「名問の森」徹底解説(7〜9問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題7 運動方程式 (九州大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)(3)の別解: 慣性力(ダランベールの原理)を用いた解法
      • 模範解答が地上から見た静止系で運動方程式を立てるのに対し、別解では加速する物体と共に動く観測者の視点から、慣性力を導入して「力のつりあい」として問題を解きます。
    • 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(連続体の運動方程式)
      • 綱を微小な質点の集合(連続体)とみなし、微小部分の運動方程式を立式・積分することで、張力の分布関数を原理的に導出します。
    • 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の時間積分)
      • 等加速度直線運動の公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) などを既知とせず、運動方程式を時間で積分することで、速度と位置の式を一から導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 慣性力の解法: 動力学の問題を静力学(つりあい)の問題に帰着できるため、式の見通しが良くなり、符号ミスなどの計算間違いを減らすことができます。
    • 微積分の解法: 公式の適用範囲や前提条件に縛られず、物理現象の根本原理(ニュートンの運動法則)から論理的に解を導く力を養います。特に質量のある紐や鎖の問題では、微小要素を考える視点が不可欠です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「質量のある綱を含む連結物体の運動」です。
通常、高校物理では「質量が無視できる糸」を扱いますが、ここでは綱自体に質量があるため、綱の場所によって張力が変化します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動方程式: 物体の運動を支配する基本法則 \(ma = F\) です。注目する物体を明確にし、働く力をすべて書き出すことが出発点です。
  • 一体化と分離: 複数の物体が同じ加速度で動く場合、それらをまとめて一つの物体とみなす(一体化)か、個々の物体に分けて考える(分離)かを適切に使い分けることが重要です。
  • 作用・反作用の法則: 物体間で及ぼし合う力は、大きさが等しく向きが逆になります。
  • 等加速度直線運動: 力が一定であれば加速度も一定となり、等加速度運動の公式が適用できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、綱とPを一体とみなして、系全体の加速度を求めます。
  • (2)では、P(または綱)単体に注目し、内力となった張力を表面化させて求めます。
  • (3)では、綱を途中で切断したモデルを考え、その一部について運動方程式を立てます。
  • (4)では、(1)で求めた加速度を用いて運動の様子(時間や変位)を追跡します。

問(1)

思考の道筋とポイント
おもりPと綱はつながっており、綱が伸び縮みしないため、両者は一体となって同じ加速度 \(a\) で鉛直上向きに運動します。
個別に運動方程式を立てて連立することも可能ですが、未知数(張力)を含まない式を一発で立てるために、「綱とPをまとめて一つの物体」とみなすアプローチが最も効率的です。

この設問における重要なポイント

  • 着目する物体: 綱(質量 \(m\))とP(質量 \(M\))の合体物(全質量 \(M+m\))。
  • 力の図示:
    • 外力として、上向きに引く力 \(F\)。
    • 重力として、下向きに \((M+m)g\)。
    • 綱とPの間の張力は「内力」となるため、一体化した運動方程式には現れません。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正の向きとし、加速度を \(a\) とします。
系全体(質量 \(M+m\))に対する運動方程式を立てます。
運動方程式の基本形は \((\text{質量}) \times (\text{加速度}) = (\text{運動方向の力の和}) – (\text{逆方向の力の和})\) です。

$$
\begin{aligned}
(M+m)a &= F – (M+m)g \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式①を \(a\) について解きます。

$$
\begin{aligned}
(M+m)a &= F – (M+m)g \\[2.0ex]
a &= \frac{F – (M+m)g}{M+m} \\[2.0ex]
&= \frac{F}{M+m} – g
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

綱とおもりを「ひとかたまり」として見ると、全体を上に引っ張る力 \(F\) と、全体を下に引っ張る重力(合計の重さ)がかかっています。
この「上向きの勝ち越し分」の力が、全体の質量を加速させます。
ニュートンの運動方程式「力 \(=\) 質量 \(\times\) 加速度」に当てはめることで、加速度が求まります。

結論と吟味

答えは \(a = \frac{F}{M+m} – g\) です。
問題文の条件 \(F > (M+m)g\) より、\(a > 0\) となり、上向きに加速することが確認できます。
また、\(F\) が大きくなれば加速度は大きくなり、質量 \(M+m\) が大きくなれば加速度は小さくなるため、物理的直感とも一致します。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{F}{M+m} – g\) \(\text{[m}/\text{s}^2\text{]}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
今度は、綱がおもりPを引く力(張力 \(T\))を求めます。
張力は綱とPの間で及ぼし合う力(内力)なので、全体を一体として見ているだけでは求まりません。
そこで、「おもりP」だけを分離して注目します。Pの加速度は(1)で求めた \(a\) です。

この設問における重要なポイント

  • 着目する物体: おもりP(質量 \(M\))。
  • 力の図示:
    • 綱から受ける張力 \(T\)(上向き)。
    • 重力 \(Mg\)(下向き)。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とし、おもりPについての運動方程式を立てます。
加速度は(1)の結果 \(a\) を用います。

$$
\begin{aligned}
Ma &= T – Mg \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式②を変形して \(T\) を求めます。

$$
\begin{aligned}
T &= Ma + Mg \\[2.0ex]
&= M(a + g)
\end{aligned}
$$

ここに(1)の解 \(a = \frac{F}{M+m} – g\) を代入します。

$$
\begin{aligned}
T &= M \left( \left( \frac{F}{M+m} – g \right) + g \right) \\[2.0ex]
&= M \left( \frac{F}{M+m} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{M}{M+m} F
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

おもりPに注目すると、Pを上に引き上げるのは「綱の張力」だけです。一方で重力が邪魔をしています。
Pも全体と同じ加速度で勢いよく上昇しているので、張力は重力を支えるだけでなく、さらにPを加速させる分の力を余分に出す必要があります。
計算の結果、張力は引く力 \(F\) を、おもりと綱の質量の比率で分配したうちの「おもりの取り分」になっていることがわかります。

結論と吟味

答えは \(T = \frac{M}{M+m} F\) です。
もし綱の質量 \(m=0\) ならば、\(T = \frac{M}{M} F = F\) となり、引く力がそのままおもりに伝わります。
逆に \(m\) が非常に大きい場合、\(T\) は小さくなります。これは力 \(F\) の多くが重い綱自身の加速に使われてしまうためで、妥当な結果です。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{M}{M+m} F\) \(\text{[N]}\)
別解: 慣性力(ダランベールの原理)を用いた解法

思考の道筋とポイント
加速度 \(a\) で上昇している観測者(例えばPに乗っている人)から見ると、Pは静止しているように見えます。
その代わり、すべての物体には加速度と逆向き(下向き)に「慣性力」が働きます。
これにより、運動方程式の問題を「力のつりあい」の問題として解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • 慣性力: 質量 \(m\) の物体に対し、観測者の加速度 \(a\) と逆向きに大きさ \(ma\) の力が働きます。
  • 力のつりあい: (上向きの力)\(=\)(下向きの力 \(+\) 慣性力)。

具体的な解説と立式
P(質量 \(M\))に働く力を考えます。

  • 上向き: 張力 \(T\)
  • 下向き: 重力 \(Mg\)、慣性力 \(Ma\)

力のつりあいの式を立てます。

$$
\begin{aligned}
T &= Mg + Ma
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 慣性力: \(f_{\text{慣性}} = -ma\)
  • 力のつりあい
計算過程

この式は、メイン解法の式 \(Ma = T – Mg\) を移項したものと全く同じです。
したがって、計算過程も同様になります。

$$
\begin{aligned}
T &= M(g + a) \\[2.0ex]
&= M \left( g + \frac{F}{M+m} – g \right) \\[2.0ex]
&= \frac{M}{M+m} F
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

エレベーターが急上昇するとき、体が下に押し付けられるように感じる力、これが慣性力です。
Pと一緒に動く人から見れば、Pは止まっています。その代わり、重力に加えて「下向きの慣性力」がのしかかっています。
綱の張力 \(T\) は、この「重力 \(+\) 慣性力」を支える必要があります。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果 \(T = \frac{M}{M+m} F\) が得られました。
慣性力を使うと「見かけ上の重力加速度が \(g+a\) に増えた」と解釈でき、直感的に理解しやすくなります。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{M}{M+m} F\) \(\text{[N]}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
綱の上端から \(x\) の位置での張力 \(T_x\) を求めます。
ここで綱を切断したと仮定し、「上側の部分」または「下側の部分(残りの綱 \(+\) P)」のどちらかに注目して運動方程式を立てます。
どちらを選んでも解けますが、ここでは模範解答の図に合わせて「上側の部分」に注目します。

この設問における重要なポイント

  • 着目する物体: 綱の上端から長さ \(x\) の部分。
  • 質量の計算: 綱は一様なので、長さ \(x\) の部分の質量 \(m_x\) は、全体の質量 \(m\) に長さの比率を掛けて求められます。
    $$
    \begin{aligned}
    m_x &= m \times \frac{x}{l} \\[2.0ex]
    &= \frac{mx}{l}
    \end{aligned}
    $$
  • 力の図示:
    • 上端: 外力 \(F\)(上向き)。
    • 下端(切断面): 下側の綱が引く張力 \(T_x\)(下向き)。
    • 重力: \(m_x g\)(下向き)。

具体的な解説と立式
上側の部分(質量 \(\frac{mx}{l}\))についての運動方程式を立てます。
加速度は全体と同じ \(a\) です。

$$
\begin{aligned}
\frac{mx}{l} a &= F – T_x – \frac{mx}{l} g \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
  • 比例配分による質量計算
計算過程

式③を \(T_x\) について解きます。

$$
\begin{aligned}
T_x &= F – \frac{mx}{l} g – \frac{mx}{l} a \\[2.0ex]
&= F – \frac{mx}{l} (g + a)
\end{aligned}
$$

ここで、(1)より \(a = \frac{F}{M+m} – g\) なので、\(g+a = \frac{F}{M+m}\) となります。これを代入します。

$$
\begin{aligned}
T_x &= F – \frac{mx}{l} \cdot \frac{F}{M+m} \\[2.0ex]
&= F \left( 1 – \frac{mx}{l(M+m)} \right) \\[2.0ex]
&= F \left( \frac{l(M+m) – mx}{l(M+m)} \right)
\end{aligned}
$$

括弧内を整理します。

$$
\begin{aligned}
T_x &= \left( 1 – \frac{m}{M+m} \cdot \frac{x}{l} \right) F
\end{aligned}
$$

※模範解答の形式に合わせるため、この形で答えるのが一般的ですが、通分した形でも正解です。

この設問の平易な説明

綱の途中の部分は、自分より「下にあるもの全て」を引っ張り上げています。
上端(\(x=0\))では、綱全体とおもりPの全てを支えるので張力は \(F\) そのものです。
下に行くにつれて、支えるべき「下の綱」が減っていくので、張力は徐々に小さくなります。
計算式は、上端の力 \(F\) から、「そこまでの綱自身の加速と重力に使われた分」を差し引く形になっています。

結論と吟味

答えは \(T_x = \left\{ 1 – \frac{mx}{(M+m)l} \right\} F\) です。
\(x=0\)(上端)のとき: \(T_0 = F\)。外力そのものであり、正しい。
\(x=l\)(下端)のとき: \(T_l = \left( 1 – \frac{m}{M+m} \right) F = \frac{M}{M+m} F\)。これは問(2)で求めたPを引く張力と一致し、正しい。

解答 (3) \(\displaystyle \left\{ 1 – \frac{mx}{(M+m)l} \right\} F\) \(\text{[N]}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(連続体の運動方程式)

思考の道筋とポイント
綱を「長さ \(l\)、質量 \(m\) の連続体」とみなします。
綱の微小部分 \(dx\) に注目し、その運動方程式を立てて積分することで、張力 \(T(x)\) の関数形を導出します。
この方法は、質量分布が一様でない場合などにも応用できる、より一般的で強力な手法です。

この設問における重要なポイント

  • 線密度: 単位長さあたりの質量 \(\rho = \frac{m}{l}\)。
  • 微小部分の運動方程式: 位置 \(x\) における微小要素 \(dx\) に働く力の差が、その部分を加速させます。

具体的な解説と立式
上端を原点 \(x=0\) とし、鉛直下向きに \(x\) 軸をとります。
位置 \(x\) における張力を \(S(x)\) とします。(下向きを正とした座標系なので、張力の向きに注意します)
位置 \(x\) から \(x+dx\) までの微小部分(質量 \(\rho dx\))に注目します。

  • 上側から引かれる力: \(S(x)\) (上向き)
  • 下側を引く力(の反作用): \(S(x+dx)\) (下向き)
  • 重力: \(\rho dx \cdot g\) (下向き)
  • 加速度: \(a\) (上向き、つまり \(x\) 軸負方向)

微小部分の運動方程式(上向きを正)を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\rho dx) a &= S(x) – S(x+dx) – (\rho dx) g
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 微小要素の運動方程式
  • 微分の定義: \(\displaystyle \frac{S(x+dx) – S(x)}{dx} \approx \frac{dS}{dx}\)
計算過程

式を整理し、\(dx\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\rho a &= \frac{S(x) – S(x+dx)}{dx} – \rho g \\[2.0ex]
\rho (a+g) &= – \frac{S(x+dx) – S(x)}{dx}
\end{aligned}
$$
\(dx \to 0\) の極限をとると、右辺は張力の微分のマイナスになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dS}{dx} &= – \rho (a+g)
\end{aligned}
$$
これは「張力の傾きが一定(負の値)」であることを示しています。
この微分方程式を \(x\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
S(x) &= \int – \rho (a+g) \, dx \\[2.0ex]
&= – \rho (a+g) x + C \quad (C \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
境界条件として、上端 \(x=0\) での張力は外力 \(F\) に等しいので、\(S(0) = F\) です。
よって \(C = F\) となり、
$$
\begin{aligned}
S(x) &= F – \rho (a+g) x
\end{aligned}
$$
ここに \(\rho = \frac{m}{l}\) と、(1)より \(a+g = \frac{F}{M+m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
S(x) &= F – \frac{m}{l} \cdot \frac{F}{M+m} x \\[2.0ex]
&= F \left( 1 – \frac{mx}{l(M+m)} \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

綱のほんの小さな一部分を取り出して考えると、その上下での「張力の差」が、その部分の重さと加速に使われる力に対応しています。
これを数式(微分方程式)にすると、「下に行くほど張力が一定の割合で減っていく」ことがわかります。
これを積み重ねて(積分して)全体を見ると、張力が \(x\) の一次関数として求まります。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ式が得られました。
この手法は、例えば「綱が太くなっていく(\(\rho\) が \(x\) の関数)」ような複雑な設定でも、積分の計算を変えるだけで対応できるため、非常に応用範囲が広いです。

解答 (3) \(\displaystyle \left\{ 1 – \frac{mx}{(M+m)l} \right\} F\) \(\text{[N]}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
状況が変わり、具体的な力 \(F = 2(M+m)g\) で引き上げます。
まず、このときの加速度 \(a\) を求めます。
次に、高さ \(h\) に達するまでの時間 \(t_1\) と、その時の速度 \(v_0\) を求めます。
綱が外れた後は、おもりPは重力のみを受けて運動する「鉛直投げ上げ」になります。
最高点に達して落ちてくるまでの時間 \(t_2\) を求め、合計時間 \(t_1 + t_2\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 運動の切り替わり: 「等加速度直線運動(上昇)」から「鉛直投げ上げ(自由落下)」へと運動の種類が変わるため、区間を分けて考えます。
  • 接続条件: 綱が外れる瞬間の「位置」と「速度」が、次の運動の初期条件になります。

具体的な解説と立式
Step 1: 引き上げ中の運動
まず、新しい力 \(F\) に対する加速度 \(a\) を求めます。(1)の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{2(M+m)g}{M+m} – g \\[2.0ex]
&= 2g – g \\[2.0ex]
&= g
\end{aligned}
$$
加速度は \(g\)(上向き)です。
初速度 \(0\) で加速度 \(g\) の等加速度運動をし、距離 \(h\) だけ進む時間 \(t_1\) を求めます。
等加速度運動の公式 \(y = v_{\text{初}} t + \frac{1}{2} a t^2\) より、
$$
\begin{aligned}
h &= 0 \cdot t_1 + \frac{1}{2} g t_1^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
また、その時の速度 \(v_0\) は \(v = v_{\text{初}} + at\) より、
$$
\begin{aligned}
v_0 &= 0 + g t_1 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

Step 2: 綱が外れた後の運動
初速度 \(v_0\)(上向き)、初期位置 \(h\) から、加速度 \(g\)(下向き)で運動し、地面(位置 \(0\))に達するまでの時間 \(t_2\) を求めます。
地面を原点、上向きを正とすると、初期位置 \(y_0 = h\)、加速度 \(-g\) です。
$$
\begin{aligned}
0 &= h + v_0 t_2 + \frac{1}{2} (-g) t_2^2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の公式: \(x = v_{\text{初}} t + \frac{1}{2} a t^2\), \(v = v_{\text{初}} + at\)
計算過程

式④より \(t_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} g t_1^2 &= h \\[2.0ex]
t_1^2 &= \frac{2h}{g} \\[2.0ex]
t_1 &= \sqrt{\frac{2h}{g}} \quad (t_1 > 0)
\end{aligned}
$$
式⑤に代入して \(v_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= g \sqrt{\frac{2h}{g}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2gh}
\end{aligned}
$$
式⑥を整理して \(t_2\) についての二次方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} g t_2^2 – v_0 t_2 – h &= 0
\end{aligned}
$$
解の公式を利用します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{v_0 \pm \sqrt{v_0^2 – 4 \cdot \frac{g}{2} \cdot (-h)}}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{v_0 \pm \sqrt{v_0^2 + 2gh}}{g}
\end{aligned}
$$
\(t_2 > 0\) なので、プラスの方を採用します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{v_0 + \sqrt{v_0^2 + 2gh}}{g}
\end{aligned}
$$
ここに \(v_0 = \sqrt{2gh}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= \frac{\sqrt{2gh} + \sqrt{2gh + 2gh}}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{2gh} + \sqrt{4gh}}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{2gh} + 2\sqrt{gh}}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{gh}(\sqrt{2} + 2)}{g} \\[2.0ex]
&= (2 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}}
\end{aligned}
$$
最後に合計時間を求めます。
$$
\begin{aligned}
t_1 + t_2 &= \sqrt{\frac{2h}{g}} + (2 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2} \sqrt{\frac{h}{g}} + (2 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}} \\[2.0ex]
&= (2 + 2\sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}} \\[2.0ex]
&= 2(1 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

前半は、エレベーターのように一定の力で引き上げられる運動です。加速度が重力加速度 \(g\) と同じ大きさになるような強い力で引っ張っています。
高さ \(h\) に来た時点で綱が外れると、おもりは勢い(速度 \(v_0\))を持ったまま空中に放り出されます。
ここからはボールを真上に投げ上げたのと同じ運動(投げ上げ運動)になり、重力に引かれて減速し、最高点に達してから地面まで落ちてきます。
前半の上昇時間と、後半の落下時間をそれぞれ計算して足し合わせます。

結論と吟味

答えは \(2(1 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}}\) 秒です。
単位を確認すると、\(\sqrt{\frac{[\text{L}]}{[\text{L}/\text{T}^2]}} = \sqrt{[\text{T}^2]} = [\text{T}]\) となり、時間の次元を持っています。
また、単なる自由落下(\(\sqrt{2h/g}\))よりも、一度上昇してから落ちてくる分、時間が長くかかっており妥当です。

解答 (4) \(2(1 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}}\) \(\text{[s]}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の時間積分)

思考の道筋とポイント
等加速度運動の公式 \(x = v_{\text{初}} t + \frac{1}{2}at^2\) を暗記していなくても、運動方程式 \(ma=F\) を出発点とし、加速度を時間で2回積分することで、位置と時間の関係を導き出せます。
「加速度とは速度の変化率」「速度とは位置の変化率」という定義に立ち返る解法です。

この設問における重要なポイント

  • 微分の定義: \(a = \frac{dv}{dt}\), \(v = \frac{dy}{dt}\)。
  • 初期条件: 積分定数を決定するために、\(t=0\) での位置や速度の情報を使います。

具体的な解説と立式
Step 1: 引き上げ中の運動
運動方程式 \((M+m)a = F – (M+m)g\) より、加速度 \(a=g\)(定数)が得られます。
加速度の定義より、
$$
\begin{aligned}
\frac{dv}{dt} &= g
\end{aligned}
$$
これを \(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
v(t) &= \int g \, dt \\[2.0ex]
&= gt + C_1
\end{aligned}
$$
\(t=0\) で静止していたので \(v(0)=0\) より \(C_1=0\)。よって \(v(t) = gt\)。
さらに速度の定義 \(v = \frac{dy}{dt}\) より、
$$
\begin{aligned}
\frac{dy}{dt} &= gt
\end{aligned}
$$
これを積分します。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \int gt \, dt \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}gt^2 + C_2
\end{aligned}
$$
\(t=0\) で地上(\(y=0\))にいたので \(C_2=0\)。よって \(y(t) = \frac{1}{2}gt^2\)。
\(y(t_1) = h\) となる時刻 \(t_1\) を求めると、
$$
\begin{aligned}
h &= \frac{1}{2}gt_1^2 \quad \rightarrow \quad t_1 = \sqrt{\frac{2h}{g}}
\end{aligned}
$$
この時の速度 \(v_0\) は \(v(t_1) = g t_1 = \sqrt{2gh}\) です。

Step 2: 綱が外れた後の運動
綱が外れた後は重力のみが働くので、運動方程式は \(Ma’ = -Mg\) より \(a’ = -g\) です。
時刻 \(t\) を、綱が外れた瞬間からの経過時間としてリセットして考えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dv}{dt} &= -g
\end{aligned}
$$
積分して、初期条件 \(v(0)=v_0\) を用います。
$$
\begin{aligned}
v(t) &= -gt + v_0
\end{aligned}
$$
さらに積分して、初期条件 \(y(0)=h\) を用います。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= -\frac{1}{2}gt^2 + v_0 t + h
\end{aligned}
$$
地面に到達するのは \(y(t_2)=0\) のときです。
$$
\begin{aligned}
0 &= -\frac{1}{2}gt_2^2 + v_0 t_2 + h
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の式⑥と全く同じ形になりました。以降の計算は同様です。

この設問の平易な説明

「公式」と呼ばれるものはすべて、運動方程式を積分して作られたものです。
ここでは、加速度 \(g\) を積分して速度 \(gt\) を作り、さらに積分して距離 \(\frac{1}{2}gt^2\) を作るというプロセスを実際に行いました。
物理の公式を忘れても、微積分ができればその場で公式を作り出して問題を解くことができます。

結論と吟味

当然ながら、公式を用いた場合と同じ結果が得られます。
この方法は、加速度が時間とともに変化するような(力が一定でない)応用問題でも通用する、物理学の王道アプローチです。

解答 (4) \(2(1 + \sqrt{2}) \sqrt{\frac{h}{g}}\) \(\text{[s]}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 一体化と分離の使い分けによる運動方程式の立式
    • 核心: 複数の物体が同じ加速度で運動する場合、それらを「一つの系(システム)」として見るか、「個別の物体」として見るかによって、式に含まれる未知数が変わります。
    • 理解のポイント:
      • 一体化(系全体): 物体間の内力(張力 \(T\) など)が相殺され、外力 \(F\) と全体の質量 \(M+m\) の関係から加速度 \(a\) を直接求めることができます。
      • 分離(単体): 特定の物体(おもりPなど)だけを取り出すと、内力であった張力 \(T\) が外力として現れます。これにより、求めた加速度 \(a\) を使って張力 \(T\) を計算できます。
  • 質量を持つ紐(連続体)の力学特性
    • 核心: 質量が無視できない紐や鎖では、張力は一様ではなく、場所によって連続的に変化します。これは、紐の各部分が「自分より下にある部分の重さと慣性」を支える必要があるためです。
    • 理解のポイント:
      • 張力の勾配: 上端ほど支える質量が大きいため張力は最大になり、下端では最小(または接続された物体の分のみ)になります。
      • 微視的視点: 紐を微小な要素に分割し、その微小部分の運動方程式を考える(微積分の発想)ことで、張力の変化を定量的に理解できます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 列車や連結ブロック: 綱とおもりの関係は、機関車と客車、あるいは糸でつながれた複数の木片と同じ構造です。「全体で \(a\) を出す \(\rightarrow\) 末端で \(T\) を出す」という手順は、連結物体問題の定石です。
    • 太さが不均一なロープ: 線密度 \(\rho\) が場所によって変わる問題でも、別解で示した「微小部分の運動方程式 \(dS/dx = -\rho(x)(a+g)\)」を用いれば、単なる積分の計算問題に帰着できます。
    • 運動の切り替わり(多段階運動): 問(4)のように、途中で外力が変化したり物体が分離したりする場合、その瞬間の「速度」と「位置」が次の運動の初期条件となります。映画のカット割りのように、現象を区切って考えることが重要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「質量が無視できる」の有無: 問題文に「軽い糸」「質量が無視できる」とあれば張力一定。なければ、張力は場所の関数 \(T(x)\) になると身構えます。
    2. 慣性力の利用: 加速度運動する乗り物の中や、物体と共に動く視点を持つことで、動的な問題を静的な「つりあい」の問題に変換できないか検討します。
    3. 座標軸の設定: 鉛直投げ上げや落下運動では、最初に「どちらを正とするか」を決め、重力加速度 \(g\) や初速度 \(v_{\text{初}}\) の符号を厳格に管理します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 張力一定の思い込み:
    • 誤解: 「一本の綱だから、どこでも張力は同じはず」と考え、問(3)で問(2)と同じ答えを書いてしまう。
    • 対策: 「質量がある=力が消費される」と考えます。力が伝わる過程で、綱自身の加速と重力支えに力が使われるため、先に行くほど張力は減っていきます。
  • 慣性力の向きと存在条件:
    • 誤解: 慣性力を加速度と同じ向きに加えたり、静止している観測者から見た式に慣性力を混ぜてしまう。
    • 対策: 慣性力は「加速度と逆向き」です。また、慣性力は「加速している人が感じる見かけの力」なので、地上から見た運動方程式には絶対に書きません。視点(観測者)を固定することがミスを防ぎます。
  • 運動方程式の符号ミス:
    • 誤解: 上向きを正としたのに、重力 \(mg\) をプラスで足してしまったり、下向きの張力をプラスにしてしまう。
    • 対策: `(質量)×(加速度)=(正の向きの力)-(負の向きの力)` というフォームを崩さないこと。図に描いた矢印の向きと座標軸を見比べ、逆なら必ずマイナスをつけます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動方程式 vs 慣性力(ダランベールの原理):
    • 選定理由: 加速度 \(a\) が未知の場合は、因果関係(力 \(\rightarrow\) 加速度)が明確な運動方程式(メイン解法)が基本です。一方、加速度が求まった後で内力を求める場合は、慣性力を用いたつりあいの式(別解)の方が、移項の手間が省け、直感的に立式しやすい場合があります。
    • 適用根拠: 慣性力の解法は、非慣性系(加速系)における運動方程式の変形に過ぎず、物理的には完全に等価です。
  • 等加速度運動の公式 vs 微積分による導出:
    • 選定理由: 力 \(F\) が一定なら加速度 \(a\) も一定なので、公式 \(x = v_{\text{初}} t + \frac{1}{2}at^2\) を使うのが最速です。しかし、公式を忘れた場合や、力が時間や速度に依存して変化する応用問題では、微積分(\(v = \int a dt, x = \int v dt\))が唯一の解法となります。
    • 適用根拠: 全ての運動公式は、ニュートンの運動方程式を積分して導かれたものです。微積分アプローチは、その「原点」に立ち返る手法であり、適用範囲に制限がありません。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 極限的なケースでの検算(リミットチェック):
    • 答えが出たら、極端な値を代入して整合性を確かめます。
    • \(m \to 0\): 綱の質量をゼロにすると、張力 \(T\) は外力 \(F\) と等しくなるはずです(問(2)で \(T \to F\) となるか確認)。
    • \(x \to 0\): 綱の上端では、張力は外力 \(F\) そのものになるはずです(問(3)で \(T_x \to F\) となるか確認)。
    • \(x \to l\): 綱の下端では、張力はおもりPを引く力と一致するはずです。
  • 次元解析(ディメンションチェック):
    • 文字式の計算では、単位の整合性を常に意識します。
    • 例えば、時間の答えに \(\sqrt{h/g}\) が出てきたら、\(\sqrt{\text{m} / (\text{m}/\text{s}^2)} = \sqrt{\text{s}^2} = \text{s}\) となり正しいと判断できます。もし \(\sqrt{g/h}\) なら単位が合わないので間違いです。
  • 1行1等号と丁寧な展開:
    • 計算用紙の余白に殴り書きせず、解説のように「1行に等号は1つ」を守って縦に式を並べます。特に分数が重なる式(繁分数)や、ルートの中の計算では、暗算を避けて一行ずつ変形することで、ケアレスミスを劇的に減らせます。
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問題8 運動方程式 (兵庫県立大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 系全体のつりあいを用いた解法
      • 模範解答が物体ごとに式を立てて連立するのに対し、別解ではAとBを一体の系とみなし、力のモーメントのような「つりあい」の視点で一発で解きます。
    • 設問(2)の別解: 慣性力(ダランベールの原理)を用いた解法
      • 加速する物体Bと共に動く観測者の視点から、慣性力を導入して「力のつりあい」として張力を求めます。
    • 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の時間積分)
      • 等加速度運動の公式を既知とせず、運動方程式から加速度を求め、それを積分して速度と変位の関係を導出します。
    • 設問(5)の別解: 斜面方向・斜面垂直方向の分解(模範解答のメイン解法)
      • 本解説のメイン解法では計算効率の良い「水平・鉛直座標系」を採用しましたが、別解として、模範解答で採用されている「斜面方向・斜面垂直方向」に力を分解する標準的なアプローチも提示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 系全体の視点: 複数の物体が連動する場合、内力(張力)を無視して全体を見ることで、計算をショートカットできる能力を養います。
    • 座標系の選択: 「斜面だから斜面方向に分解」という固定観念を捨て、求める物理量に合わせて最適な座標軸を設定する戦略的思考を鍛えます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「斜面上の連結物体の運動と、台車上の物体の摩擦」です。
一見複雑に見えますが、物体ごとに働く力を丁寧に書き出し、適切な座標系で運動方程式を立てることで解決できます。特に後半は、「Aの上面が水平である」という形状の特徴を見落とさないことが最大の鍵となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 力のつりあい: 物体が静止、または等速度運動をしているとき、働く力の合力は \(0\) になります。
  • 運動方程式: 加速している物体では、\(ma = F\) の関係が成り立ちます。
  • 作用・反作用の法則: 2つの物体が及ぼし合う力は、大きさが等しく向きが逆です。
  • 静止摩擦力: 物体が滑り出す直前まで、外力に合わせて変化し、最大値 \(\mu N\) を持ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、等速度運動(つりあい)の状態に着目し、斜面角を求めます。
  • (2)(3)では、加速度運動する系について運動方程式を立て、張力と速度を求めます。
  • (4)では、未知の質量を含む系全体の運動方程式から質量を逆算します。
  • (5)(6)では、Aの上に乗っているCに注目し、慣性力や摩擦力を考慮して、滑らない条件を導きます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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