問題55 電磁場中の粒子・原子 (京都大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(II)の別解: 微積分(ファラデーの法則の微分形)を用いた体系的解法
- 模範解答が「一周あたりの誘導起電力」という積分形(マクロな視点)で考えるのに対し、別解ではマクスウェル方程式の一つであるファラデーの法則の微分形 \(\nabla \times \vec{E} = -\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}\) (高校物理の範囲では円周上の線積分として扱う)から出発し、誘導電場 \(E\) を局所的に導出します。
- 設問(II)の別解: 微積分(ファラデーの法則の微分形)を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 「磁束の変化が電場を生む」という電磁誘導の本質を、数式を通じてより深く理解できます。
- ベータトロン条件(\(2:1\) の法則)が、単なる公式の暗記ではなく、運動方程式と電磁誘導の法則の必然的な帰結であることを示せます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「荷電粒子の加速器(サイクロトロンとベータトロン)」です。
前半は、磁場による等速円運動と電場による加速を組み合わせたサイクロトロンの原理を扱います。
後半は、磁束の変化によって生じる誘導電場を利用して電子を加速するベータトロンの原理(特にベータトロン条件)を導出します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子は、速度と磁場に垂直な力を受け、等速円運動を行います。
- ファラデーの電磁誘導の法則: 磁束の時間変化は、周囲に誘導起電力(誘導電場)を生じさせます。
- 運動量と力積の関係: 物体に働く力は、運動量の時間変化率に等しい(\(F = \frac{dp}{dt}\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (I) サイクロトロンでは、円運動の周期が速度や半径によらず一定であることを利用し、交流電源の周波数を決定します。また、加速ごとのエネルギー増加を積算して最終エネルギーを求めます。
- (II) ベータトロンでは、磁束の変化率から誘導起電力と誘導電場を求め、それによる電子の加速(運動量の増加)を記述します。円軌道を維持するための条件(向心力=ローレンツ力)と、加速の条件を連立させて、磁束密度と磁束の関係(ベータトロン条件)を導きます。
問(I) ア〜エ
思考の道筋とポイント
ア(周期):
一様な磁場 \(B\) 中で、質量 \(M\)、電荷 \(q\) のイオンが速さ \(v\) で運動しています。
ローレンツ力 \(qvB\) が向心力となり、半径 \(r\) の等速円運動をします。
周期 \(T\) は「円周の長さ \(2\pi r\)」を「速さ \(v\)」で割ったものです。
イ(周波数):
サイクロトロンの加速原理は、イオンが半周して電極の隙間に戻ってくるたびに、電場の向きが逆転して加速されることです。
つまり、交流電源の周期はイオンの円運動の周期 \(T\) と一致する必要があります。
周波数 \(f\) は周期の逆数です。
ウ(エネルギー):
イオンは電極の隙間を通るたびに電位差 \(V_0\) で加速され、運動エネルギーが \(qV_0\) ずつ増えます。
1周する間に隙間を2回通過します(往路と復路)。
\(N\) 周する間に通過する回数は \(2N\) 回です。
エ(最終エネルギー):
加速が進むと半径 \(r\) が大きくなり、最終的に装置の最大半径 \(R\) に達したところで取り出されます。
このときの速さ \(v_{\text{max}}\) を円運動の式から求め、運動エネルギー \(K = \frac{1}{2}Mv_{\text{max}}^2\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 周期の等時性: \(T = \frac{2\pi M}{qB}\) は半径 \(r\) や速さ \(v\) に依存しません。これがサイクロトロンの動作原理の核心です。
- 加速の回数: 1周につき2回加速されることを忘れないようにします。
具体的な解説と立式
ア(周期)
円運動の運動方程式(向心方向)を立てます。
$$
\begin{aligned}
M \frac{v^2}{r} &= qvB
\end{aligned}
$$
これより半径 \(r\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{Mv}{qB}
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) の定義式に代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi r}{v}
\end{aligned}
$$
イ(周波数)
交流電源の周波数 \(f\) は周期 \(T\) の逆数です。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T}
\end{aligned}
$$
ウ(エネルギー増加)
1回の通過で得るエネルギーは \(qV_0\) です。
1周で2回通過するので、\(N\) 周での通過回数は \(2N\) 回です。
総エネルギー増加量 \(\Delta K\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= qV_0 \times 2N
\end{aligned}
$$
エ(最終エネルギー)
取り出し口での半径は \(R\) です。このときの速さを \(v_R\) とします。
運動方程式より、
$$
\begin{aligned}
M \frac{v_R^2}{R} &= qv_R B
\end{aligned}
$$
これより \(v_R\) を求め、運動エネルギー \(K\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{1}{2} M v_R^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{r} = F\)
- ローレンツ力: \(f = qvB\)
- 周期: \(T = \frac{2\pi r}{v}\)
- 仕事とエネルギー: \(W = qV\)
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
ア
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{v} \cdot \frac{Mv}{qB} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi M}{qB}
\end{aligned}
$$
イ
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T} \\[2.0ex]
&= \frac{qB}{2\pi M}
\end{aligned}
$$
ウ
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= 2NqV_0
\end{aligned}
$$
エ
運動方程式より \(v_R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_R &= \frac{qBR}{M}
\end{aligned}
$$
これをエネルギーの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{1}{2} M \left( \frac{qBR}{M} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{q^2 B^2 R^2}{2M}
\end{aligned}
$$
サイクロトロンは、磁場でぐるぐる回しながら、タイミングよく電気で背中を押して加速する装置です。
面白いことに、速くなっても一周にかかる時間は変わりません(速くなった分、大回りになるからです)。だから、一定のリズム(周波数)で電気の向きを変えてやれば、どんどん加速できます。
最終的なスピードは、装置の大きさ(半径 \(R\))と磁場の強さで決まります。
ア: \(\frac{2\pi M}{qB}\), イ: \(\frac{qB}{2\pi M}\), ウ: \(2NqV_0\), エ: \(\frac{q^2 B^2 R^2}{2M}\)
周期が速度に依存しないこと、最終エネルギーが半径の2乗に比例することは、サイクロトロンの基本的な特性として妥当です。
問(II) オ〜ケ
思考の道筋とポイント
ベータトロンは、磁場を変化させることで誘導起電力を生み出し、それによって電子を加速します。同時に、その磁場で電子を円軌道に閉じ込めます。
電子の質量を \(m\)、電荷を \(-e\)(大きさ \(e\))とします。
オ(運動量):
半径 \(R\) の円軌道上で、磁束密度 \(B\) の磁場によるローレンツ力を向心力として円運動しています。
運動量 \(p = mv\) と磁束密度 \(B\) の関係を導きます。
カ(誘導起電力):
ファラデーの電磁誘導の法則を用います。
軌道を貫く磁束 \(\Phi\) が微小時間 \(\Delta t\) の間に \(\Delta \Phi\) だけ増加しました。
誘導起電力 \(V\) の大きさは、磁束の時間変化率に等しいです。
キ(誘導電場):
誘導起電力 \(V\) は、円軌道一周分の「電場の仕事」に相当します。
円周の長さは \(2\pi R\) です。対称性より、軌道上の誘導電場 \(E\) の大きさは一定です。
\(V = E \times (\text{円周})\) の関係から \(E\) を求めます。
ク(運動量の増加):
電子は誘導電場 \(E\) から接線方向に力 \(F = eE\) を受けます。
運動方程式(運動量の時間変化率=力) \(\frac{\Delta p}{\Delta t} = F\) より、運動量の増加量 \(\Delta p\) を求めます。
ケ(ベータトロン条件):
電子が常に半径 \(R\) の軌道を回り続けるためには、加速されて運動量 \(p\) が増えた分だけ、引き留めるための磁束密度 \(B\) も強くする必要があります。
オで求めた関係式 \(p = eBR\) を微分(増分をとる)し、クの結果と結びつけることで、必要な磁束密度の増加量 \(\Delta B\) と磁束の増加量 \(\Delta \Phi\) の関係を導きます。
この設問における重要なポイント
- 2つの磁場の役割:
- 軌道上の磁場 \(B\): ローレンツ力により電子を円軌道に閉じ込める役割(ガイド役)。
- 軌道を貫く磁束 \(\Phi\): 時間変化することで誘導電場を生み出し、電子を加速する役割(エンジン役)。
- この2つは区別して考える必要がありますが、ベータトロン条件によってリンクしています。
- レンツの法則: 磁束が増加すると、それを打ち消す向きに誘導電流を流そうとする起電力が生じます。電子(負電荷)は誘導電流と逆向きに動くため、結果として加速されます。
具体的な解説と立式
オ(運動量)
円運動の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{R} &= evB
\end{aligned}
$$
両辺を \(v/R\) で割り、\(mv\) を作ります。
$$
\begin{aligned}
mv &= eBR
\end{aligned}
$$
運動量 \(p = mv\) なので、
$$
\begin{aligned}
p &= eBR
\end{aligned}
$$
カ(誘導起電力)
ファラデーの法則より、誘導起電力 \(V\) の大きさは以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
キ(誘導電場)
一周の長さ \(2\pi R\) にわたって電場 \(E\) が生じており、その積が起電力 \(V\) になります。
$$
\begin{aligned}
V &= E \cdot 2\pi R
\end{aligned}
$$
これより \(E\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{V}{2\pi R}
\end{aligned}
$$
ク(運動量の増加)
電子が受ける加速力 \(F\) は \(eE\) です。
運動量の変化量 \(\Delta p\) は、力積 \(F \Delta t\) に等しいです。
$$
\begin{aligned}
\Delta p &= F \Delta t \\[2.0ex]
&= eE \Delta t
\end{aligned}
$$
これにキの結果とカの結果を代入して、\(\Delta \Phi\) を用いて表します。
ケ(ベータトロン条件)
半径 \(R\) を一定に保つためには、オの関係式 \(p = eBR\) が常に成り立つ必要があります。
両辺の増分をとります(\(R, e\) は定数)。
$$
\begin{aligned}
\Delta p &= eR \Delta B
\end{aligned}
$$
これとクで求めた \(\Delta p\) の式を連立させ、\(\Delta B\) を求めます。
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{R} = evB\)
- ファラデーの法則: \(V = \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
- 電場と電位の関係(一周): \(V = E \cdot 2\pi R\)
- 運動量と力積: \(\Delta p = F \Delta t\)
オ
$$
\begin{aligned}
p &= eBR
\end{aligned}
$$
カ
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
キ
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{2\pi R} \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
ク
$$
\begin{aligned}
\Delta p &= e \left( \frac{1}{2\pi R} \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right) \Delta t \\[2.0ex]
&= \frac{e}{2\pi R} \Delta \Phi
\end{aligned}
$$
解答欄の形 \(\text{□} \times \Delta \Phi\) に合わせると、係数は \(\frac{e}{2\pi R}\) です。
ケ
オの増分式 \(\Delta p = eR \Delta B\) に、クの結果を代入します。
$$
\begin{aligned}
eR \Delta B &= \frac{e}{2\pi R} \Delta \Phi
\end{aligned}
$$
\(\Delta B\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\Delta B &= \frac{1}{eR} \cdot \frac{e}{2\pi R} \Delta \Phi \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2\pi R^2} \Delta \Phi
\end{aligned}
$$
ベータトロンは、磁石の強さを変えることで電気を起こし(電磁誘導)、その電気の力で電子を加速する装置です。
加速すると電子は外側に飛び出そうとしますが、同時に磁石も強くなっているので、より強い力で内側に引き戻されます。
「加速する力」と「引き戻す力」のバランスがちょうど良くなるように磁場の強さを調整すると、電子は同じ半径の場所をぐるぐる回りながら加速し続けます。
そのバランス条件(ベータトロン条件)は、「軌道上の磁場の増え方」が「軌道の内側全体の平均的な磁場の増え方」のちょうど半分になることです(\(\Delta B = \frac{1}{2} \frac{\Delta \Phi}{\pi R^2}\))。
オ: \(eBR\), カ: \(\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\), キ: \(\frac{1}{2\pi R} \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\), ク: \(\frac{e}{2\pi R}\), ケ: \(\frac{1}{2\pi R^2}\)
ケの結果を変形すると \(\Delta \Phi = 2\pi R^2 \Delta B\) となります。もし磁場が一様なら \(\Delta \Phi = \pi R^2 \Delta B\) となるはずですが、係数が2倍になっています。これは、中心付近の磁束を強くして加速を稼ぎつつ、軌道付近の磁場はそこまで強くしない(円運動を維持するだけでいい)という設計が必要であることを意味しています。
思考の道筋とポイント
「一周あたりの起電力」というマクロな視点ではなく、局所的な電場と磁場の関係式(マクスウェル方程式)から出発します。
円筒座標系におけるファラデーの法則の積分形 \(\oint \vec{E} \cdot d\vec{l} = – \frac{d}{dt} \int \vec{B} \cdot d\vec{S}\) を用います。
この設問における重要なポイント
- 対称性: 磁場が軸対称に変化する場合、生じる誘導電場 \(E\) は円周の接線方向を向き、その大きさは円周上で一定です。
- 線積分: 左辺の周回積分は単純に \(E \times 2\pi R\) となります。
具体的な解説と立式
半径 \(R\) の円形閉曲線 \(C\) に沿ってファラデーの法則を適用します。
$$
\begin{aligned}
\oint_C \vec{E} \cdot d\vec{l} &= – \frac{d}{dt} \int_S \vec{B} \cdot d\vec{S}
\end{aligned}
$$
左辺は、電場の大きさ \(E\) と円周 \(2\pi R\) の積です(向きはレンツの法則より決定)。
$$
\begin{aligned}
\oint_C \vec{E} \cdot d\vec{l} &= E \cdot 2\pi R
\end{aligned}
$$
右辺の積分 \(\int_S \vec{B} \cdot d\vec{S}\) は、軌道を貫く全磁束 \(\Phi\) そのものです。
$$
\begin{aligned}
– \frac{d}{dt} \int_S \vec{B} \cdot d\vec{S} &= – \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
大きさだけを考えると、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E \cdot 2\pi R &= \frac{d\Phi}{dt} \\[2.0ex]
E &= \frac{1}{2\pi R} \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
これは問(II)キの結果(微小変化 \(\Delta\) を微分 \(d\) に置き換えたもの)と一致します。
使用した物理公式
- ファラデーの法則(積分形): \(\oint \vec{E} \cdot d\vec{l} = – \frac{d\Phi}{dt}\)
- 運動方程式(微分形): \(\frac{dp}{dt} = F\)
次に、運動方程式(接線方向)を微分形で書きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp}{dt} &= eE
\end{aligned}
$$
これに \(E\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp}{dt} &= \frac{e}{2\pi R} \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
両辺を \(t\) で積分(あるいは微小変化をとる)すると、
$$
\begin{aligned}
\Delta p &= \frac{e}{2\pi R} \Delta \Phi
\end{aligned}
$$
となり、クの結果が得られます。
最後に、半径一定の条件 \(p(t) = e R B(t)\) を時間微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp}{dt} &= eR \frac{dB}{dt}
\end{aligned}
$$
これら2つの \(dp/dt\) の式を等置します。
$$
\begin{aligned}
eR \frac{dB}{dt} &= \frac{e}{2\pi R} \frac{d\Phi}{dt} \\[2.0ex]
\frac{dB}{dt} &= \frac{1}{2\pi R^2} \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
微小変化に戻せば、ケの結果 \(\Delta B = \frac{1}{2\pi R^2} \Delta \Phi\) が得られます。
「磁束が変わると電場が渦を巻く」という法則(マクスウェル方程式)を円形のコースに適用しました。
数式をこねくり回しているように見えますが、やっていることは「加速に必要な力(電場)」と「コースを守るのに必要な力(磁場)」の変化のペースを合わせているだけです。
微分を使うことで、瞬間の変化率として厳密に議論できます。
微積分を用いても全く同じ結果が得られました。
この導出過程により、ベータトロンの原理が電磁気学の基本方程式とニュートン力学の整合性の上に成り立っていることが明確になります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ローレンツ力と円運動
- 核心: 磁場中を運動する荷電粒子は、常に速度と垂直な方向へローレンツ力を受け、これを向心力として等速円運動を行います。
- 理解のポイント:
- 周期の等時性: サイクロトロンにおいて、周期 \(T = 2\pi m / qB\) が速度や半径に依存しないことが、一定周波数の交流電源による加速を可能にします。
- ファラデーの電磁誘導の法則とベータトロン条件
- 核心: 磁束の時間変化が誘導電場を生み出し、それが荷電粒子を加速します。円軌道を維持しながら加速するためには、磁束密度 \(B\) と全磁束 \(\Phi\) の変化率に特定の関係(\(2:1\))が必要です。
- 理解のポイント:
- 役割分担: 軌道上の磁場 \(B\) は「ガイド役(向心力)」、軌道を貫く磁束 \(\Phi\) の変化は「エンジン役(加速力)」です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ホール効果: 導体中の電子がローレンツ力を受けて偏る現象も、力のつりあいや円運動の微小部分として解析できます。
- トカマク型核融合炉: プラズマ(荷電粒子)を磁場でドーナツ状に閉じ込める原理は、ベータトロンの軌道維持と共通しています。
- 電磁誘導による加速: 変圧器(トランス)の原理も、磁束変化による誘導起電力を利用する点でベータトロンと類似しています。
- 初見の問題での着眼点:
- 「一定の軌道半径」という条件: これがあれば、運動方程式 \(mv^2/R = qvB\) と、その微分形(増分形) \(\Delta p = qR \Delta B\) を即座に連想します。
- 「一周あたりのエネルギー増加」: サイクロトロンなら \(qV\)、ベータトロンなら誘導起電力 \(V = \Delta \Phi / \Delta t\) に着目します。
- 対称性の利用: 円筒対称な磁場変化では、誘導電場 \(E\) は円周に沿って一定であり、\(V = E \cdot 2\pi R\) の関係が使えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- サイクロトロンの加速回数:
- 誤解: 1周につき1回しか加速されないと勘違いし、エネルギー増加を \(NqV_0\) としてしまう。
- 対策: 電極の隙間は2箇所(往路と復路)あるため、1周で2回加速されることを図を見て確認します。
- 磁束 \(\Phi\) と磁束密度 \(B\) の混同:
- 誤解: ベータトロンにおいて、\(\Phi = \pi R^2 B\) (一様磁場)の式を無条件に使ってしまい、係数の \(2\) が出てこない。
- 対策: ベータトロンは「一様でない磁場」を用いる装置です。軌道上の \(B\) と、内部を貫く平均磁束密度(\(\Phi/\pi R^2\))が異なることを意識し、安易に \(\Phi = BS\) を適用しないようにします。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 運動量と力積の関係 \(\Delta p = F \Delta t\):
- 選定理由: ベータトロンでは力が時間的に変化する可能性があるため、運動方程式 \(ma=F\) よりも、積分形である運動量と力積の関係の方が、増分 \(\Delta\) を扱う上で見通しが良いからです。
- 適用根拠: ニュートンの運動方程式の変形であり、微小時間 \(\Delta t\) においては力が一定とみなせるため適用可能です。
- ファラデーの法則 \(V = \Delta \Phi / \Delta t\):
- 選定理由: 磁場の変化によって生じる電圧(加速エネルギー)を求めるための唯一の基本法則だからです。
- 適用根拠: 閉回路(電子の軌道)を貫く磁束が変化しているため、必ず誘導起電力が生じます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 増分記号 \(\Delta\) の扱い:
- 意識: \(\Delta\) は単なる記号ではなく「変化量(後-前)」を意味します。定数(\(e, R, \pi\) など)は \(\Delta\) の外に出し、変数(\(B, \Phi, p\))だけに \(\Delta\) を付けます。
- 実践: \(p = eBR\) の両辺の変化をとるとき、\(e\) と \(R\) が定数なら \(\Delta p = eR \Delta B\) と機械的に操作できるよう練習します。
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 最終的な答えの単位が合っているか確認します。
- 実践: 例えばケの答え \(\Delta B = \frac{1}{2\pi R^2} \Delta \Phi\) なら、右辺は \([\text{Wb}]/[\text{m}^2] = [\text{T}]\) となり、左辺の磁束密度 \([\text{T}]\) と一致することを確認します。
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問題56 光の粒子性 (弘前大+京都工繊大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(5)の別解: 限界振動数を用いたプランク定数の導出
- 模範解答がグラフの傾きからプランク定数を求めるのに対し、別解ではグラフの横軸切片(限界振動数)と仕事関数の関係式を用いてプランク定数を算出します。
- 設問(5)の別解: 限界振動数を用いたプランク定数の導出
- 上記の別解が有益である理由
- グラフの傾き(変化率)だけでなく、切片(特定の物理状態)にも物理的な意味があることを理解し、多角的にデータを解析する力を養います。
- 仕事関数と限界振動数の関係式 \(W = h\nu_0\) の理解を深めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「光電効果」です。光の粒子性を示す代表的な現象であり、アインシュタインの光量子仮説に基づいて実験データを解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光量子仮説: 光はエネルギー \(E = h\nu\) を持つ粒子(光子)として振る舞います。
- 光電効果のエネルギー保存則: \(h\nu = W + K_{\text{最大}}\) (光子のエネルギー = 仕事関数 + 電子の最大運動エネルギー)
- 阻止電圧: 光電流がちょうど \(0\) になるときの逆電圧 \(V_0\) と最大運動エネルギーの関係は \(K_{\text{最大}} = eV_0\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、光電管に適切な電圧をかけるための回路図を作成します。
- (2)では、電流の定義から単位時間あたりに到達する電子数を求めます。
- (3)では、グラフから読み取った阻止電圧を用いて最大運動エネルギーを計算します。
- (4)では、光の強度を変えたときの電流-電圧特性の変化を考察します。
- (5)では、実験データ(\(K-\nu\) グラフ)からプランク定数と仕事関数を求めます。
- (6)では、特定の波長の光で光電効果が起きるか判定します。
- (7)では、金属を変えたときのグラフの変化を図示します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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