(例)熱いお茶が冷める / 氷が溶ける / 床をすべる物体が摩擦で止まる
物理の言葉でいうと、まわりに何の変化も残さずに、もとの状態へ戻すことができない変化です。
反対に、まわりに何の変化も残さずに、もとの状態へ戻すことができる変化を可逆変化と呼びます(摩擦も空気抵抗もない振り子のような、理想的な場合だけに成り立ちます)。
- まずはザックリ理解したい
- イメージを優先したい
- 苦手を克服したい
このような方向けに解説をしていきます。
【今回わかること】
- 不可逆変化とはなにか
- 可逆変化とはなにか
- なぜ自然にはもとに戻らないのか
- 不可逆変化の具体例と見分け方
- 熱力学第二法則とのつながり
自然には元の状態に戻れない変化

温度が高いものと低いものをくっつけると、熱が移動して熱平衡状態になり、同じ温度に落ち着きます。
では同じ温度になった2つの物体を、再び温度が高いものと低いものに分けることはできるでしょうか?
温めたり冷やしたりすれば可能かもしれませんが、自然ともとの状態に戻ることは不可能です。
このように、自然にはもとの状態にもどらない変化のことを、不可逆変化と呼びます。
例えば、温かい部屋の中で氷を放置していたらジワジワと溶けていき、最終的にはすべて水になってしまうでしょう。
「溶ける」のは自然とおきる現象です。
しかしそのまま水を放置していて、自然と氷に戻ることはありえません。
つまり氷が溶けるというのは不可逆変化です。

ちなみに、空気抵抗や摩擦がないときの振り子運動のように、まわりに何の変化も残さずにもとに戻れる変化は可逆変化と呼びます。
2つの違いを整理して覚えておきましょう。
| 不可逆変化 | 可逆変化 |
|---|---|
| 自然にはもとに戻らない | まわりに変化を残さずにもとに戻せる |
| 温度差のある物体のあいだで熱が移る・摩擦がはたらく・物が混ざる | 摩擦も空気抵抗もない理想的な運動 |
| 身の回りの変化のほとんど | 現実には近似的にしか起こらない |
なぜ自然にはもとに戻らないのか
不可逆変化には、物理基礎で学ぶ2つの「一方通行」が隠れています。
① 熱は、温度の高い物体から低い物体へ移る
熱いお茶を置いておくと、熱はお茶からまわりの空気へ移り、お茶は冷めていきます。
ところが、熱が冷たい空気から集まってきて、お茶がひとりでに熱くなることはありません。
熱の移動には向きがあり、自然に起こるのは「高温から低温へ」の向きだけです。
② 摩擦や空気抵抗は、運動のエネルギーを熱に変える
床の上をすべらせた物体は、摩擦によってやがて止まります。このとき物体の運動エネルギーは、床や物体を温める熱に変わっています。
エネルギーが消えたわけではありません。エネルギーの合計は保存されています。
ただし、床や物体に散らばった熱が自然に集まって、物体をふたたび動かすことはありません。だから止まった物体は、ひとりでには動き出しません。
身の回りにある不可逆変化の具体例

- コーヒーに入れて混ぜたミルク
- 熱いお風呂のお湯
- 風船
- 坂道を転げ落ちた果物
それぞれ、どんな変化が起きていて、なぜもとに戻らないのかを整理してみましょう。
| 例 | 起きていること | 自然にもとに戻らない理由 |
|---|---|---|
| コーヒーに混ぜたミルク | ミルクの粒がコーヒー全体に広がる | 広がった粒が、ひとりでに1か所へ集まることはない |
| 熱いお風呂のお湯 | 熱がお湯からまわりの空気へ移り、冷めていく | 熱は低温から高温へ、自然には移らない |
| 風船 | 中の空気が少しずつ外へ抜けて、しぼんでいく | 外へ広がった空気が、ひとりでに風船の中へ戻ることはない |
| 坂道を転げ落ちた果物 | 坂を下るあいだに位置エネルギーが運動のエネルギーに変わり、それが地面とのぶつかりや変形・空気抵抗などで熱に変わる | 散らばった熱が集まって、果物を坂の上へ戻すことはない |
身の回りにはまだまだ不可逆変化のものがあります。
通学中や学校、家の中などで、不可逆変化のものが他にもないか探してみましょう。
P-V図が「読める」ようになる思考矯正プログラム
不可逆変化かどうかの見分け方
テストで「次のうち不可逆変化はどれか」と聞かれたら、次の3つを順にチェックしましょう。
- 温度の違う物体のあいだで、熱が移っていないか
- 摩擦や空気抵抗がはたらいていないか
- 物が混ざったり、広がったりしていないか
どれか1つでも当てはまれば、その変化は不可逆変化です。
反対に、摩擦も空気抵抗もない振り子のように、問題文で「理想的な状態」とされている運動は可逆変化として扱います。
熱力学第二法則とのつながり
不可逆変化の「向き」を法則としてまとめたものが、熱力学第二法則です。
表し方はいくつかありますが、物理基礎では次の形で覚えておけば十分です。
この法則から、受け取った熱をすべて仕事に変え続ける熱機関はつくれないことも分かります。
エンジンなどの熱機関は、受け取った熱の一部を必ず低温側へ捨てているので、熱効率は1(100%)より小さくなります。
熱効率の求め方は、車のエンジンからイメージする熱効率の求め方で解説しています。
まとめ
- 自然にはもとの状態に戻らない変化を不可逆変化と呼ぶ
- まわりに何の変化も残さずにもとに戻せる変化は可逆変化(理想的な場合だけ)
- 温度差のある物体のあいだの熱の移動・摩擦や空気抵抗・物が混ざることがあれば不可逆変化
- 不可逆変化でもエネルギーは保存されている
- 変化の向きをまとめた法則が熱力学第二法則
物理基礎の全分野を1記事で総復習できるまとめページ
この分野を体系的にマスターするなら
