「良問の風」攻略ガイド(151〜154問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題151 (芝浦工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(6)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの保存則導出)
      • 模範解答は運動量保存則を既知の公式として適用していますが、別解ではニュートンの運動方程式と作用・反作用の法則から運動量保存則を数学的に導出します。
      • また、運動エネルギーを速度 \(v\) ではなく運動量 \(p\) を用いて \(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\) と表すことで、エネルギー分配の比率をより見通しよく計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理の理解: 「なぜ運動量が保存するのか」という物理の根本原理(力が運動量を変化させる)を再確認できます。
    • 計算の効率化: \(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\) の形式を利用することで、速度 \(V\) を消去する手間が省け、質量とエネルギーの逆比関係が直感的に明らかになります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「放射性崩壊の連鎖と核分裂におけるエネルギー分配」です。
不安定な原子核が安定な状態へ移行する過程で、どのような粒子が放出され、どのようにエネルギーが分配されるかを、保存則に基づいて解き明かします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量数保存則と電荷数保存則: 核反応の前後で、質量数(陽子数+中性子数)の総和と、電荷数(原子番号)の総和は変化しません。
  • \(\alpha\)崩壊と\(\beta\)崩壊の性質:
    • \(\alpha\)崩壊: ヘリウム原子核 \({}_{2}^{4}\text{He}\) を放出します(質量数 \(-4\)、原子番号 \(-2\))。
    • \(\beta\)崩壊: 電子 \({}_{-1}^{0}\text{e}\) を放出します(質量数 不変、原子番号 \(+1\))。
  • 運動量保存則: 外力が働かない系(分裂など)では、全体の運動量の総和は保存されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、崩壊前後の質量数と原子番号の変化に着目し、連立方程式(または順次決定)により崩壊回数を求めます。
  • (3)〜(5)では、個別の核反応式における保存則を確認し、未知の粒子や数値を特定します。
  • (6)では、静止した原子核の分裂における運動量保存則とエネルギーの関係式を用いて、運動エネルギーを計算します。

問(1)・問(2)

思考の道筋とポイント
ウラン \({}_{92}^{235}\text{U}\) が鉛 \({}_{82}^{207}\text{Pb}\) に変化する過程全体を見ます。
この間に起こった \(\alpha\)崩壊の回数を \(n\)、\(\beta\)崩壊の回数を \(m\) とおきます。
それぞれの崩壊が質量数 \(A\) と原子番号 \(Z\) に与える影響を整理し、保存則の式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 質量数の変化: \(\alpha\)崩壊1回につき \(-4\)、\(\beta\)崩壊では変化なし(\(0\))。
  • 原子番号の変化: \(\alpha\)崩壊1回につき \(-2\)、\(\beta\)崩壊1回につき \(+1\)(中性子が陽子に変わるため)。
  • 解く順序: 質量数は \(\alpha\)崩壊のみに依存するため、まず \(n\) を決定できます。

具体的な解説と立式
\(\alpha\)崩壊の回数を \(n\)、\(\beta\)崩壊の回数を \(m\) とします。

まず、質量数 \(A\) の変化について保存則を立式します。
$$
\begin{aligned}
(\text{変化後の質量数}) &= (\text{変化前の質量数}) – 4 \times (\alpha\text{崩壊の回数}) \\[2.0ex]
207 &= 235 – 4n \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

次に、原子番号 \(Z\) の変化について保存則を立式します。
$$
\begin{aligned}
(\text{変化後の原子番号}) &= (\text{変化前の原子番号}) – 2 \times (\alpha\text{崩壊の回数}) + 1 \times (\beta\text{崩壊の回数}) \\[2.0ex]
82 &= 92 – 2n + 1m \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(質量数・電荷数保存則)
計算過程

式①より \(n\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
4n &= 235 – 207 \\[2.0ex]
4n &= 28 \\[2.0ex]
n &= 7
\end{aligned}
$$
求めた \(n=7\) を式②に代入して \(m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
82 &= 92 – 2(7) + m \\[2.0ex]
82 &= 92 – 14 + m \\[2.0ex]
82 &= 78 + m \\[2.0ex]
m &= 82 – 78 \\[2.0ex]
m &= 4
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ウランが鉛になるまでに、体重(質量数)と背番号(原子番号)がどれだけ変わったかを調べます。
体重を減らせるのは \(\alpha\)崩壊だけなので、まず体重の減り幅から \(\alpha\)崩壊の回数が決まります。
次に、背番号の変化を見ます。\(\alpha\)崩壊で減った分と、\(\beta\)崩壊で増えた分の合計が、最終的な背番号の変化になるはずです。これを使って \(\beta\)崩壊の回数を割り出しました。

結論と吟味

\(\alpha\)崩壊は \(7\) 回、\(\beta\)崩壊は \(4\) 回です。
回数が正の整数になっているため、物理的に妥当な解です。

解答 (1) \(7\)
解答 (2) \(4\)

問(3)

思考の道筋とポイント
最初の1回の崩壊に注目します。
親核は \({}_{92}^{235}\text{U}\)、娘核は \({}_{90}^{231}\text{Th}\) です。
この変化に伴って放出された粒子 \(\text{X}\) を特定します。

この設問における重要なポイント

  • 差分の確認: 質量数と原子番号がそれぞれいくつ減ったかを確認すれば、放出された粒子がわかります。

具体的な解説と立式
反応式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
{}_{92}^{235}\text{U} \to {}_{90}^{231}\text{Th} + \text{X}
\end{aligned}
$$
粒子 \(\text{X}\) の質量数を \(A_X\)、原子番号を \(Z_X\) とし、保存則を立式します。
質量数について:
$$
\begin{aligned}
235 &= 231 + A_X \\[2.0ex]
A_X &= 4
\end{aligned}
$$
原子番号について:
$$
\begin{aligned}
92 &= 90 + Z_X \\[2.0ex]
Z_X &= 2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(質量数・電荷数保存則)
計算過程

上記立式より、\(\text{X}\) は質量数 \(4\)、原子番号 \(2\) の粒子です。
これはヘリウム原子核 \({}_{2}^{4}\text{He}\) であり、すなわち \(\alpha\)粒子です。

この設問の平易な説明

ウランがトリウムに変わるとき、質量数が \(4\) 減り、原子番号が \(2\) 減っています。
この失われた部分を持ち去ったのが粒子 \(\text{X}\) です。
質量数 \(4\)、原子番号 \(2\) の正体はヘリウムの原子核です。

結論と吟味

\(\text{X}\) は \({}_{2}^{4}\text{He}\) です。これは \(\alpha\)崩壊の特徴と一致します。

解答 (3) \({}_{2}^{4}\text{He}\)

問(4)・問(5)

思考の道筋とポイント
続く2段階の崩壊を順に追跡します。
1. \({}_{90}^{231}\text{Th} \to {}_{91}^{x}\text{Pa}\)
2. \({}_{91}^{x}\text{Pa} \to {}_{89}^{y}\text{Ac}\)
それぞれの反応で、原子番号の変化から崩壊の種類(\(\alpha\) か \(\beta\) か)を特定し、質量数 \(x, y\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 原子番号が増える場合: \(\beta\)崩壊(中性子 \(\to\) 陽子 \(+\) 電子)が起きています。質量数は変わりません。
  • 原子番号が減る場合: \(\alpha\)崩壊(\(-2\))の可能性があります。

具体的な解説と立式
まず、\({}_{90}^{231}\text{Th} \to {}_{91}^{x}\text{Pa}\) について考えます。
原子番号が \(90 \to 91\) と \(1\) 増加しています。これは \(\beta\)崩壊です。
\(\beta\)崩壊では質量数は変化しないため、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
x &= 231
\end{aligned}
$$

次に、\({}_{91}^{x}\text{Pa} \to {}_{89}^{y}\text{Ac}\) について考えます。
原子番号が \(91 \to 89\) と \(2\) 減少しています。これは \(\alpha\)崩壊です。
\(\alpha\)崩壊では質量数が \(4\) 減少するため、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
y &= x – 4
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし
計算過程

\(x = 231\) を2つ目の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
y &= 231 – 4 \\[2.0ex]
y &= 227
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

トリウムからプロトアクチニウムへの変化では、原子番号が1つ増えているので、これは「中性子が陽子に変身する」\(\beta\)崩壊です。このとき重さ(質量数)は変わりません。
次にプロトアクチニウムからアクチニウムへの変化では、原子番号が2つ減っているので、これは「ヘリウムの核を捨てる」\(\alpha\)崩壊です。このとき重さは4つ軽くなります。

結論と吟味

\(x=231, y=227\) です。
原子番号の変化と崩壊の種類が矛盾なく対応しています。

解答 (4) \(231\)
解答 (5) \(227\)

問(6)

思考の道筋とポイント
静止していた \({}_{92}^{235}\text{U}\) が、\({}_{90}^{231}\text{Th}\) と \({}_{2}^{4}\text{He}\)(粒子 \(\text{X}\))に分裂しました。
外力が働かない分裂現象なので、運動量保存則が成立します。
質量数の比を質量の比として近似し、エネルギーの分配を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 静止状態からの分裂では、2つの破片は「逆向きに同じ大きさの運動量」を持ちます。
  • エネルギーと質量の関係: 運動量 \(p\) が等しいとき、運動エネルギー \(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\) は質量 \(m\) に反比例します。

具体的な解説と立式
\({}_{90}^{231}\text{Th}\) の質量を \(M\)、速度を \(V\)、運動エネルギーを \(K_{Th}\) とします。
\({}_{2}^{4}\text{He}\) の質量を \(m\)、速度を \(v\)、運動エネルギーを \(K_{He}\) とします。
問題文より \(K_{He} = 7.0 \times 10^{-13}\,\text{J}\) です。
質量比は質量数の比で近似できるため、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
M : m &= 231 : 4
\end{aligned}
$$

分裂直後の運動量保存則(右向き正)を立式します。
$$
\begin{aligned}
(\text{分裂後の運動量の和}) &= (\text{分裂前の運動量の和}) \\[2.0ex]
MV – mv &= 0 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
(※ここでは互いに逆向きに飛ぶため、大きさ \(V, v\) を用いて \(MV + (-mv) = 0\) と考え、移項して \(MV=mv\) としています)

運動エネルギーの定義式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{1}{2}MV^2 \quad \cdots ④ \\[2.0ex]
K_{He} &= \frac{1}{2}mv^2 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1′ + m_2 v_2’\)
  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

式③より \(V = \displaystyle\frac{m}{M}v\) です。これを式④に代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{1}{2}M \left( \frac{m}{M}v \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}M \frac{m^2}{M^2}v^2 \\[2.0ex]
&= \frac{m}{M} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right)
\end{aligned}
$$
ここで、括弧内は \(K_{He}\) そのものです。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{m}{M} K_{He}
\end{aligned}
$$
数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{4}{231} \times (7.0 \times 10^{-13}) \\[2.0ex]
&= \frac{28}{231} \times 10^{-13}
\end{aligned}
$$
\(28 \div 231\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
28 \div 231 &\approx 0.1212\dots
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &\approx 0.1212 \times 10^{-13} \\[2.0ex]
&= 1.212 \times 10^{-14}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で丸めます。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &\approx 1.2 \times 10^{-14}\,\text{J}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

止まっていたものが2つに割れて飛び出すとき、軽い破片ほど勢いよく(速く)飛び出し、重い破片はゆっくり動きます。
計算してみると、エネルギーは質量の逆比(軽いほうがエネルギー大、重いほうがエネルギー小)に分配されることがわかります。
今回はヘリウム(質量4)とトリウム(質量231)なので、重いトリウムが受け取るエネルギーは、ヘリウムの \(4/231\) 倍というごくわずかな量になります。

結論と吟味

答えは \(1.2 \times 10^{-14}\,\text{J}\) です。
重い原子核(Th)のエネルギーが、軽い粒子(He)のエネルギーよりも一桁小さくなっています。分裂では軽い粒子がエネルギーの大半を持ち去るという物理的直感と一致します。

解答 (6) \(1.2 \times 10^{-14}\,\text{J}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの保存則導出)

思考の道筋とポイント
公式としての「運動量保存則」や「運動エネルギーの式」を前提とせず、ニュートンの運動方程式から出発します。
分裂の瞬間に働く内力(作用・反作用)を時間積分することで運動量保存則を導き、さらに運動エネルギーを運動量 \(p\) の関数として表すことで、エネルギー分配の法則を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 力 \(F\) を時間 \(t\) で積分すると運動量の変化 \(\Delta p\) になります(力積と運動量の関係)。
  • 作用・反作用の法則: 2つの粒子が及ぼし合う力は、常に逆向きで同じ大きさです(\(F_{Th} = -F_{He}\))。
  • エネルギーの運動量表示: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = \frac{(mv)^2}{2m} = \frac{p^2}{2m}\) と変形することで、\(p\) が共通の場合の \(K\) と \(m\) の関係が見やすくなります。

具体的な解説と立式
分裂中のある瞬間において、トリウム原子核が受ける力を \(F_{Th}(t)\)、ヘリウム原子核が受ける力を \(F_{He}(t)\) とします。
運動方程式 \(ma = F\) は、運動量 \(p = mv\) の時間微分を用いて次のように書けます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp_{Th}}{dt} &= F_{Th}(t) \\[2.0ex]
\frac{dp_{He}}{dt} &= F_{He}(t)
\end{aligned}
$$
作用・反作用の法則より、これらの力は常に和がゼロです。
$$
\begin{aligned}
F_{Th}(t) + F_{He}(t) &= 0
\end{aligned}
$$
分裂が始まってから終わるまでの時間 \(0 \sim \tau\) で両辺を積分します。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{\tau} \left( \frac{dp_{Th}}{dt} + \frac{dp_{He}}{dt} \right) dt &= \int_{0}^{\tau} 0 \, dt \\[2.0ex]
[p_{Th}(t) + p_{He}(t)]_{0}^{\tau} &= 0
\end{aligned}
$$
初期状態(\(t=0\))では静止していたので \(p_{Th}(0) = p_{He}(0) = 0\) です。
分裂後(\(t=\tau\))の運動量を単に \(p_{Th}, p_{He}\) と書くと、以下の保存則が得られます。
$$
\begin{aligned}
p_{Th} + p_{He} &= 0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
これは、2つの運動量ベクトルの大きさが等しく(これを \(p\) とします)、向きが逆であることを示しています。
$$
\begin{aligned}
|p_{Th}| &= |p_{He}| = p
\end{aligned}
$$

次に、運動エネルギー \(K\) を運動量 \(p\) を用いて表します。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{1}{2}mv^2 = \frac{p^2}{2m}
\end{aligned}
$$
これを用いて、トリウムとヘリウムのエネルギー比を立式します。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{p^2}{2M} \quad \cdots ⑦ \\[2.0ex]
K_{He} &= \frac{p^2}{2m} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(微分形): \(F = \displaystyle\frac{dp}{dt}\)
  • 作用・反作用の法則: \(F_{1 \to 2} = -F_{2 \to 1}\)
  • 運動エネルギー(運動量表示): \(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\)
計算過程

式⑦と式⑧の比をとります。\(p^2\) と \(2\) が共通なので約分されます。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{Th}}{K_{He}} &= \frac{\frac{p^2}{2M}}{\frac{p^2}{2m}} \\[2.0ex]
&= \frac{m}{M}
\end{aligned}
$$
これより、
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{m}{M} K_{He}
\end{aligned}
$$
これはメイン解法で導いた式と全く同じです。
数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
K_{Th} &= \frac{4}{231} \times 7.0 \times 10^{-13} \\[2.0ex]
&\approx 1.2 \times 10^{-14}\,\text{J}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力が運動量を変える」という基本ルール(運動方程式)からスタートしました。
分裂の際、2つの粒はお互いに押し合いますが、その力は常に「同じ大きさで逆向き」です。
だから、最終的に得られる運動量の大きさも必ず同じになります。
運動量が同じなら、エネルギー \(K = p^2/2m\) は質量 \(m\) に反比例します。つまり、軽いものほど大きなエネルギーを持ちます。
この関係を使うと、速度 \(V\) を計算しなくても、質量の比だけでエネルギーを一発で求めることができます。

結論と吟味

微積分を用いて原理から導出しましたが、結果はメイン解法と完全に一致しました。
この方法は、速度 \(V\) を経由せずに直接エネルギーの関係式を導けるため、計算ミスが少なく、物理的な意味(質量とエネルギーの反比例関係)も捉えやすいという利点があります。

解答 (6) \(1.2 \times 10^{-14}\,\text{J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 保存則の連鎖的適用
    • 核心: 核反応においては、「質量数(核子の総数)」と「電荷数(陽子数)」が反応の前後で厳密に保存されます。さらに、外力が働かない分裂過程では「運動量」も保存されます。
    • 理解のポイント:
      • 粒子の正体: \(\alpha\)粒子は \({}_{2}^{4}\text{He}\)、\(\beta\)粒子は \({}_{-1}^{0}\text{e}\) であることを暗記ではなく、構成要素(陽子・中性子)から理解しておきましょう。
      • 静止からの分裂: 元が止まっていれば、分裂後の運動量の総和もゼロです。これは2つの破片が「逆向きに同じ運動量」を持つことを意味します。
  • エネルギー分配の逆比則
    • 核心: 静止した物体が2つに分裂する場合、運動エネルギーは質量の「逆比」に分配されます。軽い破片ほど、圧倒的に大きなエネルギーを持ち去ります。
    • 理解のポイント:
      • 導出のロジック: 運動量 \(p\) が共通であるため、\(K = p^2 / 2m\) より \(K \propto 1/m\) となります。この式変形は、速度 \(v\) を介さずにエネルギー比を直感的に理解する最強のツールです。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 崩壊系列の追跡: 「ウラン系列」や「トリウム系列」など、長い崩壊連鎖の一部を切り取って出題されるケース。今回のように始点と終点の差分を見るだけで、途中の経路に関わらず \(\alpha, \beta\) の総回数は特定できます。
    • 原子核反応とエネルギー: 核分裂だけでなく、核融合や人工核変換の問題でも、質量欠損 \(\Delta m\) とエネルギー \(E = \Delta mc^2\) の関係とセットで、運動量保存則が頻出します。
    • 3体への分裂: もし3つに分裂する場合でも、運動量ベクトル \(\vec{p}_1 + \vec{p}_2 + \vec{p}_3 = \vec{0}\) は成立します。この場合、ベクトル図(三角形)を描く解法が有効になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 保存量のチェック: まず質量数と原子番号の収支を合わせます。未知の粒子があれば、この収支から特定します。
    2. 「静止」のキーワード: 「静止した原子核が崩壊」という文言を見たら、即座に「運動量保存則 \(\to\) 運動量は逆向き等大」と反応できるようにしましょう。
    3. 比の計算の活用: 質量そのもの(kg)ではなく、質量数(u)の比を使って計算できる場合がほとんどです。巨大な指数計算を避けるため、最後まで文字式のまま比を扱い、最後に数値を代入しましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • \(\beta\)崩壊の質量数変化の勘違い:
    • 誤解: 「電子が出るから少し軽くなるはず」と考え、質量数を減らしてしまう。あるいは、原子番号が増えることを忘れてしまう。
    • 対策: \(\beta\)崩壊の本質は「中性子 \(\to\) 陽子 \(+\) 電子」です。核子の総数(質量数)は変わらず、陽子が1つ増える(原子番号 \(+1\))というルールを徹底しましょう。電子の質量は原子核に比べて無視できるほど小さいので、質量数は不変として扱います。
  • 運動エネルギー計算での速度の混同:
    • 誤解: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) の式を使う際、運動量保存則 \(MV=mv\) から \(V\) を求める計算で、分母分子を取り違えたり、2乗の計算でミスをする。
    • 対策: 別解で示した \(K = p^2 / 2m\) の形を使うことを強く推奨します。これにより、速度 \(V\) を計算するステップ自体をスキップでき、計算ミスを劇的に減らせます。「運動量が同じなら、エネルギーは質量の逆比」と呪文のように覚えておくと検算にも役立ちます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(6)での公式選択(\(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) vs \(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\)):
    • 選定理由: 模範解答では定義通りの \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) を使っていますが、これは速度 \(v\) が既知の場合に便利です。一方、今回の問題のように「運動量が保存(共通)」している状況では、\(K = \displaystyle\frac{p^2}{2m}\) を選ぶ方が論理的にスマートです。
    • 適用根拠: どちらも数学的に等価ですが、変数が「速度」か「運動量」かの違いです。保存量である「運動量」を変数に選ぶことで、連立方程式を解く手間を省き、物理的本質(質量との反比例)を直接式に反映できます。
  • 問(6)別解での公式選択(運動方程式の積分):
    • 選定理由: 「運動量保存則」を忘れてしまった場合や、外力が働く複雑なケース(例:電場中での崩壊)に応用する場合に備え、原理から導く力を養うためです。
    • 適用根拠: ニュートンの運動方程式 \(F = dp/dt\) は力学の全ての出発点です。これを積分すれば必ず運動量の変化量(力積)が得られます。内力のみの系では和がゼロになるため、保存則が自然に導かれます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式での完遂:
    • いきなり \(231\) や \(7.0 \times 10^{-13}\) などの数値を代入せず、\(M, m, K_{He}\) などの文字のまま \(K_{Th} = \displaystyle\frac{m}{M} K_{He}\) まで変形しきってください。形がシンプルになってから代入することで、計算回数を減らし、ミスを防げます。
  • 指数の処理:
    • \(10^{-13}\) などの指数部分は、計算の最後に取り付ける「飾り」として扱い、係数部分(\(4/231 \times 7.0\))の計算に集中しましょう。途中で指数を展開したりすると、桁間違いの元になります。
  • 常識的な見積もり(フェルミ推定的な感覚):
    • 「重い戦車(Th)と軽いボール(He)が押し合って離れる」状況をイメージしてください。ボールの方が圧倒的に速く飛び、エネルギーも大きいはずです。もし計算結果で戦車の方がエネルギーが大きくなったら、その時点で「逆だ!」と気づける感覚を持ちましょう。

問題152 (立教大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)[エ]の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの運動量保存則の導出)
      • 模範解答は運動量保存則を自明な前提として使用していますが、別解ではニュートンの運動方程式と作用・反作用の法則から、系全体の運動量が保存されることを数学的に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理の理解: 「なぜ光子放出時に原子核が反跳するのか」という現象を、力積と運動量の変化という力学の基本原理から理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「原子核崩壊と素粒子反応における保存則」です。
ミクロな世界でも、エネルギーや運動量といった物理量は厳密に保存されます。特に、質量とエネルギーが等価であるというアインシュタインの関係式(\(E=mc^2\))が重要な役割を果たします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 核反応の保存則: 反応の前後で「質量数(陽子と中性子の総数)」と「電荷数(原子番号)」は保存されます。
  • 光量子仮説: 光は粒子(光子)としての性質を持ち、そのエネルギー \(E\) は振動数 \(\nu\) に比例します(\(E=h\nu\))。
  • 光子の運動量: 光子は質量が \(0\) ですが、運動量 \(p = \displaystyle\frac{E}{c} = \frac{h}{\lambda}\) を持ちます。
  • 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) はエネルギー \(E=mc^2\) と等価であり、対消滅などの反応で相互に変換されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)前半では、\(\alpha\)崩壊の定義に従って質量数と原子番号の変化を追跡します。
  • (1)後半では、光子のエネルギーの式と、光子放出に伴う反作用(運動量保存則)を用いて計算します。
  • (2)では、電子と陽電子の対消滅におけるエネルギー保存則を立式し、質量エネルギーを光子のエネルギーに変換します。

問(1) [ア][イ]

思考の道筋とポイント
ビスマス \({}^{212}_{83}\text{Bi}\) が \(\alpha\)崩壊してタリウム \({}^{\text{ア}}_{\text{イ}}\text{Tl}\) になる反応を考えます。
\(\alpha\)崩壊とは、原子核がヘリウム原子核 \({}^{4}_{2}\text{He}\)(\(\alpha\)粒子)を放出して別の原子核に変わる現象です。
反応の前後で、質量数の総和と電荷数(原子番号)の総和が等しくなるように式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • \(\alpha\)粒子の正体: \({}^{4}_{2}\text{He}\) です。質量数が \(4\)、原子番号が \(2\) です。
  • 保存則の適用:
    • 質量数保存: \((\text{親核}) = (\text{娘核}) + 4\)
    • 電荷数保存: \((\text{親核}) = (\text{娘核}) + 2\)

具体的な解説と立式
崩壊後のタリウムの質量数を \(\text{ア}\)、原子番号を \(\text{イ}\) とします。
反応式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
{}^{212}_{83}\text{Bi} \to {}^{\text{ア}}_{\text{イ}}\text{Tl} + {}^{4}_{2}\text{He}
\end{aligned}
$$

質量数の保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
212 &= \text{ア} + 4 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

電荷数(原子番号)の保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
83 &= \text{イ} + 2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(質量数・電荷数保存則)
計算過程

式①より \(\text{ア}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\text{ア} &= 212 – 4 \\[2.0ex]
&= 208
\end{aligned}
$$

式②より \(\text{イ}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\text{イ} &= 83 – 2 \\[2.0ex]
&= 81
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

原子核が「身軽になりたい」といって、陽子2個と中性子2個のセット(ヘリウムの核)を外に放り出しました。
もともと体重(質量数)が212あったのが4減って208になり、背番号(原子番号)が83だったのが2減って81になりました。

結論と吟味

アは \(208\)、イは \(81\) です。
これはタリウム(Tl)の同位体として妥当な数値です。

解答 [ア] \(208\)
解答 [イ] \(81\)

問(1) [ウ]

思考の道筋とポイント
崩壊後にできたタリウム原子核が、余分なエネルギーを光子(ガンマ線)として放出して安定になります。
与えられた光子のエネルギー \(E\) から、振動数 \(\nu\) を求めます。
エネルギーの単位が電子ボルト \([\text{eV}]\) で与えられているため、ジュール \([\text{J}]\) に換算してからプランク定数 \(h\) を用いて計算します。

この設問における重要なポイント

  • 単位換算: \(1\,\text{eV} = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{J}\) です。物理定数表にある電気素量 \(e\) の値を使います。
  • 光量子仮説: 光子のエネルギーと振動数の関係は \(E = h\nu\) です。

具体的な解説と立式
光子のエネルギーを \(E\)、振動数を \(\nu\)、プランク定数を \(h\) とします。
与えられたエネルギーは \(E_{\text{eV}} = 4.5 \times 10^5\,\text{eV}\) です。
これをジュール単位の \(E_{\text{J}}\) に換算する式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{J}} &= E_{\text{eV}} \times (1.6 \times 10^{-19})
\end{aligned}
$$

光子のエネルギーと振動数の関係式 \(E_{\text{J}} = h\nu\) より、\(\nu\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{E_{\text{J}}}{h} \\[2.0ex]
&= \frac{E_{\text{eV}} \times (1.6 \times 10^{-19})}{h} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
計算過程

式③に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{(4.5 \times 10^5) \times (1.6 \times 10^{-19})}{6.6 \times 10^{-34}}
\end{aligned}
$$

まず、分子の係数部分と指数部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
(\text{分子}) &= (4.5 \times 1.6) \times 10^{5-19} \\[2.0ex]
&= 7.2 \times 10^{-14}
\end{aligned}
$$
(※ \(4.5 \times 1.6 = 4.5 \times (2 \times 0.8) = 9.0 \times 0.8 = 7.2\) と計算すると楽です)

次に、全体を計算します。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{7.2 \times 10^{-14}}{6.6 \times 10^{-34}} \\[2.0ex]
&= \frac{7.2}{6.6} \times 10^{-14 – (-34)} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{11} \times 10^{20}
\end{aligned}
$$
\(12 \div 11\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
12 \div 11 &= 1.0909\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で丸めます。
$$
\begin{aligned}
\nu &\approx 1.1 \times 10^{20}\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

光の粒(光子)1個が持つエネルギーは、その光の「振動数(波としての揺れの速さ)」で決まります。
エネルギーの値がわかっているので、それをプランク定数という決まった数で割れば、振動数が求まります。
ただし、エネルギーの単位が「電子ボルト」という特殊なものなので、計算する前に普通の「ジュール」に直す必要があります。

結論と吟味

答えは \(1.1 \times 10^{20}\,\text{Hz}\) です。
ガンマ線の振動数は通常 \(10^{19}\,\text{Hz}\) 以上なので、オーダーとして妥当です。

解答 [ウ] \(1.1 \times 10^{20}\)

問(1) [エ]

思考の道筋とポイント
静止していたタリウム原子核が光子を放出した際、反作用で原子核自身も動きます(反跳)。
外力が働かないため、系全体の運動量は保存されます。
光子の運動量と原子核の運動量が、逆向きで同じ大きさになることを利用します。

この設問における重要なポイント

  • 光子の運動量: 質量ゼロの光子も運動量を持ちます。その大きさは \(p_{\gamma} = \displaystyle\frac{E}{c}\) です。
  • 運動量保存則: \((\text{原子核の運動量}) + (\text{光子の運動量}) = 0\) (ベクトル和)。

具体的な解説と立式
光子放出後のタリウム原子核の運動量の大きさを \(P_{\text{Tl}}\)、光子の運動量の大きさを \(p_{\gamma}\) とします。
初期状態では原子核は静止していたので、全運動量は \(0\) です。
運動量保存則(大きさの関係)より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= p_{\gamma} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

光子の運動量の大きさ \(p_{\gamma}\) は、エネルギー \(E_{\text{J}}\) と光速 \(c\) を用いて次のように表されます。
$$
\begin{aligned}
p_{\gamma} &= \frac{E_{\text{J}}}{c} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

これらを組み合わせると、求める運動量の大きさ \(P_{\text{Tl}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= \frac{E_{\text{J}}}{c}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(\vec{p}_{\text{前}} = \vec{p}_{\text{後}}\)
  • 光子の運動量: \(p = \displaystyle\frac{E}{c}\)
計算過程

前問で求めた \(E_{\text{J}} = 7.2 \times 10^{-14}\,\text{J}\) を使用します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= \frac{7.2 \times 10^{-14}}{3.0 \times 10^8}
\end{aligned}
$$

係数部分と指数部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= \frac{7.2}{3.0} \times 10^{-14 – 8} \\[2.0ex]
&= 2.4 \times 10^{-22}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ピストルを撃つと反動で手が後ろに押されるのと同じように、原子核が光子という「弾丸」を発射すると、原子核自身も反対側に勢いよく押されます。
もともと止まっていたので、発射された光子の勢い(運動量)と、原子核が後ろに下がる勢いは、ちょうど同じ大きさになります。
光子の勢いはエネルギーを光の速さで割ることで計算できます。

結論と吟味

答えは \(2.4 \times 10^{-22}\,\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\) です。
原子核の質量は非常に大きいため、この程度の運動量では速度は小さいですが、確実に反跳が起きています。

解答 [エ] \(2.4 \times 10^{-22}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの運動量保存則の導出)

思考の道筋とポイント
「運動量保存則」を天下り的に使うのではなく、ニュートンの運動方程式から出発して導きます。
原子核と光子(電磁場)が相互作用する際、互いに及ぼし合う力は作用・反作用の関係にあります。
この力を時間で積分(力積)することで、運動量の変化量の和がゼロになることを示します。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分形: 力 \(F\) の時間積分は、運動量 \(p\) の変化量 \(\Delta p\) に等しい(\(\int F dt = \Delta p\))。
  • 作用・反作用の法則: 原子核が光子を押し出す力と、光子が原子核を押す力は、常に逆向きで同じ大きさです。

具体的な解説と立式
光子放出の過程において、時刻 \(t\) に原子核が受ける力を \(F_{\text{Tl}}(t)\)、光子(電磁場)が受ける力を \(F_{\gamma}(t)\) とします。
運動方程式 \(F = \displaystyle\frac{dp}{dt}\) より、それぞれの運動量の時間変化率は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp_{\text{Tl}}}{dt} &= F_{\text{Tl}}(t) \\[2.0ex]
\frac{dp_{\gamma}}{dt} &= F_{\gamma}(t)
\end{aligned}
$$

作用・反作用の法則より、\(F_{\text{Tl}}(t) + F_{\gamma}(t) = 0\) が常に成り立ちます。
放出が始まってから終わるまでの時間で両辺を積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \left( \frac{dp_{\text{Tl}}}{dt} + \frac{dp_{\gamma}}{dt} \right) dt &= \int 0 \, dt \\[2.0ex]
\Delta p_{\text{Tl}} + \Delta p_{\gamma} &= 0
\end{aligned}
$$

初期状態では原子核は静止しており、光子も存在しなかった(運動量ゼロ)ので、変化量はそのまま最終的な運動量になります。
$$
\begin{aligned}
p_{\text{Tl}} + p_{\gamma} &= 0
\end{aligned}
$$
ベクトルの大きさを考えると、\(|p_{\text{Tl}}| = |p_{\gamma}|\) となります。
光子の運動量の大きさは \(|p_{\gamma}| = \displaystyle\frac{E}{c}\) なので、原子核の運動量の大きさ \(P_{\text{Tl}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= \frac{E}{c}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(微分形): \(F = \displaystyle\frac{dp}{dt}\)
  • 作用・反作用の法則: \(F_{\text{A} \to \text{B}} = -F_{\text{B} \to \text{A}}\)
計算過程

計算式はメインの解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{Tl}} &= \frac{7.2 \times 10^{-14}}{3.0 \times 10^8} \\[2.0ex]
&= 2.4 \times 10^{-22}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力が働くと運動量が変わる」という基本ルール(運動方程式)から考えました。
原子核と光子はお互いに押し合いますが、その力はプラスマイナスゼロです。
力を時間で積み重ねたもの(力積)もゼロになるので、結果として生まれた運動量の合計もゼロになります。
つまり、原子核が得た運動量と光子が得た運動量は、大きさは同じで向きが逆になります。

結論と吟味

原理的な導出からも、運動量保存則が成立することが確認できました。
結果は \(2.4 \times 10^{-22}\,\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\) で一致します。

解答 [エ] \(2.4 \times 10^{-22}\)

問(2) [オ]

思考の道筋とポイント
電子(物質)と陽電子(反物質)が衝突して消滅し、光エネルギーに変わる「対消滅」という現象です。
反応前の質量エネルギーが、反応後の光子のエネルギーに変換されます。
静止した電子と陽電子の質量は等しく \(m_e\) です。
発生する2個の光子は、運動量保存則により逆向きに飛び、対称性から等しいエネルギーを持ちます。

この設問における重要なポイント

  • 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) の物体は、静止していても \(E = mc^2\) というエネルギーを持ちます。
  • エネルギー保存則: \((\text{反応前の全エネルギー}) = (\text{反応後の全エネルギー})\)。

具体的な解説と立式
電子の質量を \(m_e\)、光速を \(c\) とします。
反応前の全エネルギー \(E_{\text{前}}\) は、電子と陽電子の静止エネルギーの和です。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{前}} &= m_e c^2 + m_e c^2 \\[2.0ex]
&= 2m_e c^2
\end{aligned}
$$

反応後の全エネルギー \(E_{\text{後}}\) は、2個の光子のエネルギーの和です。光子1個のエネルギーを \(E_{\gamma}\) とします。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{後}} &= E_{\gamma} + E_{\gamma} \\[2.0ex]
&= 2E_{\gamma}
\end{aligned}
$$

エネルギー保存則 \(E_{\text{前}} = E_{\text{後}}\) より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
2m_e c^2 &= 2E_{\gamma} \\[2.0ex]
E_{\gamma} &= m_e c^2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 静止エネルギー: \(E = mc^2\)
計算過程

式⑥に数値を代入して \(E_{\gamma}\)(ジュール単位)を求めます。
$$
\begin{aligned}
E_{\gamma} &= (9.1 \times 10^{-31}) \times (3.0 \times 10^8)^2 \\[2.0ex]
&= 9.1 \times 10^{-31} \times 9.0 \times 10^{16} \\[2.0ex]
&= (9.1 \times 9.0) \times 10^{-31+16} \\[2.0ex]
&= 81.9 \times 10^{-15}\,\text{J}
\end{aligned}
$$

これを \([\text{MeV}]\) 単位に換算します。
\(1\,\text{MeV} = 10^6\,\text{eV} = 10^6 \times (1.6 \times 10^{-19})\,\text{J} = 1.6 \times 10^{-13}\,\text{J}\) です。
$$
\begin{aligned}
E_{\gamma}[\text{MeV}] &= \frac{81.9 \times 10^{-15}}{1.6 \times 10^{-13}} \\[2.0ex]
&= \frac{81.9}{1.6} \times 10^{-15 – (-13)} \\[2.0ex]
&= 51.1875 \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= 0.511875
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で丸めます。
$$
\begin{aligned}
E_{\gamma} &\approx 0.51\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物質(電子)と反物質(陽電子)が出会うと、お互いの質量を完全にエネルギーに変えて消滅してしまいます。
アインシュタインの有名な式 \(E=mc^2\) を使って、電子の質量がどれだけのエネルギーになるかを計算しました。
できたエネルギーは2つの光子に半分ずつ分けられますが、もともと電子と陽電子は同じ重さなので、結局「電子1個分の質量エネルギー」が「光子1個分のエネルギー」になります。

結論と吟味

答えは \(0.51\,\text{MeV}\) です。
電子の静止質量エネルギーが約 \(0.51\,\text{MeV}\) であることは、原子物理における基本的な定数としてよく知られており、正しい結果です。

解答 [オ] \(0.51\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\))
    • 核心: 質量はエネルギーの一形態であり、核反応や素粒子反応において相互に変換可能です。特に対消滅では、質量が完全に消失し、等量の光エネルギーに変わります。
    • 理解のポイント:
      • 静止エネルギー: 物体は動いていなくても、存在するだけで \(mc^2\) という莫大なエネルギーを持っています。
      • 単位の感覚: 原子の世界ではジュール \([\text{J}]\) は大きすぎるため、電子ボルト \([\text{eV}]\) やメガ電子ボルト \([\text{MeV}]\) が標準的に使われます。換算係数 \(1.6 \times 10^{-19}\) は電気素量 \(e\) と同じ値です。
  • 光子の粒子性(エネルギーと運動量)
    • 核心: 光は波であると同時に粒子(光子)でもあります。質量ゼロですが、エネルギー \(E=h\nu\) と運動量 \(p=E/c=h/\lambda\) を持ち、物質と衝突すれば力を及ぼします(光圧)。
    • 理解のポイント:
      • 運動量保存則の適用: 光子放出や吸収の際も、力学的な衝突と同様に運動量保存則が厳密に成立します。これにより原子核の反跳などが起こります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンプトン効果: 電子と光子の弾性衝突です。エネルギー保存則と運動量保存則を連立させて解く、原子物理の最重要テーマの一つです。
    • 核分裂・核融合: 質量欠損 \(\Delta m\) を計算し、放出されるエネルギー \(E = \Delta m c^2\) を求める問題。今回の対消滅はその極端な例(質量が全てエネルギーになる)と言えます。
    • 対生成: 光子から電子と陽電子が生まれる、対消滅の逆反応です。この場合、光子のエネルギーは少なくとも \(2m_e c^2\) 以上である必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反応前後の収支チェック: 質量数、電荷数、エネルギー、運動量の4つが保存されているかを確認します。
    2. 単位の確認: \([\text{eV}]\) なのか \([\text{J}]\) なのか、\([\text{Hz}]\) なのか \([\text{m}]\)(波長)なのか。計算前に必ず単位を揃えましょう。
    3. 「静止」からの反応: 「静止した〜が崩壊/消滅」という設定は、運動量の総和がゼロであることを意味します。生成物は必ず逆向きに飛び出し、運動量の大きさは等しくなります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 単位換算の方向ミス:
    • 誤解: \([\text{eV}]\) から \([\text{J}]\) に直すとき、\(1.6 \times 10^{-19}\) で割ってしまう(あるいはその逆)。
    • 対策: 「\(1\,\text{eV}\) は電子1個を \(1\,\text{V}\) で加速するエネルギー」という定義を思い出しましょう。\(W=qV\) より、\(1.6 \times 10^{-19}\,\text{C} \times 1\,\text{V} = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{J}\) です。つまり \([\text{eV}]\) の値に \(e\) を掛けると \([\text{J}]\) になります。
  • 光子の運動量公式の失念:
    • 誤解: 運動量 \(p=mv\) の式を使おうとして、光子の質量 \(m=0\) を代入し、運動量ゼロとしてしまう。
    • 対策: 光子にはニュートン力学の \(p=mv\) は通用しません。相対論的な関係式 \(E^2 = (pc)^2 + (mc^2)^2\) において \(m=0\) とした \(E=pc\) (すなわち \(p=E/c\))を使いましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)[エ]での公式選択(運動量保存則):
    • 選定理由: 「原子核が反動で動く」という現象は、力学的な作用・反作用の結果です。外力が働かない系での分裂現象なので、運動量保存則が最も直接的かつ強力なツールとなります。
    • 適用根拠: 光子も運動量を持つ粒子として扱えるため、原子核と光子の系全体に対して保存則を適用できます。
  • 問(2)での公式選択(\(E=mc^2\)):
    • 選定理由: 物質(質量)が消えてエネルギーに変わるという現象を記述できるのは、アインシュタインの質量エネルギー等価式だけです。
    • 適用根拠: 対消滅は質量の完全なエネルギー変換プロセスそのものです。運動エネルギーなどの他のエネルギー形態を考慮する必要がない(静止しているため)ので、静止エネルギー \(mc^2\) だけを考えれば十分です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数の計算管理:
    • 原子物理の計算では \(10^{-34}\) や \(10^{20}\) といった極端な指数が頻出します。係数部分(\(1.2 \times 3.4\) など)と指数部分(\(10^{-19+8}\) など)を完全に分離して計算し、最後に合体させる手順を徹底してください。
  • 定数の事前計算:
    • \(hc\) や \(m_e c^2\) などの定数の組み合わせは頻繁に登場します。\(hc \approx 1.24 \times 10^{-6}\,\text{eV}\cdot\text{m}\) や \(m_e c^2 \approx 0.51\,\text{MeV}\) といった値を知識として持っておくと、計算結果の桁が正しいかどうかの強力な検算になります(ただし、解答記述では問題文の数値を使って計算すること)。
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問題153 (東海大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(d)の別解: 微積分を用いた体系的解法(エネルギー保存則の導出)
      • 模範解答は質量欠損とエネルギーの関係式 \(E = \Delta m c^2\) を既知の公式として適用していますが、別解では相対論的な運動方程式から出発し、質量とエネルギーの等価性を数学的に導出するプロセスを概説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理の理解: 「なぜ質量が減るとエネルギーが出るのか」という根本的な疑問に対し、アインシュタインの特殊相対性理論の基礎方程式からアプローチすることで、物理学的な背景を深く理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「原子核反応と結合エネルギー」です。
原子核を構成する陽子や中性子の質量と、原子核そのものの質量にはわずかな差(質量欠損)があります。この差が莫大なエネルギーの源となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量欠損: 原子核の質量は、それを構成する核子の質量の総和よりも軽くなります。この差を質量欠損 \(\Delta m\) と呼びます。
  • 結合エネルギー: 核子をバラバラにするのに必要なエネルギーであり、質量欠損に相当するエネルギー \(E = \Delta m c^2\) と等しくなります。
  • 核反応の保存則: 反応の前後で、質量数(核子の総数)と電荷数(原子番号)は保存されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (a)では、重水素原子核の構成要素(陽子1、中性子1)の質量和と、実際の質量の差を計算します。
  • (b)では、核反応式における質量数と電荷数の保存則を用いて、空欄の数値を特定します。
  • (c)(d)では、反応前後の質量の総和を比較して質量欠損を求め、それをエネルギーに換算します。

問(a)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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