基礎CHECK
1 等速直線運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速直線運動」です。物体が一定の速度で運動するときの移動距離を計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等速直線運動の定義の理解。
- 移動距離、速さ、時間の関係式 \(x = vt\)。
- 有効数字の考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、運動の種類が「等速直線運動」であることを把握する。
- 与えられている物理量(速さ \(v\)、時間 \(t\))を特定する。
- 公式 \(x = vt\) に値を代入して移動距離 \(x\) を計算する。
- 計算結果の有効数字を、問題文で与えられた数値の有効数字に合わせて調整する。
思考の道筋とポイント
この問題は、物理の運動学における最も基本的な状況設定である「等速直線運動」を扱っています。問題文の「一定の速さ \(15 \, \text{m/s}\) でまっすぐに進む」という記述が、この運動が等速直線運動であることを示しています。速度が変化しないため、移動距離は単純に「速さ」と「時間」の積で求めることができます。物理の問題を解く第一歩として、問題文から運動の状況を正確に読み取り、適切な公式を選択する練習となります。
この設問における重要なポイント
- 等速直線運動:物体の速度が時間とともに変化せず、一定である運動のことです。このとき、加速度は \(0\) です。
- 移動距離の公式 \(x = vt\):移動距離 \(x\) は、速さ \(v\) と経過時間 \(t\) の積に等しいという関係を表します。これは「(距離)=(速さ)×(時間)」という日常的な感覚とも一致します。
- 有効数字:物理計算では、与えられた数値の精度を考慮する必要があります。この問題では、速さが \(15 \, \text{m/s}\)(有効数字2桁)、時間が \(4.0 \, \text{s}\)(有効数字2桁)で与えられています。したがって、計算結果も有効数字2桁で答えるのが適切です。
具体的な解説と立式
問題文で与えられている条件を整理します。
自動車の速さ \(v\) は一定で、\(v = 15 \, \text{m/s}\) です。
運動した時間 \(t\) は \(t = 4.0 \, \text{s}\) です。
このときの移動距離を \(x\) [\(\text{m}\)] とします。
自動車は等速直線運動をしているため、移動距離 \(x\)、速さ \(v\)、時間 \(t\) の間には次の関係式が成り立ちます。
$$
x = v \times t
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の移動距離の式: \(x = vt\)
- \(x\): 移動距離 [\(\text{m}\)]
- \(v\): 速さ [\(\text{m/s}\)]
- \(t\): 時間 [\(\text{s}\)]
上記で立てた式に、与えられた数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 15 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 60
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値 \(15\) と \(4.0\) は、どちらも有効数字が2桁です。したがって、計算結果である \(60\) も有効数字2桁として扱うのが適切です。
よって、移動距離は \(60 \, \text{m}\) となります。
この問題は、「速さ」と「時間」から「距離」を求める、小学校の算数で習う「み・は・じ」の考え方と同じです。
自動車は「1秒間に \(15 \, \text{m}\) 進む」という速さで走っています。
この速さで \(4.0\) 秒間進み続けたらいくつ進むか、という問題なので、単純に掛け算をすれば答えが出ます。
式にすると、「\(15 \, (\text{m/s}) \times 4.0 \, (\text{s})\)」となり、計算すると \(60 \, \text{m}\) となります。
2 速さの単位変換
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「速さの単位変換」です。物理で標準的に使われる「m/s(メートル毎秒)」と、日常でよく使われる「km/h(キロメートル毎時)」の間の変換方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速さの定義(単位時間あたりに進む距離)の理解。
- 時間の単位の関係(1時間 = 3600秒)。
- 距離の単位の関係(1 km = 1000 m)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 「\(10 \, \text{m/s}\)」が「1秒間に\(10 \, \text{m}\)進む」という意味であることを確認する。
- これを「1時間あたりに進む距離」に換算する。まず1時間(\(3600\)秒)で何メートル進むかを計算する。
- 計算して得られた距離(メートル)をキロメートルに変換する。
- 最終的に「1時間あたりに何キロメートル進むか」という形式で答えをまとめる。
思考の道筋とポイント
物理の問題では、国際単位系(SI単位系)であるメートル[\(\text{m}\)]、秒[\(\text{s}\)]、キログラム[\(\text{kg}\)]を基本として計算することが多いですが、問題によっては時速[\(\text{km/h}\)]のように日常的な単位で問われることもあります。この問題は、そうした異なる単位系を自由に行き来するための基本的な計算練習です。
変換の核心は、「\(10 \, \text{m/s}\)とはどういう意味か?」を言葉で説明できることです。「1秒あたりに10メートル進む速さ」と理解できれば、あとは「じゃあ1時間(3600秒)なら?」「その距離は何キロ?」と順を追って計算するだけです。
この設問における重要なポイント
- 単位の関係を正確に覚えていることが大前提です。
- 距離:\(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)
- 時間:\(1 \, \text{h}\) (hour) \( = 60 \, \text{min}\) (minute) \( = 60 \times 60 \, \text{s}\) (second) \( = 3600 \, \text{s}\)
- 変換の基本方針は、基準となる単位(時間と距離)を一つずつ揃えていくことです。
- 結論として、m/sの数値をkm/hに変換するには「3.6」を掛け算します。この関係は非常に頻繁に使うので、覚えておくと計算が格段に速くなります。
具体的な解説と立式
与えられた速さは \(10 \, \text{m/s}\) です。これは「1秒間に \(10 \, \text{m}\) 進む」ことを意味します。
これを時速、すなわち「1時間あたりに進む距離(km)」に変換します。
ステップ1:1時間に進む距離をメートルで求める
1時間は \(3600\) 秒です。1秒間に \(10 \, \text{m}\) 進むので、1時間(\(3600\)秒)に進む距離 \(x_{\text{m}}\) は、
$$
x_{\text{m}} = 10 \, [\text{m/s}] \times 3600 \, [\text{s}]$$
ステップ2:距離をキロメートルに変換する
\(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) の関係を用いて、ステップ1で求めた距離 \(x_{\text{m}}\) をキロメートル単位 \(x_{\text{km}}\) に変換します。
$$
x_{\text{km}} = \displaystyle\frac{x_{\text{m}}}{1000}
$$
この \(x_{\text{km}}\) が1時間あたりに進む距離となるので、求める時速 [\(\text{km/h}\)] の数値と等しくなります。
使用した物理公式
- 速さの定義
- 時間の単位換算: \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\)
- 距離の単位換算: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)
まず、1時間(\(3600\)秒)に進む距離をメートル[\(\text{m}\)]で計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{m}} &= 10 \times 3600 \\[2.0ex]&= 36000 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
次に、この距離をキロメートル[\(\text{km}\)]に変換します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{km}} &= \displaystyle\frac{36000}{1000} \\[2.0ex]&= 36 \, [\text{km}]\end{aligned}
$$
これは1時間あたりに進む距離なので、速さは \(36 \, \text{km/h}\) となります。
「秒速10メートル」を「時速何キロメートル」に直す、という問題です。2ステップで考えましょう。
- まず「1時間で何メートル進むか」を考えます。
1時間は60分のことで、1分は60秒なので、1時間は \(60 \times 60 = 3600\) 秒です。
1秒で10m進むのですから、3600秒では \(10 \times 3600 = 36000\) メートル進むことになります。 - 次に「36000メートルは何キロメートルか」を考えます。
1kmは1000mなので、メートルからキロメートルに直すには1000で割ります。
\(36000 \div 1000 = 36\) キロメートル。
この結果から、「1時間で36km進む」ことがわかったので、答えは「時速36km」となります。
思考の道筋とポイント
単位を文字式のように扱い、変換係数を掛けていくことで機械的に変換する方法です。具体的には、値が1となる分数、例えば「\(\displaystyle\frac{1 \, \text{km}}{1000 \, \text{m}}\)」や「\(\displaystyle\frac{3600 \, \text{s}}{1 \, \text{h}}\)」を掛けることで、不要な単位を約分して消し、目的の単位だけを残します。この方法は物理的な意味を都度考えなくても素早く正確に計算できる利点があります。
この設問における重要なポイント
- 単位変換のテクニック:変換したい単位を分子に、消したい単位を分母に置いた「値が1の分数」を掛けるのがコツです。
- m/sからkm/hへの変換係数:この計算を一般化すると、m/sの数値に常に「3.6」を掛ければkm/hの数値になることがわかります。この係数は覚えておくと非常に便利です。
具体的な解説と立式
\(10 \, \text{m/s}\) という単位を、分数 \(\displaystyle\frac{\text{m}}{\text{s}}\) として扱います。
ここに、\(1 = \displaystyle\frac{1 \, \text{km}}{1000 \, \text{m}}\) と \(1 = \displaystyle\frac{3600 \, \text{s}}{1 \, \text{h}}\) という2つの「1」を掛けて、単位を変換します。
$$
10 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} = 10 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} \times \left( \frac{1 \, \text{km}}{1000 \, \text{m}} \right) \times \left( \frac{3600 \, \text{s}}{1 \, \text{h}} \right)
$$
この式では、分子と分母にある \(\text{m}\) と \(\text{s}\) がそれぞれ約分で消え、\(\text{km}\) と \(\text{h}\) だけが残ることがわかります。
使用した物理公式
- 時間の単位換算: \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\)
- 距離の単位換算: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)
上記の式で、数値と単位を整理して計算します。
$$
\begin{aligned}
10 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} &= 10 \times \frac{1}{1000} \times 3600 \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]&= 10 \times \frac{3600}{1000} \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]&= 10 \times 3.6 \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]&= 36 \, \frac{\text{km}}{\text{h}}
\end{aligned}
$$
したがって、\(10 \, \text{m/s}\) は \(36 \, \text{km/h}\) です。
「m/s」を「km/h」に直すには、魔法の数字「3.6」を掛けると覚えてしまうのが一番早くて便利です。
なぜ3.6かというと、1時間は「3600秒」、1kmは「1000m」なので、この2つの数字から \(3600 \div 1000 = 3.6\) という係数が作られるからです。
今回の問題なら、\(10 \, \text{m/s}\) の「10」に3.6を掛けて、\(10 \times 3.6 = 36\)。あっという間に \(36 \, \text{km/h}\) と計算できます。
ちなみに、逆の変換(「km/h」を「m/s」に直す)をしたいときは、3.6で割ればOKです。
3 速度とベクトルの正負
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「速度のベクトル表現」です。一直線上の運動において、向きを正負の符号でどのように表現するかを学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度が大きさと向きを持つ「ベクトル量」であることの理解。
- 一直線上の運動では、向きを正(+)と負(-)の符号で表せること。
- 問題文で指定された「正の向き」を基準として考えること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で「東向きを正の向きとする」という定義を確認する。
- 人物Aと人物Bの運動の向きが、それぞれ東向きか西向きかを把握する。
- 正の向き(東向き)に進む場合は速度を正の値で、逆の向き(西向き)に進む場合は速度を負の値で表現する。
思考の道筋とポイント
物理で扱う「速度」は、日常会話で使う「速さ」とは異なり、「向き」の情報を含んだベクトル量です。一直線上を動く物体の場合、この「向き」をプラス(+)とマイナス(-)の符号を使ってシンプルに表現することができます。この問題では、「東向きを正とする」というルールが最初に与えられています。このルールに従って、AさんとBさんの動きを数式で表現することが求められます。物理の問題を解く上で、このように最初に座標軸(どの向きを正とするか)を設定し、それに従って物理量を記述する、という手順は非常に重要です。
この設問における重要なポイント
- 速度(ベクトル):大きさと向きを持つ量。一直線上の運動では「符号付きの速さ」として表現される。
- 速さ(スカラー):速度の大きさのこと。常に0以上の値をとる。
- 正の向き:基準となる向き。問題文で指定されることが多い。この向きの速度は正(+)の値になる。
- 負の向き:正の向きと逆の向き。この向きの速度は負(-)の値になる。
- 符号の意味:速度におけるマイナス(-)は、量が小さいことを意味するのではなく、「基準とは逆の向きに進んでいる」ことを示します。
具体的な解説と立式
この問題は計算式を立てるのではなく、図と定義から速度を正しく表現することが目的です。
- 基準の確認
問題文より、基準となる向きは「東向き」であり、これを「正(+)」と定めます。したがって、反対の「西向き」は「負(-)」となります。 - 人物Aの速度 \(v_A\) の決定
- 図から、Aは速さ \(4.0 \, \text{m/s}\) で「東向き」に進んでいます。
- 東向きは「正の向き」と定められているので、Aの速度の符号はプラス(+)です。
- よって、Aの速度 \(v_A\) は、\(+4.0 \, \text{m/s}\) と表されます。
- 人物Bの速度 \(v_B\) の決定
- 図から、Bは速さ \(6.0 \, \text{m/s}\) で「西向き」に進んでいます。
- 西向きは、正の向きである東向きとは逆なので、「負の向き」です。したがって、Bの速度の符号はマイナス(-)です。
- よって、Bの速度 \(v_B\) は、\(-6.0 \, \text{m/s}\) と表されます。
使用した物理公式
- 速度のベクトル表現:一直線上の運動において、速度は向きを示す符号と大きさを示す数値(速さ)で構成される。
この問題には計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた、各人物の運動の向きと定義を照らし合わせるプロセスが解答そのものとなります。
- Aの速度:(向き: 東 → 符号: +) , (速さ: \(4.0 \, \text{m/s}\)) → \(+4.0 \, \text{m/s}\)
- Bの速度:(向き: 西 → 符号: -) , (速さ: \(6.0 \, \text{m/s}\)) → \(-6.0 \, \text{m/s}\)
(通常、正の符号+は省略して書きます)
物理では、一直線上の動きの向きをプラスとマイナスで区別する、というルールがあります。どちらをプラスにするかは、問題ごとに決められます。
- ルール確認:この問題では「東向きをプラス(正)にしましょう」と決められています。
- Aさん:東向きに進んでいます。これはルール通りの「プラスの向き」なので、速さ \(4.0 \, \text{m/s}\) にプラスをつけて、速度は \(+4.0 \, \text{m/s}\) となります。(プラスは省略して \(4.0 \, \text{m/s}\) と書くのが普通です)
- Bさん:西向きに進んでいます。これはルールで決めた東向きとは「逆の向き」なので、マイナス(負)で表します。速さは \(6.0 \, \text{m/s}\) なので、向きを表すマイナスをつけて、速度は \(-6.0 \, \text{m/s}\) となります。
4 相対速度(直線運動)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「相対速度」です。動いている観測者から見た、別の物体の速度を求める方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対速度の定義の理解。
- 「Aから見たBの相対速度」を求める公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\)。
- 速度が向きを持つベクトル量であり、一直線上の運動では正負の符号で向きを表すこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた状況を図から読み取り、観測者(A)と観測対象(B)の速度を、符号をつけて設定する。
- 相対速度の公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\) に、それぞれの速度を代入して計算する。
- 計算結果の符号から、相対速度の向きを判断し、大きさと合わせて解答する。
思考の道筋とポイント
「相対速度」とは、簡単に言えば「動いている人から見た、相手の動き」のことです。例えば、自分が乗っている車(A)から、前を走る別の車(B)を見たときに、Bがどのように動いて見えるかを考えるのが相対速度です。
この問題では、Aが秒速 \(5.0 \, \text{m}\) で、Bが秒速 \(8.0 \, \text{m}\) で同じ方向に進んでいます。Aの運転席に座っていると、自分は止まっているように感じます。その状態でBを見ると、Bは自分よりも秒速 \(3.0 \, \text{m}\) だけ速く前に進んでいるので、「前方に秒速 \(3.0 \, \text{m}\) で遠ざかっていく」ように見えます。この直感的な感覚を、\(v_{AB} = v_B – v_A\) という公式で計算できるようになることが目標です。
この設問における重要なポイント
- 相対速度の公式: 観測者Aから見た物体Bの相対速度 \(v_{AB}\) は、物体Bの速度 \(v_B\) から観測者Aの速度 \(v_A\) を引くことで求められます。
$$ v_{AB} = v_B – v_A $$ - 言葉と式の対応: 「Aに対するBの相対速度」や「Aから見たBの相対速度」は、どちらも \(v_{AB}\) を意味します。「〜から見た」の「〜」が引き算の後ろに来る(引かれる側)と覚えましょう。
- 基準(観測者)の速度を引く: 相対速度は、観測者自身を基準(速度0)としたときの相手の速度と考えることができます。そのため、相手の速度から自分の速度をベクトル的に差し引く、という操作を行います。
具体的な解説と立式
まず、問題文と図から各自動車の速度を、符号を用いて表現します。
x軸の正の向きを速度の正の向きとします。
- 自動車Aの速度 \(v_A\): 正の向きに \(5.0 \, \text{m/s}\) なので、\(v_A = +5.0 \, \text{m/s}\)
- 自動車Bの速度 \(v_B\): 正の向きに \(8.0 \, \text{m/s}\) なので、\(v_B = +8.0 \, \text{m/s}\)
求めるのは「Aから見たBの相対速度」なので、これを \(v_{AB}\) とします。
相対速度の公式は以下の通りです。
$$
v_{AB} = v_B – v_A
$$
使用した物理公式
- 相対速度の公式: \(v_{AB} = v_B – v_A\)
- \(v_{AB}\): Aから見たBの相対速度 [\(\text{m/s}\)]
- \(v_A\): 観測者Aの速度 [\(\text{m/s}\)]
- \(v_B\): 物体Bの速度 [\(\text{m/s}\)]
上記で立てた公式に、それぞれの速度の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{AB} &= v_B – v_A \\[2.0ex]&= (+8.0) – (+5.0) \\[2.0ex]&= 8.0 – 5.0 \\[2.0ex]&= +3.0 \, [\text{m/s}]\end{aligned}
$$
計算結果の符号が正(+)であるため、相対速度の向きはx軸の正の向きです。その大きさは \(3.0 \, \text{m/s}\) です。
したがって、Aから見たBの相対速度は「正の向きに \(3.0 \, \text{m/s}\)」となります。
「Aの車から見たとき、Bの車はどう動いて見えるか?」という問題です。
ポイントは「相手の速度」から「自分の速度」を引き算することです。
- 相手(B)の速度:正の向きに \(8.0 \, \text{m/s}\)
- 自分(A)の速度:正の向きに \(5.0 \, \text{m/s}\)
これを引き算すると、\(8.0 – 5.0 = 3.0 \, \text{m/s}\) となります。
答えがプラスになったので、向きは「正の向き」です。
つまり、Aの車に乗っている人からは、Bの車が「正の向きに、秒速 \(3.0 \, \text{m}\) で遠ざかっていく」ように見えるわけです。もし自分が追い越している状況なら、相手は後ろに下がっていくように見えるので、答えはマイナスになります。
5 速度の合成(平面運動)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平面運動における速度の合成」です。互いに直交する2つの速度成分から、元の物体の速さを求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度のベクトル的な性質(大きさと向き)の理解。
- 速度の成分分解と合成の考え方。
- 三平方の定理を用いたベクトルの大きさの計算。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 速度のx成分 \(v_x\) とy成分 \(v_y\) を確認する。
- これら2つの成分は互いに直交していることを図から理解する。
- 三平方の定理を適用して、合成速度の大きさ(速さ)\(v\) を計算する。
思考の道筋とポイント
平面上の運動は、x方向とy方向という互いに独立した2つの直線運動の組み合わせとして考えることができます。この問題では、逆にx成分とy成分が与えられており、それらを合成して元の速度の「速さ」(ベクトルの大きさ)を求めることが目的です。
図を見ると、速度のx成分 \(v_x\)、y成分 \(v_y\)、そして合成された速度 \(v\) の3つが、直角三角形を形成していることが分かります。この図形的な関係から、中学校で学んだ三平方の定理を使って速さ \(v\) を計算できることに気づくのがポイントです。
この設問における重要なポイント
- 速度の成分:平面上の速度ベクトル \(\vec{v}\) は、x軸方向の速度成分 \(v_x\) とy軸方向の速度成分 \(v_y\) に分解できます。
- 速度の合成:逆に、成分 \(v_x\) と \(v_y\) が分かっていれば、元の速度ベクトル \(\vec{v}\) を復元できます。これを「合成」と呼びます。
- 速さの計算:速度の大きさである「速さ」\(v\) は、成分 \(v_x\) と \(v_y\) を使って、三平方の定理 \(v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2}\) で計算できます。これは、ベクトル \(\vec{v}\) の大きさを求める計算そのものです。
- 3:4:5の直角三角形:この問題のように、直角をはさむ2辺の比が3:4(または4:3)の場合、斜辺を含めた3辺の比は「3:4:5」となります。これは物理の問題で頻繁に登場するため、覚えておくと計算が瞬時にできます。
具体的な解説と立式
問題文で与えられている速度の成分を整理します。
- 速度のx成分: \(v_x = 4.0 \, \text{m/s}\)
- 速度のy成分: \(v_y = 3.0 \, \text{m/s}\)
求めるのは、物体の速さ \(v\) です。これは、速度ベクトル \(\vec{v}\) の大きさに相当します。
図に示すように、速度ベクトル \(\vec{v}\) とそのx成分 \(v_x\)、y成分 \(v_y\) は、互いに直交する2辺と斜辺からなる直角三角形を形成します。
したがって、三平方の定理を適用すると、速さ \(v\) は次のように計算できます。
$$
v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2}
$$
使用した物理公式
- 速度の合成(三平方の定理): \(v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2}\)
- \(v\): 合成後の速さ [\(\text{m/s}\)]
- \(v_x\): 速度のx成分 [\(\text{m/s}\)]
- \(v_y\): 速度のy成分 [\(\text{m/s}\)]
上記で立てた式に、与えられた \(v_x = 4.0 \, \text{m/s}\)、\(v_y = 3.0 \, \text{m/s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{(4.0)^2 + (3.0)^2} \\[2.0ex]&= \sqrt{16.0 + 9.0} \\[2.0ex]&= \sqrt{25.0} \\[2.0ex]&= 5.0 \, [\text{m/s}]\end{aligned}
$$
したがって、物体の速さは \(5.0 \, \text{m/s}\) となります。
この問題は、数学で習う「三平方の定理」を使って解くことができます。
物体の動きを、x方向(横方向)とy方向(縦方向)に分けて考えます。
- 横方向の速さ:\(4.0 \, \text{m/s}\)
- 縦方向の速さ:\(3.0 \, \text{m/s}\)
この2つの動きを合わせた「本当の速さ」は、横と縦を2辺とする直角三角形の「斜辺の長さ」にあたります。
三平方の定理「\((\text{斜辺})^2 = (\text{横})^2 + (\text{縦})^2\)」を使って計算すると、
速さ \(v\) の2乗は、\((4.0)^2 + (3.0)^2 = 16 + 9 = 25\) となります。
したがって、速さ \(v\) は \(\sqrt{25} = 5.0\) となり、答えは \(5.0 \, \text{m/s}\) です。
また、これは辺の比が「3:4:5」になる有名な直角三角形なので、計算しなくても答えが \(5.0 \, \text{m/s}\) だと見抜くこともできます。
6 平均の加速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平均の加速度」の計算です。速度が変化するときの、その変化の割合を求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 加速度の定義(単位時間あたりの速度の変化)の理解。
- 速度の変化量 \(\Delta v\) の計算方法(後の速度 – 初めの速度)。
- 平均の加速度の公式。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 初めの速度、後の速度、経過時間を問題文から読み取る。
- 速度の変化量を計算する。
- 平均の加速度の公式に値を代入して、計算を実行する。
思考の道筋とポイント
物体が「加速」したり「減速」したりするとき、物理では「加速度」という量を使ってその度合いを表します。加速度とは、簡単に言えば「1秒あたりに速度がどれだけ変化するか」を示す指標です。この問題では、物体の速度が \(2.0 \, \text{m/s}\) から \(6.5 \, \text{m/s}\) へと増加しています。この速度の変化が \(3.0\) 秒間で起きたとき、その変化の平均的なペース(平均の加速度)を求めることが目的です。計算自体は単純な割り算ですが、「速度の変化量」を「かかった時間」で割るという、加速度の定義に立ち返って考えることが重要です。
この設問における重要なポイント
- 平均の加速度の定義:平均の加速度 \(\bar{a}\) は、速度の変化量 \(\Delta v\) を、その変化にかかった時間 \(\Delta t\) で割ることで求められます。
$$ \bar{a} = \frac{\Delta v}{\Delta t} = \frac{v_{\text{後}} – v_{\text{初}}}{\Delta t} $$ - 速度の変化 \(\Delta v\): 常に「変化後の速度」から「変化前の速度」を引いて計算します。この引き算の順番が非常に重要です。
- 加速度の単位:\(\text{m/s}^2\)(メートル毎秒毎秒)と読みます。これは「1秒あたりに速度が何 \(\text{m/s}\) 変化するか」という物理的な意味を持っています。
- 加速度の符号:正の向きに進んでいる場合、速度が増加すれば(加速)、加速度は正の値になります。逆に速度が減少すれば(減速)、加速度は負の値になります。
具体的な解説と立式
問題文で与えられている物理量を整理します。
- 変化前の速度(初めの速度)を \(v_1\) とします。正の向きに進んでいるので、\(v_1 = +2.0 \, \text{m/s}\) です。
- 変化後の速度(後の速度)を \(v_2\) とします。これも正の向きなので、\(v_2 = +6.5 \, \text{m/s}\) です。
- この速度変化にかかった時間(経過時間)を \(\Delta t\) とすると、\(\Delta t = 3.0 \, \text{s}\) です。
求める平均の加速度を \(\bar{a}\) とすると、その定義式は以下のようになります。
$$
\bar{a} = \frac{\text{速度の変化}}{\text{経過時間}} = \frac{v_2 – v_1}{\Delta t}
$$
使用した物理公式
- 平均の加速度の公式: \(\bar{a} = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t} = \displaystyle\frac{v_2 – v_1}{\Delta t}\)
- \(\bar{a}\): 平均の加速度 [\(\text{m/s}^2\)]
- \(\Delta v\): 速度の変化 [\(\text{m/s}\)]
- \(\Delta t\): 経過時間 [\(\text{s}\)]
- \(v_1\): 変化前の速度 [\(\text{m/s}\)]
- \(v_2\): 変化後の速度 [\(\text{m/s}\)]
上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{a} &= \frac{6.5 – 2.0}{3.0} \\[2.0ex]&= \frac{4.5}{3.0} \\[2.0ex]&= 1.5 \, [\text{m/s}^2]\end{aligned}
$$
計算結果は正の値なので、加速度の向きは物体の運動方向と同じく「正の向き」であることがわかります。問題では加速度の大きさが問われているので、\(1.5 \, \text{m/s}^2\) が答えとなります。
「加速度」とは、「1秒あたりに、どれだけスピードアップ(またはダウン)したか」を表す量です。
まず、この物体が \(3.0\) 秒間でどれだけスピードアップしたかを計算しましょう。
- スピードの変化 = (後の速さ) – (初めの速さ) = \(6.5 – 2.0 = 4.5 \, \text{m/s}\)
つまり、この物体は \(3.0\) 秒間で \(4.5 \, \text{m/s}\) だけ速くなりました。
次に、これを「1秒あたり」に直します。\(3.0\) 秒間で \(4.5 \, \text{m/s}\) 速くなったのですから、1秒あたりでは、
- \(4.5 \, (\text{m/s}) \div 3.0 \, (\text{s}) = 1.5 \, (\text{m/s}^2)\)
となります。
よって、この物体の平均の加速度は \(1.5 \, \text{m/s}^2\) です。これは「1秒ごとに \(1.5 \, \text{m/s}\) ずつ速くなっていく」ということを意味しています。
7 等加速度直線運動の公式(速度と変位)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等加速度直線運動」です。一定の割合で速度が変化する物体の運動について、公式を用いて未来の速度と移動距離を計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の定義の理解(加速度が一定)。
- 等加速度直線運動の3つの公式の使い分け。
- 問題文から初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) などの物理量を正確に読み取ること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文が「一定の加速度」という記述から、等加速度直線運動の公式が適用できることを確認する。
- 与えられている物理量(初速度、加速度、時間)を整理する。
- 各設問で求められている物理量(後の速さ、距離)に応じて、適切な公式を選択し、値を代入して計算する。
問(1)
思考の道筋とポイント
この問題は、等加速度直線運動の公式を正しく選択し、適用できるかを問う基本的な問題です。設問(1)では「時間 \(t\) 後の速度 \(v\)」が問われています。
物理では、状況に応じて多数の公式の中から最適なものを選ぶ必要があります。この問題を通じて、「どの物理量が与えられていて、どの物理量を求めたいのか」を明確にし、それらを結びつける公式を瞬時に思い出せるように訓練することが重要です。
この設問における重要なポイント
- 等加速度直線運動の公式は3つセットで覚えておくことが必須です。
- \(v = v_0 + at\) (時間と速度の関係)
- \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) (時間と変位の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (変位と速度の関係、時間を含まない)
- 各記号の意味を正確に理解することが大切です。
- \(v_0\): 初速度(時刻 \(t=0\) での速度)
- \(v\): 時刻 \(t\) での速度
- \(a\): 加速度(一定)
- \(t\): 経過時間
- \(x\): 変位(時刻 \(0\) から \(t\) までの移動距離)
具体的な解説と立式
まず、問題文から与えられている共通の物理量を整理します。
- 初速度: \(v_0 = 4.0 \, \text{m/s}\)
- 加速度: \(a = 0.50 \, \text{m/s}^2\)
- 経過時間: \(t = 2.0 \, \text{s}\)
設問(1)では、\(t=2.0 \, \text{s}\) 後の物体の速さ \(v\) を求めます。
初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) が分かっていて、後の速度 \(v\) を求めたいので、これらの4つの量を含む公式 \(v = v_0 + at\) を使用します。
$$
v = v_0 + at
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
上記の式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 4.0 + 0.50 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 4.0 + 1.0 \\[2.0ex]&= 5.0 \, [\text{m/s}]\end{aligned}
$$
したがって、\(2.0\) 秒後の物体の速さは \(5.0 \, \text{m/s}\) です。
加速度が \(0.50 \, \text{m/s}^2\) というのは、「1秒間に \(0.50 \, \text{m/s}\) ずつスピードアップする」という意味です。
今回は \(2.0\) 秒間加速するので、合計で \(0.50 \times 2.0 = 1.0 \, \text{m/s}\) だけ速くなります。
もともとの速さが \(4.0 \, \text{m/s}\) だったので、それにスピードアップした分を足してあげます。
\(4.0 \, \text{m/s} + 1.0 \, \text{m/s} = 5.0 \, \text{m/s}\) となります。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)では、\(2.0\) 秒後までに物体が進んだ距離 \(x\) を求めます。
設問(1)と同様に、初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) が分かっている状況で、距離 \(x\) を求めたいので、これらの4つの量を含む公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を選択します。
この公式は、もし加速度がなければ進む距離 \(v_0 t\) に、加速することで余分に進む距離 \(\displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を加えたもの、と解釈することができます。
この設問における重要なポイント
- 公式の選択が鍵となります。時間 \(t\) が分かっていて距離 \(x\) を求めたい場合、\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) が最も直接的な公式です。
- (1)で求めた後の速さ \(v=5.0 \, \text{m/s}\) を使って、時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) から \(x\) を求めることも可能ですが、(1)の計算が間違っていると(2)も間違えてしまうリスクがあります。与えられた情報だけで解ける方法を選ぶのが安全です。
具体的な解説と立式
設問(1)と同じく、以下の物理量を用います。
- 初速度: \(v_0 = 4.0 \, \text{m/s}\)
- 加速度: \(a = 0.50 \, \text{m/s}^2\)
- 経過時間: \(t = 2.0 \, \text{s}\)
求めるのは、\(t=2.0 \, \text{s}\) までに進んだ距離 \(x\) です。
これらの物理量を含む公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を使用します。
$$
x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
上記の式に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 4.0 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times 0.50 \times (2.0)^2 \\[2.0ex]&= 8.0 + \frac{1}{2} \times 0.50 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 8.0 + 1.0 \\[2.0ex]&= 9.0 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
したがって、\(2.0\) 秒後までに物体が進んだ距離は \(9.0 \, \text{m}\) です。
進んだ距離は、2つのパートに分けて考えると分かりやすいです。
- もし加速しなかった場合に、初めの速さのまま進んだ距離
これは「速さ × 時間」で計算できます。\(4.0 \, \text{m/s} \times 2.0 \, \text{s} = 8.0 \, \text{m}\) です。 - 加速したことによって、追加で進んだ距離
これは公式 \(\displaystyle\frac{1}{2}at^2\) で計算できます。\(\displaystyle\frac{1}{2} \times 0.50 \times (2.0)^2 = 1.0 \, \text{m}\) です。
この2つのパートを合計すると、実際に進んだ距離になります。
\(8.0 \, \text{m} + 1.0 \, \text{m} = 9.0 \, \text{m}\) となります。
8 等加速度直線運動の公式(時間を含まない式)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等加速度直線運動」です。特に、時間の情報が与えられていない場合に、どの公式を選択して解くかがポイントになります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の3つの公式の理解と使い分け。
- 問題文のキーワード(「静止していた」など)から物理量を正確に読み取る能力。
- 時間 \(t\) を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) の有効性。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から初速度、後の速度、加速度を特定する。
- この問題に時間の情報が含まれていないことに着目する。
- 時間 \(t\) を含まない等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を選択し、値を代入して距離 \(x\) を求める。
思考の道筋とポイント
等加速度直線運動の問題を解く際、どの公式を使うかを選ぶことが最初のステップです。3つの公式にはそれぞれ特徴があり、問題で与えられている情報と求めたい情報に応じて使い分けます。
- \(v = v_0 + at\)
- \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
この問題では、初速度 \(v_0\)、後の速度 \(v\)、加速度 \(a\) が分かっており、距離 \(x\) を求めたい状況です。時間の情報 \(t\) は与えられてもいなければ、問われてもいません。このような場合に、時間 \(t\) を含まない3番目の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うと、一発で答えを導くことができ、非常に効率的です。
この設問における重要なポイント
- 「静止していた」という記述は、初速度が \(0\) であること、すなわち \(v_0 = 0\) を意味します。これは物理の問題で頻出の表現です。
- 時間 \(t\) が未知の場合の公式選択:問題に \(t\) が登場しないときは、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うのが定石です。
- 公式の適用:公式を正しく覚えていても、問題文から \(v_0\), \(v\), \(a\), \(x\) などを正確に対応させなければ意味がありません。
具体的な解説と立式
まず、問題文から物理量を整理します。
- 初速度 \(v_0\): 「静止していた」とあるので、\(v_0 = 0 \, \text{m/s}\) です。
- 加速度 \(a\): 「一定の加速度 \(3.0 \, \text{m/s}^2\)」とあるので、\(a = 3.0 \, \text{m/s}^2\) です。
- 後の速度 \(v\): 「\(3.0 \, \text{m/s}\) の速さになった」とあるので、\(v = 3.0 \, \text{m/s}\) です。
- 進んだ距離 \(x\): これが求める量です。
これらの物理量(\(v_0, a, v, x\))の関係式であり、時間 \(t\) を含まない等加速度直線運動の公式を選択します。
$$
v^2 – v_0^2 = 2ax
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の公式(時間を含まない式): \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
- \(v\): 後の速度 [\(\text{m/s}\)]
- \(v_0\): 初速度 [\(\text{m/s}\)]
- \(a\): 加速度 [\(\text{m/s}^2\)]
- \(x\): 変位(進んだ距離) [\(\text{m}\)]
上記で立てた式に、整理した物理量を代入します。
$$
\begin{aligned}
(3.0)^2 – 0^2 &= 2 \times 3.0 \times x \\[2.0ex]9.0 – 0 &= 6.0x \\[2.0ex]9.0 &= 6.0x \\[2.0ex]x &= \frac{9.0}{6.0} \\[2.0ex]x &= 1.5 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
したがって、物体が進んだ距離は \(1.5 \, \text{m}\) です。
この問題では「何秒間加速したか」という時間の情報がありません。こういう時にとても便利なのが、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) という公式です。これは「(後の速さの2乗)-(初めの速さの2乗)= 2 × 加速度 × 距離」という関係を表しています。
問題文の情報を当てはめてみましょう。
- 初めの速さ \(v_0\) は「静止していた」ので \(0\)。
- 後の速さ \(v\) は \(3.0 \, \text{m/s}\)。
- 加速度 \(a\) は \(3.0 \, \text{m/s}^2\)。
これを公式に入れると、\((3.0)^2 – 0^2 = 2 \times 3.0 \times x\) となります。
計算すると \(9.0 = 6.0 \times x\) となるので、距離 \(x\) は \(9.0 \div 6.0 = 1.5\) メートルだと分かります。
思考の道筋とポイント
等加速度直線運動の公式を2段階で適用して解く方法です。まず、加速にかかった時間 \(t\) を求め、その時間を使って進んだ距離を計算します。この方法は手順が増えますが、基本的な公式の組み合わせだけで解くことができます。どの公式を使えばよいか迷ったときでも、この方法なら解にたどり着けることがあります。
この設問における重要なポイント
- 問題を複数のステップに分割して解くアプローチです。
- ステップ1:\(v = v_0 + at\) を用いて時間 \(t\) を求める。
- ステップ2:求めた \(t\) を \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) に代入して距離 \(x\) を求める。
- 計算途中で求めた値を次の計算に使うため、計算ミスが次のステップに影響するリスクがあります。
具体的な解説と立式
ステップ1:加速にかかった時間 \(t\) を求める
公式 \(v = v_0 + at\) を用います。
$$
3.0 = 0 + 3.0 \times t
$$
ステップ2:進んだ距離 \(x\) を求める
ステップ1で求めた時間 \(t\) を用いて、公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を適用します。
$$
x = 0 \times t + \frac{1}{2} \times 3.0 \times t^2
$$
使用した物理公式
- \(v = v_0 + at\)
- \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
ステップ1の計算:
$$
\begin{aligned}
3.0 &= 3.0t \\[2.0ex]t &= \frac{3.0}{3.0} \\[2.0ex]t &= 1.0 \, [\text{s}]\end{aligned}
$$
ステップ2の計算:
求めた \(t=1.0 \, \text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 0 \times 1.0 + \frac{1}{2} \times 3.0 \times (1.0)^2 \\[2.0ex]&= 0 + \frac{1}{2} \times 3.0 \times 1.0 \\[2.0ex]&= 1.5 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
メインの解法と同じく、進んだ距離は \(1.5 \, \text{m}\) であることが分かります。
この問題を2段階に分けて解くこともできます。
- まず「何秒かかったか?」を考えます。
加速度が \(3.0 \, \text{m/s}^2\)(1秒で \(3.0 \, \text{m/s}\) 速くなる)で、速さが \(0\) から \(3.0 \, \text{m/s}\) になったので、かかった時間はちょうど \(1.0\) 秒です。 - 次に「その1.0秒でどれだけ進んだか?」を計算します。
公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) を使います。初めの速さは \(0\) なので、\(x = 0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times (1.0)^2 = 1.5 \, \text{m}\) となります。
このように、2ステップでも同じ答えにたどり着けますが、時間 \(t\) を使わない公式の方が少しだけ速く計算できます。
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