問題73 (京都工繊大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、光が異なる媒質の境界面でどのように振る舞うか、特に「屈折」と「全反射」という現象に焦点を当てています。円柱状のガラス棒を舞台に、光が空気からガラスへ、そしてガラスから別の媒質へと進む際の法則性や条件を考察します。
- 円柱状のガラス棒Aがあり、その屈折率は \(n_A\)。
- ガラス棒Aの上端面は空気に接しており、空気の屈折率は1とする。
- ガラス棒Aの側面は屈折率 \(n_B\) の媒質Bで囲まれている。
- 真空中の光速を \(c\) とする。
- (1) ガラス棒Aの上端面での入射角 \(\alpha\)、屈折角 \(\beta\)、およびガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) の間に成り立つ関係式。
- (2) 光がAからBへ進むときの臨界角を \(\theta_0\) として、\(\theta_0\), \(n_A\), \(n_B\) の間に成り立つ関係式 (\(n_A > n_B\) の場合)。
- (3) (1)の光が媒質Bへ出ることなくAの中を進むために、\(\alpha\), \(n_A\), \(n_B\) の間に必要な条件。
- (4) ガラス棒の長さを \(l\) としたとき、全反射を繰り返して進む光がガラス棒を突き抜けるのに要する時間(\(\beta\) を用いる)。
- (5) 媒質Bが空気のとき常に全反射し、水(屈折率 \(4/3\))のとき \(\alpha\) によっては側面から光が出る、という条件から \(n_A\) の範囲を求める。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2) 臨界角の別解: 光速を用いた屈折の法則からの導出
- 主たる解法が屈折率 \(n\) を用いた屈折の法則 (\(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\)) を直接用いるのに対し、別解では各媒質中の光速 \(v\) を用いた屈折の法則 (\(\sin\theta_1/\sin\theta_2 = v_1/v_2\)) と、屈折率と光速の関係式 (\(v=c/n\)) を組み合わせて導出します。
- 問(4) 所要時間の別解: 光路長を用いた解法
- 主たる解法が光の速度を軸方向成分に分解して時間を求めるのに対し、別解では光が実際に進むジグザグの道のり(光路長)を幾何学的に求め、それをガラス棒中の光速で割ることで時間を計算します。
- 問(2) 臨界角の別解: 光速を用いた屈折の法則からの導出
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 問(2)の別解は、屈折という現象が媒質による光速の変化に起因するという、より根源的な物理的描像の理解を深めます。問(4)の別解は、速度の成分分解というベクトル的なアプローチと、光路長というスカラー的なアプローチの両方を学ぶことで、同じ物理現象に対する多角的な視点を養います。
- 知識の体系化と応用力: 屈折の法則の異なる表現形式や、異なるアプローチで同じ結論に至る過程を学ぶことで、知識が断片化せず、より複雑な問題に応用できる思考の柔軟性が身につきます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、光の基本的な性質である「屈折の法則」と「全反射」という2つの重要な現象を扱っています。これらの現象は、光ファイバー通信やプリズムによる光の分散など、私たちの身の回りの技術や自然現象にも深く関わっています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 屈折の法則: 光が異なる媒質の境界面に入射するとき、入射角と屈折角のサインの比が、各媒質の屈折率の逆比に等しい(または、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\))。
- 全反射の条件: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある一定の角度(臨界角)以上になると、光は屈折せずにすべて反射される。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) まず、ガラス棒の上端面(空気との境界面)での光の屈折に注目し、屈折の法則を適用します。
- (2) 次に、ガラス棒の側面(媒質Bとの境界面)で全反射が起こる条件を考えます。特に、全反射が起こり始めるギリギリの角度である臨界角の定義式を導きます。
- (3) (1)でガラス棒に入った光が、側面で全反射を繰り返して進むための条件を数式で表します。
- (4) 全反射しながら進む光がガラス棒の軸方向に進む速度成分を考え、ガラス棒の長さとこの速度成分から所要時間を計算します。
- (5) (3)で導いた条件式に、媒質Bが空気の場合と水の場合の具体的な屈折率を代入し、\(n_A\) に関する不等式を立てて解きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
空気中からガラス棒Aの上面に入射する光の屈折現象です。入射する媒質(空気)と屈折する媒質(ガラス棒A)の屈折率、入射角、屈折角が与えられているので、屈折の法則を素直に適用します。
この設問における重要なポイント
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
- 空気の屈折率は1。
- 入射角 \(\alpha\) と屈折角 \(\beta\) を正しく対応させる。
具体的な解説と立式
光は空気(屈折率 \(n_1 = 1\))からガラス棒A(屈折率 \(n_2 = n_A\))へ入射します。
入射角は \(\theta_1 = \alpha\)、屈折角は \(\theta_2 = \beta\) です。
屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) にこれらの値を代入します。
$$
\begin{aligned}
1 \cdot \sin\alpha &= n_A \sin\beta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
上記の立式から、求める関係式は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &= n_A \sin\beta
\end{aligned}
$$
光がある物質から別の物質に入るとき、その進む向きが変わります。この現象を「屈折」といい、その曲がり方には「屈折の法則」というルールがあります。この法則は、「(物質1の屈折率)× sin(入射角) = (物質2の屈折率)× sin(屈折角)」という形をしています。今回は、空気に入射角 \(\alpha\) で入ってきた光が、ガラス棒Aに屈折角 \(\beta\) で入っていくので、この法則に当てはめると、\(\sin\alpha = n_A \sin\beta\) という関係が得られます。
関係式は \(\sin\alpha = n_A \sin\beta\) です。これは基本的な屈折の法則の適用であり、物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
ガラス棒Aから媒質Bへ光が進む際に、全反射が起こりうる条件を考えます。全反射は、光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むときに、入射角がある特定の角度(臨界角)以上になると発生します。臨界角 \(\theta_0\) とは、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角のことです。この状況に屈折の法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 全反射は屈折率大 \(\rightarrow\) 屈折率小 のときに起こる。
- 臨界角 \(\theta_0\) では、屈折角が \(90^\circ\)。
- 屈折の法則を適用する。
具体的な解説と立式
光はガラス棒A(屈折率 \(n_1 = n_A\))から媒質B(屈折率 \(n_2 = n_B\))へ進もうとします。
臨界角を \(\theta_0\) とすると、このときの入射角は \(\theta_1 = \theta_0\)、屈折角は \(\theta_2 = 90^\circ\) です。
屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) にこれらの値を代入します。
$$
\begin{aligned}
n_A \sin\theta_0 &= n_B \sin90^\circ
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
- 臨界角の定義(屈折角が \(90^\circ\))
\(\sin90^\circ = 1\) ですから、
$$
\begin{aligned}
n_A \sin\theta_0 &= n_B \cdot 1
\end{aligned}
$$
これを \(\sin\theta_0\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_0 &= \frac{n_B}{n_A}
\end{aligned}
$$
思考の道筋とポイント
屈折の法則は、各媒質中の光速の比で表すこともできます。媒質1での光速を \(v_1\)、媒質2での光速を \(v_2\) とすると、\(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\) となります。また、絶対屈折率 \(n\) の媒質中での光速は \(v = c/n\) (\(c\) は真空中の光速)と表されることを利用します。
この設問における重要なポイント
- 媒質中の光速 \(v = c/n\)
- 屈折の法則の光速表現 \(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 臨界角では屈折角が \(90^\circ\)
具体的な解説と立式
媒質A中での光速を \(v_A\)、媒質B中での光速を \(v_B\) とします。
絶対屈折率の定義より、\(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\)、\(v_B = \displaystyle\frac{c}{n_B}\) です。
光がAからBへ入射角 \(\theta_A\)、屈折角 \(\theta_B\) で進むとき、屈折の法則は
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta_A}{\sin\theta_B} &= \frac{v_A}{v_B}
\end{aligned}
$$
と表せます。臨界角 \(\theta_0\) の条件は、入射角 \(\theta_A = \theta_0\) のときに屈折角 \(\theta_B = 90^\circ\) となることです。
使用した物理公式
- 媒質中の光速: \(v = c/n\)
- 屈折の法則(光速表示): \(\displaystyle\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 臨界角の定義
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta_0}{\sin90^\circ} &= \frac{v_A}{v_B} \\[2.0ex]
\sin\theta_0 &= \frac{c/n_A}{c/n_B} \\[2.0ex]
&= \frac{n_B}{n_A}
\end{aligned}
$$
光の屈折は、物質によって光の進む速さが異なるために起こります。屈折の法則は、入射角と屈折角のサインの比が、それぞれの物質での光の速さの比に等しい、という形でも表せます。これを使うと、結局、最初の屈折の法則と同じ形にたどり着きます。あとは臨界角の条件(屈折角 \(90^\circ\))を当てはめれば、同じ結果が得られます。
別解によっても、関係式は \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) となり、主たる解法と同じ結果が得られました。
ガラスのような透明な物質(A)から空気や水のような別の物質(B)へ光が出ていくとき、入射する角度がある角度(これを臨界角 \(\theta_0\) といいます)よりも大きいと、光は物質Bへ出ていかずに全部反射してしまいます。これを全反射といいます。この臨界角のときの状況に屈折の法則を適用すると、\(\sin\theta_0 = n_B/n_A\) という関係が得られます。
関係式は \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) です。\(n_A > n_B\) なので、\(\displaystyle\frac{n_B}{n_A} < 1\) となり、\(\sin\theta_0\) の値として妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
(1)でガラス棒Aの上面から入射した光が、媒質Bとの境界面(ガラス棒の側面)で全反射を繰り返してAの中だけを進むための条件を考えます。全反射するためには、側面への入射角が(2)で求めた臨界角 \(\theta_0\) よりも大きくなければなりません。図を参照すると、ガラス棒Aの側面への光の入射角 \(\phi\) は、上面での屈折角 \(\beta\) を用いて \(\phi = 90^\circ – \beta\) と表されることが分かります。
この設問における重要なポイント
- 全反射の条件: 側面への入射角 \(\phi > \theta_0\)。
- 側面への入射角 \(\phi = 90^\circ – \beta\)。
- (1)と(2)の結果を利用して、条件を \(\alpha, n_A, n_B\) で表す。
具体的な解説と立式
光が媒質Bへ出ることなくAの中を進むためには、AからBへの境界面(側面)で全反射が起こる必要があります。
側面への入射角を \(\phi\) とすると、図より \(\phi = 90^\circ – \beta\) です。
全反射の条件は、この入射角 \(\phi\) が臨界角 \(\theta_0\) よりも大きいことなので、
$$
\begin{aligned}
90^\circ – \beta &> \theta_0
\end{aligned}
$$
\(0^\circ\) から \(90^\circ\) の範囲では \(\sin x\) は単調増加関数なので、
$$
\begin{aligned}
\sin(90^\circ – \beta) &> \sin\theta_0
\end{aligned}
$$
三角関数の公式 \(\sin(90^\circ – \beta) = \cos\beta\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
\cos\beta &> \sin\theta_0
\end{aligned}
$$
(2)の結果 \(\sin\theta_0 = \displaystyle\frac{n_B}{n_A}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\cos\beta &> \frac{n_B}{n_A}
\end{aligned}
$$
(1)の結果 \(\sin\beta = \displaystyle\frac{\sin\alpha}{n_A}\) と \(\cos\beta = \sqrt{1 – \sin^2\beta}\) を用いて \(\cos\beta\) を \(\alpha\) で表します。
$$
\begin{aligned}
\cos\beta &= \sqrt{1 – \left(\frac{\sin\alpha}{n_A}\right)^2} = \frac{\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha}}{n_A}
\end{aligned}
$$
これを代入して、条件式を \(\alpha, n_A, n_B\) で表します。
使用した物理公式
- 全反射の条件: 入射角 > 臨界角
- 三角関数の性質: \(\sin(90^\circ – x) = \cos x\), \(\sin^2x + \cos^2x = 1\)
- (1), (2)の結果
$$
\begin{aligned}
\frac{\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha}}{n_A} &> \frac{n_B}{n_A} \\[2.0ex]
\sqrt{n_A^2 – \sin^2\alpha} &> n_B
\end{aligned}
$$
両辺は正なので、2乗しても不等号の向きは変わりません。
$$
\begin{aligned}
n_A^2 – \sin^2\alpha &> n_B^2 \\[2.0ex]
n_A^2 – n_B^2 &> \sin^2\alpha
\end{aligned}
$$
\(\sin\alpha \ge 0\) なので、
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &< \sqrt{n_A^2 – n_B^2}
\end{aligned}
$$
ガラス棒の側面で光が全反射し続けるためには、側面への光の入射角度が、(2)で求めた臨界角よりも大きくなければなりません。図を見ると、側面への入射角は、上面での屈折角 \(\beta\) を使って \(90^\circ – \beta\) と表せます。この条件を、(1)と(2)で求めた関係を使って、最初の入射角 \(\alpha\) や屈折率 \(n_A, n_B\) で表し直すと、最終的な条件式が得られます。
条件は \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) です。この式は、入射角 \(\alpha\) が小さいほど、またガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) が周囲の媒質Bの屈折率 \(n_B\) に比べて大きいほど、全反射が起こりやすいことを示しており、物理的に妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
全反射を繰り返しながらガラス棒Aの中を進む光が、長さ \(l\) のガラス棒を突き抜けるのにかかる時間を求めます。光はジグザグに進みますが、重要なのはガラス棒の軸方向にどれだけの速さで進むかです。ガラス棒A内での光の速さと、軸方向への速度成分を考えます。
この設問における重要なポイント
- ガラス棒A内での光の速さ \(v_A = c/n_A\)。
- 光の進む方向は、ガラス棒の軸に対して角度 \(\beta\) をなす。
- 軸方向の速度成分は \(v_A \cos\beta\)。
- 時間 = 距離 / 速さ。
具体的な解説と立式
ガラス棒A内での光の速さを \(v_A\) とすると、\(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\) です。
光はガラス棒の軸(中心軸)に対して角度 \(\beta\) の方向に進んでいます。
したがって、ガラス棒の軸方向の速度成分 \(v_{\text{軸}}\) は、
$$
\begin{aligned}
v_{\text{軸}} &= v_A \cos\beta
\end{aligned}
$$
ガラス棒の長さは \(l\) です。この距離を軸方向の速度 \(v_{\text{軸}}\) で進むのに要する時間 \(t\) は、
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{l}{v_{\text{軸}}} = \frac{l}{v_A \cos\beta}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 媒質中の光速: \(v = c/n\)
- 速度の成分分解
- 時間 = 距離 / 速さ
\(v_A = \displaystyle\frac{c}{n_A}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{l}{\left(\frac{c}{n_A}\right) \cos\beta} \\[2.0ex]
&= \frac{n_A l}{c \cos\beta}
\end{aligned}
$$
思考の道筋とポイント
光が実際に進むジグザグの道のり(光路長)を考え、それをガラス棒中の光速で割ることで時間を求めます。光はガラス棒の軸に対して角度 \(\beta\) で進むので、軸方向に \(l\) 進む間に実際に進む距離(光路長) \(L\) は、三角比を用いて \(L = l/\cos\beta\) となります。
この設問における重要なポイント
- 光路長 \(L\) と軸方向の距離 \(l\) の関係: \(l = L\cos\beta\)。
- ガラス棒A内での光の速さ \(v_A = c/n_A\)。
- 時間 = 光路長 / 速さ。
具体的な解説と立式
光がガラス棒の軸方向に距離 \(l\) を進む間に、実際に進むジグザグの道のりの長さを \(L\) とします。
光の進行方向は軸と角度 \(\beta\) をなすので、
$$
\begin{aligned}
l &= L \cos\beta
\end{aligned}
$$
よって、光路長 \(L\) は、
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{l}{\cos\beta}
\end{aligned}
$$
ガラス棒A内での光の速さは \(v_A = c/n_A\) です。
求める時間 \(t\) は、この光路長 \(L\) を速さ \(v_A\) で進む時間なので、
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{L}{v_A}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三角比
- 媒質中の光速: \(v = c/n\)
- 時間 = 距離 / 速さ
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{l/\cos\beta}{c/n_A} \\[2.0ex]
&= \frac{l}{\cos\beta} \cdot \frac{n_A}{c} \\[2.0ex]
&= \frac{n_A l}{c \cos\beta}
\end{aligned}
$$
光がガラス棒の端から端まで進むのにかかる時間を、別の方法で考えます。光は斜めに進むので、実際に進む距離はガラス棒の長さ \(l\) よりも長くなります。この実際の距離を三角比を使って計算し、その距離をガラス棒の中での光の速さで割ることで、時間を求めることができます。
主たる解法と全く同じ結果が得られました。速度の成分で考える方法と、距離(光路長)で考える方法のどちらでも解けることを示しており、物理的な理解を深める上で有益です。
光はガラス棒の中を斜めにジグザグ進みますが、ガラス棒の端から端まで(長さ \(l\))進むのにかかる時間を考えます。光が実際に進む道のりは \(l\) より長いですが、ガラス棒の軸の方向にどれだけの速さで進んでいるかが重要です。時間は「距離 ÷ 速さ」なので、\(l\) をこの軸方向の速さで割れば、求める時間が得られます。
時間は \(t = \displaystyle\frac{n_A l}{c \cos\beta}\) です。
\(\cos\beta\) が小さい(\(\beta\) が \(90^\circ\) に近い)ほど時間は長くなり、光がより横方向に進むため軸方向の進行が遅くなることに対応します。物理的に妥当な結果です。
問(5)
思考の道筋とポイント
(3)で求めた全反射の条件 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) を利用します。
入射角 \(\alpha\) は \(0 \le \alpha < 90^\circ\) の範囲をとるため、\(\sin\alpha\) は \(0 \le \sin\alpha < 1\) の範囲の値を取ります。
1. 媒質Bが空気の場合 (\(n_B = 1\)): 「\(\alpha\) の値にかかわらずすべてAの中だけを進む」ということは、\(\sin\alpha\) が取りうるすべての値(\(0 \le \sin\alpha < 1\))に対して条件が成立するということです。これは、条件式の右辺が \(\sin\alpha\) の上限である1以上であることを意味します。
2. 媒質Bが水の場合 (\(n_B = 4/3\)): 「\(\alpha\) の値によっては側面からも光が出てきた」ということは、条件を満たさない \(\alpha\) が存在するということです。これは、条件式の右辺が1より小さいことを意味します。
この設問における重要なポイント
- \(\sin\alpha\) の取りうる値の範囲: \(0 \le \sin\alpha < 1\)。
- 「常に条件を満たす」 は 条件式の右辺 \(\ge \max(\sin\alpha)\) を意味する。
- 「条件を満たさないことがある」 は 条件式の右辺 \(< \max(\sin\alpha)\) を意味する。
具体的な解説と立式
(3)で得られた全反射条件は、
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &< \sqrt{n_A^2 – n_B^2}
\end{aligned}
$$
ケース1: 媒質Bが空気 (\(n_B=1\))
常に全反射が起こるためには、\(\sin\alpha\) の最大値である1に対してもこの条件が成り立つ必要があります。
$$
\begin{aligned}
1 &\le \sqrt{n_A^2 – 1^2}
\end{aligned}
$$
ケース2: 媒質Bが水 (\(n_B = 4/3\))
全反射しない場合があるということは、\(\sin\alpha\) の値によっては条件が成り立たない、つまり \(\sin\alpha \ge \sqrt{n_A^2 – (4/3)^2}\) となる \(\alpha\) が存在することを意味します。これは、条件式の右辺が1より小さい場合に起こりえます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2} &< 1
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 全反射の条件式(問(3)の結果)
- 不等式の性質
ケース1の条件を解きます。
$$
\begin{aligned}
1 &\le n_A^2 – 1 \\[2.0ex]
2 &\le n_A^2 \\[2.0ex]
\sqrt{2} &\le n_A
\end{aligned}
$$
ケース2の条件を解きます。
$$
\begin{aligned}
n_A^2 – \left(\frac{4}{3}\right)^2 &< 1 \\[2.0ex]
n_A^2 &< 1 + \frac{16}{9} \\[2.0ex]
n_A^2 &< \frac{25}{9} \\[2.0ex]
n_A &< \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
両方の条件を合わせると、
$$
\begin{aligned}
\sqrt{2} \le n_A < \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
(3)で求めた「光がガラス棒の中だけを進む条件」を使います。
まず、周りが空気のとき、「どんな \(\alpha\) でも光は中だけを進む」ということは、条件式が常に成り立つということです。これから \(n_A\) の下限が分かります。
次に、周りが水のとき、「\(\alpha\) によっては光が側面から出てくる」ということは、条件式が成り立たない場合があるということです。これから \(n_A\) の上限が分かります。
これら2つの条件を合わせて、\(n_A\) の範囲を決定します。
ガラス棒Aの屈折率 \(n_A\) の取りうる範囲は \(\sqrt{2} \le n_A < \displaystyle\frac{5}{3}\) です。
\(\sqrt{2} \approx 1.414\)、\(\displaystyle\frac{5}{3} \approx 1.667\) です。水の屈折率 \(4/3 \approx 1.333\) よりも大きい値であり、物理的に妥当な範囲と考えられます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 屈折の法則と全反射:
- 核心: この問題は、光が異なる媒質の境界を進む際の2大原理、「屈折の法則 (\(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\))」と「全反射」を深く理解し、応用できるかを問うています。特に、複数の境界面(上面と側面)で起こる現象を、幾何学的な関係を用いて結びつける点がポイントです。
- 理解のポイント:
- 屈折の法則の適用: 光がどの媒質からどの媒質へ、どの角度で入射し、どの角度で屈折するのかを、境界面ごとに正確に把握し、立式することが基本です。
- 全反射の条件: 全反射は「屈折率が大きい媒質から小さい媒質へ」光が進むときにしか起こりえない、という大原則を忘れないことが重要です。その上で、全反射が起こる条件は「入射角 > 臨界角」であることを理解し、臨界角は「屈折角が90°になるときの入射角」として屈折の法則から導出できることを把握します。
- 幾何学との連携: (3)のように、上面での屈折角 \(\beta\) と側面での入射角 \(\phi\) が \(\phi = 90^\circ – \beta\) という幾何学的な関係で結ばれていることを見抜くことが、問題を解く上での鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光ファイバー: 本問は光ファイバーの原理そのものです。コア(ガラス棒A)を高屈折率、クラッド(媒質B)を低屈折率の物質で作り、コアに入射した光が全反射を繰り返して伝播する仕組みを問う問題に応用できます。
- プリズム: 光がプリズムに入射し、内部で反射・屈折して出射する問題。複数の境界面で屈折の法則や全反射の条件を考える点で本問と共通しています。
- 水中から空気中を見る視界: 水中にいる観測者が水面の上を見上げると、ある一定の角度(臨界角)より外側は水中の景色が映って見え、円形の視界(スネルの窓)ができます。これも全反射の応用例です。
- 初見の問題での着眼点:
- 光の経路を図示する: まず、問題文の状況に合わせて、光がどのように進むかの概略図を自分で描いてみることが重要です。入射角や屈折角、反射角を正確に図に書き込むことで、幾何学的な関係が見えやすくなります。
- 境界面ごとに現象を分ける: 光が通過する境界面が複数ある場合は、それぞれの境界面で何が起こるか(屈折か?全反射か?)を一つずつ分けて考えます。前の境界面での結果(例:屈折角)が、次の境界面での条件(例:入射角)になる、という連鎖関係を意識します。
- 条件式を整理・統合する: 各設問で導出した関係式((1)の屈折の法則、(2)の臨界角の式など)は、後の設問を解くための部品になります。これらの式をどのように組み合わせれば、問われている条件を導出できるかを考えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 入射角と屈折角の混同:
- 誤解: 境界面に対して垂直な線(法線)から測るべき角度を、境界面そのものから測ってしまう。
- 対策: 屈折の法則で使う角度は、必ず「法線とのなす角」であることを徹底します。図を描く際には、まず境界面に法線を引く癖をつけます。
- 全反射の条件の誤解:
- 誤解: 屈折率の大小関係に関わらず、いつでも全反射が起こりうると考えてしまう。
- 対策: 全反射は「密から疎へ」(屈折率 大 \(\to\) 小)のとき限定の現象であることを覚えます。空気からガラスに入射するときには、絶対に全反射は起こりません。
- 三角関数の変形ミス:
- 誤解: (3)で \(\sin(90^\circ – \beta)\) を \(\cos\beta\) に変換する際や、\(\cos\beta = \sqrt{1-\sin^2\beta}\) を用いる際に計算ミスをする。
- 対策: これらの三角関数の公式は物理の問題で頻出するため、確実に身につけておく必要があります。特に、\(\sin\) から \(\cos\) を求める際には、角度の範囲(\(0 < \beta < 90^\circ\))から符号が正であることを確認する習慣をつけます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 屈折の法則 \(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\):
- 選定理由: 光が異なる屈折率を持つ媒質の境界面を通過し、進行方向が変わる現象を記述するため。
- 適用根拠: (1)の空気→ガラス、(2)のガラス→媒質Bのように、問題のほぼ全ての場面で光の屈折が関わっているため、必須の法則です。
- 全反射の条件(入射角 > 臨界角):
- 選定理由: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進む際に、光が透過しなくなる条件を記述するため。
- 適用根拠: (3)で「媒質Bへ出ることなくAの中を進む」という状況が問われており、これはまさに全反射が起こる条件を問うているため。
- 媒質中の光速 \(v = c/n\):
- 選定理由: 屈折率が異なる媒質中での光の速さを定量的に計算するため。
- 適用根拠: (4)で、ガラス棒中を光が進む「時間」を求める必要があり、そのためにはガラス棒中での「速さ」を計算する必要があるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 不等式の取り扱い:
- 特に注意すべき点: (3)や(5)では、不等式を解く必要があります。両辺を2乗する際には、両辺が非負であることを確認しないと、同値性が崩れる可能性があります。
- 日頃の練習: 不等式を2乗する前には、「左辺 \(\ge 0\), 右辺 \(\ge 0\) なので」と一言断りを入れる癖をつける。これにより、無条件に2乗してよいかどうかのチェックが習慣になります。
- 文字式の整理:
- 特に注意すべき点: (3)のように、複数の公式(屈折の法則、三角関数の公式、全反射の条件)を代入して1つの式にまとめる場面では、式が複雑になりがちです。
- 日頃の練習: \(\sin\beta\) を \(\alpha\) で表す、\(\cos\beta\) を \(\sin\beta\) で表す、など、一つ一つのステップを分けて計算し、最終的にそれらを組み合わせるようにすると、見通しが良くなりミスが減ります。
- 条件の整理:
- 特に注意すべき点: (5)では、「空気の場合は常に全反射」「水の場合はそうではない」という2つの文章から、それぞれ \(n_A\) に関する不等式を立てる必要があります。文章で書かれた条件を、数式(特に不等式)に正しく翻訳する能力が問われます。
- 日頃の練習: 「すべての \(x\) で成り立つ \(\iff\) 最小値 \(\ge 0\)」や「成り立つ \(x\) がある \(\iff\) 最大値 \(\ge 0\)」のような、数学で習う条件の言い換えパターンを物理の問題に応用する練習をします。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 臨界角 \(\sin\theta_0 = n_B/n_A\):
- 吟味の視点: 全反射が起こるためには \(n_A > n_B\) が必要なので、\(n_B/n_A < 1\) となります。これは \(\sin\) の値が1を超えないという数学的な要請と一致しており、妥当です。
- 全反射の条件 \(\sin\alpha < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\):
- 吟味の視点: もし \(n_A\) と \(n_B\) の差が非常に小さい場合、右辺は0に近づき、全反射が起こるためには \(\alpha\) を非常に小さく(光をほぼ垂直に)入射させる必要があることを示します。これは直感的にも正しいです。
- \(n_A\) の範囲 \(\sqrt{2} \le n_A < 5/3\):
- 吟味の視点: \(\sqrt{2} \approx 1.414\), \(5/3 \approx 1.667\)。これらはガラスの屈折率として一般的な値の範囲(1.4〜1.7程度)に含まれており、現実的な値です。また、水の屈折率 \(4/3 \approx 1.333\) よりも大きいという条件も満たしています。
- 臨界角 \(\sin\theta_0 = n_B/n_A\):
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- もし入射角 \(\alpha=0\) なら:
- (1)より \(\sin\beta = 0\) となり、\(\beta=0\) です。光はまっすぐガラス棒に入ります。
- (3)の条件は \(\sin 0 < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) となり、\(0 < \sqrt{n_A^2 – n_B^2}\) となります。これは \(n_A > n_B\) であれば常に成り立ちます。つまり、垂直に入射した光は側面で必ず全反射します(側面への入射角が90°になるため)。これは物理的に正しいです。
- もし入射角 \(\alpha=0\) なら:
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問題74 (熊本大+東京電機大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、レンズによる結像の基本的な理解を試すものです。単一レンズによる像の性質(位置、実像・虚像の別、倍率)を求めることから始まり、レンズの移動、媒質の屈折率の変化(見かけの深さ)、そして複数のレンズを組み合わせた場合の合成像の扱い方まで、段階的に考察を深めていきます。
- レンズL₁: 薄い凸レンズ、焦点距離 \(f_1 = 8 \text{ cm}\)。
- 初期のL₁の位置: 光源の真上 \(10 \text{ cm}\) の高さ。
- 光源: L₁の下方 \(10 \text{ cm}\) の位置にある(すなわち、L₁に対する初期の物体距離 \(a_1 = 10 \text{ cm}\))。
- (3)で用いる液体: 容器の底の光源の上から深さ \(4 \text{ cm}\) まで入れる。 このとき、L₁による光源の実像がL₁の上方 \(72 \text{ cm}\) のところにできる。
- レンズL₂: 薄い凸レンズ、焦点距離 \(f_2 = 12 \text{ cm}\)。 (4)でL₁の上方に光軸を合わせて置く。
- レンズL₃: 薄い凹レンズ、焦点距離 \(f_3 = 12 \text{ cm}\) (凹レンズなので実際には \(f_3 = -12 \text{ cm}\) として扱う)。 (5)でL₁の上方 \(30 \text{ cm}\) に光軸を合わせて置く。
- (1) 初期のL₁による光源の像の位置(L₁の上方または下方何cmか)、実像か虚像か、像の大きさは光源の大きさの何倍か。
- (2) L₁の高さを変え、実像が(1)の場合と同じ絶対位置にできるようにするには、L₁を上下どちらへ何cm動かせばよいか。
- (3) 液体の屈折率はいくらか。
- (4) L₁とL₂による光源の像がL₂の下方 \(24 \text{ cm}\) の位置で虚像となるための、L₁とL₂の間の距離。 そのときの像の大きさは光源の大きさの何倍か。
- (5) L₁とL₃を置いたときの合成像の位置(L₃の上方または下方何cmか)、実像か虚像か。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2) レンズの移動の別解: 光路の可逆性を利用する解法
- 主たる解法が、レンズと光源・像の距離の関係から2次方程式を立てて解くのに対し、別解では「物体と実像の位置を入れ替えても光の道筋は同じ」という光路の可逆性の原理を用いて、より直感的に新しいレンズの位置を求めます。
- 問(5) 組み合わせレンズの別解: 逐次作図による定性的な解法
- 主たる解法がレンズの公式を用いて定量的に像の位置を計算するのに対し、別解では光線作図を段階的に行い、最終的な像が実像か虚像か、どのあたりにできるかを定性的に考察します。
- 問(2) レンズの移動の別解: 光路の可逆性を利用する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 問(2)の別解は、「光路の可逆性」という光学の重要な基本原理への理解を深めます。問(5)の別解は、数式だけでなく作図によってもレンズの働きを理解する能力を養い、計算結果の妥当性を視覚的に検証する手段にもなります。
- 解法の多角化: 同じ問題に対して、代数的なアプローチと物理原理や幾何学的なアプローチの両方を学ぶことで、思考の柔軟性が高まり、複雑な問題への対応力が向上します。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、レンズによる結像の基本的な理解を試すものです。単一レンズによる像の性質(位置、実像・虚像の別、倍率)を求めることから始まり、レンズの移動、媒質の屈折率の変化(見かけの深さ)、そして複数のレンズを組み合わせた場合の合成像の扱い方まで、段階的に考察を深めていきます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)ここで、\(a\) は物体距離、\(b\) は像距離、\(f\) は焦点距離です。符号の規約を正しく適用することが極めて重要です。
- 像の倍率: \(m = \displaystyle\left|\frac{b}{a}\right|\)
- 見かけの深さ: 屈折率 \(n\) の媒質中にある深さ \(D\) の物体を、媒質の表面から真上に見たときの見かけの深さ \(d’\) は \(d’ = \displaystyle\frac{D}{n}\) で与えられます。
- 組み合わせレンズ: 1枚目のレンズによる像を2枚目のレンズの物体として扱います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 与えられた物体距離と焦点距離から、レンズの公式を用いて像距離を求め、その符号と値から像の性質と位置、倍率を決定します。
- (2) 光源と(1)でできた像の絶対位置を固定し、その間にレンズL₁を配置し直すと考えます。レンズの公式から新しい物体距離を求め、元の位置からの移動距離を判断します。
- (3) まず、L₁に関して、与えられた実像の位置から逆算して「見かけの物体」の位置を求めます。次に、見かけの深さの公式を用いて液体の屈折率を計算します。
- (4) 1枚目のレンズL₁による像を2枚目のレンズL₂の物体と考えます。L₁とL₂の距離を未知数とし、L₂についてレンズの公式を適用して未知数を決定します。
- (5) (4)と同様に、L₁による像をL₃の物体として扱います。L₁による像がL₃の後方にある場合は、L₃への物体距離を負として扱う点に注意します。