問題13 (関西大+大阪大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、位置に依存する電場と摩擦力が働く中での荷電小物体Pの運動を扱います。Pはベルトと共に動く段階と、ベルトに対して滑りながら単振動する段階を繰り返します。各段階での力の分析と運動の記述が求められます。
- 電場: \(E(x) = -ax\) ( \(a>0\)、xは座標)
- ベルト: 水平右向きに一定の速さ \(V\)
- 小物体P: 質量 \(m\)、正電荷 \(q\)
- 摩擦係数: 静止摩擦係数 \(\mu_1\)、動摩擦係数 \(\mu_2\) (\(\mu_2 < \mu_1\))
- 重力加速度: \(g\)
- (1) Pが最初に滑り出す位置 \(x_1\)。
- (2) Pが滑っているときの合力 \(F(x)\)。
- (3) 左向き運動で最大速さになる位置 \(x_2\)。
- (4) その最大速さ \(v_m\)。
- (5) 右端 \(x=b\) から \(x_2\) までの時間 \(t_1\)。
- (6) 左端の折り返し位置 \(x_3\)。
- (7) 再びベルトに対して静止する位置 \(x_4\)。
- (8) \(x_4\) から \(x_1\) までベルトと共に動く時間 \(t_2\)。
- (コラムQ) 右端の位置 \(b\) の表式。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本問は「荷電粒子の運動」と「摩擦力」「単振動」を組み合わせた力学の応用問題です。Pの運動が「ベルトとの一体運動(静止摩擦)」と「ベルトに対する滑り運動(動摩擦、単振動)」の二つのフェーズに分かれる点が特徴的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電場と静電気力: 電場 \(E(x)\) 中の電荷 \(q\) に働く力 \(F_e = qE(x) = -aqx\)。
- 摩擦力: 静止摩擦力(最大値 \(\mu_1 N\))と動摩擦力(一定値 \(\mu_2 N\)、相対運動と逆向き)。
- 運動方程式: \(ma = F_{\text{net}}\)。
- 単振動: 復元力が変位に比例する形 \(F = -K(x-x_c)\) で書けるとき、\(x_c\) を中心とする単振動。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 滑り出し: Pがベルトと共に運動中、電場による力と静止摩擦力がつり合う(または等速運動)。静止摩擦力が最大静止摩擦力を超えると滑り出す。
- (2) 滑り運動中の合力: 動摩擦力の向きを正しく判断し、電場による力と合わせて合力を求める。
- (3)-(6) 単振動の解析: (2)の合力が単振動の形をしていることを確認し、振動中心、角振動数、振幅などを特定して各量を求める。
- (7) 再びベルトに追いつく: Pの速度がベルトの速度Vと一致する位置を、単振動の対称性から求める。
- (8) ベルトとの一体運動: Pがベルトに対して静止した後、再び滑り出すまでの等速運動の時間を計算する。
問(1)
思考の道筋とポイント
Pがベルトと共に速さ\(V\)で等速運動しているとき、Pに働く水平方向の力(電場による力 \(F_e = -aqx\) と静止摩擦力 \(f_s\))はつり合っています。\(x\) が増加し \(F_e\)(左向き)が増加すると、\(f_s\)(右向き)も増加します。\(f_s\) が最大静止摩擦力 \(\mu_1 mg\) に達するとPは滑り始めます。
この設問における重要なポイント
- 滑り出す直前まで力のつり合い(または等速運動)。
- 電場による力 \(F_e = -aqx\)。
- 最大静止摩擦力 \(f_{s,\text{max}} = \mu_1 mg\)。
具体的な解説と立式
Pがベルトと共に等速運動しているとき、力のつり合いより、静止摩擦力 \(f_s\) は電場による力 \(aqx\)(左向きの力の大きさ)と等しく右向きに働きます。
$$f_s = aqx$$
Pが滑り出すのは、\(f_s\) が最大静止摩擦力 \(\mu_1 N = \mu_1 mg\) に達したときです。滑り出す位置を \(x_1\) とすると、
$$aqx_1 = \mu_1 mg \quad \cdots ①$$
使用した物理公式
- 力のつり合い
- 静電気力: \(F_e = -aqx\)
- 最大静止摩擦力: \(f_{s,\text{max}} = \mu_1 mg\)
式①の両辺を \(aq\) で割ると、
$$x_1 = \frac{\mu_1 mg}{aq}$$
Pがベルトと一緒に動いている間は、左向きの電気の力と右向きの静止摩擦力がつり合っています。Pが右に動くほど電気の力が強くなり、静止摩擦力も強くなります。静止摩擦力が限界 (\(\mu_1 mg\)) に達した瞬間にPは滑り始めます。このときの \(aqx_1 = \mu_1 mg\) という関係から \(x_1\) を求めます。
Pが滑り出す位置 \(x_1\) は \(\displaystyle x_1 = \frac{\mu_1 mg}{aq}\) です。
問(2)
思考の道筋とポイント
Pがベルトに対して左へ滑る(Pの対地速度 \(v_P\) がベルトの対地速度 \(V\)(右向き)より小さいか、Pが左向きに動く)場合、Pがベルトから受ける動摩擦力は右向き(\(+x\)方向)で、大きさは \(\mu_2 mg\) です。電場による力は \(-aqx\) です。これらの合力が \(F\) となります。
この設問における重要なポイント
- 動摩擦力の向きはベルトに対するPの相対運動の向きと逆向き。
- 動摩擦力の大きさは \(\mu_2 mg\)。
具体的な解説と立式
Pがベルトに対して左へ滑っているとき、Pに働く力は、
1. 電場による力: \(F_e = -aqx\)
2. 動摩擦力: 右向きに大きさ \(\mu_2 mg\)
したがって、Pに働く合力 \(F\) は、
$$F = -aqx + \mu_2 mg \quad \cdots ②$$
使用した物理公式
- 静電気力: \(F_e = -aqx\)
- 動摩擦力: \(f_k = \mu_2 mg\)
合力は \(F = -aqx + \mu_2 mg\) です。
Pが滑っている間、Pには左向きの電気の力と、ベルトから右向きの動摩擦力が働きます。これらの力の合計がPに働く合力です。
Pが滑っているときの合力は \(F = -aqx + \mu_2 mg\) です。これは単振動の復元力の形に変形できます。
問(3)
思考の道筋とポイント
合力 \(F = -aqx + \mu_2 mg = -aq(x – \frac{\mu_2 mg}{aq})\) は、\(x_c = \frac{\mu_2 mg}{aq}\) を振動中心とする単振動の復元力です。最大の速さとなるのはこの振動中心です。
この設問における重要なポイント
- 合力の式から単振動であることを見抜く。
- 最大の速さになるのは振動中心である。
具体的な解説と立式
合力 \(F = -aq\left(x – \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\right)\) より、振動中心は \(x_2 = \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\)。
この位置で速さが最大になります。
使用した物理公式
- 単振動の復元力: \(F = -K(x-x_c)\)
振動中心 \(x_2 = \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\)。
Pに働く力から、Pが単振動することが分かります。単振動では、振動の中心で速さが最大になります。この中心の位置を力の式から求めます。
最大の速さとなる位置 \(x_2\) は \(\displaystyle x_2 = \frac{\mu_2 mg}{aq}\) です。
問(4)
思考の道筋とポイント
最大の速さ \(v_m\) を求めます。単振動のエネルギー保存則、または \(v_m = A\omega\) を用います。振幅 \(A = b – x_2\)、角振動数 \(\omega = \sqrt{aq/m}\)。
この設問における重要なポイント
- 単振動のエネルギー保存則または最大速度の公式。
- 振幅 \(A = |x_{\text{端}} – x_{\text{中心}}|\)。
具体的な解説と立式
単振動の有効なばね定数を \(K=aq\)。右端 \(x=b\) (速度0) と振動中心 \(x_2\) (速度 \(v_m\)) でのエネルギー保存を考えます。
$$\frac{1}{2}aq(b-x_2)^2 = \frac{1}{2}mv_m^2 \quad \cdots ④$$
または、振幅 \(A = b-x_2\)、角振動数 \(\omega = \sqrt{aq/m}\) を用いて、\(v_m = A\omega\)。
使用した物理公式
- 単振動のエネルギー保存則 or \(v_m = A\omega\)
式④より、\(v_m^2 = \displaystyle\frac{aq}{m}(b-x_2)^2\)。
よって、\(v_m = (b-x_2)\sqrt{\displaystyle\frac{aq}{m}}\)。
(3)より \(x_2 = \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\) を代入すると、
$$v_m = \left(b – \frac{\mu_2 mg}{aq}\right)\sqrt{\frac{aq}{m}}$$
単振動の端 (\(x=b\)) でのエネルギー(位置エネルギーのみ)と中心 (\(x=x_2\)) でのエネルギー(運動エネルギーのみ)が等しいというエネルギー保存則から \(v_m\) を求めます。
最大の速さ \(v_m\) は \(\displaystyle v_m = \left(b – \frac{\mu_2 mg}{aq}\right)\sqrt{\frac{aq}{m}}\) です。
問(5)
思考の道筋とポイント
\(x=b\)(右端)から \(x=x_2\)(振動中心)に至る時間 \(t_1\) は、単振動の周期 \(T\) の1/4です。周期 \(T = 2\pi\sqrt{m/K} = 2\pi\sqrt{m/aq}\)。
この設問における重要なポイント
- 単振動の周期の公式。
- 端から中心までの時間は周期の1/4。
具体的な解説と立式
単振動の周期 \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{m}{aq}}\)。
時間 \(t_1\) は \(T/4\) なので、
$$t_1 = \frac{1}{4}T = \frac{1}{4} \cdot 2\pi\sqrt{\frac{m}{aq}} \quad \cdots ⑤$$
使用した物理公式
- 単振動の周期: \(T = 2\pi\sqrt{m/K}\)
式⑤より、
$$t_1 = \frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{m}{aq}}$$
単振動の端から中心まで動くのにかかる時間は、周期の4分の1です。周期を計算し、それを4で割ります。
\(x=b\) から \(x_2\) に至るまでの時間は \(t_1 = \displaystyle\frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{m}{aq}}\) です。
問(6)
思考の道筋とポイント
左端の折り返し位置 \(x_3\) は、振動中心 \(x_2\) に対して右端 \(b\) と対称な位置です。振幅 \(A = b – x_2\)。よって \(x_3 = x_2 – A\)。
この設問における重要なポイント
- 単振動の対称性。
具体的な解説と立式
振幅 \(A = b – x_2\)。左端 \(x_3\) は、
$$x_3 = x_2 – A = x_2 – (b – x_2) = 2x_2 – b \quad \cdots ⑥$$
(3)より \(x_2 = \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\) を代入します。
使用した物理公式
- 単振動の対称性
式⑥に \(x_2\) を代入すると、
$$x_3 = 2\left(\frac{\mu_2 mg}{aq}\right) – b = \frac{2\mu_2 mg}{aq} – b$$
単振動は中心に対して左右対称です。右側の折り返し点が\(b\)、中心が\(x_2\)なので、左側の折り返し点\(x_3\)は\(x_2\)から\(b-x_2\)だけ左に行った点です。
再び一瞬静止する位置 \(x_3\) は \(\displaystyle x_3 = \frac{2\mu_2 mg}{aq} – b\) です。
問(7)
思考の道筋とポイント
Pが左端 \(x_3\) から右へ動き、再びベルトの速度 \(V\) と同じ速度になる位置 \(x_4\) を求めます。最初にPが滑り出した位置 \(x_1\) での速度は \(V\) でした。単振動の対称性から、振動中心 \(x_2\) を挟んで \(x_1\) と同じ距離にある \(x_4\) で再び速度の大きさが \(V\) になります(運動方向も同じ右向き)。
この設問における重要なポイント
- 単振動における速度の対称性。
- Pがベルトに対して静止する条件: Pの対地速度が \(V\)。
具体的な解説と立式
振動中心 \(x_2\) に対して、\(x_1\) と \(x_4\) は対称な位置にあり、そこで同じ速さ \(V\)(右向き)を持つと考えられます。
よって、\(x_2\) が \(x_1\) と \(x_4\) の中点になるので、
$$x_4 = 2x_2 – x_1 \quad \cdots ⑦$$
使用した物理公式
- 単振動の運動の対称性
式⑦に \(x_1 = \displaystyle\frac{\mu_1 mg}{aq}\) と \(x_2 = \displaystyle\frac{\mu_2 mg}{aq}\) を代入します。
$$x_4 = 2\left(\frac{\mu_2 mg}{aq}\right) – \frac{\mu_1 mg}{aq} = \frac{mg}{aq}(2\mu_2 – \mu_1)$$
Pが最初に滑り始めた位置 \(x_1\) での速度は \(V\) でした。単振動は中心 \(x_2\) に対して対称なので、中心を挟んで \(x_1\) と同じ距離にある \(x_4\) でも速度が \(V\) になります。
Pが再びベルトに対して静止する位置 \(x_4\) は \(\displaystyle x_4 = \frac{mg}{aq}(2\mu_2 – \mu_1)\) です。
問(8)
思考の道筋とポイント
Pは位置 \(x_4\) でベルトと共に速さ \(V\) で右向きに動き始め、再び滑り出す位置 \(x_1\) まで等速運動します。この間の時間 \(t_2\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 等速直線運動: 時間 = 距離 / 速さ。
具体的な解説と立式
Pがベルトと共に速さ \(V\) で動く距離は \(x_1 – x_4\)。この間の時間 \(t_2\) は、
$$t_2 = \frac{x_1 – x_4}{V} \quad \cdots ⑧$$
使用した物理公式
- 等速直線運動: 時間 = 距離 / 速さ
\(x_1 – x_4 = \displaystyle\frac{\mu_1 mg}{aq} – \frac{mg}{aq}(2\mu_2 – \mu_1) = \frac{mg}{aq}(\mu_1 – 2\mu_2 + \mu_1) = \frac{2mg}{aq}(\mu_1 – \mu_2)\)。
これを式⑧に代入すると、
$$t_2 = \frac{\frac{2mg}{aq}(\mu_1 – \mu_2)}{V} = \frac{2mg(\mu_1 – \mu_2)}{aqV}$$
Pは \(x_4\) から \(x_1\) まで、ベルトと同じ速さ \(V\) で動きます。進む距離 \(x_1 – x_4\) を速さ \(V\) で割れば時間が求まります。
\(x_4\) で再びベルトに対して静止し、\(x_1\) までベルトと共に動く時間は \(t_2 = \displaystyle\frac{2mg(\mu_1 – \mu_2)}{aqV}\) です。
【コラム】Q. \(b\) を、ベルトの速さ\(V\)と\(a, q, m, \mu_1, \mu_2, g\)を用いて表せ。
思考の道筋とポイント
Pは位置 \(x_1\) でベルトの速さ \(V\) で滑り始めます。この点を単振動の始点の一つと考え、右端の \(x=b\)(速度0)まで単振動のエネルギー保存則を適用します。単振動のばね定数 \(K=aq\)、振動中心 \(x_2 = \frac{\mu_2 mg}{aq}\)。
この設問における重要なポイント
- 単振動のエネルギー保存則。
- 滑り始めの位置 \(x_1\) での速度は \(V\)。
具体的な解説と立式
単振動のエネルギー保存則より、位置 \(x_1\)(速度\(V\))でのエネルギーと、位置 \(b\)(速度0)でのエネルギーは等しい。
$$\frac{1}{2}mV^2 + \frac{1}{2}aq(x_1-x_2)^2 = \frac{1}{2}m(0)^2 + \frac{1}{2}aq(b-x_2)^2$$
$$(b-x_2)^2 = \frac{mV^2}{aq} + (x_1-x_2)^2$$
$$b = x_2 + \sqrt{\frac{mV^2}{aq} + (x_1-x_2)^2} \quad \cdots ⑨$$
\(x_1 = \frac{\mu_1 mg}{aq}\), \(x_2 = \frac{\mu_2 mg}{aq}\) を代入。
使用した物理公式
- 単振動のエネルギー保存則
\(x_1-x_2 = \frac{mg}{aq}(\mu_1-\mu_2)\)。これを式⑨に代入。
$$b = \frac{\mu_2 mg}{aq} + \sqrt{\frac{mV^2}{aq} + \left(\frac{mg}{aq}(\mu_1-\mu_2)\right)^2}$$
$$b = \frac{mg}{aq}\left\{\mu_2 + \sqrt{\frac{aqV^2}{mg^2} + (\mu_1-\mu_2)^2}\right\}$$
Pは \(x_1\) の位置で速さ \(V\) で単振動に入り、\(b\) で速度0になります。この間の単振動のエネルギー保存から \(b\) を求めます。
右端の位置 \(b\) は \(b = \displaystyle\frac{mg}{aq}\left\{\mu_2 + \sqrt{\frac{aqV^2}{mg^2} + (\mu_1-\mu_2)^2}\right\}\) です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電場中の荷電粒子に働く力と単振動:
- 核心: 電場 \(E(x)=-ax\) により、電荷 \(q\) の粒子には力 \(F_e = qE(x) = -aqx\) が働く。これがばねの弾性力 \(F=-kx\) と同様の形式であるため、摩擦力との兼ね合いで単振動(またはその一部)が実現する。
- 理解のポイント: 電場が位置に依存する場合、静電気力も位置によって変化する。合力が \(F = -K(x-x_c)\) の形に書ける場合、\(x_c\) を中心とする単振動が起こる。
- 摩擦力(静止摩擦力と動摩擦力):
- 核心: 滑り出すまでは静止摩擦力が外力とつり合うように働き(最大値 \(\mu_1 N\) まで)、滑り出すと一定の動摩擦力 \(\mu_2 N\) が相対運動と逆向きに働く。
- 理解のポイント: 静止摩擦力の上限、動摩擦力の向き(ベルトに対する相対速度と逆向き)を正確に判断する。
- 単振動の性質とエネルギー保存:
- 核心: 単振動は振動中心、振幅、周期で特徴づけられる。単振動の系では適切なポテンシャルエネルギーを定義すればエネルギー保存則が成り立つ。
- 理解のポイント: 振動中心で速さ最大。両端で速さ0。端から中心までの時間は周期の1/4。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
- ばね振り子が動く床やベルトの上で運動する問題。
- 位置によって変化する力が働く場合の物体の運動(特に単振動)。
- 静止摩擦と動摩擦が切り替わる条件を扱う問題。
- 複数の運動フェーズを段階的に追う問題。
- 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
- 物体に働く全ての力をリストアップし、図示する。特に摩擦力の種類と向き。
- 運動のフェーズ分け(ベルトと一体か、滑っているか)。
- 合力の式が単振動の形 \(F = -K(x-x_c)\) になるか確認。
- 運動のフェーズが変わる瞬間の条件(滑り出し、速度0、相対速度0など)を立式。
- 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
- 動摩擦力の向きは「ベルトに対する小物体の相対速度」と逆向き。
- 単振動の「振動中心」は合力が0になる点。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 動摩擦力の向きの誤り:
- 現象: 小物体の地面に対する運動方向と逆向きに動摩擦力を描いてしまう。
- 対策: 動摩擦力は常に「接触面間の相対的な滑りの向き」と逆向き。ベルトが右に速さ\(V\)で動いている場合、小物体の速度\(v_P\)が\(V\)より小さいなら、小物体はベルトに対して左に滑るので動摩擦力は右向き。
- 単振動の振動中心の誤認:
- 現象: 電場による力 \(-aqx\) の中心である原点Oを、単振動の振動中心としてしまう。
- 対策: 単振動の振動中心は、復元力の式 \(F=-K(x-x_c)\) における \(x_c\) であり、合力が0になる点。本問では動摩擦力の影響で振動中心がずれる。
- 静止摩擦と動摩擦の切り替え条件の曖昧さ:
- 現象: 滑り出す条件や、再び一体となる条件を正しく立てられない。
- 対策: 滑り出すのは「静止摩擦力 > 最大静止摩擦力」。再び一体となるのは「小物体の速度 = ベルトの速度」かつ「その後の運動維持に必要な静止摩擦力 \(\le\) 最大静止摩擦力」。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
- 力の図示(フリーボディダイアグラム)を各運動フェーズで正確に描く。
- \(x-t\)グラフ、\(v-t\)グラフの概形を運動の種類に応じてイメージする。
- 単振動のエネルギー図(運動エネルギーと位置エネルギーのやり取り)をイメージする。
- ベルトと小物体の相対運動を具体的に想像する。
- 図を描く際に注意すべき点は何か:
- 座標軸と原点を明確にする。
- 力の向き(特に電場による力と摩擦力)を正確に。
- 運動の区間(\(x_1, x_2, x_3, x_4, b\)など)をx軸上にプロットする。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(F_e = -aqx\) (電場による力):
- 選定理由: 電場が\(E=-ax\)として与えられているため、電荷\(q\)が受ける力を計算する。
- 適用根拠: 電荷\(q\)が電場\(E\)中に存在するという問題設定。
- \(f_s \le \mu_1 N\), \(f_k = \mu_2 N\) (摩擦力):
- 選定理由: 物体が滑るか滑らないか、滑る場合の摩擦力を計算するため。
- 適用根拠: 物体とベルト間に摩擦が存在し、摩擦係数が与えられている。
- 運動方程式 (\(ma = \sum F\)):
- 選定理由: 物体の運動状態(加速度)を記述するための基本法則。
- 適用根拠: ニュートンの運動の法則。
- 単振動の復元力 (\(F = -K(x-x_c)\)), 周期 (\(T=2\pi\sqrt{m/K}\)):
- 選定理由: 合力が単振動の復元力の形をしているため、運動を単振動として解析するため。
- 適用根拠: 合力が変位に比例し、平衡点に戻そうとする形で表せる場合。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 滑り出し位置\(x_1\): 力のつり合い(電気力+静止摩擦力=0)から、静止摩擦力が最大値 \(\mu_1 mg\) になる \(x_1\) を求める。
- (2) 滑り運動中の合力\(F\): 電気力 \(-aqx\) と動摩擦力(右向き \(\mu_2 mg\))の和。
- (3)-(6) 単振動解析: 合力\(F\)を \(F=-aq(x-x_c)\) と変形し振動中心\(x_c=x_2\)とばね定数\(K=aq\)特定。エネルギー保存や周期、振幅の関係から各量を求める。
- (7) 再び一体となる位置\(x_4\): 単振動の対称性から \(x_4 = 2x_2 – x_1\) を利用。
- (8) 一体運動の時間\(t_2\): 距離 \(x_1-x_4\) を速度\(V\)で等速運動する時間。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 力の向きと符号: 電場による力、摩擦力の向きを正確に判断し、式に符号で反映させる。
- 単振動のパラメータ: 振動中心、ばね定数、角振動数、振幅を正確に定義・計算する。
- 場合分けの整理: 運動のフェーズを明確に区別し、適用する法則を間違えない。
- 代数計算の正確性: 複数のパラメータを含む式の変形や代入を慎重に行う。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 各位置の大小関係: \(x_1 > x_2\), \(b > x_2\), \(x_3 < x_2\) などを確認。
- 速度・時間の正負: 時間は常に正。速度の向きも考慮。
- 物理的条件の確認: 一体化条件、滑り出し条件が満たされているか。
- 極端な場合を考える: 摩擦がない場合、電場がない場合などで式の妥当性を確認。
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