基礎CHECK
1 ケプラーの第一法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第一法則の正確な理解」です。惑星の運動に関する基本的な法則を問う知識問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ケプラーの第一法則(楕円軌道の法則)の定義。
- 惑星の軌道が「だ円(楕円)」であること。
- 太陽が軌道の「焦点」に位置すること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文が「ケプラーの第一法則」について問うていることを確認する。
- 法則の内容を正確に思い出し、空欄(ア)と(イ)に当てはまる適切な語句を選択する。
思考の道筋とポイント
この問題は、17世紀に天文学者ヨハネス・ケプラーが発見した惑星の運動に関する法則についての知識を問うています。特に、3つあるケプラーの法則のうち、第一法則(楕円軌道の法則)の内容を正しく覚えているかがポイントです。古代ギリシャ以来、天体の運動は完璧な形である「円」だと考えられてきましたが、ケプラーは観測データから、惑星の実際の軌道が「だ円」であることを突き止めました。この歴史的背景も知っておくと、より記憶に残りやすくなります。
この設問における重要なポイント
- ケプラーの第一法則(楕円軌道の法則): すべての惑星は、太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を運動する。
- だ円(楕円): 2つの定点(これを焦点と呼ぶ)からの距離の和が一定となる点の集合によって描かれる曲線。
- 焦点: 楕円には中心とは別に、焦点と呼ばれる2つの特別な点が存在する。太陽系では、惑星の楕円軌道の一方の焦点に太陽があり、もう一方の焦点には何も存在しない。
具体的な解説と立式
この問題は物理法則の知識を問うものであり、数式を用いた立式や計算は必要ありません。
- 問題文は「惑星は太陽を1つの[ ア ]とする[ イ ]上を運動する。」とあり、これはケプラーの第一法則の条文そのものです。
- ケプラーの第一法則によれば、惑星が運動する軌道の形は「だ円(楕円)」です。したがって、空欄(イ)には「だ円」が入ります。
- また、そのだ円軌道において、中心的な役割を果たす太陽が位置する場所は、だ円の中心ではなく、2つある「焦点」のうちの1つです。したがって、空欄(ア)には「焦点」が入ります。
使用した物理公式
- ケプラーの第一法則: 惑星は、太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を運動する。
この問題には計算過程はありません。法則の定義に基づいて解答します。
- (ア) → 焦点
- (イ) → だ円
この問題は計算ではなく、言葉を覚えるクイズのようなものです。ポイントは2つです。
- 惑星が回るコースの形は、きれいな丸(円)ではなく、少しつぶれた「だ円」である。
- そのコースの中心に太陽があるのではなく、中心から少しズレた「焦点」という特別な場所に太陽がいる。
「ケプラーの法則」と聞いたら、「だ円」と「焦点」という2つのキーワードをセットで思い出せるようにしておきましょう。
2 ケプラーの第二法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)の応用」です。惑星が楕円軌道上を運動する際の速さの変化を、法則を用いて定量的に求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)の理解。
- 「面積速度」の具体的な計算方法。
- 近日点・遠日点では、惑星の速度ベクトルと太陽からの位置ベクトルが直交するという幾何学的関係。
- (別解)角運動量保存則の適用。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)を適用する。
- 近日点Pと遠日点Qにおける面積速度を、それぞれ与えられた物理量(\(r_1, v_1, r_2\))と未知数(\(v_2\))を用いて表す。
- 両地点での面積速度が等しいという等式を立て、未知数 \(v_2\) について解く。
思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第二法則、通称「面積速度一定の法則」を具体的な計算に用いる典型例です。この法則は「惑星と太陽とを結ぶ線分が、等しい時間内に掃く面積は、常に一定である」というものです。この「単位時間あたりに掃く面積」が面積速度と呼ばれます。
直感的には、惑星は太陽に近づくほど万有引力が強くなって加速され、遠ざかるほど引力が弱まって減速することを意味します。したがって、太陽に最も近い近日点Pで速さは最大に、最も遠い遠日点Qで速さは最小になります。この問題では、その関係を数式で導出します。
特に、近日点と遠日点では、惑星の進行方向(速度ベクトル)と太陽からの距離を示す線(位置ベクトル)が直角に交わるため、面積速度の計算が \(\displaystyle\frac{1}{2} \times (\text{距離}) \times (\text{速さ})\) という非常にシンプルな形で表せる点が重要です。
この設問における重要なポイント
- ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則): 惑星と太陽を結ぶ動径が単位時間に掃く面積(面積速度)は、軌道上のどこでも一定である。
- 面積速度の計算: 一般的な位置では、面積速度は \(\displaystyle\frac{1}{2}rv\sin\theta\)(\(\theta\) は位置ベクトルと速度ベクトルのなす角)と表される。
- 近日点・遠日点での特殊性: 近日点(P)と遠日点(Q)では、位置ベクトルと速度ベクトルが直交する(\(\theta=90^\circ, \sin\theta=1\))。そのため、面積速度はそれぞれ \(\displaystyle\frac{1}{2}r_1v_1\)、\(\displaystyle\frac{1}{2}r_2v_2\) と簡潔に計算できる。
- 物理的意味: 面積速度が一定であることから、\(r\) が小さい(太陽に近い)ほど \(v\) は大きく(速く)、\(r\) が大きい(太陽から遠い)ほど \(v\) は小さく(遅く)なる。
具体的な解説と立式
ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)を用いて立式します。
面積速度とは、惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間あたりに掃く面積のことです。
- 近日点Pにおいて、太陽からの距離は \(r_1\)、惑星の速さは \(v_1\) です。図からわかるように、この点では惑星の速度ベクトルと太陽からの位置ベクトルは直交しています。したがって、近日点Pにおける面積速度 \(S_P\) は、底辺が \(r_1\)、高さが \(v_1\) の三角形の面積の半分として考えることができ、次式で与えられます。
$$ S_P = \frac{1}{2}r_1v_1 \quad \cdots ① $$ - 同様に、遠日点Qにおいて、太陽からの距離は \(r_2\)、惑星の速さは \(v_2\) です。この点でも速度ベクトルと位置ベクトルは直交しています。したがって、遠日点Qにおける面積速度 \(S_Q\) は、
$$ S_Q = \frac{1}{2}r_2v_2 \quad \cdots ② $$ - ケプラーの第二法則により、面積速度は常に一定なので、\(S_P = S_Q\) が成り立ちます。
$$ \frac{1}{2}r_1v_1 = \frac{1}{2}r_2v_2 \quad \cdots ③ $$
使用した物理公式
- ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則): \(\displaystyle\frac{1}{2}rv = \text{一定}\) (近日点・遠日点において)
式③を \(v_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}r_1v_1 &= \frac{1}{2}r_2v_2 \\[2.0ex]r_1v_1 &= r_2v_2 \\[2.0ex]v_2 &= \frac{r_1}{r_2}v_1
\end{aligned}
$$
「面積速度が一定」というのは、太陽と惑星を結んだ線が、まるでほうきで地面を掃くように動くとき、その「掃くペース(面積/時間)」が常に同じだ、という意味です。
- 太陽に近い近日点では、ほうきの柄(太陽からの距離 \(r_1\))が短いです。同じペースで面積を掃くためには、ほうきの先を速く動かす(惑星の速さ \(v_1\) を大きくする)必要があります。
- 太陽から遠い遠日点では、ほうきの柄(距離 \(r_2\))が長くなります。そのため、ほうきの先はゆっくり動かしても(惑星の速さ \(v_2\) が小さくても)、同じペースで面積を掃くことができます。
この関係が、単純な掛け算の式「\(r_1 \times v_1 = r_2 \times v_2\)」で表せるのです。この式を \(v_2\) について解けば、答えが求まります。
思考の道筋とポイント
惑星が太陽から受ける万有引力は、常に太陽の中心を向く「中心力」です。中心力のみが働く物体の運動では、その回転の中心に対する力のモーメントが常にゼロとなるため、角運動量が保存されます。実は、ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)は、この角運動量保存則と物理的に等価な法則です。ここでは、より根源的な法則である角運動量保存則から問題を解いてみます。
この設問における重要なポイント
- 中心力: 物体に働く力が、常に定点(力の中心)を向いており、その大きさが中心からの距離のみに依存する力。万有引力は典型的な中心力です。
- 角運動量保存則: 物体に中心力しか働かない場合、その物体の角運動量は時間的に変化せず、一定に保たれる。
- 角運動量の計算: 質点(質量\(m\))の角運動量\(L\)の大きさは \(L = mvr\sin\theta\) で与えられます(\(\theta\)は位置ベクトル\(\vec{r}\)と速度ベクトル\(\vec{v}\)のなす角)。
- 近日点・遠日点での特殊性: 近日点・遠日点では\(\vec{r}\)と\(\vec{v}\)が直交するため\(\sin\theta=1\)となり、角運動量は \(L=mvr\) と簡単に計算できます。
具体的な解説と立式
惑星に働く力は太陽からの万有引力のみです。この力は常に太陽の中心を向く中心力なので、惑星の角運動量は保存されます。惑星の質量を\(m\)とします。
- 近日点Pにおける角運動量 \(L_P\): 太陽からの距離が\(r_1\)、速さが\(v_1\)で、位置ベクトルと速度ベクトルが直交するため、
$$ L_P = m v_1 r_1 \quad \cdots ① $$ - 遠日点Qにおける角運動量 \(L_Q\): 太陽からの距離が\(r_2\)、速さが\(v_2\)で、同様に位置ベクトルと速度ベクトルが直交するため、
$$ L_Q = m v_2 r_2 \quad \cdots ② $$ - 角運動量保存則の適用: \(L_P = L_Q\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ m v_1 r_1 = m v_2 r_2 \quad \cdots ③ $$
使用した物理公式
- 角運動量保存則: \(mvr = \text{一定}\) (中心力による運動で、rとvが直交する場合)
式③を \(v_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m v_1 r_1 &= m v_2 r_2 \\[2.0ex]v_1 r_1 &= v_2 r_2 \quad (\text{両辺を} m \text{で割る}) \\[2.0ex]v_2 &= \frac{r_1}{r_2}v_1
\end{aligned}
$$
この結果は、ケプラーの第二法則を用いて得られた結果と完全に一致します。
「角運動量」とは、物体がどれだけ勢いよく回っているかを示す量で、「質量 × 速さ × 回転半径」で大まかに計算できます。
惑星に働く力は太陽に引っ張られる力だけで、回転を速めたり遅くしたりするような横向きの力は働きません。そのため、惑星の「回転の勢い(角運動量)」は常に一定に保たれます。
- 太陽に近い近日点では、回転半径 \(r_1\) が小さい分、速さ \(v_1\) を大きくして回転の勢いを保ちます。
- 太陽から遠い遠日点では、回転半径 \(r_2\) が大きい分、速さ \(v_2\) は小さくなります。
この関係が「\(m \times v_1 \times r_1 = m \times v_2 \times r_2\)」という式で表され、これを解くことで答えが求まります。
3 惑星の軌道
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「楕円軌道の幾何学的性質と半長軸の定義」です。ケプラーの法則を扱う上で基本となる、軌道の大きさを表すパラメータ「半長軸」の求め方を理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 楕円軌道における「近日点」と「遠日点」の定義。
- 楕円の「長軸」と「半長軸」の幾何学的な定義。
- 近日点距離と遠日点距離から長軸の長さを求める関係。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 図から、楕円の長軸が近日点と遠日点を結ぶ線分であることを確認する。
- 長軸の長さを、太陽からの近日点距離 \(r_1\) と遠日点距離 \(r_2\) を用いて表現する。
- 「半長軸」は長軸の半分であるという定義に基づき、計算を行う。
思考の道筋とポイント
この問題は、物理法則の計算というよりも、惑星の軌道である「楕円」の幾何学的な性質を正しく理解しているかを問うものです。ケプラーの第三法則「公転周期の2乗は、軌道の半長軸の3乗に比例する」(\(T^2 \propto a^3\)) に出てくる「半長軸 \(a\)」が、具体的に何を指すのかを明確にすることが目的です。
図に示されている近日点P(太陽に最も近い点)と遠日点Q(太陽から最も遠い点)が、楕円の最も長い直径の両端にあることに気づくことができれば、解答は容易に導けます。
この設問における重要なポイント
- 近日点: 惑星が軌道上で太陽に最も近づく点。図では点Pであり、太陽からの距離は \(r_1\)。
- 遠日点: 惑星が軌道上で太陽から最も遠ざかる点。図では点Qであり、太陽からの距離は \(r_2\)。
- 長軸: 楕円の最も長い直径のこと。近日点と遠日点を結ぶ線分の長さに相当する。
- 半長軸 (\(a\)): 長軸の半分の長さ。軌道の「平均的な半径」に相当する量として、惑星の軌道のスケールを代表する重要な値。
具体的な解説と立式
この問題は、図形の性質から立式します。
- 図より、惑星の軌道である楕円の最も長い直径、すなわち「長軸」は、近日点Pと遠日点Qを結ぶ線分の長さに等しいことがわかります。
- 太陽は楕円の焦点の一つに位置しています。太陽から近日点Pまでの距離が \(r_1\)、太陽から遠日点Qまでの距離が \(r_2\) です。
- したがって、長軸の長さ \(L\) は、これら二つの距離の和となります。
$$ L = r_1 + r_2 \quad \cdots ① $$ - 問題で求められている「半長軸」の長さ \(a\) は、定義により長軸の長さ \(L\) の半分です。
$$ a = \frac{L}{2} \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 長軸の長さの定義: \(L = (\text{近日点距離}) + (\text{遠日点距離})\)
- 半長軸の長さの定義: \(a = \displaystyle\frac{\text{長軸の長さ}}{2}\)
式②に式①を代入することで、半長軸 \(a\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{L}{2} \\[2.0ex]&= \frac{r_1 + r_2}{2}
\end{aligned}
$$
「半長軸」という言葉を分解してみましょう。「半」は「半分」、「長軸」は「一番長い軸(直径)」を意味します。
- まず、惑星の軌道(だ円)の「一番長い直径」を探します。図を見ると、それは太陽に一番近い点Pと、一番遠い点Qを結んだ線の長さだとわかります。
- この線の長さは、太陽からPまでの距離 \(r_1\) と、太陽からQまでの距離 \(r_2\) を足したものなので、\(r_1 + r_2\) となります。これが「長軸」の長さです。
- 求めたい「半長軸」は、その半分なので、単純に \(r_1 + r_2\) を2で割ればOKです。
4 ケプラーの第三法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第三法則を用いた公転周期の計算」です。軌道の大きさを表す半長軸と、公転周期の関係性を理解し、比の計算によって未知の周期を求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ケプラーの第三法則(調和の法則)の正確な理解。
- 法則の数式表現 \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)を使いこなすこと。
- 異なる軌道を運動する2つの天体について、比の形で法則を適用すること。
- 指数計算(特に3乗と平方根)を正確に行うこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 人工衛星Aと人工衛星Bの半長軸と周期の情報を整理する。
- ケプラーの第三法則を適用し、人工衛星AとBについて \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3}\) の値が等しいという関係式を立てる。
- この式を、求めたい人工衛星Bの周期 \(T_B\) について解く。
思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第三法則、別名「調和の法則」を適用する典型的な問題です。この法則は「惑星(または人工衛星)の公転周期の2乗は、軌道の半長軸の3乗に比例する」というもので、同じ中心天体(この問題では地球)の周りを回るすべての天体に対して成り立ちます。
この法則の重要な点は、軌道の大きさ(半長軸)が少し大きくなるだけで、公転にかかる時間(周期)はそれ以上に劇的に長くなることを示している点です。例えば、半長軸が2倍になると、周期は \(2\sqrt{2}\) 倍(約2.8倍)になります。この問題では半長軸が4倍になるので、周期が何倍になるかを計算で確かめます。
この設問における重要なポイント
- ケプラーの第三法則(調和の法則): 同じ中心天体の周りを公転する天体の周期 \(T\) と軌道の半長軸 \(a\) の間には、\(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)という関係が成り立つ。
- 法則の適用対象: この法則の定数 \(k\) の値は中心天体の質量のみに依存するため、同じ中心天体(例:太陽、地球)の周りを回る異なる惑星や人工衛星の間で比較することができる。
- 比の形での利用: 2つの天体(A, B)について、\(\displaystyle\frac{T_A^2}{a_A^3} = \frac{T_B^2}{a_B^3}\) という形で利用するのが計算上便利である。
具体的な解説と立式
問題文で与えられた情報を整理します。
- 人工衛星A: 半長軸 \(a_A = a\), 周期 \(T_A = T\)
- 人工衛星B: 半長軸 \(a_B = 4a\), 周期 \(T_B\)(求めたい値)
ケプラーの第三法則によれば、同じ中心天体の周りを運動する人工衛星AとBについて、
$$ \displaystyle\frac{(\text{周期})^2}{(\text{半長軸})^3}$$
の値は等しくなります。
したがって、以下の関係式が成り立ちます。
$$ \frac{T_A^2}{a_A^3} = \frac{T_B^2}{a_B^3} \quad \cdots ① $$
この式に、上記の値を代入します。
$$ \frac{T^2}{a^3} = \frac{T_B^2}{(4a)^3} \quad \cdots ② $$
この式を \(T_B\) について解くことで、答えが求まります。
使用した物理公式
- ケプラーの第三法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)
式②を \(T_B\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{T^2}{a^3} &= \frac{T_B^2}{(4a)^3} \\[2.0ex]\frac{T^2}{a^3} &= \frac{T_B^2}{64a^3} \\[2.0ex]T_B^2 &= \frac{64a^3}{a^3} \times T^2 \\[2.0ex]T_B^2 &= 64 T^2 \\[2.0ex]T_B &= \sqrt{64 T^2} \\[2.0ex]T_B &= 8T \quad (\text{周期} T_B \text{は正の値であるため})
\end{aligned}
$$
ケプラーの第三法則は、「軌道のサイズ(半長軸)が大きくなると、一周するのにかかる時間(周期)はもっとずっと長くなる」というルールです。その関係は次のようになっています。
「\((\text{周期})^2\) は \((\text{軌道のサイズ})^3\) に比例する」
これを今回の問題に当てはめてみましょう。
- 人工衛星Bの軌道のサイズは、Aの \(4\) 倍です。 (\(a \rightarrow 4a\))
- まず、このサイズを3乗します。\(4^3 = 4 \times 4 \times 4 = 64\) 倍。
- これが「\((\text{周期})^2\) が何倍になるか」を示しています。つまり、\(T_B^2\) は \(T^2\) の \(64\) 倍です。
- 最後に、2乗する前の周期 \(T_B\) を知りたいので、\(64\) の平方根をとります。\(\sqrt{64} = 8\)。
したがって、人工衛星Bの周期は、Aの周期 \(T\) の \(8\) 倍、つまり \(8T\) となります。
5 万有引力の法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「万有引力の法則の公式を用いた具体的な計算」です。質量を持つ物体間に働く引力の大きさを、公式に数値を代入して求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 万有引力の法則の公式 \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) の理解。
- 質量を持つすべての物体間に引力が働くという普遍性の認識。
- 指数計算(特に10のべき乗)の正確な処理方法。
- 有効数字の考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、2物体の質量 \(m_1, m_2\)、物体間の距離 \(r\)、万有引力定数 \(G\) の値を正確に読み取る。
- 万有引力の法則の公式にこれらの値を代入する。
- 指数部分と係数部分に分けて慎重に計算を進め、最後に有効数字を考慮して答えを整形する。
思考の道筋とポイント
この問題は、ニュートンによって発見された万有引力の法則を、具体的な数値を用いて計算する基本的な演習問題です。この法則は、リンゴが木から落ちる力も、月が地球の周りを回る力も、同じ一つの法則で説明できるという、物理学における非常に重要な概念です。
計算のポイントは、万有引力定数 \(G\) が \(6.7 \times 10^{-11}\) という非常に小さな値であることです。このため、私たちの身の回りにある物体(例えば、2人の人間)の間に働く万有引力は、通常は感じることができないほど微弱な力であることを、計算結果から実感できます。計算過程では、このような小さな数を含む指数(10のべき乗)の扱いを間違えないように注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 万有引力の法則: 2つの質点(質量 \(m_1, m_2\))が距離 \(r\) だけ離れているとき、互いに及ぼしあう引力の大きさ \(F\) は \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) で与えられる。力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
- 作用・反作用: 2物体が及ぼしあう万有引力は、作用・反作用の関係にあります。つまり、物体1が物体2を引く力と、物体2が物体1を引く力は、大きさが等しく向きが逆です。
- 有効数字: 問題文で与えられている数値は、質量 \(60 \, \text{kg}\)(2桁)、距離 \(2.0 \, \text{m}\)(2桁)、万有引力定数 \(6.7 \times 10^{-11}\)(2桁)です。したがって、計算結果も最も信頼性の低い桁数に合わせて、有効数字2桁で答えるのが適切です。
具体的な解説と立式
問題文で与えられている物理量を万有引力の法則の公式に代入します。
- 物体の質量: \(m_1 = 60 \, \text{kg}\), \(m_2 = 60 \, \text{kg}\)
- 物体間の距離: \(r = 2.0 \, \text{m}\)
- 万有引力定数: \(G = 6.7 \times 10^{-11} \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{kg}^2\)
これらの値を万有引力の法則の公式 \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) に代入して、力の大きさ \(F\) を求める式を立てます。
$$ F = (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{60 \times 60}{(2.0)^2} \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 万有引力の法則: \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)
式①を計算します。指数部分とそれ以外の係数部分を分けて計算すると、間違いを減らすことができます。
$$
\begin{aligned}
F &= (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{60 \times 60}{(2.0)^2} \\[2.0ex]&= (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{3600}{4.0} \\[2.0ex]&= (6.7 \times 10^{-11}) \times 900 \\[2.0ex]&= (6.7 \times 10^{-11}) \times (9.0 \times 10^2) \\[2.0ex]&= (6.7 \times 9.0) \times (10^{-11} \times 10^2) \\[2.0ex]&= 60.3 \times 10^{-9} \\[2.0ex]&= 6.03 \times 10^1 \times 10^{-9} \\[2.0ex]&= 6.03 \times 10^{-8}
\end{aligned}
$$
問題で与えられた数値の有効数字は2桁なので、計算結果もそれに合わせます。\(6.03\) を四捨五入して \(6.0\) とします。
$$ F \approx 6.0 \times 10^{-8} \, \text{N} $$
この問題は、万有引力の公式 \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) に、問題文の数字をそのまま入れて計算するだけです。
- 公式の \(G, m_1, m_2, r\) に、それぞれ \(6.7 \times 10^{-11}, 60, 60, 2.0\) を代入します。
- 計算のコツは、\(10^{-11}\) のような「10の何乗」の部分は一旦無視して、それ以外の数字(\(6.7, 60, 60, 2.0\))を先に計算することです。\(\displaystyle\frac{60 \times 60}{2.0^2} = \displaystyle\frac{3600}{4} = 900\)これに \(6.7\) を掛けると、\(6.7 \times 900 = 6030\) となります。
- 最後に、無視していた \(10^{-11}\) をくっつけると、\(6030 \times 10^{-11}\) となります。
- このままだと見栄えが悪いので、科学的な表記(\(A \times 10^n\) の形)に直します。\(6030 \times 10^{-11} = 6.03 \times 10^3 \times 10^{-11} = 6.03 \times 10^{-8}\)
- 問題文の数字が2桁(\(60, 2.0, 6.7\))なので、答えも2桁に丸めて \(6.0 \times 10^{-8}\) とします。
6 万有引力の法則と重力加速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「地表での重力と万有引力の関係性の導出」です。普段使っている重力加速度 \(g\) が、より普遍的な物理法則である万有引力の法則からどのように導かれるかを理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 地表の物体が受ける「重力」の正体が、地球とその物体の間に働く「万有引力」であることの理解。
- 重力の大きさを表す式: \(mg\)。
- 万有引力の大きさを表す式: \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)。
- 地表付近では、地球の中心からの距離 \(r\) を地球の半径 \(R\) で近似できること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 地表にある質量 \(m\) の物体を考える。
- この物体が受ける重力を \(mg\) と表す。
- この物体が地球(質量 \(M\)、半径 \(R\))から受ける万有引力を公式で表す。
- 「重力 = 万有引力」として等式を立て、両辺を整理して \(g\) について解く。
思考の道筋とポイント
普段、私たちは物体の重さを「\(mg\)」という簡単な式で計算しますが、この「重力」の正体は一体何なのでしょうか。この問題は、その根源が「地球と物体の間に働く万有引力」であることを数式で示すものです。
地球の表面にある物体は、地球全体から引力を受けています。このとき、地球を一つの質点とみなし、その全質量 \(M\) が中心に集まっているかのように扱えることが知られています(球殻定理)。したがって、地表の物体と地球中心との距離は、地球の半径 \(R\) となります。
この考え方に基づき、「重力 \(mg\)」と「万有引力 \(G \displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)」を等しいと置くことで、二つの異なる表現を結びつけ、重力加速度 \(g\) の正体を明らかにします。
この設問における重要なポイント
- 重力 = 万有引力: 地球の表面(またはその近傍)にある物体が受ける重力は、地球とその物体の間に働く万有引力とみなせます(ただし、問題の指示通り地球の自転による影響は無視します)。
- 万有引力の公式の適用: 公式 \(F = G \displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) において、\(m_1\) を地球の質量 \(M\)、\(m_2\) を物体の質量 \(m\)、距離 \(r\) を地球の半径 \(R\) と置き換えて考えます。
- 重力加速度の普遍性: 導出される関係式 \(g = \displaystyle\frac{GM}{R^2}\) からわかるように、重力加速度 \(g\) の値は、落下する物体の質量 \(m\) には依存しません。これは、重い物も軽い物も同じ加速度で落下するという「落体の法則」を理論的に裏付けています。
具体的な解説と立式
地表にある質量 \(m\) の物体に働く力について、2つの側面から考えます。
- まず、この物体が地球から受ける重力の大きさは、重力加速度を \(g\) として次のように表されます。
$$ F_{\text{重力}} = mg \quad \cdots ① $$ - 次に、この力の正体は、地球(質量 \(M\))と物体(質量 \(m\))の間に働く万有引力です。地球の中心と物体の間の距離は、地球の半径 \(R\) とみなせるので、万有引力の法則より、その大きさは次式で与えられます。
$$ F_{\text{万有引力}} = G \frac{Mm}{R^2} \quad \cdots ② $$ - 「重力は万有引力である」という考え方から、式①と式②の力は等しいと考えられます。したがって、これらを等号で結びます。
$$ mg = G \frac{Mm}{R^2} \quad \cdots ③ $$
使用した物理公式
- 重力: \(F = mg\)
- 万有引力の法則: \(F = G \displaystyle\frac{M m}{r^2}\)
式③の両辺を物体の質量 \(m\) で割ることで、重力加速度 \(g\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
mg &= G \frac{Mm}{R^2} \\[2.0ex]g &= \frac{1}{m} \times G \frac{Mm}{R^2} \\[2.0ex]g &= G \frac{M}{R^2}
\end{aligned}
$$
これにより、重力加速度 \(g\) が、万有引力定数 \(G\)、地球の質量 \(M\)、地球の半径 \(R\) を用いて表されました。
この問題は「私たちが『重さ』と呼んでいるものの正体は何?」という問いに答えるものです。
その答えは「地球が私たちを引っぱる力(万有引力)」です。
なので、物理の世界では、この2つを同じものとして扱います。
- 「重さ」を表すおなじみの式は \(mg\) です。
- 「万有引力」を表す式は \(G \displaystyle\frac{Mm}{R^2}\) です。
- この2つをイコールで結ぶと、\(mg = G \displaystyle\frac{Mm}{R^2}\) という式ができます。
- この式の両側に、共通して物体の質量 \(m\) が入っています。これは「あなたの体重」のようなものですが、この \(m\) を両辺から消去(割り算)できます。
- すると、\(g = \displaystyle\frac{GM}{R^2}\) という、求めたい式が出てきます。これは、「重力加速度 \(g\) は、あなたの体重とは無関係に、地球のスペック(質量 \(M\) と半径 \(R\))だけで決まる」という、とても大事なことを意味しています。
7 自転と重力加速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「地球の自転が見かけの重力に与える影響」です。地球上の場所によって重力加速度の値が異なる理由を、万有引力と遠心力の関係から考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 「見かけの重力」が、地球からの「万有引力」と地球の自転による「遠心力」の合力であることの理解。
- 遠心力は回転運動に伴う見かけの力であり、その大きさは回転半径に比例すること。
- 北極と赤道における、地球の自転軸からの距離(回転半径)の違い。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 地球上の物体に働く力を、地球と共に回転する観測者の立場で考える。
- 物体に働く力は「万有引力」と「遠心力」の2つであると整理する。
- 北極点と赤道上で、それぞれの力の大きさと向きを分析する。
- 両地点での力の合力(見かけの重力)を比較し、それによって定義される重力加速度の大小を判断する。
思考の道筋とポイント
私たちが日常的に「重力」と呼んでいるものは、厳密には地球が物体を引く「万有引力」と、地球の自転によって生じる「遠心力」という見かけの力を合わせた「合力」です。この合力のことを物理では「見かけの重力」と呼びます。
この問題の核心は、遠心力の大きさが場所によって異なるという点にあります。遠心力は、自転軸からの距離(回転半径)が遠いほど、また回転の速さが速いほど大きくなります。
- 北極点:地球の自転軸の真上に位置するため、回転半径はゼロです。その場で1日に1回くるりと回るだけで、円運動はしていません。したがって、遠心力は働きません。
- 赤道上:自転軸から最も離れた場所(回転半径が地球の半径にほぼ等しい)で、最も速い速度で円運動をしています。そのため、遠心力が最大になります。
この遠心力は、万有引力を打ち消す方向に働くため、赤道上では見かけの重力が小さくなります。この違いを比較することが、この問題のゴールです。
この設問における重要なポイント
- 万有引力: 地球の中心に向かって働く力。その大きさは、地球上のどこでもほぼ一定と考えられます(厳密には地球が完全な球体でないためわずかに異なりますが、ここではその影響は無視します)。
- 遠心力: 地球の自転に伴って、自転軸から遠ざかる向きに働く見かけの力。その大きさは \(mr\omega^2\) で与えられます(\(m\):物体の質量, \(r\):自転軸からの距離, \(\omega\):地球の自転の角速度)。
- 見かけの重力: 地球上の観測者が実際に測定する重力のこと。これは、万有引力と遠心力のベクトル和で決まります。
- 重力加速度: 見かけの重力を \(mg’\) と表したときの \(g’\) の値。場所によって異なります。
具体的な解説と立式
この問題は定性的な比較を問うものであり、力の概念的な関係を整理することが中心となります。地球の質量を \(M\)、半径を \(R\)、自転の角速度を \(\omega\)、地表に置かれた物体の質量を \(m\) とします。
- 北極での力の分析
- 北極は地球の自転軸上に位置するため、回転半径は \(r=0\) です。
- したがって、働く遠心力の大きさは \(F_{\text{遠心力}} = m \cdot 0 \cdot \omega^2 = 0\) となります。
- このため、北極での見かけの重力 \(W_{\text{北極}}\) は、万有引力 \(F_{\text{万有引力}}\) そのものになります。
$$ W_{\text{北極}} = F_{\text{万有引力}} = G\frac{Mm}{R^2} $$ - 北極での重力加速度を \(g_{\text{北極}}\) とすると、\(W_{\text{北極}} = mg_{\text{北極}}\) の関係から、
$$ g_{\text{北極}} = \frac{GM}{R^2} $$
- 赤道上での力の分析
- 赤道上では、自転軸からの距離(回転半径)は地球の半径 \(R\) に等しく、\(r=R\) です。
- 遠心力は、万有引力とは逆向き(地球の中心から遠ざかる向き)に働きます。その大きさは \(F_{\text{遠心力}} = mR\omega^2\) です。
- したがって、赤道上での見かけの重力 \(W_{\text{赤道}}\) は、万有引力から遠心力を差し引いた大きさになります。
$$ W_{\text{赤道}} = F_{\text{万有引力}} – F_{\text{遠心力}} = G\frac{Mm}{R^2} – mR\omega^2 $$ - 赤道上での重力加速度を \(g_{\text{赤道}}\) とすると、\(W_{\text{赤道}} = mg_{\text{赤道}}\) の関係から、
$$ g_{\text{赤道}} = \frac{GM}{R^2} – R\omega^2 $$
- 比較
- \(g_{\text{北極}}\) と \(g_{\text{赤道}}\) を比較すると、\(R\omega^2\) は正の値なので、明らかに \(g_{\text{北極}} > g_{\text{赤道}}\) となります。
使用した物理公式
- 見かけの重力 = 万有引力 + 遠心力 (ベクトル和)
- 万有引力: \(F_{\text{万有引力}} = G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)
- 遠心力: \(F_{\text{遠心力}} = mr\omega^2\)
この問題は定性的な比較を問うものであり、具体的な数値計算はありません。上記の「具体的な解説と立式」で示した大小関係の導出そのものが解答プロセスとなります。
- 北極での重力加速度: \(g_{\text{北極}} = \displaystyle\frac{GM}{R^2}\)
- 赤道上での重力加速度: \(g_{\text{赤道}} = \displaystyle\frac{GM}{R^2} – R\omega^2\)
両者を比較すると、赤道上では正の値である \(R\omega^2\) の分だけ重力加速度が小さくなるため、北極での重力加速度の方が大きいと結論できます。
地球はコマのように回っています。この回転によって、私たちは外側に放り出されそうになる力(遠心力)をわずかに受けています。
- 赤道にいる場合: 地球の回転が最も速い場所です。これは、遊園地の回転ブランコで一番外側の席に座っているようなものです。遠心力が最も大きく働き、地球の中心に引かれる力(万有引力)を少し弱めてしまいます。その結果、見かけの重力は小さくなります。
- 北極にいる場合: コマの芯の真上に立っているのと同じです。その場でくるりと回るだけで、外側に放り出されることはありません。つまり、遠心力はゼロです。地球に引かれる万有引力がそのまま「重力」として感じられます。
結論として、遠心力による「割引」がない北極の方が、見かけの重力は大きくなります。したがって、重力加速度も北極の方が大きくなります。
8 万有引力による位置エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「万有引力による位置エネルギーの定義と性質」です。無限遠を基準とした位置エネルギーの公式を理解し、距離とエネルギーの関係を正しく把握することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 万有引力による位置エネルギーの公式: \(U(r) = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)。
- 位置エネルギーの基準点(無限遠で \(U=0\))の理解。
- マイナスの符号が持つ物理的な意味(束縛状態)。
- 負の数の大小比較。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 万有引力による位置エネルギーの公式を思い出す。
- 点P(距離 \(r\))と点Q(距離 \(2r\))について、それぞれ公式に値を代入して \(U_1\) と \(U_2\) を求める。
- 得られた \(U_1\) と \(U_2\) の値を比較し、大小関係を判断する。
思考の道筋とポイント
この問題は、万有引力による位置エネルギーの公式 \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) の理解を問うものです。特に重要なのは、エネルギーが負の値をとること、そしてその基準が無限遠に置かれていることです。
地表付近で扱う位置エネルギー \(mgh\) では、基準(地面など)より高い場所で正のエネルギーを持ちますが、万有引力の場合は、基準である無限遠(エネルギーが0)よりも引力に引かれて近い場所にあるため、エネルギーは必ず負の値になります。
これは、物体が地球の引力に「束縛」されている状態、いわばエネルギー的に「借金」をしている状態と考えることができます。地球から遠ざかるほど、この借金が減っていき、エネルギーの値は0に近づいていきます。つまり、地球から遠ざかるほど位置エネルギーは「大きく」なるのです。この負の数の大小関係を正しく捉えることが、この問題の鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 万有引力による位置エネルギーの公式: \(U(r) = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)。ここで \(r\) は中心天体からの距離です。
- 基準点: 無限遠(\(r \rightarrow \infty\))で位置エネルギーがゼロ(\(U=0\))となるように定義されています。
- 負の符号の意味: 万有引力は引力であるため、物体は中心天体に束縛されています。この束縛状態から脱出して無限遠(エネルギー0)に行くためには、正のエネルギー(運動エネルギーなど)を外部から与える必要があります。そのため、有限の距離にある物体の位置エネルギーは必ず負の値をもちます。
- エネルギーと距離の関係: 中心天体から遠ざかる(\(r\) が大きくなる)と、分母が大きくなるため分数の絶対値は小さくなります。その結果、位置エネルギー \(U\) は負の数として0に近づきます。つまり、位置エネルギーは増加します。
具体的な解説と立式
万有引力による位置エネルギーの公式 \(U(r) = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) を用いて、各点のエネルギーを求めます。
- (ア) 点Pの位置エネルギー \(U_1\)点Pは地球の中心から距離 \(r\) の位置にあります。公式の \(r\) にそのまま \(r\) を代入します。
$$ U_1 = -G\frac{Mm}{r} $$ - (イ) 点Qの位置エネルギー \(U_2\)点Qは地球の中心から距離 \(2r\) の位置にあります。公式の \(r\) に \(2r\) を代入します。
$$ U_2 = -G\frac{Mm}{2r} $$ - (ウ) \(U_1\) と \(U_2\) の大小関係\(U_1 = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) と \(U_2 = -\displaystyle\frac{1}{2} \left( G\displaystyle\frac{Mm}{r} \right)\) を比較します。\(G, M, m, r\) はすべて正の値なので、\(X = G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) と置くと、\(X>0\) です。このとき、\(U_1 = -X\)、\(U_2 = -\displaystyle\frac{1}{2}X\) となります。
負の数では、絶対値が小さいほど値は大きくなります。したがって、\(-X < -\displaystyle\frac{1}{2}X\) が成り立ちます。
よって、\(U_1 < U_2\) となります。
使用した物理公式
- 万有引力による位置エネルギー: \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) (基準は無限遠)
この問題は公式の適用と代数的な比較が中心であり、具体的な数値計算はありません。
- (ア) 点P (距離 \(r\)) の位置エネルギー:
$$ U_1 = -G\frac{Mm}{r} $$ - (イ) 点Q (距離 \(2r\)) の位置エネルギー:
$$ U_2 = -G\frac{Mm}{2r} $$ - (ウ) 大小関係の比較:\(U_1\) と \(U_2\) はどちらも負の値です。分母を見ると \(r < 2r\) なので、分数の絶対値は \(\displaystyle\frac{Mm}{r} > \displaystyle\frac{Mm}{2r}\) となります。両辺にマイナスをつけると、不等号の向きが逆転します。
$$ -G\frac{Mm}{r} < -G\frac{Mm}{2r} $$
したがって、\(U_1 < U_2\) となります。
万有引力の位置エネルギーは、地球という「重力の井戸」の深さを表していると考えてみましょう。公式は \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) で、マイナスが付いているのがポイントです。
- (ア) 点Pのエネルギー \(U_1\): 距離が \(r\) なので、公式そのまま \(U_1 = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) です。これは「深さ \(G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)」の場所にいることを意味します。
- (イ) 点Qのエネルギー \(U_2\): 距離が \(2r\) なので、公式の \(r\) を \(2r\) に変えて \(U_2 = -G\displaystyle\frac{Mm}{2r}\) です。これは「深さ \(G\displaystyle\frac{Mm}{2r}\)」の場所にいることを意味します。
- (ウ) 大小比較: 点Pの方が点Qより地球に近く、より「深い」井戸の底にいます。物理で「エネルギーが高い/低い」というのは、数直線上での位置で考えます。\(U_1\) は \(U_2\) よりも絶対値が大きい負の数なので、数直線上ではより左側にあります。したがって、\(U_1\) の方がエネルギーは「低い(小さい)」となります。つまり、\(U_1 < U_2\) です。地球から遠ざかるほど、井戸を登って浅い場所に行くので、位置エネルギーは高くなります。
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