「名問の森」徹底解説(4〜6問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題4 剛体のつり合い (徳島大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解1: 力の分解を用いたモーメント計算
      • 力の作用線までの距離(腕の長さ)を幾何学的に求めるのではなく、力を「棒に垂直な成分」と「棒に平行な成分」に分解し、垂直成分のみを用いてモーメントを計算します。
    • 設問(1)の別解2: 点A周りのモーメントのつり合い
      • 回転軸を点Bではなく点A(上端)に設定してモーメントのつり合い式を立てます。未知数の扱いが変わりますが、同じ結果が得られることを示します。
    • 設問(4)の別解: 幾何学的作図による解法(3力のつり合い)
      • 計算ではなく、剛体に働く3つの力がつり合うとき、それらの作用線が1点で交わるという定理(3力の共点定理)を利用し、図形的に点Pの位置を特定します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 力の分解: 「腕の長さ」が見つけにくい場合でも、力の分解なら機械的に計算できるため、汎用性が高い手法です。
    • 回転軸の変更: どの点を回転軸に選んでもつり合い式が成立することを確認することで、計算しやすい軸を選ぶセンスを養います。
    • 幾何学的作図: 複雑なモーメント計算を回避し、力のつり合いの本質的な構造(作用線の交点)を直感的に理解する助けとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「壁に立てかけられたはしごの剛体のつり合い」です。
剛体が静止し続けるための条件(並進運動の停止と回転運動の停止)を、力とモーメントのつり合い式を用いて解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 剛体のつり合い条件:
    • 力のつり合い: 物体に働くすべての力のベクトル和が \(0\) であること。通常は水平方向と鉛直方向に分解して立式します。
    • 力のモーメントのつり合い: 任意の点周りの力のモーメントの総和が \(0\) であること。
  2. 摩擦力: 静止摩擦力 \(F\) は、最大静止摩擦力 \(F_{\text{max}} = \mu N\) を超えない範囲で、外力とつり合う大きさを持ちます(\(F \le \mu N\))。
  3. 作用線の定理: 剛体に働く3つの力がつり合っているとき、それらの作用線は平行であるか、または1点で交わります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、はしごに働く力をすべて図示し、力のつり合いと点B周りのモーメントのつり合いを立式して未知数を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた摩擦力が最大静止摩擦力以下であるという条件から、摩擦係数の条件を導きます。
  3. (3)では、人が登った状態でのつり合い式を立て直し、滑り出す限界(摩擦力が最大静止摩擦力に達する瞬間)を解析します。
  4. (4)では、剛体に働く力の作用線が1点で交わる性質を利用して、点Pの位置を図示します。

問(1)

思考の道筋とポイント
はしごは静止しているので、力もモーメントもつり合っています。
未知数は、壁からの垂直抗力 \(R\)、床からの垂直抗力 \(N\)、床からの静止摩擦力 \(F\) の3つです。
これらを求めるために、水平方向のつり合い、鉛直方向のつり合い、そして任意の点周りのモーメントのつり合いの3つの式を立てます。
モーメントの中心は、未知の力が多く集まっている点Bを選ぶと計算が楽になります。

この設問における重要なポイント

  • 力の図示: 重力 \(Mg\)(重心位置)、壁からの抗力 \(R\)(垂直抗力のみ、壁は滑らか)、床からの抗力(垂直抗力 \(N\) と静止摩擦力 \(F\))を漏れなく描きます。
  • 幾何学的関係: はしごの長さ \(10l\)、壁までの距離 \(6l\) より、三平方の定理から壁に接する高さは \(\sqrt{(10l)^2 – (6l)^2} = 8l\) となります。はしごと床のなす角を \(\theta\) とすると、\(\cos \theta = 3/5, \sin \theta = 4/5\) です。
  • モーメントの向き: 点Bを回転軸とすると、
    • 重力 \(Mg\): 点Bの左側にあるため、はしごを左に倒そうとする(反時計回り)のモーメント。
    • 壁からの抗力 \(R\): 点Bの上側で右向きに押すため、はしごを右に倒そうとする(時計回り)のモーメント。

具体的な解説と立式
はしごに働く力は以下の通りです。

  • 重力: \(Mg\)(鉛直下向き、重心は中点 \(5l\) の位置)
  • 壁からの垂直抗力: \(R\)(水平右向き)
  • 床からの垂直抗力: \(N\)(鉛直上向き)
  • 床からの静止摩擦力: \(F\)(水平左向き、滑ろうとする方向と逆)

力のつり合い:
水平方向(右向き正):
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの力}) &= (\text{左向きの力}) \\
R &= F \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
鉛直方向(上向き正):
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\
N &= Mg \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
力のモーメントのつり合い(点B周り):
反時計回りを正とします。
重力 \(Mg\) は反時計回りのモーメント、壁からの抗力 \(R\) は時計回りのモーメントを生じます。点Bを通る \(N\) と \(F\) のモーメントは \(0\) です。
腕の長さは、力の作用線までの垂直距離です。
重力の腕の長さ: \(5l \cos \theta\)
抗力 \(R\) の腕の長さ: \(10l \sin \theta\)
$$
\begin{aligned}
(\text{反時計回りのモーメント}) &= (\text{時計回りのモーメント}) \\
Mg \times (5l \cos \theta) &= R \times (10l \sin \theta) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: 右向きの力の和 \(=\) 左向きの力の和
  • モーメントのつり合い: 反時計回りのモーメントの和 \(=\) 時計回りのモーメントの和
  • モーメントの定義: \(M = (\text{力}) \times (\text{腕の長さ})\)
計算過程

幾何学的関係より、\(\cos \theta = \frac{6l}{10l} = \frac{3}{5}\)、\(\sin \theta = \frac{8l}{10l} = \frac{4}{5}\) です。

まず、式③から \(R\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Mg \cdot 5l \cdot \frac{3}{5} &= R \cdot 10l \cdot \frac{4}{5} \\[2.0ex]
3l Mg &= 8l R \\[2.0ex]
R &= \frac{3}{8} Mg
\end{aligned}
$$
これが上端Aが受ける抗力の大きさです。

次に、下端Bが受ける抗力の大きさを求めます。
「抗力」とは、床から受ける全抗力(垂直抗力と摩擦力の合力)を指します。
式①、②より、
$$
\begin{aligned}
F &= R = \frac{3}{8} Mg \\[2.0ex]
N &= Mg
\end{aligned}
$$
床からの抗力の大きさ \(F_{\text{床}}\) は、三平方の定理より、
$$
\begin{aligned}
F_{\text{床}} &= \sqrt{N^2 + F^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{(Mg)^2 + \left( \frac{3}{8} Mg \right)^2} \\[2.0ex]
&= Mg \sqrt{1 + \frac{9}{64}} \\[2.0ex]
&= Mg \sqrt{\frac{73}{64}} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{73}}{8} Mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

はしごが倒れないのは、壁が押す力と床の摩擦力がバランスし、重力と床の突き上げがバランスしているからです。
さらに、回転しないためには、重力が「左に倒そうとする回転力」と、壁が「右に倒そうとする回転力」が釣り合っていなければなりません。
点Bを基準に回転力を計算すると、壁が押す力 \(R\) が求まります。
床からの力は、上向きの力と横向きの摩擦力の合成(斜め上向きの力)として計算しました。

結論と吟味

\(R = \frac{3}{8} Mg\) は重力よりも小さく、妥当な値です。
床からの抗力は重力より少し大きく、はしごを支えるために必要な力として適切です。

解答 (1)
上端Aの抗力: \(\displaystyle \frac{3}{8} Mg\)
下端Bの抗力: \(\displaystyle \frac{\sqrt{73}}{8} Mg\)
別解1: 力の分解を用いたモーメント計算

思考の道筋とポイント
力の作用線までの距離(腕の長さ)を求める代わりに、力を「棒に垂直な成分」と「棒に平行な成分」に分解します。
棒に平行な成分は回転軸を通るためモーメントを生じません。垂直な成分だけを考えればよいので、計算が直感的になります。

この設問における重要なポイント

  • 力の分解:
    • 重力 \(Mg\): 棒に垂直な成分は \(Mg \cos \theta\)
    • 抗力 \(R\): 棒に垂直な成分は \(R \sin \theta\)
  • 距離: 力の作用点までの距離をそのまま使います(重力は \(5l\)、抗力 \(R\) は \(10l\))。

具体的な解説と立式
点B周りのモーメントを考えます。
重力 \(Mg\) の棒に垂直な成分は \(Mg \cos \theta\) です。作用点までの距離は \(5l\) です。
これが反時計回りのモーメントを作ります。
$$
M_{\text{重力}} = (Mg \cos \theta) \times 5l
$$
抗力 \(R\) の棒に垂直な成分は \(R \sin \theta\) です。作用点までの距離は \(10l\) です。
これが時計回りのモーメントを作ります。
$$
M_{R} = (R \sin \theta) \times 10l
$$
つり合いの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(Mg \cos \theta) \times 5l &= (R \sin \theta) \times 10l
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • モーメントの定義(力の分解): \(M = (\text{力の垂直成分}) \times (\text{距離})\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
Mg \cdot \frac{3}{5} \cdot 5l &= R \cdot \frac{4}{5} \cdot 10l \\[2.0ex]
3l Mg &= 8l R \\[2.0ex]
R &= \frac{3}{8} Mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

力を「棒を回そうとする成分」と「棒を縮めようとする成分」に分けました。
回そうとする成分だけを取り出して、距離を掛ければ回転力が求まります。
腕の長さを図形的に探すのが苦手な場合は、この方法がおすすめです。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ式になり、同じ結果が得られました。

解答 (1) 別解1
上端Aの抗力: \(\displaystyle \frac{3}{8} Mg\)
別解2: 点A周りのモーメントのつり合い

思考の道筋とポイント
回転軸はどこにとっても構いません。ここでは上端Aを回転軸に選んでみます。
点Aには未知数 \(R\) が働いていますが、これを回転軸に選ぶことで \(R\) のモーメントを消去し、床からの力 \(N, F\) と重力の関係を直接導きます。

この設問における重要なポイント

  • 回転軸の選択: 点Aを回転軸とします。
  • 力のモーメント:
    • 重力 \(Mg\): Aより右にあるので、時計回り。腕の長さ \(5l \cos \theta\)。
    • 床の垂直抗力 \(N\): Aより右にあるので、反時計回り。腕の長さ \(10l \cos \theta\)。
    • 床の摩擦力 \(F\): Aより下で左向きなので、時計回り。腕の長さ \(10l \sin \theta\)。

具体的な解説と立式
点A周りのモーメントのつり合い式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反時計回り}) &= (\text{時計回り}) \\
N \times (10l \cos \theta) &= Mg \times (5l \cos \theta) + F \times (10l \sin \theta)
\end{aligned}
$$
力のつり合い式(\(N=Mg, F=R\))はそのまま使います。

使用した物理公式

  • モーメントのつり合い: 反時計回りのモーメントの和 \(=\) 時計回りのモーメントの和
計算過程

式に \(N=Mg\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Mg \cdot 10l \cos \theta &= Mg \cdot 5l \cos \theta + F \cdot 10l \sin \theta \\[2.0ex]
Mg \cdot 5l \cos \theta &= F \cdot 10l \sin \theta
\end{aligned}
$$
これは点B周りの式(\(R\) を \(F\) に置き換えたもの)と全く同じ形になります。
よって、
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{3}{8} Mg
\end{aligned}
$$
力のつり合いより \(R=F\) なので、\(R = \frac{3}{8} Mg\) と求まります。

この設問の平易な説明

回転の中心を壁との接点Aに変えて計算しました。
床からの突き上げ \(N\) がはしごを回そうとする力と、重力 \(Mg\) &摩擦力 \(F\) が逆向きに回そうとする力が釣り合っています。
どの点を中心にしても、物理法則は変わらず正しい答えを導いてくれます。

結論と吟味

同じ結果が得られました。計算の手間は少し増えますが、検算として有効です。

解答 (1) 別解2
上端Aの抗力: \(\displaystyle \frac{3}{8} Mg\)

問(2)

思考の道筋とポイント
はしごが滑ってしまう条件を求めます。
滑り出す直前、静止摩擦力 \(F\) は最大静止摩擦力 \(F_{\text{max}} = \mu N\) に達します。
滑らない条件は \(F \le \mu N\) です。

この設問における重要なポイント

  • 滑る条件: 静止摩擦力が最大静止摩擦力を超えることはできません。滑ってしまうということは、つり合いに必要な摩擦力 \(F\) が確保できない、つまり \(F > \mu N\) となる場合です。
  • 数値の代入: (1)で求めた \(F\) と \(N\) を代入します。

具体的な解説と立式
はしごが滑らずに静止していられる条件は、
$$
\begin{aligned}
F &\le \mu N
\end{aligned}
$$
です。逆に、滑ってしまう条件は、
$$
\begin{aligned}
F &> \mu N
\end{aligned}
$$
となりますが、ここでは「ある値より小さければ滑る」その境界値(限界の摩擦係数)を求めます。
限界の状態では等号が成立します。
$$
\begin{aligned}
F &= \mu N
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 最大静止摩擦力: \(F_{\text{max}} = \mu N\)
計算過程

(1)の結果 \(F = \frac{3}{8} Mg\)、\(N = Mg\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{8} Mg &= \mu Mg
\end{aligned}
$$
両辺を \(Mg\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\mu &= \frac{3}{8}
\end{aligned}
$$
したがって、\(\mu\) がこれより小さければ滑ります。

この設問の平易な説明

床がツルツルだと滑ります。どれくらいザラザラ(摩擦係数 \(\mu\))なら耐えられるかの限界を計算しました。
必要な摩擦力は \(3/8 Mg\) で、床が踏ん張れる最大力は \(\mu Mg\) です。これらが等しくなるときの \(\mu\) が境界線です。

結論と吟味

問題文にある \(\mu = 1/2\) は \(3/8 (=0.375)\) より大きいため、現在は滑らずに止まっています。計算結果は状況と整合しています。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{3}{8}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
人が登ると、重心の位置が変わり、モーメントのバランスが変化します。
人が登るほど、はしごを倒そうとする(壁から離そうとする)モーメントが大きくなり、必要な摩擦力 \(F\) が増大します。
摩擦力 \(F\) が最大静止摩擦力 \(F_{\text{max}}\) に達したときが、登れる限界の高さです。

この設問における重要なポイント

  • 新しい力のつり合い: 人の重力 \(5Mg\) が加わります。
    • \(N’ = Mg + 5Mg = 6Mg\)
  • 新しいモーメントのつり合い: 人の位置を \(x\)(点Bからの距離)とし、その位置での重力モーメントを追加します。
  • 限界条件: \(F’ = \mu N’ = \frac{1}{2} N’\)

具体的な解説と立式
人が下端Bから距離 \(x\) まで登ったとします。
このときの垂直抗力を \(N’\)、壁からの抗力を \(R’\)、摩擦力を \(F’\) とします。

力のつり合い:
鉛直方向:
$$
\begin{aligned}
N’ &= Mg + 5Mg = 6Mg \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
水平方向:
$$
\begin{aligned}
R’ &= F’ \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
限界条件:
滑り出す直前なので、摩擦力は最大値になります。
$$
\begin{aligned}
F’ &= \mu N’ = \frac{1}{2} \cdot 6Mg = 3Mg \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
よって、\(R’ = 3Mg\) です。

モーメントのつり合い(点B周り):
人の重力 \(5Mg\) の腕の長さは \(x \cos \theta\) です。
$$
\begin{aligned}
(\text{反時計回り}) &= (\text{時計回り}) \\
Mg \times (5l \cos \theta) + 5Mg \times (x \cos \theta) &= R’ \times (10l \sin \theta) \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
(※注:人が登ると、はしごを左(反時計回り)に倒そうとする重力のモーメントが増えます。それを支えるために壁からの抗力 \(R’\)(時計回り)も増える必要があります。)

使用した物理公式

  • 力のつり合い、モーメントのつり合い
  • 最大静止摩擦力: \(F_{\text{max}} = \mu N\)
計算過程

式⑦に \(R’ = 3Mg\) と \(\sin \theta = 4/5, \cos \theta = 3/5\) を代入して \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Mg \cdot 5l \cdot \frac{3}{5} + 5Mg \cdot x \cdot \frac{3}{5} &= 3Mg \cdot 10l \cdot \frac{4}{5}
\end{aligned}
$$
両辺を \(Mg\) で割り、\(5\) を掛けて分母を払います。
$$
\begin{aligned}
5l \cdot 3 + 5 \cdot x \cdot 3 &= 3 \cdot 10l \cdot 4 \\[2.0ex]
15l + 15x &= 120l
\end{aligned}
$$
両辺を \(15\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
l + x &= 8l \\[2.0ex]
x &= 7l
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

人が登ると、はしごを下に押し付ける力が増えるので、摩擦の限界(最大静止摩擦力)も増えます(\(6\)倍になります)。
しかし、人が上に行くほど「はしごを倒そうとする回転力」も急激に増えます。
計算の結果、下から \(7l\) の地点までは摩擦が耐えられますが、それ以上登ると支えきれずに滑り出すことがわかりました。

結論と吟味

\(x = 7l\) ははしごの長さ \(10l\) 以内であり、物理的にあり得る解です。
重心より上まで登れることがわかります。

解答 (3) \(7l\)

問(4)

思考の道筋とポイント
剛体に働く3つの力(重力の合力、壁からの抗力、床からの抗力)がつり合っているとき、それらの作用線は1点で交わります。
この定理を使って、床からの抗力の作用線が通る点Pを図示します。

この設問における重要なポイント

  • 力の合成: はしごの重力 \(Mg\) と人の重力 \(5Mg\) を合わせて、1つの「全重力 \(6Mg\)」として扱います。この合力の作用線(重心G’を通る鉛直線)を特定します。
  • 3力の共点定理: 平行でない3つの力がつり合うとき、作用線は1点で交わります。
    1. 壁からの抗力 \(R\)(水平線)
    2. 全重力 \(6Mg\)(鉛直線)
    3. 床からの抗力(点Bからの斜めの力)

    これら3直線が交わる点がPです。

具体的な解説と立式
まず、全重力の作用線(全体の重心G’の水平位置)を求めます。
人が下端Bから \(2l\) の位置にいるとき、全体の重心G’のBからの水平距離 \(x_G’\) は、モーメントの和を全質量で割ることで求まります(あるいは内分点の公式)。
はしごの重心(質量 \(M\)): Bから左へ水平に \(5l \cos \theta = 3l\)
人の重心(質量 \(5M\)): Bから左へ水平に \(2l \cos \theta = 2l \cdot \frac{3}{5} = \frac{6}{5}l\)
全体の重心の水平位置 \(X_G\)(Bから左への距離):
$$
\begin{aligned}
X_G &= \frac{M \cdot 3l + 5M \cdot \frac{6}{5}l}{M + 5M} \\[2.0ex]
&= \frac{3l + 6l}{6} \\[2.0ex]
&= \frac{9}{6}l = \frac{3}{2}l = 1.5l
\end{aligned}
$$
点Pは、以下の2直線の交点です。

  1. 壁からの抗力 \(R\) の作用線: 上端Aを通る水平線。
  2. 全重力の作用線: 下端Bからへ \(1.5l\) の位置を通る鉛直線。

図中への示し方:
上端Aから水平に引いた線と、全体の重心を通る鉛直線の交点がPです。
床からの抗力の作用線は、点Bとこの点Pを結ぶ直線となります。

使用した物理公式

  • 重心の公式: \(x_G = \frac{\text{モーメントの和}}{\text{質量の和}}\)
  • 3力のつり合いの共点定理
計算過程

重心位置の計算は上記の通りです。
図示する際は、

  1. はしごの中点(\(5l\))より少し下、人がいる \(2l\) との中間あたりに全体の重心があることを意識します。
  2. その重心を通る鉛直線を描きます。
  3. Aを通る水平線を描きます。
  4. その交点をPとします。
この設問の平易な説明

物体に3つの力が働いて止まっているとき、その3つの力の矢印を延長すると、必ず1点で交わるというルールがあります。
壁からの力(横向き)と、重力(下向き)の交点を見つければ、床からの力も必ずそこを通るはずです。
重力は「はしご」と「人」を合わせた合計の重力がどこにかかるか(新しい重心)を計算して求めました。

結論と吟味

点Pの位置が特定できました。床からの抗力ベクトルはBからPに向かう向きになります。

解答 (4)
図示: 上端Aを通る水平線と、下端Bから左へ水平距離 \(\displaystyle \frac{3}{2}l\) (または \(1.5l\))の位置を通る鉛直線の交点。
(図には、この交点Pと点Bを結ぶ直線を抗力の作用線として描くとより良いでしょう。)
別解: 幾何学的作図による解法(3力のつり合い)

思考の道筋とポイント
計算を最小限にし、図形の性質だけで点Pを特定します。
重心の位置を内分比で求めます。

この設問における重要なポイント

  • 重心の内分: はしごの重心G(\(5l\))と人の位置H(\(2l\))の間を、質量の逆比 \(5M:M = 5:1\) に内分する点が全体の重心G’です。

具体的な解説と立式
はしごの重心GはBから斜面に沿って \(5l\) の位置。
人の位置HはBから斜面に沿って \(2l\) の位置。
2点間の距離は \(3l\) です。
全体の重心G’は、線分HGを \(質量比 5M:M\) の逆比、つまり \(1:5\) に内分する点です。
HからGに向かって \(1/(1+5) = 1/6\) だけ進んだ位置になります。
G’の位置(Bからの斜面沿いの距離):
$$
\begin{aligned}
2l + 3l \times \frac{1}{6} &= 2l + 0.5l = 2.5l
\end{aligned}
$$
つまり、Bから斜面に沿ってちょうど \(2.5l\) (全長の1/4)のところの真上に点Pはあります。
水平距離に直すと、
$$
\begin{aligned}
2.5l \times \cos \theta &= 2.5l \times \frac{3}{5} = 1.5l
\end{aligned}
$$
これはメインの解法と一致します。

使用した物理公式

  • 重心の内分公式
計算過程

上記の通り、比の計算のみで求まります。

この設問の平易な説明

重い人(\(5M\))とはしご(\(M\))のバランス点は、重い人の近くになります。
計算すると、ちょうどBから長さの1/4のところになります。
その真上で、壁からの線と交わる場所がPです。

結論と吟味

計算が非常に簡単になり、検算として有効です。

解答 (4) 別解
図示: 下端Bから斜面に沿って \(\displaystyle \frac{5}{2}l\) (または \(2.5l\))進んだ点の鉛直上方にある、Aを通る水平線上の点。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 剛体のつり合いの2大条件
    • 核心: 剛体が静止し続けるためには、「並進運動しない(力がつり合う)」ことと、「回転運動しない(モーメントがつり合う)」ことの両方が必要です。
    • 理解のポイント:
      • 力のつり合い: \(\sum \vec{F} = \vec{0}\) (上下左右の力がキャンセルする)
      • モーメントのつり合い: \(\sum M = 0\) (回転させようとする働きがキャンセルする)
      • この2つは独立した条件であり、必ず両方を立式して連立させる必要があります。
  • 摩擦力の性質と限界
    • 核心: 静止摩擦力 \(F\) は、外力に合わせて変化する「受動的な力」ですが、その大きさには限界(最大静止摩擦力 \(\mu N\))があります。
    • 理解のポイント:
      • 静止中: \(F < \mu N\) (外力とつり合うだけの大きさ)
      • 滑り出し: \(F = \mu N\) (限界ギリギリ)
      • 滑り中: \(F’ = \mu’ N\) (動摩擦力、一定値)
      • 問題文の「滑ってしまう条件」や「登れる限界」は、この \(F = \mu N\) の瞬間を捉えることが鍵です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 壁に摩擦がある場合: 壁からの摩擦力(鉛直上向き)が追加されます。未知数が増えますが、つり合いの式を立てる手順は全く同じです。
    • 棒が床と壁から離れる問題: 重心が偏っている場合など、棒が回転して壁から離れる(\(R=0\))か、床から浮く(\(N=0\))かを判定する問題に応用できます。
    • 蝶番(ちょうつがい)の問題: 棒の一端が固定されている場合、その点からの抗力(\(R_x, R_y\))を未知数として置きます。モーメントの中心を蝶番にとると計算が楽になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回転軸の選び方: 未知の力が多く集まっている点(この問題では点B)を回転軸に選ぶと、それらの力のモーメントが \(0\) になり、式が簡単になります。
    2. 作用線の交点: 3つの力がつり合っている場合、それらの作用線は必ず1点で交わります。計算が複雑なときや、図形的な位置関係を問われたときに、この定理が強力な武器になります。
    3. 解法の選択:
      • 「力を求めよ」 \(\rightarrow\) つり合いの式を連立(基本)。
      • 「滑る条件」 \(\rightarrow\) \(F = \mu N\) を代入
      • 「位置を図示せよ」 \(\rightarrow\) 3力の共点定理(幾何学的アプローチ)。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • モーメントの腕の長さの取り違え:
    • 誤解: 力の作用点までの直線距離(例えば \(5l\))をそのまま腕の長さとしてしまう。
    • 対策: 必ず「回転軸から力の作用線に下ろした垂線の長さ」を腕の長さとします。あるいは、力を分解して「垂直成分 \(\times\) 距離」で計算します(別解1の手法)。
  • 摩擦力の向きのミス:
    • 誤解: 摩擦力の向きを適当に決めてしまう。
    • 対策: 「もし摩擦がなかったらどっちに動くか?」を想像します。はしごの下端は左に滑ろうとするので、摩擦力はそれを止める右向き(壁側)に働きます。
  • 最大静止摩擦力の誤用:
    • 誤解: 常に \(F = \mu N\) だと思い込んで計算してしまう。
    • 対策: 「滑り出す直前」「限界」という言葉があるときだけ \(F = \mu N\) を使います。それ以外は単なる未知数 \(F\) として扱い、つり合い式から求めます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)での回転軸選択(点B vs 点A):
    • 選定理由: 点Bには \(N\) と \(F\) という2つの未知の力が働いています。点Bを回転軸に選べば、これら2つのモーメントが消え、未知数が \(R\) だけの式になるため、計算が最短で済みます。
    • 適用根拠: 剛体が静止しているとき、どの点周りのモーメントも \(0\) になるという物理法則に基づいています。
  • 問(4)での解法選択(共点定理):
    • 選定理由: 「位置を図示せよ」という設問に対し、計算で座標を求めるよりも、力の作用線の交点として作図する方が、物理的な意味(バランスの中心)を直感的に示せるため。
    • 適用根拠: 平行でない3力がつり合うための必要条件(作用線が1点で交わる)を利用しています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 力の答えは \([M][L][T]^{-2}\)(\(Mg\) と同じ次元)、モーメントの答えは \([M][L]^2[T]^{-2}\)(\(Mg \times l\) と同じ次元)になっているか確認します。係数は無次元数(\(3/8\) など)であるべきです。
  • 極限的なケースでの検算:
    • もし \(\theta = 90^\circ\)(垂直に立つ)だったら? \(\cos 90^\circ = 0\) なので、重力のモーメントがなくなり、壁からの抗力 \(R\) も \(0\) になるはずです。式 \(R = \frac{3}{8} Mg \cot \theta\) (\(\cos/\sin\))で \(\theta \to 90^\circ\) とすると \(R \to 0\) となり整合します。
  • 図を描く習慣:
    • 腕の長さや力の分解を行う際は、頭の中だけでやらず、必ず図に補助線(垂線や分解ベクトル)を描き込みます。視覚的に確認することで、\(\sin\) と \(\cos\) の取り違えなどのミスを激減させることができます。
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問題5 剛体のつり合い (京都大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(ア)〜(ウ)の別解: 全抗力の作用線と幾何学的条件を用いた解法
      • 模範解答が力のつりあいとモーメントのつりあいを個別に計算するのに対し、別解では「全抗力(垂直抗力と摩擦力の合力)」に着目し、その傾きと作用線の位置から直感的に条件を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 全抗力の解法: 複雑な連立方程式を解くことなく、図形的なイメージ(「力が摩擦角を超えたら滑る」「作用線が底面をはみ出したら倒れる」)で現象を捉えられるため、直感的な理解と検算に役立ちます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「斜面上の剛体の安定性(滑り出しと転倒)」です。
物体に外力を加えたとき、「滑り始めるのが先か、倒れるのが先か」という物理現象の分岐点を、力学的な条件式から導き出します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 剛体のつりあい条件: 剛体が静止し続けるためには、「力のベクトル和が \(0\)(並進運動しない)」かつ「力のモーメントの和が \(0\)(回転運動しない)」である必要があります。
  2. 最大摩擦力: 物体が滑り出す直前、静止摩擦力は最大値 \(f_{\text{最大}} = \mu N\) に達します。
  3. 転倒の限界: 物体が倒れ始めるとき、床面からの垂直抗力の作用点は、回転軸となる底面の端(角)に移動します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア)では、力のつりあいの式を立て、静止摩擦力が最大摩擦力を超える条件を求めます。
  2. (イ)では、転倒の支点(斜面下側の角)まわりの力のモーメントのつりあいの式を立て、外力の上限を求めます。
  3. (ウ)では、「滑り出し条件の力」が「転倒条件の力」よりも小さければ、倒れる前に滑り出すことができます。この不等式を解いて幾何学的な条件(\(a/b\) と \(\theta, \mu\) の関係)を導きます。

問(ア)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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