「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第16章】基本例題~基本問題291

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基本例題

基本例題55 水面波の干渉

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 干渉の条件式を用いて論理的に本数を導出する解法
      • 模範解答が作図から本数を数えるのに対し、別解では数式を用いて線分S₁S₂と交わる節線の本数を解析的に求めます。
    • 設問(3)の別解: 逆位相における強めあいの条件式を直接用いる解法
      • 模範解答が「同位相の場合と腹・節が入れ替わる」という性質を用いるのに対し、別解では逆位相の条件式を立てて腹の数を直接計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 論理的思考力の養成: 作図という視覚的な方法だけでなく、数式に基づいた論理的なアプローチを学ぶことで、問題解決能力が向上します。
    • 条件式の深い理解: 干渉条件式を様々な状況で適用する経験を通じて、その物理的意味への理解が深まります。特に、同位相と逆位相で条件式がどのように変化し、結果として腹と節が入れ替わるのかを根本から理解できます。
    • 応用力の向上: 図が与えられていない問題や、より複雑な設定の問題にも対応できる、汎用性の高い解法を身につけることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「波の干渉と、その条件式の応用」です。2つの波源から出た波が重なり合うことで生じる、強めあい(腹)と弱めあい(節)の分布を正しく理解し、数式で表現できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は各波の変位の和になるという原理。
  2. 干渉の条件: 2つの波源からの距離の差(経路差)によって、波が強めあうか弱めあうかが決まること。
  3. 同位相と逆位相: 波源の振動状態によって、強めあい・弱めあいの条件式が異なること。
  4. 腹線と節線: 強めあう点を連ねた線(腹線)と、弱めあう点を連ねた線(節線)は、波源を焦点とする双曲線を描くこと。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、弱めあいの条件である「山と谷の重ね合わせ」が起こる点を図から探し、滑らかに結んで節線を描きます。
  2. (2)では、(1)で描いた節線が線分S₁S₂と何回交わるかを数えるか、あるいは干渉の条件式を用いて解析的に本数を求めます。
  3. (3)では、波源が逆位相になった場合の干渉条件を考えます。同位相の場合と腹・節の条件が入れ替わることを利用するのが最も簡潔です。

問(1)

思考の道筋とポイント
2つの波が弱めあうのは、一方の波の「山」と他方の波の「谷」が重なり合うときです。図では、実線が山、破線が谷を表しているので、S₁からの実線とS₂からの破線が交わる点、またはS₁からの破線とS₂からの実線が交わる点を探し、それらを滑らかに結ぶことで節線を描きます。
この設問における重要なポイント

  • 弱めあい(節)の条件は「山+谷」。
  • 図において、節線上の点は「実線と破線の交点」に対応する。
  • 節線は、2つの波源S₁, S₂を焦点とする双曲線になる。

具体的な解説と立式
問題の図において、波源S₁から出る波の山(実線)と、波源S₂から出る波の谷(破線)が交わる点を探します。同様に、S₁の谷(破線)とS₂の山(実線)が交わる点も探します。これらの点は、互いの波を打ち消しあってほとんど振動しない「節」となります。
見つけたこれらの交点を、波源の間から外側に向かって滑らかな曲線で結びます。この曲線が節線です。
解答の図に示されている太実線が、この手順で描かれた節線です。

使用した物理公式

  • 波の重ね合わせの原理
  • 弱めあいの条件(定性的理解): 山と谷が重なると変位はゼロに近くなる。
計算過程

この設問は作図問題であり、数値計算は不要です。図中の実線と破線の交点を丁寧に拾い、結線します。

計算方法の平易な説明

お互いを打ち消し合う「弱めあいの線(節線)」を描く問題です。片方の波の一番高いところ(山)と、もう片方の波の一番低いところ(谷)がぶつかると、高さが打ち消されて平らになります。図では、実線が山、破線が谷なので、「実線と破線の交差点」が弱めあう点です。これらの交差点を拾って、線で結んでいけば、それが答えの節線になります。

結論と吟味

図中の実線と破線の交点を結ぶことで、複数の双曲線(節線)が描かれます。これらの線上の点は、常に波が弱めあう場所となります。解答の図は、この操作を正しく行った結果です。

解答 (1) 模範解答の図を参照。

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で作図した節線が、2つの波源を結ぶ線分S₁S₂と何点で交わるかを数える問題です。模範解答のように図から直接数えるのが最も直感的です。別解として、干渉の条件式を用いて、線分S₁S₂上に節が何個存在するかを計算で求める方法も考えられます。
この設問における重要なポイント

  • 節線はS₁とS₂の間に存在する。
  • 波源S₁, S₂は同位相である。
  • 同位相の場合の弱めあいの条件式: \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))

具体的な解説と立式
(1)で描いた図を見ると、線分S₁S₂は、S₁S₂の中央の線(腹線)を挟んで左右対称に存在する節線と交わっていることがわかります。
図の右側(S₂側)で3本、左側(S₁側)で3本の節線が線分S₁S₂と交わっています。
したがって、合計で6本の節線と交わります。

使用した物理公式

  • (1)で作成した干渉図
計算過程

図から交点の数を数えるだけです。
(S₁S₂の右側で3本) + (S₁S₂の左側で3本) = 6本

計算方法の平易な説明

(1)で描いた「弱めあいの線(節線)」が、スタート地点S₁とゴール地点S₂を結ぶ直線と何回クロスするかを数える問題です。図をよく見ると、S₁とS₂の間で6本の節線が横切っているのがわかります。

結論と吟味

作図結果から、線分S₁S₂と交わる節線は6本であると判断できます。この結果は、後述する別解の計算結果とも一致し、妥当であると言えます。

解答 (2) 6本
別解: 干渉の条件式を用いて論理的に本数を導出する解法

思考の道筋とポイント
線分S₁S₂上にできる節(弱めあう点)の数を、干渉の条件式から直接計算します。この方法なら、作図の正確さに頼らずに答えを導き出せます。
この設問における重要なポイント

  • 線分S₁S₂上の点Pを考える。S₁からの距離を\(L_1\)、S₂からの距離を\(L_2\)とする。
  • 経路差は\(|L_1 – L_2|\)で表される。
  • 線分S₁S₂上では、経路差は \(0\) (中点) から \(d\) (波源の位置) までの値をとる。
  • 同位相の弱めあいの条件式: \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))

具体的な解説と立式
2つの波源S₁, S₂は同位相なので、ある点Pで波が弱めあう(節になる)条件は、Pまでの経路差 \(|L_1 – L_2|\) が半波長 \(\lambda/2\) の奇数倍になることです。数式で表すと以下のようになります。
$$ |L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) \quad \cdots ① $$
線分S₁S₂上の点では、経路差がとりうる値の範囲は \(0 \le |L_1 – L_2| \le d\) です。ここで \(d\) は波源間距離 \(d=6.0 \, \text{cm}\) です。
したがって、線分S₁S₂上に節が存在するためには、条件式①がこの範囲内で成立しなければなりません。
$$ (m + \frac{1}{2})\lambda \le d $$

使用した物理公式

  • 同位相における弱めあいの条件式: \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
計算過程

与えられた値、波長 \(\lambda = 2.0 \, \text{cm}\)、波源間距離 \(d = 6.0 \, \text{cm}\) を用いて、条件を満たす整数 \(m\) の数を探します。
$$
\begin{aligned}
(m + \frac{1}{2}) \times 2.0 & \le 6.0 \\[2.0ex]
m + 0.5 & \le 3.0 \\[2.0ex]
m & \le 2.5
\end{aligned}
$$
\(m\) は \(0\) 以上の整数なので、この条件を満たす \(m\) は \(m=0, 1, 2\) の3つです。

  • \(m=0\) のとき、経路差は \(0.5 \lambda = 1.0 \, \text{cm}\)。この条件を満たす節線がS₁S₂の中央を挟んで2本存在します。
  • \(m=1\) のとき、経路差は \(1.5 \lambda = 3.0 \, \text{cm}\)。この条件を満たす節線が同様に2本存在します。
  • \(m=2\) のとき、経路差は \(2.5 \lambda = 5.0 \, \text{cm}\)。この条件を満たす節線が同様に2本存在します。

したがって、線分S₁S₂と交わる節線の総数は \(2+2+2=6\) 本となります。

計算方法の平易な説明

数式を使って節の数を数える方法です。弱めあう場所は、2つの波源からの「距離の差」が「波長の半分、波長の1.5倍、波長の2.5倍、…」となるところに現れます。波源S₁とS₂の間の線上では、この「距離の差」は最大でも波源間の距離である \(6.0 \, \text{cm}\) までしか大きくなれません。
波長は \(2.0 \, \text{cm}\) なので、弱めあう場所の「距離の差」は \(1.0 \, \text{cm}\), \(3.0 \, \text{cm}\), \(5.0 \, \text{cm}\), \(7.0 \, \text{cm}\), … となります。このうち、\(6.0 \, \text{cm}\) 以下なのは \(1.0, 3.0, 5.0\) の3種類です。それぞれの距離の差に対応する場所は、S₁S₂の真ん中を挟んで左右に1つずつあるので、合計 \(3 \times 2 = 6\) 個の節があることがわかります。

結論と吟味

干渉の条件式から、線分S₁S₂上には \(m=0, 1, 2\) に対応する節が存在することがわかりました。それぞれの \(m\) の値に対して、線分S₁S₂上には対称な2つの点が存在するため、合計で6つの節(節線との交点)があることになります。これは作図による結果と一致します。

解答 (2) 6本

問(3)

思考の道筋とポイント
今度は、2つの波源S₁, S₂が「逆位相」で振動する場合を考えます。逆位相の場合、強めあいと弱めあいの条件が、同位相の場合とちょうど逆転します。つまり、同位相で弱めあっていた場所が強めあうようになり、強めあっていた場所が弱めあうようになります。この性質を利用するのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント

  • 波源S₁, S₂は逆位相である。
  • 逆位相の場合、強めあい(腹)の条件は \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)。
  • 逆位相の場合、弱めあい(節)の条件は \(|L_1 – L_2| = m\lambda\)。
  • 結果として、同位相の場合の「節」の位置が、逆位相の場合の「腹」の位置になる。

具体的な解説と立式
波源が逆位相の場合、強めあう条件(腹の条件)は、経路差が半波長の奇数倍になるときです。
$$ |L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$
一方、(2)で考えた同位相の場合の弱めあう条件(節の条件)も、
$$ |L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) $$
でした。
この2つの条件式は全く同じ形をしています。
したがって、逆位相の場合に線分S₁S₂上にできる「腹」の数は、同位相の場合に線分S₁S₂上にできる「節」の数と等しくなります。
(2)で線分S₁S₂上の節の数は6個であると求めたので、逆位相の場合の腹の数も6か所となります。

使用した物理公式

  • 同位相と逆位相における干渉条件の比較
計算過程

(2)の結果を直接利用します。
(同位相の場合の節の数) = (逆位相の場合の腹の数) = 6
よって、答えは6か所です。

計算方法の平易な説明

波源の出す波のタイミングを「逆(逆位相)」にすると、強めあう場所と弱めあう場所がそっくり入れ替わります。つまり、(2)で考えた「弱めあう点(節)」が、今度は「強めあう点(腹)」に変わるのです。(2)で節は6個あったので、今回の設定では腹が6か所あることになります。

結論と吟味

同位相と逆位相では干渉条件が逆転するという物理的性質を正しく理解していれば、(2)の結果から直ちに答えを導くことができます。非常に簡潔で強力な解法です。

解答 (3) 6か所
別解: 逆位相における強めあいの条件式を直接用いる解法

思考の道筋とポイント
「腹と節が入れ替わる」という性質に頼らず、逆位相における強めあいの条件式を直接立てて、線分S₁S₂上に腹が何個できるかを計算します。これにより、なぜ(2)と同じ答えになるのかを数式レベルで確認できます。
この設問における重要なポイント

  • 波源S₁, S₂は逆位相である。
  • 逆位相の強めあいの条件式: \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
  • 線分S₁S₂上の点Pを考え、その位置をS₁からの距離\(x\)で表す。

具体的な解説と立式
波源が逆位相の場合、ある点Pで波が強めあう(腹になる)条件は、経路差 \(|L_1 – L_2|\) が半波長 \(\lambda/2\) の奇数倍になることです。
$$ |L_1 – L_2| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots) \quad \cdots ② $$
これは、(2)の別解で用いた、同位相における弱めあいの条件式①と全く同じです。
したがって、線分S₁S₂上に腹が存在する条件は、
$$ (m + \frac{1}{2})\lambda \le d $$
となります。

使用した物理公式

  • 逆位相における強めあいの条件式: \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
計算過程

この不等式は(2)の別解で解いたものと全く同じです。
$$
\begin{aligned}
(m + \frac{1}{2}) \times 2.0 & \le 6.0 \\[2.0ex]
m & \le 2.5
\end{aligned}
$$
これを満たす \(m=0, 1, 2\) の3つの値が存在します。
それぞれの\(m\)の値について、線分S₁S₂上に腹となる点が2つずつ存在します(S₁S₂の中点を挟んで対称な位置)。

  • \(m=0\) のとき: 2か所
  • \(m=1\) のとき: 2か所
  • \(m=2\) のとき: 2か所

よって、腹の総数は \(2+2+2=6\) か所となります。

計算方法の平易な説明

逆位相で強めあう場所の条件は、数式で書くと「距離の差が、波長の0.5倍、1.5倍、2.5倍、…」となる場所です。これは、実は(2)の別解で考えた「同位相で弱めあう場所」の条件と全く同じです。したがって、計算も全く同じになり、答えも(2)と同じ6か所になります。

結論と吟味

逆位相の強めあいの条件式を直接解くことで、(2)の答えと一致する6か所という結果が得られました。これにより、「同位相の節」と「逆位相の腹」が同じ場所に対応することが数式的にも確認でき、物理法則の整合性をより深く理解することができます。

解答 (3) 6か所

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 干渉の条件式: 波の干渉現象の核心は、2つの波源からの経路差 \(|L_1 – L_2|\) と波長 \(\lambda\) の関係で決まります。
    • 同位相の場合:
      • 強めあい(腹): \(|L_1 – L_2| = m\lambda\) (経路差が波長の整数倍)
      • 弱めあい(節): \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (経路差が半波長の奇数倍)
    • 逆位相の場合:
      • 強めあい(腹): \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
      • 弱めあい(節): \(|L_1 – L_2| = m\lambda\)
    • ここで、\(m = 0, 1, 2, \dots\) です。
  • 同位相と逆位相の関係:
    • 核心: 波源が同位相から逆位相に変わると、強めあいと弱めあいの条件が完全に逆転します
    • 理解のポイント: 同位相で腹だった場所は逆位相では節に、同位相で節だった場所は逆位相では腹になります。この性質を理解していれば、(3)のような問題は再計算することなく、(2)の結果から瞬時に解くことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の干渉(ヤングの実験): スリットを波源とみなせば、水面波の干渉と全く同じ考え方が適用できます。スクリーン上の明線(強めあい)・暗線(弱めあい)の位置や本数を求める問題が典型例です。
    • 薄膜による光の干渉: シャボン玉や水面の油膜が色づいて見える現象です。膜の上面で反射する光と下面で反射する光の干渉を考えます。この場合、反射による位相の変化(固定端反射で位相が \(\pi\) ずれる)を考慮に入れる必要があります。
    • 音波の干渉: 2つのスピーカーから出る音の干渉を考え、音が大きく聞こえる場所(腹)と小さく聞こえる場所(節)を求める問題も、本質は同じです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の位相を確認: まず問題文で「同位相」か「逆位相」かを真っ先に確認します。これにより使用する条件式が確定します。
    2. 経路差の範囲を特定: 干渉を考える領域(この問題では線分S₁S₂上)で、経路差 \(|L_1 – L_2|\) がとりうる値の範囲を特定します。通常、波源間では \(0 \le |L_1 – L_2| \le d\) (dは波源間距離) となります。
    3. 条件式と範囲を組み合わせる: 特定した経路差の範囲に、干渉の条件式を満たす整数 \(m\) がいくつ存在するかを数えます。\(m\) の値が1つ見つかると、多くの場合、対称性から2つの点(または線)に対応することに注意が必要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • \(m\) の始まりを間違える:
    • 誤解: 干渉の条件式の \(m\) を、つい \(m=1, 2, 3, \dots\) から始めてしまう。
    • 対策: \(m=0\) から始まることを常に意識することが重要です。特に、波源S₁S₂の垂直二等分線上は経路差が \(0\) であり、これは \(m=0\) の腹線(同位相の場合)または節線(逆位相の場合)に対応する、最も基本的な線であると覚えておきましょう。
  • 腹線・節線の本数の数え間違い:
    • 誤解: 条件を満たす \(m\) の個数をそのまま答えにしてしまう。例えば、(2)の別解で \(m=0, 1, 2\) の3つが見つかったから「3本」と答えてしまうミスです。
    • 対策: \(m=0\) の線(中央の線)を除き、\(m=1, 2, \dots\) に対応する線は、中央の線を挟んで左右対称に1本ずつ、計2本存在することを忘れないようにします。\(m\) の値と実際の線の本数の関係を正確に把握することが大切です。
  • 同位相と逆位相の条件の混同:
    • 誤解: どちらの条件式が同位相で、どちらが逆位相か混乱してしまう。
    • 対策: 同位相の強めあい(腹)が基本と覚えるのが効果的です。「同じタイミングで出発した波が、同じ距離だけ進んで出会えば強めあう」→「経路差が0(\(m=0\))や \(\lambda, 2\lambda, \dots\) (\(m\lambda\)) なら強めあう」と論理的に導きます。弱めあいはその逆、逆位相はさらにその逆、と連想していくと間違えにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 作図による解法((1), (2)の主たる解法):
    • 選定理由: 問題に波面図が与えられており、視覚的に干渉の様子を把握できるため、この方法が最も直感的です。物理現象をイメージとして理解する上で基本的なアプローチです。
    • 適用根拠: 「山+山=強めあい」「山+谷=弱めあい」という重ね合わせの原理の基本に忠実に基づいています。図中の実線(山)と破線(谷)の交点を拾う操作は、この原理をそのまま実行していることに他なりません。
  • 条件式による解法((2), (3)の別解):
    • 選定理由: 作図が困難な場合や、より厳密に・定量的に本数や位置を求めたい場合に選択します。図の正確さに依存しないため、汎用性が高い解法です。
    • 適用根拠: 2つの波の位相差が \(2\pi\) の整数倍なら強めあい、\(\pi\) の奇数倍なら弱めあうという、より根源的な干渉の原理に基づいています。経路差 \(|L_1 – L_2|\) は、この位相差を距離に換算したものです(位相差 \(\Delta\phi = \displaystyle\frac{2\pi}{\lambda} |L_1 – L_2|\))。条件式は、この物理的本質を数学的に表現したものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 条件の整理: 計算を始める前に、問題文から \(\lambda\) (波長), \(d\) (波源間距離), そして「同位相」か「逆位相」かを抜き出してページの隅にメモする習慣をつけましょう。
    • 例: \(\lambda = 2.0\), \(d = 6.0\), 同位相, 求めるのは「節」の本数
  • 不等式を丁寧に解く: (2)の別解のように、\( (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda \le d \) といった不等式を立てた後、焦って暗算しないことが重要です。
    1. 数値を代入する: \( (m + 0.5) \times 2.0 \le 6.0 \)
    2. 両辺を割る: \( m + 0.5 \le 3.0 \)
    3. 移項する: \( m \le 2.5 \)
    4. 条件を満たす整数 \(m\) を列挙する: \(m=0, 1, 2\)

    このステップを一つずつ丁寧に行うことで、ケアレスミスを劇的に減らせます。

  • 数え上げの可視化: \(m\) の値から本数を数える際に、簡単な図を描くと間違いが減ります。
    • 中央に \(m=0\) の線を引きます(腹か節か注意)。
    • その左右に \(m=1\) の線を2本描きます。
    • さらにその左右に \(m=2\) の線を2本描きます。
    • このように可視化することで、「\(m\) の個数 \(\times 2\)」のような単純な計算ミスや、\(m=0\) の扱いを間違えることを防げます。

基本例題56 波の屈折

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)(b)の別解: 屈折の法則と波の速さの関係から波長を導出する解法
      • 模範解答が屈折の法則と波長の関係を直接用いるのに対し、別解ではまず媒質中の波の速さを計算し、そこから波長を求めるという、より基本的なステップに基づいた導出を行います。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的意味の段階的理解: 屈折によってまず「速さ」が変化し、その結果として「波長」が変化するという物理的な因果関係を段階的に追うことで、屈折現象への理解が深まります。
    • 公式の導出過程の確認: なぜ \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\) という関係が成り立つのかを、\(n_1 v_1 = n_2 v_2\) と \(v=f\lambda\) という2つの基本式から確認することができ、公式の丸暗記から脱却できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「波の屈折とホイヘンスの原理」です。異なる媒質の境界面で波がどのように振る舞うかを、計算と作図の両面から理解することが求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の関係式 \(v=f\lambda\) を正しく使えること。
  2. 屈折の法則: 媒質1、2の絶対屈折率をそれぞれ \(n_1, n_2\) とすると、\(n_1 v_1 = n_2 v_2\) や \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\) といった関係が成り立つことを理解していること。
  3. 屈折における不変量: 屈折が起きても、波の振動数 \(f\) は変化しないという重要な性質を理解していること。
  4. ホイヘンスの原理: 波面上の各点が新しい波源(素元波)となり、それらの素元波に共通に接する面(包絡面)が次の瞬間の波面を形成するという、波の伝播を説明する基本原理。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、波の基本式と屈折の法則を用いて、未知の物理量である速さと波長を計算します。
  2. (2)では、ホイヘンスの原理に基づいて、屈折後の波面を幾何学的に正確に作図します。

問(1)(a)

思考の道筋とポイント
媒質1の中での波の速さ \(v_1\) を求める問題です。波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v=f\lambda\) という基本的な関係があります。問題文で媒質1における波長 \(\lambda_1\) と、媒質によらず一定である振動数 \(f\) が与えられているため、これらの値を式に代入して \(v_1\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
  • 振動数 \(f\) は、媒質が変化しても一定である。
  • 与えられた値: \(\lambda_1 = 3.0 \, \text{cm}\), \(f = 8.0 \, \text{Hz}\)

具体的な解説と立式
波の基本式 \(v=f\lambda\) を、媒質1における物理量を用いて記述します。
$$ v_1 = f \lambda_1 $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

上記で立式した式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= 8.0 \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 24
\end{aligned}
$$
単位は cm/s となります。

計算方法の平易な説明

波の速さは、「1秒間に波が振動する回数(振動数)」と「1回の振動で波が進む距離(波長)」を掛け合わせることで計算できます。問題文に振動数が \(8.0 \, \text{Hz}\)(1秒間に8回振動)、波長が \(3.0 \, \text{cm}\) とあるので、単純に \(8.0 \times 3.0 = 24 \, \text{cm/s}\) となります。

結論と吟味

媒質1における波の速さは \(v_1 = 24 \, \text{cm/s}\) と求められました。計算過程、単位ともに問題なく、妥当な結果です。

解答 (1)(a) 24 cm/s

問(1)(b)

思考の道筋とポイント
媒質2の中を進む波の波長 \(\lambda_2\) を求める問題です。屈折の法則によれば、各媒質の絶対屈折率とその中での波長の積は一定に保たれます。この関係式 \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\) を用いて、未知の \(\lambda_2\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則: \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\)
  • 相対屈折率と絶対屈折率の関係: \(n_{12} = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\)
  • 与えられた値: \(n_{12} = 2.0\), \(\lambda_1 = 3.0 \, \text{cm}\)

具体的な解説と立式
屈折の法則より、媒質1と媒質2における絶対屈折率と波長の間には以下の関係が成り立ちます。
$$ n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2 $$
この式を \(\lambda_2\) について解くことを目指します。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\)
計算過程

立式した式を \(\lambda_2\) について変形します。
$$ \lambda_2 = \frac{n_1}{n_2} \lambda_1 $$
ここで、媒質1に対する媒質2の屈折率 \(n_{12}\) は \(n_{12} = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) と定義されるので、\(\displaystyle\frac{n_1}{n_2} = \frac{1}{n_{12}}\) となります。これを代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_2 &= \frac{1}{n_{12}} \lambda_1 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2.0} \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 1.5
\end{aligned}
$$
単位は cm となります。

計算方法の平易な説明

「媒質1に対する媒質2の屈折率が2.0」というのは、「媒質2に入ると、波長が \(1/2.0\) 倍に縮む」ということを意味します。元の波長が \(3.0 \, \text{cm}\) なので、媒質2での波長は \(3.0 \div 2.0 = 1.5 \, \text{cm}\) と計算できます。

結論と吟味

媒質2における波長は \(\lambda_2 = 1.5 \, \text{cm}\) と求められました。屈折率が1より大きい媒質(波が伝わりにくい媒質)に入ると、波長は短くなります。\(3.0 \, \text{cm}\) から \(1.5 \, \text{cm}\) へと短くなっており、物理的な直感と一致する妥当な結果です。

解答 (1)(b) 1.5 cm
別解: 屈折の法則と波の速さの関係から波長を導出する解法

思考の道筋とポイント
屈折の法則 \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) を出発点とします。まず(a)で求めた \(v_1\) を使って媒質2での速さ \(v_2\) を計算し、次に波の基本式 \(v_2 = f \lambda_2\) を用いて波長 \(\lambda_2\) を求めます。より基本的な法則から段階的に導出する方法です。
この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則: \(n_1 v_1 = n_2 v_2\)
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
  • 振動数 \(f\) は媒質によらず不変。

具体的な解説と立式
まず、屈折の法則から、媒質2での速さ \(v_2\) を求めます。
$$ n_1 v_1 = n_2 v_2 \quad \cdots ① $$
次に、媒質2における波の基本式を立てます。
$$ v_2 = f \lambda_2 \quad \cdots ② $$
これらの式を連立して \(\lambda_2\) を求めます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 v_1 = n_2 v_2\)
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

まず、式①を \(v_2\) について解き、(a)で求めた \(v_1 = 24 \, \text{cm/s}\) と \(n_{12} = n_2/n_1 = 2.0\) を利用します。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \frac{n_1}{n_2} v_1 = \frac{1}{n_{12}} v_1 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2.0} \times 24 = 12 \, \text{[cm/s]}
\end{aligned}
$$
次に、式②を \(\lambda_2\) について解き、求めた \(v_2\) と \(f=8.0 \, \text{Hz}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_2 &= \frac{v_2}{f} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{8.0} \\[2.0ex]
&= 1.5 \, \text{[cm]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

屈折率が2.0なので、媒質2では波の速さが半分になります。まず(a)で求めた速さ \(24 \, \text{cm/s}\) を半分にして、媒質2での速さ \(12 \, \text{cm/s}\) を出します。次に、波の基本式「速さ=振動数×波長」を「波長=速さ÷振動数」の形に変形して、\(12 \div 8.0 = 1.5 \, \text{cm}\) と計算します。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(1.5 \, \text{cm}\) が得られました。この解法は、屈折によってまず速さが変化し、振動数は一定のままであるため、結果として波長が変化するという物理的なプロセスをより明確に示しています。

解答 (1)(b) 1.5 cm

問(2)

思考の道筋とポイント
ホイヘンスの原理を用いて、屈折後の波面を作図します。この原理の核心は「波面上の各点が新しい波源(素元波)となり、それらの波に共通に接する面が次の波面になる」という考え方です。
具体的には、入射波面上の点Aが境界面に達した瞬間から、同じ波面上の別の点Bが境界面上の点Cに達するまでの時間を考えます。この時間内に、点Aから媒質2の中へ広がった素元波の波面を描き、点Cからその波面に接線を引くことで、屈折波の波面を決定します。
この設問における重要なポイント

  • ホイヘンスの原理: 波面は無数の素元波の包絡面(共通接線)である。
  • 波の進行方向は、波面に常に垂直である。
  • 屈折の法則 \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) より、速さの比は \(v_1 : v_2 = n_2 : n_1\)。
  • 同じ時間 \(t\) で波が進む距離の比は、速さの比に等しい。

具体的な解説と立式
作図は以下の手順で行います。

  1. 入射波の進行方向(図の矢印)は、入射波面に垂直です。模範解答の図のように、入射波面上の点Bから進行方向に線を引き、境界面XYとの交点をCとします。線分BCの長さは、ある時間 \(t\) の間に波が媒質1で進む距離 \(v_1 t\) に相当します。
  2. この同じ時間 \(t\) の間に、境界面上の点Aから出た波は、媒質2の中を距離 \(v_2 t\) だけ進みます。
  3. ここで、\(n_{12} = n_2/n_1 = 2.0\) より \(n_2 = 2n_1\)。屈折の法則 \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) から \(v_2 = (n_1/n_2)v_1 = (1/2)v_1\)。したがって、Aから出た素元波が進む距離は \(v_2 t = \displaystyle\frac{1}{2}v_1 t = \displaystyle\frac{1}{2}BC\) となります。
  4. 点Aを中心とし、半径が \(\displaystyle\frac{1}{2}BC\) となる円(Aから出た素元波の波面)を描きます。
  5. 点Cから、この円に対して接線を引きます。この接線CDが、求める屈折波の波面となります。
  6. 他の屈折波の波面も、このCDに平行に描きます。

使用した物理公式

  • ホイヘンスの原理
  • 屈折の法則: \(n_1 v_1 = n_2 v_2\)
計算過程

この設問は作図問題であり、数値計算は不要です。上記の手順に従って、幾何学的に正確に作図を行います。

計算方法の平易な説明

屈折した波の形を描く問題です。以下のステップで描けます。

  1. まず、図に示された入射波の線(波面)に垂直な線を、適当な長さで描きます。この長さを「基準の長さ」とします(解答図のBCにあたります)。
  2. 次に、波が媒質2に入るときのことを考えます。屈折率が2.0なので、媒質2では速さが半分になります。
  3. したがって、波が進む距離も半分になります。波面の端の点Aを中心にして、半径が「基準の長さの半分」の円を描きます。これが媒質2に広がった小さな波(素元波)です。
  4. 最後に、「基準の長さ」の終点Cから、先ほど描いた円に触れるようにまっすぐな線(接線)を引きます。この線が、屈折した波の波面になります。
結論と吟味

ホイヘ-ンスの原理に基づいて、屈折波の波面を正しく作図することができました。この作図法は、波の屈折現象を根本から理解する上で非常に重要です。
ちなみに、この作図から屈折の法則 \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) を導くことができます。入射角 \(i\) は入射波面と境界面のなす角 (\(\angle BAC\))、屈折角 \(r\) は屈折波面と境界面のなす角 (\(\angle ACD\)) に対応します。図の直角三角形ABCとADCを考えると、\(\sin i = \displaystyle\frac{BC}{AC}\), \(\sin r = \displaystyle\frac{AD}{AC}\) となります。これらを屈折の法則の式に代入すると、\(n_1 \displaystyle\frac{BC}{AC} = n_2 \displaystyle\frac{AD}{AC}\) となり、\(n_1 BC = n_2 AD\) が導かれます。ここで \(BC=v_1 t\), \(AD=v_2 t\) なので、\(n_1 v_1 t = n_2 v_2 t\)、すなわち \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) という、屈折の基本法則と整合する結果が得られます。

解答 (2) 模範解答の図を参照。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 屈折における不変量と変化量:
    • 核心: 波が屈折する際、何が変わり、何が変わらないのかを明確に区別することが最も重要です。
    • 理解のポイント:
      • 変わらないもの(不変量): 振動数 \(f\)。波を送り出す源の振動は変わらないため、波が境界面を通過する「1秒あたりの個数」は一定に保たれます。
      • 変わるもの(変化量): 速さ \(v\)波長 \(\lambda\)。媒質の性質(波の伝わりやすさ)が変わるため、速さが変化します。そして、\(v=f\lambda\) の関係を保つために、\(f\) が一定のまま \(v\) が変わるので、\(\lambda\) も変化せざるを得ません。
  • 屈折の法則と保存される積:
    • 核心: 屈折の法則は、絶対屈折率 \(n\) と物理量(速さ \(v\)、波長 \(\lambda\))の積が、媒質をまたいで保存されるという形で理解すると強力です。
    • 理解のポイント:
      $$ n_1 v_1 = n_2 v_2 $$
      $$ n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2 $$
      $$ n_1 \sin i = n_2 \sin r $$
      これらの関係式は、積 \(nv\), \(n\lambda\), \(n \sin\theta\) が境界面の前後で不変であることを示しています。問題に応じて適切な「保存則」を使い分けることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の屈折: 水中に入れたストローが曲がって見える、レンズが光を集める、プリズムが光を分けるといった現象はすべて光の屈折によるものです。本問の考え方は、光波にそのまま適用できます。
    • 全反射: 屈折率が大きい媒質から小さい媒質へ入射する際、入射角がある一定の角度(臨界角)を超えると、波が屈折せずにすべて反射される現象です。屈折の法則で \(n_2 \sin r = n_1 \sin i\) において \(\sin r > 1\) となる条件を考えることで理解できます。
    • 音波の屈折: 日中と夜間で音の聞こえ方が変わる現象は、気温差による空気の密度(屈折率)の違いで音波が屈折するために起こります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 不変量 \(f\) を特定: 問題文に振動数 \(f\) や周期 \(T\) があれば、それは媒質1でも2でも共通の値として使える最重要情報です。
    2. 屈折率と物理量の関係を捉える: 「媒質1に対する媒質2の屈折率が \(n_{12}\)」とあれば、\(n_2/n_1 = n_{12}\) という関係を念頭に置き、\(n_1 v_1 = n_2 v_2\) などの法則に適用します。
    3. 作図問題では「速さの比」に着目: ホイヘンスの原理で作図する場合、鍵となるのは絶対的な速さではなく「速さの比」です。\(n_{12}=2.0\) ならば \(v_1:v_2 = n_2:n_1 = 2:1\)。つまり、同じ時間に進む距離の比が \(2:1\) になることを利用して作図します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 屈折の法則の適用ミス:
    • 誤解: \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) のような式で、添字の1と2の対応を間違えてしまう(例: \(n_1 v_2 = n_2 v_1\) としてしまう)。
    • 対策: 「媒質1の中での物理量(\(n_1, v_1, \lambda_1, \sin i\))のグループ」と「媒質2の中での物理量(\(n_2, v_2, \lambda_2, \sin r\))のグループ」を明確に意識し、同じ媒質内の量をペアにして式を立てる癖をつけます。
  • 振動数 \(f\) を変化させてしまう:
    • 誤解: 屈折率を使って、振動数も変化させて計算してしまう。
    • 対策: 「振動数は波源で決まり、伝わる途中で変わることはない」という大原則を徹底します。境界面を1秒間に通過する波の個数が、境界面の前後で変わるはずがない、とイメージで理解することも有効です。
  • ホイヘンスの原理の作図ミス:
    • 誤解: 素元波の半径を、単純に入射波の波長 \(\lambda_1\) や屈折波の波長 \(\lambda_2\) と勘違いしてしまう。
    • 対策: 素元波の半径は「ある時間 \(t\) の間に波が進む距離」であることを正確に理解します。作図の基準となる時間 \(t\) の間に、入射波が進む距離(例:BC)と、屈折波が進む距離(例:AD)を正しく対比させることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 \(v=f\lambda\):
    • 選定理由: (1)(a)では、速さ・振動数・波長という3つの基本量のうち2つが既知で、残る1つを求めるため、この式以外に選択肢はありません。
    • 適用根拠: この式は波の定義そのものです。速さとは単位時間に進む距離であり、1秒間に \(f\) 個の波が進み、1個の波の長さが \(\lambda\) なので、1秒間に進む距離は \(f \times \lambda\) となります。
  • 屈折の法則 \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\):
    • 選定理由: (1)(b)では、屈折率の比と入射波長 \(\lambda_1\) が既知で、屈折波長 \(\lambda_2\) を求めたい状況です。これらの量を結びつけるこの式が最も効率的です。
    • 適用根拠: この関係は、より基本的な \(n_1 v_1 = n_2 v_2\) と \(v=f\lambda\) から導かれます。\(n_1 (f\lambda_1) = n_2 (f\lambda_2)\) となり、\(f\)が不変であるため \(n_1 \lambda_1 = n_2 \lambda_2\) が成立します。この導出過程を理解しておくことが本質的です。
  • ホイヘンスの原理:
    • 選定理由: (2)は、屈折後の「波面」という幾何学的な形状を問う問題です。波面の時間発展を説明する基本原理であるホイヘンスの原理を用いるのが最も直接的です。
    • 適用根拠: この原理は、波が回折や干渉、そして屈折といった現象を示すことを統一的に説明できる、非常に強力なモデルです。波を粒子ではなく「面の広がり」として捉えるこの考え方が、作図の論理的な基盤となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の確認: この問題では cm, s, Hz が使われています。計算結果の単位が cm/s や cm になっているか、最後に必ず確認する癖をつけましょう。特に、m と cm が混在する問題では注意が必要です。
  • 分数の計算: (1)(b)の別解のように、\(12/8.0\) のような計算が出てきた場合、慌てずに約分を考えます。\(12/8 = 3/2 = 1.5\) のように、一度簡単な分数に直してから小数に変換すると、計算ミスが減ります。
  • 作図の精度向上: ホイヘンスの原理による作図では、以下の点を意識すると精度が上がります。
    1. 垂直を正確に描く: 波の進行方向は波面に垂直です。三角定規などを使って、垂直関係を正確に描くことが全ての基本です。
    2. 基準の長さを大きく取る: 作図の基準となる線分BCを、ある程度大きく描くと、その半分の長さを半径とする円も描きやすくなり、全体の誤差が小さくなります。
    3. 接線を丁寧に引く: 円と直線が1点でのみ接するように、慎重に接線を引きます。定規を円に当て、少しずつ回転させながら接する点を探すと上手く引けます。
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基本問題

288 水面波の干渉

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の干渉条件の具体的な計算」です。2つの波源からの距離(経路)が与えられた点について、経路差を計算し、それが波長の整数倍か半整数倍かを判定することで、その点が強めあうのか弱めあうのかを判断する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 経路差の計算: 2つの波源からある点までの距離の差を正しく計算できること。
  2. 同位相の場合の干渉条件:
    • 強めあい(腹): 経路差が \(m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
    • 弱めあい(節): 経路差が \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
  3. 逆位相の場合の干渉条件:
    • 強めあい(腹): 経路差が \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
    • 弱めあい(節): 経路差が \(m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
  4. 干渉による振幅の変化: 強めあう点では振幅が2倍になり、弱めあう点では振幅が0(振動しない)になること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)と(2)では、まず各点(P, Q)について、2つの波源A, Bからの経路差を計算します。
  2. 次に、その経路差が、与えられた波長 \(\lambda\) の何倍になっているかを調べます。
  3. 整数倍なら強めあい、半整数倍(\(0.5, 1.5, 2.5, \dots\))倍なら弱めあうと判断し、振幅を答えます。
  4. [問]では、波源が逆位相になるため、同位相の場合と強めあい・弱めあいの条件が逆転することを利用して、各点の振動を判断します。

問(1)

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