 R’_3 \\[2.0ex]
4.0 &= 5.0 R’_3 \\[2.0ex]
R’_3 &= \frac{4.0}{5.0} = 0.80 \, \text{[Ω]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路図を地図に見立て、電位を「標高」と考えます。地面(電池のマイナス側)を標高0mとします。電池E1は、A地点を常に標高2.0mに保つポンプです。一方、B地点の標高は、電池E2が作り出す7.0mの高さの坂道を、R2とR3’という2つの区間に分けた途中の地点の高さです。A地点とB地点の間に電流が流れないようにするには、両方の標高を同じにすればよい、つまりB地点の標高が2.0mになるように坂道R3’の長さを調整する、という問題です。

結論と吟味

主たる解法と同じ結果が得られます。電位の概念を直接使うことで、なぜその式が成り立つのかがより直感的に理解できます。

解答 (5) \(0.80 \, \text{Ω}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • キルヒホッフの法則(電流則・電圧則):
    • 核心: この問題は、キルヒホッフの法則を正しく適用できるかを試す典型問題です。特に、複数の電源を含む複雑な回路では、この法則が唯一の系統的な解法となります。
    • 電流則(第一法則): 「分岐点に流れ込む電流の和=流れ出す電流の和」。これは電荷が途中で消えたり生まれたりしないという「電荷量保存則」の現れです。未知電流の数を減らすために使います。
    • 電圧則(第二法則): 「任意の閉回路を一周すると、電位の上がり下がりの合計はゼロ」。これは「エネルギー保存則」の現れです。起電力は電位を上げる(または下げる)ポンプ、抵抗は電位を下げる坂道とイメージします。
  • 法則適用の正確性:
    • 核心: 法則を知っているだけでは不十分で、正しく使いこなすことが重要です。特に電圧則では、ループをたどる向き、電流の向き、電池の向きの3つを正確に把握し、電位の「上がる(+)」か「下がる(-)」かを判断する符号の付け方が全ての鍵を握ります。
    • 理解のポイント: (3)の解析で、電池の向きを考慮して電圧則の式を立てる部分が最も重要です。\(+E\)なのか\(-E\)なのか、\(+IR\)なのか\(-IR\)なのかを、自分で決めたルールに従って一貫して適用する練習が不可欠です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ホイートストンブリッジ回路: ひし形に抵抗が配置された回路。中央の検流計に電流が流れない「平衡条件」を問う問題は、本問の(5)と全く同じ思考法で解けます。
    • コンデンサーを含む直流回路(定常状態): 定常状態ではコンデンサーに電流は流れません。これは「電流が0」という条件が与えられているのと同じで、その部分を断線と見なして回路を単純化できます。
    • 対称性のある回路: 立方体の各辺に抵抗を配置した回路など。回路の対称性を見抜くことで、電位が等しい点や電流が同じ経路を見つけ、未知数の数を劇的に減らすことができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の構造を把握する: まず、単純な直列・並列に分解できるかを確認します。(1)のように分解できれば計算が楽になります。分解できない複雑な回路((3)など)であれば、キルヒホッフの法則を使うと覚悟を決めます。
    2. 未知数を設定する: 各枝路を流れる電流を、向きを仮定して\(I_1, I_2, \dots\)と設定します。電流則を使えば、未知数の数を最小限に抑えられます。
    3. 閉回路(ループ)を選ぶ: 未知数の数だけ、独立したループを選びます。なるべく単純なループ(含まれる素子が少ない)を選ぶと、立式や計算が楽になります。
    4. 「電流0」の条件: (5)のように「電流が流れない」という条件があれば、それは強力なヒントです。その抵抗の両端の電位が等しい、という条件に置き換えて考えます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電圧則の符号ミス:
    • 誤解: ループを回る向きと電流・電池の向きの関係が混乱し、\(+\)と\(-\)を間違える。これは最も多いミスです。
    • 対策: 自分なりのルールを確立し、常に守ること。例えば、「ループの向きと電流の向きが同じなら電圧降下(-IR)」「ループの向きが電池の負極から正極へなら起電力(+E)」のように、機械的に適用できるルールを決め、練習を繰り返すのが最も効果的です。
  • 未知電流の向きの仮定:
    • 誤解: 計算結果が負になったときにパニックになり、計算をやり直してしまう。
    • 対策: 「負の解は、仮定した向きと逆向きである」ことを意味するだけです。大きさはその絶対値なので、何も問題ありません。自信を持って解答しましょう。(3)の\(I_1\)が良い例です。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: 焦って計算し、移項や代入でミスをする。
    • 対策: キルヒホッフの法則の問題は、立式さえできればあとは純粋な数学の計算です。式を立てた後は一度落ち着き、見やすく整理してから計算に移りましょう。検算として、求めた電流の値を元の別の方程式に代入してみるのも有効です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • キルヒホッフの法則I(電流則):
    • 選定理由: 回路が分岐している場合、各枝路の電流の関係を規定するため。複数の未知電流を、より少ない独立な未知数で表現する(未知数を減らす)ために用います。
    • 適用根拠: 電荷量保存則。分岐点で電荷が湧き出したり消えたりしないという基本原理に基づきます。
  • キルヒホッフの法則II(電圧則):
    • 選定理由: 回路に閉じたループが存在する場合、そのループ内の素子の電圧関係を規定するため。未知電流の数だけ方程式を立てるための主要なツールです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則。電荷がループを一周して元の場所に戻ってきたとき、そのエネルギー(電位)は元に戻るという原理に基づきます。
  • オームの法則 \(V=IR\):
    • 選定理由: 電圧則の中で、抵抗による「電圧降下」の大きさを計算するために用います。
    • 適用根拠: 抵抗という素子の性質を定義する基本式です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の確認:
    • 特に注意すべき点: 電圧則の式を立てた後、もう一度ループをたどり、全ての項の符号が自分のルール通りになっているかを確認する癖をつけましょう。
    • 日頃の練習: 式を立てる際に、必ず電流の向きの矢印と、ループをたどる向きの矢印を回路図に書き込む習慣をつける。
  • 文字式の整理:
    • 特に注意すべき点: 連立方程式を解く前に、\(aI_1 + bI_2 = c\) のように、各変数の項と定数項をきれいに整理してから計算を始めると、ミスが減ります。
    • 日頃の練習: 途中式を省略せず、丁寧に書く。特に、複数の式の足し引きをする際は、筆算を使うなどして慎重に行う。
  • 代入のタイミング:
    • 特に注意すべき点: (1)の別解のように、先に文字式で関係(\(I_3 = 3I_2\))を導いてから代入すると、数値計算が楽になる場合があります。
    • 日頃の練習: すぐに数値を代入するのではなく、どの変数を消去すれば最も計算が楽になるか、一呼吸おいて考える癖をつける。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (3) 電流の向き: E2(\(7.0 \, \text{V}\))はE1(\(2.0 \, \text{V}\))よりも強力な電源です。そのため、回路全体としてはE2が主導権を握り、E1の向きに逆らって電流を流そうとします。計算結果でR1に右向きの電流が流れたのは、この力関係を反映しており、物理的に妥当な結果と言えます。
    • (5) 抵抗値: 求めた抵抗値が負になることは物理的にありえません。もし負になったら、立式が根本的に間違っている証拠です。
  • 極端な場合や既知の状況との比較:
    • もし(3)でE1=E2だったら、対称性からR1には電流が流れないはずです(\(I_1=0\))。立てた連立方程式に\(E_1=E_2=E\)を代入して、実際に\(I_1=0\)となるか試してみるのも、式の正しさを確認する良い方法です。
    • もし(1)でR1=R2だったら、電流は均等に分流するはずです。計算結果がそうなっているか確認するのも良いでしょう。

問題117 (香川大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、2つの異なる構成を持つ直流回路について、電位、抵抗値、消費電力、電流などを求める問題です。特に、ホイートストンブリッジの平衡条件や、非平衡状態の回路解析が中心となります。キルヒホッフの法則を自在に使いこなす能力が試されます。

与えられた条件
  • 電池: \(E_1 = 24 \text{ V}\), \(E_2 = 8.0 \text{ V}\)
  • 抵抗: \(R_1 = 100 \, \Omega\), \(R_2 = 25 \, \Omega\), \(R_3 = 60 \, \Omega\), 可変抵抗 \(R\)
  • 仮定: 電池および電流計の内部抵抗は無視できる。
問われていること
  • (1) スイッチSをa側に入れた状態
    • (a) 電流計に電流が流れないときの、点Oに対する点Pの電位 \(V_P\)。
    • (b) (a)の条件における可変抵抗 \(R\) の値。
    • (c) 電流計に上から下へ \(0.17 \text{ A}\) の電流が流れたときの可変抵抗 \(R\) の値。
  • (2) スイッチSをb側に切り替えた状態
    • (a) 電流計に電流が流れないときの可変抵抗 \(R\) の値。
    • (b) \(R = 30 \, \Omega\) としたときの回路全体の消費電力 \(P\)。
    • (c) \(R = 30 \, \Omega\) としたときの電流計を流れる電流 \(i\) の大きさ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(1)(b) 可変抵抗\(R\)の値の別解: 電圧分配の公式を用いる解法
      • 主たる解法が、電流を一度計算してからオームの法則を再度適用するのに対し、別解では直列抵抗における電圧が抵抗値に比例して分配されるという関係から直接\(R\)を求めます。
    • 問(2)(c) 電流計を流れる電流の別解: 電流分配のテクニックを用いる解法
      • 主たる解法が、キルヒホッフの法則を用いて3元連立方程式を解く正攻法であるのに対し、別解では回路全体の電流を計算し、それが各枝にどう分配されるかを考えることで、より少ない計算で答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算の効率化: 特に電圧・電流分配則は、回路の構造(直列・並列)を正しく見抜ければ、複雑な連立方程式を回避し、計算時間とミスを大幅に削減できます。
    • 物理モデルの深化: 「電圧は抵抗に比例して分配される」「電流は抵抗の逆比で分配される」といった、より直感的で応用範囲の広い物理モデルの理解が深まります。
    • 異なる視点の学習: 同じ問題に対して、正攻法(キルヒホッフの法則)と、よりテクニカルな解法の両方を学ぶことで、状況に応じて最適なアプローチを選択する能力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電池を含む複雑な直流回路の解析」です。特に、ホイートストンブリッジの扱いは重要なポイントです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの法則: 複雑な回路を解析するための最も基本的で強力なツールです。第1法則(電流則)と第2法則(電圧則)を正しく適用することが求められます。
  2. 電位の考え方: 回路の各点の電位を基準点から考えることで、抵抗にかかる電圧(電位差)を正確に把握できます。
  3. ホイートストンブリッジの平衡条件: 電流計に電流が流れないという条件は、ブリッジ回路が平衡していることを意味し、特定の抵抗比の関係式が成り立ちます。
  4. 合成抵抗と消費電力: 回路全体の消費電力を求めるには、まず全体の合成抵抗を計算し、電力の公式 (\(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\)など) を用います。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題の状況に応じて回路図を正しく理解し、どの物理法則が適用できるかを判断します。
  2. (1)では、電池\(E_2\)が点Pの電位を固定する役割を持つことを見抜き、キルヒホッフの法則を適用します。
  3. (2)では、回路がホイートストンブリッジを構成することに注目し、(a)では平衡条件を、(c)ではキルヒホッフの法則を用いて解析します。
  4. (b)の消費電力は、回路全体の合成抵抗を求めてから計算します。

問(1)(a)

思考の道筋とポイント
点Oに対する点Pの電位を求めます。回路図で点Oと点Pの間にどのような素子が接続されているかに注目します。電池\(E_2\)の役割を正しく理解することが鍵です。
この設問における重要なポイント

  • 電位の基準点を明確にする(この問題では点O)。
  • 電池は、その起電力の分だけ2点間の電位差を作り出す装置である。
  • 電流計の内部抵抗は無視できるため、電流が流れても電圧降下は生じない。

具体的な解説と立式
点Oの電位を基準の \(0 \text{ V}\) とします。点Oと点Pの間には、起電力 \(E_2 = 8.0 \text{ V}\) の電池が接続されています。電池の正極がP側、負極がO側に接続されているため、点Pの電位は点Oの電位よりも \(E_2\) だけ高くなります。
この関係は、電流計に電流が流れるかどうかには依存しません。なぜなら、点Oと点Pを結ぶ経路には電池\(E_2\)しかなく、内部抵抗は\(0\)と仮定されているからです。
したがって、点Pの電位\(V_P\)は、
$$ V_P = E_2 $$

使用した物理公式

  • 電位差と起電力の関係
計算過程

与えられた値 \(E_2 = 8.0 \text{ V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_P &= 8.0 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

点Oを地面(高さ\(0\text{m}\))だと考えてみましょう。電池\(E_2\)は、水を\(8.0\text{m}\)の高さまで汲み上げるポンプのようなものです。点Pは、このポンプによって持ち上げられた場所なので、その「高さ(電位)」は\(8.0\text{V}\)となります。

結論と吟味

点Oに対する点Pの電位は \(+8.0 \text{ V}\) です。電池の役割を正しく理解していれば、直感的に求められる設問です。

解答 (1)(a) \(+8.0 \text{ V}\)

問(1)(b)

思考の道筋とポイント
「電流計に電流が流れない」という条件の下で、可変抵抗\(R\)の値を求めます。この条件から回路の各部分の電圧や電流の関係を導き出し、未知数\(R\)を決定します。キルヒホッフの法則を用いる方法が主たる解法です。
この設問における重要なポイント

  • 外側の閉回路(\(E_1, R_1, R\))に着目し、キルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用する。
  • (a)の結果から、抵抗\(R_1\)にかかる電圧が\(8.0 \text{ V}\)であることがわかる。

具体的な解説と立式
電源\(E_1\)の負極側(点Oと同じライン)の電位を\(0 \text{ V}\)とします。このとき、(a)より点Pの電位は\(V_P = 8.0 \text{ V}\)です。したがって、抵抗\(R_1\)の両端の電位差(電圧降下)\(V_{R1}\)は \(8.0 \text{ V}\) となります。
$$ V_{R1} = 8.0 \text{ [V]} $$
抵抗\(R_1\)と可変抵抗\(R\)には同じ電流\(I\)が流れています(直列接続)。オームの法則より、
$$ V_{R1} = R_1 I \quad \cdots ① $$
次に、電源\(E_1\)、抵抗\(R_1\)、抵抗\(R\)を含む外側の閉回路について、キルヒホッフの第2法則を適用します。電源\(E_1\)による電圧の上昇は、抵抗\(R_1\)と\(R\)での電圧降下の和に等しくなります。
$$ E_1 = V_{R1} + V_R = V_{R1} + RI \quad \cdots ② $$
これらの式を用いて、まず電流\(I\)を求め、次に抵抗\(R\)を求めます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
  • オームの法則 (\(V=IR\))
計算過程

まず、①式と \(V_{R1}=8.0\text{V}\), \(R_1=100\Omega\) から電流\(I\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
8.0 &= 100 \times I \\[2.0ex]
I &= \frac{8.0}{100} = 0.080 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
次に、この\(I\)の値を②式に代入して\(R\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
24 &= 8.0 + R \times (0.080) \\[2.0ex]
16 &= 0.080 R \\[2.0ex]
R &= \frac{16}{0.080} = \frac{1600}{8} = 200 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$
よって、\(R = 2.0 \times 10^2 \, \Omega\)。

この設問の平易な説明

まず、(a)の結果から抵抗\(R_1\)には\(8.0\text{V}\)の電圧がかかっていることがわかります。\(R_1\)の抵抗値は\(100\Omega\)なので、オームの法則からここに流れる電流が\(0.080\text{A}\)だと計算できます。この電流はそのまま抵抗\(R\)にも流れます。次に、回路全体を見ると、電源の\(24\text{V}\)のうち\(8.0\text{V}\)が\(R_1\)で使われているので、残りの\(16\text{V}\)が抵抗\(R\)で使われるはずです。電圧\(16\text{V}\)、電流\(0.080\text{A}\)とわかったので、再びオームの法則を使って抵抗\(R\)の値を求めることができます。

結論と吟味

主たる解法により \(R = 2.0 \times 10^2 \, \Omega\) という結果が得られました。計算は妥当です。

別解: 電圧分配の公式を用いる解法

思考の道筋とポイント
抵抗\(R_1\)と\(R\)が直列接続されており、全体に\(E_1=24\text{V}\)の電圧がかかっていると見なします。直列抵抗における電圧は、抵抗の大きさに比例して分配されるという性質を利用して、\(R\)を直接求めます。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗\(R_1\)と\(R\)が直列接続されていることを見抜く。
  • 直列抵抗における電圧は、抵抗の大きさに比例して分配される。

具体的な解説と立式
抵抗\(R_1\)と\(R\)は直列に接続されており、この直列部分全体に電源\(E_1\)の電圧 \(24 \text{ V}\) がかかっています。
直列接続における電圧分配の公式により、\(R_1\)にかかる電圧\(V_{R1}\)は次のように表せます。
$$ V_{R1} = E_1 \times \frac{R_1}{R_1 + R} $$
(a)より \(V_{R1} = 8.0 \text{ V}\) なので、この式に値を代入して\(R\)について解きます。

使用した物理公式

  • 抵抗の直列接続における電圧分配の公式
計算過程

$$
\begin{aligned}
8.0 &= 24 \times \frac{100}{100 + R} \\[2.0ex]
\frac{8.0}{24} &= \frac{100}{100 + R} \\[2.0ex]
\frac{1}{3} &= \frac{100}{100 + R} \\[2.0ex]
100 + R &= 300 \\[2.0ex]
R &= 200 = 2.0 \times 10^2 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電源の\(24\text{V}\)の電圧を、抵抗\(R_1\)と\(R\)で分け合うと考えます。\(R_1\)が受け取る電圧は\(8.0\text{V}\)なので、全体の\(1/3\)です。電圧の分け前が抵抗の大きさに比例するので、\(R_1\)の抵抗値が全体の抵抗値(\(R_1+R\))の\(1/3\)であればよい、ということになります。この関係から\(R\)の値を計算します。

結論と吟味

別解でも \(R = 2.0 \times 10^2 \, \Omega\) という同じ結果が得られました。主たる解法よりも計算が簡潔であり、効率的なアプローチです。

解答 (1)(b) \(2.0 \times 10^2 \, \Omega\)

問(1)(c)

思考の道筋とポイント
今度は電流計に \(0.17 \text{ A}\) の電流が流れるという具体的な条件が与えられています。この状況で可変抵抗\(R\)の値を求めます。複数の電流が関わるため、キルヒホッフの法則(特に第1法則と第2法則)を組み合わせて解くのが最も確実な方法です。
この設問における重要なポイント

  • スイッチがa側にある限り、点Pの電位は(a)と同様に \(+8.0 \text{ V}\) に保たれる。
  • 点Pを合流点として、キルヒホッフの第1法則(電流則)を適用する。
  • 外側のループでキルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用する。

具体的な解説と立式
1. \(R_1\)を流れる電流\(I_1\)の計算:
(a)と同様に、点Oを基準(\(0 \text{ V}\))とすると点Pの電位は \(V_P = 8.0 \text{ V}\) です。したがって、抵抗\(R_1\)にかかる電圧は \(V_{R1} = 8.0 \text{ V}\) のままです。オームの法則より、\(R_1\)を流れる電流\(I_1\)は、
$$ I_1 = \frac{V_{R1}}{R_1} $$
2. \(R\)を流れる電流\(I_R\)の計算:
点Pにおいて、キルヒホッフの第1法則を適用します。\(R_1\)からの電流\(I_1\)と、電流計からの電流 \(i = 0.17 \text{ A}\) が合流し、抵抗\(R\)へ流れていきます。したがって、\(R\)を流れる電流\(I_R\)は、
$$ I_R = I_1 + i $$
3. \(R\)にかかる電圧\(V_R\)の計算:
外側のループ(\(E_1, R_1, R\))でキルヒホッフの第2法則を適用します。電源電圧\(E_1\)は、\(V_{R1}\)と\(R\)にかかる電圧\(V_R\)の和に等しくなります。
$$ E_1 = V_{R1} + V_R $$
4. 抵抗\(R\)の計算:
\(V_R\)と\(I_R\)がわかれば、オームの法則から\(R\)の値を計算できます。
$$ R = \frac{V_R}{I_R} $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則(第1法則、第2法則)
  • オームの法則
計算過程

各ステップに従って計算を進めます。
1. \(I_1\)の計算:
$$ I_1 = \frac{8.0}{100} = 0.080 \text{ [A]} $$
2. \(I_R\)の計算:
$$ I_R = 0.080 + 0.17 = 0.25 \text{ [A]} $$
3. \(V_R\)の計算:
$$ V_R = E_1 – V_{R1} = 24 – 8.0 = 16 \text{ [V]} $$
4. \(R\)の計算:
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{V_R}{I_R} \\[2.0ex]
&= \frac{16}{0.25} \\[2.0ex]
&= 64 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この問題も、いくつかのステップに分けて考えます。まず、点Pの電位は\(8.0\text{V}\)で変わらないので、抵抗\(R_1\)には常に\(8.0\text{V}\)がかかり、\(0.080\text{A}\)の電流が流れます。次に、この電流と電流計から来た\(0.17\text{A}\)の電流が点Pで合流するので、抵抗\(R\)には合計で\(0.25\text{A}\)の電流が流れることになります。一方、電圧に注目すると、電源の\(24\text{V}\)のうち\(8.0\text{V}\)が\(R_1\)で使われるので、残りの\(16\text{V}\)が抵抗\(R\)にかかります。最終的に、抵抗\(R\)には「\(16\text{V}\)の電圧」がかかり「\(0.25\text{A}\)の電流」が流れるとわかったので、オームの法則からその抵抗値を\(64\Omega\)と計算できます。

結論と吟味

可変抵抗\(R\)の大きさは \(64 \, \Omega\) です。キルヒホッフの法則を段階的に適用することで、未知数を一つずつ明らかにしていきました。計算プロセスは論理的で、妥当な結果です。

解答 (1)(c) \(64 \, \Omega\)

問(2)(a)

思考の道筋とポイント
スイッチSをb側に切り替えた状態を考えます。このとき、回路は\(R_1, R_2, R_3, R\)の4つの抵抗と電流計からなるホイートストンブリッジを形成します。「電流計に電流が流れない」という条件は、このブリッジが平衡していることを意味します。
この設問における重要なポイント

  • スイッチb側の回路がホイートストンブリッジであることを見抜く。
  • ブリッジの平衡条件を正しく適用する。

具体的な解説と立式
スイッチをb側にすると、回路は図bのようなホイートストンブリッジになります。電流計に電流が流れないとき、ブリッジは平衡状態にあります。
ホイートストンブリッジの平衡条件は、ブリッジを構成する対角線上にある抵抗の積が等しくなることです。この回路では、\(R_1\)と\(R_3\)、\(R_2\)と\(R\)がそれぞれ対角の位置にあるため、以下の関係式が成り立ちます。
$$ R_1 R_3 = R_2 R $$
または、辺の比が等しいという形で表すこともできます。
$$ \frac{R_1}{R_2} = \frac{R}{R_3} $$
この式を使って\(R\)を求めます。

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件
計算過程

平衡条件の式に、与えられた抵抗値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{100}{25} &= \frac{R}{60} \\[2.0ex]
4 &= \frac{R}{60} \\[2.0ex]
R &= 4 \times 60 = 240 \text{ [Ω]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表すと \(2.4 \times 10^2 \, \Omega\) となります。

この設問の平易な説明

スイッチを切り替えると、回路はおなじみの「ひし形」のブリッジ回路になります。真ん中の電流計に電流が流れないのは、このひし形が完全にバランスを取れている(平衡している)ときです。バランスの条件は「たすき掛けした抵抗の値の積が等しい」こと、つまり \(R_1 \times R_3 = R_2 \times R\) です。この簡単な方程式を解くだけで、Rの値を求めることができます。

結論と吟味

可変抵抗\(R\)の大きさは \(2.4 \times 10^2 \, \Omega\) です。ホイートストンブリッジの平衡条件を正しく適用できました。

解答 (2)(a) \(2.4 \times 10^2 \, \Omega\)

問(2)(b)

思考の道筋とポイント
可変抵抗\(R\)を \(30 \, \Omega\) にしたときの、回路全体の消費電力を求めます。消費電力を求めるには、まず回路全体の合成抵抗を計算する必要があります。この問題の模範解答では、図bで示される特殊な回路構成の合成抵抗を計算しています。ここではその解釈に従います。
この設問における重要なポイント

  • 回路全体の消費電力は \(P = \displaystyle\frac{V^2}{R_{\text{合}}}\) で計算できる。
  • 問題で示されている図bの回路構成を正しく解釈し、合成抵抗を計算する。

具体的な解説と立式
この問題の指示(図bの回路図)に従い、回路全体の合成抵抗\(R_{\text{合}}\)を求めます。図bは、「\(R_1\)と\(R_2\)の並列接続部分」と「\(R\)と\(R_3\)の並列接続部分」が、直列に接続されていると解釈できます。
1. \(R_1, R_2\)の並列合成抵抗 \(R_{12}\) の計算:
$$ R_{12} = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2} $$
2. \(R, R_3\)の並列合成抵抗 \(R_{R3}\) の計算 (\(R=30\Omega\)):
$$ R_{R3} = \frac{R R_3}{R + R_3} $$
3. 全体の合成抵抗 \(R_{\text{合}}\) の計算:
これら2つの部分が直列なので、単純に足し合わせます。
$$ R_{\text{合}} = R_{12} + R_{R3} $$
4. 全体の消費電力 \(P\) の計算:
電源電圧は \(E_1 = 24 \text{ V}\) なので、消費電力\(P\)は以下の式で計算できます。
$$ P = \frac{E_1^2}{R_{\text{合}}} $$

使用した物理公式

  • 抵抗の並列合成 (\(R = \displaystyle\frac{R_a R_b}{R_a + R_b}\))
  • 抵抗の直列合成 (\(R = R_a + R_b\))
  • 消費電力の公式 (\(P = \displaystyle\frac{V^2}{R}\))
計算過程

各値を代入して計算します。
1. \(R_{12}\)の計算:
$$ R_{12} = \frac{100 \times 25}{100 + 25} = \frac{2500}{125} = 20 \text{ [Ω]} $$
2. \(R_{R3}\)の計算:
$$ R_{R3} = \frac{30 \times 60}{30 + 60} = \frac{1800}{90} = 20 \text{ [Ω]} $$
3. \(R_{\text{合}}\)の計算:
$$ R_{\text{合}} = 20 + 20 = 40 \text{ [Ω]} $$
4. \(P\)の計算:
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{24^2}{40} \\[2.0ex]
&= \frac{576}{40} = \frac{144}{10} = 14.4 \text{ [W]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると \(14 \text{ W}\) となります。

この設問の平易な説明

回路全体の消費電力を知るには、まず回路全体が電源から見てどれくらいの「抵抗の大きさ」に見えるか、つまり「合成抵抗」を計算します。この問題で与えられた図bのモデルでは、まず左側の2つの抵抗を並列として1つにまとめ、右側の2つの抵抗も並列として1つにまとめます。そして、その2つのまとまりを直列として足し合わせることで、全体の合成抵抗を求めます。最後に、電力の公式に電源の電圧とこの合成抵抗を代入すれば、全体の消費電力が計算できます。

結論と吟味

回路全体の消費電力は \(14 \text{ W}\) です。問題の特殊な設定に従って合成抵抗を計算し、電力公式を適用しました。

解答 (2)(b) \(14 \text{ W}\)

問(2)(c)

思考の道筋とポイント
\(R=30 \, \Omega\) のとき、ブリッジは平衡していません。そのため、電流計に電流が流れます。このような複雑な回路の各部分を流れる電流を求めるには、キルヒホッフの法則を用いて連立方程式を立てて解くのが最も基本的で確実な方法です。
この設問における重要なポイント

  • 未知の電流を文字で設定し、回路に流れるすべての電流を表現する。
  • 独立な閉回路(ループ)を3つ見つけ、それぞれについてキルヒホッフの第2法則(電圧則)の式を立てる。
  • 得られた連立方程式を解いて、目的の電流を求める。

具体的な解説と立式
図cを参考に、電流を以下のように設定します。

  • \(R_1\)を流れる電流: \(i_1\)
  • \(R_2\)を流れる電流: \(i_2\)
  • 電流計を上から下に流れる電流: \(i\)

キルヒホッフの第1法則(電流則)より、点Pと点Sでの電流の関係から、

  • \(R\)を流れる電流: \(i_1 + i\)
  • \(R_3\)を流れる電流: \(i_2 – i\)

次に、3つの独立な閉回路を選び、キルヒホッフの第2法則(電圧則)を適用します。
1. 左上のループ (\(E_1, R_1, R\)):
$$ E_1 = R_1 i_1 + R(i_1 + i) $$
$$ 24 = 100 i_1 + 30(i_1 + i) \quad \cdots ① $$
2. 左下のループ (\(R_1, R_2\)とそれらを結ぶ導線):
P点とS点の上流側(電源のプラス極側)の電位は等しいので、\(R_1\)での電圧降下と\(R_2\)での電圧降下は等しくなります。
$$ R_1 i_1 = R_2 i_2 $$
$$ 100 i_1 = 25 i_2 \quad \cdots ② $$
3. 右のループ (電流計, \(R, R_3\)):
電流計には内部抵抗がないので電圧降下は0です。このループを時計回りにたどると、
$$ R(i_1 + i) – R_3(i_2 – i) = 0 $$
$$ 30(i_1 + i) – 60(i_2 – i) = 0 \quad \cdots ③ $$
これら3つの連立方程式を解いて、電流\(i\)を求めます。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則)
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
計算過程

まず、②式と③式を整理して、\(i_1\)と\(i_2\)の関係を\(i\)で表します。
②式より:
$$ i_2 = \frac{100}{25} i_1 = 4i_1 \quad \cdots ②’ $$
③式を整理:
$$
\begin{aligned}
30(i_1 + i) &= 60(i_2 – i) \\[2.0ex]
i_1 + i &= 2(i_2 – i) \\[2.0ex]
i_1 + 3i &= 2i_2 \quad \cdots ③’
\end{aligned}
$$
②’を③’に代入:
$$
\begin{aligned}
i_1 + 3i &= 2(4i_1) = 8i_1 \\[2.0ex]
3i &= 7i_1 \\[2.0ex]
i_1 &= \frac{3}{7}i
\end{aligned}
$$
最後に、この\(i_1\)を①式に代入します。
①式を整理:
$$ 24 = 100i_1 + 30i_1 + 30i = 130i_1 + 30i $$
\(i_1 = \frac{3}{7}i\) を代入:
$$
\begin{aligned}
24 &= 130 \left( \frac{3}{7}i \right) + 30i \\[2.0ex]
24 &= \frac{390}{7}i + \frac{210}{7}i \\[2.0ex]
24 &= \frac{600}{7}i \\[2.0ex]
i &= \frac{24 \times 7}{600} = \frac{168}{600} = \frac{28}{100} = 0.28 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路が複雑なときの万能ツールが「キルヒホッフの法則」です。回路の中を流れる未知の電流をいくつか文字で置き、回路をいくつかの周回コースに分けて「電圧の上がり下がりの合計はゼロ」というルールで式を立てます。あとは、根気よく連立方程式を解けば、必ず答えにたどり着けます。

結論と吟味

主たる解法であるキルヒホッフの法則により、電流計を流れる電流は \(0.28 \text{ A}\) となりました。計算は妥当です。

別解: 電流分配のテクニックを用いる解法

思考の道筋とポイント
この解法は、ブリッジ回路の枝電流を求めるための特殊な計算テクニックです。元の回路とは異なる計算用の回路(図d)を考え、そこで求めた2つの電流の差から答えを導きます。
この設問における重要なポイント

  • 回路全体の合成抵抗を求め、電源から流れ出る全電流を計算する。
  • 全電流が、左右の並列部分にそれぞれ抵抗の逆比で分配されると考える。
  • 左右の枝に流れる電流の差が、中央の電流計を流れる電流に相当する。

具体的な解説と立式
この解法では、図dで示されるような、計算上の中間的な回路を考えます。
1. 全電流の計算: まず、図dの回路全体の合成抵抗\(R_{\text{合}}\)を求め、電源から流れ出る全電流\(I\)を計算します。この合成抵抗は(b)で計算したもので、\(R_{\text{合}} = 40 \, \Omega\)です。
$$ I = \frac{E_1}{R_{\text{合}}} $$
2. \(I_1\)の計算: 全電流\(I\)が\(R_1\)と\(R_2\)の並列部分に分配されます。\(R_1\)に流れる電流\(I_1\)は、電流分配の法則より、
$$ I_1 = I \times \frac{R_2}{R_1 + R_2} $$
3. \(I_R\)の計算: 同様に、全電流\(I\)が\(R\)と\(R_3\)の並列部分に分配されます。\(R\)に流れる電流\(I_R\)は、
$$ I_R = I \times \frac{R_3}{R + R_3} $$
4. 電流計の電流\(i\)の計算: 最後に、これら2つの電流の差を取ることで、元のブリッジ回路の電流計を流れる電流\(i\)が求められます。
$$ i = I_R – I_1 $$

使用した物理公式

  • 合成抵抗の計算
  • 電流分配の法則
計算過程

1. 全電流\(I\)の計算:
$$ I = \frac{24}{40} = 0.60 \text{ [A]} $$
2. \(I_1\)の計算:
$$
\begin{aligned}
I_1 &= 0.60 \times \frac{25}{100 + 25} \\[2.0ex]
&= 0.60 \times \frac{25}{125} = 0.60 \times \frac{1}{5} = 0.12 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
3. \(I_R\)の計算:
$$
\begin{aligned}
I_R &= 0.60 \times \frac{60}{30 + 60} \\[2.0ex]
&= 0.60 \times \frac{60}{90} = 0.60 \times \frac{2}{3} = 0.40 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
4. 電流計の電流\(i\)の計算:
$$
\begin{aligned}
i &= I_R – I_1 \\[2.0ex]
&= 0.40 – 0.12 = 0.28 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ブリッジ回路の真ん中を流れる電流を求めるための、少し不思議な「裏ワザ」があります。元の回路とは違う、計算しやすい別の回路を考えます。そこで2つの枝に流れる電流をそれぞれ計算し、その「差」を取ると、なぜか元の回路の真ん中を流れる電流と同じ値になります。これは便利な計算テクニックとして知られています。

結論と吟味

別解でも \(0.28 \text{ A}\) という同じ結果が得られました。キルヒホッフの法則で連立方程式を解くよりもはるかに計算が簡単で、検算としても非常に有効です。

解答 (2)(c) \(0.28 \text{ A}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • キルヒホッフの法則(電流則・電圧則):
    • 核心: どんなに複雑な直流回路でも、未知の電流や電圧を解析できる最も普遍的で強力な法則です。(1)(c)や(2)(c)のような、単純な公式では解けない非平衡状態の回路を解くための必須ツールです。
    • 理解のポイント: 第1法則は「交差点に流れ込む電流と流れ出す電流の和は等しい」(電荷保存則)、第2法則は「回路を一周したときの電圧の上がり下がりの合計はゼロ」(エネルギー保存則)という、物理学の基本法則に基づいています。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件:
    • 核心: (2)(a)のように、ブリッジの中央にある電流計に電流が流れない(=2点間の電位が等しい)という特別な状況で成り立つ、抵抗の比に関する便利な公式(\(R_1 R_3 = R_2 R\))です。
    • 理解のポイント: これはキルヒホッフの法則から導かれる特殊なケースです。この条件を知っていれば、面倒な連立方程式を解かずに一瞬で答えを出すことができます。
  • 電位の概念:
    • 核心: 回路の各点が持つ電気的な「高さ」を表すのが電位です。(1)では、電池\(E_2\)が点Pの電位を基準点Oに対して\(+8.0 \text{ V}\)に固定する役割を果たしており、これが解析の出発点となります。
    • 理解のポイント: 電圧(電位差)は2点間の「高さの差」です。基準点(アースなど、通常\(0 \text{ V}\)とする)を決めると、各点の電位が定まり、回路の理解が格段に深まります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 内部抵抗を持つ電池を含む回路: 電池の端子電圧が起電力と異なる(\(V = E – rI\))場合を考慮する問題。本質的にはキルヒホッフの法則で解けます。
    • コンデンサーを含む直流回路(定常状態): 充電が完了した定常状態では、コンデンサー部分は電流が流れない「断線」とみなして回路を解析します。
    • 対称性のある回路: 立方体の各辺に抵抗を配置したような対称性の高い回路では、電位が等しくなる点を見つけて回路を単純化するテクニックが有効です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の構造分析: まず、回路図をよく見て、単純な直列・並列か、ブリッジ回路か、それともより複雑な網目状回路かを見極めます。
    2. 「電流ゼロ」の条件を見逃さない: 「電流計に電流が流れない」「検流計が0を指す」といった記述は、2点間の電位が等しいことを示す最大のヒントです。これにより、ブリッジの平衡条件を使えたり、複雑な回路を分割して考えられたりします。
    3. 解法の戦略的選択:
      • 単純な回路 → オームの法則、合成抵抗、電圧・電流分配則で素早く解く。
      • ブリッジ平衡状態 → 平衡条件式 (\(R_1/R_2 = R/R_3\)) を使い、計算をショートカットする。
      • 複雑な回路(非平衡ブリッジなど) → 迷わず「キルヒホッフの法則」を使う。これが最終手段であり、最も信頼性の高い正攻法です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • キルヒホッフの法則での符号ミス:
    • 誤解: ループを一周する際に、電圧降下(\(-IR\))と電圧上昇(\(+E\))の符号を混同してしまう。
    • 対策: ①ループをたどる向き(例:時計回り)を最初に決める。②その向きに沿って、「抵抗を電流と同じ向きに通れば電位は下がる(\(-IR\))」「電池を負極から正極へ通れば電位は上がる(\(+E\))」のように、機械的に符号を決定するルールを徹底しましょう。
  • ブリッジ平衡条件の乱用:
    • 誤解: ブリッジ回路であれば、いつでも平衡条件式が使えると勘違いする。
    • 対策: 平衡条件は、あくまで「中央の検流計に電流が流れない」という特別な場合にのみ使えるショートカット公式です。(2)(c)のような非平衡状態では、必ずキルヒホッフの法則に立ち返る必要があります。
  • 電位と電圧(電位差)の混同:
    • 誤解: (1)(a)で、点Pの電位(\(8.0 \text{ V}\))を、抵抗\(R_1\)にかかる電圧そのものだと早合点してしまう(今回はたまたま一致したが、常にそうとは限らない)。
    • 対策: 「電位」は基準点からの電気的な高さ、「電圧」は2点間の高さの差、と明確に区別しましょう。回路図に基準点(例:アース、\(0 \text{ V}\))を書き込み、各点の電位を考える習慣をつけると、この種の混同を防げます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • ホイートストンブリッジの平衡条件:
    • 選定理由: (2)(a)で「電流計に電流が流れない」という、この公式が適用できる典型的な状況が与えられていたため。キルヒホッフの法則で解くよりも圧倒的に速く、確実です。
    • 適用根拠: この条件は、ブリッジ中央の2点の電位が等しくなることから導出されます。キルヒホッフの法則を一般的に解いた結果の特殊なケースです。
  • キルヒホッフの法則:
    • 選定理由: (1)(c)や(2)(c)のように、回路が複雑で単純な公式が使えない場合。特にブリッジが平衡していない状況では、これが唯一の正攻法となります。
    • 適用根拠: 電荷保存則(第1法則)とエネルギー保存則(第2法則)という、電気回路における最も基本的な物理法則に基づいているため、どんな回路にも普遍的に適用できます。
  • 電圧・電流分配の公式:
    • 選定理由: (1)(b)の別解や(2)(c)の別解のように、直列・並列部分の電圧や電流を素早く計算するためのショートカットとして使用します。
    • 適用根拠: これらはオームの法則とキルヒホッフの法則から導かれる便利な関係式であり、計算を効率化します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の確認:
    • 特に注意すべき点: 抵抗は[\(\Omega\)]、電圧は[\(V\)]、電流は[\(A\)]。基本的なことですが、計算の各段階で意識することが大切です。
    • 日頃の練習: 計算結果が出たら、単位が正しいかを確認する癖をつける。
  • 連立方程式の丁寧な処理:
    • 特に注意すべき点: (2)(c)のような3元連立方程式は計算が煩雑になりがちです。式を整理する際は、係数を簡単な整数比にしておくと計算ミスが減ります(例:\(100 i_1 = 25 i_2 \rightarrow 4i_1 = i_2\))。
    • 日頃の練習: まず1つの文字を消去して2元連立方程式に帰着させるなど、見通しを立ててから計算を始める。途中式を省略せず、丁寧に書く。
  • 検算の習慣:
    • 特に注意すべき点: (2)(c)で求めた電流値を、方程式を立てる際に使わなかった別のループ(例:\(E_1, R_2, R_3\)を含む外周ループ)に代入してみて、電圧則が成り立つか確認する。
    • 日頃の練習: (1)(b)や(2)(c)のように、別解がある場合は両方で計算してみて、答えが一致するか確かめるのが最も強力な検算です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2)(a)と(2)(c)の比較: ブリッジが平衡するときの抵抗値は \(R=240 \, \Omega\) でした。設問(c)では \(R=30 \, \Omega\) と、平衡点から大きくずれています。そのため、電流計に比較的大きな電流(\(0.28\text{A}\))が流れるという結果は、物理的に妥当だと考えられます。
    • (2)(c)の電流の向き: \(R=30 \, \Omega\) は平衡条件の \(R=240 \, \Omega\) より小さいです。これはブリッジの右腕の抵抗が相対的に小さくなったことを意味し、右腕側(\(R, R_3\)側)に電流がより多く流れようとします。結果として、別解で計算したように \(I_R(0.40\text{A}) > I_1(0.12\text{A})\) となり、電流計には上から下に電流が流れる(\(i>0\))という結果は、物理的な直感と一致します。
  • 極端な場合を考えてみる:
    • もし(2)(c)で \(R=0 \, \Omega\) だったら? 電流計の上側の点は電源のプラス極に直結されます。下側の点の電位は \(24 \times \displaystyle\frac{25}{100+25} = 4.8\text{V}\)。上側は\(24\text{V}\)なので、大きな電位差が生じ、下から上へ大きな電流が流れるはずです。
    • もし \(R\) が非常に大きかったら(\(R \rightarrow \infty\))? \(R\)の枝は断線とみなせます。電流計には\(R_3\)を流れる電流がそのまま逆流してくる形になります。このように極端なケースを考えることで、回路の挙動に対する理解を深めることができます。
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問題118 (宮城教育大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、電池の内部抵抗という、より現実的な電池のモデルについて考察するものです。電池に可変抵抗を接続し、流れる電流\(I\)と端子電圧\(V\)の関係をグラフから読み解き、内部抵抗の概念、関連する物理法則、そして外部抵抗で消費される電力が最大になる条件などを段階的に分析していきます。

与えられた条件
  • 測定対象: 内部抵抗\(r\)を持つ起電力\(E\)の電池。
  • 実験装置: 可変抵抗\(R\)、電流計、電圧計。
  • 実験結果: 電流\(I\)と端子電圧\(V\)の関係を示すV-Iグラフ。
  • 仮定: 電流計の内部抵抗は十分に小さく、電圧計の内部抵抗は十分に大きい(理想的な測定器)。
問われていること
  • (1)(a) 電流と電圧を測定するための正しい回路図。
  • (1)(b) 測定で可変抵抗を使用する理由。
  • (2)(a) 内部抵抗の接続方法とその理由。
  • (2)(b) 起電力\(E\)、端子電圧\(V\)、電流\(I\)、内部抵抗\(r\)の間の関係式。
  • (2)(c) 内部抵抗がより大きい電池を用いた場合のV-Iグラフの変化。
  • (2)(d) 内部抵抗\(r\)を、測定可能な量を含む式で表す。
  • (2)(e) 内部抵抗で消費される電力\(P_r\)の式と、その消費形態。
  • (2)(f) 外部の可変抵抗で消費される電力\(P_R\)の式。
  • (2)(g) \(P_R\)と\(R\)の関係を示すグラフの概形。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題のテーマは「電池の内部抵抗と消費電力」です。理想的な電池からのステップアップであり、現実の回路を理解する上で非常に重要な概念を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: 回路全体(\(E = (R+r)I\))と、回路の外部(\(V=RI\))の両方に適用する視点が重要です。
  2. 端子電圧の式: 電池の性能を特徴づける最も重要な式 \(V = E – rI\) の物理的意味を理解することが核心です。
  3. 電力の公式: \(P = IV = I^2R = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) を、内部抵抗と外部抵抗のそれぞれについて正しく使い分ける能力が問われます。
  4. 相加・相乗平均の関係: 外部抵抗で消費される電力の最大値を求める際に有効な数学的ツールです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、電流計は直列に、電圧計は並列に接続するという測定器の基本原則を思い出します。
  2. (2)(a)から(c)にかけては、与えられたV-Iグラフの縦軸切片が起電力\(E\)、傾きの絶対値が内部抵抗\(r\)に対応することを、数式と物理的意味の両面から理解します。
  3. (2)(d)から(f)では、回路全体にオームの法則を適用して得られる関係式を、各設問の指示(どの文字を含み、どの文字を含まないか)に従って的確に変形していきます。
  4. (2)(g)では、(f)で求めた消費電力の式を\(R\)の関数とみなし、数学的な手法を用いて最大値を求め、グラフの概形を決定します。

問(1)(a)

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