問題49 交流・電磁場中の粒子
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(4)共通の別解: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式)
- 模範解答はベクトル図(フェーザ図)を用いて電圧の最大値の関係を幾何学的に解いていますが、別解ではキルヒホッフの法則に基づく回路方程式(微分方程式)を立式し、時間関数としての電流と電圧を導出します。
- 設問(3)の別解: 三角関数の合成と軌跡の方程式
- 媒介変数表示された \(x, y\) の式から時間 \(t\) を消去し、数式的に楕円の方程式を導きます。
- 設問(1)〜(4)共通の別解: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: ベクトル図の幾何学的直感に頼らず、物理の基本原理(ファラデーの電磁誘導の法則など)から現象を数学的に記述する力を養えます。特に、位相のずれや振幅の変化がなぜ起こるのかを根本から理解できます。
- 数式的解法: リサージュ図形がどのような形状になるかを、感覚ではなく数式変形によって厳密に決定する手順を習得できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「RL直列回路の特性とオシロスコープによるリサージュ図形の観測」です。交流回路における電圧・電流の位相関係と、それがブラウン管上でどのような図形として描かれるかを結びつけて考えます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- RL直列回路の電圧関係: 抵抗 \(R\) の電圧とコイル \(L\) の電圧は位相が \(\pi/2\) ずれており、電源電圧の最大値 \(V_0\) との間には \(V_0^2 = V_{R0}^2 + V_{L0}^2\) の関係が成り立ちます。
- オシロスコープの原理: X軸とY軸に加えられた電圧によって電子ビームが偏向され、蛍光面上に輝点の軌跡(リサージュ図形)が描かれます。
- リサージュ図形: 互いに直交する2つの単振動の合成運動です。位相差や振幅比によって、直線、楕円、円などの形状になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、問題文の条件から電圧と画面上の長さの比例関係を特定し、コイル電圧に対応する長さを求めます。
- (2)では、コイルを抵抗に置き換えた場合の位相差(\(0\))に着目し、軌跡の方程式を導きます。
- (3)では、RL回路に戻し、位相差(\(\pi/2\))と振幅の違いから楕円の方程式を導きます。
- (4)では、円になる条件(振幅が等しい)から周波数の変化を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
この問題は、RL直列回路における電圧の振幅と位相の関係、そしてそれがオシロスコープ上でどのように観測されるかを問うものです。
まず、問題文で与えられた条件から、電圧と画面上の変位の比例関係を特定する必要があります。
- 基準となる電圧と変位の関係:
- 「Xをaに、X’をbにつなぐ」\(\rightarrow\) 抵抗 \(R\) の両端電圧 \(V_R\) を測定。このとき \(-a \le x \le a\) が光るため、\(V_R\) の振幅(最大値)に対応する長さは \(a\) です。
- 「Xをaに、X’をcにつなぐ」\(\rightarrow\) 電源電圧 \(V_{\text{電源}}\) を測定。このとき \(-2a \le x \le 2a\) が光るため、\(V_{\text{電源}}\) の振幅に対応する長さは \(2a\) です。
- 設問の状況:
- YとY’を接地し、Xをbに、X’をcにつなぐ \(\rightarrow\) コイル \(L\) の両端電圧 \(V_L\) をX軸(水平方向)に表示します。Y軸入力はないため、水平な直線になります。
この設問における重要なポイント
- 直列回路の電圧ベクトル: 抵抗 \(R\) の電圧 \(V_R\) とコイル \(L\) の電圧 \(V_L\) は位相が \(\pi/2\)(90度)ずれています。
- 電圧の最大値の関係: 電源電圧の最大値を \(V_{\text{電源0}}\)、抵抗電圧の最大値を \(V_{R0}\)、コイル電圧の最大値を \(V_{L0}\) とすると、三平方の定理 \(V_{\text{電源0}}^2 = V_{R0}^2 + V_{L0}^2\) が成り立ちます。
具体的な解説と立式
抵抗 \(R\) の電圧の最大値を \(V_{R0}\)、コイル \(L\) の電圧の最大値を \(V_{L0}\)、電源電圧の最大値を \(V_{\text{電源0}}\) とします。
問題文の条件より、それぞれの最大値に対応する蛍光面上の長さ(振幅)は以下の通りです。
- \(V_{R0}\) に対応する長さ: \(a\)
- \(V_{\text{電源0}}\) に対応する長さ: \(2a\)
RL直列回路のベクトル図(電圧の三角形)を考えます。電流 \(I\) を基準とすると、\(V_R\) は同位相、\(V_L\) は \(\pi/2\) 進んでいます。したがって、各電圧の最大値の間には以下の三平方の定理が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{電源0}}^2 &= V_{R0}^2 + V_{L0}^2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
ここで、電圧と長さの比例定数を \(k\) とし、コイル電圧の振幅に対応する長さを \(x_L\) とします。
各電圧の最大値を長さで表すと以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_{R0} &= k \cdot a \\[2.0ex]
V_{\text{電源0}} &= k \cdot 2a \\[2.0ex]
V_{L0} &= k \cdot x_L
\end{aligned}
$$
これらを式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
(k \cdot 2a)^2 &= (k \cdot a)^2 + (k \cdot x_L)^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 交流回路の電圧関係(ベクトル図): \(V^2 = V_R^2 + V_L^2\)
上の式から共通因子の \(k^2\) を消去して整理します。
$$
\begin{aligned}
(2a)^2 &= a^2 + x_L^2 \\[2.0ex]
4a^2 &= a^2 + x_L^2 \\[2.0ex]
x_L^2 &= 4a^2 – a^2 \\[2.0ex]
x_L^2 &= 3a^2
\end{aligned}
$$
\(x_L > 0\) より、平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
x_L &= \sqrt{3}a
\end{aligned}
$$
したがって、コイル電圧の振幅に対応する長さは \(\sqrt{3}a\) です。
今回はX軸(水平方向)にこの電圧が表示され、Y軸は接地(\(0\))されているため、\(x\)軸上の直線部分が光ります。
その範囲は \(-x_L \le x \le x_L\) となります。
抵抗にかかる電圧の「大きさ」が \(a\)、電源全体の電圧の「大きさ」が \(2a\) でした。
交流回路では、抵抗の電圧とコイルの電圧は単純な足し算ではなく、「直角三角形の斜辺と底辺」のような関係になります。
斜辺(電源)が \(2a\)、底辺(抵抗)が \(a\) なので、高さ(コイル)にあたる部分は三平方の定理で計算でき、\(\sqrt{3}a\) となります。
オシロスコープにはこのコイルの電圧だけが横方向に表示されるので、中心から左右に \(\sqrt{3}a\) ずつ光ることになります。
光る部分は \(x\)軸上の直線部分 \(-\sqrt{3}a \le x \le \sqrt{3}a\) です。
電源電圧(\(2a\))よりもコイル電圧(\(\sqrt{3}a \approx 1.73a\))の方が小さいという結果は、直列回路の分圧として妥当です。
思考の道筋とポイント
回路方程式(キルヒホッフの第二法則)を立て、時間 \(t\) の関数として電流 \(I(t)\) を求めます。そこから各素子の電圧 \(V_R(t), V_L(t)\) を導出し、振幅と位相の関係を解析的に明らかにします。この解法は、以降の設問(2)〜(4)すべての基礎となります。
この設問における重要なポイント
- 回路方程式の立式: 電源電圧、抵抗での電圧降下、コイルでの誘導起電力の関係を微分方程式で記述します。
- 定常解の導出: 過渡現象が収まった後の定常的な交流電流を求めます。
具体的な解説と立式
交流電源の電圧を \(V(t) = V_0 \sin \omega t\) とします。回路には抵抗 \(R\) とコイル \(L\) が直列に接続されています。流れる電流を \(I(t)\) とすると、キルヒホッフの第二法則より以下の回路方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
L \frac{dI(t)}{dt} + R I(t) &= V_0 \sin \omega t \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
この微分方程式の定常解を、位相の遅れ \(\alpha\) を考慮して以下のように仮定します。
$$
\begin{aligned}
I(t) &= I_0 \sin(\omega t – \alpha)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- キルヒホッフの第二法則: \(V = V_L + V_R\)
- コイルの自己誘導起電力(逆起電力の大きさ): \(V_L = L \frac{di}{dt}\)
- 三角関数の合成公式: \(A \sin \theta + B \cos \theta = \sqrt{A^2+B^2} \sin(\theta + \phi)\)
仮定した解を式②の左辺に代入します。
$$
\begin{aligned}
\text{左辺} &= L \frac{d}{dt} \{ I_0 \sin(\omega t – \alpha) \} + R \{ I_0 \sin(\omega t – \alpha) \} \\[2.0ex]
&= \omega L I_0 \cos(\omega t – \alpha) + R I_0 \sin(\omega t – \alpha)
\end{aligned}
$$
ここで三角関数の合成を用います。
$$
\begin{aligned}
\text{左辺} &= I_0 \sqrt{R^2 + (\omega L)^2} \sin(\omega t – \alpha + \theta)
\end{aligned}
$$
ただし、\(\theta\) は以下の条件を満たす角です。
$$
\begin{aligned}
\tan \theta &= \frac{\omega L}{R}
\end{aligned}
$$
これが右辺 \(V_0 \sin \omega t\) と恒等的に等しくなるためには、位相のずれがなく(\(\theta = \alpha\))、振幅が一致する必要があります。
よって、電流の振幅 \(I_0\) と位相角 \(\alpha\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \frac{V_0}{\sqrt{R^2 + (\omega L)^2}} \\[2.0ex]
\tan \alpha &= \frac{\omega L}{R} \quad \left( 0 < \alpha < \frac{\pi}{2} \right)
\end{aligned}
$$
これより、各電圧の時間関数を求めます。
抵抗の電圧 \(V_R(t)\):
$$
\begin{aligned}
V_R(t) &= R I(t) \\[2.0ex]
&= R I_0 \sin(\omega t – \alpha)
\end{aligned}
$$
コイルの電圧 \(V_L(t)\):
$$
\begin{aligned}
V_L(t) &= L \frac{dI(t)}{dt} \\[2.0ex]
&= \omega L I_0 \cos(\omega t – \alpha) \\[2.0ex]
&= \omega L I_0 \sin\left(\omega t – \alpha + \frac{\pi}{2}\right)
\end{aligned}
$$
ここで、問題文の条件(振幅の比)を適用します。
電源電圧の振幅 \(V_0\) に対応する長さが \(2a\)、抵抗電圧の振幅 \(R I_0\) に対応する長さが \(a\) です。
$$
\begin{aligned}
V_0 &\propto 2a \\[2.0ex]
R I_0 &\propto a
\end{aligned}
$$
インピーダンスの関係 \(V_0 = I_0 \sqrt{R^2 + (\omega L)^2}\) より、
$$
\begin{aligned}
V_0^2 &= (R I_0)^2 + (\omega L I_0)^2
\end{aligned}
$$
これに対応する長さを代入します。コイル電圧の振幅 \(\omega L I_0\) に対応する長さを \(x_L\) とします。
$$
\begin{aligned}
(2a)^2 &= a^2 + x_L^2
\end{aligned}
$$
これを解いて \(x_L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_L^2 &= 4a^2 – a^2 \\[2.0ex]
x_L &= \sqrt{3}a
\end{aligned}
$$
微分方程式を解くことで、電流と電圧の式を時間の関数として導き出しました。
その結果、コイルの電圧は抵抗の電圧よりも位相が90度進んでいること、そして電圧の最大値の間には三平方の定理が成り立つことが数式から自然に導かれました。
これを使って計算すると、メイン解法と同じ結果が得られます。
微積分を用いても、電圧の最大値(振幅)の関係式は三平方の定理に帰着し、同じ結果が得られます。また、\(V_L(t)\) の式から、位相が \(V_R(t)\) より \(\pi/2\) 進んでいることも確認できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
コイル \(L\) を抵抗 \(R’ = 2R\) に取り替えます。回路は抵抗 \(R\) と \(R’\) の直列回路になります。
- 回路の構成: 抵抗だけの回路(純抵抗回路)になるため、電圧と電流の位相差は生じません。
- 電圧の配分: 直列回路では、電圧は抵抗値に比例して分配されます(分圧の法則)。
- オシロスコープへの入力:
- X軸(a-b間): 抵抗 \(R\) の電圧 \(V_R\)
- Y軸(b-c間): 抵抗 \(R’\) の電圧 \(V_{R’}\)
この設問における重要なポイント
- 位相差ゼロ: \(V_R\) と \(V_{R’}\) は同位相です。つまり、\(x\) と \(y\) は常に比例関係にあり、リサージュ図形は直線になります。
- 振幅の変化: 回路全体のインピーダンスが変化するため、電流の最大値も変わりますが、問題文の条件「電源電圧の振幅に対応する長さが \(2a\)」は不変です。これを利用して各電圧の振幅を求めます。
具体的な解説と立式
回路は \(R\) と \(R’ (=2R)\) の直列接続です。
電源電圧の瞬時値を \(V(t)\) とすると、分圧の法則より、それぞれの電圧 \(V_x(t), V_y(t)\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_x(t) &= \frac{R}{R + R’} V(t) \\[2.0ex]
V_y(t) &= \frac{R’}{R + R’} V(t)
\end{aligned}
$$
ここで、電源電圧の振幅(最大値)に対応する長さは \(2a\) です。
したがって、\(x\)座標(\(V_x\)に対応)と \(y\)座標(\(V_y\)に対応)の振幅 \(A_x, A_y\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
A_x &= \frac{R}{R + 2R} \times (2a) \\[2.0ex]
A_y &= \frac{2R}{R + 2R} \times (2a)
\end{aligned}
$$
また、\(V_y(t)\) と \(V_x(t)\) の比を考えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{V_y(t)}{V_x(t)} &= \frac{R’}{R}
\end{aligned}
$$
これより、座標 \(x, y\) の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{2R}{R} x
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 抵抗の直列接続と分圧の法則: \(V_k = \frac{R_k}{\sum R} V\)
まず、振幅 \(A_x, A_y\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
A_x &= \frac{1}{3} \times 2a \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3}a
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
A_y &= \frac{2}{3} \times 2a \\[2.0ex]
&= \frac{4}{3}a
\end{aligned}
$$
次に、軌跡の方程式を求めます。
$$
\begin{aligned}
y &= 2x
\end{aligned}
$$
光る範囲は、\(x\)座標の振幅によって制限されます。
\(x\) の変域は \(-A_x \le x \le A_x\) なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
-\frac{2}{3}a \le x \le \frac{2}{3}a
\end{aligned}
$$
コイルを抵抗に変えたので、回路には「電気の流れにくさ(抵抗)」しかありません。
電圧のタイミング(位相)がずれる要素がないため、X軸の電圧とY軸の電圧は完全にタイミングが一致して増減します。
抵抗値が \(R\) と \(2R\) なので、電圧も常に \(1:2\) の比率になります。
したがって、画面上の点は \(y=2x\) という直線上を動きます。
電源全体の電圧(長さ \(2a\) 分)を \(1:2\) に分けるので、X軸方向には全体の \(1/3\) の長さ、つまり幅 \(\frac{2}{3}a\) で振動します。
\(y=2x\) の直線上で、原点を中心に振動します。
\(x\) の最大値が \(2a/3\) なので、\(y\) の最大値は \(4a/3\)。合計すると \(2a\) となり、電源電圧の振幅と一致します。物理的に矛盾はありません。
問(3)
思考の道筋とポイント
コイル \(L\) を戻し、図1の状態(RL直列回路)にします。
- オシロスコープへの入力:
- X軸(a-b間): 抵抗 \(R\) の電圧 \(V_R\)
- Y軸(b-c間): コイル \(L\) の電圧 \(V_L\)
- 位相差: 問(1)の考察および別解の微積分より、\(V_L\) は \(V_R\) より位相が \(\pi/2\) 進んでいます。
- 振幅: 問(1)で求めた通り、\(V_R\) の振幅相当長は \(a\)、\(V_L\) の振幅相当長は \(\sqrt{3}a\) です。
この設問における重要なポイント
- リサージュ図形: 互いに直交する単振動で、振動数が等しく位相差が \(\pi/2\) の場合、軌跡は楕円になります。
具体的な解説と立式
\(x\)座標と \(y\)座標の時間変化は、角周波数を \(\omega\) として以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t \quad \cdots ③ \\[2.0ex]
y &= \sqrt{3}a \sin\left(\omega t + \frac{\pi}{2}\right) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
式④を変形します。
$$
\begin{aligned}
y &= \sqrt{3}a \cos \omega t \quad \cdots ④’
\end{aligned}
$$
式③、④’から時間 \(t\) を消去して、\(x\) と \(y\) の関係式(軌跡の方程式)を導きます。
使用した物理公式
- 三角関数の性質: \(\sin(\theta + \pi/2) = \cos \theta\)
- 三角関数の基本恒等式: \(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\)
式③より \(\sin \omega t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\sin \omega t &= \frac{x}{a}
\end{aligned}
$$
式④’より \(\cos \omega t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\cos \omega t &= \frac{y}{\sqrt{3}a}
\end{aligned}
$$
これらを \(\sin^2 \omega t + \cos^2 \omega t = 1\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{x}{a} \right)^2 + \left( \frac{y}{\sqrt{3}a} \right)^2 &= 1 \\[2.0ex]
\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{3a^2} &= 1
\end{aligned}
$$
これは、長軸が \(y\)軸方向(長さ \(2\sqrt{3}a\))、短軸が \(x\)軸方向(長さ \(2a\))の楕円を表します。
X軸には抵抗の電圧、Y軸にはコイルの電圧がかかります。
コイルの電圧は抵抗の電圧よりもタイミングが90度(1/4周期)早いです。
片方が最大(端っこ)にあるとき、もう片方は0(真ん中)を通る、という動きを繰り返すため、画面上の点は円を描くように回ります。
ただし、振幅(揺れ幅)がX方向は \(a\)、Y方向は \(\sqrt{3}a\) と違うため、縦に引き伸ばされた「楕円」になります。
\(x\)切片は \(\pm a\)、\(y\)切片は \(\pm \sqrt{3}a\) となり、問(1)の結果とも整合します。
問(4)
思考の道筋とポイント
周波数 \(f\)(角周波数 \(\omega = 2\pi f\))を変えると、蛍光面上に「円」が現れました。
- 円になる条件: \(x\)方向の振幅と \(y\)方向の振幅が等しくなること。位相差は \(\pi/2\) のまま変わりません。
- 振幅が等しい: つまり、抵抗の電圧 \(V_R\) とコイルの電圧 \(V_L\) の最大値が等しくなる条件を求めます。
この設問における重要なポイント
- インピーダンスの変化: 周波数が変わると、コイルのリアクタンス \(\omega L\) が変化します。
- 電圧の条件: \(V_R = RI\)、\(V_L = \omega L I\) なので、\(V_R = V_L\) となるのは \(R = \omega L\) のときです。
具体的な解説と立式
問(1)の状態(初期状態)での角周波数を \(\omega_1\)、円になったときの角周波数を \(\omega_2\) とします。
初期状態では、\(V_R\) の振幅が \(a\)、\(V_L\) の振幅が \(\sqrt{3}a\) でした。電流の最大値を \(I_1\) とすると、以下の比例関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R I_1 &\propto a \\[2.0ex]
\omega_1 L I_1 &\propto \sqrt{3}a
\end{aligned}
$$
辺々を割って比をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\omega_1 L}{R} &= \sqrt{3} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
次に、円になった状態では、\(V_R\) と \(V_L\) の振幅が等しくなります。電流の最大値を \(I_2\) とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R I_2 &= \omega_2 L I_2
\end{aligned}
$$
よって、以下の関係が得られます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\omega_2 L}{R} &= 1 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
式⑤と式⑥を比較して、周波数の倍率を求めます。また、そのときの円の半径を求めます。
使用した物理公式
- 抵抗の電圧降下: \(V_R = RI\)
- コイルの電圧降下: \(V_L = \omega L I\)
式⑥を式⑤で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\frac{\omega_2 L}{R}}{\frac{\omega_1 L}{R}} &= \frac{1}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]
\frac{\omega_2}{\omega_1} &= \frac{1}{\sqrt{3}}
\end{aligned}
$$
周波数 \(f\) は \(\omega\) に比例するので、周波数は \(\frac{1}{\sqrt{3}}\) 倍になります。
次に、円の半径を求めます。
電源電圧の実効値(および最大値)は一定に保たれています。電源電圧の最大値に対応する長さは \(2a\) です。
円の場合、\(V_R\) と \(V_L\) の振幅は等しい(これを \(V’\) とします)ので、三平方の定理より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(2a)^2 &= (\text{半径})^2 + (\text{半径})^2 \\[2.0ex]
4a^2 &= 2 (\text{半径})^2 \\[2.0ex]
(\text{半径})^2 &= 2a^2
\end{aligned}
$$
半径 \(> 0\) より、平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
\text{半径} &= \sqrt{2}a
\end{aligned}
$$
最初はコイルの電圧の方が抵抗の電圧より \(\sqrt{3}\) 倍大きかったため、縦長の楕円でした。
周波数を下げると、コイルの「交流を通しにくい性質(リアクタンス)」が小さくなり、コイルにかかる電圧が下がります。
周波数を \(\frac{1}{\sqrt{3}}\) 倍まで下げると、ちょうど抵抗とコイルの電圧が同じ大きさになり、縦横の揺れ幅が揃って「円」になります。
このとき、電源電圧(斜辺)の長さ \(2a\) は変わらないので、等辺の直角三角形(直角二等辺三角形)の関係になり、半径(等辺の長さ)は \(\sqrt{2}a\) になります。
周波数を下げるとコイルのインピーダンスが下がるため、\(V_L\) の比率が下がる方向の変化であり、妥当です。
問Q
思考の道筋とポイント
- YY’間: 周期 \(T\) の交流電圧(正弦波など)がかかります。これが観測したい信号です。
- XX’間: 図のようなのこぎり波電圧がかかります。これは時間 \(t\) とともに電圧が一定の割合で増加し、周期 \(T\) で元に戻る電圧です。
- オシロスコープの原理: X軸に時間変化に比例する電圧(掃引電圧)を加えることで、蛍光面上の輝点は左から右へ一定の速さで移動します。これにより、Y軸に入力された電圧の時間変化(波形)そのものが画面に描かれます。
この設問における重要なポイント
- 掃引(スイープ): 横軸を時間軸として波形を表示するための基本的な操作です。
- 周期の一致: 信号の周期と掃引の周期が一致しているため、画面上には静止した1周期分の波形が表示されます。
具体的な解説と立式
XX’間の電圧 \(V_x\) は、\(0 \le t < T\) の範囲で \(V_x \propto t\) となっています。
したがって、輝点の \(x\)座標は時間に比例して移動します。
$$
\begin{aligned}
x &= k t \quad (k\text{は定数})
\end{aligned}
$$
一方、YY’間には交流電圧 \(V_y(t)\) がかかっているので、\(y\)座標はその瞬間の電圧値を表示します。
$$
\begin{aligned}
y &\propto V_y(t)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オシロスコープの表示原理: \(x \propto t, y \propto V\)
\(x\) が \(t\) に比例するため、\(xy\)平面上のグラフは \(tV\)平面上のグラフ(時間波形)と相似形になります。
\(t=0\) から \(t=T\) の間、輝点は左から右へ移動しながら電圧の値を描きます。
\(t=T\) で \(x\) は瞬時に左端に戻り、再び同じ波形を描き重ねます。
結果として、交流電圧の波形(正弦波)がそのまま描かれます。
横方向(X軸)には、時間とともに一定のペースで増える電圧がかかっています。これは、ペンを紙の左から右へ一定の速さで動かすのと同じことです。
縦方向(Y軸)には、見たい交流電圧がかかっています。これは、ペンの高さを電圧に合わせて上下させることです。
この2つが組み合わさると、紙には電圧の時間変化の様子、つまり「波の形」がそのまま描かれます。
オシロスコープの最も基本的な使用法であり、時間変化する信号を波形として観測する原理そのものです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 交流回路における電圧と位相の関係(ベクトル図とインピーダンス)
- 核心: 抵抗 \(R\) とコイル \(L\) の直列回路では、電流の位相を基準にすると、抵抗の電圧は同位相、コイルの電圧は \(\pi/2\)(90度)進むため、電圧の最大値の間には三平方の定理 \(V^2 = V_R^2 + V_L^2\) が成立します。
- 理解のポイント:
- 単純な足し算 \(V = V_R + V_L\) は瞬時値では成り立ちますが、最大値(振幅)や実効値では成り立ちません。
- この位相差が、オシロスコープ上でリサージュ図形(楕円や円)を描く原因となります。
- オシロスコープによるリサージュ図形の描画原理
- 核心: 互いに直交する2つの単振動(X軸とY軸への入力電圧)の合成運動として、画面上の輝点の軌跡が描かれます。
- 理解のポイント:
- 位相差が \(0\) なら直線、\(\pi/2\) なら楕円(振幅が等しければ円)になります。
- 図形の形状から、2つの入力信号の位相差や振幅比、周波数比を読み取ることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RC直列回路: コイル \(L\) の代わりにコンデンサー \(C\) が接続された場合です。コンデンサーの電圧は電流より \(\pi/2\) 遅れるため、リサージュ図形の回転方向が逆になりますが、電圧の関係式(三平方の定理)や楕円になる点は同じです。
- RLC直列回路: \(R, L, C\) すべてが直列の場合、\(V_L\) と \(V_C\) が互いに打ち消し合う(位相が \(\pi\) ズレる)ため、合成リアクタンス \(|\omega L – 1/\omega C|\) を用いて同様に解析できます。共振時には \(V_L\) と \(V_C\) が相殺し、抵抗のみの回路のように振る舞います。
- 初見の問題での着眼点:
- 軸の割り当てを確認する: どの端子がX軸、Y軸、接地(GND)に接続されているかを回路図から読み取り、各軸に表示される物理量(\(V_R, V_L, V_{\text{電源}}\) など)を特定します。
- 位相差を特定する: 回路素子の性質から、X軸入力とY軸入力の位相差を判断します(同位相なら直線、90度なら楕円)。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電圧の単純加算:
- 誤解: 直列回路だからといって、最大値についても \(V_0 = V_{R0} + V_{L0}\) と計算してしまう。
- 対策: 交流回路では「位相」が命です。必ずベクトル図を描くか、三平方の定理 \(V_0 = \sqrt{V_{R0}^2 + V_{L0}^2}\) を用いる癖をつけましょう。
- オシロスコープの座標と電圧の混同:
- 誤解: 画面上の長さ \(x, y\) をそのまま電圧値として計算式に入れてしまう(比例定数 \(k\) を無視する)。
- 対策: 「長さ \(\propto\) 電圧」という比例関係を常に意識し、必要なら比例定数 \(k\) を置いて立式するか、比の計算(\(V_1 : V_2 = x_1 : x_2\))で処理します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ベクトル図(三平方の定理)による解法:
- 選定理由: 交流の定常状態における電圧・電流の最大値(振幅)の関係を求めるには、最も直感的で計算量が少ないため。
- 適用根拠: 電圧と電流が正弦波で変化し、周波数が一定である場合に適用可能です。
- 微積分(回路方程式)による解法(別解):
- 選定理由: 位相差の起源や過渡現象を含めた厳密な理解が必要な場合、あるいは公式を忘れてしまった場合に、基本原理から導出できるため。
- 適用根拠: キルヒホッフの法則と各素子の定義式(\(V_L = L di/dt\) など)は、どのような回路状態でも常に成立する普遍的な法則です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元(単位)の確認:
- 意識: 計算の途中で、抵抗 \(R\) [Ω] とリアクタンス \(\omega L\) [Ω] が同じ次元であることを意識する。
- 実践: \(\omega L / R\) や \(1 / \sqrt{LC}\) など、無次元になるべき項や周波数の次元になるべき項が正しいかを確認しながら式変形を進めます。
- 極端な場合の想定:
- 意識: 周波数 \(f\)(または \(\omega\))を \(0\) や \(\infty\) にしたときの振る舞いを想像する。
- 実践: 問(4)で \(\omega \to 0\) とすると \(V_L \to 0\) となり、楕円が横につぶれて直線に近づくはずです。計算結果がこの直感と矛盾しないか確認します。
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問題50 電磁場中の粒子 (工学院大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)〜(5)の一括解説: 運動方程式を用いた体系的解法
- 模範解答は、電子やホールに働くローレンツ力と静電気力のつりあいを個別に図示して考えていますが、別解ではキャリア(電荷の担い手)の運動方程式を立て、そこから定常状態における電場と電位差を一般的に導出します。
- 設問(2)〜(5)の一括解説: 運動方程式を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 統一的な理解: 電荷の符号(正・負)を変数として扱うことで、電子の場合とホールの場合を全く同じ数式プロセスで処理でき、物理現象の構造的な理解が深まります。
- 原理からの導出: 「力のつりあい」という静的な結果だけでなく、運動方程式という動的な原理から出発することで、現象の因果関係(力が働く \(\rightarrow\) 移動する \(\rightarrow\) 電場ができる \(\rightarrow\) つりあう)を明確に記述できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ホール効果」です。磁場中を流れる電流(キャリア)がローレンツ力を受けて偏在し、導体内部に電位差が生じる現象を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子は、速度と磁場の両方に垂直な力を受けます。向きはフレミングの左手の法則で決定します。
- 電流の微視的モデル: 電流 \(I\) は、キャリアの電荷 \(q\)、数密度 \(n\)、速さ \(v\)、断面積 \(S\) を用いて \(I = qnvS\) と表されます。
- 力のつりあい: 定常状態(ホール電圧が一定になった状態)では、キャリアに働くローレンツ力と、発生した電場による静電気力がつりあっています。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、実験データのグラフから電圧 \(V\) と電流 \(I\)、磁場 \(B\) の比例関係を読み取り、比例定数を決定します。
- (2)〜(4)では、キャリア(電子またはホール)の運動を微視的に考察し、ローレンツ力の向きと電荷の蓄積による電位の高低を判断します。
- (5)では、導出した理論式と実験式を比較し、キャリア密度 \(n\) を算出します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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