無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「コンデンサーの応用:電圧一定と電荷一定の切り替え」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#16

各設問の思考プロセス

この問題は、一つのコンデンサーに対して「充電 → 電池を切り離す → 極板間隔を変える → 誘電体を挿入する → 再び電池を接続する」という一連の操作を行ったときの、電気量(Q)・電気容量(C)・電圧(V)の変化を追う問題です。この種の問題を解く上で、思考の分岐点となる最も重要なポイントは「その操作の間、コンデンサーは電池に接続されているか、いないか」です。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 電気容量の変化:
    • 極板間隔dに反比例 (\(C \propto 1/d\))
    • 比誘電率\(\epsilon_r\)の誘電体で満たすと\(\epsilon_r\)倍になる (\(C’ = \epsilon_r C\))。

そして、状況判断の鍵となるのが次の2つの条件です。

  • 電池を接続したまま操作 → 電圧Vが一定コンデンサーは常に電池と同じ電圧を保とうとします。電気容量Cが変化すると、電荷Qが電池との間でやり取りされます。
  • 電池を切り離して操作 → 電気量Qが一定コンデンサーの極板は孤立しており、電荷の逃げ場がないため、電気量Qは変化しません。電気容量Cが変化すると、電圧Vが変化します。

この思考プロセスに従い、各設問の状況を正しく判断して計算を進めます。

  1. (1) 初期状態の計算: まずは単純に \(Q=CV\) を使って最初の電気量を求めます。
  2. (2) 「電荷一定」の場合(1): 「電池をとりはずし」たので、Qは(1)の値で一定です。極板間隔が2倍になりCが変化した後の、新しいVを計算します。
  3. (3) 「電荷一定」の場合(2): (2)の状態からではなく、(1)の状態から電池を外した状態が基準です。「間隔をもとにもどし」てから誘電体を挿入するので、Qは(1)の値で一定のまま、Cが変化した後の新しいVを計算します。
  4. (4) 「電圧一定」の場合: (3)の状態から、今度は800Vの「電池を接続」します。Vが800Vで一定になります。Cは(3)の状態のままなので、新しいQを計算します。

各設問の具体的な解説と解答

(1) コンデンサーにたくわえられた電荷は何Cか。

問われている内容の明確化
初期状態(電気容量\(5.0\,\mu\text{F}\)のコンデンサーに80Vの電池を接続した状態)で、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q_1\) を求めます。

具体的な解説と立式
コンデンサーの基本式 \(Q = CV\) を用います。
$$Q_1 = C_1 V_1 \quad \cdots ①$$
与えられた値は \(C_1 = 5.0 \, \mu\text{F}\), \(V_1 = 80 \, \text{V}\) です。計算の前に、電気容量の単位をF(ファラド)に変換します。

  • \(1 \, \mu\text{F} = 10^{-6} \, \text{F}\)

したがって、\(C_1 = 5.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\) となります。

使用した物理公式: コンデンサーの基本式
$$Q = CV$$

計算過程
式①に、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= (5.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (80 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 400 \times 10^{-6} \, \text{C} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^2 \times 10^{-6} \, \text{C} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • コンデンサーにたまる電気量は、「電気容量 × 電圧」で計算できます。
  • 電気容量 \(5.0\,\mu\text{F}\) は \(5.0 \times 10^{-6}\text{F}\) です。
  • これに電圧 80V を掛けると、\( (5.0 \times 10^{-6}) \times 80 = 4.0 \times 10^{-4} \) C となります。

この設問における重要なポイント

  • コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を正しく使うこと。
  • 単位の接頭辞 \(\mu\)(マイクロ)を \(10^{-6}\) 倍に正しく変換すること。
解答 (1):
\(4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)

(2) 電池をとりはずした後,極板の間隔を2倍にしたときの電圧

問われている内容の明確化
電気量\(Q_1\)が一定の状態で、極板間隔を2倍にした後の電圧 \(V_2\) を求めます。

具体的な解説と立式
「電池をとりはずし」たので、コンデンサーは孤立し、電気量 \(Q\) は一定に保たれます。
$$Q_2 = Q_1 = 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}$$
一方、極板の間隔を2倍にすると、電気容量は半分になります。
$$C_2 = \frac{C_1}{2}$$
新しい電圧 \(V_2\) は、基本式 \(Q_2 = C_2 V_2\) を変形して求めます。
$$V_2 = \frac{Q_2}{C_2} \quad \cdots ②$$

使用した物理公式:

  1. 電気容量と極板間距離の関係: \(C \propto 1/d\)
  2. コンデンサーの基本式: \(V = Q/C\)

計算過程
まず、新しい容量 \(C_2\) を計算します。
$$ C_2 = \frac{5.0 \times 10^{-6} \, \text{F}}{2} = 2.5 \times 10^{-6} \, \text{F} $$
次に、式②に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{2.5 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= \frac{4.0}{2.5} \times 10^{-4 – (-6)} \, \text{V} \\[2.0ex]&= 1.6 \times 10^2 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 160 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • 電池を外したので、電気の量(\(Q\))は(1)のまま変わりません。
  • 極板の距離を2倍にすると、電気を蓄える能力(電気容量\(C\))は半分になります。
  • 「電圧 \(V\) = 電気量 \(Q\) ÷ 電気容量 \(C\)」の関係から、\(Q\)が一定で\(C\)が半分になったので、電圧は2倍になります。
  • 元の電圧は80Vだったので、その2倍の160Vになります。

この設問における重要なポイント

  • 「電池を取りはずし」 → 「電気量Qが一定」と読み替えること。
  • 極板間隔が2倍になると、電気容量が1/2倍になることを理解していること。
解答 (2):
160 V

(3) 間隔をもどし、誘電体を満たしたときの電圧

問われている内容の明確化
電気量\(Q_1\)が一定の状態で、極板間隔を元に戻し、比誘電率2.0の誘電体で満たした後の電圧 \(V_3\) を求めます。

具体的な解説と立式
問題文の「(2)で入れた絶縁体をいったん取り除いてから、電池を取りはずし、絶縁体を再びみたした」という記述は、(1)の状態から電池を外した状態を初期状態とすることを意味します。
「電池をはずしたまま」なので、電気量 \(Q\) は一定です。
$$Q_3 = Q_1 = 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}$$
極板間隔は元のままで、比誘電率 \(\epsilon_r=2.0\) の誘電体で満たしたので、電気容量 \(C_3\) は元の \(C_1\) の \(\epsilon_r\) 倍になります。
$$C_3 = \epsilon_r C_1$$
新しい電圧 \(V_3\) は、基本式を変形して求めます。
$$V_3 = \frac{Q_3}{C_3} \quad \cdots ③$$

使用した物理公式:

  1. 誘電体挿入後の電気容量: \(C’ = \epsilon_r C\)
  2. コンデンサーの基本式: \(V = Q/C\)

計算過程
まず、新しい容量 \(C_3\) を計算します。
$$ C_3 = 2.0 \times (5.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) = 10.0 \times 10^{-6} \, \text{F} = 1.0 \times 10^{-5} \, \text{F} $$
次に、式③に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= \frac{4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{1.0 \times 10^{-5} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-4 – (-5)} \, \text{V} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^1 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 40 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • (1)の状態で電池を外したので、電気の量(\(Q\))は(1)のまま変わりません。
  • この状態で絶縁体を挿入すると、電気を蓄える能力(電気容量\(C\))が比誘電率の分だけ、つまり2倍になります。
  • 「電圧 \(V\) = 電気量 \(Q\) ÷ 電気容量 \(C\)」の関係から、\(Q\)が一定で\(C\)が2倍になったので、電圧は半分になります。
  • 元の電圧は80Vだったので、その半分の40Vになります。

この設問における重要なポイント

  • この操作でも「電気量Qが一定」であること。
  • 誘電体を挿入すると電気容量が \(\epsilon_r\) 倍になることを理解していること。
解答 (3):
40 V

(4) (3)の後、再びこのコンデンサーに800Vの電池を接続したときの電気量

問われている内容の明確化
(3)の状態のコンデンサーに、新たに800Vの電池を接続したときに蓄えられる電気量 \(Q_4\) を求めます。

具体的な解説と立式
「電池を接続した」ので、コンデンサーの電圧は電池の電圧で一定になります。
$$V_4 = 800 \, \text{V}$$
コンデンサーの状態は(3)のままなので、電気容量も(3)のときと同じです(誘電体が入ったまま)。
$$C_4 = C_3 = 1.0 \times 10^{-5} \, \text{F}$$
新しい電気量 \(Q_4\) は、基本式 \(Q=CV\) を用いて求めます。
$$Q_4 = C_4 V_4 \quad \cdots ④$$

使用した物理公式: コンデンサーの基本式
$$Q=CV$$

計算過程
式④に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_4 &= (1.0 \times 10^{-5} \, \text{F}) \times (800 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= (1.0 \times 10^{-5}) \times (8.0 \times 10^2) \\[2.0ex]&= 8.0 \times 10^{-5+2} \, \text{C} \\[2.0ex]&= 8.0 \times 10^{-3} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

  • (3)の時点でのコンデンサー(電気容量は \(1.0 \times 10^{-5}\)F)に、800Vの電池をつなぎます。
  • 電圧が800Vで一定になるので、「電気量 = 電気容量 × 電圧」の公式に値を代入するだけです。
  • \((1.0 \times 10^{-5}) \times 800 = 8.0 \times 10^{-3}\) C となります。

この設問における重要なポイント

  • 新たに「電池を接続」したので、今度は「電圧Vが一定」の状況に切り替わること。
  • その電圧は、新しい電池の800Vであること。
  • 容量は(3)の状態から変わっていないことを把握すること。
解答 (4):
\(8.0 \times 10^{-3} \, \text{C}\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • コンデンサーの基本式 \(Q=CV\): コンデンサーに関するあらゆる問題の出発点となる最も重要な式です。
  • 電気容量の変化要因:
    • 幾何学的要因: 平行板コンデンサーでは、容量は極板面積に比例し、極板間距離に反比例します。
    • 物質的要因: 極板間に比誘電率 \(\epsilon_r\) の誘電体を挿入すると、容量は \(\epsilon_r\) 倍になります。
  • 操作による不変量の違い: コンデンサーの問題を解く上で最も重要な思考の分岐点です。
    • 電池接続時 → 電圧 V が一定
    • 電池切断後 → 電気量 Q が一定

    このどちらの状況なのかを問題文から正確に読み取ることが、正解への鍵となります。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 状態の遷移を追う: この問題のように操作が連続する場合、「前の状態が次の状態の初期値になる」ことを意識し、Q, C, V の値を一つずつ丁寧に追っていくことが大切です。各ステップで何が一定で何が変化するのかを明確にしましょう。
  • 問題文の丁寧な読解: 「~した後、電池をとりはずし、」のような接続詞や操作の順序を正確に読み取ることが、どの状態を基準に考えるべきかを判断する上で不可欠です。
  • 比で考える: 各ステップでの変化が「2倍」「1/2倍」など簡単な比で表せる場合、具体的な数値を毎回計算するよりも、「元の値の何倍になるか」という比で考えた方が、計算が楽になり、ミスも減ります。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • V一定とQ一定の混同: 最も多い間違いです。問題文の「電池をつないだまま」「電池を取りはずし」というキーワードに最大限の注意を払いましょう。
  • 前の状態の引き継ぎミス: (3)の計算で、(2)の状態(間隔が2倍)を引き継いでしまうなど、問題文の「間隔をもとにもどし」といった記述を見落としてしまうミス。
  • 単位変換のミス: \(\mu\)F から F への変換など、基本的な単位変換でのケアレスミスに注意しましょう。

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