Step 2
125 等速円運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速円運動の基本量の計算」です。角速度が与えられた状況で、周期、速さ、回転数、加速度、向心力といった、円運動を記述するための基本的な物理量を公式に当てはめて計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 円運動の基本量: 半径(\(r\))、角速度(\(\omega\))、速さ(\(v\))、周期(\(T\))、回転数(\(n\))、加速度(\(a\))、向心力(\(F\))。これらの量が何を表し、どのような関係式で結ばれているかを理解していることが全てです。
- 角速度(\(\omega\)): 1秒あたりに何ラジアン回転するかを表す量。円運動の解析における中心的な役割を果たします。
- 向心加速度と向心力: 等速円運動では、速さは一定ですが、速度の「向き」は常に変化しています。この速度変化(=加速度)を生み出しているのが向心加速度であり、その原因となる力が向心力です。どちらも常円の中心を向いています。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 与えられた量(質量\(m\)、半径\(r\)、角速度\(\omega\))を確認する。
- 各設問で問われている物理量(周期、速さ、回転数、加速度、向心力)を、公式を用いて順番に計算していく。
問(1)
思考の道筋とポイント
回転の「周期」「速さ」「回転数」を求めます。これらはすべて、与えられている角速度 \(\omega\) と半径 \(r\) から公式を用いて直接計算できます。それぞれの量の定義と公式を正確に覚えているかが問われます。
この設問における重要なポイント
- 周期 \(T\): 1回転にかかる時間。\(T = \frac{2\pi}{\omega}\)
- 速さ \(v\): 円周上を進む速さ。\(v = r\omega\)
- 回転数 \(n\): 1秒あたりに何回転するか。周期の逆数。\(n = \frac{1}{T}\)
具体的な解説と立式
周期 \(T\) の計算:
角速度 \(\omega\) が与えられているので、公式 \(T = \frac{2\pi}{\omega}\) を使います。
$$ T = \frac{2\pi}{\omega} $$
速さ \(v\) の計算:
半径 \(r\) と角速度 \(\omega\) が与えられているので、公式 \(v = r\omega\) を使います。
$$ v = r\omega $$
回転数 \(n\) の計算:
周期 \(T\) の逆数が回転数(振動数)\(n\) です。
$$ n = \frac{1}{T} $$
使用した物理公式
- 周期と角速度の関係: \(T = \frac{2\pi}{\omega}\)
- 速さと角速度の関係: \(v = r\omega\)
- 回転数(振動数)と周期の関係: \(n = \frac{1}{T}\)
与えられた値 \(r=1.2 \text{ m}\), \(\omega=5.0 \text{ rad/s}\), \(\pi=3.14\) を用いて計算します。
周期 \(T\) の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2 \times 3.14}{5.0} \\[2.0ex]
&= \frac{6.28}{5.0} \\[2.0ex]
&= 1.256 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(T \approx 1.3 \text{ s}\)。
速さ \(v\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= 1.2 \times 5.0 \\[2.0ex]
&= 6.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
回転数 \(n\) の計算:
計算途中の \(T=1.256\) ではなく、分数 \(T=6.28/5.0\) の逆数をとるとより正確です。模範解答では \(1.25\) を使っています。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{1}{1.25} \\[2.0ex]
&= 0.80 \text{ [回/s]}
\end{aligned}
$$
よって、1秒間に0.80回転します。
円運動の性質を計算する問題です。
・「周期」は1周するのにかかる時間。角速度(1秒で進む角度)が分かっているので、「1周の角度(\(2\pi\)) ÷ 1秒で進む角度(\(\omega\))」で計算できます。
・「速さ」は、半径と角速度を掛け合わせる公式 \(v=r\omega\) で一発です。
・「1秒間の回転数」は、「周期(1回転の時間)」の逆数です。例えば、1回転に2秒かかるなら、1秒間には0.5回転します。
周期は約 \(1.3 \text{ s}\)、速さは \(6.0 \text{ m/s}\)、1秒あたりの回転数は \(0.80\) 回転です。すべての計算は基本的な公式に数値を代入するだけであり、妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
等速円運動における加速度の向きと大きさを求める問題です。等速円運動では、速さは一定ですが速度の向きが変わり続けるため、加速度が生じます。この加速度は「向心加速度」と呼ばれ、常に円の中心を向いています。
この設問における重要なポイント
- 加速度の向き: 常に円の中心を向く。
- 加速度の大きさの公式: \(a = r\omega^2\) または \(a = \frac{v^2}{r}\)。今回は \(r\) と \(\omega\) が与えられているので、前者が便利。
具体的な解説と立式
加速度の向き:
等速円運動の加速度(向心加速度)は、常に円の中心を向いています。
加速度の大きさ \(a\) の計算:
半径 \(r\) と角速度 \(\omega\) を用いて、公式 \(a = r\omega^2\) から計算します。
$$ a = r\omega^2 $$
使用した物理公式
- 向心加速度: \(a = r\omega^2 = \frac{v^2}{r}\)
与えられた値 \(r=1.2 \text{ m}\), \(\omega=5.0 \text{ rad/s}\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
a &= 1.2 \times (5.0)^2 \\[2.0ex]
&= 1.2 \times 25 \\[2.0ex]
&= 30 \text{ [m/s}^2\text{]}
\end{aligned}
$$
等速円運動では、物体は常に円の中心に向かって引っ張られ続けています。この「引っ張られる効果」が加速度です。したがって、加速度の向きは「円の中心向き」です。大きさは、公式 \(a = r\omega^2\) に半径と角速度の値を代入するだけで計算できます。
加速度の向きは円の中心に向かう向きで、大きさは \(30 \text{ m/s}^2\) です。公式に値を代入しただけなので、計算ミスがなければ問題ありません。
問(3)
思考の道筋とポイント
物体にはたらいている向心力の大きさを求める問題です。向心力は、(2)で求めた向心加速度を生じさせる原因となる力です。ニュートンの運動方程式 \(F=ma\) を使って計算します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: \(F=ma\)
- 向心力 \(F\) は、質量 \(m\) と向心加速度 \(a\) の積である。
具体的な解説と立式
向心力の大きさ \(F\) は、運動方程式 \(F=ma\) から求められます。
質量 \(m\) は問題文で与えられており、加速度 \(a\) は(2)で計算済みです。
$$ F = ma $$
(2)で求めた \(a = r\omega^2\) を代入すると、向心力の公式 \(F = mr\omega^2\) となります。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(F=ma\)
- 向心力: \(F = mr\omega^2 = m\frac{v^2}{r}\)
与えられた値 \(m=0.20 \text{ kg}\) と、(2)で求めた \(a=30 \text{ m/s}^2\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= 0.20 \times 30 \\[2.0ex]
&= 6.0 \text{ [N]}
\end{aligned}
$$
(2)で求めた加速度は、何らかの力が原因で生じています。この原因となる力が「向心力」です。物理学の基本法則である運動方程式 \(F=ma\)(力=質量×加速度)に、問題で与えられた質量と、(2)で計算した加速度の値を代入すれば、向心力の大きさが計算できます。
向心力の大きさは \(6.0 \text{ N}\) です。この問題では、糸が物体を引く張力が向心力の役割を果たしています。したがって、糸の張力の大きさも \(6.0 \text{ N}\) であることがわかります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 等速円運動の公式群:
- 核心: 等速円運動を記述する様々な物理量(周期\(T\)、回転数\(n\)、速さ\(v\)、角速度\(\omega\)、半径\(r\)、向心加速度\(a\)、向心力\(F\))の関係性を表す一連の公式を正確に記憶し、自在に使いこなせること。
- 理解のポイント: これらの公式は独立しているのではなく、互いに密接に関連しています。特に、角速度 \(\omega\) は多くの公式に登場する中心的な量です。例えば、\(v=r\omega\)、\(T=2\pi/\omega\)、\(a=r\omega^2\)、\(F=mr\omega^2\) のように、\(\omega\) が分かっていれば他の量を次々と導出できます。
- 運動方程式 (\(F=ma\)) の応用:
- 核心: 向心力は何か特別な種類の力ではなく、運動方程式 \(F=ma\) に基づいて計算される、円運動を引き起こす「合力」であると理解すること。
- 理解のポイント: (2)で向心加速度 \(a\) を求めた後、(3)で向心力 \(F\) を求める流れは、まさに運動方程式そのものです。円運動も、力学の基本法則である運動方程式に支配されている一例に過ぎない、という視点を持つことが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 与えられる情報が違う問題: 例えば、速さ \(v\) と周期 \(T\) が与えられて、角速度 \(\omega\) や向心力 \(F\) を求める問題。どの公式を使えば、手持ちの情報から目的の量にたどり着けるか、公式のネットワークを頭の中で描けるかが鍵になります。
- 人工衛星の円運動: 地球の万有引力が向心力の役割を果たす等速円運動。万有引力の法則と円運動の公式を組み合わせることで、衛星の速さや周期を計算できます。
- 荷電粒子のローレンツ力による円運動: 磁場中で荷電粒子が受けるローレンツ力が向心力となり、円運動をする問題。ローレンツ力の公式と円運動の公式を結びつけます。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた物理量の整理: まず、問題文から \(m, r, v, \omega, T, n\) などのうち、どの量が与えられているかをリストアップします。
- 求めたい物理量の確認: 次に、何を計算するよう求められているかを確認します。
- 公式の選択: 手持ちの情報とゴールを結びつける公式を選択します。例えば、「\(r\) と \(\omega\) が分かっていて \(v\) を知りたい」なら \(v=r\omega\) を、「\(m, v, r\) が分かっていて \(F\) を知りたい」なら \(F=m\frac{v^2}{r}\) を選択します。
- 単位の確認: 角速度の単位が rad/s であること、周期は s、速さは m/s であることなど、各物理量の標準的な単位を確認し、必要であれば換算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 角速度 \(\omega\) と速さ \(v\) の混同:
- 誤解: 角速度 \(\omega\) を速さ \(v\) と同じものだと勘違いし、公式を誤って適用する。
- 対策: \(\omega\) は「角度の速さ」(単位: rad/s)、\(v\) は「円周上の速さ」(単位: m/s)と、意味も単位も全く異なることを明確に区別する。両者の関係式 \(v=r\omega\) を正しく理解する。
- 周期 \(T\) と回転数 \(n\) の混同:
- 誤解: 周期(1回転あたりの時間)と回転数(1時間あたりの回転数)を取り違える。
- 対策: 両者が互いに逆数の関係 (\(n=1/T\)) にあることを覚える。「周期が長い」ほど「回転数は小さい」という直感的なイメージを持つと間違いにくい。
- 公式の覚え間違い:
- 誤解: 向心加速度の公式を \(a=r^2\omega\) や \(a=r\omega\) と間違える。向心力を \(F=m\frac{v}{r}\) などと間違える。
- 対策: 公式を丸暗記するだけでなく、次元(単位)をチェックする習慣をつける。例えば、加速度の単位は \(\text{m/s}^2\)。\(r\omega^2\) の単位は \(\text{m} \cdot (\text{rad/s})^2 = \text{m/s}^2\) となり一致するが、\(r\omega\) の単位は \(\text{m} \cdot \text{rad/s} = \text{m/s}\) で速さの単位であり、一致しない。このように次元解析で検算できる。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(T = 2\pi/\omega\):
- 選定理由: (1)で周期を求めるため。角速度 \(\omega\) から直接計算できる最も基本的な公式。
- 適用根拠: 周期 \(T\) は1回転(\(2\pi\) ラジアン)するのにかかる時間。角速度 \(\omega\) は1秒あたりに進む角度。したがって、「時間 = 角度 ÷ 角度の速さ」という関係から導かれる。
- \(v = r\omega\):
- 選定理由: (1)で速さを求めるため。角速度 \(\omega\) と半径 \(r\) から速さ \(v\) を求めるための定義式。
- 適用根拠: 1秒間に \(\omega\) ラジアン進むとき、円周上を進む弧の長さは \(r\omega\)。これが速さの定義にほかならない。
- \(a = r\omega^2\):
- 選定理由: (2)で加速度を求めるため。角速度 \(\omega\) と半径 \(r\) から直接計算できるため、\(v\) を経由する \(a=v^2/r\) よりも効率的。
- 適用根拠: 円運動する物体の速度ベクトルの時間変化を数学的に計算(微分)することで導出される、向心加速度の定義式の一つ。
- \(F = ma\):
- 選定理由: (3)で向心力を求めるため。質量 \(m\) と加速度 \(a\) が分かっている状況で、力を求めるための最も基本的な法則。
- 適用根拠: ニュートンの第二法則。円運動もこの法則に支配されており、向心加速度 \(a\) を生み出す原因が向心力 \(F\) であることを示している。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 有効数字の取り扱い: (1)の周期の計算では、\(\pi=3.14\) を使って \(1.256\) という結果が出ていますが、問題文の他の数値(0.20kg, 1.2m, 5.0rad/s)が2桁であるため、最終的な答えは2桁または3桁(この場合は1.3s)に丸めるのが適切です。計算の途中では多めの桁数を保持し、最後に丸めるのが基本です。
- 単位の確認: 計算結果に正しい単位(s, m/s, 回, m/s\(^2\), N)を付けることを忘れない。単位を付けることで、自分が何を計算したのかを再確認でき、ミスを防ぐことにもつながります。
- べき乗の計算: (2)の \(a=1.2 \times 5.0^2\) のような計算では、\(5.0^2 = 25\) を先に計算することを徹底する。\(1.2 \times 5.0\) を先に計算しないように注意する。
126 弾性力による等速円運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「弾性力による等速円運動」です。ばねの弾性力が向心力の役割を果たすことで、おもりが等速円運動をする状況を扱います。円運動の基本的な関係式と、ばねの弾性力に関するフックの法則を組み合わせて解くことが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 円運動の基本量: 周期(\(T\))、回転数(\(n\))、速さ(\(v\))、角速度(\(\omega\))、半径(\(r\))の関係を理解していること。特に、回転数から周期を、周期から角速度や速さを計算する流れが重要です。
- 向心力: 円運動を維持するために必要な中心向きの力。この問題では、ばねの弾性力がその役割を完全に担っています。
- フックの法則: ばねの弾性力の大きさは、ばねの自然長からの「伸び」に比例します (\(F=kx\))。ばねの全長ではない点に注意が必要です。
- 運動方程式: 円運動の運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\) を立て、向心力 \(F_{\text{向心}}\) を具体的な力(この場合は弾性力 \(kx\))で置き換えて立式します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、与えられた回転数から周期を求め、それを使っておもりの速さ \(v\) を計算します。
- 次に、円運動の運動方程式を立てます。向心力はばねの弾性力 \(kx\) です。
- 運動方程式に、(1)で求めた速さ \(v\) や、問題文で与えられた質量 \(m\)、半径 \(r\)、ばねの伸び \(x\) を代入し、ばね定数 \(k\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
おもりの速さを求める問題です。速さを計算するには、半径 \(r\) と角速度 \(\omega\)(または周期 \(T\))が必要です。問題文には「1秒間に2.0回転」という回転数 \(n\) が与えられているので、まずこれから周期 \(T\) を求め、それを使って速さ \(v\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 回転数 \(n\) と周期 \(T\) は逆数の関係: \(T = \frac{1}{n}\)。
- 速さ \(v\)、半径 \(r\)、周期 \(T\) の関係: \(v = \frac{2\pi r}{T}\)。これは「速さ = (円周の長さ) ÷ (1周にかかる時間)」という定義そのものです。
- 円運動の半径 \(r\) は、回転しているときのばねの長さ \(0.24 \text{ m}\) である。
具体的な解説と立式
周期 \(T\) の計算:
1秒間に \(n=2.0\) 回転するので、1回転にかかる時間(周期 \(T\))はその逆数となります。
$$ T = \frac{1}{n} $$
速さ \(v\) の計算:
周期 \(T\) と円運動の半径 \(r\) が分かれば、速さ \(v\) は公式 \(v = \frac{2\pi r}{T}\) から計算できます。
$$ v = \frac{2\pi r}{T} $$
あるいは、角速度 \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を経由して、\(v=r\omega\) から計算することもできます。
$$ v = r\omega = r \left( \frac{2\pi}{T} \right) $$
使用した物理公式
- 周期と回転数の関係: \(T = \frac{1}{n}\)
- 速さと周期の関係: \(v = \frac{2\pi r}{T}\)
与えられた値 \(n=2.0 \text{ 回/s}\), \(r=0.24 \text{ m}\), \(\pi=3.14\) を用いて計算します。
周期 \(T\) の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{2.0} \\[2.0ex]
&= 0.50 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
速さ \(v\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{2 \times 3.14 \times 0.24}{0.50} \\[2.0ex]
&= \frac{1.5072}{0.50} \\[2.0ex]
&= 3.0144 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めて、\(v \approx 3.0 \text{ m/s}\)。
まず、1秒間に2.0回転するという情報から、1回転にかかる時間(周期)を計算します。これは単純に逆数をとって \(1 \div 2.0 = 0.50\) 秒です。次に、速さを求めます。速さは「距離÷時間」なので、「円1周の長さ ÷ 1周にかかる時間」で計算できます。円1周の長さは \(2\pi r\)、1周にかかる時間は今求めた周期 \(T\) なので、これらを割り算すれば速さが求まります。
おもりの速さは約 \(3.0 \text{ m/s}\) です。与えられた情報から、円運動の基本公式を用いて順当に計算できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
ばね定数 \(k\) を求める問題です。この円運動では、ばねの弾性力が向心力の役割を果たしています。この関係を運動方程式として立て、値を代入することでばね定数 \(k\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 向心力は、ばねの弾性力である: \(F_{\text{向心}} = kx\)。
- ばねの「伸び」 \(x\) は、現在の長さから自然長を引いたもの: \(x = 0.24 – 0.20 = 0.04 \text{ m}\)。
- 円運動の運動方程式: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)。
具体的な解説と立式
おもりが等速円運動をするための向心力は、ばねの弾性力によって供給されています。
向心力の大きさは \(m\frac{v^2}{r}\) であり、弾性力の大きさはフックの法則より \(kx\) です。
したがって、以下の運動方程式が成り立ちます。
$$ m\frac{v^2}{r} = kx $$
この式に、問題文で与えられた値と(1)で求めた値を代入し、\(k\) について解きます。
- 質量: \(m = 0.50 \text{ kg}\)
- 速さ: \(v \approx 3.01 \text{ m/s}\) (有効数字を考慮し、丸める前の値を使う)
- 半径: \(r = 0.24 \text{ m}\)
- ばねの伸び: \(x = 0.24 – 0.20 = 0.04 \text{ m}\)
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)
- フックの法則: \(F = kx\)
運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = kx\) に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
0.50 \times \frac{(3.0144)^2}{0.24} &= k \times (0.24 – 0.20) \\[2.0ex]
0.50 \times \frac{9.0866}{0.24} &= k \times 0.04 \\[2.0ex]
0.50 \times 37.86 &\approx k \times 0.04 \\[2.0ex]
18.93 &\approx 0.04k \\[2.0ex]
k &\approx \frac{18.93}{0.04} \\[2.0ex]
k &\approx 473.25 \text{ [N/m]}
\end{aligned}
$$
模範解答では \(v=3.01\) を使っているため、
$$ 0.50 \times \frac{3.01^2}{0.24} = 0.50 \times \frac{9.0601}{0.24} \approx 18.875 $$
$$ k = \frac{18.875}{0.04} = 471.875 \text{ [N/m]} $$
有効数字2桁に丸めて、\(k \approx 4.7 \times 10^2 \text{ N/m}\)。
おもりが円運動を続けるためには、中心に向かって常に引っ張られている必要があります。この「引っ張る力(向心力)」の正体は、この問題では「ばねが伸びて元に戻ろうとする力(弾性力)」です。つまり、「向心力 = 弾性力」という関係が成り立っています。この等式に、それぞれの力の公式(向心力は \(m\frac{v^2}{r}\)、弾性力は \(kx\))を当てはめ、数値を代入して計算すると、未知数であるばね定数 \(k\) が求まります。
ばね定数は約 \(4.7 \times 10^2 \text{ N/m}\) です。計算過程は、物理法則を正しく立式し、値を代入するものであり、妥当です。計算途中で値を丸めると誤差が大きくなるため、可能な限り最後の段階で有効数字を考慮するのが望ましいです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動方程式と力の法則の組み合わせ:
- 核心: この問題は、円運動の運動方程式 (\(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)) という運動の法則と、フックの法則 (\(F=kx\)) という力の法則を結びつけて解く、物理学の典型的な問題構造をしています。
- 理解のポイント: 運動方程式の右辺 \(F_{\text{向心}}\) は、その場ではたらいている具体的な力(この場合は弾性力)に置き換えることができます。このように、異なる物理法則を「力」を仲介役として連結させる思考法が非常に重要です。
- 向心力の正体の特定:
- 核心: 円運動の問題を解く上で、「向心力として働いているのは、どの力なのか?」を正確に特定することが第一歩です。
- 理解のポイント: 向心力は独立した力ではなく、常に何らかの実在する力(または力の合力)がその役割を担っています。この問題では、ばねの弾性力が100%向心力の役割を果たしています。他の例では、糸の張力、万有引力、静止摩擦力、垂直抗力と重力の合力などが向心力となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 円錐振り子: 重力と糸の張力の「合力」が向心力の役割を果たす問題。力を水平・鉛直に分解して考える必要があります。
- 回転する円盤上の物体: 物体と円盤の間の「静止摩擦力」が向心力の役割を果たす問題。角速度を上げていくと、必要な向心力が最大静止摩擦力を超えた瞬間に滑り出す、という限界条件を問われます。
- バンク付きカーブを曲がる自動車: 自動車にはたらく「垂直抗力と重力の合力」および「静止摩擦力」が向心力の役割を果たす問題。力の分解が鍵となります。
- 初見の問題での着眼点:
- 向心力の源泉を探す: まず、物体を円運動させている力の源は何か(張力か、弾性力か、摩擦力か、それらの合力か)を特定します。
- 円運動のパラメータを計算する: 問題で与えられた情報(回転数、周期、角速度など)から、運動方程式を立てるのに必要なパラメータ(速さ\(v\)や角速度\(\omega\))を計算します。
- 運動方程式を立てる: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\) または \(mr\omega^2 = F_{\text{向心}}\) の形で運動方程式を立てます。
- 力の法則を代入する: 右辺の \(F_{\text{向心}}\) を、ステップ1で特定した力の具体的な式(例: \(kx\), \(\mu N\) など)に置き換えます。
- 未知数を解く: 立てた方程式を、求めたい未知数について解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ばねの「長さ」と「伸び」の混同:
- 誤解: フックの法則 \(F=kx\) の \(x\) に、ばねの全長 \(0.24 \text{ m}\) を代入してしまう。
- 対策: \(x\) は常に「自然長からの伸びまたは縮み」であると徹底して覚える。問題文に「自然長」と「現在の長さ」の両方が書かれていたら、必ず引き算をして「伸び」を計算するステップを忘れないようにする。
- 円運動の半径 \(r\) の間違い:
- 誤解: 運動方程式の \(r\) に、ばねの自然長 \(0.20 \text{ m}\) を代入してしまう。
- 対策: \(r\) は「実際の円運動の半径」です。ばねが伸びて回転しているので、その回転半径は伸びた後のばねの長さ \(0.24 \text{ m}\) となります。常に物体がどの半径の円周上を運動しているかを正確に把握することが重要です。
- 計算の順序ミス:
- 誤解: ばね定数を求める前に速さを計算する必要があるのに、どの情報から手をつければよいか分からなくなる。
- 対策: 問題で問われていることを確認し、それを計算するために何が必要かを逆算する。「ばね定数 \(k\) を知りたい」→「運動方程式を立てる必要がある」→「そのためには速さ \(v\) が必要」→「速さ \(v\) を知るには周期 \(T\) が必要」→「周期 \(T\) は回転数 \(n\) からわかる」というように、思考の連鎖を組み立てる練習をする。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(T = 1/n\):
- 選定理由: 問題文で与えられた「回転数」から、他の計算に必要な「周期」を求めるための変換式として使用。
- 適用根拠: 周期と回転数(振動数)の定義そのものから導かれる、基本的な関係式です。
- \(v = 2\pi r / T\):
- 選定理由: 周期 \(T\) と半径 \(r\) が分かっている状況で、速さ \(v\) を求めるため。
- 適用根拠: 「速さ = 距離 ÷ 時間」という定義に基づき、円運動の1周分に適用したものです(距離 = 円周 \(2\pi r\)、時間 = 周期 \(T\))。
- \(m\frac{v^2}{r} = kx\):
- 選定理由: この問題の物理的状況そのものを表す中心的な方程式。未知数であるばね定数 \(k\) を、他の既知の量と結びつけるために不可欠。
- 適用根拠: これは2つの法則の組み合わせです。左辺は「円運動をする物体に必要な向心力」を表す運動方程式の一部。右辺は「ばねが及ぼす弾性力」を表すフックの法則。この円運動では弾性力が向心力の役割を担っているため、この2つを等号で結ぶことができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 計算途中での丸めを避ける: 模範解答では \(v=3.01\) と途中で丸めた値を使っていますが、可能であれば分数の形やより多くの桁数を保持したまま次の計算に進む方が、最終的な結果の精度が高まります。例えば、\(v = 1.5072 / 0.50\) のまま \(v^2\) を計算するなど。
- 単位の一貫性を確認する: 計算に使用するすべての物理量の単位が、基本的な単位系(この場合はMKS単位系:メートル、キログラム、秒)に揃っているかを確認する。自然長や半径がcmで与えられていたら、mに直してから計算する。
- 最終的な答えの桁数: 問題文で与えられている数値の有効数字(この場合は2桁)に合わせるのが基本です。\(k=471.8\dots\) と計算できても、最終的には \(4.7 \times 10^2\) のように整理して答える。
127 張力による等速円運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「円錐振り子」です。糸につながれたおもりが水平面内で等速円運動する状況を扱います。重力と糸の張力の合力が向心力となる、円運動の典型的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 静止系での円運動の解析: 地上から見た立場(静止系)で、おもりにはたらく力をすべて描き出し、運動方程式を立てるのが基本です。
- 力の分解: 糸の張力を水平成分と鉛直成分に分解します。このとき、鉛直成分は重力とつりあい、水平成分が向心力の役割を果たします。
- 向心力: 円運動の中心向きにはたらく力の合力のこと。この問題では、張力の水平成分が向心力となります。
- 幾何学的関係: 糸の長さ \(L\)、円運動の半径 \(r\)、振り子の鉛直からの角度 \(\theta\) の間には、\(\sin\theta = r/L\) や \(\cos\theta = \sqrt{L^2-r^2}/L\) といった三角比の関係が成り立ちます。
- 限界条件: (3)のように「糸が切れないため」という条件は、張力 \(T\) が、与えられた最大値(この場合は \(3mg\))を超えない、という不等式で表されます (\(T \le 3mg\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、おもりにはたらく実在の力をリストアップします。
- (2)では、与えられた半径 \(r\) から角度 \(\theta\) を特定し、力のつりあい(鉛直方向)と運動方程式(水平方向)を連立させて角速度 \(\omega\) を求めます。
- (3)では、まず任意の半径 \(r\) での張力 \(T\) を文字式で表し、その \(T\) が限界値 \(3mg\) 以下であるという不等式を立てて、\(r\) の範囲を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
静止した地上から見たときに、おもりにはたらいている「実際の力」をすべて挙げる問題です。向心力はこれらの力の合力によって生み出されるものであり、独立した力として数えない点に注意します。
この設問における重要なポイント
- 物体に実際に触れているものから受ける力(接触力)と、離れていてもはたらく力(重力)を考える。
- 向心力は力の「役割名」であり、力の種類ではない。
具体的な解説と立式
おもりにはたらく力を考えます。
- 地球がおもりを引く力:重力
- 糸がおもりを引く力:張力
これ以外に、おもりにはたらいている力はありません(空気抵抗は無視)。したがって、地上から見たときにはたらく力は重力と張力の2つです。
使用した物理公式
- 力の種類に関する基本的な知識
この設問は知識を問うものであり、計算は不要です。
おもりの周りを見渡して、何がおもりに力を及ぼしているかを考えます。まず、地球が常に下向きに引っ張っています(重力)。次に、糸がおもりを斜め上に引っ張っています(張力)。これ以外におもりにはたらく力はありません。
地上から見たとき、おもりにはたらく力は「重力」と「張力」です。
問(2)
思考の道筋とポイント
円運動の半径 \(r\) が特定の値のときの角速度 \(\omega\) を求める問題です。まず、与えられた半径 \(r\) と糸の長さ \(L\) から、糸が鉛直線となす角 \(\theta\) を特定します。次に、おもりにはたらく力のつりあい(鉛直方向)と運動方程式(水平方向)を立て、これらを連立して \(\omega\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 幾何学的関係: \(\sin\theta = r/L\) から角度 \(\theta\) を求める。
- 力の分解: 張力 \(T\) を鉛直成分 \(T\cos\theta\) と水平成分 \(T\sin\theta\) に分解する。
- 鉛直方向の力のつりあい: \(T\cos\theta = mg\)。
- 水平方向の運動方程式: \(mr\omega^2 = T\sin\theta\)。
具体的な解説と立式
半径 \(r = \frac{\sqrt{3}}{2}L\) のとき、\(\sin\theta = \frac{r}{L} = \frac{\sqrt{3}}{2}\) となるので、\(\theta=60^\circ\) です。
おもりにはたらく張力を \(T\) とすると、
鉛直方向の力のつりあい:
$$ T\cos60^\circ – mg = 0 \quad \cdots ① $$
水平方向の運動方程式:
向心力は張力の水平成分 \(T\sin60^\circ\) なので、
$$ mr\omega^2 = T\sin60^\circ \quad \cdots ② $$
この2式から \(T\) を消去して \(\omega\) を求めます。
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(\sum F_y = 0\)
- 円運動の運動方程式: \(mr\omega^2 = F_{\text{向心}}\)
- 三角比
①式より、\(T = \frac{mg}{\cos60^\circ} = \frac{mg}{1/2} = 2mg\)。
これを②式に代入します。
$$
\begin{aligned}
m \left( \frac{\sqrt{3}}{2}L \right) \omega^2 &= (2mg) \sin60^\circ \\[2.0ex]
m \frac{\sqrt{3}}{2}L \omega^2 &= 2mg \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]
\frac{1}{2}mL\omega^2 &= mg
\end{aligned}
$$
両辺の \(m\) を消去し、\(\omega^2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{2g}{L} \\[2.0ex]
\omega &= \sqrt{\frac{2g}{L}}
\end{aligned}
$$
②式を①式で割ることで \(T\) を消去します。
$$ \frac{mr\omega^2}{mg} = \frac{T\sin\theta}{T\cos\theta} $$
$$
\begin{aligned}
\frac{r\omega^2}{g} &= \tan\theta \\[2.0ex]
\omega^2 &= \frac{g\tan\theta}{r}
\end{aligned}
$$
ここに \(\theta=60^\circ\), \(r=\frac{\sqrt{3}}{2}L\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{g\tan60^\circ}{\frac{\sqrt{3}}{2}L} \\[2.0ex]
&= \frac{g\sqrt{3}}{\frac{\sqrt{3}}{2}L} \\[2.0ex]
&= \frac{2g}{L}
\end{aligned}
$$
よって、\(\omega = \sqrt{\frac{2g}{L}}\)。
おもりが安定して円運動しているとき、力はバランスが取れています。具体的には、「上下方向」と「水平方向」の2つの視点で見ます。「上下方向」では、張力の上向き成分が重力とつりあっています。「水平方向」では、張力の水平成分が、おもりを円の内側に引き留める向心力として働いています。この2つの関係式を立て、連立方程式として解くことで、角速度 \(\omega\) が計算できます。
角速度 \(\omega\) は \(\sqrt{\frac{2g}{L}}\) です。この結果は質量 \(m\) に依存しないことがわかります。これは、重力も向心力も質量 \(m\) に比例するため、式を整理する過程で \(m\) が相殺されるためです。
問(3)
思考の道筋とポイント
糸が切れないための円運動の半径 \(r\) の範囲を求める問題です。まず、任意の半径 \(r\) と糸の長さ \(L\) で運動しているときの張力 \(T\) を、文字式で表現します。次に、その張力 \(T\) が、糸が耐えられる最大の力 \(3mg\) 以下であるという不等式を立て、それを \(r\) について解きます。
この設問における重要なポイント
- 張力 \(T\) を半径 \(r\) の関数として表す。
- 糸が切れない条件は \(T \le 3mg\)。
- 幾何学的関係 \(\cos\theta = \frac{\sqrt{L^2-r^2}}{L}\) を利用する。
具体的な解説と立式
任意の半径 \(r\) で円運動しているとき、糸と鉛直線のなす角を \(\theta\) とします。
鉛直方向の力のつりあいは、常に成り立っています。
$$ T\cos\theta = mg $$
ここから、張力 \(T\) は \(T = \frac{mg}{\cos\theta}\) と表せます。
図の直角三角形より、\(\cos\theta = \frac{\sqrt{L^2-r^2}}{L}\) なので、これを代入すると、
$$ T = \frac{mg}{\frac{\sqrt{L^2-r^2}}{L}} = \frac{mgL}{\sqrt{L^2-r^2}} $$
糸が切れないための条件は \(T \le 3mg\) なので、
$$ \frac{mgL}{\sqrt{L^2-r^2}} \le 3mg $$
この不等式を \(r\) について解きます。
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(T\cos\theta = mg\)
- 三平方の定理(幾何学的関係)
$$
\begin{aligned}
\frac{mgL}{\sqrt{L^2-r^2}} &\le 3mg \\[2.0ex]
\frac{L}{\sqrt{L^2-r^2}} &\le 3 \quad (\text{両辺を } mg > 0 \text{ で割る}) \\[2.0ex]
L &\le 3\sqrt{L^2-r^2} \quad (\text{分母を払う}) \\[2.0ex]
L^2 &\le 9(L^2-r^2) \quad (\text{両辺を2乗する}) \\[2.0ex]
L^2 &\le 9L^2 – 9r^2 \\[2.0ex]
9r^2 &\le 8L^2 \\[2.0ex]
r^2 &\le \frac{8}{9}L^2 \\[2.0ex]
r &\le \sqrt{\frac{8}{9}L^2} = \frac{2\sqrt{2}}{3}L
\end{aligned}
$$
また、半径 \(r\) は正の値なので \(r>0\)。したがって、\(0 < r \le \frac{2\sqrt{2}}{3}L\)。模範解答では下限を省略しています。
回転が速くなる(半径 \(r\) が大きくなる)ほど、糸にかかる張力は大きくなります。この張力が、糸が耐えられる限界(重りの重さの3倍)を超えると糸は切れてしまいます。そこでまず、半径 \(r\) がいくつのときに張力がいくつになるか、という関係式を作ります。次に、その張力が「\(3mg\) 以下」になるような不等式を立て、それを解くことで、糸が切れないで済む半径 \(r\) の範囲を求めることができます。
糸が切れないためには、半径 \(r\) は \(\frac{2\sqrt{2}}{3}L\) 以下である必要があります。半径が大きくなるほど(回転が速くなるほど)張力が大きくなるという物理的な直感とも一致する妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 円運動の力学(静止系):
- 核心: 円錐振り子の運動は、静止系(地上)から見て、おもりにはたらく「重力」と「張力」の合力が、円運動の中心に向かう「向心力」の役割を果たしている、と理解することが基本です。
- 理解のポイント: この視点に立つと、問題を「鉛直方向の力のつりあい」と「水平方向の運動方程式」という2つの独立した式に分解して考えることができます。この2式を連立させることが、円錐振り子を解くための王道パターンです。
- 幾何学と物理法則の融合:
- 核心: 糸の長さ \(L\)、円運動の半径 \(r\)、糸の傾き \(\theta\) の間にある幾何学的な関係(三角比)を、力のつりあいや運動方程式といった物理法則の中に正しく組み込む能力が問われます。
- 理解のポイント: \(r = L\sin\theta\) や \(\cos\theta = \sqrt{L^2-r^2}/L\) といった関係は、物理現象を数式に落とし込む際の「翻訳ルール」のようなものです。これらを自在に使いこなすことで、問われている変数(例えば(3)の \(r\))で式を表現し直すことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 回転数を上げたときの角度変化: 回転数を徐々に上げていくと、おもりはより外側に振れ、角度 \(\theta\) が大きくなる。角速度 \(\omega\) と角度 \(\theta\) の関係式を導出する問題。
- 非等速円運動(振り子)との比較: 円錐振り子は「等速」円運動ですが、単なる振り子は鉛直面内で「非等速」な円運動(単振動の近似)をします。力のつりあいの考え方は似ていますが、運動方程式の立て方やエネルギー保存則の適用の有無が異なります。この違いを意識することが重要です。
- 遠心力を用いた解法: この問題は、おもりと一緒に回転する視点(回転系)に立ち、「重力」「張力」「遠心力」の3つの力のつりあいとして解くこともできます。特に力の関係性を直感的に捉えたい場合に有効な視点です。
- 初見の問題での着眼点:
- 力の作図と分解: まず、おもりにはたらく力(重力、張力)を正確に作図します。次に、張力を水平成分と鉛直成分に分解します。これが解析の出発点です。
- 2つの基本式を立てる:
- 鉛直方向: \(T\cos\theta = mg\) (力のつりあい)
- 水平方向: \(mr\omega^2 = T\sin\theta\) (運動方程式)
この2つの式を立てることを常に目標とします。
- 幾何学的関係の利用: 問題で与えられている変数(\(r, L\) など)と、式を立てるのに使った変数(\(\theta\))を関係づける三角比の式を準備します。
- 条件式の立式: 「糸が切れない」「床から浮き上がる」などの限界条件が問われたら、それを不等式(例: \(T \le T_{\text{max}}\))で表現し、これまで立てた式と組み合わせて解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 向心力と張力の混同:
- 誤解: 向心力を張力 \(T\) そのものだと勘違いし、\(mr\omega^2 = T\) という式を立ててしまう。
- 対策: 向心力は、あくまでも中心方向の「力の合力」です。この問題では、張力 \(T\) の「水平成分」 \(T\sin\theta\) が向心力です。必ず力を分解して、水平方向の成分だけを取り出すことを徹底する。
- 三角関数の選択ミス:
- 誤解: (2)で \(r=\frac{\sqrt{3}}{2}L\) から \(\cos\theta = \sqrt{3}/2\) (\(\theta=30^\circ\)) と勘違いする。また、(3)で \(\cos\theta\) を求める際に、三平方の定理の分子と分母を逆にしたり、ルートを忘れたりする。
- 対策: 必ず「どの辺が斜辺で、どの辺が対辺・隣辺か」を図で確認する習慣をつける。\(\sin\theta = r/L\) は基本として覚え、\(\cos\theta\) や \(\tan\theta\) はそこから導出できるようにしておく。
- 不等式の変形ミス:
- 誤解: (3)で不等式を解く際に、分母を払った後の2乗計算や、移項、平方根をとる過程でミスをする。
- 対策: 不等式の変形は、等式の場合よりも慎重に行う。特に、負の数を掛けたり割ったりするときの不等号の向きの反転(この問題では発生しない)や、2乗する際の同値性(両辺が正であることを確認)に注意する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 力のつりあい (\(T\cos\theta = mg\)):
- 選定理由: おもりは水平面内で運動しており、上下方向には動かない(加速度が0)ため。
- 適用根拠: 運動方程式 \(ma_y = F_y\) において、鉛直方向の加速度 \(a_y=0\) なので、鉛直方向の力の合力 \(F_y\) は0になります。
- 円運動の運動方程式 (\(mr\omega^2 = T\sin\theta\)):
- 選定理由: おもりは水平面内で円運動という加速度運動をしているため。
- 適用根拠: 運動方程式 \(ma_x = F_x\) において、水平方向(中心向き)の加速度は向心加速度 \(a_x = r\omega^2\) であり、水平方向の力の合力は \(F_x = T\sin\theta\) であるため、これらを等号で結びます。
- 限界条件の不等式 (\(T \le 3mg\)):
- 選定理由: (3)で「糸が切れないため」という物理的な制約を数式で表現するため。
- 適用根拠: 問題文で与えられた、糸が耐えうる張力の最大値に関する条件そのものです。この条件と、物理法則から導かれた \(T\) の関係式を組み合わせることで、運動が成立する範囲を特定できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 連立方程式の効率的な解法: (2)で \(\omega\) を求める際、2式を割り算して \(T\) を消去すると、計算が速く、間違いも減ります。(\(\frac{mr\omega^2}{mg} = \frac{T\sin\theta}{T\cos\theta}\) より \(\frac{r\omega^2}{g} = \tan\theta\))この式は円錐振り子の基本関係式として覚えておくと便利です。
- 文字式のまま計算する: (3)のように、具体的な数値を代入するのではなく、文字(\(r, L, m, g\))のまま計算を進めることで、物理的な関係性を見失いにくく、また計算ミスも減らせます。
- 最終結果の吟味: (3)で得られた \(r \le \frac{2\sqrt{2}}{3}L\) という結果について、\(\frac{2\sqrt{2}}{3} \approx \frac{2 \times 1.41}{3} \approx 0.94\) なので、半径 \(r\) は糸の長さ \(L\) よりは必ず小さくなる、という物理的に当たり前の条件を満たしていることを確認できます。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]