今回の問題
electromagnetic14【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーと誘電体」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
- 誘電体の効果: 比誘電率\(\epsilon_r\)の誘電体で満たすと、電気容量は\(\epsilon_r\)倍になる (\(C’ = \epsilon_r C\))。
- 操作による不変量の判断:
- 電池を接続したまま操作 → 電圧Vが一定
- 電池を切り離して操作 → 電気量Qが一定
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず初期状態の電気量を \(Q=CV\) を使って求めます。
- (2)では、「電池をつないだまま」という条件から「電圧Vが一定」であると判断し、誘電体挿入で変化した電気容量を使って新しい電気量を計算します。
- (3)では、「電池を取りはずし」という条件から「電気量Qが一定」であると判断し、誘電体挿入で変化した電気容量を使って新しい電位差を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
初期状態(空気コンデンサーに200Vの電池を接続した状態)で、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q_1\) を求めます。これはコンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を用いる最も基本的な計算です。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を正しく使うこと。
- 単位の接頭辞(p: ピコ)を正しく変換(\(10^{-12}\)倍)すること。
具体的な解説と立式
コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を用います。
$$Q_1 = C_1 V_1 \quad \cdots ①$$
計算にあたり、電気容量の単位をpF(ピコファラド)からF(ファラド)に変換します。
- 電気容量: \(C_1 = 1000 \, \text{pF} = 1000 \times 10^{-12} \, \text{F} = 1.0 \times 10^{-9} \, \text{F}\)
- 電圧: \(V_1 = 200 \, \text{V} = 2.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
これらの値を式①に代入して計算します。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= (1.0 \times 10^{-9}) \times (2.0 \times 10^2) \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-9+2} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-7} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
コンデンサーにたまる電気量は、「電気容量 × 電圧」で計算できます。電気容量 1000pF は \(1.0 \times 10^{-9}\)F です。これに電圧 200V を掛けると、\( (1.0 \times 10^{-9}) \times 200 = 2.0 \times 10^{-7} \) C となります。
正極板に蓄えられる電気量は \(2.0 \times 10^{-7}\) C です。
問(2)
思考の道筋とポイント
電池を接続したままの状態で、比誘電率2.0の絶縁体を挿入した後の、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q_2\) を求めます。この問題の最大の鍵は「電池をつないだまま」という条件から、「電圧Vが一定」であると判断することです。
この設問における重要なポイント
- 「電池をつないだまま」 → 「電圧Vが一定」と読み替えること。
- 誘電体を挿入すると電気容量が \(\epsilon_r\) 倍になることを理解していること。
具体的な解説と立式
まず、絶縁体を挿入した後の電気容量 \(C_2\) を計算します。比誘電率 \(\epsilon_r\) の誘電体で満たすと、電気容量は \(\epsilon_r\) 倍になります。
$$C_2 = \epsilon_r C_1 \quad \cdots ②$$
次に、「電池をつないだまま」なので、極板間の電位差は \(V_2 = V_1 = 200\) V で一定です。
新しい電気容量 \(C_2\) と一定の電位差 \(V_2\) を使って、新しい電気量 \(Q_2\) を計算します。
$$Q_2 = C_2 V_2 \quad \cdots ③$$
使用した物理公式
- 誘電体挿入後の電気容量: \(C’ = \epsilon_r C\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
新しい電気容量 \(C_2\) の計算
$$
\begin{aligned}
C_2 &= 2.0 \times (1.0 \times 10^{-9}) \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-9} \, \text{F}
\end{aligned}
$$
新しい電気量 \(Q_2\) の計算
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= (2.0 \times 10^{-9}) \times (2.0 \times 10^2) \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-7} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
絶縁体を入れると、コンデンサーの性能(電気を蓄える能力)がアップします。比誘電率が2.0なので、電気容量は2倍になります。電池をつないだままなので、電圧は200Vで変わりません。電気量 \(Q\) は「電気容量 \(C\) × 電圧 \(V\)」なので、電気容量が2倍になれば、蓄えられる電気量も2倍になります。(1)の答えの2倍なので、\(4.0 \times 10^{-7}\) C となります。
電気量は \(4.0 \times 10^{-7}\) C となります。電圧一定のまま電気容量が増えたので、電気量が増えるのは妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
初期状態((1)の状態)から電池を取りはずし、その後に比誘電率2.0の絶縁体を挿入したときの、極板間の電位差 \(V_3\) を求めます。この問題の鍵は「電池を取りはずし」という条件から、「電気量Qが一定」であると判断することです。
この設問における重要なポイント
- 「電池を取りはずし」 → 「電気量Qが一定」と読み替えること。
- どの時点の電気量が保存されるのか(この場合は(1)の状態の電気量)を正しく把握すること。
具体的な解説と立式
「電池を取りはずし」たので、コンデンサーは電気的に孤立します。したがって、極板に蓄えられている電気量 \(Q_3\) は(1)のときの \(Q_1\) で一定に保たれます。
$$Q_3 = Q_1 = 2.0 \times 10^{-7} \, \text{C}$$
次に、絶縁体を挿入したので、電気容量 \(C_3\) は(2)のときと同様に \(C_1\) の \(\epsilon_r\) 倍になります。
$$C_3 = \epsilon_r C_1 = 2.0 \times (1.0 \times 10^{-9}) = 2.0 \times 10^{-9} \, \text{F}$$
最後に、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を、求めたい電位差 \(V_3\) について解いた式を用います。
$$V_3 = \frac{Q_3}{C_3} \quad \cdots ④$$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(V = Q/C\)
- 誘電体挿入後の電気容量: \(C’ = \epsilon_r C\)
式④に、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= \frac{2.0 \times 10^{-7}}{2.0 \times 10^{-9}} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-7 – (-9)} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^2 \\[2.0ex]&= 100 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
今度は、最初に200Vで充電した後、電池を外します。この瞬間、コンデンサーに蓄えられた電気量は(1)で求めた \(2.0 \times 10^{-7}\) C のまま、どこにも逃げ場がなくなります(電気量が一定)。この状態で絶縁体を挿入すると、やはり電気容量は2倍になります。「電気量 \(Q\) = 電気容量 \(C\) × 電圧 \(V\)」の関係で \(Q\) が一定のまま \(C\) が2倍になったので、バランスを取るために電圧 \(V\) は半分になるはずです。元の電圧は200Vだったので、その半分の100Vになります。
電位差は 100 V となります。電気量が一定のまま電気容量が増えたので、電位差が減少するのは妥当な結果です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 操作による不変量の違い(V一定かQ一定か):
- 核心: コンデンサーの問題を解く上で最も重要な思考の分岐点は、「その操作の間、コンデンサーは電池に接続されているか、いないか」を判断することです。これが、どの物理量が一定に保たれるかを決定し、解法の道筋を決めます。
- 理解のポイント:
- 電池接続時 → 電圧 V が一定: コンデンサーは常に電池と同じ電圧を保とうとします。電気容量Cが変化すると、電荷Qが電池との間でやり取りされます。
- 電池切断後 → 電気量 Q が一定: コンデンサーの極板は孤立しており、電荷の逃げ場がないため、電気量Qは変化しません。電気容量Cが変化すると、電圧Vが変化します。
この2つのルールを使い分けることが、この分野のマスターへの鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 極板間隔を変える問題: 電池をつないだまま極板間隔を2倍にすると、電気容量 \(C\) は1/2倍になります。電圧 \(V\) は一定なので、電気量 \(Q=CV\) も1/2倍になります。一方、電池を外してから間隔を2倍にすると、\(C\) は1/2倍になりますが、\(Q\) が一定なので、電圧 \(V=Q/C\) は2倍になります。
- エネルギーの変化を問う問題: コンデンサーに蓄えられるエネルギー \(U\) は \(U=\frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV\) の3つの式で表せます。V一定の場合は \(U=\frac{1}{2}CV^2\)、Q一定の場合は \(U=\frac{Q^2}{2C}\) を使うと計算が楽になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 「電池」の接続状態を確認: 問題文の「電池をつないだまま」「電池を取りはずし」というキーワードに真っ先に注目します。
- 不変量を確定: V一定かQ一定かを確定します。これが思考の土台になります。
- 操作によるCの変化を計算: 誘電体を挿入したのか、極板間隔を変えたのかなど、操作によって電気容量 \(C\) がどう変化したかを計算します。
- 基本式 \(Q=CV\) で残りの量を求める: 確定した不変量と、変化後の \(C\) を使って、\(Q=CV\) の関係から求めたい量を計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- V一定とQ一定の混同:
- 誤解: (3)の状況で、(2)と同じように電圧が200Vのままだと考えてしまう。
- 対策: 問題文の操作手順を一つ一つ丁寧に追いましょう。「電池を取りはずし」という操作が、Qを一定に保つための「結界」のような役割を果たす、とイメージすると良いでしょう。
- 単位の接頭辞の変換ミス:
- 誤解: pF(ピコファラド)を \(10^{-9}\) F(ナノファラド)や \(10^{-6}\) F(マイクロファラド)と間違える。
- 対策: p(ピコ, \(10^{-12}\)), n(ナノ, \(10^{-9}\)), \(\mu\)(マイクロ, \(10^{-6}\)), m(ミリ, \(10^{-3}\)) などの主要な接頭辞は、正確に暗記しておく必要があります。
- どの時点のQやVを使うかの混乱:
- 誤解: (3)で一定に保たれる電気量として、(2)で求めた \(Q_2\) を使ってしまう。
- 対策: 問題文の操作の流れを正確に追うことが重要です。(3)の操作は「(2)で入れた絶縁体をいったん取り除いてから、電池を取りはずし」とあるので、電池を外した瞬間の電気量は、(2)ではなく(1)の状態の \(Q_1\) に戻っています。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- なぜ誘電体で電気容量が増えるのか?:
- 選定理由: 誘電分極という現象が起こるためです。
- 適用根拠: 誘電体を挿入すると、その内部で誘電分極が起こり、極板間の電場を弱める向きの電場が作られます。
- V一定の場合: 電池は電位差をVに保とうとするため、弱まった電場を元に戻すべく、さらに電荷をコンデンサーに送り込みます。その結果、より多くの電荷 \(Q\) が蓄えられ、\(C=Q/V\) が大きくなります。
- Q一定の場合: 電荷の移動がないため、電場は弱まったままになります。\(V=Ed\) の関係から、電場 \(E\) が弱まると電位差 \(V\) も小さくなります。その結果、\(C=Q/V\) は大きくなります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比で考える:
- (2) V一定のとき: \(C\) が2倍 \(\rightarrow\) \(Q=CV\) より \(Q\) も2倍。
- (3) Q一定のとき: \(C\) が2倍 \(\rightarrow\) \(V=Q/C\) より \(V\) は1/2倍。
このように、変化の比率で考えると、複雑な指数計算をせずに答えの見当をつけることができ、計算ミスを防げます。
- 科学記数法の整理: \(1000 \times 10^{-12}\) を \(1.0 \times 10^3 \times 10^{-12} = 1.0 \times 10^{-9}\) のように、計算を始める前に数値を標準的な科学記数法に直しておくと、計算が整理されやすくなります。
- 状況を図で描く: 各設問の状況を、コンデンサー、電池、誘電体を含む簡単な回路図で描いてみましょう。「電池がつながっているか」「誘電体が入っているか」を視覚的に確認することで、どの法則を適用すべきかの判断ミスを防げます。
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