無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「2つの点電荷が作る電場と電位ゼロの点」【高校物理対応】

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electromagnetic#06

各設問の思考プロセス

この問題は、点電荷が作る電場とその重ね合わせに関する基本的な理解を問うています。

  1. 点電荷の作る電場:
    点電荷 \(Q\) が、自身から距離 \(x\) だけ離れた点に作る電場の強さ \(E\) は、\(\displaystyle E = k \frac{|Q|}{x^2}\) で与えられます。
    電場の向きは、電荷の符号によって決まります。

    • 正電荷 (\(Q > 0\)) の場合: 電荷から遠ざかる向き(湧き出す向き)。
    • 負電荷 (\(Q < 0\)) の場合: 電荷に近づく向き(吸い込む向き)。
  2. 電場の重ね合わせの原理:
    空間のある点に複数の電荷が存在する場合、その点における全電場(合成電場)は、各電荷が単独でその点に作る電場をベクトル的に足し合わせることで求められます。
  3. 電場が0となる点:
    電場が0となる点では、複数の電荷が作る電場が互いに打ち消し合います。つまり、各電場のベクトル和が0となります。一直線上に電荷が配置されている場合、特定の点において、異なる電荷からの電場の大きさが等しく、向きが反対になるとき、その点の電場は0になります。

    • どの領域(電荷間、電荷の外側)に電場が0になる点が存在しうるかを、電荷の符号と大きさから考察します。
    • 条件式を立てて、その位置を求めます。

各設問の具体的な解説と解答

(1) A点上の電荷による M点の電場を求めよ。

問われている内容の明確化:

A点にある電荷 \(+2q\) が、線分ABの中点Mに作る電場の大きさと向きを求めます。

具体的な解説と計算手順:

M点は線分ABの中点なので、A点からM点までの距離 \(x_{AM}\) は \(\displaystyle \frac{r}{2}\) です。
A点の電荷 \(Q_A = +2q\) は正電荷なので、M点に作る電場 \(E_{AM}\) の向きは、A点から遠ざかる向き、つまりA点からM点を通ってB点へ向かう向き(右向き)です。

電場の強さ \(E_{AM}\) は、点電荷の電場の公式を用いて計算します。

使用した物理公式: 点電荷の作る電場の強さ
$$E = k \frac{|Q|}{x^2}$$

値を代入すると、
$$E_{AM} = k \frac{|+2q|}{(\frac{r}{2})^2} = k \frac{2q}{\frac{r^2}{4}} = \frac{8kq}{r^2}$$

計算方法の平易な説明:

A点にある \(+2q\) の電荷が、真ん中のM点にどれくらいの強さで、どっち向きの電気的な影響(電場)を及ぼすかを考えます。

  1. 距離: AからMまでは、全体の長さ \(r\) の半分なので \(\displaystyle \frac{r}{2}\) です。
  2. 向き: Aの電荷はプラスなので、反発するような向き、つまりM点ではAからBへ向かう右向きに電場を作ります。
  3. 強さ: 公式 \(E = k \frac{\text{電荷の大きさ}}{\text{距離}^2}\) に値を入れます。電荷の大きさは \(2q\)、距離は \(\displaystyle \frac{r}{2}\) なので、距離の2乗は \((\displaystyle \frac{r}{2})^2 = \frac{r^2}{4}\) です。
    $$E_{AM} = k \frac{2q}{r^2/4} = \frac{8kq}{r^2}$$

この設問における重要なポイント:

  • M点とA点の距離を正しく把握すること (\(\displaystyle \frac{r}{2}\))。
  • 正電荷が作る電場の向き(電荷から離れる向き)を理解すること。
  • 点電荷の電場の公式 \(\displaystyle E = k \frac{|Q|}{x^2}\) を適用し、特に距離の2乗の計算を間違えないこと。
解答 (1):
A点上の電荷によるM点の電場の強さは \(\displaystyle \frac{8kq}{r^2}\) で、向きはAからBへ向かう向き(右向き)である。

(2) B点上の電荷による M点の電場を求めよ。

問われている内容の明確化:

B点にある電荷 \(-q\) が、線分ABの中点Mに作る電場の大きさと向きを求めます。

具体的な解説と計算手順:

M点は線分ABの中点なので、B点からM点までの距離 \(x_{BM}\) は \(\displaystyle \frac{r}{2}\) です。
B点の電荷 \(Q_B = -q\) は負電荷なので、M点に作る電場 \(E_{BM}\) の向きは、B点に近づく向き、つまりM点からB点へ向かう向き(右向き)です。

電場の強さ \(E_{BM}\) は、同様に点電荷の電場の公式を用いて計算します。

使用した物理公式: 点電荷の作る電場の強さ
$$E = k \frac{|Q|}{x^2}$$

値を代入すると、
$$E_{BM} = k \frac{|-q|}{(\frac{r}{2})^2} = k \frac{q}{\frac{r^2}{4}} = \frac{4kq}{r^2}$$

計算方法の平易な説明:

B点にある \(-q\) の電荷が、真ん中のM点にどれくらいの強さで、どっち向きの電気的な影響(電場)を及ぼすかを考えます。

  1. 距離: BからMまでは、全体の長さ \(r\) の半分なので \(\displaystyle \frac{r}{2}\) です。
  2. 向き: Bの電荷はマイナスなので、引き寄せるような向き、つまりM点ではBへ向かう右向きに電場を作ります。
  3. 強さ: 公式 \(E = k \frac{\text{電荷の絶対値}}{\text{距離}^2}\) に値を入れます。電荷の大きさは \(q\)(マイナスは向きで考慮)、距離は \(\displaystyle \frac{r}{2}\) です。
    $$E_{BM} = k \frac{q}{r^2/4} = \frac{4kq}{r^2}$$

この設問における重要なポイント:

  • M点とB点の距離を正しく把握すること (\(\displaystyle \frac{r}{2}\))。
  • 負電荷が作る電場の向き(電荷に近づく向き)を理解すること。
  • 電場の強さを計算する際は電荷の絶対値を用いること。
解答 (2):
B点上の電荷によるM点の電場の強さは \(\displaystyle \frac{4kq}{r^2}\) で、向きはAからBへ向かう向き(右向き)である。

(3) A, B上の2つの電荷による M点の電場を求めよ。

問われている内容の明確化:

A点にある電荷 \(+2q\) とB点にある電荷 \(-q\) が、線分ABの中点Mに作る合成電場の大きさと向きを求めます。

具体的な解説と計算手順:

M点における合成電場 \(E_M\) は、(1)で求めた \(E_{AM}\) と(2)で求めた \(E_{BM}\) のベクトル和です。
\(E_{AM}\) の向きは右向き、強さは \(\displaystyle \frac{8kq}{r^2}\)。
\(E_{BM}\) の向きも右向き、強さは \(\displaystyle \frac{4kq}{r^2}\)。
両方の電場が同じ向き(右向き)であるため、合成電場の強さは単純な和となります。

使用した物理公式: 電場の重ね合わせ
$$\vec{E} = \vec{E_1} + \vec{E_2} + \dots$$

$$E_M = E_{AM} + E_{BM} = \frac{8kq}{r^2} + \frac{4kq}{r^2} = \frac{12kq}{r^2}$$
合成電場の向きは、\(E_{AM}\) および \(E_{BM}\) と同じく右向き(AからBへ向かう向き)です。

計算方法の平易な説明:

M点には、Aからの電場とBからの電場の両方がかかっています。

  1. Aが作る電場は右向きで強さ \(\displaystyle \frac{8kq}{r^2}\)。
  2. Bが作る電場も右向きで強さ \(\displaystyle \frac{4kq}{r^2}\)。
  3. 両方とも同じ右向きなので、M点での電場の強さは単純に足し算します。
    $$E_M = \frac{8kq}{r^2} + \frac{4kq}{r^2} = \frac{12kq}{r^2}$$
  4. 向きは変わらず右向きです。

この設問における重要なポイント:

  • 電場はベクトル量であり、重ね合わせの原理に従って合成されることを理解すること。
  • 各電場の向きを正確に判断し、同じ向きなら加算、逆向きなら減算(大きさを比較)して合成電場の大きさを求めること。
解答 (3):
A, B上の2つの電荷によるM点の電場の強さは \(\displaystyle \frac{12kq}{r^2}\) で、向きはAからBへ向かう向き(右向き)である。

(4) 電場が0となる点の位置を求めよ。

問われている内容の明確化:

A点にある電荷 \(+2q\) とB点にある電荷 \(-q\) によって作られる電場が0になる点の位置を求めます。

具体的な解説と計算手順:

電場が0となる点では、Aの電荷が作る電場 \(\vec{E_A}\) とBの電荷が作る電場 \(\vec{E_B}\) のベクトル和が0、つまり \(\vec{E_A} + \vec{E_B} = \vec{0}\) となります。これは、\(E_A\) と \(E_B\) の大きさが等しく、向きが反対であることを意味します。
A点を原点とし、AからBに向かう向きを正とするx軸上で考えます。電場が0となる点のx座標を \(x_0\) とします。

考えられる領域は3つあります。

  1. A点の左側 (\(x_0 < 0\)):
    この領域では、\(Q_A = +2q\) が作る電場 \(E_A\) は左向き(負の向き)、\(Q_B = -q\) が作る電場 \(E_B\) は右向き(正の向き)。向きは反対なので、大きさが等しければ電場は0になりえます。
    Aからの距離は \(-x_0\)、Bからの距離は \(r – x_0\)。
    $$E_A = k \frac{2q}{(-x_0)^2} = k \frac{2q}{x_0^2}$$
    $$E_B = k \frac{|-q|}{(r-x_0)^2} = k \frac{q}{(r-x_0)^2}$$
    大きさが等しい条件:
    $$k \frac{2q}{x_0^2} = k \frac{q}{(r-x_0)^2}$$
    $$\frac{2}{x_0^2} = \frac{1}{(r-x_0)^2}$$
    $$2(r-x_0)^2 = x_0^2$$
    $$\sqrt{2}|r-x_0| = |x_0|$$
    \(x_0 < 0\) なので、\(r-x_0 > 0\) であり
    $$|r-x_0|=r-x_0 また |x_0|=-x_0$$
    $$\sqrt{2}(r-x_0) = -x_0$$
    $$\sqrt{2}r – \sqrt{2}x_0 = -x_0$$
    $$\sqrt{2}r = (\sqrt{2}-1)x_0$$
    $$x_0 = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}-1}r = \frac{\sqrt{2}(\sqrt{2}+1)}{(\sqrt{2}-1)(\sqrt{2}+1)}r = (2+\sqrt{2})r$$
    しかし、これは \(x_0 < 0\) という条件に反します(\( (2+\sqrt{2})r > 0 \))。したがって、A点の左側には電場が0となる点はありません。
    (直感的考察:Aの方が電荷の絶対値が大きく、Aに近い領域なので、Aの作る電場が常にBの作る電場より大きくなるため。)
  2. A点とB点の間 (\(0 < x_0 < r\)):
    この領域では、\(Q_A = +2q\) が作る電場 \(E_A\) は右向き(正の向き)。\(Q_B = -q\) が作る電場 \(E_B\) も右向き(Bに引かれるため、正の向き)。
    両方の電場が同じ向きなので、合成電場が0になることはありません。
  3. B点の右側 (\(x_0 > r\)):
    この領域では、\(Q_A = +2q\) が作る電場 \(E_A\) は右向き(正の向き)、\(Q_B = -q\) が作る電場 \(E_B\) は左向き(Bに引かれるため、負の向き)。向きが反対なので、大きさが等しければ電場は0になりえます。
    Aからの距離は \(x_0\)、Bからの距離は \(x_0-r\)。
    $$E_A = k \frac{2q}{x_0^2}$$
    $$E_B = k \frac{|-q|}{(x_0-r)^2} = k \frac{q}{(x_0-r)^2}$$
    大きさが等しい条件:
    $$k \frac{2q}{x_0^2} = k \frac{q}{(x_0-r)^2}$$
    $$\frac{2}{x_0^2} = \frac{1}{(x_0-r)^2}$$
    $$2(x_0-r)^2 = x_0^2$$
    $$\sqrt{2}|x_0-r| = |x_0|$$
    \(x_0 > r\) なので、\(x_0-r > 0\) であり、\(|x_0-r|=x_0-r\)
    また \(x_0 > 0\)なので、\(|x_0|=x_0\)
    $$\sqrt{2}(x_0-r) = x_0$$
    $$\sqrt{2}x_0 – \sqrt{2}r = x_0$$
    $$\sqrt{2}-1)x_0 = \sqrt{2}r$$
    $$x_0 = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}-1}r = \frac{\sqrt{2}(\sqrt{2}+1)}{(\sqrt{2}-1)(\sqrt{2}+1)}r = \frac{2+\sqrt{2}}{2-1}r = (2+\sqrt{2})r$$
    この解は \(x_0 > r\) を満たします(\(\sqrt{2} \approx 1.414\) なので \(2+\sqrt{2} \approx 3.414 > 1\))。
    もう一つの可能性として \(\sqrt{2}(x_0-r) = -x_0\) を考えると、
    $$\sqrt{2}x_0 – \sqrt{2}r = -x_0$$
    $$(\sqrt{2}+1)x_0 = \sqrt{2}r$$
    $$x_0 = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}+1}r = \frac{\sqrt{2}(\sqrt{2}-1)}{(\sqrt{2}+1)(\sqrt{2}-1)}r = (2-\sqrt{2})r$$
    $$2-\sqrt{2} \approx 2-1.414 = 0.586$$
    これは \(0 < (2-\sqrt{2})r < r\) なので、\(x_0 > r\) という条件に反します。よって不適。

したがって、電場が0となるのは、A点から見てB点の右側に \((2+\sqrt{2})r\) の位置です。
これは、B点からの距離でいうと \((2+\sqrt{2})r – r = (1+\sqrt{2})r\) の位置です。

計算方法の平易な説明:

AとBの電荷がお互いの作る電場を打ち消しあって、結果として電場が「ゼロ」になる場所を探します。

  1. 場所の候補: (a) Aの左側、(b) AとBの間、(c) Bの右側、の3パターンが考えられます。
  2. (a) Aの左側: Aの電荷は \(+2q\)、Bは \(-q\)。Aの電荷の方が大きく、しかもAに近いので、Aからの電場が強すぎてBからの電場では打ち消せません。なので、ここにはゼロになる点はありません。
  3. (b) AとBの間: Aからの電場は右向き(Aがプラスだから)、Bからの電場も右向き(Bがマイナスだから)。同じ向きなので、足し合わさってしまいゼロにはなりません。
  4. (c) Bの右側: ここが候補です。Aからの電場は右向き。Bからの電場は左向き(Bがマイナスだから)。向きが反対なので、強さが同じになれば打ち消し合います。
    その点のAからの距離を \(x_0\) とします。するとBからの距離は \(x_0-r\) です。
    Aが作る電場の強さ: \(\displaystyle k \frac{2q}{x_0^2}\)
    Bが作る電場の強さ: \(\displaystyle k \frac{q}{(x_0-r)^2}\)
    これらが等しいとおいて方程式を立てます: \(\displaystyle k \frac{2q}{x_0^2} = k \frac{q}{(x_0-r)^2}\)
    この方程式を \(x_0\) について解くと、\(x_0 = (2+\sqrt{2})r\) が得られます。これは \(x_0 > r\)(Bの右側)という条件に合っています。

この設問における重要なポイント:

  • 電場が0になる条件は、各電荷が作る電場の「大きさが等しく」「向きが反対」であること。
  • 可能性のある領域(電荷の左側、間、右側)を分けて考察し、それぞれの領域で数式を立てること。
  • 距離の取り方を正確に行うこと(基準点を明確にする)。
  • 得られた解が、考察している領域の条件を満たしているか(解の吟味)を必ず確認すること。平方根をとる際は正負両方を考慮し、物理的に適切な解を選ぶこと。
解答 (4):
電場が0となる点の位置は、A点からBの方向へ \((2+\sqrt{2})r\) の距離の点である。(これはB点から見て同じ方向へ \((1+\sqrt{2})r\) の距離の点である。)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 点電荷の作る電場: 電場の強さの公式 \(\displaystyle E = k \frac{|Q|}{r^2}\) と、電荷の符号による電場の向き(正電荷からは湧き出し、負電荷へは吸い込む)。
  • 電場の重ね合わせの原理: ある点での電場は、そこにある個々の電荷が作る電場のベクトル和であるということ。向きを考慮した合成が重要。
  • クーロンの法則の比例定数 (\(k\)): 真空(または空気中)における値 \(k \approx 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\)。
  • ベクトル量としての電場: 電場は大きさと向きを持つため、足し合わせる際にはベクトルの規則に従う。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 図の活用: 問題の状況を図示し、各電荷が作る電場の向きを矢印で書き込むと、特に重ね合わせや電場が0になる点を考える際に非常に役立つ。
  • 座標軸の設定: 一直線上の問題を扱う場合、座標軸を設定し、向きを正負で表すと計算が整理されやすい。
  • 場合分けの徹底: 電場が0になる点を求めるような問題では、考えられるすべての領域について場合分けを行い、各場合で丁寧に検討する。
  • 解の吟味: 方程式を解いて得られた解が、物理的に意味のあるものか、設定した条件に適合するかを常に確認する。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 電場の向きの間違い: 特に負電荷が作る電場の向きや、観測点が電荷のどちら側にあるかで向きの判断を誤ることがある。
  • 距離の2乗忘れ・計算ミス: 電場の公式では距離が2乗で効いてくるため、ここの計算を誤ると結果が大きく変わる。
  • 電場の合成でのスカラー扱い: 電場の向きを考慮せず、単純に強さの大小だけで足したり引いたりしてしまう。
  • 電場が0になる点の探索漏れや吟味不足:
    • 可能性のある領域を一部しか検討しない。
    • 方程式の解が複数出た場合に、すべての解を吟味せず、不適切な解を選んでしまう。
    • 平方根を取る際に絶対値の扱いを誤る。
  • 電荷の符号の扱い: 電場の強さを求める際には電荷の絶対値を用いるが、向きを判断する際には符号が重要である点を混同する。

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