「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第19章】基礎CHECK

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

基礎CHECK

1 色と波長

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「可視光線のスペクトルと波長の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光が電磁波の一種であり、色によって波長が異なることの理解。
  2. 可視光線の波長と色の対応関係。
  3. 波長が長い側が赤色、短い側が紫色であることの記憶。
  4. 虹の色の順番(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)の知識。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた色のリスト(赤、青、黄、緑、紫、橙)を確認する。
  2. 可視光線のスペクトルの順番(赤→橙→黄→緑→青→紫)を思い出す。
  3. この順番が波長の長い順であることを利用して、与えられた色を並べ替える。

思考の道筋とポイント
物理で扱う光は波の性質を持ち、その「色」は「波長」という物理量によって決まります。太陽光などをプリズムに通すと、虹のような色の帯(スペクトル)に分かれますが、この色の並び順が波長の長さの順に対応していることを理解するのがポイントです。特に、スペクトルの両端である「赤」が最も波長が長く、「紫」が最も波長が短いという基本的な事実をしっかりと覚えておくことが、この問題を解くための鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 可視光線: 人間の目で見ることができる光の範囲を指します。波長がおよそ\(380\,\text{nm}\)(ナノメートル)の紫色の光から、\(750\,\text{nm}\)の赤色の光までの範囲の電磁波です。
  • 波長と色の関係: 可視光線は、波長が長い方から順に「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」と並びます。
  • 覚え方: 虹の色の順番として覚えるのが最も一般的です。「せき・とう・おう・りょく・せい・らん・し」という読み方で覚える方法も有効です。
  • 赤外線と紫外線: 赤色の光よりも波長が長い領域の電磁波を「赤外線」、紫色の光よりも波長が短い領域の電磁波を「紫外線」と呼びます。この名称からも、赤が波長の長い側、紫が短い側であることが類推できます。

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の知識を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。可視光線の色と波長の関係に基づいて解答します。

  1. 可視光線のスペクトルは、波長が長い順に「赤(せき)・橙(とう)・黄(おう)・緑(りょく)・青(せい)・藍(らん)・紫(し)」と並びます。
  2. 問題で与えられた色は「赤、青、黄、緑、紫、橙」の6色です。
  3. これらの色を、上記の波長の長い順(虹の色の順)に並べ替えます。
    • 最も波長が長いのは「赤」です。
    • 次に波長が長いのは「橙」です。
    • 次に「黄」が続きます。
    • 次に「緑」が続きます。
    • 次に「青」が続きます。
    • 最後に、与えられた色の中で最も波長が短いのは「紫」です。
  4. したがって、波長が長いものから順に並べると「赤、橙、黄、緑、青、紫」となります。

使用した物理公式
この問題で直接使用する計算式はありませんが、知識として波長の大小関係を整理しておきます。

  • 可視光線の波長の順序: \(λ_{\text{赤}} > λ_{\text{橙}} > λ_{\text{黄}} > λ_{\text{緑}} > λ_{\text{青}} > λ_{\text{紫}}\)
計算過程

この問題には計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた、色の順番の整理そのものが解答プロセスとなります。

  • 与えられた色の集合: {赤, 橙, 黄, 緑, 青, 紫}
  • 波長の長い順に並べ替え: 赤, 橙, 黄, 緑, 青, 紫
この設問の平易な説明

光の色は、その光が持つ「波の長さ(波長)」によって決まっています。身近な例として、雨上がりの空にかかる虹を思い浮かべてみてください。虹は外側から「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」の順番に色が並んでいますよね。実は、この虹の色の順番が、そのまま波長が「長い」ものから「短い」ものへの順番になっているのです。つまり、一番外側に見える「赤」が最も波長が長く、一番内側の「紫」が最も波長が短い光です。したがって、この問題は、与えられた色を虹の色の順番に並べ替えるだけで正解できます。

解答 赤, 橙, 黄, 緑, 青, 紫

2 ガラス中を進む光

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「屈折における光の速さ、波長、振動数の変化」です。光がある媒質から別の媒質へ進む際に、各物理量がどのように変化するかを問うています。

  1. 屈折率の定義 (\(n = \displaystyle\frac{c}{v}\))
  2. 屈折と波長の関係 (\(λ = \displaystyle\frac{λ_0}{n}\))
  3. 波の基本式 (\(v = fλ\))
  4. 屈折における振動数の不変性

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 屈折率の定義式を用いて、ガラス中の光の速さ \(v\) を求めます。
  2. 屈折率と波長の関係式を用いて、ガラス中の光の波長 \(λ\) を求めます。
  3. 波の基本式 \(v=fλ\) を用いて、ガラス中の振動数 \(f\) を求めます。

思考の道筋とポイント
光が真空中からガラスのような媒質に入ると、その性質が変化します。この現象を「屈折」と呼びます。屈折において、どの物理量が変化し、どの物理量が変化しないのかを正確に理解することが最も重要です。
光の速さ \(v\) と波長 \(λ\) は、媒質の屈折率 \(n\) に反比例して変化します。つまり、屈折率 \(n\) の媒質中では、速さも波長も真空中の \(1/n\) 倍になります。
一方で、振動数 \(f\) は、波を発生させる光源によって決まる固有の量であり、光が伝わる媒質が変わっても変化しません。この「振動数の不変性」は、屈折を考える上での大原則です。

この設問における重要なポイント

  • 屈折率 \(n\): 真空中の光速 \(c\) と媒質中の光速 \(v\) の比で定義されます。\(n = \displaystyle\frac{c}{v}\)。\(n>1\) の媒質では光速は遅くなります。
  • 速さの変化: 上の定義式を変形すると、\(v = \displaystyle\frac{c}{n}\) となります。
  • 波長の変化: 速さと同様に、波長も屈折率に反比例して変化します。\(λ = \displaystyle\frac{λ_0}{n}\)(ここで \(λ_0\) は真空中の波長)。
  • 振動数の不変性: 媒質が変わっても振動数は変化しません。\(f = f_0\)(ここで \(f_0\) は真空中の振動数)。
  • 波の基本式: どの媒質中においても、速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(λ\) の間には \(v = fλ\) の関係が成り立ちます。

具体的な解説と立式
各物理量を順番に求めていきます。

  1. ガラス中の光の速さ \(v\)
    屈折率 \(n\) の定義式 \(n = \displaystyle\frac{c}{v}\) を \(v\) について解きます。
    $$ v = \displaystyle\frac{c}{n} \quad \cdots ① $$
  2. ガラス中の波長 \(λ\)
    波長も速さと同様に、屈折率 \(n\) の影響を受け、真空中の波長 \(λ_0\) の \(1/n\) 倍になります。
    $$ λ = \displaystyle\frac{λ_0}{n} \quad \cdots ② $$
  3. 振動数 \(f\)
    ガラス中での波の基本式 \(v = fλ\) を \(f\) について解きます。ここで用いる \(v\) と \(λ\) は、上で求めたガラス中での値です。
    $$ f = \displaystyle\frac{v}{λ} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 屈折率: \(n = \displaystyle\frac{c}{v}\)
  • 屈折による波長の変化: \(λ = \displaystyle\frac{λ_0}{n}\)
  • 波の基本式: \(v = fλ\)
計算過程

与えられた数値を各立式に代入して計算します。

  • 速さ \(v\) の計算
    式①に \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\)、\(n = 1.5\) を代入します。
    $$
    \begin{aligned}
    v &= \displaystyle\frac{3.0 \times 10^8}{1.5} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^8 \, (\text{m/s})
    \end{aligned}
    $$
  • 波長 \(λ\) の計算
    式②に \(λ_0 = 6.0 \times 10^{-7} \, \text{m}\)、\(n = 1.5\) を代入します。
    $$
    \begin{aligned}
    λ &= \displaystyle\frac{6.0 \times 10^{-7}}{1.5} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-7} \, (\text{m})
    \end{aligned}
    $$
  • 振動数 \(f\) の計算
    式③に、上で計算した \(v = 2.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\) と \(λ = 4.0 \times 10^{-7} \, \text{m}\) を代入します。
    $$
    \begin{aligned}
    f &= \displaystyle\frac{2.0 \times 10^8}{4.0 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= 0.5 \times 10^{15} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{14} \, (\text{Hz})
    \end{aligned}
    $$
この設問の平易な説明

光が空気中(真空中とほぼ同じ)から水やガラスのような透明なものに入ると、進むスピードが遅くなります。その「遅くなり具合」を示すのが「屈折率」です。屈折率が1.5ということは、速さが \(1/1.5\) 倍、つまり \(2/3\) になるということです。
波には「速さ = 振動数 × 波長」という基本的な関係があります。光がガラスに入るとき、その色が変わらないことから分かるように、振動数(1秒間に波が揺れる回数)は変化しません。
振動数が同じままで速さが遅くなるので、バランスをとるために波長(波1つ分の長さ)も同じ割合で短くなる必要があります。
この問題では、まず速さと波長がそれぞれ \(1/1.5\) 倍になることを計算し、最後にそれらの値を使って「速さ ÷ 波長」で振動数を求めています。

別解: 振動数の不変性を利用した計算

思考の道筋とポイント
屈折現象における最も重要な性質の一つは「振動数が変化しない」ことです。振動数は波を送り出す源(光源)で決まるため、光が伝わる媒質が変わっても一定に保たれます。この性質を利用すれば、ガラス中の速さや波長を計算しなくても、真空中の情報だけで振動数を直接求めることができます。これは物理的本質を捉えた、よりエレガントな解法です。

この設問における重要なポイント

  • 振動数不変の法則: \(f_{\text{ガラス}} = f_{\text{真空}}\)
  • 真空中での波の基本式: \(c = f_{\text{真空}} λ_0\)

具体的な解説と立式
屈折しても振動数 \(f\) は変化しません。したがって、ガラス中での振動数 \(f\) は、真空中での振動数 \(f_0\) に等しくなります。
$$ f = f_0 \quad \cdots ④ $$
真空中での波の基本式は \(c = f_0 λ_0\) です。これを \(f_0\) について解くと、
$$ f_0 = \displaystyle\frac{c}{λ_0} \quad \cdots ⑤ $$
式④、⑤より、ガラス中の振動数 \(f\) は真空中の値を用いて次のように計算できます。
$$ f = \displaystyle\frac{c}{λ_0} $$

使用した物理公式

  • 振動数の不変性: \(f = f_0\)
  • 波の基本式(真空中): \(c = f_0 λ_0\)
計算過程

式⑤に \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\)、\(λ_0 = 6.0 \times 10^{-7} \, \text{m}\) を代入して振動数を求めます。
$$
\begin{aligned}
f &= \displaystyle\frac{c}{λ_0} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{3.0 \times 10^8}{6.0 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= 0.5 \times 10^{15} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{14} \, (\text{Hz})
\end{aligned}
$$
この結果は、メインの解法で得られた値と一致します。

この設問の平易な説明

光がガラスに入っても、その「色」は変わりません。光の色を決めているのは「振動数」です。つまり、ガラスに入っても振動数は変わらないのです。
であれば、わざわざガラスの中の速さや波長を計算しなくても、最初の真空中の情報(速さ \(c\) と波長 \(λ_0\))だけで振動数を計算できるはずです。
真空中の情報を使って「速さ ÷ 波長」を計算すると、同じ答えがより直接的に得られます。これは物理の本質を理解していると使える、スマートな解き方です。

解答 \(v = 2.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\), \(λ = 4.0 \times 10^{-7} \, \text{m}\), \(f = 5.0 \times 10^{14} \, \text{Hz}\)

3 全反射

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答と一部異なる方針で解説を進めます。

  1. 解説の方針が模範解答と異なる点
    • 屈折の法則の表現: 模範解答では屈折の法則を \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{n_2}{n_1}\) という分数形式で用いていますが、本解説では物理的意味がより明確な \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) という形式で立式します。
  2. なぜ模範解答と異なるアプローチを取るのか
    • 物理的意味の明確化: \(n \sin\theta\) という量が媒質の境界を越えても保存される、という法則の本質を捉えやすくなります。
    • 計算の容易さ: 分数を払う手間が省け、立式がより直感的になります。
  3. 結果に与える影響
    • 途中の式の形は異なりますが、物理的に等価な法則であるため、最終的に得られる条件や \(\sin i_0\) の値は模範解答と完全に一致します。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「全反射が起こる条件と臨界角の導出」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
  2. 全反射の定義: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある角度(臨界角)以上になると、光が屈折せずにすべて反射される現象。
  3. 臨界角の定義: 屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角。
  4. 三角関数の性質: \(\sin 90^\circ = 1\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、全反射が起こるための屈折率の大小関係を、屈折の法則から考察する。
  2. 次に、臨界角の定義(屈折角 \(r=90^\circ\))を屈折の法則に適用して、臨界角 \(i_0\) のサインを求める。

思考の道筋とポイント
光が屈折率の異なる媒質の境界面に入射すると、一部は反射し、一部は屈折して進みます。屈折の法則 \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) によると、入射角 \(i\) が大きくなると屈折角 \(r\) も大きくなります。
もし光が屈折率の大きい媒質(\(n_1\))から小さい媒質(\(n_2\))へ進む場合(\(n_1 > n_2\))、入射角 \(i\) を大きくしていくと、やがて屈折角 \(r\) が \(90^\circ\) に達します。このときの入射角が「臨界角 \(i_0\)」です。入射角が臨界角よりさらに大きくなると、屈折光は存在できなくなり、光はすべて反射されます。これが「全反射」です。したがって、全反射は「屈折率 大 → 屈折率 小」のときにのみ起こる現象であることを理解するのが第一歩です。

この設問における重要なポイント

  • 全反射の条件: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ入射すること。すなわち \(n_1 > n_2\)。
  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)。ここで \(i\) は媒質1での入射角、\(r\) は媒質2での屈折角。
  • 臨界角 \(i_0\): 屈折角が \(r=90^\circ\) となる特別な入射角。このとき、屈折光は境界面に沿って進みます。
  • 全反射: 入射角 \(i\) が臨界角 \(i_0\) 以上のとき (\(i \ge i_0\)) に起こります。

具体的な解説と立式
この問題は「全反射が起こる条件」と「\(\sin i_0\)」の2つを求める必要があります。

  1. 全反射が起こる条件の導出
    屈折の法則は \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) です。これを \(\sin r\) について解くと、\(\sin r = \displaystyle\frac{n_1}{n_2} \sin i\) となります。
    屈折光が存在するためには、屈折角 \(r\) が実在する、つまり \(\sin r \le 1\) である必要があります。
    もし \(n_1 \le n_2\) であれば、\(\displaystyle\frac{n_1}{n_2} \le 1\) なので、\(\sin i \le 1\) である限り常に \(\sin r \le 1\) が成り立ち、どんな入射角 \(i\) に対しても屈折光が存在します。この場合、全反射は起こりません。
    一方、もし \(n_1 > n_2\) であれば、\(\displaystyle\frac{n_1}{n_2} > 1\) となります。このとき、入射角 \(i\) を大きくしていくと、\(\sin r = \displaystyle\frac{n_1}{n_2} \sin i\) の値が1に達し、さらに1を超えようとします。しかし \(\sin r\) は1を超えることはできないため、\(\sin r = 1\) となる入射角(臨界角)より大きい角度では、屈折光は存在できなくなり、全反射が起こります。
    したがって、全反射が起こるための条件は、光が入射する側の媒質の屈折率の方が大きいこと、すなわち \(n_1 > n_2\) です。
  2. \(\sin i_0\) の導出
    臨界角 \(i_0\) は、定義より、屈折角が \(r=90^\circ\) になるときの入射角 \(i\) です。
    この条件を屈折の法則の式に適用します。
    $$ n_1 \sin i_0 = n_2 \sin 90^\circ \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
  • 全反射の条件: \(n_1 > n_2\)
  • 臨界角の定義: 屈折角 \(r=90^\circ\) となるときの入射角が \(i_0\)。
計算過程

式①を \(\sin i_0\) について解きます。\(\sin 90^\circ = 1\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin i_0 &= n_2 \times 1 \\[2.0ex]\sin i_0 &= \displaystyle\frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$
となります。

この設問の平易な説明

光が水の中から空気中に出ようとするときのように、光が密な物質(屈折率が大きい)から疎な物質(屈折率が小さい)へ進む場合を考えます。
このとき、斜めに入射する角度をどんどん大きくしていくと、ある角度で、光は空気中に出られなくなり、水面で全部はね返されてしまいます。これが「全反射」です。
したがって、全反射が起こるための条件は、光が入射する側の物質の屈折率(\(n_1\))が、出ていく側の物質の屈折率(\(n_2\))より大きいこと (\(n_1 > n_2\)) です。
「臨界角」とは、ちょうど光が空気中に出られなくなるギリギリの角度のことです。このとき、屈折した光は水面に沿って \(90^\circ\) の方向に進むと考えます。
この「入射角が臨界角 \(i_0\)、屈折角が \(90^\circ\)」という関係を屈折の法則の式に入れると、\(\sin i_0\) の値を計算できます。

解答 条件: \(n_1 > n_2\), \(\sin i_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\)

4 光の分散

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の分散と波長による屈折率の違い」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光の分散の定義。
  2. 媒質の屈折率が光の波長(色)によって異なるという性質(波長分散)。
  3. 可視光線の波長と色の関係(赤が長く、紫や青が短い)。
  4. 波長が短い光ほど、屈折率が大きくなり、より大きく曲げられること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄[a]には、白色光がプリズムで色ごとに分けられる現象の名称を答える。
  2. 空欄[b]を判断するために、まず赤色光と青色光の波長の大小関係を思い出す。
  3. 次に、波長と屈折率の関係(波長が短いほど屈折率は大きい)を適用する。
  4. 最後に、屈折率が大きい光ほど大きく曲がるという事実から、どちらの光がより大きく曲がるかを結論づける。

思考の道筋とポイント
太陽光のような白色光は、実は虹の七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)の光がすべて混ざり合ったものです。プリズムに白色光を入射させると、これらの色が分かれて出てきます。これは、プリズムを構成するガラスの「屈折率」が、通過する光の色(=波長)によってわずかに異なるために起こる現象です。
一般的に、ガラスなどの透明な媒質では、波長の短い光(スペクトルの紫側)ほど屈折率が大きくなります。屈折の法則を考えると、屈折率が大きいほど光の進路はより大きく曲げられます。この2つの関係性(「波長が短いほど屈折率が大きい」「屈折率が大きいほど大きく曲がる」)を組み合わせることが、この問題を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 光の分散: プリズムなどによって、白色光がその成分である様々な色の光(スペクトル)に分けられる現象。空欄[a]の答え。
  • 波長分散: 媒質の屈折率が、そこを通過する光の波長によって異なる性質のこと。これが光の分散の原因です。
  • 屈折率と波長の関係: 一般的な透明な媒質(ガラス、水など)では、波長が短い光ほど屈折率は大きくなります。関係式で表すと \(n_{\text{紫}} > n_{\text{青}} > \dots > n_{\text{黄}} > n_{\text{橙}} > n_{\text{赤}}\) となります。
  • 屈折と曲がり角: 屈折の法則より、同じ入射角で媒質に入射する場合、屈折率が大きい光ほど進路は大きく曲げられます(屈折角は小さくなります)。

具体的な解説と立式
この問題は物理現象の知識を問うもので、計算は不要です。

  1. 空欄[a]について
    問題文にある「白色光はプリズムによっていろいろな色の光に分けられる」現象は、物理用語で「光の分散」と呼ばれます。したがって、[a] に入る言葉は「分散」です。
  2. 空欄[b]について
    赤色光と青色光のどちらが大きく曲がるかを考えます。

    • ステップ1: 波長の比較
      可視光線のスペクトルにおいて、赤色光は波長が長く、青色光は波長が短いです。
      $$ λ_{\text{赤}} > λ_{\text{青}} $$
    • ステップ2: 屈折率の比較
      プリズム(ガラス)の屈折率は、波長が短いほど大きくなります。したがって、赤色光に対する屈折率 \(n_{\text{赤}}\) と青色光に対する屈折率 \(n_{\text{青}}\) の間には、以下の関係が成り立ちます。
      $$ n_{\text{赤}} < n_{\text{青}} $$
    • ステップ3: 曲がり方の比較
      光が空気中(屈折率 \(n_0 \approx 1\))からプリズム(屈折率 \(n\))に入射するときの屈折の法則は \(n_0 \sin i = n \sin r\) です。入射角 \(i\) が一定のとき、屈折率 \(n\) が大きいほど、屈折角 \(r\) は小さくなります。光の進路が「大きく曲がる」とは、この屈折角 \(r\) が小さいことを意味します。
      ステップ2より \(n_{\text{青}}\) の方が \(n_{\text{赤}}\) よりも大きいので、青色光の方が赤色光よりも大きく曲げられます。
      したがって、[b] に入る言葉は「青色光」です。

使用した物理公式

  • 光の分散の定義
  • 屈折率の波長依存性: 一般に波長 \(λ\) が短いほど屈折率 \(n\) は大きい。(\(n_{\text{青}} > n_{\text{赤}}\))
  • 屈折の法則: \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\)
計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた概念的な考察が解答プロセスとなります。

この設問の平易な説明

太陽の光(白色光)をガラスの三角形(プリズム)に通すと、虹色に分かれて見えます。この現象のことを、光の「分散」といいます。これが[a]の答えです。
なぜ色が分かれるかというと、ガラスは光の色によって「曲げやすさ」が違うからです。
光の色は波の長さ(波長)で決まっていて、赤色は波長が長く、青や紫色は波長が短いです。
ガラスは、波長が短い光ほど「強く」曲げる性質を持っています。
赤色光と青色光を比べると、青色光のほうが波長が短いので、プリズムを通り抜けるときに、より大きくグイッと進路を曲げられてしまいます。だから、[b]の答えは「青色光」になります。虹で紫色の光が一番内側(一番大きく曲げられた位置)に見えるのと同じ理屈です。

解答 (a) 分散 (b) 青色光

5 スペクトル

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光源の種類とスペクトルの関係」です。光源が何であるかによって、放出される光のスペクトルがどのように異なるかを問うています。

  1. 連続スペクトルの定義と、その光源(高温の固体など)。
  2. 線スペクトル(輝線スペクトル)の定義と、その光源(高温の気体)。
  3. 白熱電球の発光原理(固体のフィラメントを加熱)。
  4. ネオンサインの発光原理(気体の放電)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、白熱電球が「何」を光らせているのかを考える。
  2. その物質の状態(固体か気体か)から、対応するスペクトルの種類を判断し、空欄[a]を埋める。
  3. 次に、ネオンサインが「何」を光らせているのかを考える。
  4. 同様に、その物質の状態から対応するスペクトルの種類を判断し、空欄[b]を埋める。

思考の道筋とポイント
光をプリズムや分光器で色ごとに分解したものを「スペクトル」と呼びます。スペクトルは、光源の種類によって大きく2つのタイプに分けられます。それは、虹のように色がなめらかにつながって見える「連続スペクトル」と、とびとびの線として見える「線スペクトル」です。
この2つを区別する鍵は、「何が光っているか」です。高温に熱せられた「固体」や「液体」は、あらゆる波長の光を出すため、そのスペクトルは連続的になります。一方、高温に熱せられた「気体」の原子は、その原子の種類に固有の、特定の波長の光しか出すことができません。そのため、そのスペクトルは線状になります。この問題では、白熱電球とネオンサインがそれぞれどちらの原理で光っているかを理解することがポイントです。

この設問における重要なポイント

  • 連続スペクトル:
    • 特徴: ある波長範囲の光が、虹のように途切れることなく連続して分布しているスペクトル。
    • 光源: 高温の固体(例: 白熱電球のフィラメント)、高温の液体、高圧の気体。太陽光のスペクトルも、おおむね連続スペクトルと見なせます。
  • 線スペクトル(輝線スペクトル):
    • 特徴: 特定の波長の光だけが、とびとびに明るい線として現れるスペクトル。
    • 光源: 高温・低圧の気体(原子)。ネオンサインやナトリウムランプ、花火の色などがこれにあたります。
    • 重要性: 線スペクトルのパターンは原子の種類によって決まっているため、「原子の指紋」とも呼ばれ、物質を特定する手がかりになります。

具体的な解説と立式
この問題は物理的な知識を問うものであり、計算式は用いません。

  1. 空欄[a]について
    白熱電球は、ガラス球の中にあるフィラメント(タングステンという金属の細い線=固体)に電流を流し、高温に加熱することで光を放ちます。
    このように、高温の固体から放出される光は、あらゆる波長の光を連続的に含んでいます。
    したがって、そのスペクトルは「連続スペクトル」となります。
    よって、[a] に入る言葉は「連続」です。
  2. 空欄[b]について
    ネオンサインは、ガラス管の中にネオンガス(気体)を封入し、両端の電極に高い電圧をかけることで、気体を放電させて光らせています。
    このように、高温になった気体原子は、その原子のエネルギー準位に応じた、特定の波長の光のみを放出します。
    その結果、スペクトルはとびとびの輝線となり、これを「線スペクトル」と呼びます。
    よって、[b] に入る言葉は「線」です。
使用した物理公式
この問題で直接使用する計算式はありません。以下の定義に基づいています。

  • 連続スペクトルの定義: 高温の固体・液体から放出される、連続的な波長分布を持つ光。
  • 線スペクトルの定義: 高温の気体原子から放出される、特定の波長のみからなる光。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

光を虹色に分解して調べると、その光の「正体」がわかります。光の正体には、大きく分けて2種類あります。

  • 白熱電球の場合: 電球の中の細い金属線(固体)を熱して光らせています。このように、熱くなった「固体」が出す光は、虹のように色が全部なめらかにつながったスペクトルになります。これを「連続スペクトル」と言います。太陽の光もこのタイプです。これが[a]の答えです。
  • ネオンサインの場合: ガラス管の中に入っているネオンという「気体」に電気を流して光らせています。気体が光るときは、その気体の種類によって決まった色の光しか出せません。そのため、スペクトルを調べると、とびとびの明るい「線」のように見えます。これを「線スペクトル」と言い、原子の指紋のようなものです。これが[b]の答えです。

ポイントは、「固体が光っているか、気体が光っているか」で見分けることです。

解答 (a) 連続 (b) 線

6 光の散乱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の散乱と波長の関係」です。なぜ空は青く、夕焼けは赤いのか、という日常的な現象の根本原理を問うています。

  1. 光の散乱の定義。
  2. 散乱の強さが光の波長(色)によって大きく異なること(レイリー散乱)。
  3. 可視光線の波長と色の関係(赤が長く、青や紫が短い)。
  4. 波長が短い光ほど、大気中の気体分子のような微粒子によって強く散乱されること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄[a]には、光が微粒子によって四方に散らされる現象の名称を答える。
  2. 空欄[b]を判断するために、まず赤色光と青色光の波長の大小関係を思い出す。
  3. 次に、散乱のされやすさと波長の関係(波長が短いほど散乱されやすい)を適用し、どちらの光がより散乱されやすいかを結論づける。

思考の道筋とポイント
太陽からの光は、地球の大気を通過する際に、大気中に存在する窒素や酸素などの気体分子(光の波長に比べて非常に小さい粒子)に衝突します。このとき、光は直進できずに四方八方に散らばります。この現象が「光の散乱」です。
この散乱の度合いは、光の色(=波長)によって決まります。特に、大気中の気体分子のように、光の波長よりもずっと小さい粒子による散乱(レイリー散乱)では、波長が短い光ほど圧倒的に強く散乱されるという性質があります。この法則を理解することが、この問題を解き、さらには空の色に関する現象を理解するための鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 光の散乱: 光が空気中の気体分子や微粒子に当たって進行方向を変え、四方八方に広がる現象。空欄[a]の答え。
  • レイリー散乱: 散乱を起こす粒子の大きさが、光の波長よりも十分に小さい場合に起こる散乱。大気中の気体分子による太陽光の散乱がこの典型例です。
  • 散乱強度と波長の関係: レイリー散乱の強度は、波長の4乗に反比例します (\(I \propto \displaystyle\frac{1}{λ^4}\))。この関係から、波長が半分になると散乱の強さは \(2^4=16\) 倍にもなります。つまり、「波長が短い光ほど、著しく強く散乱される」と覚えておくことが重要です。
  • 波長の比較: 可視光線において、赤色光は波長が長く、青色光は波長が短いです (\(λ_{\text{赤}} > λ_{\text{青}}\))。

具体的な解説と立式
この問題は物理現象の知識を問うもので、計算は不要です。

  1. 空欄[a]について
    問題文にある「光が小さな粒子によって四方に散らされる現象」は、物理用語で「光の散乱」の定義そのものです。したがって、[a] に入る言葉は「散乱」です。
  2. 空欄[b]について
    赤色光と青色光のどちらが散乱されやすいかを考えます。

    • ステップ1: 波長の比較
      可視光線のスペクトルにおいて、赤色光の波長 \(λ_{\text{赤}}\) は長く、青色光の波長 \(λ_{\text{青}}\) は短いです。
      $$ λ_{\text{赤}} > λ_{\text{青}} $$
    • ステップ2: 散乱のされやすさの比較
      光の散乱(レイリー散乱)の強度は、波長が短いほど強くなります。
    • ステップ3: 結論
      波長の短い青色光の方が、波長の長い赤色光よりも、大気中の気体分子によって強く散乱されます。したがって、[b] に入る言葉は「青色光」です。
使用した物理公式
この問題で直接使用する計算式はありませんが、以下の法則に基づいています。

  • 光の散乱の定義
  • レイリー散乱の法則(定性的理解): 散乱の強さは、光の波長が短いほど強くなる。
計算過程

この問題は知識を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

太陽の光が地球に届くとき、空気の中にある目に見えないほど小さな粒(窒素や酸素の分子)にぶつかって、光が四方八方に飛び散ります。この現象を光の「散乱」といいます。これが[a]の答えです。
太陽の光には虹の七色がすべて混ざっていますが、色によって散乱のされやすさが全く違います。空気の粒は、波長の短い青や紫の光を特に散乱させやすい性質を持っています。
赤色光と青色光を比べると、青色光のほうが波長が短いので、大気中の気体分子によってより激しく散乱されます。これが[b]の答えです。
この現象こそが、私たちが毎日見ている空の色の理由です。昼間の空は、太陽光のうちの青い光が空全体に散乱されて私たちの目に届くため、青く見えます。一方、夕焼けが赤いのは、太陽が地平線近くにあるとき、光が非常に長い距離の大気を通過してくるためです。その間に青い光はほとんど散乱し尽くされてしまい、散乱されにくい波長の長い赤い光だけが私たちの目に届くため、空が赤く見えるのです。

解答 (a) 散乱 (b) 青色光

7 偏光

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光の偏光」です。光が持つ横波としての性質と、それによって生じる現象の定義を問うています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光が進行方向に対して垂直に振動する「横波」であることの理解。
  2. 「自然光」の定義:光の振動方向がランダムであらゆる方向を向いている状態。
  3. 「偏光」の定義:光の振動方向が特定の向きにそろった状態。
  4. 偏光が生成される現象の例(反射、偏光板の透過など)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文が記述している「自然光が反射すると特定方向に偏って振動する光となる」という現象を理解する。
  2. この現象によって生じる、振動方向が偏った光を指す物理用語を答える。

思考の道筋とポイント
光は、電場と磁場が互いに垂直に振動しながら進む波(電磁波)であり、その振動方向は進行方向に対して常に垂直です。このような波を「横波」と呼びます。
太陽光や電球の光など、私たちが日常的に目にする光は「自然光」と呼ばれ、その振動方向は進行方向に対して垂直な面内で、あらゆる方向にランダムに分布しています。
しかし、この自然光が水面やガラス面で反射したり、偏光板という特殊なフィルターを通過したりすると、特定の振動方向の成分だけが選択的に取り出されます。その結果、光の振動方向が特定の向きにそろった状態になります。このように振動方向が偏った光のことを「偏光」と呼びます。この定義を正確に理解しているかが問われています。

この設問における重要なポイント

  • 横波: 波の振動方向が、波の進行方向と垂直である波。光は横波です。
  • 自然光: 光の振動方向が、進行方向に垂直な面内で、あらゆる方向にランダムかつ均等に分布している光。
  • 偏光(直線偏光): 光の振動方向が、特定の一直線上にそろっている光。
  • 偏光子(偏光板): 自然光から特定の振動方向の光だけを取り出して偏光を作るためのフィルター。
  • 反射による偏光: 自然光が水面やガラス面などで反射する際、反射光は境界面に平行な振動成分を多く含む偏光になります。これにより、水面のギラつきなどが発生します。

具体的な解説と立式
この問題は物理用語の定義を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。
問題文には「自然光が反射すると特定方向に偏って振動する光となる」と書かれています。
これは、

  • 振動方向がランダムだった光(自然光)が、
  • 反射という現象を経て、
  • 振動方向が特定の向きにそろった光に変化した、

ということを意味しています。
このような「振動方向が偏った光」を指す物理用語は「偏光」です。
したがって、空欄[a]には「偏光」が入ります。

使用した物理公式
この問題で直接使用する計算式はありません。以下の定義に基づいています。

  • 偏光の定義: 光の振動方向が特定の向きにそろった光。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

光は、進む向きに対して垂直な方向にブルブルと震えながら進む「横波」の一種です。
ふだん私たちが浴びている太陽の光や電球の光は、この震える方向がバラバラで、あらゆる方向に震えています。これを「自然光」と呼びます。
ところが、この自然光が水面やガラスでキラッと反射すると、不思議なことに、反射した光は特定の方向にだけ震える成分が強くなります。
例えるなら、色々な方向に手を振っていた大勢の人が、反射をきっかけに全員が「横振り」だけするようになるイメージです。
このように、振動の向きがそろった特別な光のことを「偏光」と呼びます。偏光サングラスは、この反射光(偏光)をカットして、水面などのギラつきを抑える仕組みになっています。

解答 (a) 偏光

8 平面鏡

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平面鏡による像の性質と移動」です。物体に対して鏡が動いたときに、像がどのように移動するかを問うています。

  1. 平面鏡の像は、鏡面に対して物体と対称な位置にできること。
  2. (物体から鏡までの距離) = (鏡から像までの距離) という関係。
  3. 物体、鏡、像の相対的な位置関係の変化を正しく捉えること。
  4. 物体の位置は固定されているという問題設定の理解。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 鏡を動かす前の状態について、物体、鏡、像の位置関係を整理する。
  2. 鏡を動かした後の状態について、同様に位置関係を整理する。
  3. 物体の位置を基準として、像が移動前と移動後でどの位置にいるかを計算する。
  4. 像の移動前の位置と移動後の位置の差を求めて、移動距離を算出する。

思考の道筋とポイント
平面鏡の問題で最も重要なのは、「像は常に鏡面に対して物体と対称な位置にできる」という大原則です。この問題では、物体は静止しており、鏡が動きます。その結果として像がどこへ移動するかを考えます。
鏡が物体から \(10\,\text{cm}\) 遠ざかると、物体と鏡の間の距離が \(10\,\text{cm}\) 増えます。対称性の原則から、鏡と像の間の距離も同じだけ、つまり \(10\,\text{cm}\) 増えることになります。物体の位置は変わらないので、像は「物体と鏡の距離の増加分」と「鏡と像の距離の増加分」の両方の影響を受けて移動することになります。この点を正確に把握することが鍵です。

この設問における重要なポイント

  • 平面鏡の像の性質:
    • 像は鏡面に対して物体と線対称の位置にできる。
    • (物体から鏡までの距離) = (鏡から像までの距離) が常に成り立つ。
    • 像は正立(上下左右が物体と同じ)で、大きさも物体と同じ。
    • 像は虚像(スクリーンに映すことができない、光が集まっていない像)である。
  • 基準点の固定: この問題では、物体は動かず、鏡が動きます。したがって、物体の位置を基準(不動点)として、鏡と像の位置の変化を考えるのが分かりやすいです。

具体的な解説と立式
物体の初期位置を基準点として、各々の位置を考えます。

  1. 初期状態
    • 物体と鏡の初期距離を \(d\) とします。
    • 物体の位置を \(x_{\text{物体}} = 0\) とします。
    • 鏡の初期位置は \(x_{\text{鏡,初}} = d\) となります。
    • 像は鏡面に対して対称な位置にできるので、鏡からさらに \(d\) だけ奥の位置にできます。
    • したがって、像の初期位置は \(x_{\text{像,初}} = x_{\text{鏡,初}} + d = d + d = 2d\) となります。
  2. 鏡を移動させた後
    • 平面鏡を物体から水平方向に \(10\,\text{cm}\) 遠ざけます。
    • 鏡の移動後の位置は \(x_{\text{鏡,後}} = d + 10\) となります。
    • このとき、物体と鏡の新しい距離は \(d+10\) です。
    • 対称性の原則から、鏡と像の新しい距離も \(d+10\) となります。
    • したがって、像の移動後の位置は \(x_{\text{像,後}} = x_{\text{鏡,後}} + (d+10) = (d+10) + (d+10) = 2d + 20\) となります。
  3. 像の移動距離
    • 像の移動距離は、移動後の位置と初期位置の差で求められます。
      $$ Δx_{\text{像}} = x_{\text{像,後}} – x_{\text{像,初}} $$

使用した物理公式

  • 平面鏡の結像法則: (物体から鏡までの距離) = (鏡から像までの距離)
計算過程

上で立てた式に、各位置の値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
Δx_{\text{像}} &= x_{\text{像,後}} – x_{\text{像,初}} \\[2.0ex]&= (2d + 20) – 2d \\[2.0ex]&= 20 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
したがって、像は物体から遠ざかる向きに \(20\,\text{cm}\) 移動します。

この設問の平易な説明

あなたが鏡の前に立っている姿を想像してみてください。
1. 最初、あなたと鏡の距離が \(d\) だとします。鏡の中のあなた(像)も鏡から \(d\) の距離にいるので、あなたと像との距離は \(2d\) です。
2. 次に、あなたは動かずに、鏡だけがあなたから \(10\,\text{cm}\) 遠ざかったとします。
3. すると、あなたと鏡の距離は \(d+10\,\text{cm}\) になります。
4. 鏡の中のあなた(像)は、常に鏡を挟んで対称な位置にいるので、新しい鏡の位置からさらに \(d+10\,\text{cm}\) 奥に移動します。
5. 結果として、あなたと像との新しい距離は \((d+10) + (d+10) = 2d+20\,\text{cm}\) となります。
最初のあなたと像の距離は \(2d\)、後の距離は \(2d+20\,\text{cm}\) なので、像はあなたから \(20\,\text{cm}\) 遠ざかったことになります。

別解: 相対的な動きで考える

思考の道筋とポイント
物体、鏡、像の3者の関係性に注目します。物体と像は、常に鏡を挟んで対称な関係にあります。このことから、物体が静止している場合、像は鏡の動きに対して「2倍」の距離を動くように見える、という関係が導かれます。この考え方を使うと、より直感的に問題を解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • 物体に対する鏡の変位を \(Δx_{\text{鏡}}\) とする。
  • 物体に対する像の変位は \(Δx_{\text{像}} = 2 \times Δx_{\text{鏡}}\) となる。

具体的な解説と立式
物体は静止しています。鏡は物体から \(10\,\text{cm}\) 遠ざかります。これは、物体から見た鏡の変位が \(+10\,\text{cm}\) であることを意味します。
物体と像の距離は、物体と鏡の距離の常に2倍です。
$$ (\text{物体}-\text{像}間距離) = 2 \times (\text{物体}-\text{鏡}間距離) $$
この関係から、物体と鏡の間の距離が \(10\,\text{cm}\) 増加すると、物体と像の間の距離は \(2 \times 10\,\text{cm} = 20\,\text{cm}\) 増加します。
物体の位置は固定されているので、物体と像の間の距離の増加分は、そのまま像の移動距離となります。

使用した物理公式

  • (物体と像の距離) = 2 × (物体と鏡の距離)
計算過程

鏡の移動距離 \(Δx_{\text{鏡}} = 10\,\text{cm}\)
像の移動距離 \(Δx_{\text{像}}\) は、
$$
\begin{aligned}
Δx_{\text{像}} &= 2 \times Δx_{\text{鏡}} \\[2.0ex]&= 2 \times 10 \\[2.0ex]&= 20 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

あなたが鏡の前に立っているとします。もし鏡があなたから1m離れると、鏡の中のあなた(像)も鏡から1m離れます。結局、あなたと鏡の中のあなたとの距離は、合計で2m離れることになります。
つまり、鏡が動いた距離の「2倍」、像は動いて見えるのです。
この問題では鏡が \(10\,\text{cm}\) 動いたので、像は \(10\,\text{cm} \times 2 = 20\,\text{cm}\) 動きます。

解答 20 cm

9 凸レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「凸レンズによる虚像の形成」です。物体を焦点の内側に置いた場合にできる像の位置、大きさ、種類を、レンズの公式を用いて計算します。

  1. レンズの公式(写像公式): \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  2. 倍率の公式: \(m = \displaystyle\frac{|b|}{a}\)
  3. 凸レンズにおける符号の約束:
    • 物体距離 \(a\) は常に正。
    • 凸レンズの焦点距離 \(f\) は正。
    • 像距離 \(b\) が正なら実像、負なら虚像。
  4. 物体を焦点の内側に置いたときの凸レンズの性質(正立拡大虚像ができること)の理解。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、物体距離 \(a\)、焦点距離 \(f\)、物体の大きさ \(h\) の値を読み取り、符号に注意して整理する。
  2. レンズの公式に \(a\) と \(f\) の値を代入し、像距離 \(b\) を求める。
  3. \(b\) の符号から、像の種類(実像か虚像か)と位置(レンズの前後どちらか)を判断する。
  4. 倍率の公式を用いて倍率 \(m\) を計算する。
  5. 倍率と元の物体の大きさから、像の大きさを計算する。
  6. 以上の結果をまとめて、像の位置、大きさ、種類を答える。

思考の道筋とポイント
凸レンズの問題では、まず物体が焦点距離に対してどの位置にあるかを確認することが重要です。この問題では、焦点距離 \(f=20\,\text{cm}\) に対して、物体はレンズの前方 \(a=15\,\text{cm}\) の位置にあります。つまり、\(a < f\) であり、物体は焦点の内側に置かれています。
凸レンズで物体を焦点の内側に置くと、虫眼鏡で物体をのぞいたときのように、物体と同じ側に、大きく見える正立の虚像ができます。この定性的な理解を持っておくと、計算結果の妥当性を判断するのに役立ちます。
計算は、レンズの公式と倍率の公式に、符号のルールを正しく適用して進めます。特に、計算結果として得られる像距離 \(b\) の符号が、像の性質を決定する重要な情報を持っていることを意識しましょう。

この設問における重要なポイント

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
    • \(a\): 物体距離(レンズから物体までの距離)
    • \(b\): 像距離(レンズから像までの距離)
    • \(f\): 焦点距離
  • 符号の約束:
    • 光が進む向きを正とする。
    • 凸レンズの焦点距離 \(f\) は正。凹レンズの場合は負。
    • 像距離 \(b\) が正の場合、レンズの後方(光が集まる側)にできる「実像」。
    • 像距離 \(b\) が負の場合、レンズの前方(物体と同じ側)にできる「虚像」。
  • 倍率 \(m\): \(m = \displaystyle\frac{|b|}{a}\)。像の大きさは、(物体の大きさ) \(\times\) (倍率) で求められる。
  • 像の種類:
    • 実像: 実際に光が集まってできる像。スクリーンに映すことができる。倒立(上下逆さま)になる。
    • 虚像: そこから光が出てくるように見える見かけの像。スクリーンには映らない。正立(上下が物体と同じ)になる。

具体的な解説と立式

  1. 像の位置と種類の決定
    レンズの公式に、与えられた値を代入します。

    • 物体距離: \(a = 15\,\text{cm}\)
    • 焦点距離: \(f = 20\,\text{cm}\) (凸レンズなので正)

    $$ \displaystyle\frac{1}{15} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{20} \quad \cdots ① $$
    この方程式を \(b\) について解くことで、像の位置と種類がわかります。

  2. 像の大きさの決定
    まず、倍率 \(m\) を計算します。
    $$ m = \displaystyle\frac{|b|}{a} \quad \cdots ② $$
    次に、像の大きさ \(h’\) を求めます。物体の大きさ \(h = 3.0\,\text{cm}\) を用いて、
    $$ h’ = m \times h \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \displaystyle\frac{|b|}{a}\)
計算過程
  1. 像距離 \(b\) の計算
    式①を \(\displaystyle\frac{1}{b}\) について変形し、計算します。
    $$
    \begin{aligned}
    \displaystyle\frac{1}{b} &= \displaystyle\frac{1}{20} – \displaystyle\frac{1}{15} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{3}{60} – \displaystyle\frac{4}{60} \\[2.0ex]&= -\displaystyle\frac{1}{60}
    \end{aligned}
    $$
    したがって、像距離 \(b\) は、
    $$ b = -60 \, (\text{cm}) $$
    \(b\) が負の値なので、像はレンズの前方(物体と同じ側)\(60\,\text{cm}\) の位置にできる「虚像」であることがわかります。また、虚像は常に「正立」です。
  2. 像の大きさ \(h’\) の計算
    まず、倍率 \(m\) を式②から求めます。
    $$
    \begin{aligned}
    m &= \displaystyle\frac{|-60|}{15} \\[2.0ex]&= 4.0 \, (\text{倍})
    \end{aligned}
    $$
    次に、この倍率を使って像の大きさ \(h’\) を式③から求めます。
    $$
    \begin{aligned}
    h’ &= 4.0 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 12 \, (\text{cm})
    \end{aligned}
    $$

以上の結果をまとめると、像は「レンズの前方 \(60\,\text{cm}\) の所に、大きさ \(12\,\text{cm}\) の正立虚像」としてできます。

この設問の平易な説明

この問題は、虫眼鏡で物をのぞいている状況と同じです。虫眼鏡(凸レンズ)を物に近づけていくと(焦点の内側に入れると)、物が大きく、まっすぐに見えますよね。これは「正立虚像」が見えている状態です。
レンズの公式という便利な道具を使うと、この像がどこに、どれくらいの大きさで見えるかを正確に計算できます。
1. まず、公式に「レンズと物体の距離(\(15\,\text{cm}\))」と「レンズの焦点距離(\(20\,\text{cm}\))」を入れて計算すると、像の位置が出てきます。計算結果がマイナスになったのは、「像が物体と同じ側にできますよ」というサインです。結果は \(-60\,\text{cm}\) なので、レンズの前方 \(60\,\text{cm}\) の位置に像ができます。
2. 次に、倍率を計算します。像の位置(\(60\,\text{cm}\))を物体の位置(\(15\,\text{cm}\))で割ると、\(60 \div 15 = 4\) で、4倍の大きさに見えることがわかります。
3. 元の物体の大きさが \(3.0\,\text{cm}\) だったので、像の大きさは \(3.0\,\text{cm} \times 4 = 12\,\text{cm}\) となります。

解答 レンズの前方 60 cm の所に大きさ 12 cm の正立虚像
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]

PVアクセスランキング にほんブログ村