「良問の風」攻略ガイド(26〜30問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題26 (芝浦工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 運動方程式の積分(力積)を用いた解法
      • 模範解答が運動量保存則を公式として適用するのに対し、別解では衝突中の運動方程式を時間積分することで、作用・反作用の法則から運動量保存則が必然的に導かれる過程を示します。
    • 設問(5)の別解: 重心運動エネルギーと相対運動エネルギーの分離を用いた解法
      • 模範解答が衝突前後の全エネルギーを個別に計算して差を取るのに対し、別解では系のエネルギーを「重心運動エネルギー」と「相対運動エネルギー」に分離して考えます。完全非弾性衝突において相対運動エネルギーが全て失われる性質を利用し、効率的に解を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 運動方程式の積分: 「運動量保存則」が単なる暗記すべき公式ではなく、ニュートンの運動法則(運動方程式と作用・反作用の法則)から数学的に導かれる定理であることを理解できます。これは物理学の体系的な学習において極めて重要です。
    • エネルギー分離: 衝突現象におけるエネルギー損失が「相対速度」に由来することを明確にし、計算ミスを減らすとともに現象の本質的な理解を促します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「振り子と衝突を含む力学的エネルギーと運動量の保存」です。
物体が高さを持つ状態から運動を始め、他の物体と衝突するという、入試物理における王道的な設定です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 糸で吊るされた小球が重力の下で振れるとき、空気抵抗などを無視すればエネルギーは保存されます。
  2. 運動量保存則: 水平面上での衝突のように、外力(重力や垂直抗力)が運動方向(水平方向)に働かない、あるいはつり合っている場合、系全体の運動量は保存されます。
  3. 反発係数(はね返り係数)の式: 衝突前後の相対速度の比を表す式で、衝突の弾性度合い(エネルギーがどれだけ保存されるか)を規定します。
  4. 完全非弾性衝突: 衝突後に物体が一体となる衝突で、反発係数は \(e=0\) となります。このとき、力学的エネルギーの減少量は最大となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)では、まず衝突直前のAの速さをエネルギー保存則で求めます。次に、衝突時の運動量保存則と反発係数の式を連立させて衝突後の速さを求めます。
  2. (4)〜(5)では、弾丸が打ち込まれて一体となる(完全非弾性衝突)ケースについて、同様に運動量保存則を用いて質量やエネルギー損失を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
まずは、衝突直前の小球Aの速さを求める必要があります。これはAが高さ \(l\) の糸で \(60^\circ\) 持ち上げられた位置から最下点まで移動する間のエネルギー保存則から求まります。
次に、AとBの衝突について考えます。水平面内での衝突であり、外力による水平方向の力積がないため、運動量が保存されます。また、問題文に「完全弾性衝突」とあるため、反発係数 \(e=1\) の式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 高さの計算: 糸の長さ \(l\) と角度 \(60^\circ\) から、最下点を基準とした高さ \(h_A\) を幾何学的に正しく求めること。
  • 保存則の適用条件: 衝突の瞬間、重力と張力は鉛直方向の力であり、水平方向の運動量には影響を与えません。
  • 完全弾性衝突: エネルギーが保存される衝突ですが、計算上は「反発係数 \(e=1\)」の式を使う方が連立方程式として解きやすく、ミスが少ないです。

具体的な解説と立式
1. 衝突直前のAの速さ \(v_0\) の導出
最下点を重力による位置エネルギーの基準(高さ \(0\))とします。
初期位置でのAの高さ \(h\) は、図より以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
h &= l – l \cos 60^\circ
\end{aligned}
$$
Aの質量は \(m\) です。初速度 \(0\) で放した直後から最下点に達するまでの力学的エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
(\text{初期の位置エネ}) &= (\text{最下点の運動エネ}) \\[2.0ex]
mgh &= \frac{1}{2} m v_0^2
\end{aligned}
$$

2. 衝突後の速度の導出
衝突直後のAの速度を \(v_A\)(右向き正)、Bの速度を \(v_B\)(右向き正)とします。Bの質量は \(2m\) です。

  • 運動量保存則:
    $$
    \begin{aligned}
    (\text{衝突前の運動量の和}) &= (\text{衝突後の運動量の和}) \\[2.0ex]
    m v_0 + 2m \cdot 0 &= m v_A + 2m v_B \quad \cdots ①
    \end{aligned}
    $$
  • 反発係数の式:
    完全弾性衝突なので \(e=1\) です。
    $$
    \begin{aligned}
    e &= – \frac{(\text{衝突後の相対速度})}{(\text{衝突前の相対速度})} \\[2.0ex]
    1 &= – \frac{v_A – v_B}{v_0 – 0} \quad \cdots ②
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(K_1 + U_1 = K_2 + U_2\)
  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1′ + m_2 v_2’\)
  • 反発係数の式: \(e = – \frac{v_1′ – v_2′}{v_1 – v_2}\)
計算過程

まず、\(v_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m g l (1 – \cos 60^\circ) &= \frac{1}{2} m v_0^2 \\[2.0ex]
g l \left( 1 – \frac{1}{2} \right) &= \frac{1}{2} v_0^2 \\[2.0ex]
\frac{1}{2} g l &= \frac{1}{2} v_0^2 \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{gl}
\end{aligned}
$$
次に、式①と式②を連立して \(v_B\) を求めます。
式②を変形します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= – (v_A – v_B) \\[2.0ex]
v_0 &= v_B – v_A \\[2.0ex]
v_A &= v_B – v_0 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
これを式①に代入して \(v_A\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
m v_0 &= m (v_B – v_0) + 2m v_B \\[2.0ex]
m v_0 &= m v_B – m v_0 + 2m v_B \\[2.0ex]
2m v_0 &= 3m v_B \\[2.0ex]
v_B &= \frac{2}{3} v_0
\end{aligned}
$$
求めた \(v_0 = \sqrt{gl}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_B &= \frac{2}{3} \sqrt{gl}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、Aがブランコのように降りてきて、一番下でどれくらいのスピードになるかを計算しました。高さが半分(\(l/2\))落ちるので、その分の位置エネルギーがスピード(運動エネルギー)に変わります。
次に、その勢いで止まっている重いB(Aの2倍の重さ)にぶつかります。完全に跳ね返る衝突(完全弾性衝突)なので、エネルギーのロスはありません。軽いAが重いBにぶつかると、Aは跳ね返され、Bは弾き飛ばされます。計算の結果、BはAがぶつかってきたスピードの \(2/3\) 倍の速さで飛び出すことが分かりました。

結論と吟味

答えは \(\frac{2}{3}\sqrt{gl}\) です。
次元を確認すると、\(\sqrt{[\text{L}][\text{L}][\text{T}]^{-2}} = [\text{L}][\text{T}]^{-1}\) で速さの次元になっています。
また、もしBの質量がAと同じ \(m\) だった場合、\(v_B = \frac{2m}{m+m}v_0 = v_0\) となり、速度が完全に交換される(Aが止まりBが \(v_0\) で動く)というよく知られた結果になります。今回はBが重いため、\(v_B < v_0\) となっており、直感的にも妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{2}{3}\sqrt{gl}\)
別解: 運動方程式の積分(力積)を用いた解法

思考の道筋とポイント
運動量保存則を公式として適用するのではなく、衝突中に働く「撃力(瞬間的に働く大きな力)」に着目し、運動方程式を時間積分することで解を導きます。
これにより、なぜ運動量が保存するのか(内力の相殺)を数式上で確認できます。

この設問における重要なポイント

  • 作用・反作用の法則: AがBを押す力と、BがAを押し返す力は、大きさ等しく向きが逆です。
  • 力積と運動量の関係: 運動方程式 \(ma=F\) の両辺を時間で積分すると、\(m\Delta v = \int F dt\) となり、運動量の変化が力積に等しいという関係が得られます。

具体的な解説と立式
衝突中の極めて短い時間 \(\Delta t\) の間に、AがBから受ける平均の力を \(F\)(左向き)とします。
作用・反作用の法則より、BはAから大きさ \(F\) の力(右向き)を受けます。
右向きを正として、それぞれの物体について運動方程式を立てます。

  • 物体A: \(m a_A = -F\)
  • 物体B: \(2m a_B = F\)

この運動方程式を、衝突の開始時刻 \(t_1\) から終了時刻 \(t_2\) まで時間積分します。
ここで、\(\int_{t_1}^{t_2} a \, dt = \Delta v = v_{\text{後}} – v_{\text{前}}\) であり、\(\int_{t_1}^{t_2} F \, dt\) は力積 \(I\) となります。
$$
\begin{aligned}
\int_{t_1}^{t_2} m \frac{dv_A}{dt} \, dt &= \int_{t_1}^{t_2} (-F) \, dt \\[2.0ex]
m (v_A – v_0) &= -I \quad \cdots \text{(Aの運動量変化 = 力積)} \\[2.0ex]
\int_{t_1}^{t_2} 2m \frac{dv_B}{dt} \, dt &= \int_{t_1}^{t_2} F \, dt \\[2.0ex]
2m (v_B – 0) &= I \quad \cdots \text{(Bの運動量変化 = 力積)}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 力積と運動量の関係: \(m\Delta v = I\)
計算過程

上の2式を辺々足し合わせると、内力による力積 \(I\) が消去されます。
$$
\begin{aligned}
m (v_A – v_0) + 2m v_B &= -I + I \\[2.0ex]
m v_A – m v_0 + 2m v_B &= 0 \\[2.0ex]
m v_0 &= m v_A + 2m v_B
\end{aligned}
$$
これはまさに運動量保存則の式①と同じです。
ここから先は、反発係数の式(これはエネルギーの散逸に関する実験則として導入します)と連立して、同様に解くことができます。
$$
\begin{aligned}
v_B &= \frac{2}{3} v_0 \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \sqrt{gl}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「運動量保存則」という便利な道具を使う前に、もっと根本的な「力と運動の関係(運動方程式)」から考えました。
AとBがぶつかるとき、お互いに「同じ大きさで逆向きの力」を及ぼし合います。この力を時間で積み上げたもの(力積)が、それぞれの勢い(運動量)を変化させます。
二つの式を足し合わせると、お互いの力がプラスマイナスゼロで消えてしまい、結果として「全体の勢いの合計は変わらない」という保存則が出てくることが分かります。

結論と吟味

当然ながら、結果はメインの解法と一致します。このアプローチは、外力が働く場合(保存則が成り立たない場合)にも、力積の項を残すことで応用できる汎用性の高い方法です。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{2}{3}\sqrt{gl}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
問題文の条件が変わりました。「Aが静止し、Bのみが運動する」という状況です。
これは、衝突後のAの速度 \(v_A’\) が \(0\) になることを意味します。
この条件を満たすような「はね返り係数 \(e\)」を逆算して求めます。

この設問における重要なポイント

  • 条件の読み替え: 「Aが静止」 \(\rightarrow\) \(v_A’ = 0\)
  • 未知数の変化: 先ほどは \(e=1\) が既知で \(v_A, v_B\) が未知でしたが、今回は \(v_A’=0\) が既知で \(e\) と \(v_B’\) が未知です。
  • 物理法則は同じ: 状況が変わっても、運動量保存則と反発係数の式の形自体は変わりません。

具体的な解説と立式
衝突直後のAの速度を \(v_A’ = 0\)、Bの速度を \(v_B’\) とします。

  • 運動量保存則:
    $$
    \begin{aligned}
    (\text{衝突前の運動量の和}) &= (\text{衝突後の運動量の和}) \\[2.0ex]
    m v_0 &= m \cdot 0 + 2m v_B’ \quad \cdots ③
    \end{aligned}
    $$
  • 反発係数の式:
    求めるはね返り係数を \(e\) とします。
    $$
    \begin{aligned}
    e &= – \frac{v_A’ – v_B’}{v_0 – 0} \\[2.0ex]
    e &= – \frac{0 – v_B’}{v_0} \quad \cdots ④
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
  • 反発係数の定義式
計算過程

式③より、\(v_B’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m v_0 &= 2m v_B’ \\[2.0ex]
v_B’ &= \frac{1}{2} v_0
\end{aligned}
$$
これを式④に代入して \(e\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
e &= – \frac{- \frac{1}{2} v_0}{v_0} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

今度は「ぶつかった後、Aがピタリと止まる」という特別なケースを考えます。
Aが持っていた勢い(運動量)が、すべてBに移ったわけではありません(Bは質量が2倍なので、速度が半分になれば運動量は保存されます)。
計算してみると、Bの速度がAの初速度の半分になったときに運動量が保存され、そのときの跳ね返り具合(反発係数)は \(0.5\) であることが分かりました。つまり、少しエネルギーが吸収されるような衝突(非弾性衝突)であれば、このような現象が起こり得ます。

結論と吟味

答えは \(1/2\) です。
反発係数 \(e\) は通常 \(0 \le e \le 1\) の範囲に収まるはずであり、\(0.5\) という値は物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{1}{2}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
衝突後のBの運動に着目します。Bは初速度 \(v_B’\) で最下点から運動を始め、重力に逆らって斜面(円弧)を登っていきます。
摩擦や空気抵抗の記述がないため、B単独での力学的エネルギー保存則が成立します。

この設問における重要なポイント

  • 初速度の確認: 問(2)で求めた \(v_B’ = \frac{1}{2}v_0\) を使用します。問(1)の \(v_B\) ではないことに注意してください。
  • 高さの定義: 最下点を基準(高さ \(0\))として、最高点の高さ \(h\) を求めます。

具体的な解説と立式
Bが上昇する最高点の高さを \(h\) とします。最高点ではBの速さは \(0\) になります。
最下点と最高点での力学的エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
(\text{最下点の運動エネ}) &= (\text{最高点の位置エネ}) \\[2.0ex]
\frac{1}{2} (2m) (v_B’)^2 &= (2m) g h
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(\frac{1}{2}mv^2 = mgh\)
計算過程

式を整理して \(h\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} (v_B’)^2 &= g h \\[2.0ex]
h &= \frac{(v_B’)^2}{2g}
\end{aligned}
$$
ここで、問(2)より \(v_B’ = \frac{1}{2}v_0\)、問(1)より \(v_0 = \sqrt{gl}\) なので、
$$
\begin{aligned}
v_B’ &= \frac{1}{2} \sqrt{gl}
\end{aligned}
$$
これを代入します。
$$
\begin{aligned}
h &= \frac{1}{2g} \left( \frac{1}{2} \sqrt{gl} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2g} \cdot \frac{1}{4} gl \\[2.0ex]
&= \frac{1}{8} l
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

Bは衝突によって勢い(運動エネルギー)をもらいました。このエネルギーを使って、坂(円弧)を登っていきます。
エネルギー保存則を使って計算すると、登れる高さは糸の長さの \(1/8\) であることが分かりました。

結論と吟味

答えは \(\frac{1}{8}l\) です。
元のAの高さは \(l(1-\cos 60^\circ) = l/2\) でした。Bは質量が2倍で、かつ衝突でエネルギーの一部が失われた(\(e=0.5\))ため、Aの元の高さよりもかなり低い位置までしか上がれないというのは直感的に正しいです。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{1}{8}l\)

問(4)

思考の道筋とポイント
状況が一新されます。Aはなくなり、静止したBに弾丸Cが打ち込まれます。
「一体となって運動」というキーワードから、これは完全非弾性衝突であることが分かります。
外力(水平方向)がないため、運動量保存則が成立します。

この設問における重要なポイント

  • 質量の確認: 弾丸Cの質量を \(m_C\)、Bの質量は \(2m\) です。
  • 速度の変化: 衝突前のCの速度は \(v_1\)、衝突後の合体した物体の速度は \(\frac{1}{5}v_1\) です。
  • 立式: 未知数は \(m_C\) だけなので、運動量保存則の式一本で解けます。

具体的な解説と立式
弾丸Cの質量を \(m_C\) とします。
衝突前の状態:

  • C: 質量 \(m_C\), 速度 \(v_1\)
  • B: 質量 \(2m\), 速度 \(0\)

衝突後の状態(一体化):

  • 全体: 質量 \(m_C + 2m\), 速度 \(\frac{1}{5}v_1\)

運動量保存則より、
$$
\begin{aligned}
(\text{衝突前の運動量}) &= (\text{衝突後の運動量}) \\[2.0ex]
m_C v_1 + 2m \cdot 0 &= (m_C + 2m) \cdot \frac{1}{5} v_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
計算過程

両辺を \(v_1\) (\(\neq 0\)) で割って整理します。
$$
\begin{aligned}
m_C &= \frac{1}{5} (m_C + 2m) \\[2.0ex]
5 m_C &= m_C + 2m \\[2.0ex]
4 m_C &= 2m \\[2.0ex]
m_C &= \frac{1}{2} m
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

弾丸CがBにめり込んで、一緒に動く現象です。
衝突後のスピードが元の \(1/5\) に落ちてしまったということは、全体の重さが元の \(5\) 倍になったことを意味します(運動量が保存されるため、質量と速さは反比例の関係にあります)。
つまり、\((\text{C} + \text{B})\) の重さは、Cの重さの \(5\) 倍です。ここから逆算すると、Bの重さはCの重さの \(4\) 倍であることが分かります。Bは \(2m\) なので、Cはその \(1/4\) である \(0.5m\) となります。

結論と吟味

答えは \(\frac{1}{2}m\) です。
質量が正の値で求まり、Bの質量 \(2m\) と比較しても妥当な大きさです。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{1}{2}m\)

問(5)

思考の道筋とポイント
衝突によって失われた力学的エネルギーを計算します。
水平面上の運動なので位置エネルギーの変化はなく、運動エネルギーの減少量を計算すればよいです。
「失われたエネルギー」は「(前のエネルギー)\(-\)(後のエネルギー)」で求めます。

この設問における重要なポイント

  • 定義の確認: 求めるのは「失われたエネルギー」が「衝突前のCの運動エネルギー」の何倍か、という比率です。
  • 計算の順序: \(E_{\text{前}}\) と \(E_{\text{後}}\) をそれぞれ計算し、差を取ってから比を求めます。

具体的な解説と立式
衝突前の全運動エネルギーを \(E_{\text{前}}\)、衝突後の全運動エネルギーを \(E_{\text{後}}\) とします。
問(4)より \(m_C = \frac{1}{2}m\) を用います。

  • 衝突前のエネルギー \(E_{\text{前}}\):
    $$
    \begin{aligned}
    E_{\text{前}} &= \frac{1}{2} m_C v_1^2 \\[2.0ex]
    &= \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2} m \right) v_1^2 \\[2.0ex]
    &= \frac{1}{4} m v_1^2
    \end{aligned}
    $$
  • 衝突後のエネルギー \(E_{\text{後}}\):
    質量は \(m_C + 2m = \frac{1}{2}m + 2m = \frac{5}{2}m\)、速さは \(\frac{1}{5}v_1\) です。
    $$
    \begin{aligned}
    E_{\text{後}} &= \frac{1}{2} (m_C + 2m) \left( \frac{1}{5} v_1 \right)^2 \\[2.0ex]
    &= \frac{1}{2} \left( \frac{5}{2} m \right) \cdot \frac{1}{25} v_1^2
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

\(E_{\text{後}}\) を整理します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{後}} &= \frac{5}{4} m \cdot \frac{1}{25} v_1^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{20} m v_1^2
\end{aligned}
$$
失われたエネルギー \(E_{\text{失}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{失}} &= E_{\text{前}} – E_{\text{後}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} m v_1^2 – \frac{1}{20} m v_1^2 \\[2.0ex]
&= \left( \frac{5}{20} – \frac{1}{20} \right) m v_1^2 \\[2.0ex]
&= \frac{4}{20} m v_1^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{5} m v_1^2
\end{aligned}
$$
求める倍率は \(\displaystyle \frac{E_{\text{失}}}{E_{\text{前}}}\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{E_{\text{失}}}{E_{\text{前}}} &= \frac{\frac{1}{5} m v_1^2}{\frac{1}{4} m v_1^2} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{5} \times \frac{4}{1} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{5}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

衝突前のエネルギーと衝突後のエネルギーを正直に計算して比べました。
衝突前は \(1/4\)(係数のみ注目)、衝突後は \(1/20\) になりました。
差額は \(1/5\) です。この失われた分(\(1/5\))は、元の持ち分(\(1/4\))のどれくらいにあたるかを割り算で求めると、\(4/5\)(つまり80%)ものエネルギーが失われたことが分かります。物体が合体するような衝突では、大きなエネルギーロスが発生します。

結論と吟味

答えは \(4/5\) 倍です。
完全非弾性衝突ではエネルギーが保存されず、減少します。計算結果が正の値であり、かつ元のエネルギーを超えていない(1倍未満)ので妥当です。

解答 (5) \(\displaystyle \frac{4}{5}\)
別解: 重心運動エネルギーと相対運動エネルギーの分離を用いた解法

思考の道筋とポイント
2物体の運動エネルギーの総和は、「重心と共に動く運動エネルギー(重心運動エネルギー)」と「重心から見た相対運動のエネルギー(相対運動エネルギー)」の和に分解できます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= E_{\text{重心}} + E_{\text{相対}}
\end{aligned}
$$
外力がない場合、重心の速度は一定なので \(E_{\text{重心}}\) は保存されます。一方、衝突によって変化するのは \(E_{\text{相対}}\) のみです。
特に、完全非弾性衝突(合体)では、衝突後の相対速度が \(0\) になるため、\(E_{\text{相対}}\) がすべて失われます。
つまり、「失われたエネルギー」は「衝突前の相対運動エネルギー」そのものになります。これを利用すると計算が劇的に早くなります。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー分離の原理: \(E_{\text{全}} = \frac{1}{2}(m_1+m_2)v_G^2 + \frac{1}{2}\mu v_{\text{相対}}^2\)
  • 完全非弾性衝突の特性: 衝突後は一体となるため、相対速度 \(v_{\text{相対}} = 0\) となり、相対運動エネルギー項が消滅します。

具体的な解説と立式
衝突前の相対運動エネルギー \(E_{\text{相対}}\) は、換算質量 \(\mu\) と相対速度 \(v_{\text{相対}}\) を用いて以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{相対}} &= \frac{1}{2} \mu v_{\text{相対}}^2
\end{aligned}
$$
ここで、換算質量 \(\mu\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\mu &= \frac{m_C \cdot 2m}{m_C + 2m}
\end{aligned}
$$
問(4)より \(m_C = \frac{1}{2}m\) なので、
$$
\begin{aligned}
\mu &= \frac{\frac{1}{2}m \cdot 2m}{\frac{1}{2}m + 2m} \\[2.0ex]
&= \frac{m^2}{\frac{5}{2}m} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{5}m
\end{aligned}
$$
相対速度の大きさ \(v_{\text{相対}}\) は、Bが静止しているので \(v_1\) そのものです。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{相対}} &= v_1 – 0 \\[2.0ex]
&= v_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 相対運動エネルギー: \(E_{\text{相対}} = \frac{1}{2}\mu v_{\text{相対}}^2\)
  • 換算質量: \(\mu = \frac{m_1 m_2}{m_1 + m_2}\)
計算過程

失われたエネルギー \(E_{\text{失}}\) は、衝突前の相対運動エネルギーそのものです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{失}} &= E_{\text{相対}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \mu v_{\text{相対}}^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \left( \frac{2}{5}m \right) v_1^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{5} m v_1^2
\end{aligned}
$$
これはメインの解法で求めた \(E_{\text{失}}\) と一致します。
あとは同様に比率を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{E_{\text{失}}}{E_{\text{前}}} &= \frac{\frac{1}{5} m v_1^2}{\frac{1}{4} m v_1^2} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{5}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの物体が動くとき、そのエネルギーは「全体としての移動エネルギー(重心)」と「お互いの関係のエネルギー(相対)」に分けられます。
「合体する」ということは、「お互いの関係(距離の変化)」がなくなるということなので、「相対エネルギー」がゼロになります。
つまり、計算すべき「失われたエネルギー」は、最初から持っていた「相対エネルギー」そのものです。この視点を持つと、面倒な引き算をせずにズバリと損失量を計算できます。

結論と吟味

結果は \(4/5\) で一致します。
この解法は、特に文字式のまま計算する場合や、質量比が複雑な場合に威力を発揮します。

解答 (5) \(\displaystyle \frac{4}{5}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動量保存則と力学的エネルギー保存則の使い分け
    • 核心: 物理現象の時間的・空間的な変化において、「何が保存され、何が変化するか」を見極めることが全ての出発点です。
    • 理解のポイント:
      • 衝突現象: 衝突の瞬間は内力(撃力)のみが作用し、外力の影響が無視できる(またはつり合っている)ため、運動量保存則が成立します。一方で、エネルギーは弾性衝突以外では保存されません。
      • 重力下の運動: 衝突以外の区間(振り子の運動や斜面の登り降り)では、保存力である重力のみが仕事をするため、力学的エネルギー保存則が成立します。
  • 反発係数(はね返り係数)による衝突の分類
    • 核心: 衝突後の物体の振る舞いは、反発係数 \(e\) によって決定されます。
    • 理解のポイント:
      • 完全弾性衝突 (\(e=1\)): エネルギー損失なし。相対速度の大きさは変わらず、向きだけが逆転します。
      • 非弾性衝突 (\(0 \le e < 1\)): エネルギー損失あり。相対速度の大きさは減少します。
      • 完全非弾性衝突 (\(e=0\)): エネルギー損失最大。衝突後は物体が一体となり、相対速度は \(0\) になります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 2球の衝突: 質量が異なる2球の衝突では、質量比によって速度の分配が大きく変わります。特に \(m_1=m_2\) の弾性衝突では速度交換が起こることを知っておくと検算に役立ちます。
    • 弾道振り子: 弾丸がブロックに打ち込まれて一体となり、振り子として持ち上がる問題(問(4)〜(5)の変形)は頻出です。この場合、「衝突(運動量保存)」\(\rightarrow\)「振り子運動(エネルギー保存)」という2段階の思考が必須です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 現象を区間で区切る: 「衝突前」「衝突中」「衝突後」のように時間を区切り、それぞれの区間でどの保存則が使えるかを判断します。
    2. 「一体となる」というキーワード: これを見たら即座に「完全非弾性衝突 (\(e=0\))」と判断し、運動量保存則で解く準備をします。
    3. エネルギー損失の計算: 「失われたエネルギー」を問われたら、愚直に差を計算するか、別解で示した「相対運動エネルギー」に着目するかを選択します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 衝突時のエネルギー保存則の誤用:
    • 誤解: 「エネルギー保存則は万能」と思い込み、非弾性衝突(問(2)や(4))でもエネルギー保存則を使ってしまう。
    • 対策: 衝突問題では、まず運動量保存則を第一選択とします。エネルギー保存則が使えるのは「完全弾性衝突」と明記されている場合のみです。
  • 速度と速さの混同:
    • 誤解: 運動量保存則はベクトル(向きを持つ量)の式ですが、速さ(大きさ)だけで立式して符号を間違える。
    • 対策: 必ず座標軸(例:右向き正)を設定し、速度 \(v\) を符号付きの変数として扱います。計算結果が負なら「逆向きに動いている」と解釈します。
  • 高さの計算ミス:
    • 誤解: 振り子の高さ \(h\) を \(l \cos \theta\) としてしまう。
    • 対策: 図を描き、最下点からの高さは \(l – l \cos \theta = l(1 – \cos \theta)\) であることを視覚的に確認する癖をつけましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)での公式選択(運動量保存則 + 反発係数の式):
    • 選定理由: 未知数が衝突後の2つの速度 \(v_A, v_B\) のため、式が2本必要です。運動量保存則で1本、反発係数の式(\(e=1\))で1本立てるのが定石です。
    • 適用根拠: 水平面内の衝突であり外力の水平成分がないため運動量が保存され、かつ「完全弾性衝突」という条件から \(e=1\) が確定しているためです。
  • 問(5)での公式選択(エネルギーの差分計算):
    • 選定理由: 「失われたエネルギー」という問いに対しては、定義通り \(E_{\text{前}} – E_{\text{後}}\) を計算するのが最も確実です。
    • 適用根拠: 運動量保存則から質量や速度が全て求まっているため、それぞれの状態の運動エネルギー \(K = \frac{1}{2}mv^2\) を具体的に計算可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 答えが出たら、単位(次元)を確認しましょう。例えば速さ \(v\) なら \(\sqrt{gl}\) のように \(\sqrt{[\text{L}][\text{L}][\text{T}]^{-2}} = [\text{L}][\text{T}]^{-1}\) となっているか。高さ \(h\) なら長さの次元 \(l\) になっているかを確認します。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 問(1)で \(m_B = m_A\) だったら? \(v_B = v_0\) となり速度交換が起こるはず。今回の結果 \(v_B = \frac{2}{3}v_0\) は \(m_B=2m_A\) なので \(v_0\) より小さくなっており、妥当です。
    • 問(2)で \(e=1\) だったら? \(v_A\) は逆向きに跳ね返るはず。\(e=0\) だったら? 一体となって動くはず。\(e=0.5\) で \(v_A=0\) となるのはその中間であり、物理的にあり得る状況です。
  • 係数の処理:
    • 運動エネルギーの計算では \(\frac{1}{2}\) や \(v^2\) が頻出します。特に \((2v)^2 = 4v^2\) や \(\left(\frac{1}{5}v\right)^2 = \frac{1}{25}v^2\) のような係数の2乗計算は、途中式を省略せずに書くことでミスを防げます。

問題27 (福岡大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)〜(4)の共通別解: 重心速度と相対速度を用いた体系的解法
      • 模範解答では、衝突のたびに運動量保存則と反発係数の式を連立させて解いていますが、別解では「重心速度(保存量)」と「相対速度(減衰量)」に着目します。
      • 2物体の速度を「重心速度」と「相対速度」の和・差に分解することで、\(n\) 回目の衝突後の速度を数列として一般化し、全ての設問を統一的に解く手法を提示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算の効率化: 連立方程式を繰り返し解く煩雑さを回避し、相対速度が等比数列的に変化する(\(-e\) 倍になる)という単純な規則性だけで解答を導けます。
    • 物理的本質の理解: 衝突現象において「系全体の並進運動(重心)」は保存され、「内部の運動(相対速度)」のみがエネルギーを失って減衰していくという物理的構造を深く理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「円形軌道上での2物体の繰り返し衝突」です。
一見すると円運動の問題に見えますが、実質的には「周期的境界条件を持つ一次元衝突問題」として扱うことができます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 運動量保存則: パイプは水平に固定されており、摩擦もないため、衝突の前後で系全体の運動量(接線方向の成分)は保存されます。
  2. 反発係数(はね返り係数)の式: 衝突前後の相対速度の比は、反発係数 \(e\) によって決まります。
  3. 相対速度と距離の関係: 円軌道上での「追いつく」「出会う」といった現象は、相対速度と円周の長さ \(2\pi R\) の関係として捉えるとシンプルになります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、お互いに近づく相対速度に着目し、円周分の距離を縮める時間を求めます。
  2. (2)(3)では、運動量保存則と反発係数の式を連立させて、衝突後の速度を順次求めていきます。
  3. (4)では、衝突を無限回繰り返した後の収束状態(相対速度 \(0\))を考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
AとBは円形パイプの中を逆向きに進んでいます。
円運動として角度で考えることもできますが、パイプを切り開いて一直線に引き伸ばしたと考えた方が直感的に分かりやすいです。
2つの物体が「出会う」までの時間は、「2物体間の初期距離」を「互いに近づく速さ(相対速さ)」で割ることで求められます。

この設問における重要なポイント

  • 距離の定義: AとBは同じ位置から逆向きにスタートするので、再び出会うまでに2物体が合わせて進む距離は、円周の長さ \(2\pi R\) に等しくなります。
  • 相対速さ: 逆向きに進む場合、互いに近づく速さはそれぞれの速さの和になります。

具体的な解説と立式
Aの速さは \(2v_0\)、Bの速さは \(v_0\) です。
互いに逆向きに進んで近づいていくため、相対速さ \(v_{\text{相対}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{相対}} &= 2v_0 + v_0 \\[2.0ex]
&= 3v_0
\end{aligned}
$$
2物体が出会うまでに縮めるべき距離 \(L\) は、円周の長さです。
$$
\begin{aligned}
L &= 2\pi R
\end{aligned}
$$
求める時間 \(t\) は、距離を相対速さで割って求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{L}{v_{\text{相対}}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の式: \(x = vt\)
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{2\pi R}{3v_0}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

A君とB君がグラウンドのトラックを逆向きにヨーイドンで走り出す状況と同じです。
A君は分速 \(2v_0\)、B君は分速 \(v_0\) なので、二人は合わせて分速 \(3v_0\) のペースで近づいていきます。
トラック1周分の距離 \(2\pi R\) を、この「合わせたスピード」で消化すると考えれば、出会うまでの時間が計算できます。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{2\pi R}{3v_0}\) です。
次元を確認すると、\([\text{L}] / ([\text{L}][\text{T}]^{-1}) = [\text{T}]\) となり、時間の次元になっています。また、速さ \(v_0\) が大きいほど時間は短くなり、半径 \(R\) が大きいほど時間は長くなるため、直感的にも妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{2\pi R}{3v_0}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
衝突直後の速度を求める定石通り、運動量保存則反発係数の式を連立させて解きます。
円運動ですが、接線方向の1次元衝突として扱えます。
重要なのは符号(向き)の定義です。図に合わせて「時計回り」を正の向きとして立式します。

この設問における重要なポイント

  • 正の向きの設定: Aの初速度方向である「時計回り」を正とします。
    • 衝突前のAの速度: \(+2v_0\)
    • 衝突前のBの速度: \(-v_0\) (逆向きなので負)
  • 質量の確認: AもBも質量は \(m\) で等しいです。

具体的な解説と立式
衝突直後のAの速度を \(v_A\)、Bの速度を \(v_B\) とします(時計回り正)。

  • 運動量保存則:
    $$
    \begin{aligned}
    (\text{衝突前の運動量の和}) &= (\text{衝突後の運動量の和}) \\[2.0ex]
    m(2v_0) + m(-v_0) &= m v_A + m v_B \quad \cdots ①
    \end{aligned}
    $$
  • 反発係数の式:
    $$
    \begin{aligned}
    e &= – \frac{(\text{衝突後の相対速度})}{(\text{衝突前の相対速度})} \\[2.0ex]
    e &= – \frac{v_A – v_B}{2v_0 – (-v_0)} \quad \cdots ②
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1′ + m_2 v_2’\)
  • 反発係数の式: \(e = – \frac{v_1′ – v_2′}{v_1 – v_2}\)
計算過程

式①の両辺を \(m\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
2v_0 – v_0 &= v_A + v_B \\[2.0ex]
v_A + v_B &= v_0 \quad \cdots ①’
\end{aligned}
$$
式②を整理します。分母は \(3v_0\) です。
$$
\begin{aligned}
e &= – \frac{v_A – v_B}{3v_0} \\[2.0ex]
v_A – v_B &= -3e v_0 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
式①’と式②’を連立して解きます。
まず、2式を足します。
$$
\begin{aligned}
(v_A + v_B) + (v_A – v_B) &= v_0 + (-3e v_0) \\[2.0ex]
2v_A &= (1 – 3e) v_0 \\[2.0ex]
v_A &= \frac{1 – 3e}{2} v_0
\end{aligned}
$$
次に、式①’から式②’を引きます。
$$
\begin{aligned}
(v_A + v_B) – (v_A – v_B) &= v_0 – (-3e v_0) \\[2.0ex]
2v_B &= (1 + 3e) v_0 \\[2.0ex]
v_B &= \frac{1 + 3e}{2} v_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

正面衝突の問題です。
「ぶつかった後の勢いの合計は変わらない(運動量保存)」というルールと、「ぶつかった後、お互いが遠ざかる速さは、近づいてきた速さの \(e\) 倍になる(反発係数)」というルールの2つを使って連立方程式を解きました。
結果を見ると、\(0 < e < 1/3\) という条件があるため、\(v_A\) も \(v_B\) もプラスの値になります。つまり、衝突した後、Aは跳ね返されずにそのまま時計回りに進み続け、Bは逆向きに跳ね返されて時計回りに進むことになります。2つとも同じ向きに動くのです。

結論と吟味

Aの速さ: \(\frac{1-3e}{2}v_0\)、Bの速さ: \(\frac{1+3e}{2}v_0\)。
問題文の条件 \(0 < e < 1/3\) より、\(1-3e > 0\) なので \(v_A > 0\) です。また \(v_B > 0\) は明らかです。
さらに \(v_B – v_A = 3e v_0 > 0\) なので、衝突後はBの方が速く、Aの前方を走ることになります。これは次の衝突(Bが一周回ってAに追いつく)への伏線となっています。

解答 (2) A: \(\displaystyle \frac{1-3e}{2}v_0\), B: \(\displaystyle \frac{1+3e}{2}v_0\)

問(3)

思考の道筋とポイント
1回目の衝突後、AとBは共に時計回りに進みますが、Bの方が速いため、Bが一周回ってAの後ろから追いつき、2回目の衝突が起こります。
この衝突直前の速度は、問(2)で求めた速度そのものです(摩擦がないため)。
再び運動量保存則と反発係数の式を立てて解きます。

この設問における重要なポイント

  • 衝突前の速度:
    • A: \(v_A = \frac{1-3e}{2}v_0\)
    • B: \(v_B = \frac{1+3e}{2}v_0\)
    • BがAの後ろから衝突します。
  • 保存則の不変性: 運動量保存則の式(和が一定)は常に変わりません。
  • 相対速度の変化: 反発係数の式は「相対速度が \(-e\) 倍になる」ことを意味します。これを利用すると計算が楽になります。

具体的な解説と立式
2回目の衝突直後のAの速度を \(v_A’\)、Bの速度を \(v_B’\) とします。

  • 運動量保存則:
    衝突前後で全運動量は保存されるので、その値は最初(\(mv_0\))と同じです。
    $$
    \begin{aligned}
    m v_A’ + m v_B’ &= m v_0 \\[2.0ex]
    v_A’ + v_B’ &= v_0 \quad \cdots ③
    \end{aligned}
    $$
  • 反発係数の式:
    衝突前の相対速度は \(v_A – v_B\) です(問(2)の結果を利用)。
    $$
    \begin{aligned}
    v_A’ – v_B’ &= -e (v_A – v_B)
    \end{aligned}
    $$
    ここで、問(2)の計算過程(式②’)より \(v_A – v_B = -3e v_0\) でした。これを代入します。
    $$
    \begin{aligned}
    v_A’ – v_B’ &= -e (-3e v_0) \\[2.0ex]
    v_A’ – v_B’ &= 3e^2 v_0 \quad \cdots ④
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
  • 反発係数の式
計算過程

式③と式④を連立して解きます。
まず、2式を足します。
$$
\begin{aligned}
(v_A’ + v_B’) + (v_A’ – v_B’) &= v_0 + 3e^2 v_0 \\[2.0ex]
2v_A’ &= (1 + 3e^2) v_0 \\[2.0ex]
v_A’ &= \frac{1 + 3e^2}{2} v_0
\end{aligned}
$$
次に、式③から式④を引きます。
$$
\begin{aligned}
(v_A’ + v_B’) – (v_A’ – v_B’) &= v_0 – 3e^2 v_0 \\[2.0ex]
2v_B’ &= (1 – 3e^2) v_0 \\[2.0ex]
v_B’ &= \frac{1 – 3e^2}{2} v_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2回目の衝突です。今度は「追突」です。
計算の手順は1回目と全く同じですが、入力となる速度が変わっています。
ここで面白い性質が見えてきます。衝突のたびに、2つの速度の「和」は変わらず(\(v_0\) のまま)、2つの速度の「差(相対速度)」だけが変化しています。
1回目の衝突で差は \(-3ev_0\) になり、2回目の衝突でさらに \(-e\) 倍されて \(3e^2 v_0\) になりました。この規則性に気づくと、計算ミスを減らせます。

結論と吟味

Aの速さ: \(\frac{1+3e^2}{2}v_0\)、Bの速さ: \(\frac{1-3e^2}{2}v_0\)。
\(v_A’ – v_B’ = 3e^2 v_0 > 0\) なので、今度はAの方が速くなります。つまり、次はAが一周回ってBに追いつくことになります。衝突のたびに「速い方」と「遅い方」が入れ替わっていることが分かります。

解答 (3) A: \(\displaystyle \frac{1+3e^2}{2}v_0\), B: \(\displaystyle \frac{1-3e^2}{2}v_0\)

問(4)

思考の道筋とポイント
衝突を繰り返していくと、どうなるでしょうか。
反発係数 \(e\) は \(1\) より小さいので、衝突のたびに相対速度(速度の差)は \(e\) 倍ずつ小さくなっていきます。
無限回繰り返すと、相対速度は限りなく \(0\) に近づきます。つまり、AとBは同じ速さになります。
このときの速さは、常に保存されている「全運動量」から求められます。

この設問における重要なポイント

  • 収束の条件: 衝突を繰り返すと \(v_A – v_B \to 0\) となり、\(v_A = v_B\) となります。
  • 運動量保存則: どのような衝突であっても、全運動量は常に一定です。

具体的な解説と立式
衝突を繰り返した後のAとBの共通の速さを \(V\) とします。
最初の状態から全運動量は保存され続けているので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{最終的な全運動量}) &= (\text{最初の全運動量}) \\[2.0ex]
m V + m V &= m(2v_0) + m(-v_0)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
計算過程

$$
\begin{aligned}
2m V &= 2m v_0 – m v_0 \\[2.0ex]
2m V &= m v_0 \\[2.0ex]
V &= \frac{1}{2} v_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

衝突するたびに、エネルギーの一部が失われ、お互いの速度差が縮まっていきます。
最終的には速度差がなくなり、2つの物体はつかず離れず、仲良く同じ速さで回り続けるようになります。
「2人合わせて持っている勢いの合計(運動量)」はずっと変わらないので、その合計を2人で等分けすれば、最終的な速さが求まります。

結論と吟味

答えは \(\frac{1}{2}v_0\) です。
これは、系の「重心速度」そのものです。外力がないため重心速度は最初から最後まで変化せず、最終的に個々の物体の速度が重心速度に収束したと解釈できます。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{1}{2}v_0\)
別解: 重心速度と相対速度を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
2物体の速度 \(v_A, v_B\) を、重心速度 \(v_G\)相対速度 \(u\) を用いて表す方法です。
$$
\begin{aligned}
v_G &= \frac{v_A + v_B}{2} \quad (\text{質量が等しい場合}) \\[2.0ex]
u &= v_A – v_B
\end{aligned}
$$
これらを用いると、速度は以下のように分解できます。
$$
\begin{aligned}
v_A &= v_G + \frac{1}{2}u \\[2.0ex]
v_B &= v_G – \frac{1}{2}u
\end{aligned}
$$
重要な物理的性質:

  1. 重心速度 \(v_G\) は保存する: 外力がないため、衝突しても変化しません。
  2. 相対速度 \(u\) は減衰する: 衝突のたびに \(-e\) 倍になります。

この性質を使うと、\(n\) 回目の衝突後の速度を数列として瞬時に求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 重心速度の計算: 初期の速度から計算し、これが不変であることを利用します。
  • 相対速度の漸化式: \(u_n = -e u_{n-1}\) という等比数列の形になります。

具体的な解説と立式
1. 重心速度 \(v_G\) の導出
初期状態(\(v_A=2v_0, v_B=-v_0\))より、
$$
\begin{aligned}
v_G &= \frac{2v_0 + (-v_0)}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} v_0 \quad (\text{常に一定})
\end{aligned}
$$

2. 相対速度 \(u_n\) の導出
初期の相対速度 \(u_0\) は、
$$
\begin{aligned}
u_0 &= v_A – v_B \\[2.0ex]
&= 2v_0 – (-v_0) \\[2.0ex]
&= 3v_0
\end{aligned}
$$
衝突のたびに相対速度は \(-e\) 倍になるので、\(n\) 回目の衝突後の相対速度 \(u_n\) は、
$$
\begin{aligned}
u_n &= u_0 \cdot (-e)^n \\[2.0ex]
&= 3v_0 (-e)^n
\end{aligned}
$$

3. 各設問への適用
速度の分解式 \(v_A = v_G + \frac{1}{2}u_n\), \(v_B = v_G – \frac{1}{2}u_n\) に代入します。

  • 問(2) 1回目の衝突後 (\(n=1\)):
    $$
    \begin{aligned}
    u_1 &= 3v_0 (-e)^1 = -3e v_0 \\[2.0ex]
    v_A &= \frac{1}{2}v_0 + \frac{1}{2}(-3e v_0) = \frac{1-3e}{2}v_0 \\[2.0ex]
    v_B &= \frac{1}{2}v_0 – \frac{1}{2}(-3e v_0) = \frac{1+3e}{2}v_0
    \end{aligned}
    $$
    これは問(2)の答えと一致します。
  • 問(3) 2回目の衝突後 (\(n=2\)):
    $$
    \begin{aligned}
    u_2 &= 3v_0 (-e)^2 = 3e^2 v_0 \\[2.0ex]
    v_A &= \frac{1}{2}v_0 + \frac{1}{2}(3e^2 v_0) = \frac{1+3e^2}{2}v_0 \\[2.0ex]
    v_B &= \frac{1}{2}v_0 – \frac{1}{2}(3e^2 v_0) = \frac{1-3e^2}{2}v_0
    \end{aligned}
    $$
    これは問(3)の答えと一致します。
  • 問(4) 無限回の衝突後 (\(n \to \infty\)):
    \(0 < e < 1\) より、\(n \to \infty\) で \(u_n \to 0\) となります。
    $$
    \begin{aligned}
    v_A &= v_G + 0 = \frac{1}{2}v_0 \\[2.0ex]
    v_B &= v_G – 0 = \frac{1}{2}v_0
    \end{aligned}
    $$
    これは問(4)の答えと一致します。
この設問の平易な説明

2つの物体の運動を、「2人の平均ペース(重心速度)」と「2人のペースの差(相対速度)」に分けて考えました。
平均ペースはずっと変わりませんが、ペースの差は衝突するたびに \(e\) 倍ずつ縮まっていきます。
この2つの情報を組み合わせるだけで、何回目の衝突であっても、計算なしで答えを作ることができます。物理学者が好む、非常に見通しの良い解き方です。

結論と吟味

全ての設問に対して、メインの解法と全く同じ結果が得られました。
この手法は、質量が異なる場合(\(m_A \neq m_B\))でも、係数が少し変わるだけで同様に適用可能です。

解答 (2)〜(4) 上記参照

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動量保存則の普遍性
    • 核心: 衝突現象において、外力(この場合は接線方向の力)が働かない限り、系全体の運動量は常に保存されます。これは1回目の衝突だけでなく、2回目、3回目、そして無限回の衝突後まで一貫して成立する強力な法則です。
    • 理解のポイント:
      • 式の形: \(m_A v_A + m_B v_B = \text{一定}\) という式は、衝突のたびに書き換える必要がなく、常に初期状態の値(\(mv_0\))と等号で結べます。
      • 重心速度との関係: 運動量が保存されるということは、重心の速度 \(v_G\) が一定であることを意味します。これが別解の核心部分です。
  • 相対速度と反発係数の関係
    • 核心: 衝突とは、物体間の相対速度を変化させるイベントです。反発係数 \(e\) は、その変化率(減衰率)を表します。
    • 理解のポイント:
      • 漸化式的な理解: \((\text{衝突後の相対速度}) = -e \times (\text{衝突前の相対速度})\) という関係は、衝突を繰り返すたびに相対速度が等比数列的に小さくなっていくことを示しています。
      • 収束のメカニズム: \(0 < e < 1\) であるため、衝突を繰り返すと相対速度は必ず \(0\) に収束します。これが問(4)の「同じ速さに近づく」という現象の数学的な裏付けです。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 直線上の多体衝突: 3つ以上の物体が一直線上に並んで次々と衝突する問題でも、「重心速度の保存」と「相対速度の変化」に着目すれば見通しよく解けます。
    • 壁との繰り返し衝突: 物体が壁と床の間でバウンドを繰り返す問題も、相対速度が \(e\) 倍ずつ減衰していく数列の問題として処理できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「繰り返し」のキーワード: 「\(n\) 回目の衝突」「衝突を繰り返すと」といった言葉があったら、数列(漸化式)の利用を疑いましょう。特に別解で示した「重心速度と相対速度の分離」が最強の武器になります。
    2. 円運動の一次元化: 円形パイプやトラックの問題は、角度 \(\theta\) で考えるよりも、切り開いて直線距離 \(x\) として考えた方が、相対速度や出会うまでの時間の計算が圧倒的に楽になります。
    3. 最終状態の予測: 「十分に時間が経過した後」や「衝突を繰り返した後」の状態は、エネルギー最小の状態(相対速度 \(0\))や運動量保存則から即座に予測できることが多いです。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 符号(向き)の定義ミス:
    • 誤解: 「速さ」と「速度」を混同し、逆向きの運動を正の値で代入してしまう。特に \(B\) の初速度を \(v_0\) として立式すると、運動量の和が \(3mv_0\) になってしまい、全てが狂います。
    • 対策: 最初に「時計回りを正」と座標軸を明記し、逆向きの速度には必ずマイナスをつける(\(v_B = -v_0\))ことを徹底しましょう。
  • 相対速度の引き算の順序:
    • 誤解: 反発係数の式で、分母を \(v_A – v_B\)、分子を \(v_B’ – v_A’\) のように順序を逆にしてしまう。
    • 対策: \(e = – \frac{\text{相対速度(後)}}{\text{相対速度(前)}}\) という形よりも、\(v_A’ – v_B’ = -e(v_A – v_B)\) という「変化の式」として覚える方がミスが減ります。「後の差は、前の差の \(-e\) 倍」と唱えましょう。
  • 衝突間隔の勘違い:
    • 誤解: 2回目の衝突までの時間を問われた際、1回目と同じ時間間隔だと早合点してしまう。
    • 対策: 衝突によって相対速度が変化(減少)するため、次に追いつくまでの時間は変化(増加)します。\(t = \frac{2\pi R}{|v_{\text{相対}}|}\) の式に、その都度新しい相対速度を代入する必要があります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)での公式選択(距離 ÷ 相対速さ):
    • 選定理由: 2物体が同時に動く問題では、個々の位置を時間関数 \(x_A(t), x_B(t)\) で表して \(x_A = x_B\) と置くよりも、相対運動として「一方が止まっていて、他方が相対速さで近づく」とみなす方が計算が単純だからです。
    • 適用根拠: 等速運動同士なので相対速度も一定であり、単純な「道のり・速さ・時間」の関係式が使えます。
  • 問(4)での公式選択(運動量保存則のみ):
    • 選定理由: 最終状態の速度 \(V\) という1つの未知数を求めるだけなら、保存則1本で十分だからです。
    • 適用根拠: 衝突の回数に関わらず運動量は常に保存されるため、最も単純な初期状態と最終状態を直接等号で結ぶことができます。わざわざ \(n\) 回目の式を作って極限を取る必要はありません(別解はその確認になりますが)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 対称性の利用:
    • 質量が等しい(\(m_A = m_B\))場合、速度の式は対称的な形になります。例えば \(v_A = \frac{1-3e}{2}v_0\) に対し、\(v_B = \frac{1+3e}{2}v_0\) のように、符号違いや係数の入れ替えで表現できることが多いです。計算結果が著しく非対称な形になったら、どこかでミスをしている可能性が高いです。
  • 特殊な値での検算:
    • もし \(e=1\)(完全弾性衝突)だったら? 問(2)の式に代入すると \(v_A = -v_0, v_B = 2v_0\) となり、速度が完全に入れ替わります(質量が等しい弾性衝突の特性)。
    • もし \(e=0\)(完全非弾性衝突)だったら? \(v_A = v_B = \frac{1}{2}v_0\) となり、1回で最終状態(重心速度)になります。
    • これらのチェックを行うことで、式の信頼性を高めることができます。
  • 文字式の整理:
    • \(v_A + v_B = v_0\) や \(v_A – v_B = -3ev_0\) のように、和と差の形を作ってから連立方程式を解く(足して2で割る、引いて2で割る)テクニックは、計算ミスを減らすための定石です。
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問題28 (センター試験)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解1: 相対運動を用いた解法
      • 模範解答では、AとBの鉛直方向の運動を個別に考えて「高さが一致する条件」を求めていますが、別解1では「自由落下する座標系(Aから見たBの運動)」を考えます。重力加速度の影響を相殺することで、BがAに向かって等速直線運動をする条件として幾何学的に解を導きます。
    • 設問(2)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式を時間で2回積分することで位置ベクトルを導出し、衝突条件(位置ベクトルの一致)をベクトル方程式として解きます。公式を暗記せずとも、ニュートンの運動法則から全てを導けることを示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 相対運動: 「モンキーハンティング」の本質(重力の影響が全ての物体に等しく作用するため、相対的には重力が消える)を直感的に理解でき、計算なしで瞬時に答えを導けます。
    • 微積分: 物理現象を最も根本的な原理から記述する方法であり、複雑な設定(空気抵抗がある場合など)にも応用できる汎用的な力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「放物運動と空中衝突」です。
いわゆる「モンキーハンティング」の変形版であり、重力下での2物体の運動を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 等加速度直線運動(鉛直投げ上げ): 重力のみを受けて運動する物体の位置と速度の時間変化を記述します。
  2. 運動の独立性: 水平方向(等速直線運動)と鉛直方向(等加速度直線運動)の運動は互いに独立しており、分けて考えることができます。
  3. 運動量保存則: 衝突の瞬間、内力(撃力)のみが作用し、外力(重力)の影響が無視できる(力積が0とみなせる)ため、運動量は保存されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)では、運動方程式(または等加速度運動の公式)を用いて、AとBの位置座標を時間の関数として表し、衝突条件(同じ時刻に同じ位置にいること)を立式します。
  2. (4)〜(5)では、衝突後の合体した物体の運動を、運動量保存則と水平投射の知識を用いて解析します。

問(1)

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