基本例題
基本例題57 弦の振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 定在波の基本公式を用いる解法
- 模範解答が図から直感的に波長を読み取るのに対し、別解では弦の長さと腹の数の関係式から論理的に波長を導出します。
- 設問(2)の別解: 弦の長さと腹の数の比例関係を用いる解法
- 模範解答が(1)で求めた波長を具体的に用いて計算するのに対し、別解では「波の速さが一定なら、弦の長さは腹の数に比例する」という関係から直接答えを導きます。
- 設問(1)の別解: 定在波の基本公式を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 公式の定着と論理的思考の訓練: (1)の別解は、定在波の基本公式を確実に適用する練習になり、図から直感的に判断するだけでなく、数式で論理的に考える力を養います。
- 物理的本質の深化: (2)の別解は、なぜ波長が一定なのか(=波の速さが一定だから)という物理的背景に立ち返り、そこから導かれる比例関係に着目するため、問題の背後にある物理法則への理解が深まります。
- 解法の効率化: 比例関係を見抜くことで、中間の計算(波長の具体的な値を求める)を省略し、より簡潔に解に至る視点を学ぶことができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「弦に生じる定在波の基本性質」です。弦の長さ、波長、腹の数の関係を正しく理解し、波の基本式 \(v=f\lambda\) を使って物理量を計算できるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定在波の基本構造: 弦の両端が固定端(または自由端)の場合、定在波ができます。固定端は常に「節」になります。腹と節の間隔は波長の4分の1 (\(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\))、節と節(または腹と腹)の間隔は波長の2分の1 (\(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\)) です。
- 弦の長さと波長の関係: 両端が節となる定在波では、弦の長さ \(L\) は半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の整数倍になります。すなわち、腹の数を \(n\) とすると、\(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) という関係が成り立ちます。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v=f\lambda\) という関係が成り立ちます。
- 弦を伝わる波の速さ: 弦を伝わる波の速さ \(v\) は、弦の張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) によって決まります (\(v=\sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\))。この問題では、おもりPと弦の種類が変わらないため、\(v\) は一定です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、与えられた図(腹が2個)から、弦の長さと波長の関係を見抜き、波長 \(\lambda\) を求めます。次に、波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて速さ \(v\) を計算します。
- (2)では、弦の条件(張力、線密度)と振動数が変わらないため、波の速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) は(1)と同じであることを利用します。腹が3個の定在波ができるときの弦の長さを、(1)で求めた波長を使って計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、問題で与えられた図1(腹が2個の定在波)を観察し、弦の長さ \(0.50\) m と波長 \(\lambda\) の関係を読み取ります。弦の両端A, Bは振動しない「節」となっていることに注目するのが鍵です。波長が求まれば、与えられている振動数 \(f\) と波の基本式 \(v=f\lambda\) を使って、波の速さ \(v\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 弦の両端A, Bは定在波の「節」である。
- 節から隣の節までの距離は、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) に等しい。
- 図1では、弦の長さ \(0.50\) m の中に、腹が2つ、つまり半波長の区間が2つ含まれている。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて速さを求める。
具体的な解説と立式
図1を見ると、弦AB上には腹が2個ある定在波ができています。弦の左端Aと右端Bは、おんさと滑車に固定されているため、振動しない「節」となります。
定在波において、節と節の間の距離は半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) です。
図1では、A(節)- 中央の節 – B(節)という構造になっており、弦の全長 \(0.50\) m は、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の2つ分に相当します。
これは、波長 \(\lambda\) そのものと等しい長さです。
したがって、波長 \(\lambda\) は弦の長さと等しくなります。
$$ \lambda = 0.50 \, \text{[m]} $$
次に、弦を伝わる波の速さ \(v\) を求めます。波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、次の関係式が成り立ちます。
$$ v = f\lambda $$
使用した物理公式
- 定在波の波長と弦の長さの関係(図からの読み取り)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
まず、波長 \(\lambda\) は図1から \(0.50\) m と求まります。
次に、この \(\lambda\) の値と、問題文で与えられた振動数 \(f = 4.6 \times 10^2\) Hz を、波の基本式 \(v = f\lambda\) に代入して速さ \(v\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda \\[2.0ex]
&= (4.6 \times 10^2) \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 2.3 \times 10^2
\end{aligned}
$$
速さの単位は m/s です。
(1)は2ステップで考えます。
ステップ1:波長を求める
図1の波の形を見ると、山が1つと谷が1つありますね。これでちょうど「1波長」分です。問題文でこのときの弦の長さが \(0.50\) m と与えられているので、波長 \(\lambda\) はそのまま \(0.50\) m となります。
ステップ2:速さを求める
波の速さは「速さ = 振動数 × 波長」という公式で計算できます。振動数は問題文にある \(4.6 \times 10^2\) Hz、波長はステップ1で求めた \(0.50\) m なので、この2つを掛け算するだけです。\(4.6 \times 10^2 \times 0.50 = 2.3 \times 10^2\) m/s となります。
定在波の波長は \(\lambda = 0.50\) m、弦を伝わる波の速さは \(v = 2.3 \times 10^2\) m/s となります。図から波長を正しく読み取り、基本公式に適用する、という基本的な流れが確認できました。
思考の道筋とポイント
図から直感的に判断するのではなく、両端が節となる定在波の一般式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) を用いて、より形式的に波長 \(\lambda\) を導出します。ここで \(L\) は弦の長さ、\(n\) は腹の数です。この方法を使うことで、どんな腹の数の問題にも機械的に対応できるようになります。
この設問における重要なポイント
- 両端が節の定在波の公式: \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) (\(n\) は腹の数)
- 問題の条件を公式に当てはめる: \(L = 0.50\) m, \(n=2\)
具体的な解説と立式
弦の両端A, Bが節となる定在波が成立するための条件は、弦の長さ \(L\) が、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の自然数 \(n\) 倍になることです。この自然数 \(n\) は、定在波の腹の数に一致します。
$$ L = n \frac{\lambda}{2} \quad (n=1, 2, 3, \dots) $$
設問(1)の状況では、弦の長さは \(L = 0.50\) m、腹の数は \(n=2\) です。これらの値を上の式に代入して、波長 \(\lambda\) を求めます。
速さ \(v\) の計算は、主たる解法と同様に波の基本式を用います。
$$ v = f\lambda $$
使用した物理公式
- 両端が節の定在波の条件式: \(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
まず、定在波の条件式に \(L=0.50\) m, \(n=2\) を代入して \(\lambda\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0.50 &= 2 \times \frac{\lambda}{2} \\[2.0ex]
0.50 &= \lambda
\end{aligned}
$$
よって、波長は \(\lambda = 0.50\) m となります。
次に、この \(\lambda\) の値と振動数 \(f = 4.6 \times 10^2\) Hz を用いて、速さ \(v\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda \\[2.0ex]
&= (4.6 \times 10^2) \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 2.3 \times 10^2
\end{aligned}
$$
速さの単位は m/s です。
定在波には「弦の長さ = 腹の数 × (波長の半分)」という便利な公式があります。
今回は、弦の長さが \(0.50\) m、腹の数が \(2\) 個なので、公式にあてはめると「\(0.50 = 2 \times (\text{波長の半分})\)」となります。これを計算すると、波長の半分が \(0.25\) m だとわかるので、波長全体では \(0.50\) m となります。
波長がわかれば、あとは主たる解法と同じで、「速さ = 振動数 × 波長」の式で速さを計算します。
主たる解法と同じく、波長 \(\lambda = 0.50\) m、速さ \(v = 2.3 \times 10^2\) m/s という結果が得られました。図からの直感的な判断と、公式を用いた形式的な計算が一致することを確認できました。この公式は(2)を解く上でも役立ちます。
問(2)
思考の道筋とポイント
この問題では、弦の長さを変えて、腹が3個の定在波を作ります。重要なのは「何が変化して、何が変化しないか」を明確にすることです。おもりPは同じなので弦の張力は変わらず、弦の線密度も同じです。したがって、弦を伝わる波の速さ \(v = \sqrt{S/\rho}\) は(1)のときと変わりません。また、振動源であるおんさも同じなので、振動数 \(f\) も変わりません。
波の基本式 \(v=f\lambda\) において \(v\) と \(f\) が一定であるため、波長 \(\lambda\) も(1)のときと同じ値になります。
この不変の波長 \(\lambda\) を使って、腹が3個の定在波ができるときの弦の長さ \(l\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 弦の張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) が一定のため、波の速さ \(v\) は一定。
- 振動数 \(f\) も一定。
- したがって、波長 \(\lambda = v/f\) も一定である。
- 腹が3個の定在波では、弦の長さ \(l\) は半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の3倍に等しい。
具体的な解説と立式
弦を伝わる波の速さ \(v\) は、弦の張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) のみで決まります。おもりPと弦の種類は変わらないので、\(S\) と \(\rho\) は一定であり、したがって速さ \(v\) も一定です。また、振動数 \(f\) もおんさで決まるため一定です。
波の基本式 \(v=f\lambda\) より、\(v\) と \(f\) が一定なので、波長 \(\lambda\) も(1)で求めた値のまま変化しません。
$$ \lambda = 0.50 \, \text{[m]} $$
次に、腹が3個の定在波ができる条件を考えます。図2のように、腹が3個の場合、弦の長さ \(l\) の中には半波長の区間が3つ含まれます。
したがって、弦の長さ \(l\) は次のように表せます。
$$ l = 3 \times \frac{\lambda}{2} $$
使用した物理公式
- 両端が節の定在波の条件式: \(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
- 波の速さ、振動数、波長が一定であるという考察
(1)で求めた波長 \(\lambda = 0.50\) m を、上で立式した \(l = 3 \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= 3 \times \frac{0.50}{2} \\[2.0ex]
&= 3 \times 0.25 \\[2.0ex]
&= 0.75
\end{aligned}
$$
したがって、弦の長さを \(0.75\) m にすればよいことがわかります。
(1)から、この弦を伝わる波の「波長」は \(0.50\) m で固定されていることがわかっています。
定在波の「腹1個分」の長さは、波長の半分、つまり \(0.50 \div 2 = 0.25\) m です。
今回は腹を3個作りたいので、必要な弦の長さは「腹1個分の長さ × 3個」で計算できます。
よって、\(0.25 \times 3 = 0.75\) m となります。
腹が3個の定在波を生じさせるには、ABの長さを \(0.75\) m にすればよい。この値は、(1)のときの長さ \(0.50\) m の \(1.5\) 倍 (\(3/2\) 倍) であり、腹の数が \(2\) 個から \(3\) 個へ \(1.5\) 倍になったことと対応しており、妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
(1)で求めた具体的な波長 \(\lambda\) の値を使わずに、より普遍的な関係性から答えを導きます。定在波の条件式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) と、波長が一定であること \(\lambda = \text{const.}\) を組み合わせると、弦の長さ \(L\) は腹の数 \(n\) に正比例する (\(L \propto n\)) ことがわかります。この比例関係を用いて、腹が2個のときの長さと、腹が3個のときの長さの比から、未知の長さ \(l\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 波の速さ \(v\) と振動数 \(f\) が一定なので、波長 \(\lambda\) も一定である。
- 定在波の条件式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) において \(\lambda\) が定数なので、弦長 \(L\) は腹の数 \(n\) に比例する。
- 比例式を立てて解を求める。
具体的な解説と立式
両端が節となる定在波の条件式は、腹の数を \(n\)、弦の長さを \(L\)、波長を \(\lambda\) として、
$$ L = n \frac{\lambda}{2} $$
と書けます。
この問題の状況では、波の速さ \(v\) と振動数 \(f\) が一定であるため、波長 \(\lambda = v/f\) も一定です。
したがって、\(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) は定数とみなせます。このことから、弦の長さ \(L\) は腹の数 \(n\) に正比例することがわかります。
$$ L \propto n $$
この比例関係を用いて、状況1(腹が2個)と状況2(腹が3個)について式を立てます。
状況1: 弦の長さを \(L_1 = 0.50\) m、腹の数を \(n_1 = 2\)。
状況2: 弦の長さを \(L_2 = l\)、腹の数を \(n_2 = 3\)。
比例式は次のように立てられます。
$$ \frac{L_2}{L_1} = \frac{n_2}{n_1} $$
使用した物理公式
- 両端が節の定在波の条件式: \(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
- 比例関係の導出と利用
上で立式した比例式に、既知の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{l}{0.50} &= \frac{3}{2} \\[2.0ex]
l &= 0.50 \times \frac{3}{2} \\[2.0ex]
l &= 0.50 \times 1.5 \\[2.0ex]
l &= 0.75
\end{aligned}
$$
したがって、弦の長さを \(0.75\) m にすればよいことがわかります。
この問題では、波の性質(速さや波長)は変わりません。変わるのは「弦の長さ」と「できる腹の数」だけです。
定在波のルールから、「弦の長さ」と「腹の数」は単純な比例関係にあります。
つまり、「腹の数が2倍になれば、弦の長さも2倍必要」「腹の数が1.5倍になれば、弦の長さも1.5倍必要」ということです。
今回は、腹の数が2個から3個へ、つまり \(3 \div 2 = 1.5\) 倍になります。
したがって、必要な弦の長さも、もとの長さ \(0.50\) m の \(1.5\) 倍になります。
計算すると \(0.50 \times 1.5 = 0.75\) m となります。
主たる解法と全く同じ \(0.75\) m という結果が得られました。この方法は、(1)で求めた波長の具体的な数値を使わずに、物理的な比例関係だけに着目して解くことができるため、見通しが良く、計算間違いも起こしにくいエレガントな解法と言えます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 弦に生じる定在波の基本条件:
- 核心: この問題の根幹は、弦の両端が節となる定在波が成立するための条件式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) を理解し、使いこなすことにあります。ここで \(L\) は弦の長さ、\(n\) は腹の数、\(\lambda\) は波長です。
- 理解のポイント:
- 物理的意味: この式は「弦の長さの中に、半波長がちょうど整数個だけ収まらなければならない」という、定在波ができるための幾何学的な制約を表しています。
- 腹の数との関係: 腹が1つできるごとに、半波長 (\(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\)) ぶんの長さが必要になる、とイメージすると覚えやすいです。
- 波の基本性質:
- 核心: 物理現象を正しく分析するためには、「何が一定で、何が変化するのか」を見極めることが重要です。
- 理解のポイント:
- 波の速さ \(v\): 弦を伝わる波の速さは、弦の性質(張力 \(S\) と線密度 \(\rho\))だけで決まります。おもりや弦の種類が変わらない限り、速さ \(v\) は一定です。
- 振動数 \(f\): 振動数は波の発生源(この問題ではおんさ)によって決まります。同じおんさを使い続ける限り、振動数 \(f\) は一定です。
- 波長 \(\lambda\): 波長は、速さ \(v\) と振動数 \(f\) から \( \lambda = v/f \) の関係で決まります。したがって、\(v\) と \(f\) が両方一定なら、波長 \(\lambda\) も一定となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 気柱の共鳴(開管・閉管): 管の内部にできる音波の定在波も、本質的には全く同じ考え方で解けます。弦の両端が「節」であるのに対し、開管の開口端は「腹」、閉管の閉口端は「節」になる点に注意すれば、同じように \(L\) と \(\lambda\) の関係式を立てられます。(※厳密には開口端補正が必要な場合もあります)
- 振動数を変える問題: 弦の長さ \(L\) とおもり \(P\) を固定して、振動数 \(f\) を変えていく問題。この場合、\(L\) と \(v\) が一定なので、定在波の条件 \(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2} = n \frac{v}{2f}\) より、\(f = n \times \displaystyle\frac{v}{2L}\) となります。これは、定在波ができる振動数 \(f\) が、基本振動数 (\(n=1\) のとき) の整数倍になることを示しています。
- おもりを変える問題: 弦の長さ \(L\) と振動数 \(f\) を固定し、おもりの質量 \(M\) を変える問題。張力 \(S=Mg\) が変化するため、速さ \(v = \sqrt{S/\rho}\) が変化します。定在波ができる条件は、\(L = n \displaystyle\frac{\lambda}{2} = n \frac{v}{2f} = \frac{n}{2f}\sqrt{\displaystyle\frac{Mg}{\rho}}\) となり、特定の質量のおもりを使ったときにだけ定在波が観測されます。
- 初見の問題での着眼点:
- まず、問題設定から「不変量」と「変数」を整理します。弦の長さ \(L\)、振動数 \(f\)、張力 \(S\)、線密度 \(\rho\) のうち、何が一定で何が変わるのかを最初に明確にします。
- 次に、弦の端の条件を確認します。通常は両端が節(固定端)です。
- 定在波の簡単な図を自分で描いてみます。腹の数と波長の関係を視覚的に捉えることで、\(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) のような公式の立式ミスを防ぎます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 波長 \(\lambda\) の読み取りミス:
- 誤解: 弦の長さ \(L\) を、そのまま波長 \(\lambda\) だと思い込んでしまう。(1)ではたまたま \(L=\lambda\) でしたが、これは腹が2個の特別な場合です。
- 対策: 「腹1個の長さが、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) である」という基本を徹底します。そして、定在波の図を描き、弦の長さ \(L\) の中に半波長が何個入っているかを数える癖をつけましょう。公式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) を正確に適用するのが最も安全です。
- (2)で物理量が変化するときの混乱:
- 誤解: 弦の長さ \(l\) を変えたのだから、波長 \(\lambda\) や速さ \(v\) も変わるに違いない、と勘違いしてしまう。
- 対策: 「原因と結果」を正しく理解することが重要です。波の速さ \(v\) の原因は「媒質の性質(張力・線密度)」、振動数 \(f\) の原因は「波源(おんさ)」です。弦の長さを変えるという操作は、これらの原因に影響を与えません。したがって、\(v\) と \(f\) は一定であり、その結果として波長 \(\lambda=v/f\) も一定になる、という論理の流れをしっかり押さえましょう。
- 腹の数と波長の逆数関係の混同:
- 誤解: 腹の数が \(n\) 倍になったら、波長が \(1/n\) 倍になるといった誤った関係を考えてしまう。
- 対策: \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の式を正しく変形すれば、\(\lambda = \displaystyle\frac{2L}{n}\) となります。つまり、同じ長さ \(L\) の弦で異なる定在波を作る場合(振動数を変える場合など)は、波長 \(\lambda\) は腹の数 \(n\) に反比例します。しかし、この問題のように \(\lambda\) が一定の条件で \(L\) を変える場合は、\(L\) は \(n\) に比例します。状況に応じて関係性が変わることを理解し、基本式から都度導くのが安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 定在波の条件式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\):
- 選定理由: この問題は「弦に定在波が生じている」という状況を扱っています。この公式は、その物理状況そのものを数式で表現した、最も根源的で直接的な法則です。問題で与えられている情報(弦の長さ \(L\)、腹の数 \(n\))と、求めたい物理量(波長 \(\lambda\))を直接結びつけるため、この公式の選択は必然です。
- 適用根拠: この公式は、波の干渉の原理に基づいています。弦の端で反射した波が元の波と干渉し、常に変位がゼロになる「節」ができます。弦の両端が固定されているという物理的な拘束条件により、その両端は必ず節にならなければなりません。この条件を満たすためには、弦の長さに半波長がぴったり整数個収まる必要がある、というのがこの公式の物理的な背景です。
- (2)の別解における比例式 \(L \propto n\):
- 選定理由: (2)では「波長 \(\lambda\) が一定」という重要な中間的結論が得られます。この条件下で、定在波の条件式 \(L = n \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) を見直すと、定数である \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) を比例定数とみなすことができ、\(L\) と \(n\) の単純な比例関係を導けます。これにより、具体的な \(\lambda\) の値を介さずに問題を解くことができ、思考のショートカットと計算の簡略化が可能になります。
- 適用根拠: この比例関係は、場当たり的に見つけたものではなく、「波の速さと振動数が一定である」という物理的な考察から導かれた「波長が一定である」という事実と、定在波の一般公式を組み合わせることで、論理的に導出されたものです。したがって、その適用は完全に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 有効数字を最初に確認する: 問題文で与えられている数値は \(4.6 \times 10^2\) (2桁)、\(0.50\) (2桁) です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。\(2.3 \times 10^2\) のように、指数表記を使って桁数を明確にするのがベストです。
- 図を必ず描く: 特に(2)のように条件が変わる場合、頭の中だけで考えずに、腹が3個の定在波の概略図を余白に描いてみましょう。「弦の長さ \(l\) の中に、腹が3つ、つまり半波長 (\(\lambda/2\)) が3つ入っているな」と視覚的に確認することで、\(l = 3 \times \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) という立式を確実なものにできます。
- 比例関係を積極的に利用する: (2)の別解で用いたように、「AがBの何倍になったから、CはDの何倍になる」という比例関係で考える癖をつけると、物理量の関係性をより深く理解でき、計算も速く正確になります。「腹の数が \(2 \rightarrow 3\) で \(1.5\) 倍になった。波長は一定だから、必要な弦の長さも \(1.5\) 倍になるはずだ」と考えることで、\(0.50 \times 1.5 = 0.75\) m と暗算レベルで答えを導き出せます。
基本例題58 気柱の振動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(1)および(2)の別解: 共鳴の一般式を連立させて解く方法
- 模範解答が、隣り合う共鳴点の差からまず波長を求め、その後に開口端補正を求めるのに対し、別解では1回目と2回目の共鳴の条件式を連立させ、波長と開口端補正を同時に導出します。
- 設問(1)および(2)の別解: 共鳴の一般式を連立させて解く方法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の一般化: 個別の図に頼らず、閉管の共鳴条件の一般式 \(L+\Delta l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) を用いることで、より普遍的な解法を学べます。
- 論理的思考の訓練: 2つの未知数(\(\lambda, \Delta l\))に対して2つの条件式を立てて解くという、物理問題解決の王道パターンを体験できます。
- 解法の透明性: 模範解答の「隣り合う共鳴点の差は半波長」という便利な知識が、なぜ成り立つのかを数式で明確に理解することができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「開口端補正を考慮した気柱の共鳴」です。理想的な閉管と異なり、実際の気柱では定在波の腹が管口の少し外側にできる「開口端補正」という現象を正しく扱えるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 気柱の共鳴(閉管): 管の一端が閉じ(水面)、他端が開いている場合、管口付近に「腹」、閉端(水面)に「節」ができる定在波が生じます。
- 開口端補正 (\(\Delta l\)): 定在波の腹の位置は、厳密には管口から少しだけ外側にずれます。このずれの距離を開口端補正と呼びます。
- 隣り合う共鳴点の間隔: 開口端補正の大きさは波長や振動数によらず一定とみなせるため、隣り合う共鳴点(定在波の節と節)の間隔は、正確に半波長 (\(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\)) になります。
- 波の基本式: 音の速さ \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V=f\lambda\) という関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、2つの共鳴が観測されたときの気柱の長さの差が、ちょうど半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) に等しいことを利用して波長 \(\lambda\) を求めます。その後、波の基本式 \(V=f\lambda\) を使って音速 \(V\) を計算します。
- (2)では、(1)で求めた波長 \(\lambda\) を使い、最初の共鳴(基本振動)の条件式に立ち返って、開口端補正 \(\Delta l\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
1回目と2回目の共鳴が起こったときの気柱の長さ \(l_1\) と \(l_2\) が与えられています。この問題の最大のポイントは、未知数である「開口端補正 \(\Delta l\)」を直接求めなくても、2つの共鳴点の「差」をとることで波長 \(\lambda\) を計算できる、という点に気づくことです。共鳴状態では、水面が定在波の「節」になります。水面を下げていくと、節の位置が次々と現れ、その間隔は半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となります。
この設問における重要なポイント
- 1回目の共鳴と2回目の共鳴では、定在波の腹が1つ増える。
- 定在波の腹と腹(または節と節)の間隔は、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) である。
- したがって、2つの共鳴が起こる気柱の長さの差 \(l_2 – l_1\) が、ちょうど半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) に等しい。
- 単位を cm から m に変換して音速を計算する。
具体的な解説と立式
気柱の共鳴では、管口付近に腹、水面に節ができます。
1回目の共鳴(気柱の長さ \(l_1\))は、腹が1つの最も単純な定在波(基本振動)です。
2回目の共鳴(気柱の長さ \(l_2\))は、腹が2つの定在波(3倍振動)です。
図で考えると、1回目の共鳴の節(水面)の位置から、2回目の共鳴の節(水面)の位置までの距離が \(l_2 – l_1\) です。この間隔は、定在波の節と隣の節との距離に相当するため、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となります。
$$ \frac{\lambda}{2} = l_2 – l_1 $$
この式から波長 \(\lambda\) を求めることができます。
求めた波長 \(\lambda\) と、問題で与えられた振動数 \(f\) を使って、波の基本式から音速 \(V\) を求めます。
$$ V = f\lambda $$
使用した物理公式
- 隣り合う共鳴点(節と節)の間隔: \(\displaystyle\frac{\lambda}{2} = l_2 – l_1\)
- 波の基本式: \(V = f\lambda\)
まず、与えられた値を代入して、半波長を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{2} &= 50.2 – 16.4 \\[2.0ex]
&= 33.8 \, \text{[cm]}
\end{aligned}
$$
この結果から、波長 \(\lambda\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 33.8 \times 2 \\[2.0ex]
&= 67.6 \, \text{[cm]}
\end{aligned}
$$
音速 \(V\) の計算ではSI単位系(m)を使う必要があるため、\(\lambda\) をメートルに変換します。
$$ \lambda = 0.676 \, \text{[m]} $$
これを波の基本式に代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= f\lambda \\[2.0ex]
&= 500 \times 0.676 \\[2.0ex]
&= 338
\end{aligned}
$$
したがって、音速は \(338\) m/s となります。
共鳴が起こる場所には「隣の共鳴点までの距離は、波長のちょうど半分」という便利なルールがあります。
1回目の共鳴は気柱の長さが 16.4 cm、2回目は 50.2 cm でした。その差は \(50.2 – 16.4 = 33.8\) cm です。
この 33.8 cm が「波長の半分」なので、波長全体はその2倍、つまり \(33.8 \times 2 = 67.6\) cm となります。
あとは、音の速さを「速さ = 振動数 × 波長」の公式で計算します。単位をmに直すのを忘れずに、\(V = 500 \times 0.676 = 338\) m/s となります。
音の速さは \(338\) m/s と求められました。この値は、常温(約15℃)での空気中の音速に近く、物理的に妥当な結果です。開口端補正という未知の量がありながら、共鳴点間の差を取ることでそれを考えずに波長を求められる、という点がこの解法の巧みなところです。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)で音の波長 \(\lambda\) が求まりました。次に、開口端補正 \(\Delta l\)(管口の腹の位置が管の上端からどれだけ上にあるか)を求めます。そのためには、最初の共鳴(基本振動)の条件に立ち返って考えます。基本振動では、腹から節までの距離が波長の4分の1 (\(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\)) であることを利用します。
この設問における重要なポイント
- 閉管の基本振動では、腹から節までの距離が \(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) である。
- この「腹から節までの距離」は、物理的には「気柱の長さ \(l_1\)」と「開口端補正 \(\Delta l\)」の和に等しい。
- したがって、\(l_1 + \Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) という関係式が成り立つ。
具体的な解説と立式
最初の共鳴は、最も単純な定在波である基本振動です。このとき、管口の腹から水面の節までの距離は、ちょうど \(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) となります。
一方で、この距離は、管の上端から水面までの気柱の長さ \(l_1\) と、管の上端から腹の位置までの距離である開口端補正 \(\Delta l\) の和としても表すことができます。
したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$ l_1 + \Delta l = \frac{\lambda}{4} $$
この式を \(\Delta l\) について解くことで、腹の位置を求めることができます。
使用した物理公式
- 閉管の基本振動の条件: \((\text{気柱の長さ}) + (\text{開口端補正}) = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\)
(1)で求めた波長 \(\lambda = 67.6\) cm と、問題文の \(l_1 = 16.4\) cm を、上で立式した関係式に代入します。
$$
\begin{aligned}
16.4 + \Delta l &= \frac{67.6}{4} \\[2.0ex]
16.4 + \Delta l &= 16.9
\end{aligned}
$$
この式を \(\Delta l\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\Delta l &= 16.9 – 16.4 \\[2.0ex]
&= 0.5 \, \text{[cm]}
\end{aligned}
$$
したがって、管口の腹の位置は、管の上端より \(0.5\) cm だけ上にあることがわかります。
最初の共鳴が起こるとき、「実際の気柱の長さ(16.4 cm)に、管の外にはみ出している部分の長さ(\(\Delta l\))を足したもの」が、ちょうど「波長の4分の1」になる、というルールがあります。
(1)で波長は 67.6 cm とわかっているので、その4分の1は \(67.6 \div 4 = 16.9\) cm です。
つまり、「\(16.4 + \Delta l = 16.9\)」という式が成り立ちます。これを解くと、はみ出している部分の長さ \(\Delta l\) は \(0.5\) cm だとわかります。
開口端補正は \(0.5\) cm となりました。これは一般に管の半径の0.6倍程度の小さな値になると言われており、物理的に妥当な大きさです。
思考の道筋とポイント
この問題には、波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(\Delta l\) という2つの未知数が含まれています。そして、1回目と2回目の共鳴という2つの独立した条件が与えられています。したがって、それぞれの条件を一般式で表し、連立方程式として解くことで、2つの未知数を同時に求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 閉管の共鳴条件の一般式: \(L + \Delta l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) (\(L\)は気柱長, \(n=1, 2, 3, \dots\))
- 1回目の共鳴 (\(n=1\)): \(l_1 + \Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\)
- 2回目の共鳴 (\(n=2\)): \(l_2 + \Delta l = \displaystyle\frac{3\lambda}{4}\)
- これら2式を連立させて \(\lambda\) と \(\Delta l\) を求める。
具体的な解説と立式
閉管の共鳴では、管口の腹から水面の節までの距離が、\(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) の奇数倍になります。これを一般式で書くと、\(n\) 回目の共鳴が起こるときの気柱の長さを \(L_n\) として、
$$ L_n + \Delta l = (2n-1)\frac{\lambda}{4} \quad (n=1, 2, 3, \dots) $$
と表せます。
この問題の条件をこの一般式に当てはめます。
1回目の共鳴 (\(n=1\), \(L_1=l_1=16.4\) cm):
$$ 16.4 + \Delta l = \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ① $$
2回目の共鳴 (\(n=2\), \(L_2=l_2=50.2\) cm):
$$ 50.2 + \Delta l = \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots ② $$
これで、未知数 \(\lambda\) と \(\Delta l\) に関する2つの一次方程式が立ちました。
使用した物理公式
- 閉管の共鳴条件の一般式: \(L + \Delta l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\)
まず、波長 \(\lambda\) を求めるために、②式から①式を引いて \(\Delta l\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
(50.2 + \Delta l) – (16.4 + \Delta l) &= \frac{3\lambda}{4} – \frac{\lambda}{4} \\[2.0ex]
50.2 – 16.4 &= \frac{2\lambda}{4} \\[2.0ex]
33.8 &= \frac{\lambda}{2}
\end{aligned}
$$
これを解くと、\(\lambda = 67.6\) cm となります。
音速 \(V\) を計算するために、\(\lambda = 0.676\) m として波の基本式に代入します。
$$ V = f\lambda = 500 \times 0.676 = 338 \, \text{[m/s]} $$
これが(1)の答えです。
次に、開口端補正 \(\Delta l\) を求めるために、求めた \(\lambda = 67.6\) cm を①式に代入します。
$$
\begin{aligned}
16.4 + \Delta l &= \frac{67.6}{4} \\[2.0ex]
16.4 + \Delta l &= 16.9 \\[2.0ex]
\Delta l &= 16.9 – 16.4 \\[2.0ex]
\Delta l &= 0.5 \, \text{[cm]}
\end{aligned}
$$
これが(2)の答えです。
この問題は、中学校で習った連立方程式で解くことができます。まず、物理法則から2つの数式を立てます。
式1:「1回目の気柱の長さ(16.4) + はみ出し(\(\Delta l\)) = 波長の4分の1」
式2:「2回目の気柱の長さ(50.2) + はみ出し(\(\Delta l\)) = 波長の4分の3」
この2つの式を引き算すると、「はみ出し(\(\Delta l\))」がうまく消えてくれて、波長 \(\lambda\) だけを計算できます。波長がわかれば、それを式1に戻してあげることで、残りの「はみ出し(\(\Delta l\))」の長さも計算できる、という流れです。
主たる解法と全く同じく、音速は \(338\) m/s、開口端補正は \(0.5\) cm という結果が得られました。この別解は、図から直感的に判断するのではなく、物理法則の一般式から演繹的に解を導くものであり、より複雑な問題にも対応できる汎用性の高い思考法です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 開口端補正を伴う気柱の共鳴条件:
- 核心: この問題の根幹は、理想的な気柱(腹がちょうど管口にある)と現実の気柱(腹が管口から \(\Delta l\) だけ外側にある)の違いを「開口端補正 \(\Delta l\)」として定量的に扱うことにあります。
- 理解のポイント:
- 物理的意味: 閉管の共鳴は、管口付近の腹から水面の節までの距離が \(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) の奇数倍になることで生じます。この「腹から節までの距離」は、測定可能な「気柱の長さ \(L\)」と、未知の「開口端補正 \(\Delta l\)」の和、すなわち \(L+\Delta l\) で表されます。
- 一般式: したがって、共鳴条件は \(L+\Delta l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) (\(n=1, 2, \dots\)) となります。この式が全ての問題解決の出発点です。
- 隣り合う共鳴点の間隔の不変性:
- 核心: 開口端補正 \(\Delta l\) は未知数ですが、その値は(同じ管であれば)一定であると仮定できます。この性質を利用すると、隣り合う共鳴点の差を取ることで \(\Delta l\) を消去し、波長 \(\lambda\) を直接求めることができます。
- 理解のポイント:
- 数式による証明: 2回目の共鳴条件 \(l_2+\Delta l = \displaystyle\frac{3\lambda}{4}\) から、1回目の共鳴条件 \(l_1+\Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) を引くと、\((l_2+\Delta l) – (l_1+\Delta l) = \displaystyle\frac{3\lambda}{4} – \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) となり、結果として \(l_2 – l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) が導かれます。
- 物理的イメージ: 水面を下げていく操作は、定在波の「節」の位置を探す作業です。節と次の節の間隔は、波の基本的な性質から常に \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) であり、これは開口端補正の有無には影響されません。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 開管の共鳴: 両端が開いている管の場合、両端に腹ができます。共鳴条件は \(L+2\Delta l = n\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となります(管の両端で開口端補正が必要なため \(2\Delta l\) となる)。この場合も、隣り合う共鳴点の差は \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となり、同じ考え方が使えます。
- 3回以上の共鳴が観測される問題: 例えば、\(l_1, l_2, l_3\) で共鳴した場合、\(l_2-l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) だけでなく \(l_3-l_2 = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) も成り立ちます。より多くのデータから平均的な波長を求めることで、測定誤差を減らすことができます。
- 未知の振動数を求める問題: 音速 \(V\) が既知で、共鳴点 \(l_1, l_2\) が与えられている場合。まず \(l_2-l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) から波長 \(\lambda\) を求め、次に波の基本式 \(V=f\lambda\) を変形した \(f=V/\lambda\) から未知の振動数 \(f\) を計算します。
- 初見の問題での着眼点:
- まず、管の形状(閉管か開管か)を確認します。これにより、共鳴条件の基本形が決まります。
- 「開口端補正を考慮する」という指示があるか、あるいは共鳴点が2つ以上与えられているかを確認します。共鳴点が2つ以上あれば、開口端補正を考慮する必要がある問題だと判断できます。
- 2つの共鳴点の「差」を取ることで、開口端補正 \(\Delta l\) を消去して波長 \(\lambda\) を求める、という解法が最も効率的であることを思い出します。
- 単位の統一を徹底します。気柱の長さは[cm]、音速は[m/s]で与えられることが多いので、計算の最終段階で[cm]を[m]に変換するのを忘れないようにします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 開口端補正を忘れる:
- 誤解: 1回目の共鳴条件を、単純に \(l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) と立式してしまう。
- 対策: 「気柱の共鳴の問題では、ほぼ必ず開口端補正が関わる」と肝に銘じておきましょう。特に、共鳴点が2つ以上与えられている場合は、開口端補正を考慮しないと矛盾が生じるため、必須の要素です。必ず \(l_1 + \Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\) のように \(\Delta l\) を式に含める習慣をつけます。
- 共鳴の次数を間違える:
- 誤解: 2回目の共鳴を「2倍振動」と考えて、条件式を \(l_2+\Delta l = \displaystyle\frac{2\lambda}{4}\) のように立ててしまう。
- 対策: 閉管の共鳴で生じるのは、基本振動、3倍振動、5倍振動…という「奇数倍」の振動です。一般式 \(L+\Delta l = (2n-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) を覚えておき、1回目(\(n=1\))は \(\displaystyle\frac{1\lambda}{4}\)、2回目(\(n=2\))は \(\displaystyle\frac{3\lambda}{4}\)、3回目(\(n=3\))は \(\displaystyle\frac{5\lambda}{4}\) となることを確認する癖をつけましょう。
- 単位換算ミス:
- 誤解: 波長を[cm]のまま音速の計算式 \(V=f\lambda\) に代入してしまう。
- 対策: 計算の途中では[cm]のままで良いですが、最終的に音速[m/s]を求める際には、必ず波長 \(\lambda\) を[m]に変換する、という手順を徹底します。例えば、\(\lambda = 67.6\) cm → \(0.676\) m のように、小数点の移動を確実に行います。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 隣り合う共鳴点の差 \(l_2 – l_1 = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\):
- 選定理由: (1)では、未知数が \(\lambda\) と \(\Delta l\) の2つあるのに対し、この関係式は \(\Delta l\) を含んでいません。これにより、2つの未知数を同時に扱う連立方程式を解く手間を省き、まず \(\lambda\) だけをシンプルに求めることができます。問題解決の戦略として、未知数を1つずつ減らしていくのは非常に有効なアプローチです。
- 適用根拠: この関係式は、単なる便利な経験則ではなく、物理法則から導かれる必然的な帰結です。別解で示したように、1回目と2回目の共鳴の一般式を立てて引き算をすると、\(\Delta l\) が数学的に消去されてこの式が導出されます。つまり、この公式の適用は、連立方程式を解く操作をショートカットしていることと等価です。
- 基本振動の条件式 \(l_1 + \Delta l = \displaystyle\frac{\lambda}{4}\):
- 選定理由: (2)で求めたいのは開口端補正 \(\Delta l\) です。(1)で波長 \(\lambda\) が既知となったため、\(\Delta l\) を含む最もシンプルな式を選ぶのが合理的です。1回目の共鳴(基本振動)の条件式は、\(\lambda\) と \(\Delta l\) を結びつける最も基本的な関係式であるため、これを選択します。(もちろん、2回目の共鳴条件 \(l_2 + \Delta l = \displaystyle\frac{3\lambda}{4}\) を使っても同じ答えが得られますが、計算が少しだけ複雑になります。)
- 適用根拠: 気柱の共鳴という現象は、音波が定在波を形成することです。定在波の最も基本的な構造単位は、腹から隣の節までの距離が \(\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) であることです。基本振動は、この最も基本的な構造が1つだけ存在する状態に対応します。したがって、この条件式は定在波の定義そのものに根差しており、その適用は物理的に完全に正当です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 連立方程式の活用: 主たる解法はスマートですが、物理的な意味が掴みにくい場合は、別解で示したように愚直に連立方程式を立てるのが確実です。「未知数が2つ、条件が2つあるから連立方程式で解けるはずだ」という思考パターンは、多くの物理問題に応用できます。
- 単位を書きながら計算する: 計算過程で \(33.8\) [cm] や \(\lambda = 67.6\) [cm] のように単位を明記する癖をつけると、最後の単位換算を忘れにくくなります。
- 検算の習慣: (2)で \(\Delta l\) を求めた後、その値を2回目の共鳴条件 \(l_2 + \Delta l = \displaystyle\frac{3\lambda}{4}\) に代入して式が成り立つか確認してみましょう。左辺は \(50.2 + 0.5 = 50.7\)。右辺は \(\displaystyle\frac{3 \times 67.6}{4} = 3 \times 16.9 = 50.7\)。両辺が一致するので、計算が正しいことを確認できます。このような一手間が、ケアレスミスを劇的に減らします。
基本問題
295 音の速さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「温度による音速の変化」です。空気中を伝わる音の速さが、絶対温度ではなくセルシウス温度の一次関数で近似的に表されることを理解し、与えられた公式に正しく値を代入して計算する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 音速と温度の関係: 空気中の音速は、空気の温度が高いほど速くなります。これは、温度が高いほど空気分子が激しく運動しており、音波(圧力の変動)をより速く伝えることができるためです。
- 音速の近似式: 音速 \(V\) とセルシウス温度 \(t\) [℃] の関係は、\(0\) ℃付近の狭い温度範囲では、\(V \approx 331.5 + 0.6t\) という一次式で非常によく近似できます。
- 公式の正しい適用: 問題で与えられた公式の各文字が何を表しているか(特に \(t\) がセルシウス温度であること)を正確に理解し、指定された値を代入することが重要です。
- 四捨五入の処理: 計算結果を指定された桁数(この場合は整数)に正しく丸める計算技能が必要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた音速の公式 \(V = 331.5 + 0.6t\) を確認します。
- 公式に含まれるセルシウス温度 \(t\) に、問題で指定された値 \(25\) ℃を代入します。
- 計算を実行し、最後に指示に従って小数点以下を四捨五入します。
思考の道筋とポイント
この問題は、物理法則の深い理解を問うというよりは、与えられた公式を正しく運用できるかを確認する、基本的な計算問題です。思考のプロセスは非常にシンプルで、公式 \(V = 331.5 + 0.6t\) の \(t\) に \(25\) を代入するだけです。計算ミスをせず、最後の四捨五入を忘れずに行うことが唯一のポイントです。
この設問における重要なポイント
- 与えられた公式 \(V = 331.5 + 0.6t\) を用いる。
- \(t\) はセルシウス温度 [℃] であり、問題の値 \(t=25\) を代入する。
- 計算結果の小数点以下を四捨五入して整数で答える。
具体的な解説と立式
問題文で、温度 \(t\) [℃] の空気中を伝わる音の速さ \(V\) [m/s] が、以下の式で与えられています。
$$ V = 331.5 + 0.6t $$
この式は、\(0\) ℃のときの音速 \(331.5\) m/s を基準として、温度が \(1\) ℃上がるごとに音速が \(0.6\) m/s ずつ速くなることを示しています。
求めたいのは、\(t=25\) ℃のときの音の速さなので、この式の \(t\) に \(25\) を代入します。
使用した物理公式
- 音速と温度の近似式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
与えられた公式に \(t=25\) を代入して \(V\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= 331.5 + 0.6 \times 25 \\[2.0ex]
&= 331.5 + 15 \\[2.0ex]
&= 346.5
\end{aligned}
$$
問題の指示に従い、小数点以下を四捨五入します。小数点第一位が \(5\) なので、切り上げます。
$$ V \approx 347 \, \text{[m/s]} $$
この問題は、料理のレシピのようなものです。「音の速さ = 331.5 + 0.6 × (その場の気温)」というレシピが与えられています。
今回は気温が \(25\) ℃なので、レシピの「(その場の気温)」の部分に \(25\) を入れて計算するだけです。
まず、\(0.6 \times 25 = 15\) を計算します。
次に、もとの \(331.5\) にこの \(15\) を足して、\(331.5 + 15 = 346.5\) となります。
最後に、答えは小数点以下を四捨五入するように言われているので、\(346.5\) は \(347\) になります。
\(25\) ℃の空気中を伝わる音の速さは \(347\) m/s となります。\(0\) ℃のときの \(331.5\) m/s よりも速くなっており、温度が上がると音速が上がるという物理的な事実と一致する、妥当な結果です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 音速と温度の相関関係:
- 核心: この問題の根幹にある物理現象は、「気体の温度が上がると、それを構成する分子の熱運動が激しくなり、その結果として気体中を伝わる波(音波)の速さも増大する」という事実です。
- 理解のポイント:
- ミクロな視点: 音は空気分子の振動が次々と伝わっていく現象です。温度が高いほど分子自体が速くランダムに運動しているため、ある場所の圧力変化(振動)が隣の分子に伝わるまでの時間が短くなり、結果として音波全体の伝播速度が上がります。
- マクロな視点(近似式): この複雑な物理現象を、日常的な温度範囲で非常にシンプルに表現したものが、問題で与えられた近似式 \(V \approx 331.5 + 0.6t\) です。この式は「\(0\)℃の音速を基準に、温度が1℃上がるごとに約\(0.6\)m/s速くなる」という線形的な関係を示しており、実用上非常に便利な公式です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 異なる温度での音速比較: 「\(10\)℃のときの音速は、\(30\)℃のときの音速より何m/s遅いか」といった問題。それぞれの温度で音速を計算し、その差を求めます。あるいは、温度差が \(20\)℃ なので、速さの差は \(0.6 \times 20 = 12\) m/s と直接計算することもできます。
- 音速から温度を逆算する問題: 「ある場所で測定した音速が \(340\) m/s であった。気温はおよそ何℃か」といった問題。\(340 = 331.5 + 0.6t\) という方程式を立て、\(t\) について解きます。
- 雷の音の遅れと気温: 「雷が光ってから音が聞こえるまでに \(5\) 秒かかった。雷までの距離を求めよ。ただし気温は \(15\)℃ とする」といった問題。まず \(V = 331.5 + 0.6 \times 15\) でその場の音速を計算し、その速さに時間(5秒)を掛けて距離を求めます。
- 初見の問題での着眼点:
- 問題文に「音速」と「温度」の両方が登場したら、この近似式 \(V = 331.5 + 0.6t\) を使う可能性を考えます。(問題文でこの式が与えられていない場合は、\(0\)℃の音速 \(331.5\) m/s を使うことが多いです。)
- 式中の \(t\) が「セルシウス温度 [℃]」であることを強く意識します。物理計算では絶対温度 [K] を使うことが多いですが、この近似式は例外的にセルシウス温度を用いるため、混同しないように注意が必要です。
- 計算結果の処理(四捨五入、有効数字など)に関する指示を必ず確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 温度の単位の混同:
- 誤解: 物理の計算だからといって、与えられたセルシウス温度 \(t\) [℃] を、わざわざ絶対温度 \(T = t + 273.15\) [K] に変換して公式に代入してしまう。
- 対策: この \(V = 331.5 + 0.6t\) という式は、セルシウス温度を直接使うことを前提に作られた「近似式」であることを明確に記憶します。式の成り立ち(理論式からの近似)を理解すると、なぜセルシウス温度で良いのかが分かり、混同を防げます。
- 計算ミス:
- 誤解: 単純な四則演算でのケアレスミス。特に \(0.6 \times 25\) のような小数と整数の掛け算で間違いやすい。
- 対策: \(0.6 \times 25\) は、分数で考えると \(\displaystyle\frac{3}{5} \times 25 = 3 \times 5 = 15\) と計算でき、間違いを減らせます。また、足し算 \(331.5 + 15\) も、筆算を丁寧に行うなど、基本的な計算を疎かにしない意識が重要です。
- 四捨五入のミス:
- 誤解: 小数点以下第一位を四捨五入するところを、切り捨てや切り上げと勘違いする。あるいは、どの桁で四捨五入するのかを読み間違える。
- 対策: 問題文の「小数点以下を四捨五入して答えよ」という指示を、計算を始める前に丸で囲むなどしてマーキングし、解答を出す直前に必ず再確認する習慣をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 音速の近似式 \(V = 331.5 + 0.6t\):
- 選定理由: この問題は、特定の温度における音速を問うています。問題文中で、音速と温度の関係式が直接与えられているため、他の物理法則(例えば、より厳密な \(V=\sqrt{\gamma RT/M}\) など)を考える必要はなく、与えられたこの公式を選択するのが最も直接的かつ唯一の正しいアプローチです。
- 適用根拠: この公式は、気体中の音速の理論式 \(V = \sqrt{\displaystyle\frac{\gamma RT}{M}}\)(\(\gamma\)は比熱比, \(R\)は気体定数, \(M\)はモル質量, \(T\)は絶対温度)を、\(T = t + 273.15\) として \(t=0\) の周りでテイラー展開(近似)した結果です。具体的には、\(V(t) \approx V(0) + V'(0)t\) という一次近似の形になっています。\(V(0)\) が \(331.5\) m/s に、そして微分係数 \(V'(0)\) が約 \(0.6\) に相当します。したがって、この近似式の使用は、日常的な温度範囲において物理的に妥当な計算を行うことを意味します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 式の構造を理解して暗算する: \(V = 331.5 + 0.6t\) の計算は、2つのパートに分けて考えると楽になります。
- 温度による増加分を計算する: \(0.6 \times 25\)。これは「\(0.6\) を100倍して \(60\)、\(25\) を4倍して \(100\)。\(60 \times 100 \div (100 \times 4) = 60 \div 4 = 15\)」のように、計算しやすい数に変換して暗算する練習ができます。
- 基準値に足し合わせる: \(331.5 + 15\)。これは単純な足し算です。
- 概算で見当をつける: 計算を始める前に、「\(25\)℃は \(0\)℃よりかなり暖かいから、音速は \(331.5\) m/s より結構速くなるはずだ。\(0.6 \times 25\) はだいたい \(0.5 \times 25 = 12.5\) より少し大きいくらいだから、答えは \(331.5+13\)くらいで、\(345\) m/s 前後になるだろう」と大まかな見当をつけておくと、計算結果が大きくずれた場合にミスに気づきやすくなります。
- 指示を再確認する癖: 計算が終わって答えが出た後、もう一度問題文の「小数点以下を四捨五入して答えよ」という部分を指差し確認する。この一手間が、最後の詰めの甘さによる失点を防ぎます。
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296 音の速さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「音の速さとドップラー効果の基本概念の区別」です。音の速さが何によって決まるのかを正しく理解しているかが問われます。特に、音源の運動と媒質(風)の運動が、音の伝わる速さにどのように影響するかを区別することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 音の速さ: 音の速さは、音を伝える媒質(この場合は空気)の性質(温度や密度など)のみによって決まります。音源が動いても、媒質である空気が静止していれば、空気に対する音の速さは変化しません。
- ドップラー効果との区別: 音源が動くと、観測者が聞く音の振動数(音の高さ)は変化します(ドップラー効果)。しかし、これは波長が変化するためであり、音の速さ自体が変化するわけではありません。
- 風の影響(媒質の運動): 風が吹いている場合、それは音を伝える媒質である空気自体が動いていることを意味します。したがって、地面に対する音の速さは、空気に対する音の速さと風の速さのベクトル和になります。
- 時間の計算: 時間は「距離 ÷ 速さ」で計算できます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、基準となる状況(音源も媒質も静止)で、音が伝わる時間を計算します。
- (2)では、音源が動く場合を考えます。音の速さは媒質のみで決まるため、(1)と変わらないことを理解し、時間を計算します。
- (3)では、媒質(空気)が動く場合を考えます。地面に対する音の速さが、もとの音速と風速の和になることを理解し、その速さを使って時間を計算します。