Step 2
350 非直線抵抗
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「非線形抵抗(非オーム抵抗)を含む回路の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 非線形抵抗: 電球のように、かかる電圧によって抵抗値が変化し、電圧と電流が比例関係にならない(オームの法則に従わない)回路素子です。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路全体の電圧の関係を立てるための基本法則です。非線形抵抗を含む回路でも、この法則は常に成り立ちます。
- グラフを用いた解法: 非線形抵抗を含む回路は、単純な代数計算で解くことが困難な場合が多いため、グラフを用いて視覚的に解を求めます。
- 負荷線: 回路のうち、非線形抵抗以外の部分(この問題では電源と線形抵抗)が、非線形抵抗に対して課す電圧と電流の関係を表す直線のことです。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、図2の回路全体についてキルヒホッフの第2法則を適用し、回路を流れる電流\(I\)と電球1個にかかる電圧\(V\)の関係式を導出します。
- 次に、この関係式が表す直線(負荷線)を、図1の電球の特性グラフ上に描き加えます。
- 電球の特性曲線と負荷線の交点が、この回路で実際に成立する電流と電圧の値(動作点)を示します。この交点の電流値を読み取ることが最終的な答えとなります。
思考の道筋とポイント
この問題の核心は、電球がオームの法則に従わない「非線形抵抗」であるという点です。抵抗値が電圧によって変化するため、回路方程式を代数的に解くことができません。
そこで、この問題を解くためには、以下の2つの条件を同時に満たす電流\(I\)と電圧\(V\)の組み合わせを見つける必要があります。
- 電球自身の特性:電球にかかる電圧\(V\)と流れる電流\(I\)の関係は、図1のグラフ(特性曲線)に従う。
- 回路の制約:電源と5.0Ωの抵抗が、電球に対して課す電圧と電流の関係。これはキルヒホッフの第2法則から導かれる直線の方程式(負荷線)で表される。
この2つの条件をグラフ上で表現し、その「交点」を探すことで、両方の条件を同時に満たす解(回路の動作点)を求める、という図的解法を用いるのが定石です。
この設問における重要なポイント
- 電球がオームの法則に従わない非線形抵抗であることを理解する。
- キルヒホッフの第2法則を用いて、回路の線形部分が作る関係式(負荷線の方程式)を正しく立式する。
- 負荷線をグラフに正確にプロットし、特性曲線との交点を求める。
具体的な解説と立式
回路を流れる電流の強さを\(I \text{ [A]}\)、このとき電球1個にかかる電圧を\(V \text{ [V]}\)とします。
図2の回路は、電源、5.0Ωの抵抗、2個の電球がすべて直列に接続されています。この閉回路に対して、キルヒホッフの第2法則を適用します。
電源の電圧(起電力)は、回路内の各素子での電圧降下の総和に等しくなります。
- 電源の電圧: \(E = 5.0 \, \text{V}\)
- 5.0Ωの抵抗での電圧降下: \(V_R = 5.0 \times I\)
- 電球2個での電圧降下: 2個の電球は同じもので、直列に接続されているため、それぞれに電圧\(V\)がかかります。よって、合計の電圧降下は \(V + V = 2V\) となります。
したがって、キルヒホッフの第2法則より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ E = V_R + 2V $$
数値を代入すると、
$$ 5.0 = 5.0 I + 2V $$
この式が、回路の制約条件を表す関係式(負荷線の方程式)となります。
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): 閉回路において、起電力の和は電圧降下の和に等しい。
- オームの法則(抵抗部分について): \(V = RI\)
「具体的な解説と立式」で立てた関係式 \(5.0 = 5.0 I + 2V\) を、図1のグラフ(縦軸が\(I\)、横軸が\(V\))に描き込めるように、\(I\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
5.0 I &= 5.0 – 2V \\[2.0ex]
I &= \frac{5.0 – 2V}{5.0} \\[2.0ex]
I &= 1.0 – 0.40V
\end{aligned}
$$
この直線(負荷線)をグラフに描くために、直線が通る2点を求めます。
- もし \(V=0\) ならば、\(I = 1.0 – 0 = 1.0 \, \text{[A]}\)。よって、点(\(0 \text{ V}, 1.0 \text{ A}\))を通る。
- もし \(I=0\) ならば、\(0 = 1.0 – 0.40V\)。これを解くと \(0.40V = 1.0\)、よって \(V = \displaystyle\frac{1.0}{0.40} = 2.5 \, \text{[V]}\)。よって、点(\(2.5 \text{ V}, 0 \text{ A}\))を通る。
この2点を結ぶ直線を、図1のグラフに描き加えます。
描いた直線と、もともとある電球の特性曲線との交点の座標を読み取ります。
グラフから、交点は \(V=1.5 \, \text{V}\), \(I=0.40 \, \text{A}\) であることがわかります。
したがって、この回路を流れる電流の強さは \(0.40 \, \text{A}\) です。
この問題の電球は、普通の抵抗と違って、かかる電圧によって性質が変わる気まぐれな部品です。そのため、単純な計算式一発では答えが出せません。そこで、「グラフ」を使って答えを見つける作戦をとります。
まず、回路全体の関係を式にしてみます。電源の5.0Vは、「5.0Ωの抵抗」と「2つの電球」で分け合われます。この関係を式にすると、\(I = 1.0 – 0.40V\) となります。これは、電球がどんな性質であろうと、この回路である限り必ず守らなければならない「回路のルール」です。
一方で、電球には図1のグラフで示される「電球のルール」があります。
実際に回路で流れる電流と電圧は、この「回路のルール」と「電球のルール」を同時に満たす点でなければなりません。
そこで、「回路のルール」を表す直線を、図1のグラフに描き加えます。すると、直線と曲線が1点で交わります。この交点こそが、2つのルールを同時に満たす唯一の点です。その点の電流の値(縦軸の値)を読み取ると、\(0.40 \, \text{A}\) となっています。これが求める答えです。
回路を流れる電流の強さは \(0.40 \, \text{A}\) です。
この結果が正しいか検算してみましょう。
もし電流が \(0.40 \, \text{A}\) ならば、
- 5.0Ωの抵抗にかかる電圧は、\(V_R = 5.0 \, \Omega \times 0.40 \, \text{A} = 2.0 \, \text{V}\)。
- グラフの交点から、このとき電球1個にかかる電圧は \(V = 1.5 \, \text{V}\)。
- 回路全体の電圧降下の合計は、\(V_R + 2V = 2.0 \, \text{V} + 2 \times 1.5 \, \text{V} = 2.0 \, \text{V} + 3.0 \, \text{V} = 5.0 \, \text{V}\)。
これは電源の電圧 \(5.0 \, \text{V}\) とぴったり一致します。したがって、求めた解は正しいことが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 非線形抵抗の理解:
- 核心: この問題の最大のポイントは、電球がオームの法則 (\(V=RI\) で \(R\) が一定) に従わない「非線形抵抗」であると認識することです。電圧と電流の関係が、図1のような曲線で与えられます。
- 理解のポイント: 非線形抵抗を含む回路は、単純な代数計算だけでは解けません。なぜなら、抵抗値\(R\)が電圧\(V\)や電流\(I\)によって変わるため、未知数が多くなりすぎるからです。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):
- 核心: 回路がどんな素子を含んでいても、閉回路を一周したときの電圧の関係(起電力の和 = 電圧降下の和)は常に成り立ちます。これは、非線形抵抗を含む回路を解析するための出発点となります。
- 理解のポイント: この法則を使って、回路の線形部分(電源と5.0Ωの抵抗)が非線形部分(電球)に課す制約条件を数式化します。
- グラフを用いた図的解法:
- 核心: 「非線形抵抗の特性(グラフ)」と「回路の制約(キルヒホッフの法則から導かれる直線)」という2つの条件を同時に満たす点、すなわちグラフの交点が、回路の実際の動作点(解)になるという考え方。
- 理解のポイント: この交点の座標 (\(V, I\)) が、実際に電球にかかる電圧と回路に流れる電流を表します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ダイオードを含む回路: ダイオードも代表的な非線形抵抗素子であり、その特性曲線と負荷線の交点を求める問題は頻出です。
- 並列接続された非線形抵抗: 電球が並列に接続されている場合。キルヒホッフの第1法則(電流則)も併用して負荷線を立式する必要があります。
- 複数の解を持つ回路: 特性曲線と負荷線が複数点で交わる場合、回路は複数の安定した動作点を持ちうることになります。
- 初見の問題での着眼点:
- 素子の特性を確認: 問題に電圧-電流のグラフが与えられていたら、それは「非線形抵抗」のサインです。グラフを使わないと解けない可能性が高いと判断します。
- 回路方程式を立てる: 非線形抵抗素子(この問題では電球2個)をひとまとまりの「未知の素子」と見なし、それ以外の部分についてキルヒホッフの法則を適用します。
- 負荷線を引く準備: 立てた回路方程式を、グラフの軸に合わせて変形します。図1は縦軸が\(I\)、横軸が\(V\)なので、式を「\(I = \dots\)…」の形に変形するのが親切です。
- 切片を探す: 負荷線(直線)をグラフに描くには、2点あれば十分です。計算が最も簡単な「縦軸との交点(\(V=0\)の点)」と「横軸との交点(\(I=0\)の点)」を求め、その2点を結びます。
- 交点を慎重に読み取る: 描いた直線と元の曲線の交点の座標を、目盛りを間違えないように正確に読み取ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電球をオームの法則で扱おうとする:
- 誤解: グラフの特定の点から抵抗値 \(R=V/I\) を計算し、その値を回路計算で使おうとする。しかし、電球の抵抗値は動作点によって変わるため、この方法は使えません。
- 対策: 「グラフが与えられた非線形素子は、グラフそのものが特性を表す」と割り切り、代数計算で解こうとしないこと。
- 電球2個分の電圧降下を忘れる:
- 誤解: キルヒホッフの法則を立てる際に、電圧降下を \(5.0I + V\) と計算してしまう。
- 対策: 回路図をよく見て、電球が2個直列に接続されていることを確認する。直列接続なので、電圧降下は2倍の \(2V\) となります。
- 負荷線の式変形ミス:
- 誤解: \(5.0 = 5.0I + 2V\) を \(I\) について解く際に、\(I = 1.0 + 0.40V\) のように符号を間違える。
- 対策: 移項や割り算は、一行ずつ丁寧に行う。\(5.0I = 5.0 – 2V\) のように、まずは求めたい項を左辺にまとめてから、係数で割る手順を踏むとミスが減ります。
- グラフの軸の取り違え:
- 誤解: 負荷線の切片をプロットする際に、縦軸と横軸を逆にしてしまう。
- 対策: \(I\)切片は縦軸(電流軸)に、\(V\)切片は横軸(電圧軸)に点を打つことを、指差し確認するなどして徹底する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):
- 選定理由: この問題では、電源、線形抵抗、非線形抵抗が混在する閉回路を扱っています。このような回路全体の電圧のバランスを記述できる普遍的な法則がキルヒホッフの第2法則です。
- 適用根拠: エネルギー保存則に基づき、回路を一周したときの電位の増減の合計はゼロになります。電源による電位の上昇(起電力)と、各抵抗素子による電位の下降(電圧降下)が釣り合っている、という物理的状況を数式で表現するために選択します。この法則から導かれる「負荷線」は、電源側から見た「電流を流せば流すほど、供給できる電圧はこれだけ下がりますよ」という関係を示しており、非線形素子の特性と連立させることで解を求めることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 検算の徹底:
- 解として求めた交点の座標 (\(I=0.40 \, \text{A}, V=1.5 \, \text{V}\)) が、負荷線の方程式 \(5.0 = 5.0I + 2V\) を満たすか確認します。
- 右辺 = \(5.0 \times 0.40 + 2 \times 1.5 = 2.0 + 3.0 = 5.0\)。
- 左辺の電源電圧 \(5.0 \, \text{V}\) と一致するので、計算は正しいと確信できます。
- グラフのプロットを丁寧に行う:
- フリーハンドではなく、定規を使って負荷線を引くことで、交点の読み取り精度が上がります。
- 切片の座標をグラフの余白にメモしておくと、プロットミスを防げます。(例: \(I\)切片 1.0A, \(V\)切片 2.5V)
- 単位の確認: グラフの軸や問題文中の数値の単位(V, A, Ω)を常に意識することで、立式ミスを防ぎます。
351 キルヒホッフの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「キルヒホッフの法則を用いた複雑な直流回路の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の任意の分岐点において、流れ込む電流の総和と流れ出す電流の総和は等しいという法則です。これは電荷量保存則に基づいています。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路の任意の閉じたループ(閉回路)において、起電力の総和と電圧降下の総和は等しいという法則です。これはエネルギー保存則に基づいています。
- 連立方程式の立式と解法: 未知の電流が複数ある場合、未知数の数だけ独立した方程式を立て、連立方程式として解く必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、3つの抵抗を流れる電流をそれぞれ未知数(\(I_1, I_2, I_3\))として設定します。次に、キルヒホッフの第1法則を1つの分岐点に、第2法則を2つの独立な閉回路に適用して、合計3本の連立方程式を立てて解きます。
- (2)では、抵抗\(R_3\)を流れる電流が0という条件(\(I_3=0\))を最初に適用します。これにより回路が単純化されるため、その状態でキルヒホッフの法則を再度適用し、未知数となった抵抗\(R_1\)の値を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
この回路は複数の電源と抵抗が複雑に接続されているため、オームの法則だけでは解けません。キルヒホッフの法則を用いて解く必要があります。
未知数は、抵抗\(R_1, R_2, R_3\)を流れる電流\(I_1, I_2, I_3\)の3つです。したがって、これらを求めるためには、独立した方程式が3本必要になります。
方程式は以下の3つの法則を適用して立てます。
- キルヒホッフの第1法則(電流則): 分岐点b(またはe)に適用します。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): 2つの独立な閉回路に適用します。閉回路の選び方はいくつかありますが(左のループ、右のループ、外周のループなど)、どの組み合わせを選んでも構いません。ここでは、解答例に合わせて「左のループ(efabe)」と「外周のループ(defabcd)」を選びます。
この設問における重要なポイント
- 未知の電流の向きを仮に設定する。計算結果が負になった場合は、仮定した向きが逆だったことを意味する。
- 電圧則を適用する際、閉回路を一周する向きを決め、起電力(電圧を上げる)と電圧降下(電圧を下げる)の符号のルールを統一する。
- 未知数が3つなので、独立な方程式を3本立てる必要がある。
具体的な解説と立式
抵抗\(R_1, R_2, R_3\)に流れる電流を、それぞれ\(I_1, I_2, I_3\)とし、向きを図のように仮定します。
1. キルヒホッフの第1法則: 分岐点bにおいて、流れ込む電流\(I_1\)は、流れ出す電流\(I_2\)と\(I_3\)の和に等しいので、
$$ I_1 = I_2 + I_3 \quad \cdots ① $$
2. キルヒホッフの第2法則:
- 閉回路 efabe について: e→f→a→b→eの向きにたどります。
起電力\(E_1\)で電圧が \(11 \, \text{V}\) 上がります。抵抗\(R_1\)と\(R_3\)で電圧が下がります。
$$ E_1 = R_1 I_1 + R_3 I_3 $$
数値を代入すると、
$$ 11 = 1.0 I_1 + 2.0 I_3 \quad \cdots ② $$ - 閉回路 defabcd について: d→e→f→a→b→c→dの向きにたどります。
起電力\(E_2\)と\(E_1\)で電圧が上がります。抵抗\(R_2\)と\(R_1\)で電圧が下がります。
$$ E_1 + E_2 = R_1 I_1 + R_2 I_2 $$
数値を代入すると、
$$ 11 + 22 = 1.0 I_1 + 3.0 I_2 $$
$$ 33 = 1.0 I_1 + 3.0 I_2 \quad \cdots ③ $$
これで、未知数\(I_1, I_2, I_3\)に対する3本の独立な方程式①, ②, ③が揃いました。
使用した物理公式
- キルヒホッフの第1法則(電流則)
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
式①を②と③に代入して\(I_1\)を消去します。
式②に①を代入:
$$
\begin{aligned}
11 &= 1.0(I_2 + I_3) + 2.0 I_3 \\[2.0ex]
11 &= 1.0 I_2 + 3.0 I_3 \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
式③に①を代入:
$$
\begin{aligned}
33 &= 1.0(I_2 + I_3) + 3.0 I_2 \\[2.0ex]
33 &= 4.0 I_2 + 1.0 I_3 \quad \cdots ③’
\end{aligned}
$$
これで\(I_2\)と\(I_3\)の連立方程式ができました。③’を変形して\(I_3\)を求めます。
$$ I_3 = 33 – 4.0 I_2 $$
これを②’に代入します。
$$
\begin{aligned}
11 &= 1.0 I_2 + 3.0 (33 – 4.0 I_2) \\[2.0ex]
11 &= I_2 + 99 – 12 I_2 \\[2.0ex]
11 I_2 &= 99 – 11 \\[2.0ex]
11 I_2 &= 88 \\[2.0ex]
I_2 &= 8.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
求めた\(I_2\)を\(I_3 = 33 – 4.0 I_2\)に代入します。
$$
\begin{aligned}
I_3 &= 33 – 4.0 \times 8.0 \\[2.0ex]
&= 33 – 32 \\[2.0ex]
&= 1.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
最後に、求めた\(I_2, I_3\)を①に代入して\(I_1\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= I_2 + I_3 \\[2.0ex]
&= 8.0 + 1.0 \\[2.0ex]
&= 9.0 \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
3つの未知の電流を求めるために、3つのルール(方程式)を見つけます。1つ目は「分かれ道のルール」で、点bで電流\(I_1\)が\(I_2\)と\(I_3\)に分かれることを式にします。2つ目と3つ目は「回路を一周すると電圧は元に戻るルール」を、左側のループと外周全体のループの2か所で使って式を立てます。あとは、中学数学で習った3つの文字の連立方程式を、代入を繰り返して解いていくだけです。
抵抗\(R_1, R_2, R_3\)を流れる電流は、それぞれ \(I_1 = 9.0 \, \text{A}\), \(I_2 = 8.0 \, \text{A}\), \(I_3 = 1.0 \, \text{A}\) です。すべての電流が正の値となったため、最初に仮定した電流の向きは正しかったことがわかります。
問(2)
思考の道筋とポイント
この設問では、「抵抗\(R_3\)を流れる電流を0にしたい」という特別な条件が与えられています。これは、\(I_3=0\)を意味します。この条件を適用すると、回路の状況が(1)から変化し、より単純になります。
\(I_3=0\) ということは、分岐点bとeの間で電流のやり取りがない、すなわちbとeの電位が等しいことを意味します。これはホイートストンブリッジ回路の平衡条件と同じ状況です。
キルヒホッフの第1法則から \(I_1 = I_2\) となり、回路は実質的に、抵抗\(R_1\)と電源\(E_1\)からなるループと、抵抗\(R_2\)と電源\(E_2\)からなるループが並列に接続されているだけと見なせます。
この単純化された回路に対して、キルヒホッフの第2法則を適用し、未知数となった\(R_1\)の値を求めます。
この設問における重要なポイント
- \(I_3=0\) という条件を最初に適用し、回路を単純化する。
- \(I_3=0\) のとき、キルヒホッフの第1法則から \(I_1=I_2\) となる。
- 単純化された2つの独立なループにキルヒホッフの第2法則を適用し、未知数\(R_1\)を求める。
具体的な解説と立式
条件より \(I_3=0\) です。
1. キルヒホッフの第1法則: 分岐点bにおいて、
$$ I_1 = I_2 + I_3 $$
に \(I_3=0\) を代入すると、
$$ I_1 = I_2 \quad \cdots ④ $$
2. キルヒホッフの第2法則:
- 閉回路 efabe について: \(I_3=0\) なので、抵抗\(R_3\)での電圧降下は0になります。
$$ E_1 = R_1 I_1 + R_3 \times 0 $$
$$ 11 = R_1 I_1 \quad \cdots ⑤ $$ - 閉回路 bcdeb について: 同様に、\(R_3\)での電圧降下は0です。
$$ E_2 = R_2 I_2 $$
$$ 22 = 3.0 I_2 \quad \cdots ⑥ $$
これで、未知数\(R_1, I_1, I_2\)に対する3本の方程式④, ⑤, ⑥が立ちました。
使用した物理公式
- キルヒホッフの第1法則(電流則)
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
まず、式⑥から\(I_2\)の値を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_2 = \frac{22}{3.0} \, \text{[A]}
\end{aligned}
$$
次に、式④ (\(I_1=I_2\)) を用いて、\(I_1\)も同じ値であることがわかります。
$$ I_1 = \frac{22}{3.0} \, \text{[A]} $$
最後に、この\(I_1\)の値を式⑤に代入して、未知数\(R_1\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
11 &= R_1 \times \left( \frac{22}{3.0} \right) \\[2.0ex]
R_1 &= 11 \times \frac{3.0}{22} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 1.5 \, [\Omega]
\end{aligned}
$$
真ん中の抵抗に電流が流れないようにするということは、回路の「橋」が落ちているような状態です。すると、電流は左のループと右のループに完全に分かれて流れます。
右のループだけを見ると、22Vの電池と3.0Ωの抵抗がつながっているだけなので、流れる電流\(I_2\)が計算できます。
左のループと右のループはつながっていないので、左のループを流れる電流\(I_1\)は右の\(I_2\)と同じになります。
左のループは、11Vの電池と抵抗\(R_1\)がつながっているだけなので、「\(11 = R_1 \times I_1\)」という式が成り立ちます。ここに先ほど計算した電流\(I_1\)の値を入れれば、抵抗\(R_1\)の値を求めることができます。
抵抗\(R_1\)の値を \(1.5 \, \Omega\) にすれば、抵抗\(R_3\)を流れる電流は0になります。
このとき、点bと点eの電位が等しくなっているか確認してみましょう。点eを基準(0V)とすると、電源\(E_1\)により点fの電位は-11V、電源\(E_2\)により点dの電位は-22Vとなります。
点bの電位は、点cから見ると \(V_c – R_2 I_2\)、点aから見ると \(V_a – R_1 I_1\) です。
より簡単な方法として、点eを基準(0V)とすると、点bの電位は\(R_3\)の両端の電圧が0であることから0Vになるはずです。
点aの電位は、e-f-aとたどると\(+11 \, \text{V}\)です。点bの電位は \(V_a – R_1 I_1 = 11 – 1.5 \times \frac{22}{3.0} = 11 – 11 = 0 \, \text{V}\) となります。
よって、点bと点eの電位はともに0Vとなり、電位差がないため電流が流れないという条件と一致します。結果は妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- キルヒホッフの法則の体系的適用:
- 核心: 複数の電源や複雑な分岐を持つ回路を解くための唯一の体系的な手法がキルヒホッフの法則です。
- 理解のポイント:
- 第1法則(電流則): 分岐点での電荷の保存を表す。未知電流の数だけ方程式が必要な中で、関係式を1つ提供してくれる。
- 第2法則(電圧則): 閉回路でのエネルギーの保存を表す。独立な閉回路の数だけ関係式を提供してくれる。
- 戦略: 「未知数の数」と「独立な方程式の数」を一致させ、連立方程式を解く、という数学的なアプローチが基本戦略となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 閉回路の選び方:
- キルヒホッフの第2法則を適用する閉回路は、自由に選べます。計算を楽にするためには、含まれる素子が少ないループや、起電力が1つしか含まれないループを選ぶのがコツです。
- ただし、選んだループが互いに「独立」である必要があります。例えば、「左ループ」「右ループ」「外周ループ」の3つから式を立てても、外周ループの式は左と右のループの式を足し合わせたものになるため、独立な式は2つしか得られません。
- 電位法による解法:
- 回路内の一点の電位を基準(例: 0V)と定め、各点の電位を未知数として設定し、方程式を立てる方法です。未知数が電流ではなく電位になるため、特に複雑な回路では見通しが良くなることがあります。
- (2)で点eの電位を0Vとすると、点bの電位も0Vになる必要があります。点aの電位は+11Vなので、\(V_b = V_a – R_1 I_1 = 0\) から \(11 = R_1 I_1\) という式が直接導けます。
- ホイートストンブリッジとの関連:
- (2)の「\(I_3=0\)」という条件は、ホイートストンブリッジの平衡条件そのものです。このとき、対角にある抵抗の積が等しくなるという関係(たすき掛けの関係)が有名ですが、この問題では電源が含まれるため、基本に立ち返ってキルヒホッフの法則や電位の考え方で解くのが確実です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電圧則の符号ミス:
- 誤解: 閉回路をたどる際に、起電力による電圧の上昇と、抵抗による電圧降下の符号を間違える。特に、たどる向きと電流の向きが逆の場合に混乱しやすい。
- 対策: ①閉回路をたどる向きを矢印で明記する。②その向きに沿って、電池のマイナスからプラスに横切れば「+E」、抵抗を電流と同じ向きに横切れば「-RI」、抵抗を電流と逆向きに横切れば「+RI」というルールを機械的に適用する。
- 連立方程式の計算ミス:
- 誤解: 3元連立方程式を解く過程で、代入や移項、加減法で単純な計算ミスを犯す。
- 対策: 焦らず、一行ずつ丁寧に式を書く。求めた解を、元の方程式のいずれかに代入して検算する習慣をつける。例えば(1)で求めた解を、使わなかった右側のループの式 \(E_2 = R_2 I_2 – R_3 I_3\) に代入して \(22 = 3.0 \times 8.0 – 2.0 \times 1.0 = 24 – 2 = 22\) となり、成立することを確認する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- キルヒホッフの法則:
- 選定理由: オームの法則や抵抗の合成公式は、電源が1つで直列・並列が明確な単純な回路にしか適用できません。この問題のように、複数の電源が異なる場所にあったり、抵抗の接続が複雑だったりする場合には、より普遍的な法則であるキルヒホッフの法則が必要不可欠となります。
- 適用根拠:
- 第1法則は、物理学の根幹をなす電荷量保存則の回路における表現です。電流は電荷の流れなので、途中で消えたり生まれたりしない限り、分岐点で流れ込む量と流れ出す量は等しくなければなりません。
- 第2法則は、同じく物理学の大原則であるエネルギー保存則の回路における表現です。電位は単位電荷あたりの位置エネルギーなので、回路を一周して同じ場所に戻れば、エネルギーの増減はゼロになるはずです。電池でエネルギーを得て(起電力)、抵抗でエネルギーを消費する(電圧降下)という収支が釣り合うことを示しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位を省略して式を簡潔に: 立式や計算の途中では、単位を省略して数字と文字だけに集中すると、式がすっきりして見通しが良くなり、ミスが減ります。ただし、最終的な答えには必ず単位をつけます。
- 分数での計算: (2)の \(22/3.0\) のように割り切れない場合は、無理に小数にせず、分数のまま計算を進めることで、丸め誤差なく正確な値を求めることができます。
- 検算の習慣化: 上記の「要注意!」でも触れましたが、求めた解を、立式に使わなかった関係式(例えば別の閉回路の式)に代入して成り立つかを確認する「別ルート検算」は非常に有効です。
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