「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 25】Step3

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目次

333 電気容量の変化

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、電源に接続された平行板コンデンサーの極板間隔や挿入する誘電体を変化させたときの、電気容量、電気量、電界の変化を考察する問題です。特に、「スイッチが閉じている(電圧一定)」場合と「スイッチが開いている(電気量一定)」場合の違いを正確に理解することが核心となります。

与えられた条件
  • 電源の電圧: \(V\) [V]
  • (1)の初期状態で流れた電気量: \(Q\) [C]
  • 誘電体の比誘電率: \(\varepsilon_r\)
  • 初期状態は真空中(比誘電率1)
問われていること
  • (1) 初期の電気容量 \(C\)
  • (2) スイッチを閉じたまま極板間隔を4倍にしたときの電流の向き
  • (3) (2)で流れた電気量 \(\Delta Q\)
  • (4) (2)のときの電界の強さの、(1)に対する倍率
  • (5) スイッチを閉じたまま誘電体を挿入したときの電気量の、(1)に対する倍率
  • (6) (5)のときの電界の強さの、(1)に対する倍率
  • (7) スイッチを開いてから誘電体を挿入したときの、電気量・電界の強さ・電位差の、(1)に対する倍率

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「条件変化に伴うコンデンサーの挙動」です。コンデンサーの基本公式を理解し、回路の接続状況に応じてどの物理量が一定に保たれるかを見抜くことが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの基本関係式: 電気量\(Q\)、電気容量\(C\)、電圧\(V\)の間の関係式 \(Q=CV\) を使いこなすこと。
  2. 平行板コンデンサーの電気容量: 電気容量が極板の面積\(S\)、極板間隔\(d\)、そして極板間の物質の誘電率\(\varepsilon\)によってどのように決まるか (\(C = \varepsilon \frac{S}{d}\)) を理解していること。
  3. 一様な電界と電位差: 極板間の電界\(E\)と電位差\(V\)、間隔\(d\)の関係式 \(V=Ed\) を理解していること。
  4. 接続条件の判断: スイッチが閉じているときは「電圧\(V\)が一定」、スイッチが開いているときは「電気量\(Q\)が一定」という、物理的制約を正しく適用すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、各設問の状況で「電圧一定」か「電気量一定」かを確認します。
  2. 次に、極板間隔や誘電体の変化が電気容量\(C\)にどう影響するかを計算します。
  3. 最後に、\(Q=CV\) と \(V=Ed\) の関係式を用いて、問われている物理量を導出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
コンデンサーの電気容量を求める問題です。コンデンサーの最も基本的な関係式である \(Q=CV\) を用います。問題文で与えられているのは、スイッチを閉じたときにコンデンサーに蓄えられた電気量\(Q\)と、電源の電圧\(V\)です。
この設問における重要なポイント

  • 基本公式の適用: \(Q=CV\) という関係式を直接利用します。
  • 電圧の特定: スイッチを閉じた直後、コンデンサーは電源に直接接続されているため、コンデンサーの極板間の電圧は電源電圧\(V\)に等しくなります。

具体的な解説と立式
コンデンサーに蓄えられる電気量を\(Q\)、電気容量を\(C\)、極板間の電圧を\(V_{\text{C}}\)とすると、\(Q = C V_{\text{C}}\) が成り立ちます。
スイッチを閉じた状態では、コンデンサーは電圧\(V\)の電源に接続されているため、その電圧は \(V_{\text{C}} = V\) となります。
問題文より、このときに蓄えられた電気量は\(Q\)なので、
$$ Q = CV $$
この式を\(C\)について解きます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

上記で立てた式を\(C\)について解くと、
$$ C = \displaystyle\frac{Q}{V} \text{ [F]} $$
これ以上の計算は不要です。

計算方法の平易な説明

コンデンサーの「容量」とは、どれだけ電気を溜めやすいかを示す指標です。1Vの電圧をかけたときに溜まる電気量が、そのまま電気容量の値になります。この問題では、\(V\) [V]の電圧をかけたら \(Q\) [C]の電気が溜まったので、容量は \(Q\) を \(V\) で割った値になります。

結論と吟味

コンデンサーの電気容量は \(\displaystyle\frac{Q}{V}\) [F] です。これは電気容量の定義そのものであり、基本的な関係を正しく理解しているかを確認する設問です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{Q}{V}\) [F]

問(2)

思考の道筋とポイント
スイッチを閉じたまま、つまりコンデンサーの電圧を\(V\)に保ったまま、極板の間隔を4倍にしたときの電流の向きを問う問題です。極板間隔の変化が電気容量にどう影響し、その結果として蓄えられる電気量がどう変化するかを考えます。電気量の増減によって、電流がどちら向きに流れるかが決まります。
この設問における重要なポイント

  • 電圧一定: スイッチが閉じているため、コンデンサーの電圧は常に電源電圧\(V\)で一定です。
  • 電気容量の変化: 平行板コンデンサーの電気容量は \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\) で与えられます。極板間隔\(d\)が4倍になると、電気容量\(C\)は減少します。
  • 電気量の変化: 電圧\(V\)が一定のまま電気容量\(C\)が減少すると、蓄えられる電気量\(Q=CV\)も減少します。
  • 電流の向き: コンデンサーの電気量が減少するということは、蓄えられていた電荷が回路に戻ることを意味します。正極板から正電荷が流れ出す向きが電流の向きです。

具体的な解説と立式
初めの電気容量を\(C_0\)、極板間隔を\(d_0\)、極板面積を\(S\)とすると、
$$ C_0 = \varepsilon_0 \frac{S}{d_0} $$
極板の間隔を4倍にした後の電気容量を\(C_1\)とすると、間隔は \(d_1 = 4d_0\) となるので、
$$
\begin{aligned}
C_1 &= \varepsilon_0 \frac{S}{d_1} \\[2.0ex]&= \varepsilon_0 \frac{S}{4d_0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \left( \varepsilon_0 \frac{S}{d_0} \right) \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} C_0
\end{aligned}
$$
初めに蓄えられていた電気量は \(Q_0 = C_0 V = Q\) です。
間隔を広げた後に蓄えられている電気量を\(Q_1\)とすると、電圧は\(V\)で一定なので、
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= C_1 V \\[2.0ex]&= \left( \frac{1}{4} C_0 \right) V \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} (C_0 V) \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} Q_0
\end{aligned}
$$
電気量が\(Q_0\)から\(\frac{1}{4}Q_0\)に減少しました。これは、コンデンサーの正極板に蓄えられていた正電荷の一部が、電源の正極に向かって移動したことを意味します。電流の向きは正電荷の移動の向きなので、電流はコンデンサーから電源へ、つまり図の左向きに流れます。

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\)
  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

計算は立式の段階で完了しています。電気量が減少することから、電流の向きを判断します。

計算方法の平易な説明

コンデンサーの極板の間隔を広げると、プラスとマイナスの電気が引き合う力が弱まるため、同じ電圧でもたくさんの電気を溜めておくことができなくなります(容量が小さくなる)。そのため、もともと溜まっていた電気の一部がコンデンサーからあふれ出て、電源に戻っていきます。この戻っていく電気の流れが電流となり、その向きは図の左向きになります。

結論と吟味

電流の向きは図の左向きです。物理的な直感とも一致する妥当な結果です。

解答 (2) 図の左向き

問(3)

思考の道筋とポイント
問(2)の状況で、電流計Aを流れた電気の総量を求める問題です。これは、コンデンサーの電気量の変化量に等しくなります。
この設問における重要なポイント

  • 流れた電気量 = 電気量の変化量: 回路を流れる電気量は、コンデンサーに蓄えられている電気量の変化分です。
  • 初期と最終状態の電気量: (2)で考えたように、初期の電気量は\(Q\)、最終的な電気量は\(\frac{1}{4}Q\)です。

具体的な解説と立式
電流計を流れた電気量を\(\Delta Q\)とします。これは、コンデンサーの電気量の変化量に等しいです。
初期の電気量を \(Q_{\text{初}} = Q\)。
極板間隔を4倍にした後の電気量を \(Q_{\text{後}}\)。問(2)の考察より、
$$ Q_{\text{後}} = \frac{1}{4}Q $$
流れた電気量は、これらの差の大きさです。
$$ \Delta Q = Q_{\text{初}} – Q_{\text{後}} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

上記で立てた式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta Q &= Q – \frac{1}{4}Q \\[2.0ex]&= \frac{3}{4}Q \text{ [C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

もともと\(Q\)だけ電気が溜まっていたのに、極板を広げた結果、\(\frac{1}{4}Q\)しか溜められなくなりました。その差額である \(Q – \frac{1}{4}Q = \frac{3}{4}Q\) が、コンデンサーから出て行ってしまった電気の量です。これが電流計を流れた電気量になります。

結論と吟味

流れた電気量は \(\displaystyle\frac{3}{4}Q\) [C] です。電気量が減少したので、その差分が電流として観測されるというのは理にかなっています。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{3}{4}Q\) [C]

問(4)

思考の道筋とポイント
問(2)の状況、つまり極板間隔を4倍にしたときの、極板間の電界の強さを問う問題です。電界\(E\)、電圧\(V\)、極板間隔\(d\)の関係式 \(V=Ed\) を用いて解きます。
この設問における重要なポイント

  • 電圧一定: スイッチは閉じているので、電圧\(V\)は一定です。
  • 関係式 \(V=Ed\): 一様な電界中での電位差と電界の関係式を適用します。

具体的な解説と立式
初期状態の電界を\(E_0\)、極板間隔を\(d_0\)とすると、電圧\(V\)は一定なので、
$$ V = E_0 d_0 \quad \cdots ① $$
極板間隔を4倍にした後の電界を\(E_1\)、間隔を\(d_1 = 4d_0\)とすると、
$$ V = E_1 d_1 \quad \cdots ② $$
②に\(d_1 = 4d_0\)を代入すると、
$$ V = E_1 (4d_0) \quad \cdots ③ $$
①と③の左辺は等しいので、
$$ E_0 d_0 = E_1 (4d_0) $$
この式から、\(E_1\)が\(E_0\)の何倍かを求めます。

使用した物理公式

  • 一様な電界と電位差: \(V=Ed\)
計算過程

上記で立てた式を\(E_1\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
E_1 &= \frac{E_0 d_0}{4d_0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} E_0
\end{aligned}
$$
したがって、電界の強さは(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{4}\)倍になります。

計算方法の平易な説明

電界の強さは、電圧(電位の差)を距離で割ったもの、つまり「電位の坂道の傾き」のようなものです。今、電圧という「高さの差」は同じままで、極板間の「距離」だけが4倍に伸びました。同じ高さの差を4倍の距離で下るわけですから、坂の傾きは\(\frac{1}{4}\)に緩やかになります。つまり、電界の強さは\(\frac{1}{4}\)倍になります。

結論と吟味

電界の強さは\(\displaystyle\frac{1}{4}\)倍になります。電圧が一定で距離が長くなれば電界が弱まるというのは、直感的にも理解しやすい結果です。

別解: ガウスの法則を用いた解法

思考の道筋とポイント
電界の強さを、極板上の電荷が作るという視点から求めます。平行板コンデンサーの極板間の電界の強さ\(E\)は、極板の電荷密度\(\sigma\)(単位面積あたりの電気量)を用いて \(E = \frac{\sigma}{\varepsilon_0}\) と表せます。電気量の変化から電界の変化を追跡します。
この設問における重要なポイント

  • 電界と電荷密度の関係: \(E = \frac{\sigma}{\varepsilon_0}\)
  • 電荷密度の定義: \(\sigma = \frac{Q}{S}\)
  • 電気量の変化: 問(2)で考察したように、電気量は \(Q \rightarrow \frac{1}{4}Q\) と変化します。

具体的な解説と立式
初期状態の電気量を\(Q_0\)、極板面積を\(S\)とすると、電荷密度は \(\sigma_0 = \frac{Q_0}{S}\) です。このときの電界\(E_0\)は、
$$ E_0 = \frac{\sigma_0}{\varepsilon_0} \quad \cdots ① $$
極板間隔を4倍にした後の電気量は \(Q_1 = \frac{1}{4}Q_0\) です。このときの電荷密度は \(\sigma_1 = \frac{Q_1}{S} = \frac{Q_0/4}{S}\) となります。
したがって、後の電界\(E_1\)は、
$$ E_1 = \frac{\sigma_1}{\varepsilon_0} \quad \cdots ② $$
式を整理すると、
$$
\begin{aligned}
E_1 &= \frac{Q_0/4}{\varepsilon_0 S} \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \frac{Q_0}{\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
①の関係を用いると、
$$ E_1 = \frac{1}{4} E_0 $$
となります。

使用した物理公式

  • コンデンサー極板間の電界: \(E = \frac{\sigma}{\varepsilon_0} = \frac{Q}{\varepsilon_0 S}\)
計算過程

計算は立式の段階で完了しています。電界の強さは(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{4}\)倍になります。

計算方法の平易な説明

電界は、そこにある電気の量によって作られます。極板の間隔を広げた結果、コンデンサーに溜まっている電気の量が\(\frac{1}{4}\)に減ってしまいました。電界を作る源である電気の量が\(\frac{1}{4}\)になったので、電界の強さも\(\frac{1}{4}\)倍になります。

結論と吟味

\(V=Ed\) を用いた解法と同じく、\(\displaystyle\frac{1}{4}\)倍という結果が得られました。異なる物理的視点から同じ結論に至ることで、理解の確かさを確認できます。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{1}{4}\)倍

問(5)

思考の道筋とポイント
元の状態に戻し、スイッチを閉じたまま(電圧\(V\)一定)で、極板間に比誘電率\(\varepsilon_r\)の誘電体を挿入した場合に蓄えられる電気量を問う問題です。誘電体の挿入が電気容量にどう影響するかを考え、\(Q=CV\)から電気量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 電圧一定: スイッチが閉じているため、電圧\(V\)は一定です。
  • 電気容量の変化: 真空中の電気容量を\(C_0\)とすると、比誘電率\(\varepsilon_r\)の誘電体で満たしたときの電気容量\(C_2\)は \(C_2 = \varepsilon_r C_0\) となります。

具体的な解説と立式
初期状態(真空中)の電気容量を\(C_0\)とすると、蓄えられている電気量は \(Q_0 = C_0 V = Q\) です。
比誘電率\(\varepsilon_r\)の誘電体を挿入した後の電気容量を\(C_2\)とすると、
$$ C_2 = \varepsilon_r C_0 $$
このときに蓄えられる電気量を\(Q_2\)とすると、電圧は\(V\)で一定なので、
$$ Q_2 = C_2 V $$
この式に\(C_2 = \varepsilon_r C_0\)を代入すると、
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= (\varepsilon_r C_0) V \\[2.0ex]&= \varepsilon_r (C_0 V)
\end{aligned}
$$
\(Q_0 = C_0 V\) なので、これを代入して\(Q_2\)と\(Q_0\)の関係を求めます。

使用した物理公式

  • 誘電体を含むコンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_r C_0\)
  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

上記で立てた式に \(Q_0 = Q\) を代入します。
$$ Q_2 = \varepsilon_r Q_0 = \varepsilon_r Q $$
したがって、蓄えられる電気量は(1)の場合の\(\varepsilon_r\)倍になります。

計算方法の平易な説明

誘電体をコンデンサーに入れると、誘電分極という現象が起きて、コンデンサーはより多くの電気を溜められるようになります(容量が大きくなる)。比誘電率\(\varepsilon_r\)は、その「溜めやすさが何倍になるか」を示す値です。したがって、容量が\(\varepsilon_r\)倍になり、電圧は同じなので、溜まる電気の量も\(\varepsilon_r\)倍になります。

結論と吟味

電気量は\(\varepsilon_r\)倍になります。誘電体の役割を正しく理解していれば、直感的に導ける結果です。

解答 (5) \(\varepsilon_r\)倍

問(6)

思考の道筋とポイント
問(5)の状況で、極板間の電界の強さがどうなるかを問う問題です。問(4)と同様に、\(V=Ed\) の関係式から考えます。
この設問における重要なポイント

  • 電圧一定: スイッチは閉じているので、電圧\(V\)は一定です。
  • 極板間隔不変: この操作では、極板間隔\(d\)は元の状態から変わっていません。
  • 関係式 \(V=Ed\): \(V\)と\(d\)が不変であることから、\(E\)がどうなるかを結論付けます。

具体的な解説と立式
初期状態の電界を\(E_0\)、極板間隔を\(d_0\)とすると、
$$ V = E_0 d_0 $$
誘電体を挿入した後も、電圧は\(V\)、極板間隔は\(d_0\)で不変です。このときの電界を\(E_2\)とすると、
$$ V = E_2 d_0 $$
両式の左辺と右辺の \(d_0\) が等しいので、\(E_2 = E_0\) となります。

使用した物理公式

  • 一様な電界と電位差: \(V=Ed\)
計算過程

立式の段階で \(E_2 = E_0\) が導かれています。したがって、電界の強さは(1)の場合と変わらず、1倍です。

計算方法の平易な説明

電界の強さは「電位の坂道の傾き」でした。この操作では、電圧という「高さの差」も、極板間の「距離」も変わっていません。坂の高さも長さも変わらないので、傾きも当然変わりません。したがって、電界の強さは変化せず1倍のままです。

結論と吟味

電界の強さは1倍(不変)です。一見、誘電体を入れると電界が弱まりそうに感じますが、それは電気量が一定の場合です。電圧が一定に保たれる場合は、誘電分極で弱まった分の電界を補うようにさらに電荷が供給され、結果として電界は元の強さに保たれます。この違いを理解することが重要です。

別解: ガウスの法則を用いた解法

思考の道筋とポイント
問(4)の別解と同様に、電界を \(E = \frac{\sigma}{\varepsilon}\) の関係から求めます。ここで、誘電体中の誘電率が \(\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0\) となることに注意します。
この設問における重要なポイント

  • 誘電体中の電界: \(E = \frac{\sigma}{\varepsilon} = \frac{Q}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}\)
  • 電気量の変化: 問(5)で考察したように、電気量は \(Q_0 \rightarrow \varepsilon_r Q_0\) と変化します。

具体的な解説と立式
初期状態(真空中)の電気量を\(Q_0\)、電界を\(E_0\)とすると、
$$ E_0 = \frac{Q_0}{\varepsilon_0 S} \quad \cdots ① $$
誘電体を挿入した後の電気量は \(Q_2 = \varepsilon_r Q_0\) です。このときの電界\(E_2\)は、誘電率が \(\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0\) となることを考慮して、
$$
\begin{aligned}
E_2 &= \frac{Q_2}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S} \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_r Q_0}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S} \\[2.0ex]&= \frac{Q_0}{\varepsilon_0 S} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
①と②を比較して、\(E_2\)と\(E_0\)の関係を求めます。

使用した物理公式

  • 誘電体中のコンデンサー極板間の電界: \(E = \frac{Q}{\varepsilon S} = \frac{Q}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}\)
計算過程

①と②の右辺は全く同じ式なので、
$$ E_2 = E_0 $$
となり、電界の強さは(1)の場合と変わらず、1倍です。

計算方法の平易な説明

誘電体を入れると、分母の誘電率が\(\varepsilon_r\)倍になって電界を弱める効果がありますが、同時に分子の電気量も\(\varepsilon_r\)倍に増えます。この二つの効果がちょうど打ち消し合うため、結果として電界の強さは変わりません。

結論と吟味

\(V=Ed\) を用いた解法と同じく、1倍という結果が得られました。電圧一定の状況で誘電体を挿入すると、電気量が増加して電界を一定に保つ、という物理的描像がより明確になります。

解答 (6) 1倍

問(7)

思考の道筋とポイント
この設問は、これまでの問題と決定的に条件が異なります。まず(1)の状態でスイッチを開き、コンデンサーを回路から孤立させます。その後に誘電体を挿入するため、「電気量\(Q\)が一定」の条件で考えます。電気量、電界、電位差がそれぞれどうなるかを、基本公式を適用して一つずつ解き明かします。
この設問における重要なポイント

  • 電気量一定: スイッチが開いているため、コンデンサーは孤立しており、蓄えられた電気量\(Q\)は変化しません。
  • 電気容量の変化: 問(5)と同様に、誘電体を挿入すると電気容量は \(C_0 \rightarrow \varepsilon_r C_0\) と\(\varepsilon_r\)倍になります。
  • 電圧と電界の変化: 電気量\(Q\)が一定のまま電気容量\(C\)が変化するため、電圧\(V=Q/C\)と電界\(E=V/d\)は変化します。

具体的な解説と立式
初期状態(1)の物理量を \(Q_0=Q\), \(C_0\), \(V_0=V\), \(E_0\) とします。
スイッチを開いてから、比誘電率\(\varepsilon_r\)の誘電体を挿入した後の物理量を \(Q_3, C_3, V_3, E_3\) とします。

  1. 電気量 \(Q_3\)
    スイッチを開いたので、電荷の逃げ道がありません。したがって、電気量は保存されます。
    $$ Q_3 = Q_0 = Q $$
  2. 電気容量 \(C_3\)
    誘電体を挿入したので、電気容量は\(\varepsilon_r\)倍になります。
    $$ C_3 = \varepsilon_r C_0 $$
  3. 電位差 \(V_3\)
    基本公式 \(Q=CV\) を使って\(V_3\)を求めます。
    $$ Q_3 = C_3 V_3 $$
    この式に上記の結果を代入して、\(V_3\)を\(V_0\)で表します。
    $$ Q_0 = (\varepsilon_r C_0) V_3 $$
    ここで、初期状態の関係式 \(Q_0 = C_0 V_0\) を用います。
  4. 電界の強さ \(E_3\)
    関係式 \(V=Ed\) を使って\(E_3\)を求めます。極板間隔\(d\)は不変です。
    $$ V_3 = E_3 d $$
    この式に求めた\(V_3\)を代入して、\(E_3\)を\(E_0\)で表します。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
  • 誘電体を含むコンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_r C_0\)
  • 一様な電界と電位差: \(V=Ed\)
計算過程
  • 電気量:
    変化しないので、(1)の場合の1倍です。
  • 電位差:
    \(Q_0 = (\varepsilon_r C_0) V_3\) の式を \(V_3\) について解きます。
    $$
    \begin{aligned}
    V_3 &= \frac{Q_0}{\varepsilon_r C_0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} \left( \frac{Q_0}{C_0} \right)
    \end{aligned}
    $$
    初期状態では \(V_0 = \frac{Q_0}{C_0}\) なので、
    $$ V_3 = \frac{1}{\varepsilon_r} V_0 $$
    したがって、電位差は(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
  • 電界の強さ:
    \(V_3 = E_3 d\) と \(V_0 = E_0 d\) の関係を使います。
    $$
    \begin{aligned}
    E_3 &= \frac{V_3}{d} \\[2.0ex]&= \frac{(1/\varepsilon_r)V_0}{d} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} \left( \frac{V_0}{d} \right) \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} E_0
    \end{aligned}
    $$
    したがって、電界の強さは(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
計算方法の平易な説明
  • 電気量: スイッチが切れているので、電気はどこにも行けません。だから量は変わりません(1倍)。
  • 電位差(電圧): 誘電体を入れると、コンデンサーの性能が上がって電気を溜めやすくなります(容量が\(\varepsilon_r\)倍)。同じ量の電気が入っていても、より楽に(より低い電圧で)溜めておけるようになります。その結果、電圧は\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍に下がります。
  • 電界の強さ: 電圧が\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍に下がり、極板間の距離は変わらないので、「電位の坂道の傾き」である電界の強さも\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
結論と吟味

電気量は1倍、電位差は\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍、電界の強さは\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍となります。
「スイッチON(電圧一定)」と「スイッチOFF(電気量一定)」で、誘電体を入れたときの振る舞いが全く異なることが分かります。この対比を理解することが、この問題の最大のポイントです。

別解: 電界から先に求める方法

思考の道筋とポイント
電気量\(Q\)が一定であることに着目し、ガウスの法則から直接、電界の変化を求めます。その後、\(V=Ed\) を使って電位差を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 電気量一定: \(Q_3 = Q_0\)
  • 誘電体中の電界: \(E = \frac{Q}{\varepsilon S} = \frac{Q}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}\)

具体的な解説と立式

  1. 電気量 \(Q_3\)
    スイッチが開いているため、\(Q_3 = Q_0\)。よって1倍。
  2. 電界の強さ \(E_3\)
    初期状態の電界は \(E_0 = \frac{Q_0}{\varepsilon_0 S}\) です。
    誘電体を挿入した後の電界\(E_3\)は、電気量は\(Q_0\)のままで、誘電率が\(\varepsilon_r \varepsilon_0\)になるので、
    $$
    \begin{aligned}
    E_3 &= \frac{Q_0}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} \left( \frac{Q_0}{\varepsilon_0 S} \right) \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} E_0
    \end{aligned}
    $$
  3. 電位差 \(V_3\)
    関係式 \(V=Ed\) を使って\(V_3\)を求めます。極板間隔\(d\)は不変です。
    $$
    \begin{aligned}
    V_3 &= E_3 d \\[2.0ex]&= \left( \frac{1}{\varepsilon_r} E_0 \right) d \\[2.0ex]&= \frac{1}{\varepsilon_r} (E_0 d)
    \end{aligned}
    $$
    初期状態の関係式 \(V_0 = E_0 d\) を用います。

使用した物理公式

  • 誘電体中のコンデンサー極板間の電界: \(E = \frac{Q}{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}\)
  • 一様な電界と電位差: \(V=Ed\)
計算過程
  • 電気量: 1倍。
  • 電界の強さ:
    上記の立式より、電界の強さは(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
  • 電位差:
    \(V_3 = \frac{1}{\varepsilon_r} (E_0 d)\) に \(V_0 = E_0 d\) を代入して、
    $$ V_3 = \frac{1}{\varepsilon_r} V_0 $$
    したがって、電位差は(1)の場合の\(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
計算方法の平易な説明
  • 電気量: スイッチが切れているので、電気は逃げられず、量は変わりません(1倍)。
  • 電界の強さ: 電界は電気の量と、空間の電気の通しにくさ(誘電率)で決まります。電気の量は同じですが、誘電体を入れると分極が起きて元の電界を打ち消す向きの電界が作られるため、合成された電界は\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍に弱まります。
  • 電位差(電圧): 電界という「坂の傾き」が\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍に緩やかになり、距離は同じなので、トータルの「高さの差」である電圧も\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍になります。
結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。思考の順序が違うだけで、物理的な内容は同じです。どちらのアプローチでも解けるようにしておくと、理解が深まります。

解答 (7) 電気量: 1倍, 電界の強さ: \(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍, 電位差: \(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 接続条件による不変量の見極め:
    • 核心: この問題で最も重要なのは、コンデンサーが置かれている状況に応じて「何が一定に保たれるか」を正しく判断することです。
      • スイッチが閉じている(電源に接続されている)場合: コンデンサーの極板間の電圧は、常に電源電圧\(V\)に等しく保たれます。したがって「電圧\(V\)が一定」となります。
      • スイッチが開いている(電源から切り離されている)場合: コンデンサーは電気的に孤立し、電荷の移動経路がなくなります。したがって、一度蓄えられた「電気量\(Q\)が一定」に保たれます。
    • 理解のポイント: (1)から(6)までは「電圧一定」、(7)は「電気量一定」という制約条件の下で物理現象を考えます。この違いが、すべての設問の答えを決定づける根本的な分岐点です。
  • コンデンサーの基本公式の連動:
    • 核心: 以下の3つの基本公式が、互いにどのように関連し合っているかを理解することが不可欠です。
      1. \(Q=CV\) (電気量・容量・電圧の関係)
      2. \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) (電気容量の決定要因)
      3. \(V=Ed\) (電圧・電界・距離の関係)
    • 理解のポイント: 例えば、極板間隔\(d\)を変えると、まず②の式から電気容量\(C\)が変化します。次に、接続条件(電圧一定か電気量一定か)に応じて、①の式を使って\(Q\)または\(V\)の変化を求めます。最後に、③の式を使って\(E\)の変化を求める、というように、これらの公式は一連の思考プロセスとして連動しています。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンデンサーの一部に誘電体を挿入する問題: 極板間に誘電体を部分的に挿入する場合、真空部分のコンデンサーと誘電体部分のコンデンサーの並列接続、あるいは直列接続としてモデル化して解くことができます。
    • 複数のコンデンサーを含む回路: 複数のコンデンサーが直列・並列接続された回路で、スイッチを切り替えたり、あるコンデンサーの容量を変化させたりする問題。電荷保存則やキルヒホッフの法則と組み合わせて解く必要があります。
    • コンデンサーのエネルギー変化を問う問題: \(U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = \frac{Q^2}{2C}\) の公式を使い、操作の前後で静電エネルギーがどう変化したかを計算する問題。外力がした仕事や、電池がした仕事を問われることもあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路図をよく見る: まず、スイッチが開いているか閉じているかを確認します。これが「電圧一定」か「電気量一定」かを判断する最大のヒントです。
    2. 何を操作したかを確認する: 「極板間隔を変えた」「誘電体を入れた」「極板面積を変えた」など、どのパラメータを変化させたのかを特定します。これにより、まず電気容量\(C\)がどう変化するかが分かります。
    3. 物理量を順番に追う: 「操作」→「\(C\)の変化」→「不変量(\(V\) or \(Q\))の確認」→「\(Q=CV\)による従属変数(\(Q\) or \(V\))の変化の計算」→「\(V=Ed\)による\(E\)の変化の計算」というように、因果関係に沿って一つずつ物理量の変化を追跡していくと、混乱なく解くことができます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電圧一定と電気量一定の混同:
    • 誤解: 最も多いミスは、スイッチが開いているのに電圧が一定だと考えたり、閉じているのに電気量が一定だと考えてしまうことです。特に、(7)で(6)までの感覚を引きずって「電圧一定」で解いてしまうケースが頻発します。
    • 対策: 問題文を読む際に、「スイッチを閉じたまま」「スイッチを開いてから」というキーワードに必ず印をつける習慣をつけましょう。そして、それぞれの言葉が「電圧\(V\)一定」「電気量\(Q\)一定」という物理的制約に直結することを強く意識します。
  • 誘電体挿入時の電界の誤解:
    • 誤解: 「誘電体を入れると、誘電分極によって電界は必ず弱まる」と単純に記憶していると、(6)で間違えます。
    • 対策: 電界が弱まるのは「孤立系(電気量一定)」の場合です。電圧が一定に保たれる場合は、電界を一定に保つために追加の電荷が電源から供給されます。常に「電圧一定か、電気量一定か」という前提条件に立ち返って考える癖をつけましょう。
  • 変化の倍率計算のミス:
    • 誤解: \(d\)が4倍になったとき、\(C\)が4倍になると勘違いする(正しくは\(\frac{1}{4}\)倍)。あるいは、\(C\)が\(\varepsilon_r\)倍になったとき、\(V\)が\(\varepsilon_r\)倍になると勘違いする(電気量一定なら正しくは\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍)。
    • 対策: 公式 \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\) や \(V = Q/C\) を見て、各物理量が分母にあるか分子にあるかを正確に確認しましょう。比例関係なのか反比例関係なのかを、式を見ながら判断することが重要です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電圧一定(スイッチON)のイメージ: コンデンサーは、常に電圧\(V\)という「蛇口」につながった「バケツ」のようなものです。バケツの形(容量\(C\))を変えると、溜まる水の量(電気量\(Q\))は変わりますが、水面の高さ(電圧\(V\))は常に蛇口の高さに保たれます。
    • 電気量一定(スイッチOFF)のイメージ: コンデンサーは、一定量の水(電気量\(Q\))が入った状態で蓋をされた「バケツ」です。この状態でバケツの形(容量\(C\))を変える(例えば底を広くする)と、水面の高さ(電圧\(V\))は変化します。
    • 電界のイメージ: 電界\(E\)は、極板間の「電位の坂道の傾き」です。電圧\(V\)が「坂道の高さ」、間隔\(d\)が「坂道の水平距離」に対応します。\(E=V/d\) は、傾き=高さ÷距離という関係そのものです。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 状態変化の図示: (1)初期状態、(2)dを4倍にした状態、(5)誘電体を入れた状態、(7)孤立させて誘電体を入れた状態、など各ステップのコンデンサーの絵を並べて描くと、何が変化して何が不変なのかが視覚的に整理しやすくなります。
    • 電荷の図示: 極板に蓄えられている電荷を「+」や「-」の記号で描き込み、その数が変化する様子をイメージするのも有効です。(2)では電荷が減り、(5)では電荷が増える様子が分かります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\) (問2, 5, 7):
    • 選定理由: 問題の操作(間隔変更、誘電体挿入)が、コンデンサーの幾何学的・物質的構造そのものを変えているため。この変化がまず電気容量\(C\)にどう影響するかを計算する必要があるからです。
    • 適用根拠: この公式は、平行板コンデンサーの性能(電気のためやすさ)が、その形状と材質によって決まるという物理法則を表現しています。
  • \(Q=CV\) (問1, 2, 3, 5, 7):
    • 選定理由: 電気容量\(C\)の変化と、接続条件(\(V\)一定 or \(Q\)一定)が分かった後、残りの未知の物理量(\(Q\) or \(V\))を求めるために使います。コンデンサーの3つの基本量を結びつける中心的な関係式です。
    • 適用根拠: どんなコンデンサーでも成り立つ、電気量・容量・電圧の間の普遍的な定義式です。
  • \(V=Ed\) (問4, 6, 7):
    • 選定理由: 電圧\(V\)と極板間隔\(d\)が分かっている、あるいは変化が分かったときに、電界\(E\)を求めるために使います。
    • 適用根拠: 一様な電場中における電位差と電場の関係を示す基本法則です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1)〜(6) スイッチON(電圧\(V\)一定)の場合:
    • 戦略: \(V\)を不変量として、\(C\)の変化から\(Q\)と\(E\)の変化を追う。
    • フロー: ① 操作(\(d \rightarrow 4d\) or 誘電体挿入)を確認。 → ② \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) より、\(C\)の変化を計算。(\(C \rightarrow \frac{1}{4}C\) or \(C \rightarrow \varepsilon_r C\)) → ③ \(V\)は一定なので、\(Q=CV\) より、\(Q\)の変化を計算。(\(Q \rightarrow \frac{1}{4}Q\) or \(Q \rightarrow \varepsilon_r Q\)) → ④ \(V\)と\(d\)の変化から、\(E=V/d\) より、\(E\)の変化を計算。(\(E \rightarrow \frac{1}{4}E\) or \(E \rightarrow E\))
  2. (7) スイッチOFF(電気量\(Q\)一定)の場合:
    • 戦略: \(Q\)を不変量として、\(C\)の変化から\(V\)と\(E\)の変化を追う。
    • フロー: ① 操作(誘電体挿入)を確認。 → ② \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) より、\(C\)の変化を計算。(\(C \rightarrow \varepsilon_r C\)) → ③ \(Q\)は一定なので、\(V=Q/C\) より、\(V\)の変化を計算。(\(V \rightarrow \frac{1}{\varepsilon_r}V\)) → ④ 求めた\(V\)の変化と\(d\)が不変なことから、\(E=V/d\) より、\(E\)の変化を計算。(\(E \rightarrow \frac{1}{\varepsilon_r}E\))

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 比で考える: この問題はすべて「何倍になるか」を問うています。具体的な数値を計算するのではなく、初期状態の物理量(\(C_0, Q_0, V_0, E_0\))を基準として、変化後の量がその何倍になるか、という形で式を立てると見通しが良くなります。
    例: \(C_1 = \frac{1}{4}C_0\), \(Q_1 = C_1 V_0 = (\frac{1}{4}C_0)V_0 = \frac{1}{4}Q_0\)。
  • 分数の扱いに注意: \(C\)は\(d\)に反比例、\(V\)は\(C\)に反比例(\(Q\)一定時)など、逆数の関係が多く登場します。分数の計算を丁寧に行い、4倍なのか\(\frac{1}{4}\)倍なのかを取り違えないようにしましょう。
  • 単位は最後に確認: 今回は倍率を求める問題なので単位は不要ですが、具体的な値を求める問題では、計算結果の単位が物理的に正しいか(電気量なら[C]、電界なら[V/m]など)を確認する習慣がミスを防ぎます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2) 間隔を広げると容量が減り、電荷が戻る(左向き電流)。これは直感に合います。
    • (4) 電圧一定で距離が4倍になれば、電位の傾き(電界)は緩やかになるはず(\(\frac{1}{4}\)倍)。妥当です。
    • (6) 電圧一定、距離一定なら、電位の傾き(電界)は変わらないはず(1倍)。妥当です。
    • (7) 孤立系で誘電体を入れると、分極により電界は弱まるはず(\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍)。電界が弱まれば、同じ距離での電位差も小さくなるはず(\(\frac{1}{\varepsilon_r}\)倍)。妥当です。
  • 別解との比較:
    • (4)や(6)では、\(V=Ed\)から攻める方法と、\(E=Q/(\varepsilon S)\)から攻める方法の2通りがありました。両方のアプローチで同じ答え(\(\frac{1}{4}\)倍、1倍)が得られたことは、計算の正しさと物理的理解の確かさを裏付けています。特に(6)では、一見異なる物理現象(\(V,d\)不変 vs \(Q, \varepsilon\)両方が変化)が同じ結果をもたらすことが確認でき、深い理解につながります。
  • 極端な場合を考える(思考実験):
    • もし比誘電率\(\varepsilon_r\)が無限大だったら? (5)では無限大の電気が流れ込み、(7)では電圧と電界がゼロになります。
    • もし極板間隔\(d\)を無限大にしたら? (2)では容量がゼロになり、溜まっていた電荷\(Q\)がすべて戻ります。

    このような極端なケースを考えると、数式の意味がより直感的に把握できます。

334 コンデンサーの接続

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、複数の金属板を平行に並べて作られたコンデンサー回路に関する問題です。スイッチの開閉によって回路構成が変化し、それに伴う各極板の電気量や電位、そして極板間の電界を求めることが要求されます。コンデンサーの直列接続の考え方、電位の決定方法、そして電界と電位差の関係を総合的に理解しているかが問われます。

与えられた条件
  • 金属板K, L, M, Nは面積が等しい。
  • K-L間のコンデンサーの電気容量: \(C\)
  • K-L間の距離: \(d\)
  • L-M間の距離: \(2d\)
  • M-N間の距離: \(d\)
  • 電池の電圧: \(V\)
  • アース点の電位: 0 [V]
問われていること
  • (1) S₁とS₂を閉じたときの、極板Lの電気量と電位。
  • (2) (1)の状態からS₁を開いたときの、KL間とLM間の電界の強さ。
  • (3) 初期の状態からS₂のみを閉じたときの、極板Mの電位。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複合コンデンサー回路の解析」です。複数の極板が並んだ配置は、複数のコンデンサーが直列または並列に接続された等価回路として考えることができます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの電気容量: 平行板コンデンサーの電気容量は、極板間隔に反比例します (\(C \propto 1/d\))。
  2. コンデンサーの直列接続: 複数のコンデンサーを直列に接続したときの合成容量の計算方法 (\(\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\)) と、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しいという性質を理解していること。
  3. 電位の計算: アース(基準点)からの電位差を順に足し合わせていくことで、回路の各点の電位を決定します。
  4. 電界と電位差の関係: 一様な電界\(E\)と電位差\(V\)、距離\(d\)の関係式 \(V=Ed\) を適用できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、各設問のスイッチの状態に応じて、回路がどのようにつながっているかを判断し、等価回路を描きます。
  2. 等価回路に基づいて合成容量を計算し、回路全体に蓄えられる電気量を求めます。
  3. 各コンデンサーの電位差を計算し、アースを基準として各極板の電位を決定します。
  4. 電位差と極板間距離から、電界の強さを計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
この設問は、問題の図やスイッチの役割について複数の解釈が可能であり、非常に難解です。ここでは、模範解答の結論「電気量: \(-CV/2\)」「電位: \(-V/2\)」から逆算し、その結論に至るための物理的なモデル(等価回路)を構築して解説します。この結論は「容量\(C\)のコンデンサー2つが直列接続され、全体に電圧\(V\)がかかり、片方の端(K)がアース(0V)されている」という状況に対応します。
この設問における重要なポイント

  • 等価回路の特定(解答からの推測): 回路は、容量\(C\)のコンデンサー2つが直列に接続されたものと見なします。
  • 直列接続の性質: 合成容量を計算し、回路全体に流れる電気量を求めます。直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しくなります。
  • 電位の計算: 極板Kがアース(電位0)されていると解釈し、K-L間の電位差を計算してLの電位を求めます。

具体的な解説と立式
模範解答のロジックに基づき、容量\(C\)のコンデンサー2つが直列に接続されていると考えます。合成容量を\(C_1\)とすると、
$$ \frac{1}{C_1} = \frac{1}{C} + \frac{1}{C} = \frac{2}{C} \quad \cdots ① $$
この合成コンデンサーに電圧\(V\)がかかっているため、蓄えられる電気量\(Q\)は、
$$ Q = C_1 V \quad \cdots ② $$
極板Lは、K-L間コンデンサーの片方の極板です。Kが電池の正極側、Lが負極側に接続されていると考えると、Lには負の電荷が蓄えられます。その大きさは\(Q\)に等しいです。
次に、極板Lの電位を求めます。K-L間の電位差を\(V_1\)とすると、
$$ Q = C V_1 \quad \cdots ③ $$
問題の図から極板Kはアースされており、電位は0であると解釈します。また、Lの方が電位が低いと考えます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの直列合成容量
  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

①より、合成容量\(C_1\)は、
$$ C_1 = \frac{C}{2} $$
②より、蓄えられる電気量\(Q\)は、
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{C}{2} V \\[2.0ex]&= \frac{CV}{2}
\end{aligned}
$$
極板Lには負の電荷が蓄えられるので、その電気量は \(-\displaystyle\frac{CV}{2}\) となります。

次に、Lの電位を求めます。③より、K-L間の電位差\(V_1\)は、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{Q}{C} \\[2.0ex]&= \frac{CV/2}{C} \\[2.0ex]&= \frac{V}{2}
\end{aligned}
$$
極板Kの電位は0であり、Lの方が電位が低いので、Lの電位は、
$$
\begin{aligned}
V_L &= 0 – V_1 \\[2.0ex]&= -\frac{V}{2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

2つの同じコンデンサーを直列につなぐと、電圧は半分ずつに分けられます。Kの電位が0Vで、K-L間の電圧が\(V/2\)なので、Lの電位はKより\(V/2\)だけ低くなり、\(-V/2\)となります。また、このとき蓄えられる電気量は、合成容量(\(C/2\))に全体の電圧(\(V\))を掛けた\(CV/2\)になります。Lは負極側なので、電気量はマイナスになります。

結論と吟味

極板Lの電気量は \(-\displaystyle\frac{CV}{2}\)、電位は \(-\displaystyle\frac{V}{2}\) です。この結果は、問題の図の解釈が非常に難しいものの、模範解答が想定している特定の条件下での計算として成立します。

解答 (1) 電気量: \(-\displaystyle\frac{CV}{2}\), 電位: \(-\displaystyle\frac{V}{2}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の状態からスイッチS₁を開いたときの、KL間とLM間の電界の強さを求める問題です。S₁を開くと、電池が回路から切り離されます。このとき、K-L間のコンデンサーに蓄えられていた電荷は保存されます。LM間は(1)の状態でLとMが等電位であったため、電界は0でした。S₁を開いても、この部分に電荷の移動が起こる要因がないため、等電位は保たれます。
この設問における重要なポイント

  • 電荷保存: スイッチを開いて回路を孤立させると、その部分のコンデンサーの電気量は保存されます。
  • 電界と電位差の関係: \(V=Ed\) を用いて電界を計算します。
  • 等電位: 電位差がない空間では、電界は0です。

具体的な解説と立式
(1)の状態で、KL間の電位差は \(V_1 = V/2\) でした。
スイッチS₁を開くと、K-Lコンデンサーは電気量 \(Q=CV/2\) を保ったまま孤立します。したがって、KL間の電位差は \(V_1=V/2\) のままです。
KL間の電界の強さを\(E_1\)とすると、
$$ E_1 = \frac{V_1}{d} \quad \cdots ① $$
LM間については、(1)の状態でLとMは等電位でした。S₁を開いても、LM間に新たに電位差が生じることはないため、電界の強さ\(E_2\)は0です。
$$ E_2 = 0 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 一様な電界と電位差: \(V=Ed\)
  • 電荷保存則
計算過程

①に \(V_1 = V/2\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
E_1 &= \frac{V/2}{d} \\[2.0ex]&= \frac{V}{2d}
\end{aligned}
$$
②より、\(E_2 = 0\)。

計算方法の平易な説明

スイッチを開くと、KとLの間のコンデンサーは蓄えた電気を逃がせなくなります。そのため、(1)のときの電圧(\(V/2\))が保たれます。電界の強さは電圧を距離で割ったものなので、\(V/2\)を\(d\)で割って計算します。一方、LとMの間はもともと電圧がかかっておらず、スイッチを開いてもその状態は変わらないので、電界はずっと0のままです。

結論と吟味

KL間の電界の強さは \(\displaystyle\frac{V}{2d}\)、LM間の電界の強さは0です。S₁を開くことで電池から切り離され、蓄えられた電荷による電界が維持されるという点がポイントです。

解答 (2) KL間: \(\displaystyle\frac{V}{2d}\), LM間: 0

問(3)

思考の道筋とポイント
初期状態からS₂のみを閉じたときの、極板Mの電位を求める問題です。この状態では、K-L間、L-M間、M-N間の3つのコンデンサーが直列に接続されたものと見なせます。Kがアース(0V)され、Nは電池の負極(-V)に接続されていると考え、全体の合成容量と電気量を求めてから、各部の電位差を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 等価回路: 4枚の極板が、3つの直列コンデンサーを構成していると見なします。
  • 容量と距離の関係: 容量は距離に反比例するため、各部の容量を正しく設定します。(\(C_{KL}=C\), \(C_{LM}=C/2\), \(C_{MN}=C\))
  • 電位の計算: Kを基準(0V)として、Nの電位を-Vと設定します。全体の電気量を求め、M-N間の電位差を計算してMの電位を求めます。

具体的な解説と立式
K-L間、L-M間、M-N間のコンデンサーが直列に接続されていると考えます。それぞれの容量は、
\(C_{KL} = C\)
\(C_{LM} = C/2\) (距離が2dのため)
\(C_{MN} = C\)
この3つの直列合成容量を\(C_2\)とすると、
$$ \frac{1}{C_2} = \frac{1}{C_{KL}} + \frac{1}{C_{LM}} + \frac{1}{C_{MN}} \quad \cdots ① $$
Kはアースされているので \(V_K=0\)。Nは電池の負極側なので \(V_N=-V\)。
回路全体にかかる電位差は \(V_{KN} = V_K – V_N = 0 – (-V) = V\)。
回路に蓄えられる電気量を\(Q’\)とすると、
$$ Q’ = C_2 V \quad \cdots ② $$
極板Mの電位\(V_M\)を求めるには、M-N間の電位差\(\Delta V_{MN}\)を計算し、Nの電位\(V_N\)を基準に考えます。
$$ Q’ = C_{MN} \Delta V_{MN} \quad \cdots ③ $$
KからNへ向かって電位が下がるので、Mの電位はNより高くなります。したがって、\(V_M = V_N + \Delta V_{MN}\) となります。

使用した物理公式

  • コンデンサーの直列合成容量
  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
計算過程

①より、合成容量\(C_2\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C_2} &= \frac{1}{C} + \frac{1}{C/2} + \frac{1}{C} \\[2.0ex]&= \frac{1}{C} + \frac{2}{C} + \frac{1}{C} \\[2.0ex]&= \frac{4}{C}
\end{aligned}
$$
よって、\(C_2 = \displaystyle\frac{C}{4}\)。
②より、蓄えられる電気量\(Q’\)は、
$$
\begin{aligned}
Q’ &= \frac{C}{4} V \\[2.0ex]&= \frac{CV}{4}
\end{aligned}
$$
③より、M-N間の電位差\(\Delta V_{MN}\)は、
$$
\begin{aligned}
\Delta V_{MN} &= \frac{Q’}{C_{MN}} \\[2.0ex]&= \frac{CV/4}{C} \\[2.0ex]&= \frac{V}{4}
\end{aligned}
$$
Nの電位は \(V_N = -V\) であり、Mの方が電位が高いので、Mの電位\(V_M\)は、
$$
\begin{aligned}
V_M &= V_N + \Delta V_{MN} \\[2.0ex]&= -V + \frac{V}{4} \\[2.0ex]&= -\frac{3V}{4}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

3つのコンデンサー(容量C, C/2, C)が直列につながっていると考えます。まず、回路全体の「電気のため難さ」(容量の逆数)を足し合わせ、全体の容量を求めます。次に、全体の電圧Vと全体の容量から、回路に流れる電気の量を計算します。最後に、M-N間のコンデンサーに注目し、「電気の量=容量×電圧」の関係からM-N間の電圧を計算します。Nの電位が-Vなので、そこから計算した電圧分だけ電位を上げることで、Mの電位が求まります。

結論と吟味

極板Mの電位は \(-\displaystyle\frac{3V}{4}\) です。この問題は、与えられた図から物理的に妥当な等価回路を構成し、電位の基準を正しく設定して計算する能力が問われる難問です。模範解答のロジックに従うことで、この結論に至ります。

解答 (3) \(-\displaystyle\frac{3V}{4}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 等価回路への変換能力:
    • 核心: 複数の金属板が並んだ配置を、コンデンサーの直列・並列接続で構成される「等価回路」として正しくモデル化することが、この問題の出発点であり最も重要なスキルです。
      • (1)では、スイッチの状態から回路構成を解釈する必要がありますが、模範解答は「容量Cのコンデンサー2つの直列接続」というモデルを採用しています。
      • (3)では、4枚の極板が3つのコンデンサー(K-L, L-M, M-N)の直列接続を構成すると見なします。
    • 理解のポイント: スイッチの開閉や導線での接続が、どの極板を等電位にし、どの部分をコンデンサーとして機能させる(あるいはさせない)のかを正確に読み取ることが、正しい等価回路を描く鍵となります。
  • 電位の追跡と計算:
    • 核心: アース(電位0V)を基準として、回路の各点の電位を決定する能力が不可欠です。電池は電位差を生み出す装置であり、アースの位置によって各極板の絶対的な電位が決まります。
    • 理解のポイント:
      1. まずアース点の電位を0と定めます。
      2. 電池によって生じる電位差\(V\)を考慮し、電池の両極の電位を決定します(例:Kがアースなら\(V_K=0\), \(V_N=-V\))。
      3. コンデンサーによる電位降下(または上昇)を \( \Delta V = Q/C \) で計算します。
      4. 基準点から出発し、電位差を順に足し引きしていくことで、目的の点の電位を求めます(例:\(V_M = V_N + \Delta V_{MN}\))。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンデンサーへの導体板の挿入: 平行板コンデンサーの間に、極板と同じ面積の導体板を挿入する問題。挿入された導体板によって、元のコンデンサーが2つの直列コンデンサーに分割されたと見なして解きます。
    • 複雑なスイッチング回路: 複数のコンデンサーとスイッチで構成され、スイッチの切り替えによって電荷が再分配される問題。電荷保存則と、最終状態での各部の電位の関係(キルヒホッフの法則に類似)を連立させて解くことが多いです。
    • 誘電体の部分挿入: (3)のように空間が複数の領域に分かれている場合と同様に、誘電体が部分的に挿入された場合も、それぞれの部分を独立したコンデンサーの直列(または並列)接続として扱います。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. スイッチとアースの位置を最優先で確認する: 回路の接続関係と電位の基準を確定させることが全ての基本です。
    2. 等価回路を描いてみる: 複雑な極板配置は、必ずコンデンサーの記号を使った等価回路図に描き直しましょう。これにより、接続関係(直列か並列か)が一目瞭然になります。
    3. 容量を距離から求める: 各コンデンサーの容量が与えられていない場合、基準となる容量\(C\)と極板間隔\(d\)の関係 (\(C \propto 1/d\)) を使って、各部分の容量を\(C\)で表現します。
    4. 電荷と電位の関係を意識する: 直列接続なら「電気量\(Q\)が共通」、並列接続なら「電位差\(V\)が共通」という基本原則を常に念頭に置き、どちらの物理量から計算を始めるべきか戦略を立てます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 等価回路の誤認:
    • 誤解: (3)でLが浮いている(孤立している)にもかかわらず、これを無視してK-M間のコンデンサーとしてしまうなど、等価回路の構成を間違える。
    • 対策: 孤立した導体(この問題の(3)のL)も、静電誘導によって電荷が偏り、コンデンサーの一部として機能することを理解する必要があります。「間に挟まれた板は、2つのコンデンサーの極板を兼ねる」と考え、機械的に直列接続の等価回路を描く練習をしましょう。
  • 電位の符号ミス:
    • 誤解: 電位差を計算した後、基準電位に足すべきか引くべきかを間違える。特に、電池の向きや電荷の正負を考慮する際に混乱しやすいです。
    • 対策: 電界の向きと電位の関係を常に意識しましょう。「電界の向きに沿って進むと電位は下がる」という大原則に立ち返ります。例えば、正電荷が蓄えられた極板から負電荷の極板へ向かう方向に電界があるので、その向きに電位は降下します。図に電位の高い点(H)と低い点(L)を書き込むとミスが減ります。
  • 問題の前提条件の解釈違い:
    • 誤解: (1)のように、問題文や図の記述が物理的に曖昧、あるいは複数の解釈が可能な場合、一つの解釈に固執してしまい、模範解答の意図とずれてしまう。
    • 対策: 難問では、解答のロジックから問題の意図を逆算する柔軟性も必要になります。もし自分の解釈で計算結果が解答と合わない場合、「アースの位置が違うのではないか」「電池の向きが逆なのではないか」など、前提条件の解釈を疑ってみる視点も有効です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電位のグラフ化: 横軸に極板の位置(K, L, M, N)、縦軸に電位をとったグラフを描くと、極板間の電位変化が視覚的に理解できます。コンデンサーの部分は電位が直線的に変化(傾きが電界の強さ)し、導線で接続された部分は水平な線(等電位)になります。
    • 電荷の分布図: 各極板の表面に「+」や「-」の記号を描き込み、静電誘導の様子をイメージします。(3)では、Kに近いLの面には負電荷、Mに近いLの面には正電荷が誘導される、といった具体的な電荷分布を想像すると、現象の理解が深まります。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 等価回路図の徹底: 必ず、問題の図を単純な回路図記号(コンデンサー、電池、スイッチ、アース)で描き直すプロセスを挟みましょう。
    • 電位情報の書き込み: 回路図の各点に、分かっている電位(\(0, V, -V\)など)や、求めたい電位(\(V_L, V_M\))を書き込みます。これにより、計算の目標が明確になります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 直列合成容量の公式 (\(\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \sum \frac{1}{C_i}\)):
    • 選定理由: (1)や(3)のように、複数のコンデンサーが電荷の逃げ道なく一列に接続されている(と見なせる)場合、回路全体の振る舞いを一つのコンデンサーとして扱うために使用します。
    • 適用根拠: 直列接続では、各コンデンサーの電位差の和が全体の電位差に等しく (\(V = V_1 + V_2 + \dots\))、電気量はすべて等しい (\(Q = Q_1 = Q_2 = \dots\)) という性質から導かれます。\(V=Q/C\) を代入するとこの公式が得られます。
  • \(Q=CV\):
    • 選定理由: 合成容量と全体の電圧から全体の電気量を求める、あるいは、部分の電気量と部分の容量から部分の電位差を求める、といった計算の核となる関係式です。
    • 適用根拠: コンデンサーの基本定義式であり、マクロな視点(回路全体)でもミクロな視点(各コンデンサー)でも適用できます。
  • \(E = V/d\):
    • 選定理由: (2)のように、極板間の電位差と距離が分かっているときに、電界の強さを求めるために使います。
    • 適用根拠: 一様な電場における電位と電場の関係を示す、基本的な公式です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) Lの電気量と電位:
    • 戦略: 問題の状況を「容量Cのコンデンサー2つの直列接続」と解釈し、合成容量、全電気量、部分の電位差の順に計算する。
    • フロー: ①等価回路を特定 → ②合成容量 \(C_1\) を計算 → ③全電気量 \(Q = C_1 V\) を計算 → ④Lの電気量は \(-Q\) と決定 → ⑤K-L間の電位差 \(\Delta V_{KL} = Q/C\) を計算 → ⑥Kの電位を基準にLの電位 \(V_L = V_K – \Delta V_{KL}\) を計算。
  2. (2) KL間、LM間の電界:
    • 戦略: S₁を開くと電荷が保存されることを利用する。(1)で求めた電位差を元に電界を計算する。
    • フロー: ①(1)の状態でのKL間の電位差 \(V_1\) を確認 → ②\(E_1 = V_1/d\) でKL間の電界を計算 → ③(1)の状態でLとMは等電位だったため、LM間の電位差は0。よって電界も0と判断。
  3. (3) Mの電位:
    • 戦略: K-L-M-Nを3つの直列コンデンサーと見なし、合成容量、全電気量、部分の電位差を計算してMの電位を求める。
    • フロー: ①各部の容量(\(C, C/2, C\))を特定 → ②3つの直列合成容量 \(C_2\) を計算 → ③全電気量 \(Q’ = C_2 V\) を計算 → ④M-N間の電位差 \(\Delta V_{MN} = Q’/C_{MN}\) を計算 → ⑤Nの電位 \(V_N\) を基準にMの電位 \(V_M = V_N + \Delta V_{MN}\) を計算。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 容量の逆数計算: 直列合成容量の計算では、逆数の和を計算した後に、もう一度逆数を取るのを忘れないようにしましょう。(\(\frac{1}{C_2} = \frac{4}{C}\) で満足せず、\(C_2 = \frac{C}{4}\) まで計算する)
  • 文字式の整理: 計算過程では、\(C\)や\(V\)といった文字をうまく使い、最後まで文字式のまま計算を進めると、途中の物理的意味が分かりやすく、ミスも減ります。
  • 電位の足し算・引き算の検算: (3)でMの電位を求める際、Kを基準に \(V_M = V_K – \Delta V_{KL} – \Delta V_{LM}\) と計算することも可能です。N基準の計算結果と一致するかどうかで検算ができます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (1) 直列接続なので、各コンデンサーにかかる電圧は全体の電圧Vより小さくなるはず(\(V/2\))。妥当です。
    • (3) K(0V)とN(-V)の間にL, Mがあります。L, Mの電位は0と-Vの間に入るはずです。\(V_M = -3V/4\) はこの範囲内にあり、妥当です。また、容量が小さいL-M間に最も大きな電圧がかかるため、電位の変化が一番大きいことも確認できます。
  • 解答のロジックの一貫性: この問題は特に解釈が難しいため、(1)と(3)で採用した「アースの位置」や「電池の接続方法」の解釈に一貫性があるかを確認することが重要です(ただし、この問題自体が設問ごとに異なる状況を想定している可能性もあります)。

335 コンデンサーの接続

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、あらかじめ充電された2つのコンデンサーを、さらに電池を含む回路に接続し直したときに、電荷がどのように再配分され、最終的に各コンデンサーの電圧がどうなるかを問う問題です。コンデンサーの電荷の再配分における「電気量保存則」と、回路の電位の関係(キルヒホッフの第2法則)を正しく立式し、連立方程式を解く能力が試されます。

与えられた条件
  • コンデンサー1: 容量 \(C_1 = 3.0 \, \mu\text{F}\), 初期充電電圧 \(100 \, \text{V}\)
  • コンデンサー2: 容量 \(C_2 = 1.0 \, \mu\text{F}\), 初期充電電圧 \(200 \, \text{V}\)
  • 接続する電池の電圧: \(V = 100 \, \text{V}\)
  • 電位の基準: 各コンデンサーの右側の極板を電位の基準とする。これは、最終状態での各コンデンサーの電圧(電位差)を、右側極板を0Vとしたときの左側極板の電位として定義することを意味します。
  • 初期の極性: 図に示されている通り。
問われていること
  • (1) 図(1)の接続での、スイッチを入れた後の各コンデンサーの電圧 \(V_1, V_2\)。
  • (2) 図(2)の接続での、スイッチを入れた後の各コンデンサーの電圧 \(V_1′, V_2’\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コンデンサーの電荷再配分」です。スイッチを入れることで、孤立していた部分の電荷が移動し、新たな定常状態に達します。このとき、2つの重要な法則が成り立ちます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気量保存則: スイッチを入れる前後で、回路の中で外部から孤立している部分(図では2つのコンデンサーの間の導線部分)の総電気量は変化しません。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 閉回路を一周すると、電位の上がり下がりの合計はゼロになります。この問題では、2つのコンデンサーの電圧の和が電池の電圧に等しくなります。
  3. コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)。電気量、電気容量、電圧の関係を正しく扱います。特に、電圧の正負と電荷の極性の関係に注意が必要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. スイッチを入れる前の、各コンデンサーの各極板の電気量を計算します。このとき、極性の向きに注意します。
  2. スイッチを入れた後の、求めたい電圧を未知数(例:\(V_1, V_2\))として設定します。
  3. 「電気量保存則」と「キルヒホッフの第2法則」を用いて、未知数に関する連立方程式を立てます。
  4. 連立方程式を解いて、各コンデンサーの電圧を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
図(1)の回路について、スイッチを入れた後のコンデンサー1と2の電圧を求めます。まず、スイッチを入れる前の状態を整理し、電気量保存則を適用する部分(孤立部分)の総電気量を計算します。次に、スイッチを入れた後の回路について、電圧の関係式と電気量保存の式を立てて連立させます。
この設問における重要なポイント

  • 初期電気量の計算: スイッチを入れる前の各コンデンサーの電気量を、極性を考慮して計算します。
    • コンデンサー1: \(Q_1 = C_1 \times 100\)。左が+, 右が-。
    • コンデンサー2: \(Q_2 = C_2 \times 200\)。左が+, 右が-。
  • 孤立部分の特定: スイッチを入れると、コンデンサー1の右側極板とコンデンサー2の左側極板がつながった部分が、回路の他の部分から孤立します。この部分の電気量の総和が保存されます。
  • 電圧の関係式: スイッチを入れた後、コンデンサー1と2は直列に接続され、その両端に100Vの電池がつながっています。したがって、2つのコンデンサーの電圧の和は100Vになります。

具体的な解説と立式
スイッチを入れる前の、孤立部分の電気量を計算します。孤立部分は、コンデンサー1の右側極板とコンデンサー2の左側極板です。

  • コンデンサー1の右側極板の電気量: \(q_{1\text{右}} = -C_1 \times 100 = -3.0 \times 10^{-6} \times 100 = -300 \times 10^{-6}\) [C]
  • コンデンサー2の左側極板の電気量: \(q_{2\text{左}} = +C_2 \times 200 = +1.0 \times 10^{-6} \times 200 = +200 \times 10^{-6}\) [C]

よって、スイッチを入れる前の孤立部分の総電気量 \(Q_{\text{孤立}}\) は、
$$ Q_{\text{孤立}} = q_{1\text{右}} + q_{2\text{左}} = (-300 + 200) \times 10^{-6} = -100 \times 10^{-6} \text{ [C]} $$
次に、スイッチを入れた後の状態を考えます。
コンデンサー1の電圧を\(V_1\)、コンデンサー2の電圧を\(V_2\)とします。問題の定義より、電圧は右側極板を基準とした左側極板の電位です。
回路全体を見ると、2つのコンデンサーと電池が直列につながっているので、電圧の関係は、
$$ V_1 + V_2 = 100 \quad \cdots ① $$
スイッチを入れた後の孤立部分の総電気量 \(Q’_{\text{孤立}}\) は、

  • コンデンサー1の右側極板の電気量: \(q’_{1\text{右}} = -C_1 V_1 = -3.0 \times 10^{-6} V_1\)
  • コンデンサー2の左側極板の電気量: \(q’_{2\text{左}} = +C_2 V_2 = +1.0 \times 10^{-6} V_2\)

$$ Q’_{\text{孤立}} = -3.0 \times 10^{-6} V_1 + 1.0 \times 10^{-6} V_2 $$
電気量保存則より \(Q_{\text{孤立}} = Q’_{\text{孤立}}\) なので、
$$ -100 \times 10^{-6} = -3.0 \times 10^{-6} V_1 + 1.0 \times 10^{-6} V_2 $$
両辺を \(1.0 \times 10^{-6}\) で割ると、
$$ -100 = -3.0 V_1 + V_2 \quad \cdots ② $$
①と②の連立方程式を解いて、\(V_1\)と\(V_2\)を求めます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
  • 電気量保存則
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
計算過程

式②を \(V_2\) について解くと、
$$ V_2 = 3.0 V_1 – 100 $$
これを式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
V_1 + (3.0 V_1 – 100) &= 100 \\[2.0ex]4.0 V_1 &= 200 \\[2.0ex]V_1 &= 50 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
求めた\(V_1\)を式①に代入して\(V_2\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
50 + V_2 &= 100 \\[2.0ex]V_2 &= 50 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

スイッチを入れると、2つのコンデンサーの間で電気が移動し、新しいバランス状態になります。このとき、「コンデンサーの間の孤立した部分の電気の総量は変わらない」というルール(電気量保存則)と、「2つのコンデンサーの電圧を足すと、電池の電圧100Vになる」というルールが成り立ちます。この2つのルールを数式にして連立方程式を解くことで、最終的なそれぞれの電圧が求まります。

結論と吟味

コンデンサー1の電圧は \(50 \, \text{V}\)、コンデンサー2の電圧は \(50 \, \text{V}\) です。
最終的な電気量を確認してみましょう。
\(q’_{1\text{右}} = -3.0 \times 10^{-6} \times 50 = -150 \times 10^{-6}\) [C]\(q’_{2\text{左}} = +1.0 \times 10^{-6} \times 50 = +50 \times 10^{-6}\) [C]孤立部分の総電気量は \((-150 + 50) \times 10^{-6} = -100 \times 10^{-6}\) [C] となり、初期状態と一致しており、計算は妥当です。

解答 (1) コンデンサー1: 50 V, コンデンサー2: 50 V

問(2)

思考の道筋とポイント
図(2)の回路について、同様にスイッチを入れた後の電圧を求めます。図(1)との違いは、コンデンサー2の初期の極性が逆になっている点です。これにより、電気量保存則を適用する際の初期電気量の計算が変わります。
この設問における重要なポイント

  • 初期電気量の再計算: コンデンサー2の極性が逆なので、孤立部分の電気量を計算し直します。
    • コンデンサー1: 左が+, 右が-。
    • コンデンサー2: 左が-, 右が+。
  • 孤立部分の特定: (1)と同様に、コンデンサー1の右側極板とコンデンサー2の左側極板が孤立部分です。
  • 立式の枠組みは同じ: 電圧の関係式と電気量保存則で連立方程式を立てるという流れは(1)と全く同じです。

具体的な解説と立式
スイッチを入れる前の、孤立部分の電気量を計算します。

  • コンデンサー1の右側極板の電気量: \(q_{1\text{右}} = -C_1 \times 100 = -3.0 \times 10^{-6} \times 100 = -300 \times 10^{-6}\) [C]
  • コンデンサー2の左側極板の電気量: \(q_{2\text{左}} = -C_2 \times 200 = -1.0 \times 10^{-6} \times 200 = -200 \times 10^{-6}\) [C]

よって、スイッチを入れる前の孤立部分の総電気量 \(Q_{\text{孤立}}\) は、
$$ Q_{\text{孤立}} = q_{1\text{右}} + q_{2\text{左}} = (-300 – 200) \times 10^{-6} = -500 \times 10^{-6} \text{ [C]} $$
次に、スイッチを入れた後の状態を考えます。
コンデンサー1の電圧を\(V_1’\)、コンデンサー2の電圧を\(V_2’\)とします。
電圧の関係は(1)と同じく、
$$ V_1′ + V_2′ = 100 \quad \cdots ③ $$
スイッチを入れた後の孤立部分の総電気量 \(Q’_{\text{孤立}}\) は、
$$ Q’_{\text{孤立}} = -C_1 V_1′ + C_2 V_2′ = -3.0 \times 10^{-6} V_1′ + 1.0 \times 10^{-6} V_2′ $$
電気量保存則より \(Q_{\text{孤立}} = Q’_{\text{孤立}}\) なので、
$$ -500 \times 10^{-6} = -3.0 \times 10^{-6} V_1′ + 1.0 \times 10^{-6} V_2′ $$
両辺を \(1.0 \times 10^{-6}\) で割ると、
$$ -500 = -3.0 V_1′ + V_2′ \quad \cdots ④ $$
③と④の連立方程式を解いて、\(V_1’\)と\(V_2’\)を求めます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q=CV\)
  • 電気量保存則
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
計算過程

式④を \(V_2’\) について解くと、
$$ V_2′ = 3.0 V_1′ – 500 $$
これを式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
V_1′ + (3.0 V_1′ – 500) &= 100 \\[2.0ex]4.0 V_1′ &= 600 \\[2.0ex]V_1′ &= 150 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
求めた\(V_1’\)を式③に代入して\(V_2’\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
150 + V_2′ &= 100 \\[2.0ex]V_2′ &= -50 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)と考え方は同じですが、今回はコンデンサー2のプラス・マイナスが逆向きに接続されています。そのため、スイッチを入れる前の「孤立部分の電気の総量」が(1)のときと異なります。この新しい電気の総量を使って、(1)と全く同じ手順で連立方程式を立てて解くと、最終的な電圧が求まります。

結論と吟味

コンデンサー1の電圧は \(150 \, \text{V}\)、コンデンサー2の電圧は \(-50 \, \text{V}\) です。
\(V_2’\)が負の値になったということは、スイッチを入れた後、コンデンサー2の極性が逆転した(左側極板が負、右側極板が正になった)ことを意味します。
最終的な電気量を確認してみましょう。
\(q’_{1\text{右}} = -3.0 \times 10^{-6} \times 150 = -450 \times 10^{-6}\) [C]\(q’_{2\text{左}} = +1.0 \times 10^{-6} \times (-50) = -50 \times 10^{-6}\) [C]孤立部分の総電気量は \((-450 – 50) \times 10^{-6} = -500 \times 10^{-6}\) [C] となり、初期状態と一致しており、計算は妥当です。

解答 (2) コンデンサー1: 150 V, コンデンサー2: -50 V

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気量保存則の適用:
    • 核心: この問題の根幹をなすのは、回路の一部を外部から切り離した「孤立系」において、その内部の総電気量は操作の前後で不変である、という「電気量保存則」です。スイッチを入れることで、2つのコンデンサーの間の導線でつながれた部分(コンデンサー1の右極板とコンデンサー2の左極板)がこの孤立系を形成します。
    • 理解のポイント: この法則を立式するためには、①スイッチを入れる前の孤立系の総電気量を、極性を考慮して正確に計算すること、②スイッチを入れた後の孤立系の総電気量を、未知の電圧(\(V_1, V_2\))を用いて表現すること、の2ステップが必要です。この2つを等号で結ぶことで、解くべき方程式の一つが得られます。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則):
    • 核心: もう一つの重要な法則は、閉回路における電位の関係です。スイッチを入れた後の回路は、電池、コンデンサー1、コンデンサー2が直列に接続された一つの閉回路を形成します。この閉回路を一周したときの電位の上昇と下降の合計はゼロになります。
    • 理解のポイント: この法則から、「コンデンサー1の電圧とコンデンサー2の電圧の和が、電池の電圧に等しい」(\(V_1 + V_2 = 100\))という、もう一つの方程式が導かれます。電気量保存則の式とこの電圧則の式を連立させることで、未知数を解くことができます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 複数のコンデンサーとスイッチからなる回路: 3つ以上のコンデンサーが複雑に接続された回路で、スイッチを切り替える問題。どの部分が「孤立系」になるかを見極め、それぞれの孤立系について電気量保存則を立てる必要があります。
    • 接地(アース)を含む回路: 回路の一部がアースされている場合、その点の電位が0Vであることを利用して、各点の電位を具体的に求めていく問題。キルヒホッフの法則がより直接的に適用しやすくなります。
    • エネルギーの損失を問う問題: スイッチを入れた際に、電荷が移動する導線部分でジュール熱が発生し、静電エネルギーの一部が失われます。操作前後の静電エネルギーの総和(\(\sum \frac{1}{2}CV^2\))を計算し、その差から失われたエネルギーを求める問題に応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 初期状態の整理: まず、スイッチを入れる前の各コンデンサーの「容量」「電圧」「極性」を図に明確に書き込み、各極板の電気量(\(Q=CV\)、符号に注意)を計算しておきます。これが全ての計算の元データになります。
    2. 孤立系の特定: スイッチを入れた後、回路のどの部分が外部(電池など)から切り離されているかを見つけます。この「孤立系」が電気量保存則の舞台です。
    3. 電圧の向き(極性)の定義を確認する: この問題のように「右側の極板を基準とする」といった指定がある場合、電圧の正負が何を表すのかを正確に把握します。この定義に従って、\(Q=CV\)の式における電荷の符号を決定します。
    4. 2つの法則で立式: 「電気量保存則」と「電圧則(キルヒホッフの第2法則)」の2つの視点から式を立てる、という定石を思い出しましょう。未知数が2つなら、この2式で必ず解けます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電気量の符号ミス:
    • 誤解: 電気量保存則を立てる際に、各極板の電荷のプラス・マイナスを間違える。特に、(2)のように初期の極性が逆になっている場合に混乱しやすいです。
    • 対策: 図に「+」「-」をはっきりと書き込み、機械的に計算しましょう。電圧の定義(どちらの極板を基準にするか)から、電荷の符号が決まります。例えば「右基準の電圧V」が正なら、左極板の電荷は\(+CV\)、右極板の電荷は\(-CV\)となります。このルールを一貫して適用することが重要です。
  • 孤立系の取り違え:
    • 誤解: 電気量保存則を適用する部分を間違える。例えば、コンデンサーの左側極板と右側極板のペアで考えてしまうなど。
    • 対策: 孤立系とは「スイッチを入れた後も、導線だけでつながっていて、電池など外部に接続されていない部分」です。図をよく見て、スイッチによってどの部分がつながり、どの部分が閉じた世界を形成するのかを正確に把握しましょう。
  • 最終的な電圧の符号の解釈ミス:
    • 誤解: (2)の答え \(V_2′ = -50 \, \text{V}\) のように、電圧が負になったときに、その物理的意味を理解できない。
    • 対策: 電圧の定義に立ち返りましょう。「右側極板を基準とした左側極板の電位」が-50Vだということは、左側極板の電位が右側極板より50V低い、ということです。これは、スイッチを入れる前とは極性が逆転したことを意味します。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 水槽モデル: コンデンサーを水槽、電気量を水の量、電圧を水位と見なすアナロジーが有効です。
      • 初期状態: 高さの違う(電圧が違う)水(電気量)が入った2つの水槽(コンデンサー)があります。
      • スイッチON: 2つの水槽を底でパイプでつなぎ、さらにポンプ(電池)で全体の水位差を一定に保つイメージです。水が移動(電荷が再配分)し、新しい水位(電圧)で安定します。
      • 孤立系: 2つの水槽をつなぐパイプの中の水(孤立系の電荷)の総量は、移動の前後で変わりません。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 操作前と操作後の図を並べて描く: スイッチを入れる前と後の回路図を並べて描き、それぞれの状態での情報を書き込むと、変化が比較しやすくなります。
    • 電荷の符号と量を明記: 各極板に、計算した電気量の符号(+, -)と大きさ(例: \(-300 \mu C\))を書き込みます。これにより、電気量保存の立式が視覚的に行え、ミスが減ります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 電気量保存則:
    • 選定理由: スイッチを入れることで電荷の移動が起こるが、回路の一部は外部との電荷のやり取りがない「閉じた系」をなすため。この「不変量」に着目することで、変化前後の状態を結びつける方程式が得られます。
    • 適用根拠: 電荷は勝手に生まれたり消えたりしない、という物理学の基本法則に基づいています。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則):
    • 選定理由: スイッチを入れた後の定常状態では、回路の各点の電位は一定の値に落ち着きます。この電位の整合性を記述するために必要です。
    • 適用根拠: 電場が保存力であること(静電ポテンシャルが存在すること)に由来する法則です。閉回路を一周して同じ場所に戻ってくれば、電位も元の値に戻る、ということを数式で表現しています。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 初期状態の分析:
    • フロー: ①各コンデンサーの初期電圧と極性を確認 → ②\(Q=CV\) を用いて、各極板の初期電気量を符号付きで計算する。
  2. 連立方程式の立式:
    • フロー: ①スイッチを入れた後の回路図を描く → ②孤立系を特定し、その部分の初期の総電気量を計算する → ③最終状態の電圧を \(V_1, V_2\) と置き、孤立系の最終的な総電気量を \(V_1, V_2\) で表す → ④電気量保存則の式 (\(Q_{\text{初}} = Q_{\text{後}}\)) を立てる → ⑤電圧則の式 (\(V_1 + V_2 = V_{\text{電池}}\)) を立てる。
  3. 計算と解の吟味:
    • フロー: ①2つの式を連立させて解き、\(V_1, V_2\) を求める → ②(任意)求まった電圧を使って最終的な各極板の電気量を計算し、電気量保存が成り立っているか検算する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の統一: この問題では、容量が \(\mu\text{F}\) (\(10^{-6}\text{F}\)) で与えられています。電気量保存の式を立てる際、両辺で \(10^{-6}\) の部分は打ち消し合うので、計算上は \(C_1=3.0, C_2=1.0\) として扱っても問題ありません。例えば、\( -3.0 \times 100 + 1.0 \times 200 = -3.0 V_1 + 1.0 V_2 \) のように、\(\mu\)を省略して計算すると、計算が簡潔になりミスを減らせます。
  • 連立方程式の丁寧な計算: 加減法や代入法を用いる際に、移項や分配法則での符号ミスに細心の注意を払いましょう。計算過程を省略せず、一行ずつ丁寧に書くことが確実です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 検算の習慣:
    • 最も有効な検算は、求まった最終電圧 \(V_1, V_2\) を使って、孤立系の最終的な総電気量を計算し直すことです。これが、最初に計算した初期の総電気量と一致すれば、計算が正しいことの強力な裏付けになります。
    • (1)の検算: \(Q’_{\text{孤立}} = -3.0 \times 50 + 1.0 \times 50 = -150 + 50 = -100\)。初期値 \(-300+200=-100\) と一致。OK。
    • (2)の検算: \(Q’_{\text{孤立}} = -3.0 \times 150 + 1.0 \times (-50) = -450 – 50 = -500\)。初期値 \(-300-200=-500\) と一致。OK。
  • 物理的な直感との照らし合わせ:
    • (1)では、正に帯電した極板と負に帯電した極板をつなぐため、電荷が打ち消し合う方向に移動します。
    • (2)では、負に帯電した極板同士をつなぐため、より大きな負電荷を持つコンデンサー1からコンデンサー2へ負電荷が移動する(あるいは正電荷が逆向きに移動する)ことが予想されます。結果として、コンデンサー1の電圧は下がり、コンデンサー2の電圧は上がる(-200Vから-50Vへ)はずですが、電池の影響でより複雑な変化をします。しかし、最終的な値が物理的に大きく外れていないか、大まかな傾向を考えることは有効です。

336 コンデンサーの接続

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、スイッチの切り替えによってコンデンサーの接続状態が変化し、電荷が再分配される様子を追う問題です。コンデンサー回路の基本的な法則を段階的に適用する能力が問われます。
この問題の核心は、各操作において「どの部分が電気的に孤立しているか」を正確に見抜き、電気量保存の法則を適用することです。また、直列・並列接続の性質や、初期電荷を持つコンデンサーの扱いも重要なポイントとなります。

与えられた条件
  • コンデンサーの電気容量: \(C_1 = C\), \(C_2 = 2C\), \(C_3 = 4C\)
  • 電池の電圧: \(V\)
  • 初期状態: すべてのコンデンサーの電荷は \(0\)
問われていること
  • (1) S₁のみを閉じたときの、K₂の電圧 \(V_2\)。
  • (2) S₁を開きS₂を閉じたときの、K₂にかかる電圧 \(V_{2a}\) と K₃の静電エネルギー \(U_3\)。
  • (3) S₂を閉じたままK₃の極板間隔を2倍にしたときの、K₃の電気容量 \(C’_3\)、K₃にかかる電圧 \(V_{3b}\)、K₂に蓄えられる電気量 \(Q_{2b}\)。
  • (4) S₂を開きS₁を閉じたときの、K₁の電圧 \(V_{1c}\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「スイッチの切り替えとコンデンサーの電荷再分配」です。各ステップで回路の状態がどう変わるかを正確に把握することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの基本式: \(Q=CV\) の関係を常に意識します。
  2. 直列・並列接続: 直列接続では電気量が等しく、並列接続では電圧が等しくなるという性質を使い分けます。
  3. 電気量保存の法則: 電池から切り離された「孤立部分」では、電荷の総和は操作の前後で一定に保たれます。これがこの問題で最も重要な法則です。
  4. キルヒホッフの第二法則(電圧則): 閉回路を一周したときの電位の変化の和はゼロになります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問の操作が行われた後の回路図を描き、コンデンサーの接続状態(直列、並列、孤立)を明確にします。
  2. (1)では、単純な直列接続の問題として解きます。
  3. (2)と(3)では、電池から切り離された部分系に注目し、電気量保存の法則を適用して未知数を求めます。
  4. (4)では、初期電荷を持つコンデンサーが再接続される問題として、電気量保存の法則と電圧則を連立させて解きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
S₁のみを閉じたとき、コンデンサーK₁とK₂は電池Vに対して直列に接続されます。直列接続されたコンデンサーの性質を用いて、K₂にかかる電圧を求めます。解法はいくつか考えられます。
この設問における重要なポイント

  • 直列接続の性質: K₁とK₂に蓄えられる電気量 \(Q_1\) と \(Q_2\) は等しくなります (\(Q_1=Q_2=Q\))。
  • 電圧則: K₁とK₂の電圧の和は、電池の電圧Vに等しくなります (\(V_1+V_2=V\))。
  • 電圧の配分: \(Q=CV\) より \(V=Q/C\)。電気量Qが一定のとき、電圧Vは電気容量Cに反比例します。

具体的な解説と立式

解法1: 電圧の比例配分

直列接続では、各コンデンサーにかかる電圧は電気容量に反比例します。したがって、電池の電圧Vが、K₁とK₂の電気容量の逆比、すなわち \(\displaystyle\frac{1}{C} : \displaystyle\frac{1}{2C} = 2:1\) の比で分配されます。
K₂にかかる電圧 \(V_2\) は、全体の電圧Vを \(C:(2C)\) の逆比、つまり \(2C:C\) の比で配分したうちのCに対応する分です。
$$ V_2 = \frac{C}{C+2C} V \quad \cdots ① $$

解法2: 合成容量の利用

まず、K₁とK₂の直列合成容量 \(C_{12}\) を求めます。
$$ \frac{1}{C_{12}} = \frac{1}{C} + \frac{1}{2C} \quad \cdots ② $$
次に、回路全体で蓄えられる電気量 \(Q\) を求めます。この電気量はK₁とK₂のそれぞれに蓄えられる電気量と等しくなります。
$$ Q = C_{12} V \quad \cdots ③ $$
最後に、K₂について \(Q=CV\) の関係を適用して \(V_2\) を求めます。
$$ Q = (2C) V_2 \quad \cdots ④ $$

解法3: 電気量保存と電圧則

K₁とK₂にかかる電圧をそれぞれ \(V_1, V_2\) とします。K₁とK₂の間の導線部分は電気的に孤立しています。初め電荷は0だったので、S₁を閉じた後もこの部分の総電荷は0のままです。K₁の下側極板には \(-CV_1\)、K₂の上側極板には \(+2CV_2\) の電荷が蓄えられるので、電気量保存則は以下のようになります。
$$ -CV_1 + 2CV_2 = 0 \quad \cdots ⑤ $$
また、キルヒホッフの第二法則(電圧則)より、
$$ V_1 + V_2 = V \quad \cdots ⑥ $$
⑤と⑥を連立して \(V_2\) を求めます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 直列接続の電圧則: \(V_{\text{全体}} = V_1 + V_2 + \dots\)
  • 直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2} + \dots\)
  • 電気量保存の法則
計算過程

解法1の計算

式①より、

$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{C}{3C} V \\[2.0ex]&= \frac{1}{3}V
\end{aligned}
$$
解法2の計算

式②より \(C_{12}\) を求めます。

$$ \frac{1}{C_{12}} = \frac{2+1}{2C} $$
$$ \frac{1}{C_{12}} = \frac{3}{2C} $$

よって、\(C_{12} = \displaystyle\frac{2}{3}C\) です。
式③より、回路全体の電気量 \(Q\) は、

$$ Q = \frac{2}{3}CV $$

式④にこの \(Q\) を代入して \(V_2\) を求めます。

$$ \frac{2}{3}CV = 2CV_2 $$

両辺を \(2C\) で割ると、

$$ V_2 = \frac{1}{3}V $$
解法3の計算

式⑤より、\(CV_1 = 2CV_2\)、すなわち \(V_1 = 2V_2\) となります。これを式⑥に代入します。

$$
\begin{aligned}
2V_2 + V_2 &= V \\[2.0ex]3V_2 &= V \\[2.0ex]V_2 &= \frac{1}{3}V
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

電池につながれた2つのコンデンサー(K₁とK₂)が直列になっています。この場合、電気を貯める能力が低い方(容量が小さい方)に多くの電圧がかかります。K₁の容量はC、K₂は2Cなので、K₁の方が電圧が高くなります。全体の電圧Vを、容量の逆の比(2:1)で分け合うため、K₂には全体の1/3の電圧がかかります。

結論と吟味

K₂の電圧は \(\displaystyle\frac{1}{3}V\) です。
3つの異なる解法で同じ結果が得られ、計算の正しさが確認できました。特に、電圧が電気容量に反比例するという関係を直感的に理解しておくと、検算に役立ちます。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{1}{3}V\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の状態からS₁を開き、次にS₂を閉じます。この操作により、(1)で電荷を蓄えたK₂が、電荷のないK₃と並列に接続されます。このとき、K₂の上側極板とK₃の上側極板をつなぐ導線部分は、外部から電気的に孤立しています。したがって、この部分の総電荷は操作の前後で保存されます。この電気量保存の法則を利用して、再分配後の電圧を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 操作の分離: S₁を開くことで、K₁とK₂の系は電池から切り離されます。
  • 孤立系の特定: S₂を閉じると、K₂の上側極板とK₃の上側極板が接続され、一つの孤立系を形成します。
  • 電気量保存則: この孤立系において、S₂を閉じる前と後で電荷の総和は変わりません。
  • 並列接続の性質: S₂を閉じた後のK₂とK₃は並列接続なので、両者にかかる電圧は等しくなります (\(V_{2a} = V_{3a}\))。

具体的な解説と立式
まず、操作前、すなわち(1)の状態でK₂の上側極板に蓄えられていた電気量 \(Q_2\) を計算します。
$$ Q_2 = (2C) V_2 \quad \cdots ① $$
(1)の結果 \(V_2 = \displaystyle\frac{1}{3}V\) を用いると、
$$ Q_2 = 2C \times \frac{1}{3}V = \frac{2}{3}CV \quad \cdots ② $$
次に、S₁を開いてS₂を閉じた後の状態を考えます。K₂とK₃にかかる電圧をそれぞれ \(V_{2a}\), \(V_{3a}\) とします。並列接続なので電圧は等しくなります。
$$ V_{2a} = V_{3a} \quad \cdots ③ $$
このとき、K₂とK₃の上側極板に蓄えられる電荷をそれぞれ \(Q_{2a}\), \(Q_{3a}\) とすると、
$$ Q_{2a} = (2C)V_{2a} $$
$$ Q_{3a} = (4C)V_{3a} $$
K₂とK₃の上側極板からなる孤立部分の電気量保存則より、操作前の電荷 \(Q_2\) が、操作後に \(Q_{2a}\) と \(Q_{3a}\) に分配されます。
$$ Q_2 = Q_{2a} + Q_{3a} \quad \cdots ④ $$
これらの式を連立して \(V_{2a}\) を求め、その後K₃のエネルギー \(U_3\) を計算します。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 電気量保存の法則
  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
計算過程

式②、③、④より、
$$ \frac{2}{3}CV = (2C)V_{2a} + (4C)V_{3a} $$
\(V_{2a} = V_{3a}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{3}CV &= (2C + 4C)V_{2a} \\[2.0ex]\frac{2}{3}CV &= 6CV_{2a} \\[2.0ex]V_{2a} &= \frac{1}{6C} \times \frac{2}{3}CV \\[2.0ex]V_{2a} &= \frac{1}{9}V
\end{aligned}
$$
したがって、K₂にかかる電圧は \(\displaystyle\frac{1}{9}V\) です。
次に、K₃のエネルギー \(U_3\) を計算します。\(V_{3a} = V_{2a} = \displaystyle\frac{1}{9}V\) なので、
$$
\begin{aligned}
U_3 &= \frac{1}{2} C_3 V_{3a}^2 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} (4C) \left(\frac{V}{9}\right)^2 \\[2.0ex]&= 2C \frac{V^2}{81} \\[2.0ex]&= \frac{2CV^2}{81}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

もともとK₂が持っていた電気(電荷)が、新たに接続されたK₃と分け合う、というイメージです。K₂とK₃は並列につながれるので、最終的に両者の電圧は同じになります。電気を分け合った結果、電圧は \(\displaystyle\frac{1}{9}V\) に落ち着きます。この電圧を使って、K₃が蓄えているエネルギーを公式から計算します。

結論と吟味

K₂にかかる電圧は \(\displaystyle\frac{1}{9}V\)、K₃のエネルギーは \(\displaystyle\frac{2CV^2}{81}\) です。
(1)でのK₂の電圧 \(\displaystyle\frac{1}{3}V\) よりも小さくなっており、電荷がより容量の大きいK₃に流れたことで電圧が下がったと解釈でき、物理的に妥当な結果です。

解答 (2) K₂にかかる電圧: \(\displaystyle\frac{1}{9}V\), K₃のエネルギー: \(\displaystyle\frac{2CV^2}{81}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
S₂を閉じたまま、K₃の極板間隔を2倍にします。これによりK₃の電気容量が変化します。K₂とK₃からなる並列部分は、(2)の操作以降、回路の他の部分から孤立しているため、この部分が蓄えている総電荷は変化しません。この電気量保存則を用いて、容量変化後の電圧と電気量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 電気容量の変化: 平行板コンデンサーの電気容量は \(C = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\) で与えられるため、極板間隔dが2倍になると電気容量は1/2になります。
  • 総電荷の保存: K₂とK₃の並列部分に蓄えられている総電荷は、この操作の前後で保存されます。
  • 並列接続の維持: K₂とK₃は並列接続のままなので、操作後の電圧は等しくなります (\(V_{2b} = V_{3b}\))。

具体的な解説と立式
まず、K₃の極板間隔を2倍にした後の新しい電気容量 \(C’_3\) を求めます。
$$ C’_3 = \frac{1}{2} C_3 $$
$$ C’_3 = \frac{1}{2}(4C) = 2C $$
次に、この操作の前後でK₂とK₃の並列部分の総電荷が保存されることを利用します。操作前の総電荷 \(Q_{\text{total}}\) は、(2)でK₂とK₃に蓄えられた電荷の和であり、これは(1)でのK₂の電荷 \(Q_2\) に等しいです。
$$ Q_{\text{total}} = \frac{2}{3}CV \quad \cdots ① $$
操作後のK₂とK₃の電圧を \(V_{2b}\), \(V_{3b}\) とします。並列なので \(V_{2b} = V_{3b}\) です。操作後の総電荷は、
$$ Q’_{\text{total}} = (2C)V_{2b} + C’_3 V_{3b} \quad \cdots ② $$
電気量保存則 \(Q_{\text{total}} = Q’_{\text{total}}\) より、
$$ \frac{2}{3}CV = (2C)V_{2b} + (2C)V_{3b} \quad \cdots ③ $$
この式から電圧 \(V_{3b}\) を求め、最後にK₂に蓄えられる電気量 \(Q_{2b}\) を計算します。

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)
  • 電気量保存の法則
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

K₃の新しい電気容量は \(C’_3 = 2C\) です。
式③に \(V_{2b} = V_{3b}\) を適用して \(V_{3b}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{3}CV &= (2C + 2C)V_{3b} \\[2.0ex]\frac{2}{3}CV &= 4CV_{3b} \\[2.0ex]V_{3b} &= \frac{1}{4C} \times \frac{2}{3}CV \\[2.0ex]V_{3b} &= \frac{1}{6}V
\end{aligned}
$$
したがって、K₃にかかる電圧は \(\displaystyle\frac{1}{6}V\) です。
次に、K₂に蓄えられる電気量 \(Q_{2b}\) を計算します。\(V_{2b} = V_{3b} = \displaystyle\frac{1}{6}V\) なので、
$$
\begin{aligned}
Q_{2b} &= (2C)V_{2b} \\[2.0ex]&= 2C \times \frac{1}{6}V \\[2.0ex]&= \frac{CV}{3}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

K₃の形を変えたことで、電気を貯める能力(電気容量)が半分になりました。K₂とK₃のペアが持っている電気の総量は変わらないので、この電気を新しい能力比で分け合うことになります。その結果、電圧が変化します。この新しい電圧を使って、K₂が蓄えている電気の量を計算します。

結論と吟味

K₃の電気容量は \(2C\)、K₃にかかる電圧は \(\displaystyle\frac{1}{6}V\)、K₂に蓄えられる電気量は \(\displaystyle\frac{CV}{3}\) です。
K₃の容量が \(4C \rightarrow 2C\) に減少したため、並列合成容量も \(6C \rightarrow 4C\) に減少します。総電荷が一定なので、\(Q=C_{\text{合成}}V_{\text{並列}}\) より、電圧は \(V/9 \rightarrow V/6\) へと上昇しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (3) K₃の電気容量: \(2C\), K₃にかかる電圧: \(\displaystyle\frac{1}{6}V\), K₂の電気量: \(\displaystyle\frac{CV}{3}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)の状態からS₂を開き、次にS₁を閉じます。S₂を開くことでK₂とK₃は分離され、それぞれの電荷を保持します。S₁を閉じると、(1)の操作から電荷を保持していたK₁と、(3)の操作後の電荷を持つK₂が、電池Vに直列接続されます。このように、初期電荷を持つコンデンサーが接続される場合がポイントです。この場合、安易に直列接続の合成容量の公式は使えません。K₁とK₂の間の孤立部分における電気量保存の法則と、回路全体の電圧則を連立させて解く必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 初期電荷の確認: S₁を閉じる直前の、K₁とK₂が持つ電荷を正確に把握します。
    • K₁の電荷: (1)の操作以来変化していない。\(Q_1 = \displaystyle\frac{2}{3}CV\)。
    • K₂の電荷: (3)で求めた \(Q_{2b} = \displaystyle\frac{CV}{3}\)。
  • 孤立系の特定: S₁を閉じると、K₁の下側極板とK₂の上側極板が接続され、孤立系を形成します。
  • 立式の組み合わせ: この孤立系での「電気量保存則」と、K₁-K₂-電池Vで構成される閉回路での「電圧則」の2本を連立させます。
  • 注意: 最終的にK₁とK₂に蓄えられる電荷は等しくならないため、直列接続の合成容量の考え方は適用できません。

具体的な解説と立式
S₁を閉じる直前の初期状態を確認します。

  • K₁の下側極板の電荷: \(-Q_1 = -\displaystyle\frac{2}{3}CV\)
  • K₂の上側極板の電荷: \(+Q_{2b} = +\displaystyle\frac{CV}{3}\)

したがって、K₁とK₂の間の孤立部分の総電荷 \(Q_{\text{iso}}\) は、
$$ Q_{\text{iso}} = -Q_1 + Q_{2b} $$
$$ Q_{\text{iso}} = -\frac{2}{3}CV + \frac{CV}{3} = -\frac{CV}{3} \quad \cdots ① $$
S₁を閉じた後の最終状態を考えます。K₁とK₂にかかる電圧をそれぞれ \(V_{1c}, V_{2c}\) とします。このとき、K₁の下側極板とK₂の上側極板の電荷はそれぞれ \(-CV_{1c}\) と \(+2CV_{2c}\) となります。電気量保存則より、この部分の総電荷は \(Q_{\text{iso}}\) に等しいので、
$$ -CV_{1c} + 2CV_{2c} = -\frac{CV}{3} \quad \cdots ② $$
また、回路全体の電圧則より、
$$ V_{1c} + V_{2c} = V \quad \cdots ③ $$
②と③の連立方程式を解いて、\(V_{1c}\) を求めます。

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

式②の両辺をCで割ります。
$$ -V_{1c} + 2V_{2c} = -\frac{V}{3} \quad \cdots ②’ $$
式③より \(V_{2c} = V – V_{1c}\) を導き、これを式②’に代入します。
$$
\begin{aligned}
-V_{1c} + 2(V – V_{1c}) &= -\frac{V}{3} \\[2.0ex]-V_{1c} + 2V – 2V_{1c} &= -\frac{V}{3} \\[2.0ex]-3V_{1c} + 2V &= -\frac{V}{3} \\[2.0ex]3V_{1c} &= 2V + \frac{V}{3} \\[2.0ex]3V_{1c} &= \frac{6V+V}{3} \\[2.0ex]3V_{1c} &= \frac{7V}{3} \\[2.0ex]V_{1c} &= \frac{7V}{9}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

最後の操作では、すでにある程度電気が溜まっているK₁とK₂を、無理やり電池につなぎ直すイメージです。このとき、K₁とK₂の間にある導線部分は、外部から電気が入ってこられない「孤立した島」になります。この島の電気の総量は、つなぎ直す前後で変わりません。この「電気量保存」のルールと、全体の電圧がVになるという「電圧」のルール、この2つの条件を満たすように、最終的な電圧が決まります。

結論と吟味

K₁の電圧は \(\displaystyle\frac{7V}{9}\) です。
このとき、K₂の電圧は \(V_{2c} = V – V_{1c} = V – \displaystyle\frac{7V}{9} = \displaystyle\frac{2V}{9}\) となります。
最終的な電荷は \(Q_{1c} = CV_{1c} = \displaystyle\frac{7}{9}CV\)、\(Q_{2c} = 2CV_{2c} = 2C(\displaystyle\frac{2V}{9}) = \displaystyle\frac{4}{9}CV\) となり、\(Q_{1c} \neq Q_{2c}\) です。これは、初期電荷があったために直列接続でも電荷が等しくならないことを示しており、合成容量の公式が使えない理由を裏付けています。
孤立部分の電荷を検算すると、\(-Q_{1c} + Q_{2c} = -\displaystyle\frac{7}{9}CV + \displaystyle\frac{4}{9}CV = -\displaystyle\frac{3}{9}CV = -\displaystyle\frac{CV}{3}\) となり、初期の総電荷と一致するため、計算は正しいと判断できます。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{7V}{9}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気量保存の法則:
    • 核心: この問題を通して最も重要な法則です。電池から切り離された回路の「孤立部分」では、電荷の総和はどのような操作をしても一定に保たれます。特に(2), (3), (4)では、この法則を適用できる孤立部分を正確に見抜くことが解法の鍵となります。
    • 理解のポイント: (2)では「S₁を開いてからS₂を閉じる」ことでK₂とK₃の並列部分が孤立系になります。(4)では「初期電荷を持つコンデンサー」を接続するため、K₁とK₂の間の導線部分が孤立系となり、その初期電荷の総和が保存されます。この法則が、未知数を決定するための決定的な方程式を与えます。
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則):
    • 核心: 任意の閉回路を一周したときの電位の変化(電圧降下と電圧上昇)の代数和はゼロである、という法則です。
    • 理解のポイント: (1)や(4)のように電池を含む閉回路では、各コンデンサーの電圧の和が電池の電圧に等しい (\(V_1+V_2=V\)) という形で現れます。電気量保存則と連立させることで、未知の電圧を求める強力なツールとなります。
  • コンデンサーの接続(直列・並列):
    • 核心: 回路の接続状態に応じて、電圧や電荷の関係性が決まります。
    • 理解のポイント:
      1. 直列接続: 各コンデンサーに蓄えられる電気量が等しくなります(ただし、初期電荷がない場合に限る)。電圧は電気容量に反比例して配分されます。(1)でこの性質を利用します。
      2. 並列接続: 各コンデンサーにかかる電圧が等しくなります。(2)や(3)でこの性質を利用します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スイッチの多段階切り替え問題: この問題のように、複数のスイッチを順番に操作する問題は典型的です。各ステップでの回路の状態と、どの部分が孤立しているかを丁寧に追うことが重要です。
    • 誘電体の挿入・抜去問題: コンデンサーの極板間に誘電体を出し入れする問題も、本質的には(3)と同じです。誘電体の挿入は電気容量を増加させ、抜去は減少させます。孤立系であれば、総電荷を保存したまま電圧が変化します。
    • 初期電荷を持つコンデンサーの再接続: (4)のように、あらかじめ充電されたコンデンサーを別の回路に接続する問題。これは電気量保存則と電圧則を連立させる典型パターンです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 操作の順番を正確に追う: 「S₁を開いてからS₂を閉じる」のような操作の順序は極めて重要です。順序が違うと、孤立部分が変わってしまい、結果が全く異なります。
    2. 「孤立部分」を探す: 回路図の中で、電池やアースから完全に切り離されている部分がないかを探します。この部分の電荷の総和が「保存量」となり、立式の大きなヒントになります。
    3. 極板の正負を意識する: 電気量を考える際は、どちらの極板に正電荷が、どちらに負電荷が蓄えられているかを常に意識します。特に電気量保存則を立てる際には、正負の符号が非常に重要になります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 初期電荷があるのに直列合成の公式を使う:
    • 誤解: (4)のように初期電荷を持つコンデンサーが直列に接続された場合でも、蓄えられる電気量が等しくなると勘違いし、合成容量の公式 (\(Q=C_{\text{合成}}V\)) を使ってしまう。
    • 対策: 「直列接続で電気量が等しくなる」のは、初期電荷がゼロの場合に限られる、と肝に銘じましょう。初期電荷がある場合は、必ず「電気量保存則」と「電圧則」の連立に立ち返る習慣をつけましょう。
  • 電気量保存則を適用する部分の誤認:
    • 誤解: 回路のどこでも電気量が保存されると勘違いする。あるいは、孤立部分の特定を間違える。
    • 対策: 電気量保存則が成り立つのは、導線で繋がっているが、外部(電池など)との間で電荷のやり取りがない「閉じた部分」だけです。スイッチの開閉によってどの部分が孤立するのかを、操作の都度、回路図に書き込んで確認しましょう。
  • 電圧の比例配分の逆比を間違える:
    • 誤解: (1)の直列接続で、電圧が電気容量に「比例」して配分されると勘違いし、\(V_2 = \displaystyle\frac{2C}{C+2C}V\) としてしまう。
    • 対策: \(Q=CV\) という基本式から、\(V=Q/C\) の関係を導き、「直列でQが一定だから、VはCに反比例する」という理屈を常に思い出すようにしましょう。自信がなければ、(1)の解法3のように、電気量保存と電圧則の連立で解くのが確実です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電荷の移動を水の移動に例える: コンデンサーを「タンク」、電荷を「水」、電圧を「水位」とイメージします。(2)の操作は、「水が入ったタンク(K₂)と空のタンク(K₃)をパイプで繋ぐ」ことに相当します。水は水位が同じになるまで移動し、最終的に両方のタンクの水位(電圧)は等しくなります。
    • 各ステップで回路図を描き直す: 操作ごとに新しい回路図を描き、電荷が分かっているコンデンサーには極板の正負と電荷量を書き込みます。これにより、次の操作の初期状態が一目瞭然となり、思考が整理されます。
    • 孤立部分を色で囲む: 電気量保存則を適用する「孤立部分」を、回路図上でマーカーなどで囲むと視覚的に分かりやすくなり、立式のミスを防げます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 極板の対応関係: 電池の正極につながる極板には正電荷、負極につながる極板には負電荷が蓄えられます。この対応関係を明確に図示します。
    • 電圧の向き: 電圧は電位の高い方から低い方への「電位差」です。矢印などで向きを書き込むと、電圧則を立てる際に符号ミスを防げます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 電気量保存の法則:
    • 選定理由: (2), (3), (4)のように、回路の一部が電池から切り離されて電荷の再分配が起こる状況を記述するため。電荷の出入りがない閉じた系では、電荷の総和は不変であるという物理学の基本原理です。
    • 適用根拠: 回路図から「孤立部分」を特定できた場合に適用します。この法則がなければ、未知数に対して方程式の数が足りず、問題を解くことができません。
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則):
    • 選定理由: (1)や(4)のように、電池を含む閉回路が存在する場合に、各部分の電圧の関係を記述するため。
    • 適用根拠: エネルギー保存則が電気回路に現れた形です。電気量保存則だけでは解けない問題で、もう一つの方程式を立てるために用います。
  • コンデンサーの基本式 (\(Q=CV\)):
    • 選定理由: 電荷、電圧、電気容量という3つの基本物理量の関係を記述する、コンデンサー回路における最も基本的な公式だから。
    • 適用根拠: すべての計算の基礎となります。他の法則で立てた式に登場する \(Q\) や \(V\) を、この式を使って相互に変換します。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) S₁を閉じる:
    • 戦略: K₁, K₂が直列接続。電圧則と、電荷が等しいことを利用。
    • フロー: ① \(V_1+V_2=V\) と \(Q_1=Q_2\) を認識 → ② \(CV_1 = 2CV_2\) より \(V_1=2V_2\) → ③ 連立して \(V_2\) を解く。
  2. (2) S₁を開き、S₂を閉じる:
    • 戦略: K₂, K₃が並列接続。K₂とK₃からなる系で電気量保存。
    • フロー: ① (1)の \(Q_2\) を計算(これが保存される総電荷) → ② 並列なので \(V_{2a}=V_{3a}\) → ③ 電気量保存則 \(Q_2 = Q_{2a}+Q_{3a}\) を立式 → ④ 式を \(V_{2a}\) について解き、\(U_3\) を計算。
  3. (3) K₃の極板間隔を2倍に:
    • 戦略: K₂, K₃の並列は維持。総電荷は(2)から変化なし。K₃の容量が変化。
    • フロー: ① 新しい容量 \(C’_3\) を計算 → ② 総電荷は(2)と同じ (\(Q_{\text{total}} = Q_2\)) → ③ 電気量保存則 \(Q_{\text{total}} = Q’_{2b}+Q’_{3b}\) を立式 → ④ \(V_{2b}=V_{3b}\) を使い、電圧と電荷を計算。
  4. (4) S₂を開き、S₁を閉じる:
    • 戦略: 初期電荷を持つK₁, K₂が電池と直列接続。孤立部分で電気量保存。
    • フロー: ① K₁とK₂の間の孤立部分の初期総電荷を計算 → ② 最終状態での電圧則 \(V_{1c}+V_{2c}=V\) を立式 → ③ 最終状態での電気量保存則を立式 → ④ ②と③を連立して \(V_{1c}\) を解く。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式のまま計算を進める: 各ステップで具体的な数値を代入するのではなく、\(C\) や \(V\) といった文字式のまま計算を進め、最後の最後に整理するのが有効です。これにより、途中の計算ミスが減り、物理的な意味も見失いにくくなります。
  • 分数の計算を丁寧に: この問題は \(1/3\), \(1/9\), \(1/6\) など、分数が多出します。通分や約分などの計算は、焦らず一行ずつ丁寧に行いましょう。
  • 単位と次元の確認: 最終的に求めた電圧の単位が[V]の次元(この問題ではVの定数倍)になっているか、エネルギーの単位が[J]の次元(この問題では\(CV^2\)の定数倍)になっているかを確認する癖をつけましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2)の電圧: (1)でK₂にかかっていた電圧は \(\displaystyle\frac{1}{3}V \approx 0.33V\) でした。(2)では電荷のないK₃と電荷を分け合ったので、電圧は下がるはずです。結果は \(\displaystyle\frac{1}{9}V \approx 0.11V\) となり、直感と一致します。
    • (3)の電圧: (2)の状態から、並列接続されたK₃の容量が減少しました (\(4C \rightarrow 2C\))。孤立系の総電荷が一定のまま合成容量が減少 (\(6C \rightarrow 4C\)) したので、\(Q=C_{\text{合成}}V\) の関係から電圧は上昇するはずです。結果は \(\displaystyle\frac{1}{9}V \rightarrow \displaystyle\frac{1}{6}V\) となっており、妥当です。
  • 別解との比較:
    • (1)では、電圧の比例配分、合成容量、電気量保存則という3つのアプローチで同じ答えが導かれました。これにより、基本的な法則の理解が正しいことを確認できます。
  • 保存則の検算:
    • (4)で求めた最終的な電圧 \(V_{1c}, V_{2c}\) を使って、孤立部分の最終電荷 \(-CV_{1c} + 2CV_{2c}\) を計算し、初期の総電荷 \(-\displaystyle\frac{CV}{3}\) と一致するかを確かめることは、非常に有効な検算方法です。

337 コンデンサーの接続

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、電気容量がすべて等しい3つのコンデンサーを接続し、初期電荷を与えた後にスイッチを閉じる、という設定です。電荷の再配分が起こり、最終的な定常状態での各コンデンサーの電圧を求めることが目的です。
この問題の核心は、回路の物理法則である「電気量保存の法則」と「キルヒホッフの法則」を正しく理解し、連立方程式を立てて解く能力です。

与えられた条件
  • コンデンサーC₁, C₂, C₃の電気容量: すべて \(C \text{ [F]}\)
  • C₁の初期電気量: \(Q_0 \text{ [C]}\) (左側極板に \(+Q_0\), 右側極板に \(-Q_0\))
  • C₂, C₃の初期電気量: \(0 \text{ [C]}\)
問われていること
  • スイッチSを閉じて十分に時間が経過した後の、各コンデンサーC₁, C₂, C₃の電圧。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「初期電荷を持つコンデンサーを含む直流回路」です。スイッチを閉じることで、最初に蓄えられていた電荷が回路内を移動し、新たな定常状態に達する際の各コンデンサーの電圧を求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気量保存の法則: 回路内で外部から電気的に孤立した部分では、電荷の総和は操作の前後で変化しません。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 任意の閉回路を一周するとき、電位差(電圧)の代数和はゼロになります。
  3. コンデンサーの基本式: コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)、電圧\(V\)、電気容量\(C\)の間には、\(Q=CV\)の関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. スイッチを閉じた後の各コンデンサーの電圧を、向きを含めて未知数として設定します。
  2. 回路中の「孤立部分」を見つけ出し、スイッチの開閉前後での電気量保存の法則を立式します。
  3. 閉回路についてキルヒホッフの第2法則を適用し、電圧に関する式を立てます。
  4. これら複数の式を連立方程式として解き、未知数である各コンデンサーの電圧を求めます。

思考の道筋とポイント
スイッチを閉じて十分に時間が経過した後の、各コンデンサーの電圧を求める問題です。この種の問題を解くための最も基本的なアプローチは、物理学の基本法則である「電気量保存の法則」と「キルヒホッフの法則」を連立させることです。
まず、最終状態での各コンデンサーの電圧を\(V_1, V_2, V_3\)と仮定します。このとき、電圧の向き(どちらの極板が正電位か)を明確に定義することが重要です。次に、回路内で導線だけでつながっていて外部とは接続されていない「孤立部分」を探し、その部分の総電気量がスイッチ操作の前後で保存されることを利用して式を立てます。最後に、回路を一周すると電位が元に戻るというキルヒホッフの第2法則から電圧に関する式を導き、これらを連立させて解を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 電圧の向きの定義: 各コンデンサーの電圧\(V_1, V_2, V_3\)を、それぞれ「左側極板の電位 – 右側極板の電位」と一貫して定義します。これにより、各極板の電荷の符号も自動的に決まります。
  • 孤立部分の特定: 回路には、外部から電荷の出入りがない部分が2つ存在します。
    1. C₁の右側極板とC₂の左側極板からなる部分。
    2. C₂の右側極板とC₃の左側極板からなる部分。

    これらの部分について、電気量保存則を適用します。

  • キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一周するときの電位の変化の総和が0になるという法則から、\(V_1 + V_2 + V_3 = 0\)という関係式を立てます。

具体的な解説と立式
スイッチを閉じて十分に時間が経過した後の、コンデンサーC₁, C₂, C₃の電圧をそれぞれ\(V_1, V_2, V_3\)とします。電圧の向きは、各コンデンサーの左側極板が右側極板に対して高電位である場合を正と定義します。
この定義に従うと、各コンデンサーの左側極板に蓄えられる電気量は、コンデンサーの基本式\(Q=CV\)より、それぞれ\(Q_1=CV_1\), \(Q_2=CV_2\), \(Q_3=CV_3\)となります。

次に、電気量保存則を適用します。
C₁の右側極板とC₂の左側極板からなる孤立部分について考えます。スイッチを閉じる前の電気量の和は、C₁の右側極板の\(-Q_0\)とC₂の0を合わせて\(-Q_0\)です。閉じた後の電気量の和は、C₁の右側極板の\(-Q_1\)とC₂の左側極板の\(+Q_2\)を合わせて\(-CV_1 + CV_2\)です。
したがって、電気量保存則より、
$$ -Q_0 = -CV_1 + CV_2 \quad \cdots ① $$
次に、C₂の右側極板とC₃の左側極板からなる孤立部分について考えます。スイッチを閉じる前の電気量の和は0です。閉じた後の電気量の和は、C₂の右側極板の\(-Q_2\)とC₃の左側極板の\(+Q_3\)を合わせて\(-CV_2 + CV_3\)です。
したがって、電気量保存則より、
$$ 0 = -CV_2 + CV_3 \quad \cdots ② $$
最後に、キルヒホッフの第2法則を回路全体に適用します。C₁の左側極板から時計回りに回路を一周すると、電位の変化の和は0になるので、
$$ V_1 + V_2 + V_3 = 0 \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則
  • キルヒホッフの第2法則
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

まず、式②から\(CV_2 = CV_3\)となり、両辺を\(C\)で割ると、
$$ V_2 = V_3 $$
この結果を式③に代入します。
$$ V_1 + V_2 + V_2 = 0 $$
これを\(V_1\)について解くと、
$$ V_1 = -2V_2 $$
これらの関係式を、残りの式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
-Q_0 &= -C(-2V_2) + CV_2 \\[2.0ex]-Q_0 &= 2CV_2 + CV_2 \\[2.0ex]-Q_0 &= 3CV_2
\end{aligned}
$$
したがって、\(V_2\)について解くと、
$$ V_2 = -\frac{Q_0}{3C} $$
この結果を用いて、他の電圧も計算します。
$$ V_3 = V_2 = -\frac{Q_0}{3C} $$
$$ V_1 = -2V_2 = -2 \left(-\frac{Q_0}{3C}\right) = \frac{2Q_0}{3C} $$

計算方法の平易な説明

この回路を解くために、3つのルールを使います。まず、回路の中には電気が外部と行き来できない「孤立した島」のような部分が2つあります。これらの島では、スイッチを入れる前と後で電気の総量が変わらないというルール(電気量保存則)が成り立ちます。これで2つの式が作れます。次に、回路をぐるっと一周すると、電圧の上がり下がりが打ち消し合って合計ゼロになるというルール(キルヒホッフの法則)を使います。これで3つ目の式ができます。この3つの連立方程式を解くことで、各コンデンサーにかかる電圧を正確に求めることができます。

結論と吟味

計算の結果、各コンデンサーの電圧(左側極板の電位 – 右側極板の電位)は、C₁: \( \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \), C₂: \( -\displaystyle\frac{Q_0}{3C} \), C₃: \( -\displaystyle\frac{Q_0}{3C} \) となりました。
\(V_1\)が正の値であることは、C₁では仮定通り左側極板の電位が高いことを意味します。一方、\(V_2\)と\(V_3\)が負の値であることは、C₂とC₃では実際には右側極板の電位が高いことを示しています。
問題では各コンデンサーの「電圧」を問われており、これは通常、極板間の電位差の大きさを指します。したがって、計算で得られた値の絶対値をとって答えます。

C₁の電圧: \( \left| \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \right| = \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]} \)

C₂の電圧: \( \left| -\displaystyle\frac{Q_0}{3C} \right| = \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \)

C₃の電圧: \( \left| -\displaystyle\frac{Q_0}{3C} \right| = \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \)

解答 C₁: \( \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₂: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₃: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \)
別解: 電位法による解法

思考の道筋とポイント
回路中の各接続点の「電位」を未知数として設定し、問題を解く方法です。キルヒホッフの法則を直接使う代わりに、各極板の電荷を電位を用いて表現し、孤立部分の電気量保存則に適用します。この方法は、特に回路が複雑になった場合に、系統的に方程式を立てやすいという利点があります。
この設問における重要なポイント

  • 基準電位の設定: 計算を簡潔にするため、回路内の一点を基準(電位\(0 \text{ V}\))と定めます。どの点を選んでも構いませんが、複数の素子が接続する点を選ぶと便利です。
  • 各極板の電荷の表現: コンデンサーの各極板の電荷は、両端の電位差と電気容量\(C\)を用いて表されます。電位が高い方の極板に正電荷が、低い方の極板に負電荷が蓄えられます。
  • 孤立系の特定と立式: メインの解法と同様に、孤立部分を見つけ出し、その部分の総電荷が保存されることから方程式を立てます。

具体的な解説と立式
回路の3つの接続点のうち、C₁の右側極板とC₂の左側極板が接続する点の電位を基準(\(0 \text{ V}\))とします。
そして、C₁の左側極板とC₃の右側極板が接続する点の電位を\(V_A\)、C₂の右側極板とC₃の左側極板が接続する点の電位を\(V_B\)とおきます。
このとき、各コンデンサーの極板に蓄えられる電気量は、電位を用いて以下のように表せます。

  • C₁の左側極板: \(+C(V_A – 0) = +CV_A\)
  • C₂の左側極板: \(+C(0 – V_B) = -CV_B\)
  • C₃の左側極板: \(+C(V_B – V_A)\)

次に、2つの孤立部分について電気量保存則を適用します。
1つ目の孤立部分(電位\(V_A\)の点に接続されたC₁の左側極板とC₃の右側極板)を考えます。初期の電気量は\(+Q_0\)です。最終的な電気量は、C₁の左側極板の電荷\((+CV_A)\)とC₃の右側極板の電荷\((-C(V_B – V_A))\)の和です。
よって、
$$ +Q_0 = CV_A – C(V_B – V_A) $$
整理すると、
$$ Q_0 = 2CV_A – CV_B \quad \cdots ① $$
2つ目の孤立部分(電位\(V_B\)の点に接続されたC₂の右側極板とC₃の左側極板)を考えます。初期の電気量は0です。最終的な電気量は、C₂の右側極板の電荷\((+CV_B)\)とC₃の左側極板の電荷\((+C(V_B – V_A))\)の和です。
よって、
$$ 0 = CV_B + C(V_B – V_A) $$
整理すると、
$$ 0 = 2CV_B – CV_A \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則
  • コンデンサーの極板の電荷: \(Q = C \times (\text{電位差})\)
計算過程

まず、式②から\(CV_A = 2CV_B\)となり、両辺を\(C\)で割ると、
$$ V_A = 2V_B $$
この関係を式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_0 &= 2C(2V_B) – CV_B \\[2.0ex]Q_0 &= 4CV_B – CV_B \\[2.0ex]Q_0 &= 3CV_B
\end{aligned}
$$
したがって、\(V_B\)について解くと、
$$ V_B = \frac{Q_0}{3C} $$
この結果から、\(V_A\)も求まります。
$$ V_A = 2V_B = \frac{2Q_0}{3C} $$
最後に、各コンデンサーの電圧(電位差の大きさ)を計算します。

  • C₁の電圧: \(|V_A – 0| = |V_A| = \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]}\)
  • C₂の電圧: \(|0 – V_B| = |-V_B| = \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]}\)
  • C₃の電圧: \(|V_B – V_A| = \left|\displaystyle\frac{Q_0}{3C} – \displaystyle\frac{2Q_0}{3C}\right| = \left|-\displaystyle\frac{Q_0}{3C}\right| = \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]}\)
計算方法の平易な説明

回路の交差点に「電位」という標高のようなものを設定します。1つの交差点を標高0m(基準)と決め、他の交差点の標高(\(V_A\), \(V_B\))を未知数とします。各コンデンサーの極板にたまる電気の量は、両端の標高差で決まります。電気が他から入ってこない「孤立した島」の電気の総量が一定である、というルールを使って標高\(V_A\), \(V_B\)を求め、その結果から各コンデンサーの両端の標高差(電圧)を計算します。

結論と吟味

電位法による計算結果も、C₁: \( \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₂: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₃: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \) となり、メインの解法と完全に一致します。異なるアプローチで同じ結論が得られたことで、解答の正しさがより確かなものとなります。

別解: 合成容量を用いた解法

思考の道筋とポイント
模範解答の別解で示されている考え方です。回路の一部を合成コンデンサーとみなすことで、問題をより単純な回路に置き換えて解く方法です。この問題では、C₂とC₃が直列接続とみなせる部分があり、さらにそれがC₁と並列接続になっていると解釈できます。
この設問における重要なポイント

  • 等価回路への置き換え: C₂とC₃は、最終的に同じ大きさの電荷が逆符号で蓄えられるため、直列接続とみなせます。この直列合成コンデンサーC₂₃が、C₁と並列に接続されていると考えることができます。
  • 電荷の再配分: スイッチを閉じることで、C₁に蓄えられていた電荷\(Q_0\)が、C₁と合成コンデンサーC₂₃に再配分されると考えます。
  • 並列接続の性質: 並列に接続されたコンデンサー(この場合、C₁とC₂₃)には、同じ電圧がかかります。

具体的な解説と立式
スイッチを閉じた後、C₂とC₃には同じ大きさで向きが逆の電荷が蓄えられます。これは、孤立部分(C₂の右側極板とC₃の左側極板)の総電荷が0であることからわかります。したがって、C₂とC₃は直列接続とみなすことができます。
C₂とC₃の合成容量を\(C_{23}\)とすると、
$$ \frac{1}{C_{23}} = \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3} = \frac{1}{C} + \frac{1}{C} = \frac{2}{C} $$
よって、
$$ C_{23} = \frac{C}{2} \quad \cdots ① $$
この合成コンデンサーC₂₃は、C₁と並列に接続されていると見なせます。
回路全体の合成容量を\(C_{\text{全}}\)とすると、
$$ C_{\text{全}} = C_1 + C_{23} = C + \frac{C}{2} = \frac{3C}{2} \quad \cdots ② $$
スイッチを閉じる前の回路全体の総電荷は\(Q_0\)です。スイッチを閉じた後も、回路全体としては孤立しているため、この総電荷は保存されます。
最終的にC₁にかかる電圧を\(V_1\)とすると、並列接続なので合成コンデンサーC₂₃にも同じ電圧\(V_1\)がかかります。
回路全体の総電荷\(Q_0\)は、全体の合成容量\(C_{\text{全}}\)と電圧\(V_1\)を用いて、
$$ Q_0 = C_{\text{全}} V_1 \quad \cdots ③ $$
と表せます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの直列合成: \( \displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b} + \dots \)
  • コンデンサーの並列合成: \( C_{\text{並列}} = C_a + C_b + \dots \)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

式③に、式②で求めた\(C_{\text{全}}\)を代入して\(V_1\)を求めます。
$$ Q_0 = \frac{3C}{2} V_1 $$
したがって、C₁の電圧は、
$$ V_1 = \frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]} $$
次に、C₂とC₃の電圧を求めます。C₂とC₃の直列部分には、全体として電圧\(V_1\)がかかっています。
C₂とC₃に蓄えられる電気量の大きさは等しく、\(|Q_2| = |Q_3|\)です。\(|C V_2| = |C V_3|\) より、電圧の大きさも等しく\(|V_2| = |V_3|\)となります。
直列部分全体の電圧は各部分の電圧の和なので、
$$ |V_2| + |V_3| = V_1 $$
これらを連立して解くと、
$$ |V_2| = |V_3| = \frac{V_1}{2} = \frac{1}{2} \left( \frac{2Q_0}{3C} \right) = \frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} $$

計算方法の平易な説明

まず、C₂とC₃を合体させて一つの大きなコンデンサー(合成コンデンサー)と見なします。すると、回路はC₁とこの合成コンデンサーが並列につながっただけの単純な形になります。最初にC₁にあった電気\(Q_0\)が、この2つのコンデンサーに分け与えられると考えます。並列なので、両方にかかる電圧は同じになります。この電圧を計算し、その後、合体させていたC₂とC₃を元に戻して、それぞれにかかる電圧を計算します。

結論と吟味

合成容量を用いた解法でも、C₁: \( \displaystyle\frac{2Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₂: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \), C₃: \( \displaystyle\frac{Q_0}{3C} \text{ [V]} \) という同じ結果が得られました。この方法は、回路の構造をうまく見抜くことができれば、計算を大幅に簡略化できる強力なテクニックです。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気量保存の法則:
    • 核心: 回路内で外部から導線が接続されていない「孤立部分」では、電荷の総和は操作の前後で不変である、という法則です。この問題では、①C₁の右側極板とC₂の左側極板、②C₂の右側極板とC₃の左側極板、という2つの孤立部分を見つけ出し、それぞれについて立式することが解法の出発点となります。
    • 理解のポイント: 電荷は勝手に生まれたり消えたりせず、ただ移動するだけです。孤立部分とは、その電荷の「逃げ道」も「入り口」もない領域のことです。スイッチ操作によって電荷が再配置されても、その領域内の総量は変わらない、と考えるのがこの法則の本質です。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則):
    • 核心: 任意の閉回路を1周すると、電位は元の値に戻る、という法則です。数式では「電位差(電圧)の代数和 = 0」と表されます。この問題では、C₁, C₂, C₃を通る閉回路について \(V_1 + V_2 + V_3 = 0\) という関係式が成り立ちます。
    • 理解のポイント: これはエネルギー保存則の電位バージョンと考えることができます。坂道を登ったり下ったりして出発点に戻ってきたら、結局、元の高さに戻っているのと同じです。この法則を適用する際は、電圧の向き(どちらの電位が高いか)を仮定し、その向きに従って足し引きすることが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 複数のコンデンサーとスイッチを含む回路: スイッチの切り替えによって電荷が再配分される問題は、すべて同じアプローチで解けます。
    • 電池を含むコンデンサー回路: 電池が接続されている場合、キルヒホッフの法則の式に電池の起電力が加わります(例: \(V_1 + V_2 – E = 0\))。電気量保存則の考え方は全く同じです。
    • ダイオードを含むコンデンサー回路: ダイオードは電流を一方通行にする素子です。最終的な定常状態では電流が0になるため、ダイオードはないものとして扱えることが多いですが、過渡現象を考える際には重要になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 孤立部分を探す: まず、回路図を眺めて、外部から切り離された部分がないかを探します。複数のコンデンサーの極板が導線だけでつながっている部分が目印です。
    2. 閉回路(ループ)を探す: 次に、回路を一周できる経路がいくつあるかを確認します。これがキルヒホッフの第2法則を適用する場所です。
    3. 状態変化の前後を比較する: 「スイッチを開く前」と「閉じた後」の2つの状態で、孤立部分の電気量がどうなっているかを比較します。これが電気量保存の式の立て方です。
    4. 解法の選択: 回路が単純な直列・並列の組み合わせに見えるなら「合成容量」を、複雑で系統的に解きたいなら「キルヒホッフの法則」や「電位法」を選択します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電気量保存則の適用箇所の誤り:
    • 誤解: 孤立していない部分(例えば、スイッチや回路の端に接続された極板)について、電気量保存則を適用してしまう。
    • 対策: 「孤立部分」とは、導線だけで結ばれ、他のどの部分(電池、スイッチ、アースなど)とも接続されていない、完全に閉じた領域のことであると定義を再確認しましょう。図の上で孤立部分を色ペンで囲んでみるのが効果的です。
  • 符号の取り扱いミス:
    • 誤解: キルヒホッフの法則や電気量保存則を立式する際に、電圧や電荷の符号を間違える。
    • 対策: 最初に「電圧の正の向き」(例:左側極板の電位が高い方を正とする)を自分で明確に定義し、すべての計算でそのルールを一貫して守ることが最も重要です。計算結果が負になれば、それは「最初に仮定した向きと逆だった」と解釈すればよいだけです。
  • キルヒホッフの法則の式の立て間違い:
    • 誤解: 回路を一周する際に、電圧降下と電圧上昇の足し算を間違える。
    • 対策: 電位を「高さ」に例えるのが有効です。仮定した電圧の向き(正の向き)に進むときは「坂を下る(電位が下がる)」、逆向きに進むときは「坂を上る(電位が上がる)」と考え、電位の変化量を足し合わせていきます。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電荷の移動イメージ: スイッチを閉じる瞬間、C₁の左極板にいた正電荷の一部と、右極板にいた負電荷の一部が、まるでダムの放流のように回路を流れ出すイメージを持ちます。正電荷は時計回りに、負電荷は反時計回りに移動し、C₂とC₃に流れ込みます。最終的に、各コンデンサー間の電位のバランスが取れたところで電荷の移動が止まり、定常状態になります。
    • 電位の図解(電位グラフ): 回路の各点の電位をグラフの高さで表現します。例えば、C₁の左側極板から時計回りに進むと、電位は \(V_1\) だけ下がり、次に \(V_2\) だけ下がり、さらに \(V_3\) だけ下がって、元の高さに戻る、というグラフを描くことができます。\(V_1+V_2+V_3=0\) の関係が視覚的に理解できます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 電荷の符号を明記: スイッチ操作の前後で、各極板にたまっている電荷の符号(+, -)と量(\(Q_0\), \(Q_1\)など)を必ず図に書き込みます。
    • 電圧の向きを矢印で示す: 自分で定義した電圧の正の向きを、各コンデンサーに矢印(+から-へ)で書き込みます。これにより、立式時の符号ミスを防ぎます。
    • 孤立部分を囲む: 電気量保存則を適用する孤立部分を、点線などで明確に囲みます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 電気量保存の法則:
    • 選定理由: 回路のスイッチ操作によって電荷が再配分される問題だから。電荷は消滅も創生もしないという物理学の大原則を利用するため。
    • 適用根拠: 回路内に「孤立系」が存在することが、この法則を適用するための絶対条件です。
  • キルヒホッフの第2法則 (\(\sum V = 0\)):
    • 選定理由: 回路に複数の素子がループ状に接続されており、未知数(電圧)の数に対して方程式が不足しているから。
    • 適用根拠: 電位が保存的な場である(1周しても仕事がゼロ)という電磁気学の基本性質に基づいています。これにより、未知数と同数の独立した方程式を立てることが可能になります。
  • コンデンサーの基本式 (\(Q=CV\)):
    • 選定理由: 電気量保存則(電荷\(Q\)に関する式)とキルヒホッフの法則(電圧\(V\)に関する式)を結びつけ、連立方程式を解ける形にするため。
    • 適用根拠: この式は、コンデンサーという素子の性質そのものを定義する関係式です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 変数の設定: 各コンデンサーの最終的な電圧を \(V_1, V_2, V_3\) と定義する。このとき、必ず向き(例:左側極板の電位 – 右側極板の電位)を定める。
  2. 法則の適用と立式:
    • フロー①(電気量保存): 回路から孤立部分を2つ見つけ、それぞれの部分について「操作前の総電荷 = 操作後の総電荷」の式を立てる。(これで2本の方程式)
    • フロー②(キルヒホッフ則): 閉回路について、電圧の代数和が0になる式を立てる。(これで1本の方程式)
  3. 連立方程式の求解:
    • フロー③: 上記で立てた3本の連立方程式(未知数も\(V_1, V_2, V_3\)の3つ)を解き、各電圧を求める。
  4. 解の解釈と最終解答:
    • フロー④: 計算結果の符号から、実際にどちらの極板の電位が高いかを確認する。
    • フロー⑤: 問題の問い(電圧)に合わせて、大きさ(絶対値)を最終的な答えとして記述する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式のまま計算を進める: この問題では最初から文字式ですが、具体的な数値が与えられていても、まずは文字のまま計算を進め、最後に代入するのが鉄則です。特に、複数の物理法則を組み合わせる問題では、途中で代入すると式全体の物理的な意味が見えにくくなり、ミスにつながります。
  • 連立方程式の整理: 式①, ②, ③を立てた後、すぐに代入を始めるのではなく、まず式を簡単な形に整理します。例えば、式②から \(V_2=V_3\) という関係を導き、これを他の式に適用することで、扱う文字の数を減らしてから計算を進めると、間違いが少なくなります。
  • 単位の確認: 最終的に求めた電圧の単位が [V] となるか、次元をチェックします。例えば、\(Q_0/C\) の次元は [C]/[F] = [C]/([C/V]) = [V] となり、正しいことが確認できます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • 対称性の利用: この回路では、C₂とC₃は対称的な位置にあります。したがって、最終的にC₂とC₃にかかる電圧の大きさは等しくなるはずです。計算結果が \(|V_2|=|V_3|\) となったことは、この物理的直感と一致しており、妥当です。
    • 極端な場合を考える: もし初期電荷\(Q_0\)が0だったら、スイッチを閉じても何も起こらず、全ての電圧は0になるはずです。求まった解はすべて\(Q_0\)に比例しているので、この条件を満たしており、妥当です。
  • 別解との比較:
    • この問題は「キルヒホッフの法則」「電位法」「合成容量」という3つの異なるアプローチで解くことができます。これら全ての解法で同じ答え \(V_1 = 2Q_0/3C\), \(V_2 = V_3 = Q_0/3C\) が得られたことは、計算の正しさと物理的理解の確かさを強力に裏付けます。一つの解法で行き詰まっても、別の視点からアプローチできる引き出しを持っておくことが重要です。

338 導体板にはたらく力

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、充電済みのコンデンサーに、電池を接続したまま導体板を挿入するという状況設定です。導体板の挿入に伴う電気容量の変化、外力がする仕事、そして導体板に働く力の大きさを段階的に求めていきます。
この問題の核心は、コンデンサーの基本性質の理解に加え、「仕事とエネルギー」の関係を正しく適用できるかどうかにあります。特に、電池が接続されている場合のエネルギー収支(エネルギー保存則)を正確に立式できるかが問われます。

与えられた条件
  • コンデンサーの極板の寸法: 短辺 \(L\), 長辺 \(2L\)
  • 極板の間隔: \(d\)
  • 導体板の厚さ: \(d/2\)
  • 接続する電池の電圧: \(V_0\) (スイッチSを閉じたまま)
  • 真空の誘電率: \(\varepsilon_0\)
問われていること
  • (1) 導体板を \(x\) まで挿入したときの電気容量 \(C\)。
  • (2) 導体板を \(x=L\) まで挿入するのに外力がした仕事 \(W\)。
  • (3) \(x=L\) の状態から微小距離 \(\Delta x\) 押し込むのに必要な外力の仕事 \(\Delta W\) と、そのときの外力の大きさ \(F\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コンデンサーへの導体板挿入とエネルギー」です。コンデンサーに導体板を挿入する過程で、電気容量、静電エネルギー、そして外力がする仕事がどのように変化するかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの電気容量: 導体板の挿入によって、コンデンサーが実質的に2つの部分(挿入部と非挿入部)に分割されると考え、それぞれの電気容量を計算し、それらを合成することで全体の電気容量を求めます。
  2. エネルギー保存則: 「(外力がした仕事)+(電池がした仕事)=(コンデンサーの静電エネルギーの変化量)」という、コンデンサーを含む回路のエネルギー収支の式を正しく立てることが、(2)以降の設問を解く鍵となります。
  3. 仕事と力の関係: 微小な仕事 \(\Delta W\) と、その間に働く力 \(F\) の関係式 \(\Delta W = F \Delta x\) を用いて、導体板に働く力を導出します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、導体板が挿入された部分とされていない部分を、それぞれ別のコンデンサーと見なし、並列接続として合成容量を計算します。
  2. (2)では、エネルギー保存則を用いて、外力がした仕事を計算します。そのためには、挿入前後の静電エネルギーと、その間に電池がした仕事をそれぞれ求める必要があります。
  3. (3)では、(2)と同様のエネルギー保存則を微小な変化に適用して微小仕事 \(\Delta W\) を求め、仕事と力の関係から外力の大きさを計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
導体板を \(x\) [m] まで挿入したときのコンデンサー全体の電気容量 \(C\) を求める問題です。導体板を挿入すると、コンデンサーは2つの領域に分けられます。

  1. 導体板が挿入されていない部分(真空)
  2. 導体板が挿入されている部分

この2つの部分は、極板に沿って並んでいるため、並列接続された2つのコンデンサーと見なすことができます。それぞれの電気容量を計算し、並列接続の合成容量の公式を使って全体の電気容量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続と見なす: 導体板の挿入方向に垂直な断面で見ると、2つの領域は同じ電圧 \(V_0\) に接続されています。したがって、これらは並列接続と考えることができます。
  • 非挿入部の電気容量 \(C_1\): この部分は、面積が \(L(2L-x)\)、極板間隔が \(d\) の通常の平行板コンデンサーです。
  • 挿入部の電気容量 \(C_2\): 導体板は電位が一定なので、導体板の厚さ \(d/2\) の部分は電界が0になります。これは、極板間隔が \(d – d/2 = d/2\) のコンデンサーと等価です。面積は \(Lx\) です。

具体的な解説と立式
コンデンサーを、導体板が挿入されていない部分(電気容量 \(C_1\))と、挿入されている部分(電気容量 \(C_2\))の2つのコンデンサーの並列接続と考えます。
全体の電気容量 \(C\) は、並列接続の合成容量の公式より、
$$ C = C_1 + C_2 \quad \cdots ① $$
まず、\(C_1\)を求めます。この部分の極板の面積 \(S_1\) は、短辺 \(L\) と、導体板が入っていない長さ \((2L-x)\) の積なので、\(S_1 = L(2L-x)\) です。極板間隔は \(d\) なので、
$$ C_1 = \varepsilon_0 \frac{S_1}{d} = \varepsilon_0 \frac{L(2L-x)}{d} \quad \cdots ② $$
次に、\(C_2\)を求めます。この部分の極板の面積 \(S_2\) は \(Lx\) です。厚さ \(d/2\) の導体板を挿入すると、導体内部は等電位となり、電界は0になります。これは、極板間隔が \(d – d/2 = d/2\) のコンデンサーと等価です。したがって、
$$ C_2 = \varepsilon_0 \frac{S_2}{d – d/2} = \varepsilon_0 \frac{Lx}{d/2} = \frac{2\varepsilon_0 Lx}{d} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\)
  • コンデンサーの並列合成: \(C = C_1 + C_2\)
計算過程

式①に、式②と式③を代入して、全体の電気容量 \(C\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
C &= C_1 + C_2 \\[2.0ex]&= \varepsilon_0 \frac{L(2L-x)}{d} + \frac{2\varepsilon_0 Lx}{d} \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_0 L}{d} \left( (2L-x) + 2x \right) \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d} \text{ [F]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

コンデンサーを、導体板が入っている部分と入っていない部分の2つに分けて考えます。この2つは横に並んでいるので「並列接続」と同じ扱いです。それぞれの部分の電気容量を計算し、最後にそれらを単純に足し合わせることで、コンデンサー全体の電気容量を求めることができます。導体板が入っている部分は、極板の間隔が狭くなったのと同じ効果がある、と考えるのがポイントです。

結論と吟味

導体板を \(x\) まで挿入したときの電気容量は \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d}\) です。
\(x=0\)(挿入前)のとき、\(C = \frac{2\varepsilon_0 L^2}{d}\) となり、これは面積 \(2L^2\)、間隔 \(d\) のコンデンサーの容量に一致します。また、\(x\) が増加すると \(C\) も増加することから、導体板を挿入すると電気容量が増えるという一般的な性質とも一致しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (1) \( \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d} \text{ [F]} \)

問(2)

思考の道筋とポイント
導体板を \(x=L\) まで挿入するのに外力がした仕事 \(W\) を求める問題です。コンデンサーと電池を含む系での仕事とエネルギーの関係を正しく理解することが不可欠です。
エネルギー保存則(エネルギー収支)の式「(外力がした仕事)+(電池がした仕事)=(静電エネルギーの変化量)」を利用します。この式を \(W\) について解くことで、答えを導きます。
この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: \(W + W_{\text{電池}} = \Delta U\) が基本の式です。
  • 電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\): 電池を通過した電気量を \(\Delta Q\) とすると、電池がした仕事は \(W_{\text{電池}} = \Delta Q \cdot V_0\) で計算できます。\(\Delta Q\) は(後の電気量)-(前の電気量)です。
  • 静電エネルギーの変化量 \(\Delta U\): \(\Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}}\) です。電池に接続されているため電圧は \(V_0\) で一定なので、静電エネルギーは \(U = \frac{1}{2}CV_0^2\) の公式を使って計算するのが便利です。

具体的な解説と立式
エネルギー保存則より、外力がした仕事 \(W\)、電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\)、コンデンサーの静電エネルギーの変化量 \(\Delta U\) の間には、次の関係が成り立ちます。
$$ W + W_{\text{電池}} = \Delta U $$
これを \(W\) について解くと、
$$ W = \Delta U – W_{\text{電池}} \quad \cdots ① $$
まず、静電エネルギーの変化量 \(\Delta U\) を計算します。
挿入前の電気容量 \(C_0\) は、(1)の式で \(x=0\) として、\(C_0 = \displaystyle\frac{2\varepsilon_0 L^2}{d}\) です。
挿入後の電気容量 \(C’\) は、(1)の式で \(x=L\) として、\(C’ = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L(2L+L)}{d} = \frac{3\varepsilon_0 L^2}{d}\) です。
電圧は \(V_0\) で一定なので、静電エネルギーの変化量 \(\Delta U\) は、
$$ \Delta U = U_{\text{後}} – U_{\text{前}} = \frac{1}{2}C’V_0^2 – \frac{1}{2}C_0V_0^2 \quad \cdots ② $$
次に、電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\) を計算します。
電池を通過した電気量 \(\Delta Q\) は、コンデンサーの電気量の変化に等しいので、
$$ \Delta Q = Q_{\text{後}} – Q_{\text{前}} = C’V_0 – C_0V_0 = (C’ – C_0)V_0 $$
よって、電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\) は、
$$ W_{\text{電池}} = \Delta Q \cdot V_0 = (C’ – C_0)V_0^2 \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • エネルギー保存則: \(W + W_{\text{電池}} = \Delta U\)
  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
  • 電池がした仕事: \(W_{\text{電池}} = (\text{通過電気量}) \times (\text{電圧})\)
計算過程

式②と③を式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
W &= \left( \frac{1}{2}C’V_0^2 – \frac{1}{2}C_0V_0^2 \right) – (C’ – C_0)V_0^2 \\[2.0ex]&= \left( \frac{1}{2}C’ – \frac{1}{2}C_0 – C’ + C_0 \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= \left( -\frac{1}{2}C’ + \frac{1}{2}C_0 \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{1}{2}(C’ – C_0)V_0^2
\end{aligned}
$$
ここに、\(C_0 = \displaystyle\frac{2\varepsilon_0 L^2}{d}\) と \(C’ = \displaystyle\frac{3\varepsilon_0 L^2}{d}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W &= -\frac{1}{2} \left( \frac{3\varepsilon_0 L^2}{d} – \frac{2\varepsilon_0 L^2}{d} \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{1}{2} \left( \frac{\varepsilon_0 L^2}{d} \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{\varepsilon_0 L^2 V_0^2}{2d} \text{ [J]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

外から加えた力による仕事は、エネルギー全体の収支から計算します。まず、導体板を挿入したことでコンデンサーに蓄えられた電気エネルギーがどれだけ増えたか(\(\Delta U\))を計算します。次に、その間に電池がどれだけエネルギーを供給したか(\(W_{\text{電池}}\))を計算します。エネルギー保存の法則「(外からの仕事)+(電池の仕事)=(エネルギーの増加分)」を使って、逆算することで外力がした仕事を求めます。

結論と吟味

外力がした仕事は \(W = -\displaystyle\frac{\varepsilon_0 L^2 V_0^2}{2d}\) です。
仕事が負の値になったということは、外力は導体板を「押し込む」方向ではなく、むしろ「引き出す」方向、つまり挿入に逆らう向きに力を加えていたことを意味します。これは、導体板がコンデンサー内部に引き込まれる静電気力を受けており、外力はその力とつり合って「ゆっくり」挿入するために、引き込む力とは逆向きに働いていたと解釈できます。

解答 (2) \( -\displaystyle\frac{\varepsilon_0 L^2 V_0^2}{2d} \text{ [J]} \)

問(3)

思考の道筋とポイント
微小距離 \(\Delta x\) だけ押し込むのに必要な外力の仕事 \(\Delta W\) と、そのときの外力の大きさ \(F\) を求める問題です。
\(\Delta W\) は、(2)と全く同じエネルギー保存則を、\(x=L\) から \(x=L+\Delta x\) への微小な変化に適用して求めます。
外力の大きさ \(F\) は、仕事と力の関係式 \(\Delta W = F \Delta x\) を利用して、求めた \(\Delta W\) から導出します。
この設問における重要なポイント

  • 微小変化へのエネルギー保存則の適用: (2)で用いた \(W = \Delta U – W_{\text{電池}}\) の式を、微小な仕事 \(\Delta W\)、微小なエネルギー変化 \(\Delta U\)、微小な電池の仕事 \(\Delta W_{\text{電池}}\) に置き換えて考えます。
  • 仕事と力の関係: 微小な仕事 \(\Delta W\) は、その間の力 \(F\) と変位 \(\Delta x\) の積で表されます (\(\Delta W = F \Delta x\))。
  • 解答の解釈: 問題文の「押し込むのに必要な外力のする仕事」と、物理的に導かれる仕事の符号との関係を正しく解釈する必要があります。

具体的な解説と立式
(2)と同様に、エネルギー保存則 \(\Delta W = \Delta U – \Delta W_{\text{電池}}\) を用います。始状態は \(x=L\)、終状態は \(x=L+\Delta x\) です。
始状態の電気容量 \(C_{\text{始}}\) は \(C’ = \displaystyle\frac{3\varepsilon_0 L^2}{d}\) です。
終状態の電気容量 \(C_{\text{終}}\) は、(1)の式で \(x=L+\Delta x\) として、
$$ C_{\text{終}} = \frac{\varepsilon_0 L(2L + L + \Delta x)}{d} = \frac{\varepsilon_0 L(3L + \Delta x)}{d} $$
外力がした微小仕事 \(\Delta W\) は、(2)の導出と同様に、
$$ \Delta W = -\frac{1}{2}(C_{\text{終}} – C_{\text{始}})V_0^2 \quad \cdots ① $$
外力の大きさ \(F\) は、仕事との関係から求めます。導体板は静電気力で引き込まれるため、ゆっくり動かす外力は引き出す向きに働きます。したがって、押し込む向きの変位 \(\Delta x\) とは逆向きなので、仕事は \(\Delta W = -F \Delta x\) と表せます。
$$ -F \Delta x = \Delta W \quad \text{より} \quad F = -\frac{\Delta W}{\Delta x} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • エネルギー保存則: \(\Delta W = \Delta U – \Delta W_{\text{電池}}\)
  • 仕事と力の関係: \(\Delta W = -F \Delta x\) (外力が変位と逆向きの場合)
計算過程

まず、\(\Delta W\) を計算します。式①に \(C_{\text{始}}\) と \(C_{\text{終}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta W &= -\frac{1}{2} \left( \frac{\varepsilon_0 L(3L + \Delta x)}{d} – \frac{3\varepsilon_0 L^2}{d} \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{1}{2} \left( \frac{3\varepsilon_0 L^2 + \varepsilon_0 L \Delta x – 3\varepsilon_0 L^2}{d} \right) V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{1}{2} \frac{\varepsilon_0 L \Delta x}{d} V_0^2 \\[2.0ex]&= -\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x \text{ [J]}
\end{aligned}
$$
模範解答では仕事 \(\Delta W\) は正の値で与えられているため、問題文の「押し込むのに必要な外力のする仕事」は、静電気力に逆らってする仕事の大きさと解釈し、\(\Delta W = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x\) とします。
次に、外力の大きさ \(F\) を求めます。この仕事は、大きさ \(F\) の外力が静電気力とつり合いながら \(\Delta x\) だけ動いたときの仕事なので、\(\Delta W = F \Delta x\) となります。
$$ F = \frac{\Delta W}{\Delta x} = \frac{1}{\Delta x} \left( \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x \right) = \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \text{ [N]} $$

計算方法の平易な説明

(2)と考え方は同じですが、今回はごくわずかな距離 \(\Delta x\) だけ動かしたときの仕事 \(\Delta W\) を計算します。エネルギー保存則から \(\Delta W\) を \(\Delta x\) の式で表します。力 \(F\) は、この微小な仕事 \(\Delta W\) を微小な距離 \(\Delta x\) で割ることで求められます。

結論と吟味

微小仕事は \(\Delta W = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x\) で、外力の大きさは \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d}\) です。
(2)で仕事が負になったことと整合性をとると、導体板はコンデンサーに引き込まれる力(静電気力)を受けています。その力の大きさが \(F = \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d}\) です。「ゆっくりと挿入する」ためには、この静電気力とつり合う、逆向き(引き出す向き)の外力が必要です。

解答 (3) \(\Delta W = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x \text{ [J]}\), \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \text{ [N]}\)
別解: (3)の力を静電エネルギーの微分から求める方法

思考の道筋とポイント
(3)の力 \(F\) を求める別解です。電池に接続されたまま導体板を動かす場合、導体板を引き込む静電気力 \(F_{\text{静}}\) は、静電エネルギー \(U\) を位置 \(x\) で微分したものに等しい、という公式 \(F_{\text{静}} = \displaystyle\frac{dU}{dx}\) (電圧一定の場合)を利用します。外力 \(F\) は、この静電気力とつり合う力なので、その大きさは \(F = F_{\text{静}}\) となります。
この設問における重要なポイント

  • 力とエネルギーの関係式: 電圧一定の条件下では、静電気力 \(F_{\text{静}}\) は \(F_{\text{静}} = \displaystyle\frac{dU}{dx}\) で与えられます。
  • 静電エネルギーの式: \(U(x) = \frac{1}{2}C(x)V_0^2\) を使います。\(C(x)\) は(1)で求めた \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d}\) です。
  • 微分: 静電エネルギーの式を \(x\) で微分して力を求めます。

具体的な解説と立式
静電エネルギー \(U\) は、(1)で求めた電気容量 \(C(x)\) を用いて、
$$ U(x) = \frac{1}{2}C(x)V_0^2 = \frac{1}{2} \frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d} V_0^2 $$
電圧 \(V_0\) が一定のとき、導体板に働く静電気力 \(F_{\text{静}}\)(引き込む向きを正とする)は、静電エネルギーの \(x\) による微分で与えられます。
$$ F_{\text{静}} = \frac{d U(x)}{dx} \quad \cdots ① $$
ゆっくり挿入するための外力 \(F\) は、この静電気力とつり合うので、その大きさは \(F = F_{\text{静}}\) となります。

使用した物理公式

  • 力とポテンシャルエネルギーの関係(電圧一定の場合): \(F_{\text{静}} = \displaystyle\frac{dU}{dx}\)
計算過程

\(U(x)\) の式を \(x\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{静}} &= \frac{d}{dx} \left( \frac{1}{2} \frac{\varepsilon_0 L(2L+x)}{d} V_0^2 \right) \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \frac{d}{dx} (2L+x) \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \times 1 \\[2.0ex]&= \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \text{ [N]}
\end{aligned}
$$
これは \(x\) に依らない一定の力です。したがって、\(x=L\) のときもこの値になります。
外力の大きさ \(F\) はこの静電気力の大きさに等しいので、
$$ F = \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \text{ [N]} $$
微小仕事 \(\Delta W\) は、この力で \(\Delta x\) だけ動かす仕事なので、
$$ \Delta W = F \Delta x = \frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d} \Delta x \text{ [J]} $$

計算方法の平易な説明

コンデンサーに蓄えられるエネルギーが、導体板の位置 \(x\) によってどう変わるかの「変化の割合(微分)」を計算すると、それが直接、導体板に働く静電気力になります。この方法は、エネルギー保存則を微小変化で考えるよりも計算がシンプルになることが多い、強力なテクニックです。

結論と吟味

この別解でも、外力の大きさは \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 L V_0^2}{2d}\) となり、メインの解法の結果と一致します。この結果は \(x\) に依存しない定数であるため、導体板は挿入されている間、常に一定の力で引き込まれることがわかります。これは、電気容量の変化率が一定であることに起因します。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの合成容量(並列接続):
    • 核心: (1)で、導体板を挿入したコンデンサーを、導体板がない部分とある部分の2つのコンデンサーが「並列接続」されていると見なすことが最初の関門です。極板に垂直な方向に性質が異なる場合、並列接続として扱います。
    • 理解のポイント: なぜ並列なのか?それは、2つの部分(挿入部と非挿入部)の極板がそれぞれ同じ導線(電池)に繋がっており、両者に同じ電圧 \(V_0\) がかかっているからです。同じ電圧がかかる接続が並列接続の定義です。
  • コンデンサー回路のエネルギー保存則(エネルギー収支):
    • 核心: (2)と(3)を解くための最も重要な法則です。電池が接続された系では、エネルギーの出入りが複数あるため、全体の収支を考える必要があります。その関係式は「(外力がした仕事) + (電池がした仕事) = (静電エネルギーの変化量)」です。
    • 理解のポイント: この式は、エネルギー保存則の応用形です。系に加えられたエネルギーの総和(左辺)が、系の内部エネルギーの変化(右辺)に等しいことを示しています。特に「電池がした仕事」を忘れがちなので注意が必要です。電池は電圧を一定に保つために、電荷を送り出す(または吸収する)ことで仕事をし、エネルギーを供給(または吸収)します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 誘電体の挿入: 導体板の代わりに誘電率 \(\varepsilon\) の誘電体を挿入する問題は、非常に典型的な類似問題です。挿入部分の電気容量が \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) に変わるだけで、エネルギー保存則の考え方は全く同じです。
    • 電池を切り離してから挿入: スイッチSを開いて電池を切り離してから導体板を挿入する場合、「回路全体の電荷が一定」という条件に変わります。この場合、電池がする仕事は0になるため、エネルギー保存則は「(外力がした仕事) = (静電エネルギーの変化量)」とシンプルになります。
    • 極板間引力を求める問題: コンデンサーの極板が互いに引き合う力を求める問題も、本質的には同じです。極板間隔を微小に変化させたときのエネルギー変化から力を計算できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電池の接続状態を確認する: まず「電池に接続されたままか」「電池から切り離されているか」を最初に確認します。これにより、「電圧一定」なのか「電荷一定」なのか、基本的な条件が決まります。
    2. 系のエネルギー変化に関わる要素をリストアップする: 「外力」「電池」「コンデンサーの静電エネルギー」の3つのうち、どれが変化し、どれが仕事をするのかを明確にします。
    3. 変化前と変化後の状態を整理する: 挿入前と挿入後で、電気容量 \(C\)、電圧 \(V\)、電気量 \(Q\)、静電エネルギー \(U\) がそれぞれどうなるかを、表などに整理すると間違いが減ります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • エネルギー保存則の式の誤用:
    • 誤解: 電池が接続されているのに、電池がした仕事を無視して \(W = \Delta U\) としてしまう。これは電荷一定(電池が切り離されている)の場合の式です。
    • 対策: 「電池は仕事をするポンプである」と常に意識しましょう。コンデンサーの電気容量が増えれば、電圧を一定に保つために電池は追加の電荷を送り込み、仕事をします。この仕事を計算に入れないと、エネルギー収支が合いません。
  • 仕事の符号の混乱:
    • 誤解: 外力がした仕事 \(W\) や電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\) の符号を間違える。
    • 対策: 「系にエネルギーを加える仕事が正」と定義するのが基本です。外力が系の運動と同じ向きなら正、電池が電荷を送り出す(放電方向)なら正、と定義を一貫させましょう。(2)で \(W\) が負になったのは、導体板が引き込まれる力に逆らって「ゆっくり」動かすための外力(ブレーキ役)の仕事だからです。
  • 導体板挿入時の等価的な極板間隔の誤り:
    • 誤解: 厚さ \(t\) の導体板を挿入したとき、新しい極板間隔を \(d-t\) ではなく、別の値にしてしまう。
    • 対策: 導体板の内部は電場が0の等電位空間です。これは、導体板の厚さ分の空間が「ない」のと同じ効果をもたらします。したがって、実質的な極板間隔は、元の間隔 \(d\) から導体板の厚さ \(t\) を引いた \(d-t\) になると覚えましょう。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • コンデンサーの分割イメージ: 導体板を挿入したコンデンサーを、長方形のケーキをナイフで切るように、2つの領域に分割する図を描きます。それぞれの領域の寸法(面積、間隔)を書き込み、これらが並列につながっていることを示す回路図に描き直すと、状況が明確になります。
    • エネルギーの流れの図解: (2)のエネルギー収支を、矢印を使ったフロー図でイメージします。「外部」と「電池」からエネルギーが系に供給され(入力)、それが「コンデンサーの静電エネルギー」として蓄えられる(変化)、という流れを図示すると、\(W + W_{\text{電池}} = \Delta U\) の関係が直感的に理解できます。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 変数を明確に: 導体板の挿入距離 \(x\) を図に明確に記入し、それに伴って変化する面積 \(L(2L-x)\) や \(Lx\) も書き込みます。
    • 力の図示: (3)では、導体板に働く静電気力(引き込む向き)と、それとつり合う外力(引き出す向き)を矢印で図示すると、仕事の符号の理解が深まります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 並列合成 (\(C = C_1 + C_2\)):
    • 選定理由: (1)で、空間的に分割されたコンデンサー全体の電気容量を求めるため。
    • 適用根拠: 分割された各部分にかかる電圧が等しい(電池に接続されているため)という物理的状況が、並列接続の定義そのものであるため。
  • エネルギー保存則 (\(W + W_{\text{電池}} = \Delta U\)):
    • 選定理由: (2)で、外力がした仕事という、力学的エネルギーと電気的エネルギーが絡む量を求めるため。
    • 適用根拠: 熱力学第一法則 \(\Delta U = Q + W\) の電磁気バージョンであり、閉じた系における普遍的なエネルギー保存の原理に基づいています。
  • 力と仕事の関係 (\(F = \Delta W / \Delta x\)):
    • 選定理由: (3)で、微小な仕事から力を逆算するため。これは仕事の定義そのものです。
    • 適用根拠: (別解で用いた \(F=dU/dx\)) これは、保存力とそのポテンシャルエネルギーの関係 \(F = -dU/dx\) を、電池が接続された特殊な状況に合わせて修正したものです。電池が仕事をする分、符号が反転します。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 電気容量の計算:
    • 戦略: コンデンサーを並列な2つの部分に分割して考える。
    • フロー: ①非挿入部の容量 \(C_1\) を計算 → ②挿入部の容量 \(C_2\) を計算 → ③並列合成の公式 \(C = C_1 + C_2\) で全体の容量を計算。
  2. (2) 外力の仕事の計算:
    • 戦略: エネルギー保存則(エネルギー収支)を利用する。
    • フロー: ①エネルギー保存則の式 \(W = \Delta U – W_{\text{電池}}\) を立てる → ②挿入前後の容量 \(C_0, C’\) を(1)の結果から求める → ③\(\Delta U = \frac{1}{2}(C’ – C_0)V_0^2\) を計算 → ④\(W_{\text{電池}} = (C’ – C_0)V_0^2\) を計算 → ⑤各項を代入して \(W\) を求める。
  3. (3) 力の計算:
    • 戦略: 微小変化に対するエネルギー保存則から微小仕事 \(\Delta W\) を求め、仕事の定義から力 \(F\) を導く。
    • フロー: ①(2)と同じ手順で、\(x=L\) と \(x=L+\Delta x\) の間の微小仕事 \(\Delta W\) を \(\Delta x\) の関数として計算 → ②仕事の定義式 \(\Delta W = F \Delta x\) を \(F\) について解き、\(F\) を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の整理: (2)や(3)の計算では、\(W = -\frac{1}{2}(C’ – C_0)V_0^2\) のように、まず物理量(容量)の関係式を導き、最後に具体的な容量の式を代入すると、計算の見通しが良くなり、ミスが減ります。
  • 共通因数でくくる: (1)の計算で \(\frac{\varepsilon_0 L}{d}\) を共通因数としてくくるなど、式をできるだけシンプルな形に保ちながら計算を進めることが重要です。
  • 次元解析: 最終的に求めた仕事 \(W\) の単位がエネルギーの単位 [J] に、力 \(F\) の単位が [N] になっているかを確認します。例えば、\(\varepsilon_0 L^2 V_0^2 / d\) の次元は、\([F/m] \cdot [m^2] \cdot [V^2] / [m] = [F \cdot V^2] = [(C/V) \cdot V^2] = [C \cdot V] = [J]\) となり、エネルギーの次元と一致します。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (1) 電気容量: \(x\) が増えると \(C\) が増える。導体板(比誘電率が無限大の誘電体とみなせる)を挿入すると容量は増えるはずなので、結果は妥当です。
    • (2) 仕事: \(W\) が負になった。これは、導体板がコンデンサーに引き込まれる静電気力に逆らって、ゆっくり挿入するための「ブレーキ」として外力が働いたことを意味します。もし手で支えないと、導体板は加速しながら吸い込まれてしまいます。この物理的描像と結果は一致しており、妥当です。
    • (3) 力: \(F\) が \(x\) によらない定数となった。これは、静電エネルギー \(U(x)\) が \(x\) の1次関数であるため、その傾き(力)が一定になることを示しています。計算結果と物理的背景が一致しており、妥当です。
  • 別解との比較:
    • (3)の力は、エネルギー収支から求めた結果と、静電エネルギーを直接微分して求めた結果が完全に一致しました。これは、計算の正しさと、異なる物理的アプローチが同じ結論を導くことの美しさを示しています。どちらの解法もマスターしておくことで、問題に応じて最適な手法を選択できるようになります。

339 コンデンサー回路

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、複数の電源とコンデンサーで構成された複雑な回路における、各コンデンサーの電気量と特定の点の電位を求める問題です。一見複雑に見えますが、電気量保存則とキルヒホッフの法則という電気回路の基本法則を的確に適用することで解くことができます。
この問題の核心は、回路のどの部分が電気的に孤立しているかを見抜き、「電気量保存則」を適用すること、そして閉回路における「電圧(電位差)の関係」を正しく立式することです。

与えられた条件
  • コンデンサーの静電容量: \(C_1 = 60 \, \mu\text{F}\), \(C_2 = 40 \, \mu\text{F}\), \(C_3 = 20 \, \mu\text{F}\)
  • 電源の起電力と向き:
    • 18V電源: 点N側が正極
    • 12V電源: 点N側が負極(回路図右側が正極)
  • 初期状態: 全てのコンデンサーの電荷は 0
問われていること
  • (1) 各コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q_{60}\), \(Q_{40}\), \(Q_{20}\)。
  • (2) 点Nの電位を基準としたときの、点Mの電位 \(V_M\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複雑なコンデンサー回路の解析」です。模範解答で用いられているキルヒホッフの法則を用いる方法と、より直感的な電位法による別解の2通りで解説します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの法則: 電圧則(任意の閉回路で電位の変化の和は0)と、電流則に相当する電気量保存則(回路の孤立部分で電荷の総和は一定)を適用します。
  2. コンデンサーの基本式: コンデンサーに蓄えられる電気量Q、静電容量C、極板間の電圧Vの関係式 \(Q=CV\) を用います。
  3. 電位の考え方: 回路中の任意の点の電位を基準(通常は0V)を元に考えるアプローチも有効です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、各コンデンサーにかかる電圧を未知数とし、極性を仮定します。
  2. 次に、回路の孤立部分について「電気量保存則」の式を立てます。
  3. そして、回路内の閉じたループについて「キルヒホッフの電圧則」の式を立てます。
  4. 最後に、これらの連立方程式を解いて各電圧を求め、電気量と電位を計算します。

問(1), (2)

思考の道筋とポイント
各コンデンサーにかかる電圧を直接未知数(\(V_1, V_2, V_3\))として設定し、電気量保存則とキルヒホッフの第二法則(電圧則)から連立方程式を立てて解く、模範解答に沿った方法です。この方法では、最初に各コンデンサーの極性(どちらが正極か)を仮定する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 極性の仮定: 模範解答の図に従い、各コンデンサーの電圧を \(V_1, V_2, V_3\) とし、その極性(+/−)を仮定します。
  • 電気量保存則: 点Mに接続された3枚のコンデンサーの極板は、回路の他の部分から電気的に孤立しています。初めの電荷が0だったので、充電完了後もこの3枚の極板の電荷の総和は0のままです。
  • 電圧則(キルヒホッフの第二法則): 回路内の独立な閉回路(ループ)を2つ選び、それぞれについて「電位の変化の和が0」になる式を立てます。この際、与えられた電源の向きを正しく反映させることが重要です。

具体的な解説と立式
60μF, 40μF, 20μFのコンデンサーにかかる電圧を、それぞれ \(V_1, V_2, V_3\) とし、極性を模範解答の図のように仮定します。

  • \(V_1\): 60μFの電圧。N側が+, M側が-。
  • \(V_2\): 40μFの電圧。M側が+, 左の導線側が-。
  • \(V_3\): 20μFの電圧。右の導線側が+, M側が-。

点Mに接続された孤立部分(60μFのM側極板、40μFのM側極板、20μFのM側極板)について、電気量保存則を立てます。
$$ Q_{60,\text{M側}} + Q_{40,\text{M側}} + Q_{20,\text{M側}} = 0 $$
各極板の電荷を \(Q=CV\) で表すと、
$$ (-C_{60}V_1) + (+C_{40}V_2) + (-C_{20}V_3) = 0 $$
静電容量の値を代入し、\(10^{-6}\) を消去します。
$$ -60V_1 + 40V_2 – 20V_3 = 0 $$
両辺を \(-20\) で割ると、
$$ 3V_1 – 2V_2 + V_3 = 0 \quad \cdots ① $$
次に、キルヒホッフの第二法則を適用します。模範解答は「18V電源の左側が正極、12V電源の右側が正極」と解釈して立式しているため、その式を用います。
・左側ループ:
$$ V_1 + V_2 = 18 \quad \cdots ② $$
・右側ループ:
$$ -V_1 + V_3 = 12 \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 電気量保存則
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則)
  • コンデンサーの基本式 \(Q=CV\)
計算過程

②、③より \(V_2, V_3\) を \(V_1\) で表します。
$$ V_2 = 18 – V_1 $$
$$ V_3 = 12 + V_1 $$
これらを①に代入します。
$$
\begin{aligned}
3V_1 – 2(18 – V_1) + (12 + V_1) &= 0 \\[2.0ex]3V_1 – 36 + 2V_1 + 12 + V_1 &= 0 \\[2.0ex]6V_1 – 24 &= 0 \\[2.0ex]V_1 &= 4.0 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
この結果から、\(V_2, V_3\) も求まります。
$$ V_2 = 18 – 4.0 = 14 \text{ [V]} $$
$$ V_3 = 12 + 4.0 = 16 \text{ [V]} $$
各コンデンサーの電気量は \(Q=CV\) より、
$$
\begin{aligned}
Q_{60} &= (60 \times 10^{-6}) \times 4.0 = 2.4 \times 10^{-4} \text{ [C]} \\[2.0ex]Q_{40} &= (40 \times 10^{-6}) \times 14 = 5.6 \times 10^{-4} \text{ [C]} \\[2.0ex]Q_{20} &= (20 \times 10^{-6}) \times 16 = 3.2 \times 10^{-4} \text{ [C]}
\end{aligned}
$$
次に、問(2)の点Mの電位を求めます。点Nの電位を \(V_N = 0 \text{ V}\) とします。
60μFコンデンサーについて、仮定した極性から電圧は \(V_1 = V_N – V_M\) と表せるので、
$$ 4.0 = 0 – V_M $$
$$ V_M = -4.0 \text{ [V]} $$

計算方法の平易な説明

回路をいくつかの部屋(ループ)に分けて、それぞれの部屋を一周したときの電圧の関係式を立てます。さらに、配線の合流点での電荷の出入りがゼロになるという関係式も使います。これらの複数の式を連立方程式として解くことで、各部品にかかる電圧を求め、そこから電気量や各点の電位を計算します。

結論と吟味

(1) 各コンデンサーに蓄えられる電気量は、60μFが \(2.4 \times 10^{-4} \text{ C}\)、40μFが \(5.6 \times 10^{-4} \text{ C}\)、20μFが \(3.2 \times 10^{-4} \text{ C}\) です。
(2) 点Nの電位を基準とすると、点Mの電位は \(-4.0 \text{ V}\) です。
この解法は模範解答の計算過程と一致します。この結果は、18V電源はN側が正極、12V電源はN側が負極というご指示いただいた条件で解いた場合と、偶然にも全く同じになります(別解で示します)。

解答 (1) 60μF: \(2.4 \times 10^{-4} \text{ C}\), 40μF: \(5.6 \times 10^{-4} \text{ C}\), 20μF: \(3.2 \times 10^{-4} \text{ C}\)
解答 (2) \(-4.0 \text{ V}\)
別解: 電位法による解法

思考の道筋とポイント
ご指示いただいた電源の向きに厳密に従って、各点の電位を直接求める「電位法」を用いるアプローチです。この方法は物理的に正確で、複雑な回路で威力を発揮します。基準点(点N)の電位を0Vと定め、未知の電位である点Mの電位を \(V_M\) とおき、電気量保存則から方程式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 電源の向きの正しい解釈: 18V電源はN側が正極、12V電源はN側が負極(=回路図右側が正極)とします。
  • 基準電位と各点の電位: 点Nの電位を \(V_N = 0 \text{ V}\) とします。これにより、40μFコンデンサーの左側の点の電位は \(0 – 18 = -18 \text{ V}\)、20μFコンデンサーの右側の点の電位は \(0 + 12 = +12 \text{ V}\) となります。
  • 電気量保存則の適用: 点Mに接続された3枚の極板の電荷の総和が0になるという法則を利用して、\(V_M\) を求める方程式を立てます。

具体的な解説と立式
点Nの電位を \(V_N = 0 \text{ V}\) と基準に定めます。
ご指示の電源の向きに従うと、各点の電位は以下のように定まります。

  • 40μFコンデンサーの左側の点の電位: \(V_{\text{左}} = V_N – 18 = -18 \text{ V}\)
  • 20μFコンデンサーの右側の点の電位: \(V_{\text{右}} = V_N + 12 = 12 \text{ V}\)
  • 点Mの電位を未知数 \(V_M\) とします。

点Mに接続された3枚の極板(40μFの上側、20μFの上側、60μFの上側)は、全体として外部から孤立しており、これらの極板の電荷の総和は0となります。
$$ Q_{40,\text{上}} + Q_{20,\text{上}} + Q_{60,\text{上}} = 0 $$
各極板の電荷は、\(Q = C \times (\text{自分の極板の電位} – \text{向かいの極板の電位})\) で計算できます。
$$ C_{40}(V_M – V_{\text{左}}) + C_{20}(V_M – V_{\text{右}}) + C_{60}(V_M – V_N) = 0 $$
数値を代入します。
$$ 40 \times 10^{-6} (V_M – (-18)) + 20 \times 10^{-6} (V_M – 12) + 60 \times 10^{-6} (V_M – 0) = 0 $$
両辺を \(20 \times 10^{-6}\) で割ると、
$$ 2(V_M + 18) + (V_M – 12) + 3V_M = 0 \quad \cdots ④ $$

使用した物理公式

  • 電気量保存則
  • コンデンサーの基本式 \(Q=CV\)
  • 電位の考え方
計算過程

まず、問(2)の点Mの電位 \(V_M\) を求めます。式④を \(V_M\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2V_M + 36 + V_M – 12 + 3V_M & = 0 \\[2.0ex]6V_M + 24 & = 0 \\[2.0ex]V_M & = -4.0 \text{ [V]}
\end{aligned}
$$
次に、この結果を用いて問(1)の各コンデンサーに蓄えられる電気量を計算します。
まず、各コンデンサーにかかる電圧(電位差の絶対値)を求めます。

  • 60μFの電圧: \(V_{60} = |V_M – V_N| = |-4.0 – 0| = 4.0 \text{ V}\)
  • 40μFの電圧: \(V_{40} = |V_M – V_{\text{左}}| = |-4.0 – (-18)| = |14| = 14 \text{ V}\)
  • 20μFの電圧: \(V_{20} = |V_M – V_{\text{右}}| = |-4.0 – 12| = |-16| = 16 \text{ V}\)

これらの電圧を用いて、\(Q=CV\) から電気量を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{60} &= (60 \times 10^{-6}) \times 4.0 = 2.4 \times 10^{-4} \text{ [C]} \\[2.0ex]Q_{40} &= (40 \times 10^{-6}) \times 14 = 5.6 \times 10^{-4} \text{ [C]} \\[2.0ex]Q_{20} &= (20 \times 10^{-6}) \times 16 = 3.2 \times 10^{-4} \text{ [C]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この回路を、水圧の異なる3つの水道管が1点で合流する様子に例えることができます。点Nを地面(水圧0)、電源をポンプと考えます。18Vポンプは水を吸い上げる向きなので左の管は-18の水圧に、12Vポンプは水を押し出す向きなので右の管は+12の水圧になります。合流点Mの水圧(電位)は、この3方向からの水の流れ(電荷の移動)が釣り合うところで決まります。この釣り合いの条件を数式にして解くことで、Mの電位を求め、各部品の電圧と電気量を計算します。

結論と吟味

(1) 各コンデンサーに蓄えられる電気量は、60μFが \(2.4 \times 10^{-4} \text{ C}\)、40μFが \(5.6 \times 10^{-4} \text{ C}\)、20μFが \(3.2 \times 10^{-4} \text{ C}\) です。
(2) 点Nの電位を基準とすると、点Mの電位は \(-4.0 \text{ V}\) です。
この結果は、キルヒホッフの法則を用いた模範解答の解法と完全に一致しました。これにより、模範解答は「18V電源はN側が正極、12V電源はN側が負極」という前提で問題を解いていたことが確認できました。電位法は、このような複雑な回路の全体像を直感的に把握し、間違いなく立式する上で非常に強力な手法です。


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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気量保存則:
    • 核心: 回路の中で、外部の導線から電気的に孤立した部分(この問題では点Mに接続された3枚のコンデンサーの極板)の電荷の総和は、充電の前後で一定に保たれます。初め電荷が0だったので、充電完了後もこの部分の電荷の総和は0のままです。これが未知数を決定するための最も重要な方程式を与えます。
    • 理解のポイント: 電荷は勝手に発生したり消滅したりせず、導線を通って移動するだけです。孤立部分には電荷の「逃げ道」も「入り口」もないため、総量は不変となります。
  • キルヒホッフの第二法則(電圧則):
    • 核心: 回路内の任意の閉じたループを一周するときの、電位の上昇(電源の正極方向への通過など)と電位の下降(抵抗やコンデンサーの電圧降下など)の代数和はゼロになります。これにより、各部分の電圧の関係式を複数立てることができます。
    • 理解のポイント: 「出発点に戻れば、電位(高さ)も元に戻る」という、エネルギー保存則の電気回路における表現です。この法則を使うことで、未知の電圧に関する連立方程式を構築できます。
  • 電位法:
    • 核心: 回路の一点を基準(0V)とし、各点の電位を未知数として設定して解く方法です。特にこの問題のように複雑な回路では、各素子の電圧を個別に考えるよりも、各点の電位を考える方が全体像を把握しやすく、立式ミスを減らせます。
    • 理解のポイント: 電気量保存則を、各点の電位を用いて表現することで、未知数が少なく、直感的な一本の式で解を導き出せる場合があります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 複数のコンデンサーと電源を含むブリッジ回路: ホイートストンブリッジに似たコンデンサー回路で、平衡条件が成り立たない場合に、同様の解法が適用できます。
    • スイッチの切り替え問題: スイッチを切り替える前と後で、孤立部分の電気量保存則を適用する問題は頻出です。
    • 接地(アース)を含む回路: 接地された点は電位0Vの基準点として扱えるため、電位法を適用する絶好の出発点となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の「孤立部分」を探す: まず、回路図を眺めて、他の部分から完全に切り離されている導線や極板のグループがないかを探します。ここが電気量保存則を適用するポイントです。
    2. 電源の向きを正確に把握する: 電源の記号(長い方が+、短い方が−)を正確に読み取り、電位が上がる向きと下がる向きを明確にします。
    3. 基準点を決める: アースされている点や、回路の分岐が多く集まる点(この問題の点Nなど)を電位の基準(0V)に設定すると、計算の見通しが良くなります。
    4. 解法を選択する:
      • 電位法: 未知の電位の点が少ない場合(1〜2点)は、電位法が最も早く、間違いが少ないです。
      • キルヒホッフの法則: 回路がより複雑で、未知の電位の点が多い場合は、各素子の電圧を未知数とする伝統的なキルヒホッフの法則で連立方程式を立てるのが確実です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電源の向きの誤解:
    • 誤解: 電源の記号(長短)をうっかり見間違えたり、問題の慣例から勝手に判断したりして、電位の上下を逆にしてしまう。
    • 対策: 必ず回路図の記号を指差し確認し、ループをたどる際に「+を通過すれば電位は上がる」「−を通過すれば下がる」というルールを機械的に適用しましょう。
  • 電気量保存則を適用する際の符号ミス:
    • 誤解: 孤立部分の電荷の総和を計算する際、各極板の電荷の符号を間違える。
    • 対策: 電位法を使うのが最も安全です。電荷は \(Q = C \times (\text{自分の極板の電位} – \text{向かいの極板の電位})\) で計算すると、符号は自動的に正しく決まります。キルヒホッフの法則で解く場合は、最初に仮定した極性(+/−)に従って、M側の極板が+なら \(+CV\)、−なら \(-CV\) と、慎重に符号を決定しましょう。
  • キルヒホッフの電圧則での符号ミス:
    • 誤解: ループを一周する際に、電位の上がり下がり(+/−)を混同する。
    • 対策: 「ループをたどる向き」と「電圧の向き(+から−へ)」が同じなら電位は下がる(−V)、逆なら上がる(+V)というルールを徹底します。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 電位の「標高マップ」イメージ: 回路図を地形図のように見立て、電位を「標高」としてイメージします。点Nを標高0mの平地とすると、18V電源は「深さ18mの穴」、12V電源は「高さ12mの丘」に相当します。点Mは、これら3つの地点(0m, -18m, +12m)に囲まれた「すり鉢状の土地の中のどこか」の標高になります。電荷(水)が流れ込み、最終的に安定した水位(電位)が \(-4.0\text{ V}\) になった、とイメージすると直感的です。
    • 図への書き込み:
      1. 基準点Nに「0V」と大きく書き込む。
      2. 電源の働きで電位が確定する点(-18V, +12V)に、その値を書き込む。
      3. 未知の点Mに「\(V_M\)」と書き込む。
      4. この図を見ながら、各コンデンサーの電位差を \(V_M – (-18)\) のように機械的に計算していくと、ミスが劇的に減ります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 電気量保存則 (\(\sum Q_{\text{孤立}} = \text{const.}\)):
    • 選定理由: 回路内に未知数が複数(\(V_1, V_2, V_3\) または \(V_M\))あり、方程式が複数必要になるため。電気的に孤立した部分は、電荷の出入りがないという明確な物理的制約であり、方程式を立てるための強力な根拠となります。
    • 適用根拠: 電荷の保存という物理学の基本法則に基づいています。
  • キルヒホッフの第二法則 (\(\sum V = 0\)):
    • 選定理由: 未知数に対して方程式の数が足りない場合に、電圧に関する独立な関係式を追加するため。
    • 適用根拠: エネルギー保存則に基づいています。ループを一周して同じ場所に戻れば、電位(位置エネルギー)も元に戻るという原理を数式化したものです。
  • 電位法:
    • 選定理由: 上記2つの法則を、より統一的かつシンプルに扱うための手法。特に、この問題のように未知の電位を持つ点が1つ(点M)しかない場合、未知数が1つの単純な方程式に帰着させられるため、最も効率的な解法となります。
    • 適用根拠: 電気量保存則と電位の定義を組み合わせた、応用的な解法です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  • 戦略A: 電位法(推奨):
    • フロー: ①基準点(N)の電位を0Vと設定 → ②電源の向きから、確定している他の点の電位(-18V, +12V)を計算 → ③未知の点(M)の電位を \(V_M\) とおく → ④孤立部分について電気量保存則を \(V_M\) を用いて立式 → ⑤ \(V_M\) について解き、電位を求める(問2) → ⑥各コンデンサーの電位差を計算し、\(Q=CV\) で電気量を求める(問1)。
  • 戦略B: キルヒホッフの法則:
    • フロー: ①各コンデンサーの電圧(\(V_1, V_2, V_3\))と極性を仮定 → ②孤立部分について電気量保存則を立式 → ③独立なループを2つ選び、キルヒホッフの電圧則を立式 → ④3つの未知数(\(V_1, V_2, V_3\))に関する3本の連立方程式を解く → ⑤得られた電圧から \(Q=CV\) で電気量を計算(問1) → ⑥基準点からの電位差を計算して点Mの電位を求める(問2)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位のプレフィックス(μ)の扱い: 計算の初期段階では、\(C_{40}=40, C_{20}=20, C_{60}=60\) のように、比の関係だけを使えば \(10^{-6}\) を書かなくて済みます。電気量保存則の式では両辺で消えるため、計算がシンプルになります。最終的に電気量 \(Q\) を求める段階で初めて \(10^{-6}\) を掛けるようにすると、計算ミスを減らせます。
  • 連立方程式の整理: キルヒホッフの法則で解く場合、立てた3本の式を、\(V_1, V_2, V_3\) の項を揃えて書き直してから計算を始めると、代入ミスや計算ミスを防げます。
  • 検算: 電位法で解いた後、キルヒホッフの法則が成り立っているかを確認する、などの検算が有効です。例えば、別解で求めた \(V_{60}=4.0\text{V}, V_{40}=14\text{V}, V_{20}=16\text{V}\) を使って、左ループの電圧則 \(V_M – V_{\text{左}} = 14\text{V}\) や右ループの電圧則 \(V_{\text{右}} – V_M = 16\text{V}\) が、電位の値(\(V_M=-4.0\text{V}, V_{\text{左}}=-18\text{V}, V_{\text{右}}=12\text{V}\))と矛盾しないかを確認します。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • 点Mの電位: \(V_M = -4.0 \text{ V}\) という値は、周囲の電位(-18V, +12V, 0V)の範囲内に収まっています。もし、この範囲を大きく外れるような値が出た場合は、計算ミスを疑うべきです。点Mの電位は、周囲の電位を静電容量で重み付けした平均のような値になるはずで、この直感と結果は一致しています。
  • 別解との比較:
    • この問題では、キルヒホッフの法則を用いた解法(模範解答の考え方)と、電位法を用いた別解の両方で、全く同じ答えが得られました。これは、立式や計算が正しかったことを強力に裏付けています。異なるアプローチで同じ結論に至ることを確認するのは、最も確実な検算方法の一つです。
    • また、当初の電源の向きに関する解釈のズレを、両方の解法で比較検討したことで、模範解答がどのような前提で解かれているかを正確に特定できました。これも、解の妥当性を多角的に吟味する良い訓練になります。
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