「名問の森」徹底解説(64〜66問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題64 原子核 (新潟大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)(5)の別解: 運動方程式と保存則による体系的解法(一括解説)
      • 模範解答は、運動量保存則から導かれる「運動エネルギーは質量の逆比になる」という特性(テクニック)を利用して計算していますが、別解では、運動方程式の積分から運動量とエネルギーの定義式を導出し、運動量保存則とエネルギー保存則を連立方程式として解くことで、一般解を導いてから数値を代入する原理的なアプローチをとります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理からの理解: 公式を暗記するのではなく、ニュートンの運動法則から原子核反応のエネルギー分配までを一貫して導出できるため、物理的基礎体力が養われます。
    • 汎用性: 質量比が単純な整数比にならない場合や、3体以上の分裂など、比のテクニックが使いにくい複雑な状況にも対処できる汎用的な解法です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「原子核反応における保存則とエネルギー」です。アインシュタインの質量とエネルギーの等価性を軸に、核反応前後の質量変化とエネルギーの出入り、そして分裂した粒子の運動エネルギー分配について考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) の物体は、\(E=mc^2\) という莫大な静止エネルギーを持ちます。
  • 質量欠損と反応エネルギー: 核反応の前後で質量の総和が減少する場合、その減少分(質量欠損 \(\Delta m\))がエネルギー \(\Delta E = \Delta m c^2\) として放出されます。
  • 保存則: 核反応では、「質量数(陽子数+中性子数)」と「電荷数(原子番号)」が保存されます。また、外力が働かない分裂現象では「運動量」が保存されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、特殊相対性理論の基本公式を答えます。
  • (2)では、反応式の左辺と右辺で質量数と原子番号の和が等しくなることを利用して、未知の原子核を特定します。
  • (3)では、放出されたエネルギーを質量に換算し、質量保存の式(厳密にはエネルギー保存則)から未知の質量を逆算します。
  • (4)(5)では、静止した原子核が2つに分裂する際の運動量保存則を利用し、発生したエネルギーがどのように分配されるかを計算します。
  • (6)では、\(\beta\) 崩壊の性質(中性子が陽子に変わる)に基づいて変化後の原子核を答えます。

問(1)

思考の道筋とポイント
特殊相対性理論における最も有名な関係式を問う知識問題です。
質量 \(m\) とエネルギー \(E\) が等価であり、その変換係数が光速 \(c\) の2乗であることを想起します。

この設問における重要なポイント

  • 静止エネルギー: 物体が動いていなくても、質量を持っているだけで持っているエネルギーのことです。

具体的な解説と立式
アインシュタインの特殊相対性理論によれば、質量 \(m\) の物体は、真空中の光速を \(c\) として、以下のエネルギー \(E\) と等価です。
$$
\begin{aligned}
E &= mc^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E=mc^2\)
計算過程

計算は不要で、公式そのものを答えます。

この設問の平易な説明

「質量(重さのもと)」と「エネルギー」は実は同じものであり、形を変えているに過ぎないというアインシュタインの発見です。ほんの少しの質量が消えるだけで、\(c^2\)(光速の2乗という非常に大きな数)倍の莫大なエネルギーが生まれます。これが原子力発電や太陽が燃える原理です。

結論と吟味

有名な公式 \(E=mc^2\) そのものです。次元を確認すると、左辺はエネルギー \([\text{ML}^2\text{T}^{-2}]\) 、右辺は質量 \([\text{M}]\) \(\times\) 速度の2乗 \([\text{L}^2\text{T}^{-2}]\) で一致しています。

解答 (1) \(E=mc^2\)

問(2)

思考の道筋とポイント
核反応式における保存則を利用します。化学反応では原子の組み合わせが変わるだけですが、核反応では原子核そのものが変化します。しかし、以下の2つの量は保存されます。

  1. 質量数(左上の数字)の和: 陽子と中性子の総数は変わりません。
  2. 原子番号(左下の数字)の和: 電荷の総和は変わりません。

この設問における重要なポイント

  • 中性子の表記: 中性子 \(\text{n}\) は電荷を持たず質量数が \(1\) なので、\({}^1_0\text{n}\) と表されます。
  • 未知核の特定: 未知の原子核 \(\text{X}\) の質量数を \(A\)、原子番号を \(Z\) と置き、左右の和を比較します。

具体的な解説と立式
反応式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
{}^6_3\text{Li} + {}^1_0\text{n} \longrightarrow {}^4_2\text{He} + {}^A_Z\text{X}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\text{X}\) の質量数を \(A\)、原子番号を \(Z\) としました。
質量数の保存(上側の数字の和)より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
6 + 1 &= 4 + A \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
原子番号(電荷数)の保存(下側の数字の和)より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
3 + 0 &= 2 + Z \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量数保存則
  • 電荷数(原子番号)保存則
計算過程

式①より、
$$
\begin{aligned}
7 &= 4 + A \\[2.0ex] A &= 3
\end{aligned}
$$
式②より、
$$
\begin{aligned}
3 &= 2 + Z \\[2.0ex] Z &= 1
\end{aligned}
$$
原子番号 \(Z=1\) は水素(\(\text{H}\))です。質量数が \(3\) なので、三重水素(トリチウム)となります。
したがって、\(\text{X}\) は \({}^3_1\text{H}\) です。

この設問の平易な説明

反応の前後で、「粒の総数(質量数)」と「電気の総量(原子番号)」は変わりません。
左辺には粒が合計 \(6+1=7\) 個、電気が \(3+0=3\) 単位あります。
右辺にはヘリウム(粒4個、電気2単位)ができたので、残りの \(\text{X}\) は粒が \(7-4=3\) 個、電気が \(3-2=1\) 単位でなければなりません。
電気(原子番号)が1番の元素は水素なので、これは重さが3の水素原子核です。

結論と吟味

得られた核種 \({}^3_1\text{H}\) は実在する同位体(トリチウム)であり、物理的に妥当です。

解答 (2) \({}^3_1\text{H}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
反応によってエネルギーが発生したということは、反応後の質量の合計が反応前よりも減っている(軽くなっている)ことを意味します。この減った質量(質量欠損)がエネルギーに変わりました。
問題文で与えられたエネルギー \(4.78\,\text{MeV}\) を原子質量単位 \(\text{u}\) に換算し、質量の収支計算を行います。

この設問における重要なポイント

  • 単位の換算: エネルギーの単位 \(\text{MeV}\) と質量の単位 \(\text{u}\) の換算係数が与えられています(\(1\,\text{MeV} \approx 0.00107\,\text{u}\))。
  • 保存則の立式: \((\text{反応前の全質量}) = (\text{反応後の全質量}) + (\text{質量欠損})\) という関係式を立てます。

具体的な解説と立式
反応で生じたエネルギーを \(E = 4.78\,\text{MeV}\)、質量欠損を \(\Delta m\) とします。
与えられた換算係数 \(k = 0.00107\,\text{u}/\text{MeV}\) を用いると、質量欠損は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= E \times k \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
各粒子の質量を以下のように置きます。
\({}^6\text{Li}: M_{\text{Li}} = 6.01513\,\text{u}\)
\(\text{n}: M_{\text{n}} = 1.00867\,\text{u}\)
\({}^4\text{He}: M_{\text{He}} = 4.00260\,\text{u}\)
\(\text{X}: m_1\)(求める質量)

質量とエネルギーの保存則(反応前の質量和が、反応後の質量和と放出エネルギー相当質量の和に等しい)より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
M_{\text{Li}} + M_{\text{n}} &= M_{\text{He}} + m_1 + \Delta m \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性(換算)
  • 質量欠損の定義
計算過程

まず、質量欠損 \(\Delta m\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= 4.78 \times 0.00107 \\[2.0ex] &= 0.0051146\,\text{u}
\end{aligned}
$$
次に、式④を \(m_1\) について解き、数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
m_1 &= (M_{\text{Li}} + M_{\text{n}}) – M_{\text{He}} – \Delta m \\[2.0ex] &= (6.01513 + 1.00867) – 4.00260 – 0.0051146 \\[2.0ex] &= 7.02380 – 4.00260 – 0.0051146 \\[2.0ex] &= 3.02120 – 0.0051146 \\[2.0ex] &= 3.0160854\,\text{u}
\end{aligned}
$$
問題文より、小数点以下5桁まで求めます。
$$
\begin{aligned}
m_1 &\approx 3.01609\,\text{u}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

反応前の材料(リチウムと中性子)の重さの合計と、反応後の生成物(ヘリウムとX)の重さの合計を比べると、反応後の方が少しだけ軽くなっています。
この「消えた重さ」が、ピカッと光るエネルギー(熱や運動エネルギー)に変わりました。
発生したエネルギーの量から「消えた重さ」を逆算し、それを反応前の合計から引き算することで、未知の粒子 \(\text{X}\) の重さを正確に割り出しました。

結論と吟味

得られた値 \(3.01609\,\text{u}\) は、質量数3の原子核として妥当な値です(陽子1個+中性子2個の質量和に近い)。計算精度も小数点以下5桁まで確保されています。

解答 (3) \(3.01609\,\text{u}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
静止していた原子核が2つに分裂する場合、外力は働かないため「運動量保存則」が成立します。
2つの粒子は互いに逆向きに飛び出し、その運動量の大きさは等しくなります。
この条件の下で、運動エネルギー \(K\) と質量 \(m\) の関係を導きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 初めの運動量が \(0\) なので、分裂後の運動量の和も \(0\) です。
  • 運動エネルギーと運動量の関係: \(K = \frac{1}{2}mv^2 = \frac{p^2}{2m}\) という式変形が鍵となります。

具体的な解説と立式
\(\text{X}\) の質量を \(m_1\)、速度を \(v_1\) とし、\({}^4\text{He}\) の質量を \(m_2\)、速度を \(v_2\) とします。
分裂直前の全運動量は \(0\) なので、分裂後の運動量保存則は以下のようになります(右向きを正とします)。
$$
\begin{aligned}
0 &= m_1 v_1 + m_2 v_2
\end{aligned}
$$
これより、2つの粒子の運動量の大きさ \(p\) は等しいことがわかります。
$$
\begin{aligned}
|m_1 v_1| &= p \\[2.0ex] |m_2 v_2| &= p
\end{aligned}
$$
それぞれの運動エネルギー \(K_1, K_2\) を、運動量 \(p\) を用いて表します。
$$
\begin{aligned}
K_1 &= \frac{1}{2}m_1 v_1^2 \\[2.0ex] &= \frac{(m_1 v_1)^2}{2m_1} \\[2.0ex] &= \frac{p^2}{2m_1} \quad \cdots ⑤ \\[2.0ex] K_2 &= \frac{1}{2}m_2 v_2^2 \\[2.0ex] &= \frac{(m_2 v_2)^2}{2m_2} \\[2.0ex] &= \frac{p^2}{2m_2} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
求める比は \(K_1 / K_2\) です。

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(0 = p_1 + p_2\)
  • 運動エネルギーの定義: \(K = \frac{1}{2}mv^2 = \frac{p^2}{2m}\)
計算過程

式⑤と式⑥の比をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_1}{K_2} &= \frac{\frac{p^2}{2m_1}}{\frac{p^2}{2m_2}} \\[2.0ex] &= \frac{p^2}{2m_1} \times \frac{2m_2}{p^2} \\[2.0ex] &= \frac{m_2}{m_1}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

止まっていたものが2つに割れて飛び出すとき、重い破片と軽い破片は、互いに「逆向き」に「同じ勢い(運動量)」で飛び出します。
しかし、エネルギー(破壊力)は同じではありません。
同じ勢い(運動量)なら、軽いものほどスピードが速くなり、結果としてエネルギーは大きくなります。
数式で確認すると、エネルギーは質量に反比例する(重さの逆比になる)ことがわかります。

結論と吟味

運動エネルギーの比は質量の逆比 \(m_2/m_1\) となりました。軽い粒子ほど多くのエネルギーを持ち去るという物理的直感と一致します。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{m_2}{m_1}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
反応で生じた全エネルギー \(E = 4.78\,\text{MeV}\) が、全て2つの粒子の運動エネルギーになったと仮定します。
問(4)で求めた「エネルギーの比は質量の逆比」という関係を使って、全エネルギーを分配します。
計算にあたっては、厳密な質量 \(m_1, m_2\) の代わりに、質量数(\(3\) と \(4\))の比を用いて近似計算を行います(問題文の「有効数字3桁」という指示と、質量数が質量の良い近似であることから)。

この設問における重要なポイント

  • 比例配分: 全体量 \(E\) を \(A:B\) に分けるとき、\(A\) の取り分は \(\frac{A}{A+B}E\) です。
  • 逆比の分配: 質量比が \(m_1 : m_2\) なので、エネルギー比は \(m_2 : m_1\)(逆比)になります。

具体的な解説と立式
\(\text{X}\) の運動エネルギーを \(K_1\)、\({}^4\text{He}\) の運動エネルギーを \(K_2\) とします。
全エネルギーを \(E_{\text{全}} = 4.78\,\text{MeV}\) とすると、エネルギー保存則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
K_1 + K_2 &= E_{\text{全}} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
問(4)の結果より、エネルギーの比は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_1 : K_2 &= m_2 : m_1 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
これより、\(K_1\) は全エネルギーを \(m_2 : m_1\) に比例配分した値となります。
$$
\begin{aligned}
K_1 &= \frac{m_2}{m_1 + m_2} E_{\text{全}} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • エネルギー保存則
  • 比例配分の公式
計算過程

質量 \(m_1, m_2\) の比を質量数の比で近似します。
\(\text{X}\) (\({}^3\text{H}\)) の質量数: \(3\)
\({}^4\text{He}\) の質量数: \(4\)
したがって、\(m_1 : m_2 \approx 3 : 4\) です。
これを式⑨に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_1 &\approx \frac{4}{3 + 4} \times 4.78 \\[2.0ex] &= \frac{4}{7} \times 4.78 \\[2.0ex] &= 4 \times 0.6828… \\[2.0ex] &= 2.731…
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
K_1 &= 2.73\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

発生した \(4.78\,\text{MeV}\) というエネルギーのパイを、2つの粒子で分け合います。
分け前のルールは「軽い方がたくさんもらえる(質量の逆比)」です。
質量比はおよそ \(3:4\) なので、エネルギーの取り分は逆の \(4:3\) になります。
つまり、全エネルギーの \(4/7\) を軽い方の粒子 \(\text{X}\) が持ち去ることになります。

結論と吟味

全エネルギーの半分以上(\(4/7\))を持ち去っており、軽い粒子ほどエネルギーが大きいという定性的な性質と一致しています。

解答 (5) \(2.73\,\text{MeV}\)
別解: 運動方程式と保存則による体系的解法(問(4)(5)一括)

思考の道筋とポイント
「質量の逆比」というテクニックを前提とせず、力学の基本原理である「運動方程式」から出発します。
運動方程式を積分して「運動量」と「運動エネルギー」を定義し、分裂現象における2つの保存則(運動量保存則、エネルギー保存則)を連立方程式として解くことで、論理的に答えを導きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 時間積分で運動量、空間積分で運動エネルギーが導かれます。
  • 連立方程式: 未知数 \(K_1, K_2\) に対し、保存則から2本の式を立てて解きます。

具体的な解説と立式
質量 \(m\) の物体に力 \(F\) が作用するとき、運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
F &= m \frac{dv}{dt}
\end{aligned}
$$
1. 運動エネルギーの導出(空間積分)
位置 \(x\) で積分します(\(dx = v dt\) を利用)。
$$
\begin{aligned}
\int F dx &= \int m \frac{dv}{dt} v dt \\[2.0ex] &= \int m v dv \\[2.0ex] &= \frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
これが仕事と運動エネルギー \(K\) の関係です。

2. 運動量の導出(時間積分)
時間 \(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
\int F dt &= \int m \frac{dv}{dt} dt \\[2.0ex] &= \int d(mv) \\[2.0ex] &= \Delta(mv)
\end{aligned}
$$
外力が働かない系(\(F=0\))では、運動量 \(p=mv\) が保存されます。

3. 保存則の連立
静止した核が2つ(質量 \(m_1, m_2\))に分裂する場合を考えます。
運動量保存則より、
$$
\begin{aligned}
0 &= p_1 + p_2
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
p_1 &= -p_2
\end{aligned}
$$
大きさについては \(|p_1| = |p_2| = p\) と置けます。
ここで、運動エネルギーを \(p\) で表すと \(K = \frac{p^2}{2m}\) となります。
エネルギー保存則(発生エネルギー \(Q\) が全て運動エネルギーになる)より、
$$
\begin{aligned}
K_1 + K_2 &= Q \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
これに \(K_1 = \frac{p^2}{2m_1}, K_2 = \frac{p^2}{2m_2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{p^2}{2m_1} + \frac{p^2}{2m_2} &= Q
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(F = ma\)
  • 運動量保存則: \(\sum p = \text{const}\)
  • エネルギー保存則: \(\sum K = Q\)
計算過程

まず、問(4)の比を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_1}{K_2} &= \frac{\frac{p^2}{2m_1}}{\frac{p^2}{2m_2}} \\[2.0ex] &= \frac{m_2}{m_1}
\end{aligned}
$$
次に、問(5)の値を求めるために、連立方程式を解きます。
式⑩を変形します。
$$
\begin{aligned}
K_2 &= \frac{m_1}{m_2} K_1
\end{aligned}
$$
これを式⑩に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_1 + \frac{m_1}{m_2} K_1 &= Q \\[2.0ex] \left( 1 + \frac{m_1}{m_2} \right) K_1 &= Q \\[2.0ex] \frac{m_2 + m_1}{m_2} K_1 &= Q \\[2.0ex] K_1 &= \frac{m_2}{m_1 + m_2} Q
\end{aligned}
$$
ここに \(m_1 \approx 3, m_2 \approx 4, Q = 4.78\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
K_1 &= \frac{4}{3+4} \times 4.78 \\[2.0ex] &= \frac{4}{7} \times 4.78 \\[2.0ex] &\approx 2.73\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「運動方程式」という力学の根本ルールからスタートしました。
そこから「勢い(運動量)」と「エネルギー」という2つの概念を作り出し、分裂現象に当てはめました。
「勢いの合計はゼロ(保存)」と「エネルギーの合計は発生分(保存)」という2つのルールを同時に満たすように計算すると、自然と「軽い方がエネルギーを多くもらう」という結果が導かれます。

結論と吟味

問(4)の答え \(m_2/m_1\)、問(5)の答え \(2.73\,\text{MeV}\) が、原理的な計算からも同様に導かれました。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{m_2}{m_1}\) 解答 (5) \(2.73\,\text{MeV}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
\(\text{X}\) である三重水素(\({}^3_1\text{H}\))が \(\beta\) 崩壊を起こすとどうなるかを問われています。
\(\beta\) 崩壊の本質は、原子核内の中性子が電子(\(\beta\) 線)を放出して陽子に変わる現象であることを思い出します。

この設問における重要なポイント

  • \(\beta\) 崩壊の反応: \(\text{n} \to \text{p} + \text{e}^- + \bar{\nu}_e\)
  • 原子番号の変化: 中性子が陽子になるため、原子番号(陽子数)は \(1\) 増えます。
  • 質量数の変化: 陽子と中性子の総数は変わらないため、質量数は変化しません。

具体的な解説と立式
\(\beta\) 崩壊では、原子核から電子(\({}^0_{-1}\text{e}\))が放出されます。
元の原子核を \({}^3_1\text{H}\)、崩壊後の原子核を \({}^A_Z\text{Y}\) とすると、反応式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
{}^3_1\text{H} \longrightarrow {}^A_Z\text{Y} + {}^0_{-1}\text{e}
\end{aligned}
$$
質量数保存則より、
$$
\begin{aligned}
3 &= A + 0
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
A &= 3
\end{aligned}
$$
電荷数保存則より、
$$
\begin{aligned}
1 &= Z + (-1)
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
Z &= 2
\end{aligned}
$$
原子番号 \(2\) はヘリウム(\(\text{He}\))です。
したがって、生成される原子核は \({}^3_2\text{He}\) です。

使用した物理公式

  • \(\beta\) 崩壊の規則: \(Z \to Z+1\), \(A \to A\)
計算過程

上記の通り、\(Z=2, A=3\) となるため、ヘリウム3(\({}^3\text{He}\))となります。

この設問の平易な説明

\(\beta\) 崩壊とは、原子核の中で「中性子」が変身して「陽子」になり、その際に余った電気を「電子」として外に捨てる現象です。
陽子が1つ増えるので、元素の種類は1つ隣の番号(水素 \(\to\) ヘリウム)に変わります。
しかし、粒の総数(質量数)は変わらないので、重さはほぼそのままです。

結論と吟味

水素の同位体であるトリチウムが、ヘリウムの同位体であるヘリウム3に変化しました。これは実際の物理現象として正しい記述です。

解答 (6) \({}^3_2\text{He}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 質量とエネルギーの等価性(特殊相対性理論)
    • 核心: 質量はエネルギーの一形態であり、核反応によって質量が減少すると、その減少分 \(\Delta m\) に応じた莫大なエネルギー \(E = \Delta mc^2\) が放出されます。
    • 理解のポイント:
      • 化学反応とは桁違いのエネルギーが出入りします。
      • 「質量保存の法則」は厳密には成り立たず、「質量とエネルギーの総和」が保存されます。
  • 分裂における運動量保存則とエネルギー分配
    • 核心: 静止した物体が内力のみで分裂する場合、運動量の総和は \(0\) のまま保存され、その結果、発生したエネルギーは質量の逆比で分配されます。
    • 理解のポイント:
      • 軽い破片ほど速く飛び、多くのエネルギーを持ち去ります。
      • この原理は、原子核崩壊だけでなく、宇宙ロケットの切り離しや拳銃の発射など、あらゆる分裂現象に共通します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • α崩壊のエネルギー計算: ウランなどの重い原子核がα粒子(ヘリウム核)を出して崩壊する場合も、全く同じロジック(質量欠損 \(\to\) エネルギー \(\to\) 逆比分配)でα粒子のエネルギーを計算できます。
    • 2物体の弾性衝突: 衝突によって運動エネルギーが保存される場合、重心系で見れば「分裂の逆再生」のような現象として捉えることができ、運動量とエネルギーの関係式が同様に使えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反応前後の質量差をチェック: 精密な質量データが与えられたら、まずは \(\Delta m = (\text{前}) – (\text{後})\) を計算し、エネルギーの出入りを確認します。
    2. 「静止からの分裂」というキーワード: これを見たら即座に「運動量は互いに逆向きで大きさ等しい」「エネルギーは質量の逆比」という定石を思い出します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 質量の単位換算ミス:
    • 誤解: エネルギー \(E\) を求める際、質量欠損 \(\Delta m\)(単位 \(\text{u}\))にそのまま光速 \(c\) を掛けてしまう。あるいは、\(\text{MeV}\) と \(\text{J}\) の換算を間違える。
    • 対策: 問題文で与えられた換算係数(例: \(1\,\text{u} \approx 931\,\text{MeV}\) や \(1\,\text{MeV} \approx 0.00107\,\text{u}\))を必ず使い、単位の次元を確認しながら計算します。
  • エネルギー分配の比率の取り違え:
    • 誤解: 「重い方がエネルギーが大きいだろう」と直感で判断し、質量の正比(\(m_1 : m_2\))で分配してしまう。
    • 対策: 「軽い方が速く飛ぶ \(\to\) 速さの2乗が効くからエネルギーも大きい」という物理的イメージを持ち、必ず「逆比」であることを確認します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(5)での比例配分(逆比の利用):
    • 選定理由: 連立方程式を解くよりも、比の性質(\(K_1 : K_2 = m_2 : m_1\))を利用した方が、計算量が圧倒的に少なく、ミスも防げるため。
    • 適用根拠: 静止物体が2つに分裂するという条件が満たされており、運動量保存則から必然的に導かれる関係であるため。
  • 問(3)での質量とエネルギーの保存則:
    • 選定理由: 未知の質量を求めるには、反応前後の総エネルギー(静止エネルギー含む)が等しいという関係式が唯一の手段であるため。
    • 適用根拠: 核反応においては、外部とのエネルギーのやり取りがない限り、系全体のエネルギーは厳密に保存されるため。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 有効数字の桁数管理:
    • 意識: 質量欠損の計算では、非常に近い数値同士の引き算を行うため、有効数字が急激に減る(桁落ち)リスクがあります。
    • 実践: 途中計算では、最終的に求めたい桁数よりも常に1〜2桁多く残して計算し、最後に四捨五入します。今回の問題でも、質量は小数点以下5桁まで求められているため、途中は6桁以上で扱います。
  • 近似計算の活用:
    • 意識: 厳密な質量 \(m\) と質量数 \(A\) は異なりますが、比の計算などでは \(A\) で代用できる場合が多いです。
    • 実践: 問(5)のように「有効数字3桁」程度の精度であれば、\(3.016…\) の代わりに \(3\) を使って計算を簡略化し、検算やあたりの付け方に利用します。
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問題65 原子核 (奈良女子大+東京大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 運動方程式と保存則による体系的解法
      • 模範解答は「運動エネルギーの比は質量の逆比」というテクニックを用いていますが、別解では運動方程式から導かれる運動量とエネルギーの定義に基づき、保存則を連立方程式として解く原理的なアプローチをとります。
    • 設問(3)の別解: 微積分を用いた仕事とエネルギーの導出
      • 模範解答は力学的エネルギー保存則を既知として適用していますが、別解ではクーロン力(保存力)の空間積分によって位置エネルギー(ポテンシャル)を導出し、エネルギー保存則が成立する背景を明らかにします。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理からの理解: 公式の暗記に頼らず、ニュートンの運動方程式という力学の根本原理から出発することで、保存則やポテンシャルエネルギーの起源を深く理解できます。
    • 汎用性: 複雑な設定や未知の力が働く問題に対しても、積分計算を通じてエネルギー関係を導き出せる応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「核融合反応とエネルギー障壁」です。軽い原子核同士が融合して重い原子核になる際に放出されるエネルギーや、反応を起こすために克服しなければならない電気的な反発力(クーロン障壁)について考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量とエネルギーの等価性: 核反応に伴う質量欠損 \(\Delta m\) は、\(E = \Delta m c^2\) のエネルギーとして放出されます。
  • 保存則: 外力が働かない系では「運動量」が保存され、閉じた系では「全エネルギー(質量エネルギー含む)」が保存されます。
  • クーロンの法則と位置エネルギー: 電荷を持つ粒子間には静電気力が働き、接近させるにはこの力に逆らって仕事をする必要があります。これが位置エネルギーとして蓄えられます。
  • 気体分子運動論: 気体の温度 \(T\) は、構成粒子の平均運動エネルギーと密接に関係しています(\(\bar{K} = \frac{3}{2}kT\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、反応前後の質量差を計算し、与えられた換算係数を用いてエネルギーを求めます。
  • (2)では、初期状態の運動エネルギーと(1)の反応エネルギーの合計が、反応後の粒子の運動エネルギーになることを利用します。運動量保存則から分配比率を決定します。
  • (3)では、2つの原子核が接触する(核力が働く距離まで近づく)ために必要な初期エネルギーを、力学的エネルギー保存則を用いて計算します。
  • (4)では、(3)で求めたエネルギーを熱運動エネルギーとみなし、相当する温度を計算します。
  • (5)では、運動量保存則とエネルギー保存則が両立しない仮想的な反応について論証します。

問(1)

思考の道筋とポイント
核反応によってエネルギーが発生するのは、反応後の質量の総和が反応前よりも減少しているためです。この減少分(質量欠損)を計算し、エネルギーに換算します。

この設問における重要なポイント

  • 質量欠損: \(\Delta m = (\text{反応前の質量和}) – (\text{反応後の質量和})\)
  • 有効数字: 問題文の数値(特に換算係数 \(9.3 \times 10^2\))から、有効数字2桁で答えることに注意します。

具体的な解説と立式
反応式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
{}^2_1\text{H} + {}^2_1\text{H} \longrightarrow {}^3_2\text{He} + \text{n}
\end{aligned}
$$
各粒子の質量は以下の通り与えられています。
\({}^2_1\text{H}: 2.0136\,\text{u}\)
\({}^3_2\text{He}: 3.0150\,\text{u}\)
\(\text{n}: 1.0087\,\text{u}\)

反応前の質量和 \(M_{\text{前}}\) と反応後の質量和 \(M_{\text{後}}\) を計算し、質量欠損 \(\Delta m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= M_{\text{前}} – M_{\text{後}} \\[2.0ex] &= (2 \times 2.0136) – (3.0150 + 1.0087)
\end{aligned}
$$
発生するエネルギー \(E\) は、換算係数 \(k = 9.3 \times 10^2\,\text{MeV}/\text{u}\) を用いて求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= \Delta m \times k
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量欠損の定義
  • エネルギー換算式
計算過程

まず質量欠損を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= 4.0272 – 4.0237 \\[2.0ex] &= 0.0035\,\text{u}
\end{aligned}
$$
次にエネルギーに換算します。
$$
\begin{aligned}
E &= 0.0035 \times (9.3 \times 10^2) \\[2.0ex] &= 0.0035 \times 930 \\[2.0ex] &= 3.255\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
E &\approx 3.3\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

重水素原子核が2つ合体して、ヘリウム3と中性子になりました。
重さを精密に測ると、合体後の方がわずかに軽くなっています。
この「消えた重さ」が、アインシュタインの原理に従って熱や運動エネルギーに変わりました。その量を計算しました。

結論と吟味

質量欠損は正の値となり、発熱反応であることが確認できました。数値のオーダーも核反応として妥当です。

解答 (1) \(3.3\,\text{MeV}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
反応後の粒子(\({}^3_2\text{He}\) と \(\text{n}\))が持つ運動エネルギーの合計は、「元々持っていた運動エネルギー」と「反応で発生したエネルギー」の和になります。
また、等しい速さで正面衝突したため、初期状態の全運動量は \(0\) です。運動量保存則により、反応後の全運動量も \(0\) になります。
全運動量が \(0\) の状態で分裂する場合、運動エネルギーは質量の逆比に分配されます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: \((\text{反応後の全運動エネルギー}) = (\text{初期運動エネルギーの和}) + (\text{反応エネルギー})\)
  • 運動量保存則: 全運動量が \(0\) の場合、2つの粒子は逆向きに等しい大きさの運動量 \(p\) を持ちます。
  • 分配の法則: \(K = p^2 / 2m\) より、\(p\) が共通なら \(K\) は \(m\) に反比例します。

具体的な解説と立式
初期運動エネルギーを \(K_{\text{入}} = 0.35\,\text{MeV}\) とします。2個分なので合計は \(2K_{\text{入}}\) です。
反応エネルギーを \(Q = 3.255\,\text{MeV}\)(計算精度のため桁数を多くとります)とします。
反応後の全運動エネルギー \(E_{\text{全}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= 2K_{\text{入}} + Q \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
\({}^3_2\text{He}\) の質量を \(m_{\text{He}}\)、中性子の質量を \(m_{\text{n}}\) とします。
運動量保存則より全運動量は \(0\) なので、それぞれの運動エネルギー \(K_{\text{He}}, K_{\text{n}}\) の比は質量の逆比になります。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{He}} : K_{\text{n}} &= m_{\text{n}} : m_{\text{He}} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
質量比は質量数の比(\(1:3\))で近似できます。
これを用いて \(E_{\text{全}}\) を比例配分します。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則
  • 運動量保存則(分裂時のエネルギー分配)
計算過程

まず、反応後の全エネルギーを求めます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= 2 \times 0.35 + 3.255 \\[2.0ex] &= 0.70 + 3.255 \\[2.0ex] &= 3.955\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
質量比はおよそ \(m_{\text{He}} : m_{\text{n}} \approx 3 : 1\) です。
よって、エネルギー比は逆比の \(1 : 3\) となります。
\({}^3_2\text{He}\) の運動エネルギー \(K_{\text{He}}\):
$$
\begin{aligned}
K_{\text{He}} &= E_{\text{全}} \times \frac{1}{1+3} \\[2.0ex] &= 3.955 \times \frac{1}{4} \\[2.0ex] &= 0.98875 \\[2.0ex] &\approx 1.0\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
中性子 \(\text{n}\) の運動エネルギー \(K_{\text{n}}\):
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &= E_{\text{全}} \times \frac{3}{1+3} \\[2.0ex] &= 3.955 \times \frac{3}{4} \\[2.0ex] &= 2.96625 \\[2.0ex] &\approx 3.0\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの粒子が勢いよくぶつかって合体し、さらにエネルギーを放出して2つの破片に飛び散りました。
飛び散る勢い(エネルギー)の合計は、「ぶつかった勢い」+「爆発エネルギー」です。
飛び散るとき、軽い破片(中性子)の方が重い破片(ヘリウム)よりも身軽なぶん、圧倒的に速く飛び出し、エネルギーの大部分(4分の3)を持ち去ります。

結論と吟味

合計値 \(1.0 + 3.0 = 4.0\,\text{MeV}\) は、\(0.7 + 3.3 = 4.0\,\text{MeV}\) と一致します。軽い中性子の方が大きなエネルギーを持つことも物理的に正しいです。

解答 (2) \({}^3_2\text{He}: 1.0\,\text{MeV}, \quad \text{n}: 3.0\,\text{MeV}\)
別解: 運動方程式と保存則による体系的解法

思考の道筋とポイント
「質量の逆比」という知識を使わず、運動方程式から出発して、運動量とエネルギーの定義を導き、保存則を連立方程式として解くことで答えを導きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 力の空間積分がエネルギー変化、時間積分が運動量変化に対応します。
  • 連立方程式: 未知数 \(K_{\text{He}}, K_{\text{n}}\) に対して、エネルギー保存則と運動量保存則の2つの式を立てます。

具体的な解説と立式
運動方程式 \(F = m \frac{dv}{dt}\) より、以下の関係が導かれます。
1. 運動エネルギー: \(\int F dx = \frac{1}{2}mv^2 = K\)
2. 運動量: \(\int F dt = mv = p\)
また、\(K = \frac{p^2}{2m}\) の関係があります。

反応後の状態を考えます。
運動量保存則より、全運動量は \(0\) なので、
$$
\begin{aligned}
p_{\text{He}} + p_{\text{n}} &= 0
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
p_{\text{He}} &= -p_{\text{n}}
\end{aligned}
$$
大きさは等しいので \(|p_{\text{He}}| = |p_{\text{n}}| = p\) と置きます。
エネルギー保存則より、全エネルギー \(E_{\text{全}}\) は、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{He}} + K_{\text{n}} &= E_{\text{全}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
ここで \(K = \frac{p^2}{2m}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{p^2}{2m_{\text{He}}} + \frac{p^2}{2m_{\text{n}}} &= E_{\text{全}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(F=ma\)
  • 運動量保存則: \(\sum p = \text{const}\)
  • エネルギー保存則: \(\sum K = E\)
計算過程

式③において、\(K_{\text{He}} = \frac{p^2}{2m_{\text{He}}}\) と \(K_{\text{n}} = \frac{p^2}{2m_{\text{n}}}\) の比をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{He}}}{K_{\text{n}}} &= \frac{m_{\text{n}}}{m_{\text{He}}} \\[2.0ex] &\approx \frac{1}{3}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &= 3K_{\text{He}}
\end{aligned}
$$
これを式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{He}} + 3K_{\text{He}} &= E_{\text{全}} \\[2.0ex] 4K_{\text{He}} &= 3.955 \\[2.0ex] K_{\text{He}} &\approx 1.0\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
また、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &= 3 \times 1.0 \\[2.0ex] &= 3.0\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

運動方程式から導かれる「運動量」と「エネルギー」の定義式を使うと、2つの保存則を数式として書き下すことができます。
これを連立方程式として解くことで、比のテクニックを知らなくても、論理的に正しい答えにたどり着けます。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (2) \({}^3_2\text{He}: 1.0\,\text{MeV}, \quad \text{n}: 3.0\,\text{MeV}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
2つの重水素原子核(電荷 \(+e\))が接近すると、クーロン力による反発を受けます。
反応が起こるためには、この反発力に打ち勝って、核力が働く距離 \(2r_0\) まで近づく必要があります。
無限遠(十分に離れた状態)から最接近距離 \(2r_0\) までの過程において、力学的エネルギー保存則を適用します。

この設問における重要なポイント

  • 最接近の条件: 2つの粒子が最も近づいた瞬間、相対速度は \(0\) になります。今回は対称性から、重心系で見ると両方の粒子の速度が同時に \(0\) になります。
  • 位置エネルギー: 距離 \(r\) における静電気力による位置エネルギーは \(U = k_0 \frac{q_1 q_2}{r}\) です。
  • エネルギー保存則: \((\text{初期運動エネルギー}) + 0 = 0 + (\text{最接近時の位置エネルギー})\)

具体的な解説と立式
求める運動エネルギーを \(K_0\) とします。2個分なので初期の全運動エネルギーは \(2K_0\) です。
初期状態では十分に離れているため、位置エネルギーは \(0\) です。
最接近時、2つの原子核の中心間距離は \(2r_0\) となります。
このとき、原子核は一瞬静止するため、運動エネルギーは \(0\) です。
最接近時の位置エネルギー \(U\) は、クーロンの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
U &= k_0 \frac{e \cdot e}{2r_0}
\end{aligned}
$$
力学的エネルギー保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
2K_0 + 0 &= 0 + U \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 点電荷による静電ポテンシャル: \(U = k \frac{qQ}{r}\)
  • 力学的エネルギー保存則
計算過程

式④に \(U\) の式を代入して \(K_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2K_0 &= k_0 \frac{e^2}{2r_0} \\[2.0ex] K_0 &= \frac{k_0 e^2}{4r_0}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

プラスの電気を持つ粒同士は反発し合います。これを無理やりくっつけるには、勢いよくぶつける必要があります。
最初は勢い(運動エネルギー)がありましたが、近づくにつれて反発力でブレーキがかかり、接触するギリギリのところで一瞬止まってしまいます。
このとき、最初の勢いがすべて「反発力に逆らって近づいたエネルギー(位置エネルギー)」に変わったと考えます。
このエネルギーの貸し借りの関係から、最初に必要な勢いを計算しました。

結論と吟味

答えは \(K_0 = \frac{k_0 e^2}{4r_0}\) です。電荷 \(e\) が大きいほど、また距離 \(r_0\) が小さいほど大きなエネルギーが必要となり、物理的直感と一致します。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{k_0 e^2}{4r_0}\)
別解: 微積分を用いた仕事とエネルギーの導出

思考の道筋とポイント
位置エネルギーの公式を暗記している前提ではなく、クーロン力(保存力)が粒子にする仕事を積分計算することで、エネルギー保存則を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 仕事の定義: 仕事 \(W = \int F dx\) です。
  • 運動エネルギー変化と仕事: 運動エネルギーの変化量は、外力がした仕事に等しいです(\(\Delta K = W\))。

具体的な解説と立式
一方の原子核を固定し、もう一方の原子核が無限遠から距離 \(2r_0\) まで近づく相対運動を考えます。
(※問題設定は2つとも動きますが、相対距離 \(r\) の変化として捉えれば、換算質量を用いた1体問題、あるいは対称性から片方の運動として扱えます。ここでは対称性より、中心から距離 \(x\) にある粒子が原点に近づく運動を考えます。)

中心からの距離が \(x\) のとき、粒子(電荷 \(e\))が受けるクーロン力 \(F\)(斥力)は、もう一方の粒子(中心から \(-x\) の位置)との距離が \(2x\) なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F &= k_0 \frac{e^2}{(2x)^2} \\[2.0ex] &= \frac{k_0 e^2}{4x^2}
\end{aligned}
$$
粒子が無限遠(\(x=\infty\))から接触点(\(x=r_0\))まで移動する間に、クーロン力 \(F\)(移動方向と逆向き)がする仕事 \(W\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
W &= \int_{\infty}^{r_0} F dx
\end{aligned}
$$
運動エネルギーの変化と仕事の関係より、
$$
\begin{aligned}
0 – K_0 &= W \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事の積分定義: \(W = \int F \cdot dr\)
  • 運動エネルギーと仕事の関係: \(\Delta K = W\)
計算過程

仕事 \(W\) を計算します。位置 \(x\) での力は正の向きに \(F = \frac{k_0 e^2}{4x^2}\)。
粒子は \(x=\infty\) から \(x=r_0\) へ移動するので、変位 \(dx\) は負です。
したがって仕事は負になります。
$$
\begin{aligned}
W &= \int_{\infty}^{r_0} \frac{k_0 e^2}{4x^2} dx \\[2.0ex] &= \left[ – \frac{k_0 e^2}{4x} \right]_{\infty}^{r_0} \\[2.0ex] &= – \frac{k_0 e^2}{4r_0}
\end{aligned}
$$
これを式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
-K_0 &= – \frac{k_0 e^2}{4r_0} \\[2.0ex] K_0 &= \frac{k_0 e^2}{4r_0}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「位置エネルギー」という言葉を使わずに、「力が邪魔をする中で無理やり進むときに、どれだけエネルギーを削られるか(仕事)」を計算しました。
邪魔する力(クーロン力)を道のりで積分すると、削られるエネルギーの総量がわかります。
最初に持っていたエネルギーが、この削られる分とちょうど同じであれば、ギリギリ目的地(接触点)にたどり着けます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。位置エネルギーの公式が、クーロン力の積分から来ていることが確認できました。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{k_0 e^2}{4r_0}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
気体分子運動論によれば、温度 \(T\) の気体分子1個あたりの平均運動エネルギー \(\bar{K}\) は、絶対温度 \(T\) に比例します。
この関係式を用いて、問(3)で求めたエネルギー \(K_0\) に相当する温度を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 気体分子の平均運動エネルギー: 単原子分子理想気体の場合、\(\bar{K} = \frac{3}{2}kT\) です。
  • 条件: 平均運動エネルギーが \(K_0\) に一致するので、\(\bar{K} = K_0\) とします。

具体的な解説と立式
平均運動エネルギーと温度の関係式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{2}kT &= K_0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
これに問(3)の結果 \(K_0 = \frac{k_0 e^2}{4r_0}\) を代入し、\(T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{2}kT &= \frac{k_0 e^2}{4r_0} \\[2.0ex] T &= \frac{k_0 e^2}{6k r_0}
\end{aligned}
$$
与えられた数値を代入して計算します。
\(k = 1.4 \times 10^{-23}\,\text{J/K}\)
\(e = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{C}\)
\(k_0 = 9.0 \times 10^9\,\text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\)
\(r_0 = 1.8 \times 10^{-15}\,\text{m}\)

使用した物理公式

  • 気体分子の平均運動エネルギー: \(\bar{K} = \frac{3}{2}kT\)
計算過程

数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{(9.0 \times 10^9) \times (1.6 \times 10^{-19})^2}{6 \times (1.4 \times 10^{-23}) \times (1.8 \times 10^{-15})}
\end{aligned}
$$
指数部分と仮数部分を分けて計算します。
分子:
$$
\begin{aligned}
\text{分子} &= 9.0 \times 2.56 \times 10^9 \times 10^{-38} \\[2.0ex] &= 23.04 \times 10^{-29}
\end{aligned}
$$
分母:
$$
\begin{aligned}
\text{分母} &= 6 \times 1.4 \times 1.8 \times 10^{-23} \times 10^{-15} \\[2.0ex] &= 15.12 \times 10^{-38}
\end{aligned}
$$
割り算を実行します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{23.04 \times 10^{-29}}{15.12 \times 10^{-38}} \\[2.0ex] &= \frac{23.04}{15.12} \times 10^9 \\[2.0ex] &\approx 1.523… \times 10^9
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
T &\approx 1.5 \times 10^9\,\text{K}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ミクロな世界での粒子の「激しさ(運動エネルギー)」は、マクロな世界では「温度」として観測されます。
核融合を起こすほどの猛烈なスピードで粒子が飛び回っている状態は、温度計で測ると何度になるのか?という計算です。
計算の結果、15億度という想像を絶する超高温が必要であることがわかりました。これが「熱核融合」の実現が難しい理由の一つです。

結論と吟味

太陽の中心温度(約1500万度、\(1.5 \times 10^7\,\text{K}\))よりもはるかに高い温度が必要という結果になりました。これは、トンネル効果を考慮しない古典的な計算であるため、実際よりも高い見積もりになっていますが、計算としては正しいです。

解答 (4) \(1.5 \times 10^9\,\text{K}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
反応式 \({}^2_1\text{H} + {}^2_1\text{H} \longrightarrow {}^4_2\text{He}\) が起こり得ない理由を、保存則の観点から説明します。
反応前後の質量を比較すると、\({}^4_2\text{He}\) の方が軽いため、エネルギーが発生します。
しかし、生成物が1つ(\({}^4_2\text{He}\) のみ)の場合、運動量保存則とエネルギー保存則を同時に満たすことができないことを示します。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 反応前の全運動量は \(0\) なので、反応後の \({}^4_2\text{He}\) の運動量も \(0\)(つまり静止)でなければなりません。
  • エネルギー保存則: 反応によって質量欠損分のエネルギーが発生するため、\({}^4_2\text{He}\) はその分の運動エネルギーを持たなければなりません。
  • 矛盾: 「静止していなければならない」かつ「動いていなければならない」という矛盾が生じます。

具体的な解説と立式
反応前の全運動量は、等速で正面衝突するため \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{前}} &= 0
\end{aligned}
$$
反応後の生成物が \({}^4_2\text{He}\) 1個だけだとすると、運動量保存則よりその速度 \(V\) は \(0\) でなければなりません。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{He}} V &= 0
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
V &= 0
\end{aligned}
$$
一方、質量の和を比較すると、
$$
\begin{aligned}
2 \times m(\text{H}) &= 2 \times 2.0136 = 4.0272\,\text{u} \\[2.0ex] m(\text{He}) &= 4.0015\,\text{u}
\end{aligned}
$$
質量が減少しているため、エネルギー \(Q > 0\) が発生します。
エネルギー保存則を立てると、
$$
\begin{aligned}
(\text{初期運動エネルギー}) + Q &= \frac{1}{2}m_{\text{He}} V^2
\end{aligned}
$$
左辺は正の値ですが、右辺は \(V=0\) より \(0\) となります。
$$
\begin{aligned}
(\text{正の値}) &= 0
\end{aligned}
$$
これは矛盾です。

使用した物理公式

  • 運動量保存則
  • エネルギー保存則
計算過程

上記の論証の通り、計算による矛盾の提示が中心となります。

この設問の平易な説明

2つのものが合体して1つになるとき、もしエネルギー(熱)が発生するなら、その熱の逃げ場が必要です。
通常、熱は飛び出す粒子の運動エネルギーとして持ち去られます。
しかし、合体して1つになってしまうと、運動量保存のルールにより「動いてはいけない(止まっていなさい)」と命じられます。
「熱を持って動け」というエネルギーのルールと、「止まっていろ」という運動量のルールが喧嘩してしまい、両立できないため、このような反応は起こりません。
(実際には、光子(ガンマ線)などを放出して運動量とエネルギーの帳尻を合わせることで反応が進むことはあります。)

結論と吟味

保存則の不整合により反応が禁止されるという論理は、素粒子物理学における基本的な選択則の一つであり、正しい説明です。

解答 (5) 2つの \({}^2_1\text{H}\) の質量の和は \({}^4_2\text{He}\) の質量より大きいため、反応によりエネルギーが発生し、\({}^4_2\text{He}\) は運動エネルギーを持つことになる。一方、全運動量が \(0\) であるため、運動量保存則より \({}^4_2\text{He}\) は静止しなければならない。これらは矛盾するため、この反応は起こり得ない。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 核反応における保存則の適用
    • 核心: 核反応の前後では、「質量数」「電荷数(原子番号)」「全エネルギー(質量エネルギー含む)」「運動量」が厳密に保存されます。
    • 理解のポイント:
      • 特に「運動量保存則」と「エネルギー保存則」の連立は、分裂後のエネルギー分配を決定する最強のツールです。
      • 問(5)のように、保存則の不整合を利用して反応の可否を判定することも可能です。
  • クーロン障壁と熱核融合
    • 核心: 正電荷を持つ原子核同士を融合させるには、クーロン斥力によるポテンシャルの山(障壁)を乗り越えるだけの高い運動エネルギー(=超高温)が必要です。
    • 理解のポイント:
      • 力学的エネルギー保存則を用いて、無限遠での運動エネルギーを最接近時の位置エネルギーに変換して考えます。
      • このエネルギーを熱運動で賄うために必要な温度を計算することで、核融合の実現難易度を定量的に理解できます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • α崩壊のエネルギー計算: 静止した原子核がα粒子を出して崩壊する場合も、本問の問(2)と全く同じ「運動量保存則 \(\to\) 質量の逆比分配」のロジックが使えます。
    • ラザフォード散乱: α粒子が原子核に接近して散乱される問題でも、問(3)と同様に「無限遠の運動エネルギー \(= \text{最接近時の位置エネルギー}\)」という式で最接近距離を求めます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「静止した状態から分裂」または「重心系での衝突」: 全運動量が \(0\) であることに着目し、即座に「運動量は逆向きで大きさ等しい」「エネルギーは質量の逆比」という定石を適用します。
    2. 「反応が起こるための条件」: エネルギー障壁(ポテンシャルの最大値)を超える運動エネルギーを持っているかどうかを、力学的エネルギー保存則で判定します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 質量欠損の計算ミス:
    • 誤解: 質量欠損 \(\Delta m\) を計算する際、有効数字の桁数を早めに丸めてしまい、正確なエネルギー値が出ない(桁落ち)。
    • 対策: 質量の数値は非常に精密(小数点以下4〜5桁)に与えられることが多いです。引き算を行う際は、最後の桁まで省略せずに計算し、エネルギー換算後に初めて四捨五入します。
  • 仕事の符号と位置エネルギーの定義:
    • 誤解: クーロン力がする仕事の符号を間違えたり、位置エネルギーの基準点(無限遠で \(0\))を忘れて立式してしまう。
    • 対策: 「反発力に逆らって近づく \(\to\) 外力が正の仕事をする \(\to\) 位置エネルギーが増える」というエネルギーの流れをイメージし、符号を確認します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)でのエネルギー分配(質量の逆比):
    • 選定理由: 連立方程式を解く手間を省き、計算ミスを減らすための強力なショートカットであるため。
    • 適用根拠: 全運動量が \(0\) という条件が満たされている場合、運動量保存則 \(p_1 = -p_2\) とエネルギーの定義 \(K = p^2/2m\) から必然的に導かれるため。
  • 問(3)での力学的エネルギー保存則:
    • 選定理由: 運動の途中経過(時間変化など)を追う必要がなく、始状態(無限遠)と終状態(最接近時)のエネルギー収支だけで答えが出るため。
    • 適用根拠: クーロン力は保存力であり、非保存力(摩擦など)が仕事をしない系であるため。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数の計算管理:
    • 意識: 問(4)のような原子物理の計算では、\(10^{-19}\) や \(10^{-23}\) といった極端な指数が登場し、計算ミスの温床になります。
    • 実践: 仮数部(\(1.6 \times 1.6\) など)と指数部(\(10^{-19} \times 10^{-19}\) など)を完全に分離して計算し、最後に合体させる手順を徹底します。
  • 単位の次元確認:
    • 意識: エネルギーの単位として \(\text{J}\)(ジュール)と \(\text{eV}\)(電子ボルト)、\(\text{MeV}\) が混在するため、換算ミスが起きやすいです。
    • 実践: 公式 \(E=mc^2\) を使うときは \(\text{kg}\) と \(\text{m/s}\)、\(E = qV\) を使うときは \(\text{C}\) と \(\text{V}\)(\(\text{J}\) になる)など、SI単位系に戻して確認するか、与えられた換算係数を確実に使います。

問題66 原子核 (広島大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 運動方程式と保存則による体系的解法
      • 模範解答は「運動エネルギーの比は質量の逆比」というテクニックを用いていますが、別解では運動方程式から導かれる運動量とエネルギーの定義に基づき、保存則を連立方程式として解く原理的なアプローチをとります。
    • 設問(3)(4)の別解: 重心系を用いたエネルギー解析(一括解説)
      • 模範解答は実験室系(静止したXにaが衝突する座標系)で計算していますが、別解では重心系(重心と共に動く座標系)を用いることで、運動エネルギーを「重心運動エネルギー(保存される)」と「相対運動エネルギー(反応に使える)」に分離し、しきい値の物理的意味を直感的に明らかにします。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 原理からの理解: 公式の暗記に頼らず、ニュートンの運動方程式という力学の根本原理から出発することで、保存則やポテンシャルエネルギーの起源を深く理解できます。
    • 物理的直感の養成: 重心系を用いることで、「反応に寄与するのは相対運動のエネルギーだけである」という本質的な理解が得られ、複雑な衝突問題の見通しが良くなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「核反応のエネルギー収支としきい値」です。発熱反応と吸熱反応の違い、そして吸熱反応を起こすために必要な最小の運動エネルギー(しきい値)について、運動量保存則とエネルギー保存則を用いて考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • Q値(反応エネルギー): 反応前後の質量差に相当するエネルギー。\(Q>0\) なら発熱、\(Q<0\) なら吸熱反応です。
  • 保存則: 核反応では「質量数」「電荷数(原子番号)」「全エネルギー」「運動量」が保存されます。
  • しきい値: 吸熱反応(\(Q<0\))の場合、不足分のエネルギー \(|Q|\) を補うために、入射粒子は運動エネルギーを持つ必要があります。しかし、運動量保存則により反応後も全体が動いていなければならないため、入射エネルギーの全てを反応に使えないという点が重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、質量数と電荷数の保存則から未知の原子核を特定し、質量欠損からQ値を計算します。
  • (2)では、静止した複合核からの分裂とみなし、運動量保存則(質量の逆比分配)を用いて粒子の運動エネルギーを求めます。
  • (3)では、完全非弾性衝突(合体)を想定し、運動量保存則から合体後の速度を求め、失われた運動エネルギー \(\Delta K\) を計算します。
  • (4)では、この \(\Delta K\) こそが反応(質量増加)に使われるエネルギーであることに着目し、しきい値を導出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
核反応式における質量数と原子番号の保存則を利用して、未知の原子核「ア」を特定します。
次に、反応前後の質量の総和を比較し、質量欠損を計算してエネルギー(Q値)に換算します。

この設問における重要なポイント

  • 保存則: (左辺の和) = (右辺の和)
  • α粒子: ヘリウム原子核 \({}^4_2\text{He}\) のことです。
  • 中性子: \({}^1_0\text{n}\) です。

具体的な解説と立式
反応式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
{}^6_3\text{Li} + {}^1_0\text{n} \longrightarrow {}^4_2\text{He} (\alpha) + {}^A_Z\text{X} (\text{ア}) + Q
\end{aligned}
$$
未知の原子核「ア」の質量数を \(A\)、原子番号を \(Z\) とします。
質量数保存則より、
$$
\begin{aligned}
6 + 1 &= 4 + A \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
電荷数(原子番号)保存則より、
$$
\begin{aligned}
3 + 0 &= 2 + Z \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
次に、Q値を求めます。
各粒子の質量を \(m(\text{Li}), m(\text{n}), m(\alpha), m(\text{ア})\) とします。
質量欠損 \(\Delta m\) は、(反応前) – (反応後) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= \{ m(\text{Li}) + m(\text{n}) \} – \{ m(\alpha) + m(\text{ア}) \} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
Q値は、換算係数 \(k = 9.3 \times 10^2\,\text{MeV}/\text{u}\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
Q &= \Delta m \times k \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量数・電荷数保存則
  • 質量欠損とエネルギーの関係
計算過程

式①より、
$$
\begin{aligned}
7 &= 4 + A \\[2.0ex] A &= 3
\end{aligned}
$$
式②より、
$$
\begin{aligned}
3 &= 2 + Z \\[2.0ex] Z &= 1
\end{aligned}
$$
原子番号1、質量数3の原子核は、三重水素(トリチウム)\({}^3_1\text{H}\) です。
これが「ア」の正体です。

次にQ値を計算します。与えられた質量データは以下の通りです。
\(m(\text{Li}) = 6.0135\,\text{u}\)
\(m(\text{n}) = 1.0087\,\text{u}\)
\(m(\alpha) = 4.0015\,\text{u}\)
\(m(\text{ア}) = 3.0155\,\text{u}\)

式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= (6.0135 + 1.0087) – (4.0015 + 3.0155) \\[2.0ex] &= 7.0222 – 7.0170 \\[2.0ex] &= 0.0052\,\text{u}
\end{aligned}
$$
式④でエネルギーに換算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= 0.0052 \times (9.3 \times 10^2) \\[2.0ex] &= 0.0052 \times 930 \\[2.0ex] &= 4.836\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁(換算係数に合わせる)で答えます。
$$
\begin{aligned}
Q &\approx 4.8\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

リチウムに中性子が当たると、パカッと割れてヘリウム(α粒子)と「何か」になりました。
数字合わせ(足し算引き算)で、その「何か」が三重水素であることを突き止めました。
さらに、重さを比べると反応後の方が軽くなっています。この軽くなった分がエネルギーとして放出されたので、その量を計算しました。

結論と吟味

「ア」は \({}^3_1\text{H}\)、Q値は \(4.8\,\text{MeV}\) です。発熱反応(\(Q>0\))であることと整合しています。

解答 (1) ア: \({}^3_1\text{H}\), Q値: \(4.8\,\text{MeV}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
「十分遅い中性子」とあるので、反応前の運動エネルギーは無視でき、実質的に静止した状態からの分裂と考えます。
静止した物体が内力のみで2つに分裂する場合、運動量保存則により、2つの粒子は逆向きに等しい大きさの運動量を持ちます。
このとき、運動エネルギーは質量の逆比に分配されます。

この設問における重要なポイント

  • 静止からの分裂: 全運動量は \(0\) です。
  • エネルギー分配: 全エネルギー \(Q\) が、生成された2つの粒子の運動エネルギーになります。

具体的な解説と立式
α粒子の運動エネルギーを \(K_{\alpha}\)、三重水素(\({}^3\text{H}\))の運動エネルギーを \(K_{\text{H}}\) とします。
エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} + K_{\text{H}} &= Q \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
運動量保存則より、分裂後の運動量の大きさは等しいため、運動エネルギーは質量の逆比になります。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} : K_{\text{H}} &= m(\text{H}) : m(\alpha) \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
質量比は質量数の比(\(3:4\))で近似できます。
これを用いて \(Q\) を比例配分し、\(K_{\alpha}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &= \frac{m(\text{H})}{m(\text{H}) + m(\alpha)} Q \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • エネルギー保存則
  • 運動量保存則(逆比分配)
計算過程

質量数の比 \(m(\text{H}) : m(\alpha) \approx 3 : 4\) を用います。
式⑦に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &= \frac{3}{3+4} \times 4.8 \\[2.0ex] &= \frac{3}{7} \times 4.8 \\[2.0ex] &= 2.057…
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &\approx 2.1\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

止まっていたものが爆発して2つに飛び散るとき、軽い破片ほど速く飛び、エネルギーをたくさん持ち去ります。
今回は重さの比が \(4:3\) なので、エネルギーの取り分は逆の \(3:4\) になります。
全体(\(4.8\,\text{MeV}\))のうちの \(3/7\) をα粒子がもらうことになります。

結論と吟味

重いα粒子の方が取り分が少なく(\(3/7 < 1/2\))、妥当な結果です。

解答 (2) \(2.1\,\text{MeV}\)
別解: 運動方程式と保存則による体系的解法

思考の道筋とポイント
比のテクニックを使わず、運動方程式から導かれる定義に基づいて、保存則を連立方程式として解きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: \(p_{\alpha} + p_{\text{H}} = 0 \rightarrow |p_{\alpha}| = |p_{\text{H}}| = p\)
  • エネルギーと運動量の関係: \(K = \frac{p^2}{2m}\)

具体的な解説と立式
運動量保存則より、2つの粒子の運動量の大きさ \(p\) は等しいです。
エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} + K_{\text{H}} &= Q \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
ここで \(K = \frac{p^2}{2m}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{p^2}{2m_{\alpha}} + \frac{p^2}{2m_{\text{H}}} &= Q
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
  • エネルギー保存則
計算過程

\(K_{\alpha}\) と \(K_{\text{H}}\) の比をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\alpha}}{K_{\text{H}}} &= \frac{m_{\text{H}}}{m_{\alpha}} \\[2.0ex] &\approx \frac{3}{4}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{H}} &= \frac{4}{3} K_{\alpha}
\end{aligned}
$$
これを式⑧に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} + \frac{4}{3} K_{\alpha} &= Q \\[2.0ex] \frac{7}{3} K_{\alpha} &= 4.8 \\[2.0ex] K_{\alpha} &= 4.8 \times \frac{3}{7} \\[2.0ex] &\approx 2.1\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

運動量とエネルギーの定義式から出発し、保存則を連立させて解きました。結果は比の計算と同じになります。

結論と吟味

メイン解法と一致しました。

解答 (2) \(2.1\,\text{MeV}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
粒子aが原子核Xに衝突して一体となる(完全非弾性衝突)過程を考えます。
この過程では運動量は保存されますが、運動エネルギーの一部は失われます(熱や内部エネルギー、あるいは質量増加に使われます)。
この失われた運動エネルギー \(\Delta K\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 衝突前後の運動量の総和は変わりません。
  • エネルギーの減少: (衝突前の運動エネルギー) – (衝突後の運動エネルギー) = \(\Delta K\)

具体的な解説と立式
衝突前の粒子aの質量を \(m_a\)、速さを \(v_a\) とします。Xは静止しており質量は \(m_x\) です。
衝突後、一体となった複合核の質量は \(m_a + m_x\)、速さを \(v\) とします。
運動量保存則より、
$$
\begin{aligned}
m_a v_a &= (m_a + m_x) v \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
衝突前の運動エネルギー \(K_{\text{前}}\) は、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{前}} &= \frac{1}{2} m_a v_a^2
\end{aligned}
$$
衝突後の運動エネルギー \(K_{\text{後}}\) は、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{後}} &= \frac{1}{2} (m_a + m_x) v^2
\end{aligned}
$$
失われたエネルギー \(\Delta K\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= K_{\text{前}} – K_{\text{後}} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則
  • 運動エネルギーの定義
計算過程

式⑨より、衝突後の速さ \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{m_a}{m_a + m_x} v_a
\end{aligned}
$$
これを \(K_{\text{後}}\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{後}} &= \frac{1}{2} (m_a + m_x) \left( \frac{m_a}{m_a + m_x} v_a \right)^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \frac{m_a^2}{m_a + m_x} v_a^2
\end{aligned}
$$
式⑩に代入して \(\Delta K\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= \frac{1}{2} m_a v_a^2 – \frac{1}{2} \frac{m_a^2}{m_a + m_x} v_a^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_a v_a^2 \left( 1 – \frac{m_a}{m_a + m_x} \right) \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_a v_a^2 \left( \frac{m_a + m_x – m_a}{m_a + m_x} \right) \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_a v_a^2 \frac{m_x}{m_a + m_x} \\[2.0ex] &= \frac{m_a m_x v_a^2}{2(m_a + m_x)}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

動いている粘土(粒子a)が止まっている粘土(原子核X)にぶつかって合体しました。
合体後の塊は動いていますが、最初の勢い(エネルギー)の一部は、合体時の衝撃(変形や熱、ここでは質量増加)に使われて消えてしまいました。
その「消えたエネルギー」を計算しました。

結論と吟味

\(\Delta K\) は正の値となり、エネルギーが減少していることが確認できます。また、\(m_x \to \infty\)(壁に衝突)とすると \(\Delta K \to \frac{1}{2}m_a v_a^2\)(全エネルギー喪失)となり、物理的直感と一致します。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{m_a m_x v_a^2}{2(m_a + m_x)}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
吸熱反応(\(Q<0\))の場合、反応を起こすためには外部からエネルギーを供給して、質量増加分を賄う必要があります。
問(3)で求めた \(\Delta K\) は、運動エネルギーから「内部エネルギー(質量)」に転換可能なエネルギーの最大値です。
この \(\Delta K\) が、不足しているエネルギー \(|Q| = -Q\) をちょうど補えるとき、反応がギリギリ起こります。このときの初期エネルギーが「しきい値」です。

この設問における重要なポイント

  • しきい値の条件: 転換可能なエネルギー \(\Delta K\) が、必要エネルギー \(-Q\) に等しいこと。
  • 反応に必要なエネルギー: 単に \(Q\) ではなく、運動量保存のために「捨てなければならない(重心運動の)」エネルギーを差し引いた残りしか使えません。

具体的な解説と立式
反応に必要なエネルギー(不足分)は \(-Q\) です(\(Q\) は負の値なので正の値にします)。
衝突によって供給できるエネルギーは \(\Delta K\) です。
反応が起こるための条件は、
$$
\begin{aligned}
\Delta K &\ge -Q
\end{aligned}
$$
しきい値(最小エネルギー)となるのは等号成立時です。
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= -Q \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
ここで、初期の運動エネルギー(しきい値)を \(E_{\text{th}} = \frac{1}{2} m_a v_a^2\) と置きます。
問(3)の結果より、
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= \frac{m_x}{m_a + m_x} \left( \frac{1}{2} m_a v_a^2 \right) \\[2.0ex] &= \frac{m_x}{m_a + m_x} E_{\text{th}}
\end{aligned}
$$
これを式⑪に代入して \(E_{\text{th}}\) を求めます。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則(しきい値条件)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{m_x}{m_a + m_x} E_{\text{th}} &= -Q \\[2.0ex] E_{\text{th}} &= – \frac{m_a + m_x}{m_x} Q
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

吸熱反応とは、「お金(エネルギー)を払わないと商品(反応生成物)が買えない」状態です。
粒子aが持っている運動エネルギー(所持金)のうち、一部は衝突後も動き続けるためにキープしなければならず(運動量保存の税金)、全額を支払いに充てることはできません。
支払いに使えるのは \(\Delta K\) だけです。これが商品の値段 \(-Q\) とちょうど同じになるとき、ギリギリ買えます。
そのときの所持金総額 \(E_{\text{th}}\) を計算しました。

結論と吟味

係数 \(\frac{m_a + m_x}{m_x} > 1\) なので、単なる不足分 \(-Q\) よりも多くのエネルギーが必要です。これは運動量保存のためにエネルギーの一部が「無駄」になるためで、物理的に正しい結果です。

解答 (4) \(\displaystyle – \frac{m_a + m_x}{m_x} Q\)
別解: 重心系を用いたエネルギー解析(問(3)(4)一括)

思考の道筋とポイント
実験室系(静止したXにaが衝突)ではなく、重心系(2粒子の重心と共に動く座標系)で現象を観測します。
重心系では、全運動量は常に \(0\) です。
全運動エネルギーは、「重心運動エネルギー \(K_G\)(保存される)」と「相対運動エネルギー \(K_{\text{rel}}\)(反応に使える)」の和に分解できます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー分解: \(K_{\text{全}} = K_G + K_{\text{rel}}\)
  • 重心運動エネルギー: \(K_G = \frac{1}{2} (m_a + m_x) V_G^2\)。外力がないので \(V_G\) は一定、つまり \(K_G\) は反応前後で不変であり、反応には使えません。
  • 相対運動エネルギー: \(K_{\text{rel}} = \frac{1}{2} \mu v_{\text{rel}}^2\)(\(\mu\) は換算質量)。これが衝突によって変化(減少)し、反応エネルギーに転化されます。

具体的な解説と立式
1. 重心速度と全エネルギーの分解
重心速度 \(V_G\) は、
$$
\begin{aligned}
V_G &= \frac{m_a v_a + m_x \cdot 0}{m_a + m_x} \\[2.0ex] &= \frac{m_a}{m_a + m_x} v_a
\end{aligned}
$$
重心運動エネルギー \(K_G\) は、
$$
\begin{aligned}
K_G &= \frac{1}{2} (m_a + m_x) V_G^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} (m_a + m_x) \left( \frac{m_a}{m_a + m_x} v_a \right)^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \frac{m_a^2}{m_a + m_x} v_a^2
\end{aligned}
$$
初期の全運動エネルギー \(K_{\text{total}} = \frac{1}{2} m_a v_a^2\) から \(K_G\) を引いた残りが、相対運動エネルギー \(K_{\text{rel}}\) です。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{rel}} &= K_{\text{total}} – K_G
\end{aligned}
$$
実は、この \(K_{\text{rel}}\) こそが問(3)の \(\Delta K\) そのものです。
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= K_{\text{rel}} \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_a v_a^2 – \frac{1}{2} \frac{m_a^2}{m_a + m_x} v_a^2 \\[2.0ex] &= \frac{m_a m_x v_a^2}{2(m_a + m_x)}
\end{aligned}
$$

2. しきい値の導出
反応に必要なエネルギー(不足分)は \(-Q\) です。
反応に使えるのは「相対運動エネルギー \(K_{\text{rel}}\)」だけです(\(K_G\) は重心が動き続けるためにロックされています)。
したがって、反応が起こる条件は、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{rel}} &\ge -Q
\end{aligned}
$$
しきい値(最小の \(K_{\text{total}}\))を \(E_{\text{th}}\) とすると、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{rel}} &= \frac{m_x}{m_a + m_x} E_{\text{th}}
\end{aligned}
$$
より、
$$
\begin{aligned}
\frac{m_x}{m_a + m_x} E_{\text{th}} &= -Q \\[2.0ex] E_{\text{th}} &= – \frac{m_a + m_x}{m_x} Q
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 重心速度の定義
  • エネルギーの分解(ケーニッヒの定理の変形)
計算過程

上記の解説内で計算済みです。

この設問の平易な説明

2つの物体がぶつかるとき、エネルギーは「全体が移動するエネルギー(重心エネルギー)」と「互いに近づくエネルギー(相対エネルギー)」に分けられます。
「全体が移動するエネルギー」は、ぶつかった後もそのまま移動し続けるために使われるので、壊れたり合体したりする反応には使えません。
反応に使えるのは「互いに近づくエネルギー」だけです。
この「使えるエネルギー」だけを取り出して計算すると、問(3)の答えが一発で出ます。
そして、「使えるエネルギー」が「必要なエネルギー(借金)」を返せるギリギリの額を計算すれば、問(4)の答えになります。

結論と吟味

重心系を用いることで、\(\Delta K\) の物理的意味(相対運動エネルギー)が明確になり、計算の見通しも良くなりました。結果はメイン解法と一致します。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{m_a m_x v_a^2}{2(m_a + m_x)}\) 解答 (4) \(\displaystyle – \frac{m_a + m_x}{m_x} Q\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 核反応における保存則の適用
    • 核心: 核反応の前後では、「質量数」「電荷数(原子番号)」「全エネルギー(質量エネルギー含む)」「運動量」が厳密に保存されます。
    • 理解のポイント:
      • 特に「運動量保存則」と「エネルギー保存則」の連立は、分裂後のエネルギー分配を決定する最強のツールです。
      • 吸熱反応では、運動量保存則の制約により、入射エネルギーの全てを反応に使えない(重心運動エネルギーとして残る)点が重要です。
  • しきい値と有効エネルギー
    • 核心: 反応を起こすために必要な最小エネルギー(しきい値)は、単なる反応熱 \(|Q|\) を超えるだけでなく、運動量保存のために「捨てなければならない」エネルギーを考慮した値になります。
    • 理解のポイント:
      • 重心系で見ると、全エネルギーは「重心運動エネルギー(保存・無効)」と「相対運動エネルギー(反応に有効)」に分解できます。
      • 反応に使えるのは相対運動エネルギーだけです。これが \(|Q|\) を超える条件がしきい値です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 素粒子生成のしきい値: 加速器で陽子同士を衝突させてπ中間子を作る問題などでも、全く同じ「重心系エネルギー解析」または「完全非弾性衝突モデル」でしきい値を計算できます。
    • 2物体の完全非弾性衝突: 粘土の衝突や、バリスティック振り子(弾丸が木片にめり込む)の問題では、失われた運動エネルギーが熱や変形に使われますが、本問ではそれが質量増加に使われるというだけで、数式構造は完全に同一です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「静止した標的に衝突」: この設定を見たら、実験室系(普通の座標系)での計算だけでなく、重心系でのエネルギー分解を意識すると見通しが良くなります。
    2. 「最小のエネルギー」「しきい値」: これは「反応後に相対速度が0になる(一体となって動く)」状態を指します。つまり完全非弾性衝突として扱えばOKです。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • しきい値の定義の誤解:
    • 誤解: 吸熱反応のエネルギー不足分が \(-Q\) だから、入射粒子の運動エネルギーがちょうど \(-Q\) あれば反応するだろうと考えてしまう。
    • 対策: 「衝突後も止まれない(運動量保存)」ことを忘れないようにします。必ず「反応後の運動エネルギー(重心運動エネルギー)」が残るため、その分だけ余計にエネルギーが必要になります。
  • Q値の符号とエネルギー収支:
    • 誤解: \(Q\) が負のとき、エネルギー保存則の式で符号を間違える(例: \(K_{\text{前}} + Q = K_{\text{後}}\) なのか \(K_{\text{前}} = K_{\text{後}} + Q\) なのか混乱する)。
    • 対策: \(Q\) を「発生する熱」として捉え、常に \((\text{前の全エネルギー}) = (\text{後の全エネルギー}) + Q\) という基本形を崩さずに立式します。\(Q<0\) なら吸熱(左辺に足すイメージ)として自然に処理できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)でのエネルギー分配(質量の逆比):
    • 選定理由: 連立方程式を解く手間を省き、計算ミスを減らすための強力なショートカットであるため。
    • 適用根拠: 全運動量が \(0\) という条件が満たされている場合、運動量保存則 \(p_1 = -p_2\) とエネルギーの定義 \(K = p^2/2m\) から必然的に導かれるため。
    • 問(3)での完全非弾性衝突モデル:
      • 選定理由: 「しきい値=ギリギリ反応する」状態とは、反応後の生成物が互いに離れ去る余分な運動エネルギーを持たず、一体となって動く状態と等価であるため。
      • 適用根拠: 運動量保存則はどのような衝突でも成立し、エネルギー損失が最大になる(=反応に回せるエネルギーが最大になる)のは完全非弾性衝突のときだから。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認:
    • 意識: 問(3)(4)のような複雑な分数の式では、質量の次元が合っているか常にチェックします。
    • 実践: 例えば \(\Delta K = \frac{m_a m_x v_a^2}{2(m_a + m_x)}\) なら、分母分子で質量が1つ約分され、残りが \(m v^2\)(エネルギーの次元)になることを確認します。もし \(m_a + m_x\) が分子にあったら次元がおかしいと気づけます。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 導出した式が、極端な条件下で物理的に正しい振る舞いをするか確認します。
    • 実践: 問(4)で \(m_x \to \infty\)(標的が無限に重い壁)とすると、しきい値 \(E_{\text{th}} \to -Q\) となります。壁は動かないので運動エネルギーを持ち去らず、不足分だけ供給すればよいという直感と一致します。逆に \(m_x \to 0\) なら \(E_{\text{th}} \to \infty\) となり、軽すぎる標的は弾き飛ばされて反応させるのが難しいこともわかります。
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