問題73 (京都工繊大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、光が異なる媒質の境界面でどのように振る舞うか、特に「屈折」と「全反射」という現象に焦点を当てています。円柱状のガラス棒を舞台に、光が空気からガラスへ、そしてガラスから別の媒質へと進む際の法則性や条件を考察します。
- 円柱状のガラス棒Aがあり、その屈折率は \(n_A\)。
- ガラス棒Aの上端面は空気に接しており、空気の屈折率は1とする。
- ガラス棒Aの側面は屈折率 \(n_B\) の媒質Bで囲まれている。
- 真空中の光速を \(c\) とする。
- (1) ガラス棒Aの上端面での入射角 \(\alpha\)、屈折角 \(\beta\)、およびガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) の間に成り立つ関係式。
- (2) 光がAからBへ進むときの臨界角を \(\theta_0\) として、\(\theta_0\), \(n_A\), \(n_B\) の間に成り立つ関係式 (\(n_A > n_B\) の場合)。
- (3) (1)の光が媒質Bへ出ることなくAの中を進むために、\(\alpha\), \(n_A\), \(n_B\) の間に必要な条件。
- (4) ガラス棒の長さを \(l\) としたとき、全反射を繰り返して進む光がガラス棒を突き抜けるのに要する時間(\(\beta\) を用いる)。
- (5) 媒質Bが空気のとき常全反射、水(屈折率 \(4/3\))のとき \(\alpha\) によっては側面から光が出る、という条件から \(n_A\) の範囲を求める。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は、光の基本的な性質である「屈折の法則」と「全反射」という2つの重要な現象を扱っています。これらの現象は、光ファイバー通信やプリズムによる光の分散など、私たちの身の回りの技術や自然現象にも深く関わっています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 屈折の法則: 光が異なる媒質の境界面に入射するとき、入射角と屈折角のサインの比が、各媒質の屈折率の逆比に等しい(または、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\))。
- 全反射の条件: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある一定の角度(臨界角)以上になると、光は屈折せずにすべて反射される。
これらの法則を正しく理解し、問題の状況に合わせて適用していくことがポイントになります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) まず、ガラス棒の上端面(空気との境界面)での光の屈折に注目し、屈折の法則を適用します。
- (2) 次に、ガラス棒の側面(媒質Bとの境界面)で全反射が起こる条件を考えます。特に、全反射が起こり始めるギリギリの角度である臨界角の定義式を導きます。
- (3) (1)でガラス棒に入った光が、側面で全反射を繰り返して進むための条件を数式で表します。これには、側面への入射角が(2)で考えた臨界角よりも大きくなるという条件と、(1)の結果を結びつける必要があります。
- (4) 全反射しながら進む光がガラス棒の軸方向に進む速度成分を考え、ガラス棒の長さとこの速度成分から所要時間を計算します。
- (5) (3)で導いた条件式に、媒質Bが空気の場合と水の場合の具体的な屈折率を代入します。問題文で与えられた「常に全反射する」または「条件によっては透過する」という情報から、ガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) に関する不等式を立てて解きます。
それでは、各設問について詳しく見ていきましょう。
問(1)
思考の道筋とポイント
空気中からガラス棒Aの上面に入射する光の屈折現象です。入射する媒質(空気)と屈折する媒質(ガラス棒A)の屈折率、入射角、屈折角が与えられているので、屈折の法則を素直に適用します。
この設問における重要なポイント
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
- 空気の屈折率は1。
- 入射角 \(\alpha\) と屈折角 \(\beta\) を正しく対応させる。
具体的な解説と立式
光は空気(屈折率 \(n_1 = 1\))からガラス棒A(屈折率 \(n_2 = n_A\))へ入射します。
入射角は \(\theta_1 = \alpha\)、屈折角は \(\theta_2 = \beta\) です。
屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) にこれらの値を代入すると、
$$1 \cdot \sin\alpha = n_A \sin\beta \quad \cdots ①$$
これが求める関係式です。
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
上記「具体的な解説と立式」で示した式①が、そのまま関係式となります。
$$\sin\alpha = n_A \sin\beta$$
光がある物質から別の物質に入るとき、その進む向きが変わります。この現象を「屈折」といい、その曲がり方には「屈折の法則」というルールがあります。この法則は、「(物質1の屈折率)× sin(入射角) = (物質2の屈折率)× sin(屈折角)」という形をしています。今回は、空気に入射角 \(\alpha\) で入ってきた光が、ガラス棒Aに屈折角 \(\beta\) で入っていくので、空気の屈折率を1、ガラスAの屈折率を \(n_A\) としてこの法則に当てはめると、\(\sin\alpha = n_A \sin\beta\) という関係が得られます。
関係式は \(\sin\alpha = n_A \sin\beta\) です。これは基本的な屈折の法則の適用であり、物理的に妥当です。模範解答とも一致しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
ガラス棒Aから媒質Bへ光が進む際に、全反射が起こりうる条件を考えます。全反射は、光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むときに、入射角がある特定の角度(臨界角)以上になると発生します。臨界角 \(\theta_0\) とは、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角のことです。この状況に屈折の法則を適用します。問題文より \(n_A > n_B\) とされています。
この設問における重要なポイント
- 全反射は屈折率大 \(\rightarrow\) 屈折率小 のときに起こる。
- 臨界角 \(\theta_0\) では、屈折角が \(90^\circ\)。
- 屈折の法則を適用する。
具体的な解説と立式
光はガラス棒A(屈折率 \(n_1 = n_A\))から媒質B(屈折率 \(n_2 = n_B\))へ進もうとします。
臨界角を \(\theta_0\) とすると、このときの入射角は \(\theta_1 = \theta_0\)、屈折角は \(\theta_2 = 90^\circ\) です。
屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) にこれらの値を代入すると、
$$n_A \sin\theta_0 = n_B \sin90^\circ \quad \cdots ②$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
- 臨界角の定義(屈折角が \(90^\circ\))
式②において、\(\sin90^\circ = 1\) ですから、
$$n_A \sin\theta_0 = n_B \cdot 1$$これを \(\sin\theta_0\) について解くと、$$\sin\theta_0 = \frac{n_B}{n_A}$$
これが求める関係式です。
ガラスのような透明な物質(A)から空気や水のような別の物質(B)へ光が出ていくとき、入射する角度がある角度(これを臨界角 \(\theta_0\) といいます)よりも大きいと、光は物質Bへ出ていかずに全部反射してしまいます。これを全反射といいます。臨界角 \(\theta_0\) は、ちょうど光が物質Bの表面スレスレ(屈折角 \(90^\circ\))に進むときの物質A側での入射角のことです。この状況に屈折の法則「(物質Aの屈折率 \(n_A\))× sin(\(\theta_0\)) = (物質Bの屈折率 \(n_B\))× sin(\(90^\circ\))」を適用し、\(\sin90^\circ=1\) を使うと、\(\sin\theta_0 = n_B/n_A\) という関係が得られます。
関係式は \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) です。\(n_A > n_B\) なので、\(\displaystyle\frac{n_B}{n_A} < 1\) となり、\(\sin\theta_0\) の値として妥当です。模範解答とも一致しています。
別解(2): 光速を用いた屈折の法則からの導出
思考の道筋とポイント
屈折の法則は、各媒質中の光速の比で表すこともできます。媒質1での光速を \(v_1\)、媒質2での光速を \(v_2\) とすると、\(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\) となります。また、絶対屈折率 \(n\) の媒質中での光速は \(v = c/n\) (\(c\) は真空中の光速)と表されることを利用します。
この設問における重要なポイント
- 媒質中の光速 \(v = c/n\)
- 屈折の法則の光速表現 \(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 臨界角では屈折角が \(90^\circ\)
具体的な解説と立式
媒質A中での光速を \(v_A\)、媒質B中での光速を \(v_B\) とします。
絶対屈折率の定義より、\(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\)、\(v_B = \displaystyle\frac{c}{n_B}\) です。
光がAからBへ入射角 \(\theta_A\)、屈折角 \(\theta_B\) で進むとき、屈折の法則は
$$\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B} = \frac{v_A}{v_B} \quad \cdots ③$$と表せます。ここに \(v_A\) と \(v_B\) を代入すると、$$\frac{v_A}{v_B} = \frac{c/n_A}{c/n_B} = \frac{n_B}{n_A}$$よって、式③は$$\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B} = \frac{n_B}{n_A} \quad \cdots ④$$
となります。これは \(n_A \sin\theta_A = n_B \sin\theta_B\) と同等です。
臨界角 \(\theta_0\) の条件は、入射角 \(\theta_A = \theta_0\) のときに屈折角 \(\theta_B = 90^\circ\) となることです。
使用した物理公式
- 媒質中の光速: \(v = c/n\)
- 屈折の法則(光速表示): \(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 臨界角の定義
式④に \(\theta_A = \theta_0\) と \(\theta_B = 90^\circ\) を代入します。
$$\frac{\sin\theta_0}{\sin90^\circ} = \frac{n_B}{n_A}$$\(\sin90^\circ = 1\) なので、$$\sin\theta_0 = \frac{n_B}{n_A}$$
光の屈折は、物質によって光の進む速さが異なるために起こります。屈折の法則は、入射角と屈折角のサインの比が、それぞれの物質での光の速さの比に等しい、という形でも表せます。物質の屈折率 \(n\) は、真空中の光速 \(c\) をその物質中での光速 \(v\) で割ったもの (\(n=c/v\)) なので、これを使うと結局、最初の屈折の法則と同じ形 \(n_A \sin\theta_A = n_B \sin\theta_B\) にたどり着きます。あとは臨界角の条件(屈折角 \(90^\circ\))を当てはめれば、同じ結果が得られます。
別解によっても、関係式は \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) となり、主たる解法と同じ結果が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
(1)でガラス棒Aの上面から入射した光が、媒質Bとの境界面(ガラス棒の側面)で全反射を繰り返してAの中だけを進むための条件を考えます。全反射するためには、側面への入射角が(2)で求めた臨界角 \(\theta_0\) よりも大きくなければなりません (模範解答では等号を含めない「より大きい」で議論が進められているので、それに倣います)。
問題の図(特に図b)を参照すると、ガラス棒Aの側面への光の入射角 \(\phi\) は、上面での屈折角 \(\beta\) を用いて \(\phi = 90^\circ – \beta\) と表されることが分かります。この \(\phi\) が \(\theta_0\) より大きければよいわけです。
この設問における重要なポイント
- 全反射の条件: 側面への入射角 \(\phi > \theta_0\)。
- 側面への入射角 \(\phi = 90^\circ – \beta\)。
- 三角関数の性質 \(\sin(90^\circ – x) = \cos x\)。
- (1)と(2)の結果を利用して、条件を \(\alpha, n_A, n_B\) で表す。
- \(\sin\theta\) は \(0^\circ \le \theta \le 90^\circ\) で単調増加であるため、\(\phi > \theta_0\) と \(\sin\phi > \sin\theta_0\) は同値。
具体的な解説と立式
光が媒質Bへ出ることなくAの中を進むためには、AからBへの境界面(側面)で全反射が起こる必要があります。
側面への入射角を \(\phi\) とすると、図より \(\phi = 90^\circ – \beta\) です。
全反射の条件は、この入射角 \(\phi\) が臨界角 \(\theta_0\) よりも大きいことなので、
$$\phi > \theta_0$$すなわち、$$90^\circ – \beta > \theta_0 \quad \cdots ⑤$$\(0^\circ < \beta < 90^\circ\) であり、また \(0^\circ < \theta_0 < 90^\circ\) なので、\(90^\circ – \beta\) も \(\theta_0\) も \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の間の角度です。この範囲では \(\sin x\) は単調増加関数なので、不等号の向きを変えずに \(\sin\) をとることができます。$$\sin(90^\circ – \beta) > \sin\theta_0 \quad \cdots ⑥$$三角関数の公式 \(\sin(90^\circ – \beta) = \cos\beta\) を用いると、$$\cos\beta > \sin\theta_0 \quad \cdots ⑦$$ここで、(2)の結果 \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) を代入すると、$$\cos\beta > \frac{n_B}{n_A} \quad \cdots ⑧$$
次に、\(\cos\beta\) を \(\alpha\) と \(n_A\) で表すことを考えます。(1)の結果 \(\sin\alpha = n_A \sin\beta\) より、\(\sin\beta = \displaystyle\frac{\sin\alpha}{n_A}\) です。
三角関数の基本公式 \(\sin^2\beta + \cos^2\beta = 1\) より、\(\cos^2\beta = 1 – \sin^2\beta\)。
\(\beta\) は屈折角なので \(0 < \beta < 90^\circ\) であり、\(\cos\beta > 0\)。したがって、
$$\cos\beta = \sqrt{1 – \sin^2\beta} = \sqrt{1 – \left(\frac{\sin\alpha}{n_A}\right)^2} \quad \cdots ⑨$$この式⑨を整理すると、$$\cos\beta = \sqrt{\frac{n_A^2 – \sin^2\alpha}{n_A^2}} = \frac{\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha}}{n_A} \quad \cdots ⑩$$
(ただし、根号の中が非負であること、すなわち \(n_A^2 – \sin^2\alpha \ge 0\) が必要です。)
式⑩を式⑧に代入します。
使用した物理公式
- 全反射の条件: 入射角 > 臨界角
- 三角関数の性質: \(\sin(90^\circ – x) = \cos x\), \(\sin^2x + \cos^2x = 1\)
- 屈折の法則(問(1)の結果): \(\sin\alpha = n_A \sin\beta\)
- 臨界角の式(問(2)の結果): \(\sin\theta_0 = n_B/n_A\)
式⑩を式⑧に代入すると、
$$\frac{\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha}}{n_A} > \frac{n_B}{n_A}$$両辺に \(n_A\) を掛けます(\(n_A\) は屈折率なので正です)。$$\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha} > n_B$$この不等式の両辺は正なので(\(n_B > 0\)、また左辺が \(n_B\) より大きいので左辺も正)、両辺を2乗しても不等号の向きは変わりません。$$n_A^2 – \sin^2\alpha > n_B^2$$\(\sin^2\alpha\) について整理すると、$$n_A^2 – n_B^2 > \sin^2\alpha$$すなわち、$$\sin^2\alpha < n_A^2 – n_B^2$$
\(\alpha\) は入射角なので \(0 \le \alpha < 90^\circ\) であり、\(\sin\alpha \ge 0\)。 また、右辺が正であるためには \(n_A^2 – n_B^2 > 0\)、つまり \(n_A > n_B\) が必要ですが、これは全反射が起こるための前提条件と一致します。
したがって、
$$\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}$$
これが求める条件です。
ガラス棒の側面で光が全反射し続けるためには、側面への光の入射角度が、(2)で求めた臨界角よりも大きくなければなりません。図を見ると、側面への入射角は、上面での屈折角 \(\beta\) を使って \(90^\circ – \beta\) と表せます。この \(90^\circ – \beta\) が臨界角 \(\theta_0\) より大きいという条件 (\(90^\circ – \beta > \theta_0\)) を立てます。この不等式の両辺のサインをとっても大小関係は変わらないので、\(\sin(90^\circ – \beta) > \sin\theta_0\) となります。\(\sin(90^\circ – \beta)\) は \(\cos\beta\) と同じです。そして、(1)と(2)で求めた関係を使って \(\cos\beta\) と \(\sin\theta_0\) を、最初の入射角 \(\alpha\) や屈折率 \(n_A, n_B\) で表し、整理していくと最終的な条件式が得られます。
条件は \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) です。この式は、入射角 \(\alpha\) が小さいほど、またガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) が周囲の媒質Bの屈折率 \(n_B\) に比べて大きいほど、全反射が起こりやすいことを示しており、物理的に妥当です。模範解答では \(n_B\) が明示的に書かれていない段階がありますが、(5)の設問との整合性を考えるとこの形が適切です。
問(4)
思考の道筋とポイント
全反射を繰り返しながらガラス棒Aの中を進む光が、長さ \(l\) のガラス棒を突き抜けるのにかかる時間を求めます。光はジグザグに進みますが、重要なのはガラス棒の軸方向にどれだけの速さで進むかです。ガラス棒A内での光の速さと、軸方向への速度成分を考えます。
この設問における重要なポイント
- ガラス棒A内での光の速さ \(v_A = c/n_A\)。
- 光の進む方向は、ガラス棒の軸に対して角度 \(\beta\) をなす。
- 軸方向の速度成分は \(v_A \cos\beta\)。
- 時間 = 距離 / 速さ。
具体的な解説と立式
ガラス棒A内での光の速さを \(v_A\) とすると、\(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\) です。
光はガラス棒の軸(中心軸)に対して角度 \(\beta\) の方向に進んでいます(図の光線と中心軸のなす角が \(\beta\))。
したがって、ガラス棒の軸方向の速度成分 \(v_{\text{軸}}\) は、
$$v_{\text{軸}} = v_A \cos\beta$$ガラス棒の長さは \(l\) です。この距離を軸方向の速度 \(v_{\text{軸}}\) で進むのに要する時間 \(t\) は、$$t = \frac{l}{v_{\text{軸}}} = \frac{l}{v_A \cos\beta} \quad \cdots ⑪$$
使用した物理公式
- 媒質中の光速: \(v = c/n\)
- 速度の成分分解
- 時間 = 距離 / 速さ
式⑪に \(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\) を代入すると、
$$t = \frac{l}{\left(\frac{c}{n_A}\right) \cos\beta}$$整理すると、$$t = \frac{n_A l}{c \cos\beta}$$
これが求める時間です。
光はガラス棒の中を斜めにジグザグ進みますが、ガラス棒の端から端まで(長さ \(l\))進むのにかかる時間を考えます。光が実際に進む道のりは \(l\) より長いですが、ガラス棒の軸の方向にどれだけの速さで進んでいるか(これが \(v_A \cos\beta\))が重要です。ガラス棒Aの中での光の速さは \(v_A = c/n_A\) なので、軸方向の速さは \((c/n_A)\cos\beta\) となります。時間は「距離 ÷ 速さ」なので、\(l\) をこの軸方向の速さで割れば、求める時間が得られます。
時間は \(t = \displaystyle\frac{n_A l}{c \cos\beta}\) です。
\(\cos\beta\) が小さい(\(\beta\) が \(90^\circ\) に近い)ほど時間は長くなり、光がより横方向に進むため軸方向の進行が遅くなることに対応します。逆に \(\cos\beta\) が大きい(\(\beta\) が \(0^\circ\) に近い)ほど時間は短くなり、光がより軸方向に沿って進むことに対応します。物理的に妥当な結果です。模範解答とも一致しています。
問(5)
思考の道筋とポイント
(3)で求めた全反射の条件 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) を利用します。
入射角 \(\alpha\) は \(0 \le \alpha < 90^\circ\) の範囲をとるため、\(\sin\alpha\) は \(0 \le \sin\alpha < 1\) の範囲の値を取ります。
1. 媒質Bが空気の場合 (\(n_B = 1\)):
「\(\alpha\) の値にかかわらずすべてAの中だけを進む」ということは、\(\sin\alpha\) が取りうる最大値(1に限りなく近い値)でも全反射の条件を満たす、ということです。つまり、不等式の右辺 \(\sqrt{n_A^2 – 1^2}\) が1以上であると考えられます。模範解答の解釈に合わせて \(\sqrt{n_A^2 – 1^2} \ge 1\) とします。
2. 媒質Bが水の場合 (\(n_B = 4/3\)):
「\(\alpha\) の値によっては側面からも光が出てきた」ということは、全反射の条件 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – (4/3)^2}\) を満たさないような \(\alpha\) が存在する、ということです。これは、不等式の右辺 \(\sqrt{n_A^2 – (4/3)^2}\) が \(\sin\alpha\) の最大値(1に限りなく近い値)よりも小さい場合があることを意味します。つまり、\(\sqrt{n_A^2 – (4/3)^2} < 1\) と考えられます。 これらの条件から \(n_A\) に関する不等式を立てて解きます。また、全反射が起こる前提として \(n_A > n_B\) も考慮に入れる必要があります。
この設問における重要なポイント
- \(\sin\alpha\) の取りうる値の範囲: \(0 \le \sin\alpha < 1\)。
- 「\(\alpha\) の値にかかわらず常に条件を満たす」 は 条件式の右辺 \(\ge \max(\sin\alpha)\) を意味する。
- 「\(\alpha\) の値によって条件を満たさないことがある」 は 条件式の右辺 \(< \max(\sin\alpha)\) を意味する。
- 前提条件: \(n_A > n_B\)。
具体的な解説と立式
(3)で得られた、光がAの中だけを進むための条件(全反射条件)は、
$$\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2} \quad \cdots (*)$$
\(\sin\alpha\) は最大で1に近づくことができます (\(0 \le \sin\alpha < 1\))。
ケース1: 媒質Bが空気 (\(n_B=1\))
このとき、\(\alpha\) の値にかかわらず常に光がAの中だけを進む(全反射する)。
これは、(*)式の右辺が \(\sin\alpha\) の取りうる最大値である1以上であることを意味します。
$$\sqrt{n_A^2 – 1^2} \ge 1 \quad \cdots ⑫$$
また、前提として \(n_A > n_B = 1\) が必要です。
ケース2: 媒質Bが水 (\(n_B = 4/3\))
このとき、\(\alpha\) の値によっては側面から光が出てくる(全反射しない場合がある)。
これは、(*)式の右辺が \(\sin\alpha\) の取りうる最大値である1よりも小さい場合があることを意味します。つまり、どんなに頑張っても1より小さい値しか取れないということです。
$$\sqrt{n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2} < 1 \quad \cdots ⑬$$ また、前提として \(n_A > n_B = 4/3\) が必要です。
使用した物理公式
- 全反射の条件式(問(3)の結果)
- 不等式の性質
まず、条件⑫(媒質Bが空気の場合)を解きます。
$$\sqrt{n_A^2 – 1} \ge 1$$両辺は正なので、2乗しても不等号の向きは変わりません。$$n_A^2 – 1 \ge 1$$
$$n_A^2 \ge 2$$\(n_A > 0\) (屈折率は正) かつ前提 \(n_A > 1\) より、$$n_A \ge \sqrt{2}$$
次に、条件⑬(媒質Bが水の場合)を解きます。
$$\sqrt{n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2} < 1$$ まず、根号内が非負である必要があります: \(n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2 \ge 0\) 。これから \(n_A^2 \ge \frac{16}{9}\) となり、\(n_A \ge \frac{4}{3}\) (∵ \(n_A>0\))です。これは前提 \(n_A > 4/3\) と整合します。
この条件のもとで、両辺を2乗します(両辺は正なので大小関係は変わりません)。
$$n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2 < 1^2$$$$n_A^2 – \frac{16}{9} < 1$$$$n_A^2 < 1 + \frac{16}{9}$$$$n_A^2 < \frac{9}{9} + \frac{16}{9}$$$$n_A^2 < \frac{25}{9}$$\(n_A > 0\) かつ前提 \(n_A > 4/3\) (\(\approx 1.333\))より、$$n_A < \sqrt{\frac{25}{9}}$$
$$n_A < \frac{5}{3}$$ \(\frac{5}{3} \approx 1.667\) なので、\(n_A > 4/3\) と矛盾しません。
以上の2つの条件 \(n_A \ge \sqrt{2}\) と \(n_A < \displaystyle\frac{5}{3}\) を同時に満たす \(n_A\) の範囲を求めます。 \(\sqrt{2} \approx 1.414\) \(\displaystyle\frac{4}{3} \approx 1.333\) \(\displaystyle\frac{5}{3} \approx 1.667\) \(\sqrt{2} > 4/3\) なので、すべての前提条件(\(n_A > 1\), \(n_A > 4/3\)) は \(n_A \ge \sqrt{2}\) に含まれます。
よって、求める \(n_A\) の範囲は、
$$\sqrt{2} \le n_A < \frac{5}{3}$$
(3)で求めた「光がガラス棒の中だけを進む条件」を使います。この条件は \(\sin\alpha\) とガラスや周りの物質の屈折率の関係式です。
まず、周りが空気のとき、「どんな \(\alpha\) でも光は中だけを進む」ということは、条件式の右辺(屈折率で決まる部分)が、\(\sin\alpha\) が取りうる一番大きな値(ほぼ1)以上だということです。これから \(n_A\) の下限が分かります。
次に、周りが水のとき、「\(\alpha\) によっては光が側面から出てくる」ということは、条件式の右辺が1より小さくなるということです。これから \(n_A\) の上限が分かります。
これら2つの条件を合わせて、\(n_A\) の範囲を決定します。
ガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) の取りうる範囲は \(\sqrt{2} \le n_A < \displaystyle\frac{5}{3}\) です。
\(\sqrt{2} \approx 1.414\)、\(\displaystyle\frac{5}{3} \approx 1.667\) です。水の屈折率 \(4/3 \approx 1.333\) よりも大きい値であり、空気の屈折率1よりも大きいので、全反射が起こりうる基本的な条件を満たしています。
この結果は模範解答とも一致しており、物理的に妥当な範囲と考えられます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) が基本中の基本。光が異なる媒質の境界面を通過する際の振る舞いを記述します。各変数が何を表すかを正確に把握することが重要です。
- 全反射: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ入射する際に、入射角が臨界角以上になると光が屈折せずに全て反射される現象。光ファイバーなどに応用される重要な概念です。
- 臨界角: 全反射が起こり始める入射角のことで、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角として定義されます。その値は \(\sin\theta_0 = n_2/n_1\) (\(n_1 > n_2\)) で与えられます。
- 媒質中の光速: 媒質の屈折率 \(n\) とその媒質中での光速 \(v\) の間には \(v = c/n\) (\(c\) は真空中の光速)という関係があります。これにより、屈折現象を光速の違いとして理解することもできます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できるパターン:
- 光ファイバー内で光がどのように伝播するかを考える問題。
- プリズムを通過する光の経路や、プリズムによる光の分散・全反射を利用した装置(例:双眼鏡のポロプリズム)に関する問題。
- 水中から空気中へ光が進むときの見え方(浮き上がって見える現象や、水中からの視界の限界など)に関する問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 光路図の作成: まずは問題文の状況を正確に図示し、光の進む経路(光路)を丁寧に描くこと。法線、入射角、屈折角(または反射角)を明確に記入する。
- 境界面の特定: 光がどの媒質からどの媒質へ進もうとしているのか、境界面を特定する。
- 現象の判断: その境界面で屈折が起こるのか、反射が起こるのか、あるいは全反射の可能性があるのかを判断する。全反射の可能性を考えるときは、屈折率の大小関係(大→小)と入射角の大きさがポイント。
- 角度の関係: 図形的な性質(錯角、同位角、三角形の内角・外角など)を利用して、必要な角度(特に境界面への入射角)を求める。問(3)の \(\phi = 90^\circ – \beta\) が典型例。
- 問題解決のヒントと注意点:
- 全反射の条件は「入射角 \(\ge\) 臨界角」。等号を含むか含まないかは、問題の文脈(「~だけを進む」「~も出てくる」など)で判断するが、多くの場合、臨界角自体も全反射が始まっていると解釈できる。
- 三角関数の公式(特に \(\sin(90^\circ – \theta) = \cos\theta\), \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\))は頻繁に使うので、スムーズに適用できるようにしておく。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 入射角・屈折角の誤認:
- 現象: これらの角度は、必ず境界面の法線と光線のなす角です。境界面とのなす角と混同しないように注意が必要です。
- 対策: 図を描く際に法線を明確にし、角度を正しく定義する習慣をつける。
- 全反射の方向:
- 現象: 全反射は、必ず光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進もうとするときにのみ起こりえます。逆方向(小→大)では起こりません。
- 対策: 屈折率の大小関係を常に意識する。\(n_{\text{大}} \rightarrow n_{\text{小}}\) のときのみ全反射の可能性あり。
- 臨界角の式の \(n_1, n_2\) の混同:
- 現象: \(\sin\theta_0 = n_2/n_1\) において、\(n_1\) は光が入射する側の媒質(屈折率大)、\(n_2\) は光が進もうとする先の媒質(屈折率小)の屈折率です。分母と分子を逆にしないように注意しましょう。
- 対策: 「臨界角は屈折率が大きい媒質側で定義される角度」「\(\sin\theta_0\) は1より小さいので、分子は屈折率小、分母は屈折率大」と覚える。
- 不等号の向き:
- 現象: 全反射の条件を扱う際、入射角が臨界角「以上」であること、またそれに関連する不等式変形での向きの扱いに注意が必要です。特に、\(\sin\) 関数の単調性を利用して角度の大小関係を \(\sin\) の値の大小関係に置き換える際など。
- 対策: 不等式を変形する各ステップで、操作の根拠(例:正の数を両辺に掛けた、両辺が正なので2乗した等)と不等号の向きが変わらないかを確認する。
- (5)のような条件の解釈:
- 現象: 「\(\alpha\) の値にかかわらず~」や「\(\alpha\) の値によっては~」という条件を、\(\sin\alpha\) の値域(この場合は \(0 \le \sin\alpha < 1\))と関連付けて、不等式の右辺と比較する考え方がポイントです。右辺が \(\sin\alpha\) の最大値より大きいか小さいかで判断します。
- 対策: 条件文を正確に数式(不等式)に翻訳する練習を積む。「常に成り立つ」は「任意の \(\sin\alpha\) (範囲内)で成り立つ」であり、これは 「右辺 \(\ge \max(\sin\alpha)\)」を意味する。「成り立つとは限らない」は「ある \(\sin\alpha\) で成り立たない」であり、これは「右辺 \(< \max(\sin\alpha)\)」を意味する。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
- 光路の可視化: この種の問題では、光がどのように進むかを正確に図に描くことが理解の第一歩です。特に、ガラス棒の上面での屈折と側面での反射(または屈折)を連続して追跡する図は必須です。
- 角度の関係の発見: 問(3)で側面への入射角 \(\phi\) が上面での屈折角 \(\beta\) と \(\phi = 90^\circ – \beta\) の関係にあることは、正確な図があれば容易に見て取れます。複雑な光路では、補助線を引くなどして幾何学的な関係を見抜く力が試されます。
- 図を描く際に注意すべき点は何か:
- 法線を必ず描く。法線は境界面に垂直な線です。
- 入射角、屈折角、反射角を明確に区別して記入する。これらの角度は法線となす角です。
- 複数の境界面がある場合は、それぞれの境界面で何が起こるかを順を追って考える。
- 全反射が起こる場合、光は境界面を透過しないことを明確に描く。光線が境界面で完全に反射される様子を示す。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\):
- 選定理由: 異なる媒質の境界面で光が透過(屈折)する際の、入射角と屈折角の関係を記述する基本的な法則だから。
- 適用根拠: 問題(1)では空気とガラス棒Aの境界面、問題(2)ではガラス棒Aと媒質Bの境界面(臨界角の状況)に適用。
- 臨界角の公式 \(\sin\theta_0 = n_2/n_1\):
- 選定理由: 全反射が起こるかどうかの境界となる角度を求めるため。
- 適用根拠: 屈折の法則で屈折角を \(90^\circ\) とした場合の特別な形であり、問題(2)で直接的に、問題(3)や(5)では間接的に利用。
- 公式を適用する際は、それぞれの文字(\(n_1, n_2, \theta_1, \theta_2\) など)が問題のどの部分に対応するのかを常に意識することが重要です。曖昧なまま適用すると、誤った結果につながります。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 上面での屈折: 屈折の法則を適用し、\(\alpha, \beta, n_A\) の関係を導く。(\(\sin\alpha = n_A \sin\beta\))
- (2) 臨界角の定義: AからBへの境界面で、屈折角 \(90^\circ\) となる入射角 \(\theta_0\) を屈折の法則から求める。(\(\sin\theta_0 = n_B/n_A\))
- (3) 側面での全反射条件:
- 側面への入射角 \(\phi\) を図から \(\beta\) で表す (\(\phi = 90^\circ – \beta\))。
- 全反射条件 \(\phi > \theta_0\) を立てる(模範解答に倣い等号なし)。
- \(\sin\) をとって \(\sin(90^\circ – \beta) > \sin\theta_0\) となり、これは \(\cos\beta > \sin\theta_0\) を意味する。
- (1)から \(\sin\beta = (\sin\alpha)/n_A\) を使い \(\cos\beta\) を \(\alpha, n_A\) で表す (\(\cos\beta = \sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha}/n_A\))。
- (2)の \(\sin\theta_0\) を代入し、\(\alpha, n_A, n_B\) の不等式を導く (\(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\))。
- (4) 伝播時間: 軸方向の速度成分 \(v_{\text{軸}} = (c/n_A)\cos\beta\) を求め、時間 \(t = l/v_{\text{軸}}\) を計算する。
- (5) \(n_A\) の範囲決定:
- (3)の条件式 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) を用いる。
- Bが空気 (\(n_B=1\)): 「常時全反射」は \(\sqrt{n_A^2-1} \ge 1\) を意味する。これを解き \(n_A \ge \sqrt{2}\)。
- Bが水 (\(n_B=4/3\)): 「一部透過」は \(\sqrt{n_A^2-(4/3)^2} < 1\) を意味する。これを解き \(n_A < 5/3\)。
- 得られた2つの不等式と、前提条件 (\(n_A>n_B\)) を満たす共通範囲 \(\sqrt{2} \le n_A < 5/3\) を求める。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角関数の計算: \(\sin90^\circ = 1\)、\(\sin(90^\circ – \beta) = \cos\beta\)、\(\cos\beta = \sqrt{1-\sin^2\beta}\) などの変形を正確に行う。特に根号の前の符号(通常は正)に注意。符号ミスは結果を大きく狂わせます。
- 不等式の変形:
- 両辺に正の数を掛ける・割る場合は不等号の向きは変わらない。
- 両辺を2乗する場合、両辺が非負であることを確認してから行う。負の数を含む場合は注意が必要だが、この問題では主に正の値同士の比較なので、2乗しても向きは変わらないケースが多い。
- 根号を含む不等式では、まず根号内が非負である条件(定義域)を確認する。これを怠ると誤った解範囲を導くことがある。
- 分数の計算: 通分や約分を丁寧に行う。(5)の \(n_A^2 < 1 + 16/9\) のような計算は、ケアレスミスが起こりやすいポイント。
- 文字の整理: \(n_A, n_B, \sin\alpha, \cos\beta\) など多くの文字が登場するので、どの変数を何で置き換えるのかを明確にしながら式変形を進める。途中で混乱しないように、式の意味を考えながら変形する。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 物理的な妥当性:
- 屈折率 \(n_A\) は通常1より大きい値をとる。得られた範囲がこれに合致するか。(\(\sqrt{2} \approx 1.414\), \(5/3 \approx 1.667\) なのでOK)
- 問(3)の条件 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) で、もし \(n_A \approx n_B\) なら右辺は0に近づき、全反射は非常に起こりにくくなる(\(\alpha \approx 0\) のみ)。もし \(n_A \gg n_B\) なら右辺は大きくなり、より広い \(\alpha\) の範囲で全反射が起こる。これは直感と合うか。
- 問(4)の時間 \(t = \frac{n_A l}{c \cos\beta}\): \(n_A\) が大きいほど(光速が遅いほど)時間はかかり、\(\cos\beta\) が小さい(より斜めに進む)ほど時間がかかる。これは妥当。
- 極端な条件でのチェック (思考実験):
- もし \(\beta \to 0\) (垂直入射に近い)なら \(\cos\beta \to 1\) で、\(t \to n_A l/c\)。光がまっすぐ進む場合。
- もし \(\beta \to 90^\circ\) (ほぼ水平に進む、実際にはありえないが)なら \(\cos\beta \to 0\) で \(t \to \infty\)。軸方向に進まない。このような極端なケースを考えることで、式の妥当性や物理的意味の理解が深まる。
- 単位の確認: 今回は比や関係式が主だが、例えば(4)の時間は[s]の次元を持つはず。\(n_A\) は無次元、\(l\) は[m]、\(c\) は[m/s]、\(\cos\beta\) は無次元なので、\([無次元] \cdot [m] / ([m/s] \cdot [無次元]) = [s]\) となり、次元は正しい。計算結果の次元がおかしい場合、途中の計算や公式の適用が間違っている可能性が高い。
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