「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 2】Step2

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Step 2

1 速さ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「平均の速さ」の正しい定義と計算です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 平均の速さの定義: 平均の速さは、移動した距離の合計(総移動距離)を、移動にかかった時間の合計(合計時間)で割ることで求められます。
  2. 等速直線運動: 行きと帰りの運動は、それぞれ速さが一定の等速直線運動です。そのため、距離・速さ・時間の関係式 \(x = vt\) を利用できます。
  3. 算術平均との違い: 速さが異なる区間がある場合、平均の速さは各区間の速さの単純な平均(算術平均)にはなりません。各区間にかかった時間も考慮する必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 行きと帰りの各区間について、与えられた距離と速さから、等速直線運動の公式を用いて所要時間をそれぞれ計算します。
  2. (2) 往復の総移動距離(行きと帰りの距離の和)と、合計時間(行きと帰りの時間の和)を求めます。
  3. (3) 平均の速さの定義式「(総移動距離)÷(合計時間)」に値を代入して、全体の平均の速さを算出します。

思考の道筋とポイント
この問題は、往復運動における「平均の速さ」を求めるものです。ここで最も重要なのは、平均の速さを「速さの平均」と混同しないことです。単純に \(6.0 \text{ m/s}\) と \(4.0 \text{ m/s}\) を足して2で割る(\((6.0+4.0)/2 = 5.0 \text{ m/s}\))という計算は誤りです。物理における平均の速さは、常に「総移動距離を合計時間で割ったもの」と定義されます。したがって、まずは往復にかかった合計時間を求めることが計算の第一歩となります。
この設問における重要なポイント

  • 平均の速さ \(=\) (総移動距離) \(/\) (合計時間)
  • 各区間の所要時間は、等速直線運動の公式 \(x=vt\) を変形した \(t = \displaystyle\frac{x}{v}\) で計算する。
  • 速さの算術平均 \(\displaystyle\frac{v_1+v_2}{2}\) とは異なる値を正しく導出する。

具体的な解説と立式
往復運動全体の平均の速さを \(\bar{v}\) とします。平均の速さの定義に従い、総移動距離 \(x_{\text{合計}}\) と合計時間 \(t_{\text{合計}}\) を用いて立式します。
$$ \bar{v} = \frac{x_{\text{合計}}}{t_{\text{合計}}} \quad \cdots ① $$
総移動距離 \(x_{\text{合計}}\) は、片道の距離が \(300 \text{ m}\) の往復なので、
$$ x_{\text{合計}} = 300 + 300 = 600 \text{ [m]} $$
合計時間 \(t_{\text{合計}}\) は、行きにかかった時間 \(t_1\) と帰りにかかった時間 \(t_2\) の和です。
$$ t_{\text{合計}} = t_1 + t_2 $$
行きと帰りはそれぞれ等速直線運動なので、公式「距離 = 速さ × 時間」を用いて \(t_1\) と \(t_2\) を求めます。
行きの運動について、距離を \(L=300 \text{ m}\)、速さを \(v_1 = 6.0 \text{ m/s}\) とすると、
$$ L = v_1 t_1 \quad \cdots ② $$
帰りの運動について、距離を \(L=300 \text{ m}\)、速さを \(v_2 = 4.0 \text{ m/s}\) とすると、
$$ L = v_2 t_2 \quad \cdots ③ $$
②式と③式から \(t_1\) と \(t_2\) を求め、①式に代入することで平均の速さ \(\bar{v}\) を計算します。

使用した物理公式

  • 平均の速さ: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\text{総移動距離}}{\text{合計時間}}\)
  • 等速直線運動: \(x = vt\)
計算過程

まず、行きにかかった時間 \(t_1\) と帰りにかかった時間 \(t_2\) を計算します。
式②より、行きの時間 \(t_1\) は、
$$
\begin{aligned}
300 &= 6.0 \times t_1 \\[2.0ex]t_1 &= \frac{300}{6.0} \\[2.0ex]&= 50 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
式③より、帰りの時間 \(t_2\) は、
$$
\begin{aligned}
300 &= 4.0 \times t_2 \\[2.0ex]t_2 &= \frac{300}{4.0} \\[2.0ex]&= 75 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
次に、これらの値を使って平均の速さ \(\bar{v}\) を計算します。
総移動距離は \(x_{\text{合計}} = 600 \text{ m}\)、合計時間は \(t_{\text{合計}} = t_1 + t_2 = 50 + 75 = 125 \text{ s}\) です。
式①に代入すると、
$$
\begin{aligned}
\bar{v} &= \frac{x_{\text{合計}}}{t_{\text{合計}}} \\[2.0ex]&= \frac{600}{125} \\[2.0ex]&= \frac{120 \times 5}{25 \times 5} \\[2.0ex]&= \frac{120}{25} \\[2.0ex]&= \frac{24 \times 5}{5 \times 5} \\[2.0ex]&= \frac{24}{5} \\[2.0ex]&= 4.8 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「平均の速さ」を求めるには、「全部でどれだけの距離を、全部でどれだけの時間かけて進んだか」を考えます。
まず、行きと帰りにそれぞれかかった時間を計算しましょう。
行き:距離 \(300 \text{ m}\) を速さ \(6.0 \text{ m/s}\) で進んだので、かかった時間は \(300 \div 6.0 = 50\) 秒です。
帰り:同じく距離 \(300 \text{ m}\) を速さ \(4.0 \text{ m/s}\) で進んだので、かかった時間は \(300 \div 4.0 = 75\) 秒です。
これで、往復運動の全体像が見えました。
合計の移動距離は、行きの \(300 \text{ m}\) と帰りの \(300 \text{ m}\) を合わせて \(600 \text{ m}\) です。
合計のかかった時間は、行きの \(50\) 秒と帰りの \(75\) 秒を合わせて \(125\) 秒です。
最後に、平均の速さの公式「合計距離 ÷ 合計時間」に当てはめて、\(600 \div 125 = 4.8 \text{ m/s}\) と計算できます。

結論と吟味

この往復運動における平均の速さは \(4.8 \text{ m/s}\) です。
この結果は、速さの単純な算術平均 \((6.0 + 4.0) / 2 = 5.0 \text{ m/s}\) よりも小さい値です。これは、速さが遅い帰り道(\(4.0 \text{ m/s}\))の方が、速さが速い行き道(\(6.0 \text{ m/s}\))よりも長い時間(\(75\) 秒 vs \(50\) 秒)をかけて移動しているためです。平均の速さは、滞在時間の長い方の速さの影響をより強く受けるため、算術平均よりも遅い方の値に近づきます。したがって、\(4.8 \text{ m/s}\) という結果は物理的に妥当であると言えます。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 平均の速さの定義:
    • 核心: この問題の全ては、「平均の速さ」を物理的に正しく定義できるかにかかっています。平均の速さは、単に各区間の速さを平均(算術平均)したものではなく、「移動した総距離を、かかった合計時間で割ったもの」です。
    • 理解のポイント:
      • 公式: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{x_{\text{合計}}}{t_{\text{合計}}}\)
      • なぜ算術平均ではダメなのか?:速さが遅い区間は、同じ距離を進むのにより長い時間がかかります。平均の速さは、この「時間の重み」を考慮した値になるため、単純な算術平均とは異なります。今回の問題では、遅い \(4.0 \text{ m/s}\) で進む時間の方が長いため、平均の速さは算術平均の \(5.0 \text{ m/s}\) よりも遅い方に引き寄せられます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 複数区間の移動: A→B→Cのように、3つ以上の区間に分かれて速さが変わる問題。どの区間でも「距離÷速さ=時間」を計算し、最後に全ての距離と時間を合計して定義式に代入するという基本は同じです。
    • 休憩を含む移動: 途中で休憩を挟む場合、その休憩時間も「合計時間」に含める必要があります。休憩中の移動距離は0ですが、時間は経過しているため、平均の速さは低下します。
    • 文字式での一般化: 片道 \(L\)、行きが \(v_1\)、帰りが \(v_2\) の場合、平均の速さ \(\bar{v}\) は \(\bar{v} = \displaystyle\frac{2L}{\frac{L}{v_1} + \frac{L}{v_2}} = \displaystyle\frac{2v_1v_2}{v_1+v_2}\) となります。この形(調和平均)を覚えておくと検算に役立ちます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「速さ」か「速度」かを確認: 問題が「平均の速さ」を問うているのか、「平均の速度」を問うているのかを最初に確認します。「速さ」はスカラー量(総移動距離ベース)、「速度」はベクトル量(変位ベース)です。この問題で「平均の速度」を問われた場合、出発点に戻ってくるので変位は0となり、答えは \(0 \text{ m/s}\) になります。
    2. 「合計」を意識する: 「総移動距離はいくつか?」「合計時間はいくつか?」と常に自問自答します。そのために必要な各区間の距離と時間を、問題文から一つずつ整理していくことが解法の第一歩です。
    3. 時間の計算を優先: 平均の速さの計算では、多くの場合、各区間の所要時間が直接与えられていません。まずは各区間の時間を求めることが最優先タスクとなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 速さの算術平均を計算してしまう:
    • 誤解:行きと帰りの速さを単純に足して2で割ってしまう。 \((6.0 + 4.0) \div 2 = 5.0 \text{ m/s}\)
    • 対策:「平均の速さ」という言葉を見たら、機械的に「総距離 ÷ 合計時間」の定義式を思い出す訓練をします。「速さの平均」という安易な考えは物理では罠であることが多い、と肝に銘じましょう。
  • 平均の速度と混同する:
    • 誤解:往復運動で元の位置に戻るから、変位はゼロ。よって平均の速さもゼロだと考えてしまう。
    • 対策:「速さ(scalar)」と「速度(vector)」の定義を明確に区別します。速さは道のり(実際に動いた距離)に関係し、常に正の値またはゼロです。速度は変位(始点から終点への直線距離と向き)に関係し、負の値もとり得ます。
  • 距離の合計を忘れる:
    • 誤解:合計時間 \(125 \text{ s}\) を計算した後、片道の距離 \(300 \text{ m}\) で割ってしまう。 \(300 \div 125 = 2.4 \text{ m/s}\)
    • 対策:定義式の分子は「総」移動距離であることを忘れないようにします。往復であれば、片道距離の2倍になります。計算の直前に、\(x_{\text{合計}}\) と \(t_{\text{合計}}\) の値を書き出してから代入する癖をつけると、このミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 平均の速さの定義式 (\(\bar{v} = \displaystyle\frac{\text{総移動距離}}{\text{合計時間}}\)):
    • 選定理由:問題が「平均の速さ」を求めることを要求しているため、その定義式をそのまま用いるのが最も直接的で論理的なアプローチです。
    • 適用根拠:この公式は、運動の過程(速さがどう変化したか)によらず、最初と最後の結果(どれだけ進んで、どれだけ時間がかかったか)だけから全体の平均的な速さを表すことができる、普遍的な関係式です。
  • 等速直線運動の公式 (\(x = vt\)):
    • 選定理由:平均の速さの定義式を適用するには「合計時間」を知る必要があります。問題文には各区間の時間は書かれておらず、距離と速さが与えられています。行きと帰りはそれぞれ「速さが一定」なので、等速直線運動の公式を使って未知の時間 \(t\) を計算することができます。
    • 適用根拠:公式 \(x=vt\) を \(t\) について解く(\(t = x/v\))ことで、既知の情報である距離 \(x\) と速さ \(v\) から、必要な情報である時間 \(t\) を導き出すことができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の割り算を丁寧に行う: \(600 \div 125\) のような、一見して割り切れるかわかりにくい計算は、焦らずに約分を繰り返します。
    • 両端が0と5なので、まず5で割る: \(\displaystyle\frac{600}{125} = \displaystyle\frac{120}{25}\)
    • 再び両端が0と5なので、もう一度5で割る: \(\displaystyle\frac{120}{25} = \displaystyle\frac{24}{5}\)
    • ここまで来れば、暗算でも \(4.8\) と計算できます。大きな数での筆算を避けることで、計算ミスを大幅に減らせます。
  • 概算で答えを予測する: 計算を始める前に、答えがどのくらいの値になるか予測する習慣をつけましょう。今回は \(6.0 \text{ m/s}\) と \(4.0 \text{ m/s}\) の間の値になるはずです。さらに、遅い \(4.0 \text{ m/s}\) で進む時間の方が長いので、平均は真ん中の \(5.0 \text{ m/s}\) よりは \(4.0 \text{ m/s}\) に近くなるはずです。計算結果の \(4.8 \text{ m/s}\) はこの予測と一致しており、答えの妥当性を確認できます。
  • 単位を意識した立式: 時間を求める際に \(t_1 = 300/6.0\)、\(t_2 = 300/4.0\) と数字だけで計算するのではなく、頭の中で「(m) / (m/s) = (s)」という単位の計算も同時に行い、求めている物理量が正しく「時間」になっているかを確認する癖をつけましょう。

2 等速直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等速直線運動」の基本的な関係式の理解と応用です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 変位の定義: 物体の位置の変化を表すベクトル量で、「後の位置」から「前の位置」を引くことで計算されます。
  2. 速度の定義: 単位時間あたりの変位のことで、変位を経過時間で割ることで求められます。等速直線運動では、速度は常に一定です。
  3. 等速直線運動の公式: ある時刻 \(t\) における物体の位置 \(x\) は、初期位置を \(x_0\)、速度を \(v\) とすると、\(x = x_0 + vt\) という式で表されます。
  4. 変位、速度、位置、時刻の関係性: これらの物理量が互いにどのように関連しているかを理解することが、問題を解く上で不可欠です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、変位の定義式 \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\) に与えられた値を代入して変位を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた変位と問題文で与えられた経過時間を用いて、速度の定義式 \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) から速さを計算します。
  3. (3)では、(2)で求めた速さと初期位置を等速直線運動の公式 \(x = x_0 + vt\) に代入し、指定された位置を通過する時刻を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
「変位」を求める問題です。変位は、単なる距離ではなく、向きを含んだ「位置の変化量」である点を正確に理解しているかが問われます。定義に従って、「後の位置」から「前の位置」を引くことで計算します。
この設問における重要なポイント

  • 変位の定義は \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\) である。
  • 変位はベクトル量であり、計算結果の符号がx軸上の向き(正または負)を表す。

具体的な解説と立式
求める変位を \(\Delta x\) とします。問題文より、時刻 \(t_1 = 0 \text{ [s]}\) のときの初期位置は \(x_1 = 3 \text{ [m]}\)、時刻 \(t_2 = 8 \text{ [s]}\) のときの後の位置は \(x_2 = 7 \text{ [m]}\) です。
変位の定義に従って立式します。
$$ \Delta x = x_2 – x_1 $$

使用した物理公式

  • 変位の定義: \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\)
計算過程

与えられた値を代入して変位 \(\Delta x\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= 7 – 3 \\[2.0ex]&= 4 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正の値であるため、変位の向きはx軸の正の向きです。

計算方法の平易な説明

「変位」とは、「位置がどれだけ変わったか」を表す量です。数直線の上で、スタート地点が「3」で、ゴール地点が「7」だったと考えてみましょう。どれだけ動いたかは、ゴールの座標からスタートの座標を引けばわかります。つまり、\(7 – 3 = 4\) です。答えがプラスなので、これは「正の向きに4m動いた」ことを意味します。

結論と吟味

\(t=0 \text{ [s]}\) から \(t=8 \text{ [s]}\) の間の変位は、x軸の正の向きに \(4 \text{ m}\) です。計算結果の符号が正であり、問題文の「正の向きに運動している」という記述と一致するため、この答えは妥当です。

解答 (1) x軸の正の向きに4m

問(2)

思考の道筋とポイント
物体の「速さ」を求める問題です。問題文に「一定の速さで運動」とあるため、これは等速直線運動です。したがって、(1)で求めた変位とその間の経過時間を使えば、速度の定義式から一定の速さを計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • 速度の定義は \(v = \displaystyle\frac{\text{変位}}{\text{経過時間}} = \frac{\Delta x}{\Delta t}\) である。
  • 等速直線運動では、どの時間区間をとって計算しても速度(速さ)は一定になる。

具体的な解説と立式
求める速さを \(v\) とします。速度は変位を経過時間で割ることで求められます。
(1)より、変位 \(\Delta x\) は \(4 \text{ m}\) です。
この変位が生じた間の経過時間 \(\Delta t\) は、\(t=0 \text{ [s]}\) から \(t=8 \text{ [s]}\) までなので、\(8 – 0 = 8 \text{ [s]}\) です。
これらの値を速度の定義式に代入します。
$$ v = \frac{\Delta x}{\Delta t} $$

使用した物理公式

  • 速度の定義: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
計算過程

値を代入して速さ \(v\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{4}{8 – 0} \\[2.0ex]&= \frac{4}{8} \\[2.0ex]&= 0.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「速さ」とは、「1秒あたりにどれだけ進むか」ということです。(1)の結果から、この物体は「8秒間」で「4m」進んだことがわかっています。では、1秒あたりではどれだけ進むでしょうか。これは、\(4 \text{ m} \div 8 \text{ s}\) を計算すればよく、答えは \(0.5 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

物体の速さは \(0.5 \text{ m/s}\) です。速さは正の値であり、物体がx軸の正の向きに運動していることと矛盾しません。

解答 (2) 0.5 m/s

問(3)

思考の道筋とポイント
特定の「位置」を通過する「時刻」を求める問題です。物体の運動は等速直線運動であることがわかっているので、位置と時刻の関係を表す公式 \(x = x_0 + vt\) を利用します。初期位置 \(x_0\) と速さ \(v\) はすでに判明しているため、目標の位置 \(x\) を代入すれば、未知数である時刻 \(t\) を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 等速直線運動の位置と時刻の関係式 \(x = x_0 + vt\) を利用する。
  • \(x_0\) は時刻 \(t=0\) における初期位置である。

具体的な解説と立式
求める時刻を \(t\) とします。等速直線運動における任意の位置 \(x\) と時刻 \(t\) の関係は、次の公式で表されます。
$$ x = x_0 + vt $$
ここで、各値は以下の通りです。

  • 目標の位置: \(x = 5 \text{ [m]}\)
  • 初期位置(\(t=0\) の位置): \(x_0 = 3 \text{ [m]}\)
  • 速さ((2)で計算): \(v = 0.5 \text{ m/s}\)

これらの値を公式に代入して、\(t\) に関する方程式を立てます。
$$ 5 = 3 + 0.5 \times t $$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の公式: \(x = x_0 + vt\)
計算過程

上記で立てた方程式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
5 &= 3 + 0.5t \\[2.0ex]0.5t &= 5 – 3 \\[2.0ex]0.5t &= 2 \\[2.0ex]t &= \frac{2}{0.5} \\[2.0ex]t &= 4 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この物体は、スタート地点である位置「3」から、秒速 \(0.5 \text{ m}\) で進んでいきます。目標地点は位置「5」です。まず、目標地点までどれだけの距離を進む必要があるかを考えます。それは \(5 – 3 = 2 \text{ m}\) です。この \(2 \text{ m}\) の距離を、秒速 \(0.5 \text{ m}\) で進むには何秒かかるでしょうか。これは「時間 = 距離 ÷ 速さ」で計算できるので、\(2 \div 0.5 = 4\) 秒となります。

結論と吟味

物体が \(x=5 \text{ [m]}\) の位置を通過する時刻は \(4 \text{ s}\) です。この時刻は観測区間である \(0 \text{ s} \sim 8 \text{ s}\) の間にあり、その位置 \(x=5 \text{ m}\) も初期位置 \(x=3 \text{ m}\) と最終位置 \(x=7 \text{ m}\) の間にあるため、物理的に考えて妥当な結果です。

解答 (3) 4 s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 等速直線運動の包括的理解:
    • 核心: この問題は、等速直線運動を記述するための3つの基本的な物理量(変位、速度、位置)と時刻の関係性を、それぞれ正しく理解し、使い分ける能力を試しています。
    • 理解のポイント: 以下の3つの関係式は、すべて「等速直線運動」という一つの現象を異なる側面から見たものであり、互いに密接に関連しています。
      1. 変位: \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\) (位置の変化量を計算する)
      2. 速度: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) (変位と時間から速度を定義する)
      3. 位置と時刻の関係: \(x = x_0 + vt\) (初期位置と速度から未来の位置を予測する)
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(x-t\)グラフの読解・作成問題: この問題の運動を\(x-t\)グラフで表現すると、点(\(0, 3\))と点(\(8, 7\))を結ぶ直線になります。グラフの「傾き」が速度\(v\)を、「y切片」が初期位置\(x_0\)を表すことを利用して、グラフから物理量を読み取ったり、逆に物理量からグラフを作成したりする問題に応用できます。
    • 2物体のすれ違い・追い越し問題: もう1つの物体Bが異なる初期位置や速度で運動する場合、「AとBが出会う(すれ違う)時刻と位置」を問う問題。それぞれの物体の位置を表す式 \(x_A(t) = 3 + 0.5t\) と \(x_B(t)\) を立て、\(x_A(t) = x_B(t)\) という連立方程式を解くことで求められます。
    • 初期時刻が0でない問題: 例えば「時刻\(t=2 \text{ s}\)に\(x=4 \text{ m}\)を通過」のような条件が与えられた場合。\(x = x_0 + vt\) の \(t\) を「基準となる時刻からの経過時間」と解釈し、\(x – x_1 = v(t – t_1)\) のように式を立てて対応します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 運動の種類を特定する: 問題文中の「一定の速さで」というキーワードを見つけ、即座に「等速直線運動」の公式群を頭に思い浮かべます。これにより思考の範囲が絞られます。
    2. 物理量を整理する: 問題文で与えられている情報(\(t=0\)で\(x=3\)、\(t=8\)で\(x=7\)など)と、各設問で求められている未知の物理量((1)変位、(2)速さ、(3)時刻)を明確にリストアップします。
    3. 適切な公式を選択する: 整理した「既知の量」と「未知の量」を見比べ、どの公式を使えば未知数を一つだけ含む方程式を立てられるかを考えます。例えば(1)では位置が2つわかっているので変位の定義式、(2)では変位と時間がわかったので速度の定義式、というように連鎖的に解いていきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式 \(x=vt\) の無条件な使用:
    • 誤解: (3)で、初期位置を考慮せず \(x=vt\) の公式を使い、\(5 = 0.5t\) と計算して \(t=10 \text{ s}\) と答えてしまう。
    • 対策: \(x=vt\) は、初期位置 \(x_0=0\) の場合にのみ成り立つ特別な式だと認識します。初期位置がある場合は、必ずフルバージョンの \(x = x_0 + vt\) を使う癖をつけましょう。「現在の位置 = スタート位置 + スタートからの移動距離」と日本語で意味を理解すると、このミスは防げます。
  • 位置と変位の混동:
    • 誤解: (1)で「変位はいくらか」と問われているのに、後の位置である \(7 \text{ m}\) や、移動距離の \(4 \text{ m}\) ではなく、単に位置 \(x=4 \text{ m}\) と答えてしまう。
    • 対策: 「位置」は数直線上の特定の”点”(座標)、「変位」は2点間の”差”(ベクトル)であることを明確に区別します。変位を答える際は「どちらの向きにどれだけ」という情報が含まれていることを意識しましょう。
  • 引き算の順序ミス:
    • 誤解: 変位を計算する際に、うっかり「前の位置 – 後の位置」(\(3-7=-4\))と計算してしまう。
    • 対策: 変位は常に「後 – 前」であると徹底します。計算結果の符号は運動の向きを表す重要な情報です。今回は「正の向きに運動」と問題文にあるので、計算結果も正になるはずだと予測することで、ミスに気づくことができます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 変位の定義式 (\(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\)):
    • 選定理由: (1)で問われているのが「変位」という物理量そのものであり、その計算に必要な「前の位置」と「後の位置」が問題文で与えられているため、定義式を直接適用するのが最も合理的です。
  • 速度の定義式 (\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (2)で「速さ」を求める必要があり、その計算に必要な「変位 \(\Delta x\)」が(1)で求まり、「経過時間 \(\Delta t\)」も問題文から読み取れるため、これらの既知の量から未知の量を導出できるこの公式を選択します。
  • 等速直線運動の公式 (\(x = x_0 + vt\)):
    • 選定理由: (3)では「特定の”位置”を通過する”時刻”」が問われており、これは位置と時刻の関係性を表す式を使う典型的な場面です。
    • 適用根拠: (1)と(2)を通じて、この物体の運動を完全に特徴づけるパラメータ(初期位置 \(x_0=3\)、速度 \(v=0.5\))がすべて明らかになりました。これにより、任意の時刻\(t\)における位置\(x\)を予測する万能な方程式が手に入ったことになり、これを使えば未知の時刻\(t\)を逆算できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 小数の割り算は分数に直す: (3)の \(t = 2 \div 0.5\) のような計算は、焦るとミスしやすいポイントです。\(t = \displaystyle\frac{2}{0.5} = \displaystyle\frac{20}{5} = 4\) のように、分母と分子を10倍して整数の割り算に直すことで、確実性が格段に上がります。
  • 代入する値を再確認する: \(x = x_0 + vt\) のような複数の文字を含む公式では、どの文字にどの値を代入するかを間違えないように注意が必要です。特に \(x\)(目標の位置)と \(x_0\)(初期の位置)の取り違えに気をつけましょう。
  • 答えの妥当性を吟味する: 計算後、出た答えが物理的にあり得るかを考えます。(3)で出た答え \(t=4 \text{ s}\) は、観測時間 \(0 \text{ s} \sim 8 \text{ s}\) の中にあり、その時の位置 \(x=5 \text{ m}\) も、観測位置 \(x=3 \text{ m} \sim 7 \text{ m}\) の間にあります。この簡単なチェックで、大きな間違いをしていないかを確認できます。

3 等速直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「x-tグラフの解釈と等速直線運動」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. x-tグラフと物理量の関係: x-tグラフの「傾き」が物体の速度を、「y切片」が初期位置を表すという、グラフの幾何学的特徴と物理的な意味の対応を理解することが重要です。
  2. 等速直線運動: x-tグラフが直線であることから、物体の速度が一定である(等速直線運動をしている)と判断します。
  3. v-tグラフへの変換: 等速直線運動のv-tグラフは、速度が時間によらず一定であるため、横軸に平行な直線になります。
  4. 等速直線運動の公式: 任意の位置と時刻の関係を表す公式 \(x = x_0 + vt\) を用いて、グラフの範囲外の情報を予測します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、x-tグラフから2点の座標を正確に読み取り、その傾きを計算することで物体の速さを求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた速さが一定であることを基に、縦軸を速度、横軸を時刻とするv-tグラフを作成します。
  3. (3)では、グラフから初期位置を読み取り、(1)で求めた速さと合わせて等速直線運動の公式に代入し、指定された時刻での位置を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体の速さを求める問題です。与えられたx-tグラフが直線であることに着目します。x-tグラフにおいて、その傾きは物体の速度を表します。したがって、グラフの傾きを計算することが、そのまま速さを求めることにつながります。
この設問における重要なポイント

  • x-tグラフの傾きは速度を表す。
  • 傾きは、グラフ上の任意の2点の座標を使って「位置の変化量(\(\Delta x\))÷ 時間の変化量(\(\Delta t\))」で計算できる。
  • グラフの目盛りを正確に読み取ることが計算の前提となる。

具体的な解説と立式
求める速さを \(v\) [m/s] とします。これはx-tグラフの傾きに等しくなります。グラフから、計算しやすい2点の座標を読み取ります。

  • 時刻 \(t_1 = 0 \text{ [s]}\) のとき、位置は \(x_1 = 2.0 \text{ [m]}\)
  • 時刻 \(t_2 = 8.0 \text{ [s]}\) のとき、位置は \(x_2 = 6.0 \text{ [m]}\)

これらの値を用いて、傾き(速度)を計算する式を立てます。
$$ v = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1} $$

使用した物理公式

  • 速度の定義: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) (x-tグラフの傾き)
計算過程

読み取った値を代入して、速さ \(v\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{6.0 – 2.0}{8.0 – 0} \\[2.0ex]&= \frac{4.0}{8.0} \\[2.0ex]&= 0.50 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

グラフの「傾き」が「速さ」を表します。傾きは「縦にどれだけ進んだか ÷ 横にどれだけ進んだか」で計算できます。グラフを見ると、横に \(8.0\) 秒進む間に、縦には位置 \(2.0 \text{ m}\) から \(6.0 \text{ m}\) まで、つまり \(4.0 \text{ m}\) 進んでいます。したがって、速さは \(4.0 \text{ m} \div 8.0 \text{ s} = 0.50 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

物体の速さは \(0.50 \text{ m/s}\) です。グラフの傾きが正であることから、物体はx軸の正の向きに運動していることがわかります。速さが正の値として計算された結果と一致しており、妥当です。

解答 (1) 0.50 m/s

問(2)

思考の道筋とポイント
物体の運動をv-tグラフで表現する問題です。まず、x-tグラフの形状から物体の運動の種類を判断します。x-tグラフが直線であるため、傾き(=速度)は一定です。この「速度が一定」という情報をv-tグラフでどのように表現するかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • x-tグラフが直線の場合、物体は等速直線運動をしている。
  • 等速直線運動では、速度 \(v\) は時刻 \(t\) によらず一定の値をとる。
  • v-tグラフでは、縦軸の値が一定の、横軸に平行な直線となる。

具体的な解説と立式
x-tグラフが直線であることから、この物体は等速直線運動をしていることがわかります。(1)で計算した通り、その速さは \(v = 0.50 \text{ m/s}\) で一定です。
したがって、縦軸を速度 \(v\)、横軸を時刻 \(t\) とするv-tグラフを描くと、時刻が変化しても速度の値は常に \(0.50\) のままです。これは、縦軸の \(v=0.50\) の点を通り、横軸(t軸)に平行な直線として描かれます。

使用した物理公式

  • 等速直線運動の定義(速度が時間によらず一定であること)
計算過程

この設問は作図が目的であり、(1)で求めた速さ \(v=0.50 \text{ m/s}\) を用いる以外に新たな計算は不要です。

計算方法の平易な説明

(1)で、この物体の速さはいつでも \(0.50 \text{ m/s}\) で変わらないことがわかりました。この「ずっと同じ速さ」という様子を、縦軸が速さ、横軸が時間のグラフで表します。時間が \(0\) 秒のときも、\(8.0\) 秒のときも、それ以外のどんな時刻でも速さは \(0.50 \text{ m/s}\) なので、グラフは縦軸の \(0.50\) の高さのところを真横にまっすぐ引いた直線になります。

結論と吟味

縦軸が \(v \text{ [m/s]}\)、横軸が \(t \text{ [s]}\) のグラフにおいて、\(v=0.50\) の高さで横軸に平行な直線を描きます。これは、速度が一定である等速直線運動のv-tグラフとして正しい表現です。

解答 (2) 縦軸が\(v \text{ [m/s]}\)、横軸が\(t \text{ [s]}\)のグラフで、\(v=0.50\)の高さで横軸に平行な直線を描く。

問(3)

思考の道筋とポイント
特定の時刻における物体の位置を求める問題です。物体の運動は等速直線運動であることがわかっているので、位置と時刻の関係を表す公式 \(x = x_0 + vt\) を利用します。この公式を使うためには、初期位置 \(x_0\) と速さ \(v\) の値が必要です。速さ \(v\) は(1)で、初期位置 \(x_0\) はx-tグラフの \(t=0\) の点(y切片)から読み取ることができます。
この設問における重要なポイント

  • 等速直線運動の公式 \(x = x_0 + vt\) を適用する。
  • 初期位置 \(x_0\) は、x-tグラフの \(t=0\) における位置(y切片)から読み取る。
  • 速さ \(v\) は(1)で求めた値を使用する。

具体的な解説と立式
求める位置を \(x\) [m] とします。物体の運動は等速直線運動なので、公式 \(x = x_0 + vt\) を用います。
各値は以下の通りです。

  • 初期位置(\(t=0\) での位置): グラフのy切片より \(x_0 = 2.0 \text{ [m]}\)
  • 速さ((1)で計算): \(v = 0.50 \text{ m/s}\)
  • 目標の時刻: \(t = 15 \text{ [s]}\)

これらの値を公式に代入して、位置 \(x\) を計算する式を立てます。
$$ x = 2.0 + 0.50 \times 15 $$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の公式: \(x = x_0 + vt\)
計算過程

上記で立てた方程式を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 2.0 + 0.50 \times 15 \\[2.0ex]&= 2.0 + 7.5 \\[2.0ex]&= 9.5 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この物体は、スタート地点である位置 \(2.0 \text{ m}\) から、秒速 \(0.50 \text{ m}\) でずっと進んでいきます。では、\(15\) 秒後にはどの位置にいるでしょうか?
まず、\(15\) 秒間でどれだけの距離を進むかを計算します。「進んだ距離 = 速さ × 時間」なので、\(0.50 \times 15 = 7.5 \text{ m}\) です。
スタート地点が \(2.0 \text{ m}\) だったので、そこから \(7.5 \text{ m}\) 進んだ場所がゴールです。したがって、ゴールの位置は \(2.0 + 7.5 = 9.5 \text{ m}\) となります。

結論と吟味

時刻 \(t=15 \text{ s}\) における物体の位置は \(x=9.5 \text{ m}\) です。グラフは \(t=8.0 \text{ s}\) で \(x=6.0 \text{ m}\) に達しており、その後も同じ速さで進み続けるため、\(t=15 \text{ s}\) ではさらに位置が大きくなるはずです。\(9.5 \text{ m}\) という結果は物理的に妥当です。

解答 (3) 9.5 m

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • x-tグラフの物理的解釈:
    • 核心: この問題は、x-tグラフという視覚情報から、物体の運動に関する物理量を定量的に読み解く能力を試しています。特に、グラフの幾何学的な特徴である「傾き」と「y切片」が、それぞれ物理的な意味を持つ「速度」と「初期位置」に対応することを理解しているかが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 傾き = 速度 (\(v\)): グラフの傾きが一定(直線)であれば、速度も一定(等速直線運動)です。傾きの急さが速さの大きさを表します。
      • y切片 = 初期位置 (\(x_0\)): グラフが縦軸(\(x\)軸)と交わる点の値は、運動の開始点である時刻 \(t=0\) での物体の位置を意味します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • v-tグラフからの情報読み取り・変換: 逆にv-tグラフが与えられ、そのグラフから加速度(傾き)や移動距離(グラフと軸で囲まれた面積)を求め、x-tグラフを作成する問題。
    • 折れ線のx-tグラフ: 途中で速さが変わる運動(例:静止→等速→別の速さで等速)。グラフが折れ曲がる時刻で運動が変化していると読み取り、区間ごとに傾きを計算してそれぞれの運動を分析します。
    • 2物体のすれ違い・追い越し: 2つの物体のx-tグラフを同一の座標軸に描き、グラフの交点が「すれ違う」または「追いつく」時刻と位置を表すことを利用する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を確認する: まず、縦軸が位置\(x\)、速度\(v\)、加速度\(a\)のどれなのかを絶対に確認します。これを間違うと全ての解釈が誤りになります。
    2. グラフの形状を大まかに把握する: グラフが直線か、曲線か、折れ線かを見て、運動の全体像(等速、加速・減速、運動の変化)を掴みます。この問題では直線なので「等速直線運動」と即座に判断します。
    3. 傾きと切片の値を読み取る: 運動の種類を把握したら、具体的な数値を求めます。「傾きはいくつか?」「y切片はいくつか?」をグラフから正確に読み取ることで、運動を記述するのに必要なパラメータ(\(v\)と\(x_0\))が揃います。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 傾きの計算で原点を使ってしまう:
    • 誤解: (1)で速さを求める際、y切片が \(2.0\) であるにもかかわらず、原点(\(0,0\))と点(\(8.0, 6.0\))を結ぶ傾きを計算してしまう。
    • 対策: 傾きは必ず「グラフ上の2点」を結んで計算することを徹底します。y切片が0でない場合は、原点はグラフ上の点ではないため、絶対に使ってはいけません。「傾き = \(\Delta x / \Delta t = (x_2 – x_1) / (t_2 – t_1)\)」という定義式に忠実に計算する習慣をつけましょう。
  • x-tグラフとv-tグラフの形状を混同する:
    • 誤解: (2)でv-tグラフを描く際に、x-tグラフの形につられて、同じような右上がりの直線を描いてしまう。
    • 対策: 「x-tグラフの傾きが、v-tグラフの縦軸の値になる」という変換ルールを明確に意識します。x-tグラフが直線(傾きが一定)ならば、v-tグラフは水平な直線(縦軸の値が一定)になる、という対応関係をセットで記憶することが有効です。
  • 公式 \(x=vt\) を初期位置を無視して使う:
    • 誤解: (3)で位置を計算する際に、初期位置 \(x_0=2.0\) の存在を忘れ、\(x = vt = 0.50 \times 15 = 7.5 \text{ [m]}\) と計算してしまう。
    • 対策: 公式 \(x=vt\) は、原点(\(x_0=0\))から出発する場合の特殊な形であることを理解します。グラフにy切片がある場合は、必ずフルバージョンの公式 \(x = x_0 + vt\) を使うことを徹底しましょう。「\(t\)秒後の位置 = スタート位置 + スタートから進んだ距離」と日本語で意味を捉えると、初期位置を足し忘れるミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 速度の定義式 (\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (1)で速さを求めるため。これはx-tグラフの「傾き」の定義そのものであり、グラフから速度という物理量を抽出するための最も直接的な手段です。
    • 適用根拠: グラフから、異なる2つの時刻における2つの位置の座標を読み取ることができます。これにより変位 \(\Delta x\) と経過時間 \(\Delta t\) が確定するため、速度 \(v\) を一意に決定できます。
  • 等速直線運動の公式 (\(x = x_0 + vt\)):
    • 選定理由: (3)で、グラフに描かれていない未来の時刻における位置を予測するために使用します。
    • 適用根拠: x-tグラフが直線であることから、この運動は \(x = x_0 + vt\) という一次関数で完全に記述できることが保証されています。グラフから傾き(\(v\))とy切片(\(x_0\))を読み取ることで、この運動の「設計図」となる式が完成します。この式さえあれば、任意の時刻 \(t\) を代入することで、そのときの物体の位置 \(x\) を知ることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 座標の読み取りを慎重に: グラフから値を読み取る際は、必ず軸の目盛りを確認します。点(\(8.0, 6.0\))やy切片(\(0, 2.0\))など、対応するx軸とy軸の値を指でなぞって確認する癖をつけましょう。
  • 有効数字の意識: 問題のグラフや解答例で \(2.0\), \(6.0\), \(8.0\), \(0.50\) のように有効数字2桁で表記されている場合、計算過程や最終的な答えもそれに合わせるのが望ましいです。
  • 小数の乗算: (3)の \(0.50 \times 15\) の計算は、\(0.5 = 1/2\) であることを利用して「15の半分」と考えると、\(7.5\) と素早く正確に計算できます。簡単な計算ほど、別の視点から検算する意識を持つとミスが減ります。
  • 代入する値のリストアップ: (3)で公式に代入する前に、「\(x_0 = 2.0\), \(v = 0.50\), \(t = 15\)。求めるのは \(x\)。よし、代入しよう」というように、使う値を一度書き出すか頭の中で整理するワンクッションを置くと、代入ミスを防げます。

4 速度の合成

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「速度の合成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 合成速度: 動いている観測者から見た物体の速度(相対速度)と、その観測者自身の速度を足し合わせることで、静止した観測者から見た物体の速度(合成速度)が求められます。
  2. 言葉の定義の整理: 「風がないときの速さ」は「空気に対する飛行機の速さ」を意味し、「向かい風の中を飛んだ」結果は「地面に対する飛行機の速さ」を計算するための情報となります。
  3. ベクトルの和: 速度は向きを持つベクトル量です。一直線上の運動では、向きを正負の符号で表すことで、ベクトルの和を単純な足し算として扱うことができます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、向かい風の中で実際に観測された飛行記録(移動距離と経過時間)から、地面から見た飛行機の速さを計算します。
  2. (2) 次に、「地面から見た速度 = 空気に対する速度 + 風の速度」という速度の合成則の式を立てます。
  3. (3) 最後に、(1)で求めた速さと、問題文で与えられた「風がないときの速さ」を式に代入して、未知数である風の速さを求めます。

思考の道筋とポイント
この問題は、3つの異なる速度の関係を正しく整理することが鍵となります。

  1. 空気に対する飛行機の速度: 風が吹いていないときに飛行機が出せる本来の速度です。
  2. 地面に対する風の速度: いわゆる「風速」です。今回はこれが未知数です。
  3. 地面に対する飛行機の速度: 風の影響を受けた結果、地面にいる観測者から見て実際に進んでいる速度です。

これらの関係は、速度の合成則によって結びつけられます。問題文の「\(8.0 \text{ s}\) で \(28 \text{ m}\) 飛んだ」という観測事実は、地面から見た実際の運動記録なので、これから「地面に対する飛行機の速度」を計算することができます。この値を合成則の式に代入すれば、未知の風の速さを導き出すことができます。
この設問における重要なポイント

  • 合成速度の公式: \(v_{\text{機,地}} = v_{\text{機,気}} + v_{\text{気,地}}\) (飛行機の地面に対する速度 = 飛行機の空気に対する速度 + 風の地面に対する速度)
  • 一直線上の運動では、進行方向を正と決め、逆向きの速度を負の値として扱う。
  • 「向かい風」とは、飛行機の進行方向とは逆向きに吹く風のことである。

具体的な解説と立式
模型飛行機の進行方向を正の向きとします。各速度を以下のように定義します。

  • \(v_{\text{機,地}}\): 模型飛行機の地面に対する速度。
  • \(v_{\text{機,気}}\): 模型飛行機の空気に対する速度。問題文より、\(v_{\text{機,気}} = 6.0 \text{ m/s}\)。
  • \(v_{\text{風}}\): 風の地面に対する速度。これを求める。

まず、観測された飛行記録から、地面に対する飛行機の速度 \(v_{\text{機,地}}\) を計算します。\(8.0 \text{ s}\) で \(28 \text{ m}\) 進んだので、
$$ v_{\text{機,地}} = \frac{\text{移動距離}}{\text{経過時間}} \quad \cdots ① $$
次に、速度の合成則を立式します。
$$ v_{\text{機,地}} = v_{\text{機,気}} + v_{\text{風}} \quad \cdots ② $$
①で計算した \(v_{\text{機,地}}\) と、与えられている \(v_{\text{機,気}}\) を②に代入することで、\(v_{\text{風}}\) を求めます。

使用した物理公式

  • 速度の合成: \(v_{\text{合成}} = v_{\text{相対}} + v_{\text{媒体}}\)
  • 等速直線運動: \(v = \displaystyle\frac{x}{t}\)
計算過程

まず、式①を用いて、地面に対する飛行機の速度 \(v_{\text{機,地}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{機,地}} &= \frac{28}{8.0} \\[2.0ex]&= 3.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
次に、この結果と \(v_{\text{機,気}} = 6.0 \text{ m/s}\) を式②に代入して、風の速度 \(v_{\text{風}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
3.5 &= 6.0 + v_{\text{風}} \\[2.0ex]v_{\text{風}} &= 3.5 – 6.0 \\[2.0ex]&= -2.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
ここで計算された \(v_{\text{風}}\) は「速度」であり、負の符号は風が模型飛行機の進行方向(正の向き)とは逆向きに吹いていることを示しています。これは「向かい風」という問題の条件と一致します。
問題で問われているのは風の「速さ」なので、速度の大きさ(絶対値)を答えます。
$$ \text{向かい風の速さ} = |-2.5| = 2.5 \text{ [m/s]} $$

計算方法の平易な説明

まず、向かい風の中で飛行機が実際にどれくらいの速さで地面の上を進んだかを計算します。\(28 \text{ m}\) を \(8.0 \text{ s}\) で飛んだので、地面から見た速さは \(28 \div 8.0 = 3.5 \text{ m/s}\) です。
一方、この飛行機は本来、風がなければ \(6.0 \text{ m/s}\) の速さで飛べるはずでした。しかし、実際には \(3.5 \text{ m/s}\) しか出ていません。
なぜスピードが落ちたかというと、向かい風に邪魔されたからです。どれだけ邪魔された(押し戻された)かは、引き算でわかります。本来の速さ \(6.0 \text{ m/s}\) から、実際の速さ \(3.5 \text{ m/s}\) を引くと、\(6.0 – 3.5 = 2.5 \text{ m/s}\) となります。
この \(2.5 \text{ m/s}\) が、飛行機を押し戻した向かい風の速さということになります。

結論と吟味

向かい風の速さは \(2.5 \text{ m/s}\) です。
この結果を確かめてみましょう。飛行機が空気に対して \(6.0 \text{ m/s}\) で進もうとするところを、速さ \(2.5 \text{ m/s}\) の向かい風が押し戻すので、地面に対する速さは \(6.0 – 2.5 = 3.5 \text{ m/s}\) となります。この速さで \(8.0\) 秒間飛ぶと、移動距離は \(3.5 \times 8.0 = 28 \text{ m}\) となり、問題文の記述と完全に一致します。したがって、計算結果は妥当です。

解答 2.5 m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 速度の合成則:
    • 核心: この問題は、動く媒体(空気)の中を運動する物体(飛行機)の速度を、静止した観測者(地面)から見たときにどうなるか、という「速度の合成」の概念を正しく理解しているかを問うています。
    • 理解のポイント: 以下の3つの速度の関係性を整理することが全てです。
      1. 地面に対する飛行機の速度 (\(v_{\text{機,地}}\)): 観測された結果としての速度。
      2. 空気に対する飛行機の速度 (\(v_{\text{機,気}}\)): 飛行機が持つ本来の性能(風がないときの速さ)。
      3. 地面に対する空気の速度 (\(v_{\text{気,地}}\) or \(v_{\text{風}}\)): 風の速度。

      これらは、\(v_{\text{機,地}} = v_{\text{機,気}} + v_{\text{風}}\) というベクトルの和で結びつけられます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 追い風の問題: 今回は向かい風でしたが、追い風の場合は風の速度が進行方向と同じ向き(正)になります。その結果、地面に対する速度は \(v_{\text{機,地}} = 6.0 + v_{\text{風}}\) のように、本来の速さより大きくなります。
    • 川を渡る船(2次元の速度合成): 「川岸に対する船の速度」=「水に対する船の速度」+「川岸に対する水の速度(流れ)」という、2次元ベクトルで考える問題。船が流れに垂直に進む場合、三平方の定理が活躍します。
    • 動く歩道上の人の運動: この問題と全く同じ構造を持つ1次元の速度合成問題です。「床に対する人の速度」=「歩道に対する人の速度」+「床に対する歩道の速度」となります。
  • 初見の問題での着眼点:
      1. 登場する3つの速度を特定する: 問題文を読み、「誰から見た、誰(何)の速度か」という視点で、登場する速度を3種類(例:Aから見たB、Bから見たC、Aから見たC)に整理します。
      2. 言葉と物理量を対応させる: 「風がないときの速さ」→ \(v_{\text{機,気}}\)、「向かい風」→ \(v_{\text{風}}\) は進行方向と逆向き、「\(28\text{m}\)を\(8.0\text{s}\)で飛んだ」→ \(v_{\text{機,地}}\) を計算するための情報、というように、問題文の言葉を物理的な変数に正確に翻訳します。

    1. 進行方向を正として立式: 一直線上の運動なので、まずどちらかの向きを「正」と決めます。これにより、逆向きの速度を負の数として扱うことができ、ベクトルの問題を単純な代数計算に落とし込めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • どの速度がどの値かを取り違える:
    • 誤解: 「風がないときの速さ \(6.0 \text{ m/s}\)」を、地面に対する最終的な速さだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「風がないとき」という条件は、媒体(空気)に対して物体(飛行機)が出せる純粋な速さ \(v_{\text{機,気}}\) を指している、と強く意識します。実際に観測されるのは、風の影響が加わった後の合成速度 \(v_{\text{機,地}}\) です。
  • 符号の扱いを間違える:
    • 誤解: 向かい風だから引き算、と安易に考え、基本式を立てずに \(6.0 – 3.5\) や \(6.0 + 3.5\) のような場当たり的な計算をしてしまう。
    • 対策: 常に基本の形である \(v_{\text{機,地}} = v_{\text{機,気}} + v_{\text{風}}\) から出発する癖をつけます。その上で、各速度の向きを考え、進行方向と逆向きの速度に負の符号を付けて代入します。この手順を踏むことで、追い風でも向かい風でも同じアプローチで解くことができます。
  • 速さと速度の答え方の混同:
    • 誤解: 計算結果として \(v_{\text{風}} = -2.5 \text{ m/s}\) が出たときに、そのまま「速さは \(-2.5 \text{ m/s}\)」と答えてしまう。
    • 対策: 「速度」を問われたら符号を含めて答える(向きの情報も含む)、「速さ」を問われたら大きさのみ(絶対値)を正の値で答える、というルールを徹底します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 速度の合成則 (\(v_{\text{機,地}} = v_{\text{機,気}} + v_{\text{風}}\)):
    • 選定理由: この問題は、動く座標系(空気)と静止座標系(地面)が関わる運動であり、2つの座標系における速度を関係づける速度の合成則を用いるのが最も直接的だからです。
    • 適用根拠: この法則は、ガリレイの相対性原理に基づく基本的な運動法則です。地面から見た飛行機の全運動は、「飛行機が空気を基準にして進む運動」と「その空気が地面を基準にして流れる運動」の重ね合わせ(ベクトル和)で表現できる、という物理的描像に基づいています。
  • 等速直線運動の公式 (\(v = \displaystyle\frac{x}{t}\)):
    • 選定理由: 速度の合成則を解くためには、3つの速度のうち2つが既知である必要があります。問題文には「地面に対する飛行機の速度」そのものは与えられていませんが、それを計算するための「移動距離」と「時間」が与えられています。この情報から速度を算出するために、この公式を選択します。
    • 適用根拠: 風も飛行機の推進力も一定であると考えられるため、合成された運動も等速直線運動となります。したがって、距離・速さ・時間の単純な関係式が適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 物理量の添え字を省略しない: 計算に慣れるまでは、\(v_1, v_2\) のような記号ではなく、\(v_{\text{機,地}}\), \(v_{\text{機,気}}\), \(v_{\text{風}}\) のように、物理的な意味がわかる添え字を付けて立式することをお勧めします。これにより、どの変数にどの値を代入すべきかの混乱を防げます。
  • 答えの妥当性を吟味する(検算): 答えとして「向かい風の速さが \(2.5 \text{ m/s}\)」と出たら、物語を逆再生してみます。「飛行機が本来の \(6.0 \text{ m/s}\) で進もうとするところを、\(2.5 \text{ m/s}\) の向かい風が邪魔をする。すると、地面から見た速さは \(6.0 – 2.5 = 3.5 \text{ m/s}\) になるはずだ。この速さで \(8.0\) 秒間飛ぶと、\(3.5 \times 8.0 = 28 \text{ m}\) 進む。これは問題文と一致するから、答えは正しい!」この数秒の確認で、確信を持って解答できます。
  • 簡単な割り算の工夫: \(28 \div 8.0\) の計算は、分数の形 \(\displaystyle\frac{28}{8}\) にして、4で約分すると \(\displaystyle\frac{7}{2}\) となり、\(3.5\) と簡単に計算できます。

5 速度の合成

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「2次元における速度の合成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 速度の合成則: 岸から見た船の速度は、「水に対する船の速度」と「水の速度(川の流れ)」のベクトル和で表されます。
  2. ベクトルの図示と分解: 各速度をベクトル(矢印)で図示し、目的(川を垂直に横切る)に合わせてベクトルを配置・分解して考えることが重要です。
  3. 三平方の定理と三角関数: 速度ベクトルが作る直角三角形の辺の長さ(速さ)や角度を求めるために使用します。
  4. 目的からの逆算思考: 「川を垂直に横切る」という最終的な結果から、そのために船がどう動くべきか(船首の向き)を逆算するアプローチが求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 各速度(静水時の船の速さ、川の流速、岸に対する船の速さ)をベクトルとして定義します。
  2. (2) 「川を垂直に横切る」という条件から、合成速度のベクトルが川岸に垂直になるように、速度の合成図(ベクトル三角形)を描きます。
  3. (3) 三平方の定理を用いて、川を横切る方向の速度成分(合成速度の大きさ)を計算します。
  4. (4) 三角関数を用いて、船首を向けるべき角度を求めます。
  5. (5) 川を横切る速度と川幅から、所要時間を計算します。

思考の道筋とポイント
この問題の核心は、「川を垂直に横切る」という条件をどう解釈し、数式に落とし込むかです。これは、岸にいる観測者から見た船の最終的な進行方向(合成速度の向き)が、川の流れの方向と垂直になることを意味します。
もし船首をまっすぐ対岸に向けて進むと、船は川の流れに流されて斜め下流に進んでしまいます。目的地である真向かいの岸に到着するためには、流される分を見越して、あらかじめ船首を川の上流側に向けておく必要があります。
この結果、速度のベクトル図を描くと、「水に対する船の速さ(船が自力で進む速さ)」を斜辺とし、「川の流れの速さ」と「岸に対する船の速さ(実際に川を横切る速さ)」を他の2辺とする直角三角形が形成されます。この図形的な関係を利用して、未知の量を解き明かしていきます。
この設問における重要なポイント

  • 合成速度の公式: \(\vec{v}_{\text{船,岸}} = \vec{v}_{\text{船,水}} + \vec{v}_{\text{水,岸}}\)
  • 「静水上の速さ」は、水に対する船の速さ \(\vec{v}_{\text{船,水}}\) の大きさ(ベクトルの長さ)である。
  • 「流速」は、岸に対する水の速さ \(\vec{v}_{\text{水,岸}}\) の大きさである。
  • 「川を垂直に横切る」とは、合成速度 \(\vec{v}_{\text{船,岸}}\) の向きが川岸に垂直であることを意味する。
  • ベクトル図を描いて視覚的に考えることが極めて重要である。

具体的な解説と立式
各速度ベクトルを以下のように定義します。

  • \(\vec{v}_{\text{船,水}}\): 水に対する船の速度(船首が向いている方向の速度)。その大きさは \(v_{\text{船,水}} = 5.0 \text{ m/s}\)。
  • \(\vec{v}_{\text{水,岸}}\): 岸に対する水の速度(川の流れの速度)。その大きさは \(v_{\text{水,岸}} = 3.0 \text{ m/s}\)。
  • \(\vec{v}_{\text{船,岸}}\): 岸に対する船の速度(合成速度)。この向きが川岸と垂直になる。

速度の合成則は次の式で表されます。
$$ \vec{v}_{\text{船,岸}} = \vec{v}_{\text{船,水}} + \vec{v}_{\text{水,岸}} \quad \cdots ① $$
この関係をベクトル図で描くと、\(\vec{v}_{\text{船,岸}}\) と \(\vec{v}_{\text{水,岸}}\) が直交するため、\(\vec{v}_{\text{船,水}}\) を斜辺とする直角三角形ができます。
三平方の定理より、これらの速度の大きさの間には次の関係が成り立ちます。
$$ v_{\text{船,水}}^2 = v_{\text{船,岸}}^2 + v_{\text{水,岸}}^2 \quad \cdots ② $$
この式から、実際に川を横切る速さ \(v_{\text{船,岸}}\) を求めることができます。

次に、船首を向けるべき向きを考えます。川岸に垂直な向きから、川上に向ける角度を \(\theta\) とすると、ベクトル図から三角関数の関係がわかります。
$$ \tan\theta = \frac{v_{\text{水,岸}}}{v_{\text{船,岸}}} \quad \cdots ③ $$
最後に、対岸に渡るのに要する時間 \(t\) は、川幅 \(L = 100 \text{ m}\) を、川を横切る速度 \(v_{\text{船,岸}}\) で割ることで求められます。
$$ L = v_{\text{船,岸}} \times t \quad \cdots ④ $$

使用した物理公式

  • 速度の合成: \(\vec{v}_{\text{A,C}} = \vec{v}_{\text{A,B}} + \vec{v}_{\text{B,C}}\)
  • 三平方の定理: \(c^2 = a^2 + b^2\)
  • 三角関数の定義: \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)
  • 等速直線運動: \(x = vt\)
計算過程

まず、式②に値を代入して、岸に対する船の速さ(川を横切る速さ) \(v_{\text{船,岸}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
5.0^2 &= v_{\text{船,岸}}^2 + 3.0^2 \\[2.0ex]v_{\text{船,岸}}^2 &= 25.0 – 9.0 \\[2.0ex]&= 16.0 \\[2.0ex]v_{\text{船,岸}} &= \sqrt{16.0} \\[2.0ex]&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
次に、この結果を式③に代入して、船首を向けるべき角度 \(\theta\) の条件を求めます。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{3.0}{4.0} \\[2.0ex]&= 0.75
\end{aligned}
$$
よって、船首は川岸に垂直な向きから川上へ、\(\tan\theta = 0.75\) となる角度だけ向ける必要があります。

最後に、式④に値を代入して、対岸に渡る時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
100 &= 4.0 \times t \\[2.0ex]t &= \frac{100}{4.0} \\[2.0ex]&= 25 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

川をまっすぐ横切るには、流される分(秒速 \(3.0 \text{ m}\))を打ち消すように、船首を少し上流に向ける必要があります。このとき、「船の本来の速さ(\(5.0 \text{ m/s}\))」、「川の流れの速さ(\(3.0 \text{ m/s}\))」、そして「実際にまっすぐ進む速さ」の3つで、直角三角形ができます。
これは有名な「3:4:5」の直角三角形なので、計算するまでもなく、実際にまっすぐ進む速さは \(4.0 \text{ m/s}\) だとわかります。(もちろん、三平方の定理 \(\sqrt{5.0^2 – 3.0^2}\) で計算してもOKです。)
船首の向きは、この \(3:4:5\) の三角形の角度で決まります。
川を渡るのにかかる時間は、川の幅 \(100 \text{ m}\) を、実際にまっすぐ進む速さ \(4.0 \text{ m/s}\) で割ればよいので、\(100 \div 4.0 = 25\) 秒となります。

結論と吟味

船首を向けるべき向きは、川岸に垂直な向きから川上側へ \(\tan\theta = 0.75\) となる角度であり、このとき対岸に渡るのに要する時間は \(25 \text{ s}\) です。
もし船首をまっすぐ対岸に向けて進んだ場合(最短時間で渡る場合)、川を横切る速度は \(5.0 \text{ m/s}\) となり、時間は \(100 \div 5.0 = 20 \text{ s}\) で済みます。しかし、その間に \(3.0 \text{ m/s} \times 20 \text{ s} = 60 \text{ m}\) も下流に流されてしまいます。垂直に渡る(最短距離で渡る)ためには、速度の一部を流れを打ち消すために使うので、横切る速度が \(4.0 \text{ m/s}\) に落ち、結果として時間が \(25 \text{ s}\) と長くなるのは、物理的に考えて妥当な結果です。

解答 tanθ=0.75となる角θだけ川岸に垂直な向きから川上に向ける, 時間:25s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 2次元における速度の合成則とベクトル図:
    • 核心: この問題は、1次元の速度合成を拡張し、互いに直交する速度成分を持つ2次元の運動として正しくモデル化できるかを試しています。物理的な状況を、ベクトル(矢印)で構成された図形(今回は直角三角形)に正確に翻訳し、その幾何学的な関係から未知の量を解き明かす能力が核心となります。
    • 理解のポイント:
      • ベクトルの和: 岸から見た船の運動(\(\vec{v}_{\text{船,岸}}\))は、「船が水に対して進む運動(\(\vec{v}_{\text{船,水}}\))」と「水が岸に対して流れる運動(\(\vec{v}_{\text{水,岸}}\))」のベクトル的な重ね合わせで決まる、という合成則を理解することが出発点です。
      • 目的からの逆算: 「川を垂直に横切る」という目的(=合成速度の向きが岸に垂直)が与えられているため、その結果になるように各ベクトルを配置する、という逆算的な思考が求められます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 最短時間で対岸に渡る問題: この場合、船首をまっすぐ対岸に向けます。すると、川を横切る速度成分は最大(静水時の速さそのもの)になりますが、下流に流されます。このときの「対岸に到着するまでの時間」と「下流に流された距離」を求める問題は頻出です。
    • 風の中を飛ぶ飛行機(2次元): 「地面に対する飛行機の速度」=「空気に対する飛行機の速度」+「風の速度」という、この問題と全く同じ構造を持つ問題。例えば、真東に進みたい飛行機が、北風(南向きの風)に吹かれる場合などが考えられます。
    • 斜めに川を渡る問題: 「対岸の特定の地点」を目指す問題。この場合、合成速度のベクトルが、出発点と目標点を結ぶ向きになるようにベクトル図を描き、三角比などを用いて解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. ベクトル図を描くことから始める: 2次元の速度合成問題は、頭の中だけで考えると混乱します。まず、問題文の状況をベクトル図に描くことを最優先します。
    2. 3つの速度ベクトルを特定する: 「静水上の速さ」→ \(\vec{v}_{\text{船,水}}\) の大きさ、「流速」→ \(\vec{v}_{\text{水,岸}}\) の大きさ、「岸に対する船の速さ」→ \(\vec{v}_{\text{船,岸}}\)(合成速度)の3つを明確に区別します。
    3. 「目的」をベクトル図に反映させる: 問題の条件(例:「垂直に横切る」「最短時間で渡る」「特定の地点に着く」)が、どのベクトルの向きや大きさを規定しているのかを考え、それをベクトル図に書き込みます。今回の場合は「\(\vec{v}_{\text{船,岸}}\) の向きが岸に垂直」という条件です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 「静水上の速さ」を川を横切る速度として使ってしまう:
    • 誤解: 対岸に渡る時間を計算する際に、川を横切る速度として、船の本来の速さである \(5.0 \text{ m/s}\) を使ってしまい、\(t = 100 \div 5.0 = 20 \text{ s}\) と計算する。
    • 対策: ベクトル図を描けば一目瞭然ですが、船の速さ \(5.0 \text{ m/s}\) は斜め上流を向いた速度です。川をまっすぐ横切る速度成分は、この \(5.0 \text{ m/s}\) の一部であり、それより小さい値(今回は \(4.0 \text{ m/s}\))になります。「最短距離」で渡る場合と「最短時間」で渡る場合とでは、川を横切る速度成分が異なることを明確に区別しましょう。
  • ベクトルの足し算をスカラーの足し算と勘違いする:
    • 誤解: 速度の大きさを単純に足したり引いたりして、\(5.0+3.0\) や \(5.0-3.0\) のような計算をしてしまう。
    • 対策: 速度はベクトル量であり、向きが異なる場合は単純な足し算・引き算はできません。必ずベクトル図を描き、三平方の定理や三角比を用いて幾何学的に解く、という手順を徹底します。
  • 3:4:5の直角三角形に気づかない/過信する:
    • 誤解: \(5.0\) と \(3.0\) という数字を見ても、有名な直角三角形だと気づかずに複雑な計算をしてしまう。あるいは、どんな数字の組み合わせでも安易にこの比を当てはめようとする。
    • 対策: 物理の問題では、計算を簡略化するために \(3:4:5\) や \(1:2:\sqrt{3}\) のような有名な比がよく使われます。これらの数字の組み合わせに敏感になっておくと計算が速くなります。ただし、必ず三平方の定理が成り立つか(\(3^2+4^2=9+16=25=5^2\))を確認する癖をつけ、思い込みで使わないように注意しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 速度の合成則 (\(\vec{v}_{\text{船,岸}} = \vec{v}_{\text{船,水}} + \vec{v}_{\text{水,岸}}\)):
    • 選定理由: この問題の物理現象そのものを記述する基本法則です。岸(静止系)から見た船の運動は、水(運動系)を基準とした船の運動と、岸を基準とした水の運動の重ね合わせとして表現されるため、この公式が思考の出発点となります。
  • 三平方の定理:
    • 選定理由: 速度の合成則をベクトル図で表現した結果、直角三角形が形成されたため。この図形の辺の長さ(速さの大きさ)の関係を数式で表すために、三平方の定理が最も適しています。
    • 適用根拠: 「川を垂直に横切る」という条件により、合成速度 \(\vec{v}_{\text{船,岸}}\) と川の流れ \(\vec{v}_{\text{水,岸}}\) が直交することが保証されます。これにより、ベクトル三角形が直角三角形となり、三平方の定理の適用が可能となります。
  • 等速直線運動の公式 (\(t = \displaystyle\frac{L}{v}\)):
    • 選定理由: 最終的に対岸に渡る時間を求めるため。
    • 適用根拠: 川を横切る方向の運動だけに着目すると、船は一定の速度(\(v_{\text{船,岸}}\))で一定の距離(川幅 \(L\))を進む等速直線運動と見なせます。したがって、時間、距離、速さの基本的な関係式が適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • ベクトル図を大きく丁寧に描く: 小さく雑な図は、どの辺がどの速度に対応するのか、どの角度が \(\theta\) なのかを見間違える原因になります。フリーハンドでも良いので、直角やベクトルの向きがはっきりわかるように、大きく丁寧な図を描くことを心がけましょう。
  • 求めるものと中間生成物を区別する: この問題では、最終的に「船首の向き」と「時間」を求めますが、その過程で「岸に対する船の速さ \(v_{\text{船,岸}}\)」を計算します。この中間生成物を最終的な答えと混同しないように注意が必要です。
  • 単位の確認: 計算の最後に、求めた物理量の単位が正しいかを確認します。時間を求めたのに単位が [m/s] になっていたら、どこかで計算を間違えている証拠です。

6 相対速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「相対速度」の基本的な計算です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 相対速度の定義: 一方の物体から見たもう一方の物体の速度のことで、「相手の速度」から「自分の速度」をベクトルとして引き算することで求められます。
  2. 基準となる観測者: 誰が観測者(自分)になるかによって、相手の運動の見え方は変わります。
  3. ベクトルの扱い(1次元): 一直線上の運動では、一方の向きを「正」と定めることで、速度を符号付きの数値として扱うことができ、ベクトルの引き算を代数的な引き算で計算できます。
  4. 相対速度の対称性: Aから見たBの速度と、Bから見たAの速度は、大きさが等しく、向きが正反対になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、一直線上の運動の向き(例:東向き)を正として座標軸を設定します。
  2. (2) 自動車AとBの速度を、向きを考慮した符号付きの数値として表します。
  3. (3) 「Aから見たBの相対速度」と「Bから見たAの相対速度」を、それぞれ相対速度の公式に当てはめて計算します。
  4. (4) 計算結果の符号から、それぞれの相対速度の向きを判断します。

思考の道筋とポイント
この問題は、「Aから見たBの速度」と「Bから見たAの速度」という2つの視点からの相対速度を求めるものです。核心となるのは、相対速度の公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\) の意味を正しく理解し、適用することです。「Aから見たBの速度」を求める場合、観測者(自分)はAであり、観測対象(相手)はBです。したがって、計算は「相手の速度 \(v_B\)」から「自分の速度 \(v_A\)」を引く、という順番になります。この引き算の順番を間違えないことが最も重要です。日常的な感覚として、高速道路で自分より速い車に追い抜かれるとき、その車はゆっくりと前に進んでいくように見えます。この「ゆっくりと前に進む速度」が相対速度であり、両者の速度の「差」として現れることを理解すると、計算結果をイメージしやすくなります。
この設問における重要なポイント

  • 相対速度の公式: \(v_{AB} = v_B – v_A\) (Aから見たBの相対速度 = Bの速度 – Aの速度)
  • 引き算の順番は「相手の速度」引く「自分の速度」である。
  • 一直線上の運動では、基準の向きを正とし、逆向きを負として速度を符号で表す。
  • 計算結果の符号が、相対的な運動の向きを示す(正なら基準の向き、負なら逆向き)。

具体的な解説と立式
まず、東向きを正の向きと定めます。すると、各自動車の速度は次のように表せます。

  • 自動車Aの速度: \(v_A = +60 \text{ [km/h]}\)
  • 自動車Bの速度: \(v_B = +80 \text{ [km/h]}\)

1. Aから見たBの相対速度 \(v_{AB}\)
観測者はA(自分)、観測対象はB(相手)です。相対速度の公式に当てはめます。
$$ v_{AB} = v_B – v_A \quad \cdots ① $$

2. Bから見たAの相対速度 \(v_{BA}\)
今度は観測者がB(自分)、観測対象がA(相手)になります。同様に公式に当てはめます。
$$ v_{BA} = v_A – v_B \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 相対速度: \(v_{AB} = v_B – v_A\)
計算過程

Aから見たBの相対速度 \(v_{AB}\) の計算:
式①に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{AB} &= (+80) – (+60) \\[2.0ex]&= 20 \text{ [km/h]}
\end{aligned}
$$
計算結果は正の値なので、向きは東向きです。

Bから見たAの相対速度 \(v_{BA}\) の計算:
式②に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{BA} &= (+60) – (+80) \\[2.0ex]&= -20 \text{ [km/h]}
\end{aligned}
$$
計算結果は負の値なので、向きは正の向き(東向き)とは逆の、西向きです。

計算方法の平易な説明

AからBを見る場合:
自分が時速60kmで東に進んでいます。前方を走るBは時速80kmで、自分よりも時速20km速いです。そのため、Bは自分から見ると、東の方向に時速 \(80 – 60 = 20\) kmで遠ざかっていくように見えます。

BからAを見る場合:
自分が時速80kmで東に進んでいます。後ろを走るAは時速60kmで、自分よりも時速20km遅いです。そのため、Aは自分から見ると、まるで西の方向(後ろ)に時速 \(80 – 60 = 20\) kmで遠ざかっていくように見えます。

結論と吟味

Aから見たBの相対速度は「東向きに 20 km/h」、Bから見たAの相対速度は「西向きに 20 km/h」です。
Aから見たBの速度 (\(+20\) km/h) と、Bから見たAの速度 (\(-20\) km/h) は、大きさが同じで符号が逆になっています。これは相対速度の \(v_{BA} = -v_{AB}\) という関係と一致しており、物理的に正しい結果です。

解答 AからB:東向きに20km/h,BからA:西向きに20km/h

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 相対速度の定義式とその意味:
    • 核心: この問題は、相対速度の定義式 \(v_{AB} = v_B – v_A\) を正しく理解し、適用できるかに尽きます。この式は単なる計算ルールではなく、「観測者(自分)の速度を基準(ゼロ)としたときに、相手がどのように動いて見えるか」という物理的な意味合いを持っています。
    • 理解のポイント:
      • 基準の変換: 相対速度を求めることは、「地面」という静止した基準から、「動いている観測者」という新しい基準に視点を移す操作です。
      • 引き算の順番: 「相手の速度」から「自分の速度」を引く、という順番が絶対です。\(v_{AB}\) の添え字の順番(Aから見たB)と、式の右辺の引き算の順番(\(v_B – v_A\))が逆になる、と覚えると間違いにくいです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 反対向きにすれ違う場合: 東向きに走るAと、西向きに走るBの相対速度を求める問題。東向きを正とすると、\(v_A = +60\), \(v_B = -80\) のように、一方の速度を負の値として代入します。この場合、\(v_{AB} = v_B – v_A = (-80) – (+60) = -140\) となり、AからはBが猛烈な速さで西向きにすれ違っていくように見えます。
    • 2次元の相対速度(平面運動): 川を渡る船から見た岸の景色や、雨の中を走る電車から見た雨粒の動きなど。速度をx成分とy成分に分解し、各成分ごとに相対速度の公式(引き算)を適用します。
    • 衝突・合体問題の前段階: 2物体の衝突問題を解く際に、一方の物体から見たもう一方の物体の運動(相対運動)を考えることで、問題が簡単になる場合があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「誰から見た」「誰の」速度かを明確にする: 問題文から「観測者(自分)」と「観測対象(相手)」を正確に特定します。これが引き算の順番を決定します。
    2. 座標軸(正の向き)を設定する: 一直線上の運動では、まずどちらかの向きを「正」と決めます。これにより、すべての速度を符号付きの数値に変換でき、ベクトル計算を代数計算に置き換えられます。
    3. 公式に忠実に代入する: \(v_{AB} = v_B – v_A\) の公式に、符号を付けた速度の値をそのまま代入します。途中で「同じ向きだから…」「反対向きだから…」と自己流の解釈を加えず、機械的に計算することがミスを防ぐコツです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 引き算の順番を逆にしてしまう:
    • 誤解: Aから見たBの速度を求める際に、\(v_A – v_B\) と計算してしまう。
    • 対策: 「相手引く自分」という言葉で覚えるか、添え字の順番(AB)と式の順番(B-A)が逆になると覚えるなど、自分なりの記憶法を確立します。計算後に「自分(A)は60km/h、相手(B)は80km/hだから、相手の方が速い。ということは、相手は自分から見て正の向きに進むはずだ」と直感的な吟味をすることで、符号の間違いに気づくことができます。
  • 速さの引き算で済ませてしまう:
    • 誤解: 向きを考えず、単純に速さの大きさだけで \(80 – 60 = 20\) と計算し、向きを答える段階で混乱する。
    • 対策: 速度はベクトル量であるという原則に立ち返り、必ず向きを正負の符号で表現してから計算する、という手順を徹底します。この習慣は、物体が反対方向に動く複雑な問題で特に威力を発揮します。
  • Aから見たBとBから見たAを同じものだと考える:
    • 誤解: Aから見たBの速度を「東向きに20km/h」と計算した後、Bから見たAの速度も同じだと考えてしまう。
    • 対策: 観測者が変われば、見え方も変わるのが相対速度の基本です。\(v_{BA} = -v_{AB}\) の関係、つまり「相手から見た自分の速度は、自分から見た相手の速度と、大きさが同じで向きが真逆になる」という法則を理解しておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 相対速度の定義式 (\(v_{AB} = v_B – v_A\)):
    • 選定理由: 問題が「〜から見ると、…はどのように見えるか」という、まさしく相対速度の概念そのものを問うているため、この定義式を直接用いるのが最も合理的です。
    • 適用根拠: この公式は、より基本的な速度の合成則から導かれます。地面を基準G、物体をA, Bとすると、\(v_{AG} = v_{AB} + v_{BG}\)(Aの地面に対する速度 = AのBに対する速度 + Bの地面に対する速度)が成り立ちます。これをAのBに対する速度 \(v_{AB}\) について解くと、\(v_{AB} = v_{AG} – v_{BG}\) となり、相対速度の公式が得られます。(※添え字の定義によって \(v_{AB} = v_B – v_A\) となります)この式は、ある慣性系から別の慣性系への座標変換(ガリレイ変換)の一種です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 符号の扱いに細心の注意を払う: 計算過程で `(+80) – (+60)` のように、各項の符号を括弧で明示すると、マイナスの速度を代入する際などのケアレスミスを防げます。
  • 答えの形式を確認する: 問題は「どちら向きにいくらの速さで」と問うています。したがって、答えは「(向き)に(速さの大きさ)」というセットで記述する必要があります。計算結果の `+20` を「東向きに20km/h」、`-20` を「西向きに20km/h」と正しく翻訳する最後のステップを忘れないようにしましょう。
  • 日常の感覚と結びつける: 電車や車に乗っているときの風景を思い浮かべてみましょう。並走する遅い車は後ろに下がって見え、すれ違う対向車は非常に速く見えます。こうした日常的な感覚と計算結果が一致するかを確かめることで、答えの妥当性を直感的にチェックできます。

7 相対速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「2次元平面における相対速度」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 相対速度の定義: Bから見たAの相対速度は、Aの速度からBの速度をベクトルとして引き算することで求められます (\(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\))。
  2. ベクトル図の利用: 2次元の速度は向きを持つため、ベクトル(矢印)で図示し、その幾何学的な関係を解くことが不可欠です。
  3. ベクトルの引き算の作図: \(\vec{v}_A – \vec{v}_B\) というベクトルの引き算は、\(\vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) というベクトルの足し算として作図すると考えやすくなります。
  4. 方位と角度: 「南西」のように方位で向きが指定された場合、それが具体的な角度(例:真南と真西から45°ずつ)を意味することを理解し、図形に反映させる必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 自動車Aの速度 \(\vec{v}_A\)、自動車Bの速度 \(\vec{v}_B\)、Bから見たAの相対速度 \(\vec{v}_{BA}\) をベクトルとして定義します。
  2. (2) 問題文で与えられた各ベクトルの向き(\(\vec{v}_A\)は南向き、\(\vec{v}_B\)は東向き、\(\vec{v}_{BA}\)は南西向き)の情報と、相対速度の公式 \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\) を満たすように、ベクトル図を作成します。
  3. (3) 作成されたベクトル図が直角二等辺三角形になることを見抜き、その辺の比の関係から未知の速さ(Bの速さと、Bから見たAの速さ)を計算します。

思考の道筋とポイント
この問題は、互いに直交する方向に進む2つの物体の相対運動を扱います。最大の鍵は、「BからAを見ると、ちょうど南西向きに見えた」という情報を、ベクトル図にどう翻訳するかです。
相対速度の公式は \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\) です。このベクトルの引き算は、\(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) と考えると非常に分かりやすくなります。
ここで、

  • \(\vec{v}_A\) は「南向き」のベクトルです。
  • \(\vec{v}_B\) は「東向き」のベクトルなので、\(-\vec{v}_B\) は「西向き」のベクトルです。

つまり、「南向きのベクトル \(\vec{v}_A\)」と「西向きのベクトル \(-\vec{v}_B\)」を足し合わせると(合成すると)、「南西向きのベクトル \(\vec{v}_{BA}\)」になる、という関係が成り立ちます。
「ちょうど南西向き」とは、真南と真西のちょうど中間、すなわち角度45°の方向を意味します。南向きの成分と西向きの成分を合成してちょうど45°の方向になるのは、2つの成分の大きさが等しいときです。このことから、ベクトル図が直角二等辺三角形になることがわかり、未知の速さを求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 相対速度の公式: \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\)。
  • ベクトルの引き算は、向きを逆にしたベクトルの足し算(\(\vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\))として作図すると分かりやすい。
  • 「南西向き」は、南成分と西成分の大きさが等しいことを意味し、速度ベクトルが直角二等辺三角形を形成する。

具体的な解説と立式
自動車Aの速度を \(\vec{v}_A\)、自動車Bの速度を \(\vec{v}_B\) とします。Bから見たAの相対速度 \(\vec{v}_{BA}\) は、次の式で表されます。
$$ \vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B $$
この式は、\(\vec{v}_A\) と \(-\vec{v}_B\) のベクトル和として考えることができます。
$$ \vec{v}_{BA} = \vec{v}_A + (-\vec{v}_B) \quad \cdots ① $$
問題文の条件を各ベクトルに当てはめます。

  • \(\vec{v}_A\): 南向き、大きさ \(|\vec{v}_A| = 15 \text{ m/s}\)。
  • \(\vec{v}_B\): 東向き、大きさ \(|\vec{v}_B|\) は未知。
  • \(-\vec{v}_B\): 西向き、大きさは \(|\vec{v}_B|\)。
  • \(\vec{v}_{BA}\): 南西向き。

これらの関係をベクトル図で示すと、南向きの \(\vec{v}_A\) と西向きの \(-\vec{v}_B\) を2辺とし、南西向きの \(\vec{v}_{BA}\) を対角線とする長方形(または三角形)が描けます。
\(\vec{v}_{BA}\) が「ちょうど南西向き」であるため、\(\vec{v}_A\)(南向き)と \(\vec{v}_{BA}\) のなす角は45°です。したがって、このベクトル三角形は直角二等辺三角形になります。
直角二等辺三角形では、直角を挟む2辺の長さが等しくなります。
$$ |-\vec{v}_B| = |\vec{v}_A| \quad \cdots ② $$
また、辺の比は \(1:1:\sqrt{2}\) となるため、斜辺である \(\vec{v}_{BA}\) の大きさは、
$$ |\vec{v}_{BA}| = \sqrt{2} |\vec{v}_A| \quad \cdots ③ $$
となります。

使用した物理公式

  • 相対速度: \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\)
  • 直角二等辺三角形の辺の比: \(1:1:\sqrt{2}\)
計算過程

Bの速さ \(|\vec{v}_B|\) の計算:
ベクトル図が直角二等辺三角形であることから、式②の関係が成り立ちます。
$$ |\vec{v}_B| = |-\vec{v}_B| = |\vec{v}_A| $$
\(|\vec{v}_A| = 15 \text{ m/s}\) を代入すると、
$$ |\vec{v}_B| = 15 \text{ [m/s]} $$

Bから見たAの速さ \(|\vec{v}_{BA}|\) の計算:
式③の関係を用います。
$$
\begin{aligned}
|\vec{v}_{BA}| &= \sqrt{2} \times |\vec{v}_A| \\[2.0ex]&= \sqrt{2} \times 15
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
|\vec{v}_{BA}| &\approx 1.41 \times 15 \\[2.0ex]&= 21.15 \\[2.0ex]&\approx 21 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この問題を解くには、Bの視点に立って考えます。B自身は東に動いていますが、Bから見ると自分は止まっていて、代わりに周りの景色やAが西に動いているように見えます。
1. Aはもともと南に \(15 \text{ m/s}\) で進んでいます。
2. Bが東に動いているせいで、Aは西にも動いているように見えます。
この「南向きの動き」と「西向きの動き」を合成した結果が、「南西向き」に見えた、ということです。
「ちょうど南西」という真ん中の方向に見えるのは、南向きの速さと西向きの速さが全く同じときだけです。
Aの南向きの速さは \(15 \text{ m/s}\) なので、Aが西向きに動いて見える速さも \(15 \text{ m/s}\) でなければなりません。この「西向きに見える速さ」は、Bが東に動いている速さそのものです。したがって、Bの速さは \(15 \text{ m/s}\) です。
Bから見たAの速さは、この南向き \(15 \text{ m/s}\) と西向き \(15 \text{ m/s}\) を合成したものです。これは、1辺が15の正方形の対角線の長さを求めるのと同じで、三平方の定理から \(\sqrt{15^2 + 15^2} = 15\sqrt{2}\) となります。\(\sqrt{2}\) は約1.41なので、\(15 \times 1.41 \approx 21 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

自動車Bの速さは \(15 \text{ m/s}\) であり、Bから見たAの速さは \(21 \text{ m/s}\) です。
Bが東へ \(15 \text{ m/s}\) で走り、Aが南へ \(15 \text{ m/s}\) で走っている状況を考えます。Bから見ると、Aは南へ \(15 \text{ m/s}\) で進むと同時に、Bが東へ離れていく分だけ西へ \(15 \text{ m/s}\) で動いているように見えます。南方向と西方向の速度成分の大きさが等しいので、合成された速度の向きは確かに南西向きになります。よって、この結果は物理的に妥当です。

解答 B:15m/s,BからA:21m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 2次元における相対速度とベクトル図の活用:
    • 核心: この問題は、1次元の相対速度を平面上に拡張し、各速度ベクトルがなす幾何学的な関係から未知の量を解き明かす能力を試しています。物理的な状況をベクトル図に正確に翻訳し、特にベクトルの引き算 \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\) を \(\vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) として作図する思考法が核心となります。
    • 理解のポイント:
      • ベクトル図への翻訳: 「南向き」「東向き」「南西向き」といった言葉による情報を、向きと大きさを持つ矢印(ベクトル)として図に表現することが第一歩です。
      • 幾何学的性質の発見: 作成したベクトル図が、問題の条件(「ちょうど南西向き」)によって特殊な図形(今回は直角二等辺三角形)になることを見抜くことが、問題を解く上での最大のブレークスルーとなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 角度が45°でない場合: 例えば「Bから見ると、Aが南と西から30°の向きに進んで見えた」という問題。この場合、ベクトル図は \(1:2:\sqrt{3}\) の辺の比を持つ直角三角形になります。三角比(\(\tan\theta, \sin\theta, \cos\theta\))を用いて辺の長さを計算します。
    • 雨の中を走る人/電車: 「鉛直に降る雨」(\(\vec{v}_{\text{雨,地}}\))を「水平に走る人」(\(\vec{v}_{\text{人,地}}\))が見ると、雨は「斜め前から降ってくる」(\(\vec{v}_{\text{雨,人}}\))ように見えます。これは本問と全く同じ構造の問題です。
    • 逆問題: 「Bから見たらAが南西に \(21 \text{ m/s}\) で見えた。Bは東に \(15 \text{ m/s}\) で走っている。Aの速度(向きと速さ)は?」といった問題。この場合は、\(\vec{v}_A = \vec{v}_{BA} + \vec{v}_B\) の関係式から、ベクトル図上で \(\vec{v}_{BA}\) と \(\vec{v}_B\) を足し算して \(\vec{v}_A\) を求めます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まずベクトル図を描く: 2次元の速度問題は、図を描かずに解こうとすると必ず混乱します。問題文を読みながら、わかっている速度ベクトルを矢印で描いていきます。
    2. 3つのベクトルを定義する: \(\vec{v}_A\)(Aの地面に対する速度)、\(\vec{v}_B\)(Bの地面に対する速度)、\(\vec{v}_{BA}\)(Bから見たAの相対速度)の3つを明確に区別します。
    3. 相対速度の公式をベクトル式で書く: \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\) をまず書き出します。
    4. ベクトルの引き算を作図する: \(\vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) の形で、始点を揃えてベクトルの和を描くのが最も確実です。
    5. 方位や角度の情報を図に書き込む: 「南西向き」→45°、「南向き」→鉛直下向き、といった情報を図に反映させ、図形の性質(直角、角度)を特定します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ベクトルの引き算の作図ミス:
    • 誤解: \(\vec{v}_A – \vec{v}_B\) を、\(\vec{v}_A\) の終点から \(\vec{v}_B\) を描いてしまうなど、作図ルールを間違える。
    • 対策: 引き算は \(\vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) の足し算に直すのが最も安全です。あるいは、「始点を揃えて \(\vec{v}_A\) と \(\vec{v}_B\) を描き、\(\vec{v}_B\) の矢印の先端から \(\vec{v}_A\) の矢印の先端に向かうベクトルが \(\vec{v}_{BA}\) である」というルールを徹底します。
  • 方位と角度の変換ミス:
    • 誤解: 「南西」を適当な斜め方向としてしまい、45°という角度情報を見落とす。
    • 対策: 「北東」「南西」などの8方位は、基本方位(東西南北)から45°の角度をなすことを常に意識します。
  • どの辺がどの速度に対応するかを混同する:
    • 誤解: 作図した直角三角形の斜辺が \(|\vec{v}_A|\) や \(|\vec{v}_B|\) だと勘違いする。
    • 対策: \(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A + (-\vec{v}_B)\) の作図では、\(\vec{v}_A\) と \(-\vec{v}_B\) が直角をなす2辺となり、相対速度 \(\vec{v}_{BA}\) が斜辺になります。各ベクトルに必ずラベルを付けることで混同を防ぎます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 相対速度の公式 (\(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_A – \vec{v}_B\)):
    • 選定理由: 問題が「Bから見たAの運動」という相対的な運動を記述しているため、相対速度の定義式そのものを用いるのが論理的です。
    • 適用根拠: この公式は、異なる慣性系(地面、車B)における運動を関係づけるガリレイ変換の基本であり、2次元平面上でもベクトルとして扱えば全く同じ形で成立します。
  • 直角二等辺三角形の性質 (辺の比 \(1:1:\sqrt{2}\)):
    • 選定理由: ベクトル図を描いた結果、特殊な図形(直角二等辺三角形)が形成されたため、その幾何学的性質を利用するのが最も効率的だからです。
    • 適用根拠: 「南向き」のベクトルと「西向き」のベクトルを合成した結果が「南西向き(45°)」になるという条件から、2つのベクトルの大きさが等しいことが論理的に導かれ、この図形の性質を適用することが正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 近似値の計算を丁寧に行う: \(15\sqrt{2}\) の計算では、問題で指定されていなければ \(\sqrt{2} \approx 1.41\) を使って筆算を丁寧に行います。\(15 \times 1.41 = 15 \times (1.4 + 0.01) = 21.0 + 0.15 = 21.15\) のように計算すると確実です。
  • 有効数字の考慮: 問題文の数値が2桁(例: 15 m/s)の場合、最終的な答えも有効数字2桁(例: 21 m/s)に丸めるのが一般的です。
  • ベクトル図を大きく描く: フリーハンドでも良いので、直角やベクトルの向きがはっきりわかるように、大きく丁寧な図を描くことを心がけましょう。どの辺がどの速度に対応するのか、どの角度が45°なのかが一目瞭然となり、ケアレスミスを防げます。
  • 答えの妥当性を吟味する: 計算結果 \(|\vec{v}_B| = 15 \text{ m/s}\) と \(|\vec{v}_{BA}| \approx 21 \text{ m/s}\) が出た後、図と見比べます。直角三角形の斜辺 \(|\vec{v}_{BA}|\) は、他の辺 \(|\vec{v}_A|=15\) や \(|\vec{v}_B|=15\) よりも長くなっているはずです。\(21 > 15\) なので、この関係は満たされています。このような簡単なチェックで大きな間違いを防げます。

8 速度・加速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ストロボ写真の解析による等速・等加速度運動の分析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ストロボ写真の解釈: 等しい時間間隔で撮影された物体の位置から、各区間の平均の速度を計算することができます。
  2. 等速直線運動: 速度が一定の運動です。ストロボ写真では、各発光間隔での移動距離が等しくなります。
  3. 等加速度直線運動: 加速度が一定の運動です。速度は一定の割合で変化します。
  4. 平均の速度と瞬間の速度: 等加速度直線運動において、ある区間の「平均の速度」は、その区間の「中央時刻における瞬間の速度」に等しいという重要な性質があります。
  5. 加速度の定義: 加速度は、速度の時間変化率(\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\))で求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、等速直線運動をしている区間のデータ(移動距離と時間)から、定義通りに速度を計算します。
  2. (2)では、等加速度直線運動をしている各区間(発光間隔ごと)の平均の速度をそれぞれ計算し、その平均の速度がどれくらいの割合で変化しているかを調べることで、加速度を求めます。
  3. (3)では、(1)と(2)で求めた値を用いて、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用するか、あるいは平均の速度の性質を利用して、特定の時刻における速度を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=1.50 \text{ s}\) までの小物体の速度を求める問題です。問題文に「\(t=1.5 \text{ s}\) まで等速度で運動し」とあるため、この区間は等速直線運動です。したがって、この区間全体の移動距離と時間から、一定の速度を計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • 等速直線運動では、速度はどの区間をとっても一定である。
  • 速度は「移動距離 ÷ 経過時間」で計算できる。
  • ストロボ写真のデータから、\(t=0 \text{ s}\) の位置と \(t=1.5 \text{ s}\) の位置を正確に読み取る。

具体的な解説と立式
求める速度を \(v_0\) とします。\(t=0 \text{ s}\) から \(t=1.5 \text{ s}\) までは等速直線運動なので、この区間の平均の速度が求める速度 \(v_0\) となります。
ストロボ写真から、各時刻の位置を読み取ります。

  • 時刻 \(t_1 = 0 \text{ s}\) のとき、位置は \(x_1 = 0 \text{ m}\)。
  • 時刻 \(t_2 = 1.5 \text{ s}\) のとき、位置は \(x_2 = 3.0 \text{ m}\)。

これらの値を用いて、速度を計算する式を立てます。
$$ v_0 = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1} $$

使用した物理公式

  • 速度の定義: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
計算過程

読み取った値を代入して、速度 \(v_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= \frac{3.0 – 0}{1.5 – 0} \\[2.0ex]&= \frac{3.0}{1.5} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正なので、速度の向きはx軸の正の向きです。

計算方法の平易な説明

物体は、スタートしてから \(1.5\) 秒後には \(3.0 \text{ m}\) の位置にいます。この間、速さは一定だったので、速さは「進んだ距離 ÷ かかった時間」で求められます。つまり、\(3.0 \text{ m} \div 1.5 \text{ s} = 2.0 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

時刻 \(t=1.50 \text{ s}\) までの小物体の速度は、x軸の正の向きに \(2.0 \text{ m/s}\) です。この速度は、等加速度運動が始まる直前の速度でもあります。

解答 (1) x軸の正の向きに2.0m/s

問(2)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=1.50 \text{ s}\) 以後の小物体の加速度を求める問題です。この区間は等加速度直線運動です。加速度を求めるには、速度の変化 \(\Delta v\) を知る必要があります。ストロボ写真の位置データから、発光間隔ごとの「平均の速度」を計算し、その平均の速度が一定の割合で変化していることを利用して加速度を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 加速度は速度の時間変化率 (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)) である。
  • ストロボ写真の各区間の平均の速度を計算する。
  • 等加速度運動では、平均の速度も一定の割合で変化する。

具体的な解説と立式
加速度を \(a\) とします。まず、\(t=1.5 \text{ s}\) 以降の各 \(0.50 \text{ s}\) 間の平均の速度を計算します。
区間 \(1.5 \text{ s} \sim 2.0 \text{ s}\) の平均の速度 \(\bar{v}_1\):
$$ \bar{v}_1 = \frac{x_{2.0} – x_{1.5}}{2.0 – 1.5} = \frac{3.9 – 3.0}{0.50} $$
区間 \(2.0 \text{ s} \sim 2.5 \text{ s}\) の平均の速度 \(\bar{v}_2\):
$$ \bar{v}_2 = \frac{x_{2.5} – x_{2.0}}{2.5 – 2.0} = \frac{4.6 – 3.9}{0.50} $$
等加速度運動では、これらの平均の速度は、各区間の中央時刻(それぞれ \(t=1.75 \text{ s}\), \(t=2.25 \text{ s}\))における瞬間の速度に等しくなります。
したがって、加速度 \(a\) は、これらの速度の変化を、中央時刻の差(\(2.25 – 1.75 = 0.50 \text{ s}\))で割ることで求められます。
$$ a = \frac{\bar{v}_2 – \bar{v}_1}{2.25 – 1.75} $$

使用した物理公式

  • 平均の速度: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
  • 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)
計算過程

まず、各区間の平均の速度を計算します。
$$ \bar{v}_1 = \frac{3.9 – 3.0}{0.50} = \frac{0.9}{0.50} = 1.8 \text{ [m/s]} $$
$$ \bar{v}_2 = \frac{4.6 – 3.9}{0.50} = \frac{0.7}{0.50} = 1.4 \text{ [m/s]} $$
参考までに、次の区間の平均の速度も計算します。
$$ \bar{v}_3 = \frac{5.1 – 4.6}{0.50} = \frac{0.5}{0.50} = 1.0 \text{ [m/s]} $$
これらの平均の速度は、\(0.50 \text{ s}\) ごとに \(1.8 \rightarrow 1.4 \rightarrow 1.0\) と、\(-0.4 \text{ m/s}\) ずつ変化しています。
この速度変化 \(\Delta v = -0.4 \text{ m/s}\) が、時間 \(\Delta t = 0.50 \text{ s}\) の間に生じているので、加速度 \(a\) は、
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{\Delta v}{\Delta t} \\[2.0ex]&= \frac{-0.4}{0.50} \\[2.0ex]&= -0.8 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
計算結果が負なので、加速度の向きはx軸の負の向きです。

計算方法の平易な説明

\(t=1.5\)秒以降の、0.5秒ごとの区間の平均スピードを調べてみましょう。

  • 1.5秒〜2.0秒:進んだ距離は \(3.9 – 3.0 = 0.9\)m。平均スピードは \(0.9 \div 0.5 = 1.8\)m/s。
  • 2.0秒〜2.5秒:進んだ距離は \(4.6 – 3.9 = 0.7\)m。平均スピードは \(0.7 \div 0.5 = 1.4\)m/s。
  • 2.5秒〜3.0秒:進んだ距離は \(5.1 – 4.6 = 0.5\)m。平均スピードは \(0.5 \div 0.5 = 1.0\)m/s。

平均スピードが \(1.8 \rightarrow 1.4 \rightarrow 1.0\) と、0.5秒ごとに \(0.4\)m/s ずつ遅くなっていることがわかります。
「0.5秒で0.4m/s遅くなる」ということは、「1秒あたりではその倍の0.8m/s遅くなる」ということです。したがって、加速度は \(-0.8 \text{ m/s}^2\) となります。

結論と吟味

時刻 \(t=1.50 \text{ s}\) 以後の小物体の加速度は、x軸の負の向きに \(0.8 \text{ m/s}^2\) です。物体は減速しており、加速度が負の値になるのは妥当です。

解答 (2) x軸の負の向きに0.8m/s²

問(3)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=2.00 \text{ s}\) における小物体の「瞬間の速度」を求める問題です。\(t=1.5 \text{ s}\) から等加速度直線運動を始めているので、その公式 \(v = v_0 + at\) を利用するのが基本的な解法です。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を正しく適用する。
  • 公式の \(v_0\) は「等加速度運動が始まる瞬間の速度」、\(t\) は「等加速度運動が始まってからの経過時間」である。

具体的な解説と立式
求める速度を \(v\) とします。等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を用います。
ここで、各値は以下の通りです。

  • 等加速度運動の初速度(\(t=1.5 \text{ s}\) での速度): \(v_0 = 2.0 \text{ m/s}\) ((1)で計算)
  • 加速度: \(a = -0.8 \text{ m/s}^2\) ((2)で計算)
  • 等加速度運動が始まってからの経過時間: 求める時刻 \(2.00 \text{ s}\) から開始時刻 \(1.50 \text{ s}\) を引いて、\(t = 2.00 – 1.50 = 0.50 \text{ s}\)。

これらの値を公式に代入して、速度 \(v\) を計算する式を立てます。
$$ v = 2.0 + (-0.8) \times 0.50 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

上記で立てた方程式を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 2.0 + (-0.8) \times 0.50 \\[2.0ex]&= 2.0 – 0.4 \\[2.0ex]&= 1.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正なので、速度の向きはx軸の正の向きです。

計算方法の平易な説明

物体の速さは、時刻 \(t=1.5\) 秒の時点で \(2.0 \text{ m/s}\) でした。その後、1秒あたり \(0.8 \text{ m/s}\) のペースで減速していきます。
求めたいのは、減速が始まってから \(0.50\) 秒後の時刻 \(t=2.00\) 秒での速さです。
\(0.50\) 秒間では、\(0.8 \times 0.50 = 0.4 \text{ m/s}\) だけ速さが減少します。
したがって、求める速さは、元の速さ \(2.0 \text{ m/s}\) から \(0.4 \text{ m/s}\) を引いて、\(2.0 – 0.4 = 1.6 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

時刻 \(t=2.00 \text{ s}\) における小物体の速度は、x軸の正の向きに \(1.6 \text{ m/s}\) です。この値は、\(t=1.5 \text{ s}\) での速度 \(2.0 \text{ m/s}\) よりも小さく、減速しているという状況と一致しており、妥当な結果です。

解答 (3) x軸の正の向きに1.6m/s
別解: 平均の速度の性質を利用

思考の道筋とポイント
等加速度直線運動では、ある区間の「平均の速度」は、その区間の「中央時刻における瞬間の速度」に等しい、という性質を利用します。さらに、v-tグラフが直線になることから、ある時刻の速度は、その前後均等な時間にある2つの時刻の速度の平均値と等しくなります。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度運動では、\(\bar{v}_{t_1 \sim t_2} = v_{(t_1+t_2)/2}\)。
  • v-tグラフが直線であるため、速度は時間に比例して変化する。

具体的な解説と立式
(2)で計算した平均の速度を、中央時刻における瞬間の速度とみなします。

  • 区間 \(1.5 \text{ s} \sim 2.0 \text{ s}\) の平均速度 \(\bar{v}_1 = 1.8 \text{ m/s}\) は、中央時刻 \(t=1.75 \text{ s}\) での瞬間の速度 \(v_{1.75}\) に等しい。
  • 区間 \(2.0 \text{ s} \sim 2.5 \text{ s}\) の平均速度 \(\bar{v}_2 = 1.4 \text{ m/s}\) は、中央時刻 \(t=2.25 \text{ s}\) での瞬間の速度 \(v_{2.25}\) に等しい。

求めたいのは、時刻 \(t=2.00 \text{ s}\) での速度 \(v_{2.00}\) です。
時刻 \(t=2.00 \text{ s}\) は、\(t=1.75 \text{ s}\) と \(t=2.25 \text{ s}\) のちょうど中間の時刻です。
等加速度運動ではv-tグラフが直線になるため、\(v_{2.00}\) は \(v_{1.75}\) と \(v_{2.25}\) の算術平均で求められます。
$$ v_{2.00} = \frac{v_{1.75} + v_{2.25}}{2} $$

使用した物理公式

  • 等加速度運動における平均の速度と瞬間の速度の関係
計算過程

値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{2.00} &= \frac{1.8 + 1.4}{2} \\[2.0ex]&= \frac{3.2}{2} \\[2.0ex]&= 1.6 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

時刻1.75秒のときの瞬間の速さは1.8m/s、時刻2.25秒のときの瞬間の速さは1.4m/sです。
求めたい時刻2.00秒は、この2つの時刻のちょうど真ん中です。
速さは一定のペースで変化しているので、真ん中の時刻での速さは、両端の速さのちょうど平均(真ん中の値)になります。
したがって、\( (1.8 + 1.4) \div 2 = 1.6 \text{ m/s} \) と計算できます。

結論と吟味

メインの解法と同じく、x軸の正の向きに \(1.6 \text{ m/s}\) という結果が得られました。異なるアプローチで同じ答えにたどり着いたことから、結果の確からしさがより高まります。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ストロボ写真のデータと運動法則の接続:
    • 核心: この問題の核心は、ストロボ写真という離散的な「位置と時刻」のデータから、運動を支配する連続的な法則(等速、等加速度)を読み解き、速度や加速度といった物理量を定量化する能力にあります。
    • 理解のポイント:
      1. 区間ごとの情報抽出: ストロボ写真の隣り合う2点からは、その区間の「平均の速度」しか直接求めることはできません。
      2. 等加速度運動の性質の活用: 等加速度運動において、ある区間の「平均の速度」は、その区間の「中央時刻における瞬間の速度」と等しくなる、という極めて重要な性質を理解し、利用することが、問題をスムーズに解く鍵となります。この性質により、離散的なデータから特定の瞬間の速度を求めることが可能になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • v-tグラフからのストロボ写真予測: 逆にv-tグラフが与えられ、「\(t=0, 0.5, 1.0, …\)秒における物体の位置を求め、ストロボ写真の図を描け」という問題。v-tグラフの面積が移動距離(変位)になることを利用して、各時刻の位置を順に計算していきます。
    • 自由落下・投げ上げ運動の解析: 物体を自由落下させたときのストロボ写真を解析する問題。加速度が常に重力加速度 \(g\) で一定である等加速度運動として扱います。
    • データに誤差が含まれる場合: 実験データのように、計算した加速度が区間ごとにわずかに異なる場合、それらの平均値をとって最も確からしい加速度を推定する、といったより実践的な問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 運動の変化点を見つける: 問題文から「どこまでが等速で、どこからが等加速度か」という運動の切り替わり点を正確に把握します(今回は \(t=1.5 \text{ s}\))。
    2. 表を作成してデータを整理する: 「時刻」「位置」「区間ごとの移動距離 \(\Delta x\)」「区間ごとの平均の速度 \(\bar{v}\)」を表にまとめると、情報の整理がしやすく、計算ミスも減ります。
    3. 平均の速度の変化に着目する: 等加速度運動の区間では、計算した「平均の速度」が、時間とともに一定の割合で増減するはずです。この変化率から加速度を求めるのが定石です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 平均の速度と瞬間の速度の混同:
    • 誤解: 区間 \(1.5 \text{ s} \sim 2.0 \text{ s}\) の平均の速度 \(1.8 \text{ m/s}\) を、時刻 \(t=1.5 \text{ s}\) や \(t=2.0 \text{ s}\) での瞬間の速度だと勘違いしてしまう。
    • 対策: ストロボ写真の2点間の情報から直接計算できるのは、あくまでその区間全体の「平均の速度」であると肝に銘じます。瞬間の速度とは明確に区別しましょう。
  • 公式 \(v = v_0 + at\) の \(t\) の意味の取り違え:
    • 誤解: (3)で時刻 \(t=2.00 \text{ s}\) の速度を求める際に、\(v = v_0 + a \times 2.00\) と計算してしまう。
    • 対策: 等加速度運動の公式における時間 \(t\) は、常に「等加速度運動が始まってからの経過時間」です。問題で使われている全体の時刻と、公式に代入する経過時間を混同しないように注意が必要です。この問題では、\(t = 2.00 – 1.50 = 0.50 \text{ s}\) を代入するのが正解です。
  • 加速度の計算における時間 \(\Delta t\) の誤り:
    • 誤解: (2)で、平均の速度が \(0.4 \text{ m/s}\) 変化したことから、加速度を \(a = -0.4 / 1.0 = -0.4 \text{ m/s}^2\) のように、安易に1秒で割ってしまう。
    • 対策: 加速度は「単位時間あたりの」速度変化です。平均の速度が \(0.4 \text{ m/s}\) 変化するのにかかった時間は、区間の中央時刻の差(例: \(1.75 \text{ s}\) と \(2.25 \text{ s}\) の差)である \(0.50 \text{ s}\) です。したがって、\(\Delta t = 0.50 \text{ s}\) で割るのが正しい計算です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 平均の速度の定義式 (\(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (2)で加速度を求める準備段階として、ストロボ写真の位置データから速度に関する情報を引き出すために不可欠です。これが、離散データから運動を解析する第一歩となります。
  • 加速度の定義式 (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (2)で加速度そのものを計算するため。等加速度運動では、(平均の)速度が時間に比例して変化するため、その変化率(傾き)を計算することで加速度が求まります。
  • 等加速度直線運動の速度公式 (\(v = v_0 + at\)):
    • 選定理由: (3)で、特定の時刻における「瞬間の速度」を求めるため。運動の初期条件(\(v_0\))と運動法則(\(a\))が分かっていれば、任意の時刻の速度を予測できる、この分野で最も基本的な公式の一つです。
  • 平均の速度の性質を利用した解法(別解):
    • 選定理由: 等加速度運動のv-tグラフが直線になる、という本質的な性質を利用したエレガントな解法です。公式の丸暗記に頼らず、運動のグラフ的なイメージを深く理解していることを示すアプローチであり、検算にも非常に有効です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 表形式でのデータ整理: 問題の数値を、時刻、位置、区間、移動距離 \(\Delta x\)、平均速度 \(\bar{v}\) のように表に整理することで、全体像が把握しやすくなり、計算ミスや見落としを防げます。
  • 引き算の順序の徹底: 移動距離 \(\Delta x\) や速度変化 \(\Delta v\) を計算する際は、常に「後の値 – 前の値」を徹底します。これにより、符号を正しく扱うことができ、運動の向き(正負)を間違えることがなくなります。
  • 小数の割り算は分数に: (2)の \(0.9 \div 0.50\) のような計算は、\(\displaystyle\frac{0.9}{0.50} = \displaystyle\frac{90}{50} = \displaystyle\frac{9}{5} = 1.8\) のように、分母分子を10倍や100倍して整数・分数の計算に持ち込むと、ミスが減り確実性が増します。
  • 別解による検算: (3)のように、公式を用いる方法と、平均の速度の性質を用いる方法など、複数のアプローチで解ける問題は、両方で計算して答えが一致するかを確認する絶好の機会です。これは最も強力な検算方法の一つです。

9 等加速度で減速する運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等加速度直線運動の公式の応用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 等加速度直線運動の3つの公式: 状況に応じて適切な公式を選択する能力が問われます。
  2. 公式の選択: 問題で与えられている物理量(既知)と求めたい物理量(未知)の関係から、最適な公式を見つけ出します。
  3. 単位の統一: 速度の単位が km/h で与えられているため、他の物理量(m, s)と合わせるために m/s へ変換する必要があります。
  4. 減速運動と加速度の符号: 進行方向を正とした場合、減速運動の加速度は負の値になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、速度の単位を km/h から m/s に変換します。次に、初速度、後の速度、移動距離が分かっていて時間が未知なので、時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて加速度を求めます。その後、求めた加速度を使って \(v = v_0 + at\) から停車時間を計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた初速度と加速度の値を用いて、移動距離を求める公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に時間を代入して計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
電車の加速度と、停車までにかかった時間を求める問題です。問題文には「初速度」「後の速度(停車なので0)」「移動距離」が与えられています。この3つの情報から、まずは未知数である「加速度」を求めます。時間が分かっていない状況で加速度を求めるには、時間 \(t\) を含まない等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うのが最も効率的です。加速度が求まれば、次に速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を使って、停車までにかかった時間を計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の3公式を、与えられた条件に応じて使い分ける。
  • 時間 \(t\) が未知の場合、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) が有効。
  • 単位換算(km/h → m/s)を計算の最初に行う。
  • 減速運動では、進行方向を正とすると加速度 \(a\) は負の値になる。

具体的な解説と立式
まず、計算に先立って単位をmとsに統一します。初速度 \(v_0 = 72 \text{ km/h}\) を m/s に変換します。
$$ v_0 = 72 \frac{\text{km}}{\text{h}} = \frac{72 \times 1000 \text{ [m]}}{60 \times 60 \text{ [s]}} $$
電車の進行方向を正とします。すると、各物理量は以下のようになります。

  • 初速度: \(v_0 = 20 \text{ m/s}\)
  • 後の速度: \(v = 0 \text{ m/s}\) (停車)
  • 移動距離: \(x = 100 \text{ m}\)

加速度 \(a\) を求めるために、時間を含まない公式を立てます。
$$ v^2 – v_0^2 = 2ax \quad \cdots ① $$
次に、停車にかかった時間 \(t\) を求めるために、速度と時間の関係式を立てます。
$$ v = v_0 + at \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の式(時間を含まない): \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

まず、単位換算を行います。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= \frac{72 \times 1000}{3600} \\[2.0ex]&= 20 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
次に、式①に値を代入して加速度 \(a\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0^2 – 20^2 &= 2 \times a \times 100 \\[2.0ex]-400 &= 200a \\[2.0ex]a &= \frac{-400}{200} \\[2.0ex]&= -2.0 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
加速度の符号が負なので、初速度の向きとは逆向きです。

続いて、式②に値を代入して時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 20 + (-2.0) \times t \\[2.0ex]2.0t &= 20 \\[2.0ex]t &= 10 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、速さの単位を「時速 (km/h)」から「秒速 (m/s)」に直します。時速72kmは秒速20mです。
次に加速度を求めます。この問題では「初めの速さ(20m/s)」「止まったときの速さ(0m/s)」「進んだ距離(100m)」がわかっています。時間がわからないので、時間の文字が入っていない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うと便利です。これに数字を当てはめると、加速度が \(-2.0 \text{ m/s}^2\) と計算できます。マイナスは、進む向きと反対向きに力がかかっている(ブレーキ)ことを意味します。
最後に停車時間を求めます。速さの公式 \(v = v_0 + at\) に、今わかった加速度を当てはめると、時間が \(10\) 秒と計算できます。

結論と吟味

加速度は初速度の向きと逆向きに \(2.0 \text{ m/s}^2\)、停車にかかった時間は \(10 \text{ s}\) です。電車は減速しているので、進行方向と逆向きに加速度が生じる(計算結果が負になる)のは物理的に妥当です。

解答 (1) 加速度:初速度の向きと逆向きに2.0m/s²,時間:10s

問(2)

思考の道筋とポイント
ブレーキをかけ始めてから \(5.0 \text{ s}\) 間の移動距離を求める問題です。この運動は等加速度直線運動であり、(1)で初速度 \(v_0\) と加速度 \(a\) が判明しています。したがって、移動距離 \(x\) と時間 \(t\) の関係式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に、\(t=5.0 \text{ s}\) を代入することで直接計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を利用する。
  • (1)で求めた初速度と加速度の値を、符号を含めて正しく代入する。

具体的な解説と立式
求める移動距離を \(x\) とします。等加速度直線運動の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を用います。
各値は以下の通りです。

  • 初速度: \(v_0 = 20 \text{ m/s}\)
  • 加速度: \(a = -2.0 \text{ m/s}^2\)
  • 時間: \(t = 5.0 \text{ s}\)

これらの値を公式に代入して、移動距離 \(x\) を計算する式を立てます。
$$ x = 20 \times 5.0 + \frac{1}{2} \times (-2.0) \times (5.0)^2 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\)
計算過程

上記で立てた方程式を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 20 \times 5.0 + \frac{1}{2} \times (-2.0) \times 25 \\[2.0ex]&= 100 – 1.0 \times 25 \\[2.0ex]&= 100 – 25 \\[2.0ex]&= 75 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「進んだ距離」を求める公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に、これまでにわかっている値をすべて当てはめます。「初めの速さ」は20m/s、「加速度」は-2.0m/s²、「時間」は5.0秒です。これらを公式に入れて計算すると、答えは75mとなります。

結論と吟味

ブレーキをかけ始めてから \(5.0 \text{ s}\) 間での移動距離は \(75 \text{ m}\) です。(1)より、電車は \(10 \text{ s}\) かけて \(100 \text{ m}\) 進んで停車します。\(5.0 \text{ s}\) は停車までの時間のちょうど半分ですが、電車はだんだん遅くなるので、前半の5秒間の方が後半の5秒間よりもたくさん進むはずです。移動距離 \(75 \text{ m}\) は、全距離 \(100 \text{ m}\) の半分である \(50 \text{ m}\) よりも大きいので、この結果は物理的に妥当であると言えます。

解答 (2) 75m

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 等加速度直線運動の3公式の戦略的選択:
    • 核心: この問題は、単に公式を覚えているだけでなく、「どの場面で、どの公式を使えば最も効率的に解けるか」を判断する戦略的な思考力を試しています。問題文で与えられた情報(既知の物理量)と求めたいもの(未知の物理量)を照らし合わせ、最適な公式を選択することが核心となります。
    • 理解のポイント: 3つの公式は、それぞれ含まない物理量が異なります。
      1. \(v = v_0 + at\): 変位 \(x\) を含まない。
      2. \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\): 後の速度 \(v\) を含まない。
      3. \(v^2 – v_0^2 = 2ax\): 時間 \(t\) を含まない。

      この特徴を理解し、「未知の変数が1つだけになる式はどれか?」と考えることが、解法の第一歩です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 投げ上げ運動: 地上から物体を投げ上げる運動。初速度が正、加速度が負(重力加速度 \(g\))の等加速度直線運動であり、本問と全く同じモデルで解くことができます。「最高点に達する」は「後の速度 \(v=0\)」と読み替えることができます。
    • 斜面を滑り降りる/駆け上がる運動: 摩擦がなければ、これも等加速度直線運動です。加速度の大きさは \(g\sin\theta\) となります。
    • v-tグラフを用いる問題: この電車の運動をv-tグラフで描くと、\(t=0\)で\(v=20\)、\(t=10\)で\(v=0\)となる右下がりの直線になります。グラフの「傾き」が加速度 \(a\) を、「グラフとt軸で囲まれた面積」が移動距離 \(x\) を表すことを利用して解くこともできます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位の確認と統一: 計算を始める前に、すべての物理量の単位が基本単位(m, s, kgなど)に揃っているかを確認します。km/h のような単位があれば、最初に m/s に変換します。
    2. 既知と未知のリストアップ: 問題文から「\(v_0 = ?\), \(v = ?\), \(a = ?\), \(t = ?\), \(x = ?\)」のように、分かっている量と求めたい量を整理します。
    3. 公式の選択: リストアップした物理量を見比べ、3つの公式の中から、未知数が1つだけになる式を選びます。例えば(1)では \(v_0, v, x\) が既知で \(a\) が未知なので、\(t\) を含まない \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) が最適だと判断します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位換算のミス:
    • 誤解: \(72 \text{ km/h}\) を m/s に変換する際に、1000倍や3600で割る計算を間違える。特に、\(72 \div 3.6\) というショートカット計算に頼りすぎて、なぜそうなるのかを理解していないと応用が利きません。
    • 対策: \(1 \text{ km} = 1000 \text{ m}\), \(1 \text{ h} = 3600 \text{ s}\) という基本に立ち返り、\(\displaystyle\frac{72 \times 1000 \text{ [m]}}{3600 \text{ [s]}}\) のように、単位ごと置き換える形で丁寧に計算する癖をつけましょう。
  • 加速度の符号のミス:
    • 誤解: 減速運動であるにもかかわらず、加速度 \(a\) を正の値として計算を進めてしまう。
    • 対策: 最初に「進行方向を正」と決めたら、減速運動の加速度は必ず負になる、と意識します。計算結果が正になったら、どこかで符号を間違えた可能性を疑いましょう。
  • 公式の選択ミスによる遠回り:
    • 誤解: (1)で加速度を求める際に、いきなり \(v=v_0+at\) や \(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\) を使おうとして、未知数が \(a\) と \(t\) の2つになり、連立方程式を解く羽目になる。
    • 対策: 「時間 \(t\) が与えられていない(または問われていない)なら、まず \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を疑う」という思考パターンを身につけることが、時間短縮と計算ミス防止に繋がります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (1)の加速度計算:
    • 選定理由: 問題文で与えられているのは \(v_0, v, x\) で、求めたいのは \(a\)。この4つの物理量だけを含み、未知数 \(t\) を含まないこの公式が、一発で \(a\) を求めるための唯一かつ最適な選択肢です。
  • \(v = v_0 + at\) (1)の時間計算:
    • 選定理由: 加速度 \(a\) が求まったので、既知の量は \(v_0, v, a\)。求めたいのは \(t\)。これらの4つの量を含む最もシンプルな式がこれです。\(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を使っても解けますが、\(t\) の二次方程式になるため計算が煩雑になります。
  • \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) (2)の移動距離計算:
    • 選定理由: 求めたいのは \(x\)。与えられているのは \(t\)。そして \(v_0\) と \(a\) は既に分かっています。これらの4つの量を含むこの公式が最も直接的です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位換算のショートカット: \(36 \text{ km/h} = 10 \text{ m/s}\) という関係を覚えておくと便利です。\(72 \text{ km/h}\) はその2倍なので \(20 \text{ m/s}\)、\(108 \text{ km/h}\) は3倍なので \(30 \text{ m/s}\) と瞬時に変換できます。
  • 符号を括弧で囲む: 加速度 \(a\) が負の値の場合、\(x = 20 \times 5.0 + \frac{1}{2} \times (-2.0) \times 5.0^2\) のように、負の数を代入する際は必ず括弧で囲む癖をつけましょう。これにより、プラスとマイナスの計算ミスを防げます。
  • 物理的な妥当性の吟味: (2)で求めた \(75 \text{ m}\) という答えについて考えます。停車までの全時間が \(10 \text{ s}\) で全距離が \(100 \text{ m}\) です。\(t=5 \text{ s}\) は時間の半分ですが、減速運動なので前半の方が速く、進む距離も長いはずです。全距離の半分である \(50 \text{ m}\) よりも \(75 \text{ m}\) は大きいので、答えは妥当だと判断できます。

10 等加速度直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等加速度直線運動の公式の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 等加速度直線運動: 「速度の変化は一定」という記述から、物体が等加速度直線運動をしていると判断します。
  2. 等加速度直線運動の3公式: 問題で与えられた物理量と求めたい物理量に応じて、3つの公式 (\(v = v_0 + at\), \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\), \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)) を戦略的に選択することが重要です。
  3. 未知数の特定と公式選択: まず加速度 \(a\) を求め、次にその \(a\) を使って後の速度 \(v\) を求める、という2段階のプロセスを考えます。それぞれの段階で、未知数が1つだけになるように公式を選びます。
  4. 符号と向き: 直線上での運動方向を正負の符号で表し、計算結果の符号から物理的な向き(右向きか左向きか)を解釈します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、与えられている初速度 \(v_0\)、時間 \(t\)、変位 \(x\) を使って、後の速度 \(v\) を含まない公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) から加速度 \(a\) を求めます。
  2. (2) 次に、(1)で求めた加速度 \(a\) と、与えられている初速度 \(v_0\)、時間 \(t\) を使って、速度の公式 \(v = v_0 + at\) から点Bを通過したときの速度 \(v\) を求めます。

思考の道筋とポイント
この問題は、加速度と後の速度という2つの未知数を、与えられた情報から順を追って解き明かす、等加速度直線運動の典型的な問題です。
最初に注目すべきは、与えられている物理量が「初速度 \(v_0 = 18 \text{ m/s}\)」「時間 \(t = 2.0 \text{ s}\)」「変位 \(x = 30 \text{ m}\)」の3つであることです。
求めたいものは「加速度 \(a\)」と「後の速度 \(v\)」です。
まず「加速度 \(a\)」を求めることを考えます。既知の \(v_0, t, x\) と未知の \(a\) を結びつける公式は、\(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) です。この式にはもう一つの未知数である \(v\) が含まれていないため、この式を使えば \(a\) を直接求めることができます。
加速度 \(a\) が分かれば、次に「後の速度 \(v\)」を求めるのは容易です。既知となった \(v_0, a, t\) と未知の \(v\) を結びつける最も簡単な公式 \(v = v_0 + at\) を使えば、計算できます。このように、どの情報が揃っていて、どの公式を使えば未知数が1つだけの式を立てられるか、という視点で考えることが解法の鍵となります。
この設問における重要なポイント

  • 「速度の変化は一定」という言葉から、等加速度直線運動の公式が使えると判断する。
  • 与えられた情報(\(v_0, t, x\))から、まず加速度 \(a\) を求めるために \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を選択する。
  • 次に、求めた \(a\) を利用して、後の速度 \(v\) を \(v = v_0 + at\) から求める。
  • 運動の向き(右向き)を正とし、計算結果の符号から加速度や速度の向きを判断する。

具体的な解説と立式
物体の運動方向である右向きを正とします。問題文から、各物理量は以下のように整理できます。

  • 初速度(点Aでの速度): \(v_0 = +18 \text{ m/s}\)
  • 経過時間: \(t = 2.0 \text{ s}\)
  • 変位(AからBまでの距離): \(x = +30 \text{ m}\)
  • 求めるもの: 加速度 \(a\)、後の速度(点Bでの速度) \(v\)

まず、加速度 \(a\) を求めるために、変位の公式を立てます。
$$ x = v_0t + \frac{1}{2}at^2 \quad \cdots ① $$
次に、点Bでの速度 \(v\) を求めるために、速度の公式を立てます。
$$ v = v_0 + at \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\)
  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

加速度 \(a\) の計算:
式①に、\(x=30\), \(v_0=18\), \(t=2.0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
30 &= 18 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times a \times (2.0)^2 \\[2.0ex]30 &= 36 + \frac{1}{2} \times a \times 4.0 \\[2.0ex]30 &= 36 + 2.0a \\[2.0ex]2.0a &= 30 – 36 \\[2.0ex]2.0a &= -6.0 \\[2.0ex]a &= -3.0 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
計算結果が負なので、加速度の向きは正の向き(右向き)とは逆の、左向きです。

点Bでの速度 \(v\) の計算:
式②に、\(v_0=18\), \(a=-3.0\), \(t=2.0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 18 + (-3.0) \times 2.0 \\[2.0ex]&= 18 – 6.0 \\[2.0ex]&= 12 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正なので、速度の向きは右向きです。

計算方法の平易な説明

この問題は2ステップで解きます。
ステップ1:加速度を求める
もし物体が減速も加速もしなければ、速さ18m/sで2秒間進むので、\(18 \times 2 = 36\)m 進むはずです。しかし、実際には30mしか進んでいません。これは、ブレーキがかかって減速したためです。この情報から、変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を使って逆算すると、加速度が \(-3.0 \text{ m/s}^2\) であることがわかります。マイナスは、進む向きとは反対にブレーキがかかっていることを示します。

ステップ2:点Bでの速度を求める
加速度が \(-3.0 \text{ m/s}^2\) ということは、「1秒間に3.0m/sずつスピードが落ちる」ということです。今回は2.0秒経っているので、スピードは \(3.0 \times 2.0 = 6.0\)m/s だけ落ちます。初めの速さが18m/sだったので、2.0秒後の速さは \(18 – 6.0 = 12\)m/s となります。

結論と吟味

物体の加速度は左向きに \(3.0 \text{ m/s}^2\)、点Bを通過したときの速度は右向きに \(12 \text{ m/s}\) です。
初速度 \(18 \text{ m/s}\) で運動していた物体が、2秒後に \(12 \text{ m/s}\) に減速していることから、加速度が進行方向と逆向き(左向き)であるという結果は物理的に妥当です。また、もし等速で進んだ場合の距離 \(36 \text{ m}\) よりも実際の移動距離 \(30 \text{ m}\) が短いことからも、減速運動であることが確認できます。

解答 加速度:左向きに3.0m/s²,点Bを通過したときの速度:右向きに12m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 等加速度直線運動の公式の体系的理解と適用:
    • 核心: この問題は、等加速度直線運動を記述する3つの公式を、単独ではなく体系として理解し、与えられた情報から未知の物理量を段階的に解き明かしていくプロセスを正しく実行できるかを試しています。
    • 理解のポイント:
      1. 状況分析: まず、問題文から既知の物理量(\(v_0, t, x\))と未知の物理量(\(a, v\))を正確に把握します。
      2. 戦略立案: 未知数が2つあるため、一発で解くことはできません。そこで、「まず \(a\) を求め、次にその \(a\) を使って \(v\) を求める」という2段階の戦略を立てます。
      3. 公式選択: 各段階で、未知数が1つだけになるように公式を選択します。第1段階では \(v\) を含まない \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を、第2段階では \(v = v_0 + at\) を選択するのが最適です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 初速度が未知の問題: 例えば「静止していた物体が一定の加速度で動き出し、\(t\)秒後に\(x\)メートル進んだ。加速度と\(t\)秒後の速度は?」といった問題。\(v_0=0\) として同様に解くことができます。
    • 鉛直投げ下ろし: 初速度を持って真下に物体を投げる運動。進行方向(下向き)を正とすれば、初速度も重力加速度も正となり、加速運動として本問と同様の公式で扱えます。
    • 2物体の追い越し問題: 一定の速度で進むAを、後ろから等加速度運動でBが追いかける問題。それぞれの物体の位置を表す式(等速運動と等加速度運動)を立て、位置が等しくなる時刻を求める、といった応用につながります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 運動の種類の特定: 「速度の変化は一定」という記述から、「等加速度直線運動」の公式を使うことを確定させます。
    2. 既知と未知のリストアップ: \(v_0=18\), \(t=2.0\), \(x=30\), \(a=?\), \(v=?\) のように、情報を整理します。
    3. 解法のロードマップを描く: 「\(v_0, t, x\) から \(a\) を求める」→「\(v_0, t, a\) から \(v\) を求める」という計算の流れを頭の中で組み立てます。この見通しを立てる能力が重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の選択ミス:
    • 誤解: 最初に \(v=v_0+at\) や \(v^2-v_0^2=2ax\) を使おうとして、未知数が \(a\) と \(v\) の2つになってしまい、解けなくなる。
    • 対策: 常に「既知の量は何か」「未知の量は何か」を整理し、「未知数が1つだけの式」を探す癖をつけましょう。焦って手当たり次第に公式を試すのではなく、一度立ち止まって戦略を考えることが大切です。
  • 計算過程での符号ミス:
    • 誤解: \(30 = 36 + 2.0a\) の式を移項する際に、\(2.0a = 36 – 30 = 6\) と計算してしまい、加速度を正の値(\(a=3.0\))としてしまう。
    • 対策: 移項の計算は慎重に行います。また、物理的な直感も働かせましょう。「もし等速なら36m進むはずなのに、30mしか進んでいない」ということは「減速している」はずなので、加速度は負になるはずだ、と予測することでミスに気づきやすくなります。
  • 問題の要求を読み違える:
    • 誤解: 加速度 \(a\) を求めた時点で満足してしまい、点Bでの速度 \(v\) を求め忘れる。
    • 対策: 問題文の最後に「〜を求めよ」と書かれている部分に下線を引くなどして、何を答えるべきかを明確にしておきましょう。複数の問いがある場合は、一つずつ確実に答えていくことが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) (加速度の計算):
    • 選定理由: この問題で最初に加速度 \(a\) を求めるにあたり、与えられている既知の量(\(v_0, t, x\))と未知の量(\(a\))を唯一結びつける公式だからです。もう一つの未知数である後の速度 \(v\) を含んでいないため、この式だけで \(a\) を特定できます。
  • \(v = v_0 + at\) (後の速度の計算):
    • 選定理由: 加速度 \(a\) が求まった後、後の速度 \(v\) を求めるために使用します。既知の量(\(v_0, a, t\))と未知の量(\(v\))を結びつける最もシンプルな式です。\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使っても \(v\) は求められますが、2乗の計算が含まれるため、一般的には \(v=v_0+at\) の方が計算は楽です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の代入を丁寧に行う: \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) のような複雑な式では、各項を一つずつ計算してから足し合わせるとミスが減ります。例えば、\(v_0t = 18 \times 2.0 = 36\)、\(\frac{1}{2}a(2.0)^2 = 2.0a\) と計算してから、\(30 = 36 + 2.0a\) と式を立てるなど、ステップを分けるのが有効です。
  • 検算の習慣: 求めた \(a = -3.0\) と \(v = 12\) が正しいか、使わなかった公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) に代入して確かめてみましょう。
    • 左辺: \(v^2 – v_0^2 = 12^2 – 18^2 = 144 – 324 = -180\)
    • 右辺: \(2ax = 2 \times (-3.0) \times 30 = -180\)
    • 両辺が一致したので、計算は正しいと確信できます。
  • 物理的なイメージを持つ: 「初速18m/sで、加速度-3.0m/s²」とは、「最初18m/sで走り出し、1秒ごとに3m/sずつスピードが落ちていく」運動です。2秒後なら \(3 \times 2 = 6\)m/s スピードが落ちるので、\(18 – 6 = 12\)m/s となり、公式の計算結果と一致することを確認できます。

11 等加速度直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「折り返しを含む等加速度直線運動」の総合的な分析です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 等加速度直線運動の3公式: 初速度、後の速度、加速度、時間、変位の関係を表す3つの公式を、問題の状況に応じて適切に選択し、使い分ける能力が問われます。
  2. ベクトルの向きと符号: 一直線上の運動では、一方の向きを「正」と定めることで、速度や加速度、変位といったベクトル量を符号付きの数値(スカラー)として扱うことができます。特に、初速度と逆向きの速度や加速度は負の値で表現します。
  3. 運動の折り返し点: 物体が進行方向を変える点では、その瞬間の速度がゼロになります。
  4. 時間を含まない公式の活用: 時間 \(t\) が未知、あるいは不要な場合に、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) の公式が非常に有効です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、初速度、後の速度、経過時間が与えられているため、\(v = v_0 + at\) を用いて加速度を求めます。
  2. (2)では、速度が0になるという条件から、まず \(v = v_0 + at\) を用いて時刻を求め、次にその時刻を使って \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) から位置を計算します。
  3. (3)では、与えられた時刻 \(t=4.0 \text{ s}\) における位置を、\(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を用いて計算します。
  4. (4)では、特定の位置を通過するときの速度を問われており、時間が未知なため、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて計算するのが最も効率的です。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体の加速度を求める問題です。問題文には「初速度」「後の速度」「経過時間」が与えられています。これらの3つの物理量と、求めたい「加速度」を結びつける最も直接的な公式は \(v = v_0 + at\) です。ここで重要なのは、速度がベクトル量であるため、向きを符号で正しく表現することです。
この設問における重要なポイント

  • 運動の向きを正として座標軸を設定する(例:右向きを正)。
  • 初速度と逆向きの速度は、負の値として扱う。
  • 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用する。

具体的な解説と立式
右向きを正の向きとします。問題文から、各物理量は以下のように整理できます。

  • 初速度: \(v_0 = +2.0 \text{ m/s}\)
  • \(4.0 \text{ s}\) 後の速度: \(v = -8.0 \text{ m/s}\) (左向きなので負)
  • 経過時間: \(t = 4.0 \text{ s}\)

求める加速度を \(a\) として、速度の公式を立てます。
$$ v = v_0 + at $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

各値を代入して、加速度 \(a\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
-8.0 &= 2.0 + a \times 4.0 \\[2.0ex]4.0a &= -8.0 – 2.0 \\[2.0ex]4.0a &= -10.0 \\[2.0ex]a &= \frac{-10.0}{4.0} \\[2.0ex]&= -2.5 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
計算結果が負なので、加速度の向きは正の向き(右向き)とは逆の、左向きです。

計算方法の平易な説明

物体の速度は、初め「右向きに2.0m/s」だったのが、4.0秒後には「左向きに8.0m/s」に変わりました。速度の変化量は「後の速度 – 初めの速度」なので、\((-8.0) – (+2.0) = -10.0 \text{ m/s}\) となります。この速度変化が4.0秒間で起きたので、1秒あたりの変化量(加速度)は、\(-10.0 \div 4.0 = -2.5 \text{ m/s}^2\) となります。マイナスは左向きを意味します。

結論と吟味

物体の加速度は、左向きに \(2.5 \text{ m/s}^2\) です。初速度が右向きであるのに対し、加速度が左向きであるため、物体は減速してやがて静止し、その後左向きに加速していくことがわかります。これは問題の状況と一致しており、妥当な結果です。

解答 (1) 左向きに2.5m/s²

問(2)

思考の道筋とポイント
物体の速さが0になった時刻とそのときの位置を求める問題です。速さが0になるのは、物体が運動の向きを変える「折り返し点」です。まず、\(v=0\) となる条件を速度の公式 \(v = v_0 + at\) に代入して時刻 \(t\) を求めます。次に、求めた時刻 \(t\) を変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に代入して、そのときの位置 \(x\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 運動の折り返し点では、瞬間の速度 \(v=0\) となる。
  • まず時刻を求め、次にその時刻を使って位置を求める、という2段階の計算を行う。

具体的な解説と立式
時刻の計算:
速さが0になる、すなわち \(v=0\) となる時刻を \(t\) とします。速度の公式 \(v = v_0 + at\) を用います。
$$ 0 = v_0 + at \quad \cdots ① $$
位置の計算:
求めた時刻 \(t\) における位置を \(x\) とします。変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を用います。
$$ x = v_0t + \frac{1}{2}at^2 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\)
計算過程

時刻の計算:
式①に \(v_0=2.0 \text{ m/s}\), \(a=-2.5 \text{ m/s}^2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= 2.0 + (-2.5)t \\[2.0ex]2.5t &= 2.0 \\[2.0ex]t &= \frac{2.0}{2.5} = \frac{20}{25} = \frac{4}{5} \\[2.0ex]&= 0.80 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
位置の計算:
式②に \(t=0.80 \text{ s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 2.0 \times 0.80 + \frac{1}{2} \times (-2.5) \times (0.80)^2 \\[2.0ex]&= 1.60 – 1.25 \times 0.64 \\[2.0ex]&= 1.60 – 0.80 \\[2.0ex]&= 0.80 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正なので、初めの位置より右へ0.80mの位置です。

計算方法の平易な説明

(1)で、物体は1秒間に2.5m/sずつ遅くなることがわかりました。初めの速さが2.0m/sなので、速さが0になるまでの時間は \(2.0 \div 2.5 = 0.80\) 秒です。
次に、この0.80秒間にどれだけ進んだかを計算します。変位の公式に値を当てはめて計算すると、0.80mと求まります。これは、スタート地点から右に0.80m進んだ場所で一瞬止まった、ということです。

結論と吟味

物体の速さが0になるのは \(0.80 \text{ s}\) 後で、そのときの位置は初めの位置より右へ \(0.80 \text{ m}\) の位置です。

解答 (2) 時間:0.80s後,位置:初めの位置より右へ0.80mの位置

問(3)

思考の道筋とポイント
動き出してから \(4.0 \text{ s}\) 後の物体の位置を求める問題です。初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) が分かっているので、変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を使って直接計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) を適用する。
  • 各物理量の値を、符号に注意して代入する。

具体的な解説と立式
求める位置を \(x\) とします。変位の公式 \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) に、\(v_0 = 2.0 \text{ m/s}\), \(a = -2.5 \text{ m/s}^2\), \(t = 4.0 \text{ s}\) を代入する式を立てます。
$$ x = 2.0 \times 4.0 + \frac{1}{2} \times (-2.5) \times (4.0)^2 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\)
計算過程

上記の方程式を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 8.0 + \frac{1}{2} \times (-2.5) \times 16.0 \\[2.0ex]&= 8.0 – 1.25 \times 16.0 \\[2.0ex]&= 8.0 – 20.0 \\[2.0ex]&= -12 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
計算結果が負なので、初めの位置より左へ12mの位置です。

計算方法の平易な説明

4.0秒後の位置を求めます。変位の公式に、初速度2.0m/s、加速度-2.5m/s²、時間4.0sを当てはめて計算するだけです。計算すると-12mとなり、これはスタート地点よりも左側に12mの位置にいることを意味します。

結論と吟味

動き出してから \(4.0 \text{ s}\) 後の物体の位置は、初めの位置より左へ \(12 \text{ m}\) の位置です。(2)で計算した通り、物体は \(0.80 \text{ s}\) 後に折り返しているので、\(4.0 \text{ s}\) 後には出発点より左側に戻ってきているという結果は物理的に妥当です。

解答 (3) 初めの位置より左へ12mの位置

問(4)

思考の道筋とポイント
特定の「位置」を通過するときの「速さ」を求める問題です。この問題では時間が与えられていません。このような場合、時間 \(t\) を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント

  • 時間 \(t\) が未知の場合、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) が非常に有効。
  • 「左へ0.45mの位置」は、変位 \(x = -0.45 \text{ m}\) と符号で表現する。
  • 求めるのは「速さ」なので、計算で得られた速度 \(v\) の大きさ(絶対値)を答える。

具体的な解説と立式
求める速さを \(v\) とします。時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用います。
各値は以下の通りです。

  • 初速度: \(v_0 = 2.0 \text{ m/s}\)
  • 加速度: \(a = -2.5 \text{ m/s}^2\)
  • 変位: \(x = -0.45 \text{ m}\) (左向きなので負)

これらの値を公式に代入して、速度 \(v\) を計算する式を立てます。
$$ v^2 – (2.0)^2 = 2 \times (-2.5) \times (-0.45) $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の式(時間を含まない): \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
計算過程

上記の方程式を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v^2 – 4.0 &= (-5.0) \times (-0.45) \\[2.0ex]v^2 – 4.0 &= 2.25 \\[2.0ex]v^2 &= 4.0 + 2.25 \\[2.0ex]v^2 &= 6.25 \\[2.0ex]v &= \pm \sqrt{6.25} \\[2.0ex]&= \pm 2.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
物体が初めの位置より左側(\(x<0\))にいるとき、運動の向きは左向き(負)でなければなりません。したがって、\(v = -2.5 \text{ m/s}\) が適当です。
問題では「速さ」を問われているので、速度の大きさ(絶対値)を答えます。
速さ \( = |-2.5| = 2.5 \text{ [m/s]}\)

計算方法の平易な説明

スタート地点から左に0.45mの位置にいるときの速さを求めます。このとき何秒後かは分かりません。このように時間が分からない問題では、時間を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) がとても便利です。この公式に、初速度、加速度、位置(左向きなので-0.45m)を当てはめて計算すると、速さが \(2.5 \text{ m/s}\) と求まります。

結論と吟味

物体が初めの位置から左へ \(0.45 \text{ m}\) の位置を通過するときの速さは \(2.5 \text{ m/s}\) です。このとき、速度は左向きに \(2.5 \text{ m/s}\) となっており、物理的な状況と一致しています。

解答 (4) 2.5m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 等加速度直線運動の法則の完全な適用:
    • 核心: この問題は、等加速度直線運動の3つの公式を、単なる計算ツールとしてではなく、物理現象を記述するための言語として使いこなす能力を試しています。特に、速度や加速度、変位が向きを持つ「ベクトル量」であることを理解し、それを「正負の符号」で正確に表現することが、折り返しを含む複雑な運動を正しく解析するための絶対的な鍵となります。
    • 理解のポイント:
      • 符号による向きの表現: 最初に基準となる向き(例:右向き)を「正」と定めたら、すべてのベクトル量(初速度、後の速度、加速度、変位)をその基準に従って符号付けします。これにより、複雑な運動も単純な代数計算で解くことができます。
      • 折り返し点の物理的意味: 物体が進行方向を変える「折り返し点」では、その瞬間の速度が \(v=0\) になる、という物理的な条件を数式に適用できることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 鉛直投げ上げ運動: 地上からボールを投げ上げる運動は、本問と全く同じ物理モデルです。初速度が正(上向き)、加速度が負(重力加速度 \(g\))、最高点が折り返し点(\(v=0\))となります。
    • v-tグラフの作成と読解: この運動をv-tグラフで描くと、\(t=0\)で\(v=2.0\)の点から始まり、傾き\(-2.5\)で右下に下がる直線になります。グラフがt軸と交わる点が折り返し時刻、グラフとt軸で囲まれた面積が変位を表すことを利用して、問題を解くこともできます。
    • 衝突問題: 折り返してきた物体が、出発点に置かれた別の物体と衝突する時刻や速度を求める問題など、より複雑な設定に応用されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 座標軸と正の向きの設定: 問題を読み始めたら、まず「右向きを正とする」のように、座標軸の向きを自分で宣言します。これが全ての計算の土台となります。
    2. 物理量の符号付け: 問題文に出てくる「右向きに2.0m/s」「左向きに8.0m/s」といった情報を、設定した座標軸に従って \(v_0 = +2.0\), \(v = -8.0\) のように、符号付きの数値に翻訳します。
    3. 公式の戦略的選択: 各設問で「何が分かっていて、何を求めたいか」を整理し、3つの公式の中から未知数が1つだけになる最適な式を選びます。特に(4)のように「時間が分からない」状況では、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) が極めて有効です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 速度や変位の符号の付け忘れ:
    • 誤解: (1)で左向きの速度を \(v=8.0\) と正の値で代入したり、(4)で左への変位を \(x=0.45\) と正の値で代入してしまう。
    • 対策: 「右向きを正」と決めたら、機械的に「左向きは負」と変換するルールを徹底します。計算を始める前に、問題文の情報をすべて符号付きの数値に書き直す作業を行うと、ミスを大幅に減らせます。
  • \(v^2\) の解の取り扱い:
    • 誤解: (4)で \(v^2 = 6.25\) という結果から、安易に \(v=2.5\) と正の解だけを考えてしまう。
    • 対策: \(v^2 = A\) の解は常に \(v = \pm \sqrt{A}\) の2つ存在することを忘れないようにします。その上で、「物体は今どの位置にいて、どちら向きに動いているはずか?」という物理的な状況を考え、適切な解(今回は \(x<0\) の位置なので左向き、つまり負の解)を選択します。
  • 折り返しを考慮しない:
    • 誤解: 物体が単調に動き続けると錯覚し、(3)や(4)で物体の位置関係を正しくイメージできない。
    • 対策: 初速度と加速度の符号が逆の場合、物体は必ず「減速→静止(折り返し)→逆向きに加速」というプロセスをたどることを理解しておきましょう。最初に折り返し時刻を計算しておくことで、その後の運動の全体像を把握しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(v = v_0 + at\) (1)加速度:
    • 選定理由: 既知の量(\(v_0, v, t\))と未知の量(\(a\))を最もシンプルに結びつける公式だからです。
  • \(v = v_0 + at\) と \(x = v_0t + \frac{1}{2}at^2\) (2)折り返し点:
    • 選定理由: 折り返し点の物理的条件 \(v=0\) を使って、まず時刻 \(t\) を求めるために \(v=v_0+at\) を選択します。次に、その時刻 \(t\) が分かったので、それを使って位置 \(x\) を求めるために \(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\) を選択するのが、論理的で段階的な解法です。
  • \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (4)特定の変位での速度:
    • 選定理由: この設問では、特定の変位 \(x\) における速度 \(v\) が問われており、時間 \(t\) は未知です。このような「時間が絡まない」問いに対して、時間を含まないこの公式は、遠回りな計算をせずに直接答えを導き出せるため、最も強力な選択肢となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 符号を明確にする: 計算式を書く際に、\(-8.0 = 2.0 + a \times 4.0\) や \(v^2 – (2.0)^2 = 2 \times (-2.5) \times (-0.45)\) のように、負の値には括弧を付けるなどして符号を明確に意識すると、計算ミスが減ります。
  • 小数の計算は分数も活用する: \(t = 2.0/2.5\) の計算は、\(\frac{20}{25}\) に直して約分すると \(\frac{4}{5} = 0.8\) と簡単かつ正確に計算できます。
  • 平方根の計算: \(v^2 = 6.25\) のような計算では、\(6.25 = \frac{625}{100} = (\frac{25}{10})^2 = (2.5)^2\) のように、一度分数に直して考えると、平方根が \(2.5\) であることが見つけやすくなります。
  • 解の吟味: (4)で \(v=\pm 2.5\) と出たときに、物理的な状況を考えます。物体が \(x=-0.45\text{m}\) の位置にいるのは、一度右に進んで折り返してきた後なので、そのときの速度は左向き(負)のはずです。したがって、\(v=-2.5 \text{ m/s}\) が物理的に正しい速度であり、問われている「速さ」はその大きさである \(2.5 \text{ m/s}\) だ、と論理的に結論づけることができます。

12 \(v-t\) グラフ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「v-tグラフの総合的な解釈」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. v-tグラフと加速度の関係: v-tグラフの「傾き」は、物体の加速度を表します。傾きが正なら正の加速度(加速)、負なら負の加速度(減速)、0(水平)なら加速度0(等速)を意味します。
  2. v-tグラフと変位の関係: v-tグラフと時間軸(t軸)で囲まれた部分の「面積」は、物体の変位(移動距離)を表します。
  3. 速度の符号と運動の向き: v > 0 の領域は物体がx軸の正の向きに、v < 0 の領域は負の向きに運動していることを示します。
  4. 運動の折り返し点: 速度が正から負、または負から正に変わる点(v=0 となる点)は、物体が運動の向きを変える「折り返し点」です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、v-tグラフが折れ曲がる点で区間を分け、各区間のグラフの傾きを計算して加速度を求め、a-tグラフを作成します。
  2. (2)では、v-tグラフのt=0からt=6までの面積を、台形の面積公式などを用いて計算し、物体の位置を求めます。
  3. (3)では、物体が最も遠ざかるのは速度の向きが変わる直前であることに着目し、v=0となる時刻をグラフから読み取ります。その時刻までの面積が、原点から最も離れた位置になります。
  4. (4)では、t=0からt=14までの全変位を、v>0の領域の面積(正の変位)とv<0の領域の面積(負の変位)の和として計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体の運動をa-tグラフで表現する問題です。v-tグラフの傾きが加速度を表す、という基本関係を利用します。グラフの形状が変化する点(t=2, 6, 12)で区間を区切り、それぞれの区間における傾きを計算します。計算した加速度は、その区間内では一定の値をとります。
この設問における重要なポイント

  • v-tグラフの傾きは加速度 \(a\) を表す (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\))。
  • グラフが直線の区間では、加速度は一定である。
  • グラフが水平な区間では、傾きは0であり、加速度も0(等速直線運動)である。

具体的な解説と立式
v-tグラフの傾きを、グラフが変化する \(t=2, 6, 12\) を境に4つの区間で計算します。
区間 \(0 \le t < 2\):
$$ a_1 = \frac{v_{2} – v_{0}}{2 – 0} = \frac{6 – 0}{2} $$
区間 \(2 \le t < 6\):
グラフは水平なので、傾きは0です。
$$ a_2 = 0 $$
区間 \(6 \le t < 12\):
$$ a_3 = \frac{v_{12} – v_{6}}{12 – 6} = \frac{-3 – 6}{12 – 6} $$
区間 \(12 \le t \le 14\):
グラフは水平なので、傾きは0です。
$$ a_4 = 0 $$

使用した物理公式

  • 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)
計算過程

各区間の加速度を計算します。
$$ a_1 = \frac{6}{2} = 3.0 \text{ [m/s}^2] $$
$$ a_2 = 0 \text{ [m/s}^2] $$
$$ a_3 = \frac{-9}{6} = -1.5 \text{ [m/s}^2] $$
$$ a_4 = 0 \text{ [m/s}^2] $$
これらの結果を元に、縦軸に加速度 \(a\)、横軸に時刻 \(t\) をとってグラフを描きます。

計算方法の平易な説明

v-tグラフの「坂道の傾き」が加速度です。

  • 0〜2秒:2秒で速さが6m/s増えるので、傾きは \(6 \div 2 = 3\)。加速度は3.0m/s²。
  • 2〜6秒:坂道は平坦なので、傾きは0。加速度は0m/s²。
  • 6〜12秒:6秒で速さが6m/sから-3m/sへ、つまり9m/s減るので、傾きは \(-9 \div 6 = -1.5\)。加速度は-1.5m/s²。
  • 12〜14秒:坂道は再び平坦なので、傾きは0。加速度は0m/s²。

この値を各区間でグラフにします。

結論と吟味

計算した加速度の値を各区間でプロットすることで、a-tグラフが完成します。v-tグラフが上向きの直線の区間は加速度が正、下向きの直線の区間は負、水平な区間は0となり、グラフの形状と計算結果が一致しています。

解答 (1) (解説の図を参照)

問(2)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=6 \text{ s}\) における物体のx座標を求める問題です。v-tグラフとt軸で囲まれた部分の面積が、物体の変位(移動距離)を表すことを利用します。\(t=0\) で \(x=0\) なので、\(t=6 \text{ s}\) までの変位がそのままその時刻の位置座標となります。
この設問における重要なポイント

  • v-tグラフの面積は変位 \(x\) を表す。
  • 図形の面積を計算しやすい形(この場合は台形)に分割して求める。

具体的な解説と立式
求めるx座標は、\(t=0\) から \(t=6\) までのv-tグラフの面積に等しくなります。この図形は、上底が \(6-2=4\)、下底が \(6-0=6\)、高さが \(6\) の台形と見なせます。
台形の面積を求める公式を用いて、位置 \(x_6\) を計算します。
$$ x_6 = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times \text{高さ} $$

使用した物理公式

  • 変位とv-tグラフの面積の関係
計算過程

台形の面積公式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_6 &= \frac{1}{2} \times (4 + 6) \times 6 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times 10 \times 6 \\[2.0ex]&= 30 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

進んだ距離は、v-tグラフの下側の面積と同じです。t=6秒までのグラフの形は台形なので、その面積を計算します。「(上底 + 下底) × 高さ ÷ 2」の公式に当てはめると、上底は4(2秒から6秒の区間)、下底は6(0秒から6秒の区間)、高さは6m/sなので、\((4+6) \times 6 \div 2 = 30\)m となります。

結論と吟味

時刻 \(t=6 \text{ s}\) における物体のx座標は \(30 \text{ m}\) です。

解答 (2) 30m

問(3)

思考の道筋とポイント
物体が原点から最も遠ざかった時刻とそのときのx座標を求める問題です。物体は \(v>0\) の間はx軸の正の向きに進み、\(v<0\) になると負の向き(原点に戻る方向)に進みます。したがって、原点から最も遠ざかるのは、速度の向きが変わる直前、すなわち \(v=0\) となる時刻です。
この設問における重要なポイント

  • 最も遠ざかるのは、運動の向きが変わる(折り返す)とき、つまり \(v=0\) となる時刻である。
  • そのときのx座標は、\(v>0\) である全区間のv-tグラフの面積に等しい。

具体的な解説と立式
グラフから、速度 \(v\) が正から0になる時刻は \(t=10 \text{ s}\) であることが読み取れます。この時刻が、原点から最も遠ざかった時刻です。
そのときのx座標 \(x_{10}\) は、\(t=0\) から \(t=10\) までのv-tグラフの面積を計算することで求められます。この図形は、上底が \(6-2=4\)、下底が \(10-0=10\)、高さが \(6\) の台形と見なせます。
$$ x_{10} = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times \text{高さ} $$

使用した物理公式

  • 変位とv-tグラフの面積の関係
計算過程

台形の面積公式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_{10} &= \frac{1}{2} \times (4 + 10) \times 6 \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times 14 \times 6 \\[2.0ex]&= 42 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

物体が一番遠くに行くのは、右向きに進むのをやめて、左向きに進み始める瞬間です。グラフを見ると、速度がプラス(右向き)からマイナス(左向き)に変わる点は \(t=10\) 秒です。なので、10秒後が一番遠い地点にいるときです。その場所は、t=10秒までのグラフの面積を計算すればよく、計算すると42mとなります。

結論と吟味

物体が原点から最も遠ざかった時刻は \(10 \text{ s}\) で、そのときのx座標は \(42 \text{ m}\) です。

解答 (3) 時刻:10s,x座標:42m

問(4)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=14 \text{ s}\) における物体のx座標を求める問題です。これは、運動全体の総変位を求めることに相当します。(3)で求めた最も遠い位置(\(t=10 \text{ s}\) での位置)に、その後の負の変位(\(t=10 \text{ s} \sim 14 \text{ s}\) の変位)を加え合わせることで計算できます。
この設問における重要なポイント

  • v-tグラフでt軸より下の領域の面積は、負の変位を表す。
  • 最終的な位置は、正の変位と負の変位の合計(代数和)で求められる。

具体的な解説と立式
時刻 \(t=14 \text{ s}\) での位置 \(x_{14}\) は、\(t=10 \text{ s}\) での位置 \(x_{10}\) に、\(10 \text{ s} \sim 14 \text{ s}\) の間の変位 \(\Delta x_{10 \to 14}\) を加えることで求められます。
$$ x_{14} = x_{10} + \Delta x_{10 \to 14} $$
変位 \(\Delta x_{10 \to 14}\) は、\(t=10\) から \(t=14\) までのv-tグラフの面積です。この領域はt軸より下にあるため、面積は負の値となります。この図形は、上底が \(12-10=2\)、下底が \(14-10=4\)、高さが \(-3\) の台形です。
$$ \Delta x_{10 \to 14} = \frac{1}{2} \times (2 + 4) \times (-3) $$

使用した物理公式

  • 変位とv-tグラフの面積の関係
計算過程

まず、\(10 \text{ s} \sim 14 \text{ s}\) の変位を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta x_{10 \to 14} &= \frac{1}{2} \times 6 \times (-3) \\[2.0ex]&= -9 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
(3)の結果 \(x_{10} = 42 \text{ m}\) を用いて、最終的な位置を計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{14} &= 42 + (-9) \\[2.0ex]&= 33 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(3)で、10秒後に一番遠い42m地点にいることがわかりました。その後、10秒から14秒の間は、物体は左向きに戻ってきます。どれだけ戻るかは、グラフのマイナス側の部分の面積を計算すればわかります。この台形の面積は \((2+4) \times 3 \div 2 = 9\)m です。つまり、42m地点から9mだけ戻ったことになります。したがって、最終的な位置は \(42 – 9 = 33\)m となります。

結論と吟味

時刻 \(t=14 \text{ s}\) における物体のx座標は \(33 \text{ m}\) です。物体は折り返した後に \(9 \text{ m}\) だけ戻り、出発点にはまだ達していないという、物理的に妥当な結果です。

解答 (4) 33m

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • v-tグラフの二大要素:「傾き」と「面積」:
    • 核心: この問題は、v-tグラフという一つの図から、物体の運動に関する全ての情報(速度、向き、加速度、変位、位置)を読み解く能力を総合的に試しています。その根幹をなすのが、「傾きは加速度」「面積は変位」という二大原則の完全な理解です。
    • 理解のポイント:
      • 傾き \(\rightarrow\) 加速度 (\(a\)): グラフの傾きが、その時刻における物体の加速度を表します。傾きが正なら加速、負なら減速(または逆向きに加速)、0(水平)なら等速運動です。
      • 面積 \(\rightarrow\) 変位 (\(x\)): グラフと時間軸で囲まれた面積が、その時間区間での物体の位置の変化(変位)を表します。時間軸より上の面積は正の変位、下の面積は負の変位を意味します。
      • 縦軸の値 \(\rightarrow\) 速度 (\(v\)): グラフの縦軸の値そのものが、その時刻の物体の速度です。符号が運動の向き(正負)を示し、\(v=0\) となる点が運動の折り返し点です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • a-tグラフからの変換: 加速度a-tグラフが与えられ、v-tグラフやx-tグラフを作成する問題。a-tグラフの面積が速度の変化量 \(\Delta v\) を表すことを利用して、v-tグラフを段階的に描いていきます。
    • x-tグラフからの変換: x-tグラフが与えられ、v-tグラフやa-tグラフを作成する問題。x-tグラフの「接線の傾き」がその時刻の「瞬間の速度 \(v\)」になることを利用して、v-tグラフを描きます。
    • 2物体のすれ違い・追い越し: 2つの物体のv-tグラフを同一の座標軸に描き、「両者の変位が等しくなる時刻(追い越す時刻)」を面積の比較で考えたり、「両者の相対速度のグラフ」を描いてその面積から2物体間の距離の変化を考えたりする問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を絶対確認: 縦軸が \(v\) なのか \(x\) なのか \(a\) なのか。これを間違えると全てが崩壊します。
    2. 特徴的な点に印をつける: グラフが折れ曲がる点(加速度が変化する点)、頂点、t軸と交わる点(運動の折り返し点)など、運動の様子が変化する重要な点にまず注目します。
    3. 運動のストーリーを把握する: グラフ全体を眺め、「最初は加速して、次に等速で進み、その後減速して一瞬止まり、今度は逆向きに加速して、最後は等速で戻る」というように、運動の全体像を物語として捉えることで、各設問がどの部分について尋ねているのかを理解しやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • v-tグラフとx-tグラフの解釈の混同:
    • 誤解: v-tグラフが水平な部分(\(t=2 \sim 6\))を「静止している」と勘違いする。(正しくは「等速直線運動」)。v-tグラフ上で物体が静止しているのは、グラフがt軸上にある \(t=0\) と \(t=10\) の瞬間だけです。
    • 対策: 「v-tグラフの傾きは加速度、面積は変位」「x-tグラフの傾きは速度」という基本ルールを常に意識し、自問自答する習慣をつけましょう。
  • 変位と道のりの混同:
    • 誤解: (4)で \(t=14 \text{ s}\) までの「道のり(実際に動いた総距離)」を問われた場合に、変位である \(33 \text{ m}\) と答えてしまう。
    • 対策: 「変位」はスタートからゴールへのベクトル(符号あり)、「道のり」は実際に動いた距離の合計(常に正)と明確に区別します。道のりを求める場合は、t軸より下の面積も正の値として足し合わせます(この問題なら道のりは \(42 + |-9| = 51 \text{ m}\))。
  • 最も遠ざかる点の勘違い:
    • 誤解: グラフの端点である \(t=14 \text{ s}\) のときが最も遠い、あるいはグラフの山の頂点である \(t=2 \sim 6 \text{ s}\) のときが最も遠いと勘違いする。
    • 対策: 「原点から最も遠ざかる」とは、「正の方向への移動が終わり、負の方向への移動が始まる瞬間」です。これはv-tグラフ上で、速度 \(v\) が正から負に切り替わる点、すなわちグラフがt軸を横切る点(\(v=0\) となる \(t=10 \text{ s}\))に対応します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 加速度の定義式 (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (1)で加速度を求めるため。これはv-tグラフの「傾き」の定義そのものであり、グラフから加速度という物理量を抽出するための最も基本的な操作です。
  • 変位と面積の関係 (\(x = \int v dt\)):
    • 選定理由: (2), (3), (4)で位置(変位)を求めるため。v-tグラフの面積が変位を表すという関係は、運動学における積分関係の視覚的表現であり、グラフ問題を解く上での根幹をなす法則です。
    • 適用根拠: 微小時間 \(\Delta t\) の間の変位は \(\Delta x \approx v \Delta t\) であり、これはグラフ上の幅\(\Delta t\)、高さ\(v\)の微小な長方形の面積に対応します。これを全区間で足し合わせる(積分する)操作が、グラフ全体の面積を求めることに相当します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 面積計算は分割して検算: (2)や(3)の台形の面積は、三角形と長方形に分割して計算することもできます。例えば(3)の \(t=0 \sim 10\) の面積は、\(t=0 \sim 2\) の三角形(面積6)、\(t=2 \sim 6\) の長方形(面積24)、\(t=6 \sim 10\) の三角形(面積12)の和として \(6+24+12=42\) と計算できます。これは計算ミスを防ぐ良い検算方法になります。
  • 座標の読み取りは慎重に: グラフから \(v\) や \(t\) の値を読み取る際は、軸の目盛りを慎重に確認します。特に、(3)の \(t=10 \text{ s}\) や、(1)の \(v=-3 \text{ m/s}\) など、目盛り線上にない点も、グラフの直線性から正確に読み取る必要があります。
  • 負の面積の扱いに注意: (4)でt軸より下の面積を計算する際、変位を求めるなら高さは \(-3\) として計算し、面積(変位)が負の値(\(-9\))になるようにします。道のりを求めるなら、高さは \(3\) として計算します。目的によって符号の扱いが変わる点に注意が必要です。
  • 最終的な計算の確認: (4)で最終的な位置を求める際、\(42 + (-9) = 33\) のように、正の変位と負の変位の足し算を、符号を間違えずに行いましょう。

13 速度の分解

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「速度の合成と分解」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 速度の合成: 岸から見た船の速度(合成速度)は、「水に対する船の速度(静水時の速さ)」と「水の速度(川の流れ)」のベクトル和で表されます。
  2. 速度の分解: 合成された速度を、互いに直交する2つの方向(川を横切る方向と、川の流れの方向)の速度成分に分解して考えることが有効です。
  3. 言葉の定義の整理: 「船首を川岸に対して垂直な向きに向ける」とは、「水に対する船の速度」の向きが川岸に垂直であることを意味します。
  4. 三角関数: 速度ベクトルが作る直角三角形において、辺の長さ(速さ)と角度の関係を求めるために使用します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、船が川を横切る方向の運動に着目します。この方向の移動距離(川幅)と所要時間が分かっているので、川を横切る方向の速度成分を計算します。問題の条件から、これが静水時の船の速さに等しくなります。
  2. (2)では、(1)で求めた静水時の船の速さと、実際に進んだ方向の角度(60°)を用いて、三角関数の関係から川の流れの速さを計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「静水時の船の速さ」を求める問題です。問題文の「船首を川岸に対して垂直な向きに向けて進めようとした」という記述が鍵です。これは、船が自力で進もうとする方向(水に対する速度の向き)が、川岸に垂直であることを意味します。
船の運動を「川を横切る方向」と「川の流れに沿った方向」に分解して考えます。川を横切る方向の運動は、純粋に船自身の推進力によるものです。したがって、川を横切る方向の速度成分が「静水時の船の速さ」に相当します。
川の幅(移動距離)と対岸に渡るまでの時間が与えられているので、この方向の速さを計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • 「静水時の船の速さ」は、水に対する船の速さ \(\vec{v}_{\text{船,水}}\) の大きさである。
  • 「船首を川岸に垂直に向ける」とは、\(\vec{v}_{\text{船,水}}\) の向きが川岸に垂直であることを意味する。
  • 川を横切る方向の運動だけに着目し、「距離 = 速さ × 時間」の公式を適用する。

具体的な解説と立式
求める静水時の船の速さを \(v_1\) とします。これは、水に対する船の速さであり、船が川を横切る方向の速度成分です。
川を横切る方向の移動距離は、川幅 \(x = 30 \text{ m}\) です。
対岸に到達するまでにかかった時間は \(t = 5.0 \text{ s}\) です。
これらの値を、等速直線運動の公式に代入します。
$$ x = v_1 \times t $$

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
計算過程

値を代入して、\(v_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
30 &= v_1 \times 5.0 \\[2.0ex]v_1 &= \frac{30}{5.0} \\[2.0ex]&= 6.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

船は、川をまっすぐ横切る方向に進もうとしています。この方向には、30mの距離を5.0秒で進んだことになります。したがって、この方向の速さは、単純に「距離 ÷ 時間」で計算でき、\(30 \div 5.0 = 6.0 \text{ m/s}\) となります。これが、もし流れがなかったとしたら船が進む速さ、つまり「静水時の船の速さ」です。

結論と吟味

静水時の船の速さは \(6.0 \text{ m/s}\) です。

解答 (1) 6.0m/s

問(2)

思考の道筋とポイント
「川の流れの速さ」を求める問題です。船の実際の運動は、「静水時の船の速さ(川を横切る方向)」と「川の流れの速さ(川に沿った方向)」という2つの速度が合成された結果です。これらの速度ベクトルを描くと、直角三角形が形成されます。
(1)で川を横切る方向の速さ \(v_1\) が求まり、問題文で合成された速度の向き(川岸に対して60°)が与えられているので、三角関数の \(\tan\) を使って川の流れの速さ \(v_2\) を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 岸に対する船の速度(合成速度)は、水に対する船の速度と、川の流れの速度のベクトル和である。
  • これらの速度ベクトルが作る直角三角形の辺と角度の関係を、三角関数で表す。

具体的な解説と立式
求める川の流れの速さを \(v_2\) とします。
速度のベクトル図を描くと、以下の3つのベクトルで直角三角形が構成されます。

  • 静水時の船の速さ \(v_1\) (川を横切る方向、(1)で \(6.0 \text{ m/s}\) と計算済み)
  • 川の流れの速さ \(v_2\) (川に沿った方向)
  • 岸に対する船の速さ(合成速度) \(\vec{v}\) (川岸に対して60°の向き)

この直角三角形において、角度60°と、それに対する辺 \(v_1\)、隣接する辺 \(v_2\) の関係は、\(\tan\) を用いて次のように表せます。
$$ \tan 60^\circ = \frac{v_1}{v_2} $$
この式を \(v_2\) について解きます。
$$ v_2 = \frac{v_1}{\tan 60^\circ} $$

使用した物理公式

  • 三角関数の定義: \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)
計算過程

値を代入して、\(v_2\) を計算します。\(v_1 = 6.0 \text{ m/s}\), \(\tan 60^\circ = \sqrt{3}\) です。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \frac{6.0}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]&= \frac{6.0 \times \sqrt{3}}{3} \\[2.0ex]&= 2.0\sqrt{3}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
v_2 &\approx 2.0 \times 1.73 \\[2.0ex]&= 3.46 \\[2.0ex]&\approx 3.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
※模範解答では \(\tan 60^\circ = v_2/v_1\) ではなく、図の角度の取り方から \(\tan 60^\circ = v_1/v_2\) となっている点に注意。図では川岸と合成速度のなす角が60°とされているため、この立式が正しい。

計算方法の平易な説明

船の動きをベクトル(矢印)で考えてみましょう。

  • 船が自力で進む速さの矢印(まっすぐ対岸向き、長さ6.0)
  • 川が流れる速さの矢印(川下向き、長さは不明)

この2つを足し合わせた結果、船は「川岸から60°の方向」に実際に進みました。
この3つの矢印でできる直角三角形を考えると、三角比の関係から「川の流れの速さ」を計算できます。\(\tan 60^\circ\) の関係を使うと、川の流れの速さは \(6.0 \div \tan 60^\circ = 6.0 \div \sqrt{3} \approx 3.5 \text{ m/s}\) と求まります。

結論と吟味

川の流れの速さは約 \(3.5 \text{ m/s}\) です。静水時の船の速さ \(6.0 \text{ m/s}\) と合成された結果、船が斜め \(60^\circ\) に進むという状況を考えると、物理的に妥当な大きさの値です。

解答 (2) 3.5m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 速度の合成と分解の視覚的理解:
    • 核心: この問題は、2次元平面上での速度の合成を、ベクトル図を用いて正しくモデル化し、その図形的な関係から未知の量を解き明かす能力を試しています。特に、観測される運動(合成速度)を、互いに直交する2つの独立した運動(川を横切る運動と、川に沿って流される運動)に分解して考える「速度の分解」の視点が核心となります。
    • 理解のポイント:
      • 3つの速度の関係: 「岸に対する船の速度(\(\vec{v}_{\text{合成}}\))」は、「水に対する船の速度(\(\vec{v}_{\text{船,水}}\))」と「川の流れの速度(\(\vec{v}_{\text{流れ}}\))」のベクトル和で表されます。
      • 言葉とベクトルの対応: 問題文の「船首を垂直に向ける」という記述が「\(\vec{v}_{\text{船,水}}\) の向き」を、「結果として60°の方向に進んだ」という記述が「\(\vec{v}_{\text{合成}}\) の向き」を指していることを正確に読み取ることが、正しいベクトル図を描くための第一歩です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 最短距離で対岸に渡る問題: 船首を上流に向けて、合成速度が岸に垂直になるように調整する問題。ベクトル図では、静水時の速さが斜辺となり、三平方の定理が活躍します。
    • 風の中を飛ぶ飛行機: 「静水時の速さ」を「無風時の速さ」、「川の流れ」を「風の速さ」と読み替えれば、全く同じ構造の問題として解くことができます。
    • 動く歩道上の歩行: 歩道を斜めに横切る人の運動なども、同様に速度の合成・分解で解析できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まずベクトル図を描く: 2次元の速度問題は、まず図を描くことから始めます。これにより、各速度ベクトルの関係性が視覚的に明らかになります。
    2. 運動を直交する2方向に分解する: 川の問題では、「川を横切る方向」と「川に沿った方向」に分解するのが定石です。それぞれの方向について、運動の様子を独立して考えます。
    3. 時間と距離の情報が使える方向を探す: この問題では、川を横切る方向の距離(川幅30m)と時間(5.0s)が与えられています。この情報から、まずは川を横切る方向の速度成分を確定させることができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 「静水時の速さ」と「合成速度」の混同:
    • 誤解: (1)で計算した \(6.0 \text{ m/s}\) を、斜め60°に進む合成速度の大きさと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「静水時の速さ」はあくまで船が自力で出す速さ(水に対する速さ)であり、今回は川を横切る方向の成分に対応します。「合成速度」は流れの影響を受けた結果、実際に岸から見て進む速度です。この2つを明確に区別しましょう。
  • 三角関数の選択・適用の間違い:
    • 誤解: どの辺が対辺で、どの辺が底辺かを間違え、\(\sin, \cos, \tan\) の選択を誤る。例えば、\(v_2 = v_1 \tan 60^\circ\) のように、逆の計算をしてしまう。
    • 対策: 描いたベクトル図の中で、角度(60°)、分かっている辺(\(v_1\))、求めたい辺(\(v_2\))の関係を指でなぞり、「SOH CAH TOA」の定義に忠実に従います。今回は、角度60°に対して \(v_1\) が「対辺」、\(v_2\) が「底辺」にあたるため、\(\tan\) を使うのが正解です。
  • 時間の扱い:
    • 誤解: 川を渡るのにかかる時間が、川の流れの速さにも影響されると考えてしまう。
    • 対策: 運動の分解の原則に立ち返りましょう。川を横切るのにかかる時間は、川を横切る方向の距離(川幅)と、その方向の速度成分だけで決まります。川の流れは、横切る時間には影響せず、下流に流される距離にのみ影響します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 等速直線運動の公式 (\(x = vt\)):
    • 選定理由: (1)で、川を横切る方向の運動だけを抜き出して考えるため。この方向には、船は一定の速度 \(v_1\) で、一定の距離(川幅)を進むと見なせるため、最も基本的なこの公式が適用できます。
    • 適用根拠: 速度の合成・分解の考え方により、複雑な2次元の運動を、単純な1次元の運動(等速直線運動)の組み合わせとして扱うことが可能になります。
  • 三角関数の定義 (\(\tan\theta = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)):
    • 選定理由: (2)で、速度ベクトルが作る直角三角形の幾何学的な関係から、未知の辺の長さ(速さ)を求めるため。
    • 適用根拠: 速度の合成則により、互いに直交する2つの速度ベクトル(\(\vec{v}_{\text{船,水}}\) と \(\vec{v}_{\text{流れ}}\))とその合成ベクトルで直角三角形が描けます。この図形の辺の長さと角度の関係を数式で表現する最も直接的なツールが三角関数です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 有理化の徹底: \(\displaystyle\frac{6.0}{\sqrt{3}}\) のような計算が出てきた場合、まず分母を有理化して \(\displaystyle\frac{6.0\sqrt{3}}{3} = 2.0\sqrt{3}\) の形に直してから近似値計算を行うと、計算ミスを減らせます。
  • 三角比の値を覚えておく: \(\sin, \cos, \tan\) の \(30^\circ, 45^\circ, 60^\circ\) の値は即座に言えるようにしておきましょう。特に \(\tan 60^\circ = \sqrt{3}\) は頻出です。
  • ベクトル図と式の対応を確認: 自分が立てた三角関数の式が、描いたベクトル図の辺と角度の関係と本当に一致しているか、指でなぞって再確認する癖をつけましょう。
  • 有効数字の意識: 問題文の数値(30m, 5.0s)が2桁なので、答えも2桁(6.0m/s, 3.5m/s)またはそれに準ずる桁数で答えるのが適切です。計算途中の値(例: 3.46)は少し多めの桁数で保持し、最後に丸めるとより正確になります。

14 等加速度直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「記録タイマーを用いた等加速度直線運動の解析」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 記録タイマーのデータ解釈: 打点の間隔が経過時間を表します。1.0sあたり60打点の場合、1打点の間隔は \(1/60\) 秒です。
  2. 平均の速度: ある区間の移動距離を、その区間にかかった時間で割ることで求められます。
  3. 平均の速度と瞬間の速度の関係: 等加速度直線運動において、ある区間の「平均の速度」は、その区間の「中央時刻における瞬間の速度」に等しいという、極めて重要な性質があります。
  4. 等加速度直線運動の公式: 特に、速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を用いて、異なる時刻の速度から加速度を計算します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、AC間の打点数から経過時間を計算し、与えられた距離をその時間で割って平均の速度を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた平均の速度と、「平均の速度は中央時刻の瞬間の速度に等しい」という性質を利用します。
  3. (3)では、点Aと点Bの瞬間の速度と、その間の経過時間が分かっているため、\(v = v_0 + at\) を用いて加速度を計算します。
  4. (4)では、(3)で求めた加速度と点Aの速度を用いて、\(v = v_0 + at\) から点Cの速度を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
AC間の「平均の速度」を求める問題です。平均の速度を計算するには、「移動距離」と「経過時間」が必要です。移動距離は図から \(0.18 \text{ m}\) と与えられています。経過時間は、記録タイマーの打点数から計算します。
この設問における重要なポイント

  • 平均の速度 \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\text{移動距離}}{\text{経過時間}}\)。
  • 記録タイマーの打点数から経過時間を正しく計算する。1打点の間隔は \(1/60\) 秒。

具体的な解説と立式
求める平均の速度を \(\bar{v}\) とします。
AC間の移動距離は \(x = 0.18 \text{ m}\) です。
AC間の打点の間隔は6つあるので、経過時間 \(t\) は、
$$ t = 6 \times \frac{1.0}{60} $$
これらの値から、平均の速度 \(\bar{v}\) を計算する式を立てます。
$$ \bar{v} = \frac{x}{t} $$

使用した物理公式

  • 平均の速度の定義: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
計算過程

まず、経過時間 \(t\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
t &= 6 \times \frac{1.0}{60} \\[2.0ex]&= 0.10 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
次に、平均の速度 \(\bar{v}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{v} &= \frac{0.18}{0.10} \\[2.0ex]&= 1.8 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

AC間の距離は0.18mです。この間に点が6回打たれているので、かかった時間を計算します。1秒に60回点を打つので、1回の間隔は \(1/60\) 秒です。6回分なので、時間は \(6 \times (1/60) = 0.10\) 秒となります。
平均の速さは「距離 ÷ 時間」なので、\(0.18 \div 0.10 = 1.8 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

AC間の平均の速度は \(1.8 \text{ m/s}\) です。

解答 (1) 1.8m/s

問(2)

思考の道筋とポイント
点Bでの「瞬間の速度」を求める問題です。ここで、等加速度直線運動における非常に重要な性質、「ある区間の平均の速度は、その区間の中央時刻における瞬間の速度に等しい」を利用します。点Bは、区間ACのちょうど真ん中の点(中央時刻の点)です。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動では、区間の平均の速度は、中央時刻の瞬間の速度に等しい。
  • 点Bが区間ACの中央時刻の点であることを見抜く。

具体的な解説と立式
求める点Bでの瞬間の速度を \(v_B\) とします。
この運動は等加速度直線運動なので、区間ACの平均の速度 \(\bar{v}_{AC}\) は、その中央時刻における瞬間の速度に等しくなります。
点Bは、区間ACのちょうど中央の点なので、点Bを通過した時刻は区間ACの中央時刻です。
したがって、点Bでの瞬間の速度 \(v_B\) は、AC間の平均の速度 \(\bar{v}_{AC}\) に等しくなります。
$$ v_B = \bar{v}_{AC} $$
\(\bar{v}_{AC}\) は(1)で計算済みです。

使用した物理公式

  • 等加速度運動における平均の速度と瞬間の速度の関係
計算過程

(1)の結果より、\(\bar{v}_{AC} = 1.8 \text{ m/s}\) なので、
$$ v_B = 1.8 \text{ [m/s]} $$

計算方法の平易な説明

等加速度運動(だんだん速くなる、または遅くなる運動)では、ある区間の平均の速さは、その区間のど真ん中の時刻での瞬間の速さと同じになる、という便利な性質があります。点BはAとCのちょうど真ん中なので、点Bでの速さは、(1)で求めたAC間の平均の速さと同じになります。よって、答えは \(1.8 \text{ m/s}\) です。

結論と吟味

点Bでの速度は \(1.8 \text{ m/s}\) です。この性質を知っているかで、計算量が大きく変わる重要な問題です。

解答 (2) 1.8m/s

問(3)

思考の道筋とポイント
この運動の加速度を求める問題です。点Aでの速度が \(1.5 \text{ m/s}\) と与えられ、(2)で点Bでの速度が \(1.8 \text{ m/s}\) であることがわかりました。AからBまでの経過時間も打点数から計算できるため、2つの点の速度と時間が分かっている状態です。したがって、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を使って加速度を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用する。
  • 点Aを初速度、点Bを後の速度として考える。
  • AB間の経過時間を打点数から正しく計算する。

具体的な解説と立式
求める加速度を \(a\) とします。点Aでの速度を初速度 \(v_A\)、点Bでの速度を後の速度 \(v_B\) と考え、速度の公式 \(v = v_0 + at\) を適用します。
$$ v_B = v_A + at $$
各値は以下の通りです。

  • 点Aでの速度: \(v_A = 1.5 \text{ m/s}\)
  • 点Bでの速度: \(v_B = 1.8 \text{ m/s}\)
  • AB間の経過時間 \(t\): AB間は打点の間隔が3つなので、\(t = 3 \times \frac{1.0}{60} = 0.05 \text{ s}\)。

これらの値を公式に代入して、加速度 \(a\) を計算する式を立てます。
$$ 1.8 = 1.5 + a \times 0.05 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

上記の方程式を \(a\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
1.8 &= 1.5 + 0.05a \\[2.0ex]0.05a &= 1.8 – 1.5 \\[2.0ex]0.05a &= 0.3 \\[2.0ex]a &= \frac{0.3}{0.05} = \frac{30}{5} \\[2.0ex]&= 6.0 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

点Aでの速さが1.5m/s、点Bでの速さが1.8m/sとわかっています。AからBまでは点が3回打たれているので、かかった時間は \(3 \times (1/60) = 0.05\) 秒です。
つまり、この物体は「0.05秒で速さが \(1.8 – 1.5 = 0.3\)m/s 増えた」ことになります。
加速度は1秒あたりの速さの変化なので、\(0.3 \div 0.05 = 6.0 \text{ m/s}^2\) と計算できます。

結論と吟味

この運動の加速度は \(6.0 \text{ m/s}^2\) です。物体は加速しており、加速度が正の値になるのは妥当です。

解答 (3) 6.0m/s²

問(4)

思考の道筋とポイント
点Cでの速度を求める問題です。点Aでの速度(初速度)、(3)で求めた加速度、そしてAからCまでの経過時間が分かっているので、(3)と同様に速度の公式 \(v = v_0 + at\) を使って計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用する。
  • 点Aを初速度、点Cを後の速度として考える。
  • AC間の経過時間を打点数から正しく計算する。

具体的な解説と立式
求める点Cでの速度を \(v_C\) とします。点Aでの速度を初速度 \(v_A\) と考え、速度の公式 \(v = v_0 + at\) を適用します。
$$ v_C = v_A + at $$
各値は以下の通りです。

  • 点Aでの速度: \(v_A = 1.5 \text{ m/s}\)
  • 加速度: \(a = 6.0 \text{ m/s}^2\)
  • AC間の経過時間 \(t\): AC間は打点の間隔が6つなので、\(t = 6 \times \frac{1.0}{60} = 0.10 \text{ s}\)。

これらの値を公式に代入して、速度 \(v_C\) を計算する式を立てます。
$$ v_C = 1.5 + 6.0 \times 0.10 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

上記の方程式を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_C &= 1.5 + 0.60 \\[2.0ex]&= 2.1 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

点Aでの速さは1.5m/sでした。加速度は6.0m/s²なので、1秒間に6.0m/sずつ速くなります。AからCまでは0.10秒かかっているので、この間に速さは \(6.0 \times 0.10 = 0.6\)m/s だけ増えます。
したがって、点Cでの速さは、点Aでの速さにこの増加分を足して、\(1.5 + 0.6 = 2.1 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

点Cでの速度は \(2.1 \text{ m/s}\) です。点A(\(1.5 \text{ m/s}\))、点B(\(1.8 \text{ m/s}\))、点C(\(2.1 \text{ m/s}\))と、速度が \(0.3 \text{ m/s}\) ずつ等間隔で増加しており、等加速度運動の性質と一致しています。このことからも結果の妥当性が確認できます。

解答 (4) 2.1m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 平均の速度と瞬間の速度の関係性:
    • 核心: この問題は、記録タイマーのような離散的なデータから、連続的な運動である等加速度直線運動の性質をいかに引き出すかを問うています。その最も重要な鍵が、「ある区間の平均の速度は、その区間の中央時刻における瞬間の速度に等しい」という法則です。
    • 理解のポイント:
      • (1)で計算したAC間の「平均の速度」は、そのまま(2)の「点Bでの瞬間の速度」として使える、という点に気づけるかどうかが、この問題をスムーズに解くための最大のポイントです。この性質は、v-tグラフが直線になることに由来しており、記録タイマーの問題では頻繁に利用されるテクニックです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 自由落下運動の記録テープ: 物体を自由落下させ、その運動を記録タイマーで測定したテープの解析。加速度が既知(重力加速度 \(g\))であるため、各点の速度や移動距離を計算する問題に応用できます。
    • 打点テープの分割: 記録テープを数打点ごと(例:5打点ごと)に切り取り、長さを比較する問題。テープの長さがその区間の平均の速度に比例することを利用して、v-tグラフを作成したり、加速度を求めたりします。
    • 初速度が未知の問題: (3)で点Aの速度が与えられていましたが、これが未知の場合でも、例えばAB間とBC間の平均の速度をそれぞれ計算し、その差から加速度を求める、といった解法も可能です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 打点と時間の関係をまず確認: 「1.0sあたり60打点」という情報から、「1打点間隔の時間 \(\Delta t = 1/60\) s」を最初に計算し、明記しておきます。これが全ての時間計算の基礎となります。
    2. 「平均の速度」をまず計算する: 記録テープの問題では、与えられた距離と打点数から、特定の区間の「平均の速度」を計算することが解析の第一歩です。
    3. 「平均の速度 = 中央時刻の瞬間の速度」を常に意識する: 等加速度運動と明記されている場合、計算した平均の速度は、必ずその区間の中央時刻での瞬間の速度として利用できる、という視点を常に持っておきましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 打点数と時間間隔の数の混同:
    • 誤解: 6打点あるからといって、時間間隔を6つと数えてしまう。図のAからCまでは、点は7つありますが、その「間隔」は6つです。
    • 対策: 記録テープの問題では、常に「点の数」ではなく「点と点の間の数(=時間間隔の数)」を数えることを徹底しましょう。
  • 平均の速度と瞬間の速度の混同:
    • 誤解: (1)で求めたAC間の平均の速度を、点Aや点Cでの瞬間の速度だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 平均の速度はあくまで区間全体の平均であり、特定の点の瞬間の速度とは異なります(ただし、中央時刻の点Bは例外)。この区別を明確に意識することが重要です。
  • 加速度計算時の時間 \(t\) の取り違え:
    • 誤解: (3)で加速度を求める際、AからBまでの時間をAC間の時間である \(0.10 \text{ s}\) と勘違いして計算してしまう。
    • 対策: \(v=v_0+at\) の公式を使う際は、\(v\) と \(v_0\) がどの2点間の速度なのか、そして \(t\) がその2点間の経過時間であるかを、一対一で正確に対応させる必要があります。AとBの速度を使うなら、AとBの間の時間を使いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 平均の速度の定義式 (\(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (1)で、記録テープの基本的なデータ(距離と時間)から、運動の様子を表す最初の指標である「平均の速度」を計算するために使用します。これは、離散データを物理量に変換する第一歩です。
  • 平均の速度と瞬間の速度の関係:
    • 選定理由: (2)で、平均の速度という区間の情報から、点Bという特定の点の「瞬間の速度」を求めるために使用します。これは、等加速度運動の性質を利用した、公式計算をショートカットするエレガントな思考法です。
  • 等加速度直線運動の速度公式 (\(v = v_0 + at\)):
    • 選定理由: (3)と(4)で、異なる2点の瞬間の速度と、その間の経過時間、そして加速度という3つの要素の関係を調べるために使用します。2点の速度と時間が分かっていれば加速度が、初速度と加速度と時間が分かっていれば後の速度が求まる、という等加速度運動の根幹をなす公式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 時間の計算を丁寧に行う: \(t = 6 \div 60 = 0.10\) や \(t = 3 \div 60 = 0.05\) のような計算は、単純ですが焦るとミスしやすいポイントです。単位も [s] であることを確認しながら、慎重に計算しましょう。
  • 小数の割り算は分数に: (3)の \(a = 0.3 \div 0.05\) の計算は、\(\displaystyle\frac{0.3}{0.05} = \displaystyle\frac{30}{5} = 6\) のように、分母分子を100倍して整数の割り算に直すと、ミスなく確実に計算できます。
  • 一貫性の確認(検算): (4)で求めた \(v_C = 2.1 \text{ m/s}\) が正しいか、別の方法で確かめてみましょう。例えば、点Bと点Cの間で考えます。初速度は \(v_B = 1.8 \text{ m/s}\)、時間は \(0.05 \text{ s}\)、加速度は \(a=6.0 \text{ m/s}^2\) です。\(v_C = v_B + at = 1.8 + 6.0 \times 0.05 = 1.8 + 0.3 = 2.1 \text{ m/s}\) となり、計算結果が一致します。このように、異なる区間で計算しても同じ答えになることを確認するのは、非常に有効な検算方法です。

15 等加速度直線運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「実験データの表から等加速度直線運動を解析する」ことです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 実験データの解釈: 与えられた時刻と位置のデータから、区間ごとの変位や平均の速度を計算する能力が求められます。
  2. 平均の速度と瞬間の速度の関係: 等加速度直線運動では、ある区間の「平均の速度」は、その区間の「中央時刻における瞬間の速度」に等しいという性質を最大限に活用します。
  3. v-tグラフの作成と解釈: 計算した瞬間の速度をv-tグラフにプロットすると、点が一直線上に並ぶことから、等加速度直線運動であることが確認できます。
  4. 加速度と初速度の導出: v-tグラフの傾きから加速度を、グラフを \(t=0\) まで延長したときの切片から初速度を求めます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた位置のデータから、\(0.10 \text{ s}\) ごとの変位を計算します。次に、その変位を時間間隔 \(0.10 \text{ s}\) で割って、各区間の平均の速度を計算し、表を完成させます。
  2. (2)では、(1)で求めた各区間の平均の速度を、その区間の中央時刻における瞬間の速度とみなし、v-tグラフ上にプロットします。
  3. (3)では、v-tグラフの傾きを計算することで、物体の加速度を求めます。これは、隣り合う中央時刻での速度の差を、時間間隔(\(0.10 \text{ s}\))で割ることに相当します。
  4. (4)では、v-tグラフを \(t=0\) まで延長したときのy切片を求めることで、初速度を計算します。これは、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を利用して逆算することと同じです。

問(1)

思考の道筋とポイント
表の空欄を埋める問題です。2つのステップで計算します。
1. 0.1sごとの変位: 隣り合う時刻の位置の差を計算します。例えば、\(t=0 \sim 0.10 \text{ s}\) の間の変位は、\(x_{0.10} – x_{0}\) で求められます。
2. 平均の速度: 上で求めた変位を、時間間隔 \(0.10 \text{ s}\) で割ります。
この設問における重要なポイント

  • 変位 \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\)。
  • 平均の速度 \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)。

具体的な解説と立式
0.1sごとの変位の計算

  • 区間 \(0 \sim 0.10 \text{ s}\): \(\Delta x_1 = 0.057 – 0.030 = 0.027 \text{ [m]}\)
  • 区間 \(0.10 \sim 0.20 \text{ s}\): \(\Delta x_2 = 0.098 – 0.057 = 0.041 \text{ [m]}\)
  • 区間 \(0.20 \sim 0.30 \text{ s}\): \(\Delta x_3 = 0.153 – 0.098 = 0.055 \text{ [m]}\)
  • 区間 \(0.30 \sim 0.40 \text{ s}\): \(\Delta x_4 = 0.222 – 0.153 = 0.069 \text{ [m]}\)
  • 区間 \(0.40 \sim 0.50 \text{ s}\): \(\Delta x_5 = 0.305 – 0.222 = 0.083 \text{ [m]}\)

平均の速度の計算
各区間の変位を時間間隔 \(\Delta t = 0.10 \text{ s}\) で割ります。

  • 区間 \(0 \sim 0.10 \text{ s}\): \(\bar{v}_1 = \displaystyle\frac{0.027}{0.10} = 0.27 \text{ [m/s]}\)
  • 区間 \(0.10 \sim 0.20 \text{ s}\): \(\bar{v}_2 = \displaystyle\frac{0.041}{0.10} = 0.41 \text{ [m/s]}\)
  • 区間 \(0.20 \sim 0.30 \text{ s}\): \(\bar{v}_3 = \displaystyle\frac{0.055}{0.10} = 0.55 \text{ [m/s]}\)
  • 区間 \(0.30 \sim 0.40 \text{ s}\): \(\bar{v}_4 = \displaystyle\frac{0.069}{0.10} = 0.69 \text{ [m/s]}\)
  • 区間 \(0.40 \sim 0.50 \text{ s}\): \(\bar{v}_5 = \displaystyle\frac{0.083}{0.10} = 0.83 \text{ [m/s]}\)

使用した物理公式

  • 変位の定義: \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\)
  • 平均の速度の定義: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
計算過程

上記の計算を実行し、表を埋めます。

結論と吟味

計算結果をまとめた表が完成します。平均の速度が一定の割合で増加していることから、この運動が等加速度直線運動であることが示唆されます。

解答 (1) (解説の表を参照)

問(2)

思考の道筋とポイント
v-tグラフを描く問題です。ここで「平均の速度は中央時刻の瞬間の速度に等しい」という性質を使います。(1)で計算した各区間の平均の速度を、その区間の中央時刻(例:\(0 \sim 0.10 \text{ s}\) の区間なら中央時刻は \(t=0.05 \text{ s}\))における瞬間の速度としてプロットします。
この設問における重要なポイント

  • 等加速度運動では、区間の平均の速度は、中央時刻の瞬間の速度に等しい。
  • 各区間の中央時刻を正しく求める。

具体的な解説と立式
(1)で求めた平均の速度を、それぞれの中央時刻の瞬間の速度とみなします。

  • \(t=0.05 \text{ s}\) での速度 \(v_{0.05} = 0.27 \text{ m/s}\)
  • \(t=0.15 \text{ s}\) での速度 \(v_{0.15} = 0.41 \text{ m/s}\)
  • \(t=0.25 \text{ s}\) での速度 \(v_{0.25} = 0.55 \text{ m/s}\)
  • \(t=0.35 \text{ s}\) での速度 \(v_{0.35} = 0.69 \text{ m/s}\)
  • \(t=0.45 \text{ s}\) での速度 \(v_{0.45} = 0.83 \text{ m/s}\)

これらの点(時刻, 速度)をv-tグラフ上にプロットし、直線を引きます。

結論と吟味

プロットした点はほぼ一直線上に並び、この運動が等加速度直線運動であることを裏付けます。

解答 (2) (解説のグラフを参照)

問(3)

思考の道筋とポイント
物体の加速度を求める問題です。加速度はv-tグラフの傾きに等しいです。(2)でプロットした点のうち、任意の2点を選んで傾きを計算します。隣り合う2点を使うと計算が簡単です。
この設問における重要なポイント

  • 加速度はv-tグラフの傾きに等しい (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\))。
  • グラフ上の2点の座標を正確に読み取り、傾きを計算する。

具体的な解説と立式
加速度 \(a\) は、v-tグラフの傾きです。例えば、\(t=0.05 \text{ s}\) と \(t=0.15 \text{ s}\) の2点を使います。
$$ a = \frac{v_{0.15} – v_{0.05}}{0.15 – 0.05} $$

使用した物理公式

  • 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)
計算過程

値を代入して加速度 \(a\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{0.41 – 0.27}{0.10} \\[2.0ex]&= \frac{0.14}{0.10} \\[2.0ex]&= 1.4 \text{ [m/s}^2]\end{aligned}
$$
他のどの区間で計算しても、ほぼ同じ値になります(例: \((0.55-0.41)/0.10 = 1.4\))。

計算方法の平易な説明

加速度は、v-tグラフの傾きです。(1)の表を見ると、平均の速度(=瞬間の速度)は0.1秒ごとに0.14m/sずつ増えています。1秒あたりに換算するには10倍すればよいので、\(0.14 \times 10 = 1.4\) としたいところですが、これは間違いです。速度が0.14m/s増えるのにかかった時間は、中央時刻の差、つまり0.10秒です。したがって、加速度は \(0.14 \div 0.10 = 1.4 \text{ m/s}^2\) となります。

結論と吟味

物体の加速度は \(1.4 \text{ m/s}^2\) です。

解答 (3) 1.4m/s²

問(4)

思考の道筋とポイント
物体の初速度 \(v_0\)(時刻 \(t=0\) での速度)を求める問題です。これは、(2)で描いたv-tグラフを \(t=0\) まで延長したときのy切片を求めることに相当します。等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を利用し、既知の時刻の速度と加速度から逆算します。
この設問における重要なポイント

  • 初速度 \(v_0\) は、v-tグラフの \(t=0\) における切片である。
  • 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて逆算する。

具体的な解説と立式
求める初速度を \(v_0\) とします。公式 \(v = v_0 + at\) を \(v_0\) について解くと、\(v_0 = v – at\) となります。
計算には、(2)でプロットした点のうち、どれか1点を使えばよいです。例えば、最も早い時刻の点(\(t=0.05 \text{ s}\), \(v=0.27 \text{ m/s}\))を使います。
$$ v_0 = v_{0.05} – a \times 0.05 $$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

値を代入して初速度 \(v_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= 0.27 – 1.4 \times 0.05 \\[2.0ex]&= 0.27 – 0.07 \\[2.0ex]&= 0.20 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

時刻0.05秒のときの速さは0.27m/sでした。加速度は1.4m/s²なので、0.05秒間では \(1.4 \times 0.05 = 0.07\)m/s だけ速くなったはずです。ということは、スタート地点である時刻0秒のときの速さは、この分だけ遅かったはずです。したがって、初速度は \(0.27 – 0.07 = 0.20 \text{ m/s}\) となります。

結論と吟味

物体の初速度は \(0.20 \text{ m/s}\) です。この初速度と加速度 \(1.4 \text{ m/s}^2\) を使って、他の時刻の速度を検算してみることもできます。例えば、\(t=0.45 \text{ s}\) での速度は \(v = 0.20 + 1.4 \times 0.45 = 0.20 + 0.63 = 0.83 \text{ m/s}\) となり、表の値と一致します。

解答 (4) 0.20m/s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 実験データと運動法則の架け橋:「平均の速度=中央時刻の瞬間の速度」:
    • 核心: この問題のように、実験で得られる離散的な「位置と時刻」のデータから、連続的な運動法則(等加速度運動)を導き出す上で、最も強力な武器となるのが「ある区間の平均の速度は、その区間の中央時刻における瞬間の速度に等しい」という法則です。
    • 理解のポイント:
      1. データ変換: 表の位置データから、まず「区間ごとの平均の速度」を計算します。
      2. 物理的意味づけ: 次に、この「平均の速度」を「区間の中央時刻での瞬間の速度」と読み替えます。このステップにより、離散的なデータが、v-tグラフ上にプロットできる意味のある「点(時刻, 瞬間の速度)」に変換されます。
      3. 法則の抽出: プロットした点が一直線上に並ぶことから、運動が等加速度直線運動であることが視覚的に確認でき、その直線の傾き(加速度)や切片(初速度)を求めることが可能になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 記録タイマーの解析: 記録タイマーの打点テープを解析する問題は、本問と全く同じ構造です。打点の間隔が時間間隔 \(\Delta t\) に対応します。
    • 自由落下運動のデータ解析: 一定時間ごとに物体の落下位置を測定したデータから、重力加速度 \(g\) を実験的に求める問題。本問と同様の手順でv-tグラフを作成し、その傾きから \(g\) を算出します。
    • グラフの線形近似(最小二乗法): より高度な実験データの解析では、プロットした点が完全に一直線上に乗らない場合があります。その際、最もよく当てはまる直線(近似直線)を引き、その傾きから加速度を求めるという、より実践的なデータ処理に応用されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 表の構造を理解する: まず、表の各行・各列が何を表しているか(時刻、位置、変位、平均速度など)を正確に把握します。
    2. 差分を取ることから始める: 位置のデータが与えられたら、まずは隣り合うデータの差分(=変位)を計算することが、解析の第一歩です。
    3. v-tグラフの作成を試みる: データから加速度や初速度を直接計算しようとすると複雑になりがちです。まず「平均の速度=中央時刻の瞬間の速度」の性質を使ってv-tグラフを描くことで、運動の全体像が視覚的に明らかになり、傾きや切片といった物理量が求めやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 平均の速度と瞬間の速度の混同:
    • 誤解: 区間 \(0 \sim 0.10 \text{ s}\) の平均の速度 \(0.27 \text{ m/s}\) を、時刻 \(t=0\) や \(t=0.10 \text{ s}\) での瞬間の速度だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 計算した平均の速度は、あくまでその区間の中央時刻(この場合は \(t=0.05 \text{ s}\))での瞬間の速度に対応する、というルールを徹底します。
  • 加速度計算時の時間 \(\Delta t\) の誤り:
    • 誤解: (3)で、速度が \(0.14 \text{ m/s}\) 変化したことから、加速度を \(a = 0.14 / 0.05\) のように、異なる時間で割ってしまう。
    • 対策: 加速度は、速度の変化 \(\Delta v\) を、その変化が起こるのにかかった時間 \(\Delta t\) で割ったものです。v-tグラフの傾きを計算する際は、\(a = \frac{v_2 – v_1}{t_2 – t_1}\) の定義に忠実に、対応する速度と時刻のペアを正しく使う必要があります。この問題では、速度が \(0.14 \text{ m/s}\) 変化するのにかかった時間は、中央時刻の差である \(0.10 \text{ s}\) です。
  • 初速度の計算ミス:
    • 誤解: (4)で \(v_0 = v – at\) を計算する際に、\(t\) として \(0.10 \text{ s}\) などを代入してしまう。
    • 対策: この式で使う速度 \(v\) は、時刻 \(t\) における瞬間の速度です。例えば、\(v\) として \(v_{0.05} = 0.27 \text{ m/s}\) を使うなら、\(t\) も対応する \(0.05 \text{ s}\) を使わなければなりません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 平均の速度の定義式 (\(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (1)で、表の位置データという最も基本的な情報から、運動の様子を探るための第一歩として、区間ごとの平均の速度を算出するために用います。
  • 平均の速度と瞬間の速度の関係:
    • 選定理由: (2)で、区間の代表値である「平均の速度」を、グラフにプロット可能な「瞬間の速度」に変換するために不可欠な物理法則です。これにより、離散的なデータを連続的なグラフとして表現することが可能になります。
  • 加速度の定義式 (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)):
    • 選定理由: (3)で、v-tグラフの傾きとして加速度を求めるため。これは加速度の定義そのものであり、v-tグラフから加速度を読み取る際の基本操作です。
  • 等加速度直線運動の速度公式 (\(v = v_0 + at\)):
    • 選定理由: (4)で、v-tグラフ上の既知の点(時刻, 速度)と加速度 \(a\) の情報から、未知である初速度 \(v_0\)(グラフの切片)を逆算するために用います。これは、直線の式 \(y = b + mx\) から切片 \(b\) を求める操作と数学的に等価です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 表を丁寧に埋める: (1)の計算は単純な引き算と割り算の繰り返しですが、数が多いので混乱しがちです。一つずつ計算し、検算しながら丁寧に表を完成させましょう。
  • グラフを大きく正確に描く: (2)でv-tグラフを描く際は、軸に目盛りを適切に取り、各点をできるだけ正確にプロットしましょう。点が一直線上に綺麗に乗ることを確認できれば、その後の計算への自信にも繋がります。
  • 傾きの計算は離れた2点を使う: グラフの傾きを計算する際、隣り合う2点だけでなく、グラフの両端の点(例: \(t=0.05\) と \(t=0.45\))を使うと、測定誤差の影響が平均化され、より正確な傾き(加速度)が求まる場合があります。
    • 例: \(a = \frac{0.83 – 0.27}{0.45 – 0.05} = \frac{0.56}{0.40} = 1.4 \text{ [m/s}^2]\)
  • 初速度の検算: (4)で求めた \(v_0 = 0.20 \text{ m/s}\) が正しいか、別の点を使って検算してみましょう。例えば \(t=0.45 \text{ s}\) の点を使うと、\(v_0 = v_{0.45} – a \times 0.45 = 0.83 – 1.4 \times 0.45 = 0.83 – 0.63 = 0.20 \text{ m/s}\) となり、結果が一致します。
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