「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 16】Step 2

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Step 2

236 正弦波を表す式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「正弦波の式の導出と進行方向による式の変化」です。媒質の一点(原点)の単振動の様子から、波全体の動きを表す式を構築するプロセスを段階的に学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 単振動の変位の式: \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\) と初期条件。
  2. 波の伝播の原理: 位置\(x\)の振動は、原点の振動が時間\(\Delta t = \displaystyle\frac{x}{v}\)だけ遅れて(または進んで)伝わったものである。
  3. 波の進行方向と式の関係: 波の式の位相部分における、時間項と位置項の間の符号が進行方向を決定する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 原点の媒質の初期条件(\(t=0\)での位置と速度の向き)から、適切な単振動の式を立てます。
  2. (2), (3) 角振動数\(\omega\)と周期\(T\)の関係を用いて、(1)の式を周期\(T\)を使った形に書き換えます。
  3. (4) 波が距離\(x\)を伝わるのにかかる時間(時間の遅れ)を計算します。
  4. (5) 波の伝播の原理に基づき、(3)の原点の式と(4)の時間差を使って、\(x\)軸正方向に進む波の式を導出します。
  5. (6) 正方向に進む波の式との対比から、負方向に進む波の式がどうなるかを考えます。

問(1)

思考の道筋とポイント
原点(\(x=0\))にある媒質の運動は単振動です。問題文で与えられた初期条件「時刻\(t=0\)に振動の中心を上向きに通過した」をもとに、単振動の一般式 \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\) から、この運動に合致する具体的な式を決定します。
この設問における重要なポイント

  • 単振動の変位は \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\) で表される。
  • 初期条件(\(t=0\)での変位\(y\)と速度\(v_y\))を用いて、初期位相\(\phi_0\)を決定する。

具体的な解説と立式
単振動の一般式は \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\) です。

初期条件は、時刻 \(t=0\) において、

  1. 変位が \(y=0\) (振動の中心)
  2. 速度が正の向き(上向き)

です。

まず、条件1を式に代入します。
$$ y(0) = A \sin(\omega \cdot 0 + \phi_0) = A \sin \phi_0 = 0 $$
これを満たす\(\phi_0\)は \(0\) または \(\pi\) です。

次に、条件2を吟味するために、速度\(v_y\)の式を求めます。
$$ v_y = \frac{dy}{dt} = A\omega \cos(\omega t + \phi_0) $$
時刻 \(t=0\) での速度は、
$$ v_y(0) = A\omega \cos(\omega \cdot 0 + \phi_0) = A\omega \cos \phi_0 $$
条件2より \(v_y(0) > 0\) である必要があります。\(A>0, \omega>0\) なので、\(\cos \phi_0 > 0\) でなければなりません。

\(\phi_0=0\) のとき \(\cos 0 = 1 > 0\)。

\(\phi_0=\pi\) のとき \(\cos \pi = -1 < 0\)。

したがって、条件を満たす初期位相は \(\phi_0=0\) です。

これを一般式に戻すと、原点の変位を表す式が得られます。
$$ y = A \sin(\omega t + 0) = A \sin \omega t $$

使用した物理公式

  • 単振動の変位: \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\)
  • 単振動の速度: \(v_y = A\omega \cos(\omega t + \phi_0)\)
計算過程

この設問は、物理的な条件から式を決定するものであり、数値計算は不要です。上記の立式プロセスが計算過程に相当します。

計算方法の平易な説明

原点の動きは、\(t=0\)で位置が0、そこからプラスの方向へ動く、というものです。これは三角関数のサインカーブ(\(y=\sin \theta\))の原点付近の動きと全く同じです。したがって、式の形は \(A \sin(\dots)\) となります。時間とともに振動するので、\(\sin\)の中身は\(\omega t\)となります。よって、式は \(y = A \sin \omega t\) となります。

結論と吟味

得られた式 \(y = A \sin \omega t\) は、\(t=0\)で\(y=0\)、かつそのときの速度が正となり、問題の条件を正しく満たしています。

解答 (1) \(y = A \sin \omega t\)

問(2)

思考の道筋とポイント
角振動数\(\omega\)と周期\(T\)の定義関係を答える問題です。これらの物理量が何を意味しているかを理解していれば即答できます。
この設問における重要なポイント

  • 周期\(T\): 1回の振動にかかる時間。
  • 角振動数\(\omega\): 振動の速さを角度の変化率(ラジアン/秒)で表したもの。

具体的な解説と立式
単振動は等速円運動の正射影と見なせます。等速円運動では、1回転(\(2\pi\)ラジアン)するのにかかる時間が周期\(T\)です。角振動数(角速度)\(\omega\)は単位時間あたりに回転する角度なので、
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} $$
という関係が成り立ちます。

使用した物理公式

  • 角振動数と周期の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
計算過程

この設問は定義を問うものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

角振動数\(\omega\)は「1秒あたりに進む角度」です。1周(\(2\pi\))するのに\(T\)秒かかるので、「速さ=距離÷時間」の関係から、\(\omega = \frac{2\pi}{T}\)となります。

結論と吟味

これは角振動数と周期の定義式そのものであり、物理的に正しい関係です。

解答 (2) \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた原点の変位の式を、(2)の関係式を使って、角振動数\(\omega\)の代わりに周期\(T\)を用いて表す問題です。単純な文字の置き換えです。
この設問における重要なポイント

  • 物理的な意味は同じでも、用いるパラメータによって式の見た目が変わることを理解する。

具体的な解説と立式
(1)で求めた原点の変位の式は、
$$ y = A \sin \omega t \quad \cdots ① $$
(2)で確認した関係式は、
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} \quad \cdots ② $$
式②を式①に代入します。

使用した物理公式

  • 特になし(式の代入のみ)
計算過程

$$
\begin{aligned}
y &= A \sin \omega t \\[2.0ex]&= A \sin \left( \frac{2\pi}{T} t \right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)の答え \(y = A \sin \omega t\) の中の文字\(\omega\)を、(2)の答え \(\frac{2\pi}{T}\) に入れ替えるだけです。

結論と吟味

原点の変位の式が、振幅\(A\)、周期\(T\)、時刻\(t\)という、より観測しやすい量で表現されました。

解答 (3) \(y = A \sin \displaystyle\frac{2\pi}{T} t\)

問(4)

思考の道筋とポイント
波が原点から位置\(x\)まで伝わるのに要する時間を求める問題です。波は一定の速さ\(v\)で進むことを利用します。
この設問における重要なポイント

  • 波は形を保ったまま、一定の速さ\(v\)で伝播する。
  • 速さ、距離、時間の関係を正しく使う。

具体的な解説と立式
波が進む距離は\(x\)、波の速さは\(v\)です。「時間 = 距離 ÷ 速さ」という基本的な関係から、波が原点から位置\(x\)まで到達するのにかかる時間\(\Delta t\)は、
$$ \Delta t = \frac{x}{v} $$
と求められます。この時間は、位置\(x\)の媒質の振動が、原点の媒質の振動よりどれだけ遅れるかを表しています。

使用した物理公式

  • 時間・距離・速さの関係: \(t = \displaystyle\frac{d}{v}\)
計算過程

この設問は公式を適用するものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

小学校で習う「時間=道のり÷速さ」の公式を使います。道のりが\(x\)、速さが\(v\)なので、かかる時間は\(\frac{x}{v}\)です。

結論と吟味

この時間は、次の(5)で波の式を立てるための重要な要素「時間の遅れ」となります。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{x}{v}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
いよいよ波の式を導出します。位置\(x\)における時刻\(t\)の変位は、原点でのある過去の時刻の変位と同じである、という波の伝播の原理を使います。
この設問における重要なポイント

  • 波の伝播の原理: \(y(x, t) = y(0, t – \Delta t)\)
  • 位置\(x\)の振動は、原点の振動が時間\(\Delta t = \frac{x}{v}\)だけ遅れて再現されたものである。

具体的な解説と立式
位置\(x\)にある媒質の時刻\(t\)における変位\(y(x,t)\)を考えます。

この振動は、原点で発生した振動が、(4)で求めた時間 \(\Delta t = \frac{x}{v}\) だけ遅れて位置\(x\)に到達したものです。

したがって、時刻\(t\)における位置\(x\)の変位は、原点における \(t\) よりも \(\frac{x}{v}\) だけ前の時刻、すなわち \(t’ = t – \frac{x}{v}\) の変位と等しくなります。

原点の変位の式は(3)で求めた \(y(0, t) = A \sin \frac{2\pi}{T} t\) です。

この式の時刻\(t\)を、過去の時刻 \(t’ = t – \frac{x}{v}\) に置き換えることで、位置\(x\)の変位の式が得られます。
$$ y(x, t) = y(0, t – \frac{x}{v}) = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{v} \right) $$

使用した物理公式

  • 波の伝播の原理
計算過程

(3)の式 \(y = A \sin \frac{2\pi}{T} t\) の \(t\) を \(t – \frac{x}{v}\) に置き換えます。
$$
\begin{aligned}
y = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{v} \right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

位置\(x\)での揺れは、原点での揺れを録画して、(4)で求めた\(\frac{x}{v}\)秒だけ遅れて再生したものと同じです。数式で「時間を遅らせる」には、時刻\(t\)を \(t – (\text{遅れる時間})\) に書き換えればよいのです。したがって、(3)の式の\(t\)を\(t – \frac{x}{v}\)に置き換えます。

結論と吟味

得られた式は、\(x\)軸正方向に速さ\(v\)で進む正弦波を表す一般的な式です。\(t\)と\(x\)の項の符号が異なる(一方がプラス、一方がマイナス)ことが、正方向への進行を示しています。

解答 (5) \(y = A \sin \displaystyle\frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{v} \right)\)

問(6)

思考の道筋とポイント
波の進行方向が逆(\(x\)軸の負の向き)になった場合、(5)で求めた式がどのように変化するかを考えます。進行方向と式の符号の関係が鍵となります。
この設問における重要なポイント

  • 波が\(x\)軸の負の向きに進む場合、位置\(x\)の振動は、原点の振動が時間\(\frac{x}{v}\)だけ「進んで」いると解釈できる。
  • 数式上では、\(t\)と\(x\)の項が同符号になる。

具体的な解説と立式
波が\(x\)軸の負の向きに速さ\(v\)で進む場合を考えます。

位置\(x\)(\(x>0\)とします)の媒質の振動は、原点の振動とどう関係するでしょうか。

この波は\(x\)の大きい方から小さい方へ進むので、位置\(x\)での振動は、原点よりも先に起こります。

別の考え方をすると、時刻\(t\)に位置\(x\)にある波は、これから時間 \(\Delta t = \frac{x}{v}\) だけ経った未来の時刻 \(t’ = t + \frac{x}{v}\) に原点に到達する波と同じ状態です。

したがって、位置\(x\)の時刻\(t\)での変位は、原点での未来の時刻 \(t’ = t + \frac{x}{v}\) での変位に等しくなります。
$$ y(x, t) = y(0, t + \frac{x}{v}) $$
(3)で求めた原点の式 \(y(0, t) = A \sin \frac{2\pi}{T} t\) の \(t\) を \(t + \frac{x}{v}\) に置き換えます。
$$ y = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x}{v} \right) $$

使用した物理公式

  • 負の向きに進む波の伝播の原理
計算過程

(5)の式の導出と同様に、(3)の式の \(t\) を \(t + \frac{x}{v}\) に置き換えます。
$$
\begin{aligned}
y = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x}{v} \right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

波の進行方向が逆になると、式のプラス・マイナスが逆になります。(5)の式では、括弧の中が \(t – \frac{x}{v}\) という引き算でした。負の向きに進む場合は、ここが \(t + \frac{x}{v}\) という足し算に変わります。進行方向が正なら異符号、負なら同符号、と覚えておくと便利です。

結論と吟味

得られた式は、\(x\)軸負方向に速さ\(v\)で進む正弦波を表す式です。\(t\)と\(x\)の項の符号が同じ(両方プラス)であることが、負方向への進行を示しており、(5)の式と良い対比になっています。

解答 (6) \(y = A \sin \displaystyle\frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x}{v} \right)\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の式の構築プロセス
    • 核心: 波の式は、①基準点の単振動の式を決定し、②波の伝播による時間差を考慮する、という2段階のプロセスで構築されることを理解するのが最も重要です。
    • 理解のポイント:
      1. 基準点の振動の特定: (1)のように、まず原点(\(x=0\))の媒質の動きに注目します。問題文の初期条件(\(t=0\)での変位と速度の向き)から、単振動の一般式 \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\) の初期位相\(\phi_0\)を決定します。今回は \(y=A \sin \omega t\) となりました。
      2. 時間差の導入: (4),(5)のように、次に波の伝播を考えます。位置\(x\)での振動は、原点の振動が時間 \(\Delta t = \frac{x}{v}\) だけ「遅れて」伝わったものです。この「時間の遅れ」を数式に反映させるため、基準点の式の時刻\(t\)を \(t – \frac{x}{v}\) に置き換えます。
  • 進行方向と式の符号の関係
    • 核心: 波の式 \(y = A \sin(\dots)\) の中身(位相)における、時間項(\(t\)の項)と位置項(\(x\)の項)の間の符号が、波の進行方向を決定します。
    • 理解のポイント:
      • 正の向きに進む波: \(y = A \sin \frac{2\pi}{T} (t – \frac{x}{v})\)。時間項 \(t\) と位置項 \(-\frac{x}{v}\) は異符号です。
      • 負の向きに進む波: \(y = A \sin \frac{2\pi}{T} (t + \frac{x}{v})\)。時間項 \(t\) と位置項 \(+\frac{x}{v}\) は同符号です。
    • 結論: このルールは非常に強力で、式を一目見るだけで波の進行方向を即座に判断できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 異なる初期条件: (1)で「\(t=0\)に振動の中心を下向きに通過」とあれば、初期速度が負なので \(\phi_0=\pi\) となり、原点の式は \(y = A \sin(\omega t + \pi) = -A \sin \omega t\) となります。
    • \(t=0\)で最大変位: 「\(t=0\)に正の最大変位(\(y=A\))」であれば、初期条件は \(y(0)=A\)。これは \(y = A \cos \omega t\) で表されます。この場合、波の式は \(y = A \cos \frac{2\pi}{T}(t – \frac{x}{v})\) となります。
    • \(y-x\)グラフからの立式: ある時刻\(t=0\)の波形グラフが与えられ、そこから波の式を立てる問題。グラフから波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を読み取り、\(t=0, x=0\)での変位と傾きから初期位相を判断し、\(y = A \sin(\frac{2\pi}{\lambda}x + \phi_0)\) のような空間の式をまず立て、そこに時間の進行 \(y = A \sin(\frac{2\pi}{\lambda}(x-vt) + \phi_0)\) を組み込みます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まず原点(\(x=0\))の動きを確定させる: 問題文から、原点の媒質の初期条件(\(t=0\)での\(y\)と\(v_y\))を正確に読み取り、\(y(0,t)\)の式を確定させることが全ての出発点です。
    2. 波の進行方向を確認する: 問題文が「正の向き」か「負の向き」かを必ず確認します。これにより、(5)と(6)のように、式の符号(\(t-x/v\)か\(t+x/v\)か)が決まります。
    3. 求められている式のパラメータを確認する: (3)のように「\(A, T, t\)で表せ」など、どの文字を使って答えるべきか指示されている場合は、\(\omega = 2\pi/T\) や \(v=\lambda/T\) などの関係式を使って、不要な文字を消去する作業が必要になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 初期位相の決定ミス:
    • 誤解: (1)で \(y(0)=0\) という条件だけで、安易に \(\phi_0=0\) と決めてしまう。
    • 対策: \(y(0)=0\) を満たす\(\phi_0\)は \(0\) と \(\pi\) の2つ可能性があります。必ず速度の向き(\(v_y(0)\)の符号)もチェックし、どちらが正しいかを絞り込む習慣をつけましょう。\(y=\sin\theta\)は\(\theta=0\)で傾き正、\(y=\sin(\theta+\pi)\)は\(\theta=0\)で傾き負、というグラフのイメージを持つと速いです。
  • \(t-x/v\) と \(x-vt\) の混同:
    • 誤解: 波の式を \(y = A \sin \frac{2\pi}{T}(t – \frac{x}{v})\) と書くべきところを、\(y = A \sin \frac{2\pi}{\lambda}(x – vt)\) と混同してしまい、係数を間違える。
    • 対策: どちらの形も正しい波の式ですが、括弧の前の係数が異なります。\(t\)で括る形 \((t – x/v)\) の場合、係数は時間に関係する \(\omega = 2\pi/T\) です。\(x\)で括る形 \((x – vt)\) の場合、係数は空間に関係する \(k = 2\pi/\lambda\) です。どちらか一方の導出を完璧に理解し、もう一方はそこから変形できるようにしておくと混乱が少ないです。
  • 負の向きに進む波の式の符号ミス:
    • 誤解: (6)で、負の向きに進むからといって、式のどこかを単純にマイナスにすれば良いと考えてしまう。例えば \(y = -A \sin \frac{2\pi}{T}(t – \frac{x}{v})\) のように振幅を逆にしてしまう。
    • 対策: 振幅の符号は振動の初期位相に関わるもので、進行方向とは直接関係ありません。進行方向を変えるのは、位相の中の \(t\) と \(x\) の項の相対的な符号です。「正方向は異符号、負方向は同符号」というルールを明確に覚えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 単振動の一般式 \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\):
    • 選定理由: (1)で原点の振動を記述するために使用します。これは、周期的な往復運動を数学的に表現するための最も基本的なモデルです。cos型でも表現できますが、sin型で統一しておき、初期位相\(\phi_0\)で全ての状況を表現するのが一般的です。
    • 適用根拠: 問題文の「単振動をしている」という記述から、このモデルの適用が正当化されます。初期条件を代入することで、無数にある単振動の中から、問題の状況に合致する唯一の運動を特定できます。
  • 波の伝播原理 \(y(x, t) = y(0, t \mp x/v)\):
    • 選定理由: (5)と(6)で、原点の振動から波全体の式へと拡張するために使用します。これは、波が「形を変えずに一定速度で伝わる」という物理現象の本質を数式化したものです。
    • 適用根拠: 「正弦波が速さ\(v\)で伝わる」という問題設定そのものが、この原理の適用を要請しています。正の向きなら「遅れ」を意味する \(t-x/v\)、負の向きなら「進み」と解釈できる \(t+x/v\) を選択します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 式の置き換えは丁寧に行う: (3)や(5)のように、ある文字を別の式で置き換える際は、代入する式全体を括弧でくくってから代入する癖をつけましょう。例えば、\(y=A\sin \omega t\) に \(\omega = 2\pi/T\) を代入するなら、\(y=A\sin ( (2\pi/T) t )\) と意識することで、係数の付け忘れなどを防げます。
  • 符号の確認を徹底する: (6)のように符号が重要になる問題では、最終的な答えを書く前に「負の向きに進むから、\(t\)と\(x\)の項は同符号になっているか?」と指差し確認する習慣をつけると、ケアレスミスが劇的に減ります。
  • 物理的な意味と式を対応させる: 「時間の遅れ」\(\rightarrow\)「\(t\)を\(t-\Delta t\)に置換」、「速度が正」\(\rightarrow\)「\(\cos\phi_0 > 0\)」のように、物理的な言葉と数式上の操作をセットで覚えることで、思い出しやすくなり、間違いも減ります。

237 正弦波を表すグラフと式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

この解説では、模範解答とは異なる、より物理的な意味を重視したアプローチで解説を進めます。最終的な答えは模範解答と一致しますが、設問を解く順序や考え方が異なります。

  1. 解説の方針が模範解答と異なる点
    • 設問(2)と(4)の解説方針:
      • 模範解答: 時刻\(t=0\)の波形(空間の式)を先に求め(設問(2))、それを数学的に平行移動させて一般式(設問(4))を導いています。
      • 本解説: 原点(\(x=0\))の媒質の運動(時間の式)を先に特定し、「波の伝播」という物理原理を用いて一般式(設問(4))を導きます。その後、求めた一般式に\(t=0\)を代入して、設問(2)の式を導出します。
  2. 本解説のアプローチを採用する理由
    • 物理的意味の明確化: 「位置\(x\)の振動は、原点の振動が時間差をもって伝わったもの」という、波の現象の根幹をなす考え方を直接的に用いるため、物理的理解が深まります。
    • 応用範囲の広さ: このアプローチは、初期条件が複雑な場合や、様々な波の現象(反射、重ね合わせなど)を考える際にも一貫して使える、より普遍的な解法です。
  3. 結果への影響
    • 最終的な答えは、全ての設問で模範解答と一致します。
    • 設問(3)を先に解き、次に(4)、最後に(2)という順序で解説を進めます。

この問題のテーマは「\(y-x\)グラフからの波の式の決定」です。与えられたグラフ(空間情報)と周期(時間情報)を組み合わせて、波の運動を完全に記述する式を導出します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)グラフからの情報読み取り(振幅\(A\)、波長\(\lambda\))
  2. 波の基本式: \(v=f\lambda\), \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\)
  3. 原点(\(x=0\))の運動の特定(初期位相の決定)
  4. 波の伝播の原理: \(y(x,t) = y(0, t-\displaystyle\frac{x}{v})\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) グラフと問題文から、波の基本量である波長\(\lambda\)、振動数\(f\)、速さ\(v\)を計算します。
  2. (3) 求めた速さ\(v\)を用いて、時間\(t\)で進む距離を計算します。
  3. (4) まず原点(\(x=0\))の媒質の運動の式を特定し、次に波の伝播の原理を用いて、任意の位置と時刻における変位の式(一般式)を導出します。
  4. (2) (4)で求めた一般式に\(t=0\)を代入し、与えられたグラフを表す式を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
与えられた\(y-x\)グラフと周期\(T\)から、波の基本的な物理量である波長\(\lambda\)、振動数\(f\)、速さ\(v\)を求めます。それぞれの定義と関係式を正確に適用することが重要です。
この設問における重要なポイント

  • \(y-x\)グラフの1周期分の長さが波長\(\lambda\)である。
  • 振動数\(f\)と周期\(T\)は逆数の関係にある (\(f=1/T\))。
  • 波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には \(v=f\lambda\) の関係がある。

具体的な解説と立式
波長 \(\lambda\) の計算

\(y-x\)グラフは、波の空間的な形を表します。グラフ上で、同じ位相(例えば、山と次の山、谷と次の谷)の間の距離が1波長\(\lambda\)です。図では、\(x=0\)から\(x=6.0 \text{ m}\)まででちょうど1サイクルの波形が描かれているため、これが1波長に相当します。

振動数 \(f\) の計算

問題文より、周期\(T=0.20 \text{ s}\)が与えられています。振動数\(f\)は1秒あたりの振動回数であり、周期\(T\)(1回の振動にかかる時間)とは逆数の関係にあります。
$$ f = \frac{1}{T} $$
速さ \(v\) の計算

波は1秒間に\(f\)回振動し、1回の振動で\(\lambda\)進むので、1秒間に進む距離(速さ)\(v\)は、
$$ v = f\lambda $$
で計算できます。

使用した物理公式

  • 振動数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
計算過程

波長 \(\lambda\):

グラフから直接読み取ります。
$$ \lambda = 6.0 \text{ [m]} $$
振動数 \(f\):
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{0.20} \\[2.0ex]&= 5.0 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
速さ \(v\):
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda \\[2.0ex]&= 5.0 \times 6.0 \\[2.0ex]&= 30 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

波長は、グラフに描かれた波の「1セットの長さ」です。図を見ると、\(x=0\)から\(x=6.0\)まででちょうど波が1つ分なので、波長は\(6.0 \text{ m}\)です。振動数は、周期(1回の振動にかかる時間)の逆数なので、\(1 \div 0.20 = 5\)回/秒、つまり\(5.0 \text{ Hz}\)です。速さは、「波長 \(\times\) 振動数」で計算でき、\(6.0 \times 5.0 = 30 \text{ m/s}\)となります。

結論と吟味

グラフと問題文から、波長\(6.0 \text{ m}\)、振動数\(5.0 \text{ Hz}\)、速さ\(30 \text{ m/s}\)が求められました。これらの値は、後続の設問で波の式を立てるために不可欠な基本量です。

解答 (1) 波長: \(6.0 \text{ m}\), 振動数: \(5.0 \text{ Hz}\), 速さ: \(30 \text{ m/s}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
波が一定の速さで進むことを利用して、時間\(t\)の間に進む距離を求めます。これは「距離=速さ×時間」という単純な関係に基づいています。
この設問における重要なポイント

  • 波は速さ\(v\)の等速運動をする。

具体的な解説と立式
(1)で求めた波の速さ\(v=30 \text{ m/s}\)を用います。速さ\(v\)で時間\(t\)だけ進むときの距離\(d\)は、
$$ d = v \times t $$
で計算できます。

使用した物理公式

  • 等速直線運動の距離: \(d = vt\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
d &= 30 \times t \\[2.0ex]&= 30t \text{ [m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

速さが\(30 \text{ m/s}\)の物体が\(t\)秒間に進む距離を求めるのと同じです。「距離=速さ×時間」なので、\(30 \times t = 30t \text{ m}\)となります。

結論と吟味

波が\(t\)秒間に進む距離は\(30t\) [m]です。この結果は、(4)で数学的な平行移動の考え方(別解)を用いる際に利用できます。

解答 (3) \(30t\) [m]

問(4)

思考の道筋とポイント
波の運動を完全に記述する式 \(y(x,t)\) を導出します。本解説では、まず基準点である原点(\(x=0\))の媒質の運動 \(y(0,t)\) を特定し、次に波の伝播の原理を用いて、その運動が位置\(x\)に伝わる様子を式で表現します。
この設問における重要なポイント

  • 原点の運動を特定するには、初期条件(\(t=0\)での変位と速度の向き)が必要。
  • 波の進行方向から、\(t=0\)での原点の速度の向きを判断する。
  • 正方向に進む波の式は、原点の式の\(t\)を\(t-x/v\)で置き換えることで得られる。

具体的な解説と立式
1. 原点(\(x=0\))の運動 \(y(0,t)\) の特定

まず、原点の媒質の単振動の式 \(y(0,t) = A \sin(\omega t + \phi_0)\) を決定します。

  • 振幅\(A\): グラフの最大変位から \(A=2.0 \text{ m}\)。
  • 角振動数\(\omega\): (1)で求めた振動数\(f=5.0 \text{ Hz}\)から、\(\omega = 2\pi f = 2\pi \times 5.0 = 10\pi \text{ rad/s}\)。
  • 初期位相\(\phi_0\):
    1. \(t=0\)での変位: グラフより、\(y(0,0)=0\)。
    2. \(t=0\)での速度の向き: 波は\(x\)軸の正の向きに進みます。\(t=0\)の波形を少しだけ右にずらした波形を想像すると、\(x=0\)の媒質は\(y\)軸の正の方向に動くことがわかります。よって、\(t=0\)での原点の速度は正です。
  • 以上の初期条件(\(t=0\)で\(y=0\)、かつ速度が正)を満たすのは、初期位相\(\phi_0=0\)のサイン関数です。

したがって、原点の運動の式は、
$$ y(0,t) = 2.0 \sin(10\pi t) $$
2. 波の伝播の原理の適用

波は\(x\)軸の正の向きに速さ\(v=30 \text{ m/s}\)で進みます。位置\(x\)での振動は、原点の振動が時間 \(\Delta t = \frac{x}{v}\) だけ遅れて伝わったものです。よって、波の一般式 \(y(x,t)\) は、原点の式の時刻\(t\)を \(t – \frac{x}{v}\) に置き換えることで得られます。
$$ y(x,t) = y\left(0, t – \frac{x}{v}\right) = 2.0 \sin\left(10\pi \left(t – \frac{x}{v}\right)\right) $$

使用した物理公式

  • 単振動の式: \(y = A \sin(\omega t + \phi_0)\)
  • 角振動数: \(\omega = 2\pi f\)
  • 波の伝播の原理: \(y(x,t) = y(0, t – x/v)\)
計算過程

上で立てた式に \(v=30 \text{ m/s}\) を代入し、整理します。
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= 2.0 \sin\left(10\pi \left(t – \frac{x}{30}\right)\right) \\[2.0ex]&= 2.0 \sin\left(10\pi t – \frac{10\pi x}{30}\right) \\[2.0ex]&= 2.0 \sin\left(10\pi t – \frac{\pi}{3}x\right)
\end{aligned}
$$
模範解答の形式に合わせるため、\(\frac{\pi}{3}\)で括りだします。
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= 2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3} \left(\frac{3 \cdot 10\pi t}{\pi} – \frac{3 \cdot \pi x}{3\pi}\right)\right) \\[2.0ex]&= 2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}(30t – x)\right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、波の出発点である原点(\(x=0\))の動きを式にします。グラフと波の進行方向から、原点は\(t=0\)の瞬間に上向きに動き出すことがわかります。これは、普通のサインカーブの動きなので、原点の式は \(y = 2.0 \sin(10\pi t)\) となります。

次に、この動きが位置\(x\)に伝わる様子を考えます。波が届くのに\(\frac{x}{v}\)秒かかるので、位置\(x\)の動きは原点より\(\frac{x}{v}\)秒遅れます。数式で「時間を遅らせる」には、\(t\)を\(t-\frac{x}{v}\)に置き換えればよいので、最終的な式が求まります。

結論と吟味

得られた式 \(y = 2.0 \sin(\frac{\pi}{3}(30t – x))\) は、位置\(x\)と時刻\(t\)の2つの変数を含む、波の運動を完全に記述する式です。

解答 (4) \(y = 2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}(30t – x)\right)\) [m]

問(2)

思考の道筋とポイント
(4)で求めた波の一般式 \(y(x,t)\) を用いて、特定の時刻 \(t=0\) における波形を表す式を導きます。これは、一般式に \(t=0\) を代入するだけで得られます。
この設問における重要なポイント

  • 波の一般式 \(y(x,t)\) は、任意の時刻\(t\)における波形(空間分布)を表す。

具体的な解説と立式
(4)で求めた波の一般式は、
$$ y(x,t) = 2.0 \sin\left(10\pi t – \frac{\pi}{3}x\right) $$
です。この式に \(t=0\) を代入することで、時刻\(t=0\)における変位の式 \(y(x,0)\) が得られます。
$$ y(x,0) = 2.0 \sin\left(10\pi \cdot 0 – \frac{\pi}{3}x\right) $$

使用した物理公式

  • 三角関数の性質: \(\sin(-\theta) = -\sin\theta\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
y(x,0) &= 2.0 \sin\left( – \frac{\pi}{3}x\right)
\end{aligned}
$$
ここで、三角関数の性質 \(\sin(-\theta) = -\sin\theta\) を用いて式を整理します。
$$
\begin{aligned}
y &= -2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}x\right)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(4)で、いつでもどこでも波の高さを教えてくれる万能な式を作りました。この問題では「時刻\(t=0\)のとき」の波の形を知りたいので、その万能な式に\(t=0\)を代入するだけです。

結論と吟味

得られた式 \(y = -2.0 \sin(\frac{\pi}{3}x)\) は、\(x=0\)で\(y=0\)、\(x\)が少し増えると\(y\)は負となり、与えられたグラフの形と一致しています。

解答 (2) \(y = -2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}x\right)\) [m]
別解: 数学的アプローチ(空間の式 → 平行移動)

模範解答で用いられている、より数学的なアプローチも紹介します。

思考の道筋とポイント
(2)でまず\(t=0\)のグラフの形を直接数式で表現し、(4)ではその波形が時間とともに平行移動する、という考え方で式を立てます。

具体的な解説と立式
問(2)の解説

与えられた\(t=0\)のグラフの形を直接、三角関数で表現します。

  • グラフは原点(\(x=0, y=0\))を通り、\(x\)が増加すると\(y\)は減少(傾きが負)します。これは \(-A\sin(\dots)\) の形です。
  • 振幅は \(A=2.0 \text{ m}\)。
  • 波長は \(\lambda=6.0 \text{ m}\) なので、波数\(k\)は \(k = \frac{2\pi}{\lambda} = \frac{2\pi}{6.0} = \frac{\pi}{3}\)。

よって、波形を表す式は、
$$ y = -A \sin(kx) = -2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}x\right) $$
問(4)の解説

(2)で求めた\(t=0\)の波形が、\(x\)軸の正の向きに速さ\(v=30 \text{ m/s}\)で進むと考えます。時間\(t\)後には、波形全体が距離\(d=vt=30t\)だけ平行移動します。

数学のグラフの平行移動の考え方から、元の式の\(x\)を\((x-d)\)、すなわち\((x-30t)\)で置き換えればよいことになります。

(2)の式の\(x\)を\((x-30t)\)で置き換えると、
$$ y = -2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}(x-30t)\right) $$
三角関数の性質 \(\sin(-\theta)=-\sin\theta\) を使って、マイナスを\(\sin\)の中に入れます。
$$
\begin{aligned}
y &= 2.0 \sin\left(-\frac{\pi}{3}(x-30t)\right) \\[2.0ex]&= 2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}(-x+30t)\right) \\[2.0ex]&= 2.0 \sin\left(\frac{\pi}{3}(30t-x)\right)
\end{aligned}
$$
となり、本解説と同じ結果が得られます。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • \(y-x\)グラフと時間情報の連携:
    • 核心: この問題の核心は、与えられた\(y-x\)グラフ(ある瞬間の空間情報)と、問題文の周期\(T\)(時間情報)を組み合わせて、波の完全な記述 \(y(x,t)\) を導くことです。空間と時間の情報を統合する能力が問われます。
    • 理解のポイント:
      • 空間情報: \(y-x\)グラフから、振幅\(A\)と波長\(\lambda\)を直接読み取ります。
      • 時間情報: 問題文で与えられた周期\(T\)から、振動数\(f=1/T\)や角振動数\(\omega=2\pi/T\)を計算します。
      • 統合: これらの空間と時間の情報を、波の基本式\(v=f\lambda\)や、最終的な波の式\(y(x,t)\)の構築に利用します。
  • 原点の運動の特定(初期位相の決定):
    • 核心: 波の式を立てる上で最も重要なステップの一つが、基準点(通常は原点\(x=0\))の運動を正確に特定することです。特に、\(y-x\)グラフと波の進行方向から、原点の媒質の初速度の向きを判断し、\(y(0,t)\)の式(特に初期位相)を正しく決定するプロセスが不可欠です。
    • 理解のポイント:
      • \(t=0\)の変位: \(y-x\)グラフの\(x=0\)における\(y\)の値を読み取ります。
      • \(t=0\)の速度の向き: 波形を進行方向に少しだけずらした図を想像し、\(x=0\)の媒質が上下どちらに動くか(速度の符号)を判断します。
      • 初期位相の決定: 上記2つの初期条件(変位と速度)を満たすように、単振動の一般式 \(y(0,t)=A\sin(\omega t+\phi_0)\) の初期位相\(\phi_0\)を決定します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 進行方向と初速度の判断法
    • テクニック: \(y-x\)グラフ上で、波形を進行方向に少しだけずらしてみます(微小時間後の波形を想像します)。そのとき、着目している位置の\(y\)座標がどう変化するかで、その点の速度の向き(正か負か)が分かります。これは非常に強力なテクニックです。
  • 2つの立式アプローチの使い分け
    • テクニック: この問題は2通りの方法で解けます。
      1. 物理的アプローチ(本解説): \(y(0,t)\)を特定 → \(y(x,t) = y(0, t-x/v)\) で拡張。物理的な意味が分かりやすい。
      2. 数学的アプローチ(別解): \(y(x,0)\)を特定 → \(y(x,t) = y(x-vt, 0)\) で拡張。数学の平行移動に慣れていると速い。

      どちらもマスターし、問題に応じて解きやすい方を選べるようにすると万全です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 原点の初速度の向きの誤判断
    • 誤解: \(t=0\)の\(y-x\)グラフで、原点(\(x=0\))の傾きが負であることから、原点の速度も負だと勘違いしてしまう。
    • 対策: グラフの傾き(\(\frac{dy}{dx}\))は「空間的な変化率」、速度(\(\frac{dy}{dt}\))は「時間的な変化率」であり、全くの別物です。速度の向きは、必ず「波形を進行方向にずらす」方法で確認しましょう。
  • 式の符号の混乱
    • 誤解: \(y = A \sin(kx-\omega t)\) と \(y = A \sin(\omega t – kx)\) の関係が分からなくなる。
    • 対策: この2つの式は、\(\sin(-\theta)=-\sin\theta\)の関係から \(A \sin(kx-\omega t) = -A \sin(\omega t – kx)\) となり、振幅が逆の別の波を表します。一方で、\(y = -A \sin(kx-\omega t)\) と \(y = A \sin(\omega t – kx)\) は同じ波です。符号の扱いには細心の注意を払い、三角関数の公式を正確に使いましょう。
  • 波数\(k\)と角振動数\(\omega\)の混同
    • 誤解: \(k = \displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}\)(空間の周期性を表す)と \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)(時間の周期性を表す)を混同する。
    • 対策: \(k\)は\(x\)の係数、\(\omega\)は\(t\)の係数、と機械的に覚えてしまうのが有効です。それぞれの物理的な意味(単位長さあたりの位相変化、単位時間あたりの位相変化)を理解することも重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(y(x,t) = y(0, t-x/v)\) (物理的アプローチ)
    • 選定理由: 「基準点の運動が、時間を遅れて各点に伝わる」という波の物理現象そのものを数式化した、最も根源的な原理です。
    • 適用根拠: このアプローチでは、まず時間の関数である\(y(0,t)\)を確定させ、それを空間に拡張します。物理的な因果関係(原点の振動が原因で、位置xの振動が結果として生じる)に沿った自然な思考法です。
  • \(y(x,t) = y(x-vt, 0)\) (数学的アプローチ)
    • 選定理由: 「波の形が、時間とともに平行移動する」という現象を、数学の「グラフの平行移動」の知識を使ってモデル化したものです。
    • 適用根拠: このアプローチでは、まず空間の関数である\(y(x,0)\)を確定させ、それを時間的に発展させます。視覚的に捉えやすいグラフの平行移動という概念を用いるため、直感的に理解しやすい場合があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の確認: \(\lambda\)[m], \(f\)[Hz], \(T\)[s], \(v\)[m/s], \(\omega\)[rad/s], \(k\)[rad/m]など、各物理量の単位を意識することで、公式の適用ミスを防ぎます。例えば、\(v=f\lambda\) は [m/s] = [1/s] \(\times\) [m] となり、次元が合っていることが確認できます。
  • 三角関数の変形: \(y = -2.0 \sin(\frac{\pi}{3}(x-30t))\) から \(y = 2.0 \sin(\frac{\pi}{3}(30t-x))\) への変形など、符号が変わる操作は特に慎重に行いましょう。焦らずに、\(\sin(-\theta)=-\sin\theta\)の公式を一段階ずつ適用する癖をつけます。
  • 係数の分配: \(y = 2.0 \sin(10\pi t – \frac{\pi}{3}x)\) のような式を、\(y = 2.0 \sin(\frac{\pi}{3}(30t-x))\) のように括りだしたり、逆に展開したりする計算では、分配法則をミスなく行うことが重要です。検算として、展開して元に戻るかを確認すると良いでしょう。

238 正弦波を表す式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「\(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフからの波の式の決定」です。空間的な波の形を表すグラフと、ある一点の時間変化を表すグラフの両方を読み解き、波の運動を完全に記述することが目標です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの物理的解釈
  2. 波の基本パラメータの関係式(\(v=f\lambda\), \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\))
  3. 進行方向の決定法(2つのグラフの情報連携)
  4. 波の式の立式(原点の振動+伝播の原理)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 図1(\(y-x\)グラフ)から振幅\(A\)と波長\(\lambda\)を、図2(\(y-t\)グラフ)から周期\(T\)を読み取り、関係式を用いて振動数\(f\)と速さ\(v\)を計算します。
  2. (2) 図2から原点(\(x=0\))の媒質の初動(\(t=0\)直後の動き)を把握し、その動きが図1の波形で起こるためには波がどちらに進むべきかを考察して、進行方向を決定します。
  3. (3) (1), (2)の結果をもとに、波の変位を表す式を導出します。まず原点の振動の式を立て、それを進行方向に応じて伝播させることで一般式を求め、問題で指定された形式と比較して係数を決定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
2種類のグラフから、それぞれ読み取れる物理量を正確に把握し、定義式や関係式を用いて残りの量を計算します。\(y-x\)グラフが空間情報、\(y-t\)グラフが時間情報に対応することを理解しているかが鍵です。
この設問における重要なポイント

  • \(y-x\)グラフ(図1)からは、振幅\(A\)と波長\(\lambda\)が読み取れる。
  • \(y-t\)グラフ(図2)からは、振幅\(A\)と周期\(T\)が読み取れる。
  • 振動数\(f\)と周期\(T\)は \(f=1/T\) の関係にある。
  • 速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)は \(v=f\lambda\) の関係にある。

具体的な解説と立式
振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) の読み取り

図1(\(y-x\)グラフ)は、時刻\(t=0\)における波の形(スナップショット)です。

グラフの最大変位(山の高さ)が振幅\(A\)です。

波1つ分の長さが波長\(\lambda\)です。
$$ A = 5.0 \text{ [m]} $$
$$ \lambda = 2.0 \text{ [m]} $$
周期 \(T\) の読み取り

図2(\(y-t\)グラフ)は、位置\(x=0\)の媒質の時間変化(単振動)です。

1回の振動にかかる時間が周期\(T\)です。
$$ T = 4.0 \text{ [s]} $$
振動数 \(f\) と速さ \(v\) の計算

振動数\(f\)は周期\(T\)の逆数です。
$$ f = \frac{1}{T} $$
速さ\(v\)は、波の基本式を用いて計算します。
$$ v = f\lambda $$

使用した物理公式

  • 振動数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
計算過程

振動数の計算:
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{4.0} \\[2.0ex]&= 0.25 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
速さの計算:
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda \\[2.0ex]&= 0.25 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 0.50 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、2つのグラフから直接わかる数値を読み取ります。図1の写真のようなグラフからは、振幅が\(5.0 \text{ m}\)、波の1セットの長さ(波長)が\(2.0 \text{ m}\)とわかります。図2のビデオのようなグラフからは、1回の振動にかかる時間(周期)が\(4.0 \text{ s}\)とわかります。振動数は周期の逆数なので \(1 \div 4.0 = 0.25 \text{ Hz}\)。速さは「波長×振動数」で \(2.0 \times 0.25 = 0.50 \text{ m/s}\) と計算できます。

結論と吟味

2つのグラフから、振幅\(5.0 \text{ m}\)、波長\(2.0 \text{ m}\)、周期\(4.0 \text{ s}\)、振動数\(0.25 \text{ Hz}\)、速さ\(0.50 \text{ m/s}\)という、波の性質を表す全ての基本量が求められました。

解答 (1) 振幅: \(5.0 \text{ m}\), 波長: \(2.0 \text{ m}\), 周期: \(4.0 \text{ s}\), 振動数: \(0.25 \text{ Hz}\), 速さ: \(0.50 \text{ m/s}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
2つのグラフの情報を連携させて、波の進行方向を特定します。具体的には、図2(\(y-t\)グラフ)から原点(\(x=0\))の媒質の「未来の動き」を読み取り、その動きが図1(\(y-x\)グラフ)の波形で起こるためには、波がどちらの向きに進む必要があるかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 図2(\(y-t\)グラフ)は、\(x=0\)の媒質の動きを時系列で示している。
  • 図1(\(y-x\)グラフ)の波形を進行方向に少しだけずらすことで、各媒質の未来の動きを予測できる。

具体的な解説と立式
1. 原点の未来の動きを把握する

図2(\(y-t\)グラフ)を見ると、位置\(x=0\)の媒質は、時刻\(t=0\)で変位\(y=0\)であり、その直後(\(t\)がわずかに増加したとき)に変位が正(\(y>0\))になっています。これは、\(x=0\)の媒質が\(t=0\)の瞬間に正の向き(上向き)に動き始めたことを意味します。

2. 波の進行方向を考察する

次に、図1(\(y-x\)グラフ)において、この「原点が上向きに動く」という現象が起こるための波の進行方向を考えます。

  • 仮説1: 波が正の向きに進む場合

    波形が少し右にずれると、原点(\(x=0\))には、もともと\(x<0\)にあった「谷」の部分がやってきます。したがって、原点の媒質は負の向き(下向き)に動くはずです。これは、1で把握した事実と矛盾します。

  • 仮説2: 波が負の向きに進む場合

    波形が少し左にずれると、原点(\(x=0\))には、もともと\(x>0\)にあった「山」の部分がやってきます。したがって、原点の媒質は正の向き(上向き)に動くはずです。これは、1で把握した事実と一致します。

以上の考察から、この波は\(x\)軸の負の向きに進行していると結論付けられます。

使用した物理公式

  • 特になし(グラフの解釈と論理的推論)
計算過程

この設問は論理的な推論によるもので、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

まず、図2のビデオを見て、原点の媒質が\(t=0\)の瞬間に「上」に動き出すことを確認します。次に、図1の写真を見て、この「原点が上に動く」という現象を起こすには、波の絵全体が「右」と「左」のどちらに動けばよいかを考えます。もし波が右に動くと、原点には左隣の谷が来るので下に動いてしまい、矛盾します。もし波が左に動くと、原点には右隣の山が来るので上に動きます。これがビデオの動きと一致するので、波は左、つまり負の向きに進んでいるとわかります。

結論と吟味

2つのグラフの情報を組み合わせることで、波の進行方向が負の向きであると明確に決定できました。

解答 (2) 負の向き

問(3)

思考の道筋とポイント
(1)と(2)で得られた情報を用いて、波の変位\(y\)を位置\(x\)と時刻\(t\)の関数として表します。まず、原点(\(x=0\))の単振動の式を立て、次に、波が負の向きに伝播することを考慮して、その式を任意の位置\(x\)に拡張します。最後に、問題で指定された形式 `y = ① sin{π(②x + ③t)}` に合わせて式を変形し、係数を比較します。
この設問における重要なポイント

  • 原点(\(x=0\))の振動は、図2から \(y_0 = A \sin(\omega t)\) の形で表される。
  • 負の向きに進む波の式は、原点の式の時刻\(t\)を \(t + \frac{x}{v}\) で置き換えることで得られる。
  • 式を変形して、問題で指定された形式と係数を比較する。

具体的な解説と立式
1. 原点(\(x=0\))の振動の式を立てる

図2(\(y-t\)グラフ)は、原点の媒質の単振動を表しています。

(1)より、振幅\(A=5.0 \text{ m}\)、周期\(T=4.0 \text{ s}\)です。

角振動数\(\omega\)は、
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} = \frac{2\pi}{4.0} = \frac{\pi}{2} \text{ [rad/s]} $$
図2から、\(t=0\)で\(y=0\)かつ直後に\(y>0\)となるので、初期位相は0です。

よって、原点の変位\(y_0\)の式は、
$$ y_0(t) = A \sin(\omega t) = 5.0 \sin\left(\frac{\pi}{2}t\right) $$
2. 波の式への拡張

(2)より、この波は負の向きに速さ\(v=0.50 \text{ m/s}\)で進みます。

位置\(x\)における時刻\(t\)の変位\(y(x,t)\)は、原点における時刻が \(t + \frac{x}{v}\) のときの変位と等しくなります。

したがって、原点の式の\(t\)を\(t + \frac{x}{v}\)で置き換えます。
$$ y(x,t) = 5.0 \sin\left\{\frac{\pi}{2}\left(t + \frac{x}{v}\right)\right\} $$
3. 式の変形と係数の比較

上の式に\(v=0.50\)を代入し、問題の形式に合わせます。
$$
\begin{aligned}
y &= 5.0 \sin\left\{\frac{\pi}{2}\left(t + \frac{x}{0.50}\right)\right\} \\[2.0ex]&= 5.0 \sin\left\{\frac{\pi}{2}(t + 2.0x)\right\} \\[2.0ex]&= 5.0 \sin\left(\frac{\pi}{2}t + \pi x\right)
\end{aligned}
$$
これを、問題で指定された形式 `y = ① sin{π(②x + ③t)}` になるように、\(\pi\)で括りだします。
$$ y = 5.0 \sin\left\{\pi\left(x + \frac{1}{2}t\right)\right\} = 5.0 \sin\{\pi(1.0x + 0.50t)\} $$
この式と `y = ① sin{π(②x + ③t)}` を比較すると、各係数が求まります。

使用した物理公式

  • 単振動の式: \(y = A \sin(\omega t)\)
  • 角振動数と周期の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
  • 負の向きに進む波の伝播原理: \(y(x,t) = y_0(t + \frac{x}{v})\)
計算過程

上記の立式プロセスが計算過程となります。係数を比較すると、
$$ ① = 5.0 $$
$$ ② = 1.0 $$
$$ ③ = 0.50 $$

計算方法の平易な説明

まず、原点の動きを表す式を、図2から \(y = 5.0 \sin(\frac{\pi}{2}t)\) と作ります。次に、波は負の向きに進むので、この動きは他の場所に「早く」伝わります。数式では、時刻\(t\)を\(t+\frac{x}{v}\)に置き換えることで表現します。これで波全体の式ができます。最後に、この式を問題で指定された \(sin{π(…)}\) の形になるように、パズルのように変形して、①②③に入る数字を読み取ります。

結論と吟味

求めた係数は、①が振幅、②が波数\(k=2\pi/\lambda\)を\(\pi\)で割ったもの(\(2/\lambda\))、③が角振動数\(\omega=2\pi/T\)を\(\pi\)で割ったもの(\(2/T\))に対応しています。

② = \(2/\lambda = 2/2.0 = 1.0\)

③ = \(2/T = 2/4.0 = 0.50\)

となり、(1)で求めた値と整合性が取れており、物理的に妥当です。

解答 (3) ① \(5.0\), ② \(1.0\), ③ \(0.50\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの二元的な解釈
    • 核心: 波の運動を完全に理解するためには、空間的な側面と時間的な側面の両方を捉える必要があります。この問題は、\(y-x\)グラフ(空間のスナップショット)と\(y-t\)グラフ(一点の時間変化)という2つの異なる表現を正しく解釈し、それらの情報を統合する能力が核心となります。
    • 理解のポイント:
      • 図1 (\(y-x\)グラフ): ある特定の時刻(\(t=0\))における、全ての場所(様々な\(x\))の変位を表す。ここから振幅\(A\)と波長\(\lambda\)がわかる。
      • 図2 (\(y-t\)グラフ): ある特定の場所(\(x=0\))における、全ての時刻(様々な\(t\))の変位を表す。ここから振幅\(A\)と周期\(T\)がわかる。
  • 進行方向の決定法
    • 核心: 2つのグラフの情報を連携させることで、波の進行方向という重要な性質を決定できます。これは波の問題における典型的な思考パターンです。
    • 理解のポイント:
      1. 基準点の初動を把握: \(y-t\)グラフ(図2)から、基準点(\(x=0\))が\(t=0\)の直後にどちらに動くか(初速度の向き)を読み取る。
      2. 波形を動かして検証: \(y-x\)グラフ(図1)の波形を、仮に正方向・負方向に少しだけ動かしてみる。
      3. 整合性を確認: どちらの方向に動かしたときに、基準点の動きが(1)で把握した初動と一致するかを検証し、進行方向を確定する。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(x \neq 0\) の \(y-t\)グラフ: 図2が\(x=0\)ではなく、例えば\(x=1.0\) [m]の媒質の\(y-t\)グラフとして与えられる問題。この場合も、\(x=1.0\)の媒質の初動を読み取り、図1の\(x=1.0\)の点がそのように動くためには波がどちらに進むべきかを考えます。
    • グラフの初期位相が異なる場合: 図1や図2のグラフが、\(t=0\)や\(x=0\)で変位が0でない(初期位相を持つ)場合。例えば、図2がcos型のグラフであれば、原点の振動は \(y_0 = A \cos(\omega t)\) となります。この場合も、立式の出発点が変化するだけで、伝播の原理を適用する流れは同じです。
    • 式からグラフを描く問題: (3)のような波の式が先に与えられ、そこから\(y-x\)グラフ(特定の\(t\)を代入)や\(y-t\)グラフ(特定の\(x\)を代入)を描かせる逆パターンの問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を絶対確認: まず、与えられたグラフの縦軸と横軸がそれぞれ何(\(y, x, t\))を表しているかを絶対に確認します。これを間違えると全てが崩れます。
    2. 2つのグラフから読み取れる量をリストアップ: (1)のように、図1から\(A, \lambda\)、図2から\(A, T\)を読み取る、というように、情報を整理することから始めます。振幅\(A\)は両方から読み取れるので、値が一致することを確認する検算にも使えます。
    3. 進行方向を先に決める: 波の式を立てる前に、(2)のように進行方向を確定させることが重要です。進行方向によって、式の形(\(t-x/v\)か\(t+x/v\)か)が決まるからです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの混同:
    • 誤解: 図1から周期を読み取ろうとしたり、図2から波長を読み取ろうとしたりする。
    • 対策: 横軸が距離(\(x\))なら波長(\(\lambda\))、横軸が時間(\(t\))なら周期(\(T\))、と機械的に結びつけて覚える。それぞれのグラフが「写真」と「ビデオ」のどちらのイメージに対応するかを常に意識する。
  • 進行方向の判断ミス:
    • 誤解: (2)で、図1の\(x=0\)の点の傾きが正であることから、進行方向を判断しようとして混乱する。
    • 対策: \(y-x\)グラフの傾きは、媒質の速度とは直接関係ありません。必ず「\(y-t\)グラフで基準点の初動を確認」→「\(y-x\)グラフを動かして検証」という手順を踏むことが、確実で間違いのない方法です。
  • 式の変形ミス:
    • 誤解: (3)で、\(y = 5.0 \sin(\frac{\pi}{2}t + \pi x)\) を問題の形式 `y = ① sin{π(②x + ③t)}` に変形する際、\(\pi\)で括りだす計算を間違える。
    • 対策: \( \frac{\pi}{2}t + \pi x = \pi \left( \frac{1}{\pi} \cdot \frac{\pi}{2}t + \frac{1}{\pi} \cdot \pi x \right) = \pi \left( \frac{1}{2}t + x \right) \) のように、分配法則を丁寧に行う。焦らず、一段階ずつ計算を書く癖をつけることが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 \(v=f\lambda\), \(f=1/T\):
    • 選定理由: (1)で、グラフから直接読み取った量(\(\lambda, T\))と、そこから導出される量(\(f, v\))を結びつけるために不可欠な、波の最も基本的な関係式です。
    • 適用根拠: これらは波の種類によらず成立する普遍的な定義式・関係式です。波の性質を議論する上での出発点となります。
  • 負の向きに進む波の伝播原理 \(y(x,t) = y_0(t + x/v)\):
    • 選定理由: (3)で、原点の振動の式から波全体の式へと拡張するために使用します。
    • 適用根拠: (2)で進行方向が「負の向き」と特定されたため、この原理が適用されます。位置\(x\)の振動は、原点の振動よりも時間的に「進んでいる」と解釈でき、数式上は時刻\(t\)を \(t+x/v\) に置き換える操作に対応します。もし進行方向が正であれば、\(t-x/v\) を用いることになります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの目盛りを慎重に読む: グラフから値を読み取る際は、1目盛りがいくらに相当するのかを必ず確認します。特に、0でない点から始まっている場合や、目盛りが飛び飛びの場合に注意が必要です。
  • 単位を付けて計算する: \(v = 0.25 \text{ [Hz]} \times 2.0 \text{ [m]} = 0.50 \text{ [m/s]}\) のように、計算過程で単位を意識すると、公式の適用ミス(例えば、\(v=f/T\)のような間違い)に気づきやすくなります。
  • 係数比較は整理してから: (3)のように、式の係数を比較する問題では、まず自分の立てた式を問題の形式と全く同じ形(括弧の外に出す文字、項の順番など)に整理してから比較します。これにより、ケアレスミスを防ぎ、どの部分がどの係数に対応するかが明確になります。
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