Step 2
322 コンデンサーの電気容量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平行板コンデンサーの電気容量の導出」です。ガウスの法則から出発し、電場、電位差を順に求め、最終的に電気容量の公式を導き、さらにクーロンの法則の比例定数と真空の誘電率の関係を明らかにします。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ガウスの法則: 電荷から出る電気力線の総本数は \(N = 4\pi k Q\) で与えられます。
- 電場の強さの定義: 電場の強さ \(E\) は、電場に垂直な単位面積を貫く電気力線の本数に等しくなります。
- 一様な電場と電位差の関係: 一様な電場 \(E\) の中で、距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) は \(V=Ed\) で表されます。
- コンデンサーの基本式: コンデンサーが蓄える電気量 \(Q\)、極板間の電圧 \(V\)、電気容量 \(C\) の間には \(Q=CV\) の関係があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- ① ガウスの法則を適用して、正極板の電荷 \(+Q\) から出る電気力線の総本数を求めます。
- ②, ③ 電気力線が面積 \(S\) の極板から一様に出ていると考え、単位面積あたりの本数を計算し、電場の強さ \(E\) を求めます。
- ④ 関係式 \(V=Ed\) を用いて、極板間の電圧 \(V\) を計算します。
- ⑤ ④で求めた式から、電気量 \(Q\) と電圧 \(V\) の関係を読み取ります。
- ⑥ コンデンサーの定義式 \(C=Q/V\) を用いて、電気容量 \(C\) を \(k, S, d\) で表します。
- ⑦ ⑥で求めた \(C\) の表式と、与えられている公式 \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) を比較し、\(\varepsilon_0\) と \(k\) の関係式を導きます。
空欄①
思考の道筋とポイント
正電荷 \(+Q\) をもつ金属板から出る電気力線の総本数を求める問題です。これはガウスの法則の基本公式そのものです。
この設問における重要なポイント
- ガウスの法則: 真空中で電荷 \(Q\) [C] から出る電気力線の総本数 \(N\) は、クーロンの法則の比例定数 \(k\) を用いて \(N = 4\pi k Q\) と表される。
具体的な解説と立式
ガウスの法則によれば、電荷量 \(Q\) の点電荷を囲む閉曲面を貫く電気力線の総本数は、電荷量に比例します。その比例定数を含めた公式が \(N = 4\pi k Q\) です。これは点電荷だけでなく、導体上の電荷の総和に対しても適用できます。
したがって、正電荷 \(+Q\) をもつ金属板から出る電気力線の総本数は、この公式から直接求められます。
$$ N = 4\pi k Q $$
使用した物理公式
- ガウスの法則: \(N = 4\pi k Q\)
この設問は公式を適用するのみであり、具体的な計算は不要です。
物理学の基本的なルール(ガウスの法則)として、「電荷 \(Q\) があると、その周りには \(4\pi k Q\) 本の電気の矢印(電気力線)が湧き出す」と決まっています。この問題では、このルールをそのまま答えとして書けばOKです。
正電荷をもつ金属板から出る電気力線の本数は \(4\pi k Q\) 本となります。
空欄②
思考の道筋とポイント
金属板の間で、電気力線に垂直な単位面積(1 m²)を貫く電気力線の本数を求める問題です。①で求めた総本数を、金属板の面積 \(S\) で割ることで求められます。
この設問における重要なポイント
- 平行板コンデンサー内の電気力線は、極板間で一様(等間隔で平行)であるとみなせる(端の効果は無視)。
- 単位面積あたりの本数(密度)は、総本数を全面積で割ることで計算できる。
具体的な解説と立式
①で求めた電気力線の総本数 \(N = 4\pi k Q\) が、面積 \(S\) の金属板から垂直に、かつ一様に出ていると考えます。
したがって、単位面積を貫く電気力線の本数は、総本数 \(N\) を面積 \(S\) で割ることで求められます。
$$ (\text{単位面積あたりの本数}) = \frac{N}{S} $$
使用した物理公式
- ①の結果: \(N = 4\pi k Q\)
①で求めた \(N = 4\pi k Q\) を上の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
(\text{単位面積あたりの本数}) &= \frac{4\pi k Q}{S}
\end{aligned}
$$
①で、金属板全体から出る電気力線の合計本数が \(4\pi k Q\) 本だとわかりました。これらの線が面積 \(S\) の板から均等に出ていると考えると、1 m² あたりの本数は「合計本数 ÷ 面積」で計算できます。
金属板間で電気力線に垂直な単位面積を貫く電気力線の本数は \(\displaystyle\frac{4\pi k Q}{S}\) 本となります。
空欄③
思考の道筋とポイント
金属板間の電場の強さ \(E\) を求める問題です。電場の強さは、その定義から、②で求めた「単位面積を貫く電気力線の本数」と等しくなります。
この設問における重要なポイント
- 電場の強さ \(E\) の物理的意味: 電場に垂直な単位面積を貫く電気力線の本数は、その場所の電場の強さ \(E\) に等しい。
具体的な解説と立式
電場の強さ \(E\) は、電気力線の密度によって表されます。具体的には、「電場に垂直な単位面積を貫く電気力線の本数」が電場の強さの定義です。
したがって、②で求めた値がそのまま電場の強さ \(E\) となります。
$$ E = (\text{単位面積あたりの電気力線の本数}) $$
使用した物理公式
- 電場の強さの定義
②の結果から、電場の強さ \(E\) は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{4\pi k Q}{S}
\end{aligned}
$$
「電場の強さ」という物理量は、「電気力線がどれだけ密集しているか」で定義されています。これは、まさに②で計算した「1 m² あたりの電気力線の本数」そのものです。したがって、②の答えがそのまま③の答えになります。
金属板間の電場の強さ \(E\) は \(\displaystyle\frac{4\pi k Q}{S}\) [V/m] となります。
空欄④
思考の道筋とポイント
金属板間の電圧(電位差) \(V\) を求める問題です。平行板コンデンサーの極板間のように一様な電場中では、電圧 \(V\) は「電場の強さ \(E\) × 距離 \(d\)」で計算できます。
この設問における重要なポイント
- 一様な電場と電位差の関係: 一様な電場 \(E\) の中で、電場の向きに沿って距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) は、\(V=Ed\) で与えられる。
具体的な解説と立式
平行板コンデンサーの極板間の電場は一様であるとみなせます。この一様な電場の強さが \(E\) で、極板間の距離が \(d\) であるため、両極板間の電圧 \(V\) は以下の式で計算できます。
$$ V = E d $$
使用した物理公式
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
- ③の結果: \(E = \displaystyle\frac{4\pi k Q}{S}\)
③で求めた \(E\) の式を \(V=Ed\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \left( \frac{4\pi k Q}{S} \right) \times d \\[2.0ex]
&= \frac{4\pi k Q d}{S}
\end{aligned}
$$
電圧は「電気的な高さの差」と考えることができます。このとき、電場の強さ \(E\) は「坂道の傾き」に相当します。傾きが \(E\) の坂道を、距離 \(d\) だけ進んだときの高さの差 \(V\) は、「傾き × 距離」つまり \(E \times d\) で求められます。
金属板間の電圧 \(V\) は \(\displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}\) [V] となります。
空欄⑤
思考の道筋とポイント
コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) が、何に比例するかを答える問題です。コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) や、④で導出した関係式から考察します。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本性質: コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) は、そのコンデンサーの極板間の電圧 \(V\) に比例する。その比例定数が電気容量 \(C\) である (\(Q=CV\))。
具体的な解説と立式
④で導出した電圧 \(V\) の式は \(V = \displaystyle\frac{4\pi k d}{S} Q\) です。
この式を \(Q\) について整理すると、
$$ Q = \left( \frac{S}{4\pi k d} \right) V $$
となります。ここで、面積 \(S\) と距離 \(d\) は一定なので、括弧内の \(\left( \displaystyle\frac{S}{4\pi k d} \right)\) は定数です。これは電気容量 \(C\) にあたります。
この式から、電気量 \(Q\) は電圧 \(V\) に比例することがわかります。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
この設問は物理的な関係性を問うものであり、具体的な計算は不要です。
コンデンサーは電気をためる「バケツ」のようなものです。電圧 \(V\) は、電気を流し込もうとする「圧力」のようなものだと考えられます。圧力を強くすれば(電圧を高くすれば)、バケツにたまる電気の量 \(Q\) も多くなります。したがって、電気量 \(Q\) は電圧に比例します。
蓄えられる電気量 \(Q\) は、\(S, d\) が一定の場合、電圧に比例します。
空欄⑥
思考の道筋とポイント
コンデンサーの電気容量 \(C\) を求める問題です。電気容量は、定義式 \(C=Q/V\) に、④で求めた電圧 \(V\) の式を代入することで計算できます。
この設問における重要なポイント
- 電気容量の定義: 電気容量 \(C\) は、コンデンサーに \(1\) V の電圧をかけたときに蓄えられる電気量として定義され、\(C = \displaystyle\frac{Q}{V}\) で計算される。
具体的な解説と立式
電気容量 \(C\) の定義式は以下の通りです。
$$ C = \frac{Q}{V} $$
この式の \(V\) に、④で求めた \(V = \displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}\) を代入して \(C\) を計算します。
使用した物理公式
- 電気容量の定義: \(C = \displaystyle\frac{Q}{V}\)
- ④の結果: \(V = \displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}\)
定義式に \(V\) を代入して計算を進めます。
$$
\begin{aligned}
C &= \frac{Q}{V} \\[2.0ex]
&= \frac{Q}{\displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}} \\[2.0ex]
&= Q \cdot \frac{S}{4\pi k Q d} \\[2.0ex]
&= \frac{S}{4\pi k d}
\end{aligned}
$$
電気容量 \(C\) は、そのコンデンサーの「性能」を表す値で、「1 V あたり、どれだけの電気をためられるか」を示します。計算するには、単純に「電気量 \(Q\) ÷ 電圧 \(V\)」を実行します。④で計算した電圧の式を使って割り算をすれば、答えが求まります。
電気容量 \(C\) は \(\displaystyle\frac{S}{4\pi k d}\) [F] となります。この式から、電気容量は極板の面積 \(S\) に比例し、極板間の距離 \(d\) に反比例することがわかります。
空欄⑦
思考の道筋とポイント
⑥で導出した電気容量 \(C\) の式と、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を用いた公式 \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) を比較し、\(\varepsilon_0\) がクーロン定数 \(k\) を用いてどのように表されるかを求める問題です。
この設問における重要なポイント
- 物理定数間の関係: クーロンの法則の比例定数 \(k\) と真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) は、どちらも真空中の電磁気的な性質を表す定数であり、互いに変換可能な関係にある。
具体的な解説と立式
⑥で求めた電気容量の式と、問題文で与えられている真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を用いた電気容量の公式は、どちらも同じ平行板コンデンサーの電気容量を表しているので、等しいはずです。
したがって、これらを等号で結びます。
$$ \frac{S}{4\pi k d} = \varepsilon_0 \frac{S}{d} $$
この等式を \(\varepsilon_0\) について解きます。
使用した物理公式
- ⑥の結果: \(C = \displaystyle\frac{S}{4\pi k d}\)
- 平行板コンデンサーの電気容量の公式: \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
上記で立てた等式を \(\varepsilon_0\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_0 \frac{S}{d} &= \frac{S}{4\pi k d} \\[2.0ex]
\varepsilon_0 &= \frac{S}{4\pi k d} \cdot \frac{d}{S} \\[2.0ex]
\varepsilon_0 &= \frac{1}{4\pi k}
\end{aligned}
$$
⑥で自分たちの手で計算して求めた \(C\) の式と、教科書に載っている \(C\) の公式(\(\varepsilon_0\) を使った式)は、同じものを指しているはずです。そこで、この2つの式を「=」でつなぎます。両辺に共通して含まれている \(S\) と \(d\) を消去すると、\(\varepsilon_0\) と \(k\) の関係だけが残ります。
真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) は、クーロンの法則の比例定数 \(k\) を用いて \(\varepsilon_0 = \displaystyle\frac{1}{4\pi k}\) [F/m] と表されます。これは電磁気学における非常に重要な関係式です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- コンデンサーの物理量の連鎖的導出:
- 核心: この問題は、コンデンサーに関する物理量、すなわち電荷\(Q\)、電気力線数\(N\)、電場\(E\)、電圧\(V\)、電気容量\(C\)が、互いにどのように関連し合っているかを、一連の論理的な流れで理解することが核心です。
- 理解のポイント:
- 出発点 (\(Q \rightarrow N\)): 全ての源は電荷\(Q\)です。ガウスの法則 \(N=4\pi k Q\) により、電荷が電気力線という形で電場を生み出す様子を定量化します。
- 電場の決定 (\(N \rightarrow E\)): 電気力線の「密度」が電場の強さ\(E\)を定義します (\(E = N/S\))。これにより、空間的な広がりを持つ物理量に変換されます。
- 電圧の計算 (\(E \rightarrow V\)): 電場が空間に作る「電気的な高低差」が電圧\(V\)です。一様な電場では、単純な掛け算 \(V=Ed\) で求まります。
- 電気容量の定義 (\(Q, V \rightarrow C\)): 最終的に、蓄えた電荷\(Q\)と、その結果生じた電圧\(V\)の「比」をとることで、コンデンサーの性能そのものを表す電気容量\(C\) (\(C=Q/V\))が導かれます。この \(Q \rightarrow E \rightarrow V \rightarrow C\) という一連の流れをマスターすることが最重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 同軸円筒コンデンサー・球コンデンサーの電気容量: 平行板では電場\(E\)が一定でしたが、これらの形状では中心からの距離\(r\)に依存して\(E\)が変化します(例: \(E \propto 1/r\))。電圧\(V\)を求める際に \(V=Ed\) ではなく積分計算が必要になりますが、「\(Q \rightarrow E \rightarrow V \rightarrow C\)」という導出の基本フローは全く同じです。
- 誘電体を挿入したコンデンサー: 誘電体を挿入すると、真空の誘電率\(\varepsilon_0\)が物質の誘電率\(\varepsilon\) (\(\varepsilon > \varepsilon_0\)) に置き換わると考えます。これにより電場が弱められ、結果として電気容量\(C\)が増大します。クーロン定数\(k\)で考える場合は、\(k\)が\(k’ = k/\varepsilon_r\)(\(\varepsilon_r\)は比誘電率)に変化すると考えれば同様に解けます。
- ガウスの法則を直接用いる電場計算: 点電荷、無限に長い帯電した直線、帯電した球殻などが作る電場を、対称性の良い「ガウス面」を設定して求める問題。この問題の①〜③は、まさにその計算を実行していることに相当します。
- 初見の問題での着眼点:
- 電荷分布の対称性を確認する: まず、電荷の分布を見て、電場が一様になるか(平行板)、距離に依存して変化するか(円筒、球)を判断します。これにより、電圧\(V\)の計算方法(\(V=Ed\)か、積分か)が決まります。
- 導出のフローを確認する: 問題が何を求めさせているかを確認し、「\(Q \rightarrow E \rightarrow V \rightarrow C\)」のどの段階の計算なのかを意識します。例えば、電場\(E\)が与えられていれば、\(E \rightarrow V \rightarrow C\)のステップから始めればよいと判断できます。
- 定数(\(k\) or \(\varepsilon_0\))を確認する: 問題文や設問で、クーロン定数\(k\)と誘電率\(\varepsilon_0\)のどちらを主として使っているかを確認します。最終的に求められる式の形がどちらの定数を含むべきかを意識することで、計算の方向性が定まります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(Q=CV\) の式の因果関係の誤解:
- 誤解: \(C = Q/V\) という式を見て、「電気容量\(C\)は、電気量\(Q\)に比例し、電圧\(V\)に反比例する」と誤って解釈してしまう。
- 対策: 電気容量\(C\)は、コンデンサーの面積\(S\)や極板間距離\(d\)といった「形状」のみで決まる固有の性能値(定数)であると強く意識してください。この式は「電圧\(V\)をかけると、そのコンデンサーの性能\(C\)に応じて\(Q\)の電荷がたまる」という因果関係を表しています。\(Q\)と\(V\)は比例関係にあり、その比例定数が\(C\)です。
- 電場の強さと電気力線総数の混同:
- 誤解: ③で電場の強さ\(E\)を求める際に、①で求めた電気力線の「総本数」\(4\pi k Q\)を、そのまま電場の強さだと勘違いしてしまう。
- 対策: 電場の強さ\(E\)は、電気力線の「密度」であると定義を明確に覚えることが重要です。「密度」という言葉から、「単位面積あたり」、つまり「面積\(S\)で割る」という操作が必ず必要になると連想できるようにしましょう。
- クーロン定数\(k\)と誘電率\(\varepsilon_0\)の関係の混乱:
- 誤解: \(k\)と\(\varepsilon_0\)が別々の文脈で登場するため、両者の関係性がわからなくなり、式の変換で混乱する。
- 対策: \(k\)は「電荷間に働く力」の文脈(クーロンの法則)で、\(\varepsilon_0\)は「電場の生じやすさ、誘電しやすさ」の文脈(ガウスの法則、コンデンサー)で主に使われる定数だと役割を区別します。そして、両者を結びつける重要な関係式 \(\varepsilon_0 = \displaystyle\frac{1}{4\pi k}\) を、この問題のように一度自分で導出し、いつでも使えるようにしておくことが有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ガウスの法則 (\(N=4\pi k Q\)):
- 選定理由: この問題の出発点は「電荷\(Q\)」です。その電荷が周囲の空間にどのような影響(電場)を及ぼすかを記述する最初のステップとして、電荷量と電気力線の本数を結びつけるこの法則が不可欠です。
- 適用根拠: 電気力線という概念を用いて電場を視覚的・定量的に扱う電磁気学の基本法則であり、電荷が存在する限り、この法則が成り立ちます。
- 電場の強さの定義 (\(E = N/S\)):
- 選定理由: 「電気力線」という仮想的な概念から、物理的に測定可能な「電場の強さ\(E\)」へと変換するために必要です。
- 適用根拠: 平行板コンデンサーでは、電気力線が極板間で一様(等密度)に分布していると理想化できるため、「総本数 ÷ 面積」という単純な計算で電場の強さを求めることができます。
- 一様な電場と電位差の関係 (\(V=Ed\)):
- 選定理由: 電場の情報(\(E\))から、コンデンサーの性能を評価するもう一つの重要パラメータである「電圧\(V\)」を導出するために用います。
- 適用根拠: 平行板コンデンサー内部の電場は、極板間のどの場所でも強さと向きが同じ「一様な電場」とみなせるため、このシンプルな関係式が極めて有効に適用できます。
- 電気容量の定義 (\(C=Q/V\)):
- 選定理由: 問題の最終目標である「電気容量\(C\)」を計算するための定義式そのものです。
- 適用根拠: これまでの計算で、\(Q\)と\(V\)の関係が \(Q = (\text{定数}) \times V\) の形で導かれました。この比例定数こそが電気容量\(C\)の定義であり、この式を適用することで\(C\)を求めることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 分数の割り算は逆数の掛け算で:
- ⑥の \(C = \displaystyle\frac{Q}{V}\) の計算では、分母の\(V\)がさらに分数 (\(\displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}\)) になっています。このような「分数分の分数」の形はミスを誘発します。必ず \(C = Q \div (\displaystyle\frac{4\pi k Q d}{S}) = Q \times (\displaystyle\frac{S}{4\pi k Q d})\) のように、逆数の掛け算の形に一段階書き直してから計算を進める癖をつけましょう。
- 約分は慎重に:
- 上記の計算で、分子と分母にある\(Q\)を約分で消去します。このとき、他の文字(\(k, S, d\)など)を誤って消してしまわないよう、一つ一つ指で確認しながら消すくらいの慎重さが大切です。特に、電気容量\(C\)は\(Q\)や\(V\)に依存しないはずなので、計算結果に\(Q\)が残っていたら間違いを疑う、という自己検閲が有効です。
- 等式変形での共通項の整理:
- ⑦で \(\varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d} = \displaystyle\frac{S}{4\pi k d}\) の両辺を比較する際、共通している部分(この場合は \(\displaystyle\frac{S}{d}\))を一つの塊と見て、それを両辺から取り除くようにすると、残りの部分の関係(\(\varepsilon_0 = \displaystyle\frac{1}{4\pi k}\))が明瞭になります。式全体を漠然と眺めるのではなく、共通部分や特徴的な部分を見つけ出す意識を持つと、計算が速く正確になります。
323 平行板コンデンサー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの極板間隔を変化させたときの物理量の変化」です。特に、「電源に接続したまま」の場合と「電源から切り離した後」の場合で、どの物理量が一定に保たれるかを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)。電荷量\(Q\)、電気容量\(C\)、電圧\(V\)の関係を表します。
- 平行板コンデンサーの電気容量: \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)。電気容量が極板の面積\(S\)に比例し、極板間隔\(d\)に反比例することを示します。
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)。極板間の電場\(E\)と電圧\(V\)、間隔\(d\)の関係です。
- 操作による条件の違い:
- 電源に接続したまま操作 → 電圧\(V\)が一定に保たれる。
- 電源から切り離して操作 → 電荷の移動ができないため、電気量\(Q\)が一定に保たれる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1), (2)では、与えられた数値と基本公式を用いて、電気量\(Q\)と電場\(E\)を具体的に計算します。
- (3)では、「電圧\(V\)が一定」という条件下で、極板間隔\(d\)を2倍にしたとき、各物理量(\(C, Q, E\))がどのように変化するかを、関係式を元に追跡します。
- (4)では、「電気量\(Q\)が一定」という条件下で、同様の操作を行った場合の変化を追跡します。
問(1)
思考の道筋とポイント
コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)を求める問題です。電気容量\(C\)と電圧\(V\)が与えられているので、コンデンサーの基本式\(Q=CV\)を直接用いて計算します。単位の接頭辞\(\mu\)(マイクロ)の扱いに注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
- 単位の換算: \(1 \mu \text{F} = 1 \times 10^{-6} \text{ F}\)
具体的な解説と立式
電気容量\(C\)、コンデンサーにかかる電圧\(V\)、蓄えられる電気量\(Q\)の間には、以下の関係があります。
$$ Q = CV $$
問題で与えられた値は \(C = 0.50 \mu \text{F} = 0.50 \times 10^{-6} \text{ F}\)、\(V = 4.0 \times 10^2 \text{ V}\) です。これらの値を上式に代入します。
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
与えられた値を代入して\(Q\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= (0.50 \times 10^{-6}) \times (4.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= (0.50 \times 4.0) \times 10^{-6+2} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^{-4} \text{ [C]}
\end{aligned}
$$
コンデンサーにたまる電気の量(\(Q\))は、そのコンデンサーの性能(電気容量\(C\))と、かけた電圧(\(V\))の掛け算で求めることができます。今回は \(C=0.50 \mu \text{F}\)、\(V=4.0 \times 10^2 \text{ V}\) なので、この2つを掛け合わせます。\(\mu\)は\(10^{-6}\)のことなので、忘れずに変換して計算します。
コンデンサーに蓄えられる電気量は \(2.0 \times 10^{-4} \text{ C}\) です。
問(2)
思考の道筋とポイント
極板間にできる電場の強さ\(E\)を求める問題です。平行板コンデンサーの極板間の電場は一様とみなせます。電圧\(V\)と極板間隔\(d\)が分かっているので、関係式\(V=Ed\)を用いて\(E\)を計算します。
この設問における重要なポイント
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)。これを変形すると \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\) となる。
具体的な解説と立式
一様な電場\(E\)の中の、電場の向きに沿った距離\(d\)だけ離れた2点間の電位差\(V\)は、\(V=Ed\)と表されます。
これを電場の強さ\(E\)について解くと、
$$ E = \frac{V}{d} $$
となります。問題で与えられた値は \(V = 4.0 \times 10^2 \text{ V}\)、\(d = 2.0 \times 10^{-3} \text{ m}\) です。
使用した物理公式
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
与えられた値を代入して\(E\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{4.0 \times 10^2}{2.0 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= \frac{4.0}{2.0} \times 10^{2 – (-3)} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^5 \text{ [V/m]}
\end{aligned}
$$
電場の強さ(\(E\))は、電圧(\(V\))を極板間の距離(\(d\))で割ることで求められます。電場が「電気的な坂道の傾き」だとすると、電圧は「高低差」、距離は「水平距離」にあたります。「傾き=高低差÷水平距離」という関係と同じです。
極板間にできる電場の強さは \(2.0 \times 10^5 \text{ V/m}\) です。
問(3)
思考の道筋とポイント
「電源を接続したまま」極板の間隔\(d\)を2倍に広げる、という操作後の各物理量(\(C, V, Q, E\))の変化を問う問題です。最も重要なのは「電源を接続したまま」という条件が「電圧\(V\)が一定」を意味することを理解することです。これを基点に、各物理量の変化を順に追っていきます。
この設問における重要なポイント
- 条件の解釈: 「電源を接続したまま」 → 電圧\(V\)は一定。
- 各物理量の関係式:
- \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
- \(Q=CV\)
- \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
具体的な解説と立式
変化前の間隔を\(d\)、各物理量を\(C, V, Q, E\)とし、変化後の間隔を\(d’ = 2d\)、各物理量を\(C’, V’, Q’, E’\)とします。
条件より、\(V’ = V\)(1倍)です。
(ア) 電気容量\(C\)の変化
電気容量の式 \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) を用います。\(d\)が2倍になるので、
$$ C’ = \varepsilon_0 \frac{S}{d’} = \varepsilon_0 \frac{S}{2d} = \frac{1}{2} \left( \varepsilon_0 \frac{S}{d} \right) = \frac{1}{2} C $$
よって、電気容量は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。
(イ) 電圧\(V\)の変化
電源に接続されたままなので、電圧は電源の電圧で一定に保たれます。
$$ V’ = V $$
よって、電圧は 1 倍(変化しない)です。
(ウ) 電気量\(Q\)の変化
基本式 \(Q=CV\) を用います。
$$ Q’ = C’V’ = \left( \frac{1}{2}C \right) \cdot V = \frac{1}{2} (CV) = \frac{1}{2} Q $$
よって、電気量は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。
(エ) 電場\(E\)の変化
関係式 \(E=V/d\) を用います。
$$ E’ = \frac{V’}{d’} = \frac{V}{2d} = \frac{1}{2} \left( \frac{V}{d} \right) = \frac{1}{2} E $$
よって、電場の強さは \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。
使用した物理公式
- \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
- \(Q=CV\)
- \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
この設問は変化率を問うものであり、具体的な数値計算は不要です。上記の立式が計算過程に相当します。
「電源につなぎっぱなし」は「電圧がずっと同じ」ということを意味します。
(ア) 板の間隔を2倍に広げると、電気をためる性能(\(C\))は半分に落ちます。
(イ) 電圧は電源につながっているので、変わりません(1倍)。
(ウ) 性能が半分になったので、同じ電圧でもためられる電気の量(\(Q\))は半分になります。
(エ) 電圧は同じままで距離だけが2倍になったので、電気的な坂道の傾き(\(E\))は半分になります。
(ア) \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、(イ) 1 倍、(ウ) \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、(エ) \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍となります。
問(4)
思考の道筋とポイント
「電源を切りはなして」から極板の間隔\(d\)を2倍に広げる、という操作後の各物理量の変化を問う問題です。この場合の最も重要なポイントは「電源から切り離した」という条件が「電気量\(Q\)が一定」を意味することを理解することです。電荷は孤立した導体から逃げることができないためです。
この設問における重要なポイント
- 条件の解釈: 「電源を切りはなして」 → 電気量\(Q\)は一定。
- 各物理量の関係式: (3)と同様の式を用いますが、\(Q\)が一定という条件から出発します。
具体的な解説と立式
(3)と同様に、変化前を\(C, V, Q, E\)、変化後を\(C’, V’, Q’, E’\)とします。間隔は\(d’ = 2d\)です。
条件より、\(Q’ = Q\)(1倍)です。
(ア) 電気容量\(C\)の変化
これは(3)のアと同じです。極板間隔\(d\)のみに依存するため、操作の条件(電源接続or切断)にはよりません。
$$ C’ = \varepsilon_0 \frac{S}{d’} = \varepsilon_0 \frac{S}{2d} = \frac{1}{2} C $$
よって、電気容量は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。
(イ) 電圧\(V\)の変化
基本式 \(Q=CV\) を \(V=Q/C\) と変形して考えます。
$$ V’ = \frac{Q’}{C’} = \frac{Q}{\frac{1}{2}C} = 2 \left( \frac{Q}{C} \right) = 2V $$
よって、電圧は 2 倍になります。
(ウ) 電気量\(Q\)の変化
電源から切り離されているため、電荷は極板上に保存されます。
$$ Q’ = Q $$
よって、電気量は 1 倍(変化しない)です。
(エ) 電場\(E\)の変化
関係式 \(E=V/d\) を用います。
$$ E’ = \frac{V’}{d’} = \frac{2V}{2d} = \frac{V}{d} = E $$
よって、電場の強さは 1 倍(変化しない)です。
具体的な解説と立式
電場の強さ\(E\)は、\(E=V/d\), \(V=Q/C\), \(C=\varepsilon_0 S/d\) の3式を組み合わせることで、
$$ E = \frac{V}{d} = \frac{Q/C}{d} = \frac{Q}{Cd} = \frac{Q}{(\varepsilon_0 S/d)d} = \frac{Q}{\varepsilon_0 S} $$
と表すこともできます。この問題(4)の状況では、電気量\(Q\)、真空の誘電率\(\varepsilon_0\)、極板面積\(S\)はすべて変化しません。したがって、この式から電場\(E\)は一定、つまり1倍になることが直接わかります。
結論と吟味
この方法を使えば、(イ)で電圧の変化を計算する前に(エ)の答えがわかります。物理量の関係を多角的に理解しておくと、より簡単に見通しよく解ける場合があります。
使用した物理公式
- \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\)
- \(Q=CV\)
- \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
この設問は変化率を問うものであり、具体的な数値計算は不要です。上記の立式が計算過程に相当します。
「電源を切りはなす」は「たまった電気の量(\(Q\))が同じまま」ということを意味します。
(ア) 板の間隔を2倍に広げると、性能(\(C\))は半分に落ちます。
(イ) 同じ量の電気を性能の悪い入れ物(\(C\)が半分)に無理やり入れるので、電圧(\(V\))は2倍に上がります。
(ウ) 電気の量(\(Q\))は逃げ場がないので、変わりません(1倍)。
(エ) 電圧が2倍になり、距離も2倍になったので、打ち消し合って電気的な坂道の傾き(\(E\))は変わりません(1倍)。
(ア) \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、(イ) 2 倍、(ウ) 1 倍、(エ) 1 倍となります。特に(エ)で電場が一定になるという結果は、ガウスの法則から導かれる重要な性質です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- コンデンサー操作における「不変量」の特定:
- 核心: この問題の成否を分けるのは、コンデンサーに対する操作(極板間隔の変更)の際に、「何が一定に保たれるか(不変量)」を正しく見抜けるかどうかです。
- 理解のポイント:
- 電源に接続したまま → 電圧\(V\)が一定: コンデンサーは常に電源に接続されているため、その両端の電位差は電源の電圧と等しく保たれ続けます。電荷\(Q\)は、この一定の電圧を維持するために、コンデンサーと電源の間を自由に移動できます。
- 電源から切り離した後 → 電気量\(Q\)が一定: コンデンサーが回路から孤立すると、蓄えられた電荷の逃げ道がなくなります。したがって、極板上の電気量\(Q\)は変化しようがなく、一定に保たれます。この状態で極板間隔などを変えると、一定の\(Q\)を維持するために電圧\(V\)が変化します。
- この2つのシナリオの違いを理解し、それぞれの状況でどの物理量を基点に考えるべきかを判断することが、この問題の最大の鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 誘電体の挿入・抜去: 極板間に比誘電率\(\varepsilon_r\)の誘電体を挿入すると、電気容量が \(C \rightarrow \varepsilon_r C\) と変化します。この操作を「電源接続時」に行うか「切断後」に行うかで、(3)と(4)と全く同じ思考フローで解くことができます。
- コンデンサーに蓄えられるエネルギーの変化: この問題に加えて、静電エネルギー \(U\)(\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\))がどう変化するかを問う問題は非常に多いです。不変量(\(V\)または\(Q\))を含む方の公式を選ぶと計算が楽になります。(例:V一定なら\(U=\frac{1}{2}CV^2\)、Q一定なら\(U=\frac{Q^2}{2C}\))
- 複数のコンデンサー回路: 直列・並列回路の一部で極板間隔を変える問題。まず合成容量の変化を計算し、回路全体の電圧・電荷の配分がどう変わるかを追跡します。
- 初見の問題での着眼点:
- 「接続したまま」か「切りはなして」かを確認: 問題文のこのフレーズに真っ先に印をつけます。これが全ての思考の出発点です。
- 不変量を明記する: 条件を確認したら、解答の余白に「\(V=\text{一定}\)」または「\(Q=\text{一定}\)」と大きく書き出します。
- 直接変化する量を特定する: 次に、操作(間隔を広げる、誘電体を入れる等)によって、どの物理量(主に電気容量\(C\))が直接的に変化するかを \(C=\varepsilon_0 S/d\) の式から求めます。
- 基本公式で連鎖を追う: 「不変量」と「\(C\)の変化」を使い、\(Q=CV\) と \(V=Ed\) を駆使して、残りの物理量の変化をドミノ倒しのように一つずつ確定させていきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 「接続」と「切断」の条件の混同:
- 誤解: (3)と(4)は似ているため、どちらの状況でも同じように考えてしまい、不変量を間違える。
- 対策: 問題を解き始める前に、問題文の「電源を接続したまま」「電源を切りはなして」というキーワードに丸をつけ、「V一定」「Q一定」と物理的な意味をメモする習慣をつけましょう。この2つは全く異なる物理現象だと強く認識することが重要です。
- 全ての物理量が変化するとの思い込み:
- 誤解: 極板間隔を変えたのだから、\(C, V, Q, E\)の全てが何倍かに変化するはずだと思い込み、不変量の存在を見落とす。
- 対策: 「なぜVが一定なのか? → 電源が電圧を供給し続けるから」「なぜQが一定なのか? → 電荷の逃げ道がないから」という物理的な理由をセットで理解することが有効です。これにより、不変量の存在を確信を持って使うことができます。
- 公式の適用ミス:
- 誤解: (4)の(エ)で電場を求めるとき、(3)と同じように \(E=V/d\) を考え、Vが2倍、dが2倍だから \(E’ = 2V/2d = E\) と計算するのは正しい。しかし、(3)の(エ)で \(E=Q/\varepsilon_0 S\) を使おうとして、\(Q\)が\(\frac{1}{2}\)倍になるから\(E\)も\(\frac{1}{2}\)倍、と考えるのは結果的に正しいが、遠回り。
- 対策: どの公式がどの物理量を結びつけているかを意識し、最も少ないステップで解けるルートを選ぶのが理想です。(3)では\(V\)が一定なので\(E=V/d\)から\(E \propto 1/d\)と考えるのが最も速く、(4)では\(Q\)が一定なので\(E=Q/\varepsilon_0 S\)から\(E\)が一定と考えるのが最も速いです。基本の3公式(\(Q=CV, C=\varepsilon_0 S/d, V=Ed\))から状況に応じて判断する力を養いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(C = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\) (電気容量の式):
- 選定理由: この問題の操作は「極板間隔\(d\)の変化」です。この操作が、まずどの物理パラメータに直接影響を及ぼすかを記述するのがこの式です。コンデンサーの「形状」がその「性能(容量)」を決定するという物理的意味を持ちます。
- 適用根拠: (3)(4)ともに、全ての変化を考察する上での最初のステップとして、\(d\)が2倍になることで\(C\)が\(\frac{1}{2}\)倍になることを確定させるために使います。
- \(Q=CV\) (コンデンサーの基本式):
- 選定理由: コンデンサーを特徴づける3つの基本量\(Q, C, V\)の関係を示す、最も重要な式です。
- 適用根拠: この式は、状況に応じて主役を変える便利なツールです。
- (3)「\(V\)一定」の状況下では、\(C\)の変化が\(Q\)にどう影響するか (\(Q \propto C\)) を見るために使います。
- (4)「\(Q\)一定」の状況下では、\(C\)の変化が\(V\)にどう影響するか (\(V \propto 1/C\)) を見るために使います(\(V=Q/C\)の形で)。
- \(V=Ed\) (一様な電場と電位差の関係):
- 選定理由: 電場\(E\)という空間的な物理量と、測定しやすい電圧\(V\)を結びつける関係式です。
- 適用根拠: (3)では\(V\)が一定なので、\(d\)の変化から\(E\)の変化を求めます (\(E \propto 1/d\))。(4)では、先に求めた\(V\)と\(d\)の変化を使って、\(E\)の変化を求めます (\(E’ = V’/d’\))。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 変化率の計算を丁寧に行う:
- 変化後の量を「’(プライム)」をつけて区別し、「\(d’ = 2d\)」のように定義を明確にします。
- \(C’ = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d’} = \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{2d} = \frac{1}{2} \left( \varepsilon_0 \frac{S}{d} \right) = \frac{1}{2} C\) のように、必ず元の物理量の形を作り出し、その係数として「何倍になったか」を抽出する計算方法を徹底します。
- 単位の接頭辞の換算:
- (1)の計算で、\(\mu\)F(マイクロファラド)を \(10^{-6}\) F に正確に換算することが必須です。k(キロ, \(10^3\)), m(ミリ, \(10^{-3}\)), n(ナノ, \(10^{-9}\)), p(ピコ, \(10^{-12}\)) など、よく使われる接頭辞は確実に覚えておきましょう。
- 指数計算の正確性:
- (1)や(2)のような数値計算では、\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\) や \(10^a / 10^b = 10^{a-b}\) といった指数法則をミスなく適用することが求められます。特に、\(10^2 / 10^{-3} = 10^{2-(-3)} = 10^5\) のような、負の指数の割り算は符号ミスに注意が必要です。
- 思考プロセスの可視化:
- (3)や(4)のように複数の物理量の変化を追う問題では、頭の中だけで考えず、紙に書き出すことが有効です。
- 例:「(4) Q一定の場合」→ 「①\(d \rightarrow 2d\)」→「②\(C \rightarrow \frac{1}{2}C\)」→「③\(V=Q/C\)より\(V \rightarrow 2V\)」→「④\(E=V/d\)より\(E \rightarrow E\)」のように、変化の連鎖を矢印でつないで整理すると、混乱を防ぎ、見直しも容易になります。
324 コンデンサーのエネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「コンデンサーの静電エネルギーの導出と、充電過程におけるエネルギー収支」です。コンデンサーに電荷を蓄えるのに必要な仕事が、なぜ\(\frac{1}{2}QV\)となるのかをグラフを用いて理解し、さらに電源が供給するエネルギーとの差が何になるのかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)。電気量\(Q\)と電位差\(V\)は比例関係にあります。
- 仕事の定義: 電荷\(q\)を電位差\(V\)のところに運ぶ仕事は\(W=qV\)で与えられます。
- \(V-Q\)グラフとエネルギー: コンデンサーの充電に必要な仕事(静電エネルギー)は、\(V-Q\)グラフと\(Q\)軸で囲まれた面積に等しくなります。
- エネルギー保存則: 電源がした仕事は、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーと、回路で発生するジュール熱の和に等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 空欄①, ②: コンデンサーの基本式\(Q=CV\)から、電気量と電位差の関係を導きます。
- 空欄③: 仕事の定義\(W=qV\)を、微小な電荷\(\Delta Q\)を充電する過程に適用します。
- 空欄④: \(V-Q\)グラフの面積を計算することで、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーの公式を導出します。
- 空欄⑤: 電源がした仕事の定義(\(W_{\text{電源}} = QV_{\text{電源}}\))を適用し、(4)の結果と比較してエネルギー収支を考えます。
思考の道筋とポイント(空欄①, ②)
コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)と、そのときの極板間の電位差\(V\)の関係を問う問題です。すべての基本となるコンデンサーの定義式\(Q=CV\)から考えます。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの基本式\(Q=CV\)より、電気量\(Q\)と電位差\(V\)は比例関係にある。
- 電気容量\(C\)は、そのコンデンサーの形状などで決まる定数である。
具体的な解説と立式
空欄①
コンデンサーの基本式\(Q=CV\)において、電気容量\(C\)は定数です。したがって、蓄えられる電気量\(Q\)は、コンデンサーの両極板間の電位差\(V\)に比例します。問題文では主語が「蓄えられる電気量」なので、これは「電位差に比例して増加する」となります。
空欄②
基本式\(Q=CV\)を、電位差\(V\)について解くと、以下の関係式が得られます。
$$ V = \frac{Q}{C} $$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
この設問は、物理法則の理解と簡単な式変形を問うものであり、具体的な数値計算は不要です。
コンデンサーは電気をためるバケツのようなものです。たまった電気の量(\(Q\))が多くなるほど、電気的な圧力(電位差\(V\))も直線的に高くなっていきます。つまり、この2つは「比例」の関係にあります。この関係を式で表したものが\(Q=CV\)で、これを\(V\)について書き直すと\(V=Q/C\)となります。
空欄①は「比例」、空欄②は「\(\displaystyle\frac{Q}{C}\)」となります。問題の\(V-Q\)グラフが原点を通る直線であることからも、\(V\)と\(Q\)の比例関係が確認できます。
思考の道筋とポイント(空欄③)
電位差が\(V’\)の状態で、さらに微小な電気量\(\Delta Q\)を充電するのに必要な仕事\(\Delta W\)を求めます。これは、電荷\(\Delta Q\)を電位差\(V’\)のところに「運び込む」仕事と考えることができます。
この設問における重要なポイント
- 電荷\(q\)を電位差\(V\)のところに運ぶ仕事は \(W=qV\)。
- 微小な充電過程(\(\Delta Q\)は非常に小さい)では、電位差はその間ほぼ一定(\(V’\))とみなせる。
具体的な解説と立式
仕事の基本公式\(W=qV\)をこの状況に適用します。今、運びたい電荷の量は\(\Delta Q\)で、そのときの電位差は\(V’\)です。\(\Delta Q\)が微小量であるため、この電荷を運んでいる間の電位差は\(V’\)で一定と近似できます。
したがって、必要な仕事\(\Delta W\)は、
$$ \Delta W = (\text{運ぶ電荷}) \times (\text{その場所の電位差}) $$
という関係から、次のように立式できます。
$$ \Delta W = \Delta Q \cdot V’ $$
使用した物理公式
- 仕事の定義: \(W=qV\)
公式の適用のみであり、計算は不要です。
電気の粒(電荷\(\Delta Q\))を、高さ\(V’\)の崖の上に持ち上げる仕事をイメージしてください。物理における仕事は「(力)×(距離)」ですが、電気の世界では「(電荷)×(電位差)」で計算できます。したがって、仕事は\(\Delta Q \times V’\)となります。これは、\(V-Q\)グラフ上の、幅\(\Delta Q\)、高さ\(V’\)の細長い長方形の面積に相当します。
微小な充電に必要な仕事は\(\Delta Q \cdot V’\)です。
思考の道筋とポイント(空欄④)
コンデンサーを電位差0から\(V\)まで充電するのに必要な総仕事、すなわちコンデンサーの静電エネルギー\(U\)を求めます。これは、空欄③で考えた微小な仕事\(\Delta W = V’ \Delta Q\)を、充電開始(\(Q=0\))から終了(\(Q=Q\))まで全て足し合わせる(積分する)ことに相当します。\(V-Q\)グラフでは、グラフと横軸で囲まれた部分の面積を求めることに対応します。
この設問における重要なポイント
- \(V-Q\)グラフの面積は、コンデンサーの静電エネルギー\(U\)を表す。
- 三角形の面積の公式は、\(\displaystyle\frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\)。
具体的な解説と立式
充電に必要な総仕事である静電エネルギー\(U\)は、\(V-Q\)グラフの面積に等しくなります。
グラフの形状は、底辺の長さが最終的な電気量\(Q\)、高さが最終的な電位差\(V\)の直角三角形です。
したがって、その面積\(U\)は、
$$ U = \frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ}) $$
から、次のように求められます。
$$ U = \frac{1}{2} Q V $$
使用した物理公式
- \(V-Q\)グラフの面積が静電エネルギーを表すという関係。
面積計算のみであり、代数的な計算過程はありません。
充電に必要なトータルの仕事は、\(V-Q\)グラフに描かれた三角形の面積を計算すれば求まります。底辺が\(Q\)、高さが\(V\)なので、面積は「底辺 × 高さ ÷ 2」で \(\displaystyle\frac{1}{2}QV\) となります。仕事が\(QV\)にならないのは、充電開始時は電圧が0で、徐々に電圧が上がっていくため、常に最大の電圧\(V\)で仕事をするわけではないからです。
コンデンサーの静電エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}QV\) です。この式は、\(Q=CV\)を用いることで、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) や \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) といった形にも変形でき、状況に応じて使い分けられます。
思考の道筋とポイント(空欄⑤)
電圧\(V\)の電源を使ってコンデンサーを充電したときに、電源がした仕事\(W_{\text{電源}}\)を求めます。これは、空欄④で求めたコンデンサーに蓄えられたエネルギーとは異なる物理量であることに注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 電源がした仕事 \(W_{\text{電源}}\) = (電源が送り出した総電荷) × (電源の電圧)。
- 電源の電圧は、充電中常に一定である。
- エネルギー保存則: \(W_{\text{電源}} = U_{\text{コンデンサー}} + Q_{\text{ジュール熱}}\)
具体的な解説と立式
電源は、充電プロセスを通じて常に一定の電圧\(V\)を保っています。コンデンサーを最終的に電気量\(Q\)まで充電するということは、電源は合計で\(Q\)の量の電荷を、電圧\(V\)で回路に送り出したことになります。
したがって、電源がした仕事\(W_{\text{電源}}\)は、仕事の定義から次のように計算されます。
$$ W_{\text{電源}} = Q V $$
この結果と空欄④の結果を比較すると、
電源がした仕事: \(QV\)
コンデンサーに蓄えられたエネルギー: \(\displaystyle\frac{1}{2}QV\)
となり、電源がした仕事の半分しかコンデンサーには蓄えられていないことがわかります。残りの半分(\(QV – \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}QV\))は、回路の導線などの抵抗によってジュール熱として消費され、失われます。
使用した物理公式
- 電源がした仕事の定義: \(W=qV\)
- エネルギー保存則
公式の適用のみであり、計算は不要です。
電源は、高さ\(V\)のポンプだと考えてください。このポンプが、量\(Q\)の水をくみ上げた(電荷を送り出した)ので、ポンプがした仕事は単純な掛け算で \(Q \times V\) となります。しかし、コンデンサーというタンクにたまった水のエネルギー(位置エネルギー)は、④で見たように\(\displaystyle\frac{1}{2}QV\)しかありません。この差額である\(\displaystyle\frac{1}{2}QV\)は、水を送るパイプの摩擦で発生した熱(ジュール熱)として失われた、と考えることができます。
電源がした仕事は\(QV\)です。これはコンデンサーに蓄えられるエネルギーのちょうど2倍であり、充電においてはエネルギーの50%が熱として失われるという、電磁気学における非常に重要な結論です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(V-Q\)グラフの面積とエネルギーの関係:
- 核心: コンデンサーの静電エネルギー\(U\)が、\(V-Q\)グラフと\(Q\)軸で囲まれた「三角形」の面積に等しいこと(\(U = \displaystyle\frac{1}{2}QV\))を理解することが核心です。
- 理解のポイント:
- 微小な仕事: 電位差\(V’\)のときに微小電荷\(\Delta Q\)を運ぶ仕事は\(\Delta W = V’ \Delta Q\)。これはグラフ上の細い長方形の面積にあたります。
- 総仕事(エネルギー): この微小な仕事を充電開始(\(Q=0\))から終了(\(Q=Q\))まで足し合わせる(積分する)と、最終的にグラフ下の三角形全体の面積になります。
- 充電過程のエネルギー収支:
- 核心: 「電源がした仕事(\(W_{\text{電源}}=QV\))」、「コンデンサーに蓄えられた静電エネルギー(\(U=\frac{1}{2}QV\))」、そして「回路で発生したジュール熱(\(Q_{\text{熱}}=\frac{1}{2}QV\))」の3者の関係(\(W_{\text{電源}} = U + Q_{\text{熱}}\))を理解すること。
- 理解のポイント: 電源は常に一定の電圧\(V\)で電荷を供給しますが、コンデンサーの電圧は0から徐々に上がっていきます。この「電圧差」があるために、エネルギーの一部が熱として失われ、\(W_{\text{電源}} \neq U\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 抵抗を含むRC回路の過渡現象: スイッチを入れた直後や十分に時間が経過した後の電流や電圧を問う問題。ジュール熱の総量を計算させる問題もこの知識の応用です。
- コンデンサーの接続替え: 充電済みのコンデンサーを別のコンデンサーや抵抗に接続する問題。接続の前後でエネルギー保存則(ジュール熱が発生するため成り立たない)と電荷保存則(孤立系では成り立つ)のどちらが適用できるかを考えることが鍵となります。
- 非線形なコンデンサー: もし\(V-Q\)グラフが直線でなく曲線で与えられた場合でも、「グラフの面積がエネルギー」という原理は変わりません。この場合は積分計算が必要になります。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認する: \(V-Q\)グラフか、\(Q-V\)グラフかを確認します。どちらでも面積がエネルギーを表しますが、底辺と高さが逆になるので注意が必要です。
- 「静電エネルギー」と「電源がした仕事」を区別する: 問題文がどちらを問うているかを明確に区別します。両者は異なる物理量であり、抵抗を含む回路での充電では通常 \(W_{\text{電源}} = 2U\) の関係にあります。
- エネルギーの公式を使い分ける: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の3つの公式をいつでも導出・利用できるようにしておきます。問題で与えられている変数に応じて最も計算しやすい形を選びましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 静電エネルギーを\(QV\)としてしまうミス:
- 誤解: 仕事は「電荷×電圧」だから、エネルギーも\(QV\)だろうと短絡的に考えてしまう。
- 対策: 充電中、電圧は0から\(V\)まで「徐々に増加する」ことを常に意識してください。したがって、平均の電圧は\(\frac{V}{2}\)と考えることができ、仕事は \(Q \times (\text{平均電圧}) = Q \times \frac{V}{2} = \frac{1}{2}QV\) とイメージすると間違いを防げます。\(V-Q\)グラフが「三角形」になることを視覚的に覚えておくのが最も効果的です。
- 電源がした仕事と静電エネルギーの混同:
- 誤解: (4)と(5)は同じものだと考え、両方とも\(\frac{1}{2}QV\)または\(QV\)と答えてしまう。
- 対策: 「電源」と「コンデンサー」を主語にして考えましょう。「電源がした仕事」は、電源が”一定の電圧\(V\)”で電荷\(Q\)を送り出した結果なので\(QV\)です。「コンデンサーに蓄えられたエネルギー」は、電圧が”0から\(V\)に変化する過程”の結果なので\(\frac{1}{2}QV\)です。主語と状況を意識して区別してください。
- エネルギー保存則の誤用:
- 誤解: コンデンサーの充電過程で、エネルギーは保存されるので「電源がした仕事=静電エネルギー」だと考えてしまう。
- 対策: 回路に抵抗成分(導線にも微小な抵抗があります)が存在する限り、電流が流れれば必ずジュール熱が発生します。したがって、充電のような電流が流れる過程では、電磁気的なエネルギーは保存されません(熱エネルギーも含めた全エネルギーは保存されます)。「電源がした仕事の半分は熱になる」と覚えておくと良いでしょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(W=qV\) (仕事の定義):
- 選定理由: エネルギーや仕事の議論の全ての出発点です。電位の定義そのもの(単位電荷あたりの位置エネルギー)から導かれる基本公式です。
- 適用根拠: (3)では微小電荷\(\Delta Q\)を運ぶ微小な仕事を計算するために、(5)では総電荷\(Q\)を電源が送り出す総仕事を計算するために、この定義を適用します。
- \(U = \int dW = \int V’ dQ\) (積分の考え方):
- 選定理由: 電圧が一定でない状況で総仕事を求めるための唯一の正しい方法です。
- 適用根拠: (4)で\(V-Q\)グラフの面積を求めるのは、この積分計算を視覚的に行っていることに他なりません。\(V’ = Q/C\)を代入して積分すると \(U = \int_0^Q (Q/C) dQ = [\frac{Q^2}{2C}]_0^Q = \frac{Q^2}{2C}\) となり、公式が導出できます。高校物理ではグラフ面積でこの計算を代用します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフの面積計算での係数忘れ: 三角形の面積公式 \(\frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\) の「\(\displaystyle\frac{1}{2}\)」を絶対に忘れないようにしましょう。これは最も多いケアレスミスの一つです。
- 変数の区別: \(V\)(最終電圧)と\(V’\)(充電途中の電圧)、\(\Delta Q\)(微小な電荷)と\(Q\)(総電荷)など、似た記号を問題文の定義通りに正確に区別して考えることが重要です。
- 公式の導出を一度は行ってみる: \(\displaystyle\frac{1}{2}QV\), \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\), \(\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の3つの公式を丸暗記するだけでなく、\(Q=CV\)を使って互いに変換できるように練習しておきましょう。これにより、どの公式が基本形かを理解でき、記憶が定着しやすくなります。
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