プロセス
1 速さの単位変換
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「速さの単位変換」です。物理で最も基本的な単位であるメートル(\(\text{m}\))、キロメートル(\(\text{km}\))、秒(\(\text{s}\))、時間(\(\text{h}\))の関係を正しく理解し、速さの単位である \(\text{m/s}\) と \(\text{km/h}\) を自在に変換するスキルを身につけます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速さの定義: 速さとは、単位時間あたりに進む距離のこと。
- 時間の単位の関係: \(1\) 時間 \( = 60\) 分 \( = 3600\) 秒。
- 距離の単位の関係: \(1\) キロメートル \( = 1000\) メートル。
- 単位の計算: 単位を文字式のように扱い、分数として計算する考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- \(\text{m/s}\) から \(\text{km/h}\) への変換:まず「\(1\) 秒あたりに進む距離(\(\text{m}\))」を「\(1\) 時間あたりに進む距離(\(\text{m}\))」に直し、次にその距離の単位を \(\text{m}\) から \(\text{km}\) へ変換する。
- \(\text{km/h}\) から \(\text{m/s}\) への変換:まず「\(1\) 時間あたりに進む距離(\(\text{km}\))」を「\(1\) 秒あたりに進む距離(\(\text{km}\))」に直し、次にその距離の単位を \(\text{km}\) から \(\text{m}\) へ変換する。あるいは、距離と時間を先にそれぞれ \(\text{m}\) と \(\text{s}\) に直してから割り算を実行する。
速さ \(1.0 \, \text{m/s}\) の \(\text{km/h}\) への変換
思考の道筋とポイント
速さの単位変換は、単に「\(3.6\) を掛ける・割る」と暗記するのではなく、その意味を理解することが重要です。「\(1.0 \, \text{m/s}\)」という速さの物理的な意味、すなわち「\(1\) 秒間に \(1.0 \, \text{m}\) 進むペース」を基点に考えます。最終的に求めたいのは「\(1\) 時間あたりに何 \(\text{km}\) 進むか」なので、時間を「秒」から「時間」へ、距離を「メートル」から「キロメートル」へと、段階的にスケールアップしていくイメージを持つと分かりやすいです。
この設問における重要なポイント
- 速さの定義に立ち返る: \(\text{m/s}\) は「メートル毎秒」、\(\text{km/h}\) は「キロメートル毎時」。言葉の意味がそのまま計算の方針を示しています。
- 時間の換算: \(1\) 時間 \( = 3600\) 秒。この関係を使って、\(1\) 秒あたりの移動距離を \(3600\) 倍すれば、\(1\) 時間あたりの移動距離が求まります。
- 距離の換算: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)。メートルで計算した距離をキロメートルに直すには、\(1000\) で割る必要があります。
具体的な解説と立式
速さ \(1.0 \, \text{m/s}\) は、「\(1\) 秒間に \(1.0 \, \text{m}\) の距離を進む」ことを意味します。
これを時速(\(\text{km/h}\))、すなわち「\(1\) 時間に何 \(\text{km}\) 進むか」に変換します。
\(1\) 時間は \(3600\) 秒です。
したがって、\(1\) 秒間に \(1.0 \, \text{m}\) 進む速さで \(1\) 時間(\( = 3600\) 秒)進み続けたときの距離は、
$$
\begin{aligned}
(\text{距離}) &= (\text{速さ}) \times (\text{時間}) \\[2.0ex]
&= 1.0 \, \text{[m/s]} \times 3600 \, \text{[s]}
\end{aligned}
$$
この計算で求まる距離の単位はメートル(\(\text{m}\))です。
次に、この距離をキロメートル(\(\text{km}\))に変換します。\(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) の関係から、メートルをキロメートルに直すには \(1000\) で割ります。
よって、\(1\) 時間あたりに進む距離を \(\text{km}\) 単位で表したものが時速(\(\text{km/h}\))となります。
$$
\text{時速} \, \text{[km/h]} = \frac{1.0 \times 3600}{1000}
$$
使用した物理公式
- 距離 \( = \) 速さ \( \times \) 時間
- 時間の単位換算: \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\)
- 距離の単位換算: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)
まず、\(1.0 \, \text{m/s}\) の速さで \(1\) 時間 (\( = 3600 \, \text{s}\)) に進む距離をメートルで求めます。
$$
\begin{aligned}
\text{距離}_{\text{m}} &= 1.0 \, \text{[m/s]} \times 3600 \, \text{[s]} \\[2.0ex]
&= 3600 \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
次に、この距離をキロメートル単位に変換します。
$$
\begin{aligned}
\text{距離}_{\text{km}} &= 3600 \, \text{[m]} \times \frac{1 \, \text{[km]}}{1000 \, \text{[m]}} \\[2.0ex]
&= 3.6 \, \text{[km]}
\end{aligned}
$$
これは \(1\) 時間あたりに進む距離なので、速さは \(3.6 \, \text{km/h}\) となります。
したがって、\(1.0 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\) です。
「秒速 \(1.0 \, \text{m}\)」というのは、文字通り「\(1\) 秒で \(1.0 \, \text{m}\) 進む」ペースのことです。
これを「時速」、つまり「\(1\) 時間でどれくらい進むか」に直してみましょう。
\(1\) 時間は \(3600\) 秒なので、このペースで \(1\) 時間走り続けると、進む距離は \(1.0 \, \text{m} \times 3600 = 3600 \, \text{m}\) となります。
最後に、これをキロメートルに直します。\(1000 \, \text{m}\) が \(1 \, \text{km}\) ですから、\(3600 \, \text{m}\) は \(3.6 \, \text{km}\) ですね。
つまり、\(1\) 時間で \(3.6 \, \text{km}\) 進むということなので、「時速 \(3.6 \, \text{km}\)」(\(3.6 \, \text{km/h}\))が答えになります。
速さ \(54 \, \text{km/h}\) の \(\text{m/s}\) への変換
思考の道筋とポイント
今度は逆の変換です。「\(54 \, \text{km/h}\)」という速さの物理的な意味、すなわち「\(1\) 時間に \(54 \, \text{km}\) 進むペース」から出発します。求めたいのは「\(1\) 秒あたりに何 \(\text{m}\) 進むか」なので、今度は時間を「時間」から「秒」へ、距離を「キロメートル」から「メートル」へと、スケールダウンしていくイメージで考えます。先ほど導出した「\(1 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\)」の関係を利用するのも賢い方法です。
この設問における重要なポイント
- 定義に立ち返る: 「\(1\) 時間(\( = 3600\) 秒)で \(54 \, \text{km}\) (\( = 54000 \, \text{m}\))進む」という事実を数式で表現します。
- 割り算による単位時間あたりの量の計算: \(3600\) 秒あたりの移動距離が分かっているので、それを \(3600\) で割れば \(1\) 秒あたりの移動距離が求まります。
- 変換係数の利用: 先の計算で \(1.0 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\) であることが分かりました。これは、\(\text{km/h}\) の数値を \(3.6\) で割れば \(\text{m/s}\) の数値になることを意味しており、これを利用すると計算が速いです。
具体的な解説と立式
速さ \(54 \, \text{km/h}\) は、「\(1\) 時間に \(54 \, \text{km}\) の距離を進む」ことを意味します。
これを秒速(\(\text{m/s}\))、すなわち「\(1\) 秒に何 \(\text{m}\) 進むか」に変換します。
まず、距離をメートル(\(\text{m}\))に、時間を秒(\(\text{s}\))にそれぞれ変換します。
\(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) なので、
$$
\begin{aligned}
54 \, \text{km} &= 54 \times 1000 \, \text{m} \\[2.0ex]
&= 54000 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
\(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\) です。
つまり、「\(3600\) 秒で \(54000 \, \text{m}\) 進む」ということが分かります。
\(1\) 秒あたりに進む距離を求めるには、総距離を総時間で割ればよいので、
$$
\text{秒速} \, \text{[m/s]} = \frac{54000 \, \text{[m]}}{3600 \, \text{[s]}}
$$
使用した物理公式
- 速さ \( = \displaystyle\frac{\text{距離}}{\text{時間}}\)
- 時間の単位換算: \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\)
- 距離の単位換算: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\)
\(54 \, \text{km/h}\) を、メートルと秒を用いた形に直します。
$$
\begin{aligned}
54 \, \text{km/h} &= \frac{54 \, \text{km}}{1 \, \text{h}} \\[2.0ex]
&= \frac{54 \times 1000 \, \text{m}}{3600 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= \frac{54000}{3600} \, \text{m/s} \\[2.0ex]
&= \frac{540}{36} \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
ここで、\(540 \div 36\) を計算します。\(36 \times 10 = 360\)、\(540 – 360 = 180\)、\(36 \times 5 = 180\) なので、\(540 \div 36 = 15\) となります。
$$
\begin{aligned}
\frac{540}{36} \, \text{m/s} &= 15 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
したがって、\(54 \, \text{km/h} = 15 \, \text{m/s}\) です。
「時速 \(54 \, \text{km}\)」は、「\(1\) 時間で \(54 \, \text{km}\) 進む」ペースです。
これを「秒速」、つまり「\(1\) 秒でどれだけ進むか」に直してみましょう。
まず、距離と時間を分かりやすい単位に揃えます。\(54 \, \text{km}\) は \(54000 \, \text{m}\) ですね。そして \(1\) 時間は \(3600\) 秒です。
つまり、「\(3600\) 秒かけて \(54000 \, \text{m}\) 進む」ということです。
では、\(1\) 秒あたりではどれだけ進むでしょう? \(54000\) を \(3600\) で割れば求まります。
計算すると \(15\) になります。
よって、\(1\) 秒あたり \(15 \, \text{m}\) 進むということなので、「秒速 \(15 \, \text{m}\)」(\(15 \, \text{m/s}\))が答えです。
思考の道筋とポイント
物理的な意味を毎回考える代わりに、単位そのものを文字式の分数のように扱って、機械的に変換する方法もあります。このアプローチでは、\(1 = \frac{1000 \, \text{m}}{1 \, \text{km}}\) や \(1 = \frac{3600 \, \text{s}}{1 \, \text{h}}\) のような「値が \(1\) の変換用の分数」を元の速さに掛けることで、不要な単位を約分して消し、目的の単位だけを残します。この方法はどんな単位変換にも応用できる非常に強力なテクニックです。
この設問における重要なポイント
- 単位を文字として扱う: \(\text{km}\), \(\text{h}\), \(\text{m}\), \(\text{s}\) を、\(x, y, a, b\) のような文字変数と見なして計算します。
- 基本関係式: \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) と \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\) を使います。
- 代入による変換: 例えば \(\text{km/h}\) を \(\text{m/s}\) に変換する場合、式の \(\text{km}\) を \(1000 \, \text{m}\) に、\(\text{h}\) を \(3600 \, \text{s}\) に、それぞれ置き換えるだけで計算できます。
具体的な解説と立式
\(1.0 \, \text{m/s}\) から \(\text{km/h}\) へ
目標は、\(\text{m}\) を \(\text{km}\) に、\(\text{s}\) を \(\text{h}\) に変換することです。
基本関係式から、\(1 \, \text{m} = \displaystyle\frac{1}{1000} \, \text{km}\) と \(1 \, \text{s} = \displaystyle\frac{1}{3600} \, \text{h}\) が導かれます。
これを元の速さの式に代入します。
$$
1.0 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} = 1.0 \times \frac{ \left( \displaystyle\frac{1}{1000} \, \text{km} \right) }{ \left( \displaystyle\frac{1}{3600} \, \text{h} \right) }
$$
\(54 \, \text{km/h}\) から \(\text{m/s}\) へ
目標は、\(\text{km}\) を \(\text{m}\) に、\(\text{h}\) を \(\text{s}\) に変換することです。
基本関係式 \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) と \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\) をそのまま代入します。
$$
54 \, \frac{\text{km}}{\text{h}} = 54 \times \frac{ (1000 \, \text{m}) }{ (3600 \, \text{s}) }
$$
使用した物理公式
- 単位の代数計算(物理公式ではありませんが、計算手法として使用)
\(1.0 \, \text{m/s}\) から \(\text{km/h}\) へ
$$
\begin{aligned}
1.0 \, \text{m/s} &= 1.0 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times \frac{ \frac{1}{1000} \, \text{km} }{ \frac{1}{3600} \, \text{h} } \\[2.0ex]
&= 1.0 \times \frac{3600}{1000} \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]
&= 3.6 \, \text{km/h}
\end{aligned}
$$
\(54 \, \text{km/h}\) から \(\text{m/s}\) へ
$$
\begin{aligned}
54 \, \text{km/h} &= 54 \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]
&= 54 \times \frac{1000 \, \text{m}}{3600 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= 54 \times \frac{10}{36} \, \text{m/s} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \times 10 \, \text{m/s} \\[2.0ex]
&= 15 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
単位をただの文字だと思って計算する、とても便利な方法です。
例えば「\(54 \, \text{km/h}\)」は、分数で「\( \displaystyle\frac{54 \, \text{km}}{1 \, \text{h}} \)」と書けますね。
ここで、分子の「\(\text{km}\)」を「\(1000 \, \text{m}\)」に、分母の「\(\text{h}\)」を「\(3600 \, \text{s}\)」に、そのまま入れ替えてしまいます。
すると式は「\( \displaystyle\frac{54 \times 1000 \, \text{m}}{3600 \, \text{s}} \)」となります。
あとは数字の部分(\( \displaystyle\frac{54000}{3600} \))を計算するだけで、答えの \(15\) が出てきます。残った単位が \(\text{m/s}\) なので、答えは \(15 \, \text{m/s}\) となります。意味を考えなくても機械的に計算できるのが強みです。
2 平均の速さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平均の速さの計算と単位変換」です。物理の基本である速さの定義を理解し、与えられた数値から平均の速さを計算する方法と、その結果を異なる単位系(\(\text{m/s}\)と\(\text{km/h}\))に変換するスキルを固めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 平均の速さの定義: 総移動距離を、その移動にかかった総時間で割ったもの。
- 公式の適用: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x}{t}\) の公式に、問題文の数値を正しく代入する。
- 速さの単位変換: \(\text{m/s}\) と \(\text{km/h}\) の関係(\(1 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\))を理解し、適用する。
- 有効数字の考慮: 計算結果を適切な有効数字で表現する。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から移動距離(\(x\))と経過時間(\(t\))を読み取る。
- 平均の速さの公式 \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x}{t}\) を用いて、まず単位 \(\text{m/s}\) で速さを計算する。
- 得られた \(\text{m/s}\) の値を、変換係数 \(3.6\) を用いて \(\text{km/h}\) に変換する。
思考の道筋とポイント
「平均の速さ」とは、移動の途中の速度変化をすべてならして、「もしずっと同じ速さで進んだとしたら、その速さはいくつか」という考え方です。まず、定義式である「(総移動距離) ÷ (経過時間)」に数値を当てはめて \(\text{m/s}\) 単位で速さを求めます。次に、得られた結果を \(\text{km/h}\) 単位に変換します。この変換では、変換係数「\(3.6\)」を適用するのが効率的です。
この設問における重要なポイント
- 平均の速さの公式: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x}{t}\) 。ここで \(\bar{v}\) は平均の速さ、\(x\) は移動距離、\(t\) は経過時間を表します。
- 有効数字: \(80 \, \text{m}\) は有効数字2桁、\(4.0 \, \text{s}\) も有効数字2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答えるのが適切です。
- 単位変換: \(1 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\) の関係を利用します。
具体的な解説と立式
まず、平均の速さ \(\bar{v}\) を \(\text{m/s}\) で求めます。問題文より移動距離 \(x = 80 \, \text{m}\)、経過時間 \(t = 4.0 \, \text{s}\) です。
$$
\bar{v} = \frac{x}{t}
$$
次に、この結果を \(\text{km/h}\) に変換します。\(1 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\) の関係を用います。
$$
(\text{速さ [km/h]}) = (\text{速さ [m/s]}) \times 3.6
$$
使用した物理公式
- 平均の速さ: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x}{t}\)
- 単位変換則: \(1 \, \text{m/s} = 3.6 \, \text{km/h}\)
まず、\(\text{m/s}\) 単位での平均の速さを計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{v} &= \frac{80 \, \text{m}}{4.0 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= 20 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
次に、この値を \(\text{km/h}\) に変換します。
$$
\begin{aligned}
20 \, \text{m/s} &= 20 \times 3.6 \, \text{km/h} \\[2.0ex]
&= 72 \, \text{km/h}
\end{aligned}
$$
「\(4.0\) 秒間で \(80 \, \text{m}\) 進んだ」ので、\(1\) 秒あたりでは \(80 \div 4.0 = 20 \, \text{m}\) 進んだことになります。これが秒速 \(20 \, \text{m/s}\) です。
次に、これを時速に直します。「秒速を時速に直すには \(3.6\) を掛ける」というルールを使うと、\(20 \times 3.6 = 72\) となります。よって、時速は \(72 \, \text{km/h}\) です。これは高速道路を走る自動車くらいの速さですね。
思考の道筋とポイント
まず平均の速さを \(\text{m/s}\) で計算し、その結果に対して単位を文字式の分数のように扱う方法で \(\text{km/h}\) へ機械的に変換します。変換係数 \(3.6\) を暗記していなくても、基本関係式から導出できるのがこの方法の強みです。
この設問における重要なポイント
- 平均の速さの計算: まずは \(\bar{v} = x/t\) で \(\text{m/s}\) の値を求めます。
- 単位の代数的操作: \(\text{m}\) を \(\text{km}\) に、\(\text{s}\) を \(\text{h}\) に、基本関係式 \(1 \, \text{km} = 1000 \, \text{m}\) と \(1 \, \text{h} = 3600 \, \text{s}\) を使って置き換えます。
具体的な解説と立式
まず、平均の速さ \(\bar{v}\) を \(\text{m/s}\) で求めます。
$$
\bar{v} = \frac{80 \, \text{m}}{4.0 \, \text{s}}
$$
計算結果の \(20 \, \text{m/s}\) を \(\text{km/h}\) に変換します。
$$
20 \, \text{m/s} = 20 \, \frac{\text{m}}{\text{s}}
$$
ここに、\(1 \, \text{m} = \displaystyle\frac{1}{1000} \, \text{km}\) と \(1 \, \text{s} = \displaystyle\frac{1}{3600} \, \text{h}\) を代入します。
$$
20 \, \frac{\text{m}}{\text{s}} = 20 \times \frac{ \left( \displaystyle\frac{1}{1000} \, \text{km} \right) }{ \left( \displaystyle\frac{1}{3600} \, \text{h} \right) }
$$
使用した物理公式
- 平均の速さ: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x}{t}\)
- 単位の代数計算(物理公式ではありませんが、計算手法として使用)
まず、\(\text{m/s}\) 単位での平均の速さを計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{v} &= \frac{80 \, \text{m}}{4.0 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= 20 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
次に、この値を単位の代数計算で \(\text{km/h}\) に変換します。
$$
\begin{aligned}
20 \, \text{m/s} &= 20 \times \frac{ \frac{1}{1000} \, \text{km} }{ \frac{1}{3600} \, \text{h} } \\[2.0ex]
&= 20 \times \frac{3600}{1000} \, \frac{\text{km}}{\text{h}} \\[2.0ex]
&= 20 \times 3.6 \, \text{km/h} \\[2.0ex]
&= 72 \, \text{km/h}
\end{aligned}
$$
まず、\(1\) 秒あたりに進む距離を計算すると \(80 \div 4.0 = 20 \, \text{m}\) なので、秒速は \(20 \, \text{m/s}\) です。
次に、この「\( \frac{20 \, \text{m}}{1 \, \text{s}} \)」という分数の単位を置き換えて時速を計算します。分子の「\(\text{m}\)」は \(1/1000 \, \text{km}\)、分母の「\(\text{s}\)」は \(1/3600 \, \text{h}\) ですね。これを当てはめて分数を計算すると、結局 \(20 \times 3.6\) という計算になり、答えは \(72 \, \text{km/h}\) となります。
3 等速直線運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速直線運動における移動距離の計算」です。物理の運動学における最も基本的な概念である、一定の速さで動く物体の移動距離を求める方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等速直線運動の定義: 速度が時間によって変化せず、一定である直線上の運動。
- 距離、速さ、時間の関係式: \((\text{距離}) = (\text{速さ}) \times (\text{時間})\) という基本的な関係。
- 公式の適用: 物理で用いられる文字式 \(x=vt\) に、問題文の数値を正しく代入する。
- 有効数字の処理: 計算結果を、与えられた数値の精度に合わせて適切に表現する。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から「一定の速さ」というキーワードを読み取り、等速直線運動の公式が適用できることを確認する。
- 速さ \(v\) と時間 \(t\) の値を問題文から抜き出す。
- 移動距離を求める公式 \(x=vt\) に値を代入して計算する。
- 計算結果の有効数字が適切であるかを確認する。
思考の道筋とポイント
問題文にある「一定の速さ」という言葉が、この運動が「等速直線運動」であることを示しています。これは、速度がまったく変化しない、最も単純な運動です。したがって、小学校で学んだ「(距離)=(速さ)×(時間)」という関係式をそのまま使うことができます。物理では、これを文字を使って \(x=vt\) と表現します。この公式に与えられた数値を代入するだけで、答えを導くことができます。計算の際には、有効数字に注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 等速直線運動: 速度が時間によらず一定である運動。加速度はゼロです。
- 公式 \(x=vt\): 移動距離 \(x\) は、速さ \(v\) と経過時間 \(t\) の積に等しい。
- 有効数字: 掛け算や割り算の結果は、計算に用いた数値の中で最も有効数字の桁数が小さいものに合わせます。この問題では、速さ \(5.0 \, \text{m/s}\) (2桁)と時間 \(9.0 \, \text{s}\) (2桁)の積なので、結果も2桁で表現します。
具体的な解説と立式
問題文より、物体の速さ \(v\) と運動した時間 \(t\) はそれぞれ以下のように与えられています。
速さ: \(v = 5.0 \, \text{m/s}\)
時間: \(t = 9.0 \, \text{s}\)
等速直線運動において、時間 \(t\) の間に進む距離 \(x\) は、速さ \(v\) との積で表されるため、以下の式を立てます。
$$
x = v \times t
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の移動距離: \(x = vt\)
上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 5.0 \, \text{[m/s]} \times 9.0 \, \text{[s]} \\[2.0ex]
&= 45 \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
計算に用いた \(5.0\) と \(9.0\) はどちらも有効数字2桁なので、計算結果の \(45\) も有効数字2桁となり、このままで適切です。
「秒速 \(5.0\) メートルの速さで、まっすぐ \(9.0\) 秒間走ったら、何メートル進みますか?」という、とてもシンプルな問題です。\(1\) 秒間に \(5.0\) メートル進むのですから、\(9.0\) 秒間ではその \(9.0\) 倍の距離を進むことになります。したがって、掛け算 \(5.0 \times 9.0\) をするだけでよく、答えは \(45\) メートルとなります。
思考の道筋とポイント
等速直線運動をグラフで可視化するアプローチです。v-tグラフ(縦軸に速度 \(v\)、横軸に時間 \(t\) をとったグラフ)を描くと、移動距離 \(x\) はグラフと時間軸で囲まれた部分の面積に等しい、という重要な関係を利用します。この方法は、より複雑な運動(加速度運動など)を考える上での基礎となる重要な考え方です。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフと移動距離: v-tグラフの面積は移動距離を表します。これは等速直線運動に限らず、あらゆる直線運動で成り立つ普遍的な法則です。
- 等速直線運動のグラフ: 速度が一定なので、v-tグラフは横軸に平行な直線(水平な線)になります。
具体的な解説と立式
縦軸を速度 \(v\)、横軸を時間 \(t\) とするv-tグラフを考えます。
速さは \(v = 5.0 \, \text{m/s}\) で一定なので、グラフは \(t=0 \, \text{s}\) から \(t=9.0 \, \text{s}\) まで、高さ \(5.0\) の位置で水平な直線となります。
移動距離 \(x\) は、この直線と \(t\) 軸、および \(t=0\) と \(t=9.0\) の線で囲まれた領域の面積に等しくなります。この領域は長方形です。
長方形の縦の長さは速さ \(v = 5.0 \, \text{m/s}\)、横の長さは時間 \(t = 9.0 \, \text{s}\) に対応します。
したがって、移動距離 \(x\) はこの長方形の面積として求められます。
$$
x = (\text{長方形の面積}) = (\text{縦}) \times (\text{横})
$$
使用した物理公式
- v-tグラフの面積 = 移動距離
長方形の面積を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 5.0 \, \text{[m/s]} \times 9.0 \, \text{[s]} \\[2.0ex]
&= 45 \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
これは、公式 \(x=vt\) を使った計算と全く同じ形になります。
速さと時間の関係をグラフに描いて考えてみる方法です。横軸に時間、縦軸に速さをとると、ずっと速さ \(5.0\) で進んでいるので、グラフは高さ \(5.0\) の位置でまっすぐな横線になります。物理には、「v-tグラフの下の部分の面積は、進んだ距離を表す」という便利なルールがあります。今回は、縦の長さが \(5.0\)、横の長さが \(9.0\) の長方形の面積を求めるのと同じことになります。したがって、\(5.0 \times 9.0 = 45\) となり、答えは \(45\) メートルです。
4 \(x\)-\(t\)グラフと速さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「\(x\)-\(t\)グラフの解釈と速さの算出」です。物体の運動を表す最も基本的なグラフの一つである\(x\)-\(t\)グラフ(位置-時刻グラフ)から、物体の速さを正確に読み取る方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(x\)-\(t\)グラフの物理的意味: 縦軸が物体の位置 \(x\)、横軸が時刻 \(t\) を表すグラフ。
- グラフからの情報読解: グラフ上の特定の点から、ある時刻に物体がどの位置にいるかを読み取るスキル。
- 速さの定義式: 速さは、移動距離を経過時間で割ることで求められる (\(v = x/t\))。
- \(x\)-\(t\)グラフの傾きと速度の関係: \(x\)-\(t\)グラフの傾きが、その物体の速度を表すという重要な物理的意味の理解。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- グラフが直線であることと、問題文の「一定の速さ」という記述から、物体が等速直線運動をしていることを確認する。
- グラフから、キリの良い時刻(例えば \(t=10 \, \text{s}\))を選び、その時の物体の位置を読み取る。
- 出発点(この場合は原点 \(t=0, x=0\))からの移動距離と経過時間を計算する。
- 速さの定義式に値を代入して、速さを算出する。
思考の道筋とポイント
提示された\(x\)-\(t\)グラフは、原点を通る直線です。これは、物体の位置が時間に比例して直線的に変化していることを意味しており、「一定の速さで進む」という問題文の記述と一致します。物体の速さを求めるには、定義に立ち返り「単位時間あたりにどれだけ進んだか」を計算すればよいです。グラフから、特定の時間(例えば\(10\)秒間)でどれだけの距離(\(50\)メートル)を進んだかを読み取り、割り算によって速さを求めます。
この設問における重要なポイント
- \(x\)-\(t\)グラフと等速直線運動: 物体が等速直線運動をする場合、その\(x\)-\(t\)グラフは直線になります。
- グラフの読解: グラフ上の読み取りやすい点を見つけることが重要です。このグラフでは、\(t=10 \, \text{s}\) のときに \(x=50 \, \text{m}\) となっている点が明確に読み取れます。
- 速さの計算: \((\text{速さ}) = (\text{移動距離}) \div (\text{経過時間})\) の関係を適用します。
- 有効数字: グラフの目盛りから読み取れる数値 \(50 \, \text{m}\) と \(10 \, \text{s}\) は、それぞれ有効数字2桁と解釈するのが一般的です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。
具体的な解説と立式
与えられた\(x\)-\(t\)グラフから、物体の位置と時刻の関係を読み取ります。
- 時刻 \(t=0 \, \text{s}\) のとき、位置は \(x=0 \, \text{m}\) です。
- 時刻 \(t=10 \, \text{s}\) のとき、位置は \(x=50 \, \text{m}\) です。
これは、\(10 \, \text{s}\) という時間で \(50 \, \text{m}\) の距離を移動したことを意味します。
物体の速さを \(v\) とすると、速さは移動距離を経過時間で割ることで求められます。
$$
v = \frac{\text{移動距離}}{\text{経過時間}}
$$
使用した物理公式
- 速さの定義式: \(v = \displaystyle\frac{x}{t}\)
上記で立てた式に、グラフから読み取った値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{50 \, \text{m}}{10 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= 5.0 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値が有効数字2桁なので、答えも \(5.0 \, \text{m/s}\) と有効数字2桁で表現します。
グラフは、横軸が時間(秒)、縦軸が進んだ距離(メートル)を表しています。グラフの線を見ると、時間が \(10\) 秒のとき、距離が \(50\) メートルになっていますね。これは、この物体が「\(10\) 秒間で \(50\) メートル進んだ」ということを意味します。では、\(1\) 秒あたりでは何メートル進んでいるでしょうか? これは割り算で簡単にわかります。\(50 \div 10 = 5\) ですね。つまり、この物体の速さは秒速 \(5\) メートルです。問題の数字が \(50\) や \(10\) と書かれているので、答えも桁を合わせて \(5.0 \, \text{m/s}\) と書くとより丁寧です。
思考の道筋とポイント
物理学において、グラフの「傾き」はしばしば重要な物理量を表します。\(x\)-\(t\)グラフの場合、その傾きは物体の「速度」を意味します。このグラフは直線なので、どの区間をとっても傾きは一定です。これが「一定の速さ」で運動していることのグラフ的な表現です。数学で学んだ直線の傾きの求め方(縦の変化量 ÷ 横の変化量)をそのまま適用することで、速さを求めることができます。
この設問における重要なポイント
- グラフの傾きと物理量: \(x\)-\(t\)グラフの傾きは、速度(\(v\))を表します。
- 傾きの計算: \((\text{傾き}) = \displaystyle\frac{\text{縦軸の変化量}}{\text{横軸の変化量}} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) で計算します。
- 普遍的な概念: この「傾き=速度」という関係は、後の「瞬間の速度」(グラフの接線の傾き)といった、より高度な概念にもつながる非常に重要な考え方です。
具体的な解説と立式
\(x\)-\(t\)グラフの傾きが速度 \(v\) を表します。
傾きは、横軸の変化量(\(\Delta t\))に対する縦軸の変化量(\(\Delta x\))の割合として計算できます。
グラフ上の2点として、出発点である原点 \((t_1, x_1) = (0 \, \text{s}, 0 \, \text{m})\) と、読み取りやすい点 \((t_2, x_2) = (10 \, \text{s}, 50 \, \text{m})\) を選びます。
速度 \(v\) は、これらの点を使って以下のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
v &= (\text{グラフの傾き}) \\[2.0ex]
&= \frac{\Delta x}{\Delta t} \\[2.0ex]
&= \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 速度の定義(グラフの傾きとして): \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
上記で立てた式に、具体的な数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{50 \, \text{m} – 0 \, \text{m}}{10 \, \text{s} – 0 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= \frac{50 \, \text{m}}{10 \, \text{s}} \\[2.0ex]
&= 5.0 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
物理のグラフでは、「傾き」が特別な意味を持つことがよくあります。この位置(\(x\))と時間(\(t\))のグラフでは、線の傾き具合がそのまま「速さ」を表しています。グラフの傾きは、数学で習ったように「縦にどれだけ進んだか ÷ 横にどれだけ進んだか」で計算できます。このグラフは、横に \(10\) 進む間に縦に \(50\) 上がっていますね。なので、傾きは \(50 \div 10 = 5\) となります。したがって、物体の速さは \(5.0 \, \text{m/s}\) と求められます。
5 速度の合成
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「速度の合成」です。特に、川の流水中を動く船のように、動いている媒質の上をさらに物体が動く場合の、第三者(観測者)から見た速度を求める方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対速度の概念: 誰から見た速度なのか(「〜に対する速度」)を常に意識すること。
- 速度の合成: 複数の速度が関わる場合、それらをベクトルとして足し合わせる(合成する)ことで、最終的な速度が求まる。
- ベクトルの向き: 速度は向きを持つベクトル量であるため、同じ向きなら足し算、逆向きなら引き算になることを理解する。
- 観測者の設定: この問題では「岸から見た」速度が問われており、岸が基準(観測者)となる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 「静水の場合の船の速さ」と「川の流れの速さ」の向きを把握する。
- 船は「上流」に、川は「下流」に流れているため、2つの速度は互いに逆向きであることを確認する。
- 岸から見た船の速さは、船自身の速さから、進行を妨げる川の流れの速さを引くことで求められる。
- 計算結果の速さと、最終的にどちらの向きに進むかを明確に答える。
思考の道筋とポイント
この問題の状況は、動く歩道の上を歩く人に似ています。「岸から見た船の速度」とは、船が自力で進む速度と、船が乗っている水(川)自体が流される速度を合わせたものです。
船は上流に向かって進もうとしますが、川の流れは船を下流方向へ押し戻そうとします。つまり、船のエンジンによる前進効果と、川の流れによる後退効果が同時に起こっているわけです。
したがって、岸にいる観測者から見ると、船の速さは本来の速さよりも遅く見えます。具体的には、船の速さから川の流れの速さを引き算することで、見かけの速さが計算できます。
この設問における重要なポイント
- 静水に対する船の速さ: 船が自力で水を押して進む速さ。ここでは \(5.0 \, \text{m/s}\)。
- 川の流れの速さ: 川の水が岸に対して流れる速さ。ここでは \(1.0 \, \text{m/s}\)。
- 岸に対する船の速さ: 岸にいる観測者から見た、最終的な船の速さ。これを求めるのが目的。
- 速度の合成(逆向きの場合): 2つの速度ベクトルが逆向きの場合、合成速度の大きさは、2つの速度の大きさの差となる。向きは、大きい方の速度の向きになる。
具体的な解説と立式
岸から見た船の速度を \(v\)、静水に対する船の速さを \(v_{\text{船}}\)、川の流れの速さを \(v_{\text{川}}\) とします。
問題文より、\(v_{\text{船}} = 5.0 \, \text{m/s}\)、\(v_{\text{川}} = 1.0 \, \text{m/s}\) です。
船は上流に向かって進み、川は下流に向かって流れているため、2つの速度は正反対の向きです。
船の進行を妨げる向きに川が流れているため、岸から見た船の速さ \(v\) は、\(v_{\text{船}}\) から \(v_{\text{川}}\) を引くことで求められます。
$$
v = v_{\text{船}} – v_{\text{川}}
$$
この計算結果が、岸から見た船の速さの大きさになります。向きは、速さが大きい \(v_{\text{船}}\) の向き、すなわち上流向きとなります。
使用した物理公式
- 速度の合成(逆向きの場合): \(v = v_1 – v_2\)
上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 5.0 \, \text{m/s} – 1.0 \, \text{m/s} \\[2.0ex]
&= 4.0 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
速さの大きさが \(4.0 \, \text{m/s}\) であり、向きは船が進もうとする上流向きです。
向かい風の中を歩くのを想像してみてください。自分が前に進もうとする力と、風に押し戻される力が働きますよね。それと同じです。船は、止まっている水の上なら秒速 \(5.0\) メートルで進める力を持っています。しかし、今乗っている川の水自体が、秒速 \(1.0\) メートルで逆方向(下流)に流れています。つまり、船が \(5.0\) メートル前に進もうとしても、足場である水が \(1.0\) メートル後ろに流されてしまうのです。その結果、岸から見ている人には、差し引きで \(5.0 – 1.0 = 4.0\) メートルだけ前に進んだように見えます。したがって、答えは「上流へ秒速 \(4.0\) メートル」となります。
思考の道筋とポイント
物理の問題をより数学的、かつ一般的に解くためのアプローチです。まず、一直線上の運動なので座標軸を設定し、どちらかの向きを「正」と決めます。次に、それぞれの速度を向きに応じた符号(プラスまたはマイナス)を持つ量として表現します。最後に、これらの速度を機械的に足し合わせる(合成する)ことで、岸から見た速度を求めます。この方法は、向きが複雑な問題にも応用できる強力な手法です。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の設定: どの向きを正とするかを最初に明確に定義することが極めて重要です。ここでは、模範解答と同様に「下流から上流への向き」を正とします。
- 速度の符号: 正の向きに進む速度は正(\(+\))の値を、負の向きに進む速度は負(\(-\))の値をとります。
- 合成公式 \(v = v_1 + v_2\): この式はベクトルの和を意味します。各ベクトルの向きを符号で正しく表現すれば、逆向きの場合でも引き算を意識せず、単純な足し算として計算できます。
具体的な解説と立式
まず、座標軸を設定します。下流から上流に向かう向きを正(\(+\))と定めます。
- 静水に対する船の速度 \(v_1\): 船は上流(正の向き)に進むので、\(v_1 = +5.0 \, \text{m/s}\) となります。
- 川の流れの速度 \(v_2\): 川は下流(負の向き)に流れるので、\(v_2 = -1.0 \, \text{m/s}\) となります。
岸から見た船の速度 \(v\) は、これらの速度の合成(ベクトル和)として求められます。
$$
v = v_1 + v_2
$$
使用した物理公式
- 速度の合成則: \(v = v_1 + v_2\)
上記で立てた式に、符号を考慮した数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= (+5.0 \, \text{m/s}) + (-1.0 \, \text{m/s}) \\[2.0ex]
&= 5.0 – 1.0 \\[2.0ex]
&= 4.0 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
計算結果 \(v\) の符号は正(\(+\))です。これは、最初に定義した正の向き、すなわち「上流向き」であることを意味します。
したがって、岸から見た船の速度は、上流へ \(4.0 \, \text{m/s}\) となります。
この問題を数直線を使って考えてみましょう。まず、「上流方向」をプラス、「下流方向」をマイナスと決めます。船は、自力でプラス方向へ \(5.0\) の速さで進みます。これは「\(+5.0\)\」と表せます。一方、川の流れは、船をマイナス方向へ \(1.0\) の速さで押し戻します。これは「\(-1.0\)\」と表せます。岸から見た最終的な速さは、この二つを足し算すればOKです。\((+5.0) + (-1.0) = +4.0\)。計算結果がプラスなので、向きは「上流方向」です。速さは \(4.0\) なので、答えは「上流へ \(4.0 \, \text{m/s}\)」となります。
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6 相対速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「相対速度の計算」です。動いている物体から別の動いている物体を見たときに、それがどのように見えるか(見かけの速度)を求める方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対速度の定義: 一方の物体(観測者)から見た、もう一方の物体の見かけの速度。
- 公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\): 「Aに対するBの相対速度」は、「Bの(地面に対する)速度」から「Aの(地面に対する)速度」を引くことで求められる。
- 座標軸の設定と速度の符号化: 速度は向きを持つベクトル量であるため、直線上の運動では、まず正の向きを定め、各物体の速度を符号(\(+\)または\(-\))付きで表現することが不可欠。
- ベクトルの引き算: 相対速度の計算は、本質的には速度ベクトルの引き算である。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、直線上の一方向(例:右向き)を正の向きと定める。
- A君とB君の速度を、向きを考慮して正負の符号を付けた値で表す。
- 「A君に対するB君の相対速度」を求める公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\) に、符号付きの速度を代入する。
- 計算結果の符号から、相対速度の向きを判断し、大きさと共に答える。