「名問の森」徹底解説(7〜9問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題7 (九州大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、一様な綱とおもりを鉛直上向きに一定の力で引き上げる運動を扱います。運動方程式の立式と適用が中心テーマであり、特に綱の内部の張力が場所によって異なることや、途中で物体が分離した後の運動を考える点がポイントです。

与えられた条件
  • 綱: 質量 \(m\)[kg]、長さ \(l\)[m]、一様、伸び縮みしない。
  • おもりP: 質量 \(M\)[kg]、綱の下端につるされている。
  • 外力: 綱の上端に鉛直上向きに加えられる一定の力 \(F\)[N]。
  • 条件: \(F > (M+m)g\) (つまり、全体として上昇する加速度を持つ)。
  • 重力加速度: \(g\)[m/s²]。
問われていること
  1. (1) おもりPの加速度 \(a\)。
  2. (2) おもりPに働く綱の張力 \(T\)。
  3. (3) 綱の上端から \(x\)[m] のところでの綱の張力 \(T_x\) (\(0 \le x \le l\))。
  4. (4) 初めPは地上で静止。\(F=2(M+m)g\) で引き上げ、Pが地上 \(h\)[m] の高さに達したとき綱からはずれた。Pが引き上げられ始めてから地上に落下するまでの総時間。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、ニュートンの運動の第2法則(運動方程式)を正しく理解し、適用することが基本となります。運動方程式を立てる際には、まず注目する物体を明確にし、その物体に働くすべての力を図示することが重要です。また、綱のように質量が分布している物体の場合、部分によって張力が異なることを理解する必要があります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • ニュートンの運動方程式: \(m\vec{a} = \vec{F}_{\text{合力}}\)
  • 力の図示: 物体に働く重力、張力、外力などを正確に把握する。
  • 作用・反作用の法則: 綱がおもりを引く張力と、おもりが綱を引く力は作用・反作用の関係にある。
  • 等加速度直線運動の公式: 加速度が一定の場合の速度、変位、時間の関係を記述する。
    • \(v = v_{\text{初}} + at\)
    • \(x = v_{\text{初}}t + \frac{1}{2}at^2\)
    • \(v^2 – v_{\text{初}}^2 = 2ax\)

問1

思考の道筋とポイント

おもりPの加速度を求めます。綱とPは一体となって運動するため、綱とP全体の加速度は等しく、これをおもりPの加速度と考えることができます。
綱とおもりPを一つの物体(系)とみなし、この系全体の質量と、系全体に働く外力(鉛直上向きの力 \(F\) と、系全体の重力 \((M+m)g\))について運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 綱とおもりPを一体として扱う(両者の加速度は等しい)。
  • 系全体の質量は \(M+m\)。
  • 系全体に働く外力は、上向きの力 \(F\) と下向きの重力 \((M+m)g\)。
  • 運動方程式 \((\text{質量}) \times (\text{加速度}) = (\text{合力})\) を適用する。

具体的な解説と立式

綱とおもりPを一体と考えた系の質量は \(M+m\) です。
この系に働く力は、鉛直上向きに \(F\)、鉛直下向きに重力 \((M+m)g\) です。
鉛直上向きを正とし、加速度を \(a\) とすると、この系全体の運動方程式は、
$$(M+m)a = F – (M+m)g \quad \cdots ①$$
この式から加速度 \(a\) を求めます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(m_{\text{全体}} a = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式①の両辺を \((M+m)\) で割ると、加速度 \(a\) は、
$$a = \frac{F – (M+m)g}{M+m}$$
$$a = \frac{F}{M+m} – g$$
問題文の条件 \(F > (M+m)g\) より、\(F – (M+m)g > 0\) なので、加速度 \(a\) は正となり、上向きに加速することがわかります。

計算方法の平易な説明
  1. おもりPと綱は一緒に動くので、一つの大きな物体として考えます。この大きな物体の質量は \(M+m\) です。
  2. この大きな物体には、上に引っ張る力 \(F\) と、下に働く重力 \((M+m)g\) の2つの力が働いています。
  3. 運動方程式「質量 × 加速度 = 力の合計」を使います。上向きをプラスの方向とすると、力の合計は \(F – (M+m)g\) です。
  4. なので、\((M+m)a = F – (M+m)g\) という式が成り立ちます。これを \(a\) について解けばOKです。
結論と吟味

Pの加速度 \(a\) は \(\displaystyle a = \frac{F}{M+m} – g\) です。
単位は [m/s²] となり、加速度の単位として適切です。
もし \(F = (M+m)g\) ならば \(a=0\) となり、つり合って等速直線運動(または静止)します。\(F > (M+m)g\) なので \(a>0\) となり、上向きに加速することがわかります。

解答 (1) \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\)

問2

思考の道筋とポイント

おもりPに働く綱の張力 \(T\) を求めます。今度は、おもりPのみに注目して運動方程式を立てます。
おもりPに働く力は、鉛直上向きに綱からの張力 \(T\) と、鉛直下向きに重力 \(Mg\) です。
おもりPの加速度は、(1)で求めた全体の加速度 \(a\) と同じです。

この設問における重要なポイント

  • 注目する物体はおもりPのみ。
  • Pに働く力は、張力 \(T\) (上向き) と重力 \(Mg\) (下向き)。
  • Pの加速度は \(a\) (問1の結果)。
  • 運動方程式 \(Ma = T – Mg\) を立てる。

具体的な解説と立式

おもりP(質量 \(M\))に注目します。
Pに働く力は、鉛直上向きに綱の張力 \(T\)、鉛直下向きに重力 \(Mg\)。
Pの加速度は \(a\)(鉛直上向きを正)。
Pについての運動方程式は、
$$Ma = T – Mg \quad \cdots ②$$
この式から張力 \(T\) を求めます。(1)で求めた \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\) を代入します。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式②より、\(T = Ma + Mg = M(a+g)\)。
ここに、(1)で求めた \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\) を代入します。
$$T = M \left( \left(\frac{F}{M+m} – g\right) + g \right)$$
$$T = M \left( \frac{F}{M+m} \right)$$
$$T = \frac{M}{M+m}F$$

計算方法の平易な説明
  1. 今度は、おもりPだけに注目します。
  2. Pには、上に綱が引っ張る力(張力 \(T\))と、下に地球が引っ張る力(重力 \(Mg\))が働いています。
  3. Pの加速度は(1)で求めた \(a\) です。
  4. Pについての運動方程式「質量 × 加速度 = 力の合計」は、\(Ma = T – Mg\) となります(上向きをプラス)。
  5. この式を \(T\) について解き、(1)で求めた \(a\) の式を代入すれば、\(T\) が \(F\) などで表せます。
結論と吟味

Pに働く綱の張力 \(T\) は \(\displaystyle T = \frac{M}{M+m}F\) です。
単位は [N] となり、力の単位として適切です。
この結果は、綱とおもり全体を力 \(F\) で引き上げる際に、力 \(F\) が綱とおもりの質量比で分配されておもりを実質的に引き上げていると解釈できます。もし綱の質量 \(m\) が0ならば \(T=F\) となり、軽い糸の場合の結果と一致します。

解答 (2) \(T = \displaystyle\frac{M}{M+m}F\)

問3

思考の道筋とポイント

綱の上端から \(x\) [m] のところでの綱の張力 \(T_x\) を求めます。
この点を境にして、綱を上の部分と下の部分に分けて考えます。
ここでは、綱の上端から長さ \(x\) の部分(質量 \(m_x = m \frac{x}{l}\))に注目します。
この部分に働く力は、

  • 上端に加えられる力 \(F\) (上向き)
  • この部分の重力 \(m_x g\) (下向き)
  • この部分の下端で、それより下の綱(長さ \(l-x\) の部分)から受ける張力 \(T_x\) (下向き)

この部分の加速度も全体の加速度 \(a\) と同じです。これらの力について運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 注目する物体は、綱の上端から長さ \(x\) の部分。
  • この部分の質量は \(m_x = m \frac{x}{l}\) (綱が一様なため)。
  • この部分に働く力: 外力 \(F\) (上向き)、重力 \(m_x g\) (下向き)、下側の綱からの張力 \(T_x\) (下向き)。
  • 加速度は \(a\) (問1の結果)。
  • 運動方程式を立てる。

具体的な解説と立式

綱の上端から長さ \(x\) の部分に注目します。この部分の質量 \(m_x\) は、綱が一様なので長さに比例し、
$$m_x = m \cdot \frac{x}{l}$$となります。
この部分に働く力は、

  • 鉛直上向き: 外力 \(F\)
  • 鉛直下向き: この部分の重力 \(m_x g = \left(m\frac{x}{l}\right)g\)
  • 鉛直下向き: この部分の下端で、それより下の部分の綱から受ける張力 \(T_x\)

この部分の加速度は \(a\)(鉛直上向きを正)なので、運動方程式は、
$$\left(m\frac{x}{l}\right)a = F – \left(m\frac{x}{l}\right)g – T_x \quad \cdots ③$$
この式から \(T_x\) を求めます。(1)で求めた \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\) を利用します。
あるいは、\(g+a = \displaystyle\frac{F}{M+m}\) の関係を使うと計算が少し楽になります。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(m_{\text{部分}} a = F_{\text{合力}}\)
  • 質量の比例配分
計算過程

式③を変形して \(T_x\) について解くと、
$$T_x = F – \left(m\frac{x}{l}\right)g – \left(m\frac{x}{l}\right)a$$
$$T_x = F – \left(m\frac{x}{l}\right)(g+a)$$
ここで、(1)の結果 \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\) より、\(g+a = g + \left(\frac{F}{M+m} – g\right) = \frac{F}{M+m}\)。
これを代入すると、
$$T_x = F – \left(m\frac{x}{l}\right) \left(\frac{F}{M+m}\right)$$
$$T_x = F \left(1 – \frac{mx}{l(M+m)}\right)$$

計算方法の平易な説明
  1. 綱の途中の張力を求めるには、その点で綱を切断したと仮定し、切断されたどちらかの部分に注目します。ここでは、綱の上端から長さ \(x\) の部分に注目しましょう。
  2. この長さ \(x\) の綱の質量は、全体の質量 \(m\) を使って \(m \times \frac{x}{l}\) と表せます(綱が一様なので、質量は長さに比例します)。
  3. この部分には、上に引っ張る力 \(F\)、下にこの部分自身の重力 \((m \frac{x}{l})g\)、そして下にその下の綱から引っ張られる力(これが求めたい張力 \(T_x\))が働いています。
  4. この部分も、全体と同じ加速度 \(a\) で運動しています。
  5. 運動方程式「質量 × 加速度 = 力の合計」は、\((m \frac{x}{l})a = F – (m \frac{x}{l})g – T_x\) となります(上向きをプラス)。
  6. この式を \(T_x\) について解き、(1)で求めた \(a\) の関係(具体的には \(g+a = F/(M+m)\))を使うと、\(T_x\) が \(F\) などで表せます。
結論と吟味

綱の上端から \(x\) のところでの綱の張力 \(T_x\) は \(T_x = F \left(1 – \displaystyle\frac{mx}{l(M+m)}\right)\) です。
吟味してみましょう。

  • \(x=0\) のとき(綱の上端): \(T_0 = F(1-0) = F\)。これは綱の上端を力 \(F\) で引いているので、上端のすぐ下の張力は \(F\) と考えることもできますが、厳密には上端そのものは力 \(F\) を受けている点で、その直下から張力が定義されます。もし \(x=0\) での張力を「綱の最も上にかかる張力」と解釈するならば、これは綱が下の物体を引く力ではなく、外部から加えられる力 \(F\) そのものを意味しているか、あるいは \(x \to 0\) の極限での張力と解釈できます。
  • \(x=l\) のとき(綱の下端): \(T_l = F \left(1 – \displaystyle\frac{ml}{l(M+m)}\right) = F \left(1 – \displaystyle\frac{m}{M+m}\right) = F \left(\displaystyle\frac{M+m-m}{M+m}\right) = F \displaystyle\frac{M}{M+m}\)。
    これは(2)で求めたおもりPを引く張力 \(T\) と一致します。これは物理的に妥当です。
  • もし綱の質量 \(m=0\) ならば(糸の場合): \(T_x = F(1-0) = F\)。これは「軽い糸の張力はどこでも一定」という事実に合致します。
解答 (3) \(T_x = F \left(1 – \displaystyle\frac{mx}{l(M+m)}\right)\)

問4

思考の道筋とポイント

Pが引き上げられ始めてから地上に落下するまでの総時間を求めます。運動は2つの段階に分かれます。
段階1: 綱につながれて力 \(F=2(M+m)g\) で引き上げられる運動。
段階2: 高さ \(h\) で綱からはずれた後、初速度 \(v_0\)(綱がはずれた瞬間の速度)での投げ上げ運動(その後落下)。

まず、段階1での加速度 \(a\) を求めます。(1)の式に \(F=2(M+m)g\) を代入します。
次に、この加速度 \(a\) で高さ \(h\) まで上昇するのにかかる時間 \(t_1\) と、そのときの速度 \(v_0\) を等加速度運動の公式で求めます。
その後、段階2として、初速度 \(v_0\) で投げ上げられたおもりPが地上(変位 \(-h\))に落下するまでの時間 \(t_2\) を求めます。
総時間は \(t_1 + t_2\) となります。

この設問における重要なポイント

  • 段階1: 等加速度直線運動。加速度を求め、時間と速度を計算。
  • 段階2: 投げ上げ運動(自由落下ではない!)。初速度は段階1の終わりの速度。鉛直投げ上げの公式を適用。
  • 座標系の設定に注意して変位を考える(特に段階2で地面に落ちる場合)。

具体的な解説と立式

段階1: 綱につながれて引き上げられる運動
外力 \(F=2(M+m)g\) のとき、(1)で求めた加速度 \(a = \displaystyle\frac{F}{M+m} – g\) は、
$$a = \frac{2(M+m)g}{M+m} – g = 2g – g = g \quad \cdots ④$$
この加速度 \(g\) で、初速度0から高さ \(h\) まで上昇するのにかかる時間を \(t_1\) とすると、等加速度運動の公式 \(x = v_{\text{初}}t + \frac{1}{2}at^2\) より、
$$h = 0 \cdot t_1 + \frac{1}{2}gt_1^2 \quad \cdots ⑤$$
このときの速度を \(v_0\) とすると、公式 \(v = v_{\text{初}} + at\) より、
$$v_0 = 0 + gt_1 \quad \cdots ⑥$$

段階2: 綱からはずれた後の運動
綱がはずれた瞬間(高さ \(h\)、初速度 \(v_0\) 上向き)を時刻 \(t=0\) とし、この位置を座標の原点 \(y=0\)、鉛直上向きを正とします。
この後の運動は、初速度 \(v_0\)、加速度 \(-g\) の投げ上げ運動です。
おもりPが地上に落下するとき、そのy座標は \(-h\) となります。落下するまでの時間を \(t_2\) とすると、公式 \(y = v_{\text{初}}t + \frac{1}{2}at^2\) より、
$$-h = v_0 t_2 + \frac{1}{2}(-g)t_2^2 \quad \cdots ⑦$$
この \(t_2\) についての二次方程式を解き、\(t_2 > 0\) の解を求めます。
求める総時間は \(T_{\text{総}} = t_1 + t_2\)。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式 (加速度の計算)
  • 等加速度直線運動: \(x = v_{\text{初}}t + \frac{1}{2}at^2\), \(v = v_{\text{初}} + at\)
計算過程

段階1:
式④より加速度 \(a=g\)。
式⑤から \(t_1\) を求めます。
$$h = \frac{1}{2}gt_1^2 \Rightarrow t_1^2 = \frac{2h}{g} \Rightarrow t_1 = \sqrt{\frac{2h}{g}}$$ ( \(t_1 > 0\) )
式⑥から \(v_0\) を求めます。
$$v_0 = gt_1 = g \sqrt{\frac{2h}{g}} = \sqrt{g^2 \cdot \frac{2h}{g}} = \sqrt{2gh}$$

段階2:
式⑦を整理します。
$$-h = v_0 t_2 – \frac{1}{2}gt_2^2$$
$$\frac{1}{2}gt_2^2 – v_0 t_2 – h = 0$$
$$gt_2^2 – 2v_0 t_2 – 2h = 0$$
これは \(t_2\) についての二次方程式なので、解の公式 \(t_2 = \displaystyle\frac{-B \pm \sqrt{B^2 – 4AC}}{2A}\) を用います。
\(A=g, B=-2v_0, C=-2h\)。
$$t_2 = \frac{-(-2v_0) \pm \sqrt{(-2v_0)^2 – 4(g)(-2h)}}{2g} = \frac{2v_0 \pm \sqrt{4v_0^2 + 8gh}}{2g} = \frac{v_0 \pm \sqrt{v_0^2 + 2gh}}{g}$$
\(t_2 > 0\) でなければならないので、正の符号を選びます。
$$t_2 = \frac{v_0 + \sqrt{v_0^2 + 2gh}}{g}$$
ここに \(v_0 = \sqrt{2gh}\) を代入すると、\(v_0^2 = 2gh\)。
$$t_2 = \frac{\sqrt{2gh} + \sqrt{2gh + 2gh}}{g} = \frac{\sqrt{2gh} + \sqrt{4gh}}{g} = \frac{\sqrt{2gh} + 2\sqrt{gh}}{g}$$
$$t_2 = \frac{\sqrt{g}\sqrt{2h} + 2\sqrt{g}\sqrt{h}}{g} = \frac{\sqrt{2h}}{\sqrt{g}} + \frac{2\sqrt{h}}{\sqrt{g}} = (\sqrt{2}+2)\sqrt{\frac{h}{g}}$$

総時間:
$$T_{\text{総}} = t_1 + t_2 = \sqrt{\frac{2h}{g}} + (\sqrt{2}+2)\sqrt{\frac{h}{g}}$$
$$T_{\text{総}} = \sqrt{2}\sqrt{\frac{h}{g}} + (\sqrt{2}+2)\sqrt{\frac{h}{g}} = (\sqrt{2} + \sqrt{2} + 2)\sqrt{\frac{h}{g}}$$
$$T_{\text{総}} = (2\sqrt{2} + 2)\sqrt{\frac{h}{g}} = 2(1+\sqrt{2})\sqrt{\frac{h}{g}}$$

計算方法の平易な説明
  1. 綱で引き上げられる間 (時間 \(t_1\)):
    • まず、引き上げるときの加速度を計算します。(1)の式で \(F=2(M+m)g\) とすると、加速度 \(a=g\) となります。
    • この加速度で高さ \(h\) まで上がる時間を \(t_1\)、そのときの速さを \(v_0\) とすると、公式から \(h = \frac{1}{2}gt_1^2\)、\(v_0 = gt_1\) となります。これらを解いて \(t_1\) と \(v_0\) を \(h\) と \(g\) で表します。
  2. 綱がはずれた後 (時間 \(t_2\)):
    • 綱がはずれると、おもりPは初めの速さ \(v_0\) で真上に投げ上げられたのと同じ運動をします(重力だけが働く)。
    • この投げ上げ運動で、元の高さ(綱がはずれた位置)よりも \(h\) だけ下にある地面に落ちるまでの時間 \(t_2\) を求めます。
    • 綱がはずれた位置を原点として上向きを正とすると、地面の座標は \(-h\) です。公式 \(y = v_0 t – \frac{1}{2}gt^2\) を使って、\(-h = v_0 t_2 – \frac{1}{2}gt_2^2\) という \(t_2\) についての二次方程式を立てて解きます。時間がマイナスになることはないので、プラスの解を選びます。
  3. 全部の時間:
    • 引き上げられ始めてから地面に落ちるまでの時間は、\(t_1\) と \(t_2\) を足したものになります。
結論と吟味

Pが引き上げられ始めてから地上に落下するまでの時間は \(T_{\text{総}} = \displaystyle 2(1+\sqrt{2})\sqrt{\frac{h}{g}}\) [s] です。(問題文に単位が記されているため、答えにも単位を付けます。)
各部分の時間は正の値となっており、物理的に妥当です。

解答 (4) \(2(1+\sqrt{2})\sqrt{\displaystyle\frac{h}{g}}\) [s]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動方程式 (\(ma=F\)): 力学の基本中の基本。注目物体を明確にし、その物体に働く「すべての力」の合力を正しく求め、質量と加速度の関係を記述する。
  • 系の取り扱い: 複数の物体が一体となって運動する場合、それらをまとめて一つの「系」として扱い、系全体の質量と系に働く「外力」で運動方程式を立てると、全体の加速度が効率よく求まることがある(問1)。その後、系内部の個々の物体に注目して内力(張力など)を求める(問2)。
  • 張力の性質:
    • 綱が物体を引く力。
    • 質量のある綱の場合、場所によって張力の大きさが異なることがある(問3)。綱の任意の部分について運動方程式を考えることで、その点での張力が求められる。
    • 軽い糸(質量を無視できる綱)では、張力はどこでも一定として扱えることが多い。
  • 運動の変化点の処理: 外力が変わったり、束縛条件が変わったりする点(問4で綱がはずれる点)で、運動のフェーズを区切り、各フェーズの初期条件(その瞬間の位置と速度)を正しく引き継いで考える。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • エレベーター内の物体や、連結された物体の運動(運動方程式を連立する)。
    • ロープウェイやクレーンのように、ケーブルで物体を引き上げる・吊り下げる問題。
    • 途中で条件が変わる運動(例:ロケットの噴射終了、パラシュートの展開)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 注目物体の選定: 何についての運動方程式を立てるのかを明確にする。問題に応じて、個々の物体か、複数の物体をまとめた系かを選ぶ。
    2. 力の徹底的な図示: 注目物体に働く力をすべて(重力、接触力、遠隔力)矢印で図示する。作用点と向きを正確に。
    3. 座標軸の設定: 運動の方向に合わせて座標軸を設定し、力の成分分解や加速度の向きを考える基準とする(通常は運動の向きを正とすると楽)。
    4. 運動方程式の立式: 各物体または系について、設定した座標軸の方向に運動方程式を立てる。未知数(加速度、張力など)の数だけ独立な式が必要になることが多い。
    5. 運動の段階分け: 力の状況や拘束条件が変化する場合は、変化点を境に運動を複数の段階に分け、各段階の初期条件と終状態を関連付ける。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 力の図示漏れ・向きの間違い: 特に張力や垂直抗力など、物体が他の物体から受ける力。
    • 対策: 「物体が受ける力」を常に意識し、接触しているものや繋がっているものから受ける力を系統的に洗い出す。
  • 運動方程式の右辺(合力)の符号ミス: 設定した座標軸の正の向きに対して、力の成分が正か負かを正確に判断する。
    • 対策: 座標軸の正の向きを最初に明確に図示し、各力の成分がその向きなら正、逆向きなら負として機械的に足し合わせる。
  • 綱の質量を無視するか考慮するかの判断ミス: 問題文に「質量mの綱」とあれば、その質量を考慮に入れる必要がある。
    • 対策: 「軽い糸」「質量を無視できる綱」などの記述がない限り、質量は考慮する。
  • (3)綱の途中の張力を求める際の注目物体の設定ミス: 綱の一部を考えるとき、その部分の質量や、その部分に働く力を正しく特定する。
    • 対策: 注目する部分を明確に区切り、その部分の「外から」働く力だけを考える。内部の力は考えない。
  • (4)綱がはずれた後の運動の誤解: 「自由落下」ではなく「投げ上げ運動」であること。初速度が0ではない。
    • 対策: 条件が変わる瞬間の「速度」は連続的に引き継がれることを理解する。綱がはずれた瞬間の速度が、次の運動の初速度になる。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 綱で重いものを引っ張り上げるときの、手の感触(力F)と、綱がピンと張る様子(張力)。
    • 綱自体にも重さがある場合、上の方ほど大きな張力がかかり、下の方ほど張力が小さくなること(自分の体重と、下のものの体重を支える必要があるため)。
    • エレベーターが上昇し始めるとき(加速)、体重が重く感じるような慣性力のイメージ(実際には床からの垂直抗力が増える)。この問題では慣性系で解いているが、感覚的な理解の助けにはなる。
    • (4)で綱が切れた後、上に少し上がってから落ちてくる軌跡。
  • 図示の有効性:
    • 各物体(P、綱全体、綱の一部)ごとにフリーボディダイアグラム(注目物体とそれに働く力だけを描いた図)を描くことが非常に重要。
    • 力の矢印の向きと作用点を正確に。
    • 加速度の向きも明記する。
    • (4)では、運動の各段階(綱で引かれている間、綱がはずれた後)を分けて図示し、それぞれの初速度、加速度、変位などを整理すると良い。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動方程式 (\(ma=F_{\text{合力}}\)): 物体の運動状態(加速度)と、それに働く力との関係を記述する根幹の法則。どのような運動をしているか(加速度はいくらか)、どんな力が働いているかを分析する際に必ず出発点となる。
  • 質量の比例配分 (問3の \(m_x = m \frac{x}{l}\)): 一様な物体の場合、質量はその大きさに比例するという考え方。綱の長さ \(x\) の部分の質量を求める際に使用。
  • 等加速度直線運動の公式群 (問4): 加速度が一定である運動(重力下での運動や、一定力で引かれる運動など)において、初期条件(初位置、初速度)と時間、最終的な位置や速度の関係を求めるのに用いる。どの公式を使うかは、既知の量と求めたい量によって選択する。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 加速度 \(a\):
    1. 綱とPを一体として運動方程式: \((M+m)a = F – (M+m)g\)。
    2. \(a\) について解く。
  2. (2) Pへの張力 \(T\):
    1. Pのみに注目して運動方程式: \(Ma = T – Mg\)。
    2. (1)の \(a\) を代入し、\(T\) について解く。
  3. (3) 綱の途中 \(x\) での張力 \(T_x\):
    1. 綱の上端から \(x\) の部分(質量 \(mx/l\))に注目。
    2. 運動方程式: \((mx/l)a = F – (mx/l)g – T_x\)。
    3. \(a\) の関係 (\(g+a = F/(M+m)\)) を用い、\(T_x\) について解く。
  4. (4) 総時間:
    1. 段階1(綱で引く):
      • \(F=2(M+m)g\) から加速度 \(a=g\) を求める。
      • \(h = \frac{1}{2}at_1^2\) から \(t_1\) を求める。
      • \(v_0 = at_1\) から綱がはずれる瞬間の速度 \(v_0\) を求める。
    2. 段階2(投げ上げ):
      • 初速 \(v_0\), 加速度 \(-g\), 変位 \(-h\) として、\(-h = v_0t_2 – \frac{1}{2}gt_2^2\) から \(t_2\) を求める(二次方程式の解)。
    3. 総時間 \(T_{\text{総}} = t_1 + t_2\)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の確認: 運動方程式や変位の式で、力の向き、加速度の向き、変位の向きを、設定した座標軸の正方向と照らし合わせて慎重に符号を決める。
  • 文字の整理: \(M, m, F, g, l, x, h\) など多くの文字が出てくるので、どの文字が何を表しているか常に意識する。代入の際に式を間違えないように。
  • 分数の計算: (1)や(3)で分数が絡む計算があるので、通分や約分を正確に行う。
  • 二次方程式の解の公式 (問4): 符号ミスやルートの中の計算ミスに注意。物理的に意味のある解(時間が正など)を選ぶ。
  • 単位の意識: 計算結果が物理的に正しい単位になっているかを確認する(例:時間は[s]、力は[N]など)。ただし、本問では単位が指定されているのは最終結果のみなので、途中計算は単位を省略してもよいが、意識はしておく。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感との比較:
    • (2) \(T\): 綱の質量 \(m\) が0なら \(T=F\)。\(m>0\) なら \(T<F\)。妥当か?(\(F\) の一部は綱自身の加速にも使われるため \(T<F\) は妥当)。
    • (3) \(T_x\): \(x=0\) (上端)で \(T_0=F\)。\(x=l\) (下端)で \(T_l = \frac{M}{M+m}F\) (=問2のT)。\(x\) が大きくなる(下に行く)ほど張力は小さくなる。これも直感と合う(支えるべき下の質量が減るため)。
    • (4) \(a=g\) のとき、\(t_1 = \sqrt{2h/g}\), \(v_0=\sqrt{2gh}\)。これは自由落下で \(h\) 落ちる時間と速さと同じ形。その後、初速 \(\sqrt{2gh}\) で投げ上げ。もし最高点が地面から \(H\) なら、\(t_2 = \frac{v_0}{g} + \frac{\sqrt{v_0^2+2gH}}{g}\) のような形と比較。
  • 極端な場合を考える:
    • もし綱の質量 \(m=0\) なら、(1) \(a = F/M – g\)、(2) \(T=F\)、(3) \(T_x=F\)(どこでも張力はF)。これは軽い糸の場合と一致するか?
    • もしおもりの質量 \(M=0\) なら、(1) \(a = F/m – g\)、(2) \(T=0\)、(3) \(T_x = F(1 – x/l)\)。これは綱だけを引き上げる場合。\(x=l\)で \(T_l=0\)(下端は自由端)。妥当か?

問題8 (兵庫県立大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、斜面上に置かれた物体Aと、その上に乗った物体C、そして滑車を介して吊り下げられた物体Bからなる系の運動を扱います。運動の途中でCが取り除かれることでAの運動状態が変化する点が特徴的です。運動方程式、力のつり合い、摩擦力などが関わる複合的な問題です。

与えられた条件
  • 物体A: 質量 \(M\)、滑らかな斜面上に置かれる。上面は水平。
  • 物体B: 質量 \(M/2\)、Aと糸で結ばれ滑車を通して吊り下げ。
  • 物体C: Aの上面にのせられる。
  • 初期状態: Aを手で支え、Cをのせてから静かに放すと、AはCをのせたまま加速度 \(a_1 = g/8\) で斜面に沿って滑りおりる。
  • 途中変化: Aが距離 \(l\) だけ進んだとき、CをAの上から取り去る。
  • 変化後: Aはその後一定の速度で滑りおりる。
  • 重力加速度: \(g\)。
問われていること
  1. (1) 斜面が水平面となす角 \(\theta\)。
  2. (2) 加速度運動をしているときの糸の張力 \(T_1\)。
  3. (3) 等速度運動をしているときのAの速さ \(v\)。
  4. (4) 物体Cの質量 \(m_C\)。
  5. (5) 加速度運動をしているとき、CがAに及ぼす鉛直方向の力。
  6. (6) 加速度運動中、CとAの間に滑りを起こさないための最小の静止摩擦係数 \(\mu_s\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念を段階的に適用していく必要があります。

  • ニュートンの運動方程式: \(m\vec{a} = \vec{F}_{\text{合力}}\)。各物体、あるいは複数の物体を一体とみなした系に対して適用します。
  • 力のつり合い: 物体が等速度運動をしている(または静止している)場合、その物体に働く力の合力は0です (\(\sum \vec{F} = \vec{0}\))。
  • 力の図示と成分分解: 物体に働くすべての力を正確に図示し、運動方向や斜面に平行・垂直な方向などに分解することが重要です。
  • 等加速度直線運動の公式: 加速度が一定の場合の速度、変位、時間の関係を表します。
  • 作用・反作用の法則: 物体CがAに及ぼす力と、AがCに及ぼす力は大きさが等しく向きが反対です。
  • 静止摩擦力: 滑りを防ぐ力で、その最大値は \(F_{\text{max}} = \mu_s N\) です。滑らないためには、実際に働く静止摩擦力がこの最大値以下である必要があります。

問1

思考の道筋とポイント

物体Cが取り去られた後、物体Aは一定の速度で滑りおりる、つまり等速度運動をします。等速度運動は力のつり合いの状態で起こります。
物体Aと物体Bそれぞれに働く力を図示し、力のつり合いの式を立てます。
Aについては斜面に平行な方向の力のつり合い、Bについては鉛直方向の力のつり合いを考えます。糸の張力を \(T_0\) とします。

この設問における重要なポイント

  • 等速度運動 \(\Rightarrow\) 力のつり合い。
  • 物体Aに働く力: 重力 \(Mg\)、斜面からの垂直抗力 \(N_A\)、糸の張力 \(T_0\)。
  • 物体Bに働く力: 重力 \(Mg/2\)、糸の張力 \(T_0\)。
  • Aの斜面に平行な方向と、Bの鉛直方向で力のつり合いの式を立てる。

具体的な解説と立式

Cを取り去った後の等速度運動時について考えます。
このときの糸の張力を \(T_0\) とします。
物体A(質量 \(M\))に働く力は、

  • 重力 \(Mg\)。斜面に平行下向き成分: \(Mg\sin\theta\)。
  • 斜面からの垂直抗力 \(N_A\)(斜面に垂直上向き)。
  • 糸の張力 \(T_0\)(斜面に平行上向き)。

物体Aの斜面に平行な方向の力のつり合いより、
$$Mg\sin\theta – T_0 = 0 \quad \cdots ①$$
物体B(質量 \(M/2\))に働く力は、

  • 重力 \(Mg/2\)(鉛直下向き)。
  • 糸の張力 \(T_0\)(鉛直上向き)。

物体Bの鉛直方向の力のつり合いより、
$$T_0 – \frac{M}{2}g = 0 \quad \cdots ②$$
式①と②を連立して \(\theta\) を求めます。

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \(\sum F = 0\)
  • 力の成分分解
計算過程

式②より、糸の張力 \(T_0\) は、
$$T_0 = \frac{M}{2}g$$
これを式①に代入すると、
$$Mg\sin\theta – \frac{M}{2}g = 0$$
$$Mg\sin\theta = \frac{M}{2}g$$
両辺を \(Mg\) で割ると(\(Mg \neq 0\))、
$$\sin\theta = \frac{1}{2}$$
斜面の傾斜角なので \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲で考えると、
$$\theta = 30^\circ$$

計算方法の平易な説明
  1. 物体Cを取り去った後、Aが一定の速さで動くということは、AにもBにも働く力がつり合っている状態だということです。
  2. まず物体Bに注目します。Bには下向きの重力 \(Mg/2\) と上向きの糸の張力 \(T_0\) が働いてつり合っているので、\(T_0 = Mg/2\) です。
  3. 次に物体Aに注目します。Aには斜面下向きの重力の成分 \(Mg\sin\theta\) と、斜面を上向きに引く糸の張力 \(T_0\) が働いてつり合っています(斜面に垂直な力は今は考えなくてOK)。なので、\(Mg\sin\theta = T_0\) です。
  4. 上で求めた \(T_0 = Mg/2\) をこの式に代入すると、\(Mg\sin\theta = Mg/2\) となります。ここから \(\sin\theta = 1/2\) が求まり、角度 \(\theta\) は \(30^\circ\) だとわかります。
結論と吟味

斜面が水平面となす角は \(\theta = 30^\circ\) です。
この角度のとき、物体Aの重力の斜面平行成分が \(Mg\sin30^\circ = Mg/2\) となり、これが物体Bの重力 \(Mg/2\) とつり合うため、等速度運動が可能になることがわかります。

解答 (1) \(30^\circ\)

問2

思考の道筋とポイント

AとCをのせたまま加速度運動 (\(a_1 = g/8\)) をしているときの糸の張力 \(T_1\) を求めます。
この状況では、物体Bも同じ大きさの加速度 \(g/8\) で鉛直上向きに運動しています(Aが斜面を滑りおりるので、Bは上昇する)。
物体Bに注目し、その運動方程式を立てることで張力 \(T_1\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 注目する物体はB。
  • Bの加速度は \(g/8\) で鉛直上向き。
  • Bに働く力は、重力 \(Mg/2\) (下向き) と糸の張力 \(T_1\) (上向き)。
  • 運動方程式 \(m_{\text{B}} a_1 = (\text{合力})\) を立てる。

具体的な解説と立式

加速度運動をしているときの糸の張力を \(T_1\) とします。
物体B(質量 \(M/2\))は、鉛直上向きに加速度 \(a_1 = g/8\) で運動します。
物体Bに働く力は、鉛直上向きに張力 \(T_1\)、鉛直下向きに重力 \(Mg/2\)。
鉛直上向きを正として、物体Bの運動方程式は、
$$\left(\frac{M}{2}\right) \cdot \frac{g}{8} = T_1 – \frac{M}{2}g \quad \cdots ③$$
この式から \(T_1\) を求めます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式③から \(T_1\) について解きます。
$$T_1 = \frac{M}{2} \cdot \frac{g}{8} + \frac{M}{2}g$$
$$T_1 = \frac{Mg}{16} + \frac{8Mg}{16} = \frac{9Mg}{16}$$
$$T_1 = \frac{9}{16}Mg$$

計算方法の平易な説明
  1. AとCが斜面を加速度 \(g/8\) で滑りおりているとき、Bは同じ大きさの加速度 \(g/8\) で上に引っ張り上げられています。
  2. Bに注目します。Bには、上に糸の張力 \(T_1\)、下に重力 \(Mg/2\) が働いています。
  3. Bの運動方程式「質量 × 加速度 = 力の合計」を立てます。Bの質量は \(M/2\)、加速度は \(g/8\)(上向き)です。力の合計は \(T_1 – Mg/2\)(上向きをプラスとしました)。
  4. なので、\((M/2) \times (g/8) = T_1 – Mg/2\) という式が成り立ちます。これを \(T_1\) について解けばOKです。
結論と吟味

加速度運動をしているときの糸の張力 \(T_1\) は \(\displaystyle\frac{9}{16}Mg\) です。
等速度運動のときの張力 \(T_0 = Mg/2 = 8Mg/16\) と比較すると、\(T_1 > T_0\) となっています。これは、Bが上向きに加速しているため、張力がBの重力より大きくなっていることを示しており、物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{9}{16}Mg\)

問3

思考の道筋とポイント

等速度運動をしているときのAの速さ \(v\) を求めます。この速さは、Cを取り去る直前、つまりAが距離 \(l\) だけ加速度 \(a_1 = g/8\) で滑りおりたときの速さと同じです。
初速度 \(0\)、加速度 \(a_1 = g/8\)、移動距離 \(l\) の等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_{\text{初}}^2 = 2ax\) を用いて求めます。

この設問における重要なポイント

  • Cを取り去った直後からAは等速度運動する。この速度は、Cをのせて \(l\) だけ滑り降りたときの速度に等しい。
  • Cをのせていたときの運動: 初速度 \(0\)、加速度 \(a_1 = g/8\)、距離 \(l\)。
  • 等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_{\text{初}}^2 = 2ax\) を利用する。

具体的な解説と立式

AがCをのせて距離 \(l\) だけ滑りおりたときの速さを \(v\) とします。これがCを取り去った後のAの等速度運動の速さになります。
初速度 \(v_{\text{初}} = 0\)、加速度 \(a_1 = g/8\)、移動距離 \(x = l\) として、等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_{\text{初}}^2 = 2ax\) を適用すると、
$$v^2 – 0^2 = 2 \cdot \left(\frac{g}{8}\right) \cdot l \quad \cdots ④$$
この式から \(v\) を求めます (\(v>0\))。

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動: \(v^2 – v_{\text{初}}^2 = 2ax\)
計算過程

式④より、
$$v^2 = 2 \cdot \frac{g}{8} \cdot l = \frac{gl}{4}$$
\(v > 0\) なので、
$$v = \sqrt{\frac{gl}{4}} = \frac{\sqrt{gl}}{2}$$

計算方法の平易な説明
  1. Cを乗せたAは、最初止まっていた状態から、加速度 \(g/8\) で距離 \(l\) だけ滑り降ります。
  2. この \(l\) だけ滑り降りた瞬間の速さが、Cを取り去った後のAの速さになります(その後はこの速さでずっと滑る)。
  3. 初めの速さが0で、加速度 \(g/8\) で距離 \(l\) だけ進んだときの終わりの速さ \(v\) は、公式 \(v^2 – (\text{初めの速さ})^2 = 2 \times (\text{加速度}) \times (\text{距離})\) を使って求められます。
  4. つまり、\(v^2 – 0^2 = 2 \times (g/8) \times l\) という式を \(v\) について解けばOKです。
結論と吟味

等速度運動をしているときのAの速さ \(v\) は \(\displaystyle\frac{\sqrt{gl}}{2}\) です。
単位も [m/s] となり速度の単位として適切です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{\sqrt{gl}}{2}\)

問4

思考の道筋とポイント

物体Cの質量を \(m_C\) とします。
AとCをのせたまま加速度 \(a_1 = g/8\) で運動している状況を考えます。AとCを一体(質量 \(M+m_C\))とみなし、この一体の物体について斜面に平行な方向の運動方程式を立てます。
この一体の物体に働く力は、重力の斜面平行成分 \((M+m_C)g\sin\theta\) (斜面下向き)、糸の張力 \(T_1\) (斜面上向き)です。
(1)で求めた \(\theta=30^\circ\) と、(2)で求めた張力 \(T_1 = \frac{9}{16}Mg\) を用います。

この設問における重要なポイント

  • AとCを一体として扱う。全体の質量は \(M+m_C\)。
  • 一体の物体の加速度は \(a_1 = g/8\) (斜面下向き)。
  • 一体の物体に働く力: 重力の斜面成分 \((M+m_C)g\sin\theta\)、糸の張力 \(T_1\)。
  • 斜面下向きを正として運動方程式を立てる。

具体的な解説と立式

物体AとCを一体とみなした系の質量は \(M+m_C\)。
この系は斜面に沿って下向きに加速度 \(a_1 = g/8\) で運動します。
この系に働く斜面に平行な力は、

  • 重力の斜面平行成分: \((M+m_C)g\sin\theta\) (斜面下向き)
  • 糸の張力: \(T_1\) (斜面下向きの運動とは逆向き、つまり斜面上向き)

斜面下向きを正として、この系の運動方程式は、
$$(M+m_C) \cdot \frac{g}{8} = (M+m_C)g\sin\theta – T_1 \quad \cdots ⑤$$
(1)より \(\sin\theta = \sin30^\circ = 1/2\)。(2)より \(T_1 = \displaystyle\frac{9}{16}Mg\)。これらの値を代入して \(m_C\) を求めます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(m_{\text{全体}} a = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式⑤に \(\sin\theta = 1/2\) と \(T_1 = \displaystyle\frac{9}{16}Mg\) を代入します。
$$(M+m_C) \frac{g}{8} = (M+m_C)g \cdot \frac{1}{2} – \frac{9}{16}Mg$$
両辺の \(g\) を消去します(\(g \neq 0\))。
$$\frac{M+m_C}{8} = \frac{M+m_C}{2} – \frac{9}{16}M$$
両辺に16を掛けて分母を払います。
$$2(M+m_C) = 8(M+m_C) – 9M$$
$$2M + 2m_C = 8M + 8m_C – 9M$$
$$2M + 2m_C = -M + 8m_C$$
未知数 \(m_C\) を含む項を左辺に、それ以外を右辺に集めます。
$$2m_C – 8m_C = -M – 2M$$
$$-6m_C = -3M$$
$$m_C = \frac{-3M}{-6} = \frac{1}{2}M$$

計算方法の平易な説明
  1. AとCが一緒に斜面を加速度 \(g/8\) で滑りおりているときを考えます。AとCをひとまとめの物体と見ます。このひとまとめの物体の質量は \(M+m_C\) です(\(m_C\) はCの質量)。
  2. このひとまとめの物体には、斜面下向きに重力の成分 \((M+m_C)g\sin\theta\) が働き、斜面を上向きに糸の張力 \(T_1\) が働いています。
  3. 運動方程式「質量 × 加速度 = 力の合計」を立てます。斜面下向きをプラスとすると、\((M+m_C) \times (g/8) = (M+m_C)g\sin\theta – T_1\) となります。
  4. (1)で \(\sin\theta = 1/2\)、(2)で \(T_1 = \frac{9}{16}Mg\) とわかっているので、これらを代入して \(m_C\) について解けばOKです。
結論と吟味

物体Cの質量 \(m_C\) は \(\displaystyle\frac{1}{2}M\) です。
つまり、物体Bの質量と同じであることがわかります。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{1}{2}M\)

問5

思考の道筋とポイント

加速度運動をしているとき、CがAに及ぼす鉛直方向の力を求めます。
まず、CがAから受ける力を考えます。Aの上面は水平なので、CがAから受ける垂直抗力 \(N_C\) は鉛直上向きに働きます。また、CがA上で滑らないためには、AからCに対して静止摩擦力 \(F_C\) が働く可能性があります。
ここでは、Cに注目し、Cの運動方程式を鉛直方向と水平方向に分けて立てるのが見通しが良いでしょう(模範解答の別解の方法)。Cの加速度は、Aと同じく斜面下向きに \(g/8\) です。この加速度を水平成分と鉛直成分に分解します。
CがAに及ぼす鉛直方向の力は、CがAから受ける垂直抗力 \(N_C\) の反作用の力です。\(N_C\) の大きさを求めれば、それが答えの大きさになります。

この設問における重要なポイント

  • 注目する物体はC。Cの質量は \(m_C = M/2\)。
  • Cの加速度 \(a_1 = g/8\) (斜面下向き)。これを水平・鉛直成分に分解する。
  • Cに働く力: 重力 \(m_Cg\) (鉛直下向き)、Aからの垂直抗力 \(N_C\) (鉛直上向き)、Aからの静止摩擦力 \(F_C\) (水平方向)。
  • 水平方向と鉛直方向でそれぞれ運動方程式を立てる。
  • CがAに及ぼす鉛直方向の力は、AがCに及ぼす垂直抗力 \(N_C\) の反作用。

具体的な解説と立式

物体C(質量 \(m_C = M/2\))に注目します。
Cの加速度 \(a_1 = g/8\) は斜面下向きです。斜面の角度は \(\theta=30^\circ\)。
この加速度 \(a_1\) を水平成分と鉛直成分に分解します。

  • 水平成分 \(a_{1x}\): \(a_1 \cos\theta = \frac{g}{8}\cos30^\circ = \frac{g}{8} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{16}g\) (斜面下向きの水平方向、図の左向き)
  • 鉛直成分 \(a_{1y}\): \(a_1 \sin\theta = \frac{g}{8}\sin30^\circ = \frac{g}{8} \cdot \frac{1}{2} = \frac{g}{16}\) (鉛直下向き)

Cに働く力は、

  • 重力 \(m_C g = \frac{M}{2}g\) (鉛直下向き)
  • Aからの垂直抗力 \(N_C\) (鉛直上向き)
  • Aからの静止摩擦力 \(F_C\) (水平方向、加速度の水平成分と同じ向き、つまり図の左向き)

水平方向(図の左向きを正)の運動方程式:
$$m_C a_{1x} = F_C$$
$$\frac{M}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{16}g = F_C \quad \cdots ⑥$$
鉛直方向(鉛直下向きを正)の運動方程式:
$$m_C a_{1y} = m_C g – N_C$$
$$\frac{M}{2} \cdot \frac{g}{16} = \frac{M}{2}g – N_C \quad \cdots ⑦$$
この式⑦から \(N_C\) を求めます。これがCがAから受ける鉛直上向きの力です。
CがAに及ぼす鉛直方向の力は、この \(N_C\) の反作用なので、大きさは等しく向きは鉛直下向きです。設問は「力はいくらか」なので、大きさを答えます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\) (水平・鉛直成分)
  • 加速度の成分分解
  • 作用・反作用の法則
計算過程

式⑦から \(N_C\) を求めます。
$$N_C = \frac{M}{2}g – \frac{M}{2} \cdot \frac{g}{16}$$
$$N_C = \frac{M}{2}g \left(1 – \frac{1}{16}\right) = \frac{M}{2}g \cdot \frac{15}{16} = \frac{15}{32}Mg$$
CがAに及ぼす鉛直方向の力は、AがCに及ぼす垂直抗力 \(N_C\) の反作用であり、その大きさは \(N_C\) に等しい。

計算方法の平易な説明
  1. CがAの水平な上面に乗っているので、AからCに働く垂直抗力は真上を向いています。この大きさを \(N_C\) とします。
  2. CはAと一緒に斜面を加速度 \(g/8\) で滑り降ります。この加速度を水平方向と鉛直方向に分解します。
    • 水平方向の加速度の大きさは \((g/8)\cos30^\circ\)。
    • 鉛直方向の加速度の大きさは \((g/8)\sin30^\circ\) (下向き)。
  3. Cについて、鉛直方向の運動方程式を立てます。Cの質量は \(m_C = M/2\)。Cに働く鉛直方向の力は、下向きの重力 \(m_Cg\) と上向きの垂直抗力 \(N_C\)。鉛直下向きをプラスとすると、運動方程式は \(m_C \times (\text{鉛直加速度}) = m_Cg – N_C\) となります。
  4. この式に値を代入して \(N_C\) を求めます。これがAからCに働く鉛直上向きの力です。
  5. CがAに及ぼす鉛直方向の力は、この \(N_C\) の反作用なので、大きさは同じで向きが下向きです。問われているのは力の大きさなので、\(N_C\) の値を答えます。
結論と吟味

加速度運動をしているときCがAに及ぼす鉛直方向の力(の大きさ)は \(\displaystyle\frac{15}{32}Mg\) です。
これは、C自身の重力 \(m_Cg = (M/2)g = 16Mg/32\) よりも小さい値 (\(15Mg/32 < 16Mg/32\)) です。これは、Cが鉛直下向きにも加速している (\(a_{1y} = g/16\)) ため、見かけの重さが軽くなっている(垂直抗力が重力より小さくなる)ことに対応し、物理的に妥当です。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{15}{32}Mg\)

問6

思考の道筋とポイント

加速度運動中、CとAの間に滑りを起こさないためには、Cに働く静止摩擦力 \(F_C\) が最大静止摩擦力 \(\mu_s N_C\) 以下である必要があります。
(5)でCの運動方程式を立てる際に、水平方向の静止摩擦力 \(F_C\) と鉛直方向の垂直抗力 \(N_C\) が登場しました。これらの値を使って、\(\mu_s\) の条件を導きます。

この設問における重要なポイント

  • 滑らない条件: 静止摩擦力 \(F_C \le\) 最大静止摩擦力 \(\mu_s N_C\)。
  • \(F_C\) はCの水平方向の運動方程式から求める。
  • \(N_C\) はCの鉛直方向の運動方程式から求める (問5で計算済み)。

具体的な解説と立式

(5)のCの水平方向(図の左向きを正)の運動方程式は、
$$F_C = m_C a_{1x} = \frac{M}{2} \cdot \left(\frac{g}{8}\cos30^\circ\right) \quad \cdots ⑫$$
また、CがAから受ける垂直抗力 \(N_C\) は(5)で、
$$N_C = \frac{15}{32}Mg \quad \cdots ⑬$$
と求められました。
CがA上で滑らないための条件は、静止摩擦力 \(F_C\) が最大静止摩擦力 \(\mu_s N_C\) 以下であることなので、
$$F_C \le \mu_s N_C$$
したがって、求める静止摩擦係数 \(\mu_s\) は、
$$\mu_s \ge \frac{F_C}{N_C} \quad \cdots ⑭$$
この式に⑫と⑬の値を代入して \(\mu_s\) の最小値を求めます。

使用した物理公式

  • 滑らない条件: \(f \le \mu_s N\)
  • ニュートンの運動方程式(問5の結果利用)
計算過程

まず、静止摩擦力 \(F_C\) の値を計算します。式⑫より、
$$F_C = \frac{M}{2} \cdot \frac{g}{8} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{32}Mg$$
次に、式⑭に \(F_C\) と \(N_C = \frac{15}{32}Mg\) (式⑬) を代入します。
$$\mu_s \ge \frac{\frac{\sqrt{3}}{32}Mg}{\frac{15}{32}Mg}$$
\(Mg\) と分母の32が約分されて、
$$\mu_s \ge \frac{\sqrt{3}}{15}$$
したがって、静止摩擦係数は \(\frac{\sqrt{3}}{15}\) 以上でなければなりません。

計算方法の平易な説明
  1. CがAの上で滑らないためには、AからCに働く静止摩擦力が、滑り出す限界の力(最大静止摩擦力)を超えなければOKです。
  2. 最大静止摩擦力は「静止摩擦係数 \(\mu_s\) × 垂直抗力 \(N_C\)」で表されます。つまり、実際に働いている静止摩擦力 \(F_C\) が \(\mu_s N_C\) 以下なら滑りません。これを変形すると \(\mu_s \ge F_C / N_C\) となります。
  3. (5)で、\(N_C = \frac{15}{32}Mg\) と求めました。
  4. また、(5)の途中でCの水平方向の運動方程式から、\(F_C = m_C a_{1x} = \frac{M}{2} \cdot \frac{g}{8}\cos30^\circ = \frac{\sqrt{3}}{32}Mg\) と計算できます。
  5. これらの \(F_C\) と \(N_C\) の値を \(\mu_s \ge F_C / N_C\) に代入して、\(\mu_s\) の最小値を求めます。
結論と吟味

CとAの間に滑りを起こさないためには、静止摩擦係数は \(\mu_s \ge \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{15}\) でなければなりません。
\(\sqrt{3} \approx 1.732\) なので、\(\mu_s \ge 1.732/15 \approx 0.115\) 程度の値です。これは一般的な静止摩擦係数の値として妥当な範囲にありそうです。

解答 (6) \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{15}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動方程式の適用対象の切り替え: 問題の状況に応じて、個々の物体(A, B, C)に注目したり、複数の物体を一体とみなした「系」(A+C)に注目したりして運動方程式を立てる柔軟性が求められます。
  • 力のつり合いと運動方程式の使い分け: 等速度運動や静止の場合は力のつり合い (\(\sum \vec{F} = \vec{0}\))、加速度運動の場合は運動方程式 (\(m\vec{a} = \sum \vec{F}\)) を適用します。本問題では、Cを取り去った後のAの運動(等速度)と、それ以前のA+Cの運動(加速度)で明確に区別されています。
  • 内力と外力の区別: 系全体で運動方程式を立てる際は外力のみを考慮し、個々の物体で立てる際はその物体に直接働く力(内力も含む)を考慮します。糸の張力や接触面での力(垂直抗力、摩擦力)は、注目物体によって内力になったり外力の一部になったりします。
  • 作用・反作用の法則: CがAに及ぼす力と、AがCに及ぼす力は作用・反作用の関係にあります。問(5)でこの理解が重要です。
  • 静止摩擦力の限界条件: 物体が滑り出さないためには、働く静止摩擦力が最大静止摩擦力 (\(\mu_s N\)) を超えないことが条件となります。滑り出す直前には等号が成り立ちます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 複数の物体が糸や滑車、ばねで連結され、斜面や水平面上で運動する問題。
    • 運動の途中で物体の質量が変化したり、一部が分離したりする問題。
    • 物体間の摩擦により、一体となって運動するか、相対的に滑るかの条件を問う問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 運動のフェーズ(段階)の特定: 問題文を読み解き、運動の状態が変化するポイント(例:Cの取り外し)を見つけて、各フェーズでどのような法則が適用できるかを考える。
    2. 各物体(または系)への力の図示: 関係するすべての物体について、働く力を正確に図示する。特に接触力(張力、垂直抗力、摩擦力)の向きと作用点に注意。
    3. 座標軸の設定と力の分解: 運動の方向や斜面の向きに合わせて座標軸を設定し、力を成分分解する。
    4. 適切な法則の選択: 各フェーズ、各物体に対して、力のつり合いを適用すべきか、運動方程式を適用すべきかを判断する。
    5. 未知数の設定と方程式の数: 求めるべき未知数(加速度、張力、質量など)を文字で置き、それらを解くのに十分な数だけ独立な方程式を立てる。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 張力の扱い: 糸の張力は、糸につながれた物体を引く力として両端に同じ大きさで働く(軽い糸の場合)。複数の物体が繋がっている場合、各部分の張力が同じとは限らない(途中に滑車や別の物体が介在する場合など)。
    • 対策: 各物体ごとに運動方程式を立てる際に、その物体が受ける張力を正しく考慮する。
  • 運動方程式の右辺(合力)の符号: 設定した座標軸の正の向きに対して、各力の成分が正か負かを間違えると、結果が大きく変わる。
    • 対策: 図に座標軸の正の向きを明記し、力のベクトルを成分分解した際に、各成分の向きを常に確認する。
  • 作用・反作用の混同: AがBに及ぼす力と、BがAに及ぼす力は作用・反作用の関係にあるが、一つの物体に働く力のつり合いや運動方程式を考える際には、その物体が「受ける」力のみを考慮する。
    • 対策: 常に「注目物体が何からどんな力を受けているか」という視点で力をリストアップする。
  • 静止摩擦力の向きと大きさ: 静止摩擦力は滑りを妨げる向きに働き、その大きさは \(0\) から最大静止摩擦力 \(\mu_s N\) までの間の値をとる。常に \(\mu_s N\) が働いているわけではない。
    • 対策: 滑り出す「直前」という条件がある場合にのみ \(f = \mu_s N\) となる。それ以外の場合は、他の力とのつり合いや運動方程式から \(f\) を求める。向きも状況に応じて判断する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • AとCが一体となって滑り降りる様子、Bが引き上げられる様子。
    • Cが取り去られた瞬間、Aにかかる力が変化し、加速度も変わって等速度運動になるという変化を捉える。
    • CがAの上で滑らないためには、Aの加速度運動にCが「ついていく」ための力(摩擦力)が必要であることを理解する。
  • 図示の有効性:
    • 各物体ごとにフリーボディダイアグラムを描き、力の種類、向き、作用点を明確にする。
    • 加速度の向きを矢印で示し、それと力の合力の向きが一致することを確認する。
    • 斜面上の問題では、力を斜面に平行な成分と垂直な成分に分解した図を描くのが非常に有効。
    • (5)のように、加速度自体を水平・鉛直に分解して考えるアプローチもあることを知っておくと、問題によって見通しが良くなる場合がある。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動方程式 (\(ma=F_{\text{合力}}\)): 物体の運動(加速度)と力の関係を結びつける基本法則。力が働いて運動状態が変化する場合には常にこれを考える。
  • 力のつり合い (\(\sum F = 0\)): 物体が静止しているか、等速度直線運動をしている場合に適用。運動方程式で \(a=0\) とした場合に相当。
  • 等加速度直線運動の公式: 運動方程式を解いて加速度が一定と分かった場合に、速度や位置を時間や距離の関数として具体的に求めるために用いる。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 斜面の角度 \(\theta\): C除去後のA,Bの力のつり合いから。
    1. Bのつり合い \(\Rightarrow T_0 = (M/2)g\)。
    2. Aの斜面方向つり合い \(\Rightarrow Mg\sin\theta = T_0\)。
    3. 連立して \(\sin\theta\) を求め、\(\theta\) を得る。
  2. (2) 加速度運動時の張力 \(T_1\): Bの運動方程式から。
    1. Bの運動方程式: \((M/2)(g/8) = T_1 – (M/2)g\)。
    2. \(T_1\) について解く。
  3. (3) 等速度運動時の速さ \(v\): A+Cが \(l\) 進んだときの速度。
    1. A+Cの運動: 初速0, 加速度 \(g/8\), 距離 \(l\)。
    2. \(v^2 – 0^2 = 2(g/8)l\) から \(v\) を求める。
  4. (4) Cの質量 \(m_C\): A+Cを一体とした運動方程式から。
    1. A+Cの運動方程式(斜面下向き正): \((M+m_C)(g/8) = (M+m_C)g\sin\theta – T_1\)。
    2. \(\theta\) と \(T_1\) の値を代入し、\(m_C\) について解く。
  5. (5) CがAに及ぼす鉛直方向の力: Cの運動方程式からAがCに及ぼす垂直抗力 \(N_C\) を求め、その反作用。
    1. Cの加速度を水平・鉛直分解。
    2. Cの鉛直方向の運動方程式: \(m_C a_{1y} = m_Cg – N_C\)。
    3. \(N_C\) を求め、その大きさが答え。
  6. (6) 静止摩擦係数 \(\mu_s\): Cが滑らない条件 \(F_C \le \mu_s N_C\)。
    1. Cの水平方向の運動方程式: \(m_C a_{1x} = F_C\)。\(F_C\) を求める。
    2. \(\mu_s \ge F_C/N_C\) から \(\mu_s\) の最小値を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 立式の正確性: 運動方程式や力のつり合いの式を立てる際、力の向き(符号)や成分分解を間違えないように、図をよく見て慎重に。
  • 代入ミス: 前の設問で求めた値を代入する際に、数値を写し間違えたり、単位を混同したりしないように注意。
  • 文字計算の整理: \(M, g, l, \theta\) など多くの文字が出てくるので、式変形の過程で項を整理し、共通因数でくくるなどして見通しを良くする。
  • 分数の計算: 特に(2), (4)などで分数が絡むので、通分や約分を正確に。
  • 二次方程式の解 (問4の(4)の \(t_2\) のように、もしあれば): 解の公式の適用ミスや、物理的に意味のある解の選択(例:時間は正)を誤らない。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感との整合性:
    • (1) \(\theta=30^\circ\)。もしBがもっと重ければ \(\theta\) は大きくなるはず、など。
    • (2) \(T_1 = 9Mg/16\)。これはBの重力 \(Mg/2 = 8Mg/16\) より大きく、つり合い時の張力 \(T_0=Mg/2\) よりも大きい。Bが上に加速するので妥当。
    • (4) \(m_C = M/2\)。CがAやBと比較して極端に重かったり軽かったりしないか。
    • (5) \(N_C = 15Mg/32\)。これはCの重力 \(m_Cg = (M/2)g = 16Mg/32\) より小さい。Cが鉛直下向きに加速しているので、垂直抗力は重力より小さくなる。妥当。
  • 極端な条件での考察:
    • もし斜面が水平 (\(\theta=0\)) や鉛直 (\(\theta=90^\circ\)) だったら?(ただし、問題設定が成り立つ範囲で)
    • もし加速度が0(つり合い)だったら、各力はどうなるか?

問題9 (信州大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、ゴンドラと体重計に人が乗り、綱を引いて空中でつり合ったり、加速運動したりする状況を扱います。運動方程式、力のつり合い、作用・反作用の法則、そして体重計の読み(垂直抗力)の解釈がポイントとなります。

与えられた条件
  • 人の質量: \(m_H = 60\,\text{kg}\)
  • ゴンドラGの質量: \(m_G = 20\,\text{kg}\)
  • 体重計Hの質量: \(m_S = 10\,\text{kg}\) (体重計Hと書かれているが、文脈上、ゴンドラとは別の体重計自体の質量と解釈)
  • 重力加速度: \(g \,[\text{m/s}^2]\)
  • 綱の質量は無視できる。
  • 初期状態(問1,2): 空中でつり合いの状態。
  • 運動状態(問3): ある時間、体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) で一定の力を加えながら運動。
問われていること
  1. (1) 人に作用する力を図中に描き込め。
  2. (2) つり合い時の綱(鉛直部分)の張力 \(T\) と体重計の読み(質量換算)。
  3. (3) 体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) のときのゴンドラの加速度 \(a\)(鉛直上向きを正とする)。
  4. Q1: 人が静止しているとき、綱の張力を簡単に求めるための注目物体のとり方。
  5. Q2: 人が動き、体重計の読みが0となるときの加速度。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くには、ニュートンの運動法則が基本となります。特に、物体に働く力を正確に図示し、それぞれの物体(または物体群を一つの系とみなしたもの)に対して運動方程式または力のつり合いの式を立てることが重要です。体重計の「読み」が垂直抗力の大きさを反映していることも理解しておく必要があります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • ニュートンの運動方程式: \(m\vec{a} = \vec{F}_{\text{合力}}\)
  • 力のつり合い: 物体が静止または等速直線運動している場合、合力は0 (\(\sum \vec{F} = \vec{0}\))。
  • 作用・反作用の法則: 二つの物体が互いに力を及ぼし合うとき、それらの力は大きさが等しく、向きが反対で、同一直線上にある。
  • 力の図示(フリーボディダイアグラム): 注目する物体に働くすべての力をベクトルとして図示する。
  • 体重計の読み: 体重計が測定しているのは、体重計が物体を押す垂直抗力の大きさ(または物体が体重計を押す力の大きさ)であり、これを質量に換算して表示する。

問1

思考の道筋とポイント

この人に作用する力を図示します。人は地球から重力を受け、体重計の上面と接しているので垂直抗力を受け、綱を引いているので綱から張力を受けます。それぞれの力の向きと作用点を考えます。

この設問における重要なポイント

  • 人に働く力は、重力、垂直抗力、張力の3つ。
  • 重力は鉛直下向き。
  • 垂直抗力は体重計から上向き。
  • 張力は人が綱を引く力の反作用として、綱から上向きに受ける。

具体的な解説と立式

人に作用する力は以下の通りです。

  1. 重力: 地球から鉛直下向きに働く。大きさは人の質量を \(m_H = 60\,\text{kg}\) とすると \(m_H g = 60g\)。作用点は人の重心。
  2. 垂直抗力: 体重計Hの上面から鉛直上向きに働く。大きさを \(N\) とする。作用点は足の裏と体重計の接触面。
  3. 綱の張力: 人が綱を引く力の反作用として、綱から鉛直上向きに働く。大きさを \(T\) とする。作用点は綱を握る手。

(模範解答の図a を参照し、人に働く重力 \(60g\) (下向き)、垂直抗力 \(N\) (上向き)、張力 \(T\) (上向き) の3つの力を描き込む。)

使用した物理公式

  • 特になし(力の種類と向きの理解)
計算過程

作図問題なので、計算過程は特になし。

計算方法の平易な説明

人に働いている力を考えます。

  1. まず、地球が人を下に引っぱる「重力」があります。
  2. 人は体重計に乗っているので、体重計の表面が人を上に押す「垂直抗力」があります。これが体重計の読みに関係します。
  3. 人は綱を下に引っぱっています。その反作用で、綱が人を上に引っぱる「張力」があります。

これらの力を矢印で人に描き込みます。重力は下向き、垂直抗力と張力は上向きです。

結論と吟味

人に働く力は、鉛直下向きの重力 \(60g\)、鉛直上向きの垂直抗力 \(N\)、鉛直上向きの張力 \(T\) の3力です。これらがつり合っているか、あるいは運動しているかは次の設問で考えます。設問(1)はこれらの力を図示することが求められています。

解答 (1) (模範解答の図a のように、人に重力(下向き)、垂直抗力(上向き)、張力(上向き)を描き込む)

問2

思考の道筋とポイント

つり合いの状態にあるときの綱の張力 \(T\) と体重計の読みを求めます。
張力 \(T\):
Q1の解説 にあるように、「人、ゴンドラG、体重計H」全体を一つの系(質量 \(M_{total} = 60+20+10 = 90\,\text{kg}\))として考えます。この系全体は、人が引いている綱と、それが滑車を介してゴンドラを支える部分の、実質的に2本の鉛直な綱によって上向きに支えられていると解釈できます(自己引き上げ型の装置)。それぞれの綱の張力が \(T\) なので、全体にかかる上向きの力は \(2T\) です。この \(2T\) が全体の重力 \(M_{total}g\) とつり合います。

体重計の読み:
体重計の読みは、人が体重計から受ける垂直抗力 \(N\) の大きさを質量に換算したものです。人に働く力のつり合いを考えます。人に働く力は、重力 \(60g\) (下向き)、張力 \(T\) (上向き)、垂直抗力 \(N\) (上向き)です。

この設問における重要なポイント

  • 全体(人+G+H)の力のつり合いから張力 \(T\) を求める。全体を支えるのは実質2本の綱と考える。
  • 人に働く力のつり合いから垂直抗力 \(N\) を求める。
  • 体重計の読みは \(N/g\)。

具体的な解説と立式

綱の張力 \(T\):
人、ゴンドラG、体重計Hを一体とみなした系の総質量は、
\(M_{\text{総}} = 60\,\text{kg} + 20\,\text{kg} + 10\,\text{kg} = 90\,\text{kg}\)。
この系全体に働く重力は \(M_{\text{総}}g = 90g\) (鉛直下向き)。
この系は、人が引く綱の張力 \(T\) と、滑車を介してゴンドラを支える綱の張力 \(T\) の合計 \(2T\) の力で鉛直上向きに支えられてつり合っていると考えます(Q1の考え方)。
よって、系全体の力のつり合いの式は、
$$2T – M_{\text{総}}g = 0$$
$$2T – 90g = 0 \quad \cdots ①$$

体重計の読み(垂直抗力 \(N\)):
人に働く力は、鉛直下向きに重力 \(60g\)、鉛直上向きに綱の張力 \(T\)、鉛直上向きに体重計からの垂直抗力 \(N\)。
力のつり合いより、
$$N + T – 60g = 0 \quad \cdots ②$$
体重計の読みは \(N/g\) で与えられます。

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \(\sum F_y = 0\)
計算過程

綱の張力 \(T\):
式①から \(T\) を求めます。
$$2T = 90g$$
$$T = 45g \,[\text{N}]$$

体重計の読み:
求めた \(T=45g\) を式②に代入して \(N\) を求めます。
$$N + 45g – 60g = 0$$
$$N = 60g – 45g = 15g \,[\text{N}]$$
体重計の読み(質量表示)は、\(N\) を \(g\) で割ったものなので、
読み \( = \displaystyle\frac{N}{g} = \frac{15g}{g} = 15 \,[\text{kg}]\)

計算方法の平易な説明
  1. 綱の張力 \(T\):
    • 人、ゴンドラ、体重計を全部まとめて一つの大きな物体と考えます。全体の重さは \((60+20+10)g = 90g\) です。
    • この大きな物体は、人が引いている綱と、滑車を通ってゴンドラを吊っている綱の、合わせて2本の綱で上に支えられています(1本のロープを人が引くことで、自分とゴンドラ全体が持ち上がるイメージ)。それぞれの綱の張りの強さが \(T\) なので、全部で \(2T\) の力で上に引っ張られています。
    • つり合っているので、\(2T = 90g\) です。これを解くと \(T = 45g\) [N] となります。
  2. 体重計の読み:
    • 次に、人だけに注目します。人には下に重力 \(60g\)、上に綱からの張力 \(T=45g\)、そして上に体重計からの垂直抗力 \(N\) が働いています。
    • 力がつり合っているので、\(N + T = 60g\) です。\(T=45g\) を代入すると \(N + 45g = 60g\)、つまり \(N = 15g\) [N] です。
    • 体重計は、この垂直抗力 \(N\) を重力加速度 \(g\) で割った値を「体重(kg)」として表示します。なので、読みは \(15g/g = 15\) kg です。
結論と吟味

綱の張力は \(45g \,[\text{N}]\)、体重計の読みは \(15\,\text{kg}\) です。
体重計の読みが実際の体重 \(60\,\text{kg}\) より軽くなっているのは、綱を引くことで自分自身を部分的に持ち上げているため、体重計にかかる力が減っているからです。

解答 (2) 綱の張力: \(45g \,[\text{N}]\), 体重計の読み: \(15\,\text{kg}\)

問3

思考の道筋とポイント

体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) であったときのゴンドラの加速度 \(a\) を求めます。鉛直上向きを正とします。
体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) ということは、人が体重計から受ける垂直抗力 \(N’\) が \(16.5g \,[\text{N}]\) であることを意味します。
この状態で、人に働く力と、「ゴンドラG + 体重計H」に働く力について、それぞれ運動方程式を立てます。綱の張力を \(T’\) とします。この \(T’\) は、人が綱を引く力であり、また、滑車を介してゴンドラ+体重計の系を(実質的に)持ち上げる力でもあります。(ここでもQ1と同様に、系全体が2本の張力で支えられていると考えると、人にかかる張力とゴンドラ+体重計にかかる張力は同じ \(T’\) となります。)

この設問における重要なポイント

  • 体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) \(\Rightarrow\) 垂直抗力 \(N’ = 16.5g\)。
  • 人に働く力と運動方程式を立てる。
  • 「ゴンドラG + 体重計H」に働く力と運動方程式を立てる。
  • 2つの運動方程式を連立して加速度 \(a\) を求める。

具体的な解説と立式

体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) なので、人が体重計から受ける垂直抗力の大きさ \(N’\) は、
$$N’ = 16.5g \,[\text{N}]$$
このときの綱の張力を \(T’\) とし、ゴンドラ(および人)の加速度を \(a\)(鉛直上向きを正)とします。

人に働く力(質量 \(60\,\text{kg}\)):

  • 鉛直上向き: 垂直抗力 \(N’\), 張力 \(T’\)
  • 鉛直下向き: 重力 \(60g\)

人の運動方程式:
$$60a = N’ + T’ – 60g \quad \cdots ③$$

「ゴンドラG + 体重計H」を一体とみなした系(質量 \(20+10=30\,\text{kg}\))に働く力:

  • 鉛直上向き: 綱からの張力 \(T’\) (人が引く綱の張力が滑車を介してこの系に作用する。Q1の考え方から、ここでもう一方の綱が張力 \(T’\) で系を支えると考える)
  • 鉛直下向き: この系の重力 \(30g\)
  • 鉛直下向き: 人が体重計を押す力の反作用(人が体重計から受ける垂直抗力 \(N’\) の反作用)\(N’\)

「ゴンドラG + 体重計H」の運動方程式:
$$30a = T’ – N’ – 30g \quad \cdots ④$$
式③と④を連立させて \(a\) を求めます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
  • 作用・反作用の法則
計算過程

式③に \(N’=16.5g\) を代入:
$$60a = 16.5g + T’ – 60g$$
$$60a = T’ – 43.5g \quad \cdots ③’$$
式④に \(N’=16.5g\) を代入:
$$30a = T’ – 16.5g – 30g$$
$$30a = T’ – 46.5g \quad \cdots ④’$$
式③’ から式④’ を辺々引くと \(T’\) が消去できます。
$$(60a – 30a) = (T’ – 43.5g) – (T’ – 46.5g)$$$$30a = T’ – 43.5g – T’ + 46.5g$$$$30a = -43.5g + 46.5g$$$$30a = 3g$$$$a = \frac{3g}{30} = \frac{g}{10} \,[\text{m/s}^2]$$

計算方法の平易な説明
  1. 体重計の読みが \(16.5\,\text{kg}\) ということは、人が体重計から受ける垂直な支えの力(垂直抗力)が \(16.5g\) [N] であることを意味します。
  2. このときの加速度を \(a\)、綱の張力を \(T’\) とします。
  3. まず、人について運動方程式を立てます。人の質量は \(60\,\text{kg}\)。働く力は、上向きに垂直抗力 \(16.5g\) と張力 \(T’\)、下向きに重力 \(60g\)。運動方程式は \(60a = 16.5g + T’ – 60g\)。
  4. 次に、ゴンドラと体重計を合わせたもの(質量 \(20+10=30\,\text{kg}\))について運動方程式を立てます。働く力は、上向きに綱からの張力 \(T’\)、下向きに重力 \(30g\)、そして人が体重計を押す力の反作用(下向きに \(16.5g\))。運動方程式は \(30a = T’ – 16.5g – 30g\)。
  5. これで2つの式ができたので、これらを連立させて \(a\) を解きます。具体的には、一方の式からもう一方の式を引くと \(T’\) が消えて \(a\) が求まります。
結論と吟味

ゴンドラの加速度は \(a = \displaystyle\frac{g}{10} \,[\text{m/s}^2]\) です。
加速度 \(a\) が正の値なので、鉛直上向きに加速していることがわかります。これは、つり合いのとき (\(a=0\)) の体重計の読みが \(15\,\text{kg}\) だったのに対し、今回は \(16.5\,\text{kg}\) と読みが増えていることと整合します。上向きに加速すると、体重計の読み(垂直抗力)は静止時より大きくなります。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{g}{10} \,[\text{m/s}^2]\)

Q1

思考の道筋とポイント

人が静止しているとき(つり合いの状態)、綱の張力 \(T\) を簡単に求めるには、どの物体(または物体系)に注目すればよいかを考えます。
問2の解説と同様に、「人、ゴンドラG、体重計H」の全体を一つの系とみなすと、この系内部の力(人と体重計の間の垂直抗力など)を考慮せずに、系全体に働く外力(全体の重力と、綱が系全体を支える力)だけで力のつり合いを考えることができます。

この設問における重要なポイント

  • 「人 + ゴンドラG + 体重計H」を一体の系として扱う。
  • この系全体は、実質的に2本の綱で支えられていると考える(Q1の図 参照)。
  • 系全体の鉛直方向の力のつり合いを立てる。

具体的な解説と立式

注目物体を「人 + ゴンドラG + 体重計H」の全体とします。
この系の総質量 \(M_{\text{総}}\) は、
$$M_{\text{総}} = 60\,\text{kg} + 20\,\text{kg} + 10\,\text{kg} = 90\,\text{kg}$$
この系全体に働く重力は \(M_{\text{総}}g = 90g\) (鉛直下向き)。
この系全体は、図 に示されるように、滑車を介した綱によって上向きに支えられています。人が綱の一端を引くことで、もう一端(またはそれと同等の部分)も系を支えるため、実質的に2つの張力 \(T\) が上向きに作用しているとみなせます。
したがって、系全体の鉛直方向の力のつり合いは、
$$2T – M_{\text{総}}g = 0$$
$$2T – 90g = 0 \quad \cdots {(Q1-1)}$$
この式から張力 \(T\) を求めます。

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \(\sum F_y = 0\)
計算過程

式(Q1-1)から \(T\) を求めます。
$$2T = 90g$$
$$T = \frac{90g}{2} = 45g \,[\text{N}]$$

計算方法の平易な説明
  1. 人、ゴンドラ、体重計を全部ひとまとめにした「大きな物体」と考えます。この大きな物体の全体の重さは \((60+20+10)g = 90g\) [N] です。
  2. この大きな物体は、綱によって上に引っ張られて宙で止まっています。図 を見ると、綱は滑車にかかっていて、人が引いている部分と、もう一方でゴンドラを支えている部分の2か所で、それぞれ上向きに張力 \(T\) を及ぼしていると考えられます。
  3. つまり、全体としては \(2T\) の力で上に支えられています。
  4. これが全体の重さ \(90g\) とつり合っているので、\(2T = 90g\) という式が成り立ちます。
  5. これを解くと、\(T = 45g\) [N] となります。
結論と吟味

人が静止しているとき、綱の張力を簡単にもとめるには、「人、ゴンドラ、体重計」全体を一つの系として注目し、その系全体が2本の張力で支えられていると考えると良いです。このときの張力は \(T=45g \,[\text{N}]\) となります。これは問2で求めた張力と同じ値です。

解答 Q1 「人、ゴンドラ、体重計」全体を一体の系として注目する。この系には鉛直下向きに全体の重力 \((60+20+10)g\) が働き、鉛直上向きに2つの綱による張力 \(2T\) が働く。力のつり合いより \(2T = (60+20+10)g\)、よって \(T=45g \,[\text{N}]\)。

Q2

思考の道筋とポイント

人が動き、体重計の読みが0となるときの加速度を求めます。体重計の読みが0ということは、人が体重計から受ける垂直抗力 \(N\) が0であるということです。
このとき、人に働く力と、「ゴンドラG + 体重計H」に働く力について、それぞれ運動方程式を立てます。綱の張力を \(T\)、加速度を \(a\)(鉛直上向きを正)とします。

この設問における重要なポイント

  • 体重計の読みが0 \(\Rightarrow\) 垂直抗力 \(N = 0\)。
  • 人に働く力と運動方程式を立てる。
  • 「ゴンドラG + 体重計H」に働く力と運動方程式を立てる。
  • 2つの運動方程式を連立して加速度 \(a\) (および張力 \(T\)) を求める。

具体的な解説と立式

体重計の読みが0なので、人が体重計から受ける垂直抗力 \(N = 0\)。
このときの綱の張力を \(T\)、ゴンドラ(および人)の加速度を \(a\)(鉛直上向きを正)とします。

人に働く力(質量 \(60\,\text{kg}\)):

  • 鉛直上向き: 張力 \(T\) (垂直抗力 \(N=0\))
  • 鉛直下向き: 重力 \(60g\)

人の運動方程式:
$$60a = T – 60g \quad \cdots {(Q2-1)}$$

「ゴンドラG + 体重計H」を一体とみなした系(質量 \(30\,\text{kg}\))に働く力:

  • 鉛直上向き: 綱からの張力 \(T\)
  • 鉛直下向き: この系の重力 \(30g\)
  • 垂直抗力の反作用: \(N=0\) なので、この反作用も0。

「ゴンドラG + 体重計H」の運動方程式:
$$30a = T – 30g \quad \cdots {(Q2-2)}$$
式(Q2-1)と(Q2-2)を連立させて \(a\) と \(T\) を求めます。

使用した物理公式

  • ニュートンの運動方程式: \(ma = F_{\text{合力}}\)
計算過程

式(Q2-1)から式(Q2-2)を辺々引くと \(T\) が消去できます。
$$(60a – 30a) = (T – 60g) – (T – 30g)$$$$30a = T – 60g – T + 30g$$$$30a = -30g$$$$a = -g \,[\text{m/s}^2]$$
この \(a\) を式(Q2-1)に代入して \(T\) を求めると、
$$60(-g) = T – 60g$$$$-60g = T – 60g$$$$T = 0 \,[\text{N}]$$

計算方法の平易な説明
  1. 体重計の読みが0ということは、人が体重計から受ける垂直抗力が0だということです。つまり、人は体重計に体重をかけていない(浮いているような)状態です。
  2. このときの加速度を \(a\)、綱の張力を \(T\) とします。
  3. まず、人について運動方程式を立てます。人の質量は \(60\,\text{kg}\)。働く力は、上向きに張力 \(T\)(垂直抗力は0)、下向きに重力 \(60g\)。運動方程式は \(60a = T – 60g\)。
  4. 次に、ゴンドラと体重計を合わせたもの(質量 \(30\,\text{kg}\))について運動方程式を立てます。働く力は、上向きに綱からの張力 \(T\)、下向きに重力 \(30g\)(人からの垂直抗力の反作用は0)。運動方程式は \(30a = T – 30g\)。
  5. この2つの式を連立させて \(a\) を解きます。一方の式からもう一方の式を引くと \(T\) が消えて \(a\) が求まります。
結論と吟味

体重計の読みが0となるときの加速度は \(a = -g \,[\text{m/s}^2]\) です。
加速度が \(-g\) ということは、鉛直下向きに \(g\) の加速度で運動していることを意味し、これは自由落下状態です。このとき、綱の張力 \(T\) も0になります。つまり、人は事実上、綱から手を放してゴンドラや体重計と共に自由落下している状態と同じです。この状態では、体重計に体重がかからない(見かけの重さが0になる)というのは直感とも一致します。

解答 Q2 加速度: \(-g \,[\text{m/s}^2]\) (鉛直下向きに \(g\))

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動方程式の適用: 様々な状況(つり合い、加速度運動)において、注目する物体(または系)を適切に選び、働く力を全て列挙して運動方程式(または力のつり合いの式)を立てることが基本です。
  • 系の設定の柔軟性: 問題に応じて、個々の物体に注目するか、複数の物体を一つの「系」として扱うかを選択することで、計算が簡略化されることがあります。特に張力などの内力を求めない場合は系全体で考えるとよいでしょう。
  • 体重計の読みと垂直抗力: 体重計の読みは、体重計が物体に及ぼす垂直抗力の大きさを質量に換算したものです。したがって、垂直抗力を求めることが体重計の読みを知る鍵となります。
  • 作用・反作用の法則: 人が綱を引く力と綱が人を引く力、人が体重計を押す力と体重計が人を押す力は、それぞれ作用・反作用の関係にあります。これらの力を正しく区別し、運動方程式を立てる際に「注目物体が受ける力」を選ぶことが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • エレベーター内の人の体重変化(見かけの重さ)。
    • 複数の物体がロープや滑車で連結された系の運動。
    • 気球やロケットのように、外部に力を及ぼしながら運動する物体の問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 力の図示を最優先: 注目する物体または系に働く力を「すべて」「正確な向きに」図示する。
    2. 運動状態の把握: 静止しているのか、等速直線運動か、加速度運動かを見極め、適用する法則(力のつり合いか運動方程式か)を判断する。
    3. 座標軸の設定: 加速度の向きや力の分解を考慮して、適切な座標軸(通常は運動方向を正)を設定する。
    4. 作用・反作用の明確な区別: 特に接触している物体間で力が及ぼしあわれる場合、どちらの物体にどちらの向きの力が作用しているかを正確に把握する。
    5. 「体重計の読み」のような間接的な情報から物理量を特定する: 体重計の読み \(\rightarrow\) 垂直抗力、というように変換して式に組み込む。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 張力の向きの誤解: 人が綱を「引く」という記述から、人に働く張力の向きを誤解しやすい。綱は常に物体を「引く」方向に張力を及ぼす。
    • 対策: 人が綱を下向きに引けば、綱は人を上向きに引くと理解する(作用・反作用)。
  • 注目物体の混同: 複数の物体がある場合、どの物体についての運動方程式(または力のつり合い)を考えているのかが曖昧になる。
    • 対策: 式を立てる前に「○○に注目すると」と明確に宣言し、その物体だけに働く力をリストアップする。
  • 体重計の読みの直接的な扱い: 体重計の読みは「質量」であり、力ではない。物理的な式に組み込む際は、垂直抗力 \(N\) に直し、必要なら \(N=m_{\text{読み}}g\) のように力に変換する。
    • 対策: 体重計の読みは \(N/g\) であることを常に意識する。
  • Q1のような系全体を考える際の力の数え方: 自己引き上げ型の場合、系全体を支える張力が複数本分になることを見落とす。
    • 対策: 図をよく見て、系全体を外部から支えている力の総和を考える。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • ゴンドラの中で綱を引いて自分自身とゴンドラを持ち上げる様子を想像する。軽く感じるか、重く感じるか。
    • 加速上昇・下降時の体重計の針の振れ方を、エレベーターの体験と結びつけてみる。
    • 体重計の読みが0になるのは、無重力状態(自由落下)に近い状態であることをイメージする。
  • 図示の有効性:
    • フリーボディダイアグラムは、この種の問題を解く上で最も重要なツール。各物体について、個別に、丁寧に描く。
    • 力の矢印の始点は作用点、向きは力の方向、長さはある程度大きさを反映させると良い(必須ではない)。
    • 加速度の向きも必ず図に描き込み、運動方程式の符号と対応させる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動方程式 (\(ma=F_{\text{合力}}\)): 物体が力を受けて加速度運動をする場合の、運動状態(加速度)と力の関係を記述する普遍的な法則。
  • 力のつり合い (\(\sum F = 0\)): 物体が静止しているか等速直線運動をしている特別な場合。運動方程式で \(a=0\) としたもの。
  • 作用・反作用の法則 (ニュートンの第3法則): 二つの物体が互いに力を及ぼし合う際の力の関係を示す。これによって、物体間の内力を正しく扱うことができる。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 状況把握と力の図示: 各設問の状況(つり合いか、加速度運動か)を把握し、注目物体に働く力をすべて図示する。
  2. 座標軸の設定: 運動方向や力の向きを考慮して、正の向きを定める。
  3. 適切な法則の選択と立式:
    • つり合いの場合: \(\sum F_y = 0\)。
    • 加速度運動の場合: \(ma_y = \sum F_y\)。
  4. (1) (作図): 人に働く力を図示。
  5. (2) つり合い時の \(T\) と \(N/g\):
    1. 「人+G+H」全体で \(2T = (m_H+m_G+m_S)g \Rightarrow T\)。
    2. 人のみで \(N+T = m_H g \Rightarrow N\)。\(N/g\) が読み。
  6. (3) 加速度 \(a\):
    1. \(N’ = 16.5g\) を把握。
    2. 人の運動方程式: \(m_H a = N’ + T’ – m_H g\)。
    3. 「G+H」の運動方程式: \((m_G+m_S)a = T’ – N’ – (m_G+m_S)g\)。
    4. 上記2式を連立して \(a\) を解く (辺々引いて \(T’\) を消去)。
  7. Q1 張力 \(T\): (2)の最初のステップと同じ。
  8. Q2 加速度 \(a\) (N=0):
    1. 人の運動方程式 (\(N=0\)): \(m_H a = T – m_H g\)。
    2. 「G+H」の運動方程式 (\(N=0\)): \((m_G+m_S)a = T – (m_G+m_S)g\)。
    3. 連立して \(a\) を解く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の徹底確認: 運動方程式の各項の符号(力の向き、加速度の向き)を、設定した座標軸の正方向と照らし合わせて慎重に決定する。
  • 文字と数値の混在: 質量などの数値を代入するタイミングと、文字のまま計算を進める部分を意識し、混乱を避ける。
  • 連立方程式の処理: 加減法や代入法を適切に使い、計算ミスをしないように丁寧に。特に符号の変化に注意。
  • 単位の確認: 最終的な答えの単位が物理的に正しいかを確認する(力なら[N]、加速度なら[m/s²]、質量なら[kg])。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感との比較:
    • (2) 体重計の読みが実体重より軽いのは、綱を引くことで自分を持ち上げているため。これは日常の懸垂などの経験と合うか。
    • (3) 加速度が上向きなら、体重計の読み(垂直抗力)は静止時より大きくなるはず。\(16.5\,\text{kg} > 15\,\text{kg}\) であり、\(a=g/10 > 0\) と整合。
    • Q2で加速度が \(-g\)(自由落下)のとき、体重計の読みが0になるのは「無重力状態」の体験と類似。
  • 極端な場合を考える:
    • もし人が綱を引く力が0 (\(T=0\)) なら、全体は自由落下するはず (\(a=-g\))。このとき体重計の読みは0になるか。
    • もし \(F\) が非常に大きな力なら、加速度も非常に大きくなり、張力や垂直抗力もそれに応じて変化するはず。
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