「良問の風」攻略ガイド(41〜45問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題41 (東京電機大+長崎大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解1: 慣性系(地上)からの運動方程式による解法
      • 模範解答が回転座標系(おもりと共に回る観測者)からの力のつりあいで解くのに対し、別解では地上から見た等速円運動の運動方程式を立てて解きます。
    • 設問(1)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 円運動の加速度を位置ベクトルの微分から導出し、運動方程式を立てて解きます。公式 \(a = r\omega^2\) を暗記していなくても導けることを示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 慣性系の解法: 「遠心力」という見かけの力を導入せず、実際に働いている力(張力、垂直抗力、重力)のみで現象を記述するため、向心力の正体を正しく理解するのに役立ちます。
    • 微積分の解法: 円運動の加速度が中心を向くことやその大きさが、位置ベクトルの2階微分から数学的に必然として導かれることを理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「円すい面上での等速円運動」です。円運動の向心力、力の分解、そして物体が面から離れる条件の理解が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 等速円運動の運動方程式: \(m r\omega^2 = F\) (\(F\) は向心力)。
  2. 遠心力: 回転座標系で観測する場合に現れる慣性力。大きさは \(m r\omega^2\)、向きは中心から遠ざかる方向。
  3. 力の分解: 力を座標軸に沿って分解します。水平・鉛直方向、あるいは斜面方向・斜面垂直方向など、目的に応じて使い分けます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、おもりが円すい面上を等速円運動しています。働く力(重力、張力、垂直抗力)を分解し、運動方程式(またはつりあいの式)を立てて連立させます。
  2. (2)では、角速度を上げていくと遠心力が強くなり、おもりが浮き上がろうとします。「面から離れる」=「垂直抗力が \(0\) になる」という条件を用いて限界の角速度を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
おもりは円すい面上を一定の角速度 \(\omega\) で回転しています。
まずは円運動の半径 \(r\) を幾何学的に求めます。
次に、おもりに働く力を図示し、適切な方向に分解して式を立てます。
模範解答では水平・鉛直方向に分解していますが、別解として斜面方向・斜面垂直方向に分解する方法もあります。ここでは模範解答に沿って水平・鉛直方向で考え、別解で斜面方向の分解も紹介します。

この設問における重要なポイント

  • 円運動の半径: 糸の長さ \(l\) と頂角の半分 \(\theta\) より、半径 \(r = l \sin \theta\) です。
  • 働く力:
    • 重力 \(mg\) (鉛直下向き)
    • 張力 \(T\) (糸に沿って斜め上向き)
    • 垂直抗力 \(N\) (面に垂直、斜め上向き)
  • 力の分解: 張力 \(T\) と垂直抗力 \(N\) を水平成分(向心力となる)と鉛直成分(重力とつりあう)に分解します。

具体的な解説と立式
おもりと共に動く観測者(回転座標系)から見て、力のつりあいの式を立てます。
働く力は以下の通りです。

  • 重力: \(mg\) (鉛直下向き)
  • 張力: \(T\) (斜め上向き、鉛直軸と角度 \(\theta\))
    • 鉛直成分: \(T \cos \theta\) (上向き)
    • 水平成分: \(T \sin \theta\) (内向き)
  • 垂直抗力: \(N\) (斜め上向き、水平面と角度 \(\theta\))
    • 鉛直成分: \(N \sin \theta\) (上向き)
    • 水平成分: \(N \cos \theta\) (外向き)
  • 遠心力: \(m r \omega^2\) (水平外向き)

鉛直方向のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
T \cos \theta + N \sin \theta &= mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

水平方向のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{内向きの力}) &= (\text{外向きの力}) \\[2.0ex]
T \sin \theta &= N \cos \theta + m r \omega^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

ここで、円運動の半径 \(r\) は、
$$
\begin{aligned}
r &= l \sin \theta \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力の分解: \(F_{\text{鉛直}} = F \cos \theta, F_{\text{水平}} = F \sin \theta\)
  • 遠心力: \(F = m r \omega^2\)
計算過程

式①、②、③を連立して \(T\) と \(N\) を求めます。
式②に \(r = l \sin \theta\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
T \sin \theta – N \cos \theta &= m (l \sin \theta) \omega^2 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$

\(T\) を求めるために \(N\) を消去します。
① \(\times \cos \theta\) + ②’ \(\times \sin \theta\):
$$
\begin{aligned}
(T \cos \theta + N \sin \theta) \cos \theta + (T \sin \theta – N \cos \theta) \sin \theta &= mg \cos \theta + m l \omega^2 \sin^2 \theta \\[2.0ex]
T (\cos^2 \theta + \sin^2 \theta) + N (\sin \theta \cos \theta – \cos \theta \sin \theta) &= m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta) \\[2.0ex]
T \cdot 1 + N \cdot 0 &= m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta) \\[2.0ex]
T &= m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)
\end{aligned}
$$

\(N\) を求めるために \(T\) を消去します。
① \(\times \sin \theta\) – ②’ \(\times \cos \theta\):
$$
\begin{aligned}
(T \cos \theta + N \sin \theta) \sin \theta – (T \sin \theta – N \cos \theta) \cos \theta &= mg \sin \theta – m l \omega^2 \sin \theta \cos \theta \\[2.0ex]
T (\cos \theta \sin \theta – \sin \theta \cos \theta) + N (\sin^2 \theta + \cos^2 \theta) &= m \sin \theta (g – l \omega^2 \cos \theta) \\[2.0ex]
T \cdot 0 + N \cdot 1 &= m \sin \theta (g – l \omega^2 \cos \theta) \\[2.0ex]
N &= m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

おもりは糸に引っ張られながら、同時に壁(円すい面)にも支えられて回っています。
糸の張力と壁からの垂直抗力が協力して、重力を支えつつ、円運動に必要な向心力を生み出しています。
計算の結果、回転が速くなる(\(\omega\) が大きくなる)ほど、張力 \(T\) は大きくなり、垂直抗力 \(N\) は小さくなることがわかります。これは、速く回ると遠心力で外に引っ張られ、壁から浮きそうになる(壁を押さなくなる)ためです。

結論と吟味

答えは
\(T = m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)\)
\(N = m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta\)
です。
\(\omega=0\)(静止)のとき、\(T = mg \cos \theta, N = mg \sin \theta\) となり、斜面上の物体のつりあいと一致します。
また、\(\omega\) が大きくなると \(N\) が減少し、ある値で \(0\) になることが予想されます。

解答 (1) \(T = m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)\), \(N = m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta\)
別解1: 慣性系(地上)からの運動方程式による解法

思考の道筋とポイント
地上に静止している観測者から見ると、おもりは水平面内で等速円運動をしています。
鉛直方向には動いていないので力がつりあっています。
水平方向には中心向きの加速度 \(r\omega^2\) を持っています。

この設問における重要なポイント

  • 座標系: 慣性系(地上)で考えます。
  • 加速度: 水平方向(中心向き)に \(a = r\omega^2\) です。
  • : 水平方向には張力の水平成分 \(T \sin \theta\) と垂直抗力の水平成分 \(N \cos \theta\) が働いています。

具体的な解説と立式
鉛直方向のつりあい(上向き正):
$$
\begin{aligned}
T \cos \theta + N \sin \theta – mg &= 0 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
水平方向(中心向き正)の運動方程式:
$$
\begin{aligned}
m (l \sin \theta) \omega^2 &= T \sin \theta – N \cos \theta \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等速円運動の加速度: \(a = r\omega^2\)
計算過程

式④、⑤は、遠心力を用いた式①、②’と実質的に同じです(項を移項しただけ)。
したがって、同様に連立方程式を解くことで同じ結果が得られます。
① \(\times \cos \theta\) + ⑤ \(\times \sin \theta\):
$$
\begin{aligned}
(T \cos \theta + N \sin \theta) \cos \theta + (T \sin \theta – N \cos \theta) \sin \theta &= mg \cos \theta + m l \omega^2 \sin^2 \theta \\[2.0ex]
T &= m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)
\end{aligned}
$$
① \(\times \sin \theta\) – ⑤ \(\times \cos \theta\):
$$
\begin{aligned}
(T \cos \theta + N \sin \theta) \sin \theta – (T \sin \theta – N \cos \theta) \cos \theta &= mg \sin \theta – m l \omega^2 \sin \theta \cos \theta \\[2.0ex]
N &= m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

地上から見ると、おもりは円運動をしています。円運動をするためには、中心に向かって引っ張る力(向心力)が必要です。
この向心力の役割を果たしているのが、糸の張力の水平成分と、壁が押す垂直抗力の水平成分の合力です。
「質量×加速度=力」という運動方程式に当てはめて計算しました。

結論と吟味

遠心力を用いた場合と同じ結果が得られました。
慣性系で考えることで、向心力が張力と垂直抗力の水平成分の合力であることが明確になります。

解答 (1) \(T = m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)\), \(N = m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta\)
別解2: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
円運動の加速度公式 \(a = r\omega^2\) を既知とせず、位置ベクトルの時間微分から導出します。
円運動の中心を原点とし、水平面内に \(xy\) 軸をとります。

この設問における重要なポイント

  • 位置ベクトルの定義: \(\vec{r}(t) = (r \cos \omega t, r \sin \omega t)\) と置きます。
  • 微分の実行: 速度 \(\vec{v} = \frac{d\vec{r}}{dt}\)、加速度 \(\vec{a} = \frac{d\vec{v}}{dt}\) を計算します。
  • 運動方程式への適用: 導出した加速度を用いて運動方程式を立てます。

具体的な解説と立式
時刻 \(t\) におけるおもりの位置ベクトル \(\vec{r}(t)\) は、半径 \(r = l \sin \theta\)、角速度 \(\omega\) を用いて以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\vec{r}(t) &= (r \cos \omega t, r \sin \omega t)
\end{aligned}
$$
速度ベクトル \(\vec{v}(t)\):
$$
\begin{aligned}
\vec{v}(t) &= \frac{d\vec{r}}{dt} \\[2.0ex]
&= (-r\omega \sin \omega t, r\omega \cos \omega t)
\end{aligned}
$$
加速度ベクトル \(\vec{a}(t)\):
$$
\begin{aligned}
\vec{a}(t) &= \frac{d\vec{v}}{dt} \\[2.0ex]
&= (-r\omega^2 \cos \omega t, -r\omega^2 \sin \omega t) \\[2.0ex]
&= -\omega^2 \vec{r}(t)
\end{aligned}
$$
加速度の大きさ \(a\) は \(r\omega^2\) であり、向きは中心向き(\(-\vec{r}\) 方向)です。

運動方程式(中心向き成分):
$$
\begin{aligned}
ma &= T \sin \theta – N \cos \theta \\[2.0ex]
m (l \sin \theta) \omega^2 &= T \sin \theta – N \cos \theta
\end{aligned}
$$
鉛直方向のつりあい:
$$
\begin{aligned}
T \cos \theta + N \sin \theta &= mg
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 速度の定義: \(\vec{v} = \frac{d\vec{r}}{dt}\)
  • 加速度の定義: \(\vec{a} = \frac{d\vec{v}}{dt}\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

これらを連立して解くと、同様の結果が得られます。
$$
\begin{aligned}
T &= m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta) \\[2.0ex]
N &= m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「位置」を時間で微分すると「速度」、「速度」を微分すると「加速度」になるという定義に従って計算すると、円運動の加速度が自然に導かれます。
結果として、加速度は常に中心を向き、大きさは \(r\omega^2\) になることが数学的に証明されました。これを使えば、公式を忘れても問題を解くことができます。

結論と吟味

微積分を用いても同じ結果が得られました。
円運動の加速度が中心を向くという性質が、数式から自然に導かれることが確認できました。

解答 (1) \(T = m (g \cos \theta + l \omega^2 \sin^2 \theta)\), \(N = m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta\)

問(2)

思考の道筋とポイント
角速度 \(\omega\) を大きくしていくと、遠心力が大きくなり、おもりは外側に引っ張られます。
その結果、おもりは円すい面から浮き上がろうとします。
「面から離れる」瞬間とは、面がおもりを押す力、すなわち垂直抗力 \(N\) が \(0\) になる瞬間です。

この設問における重要なポイント

  • 離れる条件: \(N = 0\) となる最小の \(\omega\) を求めます。
  • 式の利用: 問(1)で求めた \(N\) の式を利用します。

具体的な解説と立式
問(1)の結果より、垂直抗力 \(N\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
N &= m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta
\end{aligned}
$$
面から離れるためには \(N \le 0\) となればよいですが、離れる瞬間の最小の角速度を求めるので、\(N=0\) と置きます。
$$
\begin{aligned}
m (g – l \omega^2 \cos \theta) \sin \theta &= 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 垂直抗力の条件: \(N \ge 0\) (接触している間)
計算過程

\(m \neq 0, \sin \theta \neq 0\) なので、括弧の中身が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
g – l \omega^2 \cos \theta &= 0 \\[2.0ex]
l \omega^2 \cos \theta &= g \\[2.0ex]
\omega^2 &= \frac{g}{l \cos \theta}
\end{aligned}
$$
\(\omega > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
\omega &= \sqrt{\frac{g}{l \cos \theta}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回転を速くすると、遠心力でおもりが外に振られます。
あるスピードを超えると、遠心力が強すぎて、重力だけでは壁に押し付けていられなくなり、おもりが壁から浮いてしまいます。
そのギリギリのスピード(角速度)を計算しました。

結論と吟味

答えは \(\omega = \sqrt{\frac{g}{l \cos \theta}}\) です。
この式は、長さ \(l\) の糸で吊るされた円錐振り子の角速度の式と全く同じです。
つまり、面から離れた瞬間、おもりは円すい面の影響を受けない単なる円錐振り子として運動することになります。これは物理的に非常に納得のいく結果です。

解答 (2) \(\displaystyle \sqrt{\frac{g}{l \cos \theta}}\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 等速円運動の運動方程式と向心力
    • 核心: 等速円運動をする物体には、常に円の中心に向かう力(向心力)が必要です。この向心力は、張力、垂直抗力、重力などの「実在する力」の合力によって供給されます。
    • 理解のポイント:
      • 運動方程式: \(m r\omega^2 = F\) (\(F\) は向心力)。
      • 向心力の正体: 本問では、糸の張力の水平成分 \(T \sin \theta\) と、円すい面からの垂直抗力の水平成分 \(N \cos \theta\) の合力が向心力の役割を果たしています(\(N\) は外向きなのでマイナス)。
  • 遠心力(慣性力)の導入と静力学的な解釈
    • 核心: 物体と共に回転する観測者(回転座標系)から見ると、物体には中心から遠ざかる向きに「遠心力」という慣性力が働いているように見えます。この遠心力を導入することで、円運動の問題を「力のつりあい」の問題として扱うことができます。
    • 理解のポイント:
      • 遠心力の大きさ: \(m r\omega^2\)。
      • 力のつりあい: (向心力となる実在する力)=(遠心力)。この式は、慣性系での運動方程式 \(ma=F\) と数学的に同等です。
  • 面から離れる条件
    • 核心: 物体が面から離れる瞬間、面から受ける垂直抗力 \(N\) が \(0\) になります。
    • 理解のポイント:
      • 接触の条件: 物体が面に接触している間は \(N \ge 0\) です。
      • 離れる瞬間: \(N=0\) となる条件を求めることで、限界の角速度や速さを特定できます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題のパターン:
    • 円錐振り子: 垂直抗力がない(\(N=0\))バージョン。本問の(2)の結果と一致します。
    • バンクのあるカーブ: 張力がない(\(T=0\))バージョン。車がカーブを曲がる問題など。
    • 半球面上を滑り落ちる物体: 垂直抗力が \(0\) になる瞬間に面から離れるという点で共通しています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「円運動」: まず中心方向を確認し、半径 \(r\) を幾何学的に求めます(\(r = l \sin \theta\))。
    2. 「力の分解」: 力を「円運動の面(水平面)」と「それに垂直な方向(鉛直方向)」に分解するのが定石です。斜面方向への分解も可能ですが、加速度の方向(水平)と一致しないため、運動方程式を立てる際には注意が必要です。
    3. 「面から離れる」: 「垂直抗力 \(N=0\)」という条件式を立てる合図です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 半径の取り違え:
    • 誤解: 円運動の半径 \(r\) を、糸の長さ \(l\) と混同してしまう。
    • 対策: 必ず図を描き、回転軸から物体までの水平距離が半径であることを確認します。\(r = l \sin \theta\) のような幾何学的関係式を最初に書き出しましょう。
  • 力の分解方向の選択ミス:
    • 誤解: 斜面上の物体だからといって、反射的に「斜面方向」と「斜面垂直方向」に分解してしまう。
    • 対策: 円運動の加速度は「水平方向(中心向き)」です。加速度の方向に軸をとるのが運動方程式の鉄則なので、「水平」と「鉛直」に分解するのがベストです。ただし、力のつりあい(遠心力導入)で解く場合は、斜面方向分解でも解けます(別解参照)。
  • 垂直抗力の向き:
    • 誤解: 垂直抗力が常に重力を支える(上向き)と思い込む。
    • 対策: 垂直抗力は常に「面に垂直」です。本問では斜め上向きですが、水平成分は「外向き」であることに注意が必要です。これが向心力を減らす(遠心力を助ける)働きをします。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)での公式選択(力のつりあい vs 運動方程式):
    • 選定理由: おもりと共に回る観測者から見れば、おもりは静止しています。静止しているなら「力のつりあい」が最も直感的で立てやすい式です。
    • 適用根拠: 遠心力を導入することで、動径方向の運動方程式 \(ma=F\) を、力のつりあい \(F + \text{遠心力} = 0\) に書き換えただけなので、物理的には等価です。
  • 問(2)での公式選択(垂直抗力の条件):
    • 選定理由: 「面から離れる」という現象を数式で表現する必要があります。
    • 適用根拠: 物体が面に接している限り、面は物体を押し返します(\(N > 0\))。離れる瞬間はその力が消える(\(N=0\))瞬間です。この条件を問(1)の結果に適用することで、未知数 \(\omega\) を特定できます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角関数の処理:
    • \(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) を利用して式を簡略化する場面が頻出します。連立方程式を解く際に、\(\sin \theta\) や \(\cos \theta\) を掛けて足し引きすることで、この恒等式を作り出すテクニックを身につけましょう。
  • 次元確認:
    • 張力 \(T\) や垂直抗力 \(N\) の答えは \([\text{力}]\) の次元(\(mg\) と同じ)になるはずです。式の中に \(ml\omega^2\)(力)と \(mg\)(力)が混在していても、係数が無次元(三角関数)ならOKです。
    • 角速度 \(\omega\) の答えは \([\text{T}]^{-1}\) です。\(\sqrt{g/l}\) は \(\sqrt{[\text{L}][\text{T}]^{-2} / [\text{L}]} = [\text{T}]^{-1}\) となり合っています。
  • 極限チェック:
    • \(\omega \to 0\) のとき、\(N \to mg \sin \theta\) となり、静止した斜面上の物体と同じになります。
    • \(\omega \to \infty\) のとき、\(N\) の式の括弧内が負になり、\(N < 0\) となります。これは面から離れていることを示唆しており、問(2)の現象と整合します。

問題42 (山口大+同志社大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 慣性系(地上)からの運動方程式による解法
      • 模範解答が回転座標系(小球と共に回る観測者)からの力のつりあいで解くのに対し、別解では地上から見た円運動の運動方程式を立てて解きます。
    • 設問(3)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • エネルギー保存則を運動方程式の積分から導出し、円運動の加速度を位置ベクトルの微分から導出することで、公式を前提とせずに解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 慣性系の解法: 「遠心力」という見かけの力を導入せず、実際に働いている力(重力、垂直抗力)のみで現象を記述するため、向心力の正体を正しく理解するのに役立ちます。
    • 微積分の解法: 力学的エネルギー保存則が運動方程式の空間積分から導かれること、および円運動の加速度が中心を向くことを数学的に確認でき、物理法則の体系的な理解を深めます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「鉛直面内の円運動」です。力学的エネルギー保存則と円運動の運動方程式(または遠心力を用いたつりあい)を組み合わせて解く、力学の典型的な重要問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 摩擦がないため、運動エネルギーと位置エネルギーの和は保存されます。
  2. 円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{r} = F\) (\(F\) は向心力)。
  3. 遠心力: 回転座標系で観測する場合に現れる慣性力。大きさは \(m \frac{v^2}{r}\)、向きは中心から遠ざかる方向。
  4. 面から離れる条件: 垂直抗力 \(N\) が \(0\) になる瞬間です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、高さ \(h\) から滑り降りたときの速さをエネルギー保存則で求めます。
  2. (2)では、水平面から円筒面に入る瞬間の力の変化(遠心力の発生)に着目します。
  3. (3)では、任意の角度 \(\theta\) での速さをエネルギー保存則で、垂直抗力を円運動の運動方程式(またはつりあい)で求めます。
  4. (4)(5)では、垂直抗力 \(N\) の式を用いて、最高点通過条件(\(N \ge 0\))や面から離れる条件(\(N=0\))を解析します。

問(1)

思考の道筋とポイント
小球は高さ \(h\) の位置から初速度 \(0\) で滑り降ります。
摩擦がないため、力学的エネルギー保存則が成立します。
水平面BCを基準(高さ \(0\))として式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: (初めの位置エネルギー)=(後の運動エネルギー)。

具体的な解説と立式
点A(高さ \(h\))と水平面BC上での力学的エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
mgh &= \frac{1}{2} m v_0^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(K + U = \text{一定}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= 2gh \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{2gh}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

高いところにある物体が持っているエネルギー(位置エネルギー)が、滑り降りることでスピードのエネルギー(運動エネルギー)に変わりました。

結論と吟味

答えは \(v_0 = \sqrt{2gh}\) です。
自由落下の速さと同じ式になり、妥当です。

解答 (1) \(\sqrt{2gh}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
点Cを通る「直前」と「直後」での垂直抗力の違いを考えます。

  • 直前: 水平面上を等速直線運動しています。鉛直方向の力はつりあっています。
  • 直後: 半径 \(r\) の円運動を開始します。中心方向(上向き)の加速度を持つため、上向きの合力(向心力)が必要です。あるいは、遠心力が下向きに加わると考えます。

この設問における重要なポイント

  • 直前の運動: 水平運動(鉛直加速度 \(0\))。
  • 直後の運動: 円運動(中心向き加速度 \(v_0^2/r\))。
  • 速さの連続性: 直前と直後で速さは \(v_0\) のまま変わりません。

具体的な解説と立式
直前(水平面上):
鉛直方向の力のつりあいより、
$$
\begin{aligned}
N_1 &= mg
\end{aligned}
$$

直後(円筒面上):
小球と共に動く観測者から見ると、下向きに遠心力 \(m \frac{v_0^2}{r}\) が働きます。
鉛直方向(半径方向)の力のつりあいより、
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
N_2 &= mg + m \frac{v_0^2}{r}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい
  • 遠心力: \(F = m \frac{v^2}{r}\)
計算過程

\(N_1\) はそのまま \(mg\) です。
\(N_2\) に \(v_0^2 = 2gh\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
N_2 &= mg + m \frac{2gh}{r} \\[2.0ex]
&= mg \left( 1 + \frac{2h}{r} \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

平らな道を走っているときは、地面は重さを支えるだけで済みます。
しかし、急に上り坂のカーブ(円筒面)に入ると、体は地面に押し付けられるように感じます(遠心力)。
地面(円筒面)は、重さに加えてこの押し付けられる力も支えなければならないので、垂直抗力が大きくなります。

結論と吟味

\(N_1 = mg\)、\(N_2 = mg \left( 1 + \frac{2h}{r} \right)\) です。
\(N_2 > N_1\) となっており、円運動に入った瞬間に床から受ける力が急増することがわかります。ジェットコースターの底で体が重く感じる現象と同じです。

解答 (2) \(N_1 = mg\), \(N_2 = mg \left( 1 + \frac{2h}{r} \right)\)

問(3)

思考の道筋とポイント
点P(角度 \(\theta\))での速さ \(v\) と垂直抗力 \(N\) を求めます。
速さはエネルギー保存則から、垂直抗力は円運動の運動方程式(またはつりあい)から求めます。

この設問における重要なポイント

  • 点Pの高さ: 図より、点Oの高さから \(r \cos \theta\) 下がった位置、あるいは点C(高さ0)から \(r – r \cos \theta\) 上がった位置です。基準をどこにとるかで表現が変わりますが、高さの差は同じです。
  • 力の分解: 重力 \(mg\) を半径方向(\(mg \cos \theta\))と接線方向(\(mg \sin \theta\))に分解します。

具体的な解説と立式
速さ \(v\) の導出:
点A(高さ \(h\))と点P(高さ \(r – r \cos \theta\))での力学的エネルギー保存則より、
(水平面BCを基準とします)
$$
\begin{aligned}
mgh &= \frac{1}{2} m v^2 + mg (r – r \cos \theta)
\end{aligned}
$$

垂直抗力 \(N\) の導出:
小球と共に動く観測者から見て、半径方向の力のつりあいを立てます。
働く力は、中心向きに \(N\)、外向きに重力の分力 \(mg \cos \theta\) と遠心力 \(m \frac{v^2}{r}\) です。
$$
\begin{aligned}
N &= mg \cos \theta + m \frac{v^2}{r}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
  • 遠心力
計算過程

エネルギー保存則の式より \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 &= mgh – mg r (1 – \cos \theta) \\[2.0ex]
v^2 &= 2g (h – r + r \cos \theta) \\[2.0ex]
v &= \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)}
\end{aligned}
$$
求めた \(v^2\) を \(N\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
N &= mg \cos \theta + \frac{m}{r} \cdot 2g (h – r + r \cos \theta) \\[2.0ex]
&= mg \cos \theta + \frac{2mg}{r} (h – r + r \cos \theta) \\[2.0ex]
&= mg \cos \theta + \frac{2mgh}{r} – 2mg + 2mg \cos \theta \\[2.0ex]
&= mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

坂を登っていくと、スピードは落ちていきます(エネルギー保存)。
また、壁を押す力(垂直抗力)も変化します。スピードが落ちることで遠心力が減り、さらに重力の壁を押す成分も角度によって変わるからです。これらを計算式にまとめました。

結論と吟味

答えは \(v = \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)}\)、\(N = mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)\) です。
\(\theta=0\)(点C)のとき、\(v=\sqrt{2gh}\)、\(N=mg(3+2h/r-2)=mg(1+2h/r)\) となり、(1)(2)の結果と一致します。

解答 (3) \(v = \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)}\), \(N = mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)\)
別解: 慣性系(地上)からの運動方程式による解法

思考の道筋とポイント
地上から見ると、小球は半径 \(r\) の円運動をしています。
中心方向(点Oに向かう方向)の運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 座標系: 慣性系(地上)で考えます。
  • 加速度: 中心向きに \(a = \frac{v^2}{r}\) です。
  • : 中心向きに垂直抗力 \(N\)、逆向きに重力の分力 \(mg \cos \theta\) が働いています。

具体的な解説と立式
中心方向の運動方程式(中心向き正):
加速度は \(\frac{v^2}{r}\) です。
力は、中心向きに \(N\)、逆向きに \(mg \cos \theta\) です。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= N – mg \cos \theta
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

これを \(N\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
N &= m \frac{v^2}{r} + mg \cos \theta
\end{aligned}
$$
となり、遠心力を用いた式と全く同じになります。以降の計算は同じです。
$$
\begin{aligned}
N &= mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

地上から見ると、ボールは円運動をしています。円運動をするためには、中心に向かって引っ張る力(向心力)が必要です。
この向心力は、壁が押す力(垂直抗力)と重力の一部が合わさって作られています。
運動方程式を使って、その関係を計算しました。

結論と吟味

遠心力を用いた場合と同じ結果が得られました。
慣性系で考えることで、向心力が垂直抗力と重力の合力であることが明確になります。

解答 (3) \(v = \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)}\), \(N = mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)\)
別解2: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
エネルギー保存則を運動方程式の積分から導出します。
また、円運動の加速度を位置ベクトルの微分から導出します。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー積分: 運動方程式の両辺に速度を掛けて時間積分することで、エネルギー保存則を導きます。
  • 加速度の導出: 位置ベクトルを時間で2回微分して加速度を求めます。

具体的な解説と立式
1. エネルギー保存則の導出
運動方程式 \(m \frac{d\vec{v}}{dt} = \vec{F}\) の両辺と速度ベクトル \(\vec{v}\) の内積をとり、時間積分します。
$$
\begin{aligned}
\int m \frac{d\vec{v}}{dt} \cdot \vec{v} \, dt &= \int \vec{F} \cdot \vec{v} \, dt \\[2.0ex]
\int \frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m v^2 \right) dt &= \int \vec{F} \cdot d\vec{r} \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v^2 – \frac{1}{2} m v_0^2 &= \int (N \vec{n} + m\vec{g}) \cdot d\vec{r}
\end{aligned}
$$
垂直抗力 \(N\) は移動方向と常に垂直なので仕事をしません(\(\vec{n} \cdot d\vec{r} = 0\))。
重力 \(m\vec{g}\) の仕事は位置エネルギーの変化のマイナスです。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 – \frac{1}{2} m v_0^2 &= – (U – U_0) \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v^2 + U &= \frac{1}{2} m v_0^2 + U_0 = \text{一定}
\end{aligned}
$$
これにより、エネルギー保存則が導かれました。

2. 円運動の加速度の導出
位置ベクトル \(\vec{r} = (r \sin \theta, -r \cos \theta)\) (点O原点、鉛直下向き \(y\) 軸)と置くと、
\(\theta = \omega t\) (\(\omega\) は一定でないが、瞬間の関係として)として微分していくと、中心方向の加速度成分が \(r\dot{\theta}^2 = v^2/r\) であることが導かれます。

使用した物理公式

  • 仕事とエネルギーの関係: \(W = \Delta K\)
  • 積分の公式
計算過程

導出されたエネルギー保存則と運動方程式を用いて、同様に計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)} \\[2.0ex]
N &= mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物理の基本法則である運動方程式から出発して、エネルギー保存則や円運動の式を数学的に導き出しました。
これにより、公式を暗記していなくても、原理から答えを導けることがわかります。

結論と吟味

微積分を用いても同じ結果が得られました。
物理法則の整合性が確認できました。

解答 (3) \(v = \sqrt{2g (h – r + r \cos \theta)}\), \(N = mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2h}{r} – 2 \right)\)

問(4)

思考の道筋とポイント
小球が点D(最高点)に達するためには、途中で面から離れなければよいです。
つまり、点Dに到達するまで常に \(N \ge 0\) であればよいわけです。
特に、\(N\) が最も小さくなるのは点D(\(\theta = 180^\circ\))なので、点Dでの \(N\) が \(0\) 以上であれば、途中で離れることはありません。

この設問における重要なポイント

  • 最高点Dの角度: \(\theta = 180^\circ\)。
  • 通過条件: 点Dにおいて \(N \ge 0\)。
  • 最小値: \(h\) の最小値 \(h_0\) を求めるときは、ギリギリの条件 \(N=0\) を使います。

具体的な解説と立式
問(3)で求めた \(N\) の式に \(\theta = 180^\circ\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
N_D &= mg \left( 3 \cos 180^\circ + \frac{2h}{r} – 2 \right) \\[2.0ex]
&= mg \left( -3 + \frac{2h}{r} – 2 \right) \\[2.0ex]
&= mg \left( \frac{2h}{r} – 5 \right)
\end{aligned}
$$
点Dに達するための条件は \(N_D \ge 0\) です。
$$
\begin{aligned}
mg \left( \frac{2h}{r} – 5 \right) &\ge 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 不等式の解法
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{2h}{r} – 5 &\ge 0 \\[2.0ex]
\frac{2h}{r} &\ge 5 \\[2.0ex]
h &\ge \frac{5}{2} r
\end{aligned}
$$
最小値 \(h_0\) は、
$$
\begin{aligned}
h_0 &= \frac{5}{2} r
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ジェットコースターが一回転するとき、スピードが足りないと頂上で落ちてしまいます。
落ちないためには、頂上でも遠心力が重力に勝っている(あるいは釣り合っている)必要があります。
そのためには、ある程度の高さからスタートしてスピードをつける必要があります。その最低限の高さを計算しました。

結論と吟味

答えは \(h_0 = \frac{5}{2} r\) です。
半径の2.5倍の高さから落とさないと、頂上まで回りきれません。これは有名な結果です。

解答 (4) \(h_0 = \displaystyle \frac{5}{2} r\)

問(5)

思考の道筋とポイント
\(h = 2r\) のとき、問(4)の結果(\(h \ge 2.5r\))を満たさないため、小球は最高点Dに達する前に面から離れます。
「面から離れる」条件は、垂直抗力 \(N\) が \(0\) になることです。
そのときの \(\cos \theta\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 条件: \(h = 2r\)。
  • 離れる瞬間: \(N = 0\)。

具体的な解説と立式
問(3)の \(N\) の式において、\(h = 2r\) とし、\(N = 0\) と置きます。
$$
\begin{aligned}
mg \left( 3 \cos \theta + \frac{2(2r)}{r} – 2 \right) &= 0
\end{aligned}
$$

計算過程

括弧の中身が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
3 \cos \theta + 4 – 2 &= 0 \\[2.0ex]
3 \cos \theta + 2 &= 0 \\[2.0ex]
3 \cos \theta &= -2 \\[2.0ex]
\cos \theta &= -\frac{2}{3}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

高さが足りないので、途中で壁から離れてしまいます。
その離れる場所(角度)を、垂直抗力がゼロになるという条件を使って計算しました。
\(\cos \theta\) がマイナスなので、\(90^\circ\) を超えた場所(頂上の手前)で離れることがわかります。

結論と吟味

答えは \(\cos \theta = -\frac{2}{3}\) です。
\(-1 < -2/3 < 0\) なので、\(90^\circ < \theta < 180^\circ\) の範囲にあり、最高点の手前で離れるという状況と一致します。

解答 (5) \(\cos \theta = -\displaystyle \frac{2}{3}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力学的エネルギー保存則
    • 核心: 摩擦や空気抵抗がない系では、運動エネルギーと位置エネルギーの総和は常に一定です。
    • 理解のポイント:
      • 高さと速さの関係: 高さが下がれば速さが増し、高さが上がれば速さが減ります。この関係式 \(mgh = \frac{1}{2}mv^2\) を自在に使いこなすことが第一歩です。
      • 任意の点での適用: スタート地点だけでなく、円運動中の任意の点(角度 \(\theta\))でも保存則は成立します。これにより、その点での速さ \(v\) を高さ(角度)の関数として表すことができます。
  • 円運動の運動方程式と垂直抗力
    • 核心: 円運動をする物体には、中心方向に向心力が必要です。この向心力は、垂直抗力や重力の分力によって供給されます。
    • 理解のポイント:
      • 運動方程式: \(m \frac{v^2}{r} = F\) (\(F\) は向心力)。
      • 垂直抗力の役割: 垂直抗力 \(N\) は、物体が面から受ける力です。円運動においては、重力の分力と共に、必要な向心力を生み出す役割を果たします。
      • 遠心力の導入: 回転座標系で考える場合、遠心力 \(m \frac{v^2}{r}\) を導入することで、力のつりあいとして静力学的に扱うことができます。
  • 面から離れる条件
    • 核心: 物体が面から離れる瞬間、垂直抗力 \(N\) が \(0\) になります。
    • 理解のポイント:
      • 接触の条件: \(N \ge 0\)。物体が面に押し付けられている状態です。
      • 離れる瞬間: \(N=0\)。重力の分力だけで向心力が賄えなくなり(あるいは遠心力が重力の分力を上回り)、物体が軌道から外れる瞬間です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題のパターン:
    • ジェットコースター: 頂上で落ちないための最小速度や高さを求める問題。本問と全く同じ構造です。
    • 振り子: 糸の張力が \(0\) になる条件(糸がたるむ条件)を求める問題。垂直抗力 \(N\) を張力 \(T\) に置き換えるだけで解けます。
    • 半球面上を滑り落ちる物体: 頂点から滑り出し、どこで面から離れるかを求める問題。本問の(5)と類似しています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「滑らかな面」「摩擦なし」: 力学的エネルギー保存則が使える合図です。
    2. 「円運動」: 中心方向の運動方程式(または遠心力のつりあい)を立てる準備をします。
    3. 「面から離れる」「最高点を通る」: 垂直抗力 \(N\) の式を求め、\(N=0\) や \(N \ge 0\) の条件を適用します。
    4. 高さの幾何学: 円運動中の物体の高さは、半径 \(r\) と角度 \(\theta\) を使って \(r(1-\cos \theta)\) や \(r \cos \theta\) などで表されます。図を描いて正確に把握しましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 高さの基準の取り違え:
    • 誤解: 位置エネルギーの基準点(高さ0)をどこにするかで混乱し、符号や値を間違える。
    • 対策: 問題の最初に「ここを高さ0にする」と宣言し、図に基準線を書き込みましょう。本問では水平面BCを基準にするのが自然です。
  • 遠心力の向き:
    • 誤解: 遠心力を中心向きに書いてしまう。
    • 対策: 「遠心力」は文字通り「中心から遠ざかる力」です。常に外向きに矢印を描きましょう。
  • 垂直抗力の向き:
    • 誤解: 垂直抗力は常に重力と反対向き(鉛直上向き)だと思い込む。
    • 対策: 垂直抗力は常に「面に垂直」です。円筒面の内側なら中心向き、外側なら外向きです。本問では内側を回るので中心向きです。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)(3)での公式選択(エネルギー保存則):
    • 選定理由: 「速さ」を求める問題で、摩擦がなく、高さの変化がわかっているため。
    • 適用根拠: 非保存力(垂直抗力)が仕事をしないため、力学的エネルギーが保存されます。
  • 問(3)での公式選択(円運動の運動方程式):
    • 選定理由: 「垂直抗力」を求める問題で、速さ(エネルギー保存則から求まる)と円運動の半径がわかっているため。
    • 適用根拠: 円運動をしている物体には必ず向心力が働いており、その関係式(運動方程式)の中に垂直抗力が含まれているからです。
  • 問(4)(5)での公式選択(垂直抗力の条件):
    • 選定理由: 「最高点を通る」「面から離れる」といった現象の境界条件を求めるため。
    • 適用根拠: これらの現象はすべて、面と物体の接触力(垂直抗力)の有無によって決まるからです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認:
    • 速さ \(v\) の答えは \(\sqrt{gh}\) の次元 \([\text{L}][\text{T}]^{-1}\) になっているか。
    • 垂直抗力 \(N\) の答えは \(mg\)(力)の次元になっているか。係数は無次元か。
  • 極限チェック:
    • \(\theta=0\)(最下点)で \(N\) が最大になり、\(\theta=180^\circ\)(最高点)で \(N\) が最小になるか確認します。式の結果が直感と合致するか常にチェックしましょう。
  • 途中式の整理:
    • \(v^2\) をそのまま代入する場面が多いので、\(v\) のルートを外した形(\(v^2 = \dots\))をメモしておくと計算ミスが減ります。
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問題43 (名古屋大+神戸大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)〜(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(極座標の運動方程式)
      • 模範解答では「エネルギー保存則」と「遠心力を用いた力のつりあい」を個別に適用していますが、別解では極座標系における運動方程式を立式し、それを積分することでエネルギー保存則を導出します。また、法線方向の運動方程式から張力の式を導き、統一的な視点で解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理からの導出: 「なぜエネルギーが保存するのか」「張力はどのように決まるのか」を、ニュートンの運動方程式という単一の原理から数学的に導くことで、物理法則の体系的な理解を深めます。
    • 汎用性: 円運動に限らず、曲線運動全般に適用できる強力な手法です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「鉛直面内での円運動」と「幾何学的条件の変化(釘による回転半径の変化)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 糸の張力や釘からの抗力は仕事をしないため、重力のみが仕事をする系としてエネルギーが保存されます。
  2. 円運動の運動方程式(または遠心力): 円運動する物体には、中心方向への向心力が必要です。回転座標系(物体と共に動く視点)では、慣性力である「遠心力」を導入することで、力のつりあいとして扱うことができます。
  3. 糸がたるむ条件: 糸の張力 \(T\) が \(0\) になる瞬間を考えます。
  4. 放物運動(斜方投射): 糸がたるんだ後は、重力のみを受けて運動します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 状態の変化に着目: A点、B点、C点など、特定の位置での物理量をエネルギー保存則で結びつけます。
  2. 力の関係を立式: 各点において、物体に働く力(重力、張力)を作図し、円運動の半径方向の式(運動方程式またはつりあいの式)を立てます。
  3. 条件の適用: 「糸がゆるむ」\(\rightarrow T=0\)、「最高点に達する」\(\rightarrow\) 遠心力 \(\ge\) 重力、といった物理的条件を数式化します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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