Step 2
248 音波の屈折
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の屈折の法則」です。音が空気中から水中へ伝わる際に、波の速さ、波長、振動数、進行方向がどのように変化するか、その関係性を問う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の屈折: 波がある媒質から性質の異なる別の媒質へ進むとき、境界面で進行方向を変える現象です。
- 屈折における不変量と変化量:
- 不変量(変わらないもの): 振動数 \(f\)。波の振動数は波源によって決まるため、媒質が変わっても変化しません。
- 変化量(変わるもの): 速さ \(v\) と波長 \(\lambda\)。これらは媒質の性質によって変化します。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
- 屈折の法則: 入射角を \(i\)、屈折角を \(r\)、それぞれの媒質での波の速さを \(v_1, v_2\)、波長を \(\lambda_1, \lambda_2\) とすると、これらの間には \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) という関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)と(2)では、屈折の際に振動数 \(f\) が不変であるという原理を用います。波の基本式 \(v=f\lambda\) から、波長 \(\lambda\) は速さ \(v\) に比例することがわかります。この関係から、波長と振動数の比を求めます。
- (3)では、屈折の法則 \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) を用いて、入射角と屈折角の正弦の比を、音速の比から計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
水中の波長が空気中の波長の何倍になるかを問う問題です。波が屈折する際に、振動数 \(f\) は変化しないという点が最も重要です。波の基本式 \(v=f\lambda\) を使うと、\(f\) が一定なので、波長 \(\lambda\) は波の速さ \(v\) に比例することがわかります。したがって、波長の比は速さの比に等しくなります。
この設問における重要なポイント
- 波が屈折するとき、振動数 \(f\) は一定である。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) より、波長 \(\lambda\) は速さ \(v\) に比例する。
具体的な解説と立式
空気中での音速と波長をそれぞれ \(v_1, \lambda_1\)、水中での音速と波長をそれぞれ \(v_2, \lambda_2\) とします。振動数 \(f\) は両方の媒質で共通です。
波の基本式より、
$$ v_1 = f \lambda_1 \quad \cdots ① $$
$$ v_2 = f \lambda_2 \quad \cdots ② $$
式②を式①で割ると、
$$ \frac{v_2}{v_1} = \frac{f \lambda_2}{f \lambda_1} = \frac{\lambda_2}{\lambda_1} $$
この式から、水中の波長 \(\lambda_2\) が空気中の波長 \(\lambda_1\) の何倍かを求めることができます。
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\lambda_1}{\lambda_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
与えられた音速 \(v_1 = 340 \, \text{m/s}\), \(v_2 = 1360 \, \text{m/s}\) を用いて、波長の比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda_2}{\lambda_1} &= \frac{v_2}{v_1} \\[2.0ex]&= \frac{1360}{340} \\[2.0ex]&= 4.00
\end{aligned}
$$
したがって、水中の波長は空気中の波長の4.00倍です。
音の高さ(振動数)は、空気中でも水中でも変わりません。波の速さは「振動数 × 波長」なので、振動数が同じなら、速さが速いほど波長は長くなります。水中の音速は空気中の音速の \(1360 \div 340 = 4\) 倍なので、水中の波長も空気中の波長の4倍になります。
水中の音波の波長は、空気中の波長の4倍です。音速が速い媒質ほど波長が長くなるという、波の性質と一致した妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
水中の振動数が空気中の振動数の何倍になるかを問う問題です。これは、波の屈折における最も基本的な原理を問う知識問題です。波の振動数は、その波を発生させる波源の振動によって決まるため、波が伝わる媒質が変わっても変化しません。
この設問における重要なポイント
- 波の振動数は、波源の振動数で決まり、媒質によらず一定である。
具体的な解説と立式
波が媒質の境界を通過するとき、境界で波が途切れたり、急に増えたりすることはありません。これは、単位時間あたりに境界に到達する波の数と、境界から出ていく波の数が等しいことを意味します。単位時間あたりの波の数が振動数 \(f\) なので、屈折の前後で振動数は変化しません。
したがって、水中の振動数 \(f_2\) と空気中の振動数 \(f_1\) の比は1となります。
$$ \frac{f_2}{f_1} = 1 $$
使用した物理公式
- 屈折における振動数不変の法則
この設問は物理法則に関する知識を問うものであり、計算は不要です。
音の「高さ」は振動数によって決まります。空気中で聞いた音も、もし水中で聞くことができれば、同じ音源から出ている限り同じ高さの音に聞こえます。つまり、振動数は変わらないので、答えは1倍です。
水中の音波の振動数は、空気中の音波の振動数の1倍です。屈折における不変量を正しく理解しているかを確認する問題です。
問(3)
思考の道筋とポイント
入射角 \(\alpha\) と屈折角 \(\beta\) の正弦(sin)の比を求める問題です。これは屈折の法則の式そのものであり、この比が媒質中での波の速さの比に等しいことを利用して計算します。
この設問における重要なポイント
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 入射角と屈折角は、境界面の法線(境界面に垂直な線)となす角である。
具体的な解説と立式
波の屈折の法則によれば、入射角 \(\alpha\) の正弦と屈折角 \(\beta\) の正弦の比は、それぞれの媒質における波の速さ \(v_1\)(空気中)と \(v_2\)(水中)の比に等しくなります。
$$ \frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_1}{v_2} $$
この式に、与えられた音速の値を代入して比を計算します。
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
与えられた値 \(v_1 = 340 \, \text{m/s}\), \(v_2 = 1360 \, \text{m/s}\) を公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} &= \frac{340}{1360} \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \\[2.0ex]&= 0.250
\end{aligned}
$$
波が媒質の境界面で曲がる角度のルールは、それぞれの媒質での「速さの比」で決まります。具体的には、「\(\sin(\text{入射角}) \div \sin(\text{屈折角})\)」の値が、「媒質1での速さ ÷ 媒質2での速さ」と等しくなります。この問題では、空気中での速さ340m/sを水中での速さ1360m/sで割ればよいので、\(340 \div 1360 = 1/4 = 0.250\) となります。
\(\sin\alpha / \sin\beta\) の値は \(0.250\) です。この値が1より小さいことから、\(\sin\alpha < \sin\beta\) であり、角度が0°から90°の範囲では \(\alpha < \beta\) となります。これは、波が速い媒質(水中)へ進むと、屈折角が入射角より大きくなるという屈折の一般的な性質と一致しており、妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の屈折の法則
- 核心: この問題は、波が異なる媒質の境界を通過する際に従う、普遍的な「屈折の法則」を多角的に理解しているかを問うています。核心となるのは、以下の3つの比がすべて等しくなるという関係性です。
$$ \frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} $$
(\(i\): 入射角, \(r\): 屈折角, \(v\): 速さ, \(\lambda\): 波長) - 理解のポイント:
- 振動数 \(f\) の不変性: この法則の根底には、屈折の前後で振動数 \(f\) が変わらないという大原則があります。
- 速さと波長の関係: \(v=f\lambda\) で \(f\) が一定なので、\(v\) と \(\lambda\) は比例します。これが \(\frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) の理由です。
- 速さと角度の関係: 波面を考えると、速い媒質ほど波は「大回り」し、遅い媒質ほど「近道」をするように進みます。これにより、速さと角度の正弦(sin)の間に比例関係が生まれます。これが \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) の理由です(ホイヘンスの原理による説明)。
- 核心: この問題は、波が異なる媒質の境界を通過する際に従う、普遍的な「屈折の法則」を多角的に理解しているかを問うています。核心となるのは、以下の3つの比がすべて等しくなるという関係性です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光の屈折と屈折率: 光の場合、媒質の性質を「屈折率 \(n\)」で表します。屈折率の定義は \(n = c/v\)(\(c\)は真空中の光速, \(v\)は媒質中の光速)であり、屈折の法則は屈折率を用いて \(n_1 \sin i = n_2 \sin r\) と表されます。これは本質的に同じ法則です。
- 全反射: 波が速い媒質から遅い媒質へ進むとき、入射角を大きくしていくと、ある角度(臨界角)で屈折角が90°になり、それ以上の入射角では波がすべて反射されてしまう現象。屈折の法則の式で \(\sin r = 1\) となる条件から臨界角を求めます。
- レンズやプリズム: レンズが光を集めたり、プリズムが光を分散させたりする原理は、すべて屈折の法則に基づいています。
- 初見の問題での着眼点:
- 媒質の境界を特定: 問題文や図から、波がどの媒質からどの媒質へ進むのかを把握します。
- 各媒質での物理量を整理: 媒質1(空気)と媒質2(水)について、わかっている物理量(\(v_1, v_2\) など)と、求めたい物理量を整理します。
- 不変量(振動数)を意識: 振動数が与えられていなくても、屈折の前後で一定であるという事実は、常に思考の前提として利用できます。
- 屈折の法則のどの部分を使うか判断:
- 波長と速さの関係を問われたら → \(\frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\)
- 角度と速さの関係を問われたら → \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\)
- 角度と波長の関係を問われたら → \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\)
というように、問題に応じて公式の適切な部分を抜き出して使います。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 振動数が変化すると勘違いする:
- 誤解: (2)で、速さが4倍になるのだから振動数も4倍になる、などと考えてしまう。
- 対策: 「振動数は波源で決まり、媒質によらない」という原則を繰り返し確認します。これは屈折における最も重要な知識の一つです。
- 屈折の法則の比の逆転:
- 誤解: \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_2}{v_1}\) のように、速さの比の分子と分母を逆にしてしまう。
- 対策: 「角度のsin」と「速さ」と「波長」は、すべて添字(1と2)が同じ側(分子か分母か)に来る、と覚えます。また、物理的なイメージとして、「速い媒質(\(v\)大)では、波は法線からより遠ざかる(角度大 \(\rightarrow \sin\)大)」という関係を理解しておくと、式の形を間違えにくくなります。
- 入射角・屈折角の定義:
- 誤解: 境界面と波の進行方向がなす角を、入射角・屈折角と勘違いする。
- 対策: 入射角・屈折角は、必ず境界面に対する法線(垂線)と進行方向とのなす角である、と定義を正確に覚えます。図に法線が描かれていない場合は、自分で描き加える習慣をつけます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 屈折の法則 \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\):
- 選定理由: この問題は、波が媒質をまたぐ際の「波長」「振動数」「角度」の変化を問うており、これらすべての関係を網羅している屈折の法則が、解析の中心となる唯一の公式です。
- 適用根拠:
- \(\frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}\) の部分: (1)で波長の比を求める際に使用。これは、振動数 \(f\) が不変であること (\(v_1=f\lambda_1, v_2=f\lambda_2\)) から直接導かれます。
- \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) の部分: (3)で角度の比を求める際に使用。これは、ホイヘンスの原理を用いて、異なる速さで進む素元波が作る共通の波面を幾何学的に作図することで導出されます。物理的には、波が境界を通過するのにかかる時間が、どの経路を通っても等しくなるという「フェルマーの原理」とも関連しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比の計算: (1)や(3)では、比を計算します。\(1360/340\) のような計算では、ゼロを消して \(136/34\) とし、\(34 \times 4 = 136\) であることに気づけば暗算できます。気づかない場合でも、筆算を丁寧に行えば問題ありません。
- 逆数を取らない: (1)で「水中の波長は空気中の何倍か」(\(\lambda_2 / \lambda_1\)) を問われているのに、うっかり \(\lambda_1 / \lambda_2\) を計算して \(1/4\) 倍と答えてしまうミスに注意します。何を何で割るのかを明確に意識します。
- 答えの物理的吟味: (3)で \(\sin\alpha / \sin\beta = 0.250 (<1)\) となりました。これは \(\alpha < \beta\) を意味し、「遅い媒質(空気)から速い媒質(水)に入ると、屈折角は入射角より大きくなる」という物理現象と一致します。このように、得られた答えが物理的に妥当かを確認する癖をつけると、ケアレスミスを発見しやすくなります。
249 音波の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「定常波」です。2つの同位相の波源から出た波が、互いに向かって進むことで干渉し、その場に止まって振動しているように見える定常波が生じる現象について問われています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定常波: 振幅や波長が等しく、互いに逆向きに進む2つの波が重なり合うことで生じる波。大きく振動する「腹」と、全く振動しない「節」が交互に並びます。
- 腹と節:
- 腹: 常に強め合いが起こる点。振幅が最大になります。
- 節: 常に弱め合いが起こる点。全く振動しません(振幅が0)。
- 定常波の構造:
- 隣り合う腹と腹の間隔は、半波長 (\(\lambda/2\))。
- 隣り合う節と節の間隔は、半波長 (\(\lambda/2\))。
- 隣り合う腹と節の間隔は、四分の一波長 (\(\lambda/4\))。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、与えられた音速と振動数から、波の基本式を用いて音波の波長を計算します。この波長が、定常波の構造を考える上での基本単位となります。
- (2)では、定常波の腹と節の間隔に関する性質を利用して、節の数を数え上げます。中点Mが腹であることから、そこから最も近い節の位置を特定し、その後は半波長ごとに節が現れることを利用して、区間内に存在する節の総数を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
音波の波長 \(\lambda\) を求める問題です。問題文に音速 \(v\) と振動数 \(f\) が与えられているので、波の基本式 \(v=f\lambda\) を使って計算します。この計算は、定常波の腹や節の間隔を具体的に求めるための準備となります。
この設問における重要なポイント
- 波の速さ、振動数、波長の関係式 \(v=f\lambda\) を正しく使うこと。
具体的な解説と立式
音速を \(v\)、振動数を \(f\)、波長を \(\lambda\) とすると、波の基本式は以下の通りです。
$$ v = f\lambda $$
この式を波長 \(\lambda\) について解くと、
$$ \lambda = \frac{v}{f} $$
となります。この式に与えられた値を代入します。
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
与えられた値 \(v = 340 \, \text{m/s}\), \(f = 680 \, \text{Hz}\) を公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{680} \\[2.0ex]&= 0.500 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
波の「速さ」は、「1秒間に送り出される波の数(振動数)」と「波1つ分の長さ(波長)」を掛け合わせたものです。今回は速さと振動数がわかっているので、波長を求めるには割り算をします。\(340 \div 680 = 0.5\) なので、波長は0.500mです。
音波の波長は \(0.500 \, \text{m}\) です。基本的な公式の適用であり、問題ありません。
問(2)
思考の道筋とポイント
AとBの間にできる定常波の節の数を数える問題です。
まず、定常波の腹と節の位置関係を理解することが重要です。
- 中点Mは、AとBからの距離が等しい(経路差が0)ため、同位相の波源からは常に強め合う波が届き、「腹」になります。
- 定常波では、腹と節は \(\lambda/4\) の間隔で交互に並びます。
- 節と節の間隔は \(\lambda/2\) です。
この性質を利用して、腹である中点Mから出発し、Aまでの区間(またはBまでの区間)にいくつの節があるかを数え、それを2倍することで全体の節の数を求めます。
この設問における重要なポイント
- 同位相の2波源の中点は「腹」になる。
- 腹と節の間隔は \(\lambda/4\)。
- 節と節の間隔は \(\lambda/2\)。
具体的な解説と立式
(1)で求めた波長は \(\lambda = 0.500 \, \text{m}\) です。
中点Mは腹です。腹とそれに最も近い節との間隔は \(\lambda/4\) なので、MからA(またはB)の方向へ \(\lambda/4\) だけ進んだ位置に最初の節があります。
$$ \text{Mから最初の節までの距離} = \frac{\lambda}{4} = \frac{0.500}{4} = 0.125 \, [\text{m}] $$
その後、節は \(\lambda/2\) の間隔で現れます。
$$ \text{節と節の間隔} = \frac{\lambda}{2} = \frac{0.500}{2} = 0.250 \, [\text{m}] $$
区間AMの長さは \(8.0 / 2 = 4.0 \, \text{m}\) です。この区間に含まれる節の数を数えます。
Mから \(x\) の距離にある点が節になる条件は、
$$ x = 0.125 + (k-1) \times 0.250 \quad (k=1, 2, 3, \dots) $$
この \(x\) が \(4.0 \, \text{m}\) を超えない最大の整数 \(k\) を見つけます。
$$ 0.125 + (k-1) \times 0.250 \le 4.0 $$
これを解くと、区間AM内の節の数がわかります。区間BMも対称なので同数です。AとBの「間」なので、A, B自身が節になるかは考慮不要です(この場合、波源は腹になります)。
使用した物理公式
- 定常波の腹と節の間隔の性質
区間AM (\(4.0 \, \text{m}\)) に含まれる節の数を数えます。
Mから最も近い節は \(0.125 \, \text{m}\) の位置にあります。
2番目の節は \(0.125 + 0.250 = 0.375 \, \text{m}\) の位置。
3番目の節は \(0.125 + 2 \times 0.250 = 0.625 \, \text{m}\) の位置。
…
n番目の節は \(0.125 + (n-1) \times 0.250\) の位置にあります。
この位置が \(4.0 \, \text{m}\) 以下である条件を考えます。
$$
\begin{aligned}
0.125 + (n-1) \times 0.250 &\le 4.0 \\[2.0ex](n-1) \times 0.250 &\le 3.875 \\[2.0ex]n-1 &\le \frac{3.875}{0.250} \\[2.0ex]n-1 &\le 15.5 \\[2.0ex]n &\le 16.5
\end{aligned}
$$
これを満たす最大の整数 \(n\) は16です。したがって、区間AM内に16個の節があります。
区間BM内にも対称性から同様に16個の節があります。
よって、AとBの間にある節の総数は、
$$ 16 + 16 = 32 \, [\text{個}] $$
まず、波長は0.5mです。
真ん中のM点は音が一番大きい「腹」です。定常波では、腹と、音が全く聞こえない「節」は交互に並んでいます。
- 腹と節の間隔は、波長の1/4。つまり \(0.5 \div 4 = 0.125\)m。
- 節と節の間隔は、波長の半分。つまり \(0.5 \div 2 = 0.25\)m。
真ん中のM点からA点までの距離は4.0mです。
Mから一番近い節は、0.125m離れた場所にあります。
そこから先は、0.25mごとに節が並びます。
区間AM(4.0m)に、この0.25m間隔の節がいくつ入るかを考えます。
最初の節を除いた残りの区間の長さは \(4.0 – 0.125 = 3.875\)m。
この長さに0.25m間隔のものがいくつ入るかは、\(3.875 \div 0.25 = 15.5\)。つまり15個入ります。
これに最初の1個を足すと、AM間に16個の節があることがわかります。
BM間も同じなので、合計で \(16 + 16 = 32\)個となります。
AとBの間に定在波の節は32個あります。定常波の構造(腹と節の間隔)を正しく理解し、数え上げることができました。計算も正確です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 定常波の構造と性質
- 核心: この問題は、逆向きに進む同じ波が干渉して生じる「定常波」の構造、特に「腹」と「節」の位置関係を理解しているかが核心です。
- 理解のポイント:
- 定常波の成り立ち: 2つの波が重なり合った結果、その場に止まって振動しているように見える波。エネルギーは伝播しません。
- 腹と節の定義:
- 腹: 常に強め合う点。振幅が最大(元の波の2倍)になる。
- 節: 常に弱め合う点。全く振動しない(振幅が0)。
- 腹と節の間隔: この幾何学的な配置が最も重要です。
- 腹と隣の腹の間隔 = \(\lambda/2\)
- 節と隣の節の間隔 = \(\lambda/2\)
- 腹と隣の節の間隔 = \(\lambda/4\)
- 波源の条件: 2つの波源が同位相の場合、その中点は経路差が0で強め合うため「腹」になります。もし逆位相なら、中点は弱め合って「節」になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 気柱の共鳴(閉管・開管): 管の中で音が反射して定常波ができる現象。
- 閉管(片方が閉じている管): 閉じた端が節、開いた端が腹となる定常波ができます。
- 開管(両端が開いている管): 両端が腹となる定常波ができます。
- 弦の振動: ギターやピアノの弦のように、両端が固定された弦を弾くと、両端が節となる定常波ができます。
- クインケ管: 音の干渉を調べる実験装置。2つの経路の長さの差(経路差)を変えることで、強め合い(大きな音)と弱め合い(小さな音)を交互に観測できます。
- 気柱の共鳴(閉管・開管): 管の中で音が反射して定常波ができる現象。
- 初見の問題での着眼点:
- 「定常波」というキーワード: 問題文に「定常波」「腹」「節」といった言葉があれば、定常波の問題であると判断します。2つの波源が向かい合っている場合や、波が固定端・自由端で反射する場合も定常波が生じます。
- 波長の計算: 定常波の腹・節の間隔を求めるには、まず波長 \(\lambda\) が必要です。\(v\) と \(f\) が与えられていれば、\( \lambda = v/f \) で計算します。
- 腹と節の位置関係の特定:
- 波源の位相や境界条件(固定端・自由端など)から、基準となる腹または節の位置を特定します。(例: 同位相波源の中点は腹、弦の固定端は節)
- その基準点から、\(\lambda/4\) や \(\lambda/2\) の間隔で他の腹や節が並んでいると考えます。
- 数え上げ: 特定の区間に含まれる腹や節の数を数えます。等差数列の考え方や、区間の長さを腹(節)の間隔で割る方法が有効です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 腹と節の間隔の混同:
- 誤解: 腹と節の間隔を \(\lambda/2\) と間違えたり、節と節の間隔を \(\lambda\) と間違えたりする。
- 対策: 定常波の波形をイメージします。1波長 \(\lambda\) の中に、腹は2つ、節は2つ(端を含めると3つ)入っています。この図から、「腹-腹」や「節-節」の間隔は半波長 \(\lambda/2\)、「腹-節」の間隔はそのさらに半分の \(\lambda/4\) であることを視覚的に覚えます。
- 節の数え上げミス:
- 誤解: 区間の長さを節の間隔 \(\lambda/2\) で単純に割ってしまい、端数の処理や最初の節の位置を考慮し忘れる。
- 対策: (2)の解説のように、まず基準点(腹M)から最も近い節の位置を求め、残りの区間の長さを節の間隔 \(\lambda/2\) で割る、という手順を踏むと確実です。あるいは、節の位置を \(x_n\) として一般式を立て、不等式で範囲を絞り込む方法も有効です。
- 波源自身を節や腹と勘違いする:
- 誤解: A点やB点そのものを節や腹として数えてしまう。
- 対策: 問題によりますが、音源(スピーカー)は通常、媒質を強制的に振動させる点であり、定常波の腹や節の厳密な定義からは外れることが多いです。この問題では「AとBとの間に」と指定されているので、A, Bの点は含めずに数えます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 定常波の腹・節の間隔の性質:
- 選定理由: (2)で節の数を数えるために、この定常波の構造に関する知識は不可欠です。定常波の問題を解くための最も基本的なツールとなります。
- 適用根拠: この性質は、逆向きに進む2つの波 \(y_1 = A\sin(\omega t – kx)\) と \(y_2 = A\sin(\omega t + kx)\) を、三角関数の和積公式を用いて合成することで導出されます。
$$ y = y_1 + y_2 = 2A\cos(kx)\sin(\omega t) $$
この式から、振幅が \(|2A\cos(kx)|\) となり、場所 \(x\) によって決まることがわかります。- 振幅が最大になる点(腹): \(\cos(kx) = \pm 1 \rightarrow kx = m\pi \rightarrow x = m\frac{\lambda}{2}\)
- 振幅がゼロになる点(節): \(\cos(kx) = 0 \rightarrow kx = (m+1/2)\pi \rightarrow x = (m+1/2)\frac{\lambda}{2}\)
これらの位置関係から、腹と腹、節と節の間隔が \(\lambda/2\)、腹と節の間隔が \(\lambda/4\) であることが数学的に示されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 波長の計算: すべての計算の基礎となる \(\lambda\) の値を間違えないように、(1)の計算は慎重に行います。
- 間隔の計算: \(\lambda/2\) や \(\lambda/4\) の値を最初に計算してメモしておくと、後の数え上げで楽になります。(\(\lambda=0.5\), \(\lambda/2=0.25\), \(\lambda/4=0.125\))
- 数え上げの検算: 例えば、AM間(4.0m)に節が16個あるという計算結果を検算します。節の間隔は0.25mなので、16個の節があれば、その間の数は15個。全体の広がりは \(15 \times 0.25 = 3.75\)m。これに、Mから最初の節までと、最後の節からAまでの「端」の部分を考慮する必要があります。この方法より、解説にあるように「区間の長さを間隔で割り、端数を処理する」方が系統的でミスが少ないです。
- 対称性の利用: この問題では、中点Mに関して左右対称なので、片側(AM間)の節の数を数えて2倍すれば済みます。この対称性に気づくと、計算の手間が半分になります。
250 クインケ管
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「クインケ管における波の干渉」です。1つの音源からの音を2つの経路に分け、再び合流させることで干渉を起こさせる装置に関する問題です。経路の長さを変えることで、強め合い・弱め合いの条件を能動的に作り出すことができます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の干渉: 2つの波が重なり合うことで、強め合ったり弱め合ったりする現象。
- 経路差: 2つの経路の長さの差。クインケ管では、可動管Bを距離 \(L\) だけ引き出すと、左側の経路が右側より \(2L\) だけ長くなるため、経路差は \(2L\) となります。
- 干渉条件:
- 強め合い(音が大きい): 経路差が波長の整数倍 (\(m\lambda\))。
- 弱め合い(音が小さい): 経路差が波長の半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\))。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係があります。
- 音速と温度: 空気の温度が上がると、空気分子の熱運動が激しくなるため、音を伝える速さ(音速)は大きくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、与えられた音速と振動数から、波の基本式を用いて音波の波長 \(\lambda\) を計算します。これが干渉条件を考える上での基準となります。
- (1)では、「初めて音が最も小さくなる」という条件から、経路差 \(2L\) が初めて弱め合いの条件を満たすとき、すなわち経路差が半波長 (\(\lambda/2\)) になるときの \(L\) を求めます。
- (2)では、「初めの音と同じ大きさになった」という条件を考えます。初めは経路差が0で強め合っていたので、再び強め合う条件、すなわち経路差 \(2L\) が波長 \(\lambda\) の整数倍になる最初の状態を考え、そのときの \(L\) を求めます。
- (3)では、室温を上げたときの物理量の変化を考えます。室温が上がると音速 \(v\) が大きくなり、振動数 \(f\) は一定なので、波長 \(\lambda\) が長くなります。その結果、弱め合いの条件を満たすための経路差 \(2L\) も大きくなるため、引き出す距離 \(L\) がどうなるかを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
可動管Bを距離 \(L\) だけ引き出したときに、「初めて音が最も小さくなる」条件を考える問題です。
まず、クインケ管の経路差を正しく理解することが重要です。可動管Bを \(L\) 引き出すと、左側のU字管部分の経路が往復で \(2L\) だけ長くなります。したがって、左右の経路差は \(2L\) となります。
「音が最も小さくなる」のは、2つの経路を通ってきた波が弱め合うときです。初めは経路差0で強め合っているので、「初めて」弱め合うのは、経路差が半波長 (\(\lambda/2\)) になったときです。
この設問における重要なポイント
- クインケ管の経路差は \(2L\) である。
- 音が最も小さくなるのは、波が弱め合うとき。
- 最初の弱め合いは、経路差が \(\lambda/2\) のとき。
具体的な解説と立式
まず、波の基本式 \(v=f\lambda\) から、音波の波長 \(\lambda\) を求めます。
$$ \lambda = \frac{v}{f} \quad \cdots ① $$
可動管Bを距離 \(L\) だけ引き出すと、左右の経路差 \(\Delta L\) は \(2L\) となります。
$$ \Delta L = 2L $$
音が最も小さくなるのは、弱め合いの干渉が起こるときです。その条件は、
$$ \Delta L = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots) $$
「初めて」音が最も小さくなるのは、\(m=0\) のとき、すなわち経路差が半波長のときです。
$$ 2L = \frac{1}{2}\lambda \quad \cdots ② $$
この式を \(L\) について解くことで、答えを求めます。
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
- 波の干渉条件(弱め合い): \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\)
式①に \(v=340 \, \text{m/s}\), \(f=1700 \, \text{Hz}\) を代入して、波長 \(\lambda\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{1700} = \frac{34}{170} = \frac{1}{5} \\[2.0ex]&= 0.200 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
式②にこの \(\lambda\) の値を代入して \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2L &= \frac{1}{2} \times 0.200 \\[2.0ex]2L &= 0.100 \\[2.0ex]L &= 0.0500 \, [\text{m}] = 5.00 \times 10^{-2} \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
管を \(L\) 引き出すと、音の通り道は往復で \(2L\) 長くなります。音が最も小さくなるのは、この \(2L\) という「回り道の長さ」が、波長の半分 (\(\lambda/2\)) になったときです。
まず波長を計算すると、\(\lambda = 340 \div 1700 = 0.2\)m。
その半分は0.1mです。
よって、\(2L = 0.1\)m という式が成り立ち、引き出す距離 \(L\) は \(0.05\)m となります。
初めて音が最も小さくなるときの引き出す距離 \(L\) は \(5.00 \times 10^{-2} \, \text{m}\) です。経路差と弱め合いの条件を正しく適用できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)の状態からさらにBを引き出し、「初めの音と同じ大きさになった」ときの \(L\) を求める問題です。「初めの音」とは、Bを押し込んだ状態(経路差0)での音であり、これは強め合いの音です。したがって、この問題は「次に音が強め合う」ときの \(L\) を求めることと同じです。
強め合いの条件は、経路差が波長の整数倍になるときです。経路差0の次に来る強め合いは、経路差が \(1\lambda\) になるときです。
この設問における重要なポイント
- 「初めの音と同じ大きさ」は、経路差0のときと同じ「強め合い」を意味する。
- 経路差0の次の強め合いは、経路差が \(1\lambda\) のとき。
具体的な解説と立式
音が強め合う条件は、経路差 \(\Delta L = 2L\) が波長の整数倍になるときです。
$$ \Delta L = m\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots) $$
初めの状態は \(L=0\) で \(m=0\) の強め合いです。
「(1)よりさらにBを引き出す」ので、次に強め合うのは \(m=1\) のときです。
$$ 2L = 1 \times \lambda $$
この式を \(L\) について解きます。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(強め合い): \(\Delta L = m\lambda\)
(1)で求めた波長 \(\lambda = 0.200 \, \text{m}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
2L &= 0.200 \\[2.0ex]L &= 0.100 \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
初めの状態(L=0)では、左右の道の長さが同じなので、音は強め合っています。再び同じように強く聞こえるのは、回り道した長さ \(2L\) がちょうど波長1つ分 (\(\lambda\)) になったときです。波長は0.2mなので、\(2L = 0.2\)m となり、引き出す距離 \(L\) は \(0.1\)m となります。
このときの \(L\) は \(0.100 \, \text{m}\) です。強め合いの条件を正しく適用できました。
問(3)
思考の道筋とポイント
室温を上げた場合、初めて音が小さくなるまでの引き出す距離 \(L\) が、(1)と比べて大きくなるか小さくなるかを問う問題です。これは、物理量がどのように連動して変化するかを考察する定性的な問題です。
- 室温が上がると、空気中の音速 \(v\) はどうなるか?
- 音速 \(v\) が変化すると、振動数 \(f\) が一定のとき、波長 \(\lambda\) はどうなるか?
- 波長 \(\lambda\) が変化すると、弱め合いの条件 \(2L = \lambda/2\) を満たす \(L\) はどうなるか?
この連鎖を順に考えます。
この設問における重要なポイント
- 温度が上がると、気体中の音速は大きくなる。
- 振動数 \(f\) は波源で決まるので一定。
- \(v=f\lambda\) より、\(v\) が大きくなれば \(\lambda\) も大きくなる。
具体的な解説と立式
1. 室温と音速の関係: 室温が上がると、空気分子の熱運動が活発になり、音波(圧力の粗密)を伝える速さ、すなわち音速 \(v\) は大きくなります。
2. 音速と波長の関係: 振動数 \(f\) は音源で決まっているので一定です。波の基本式 \(\lambda = v/f\) より、音速 \(v\) が大きくなると、波長 \(\lambda\) も大きくなります(長くなります)。
3. 波長と \(L\) の関係: (1)で求めたように、初めて音が小さくなる条件は \(2L = \lambda/2\)、すなわち \(L = \lambda/4\) です。波長 \(\lambda\) が大きくなるので、この条件を満たすために引き出す距離 \(L\) も大きくなる必要があります。
したがって、(1)のときよりも \(L\) は大きくなります。
使用した物理公式
- 音速の温度依存性
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
この設問は定性的な判断を問うものであり、具体的な計算は不要です。
部屋が暖かくなると、空気中の音は速く伝わるようになります。音の高さ(振動数)は変わらないので、速くなった分、波の1つ1つの長さ(波長)は長くなります。
音が初めて小さくなるのは、管の「回り道の長さ \(2L\)」が「波長の半分」になるときでした。その波長自体が長くなったので、その半分である「回り道の長さ」も長くする必要があり、結果として引き出す距離 \(L\) も(1)のときより大きくなります。
引き出す距離は(1)より大きくなります。温度→音速→波長→干渉条件という物理量の連鎖関係を正しく考察できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 経路差による波の干渉
- 核心: クインケ管の問題は、1つの波を2つの経路に分け、再び合流させることで干渉を起こすという点が核心です。そして、その干渉の結果(強め合い or 弱め合い)は、2つの経路の長さの差、すなわち経路差によって決まります。
- 理解のポイント:
- 経路差の作り方: クインケ管では、可動管を距離 \(L\) だけ引き出すことで、一方の経路が往復分、つまり \(2L\) だけ長くなります。この「経路差 = \(2L\)」を正しく認識することが第一歩です。
- 干渉条件の適用:
- 強め合い(音が大きい): 経路差 \(2L\) が、波長 \(\lambda\) の整数倍 (\(m\lambda\)) になるとき。初めの \(L=0\) の状態は、経路差が0で \(m=0\) の強め合いです。
- 弱め合い(音が小さい): 経路差 \(2L\) が、波長 \(\lambda\) の半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\)) になるとき。
- 「初めて」の意味: \(L=0\) から引き出していく場合、「初めて」弱め合うのは \(m=0\) の条件、「初めて(再び)強め合う」のは \(m=1\) の条件に対応します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- マイケルソン干渉計: 光の干渉を調べる装置で、1つの光源からの光をハーフミラーで2つに分け、異なる経路を通った後に再び重ね合わせます。一方の経路の長さを変えることで干渉縞が変化する様子は、クインケ管と全く同じ原理です。
- CDやDVDの読み取り: ディスクの表面にある微細な凹凸(ピット)によって、反射したレーザー光の経路差が生じます。この経路差による干渉を利用して、デジタル情報を読み取っています。
- 薄膜の干渉: シャボン玉や油膜で、膜の表面で反射する波と裏面で反射する波の経路差によって干渉が起こる現象。クインケ管は、この経路差を人工的に作り出す装置と見なせます。
- 初見の問題での着眼点:
- 装置の構造を理解: まず、波がどのように2つに分かれ、どのように合流するのか、装置の構造から経路を把握します。
- 経路差の表現: 経路長を変化させる変数(この問題では \(L\))を使って、経路差 \(\Delta L\) を正しく数式で表現します。(クインケ管なら \(\Delta L = 2L\))
- 波長の計算: 干渉条件の判断には波長 \(\lambda\) が必須です。\(v\) と \(f\) が与えられていれば、まず \(\lambda = v/f\) を計算します。
- 問題文の条件を数式化: 「音が最も小さい」「初めの音と同じ大きさ」といった言葉を、それぞれ「弱め合いの条件」「強め合いの条件」に翻訳し、数式に落とし込みます。
- 定性的な変化の考察: (3)のように条件が変わる問題では、「原因(温度上昇)→ 中間的な変化(音速・波長の変化)→ 結果(\(L\)の変化)」という因果関係を一つずつ論理的にたどります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 経路差を \(L\) と勘違いする:
- 誤解: 可動管を \(L\) 引き出したときの経路差を、そのまま \(L\) と考えてしまう。
- 対策: クインケ管の図をよく見て、音がU字管を「行って帰ってくる」ことを確認します。これにより、経路の伸びは \(L\) の2倍、つまり \(2L\) になることを理解します。
- 強め合いと弱め合いの条件の混同:
- 誤解: 経路差が整数倍で弱め合い、半整数倍で強め合い、と逆の条件を適用してしまう。
- 対策: 「経路差が0のとき、同じ波源からの波は当然強め合う」というスタート地点を思い出します。経路差0は \(m=0\) の整数倍なので、「整数倍=強め合い」と覚えられます。
- 「初めて」の解釈ミス:
- 誤解: (2)で「初めの音と同じ大きさ」を、(1)の弱め合いの状態から考えてしまい、次の弱め合いの条件(経路差 \(3\lambda/2\))を計算してしまう。
- 対策: 「初めの音」がどの状態(\(L=0\) の強め合い)を指しているのかを正確に把握します。問題文の時系列(初め → (1) → (2))を丁寧に追うことが重要です。
- 音速と温度の関係の誤解:
- 誤解: (3)で、温度が上がると音速が遅くなる、あるいは変化しないと考えてしまう。
- 対策: 気体中の音速の公式 \(v \approx 331.5 + 0.6t\)(\(t\)はセルシウス温度)を参考に、「温度が高いほど気体分子は活発に動くので、音(振動)も速く伝わる」とイメージで覚えておくのが実践的です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 干渉条件 (\(\Delta L = m\lambda\) 等):
- 選定理由: クインケ管は、経路差を人為的に作り出して干渉を観測する装置そのものです。「音が大きい・小さい」という現象は、波の干渉(強め合い・弱め合い)によって説明されるため、この条件式を用いるのが最も直接的です。
- 適用根拠: 2つの経路から来た波が点Cで重なり合うとき、その位相差は経路差 \(\Delta L\) に比例します。位相が揃えば(位相差が \(2\pi\) の整数倍)強め合い、位相が半周期ずれていれば(位相差が \(\pi\) の奇数倍)弱め合います。この位相差の条件を経路差で表現したものが、干渉の条件式です。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\):
- 選定理由: 干渉条件を適用するには、基準となる波長 \(\lambda\) の値が必要です。問題文には \(v\) と \(f\) が与えられているため、この公式を使って \(\lambda\) を算出する必要があります。
- 適用根拠: 波の速さ、振動数、波長という3つの基本量を結びつける定義式であり、波に関するあらゆる問題の出発点となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 波長の計算: \(340/1700\) の計算は、ゼロを2つ消して \(34/17 = 2\)、残りのゼロを考慮して \(0.2\) と素早く計算できます。
- \(2L\) と \(L\) の混同: 弱め合いの条件式 \(2L = \lambda/2\) を立てた後、求まった値を \(L\) の値と勘違いしないように注意します。\(L = \lambda/4\) と、最後まで式変形を怠らないことが重要です。
- 定性問題の思考プロセス: (3)のような問題では、「温度↑ → 音速 \(v\)↑ → 波長 \(\lambda=v/f\)↑ → 弱め合いの経路差 \(\lambda/2\)↑ → 引き出す距離 \(L=\lambda/4\)↑」のように、矢印(→)を使って論理の連鎖を書き出すと、思考が整理され、結論を導きやすくなります。
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