無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「熱量計算とエネルギー変換(比熱・位置エネルギー)」【高校物理対応】

問題の確認

thermodynamicsall#05

各設問の思考プロセス

この問題は、熱量の計算と、エネルギーの変換(熱エネルギーから位置エネルギーへ)の二部構成になっています。

  1. 設問(1) 熱量の計算:
    1. 水の質量算出: 温める水の体積と密度から、水の質量を計算します (\(m = \rho V\))。
    2. 単位の整合性確認: 水の比熱が \(\text{J/(g}\cdot\text{K)}\) で与えられているため、計算時には質量をグラム(\(\text{g}\))に合わせるか、比熱をキログラム(\(\text{kg}\))あたりの値に変換する必要があります。後者の方が力学的エネルギーの計算との整合性が取りやすいです。
    3. 温度変化の算出: 温める前後の温度差 \(\Delta T\) を計算します。セルシウス度の温度差はケルビンの温度差と同じです。
    4. 熱量計算式の適用: \(Q = mc\Delta T\) の公式に必要な値を代入して熱量 \(Q\) を求めます。
  2. 設問(2) 持ち上げ高さの計算:
    1. エネルギー変換の理解: 設問(1)で求めた熱量 \(Q\) が、すべて水を持ち上げるための仕事 \(W\) に使われたとします。この仕事は、水の増加した位置エネルギー \(\Delta U\) に等しくなります。
    2. 位置エネルギーの公式適用: 水の質量 \(m\)(kg単位)、重力加速度 \(g\)、持ち上げられた高さ \(h\) を用いて、位置エネルギーの変化 \(\Delta U = mgh\) とします。
    3. 高さの算出: \(Q = mgh\) の関係から、高さ \(h\) を求めます。
  3. 有効数字の考慮:
    問題文で与えられた数値の有効数字(多くが2桁)に合わせて、最終的な答えを丸めます。計算途中では多めの桁を保つことが推奨されます。

各設問の具体的な解説と解答

(1) 必要な熱量 \(Q[J]\) を求めよ。

問われている内容の明確化:
体積 \(0.20 \, \text{m}^3\) の水を \(10^{\circ}\text{C}\) から \(40^{\circ}\text{C}\) に温めるために必要な熱量 \(Q\) を求めます。

具体的な解説と計算手順:
1. 水の質量 \(m_{\text{水}}\) の計算:
$$m_{\text{水}} = \rho_{\text{水}} V_{\text{水}} = (1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3) \times (0.20 \, \text{m}^3) = 200 \, \text{kg}$$

2. 水の比熱 \(c_{\text{水}}\) の単位変換:
与えられた比熱は \(c_{\text{水}} = 4.2 \, \text{J/(g}\cdot\text{K)}\)。これを \(\text{J/(kg}\cdot\text{K)}\) に変換します。
$$c_{\text{水}} = 4.2 \frac{\text{J}}{\text{g} \cdot \text{K}} \times \frac{1000 \, \text{g}}{1 \, \text{kg}} = 4200 \, \text{J/(kg}\cdot\text{K)}$$

3. 温度変化 \(\Delta T\) の計算:
$$\Delta T = 40^{\circ}\text{C} – 10^{\circ}\text{C} = 30^{\circ}\text{C} = 30 \, \text{K}$$

4. 必要な熱量 \(Q\) の計算:

使用した物理公式: 熱量 \(Q = mc\Delta T\)

$$Q = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T$$
$$Q = (200 \, \text{kg}) \times (4200 \, \text{J/(kg}\cdot\text{K)}) \times (30 \, \text{K})$$
$$Q = 200 \times 4200 \times 30 = 25200000 \, \text{J} = 2.52 \times 10^7 \, \text{J}$$
問題文の数値の有効数字が主に2桁であるため、結果を有効数字2桁で表すと、
$$Q \approx 2.5 \times 10^7 \, \text{J}$$

計算方法の平易な説明:

  1. 水の重さ(質量)を計算: 水の体積 \(0.20 \, \text{m}^3\) と密度 \(1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3\) から、質量は \(200 \, \text{kg}\)。
  2. 水の比熱の単位を調整: 比熱 \(4.2 \, \text{J/(g}\cdot\text{K)}\) は、\(1\,\text{g}\) あたりなので、\(1\,\text{kg}\) あたりに直すと \(4200 \, \text{J/(kg}\cdot\text{K)}\)。
  3. 温度の変化を計算: \(40^{\circ}\text{C} – 10^{\circ}\text{C} = 30^{\circ}\text{C}\)(\(30\,\text{K}\) の温度上昇)。
  4. 熱量を計算: 「熱量 = 質量 \(\times\) 比熱 \(\times\) 温度変化」より、
    \(Q = 200 \times 4200 \times 30 = 25200000 \, \text{J}\)。有効数字2桁で約 \(2.5 \times 10^7 \, \text{J}\)。

この設問における重要なポイント:

  • 水の質量を体積と密度から正しく計算する。
  • 比熱の単位と質量の単位を合わせて計算する。
  • 温度「変化」はセルシウス度でもケルビンでも同じ値となる。
  • 最終的な答えは問題の有効数字に合わせる。
解答 (1):
必要な熱量 \(Q \approx 2.5 \times 10^7 \, \text{J}\)

(2) (1) の熱のすべてが \(0.20 \, \text{m}^3\) の水をゆっくり持ち上げる仕事に使われるとして持ち上げられた高さ \(h[m]\) を求めよ。

問われている内容の明確化:
設問(1)で求めた熱量 \(Q\) が、すべて \(0.20 \, \text{m}^3\)(質量 \(200 \, \text{kg}\))の水を持ち上げるための仕事(位置エネルギーの増加)に変換されたとして、その持ち上げられた高さ \(h\) を求めます。

具体的な解説と計算手順:
熱量 \(Q\) がすべて仕事 \(W\) に使われ、その仕事が位置エネルギーの増加 \(\Delta U = m_{\text{水}}gh\) に等しいとします。
したがって、\(Q = m_{\text{水}}gh\)。
計算の精度を保つため、(1)で丸める前の \(Q = 2.52 \times 10^7 \, \text{J}\) を用います。

  • 熱量 \(Q = 2.52 \times 10^7 \, \text{J}\)
  • 水の質量 \(m_{\text{水}} = 200 \, \text{kg}\)
  • 重力加速度 \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)
使用した物理公式: 位置エネルギー \(U = mgh\)

$$h = \frac{Q}{m_{\text{水}}g}$$
$$h = \frac{2.52 \times 10^7 \, \text{J}}{(200 \, \text{kg}) \times (9.8 \, \text{m/s}^2)} = \frac{2.52 \times 10^7}{1960}$$
$$h \approx 12857.14… \, \text{m}$$
有効数字2桁で表すと、
$$h \approx 1.3 \times 10^4 \, \text{m}$$

計算方法の平易な説明:
(1)で得た熱エネルギー \(Q\)(約 \(2.5 \times 10^7 \, \text{J}\)、より正確には \(2.52 \times 10^7 \, \text{J}\))が、全部 \(200 \, \text{kg}\) の水を持ち上げる仕事に使われたと考えます。
物が持ち上げられるときの仕事は、位置エネルギーの増加と同じで、「質量 \(\times\) 重力加速度 \(\times\) 高さ」(\(mgh\)) で計算できます。
なので、\(Q = mgh\) という式から \(h = \frac{Q}{mg}\) を計算します。
\(h = \frac{2.52 \times 10^7}{200 \times 9.8} = \frac{2.52 \times 10^7}{1960} \approx 12857 \, \text{m}\)。
これを有効数字2桁にすると、約 \(1.3 \times 10^4 \, \text{m}\)(約13キロメートル)となります。

この設問における重要なポイント:

  • 熱エネルギーが力学的エネルギー(位置エネルギー)に変換されるというエネルギー保存の考え方を用いる。
  • 位置エネルギーの公式 \(U=mgh\) を正しく適用する。
  • 質量の単位をキログラム[\(\text{kg}\)]で統一して計算する。
  • (1)で計算した熱量の値を、可能であれば丸める前の値を使って計算し、最終結果を有効数字に合わせて丸める。
解答 (2):
持ち上げられた高さ \(h \approx 1.3 \times 10^4 \, \text{m}\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 熱量 (\(Q\)): 温度変化や状態変化に伴って物質間で移動するエネルギー。\(Q=mc\Delta T\)(温度変化)、\(Q=mL\)(状態変化)。
  • 比熱 (\(c\)): 物質 \(1\,\text{g}\) (または \(1\,\text{kg}\)) の温度を \(1\,\text{K}\) (または \(1\,^{\circ}\text{C}\)) 上昇させるのに必要な熱量。
  • 密度 (\(\rho\)): 単位体積あたりの質量 (\(m = \rho V\))。
  • 仕事 (\(W\)) とエネルギー: 仕事はエネルギーの一形態であり、エネルギーは保存される。熱エネルギーも仕事に変換されうる(熱力学第一法則など)。
  • 位置エネルギー (\(U\)): 物体が重力場内で持つエネルギー。基準面からの高さ \(h\) にある質量 \(m\) の物体の位置エネルギーは \(U=mgh\)。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 単位の換算と整合性: 計算に関わるすべての物理量の単位がSI単位系などの一貫した単位系に揃っているかを確認する。特に、比熱の単位がグラム基準かキログラム基準か、質量の単位との整合性に注意。
  • 有効数字の適切な処理: 問題文で与えられた数値の有効数字を考慮し、計算の最終段階で答えの有効数字を調整する。中間計算では多めに桁を保持する。
  • エネルギー変換の仮定の理解: 「熱のすべてが〜に使われる」といった問題文の仮定は、理想的なエネルギー変換を意味しており、損失は考えない。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 比熱の単位の誤解: \(J/(g \cdot K)\) と \(J/(kg \cdot K)\) を混同して、質量の単位との間で \(1000\) 倍の誤差を生じさせる。
  • 質量の単位の不一致: 熱量計算でグラム単位の比熱に合わせて質量をグラムにし、その後、力学的エネルギーの計算でキログラムに戻すのを忘れる、またはその逆。
  • エネルギー保存の誤適用: どのようなエネルギーがどのようなエネルギーに変換されているのかを正しく把握しないまま、やみくもに数値を代入してしまう。

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