無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「電場と電荷が受ける力」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic04

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電場(電界)の定義と、電場から受ける力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電場の定義: 電場 \(\vec{E}\) とは、その場所に置かれた電荷 \(q\) が受ける力 \(\vec{F}\) を用いて、\(\vec{E} = \displaystyle\frac{\vec{F}}{q}\) と定義されるベクトル量です。言い換えると、「その場所に +1 C の電荷を置いたときに受ける力」が電場です。
  • 電場から受ける力: 電場 \(\vec{E}\) が存在する場所に電荷 \(q\) を置くと、その電荷は \(\vec{F} = q\vec{E}\) の力を受けます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、点Pに置かれた負電荷 \(-q\) が受けた力の情報から、電場の定義式 \(\vec{E} = \vec{F}/q\) を用いて、点Pの電場の向きと強さを求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた電場に、今度は正電荷 \(+Q\) を置いた状況を考えます。電場から受ける力の公式 \(\vec{F} = q\vec{E}\) を用いて、電荷Bが受ける力の向きと大きさを求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
点Pに負電荷 \(-q\) を置いたときに観測された力 \(\vec{F}_A\) の情報をもとに、点Pにおける電場 \(\vec{E}\) の強さ \(E\) と向きを決定します。電場の定義と、電荷の符号によって力の向きがどう変わるかを理解しているかが問われます。
この設問における重要なポイント

  • 電場の定義 \(\vec{E} = \vec{F}/q\) を理解していること。
  • 負電荷が受ける力の向きは、電場の向きと「逆」になること。
  • 電場の強さ(大きさ)は、力の大きさを電荷の大きさ(絶対値)で割ることで求められること。

具体的な解説と立式
電場の定義より、ある点に電荷 \(q_0\) を置いたときに受ける力 \(\vec{F}\) とその点の電場 \(\vec{E}\) の間には \(\vec{F} = q_0 \vec{E}\) の関係があります。

1. 電場の向きの決定
点Pに置かれた電荷Aの電気量は \(-q\) です (\(q>0\) なので負電荷)。この負電荷が受ける力 \(\vec{F}_A\) の向きは、問題文よりx軸の正の向きです。
負電荷が受ける力の向きは、電場の向きとは逆向きになります。
したがって、点Pにおける電場 \(\vec{E}\) の向きは、力 \(\vec{F}_A\) の向き(x軸正の向き)とは逆の、x軸の負の向きです。

2. 電場の強さ(大きさ)の計算
電場の強さ \(E\) は、力の大きさ \(F_A\) を、電荷の大きさの絶対値 \(|-q|=q\) で割ることで求められます。
$$ E = \frac{F_A}{q} $$

使用した物理公式

  • 電場と力の関係: \(\vec{F} = q\vec{E}\)
計算過程

この問題は立式のみで、具体的な数値計算はありません。

計算方法の平易な説明

電場とは、その場所にプラスの電気を置いた時に力を受ける向きと強さのことです。今回は、マイナスの電気 \(-q\) を置いたら、x軸のプラス向きに \(F_A\) の力を受けました。マイナスの電気は電場と逆向きに力を受けるというルールがあるので、点Pの電場の向きは力の向きとは逆の「x軸の負の向き」となります。電場の強さは、力の大きさ \(F_A\) を電気の大きさ \(q\) で割った値、つまり \(E = F_A/q\) となります。

結論と吟味

P点の電場の強さは \( \displaystyle\frac{F_A}{q} \) で、向きはx軸の負の向きです。

解答 (1) 強さ: \(\displaystyle\frac{F_A}{q}\), 向き: x軸の負の向き

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた電場が存在する点Pに、新たに正電荷 \(+Q\) を持つ点電荷Bを置いたときに、この電荷Bが受ける静電気力の大きさ \(F_B\) とその向きを求めます。電場とその中の電荷から力を求める、最も基本的な問題です。
この設問における重要なポイント

  • 電場中の電荷が受ける力の公式 \(\vec{F} = q\vec{E}\) を正しく使うこと。
  • (1)で求めた電場の強さと向きを正確に利用すること。
  • 正電荷が受ける力の向きは、電場の向きと「同じ」であることを理解していること。

具体的な解説と立式
点Pには、(1)で求めたように、強さ \(E = \displaystyle\frac{F_A}{q}\) でx軸の負の向きの電場が存在します。この電場中に電気量 \(+Q\) の電荷Bを置きます。

1. 力の向きの決定
置かれた電荷Bの電気量は \(+Q\) であり、正電荷です。
正電荷が受ける力の向き (\(\vec{F}_B\)) は、電場の向き (\(\vec{E}\)) と同じ向きになります。
点Pの電場の向きはx軸の負の向きなので、点電荷Bが受ける力 \(\vec{F}_B\) の向きもx軸の負の向きです。

2. 力の大きさの計算
力の大きさ \(F_B\) は、電荷の大きさ \(|+Q| = Q\) と電場の強さ \(E = \displaystyle\frac{F_A}{q}\) の積で計算できます。
$$ F_B = Q \times E $$
この式に \(E\) を代入します。
$$ F_B = Q \times \left( \displaystyle\frac{F_A}{q} \right) = \displaystyle\frac{QF_A}{q} $$

使用した物理公式

  • 電場中の電荷が受ける力: \(\vec{F} = q\vec{E}\)
計算過程

この問題は立式のみで、具体的な数値計算はありません。

計算方法の平易な説明

点Pには、x軸の負の向きに強さ \(E = F_A/q\) の電場があることが(1)でわかりました。この場所に、今度はプラスの電気 \(+Q\) を置きます。プラスの電気は、電場から電場と同じ向きに力を受けます。したがって、力の向きは電場と同じ「x軸の負の向き」です。力の大きさは、電気の大きさ \(Q\) と電場の強さ \(E\) を掛ければよいので、\(\displaystyle F_B = Q \times E = Q \times (F_A/q) = \frac{QF_A}{q}\) となります。

結論と吟味

点電荷Bの受ける力の大きさは \( \displaystyle\frac{QF_A}{q} \) で、向きはx軸の負の向きです。

解答 (2) 大きさ: \(\displaystyle\frac{QF_A}{q}\), 向き: x軸の負の向き

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電場の定義と性質:
    • 核心: この問題は、電場という概念の根幹をなす2つの関係式、\(\vec{E} = \vec{F}/q\)(定義)と \(\vec{F} = q\vec{E}\)(応用)を正しく理解し、使い分けられるかを問うています。
    • 理解のポイント: 電場は、電荷が存在することでその周囲の空間の性質が変化した「場」そのものです。ある点に電場が存在すれば、そこに置かれるどんな電荷も、その電荷量と電場に応じた力を受けます。この「場が力を媒介する」という考え方が電磁気学の基本です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電場の源が不明な問題: この問題のように、電場を作っている原因(他の電荷など)が明示されていなくても、ある点での電場の情報(向きと強さ)さえ分かれば、そこに置いた別の電荷が受ける力を計算できます。
    • 一様な電場中の運動: 平行な金属板間のように、どこでも向きと強さが一定の「一様な電場」中に荷電粒子を入射させると、粒子は一定の力を受け続けるため、放物運動など等加速度直線運動と同じように解析できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 何を問われているか確認: 「電場」を問われているのか、それとも「力」を問われているのかを明確にします。
    2. 「電場」を求める場合: その点に置いた試験電荷 \(q\) と、それが受けた力 \(F\) の情報から、\(E=F/|q|\) で計算します。
    3. 「力」を求める場合: その点の電場 \(E\) と、そこに置いた電荷 \(q\) の情報から、\(F=|q|E\) で計算します。
    4. 向きを判断する: 常に電荷の符号(正か負か)を確認し、力の向きと電場の向きの関係(同じか逆か)を判断します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 負電荷が受ける力の向き:
    • 誤解: 電荷の符号に関わらず、力の向きは常に電場の向きと同じだと考えてしまう。
    • 対策: 電場の向きは「+1 C の電荷が受ける力の向き」と定義されています。したがって、負電荷が受ける力は、定義とは逆向きになると覚えましょう。これは電磁気学で最も基本的かつ重要なルールの一つです。
  • 公式の混同:
    • 誤解: 電場の強さを求める際に、点電荷が作る電場の公式 \(E = k\frac{|q|}{r^2}\) を使おうとしてしまう。
    • 対策: この問題では、電場を作っている源が何か分からないため、距離 \(r\) を使う公式は適用できません。問題で与えられている情報(力 \(F\) と電荷 \(q\))から、定義式 \(E=F/|q|\) を使うのが正しいアプローチです。
  • 向きの記述:
    • 誤解: 向きを答え忘れたり、「右」「左」など曖昧な言葉で答えたりする。
    • 対策: 力や電場はベクトル量なので、大きさと向きの両方を答える必要があります。向きは、問題文で指定された座標軸(「x軸の正の向き」など)を用いて正確に記述しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • なぜ \(\vec{F} = q\vec{E}\) という関係式が成り立つのか?:
    • 選定理由: これは電場の定義そのものから導かれる関係式です。
    • 適用根拠: 電場 \(\vec{E}\) は、単位電荷あたりの力 (\(\vec{E} = \vec{F}/q\)) として定義されています。この定義式の両辺に \(q\) を掛ければ、\(\vec{F} = q\vec{E}\) が得られます。つまり、(1)で定義に基づいて電場を求め、(2)ではその定義を逆に応用して力を求めている、という一貫した論理構造になっています。この関係は、電場という概念を導入する最大の理由であり、クーロンの法則を「電荷 \(\rightarrow\) 電場 \(\rightarrow\) 力」という2段階のプロセスで理解するための根幹をなします。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の扱いに慣れる: この問題のように、具体的な数値ではなく文字で与えられている場合、計算は分数の形になることが多いです。\(E = \frac{F_A}{q}\) や \(F_B = \frac{QF_A}{q}\) のように、どの文字が分子に来て、どの文字が分母に来るのかを、公式に基づいて正確に処理できるようにしましょう。
  • 図を描いて確認する:
    • (1)では、P点に \(-q\) を置き、力のベクトル \(\vec{F}_A\) を右向きに描きます。「負電荷だから、電場は逆向きだな」と考えて、電場のベクトル \(\vec{E}\) を左向きに描きます。
    • (2)では、P点に \(\vec{E}\) のベクトルを左向きに描き、そこに \(+Q\) を置きます。「正電荷だから、力は同じ向きだな」と考えて、力のベクトル \(\vec{F}_B\) を左向きに描きます。

    このように、ベクトルを図示することで、向きの間違いを視覚的に防ぐことができます。


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