「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 13】Step 2

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Step 2

184 気体の圧力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ピストンにはたらく力のつり合いと圧力の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつり合い: 物体が静止しているとき、物体にはたらく力のベクトル和は0になります。特に鉛直方向のつり合いでは、「上向きの力の総和」と「下向きの力の総和」が等しくなります。
  2. 圧力と力の関係: 圧力 \(p\) の流体(気体や液体)が面積 \(S\) の面に及ぼす力 \(F\) は、面に垂直に \(F=pS\) という大きさで働きます。
  3. 力の図示: 問題を解く上で、着目する物体(この場合はピストン)にはたらく力をすべて正確に図示することが最も重要です。
  4. 作用点を明確にする: 大気圧による力も、内部気体の圧力による力も、ピストンの面に作用します。重力はピストンの重心に作用します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、図1の状況でピストンにはたらく力(内部気体の圧力による力、大気圧による力、重力)をすべて図示し、鉛直方向の力のつり合いの式を立てます。
  2. (2)では、図2の状況で同様にピストンにはたらく力を図示し、力のつり合いの式を立てます。シリンダーの向きが変わることで、力の向きの関係がどう変化するかに注意します。
  3. それぞれのつり合いの式を、求めたい圧力について解き、与えられた数値を代入して計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
図1の状態で静止しているピストンに着目します。ピストンが静止しているということは、ピストンにはたらく力がつり合っていることを意味します。したがって、ピストンにはたらく力をすべて洗い出し、鉛直方向の力のつり合いの式を立てることで、未知の圧力 \(p_1\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 圧力 \(p\) が面積 \(S\) に及ぼす力は \(F=pS\) である。
  • 力のつり合いの基本は「上向きの力の合計 = 下向きの力の合計」。
  • ピストンにはたらく力は「内部気体がピストンを押し上げる力」「大気圧がピストンを押し下げる力」「ピストン自身の重力」の3つである。

具体的な解説と立式
求める気体の圧力を \(p_1\) とします。ピストンにはたらく力は以下の3つです。
1. 内部の気体がピストンを押し上げる力: \(F_1 = p_1 S\) (上向き)
2. 大気圧がピストンを押し下げる力: \(F_0 = p_0 S\) (下向き)
3. ピストンの重力: \(W = mg\) (下向き)

ピストンは静止しているので、これらの力はつり合っています。力のつり合いの式は、
$$ (\text{上向きの力の合計}) = (\text{下向きの力の合計}) $$
と表せるので、
$$ p_1 S = p_0 S + mg $$
となります。

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \(\text{合力} = 0\)
  • 圧力による力: \(F = pS\)
  • 重力: \(W = mg\)
計算過程

上記で立式した力のつり合いの式を、求める圧力 \(p_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_1 S &= p_0 S + mg \\[2.0ex]
p_1 &= p_0 + \frac{mg}{S}
\end{aligned}
$$
この式に与えられた数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
p_1 &= 1.0 \times 10^5 + \frac{40 \times 9.8}{9.8 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 + \frac{40}{10^{-3}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 + 40 \times 10^3 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 + 0.4 \times 10^5 \\[2.0ex]
&= 1.4 \times 10^5 \text{ [Pa]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

ピストンがその場で静止しているのは、ピストンを押し上げる力と押し下げる力が等しいからです。この場合、押し上げているのは「中の気体」の力です。一方、押し下げているのは「外の空気(大気圧)」の力と「ピストン自身の重さ」の2つです。したがって、「中の気体の圧力」は、「大気圧」に「ピストンの重さ分の圧力」を足したものになります。まずピストンの重さが生み出す圧力 \(\displaystyle\frac{mg}{S}\) を計算し、それを大気圧 \(p_0\) に加えます。

結論と吟味

閉じ込められた気体の圧力は \(1.4 \times 10^5 \text{ Pa}\) です。ピストンの重さの分だけ、内部の気体は余計に押し返す必要があるので、その圧力は大気圧 \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) よりも大きくなります。計算結果はこの考察と一致しており、物理的に妥当です。

解答 (1) \(1.4 \times 10^5 \text{ Pa}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
図2の状態で静止しているピストンに着目します。シリンダーが逆さまになったことで、各力の向きの関係がどう変わるかがポイントです。今回もピストンは静止しているので、はたらく力をすべて図示し、力のつり合いの式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • シリンダーの向きが変わると、力の向きの関係性が変化する。
  • 図2では、大気圧がピストンを「上向き」に押し、内部気体と重力が「下向き」に作用する。
  • 力のつり合い: (上向きの力の合計) = (下向きの力の合計) の関係は変わらない。

具体的な解説と立式
求める気体の圧力を \(p_2\) とします。ピストンにはたらく力は以下の3つです。
1. 大気圧がピストンを押し上げる力: \(F_0 = p_0 S\) (上向き)
2. 内部の気体がピストンを押し下げる力: \(F_2 = p_2 S\) (下向き)
3. ピストンの重力: \(W = mg\) (下向き)

ピストンは静止しているので、これらの力はつり合っています。力のつり合いの式は、
$$ (\text{上向きの力の合計}) = (\text{下向きの力の合計}) $$
と表せるので、
$$ p_0 S = p_2 S + mg $$
となります。

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \(\text{合力} = 0\)
  • 圧力による力: \(F = pS\)
  • 重力: \(W = mg\)
計算過程

上記で立式した力のつり合いの式を、求める圧力 \(p_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_2 S &= p_0 S – mg \\[2.0ex]
p_2 &= p_0 – \frac{mg}{S}
\end{aligned}
$$
この式に与えられた数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
p_2 &= 1.0 \times 10^5 – \frac{40 \times 9.8}{9.8 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 – 4.0 \times 10^4 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 – 0.4 \times 10^5 \\[2.0ex]
&= 0.6 \times 10^5 \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^4 \text{ [Pa]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

今回もピストンは静止しているので、押し上げる力と押し下げる力が等しくなっています。押し上げているのは「外の空気(大気圧)」の力だけです。一方、押し下げているのは「中の気体」の力と「ピストン自身の重さ」です。つまり、「大気圧」の力が、「中の気体の力」と「ピストンの重さ」の合計とつり合っています。したがって、「中の気体の圧力」は、「大気圧」から「ピストンの重さ分の圧力」を引いたものになります。

結論と吟味

閉じ込められた気体の圧力は \(6.0 \times 10^4 \text{ Pa}\) です。今度はピストンの重さが内部気体と同じ下向きに作用するため、大気圧が両方を支える形になります。したがって、内部気体の圧力は、大気圧 \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) よりも小さくなります。計算結果はこの考察と一致しており、物理的に妥当です。

解答 (2) \(6.0 \times 10^4 \text{ Pa}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力のつり合い:
    • 核心: この問題は、熱力学のカテゴリにありますが、その本質は力学の「力のつり合い」です。ピストンが静止しているという事実から、ピストンにはたらく全ての力の合力がゼロである、という一点に尽きます。
    • 理解のポイント:
      • 鉛直方向のつり合いを考え、「上向きの力の総和 = 下向きの力の総和」という等式を立てることが全ての出発点です。
      • シリンダーの向きが変わると、各力の向きが変化するため、つり合いの式の形も変わります。
  • 圧力と力の関係 (\(F=pS\)):
    • 核心: 気体や大気は「圧力」という形で状態が記述されますが、力のつり合いの式で扱うのは「力」です。圧力 \(p\) [Pa] と力 \(F\) [N] を結びつける変換式 \(F=pS\) を正しく使えるかが、もう一つの核心です。
    • 理解のポイント:
      • 圧力は単位面積あたりの力です。したがって、面積 \(S\) の面全体にはたらく力は、圧力と面積の積で計算されます。
      • 力のつり合いの式には、圧力 \(p\) をそのまま入れるのではなく、必ず力 \(pS\) の形に変換してから代入する必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • シリンダーが斜めに置かれた場合: ピストンにはたらく重力 \(mg\) を、斜面に平行な成分と垂直な成分に分解する必要があります。力のつり合いは、ピストンが動く可能性のある「斜面に平行な方向」で立てます。
    • U字管内の液体のつり合い: U字管に閉じ込められた気体の圧力を、左右の液面の高さの差から求める問題。液柱の重さが生み出す圧力 (\(\rho h g\)) を考慮して、同じ高さでの圧力が等しいという原理(パスカルの原理)から式を立てます。
    • 熱力学第一法則との融合: (1)の状態から(2)の状態へ変化させるとき、気体の温度や体積がどう変わるかを問う問題。まず本問と同様に力のつり合いから各状態の圧力を求め、その後ボイル・シャルルの法則 (\(\displaystyle\frac{PV}{T}=\text{一定}\)) を使って状態変化を追跡します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 着目物体を明確にする: まず「何にはたらく力のつり合いを考えるか」を決めます。この問題では、動く部分である「ピストン」です。
    2. 力を漏れなく図示する: 着目物体(ピストン)にはたらく力をすべて矢印で書き出します。「①内部気体が押す力」「②外部の大気が押す力」「③重力」の3つです。接触しているものと、離れていてもはたらく力(重力)をリストアップする癖をつけましょう。
    3. 力の向きを正確に判断する: 圧力による力は必ず面に垂直です。重力は常に鉛直下向きです。図1と図2でシリンダーの向きが変わったときに、特に大気圧と内部気体の圧力が及ぼす力の向きがどう変わるかを慎重に判断することが、正解への鍵です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 圧力と力の混同:
    • 誤解: 力のつり合いの式に、力 \(pS\) ではなく圧力 \(p\) をそのまま代入してしまう。(例: \(p_1 = p_0 + mg\) のような式を立てる)
    • 対策: 「力のつり合い」の式は、その名の通り「力 [N]」の式です。圧力 [Pa] とは単位(次元)が異なるため、直接足したり引いたりはできません。「圧力に面積を掛けて力に直す」という操作を絶対に忘れないようにしましょう。
  • 力の図示漏れや向きの間違い:
    • 誤解: (1)で大気圧を忘れたり、(2)で重力の向きを上向きにしてしまったりする。
    • 対策: 設問ごとに必ず簡単な図を描き、力を一つずつ書き込む習慣をつけましょう。(1)では「上向きは気体、下向きは大気と重力」、(2)では「上向きは大気、下向きは気体と重力」というように、状況をリセットして考え直すことが重要です。
  • 単位の換算ミス:
    • 誤解: 断面積が \(\text{cm}^2\) で与えられた場合に、\(\text{m}^2\) への換算を忘れる、または間違える。
    • 対策: 計算を始める前に、すべての物理量が基本単位(Pa, m, kg, s)に揃っているかを確認する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力のつり合いの式 (\(\sum \vec{F} = 0\)):
    • 選定理由: 問題文に「(ピストンが静止して)気体を閉じ込めた」とあり、ピストンが静止していることが明記されています。力学において、物体が静止している(=加速度が0)場合、その物体にはたらく合力は0である、というニュートンの運動法則の基本形そのものです。
    • 適用根拠: 求める物理量が「圧力」であっても、その圧力が決まる状況が「力のつり合い」という力学的な条件に基づいているため、この法則を選択するのが最も直接的かつ合理的です。
  • 圧力と力の関係式 (\(F=pS\)):
    • 選定理由: 力のつり合いの式を立てるには、気体や大気が及ぼす「力」が必要です。しかし、問題で与えられているのは「圧力」です。この両者をつなぐために、この変換式が必要不可欠となります。
    • 適用根拠: 圧力の定義そのものが「単位面積あたりの力」であるため、面積 \(S\) の面全体にはたらく力を求めるには、圧力 \(p\) に \(S\) を掛ける必要があります。これは、力のつり合いという「力」の土俵に、「圧力」という物理量を乗せるための翻訳ルールと言えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数の整理: \(1.0 \times 10^5 – 4.0 \times 10^4\) のような計算では、指数を揃えるのが定石です。\(1.0 \times 10^5 – 0.4 \times 10^5 = (1.0 – 0.4) \times 10^5 = 0.6 \times 10^5\) とすることで、桁の間違いを防ぎます。
  • 約分に気づく: この問題では、重力加速度 \(g=9.8 \text{ m/s}^2\)、断面積 \(S=9.8 \times 10^{-3} \text{ m}^2\) と、意図的に \(9.8\) という数字が揃えられています。これにより、\(\displaystyle\frac{mg}{S}\) の項は \(\displaystyle\frac{40 \times 9.8}{9.8 \times 10^{-3}}\) となり、\(9.8\) を約分することで計算が大幅に楽になります。与えられた数値にこのような意図がないか探す癖をつけると、計算時間を短縮し、ミスを減らせます。
  • 物理的な妥当性の確認(検算):
    • (1)では、ピストンの重さがかかるので、内部の圧力は当然大気圧より高くなるはずです。計算結果が \(1.0 \times 10^5\) Pa より大きいことを確認します。
    • (2)では、ピストンの重さが大気圧を助ける形になるので、内部の圧力は大気圧より低くなるはずです。計算結果が \(1.0 \times 10^5\) Pa より小さいことを確認します。
    • このような簡単なチェックで、符号の間違いなどの致命的なミスに気づくことができます。

185 ボイル・シャルルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「理想気体の状態変化とボイル・シャルルの法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ボイル・シャルルの法則: 気体の圧力\(P\)、体積\(V\)、絶対温度\(T\)が変化する際、気体の量が一定であれば、\(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\) という関係が成り立ちます。
  2. 絶対温度: 気体の状態方程式に関する計算では、日常で使うセルシウス温度 \(t [^\circ\text{C}]\) ではなく、必ず絶対温度 \(T [\text{K}]\) を用いる必要があります。変換式は \(T = t + 273\) です。
  3. 状態量の整理: 状態が変化する前と後で、圧力、体積、温度の値がそれぞれどうなっているかを正確に把握し、整理することが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、変化の前(初期状態)と後(最終状態)の気体の圧力、体積、温度を問題文から抜き出します。
  2. 次に、与えられているセルシウス温度をすべて絶対温度に変換します。
  3. 最後に、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) に整理した値を代入し、未知の体積について解きます。

解説

思考の道筋とポイント
この問題では、閉じ込められた気体の圧力、体積、温度の3つの状態量がすべて変化します。このような最も一般的な状態変化を扱うには、ボイルの法則(定温変化)やシャルルの法則(定圧変化)を個別に適用することはできず、これらを統合したボイル・シャルルの法則を用いる必要があります。計算を正確に行うための第一歩は、変化の前後における各状態量を整理し、特に温度を物理計算の基本である絶対温度(ケルビン)に変換することです。
この設問における重要なポイント

  • 圧力、体積、温度がすべて変化する場合は、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) を適用する。
  • 計算に用いる温度は、必ず絶対温度 \(T [\text{K}]\) に変換する。\(T = t + 273\)。
  • 変化の前後で、シリンダー内の気体の物質量(量)は一定に保たれていることが、この法則の適用の前提となる。

具体的な解説と立式
変化前の気体の状態を状態1、変化後の状態を状態2として、それぞれの状態量を整理します。
状態1(初期状態):

  • \(P_1 = 2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
  • \(V_1 = 6.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)
  • \(t_1 = 27^\circ\text{C}\)

状態2(最終状態):

  • \(P_2 = 4.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
  • 求める体積を \(V_2\)
  • \(t_2 = 77^\circ\text{C}\)

次に、セルシウス温度を絶対温度に変換します。
$$ T_1 = 27 + 273 = 300 \text{ K} $$
$$ T_2 = 77 + 273 = 350 \text{ K} $$
これらの値を、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) に代入して立式します。
$$ \frac{(2.0 \times 10^5) \times (6.0 \times 10^{-2})}{300} = \frac{(4.0 \times 10^5) \times V_2}{350} $$

使用した物理公式

  • ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\)
  • 絶対温度: \(T [\text{K}] = t [^\circ\text{C}] + 273\)
計算過程

上記で立式した方程式を、求める体積 \(V_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{P_1 V_1}{T_1} \times \frac{T_2}{P_2} \\[2.0ex]
&= \frac{(2.0 \times 10^5) \times (6.0 \times 10^{-2})}{300} \times \frac{350}{4.0 \times 10^5} \\[2.0ex]
&= \frac{12 \times 10^3}{300} \times \frac{350}{4.0 \times 10^5} \\[2.0ex]
&= 40 \times \frac{350}{4.0 \times 10^5} \\[2.0ex]
&= \frac{10 \times 350}{10^5} \\[2.0ex]
&= \frac{3500}{10^5} \\[2.0ex]
&= 3.5 \times 10^3 \times 10^{-5} \\[2.0ex]
&= 3.5 \times 10^{-2} \text{ [m}^3\text{]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

気体の圧力・体積・温度がすべて変わる、少し複雑な状況です。このようなときは、3つの量をまとめて扱える万能な公式「ボイル・シャルルの法則」を使います。この法則は「(圧力 × 体積) ÷ 絶対温度」の値が、変化の前後で変わらない、というものです。
まず、計算の準備として、摂氏温度(℃)を絶対温度(K)に直します。27℃は300K、77℃は350Kです。
あとは、変化の前と後で「(P × V) ÷ T」が等しくなるように式を立て、わからない体積 \(V\) を計算で求めるだけです。

結論と吟味

最終的な気体の体積は \(3.5 \times 10^{-2} \text{ m}^3\) です。
今回の変化では、圧力は \(2.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) から \(4.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) へと2倍に増加しています。これは体積を縮める効果があります。一方、絶対温度は \(300 \text{ K}\) から \(350 \text{ K}\) へと \(\frac{350}{300} = \frac{7}{6} \approx 1.17\) 倍に増加しており、これは体積を膨張させる効果があります。圧力による縮小効果(2倍)が温度による膨張効果(約1.17倍)よりも大きいので、最終的な体積は元の \(6.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\) よりも小さくなるはずです。計算結果の \(3.5 \times 10^{-2} \text{ m}^3\) は元の体積より小さくなっており、物理的に妥当な結果と言えます。

解答 \(3.5 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ボイル・シャルルの法則:
    • 核心: 閉じ込められた一定量の気体の状態が変化するとき、変化前の状態量(\(P_1, V_1, T_1\))と変化後の状態量(\(P_2, V_2, T_2\))の間には、常に \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) という関係が成り立つ、という法則が全てです。
    • 理解のポイント:
      • この法則は、圧力・体積・温度のうち、どの物理量が変化しても(あるいは一定でも)使える、最も一般的で強力な法則です。
      • ボイルの法則(\(T\)が一定)、シャルルの法則(\(P\)が一定)、ゲイ=リュサックの法則(\(V\)が一定)は、すべてボイル・シャルルの法則の特殊な場合として導かれます。
  • 絶対温度の利用:
    • 核心: 気体の状態変化を記述する法則では、温度は必ず絶対温度 \(T\) [K] を用いなければなりません。
    • 理解のポイント:
      • 気体の圧力や体積は、分子の熱運動の激しさに比例します。その物理的な尺度となるのが絶対温度です。セルシウス温度 \(t\) [℃] は、\(0^\circ\text{C}\) を基準とした日常的な尺度であり、そのまま物理法則の計算に用いると、比例関係が成り立たず、正しい結果が得られません。
      • 変換式 \(T [\text{K}] = t [^\circ\text{C}] + 273\) は、計算の前に必ず行うべき必須の準備作業です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ピストンと力のつり合いとの組み合わせ: 前の例題のように、ピストンに重さがあったり、大気圧が作用したりする問題。まず力のつり合いから変化前後の圧力を求め、その上でボイル・シャルルの法則を適用して体積や温度の変化を計算する、という2段階の問題。
    • コックでつながれた容器: 2つの異なる状態の気体が入った容器をコックでつなぐ問題。この場合、気体が混合するため、物質量(モル数)の和が保存されることを利用して、状態方程式 \(PV=nRT\) を用いて解くのが一般的です。
    • グラフ問題: \(P-V\)グラフや\(P-T\)グラフ上で、ある状態点から別の状態点へ変化するときの状態量を問う問題。グラフから変化前後の \(P, V, T\) を読み取り、ボイル・シャルルの法則を適用します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 状態変化の前後を明確にする: 問題文を読み、「初期状態」と「最終状態」がそれぞれどのような圧力、体積、温度なのかを明確に区別し、情報を整理します。\(P_1, V_1, T_1\) と \(P_2, V_2, T_2\) のように記号を割り振ると間違いが減ります。
    2. 未知数を特定する: 6つの状態量(\(P_1, V_1, T_1, P_2, V_2, T_2\))のうち、5つが既知で1つが未知数になっていることを確認します。この問題では \(V_2\) が未知数です。
    3. 絶対温度への変換を最優先: 問題文に「℃」を見つけたら、他のどの計算よりも先に、まず「K」に変換する作業を済ませてしまいましょう。この一手間が、最も頻繁に起こるミスを防ぎます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 絶対温度への変換忘れ:
    • 誤解: ボイル・シャルルの法則の式に、\(T_1=27\), \(T_2=77\) のようにセルシウス温度の値をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 「気体の計算、温度は絶対!」とスローガンように覚えてください。問題用紙の「27℃」という記述の横に、すぐに「→300K」と書き込む癖をつけるのが最も効果的です。
  • 式の変形ミス:
    • 誤解: \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) を \(V_2\) について解く際に、分母と分子を逆にしてしまうなど、代数的な変形でミスをする。
    • 対策: 焦らずに、まず \(V_2 = \dots\) の形に文字式で変形してから数値を代入するのが安全です。\(V_2 = V_1 \times \displaystyle\frac{P_1}{P_2} \times \frac{T_2}{T_1}\) のように、元の体積 \(V_1\) に「圧力の変化率の逆数」と「温度の変化率」を掛ける、と物理的な意味を考えながら変形すると、間違いにくくなります。
  • 単位の混同:
    • 誤解: 体積が \(\text{L}\) (リットル) や \(\text{cm}^3\) で与えられているのに、他のSI単位(Pa, m^3)と混ぜて計算してしまう。
    • 対策: この問題では単位が揃っていますが、単位が混在している場合は、計算前にすべてSI基本単位系(Pa, m^3, K)に統一するのが原則です。ただし、ボイル・シャルルの法則では両辺で同じ単位を使えば約分されるため、例えば体積を両辺とも \(\text{L}\) のままで計算しても結果は変わりません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ボイル・シャルルの法則 (\(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\)):
    • 選定理由: この問題は、閉じ込められた一定量の気体の状態が、初期状態から最終状態へと変化する典型的なシナリオです。圧力、体積、温度という3つの主要な状態量がすべて変化しているため、これら3つを同時に関係づけることができるボイル・シャルルの法則が、この問題を解くために最も直接的で適切な公式となります。
    • 適用根拠: この法則が成り立つ大前提は「気体の物質量(モル数 \(n\))が一定であること」です。問題文では「シリンダー内に閉じ込められた気体」とあり、気体の出入りがないことが明らかなので、この法則を安心して適用できます。もし気体の出入りがある場合は、状態方程式 \(PV=nRT\) を用いて、物質量の変化を考慮する必要があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 数値の整理: 計算を始める前に、以下のように値を書き出すと、代入ミスを防げます。
    • \(P_1 = 2.0 \times 10^5\), \(V_1 = 6.0 \times 10^{-2}\), \(T_1 = 300\)
    • \(P_2 = 4.0 \times 10^5\), \(V_2 = ?\), \(T_2 = 350\)
  • 指数の計算をまとめる: \(10^5\) や \(10^{-2}\) のような指数部分は、係数部分(\(2.0, 6.0\) など)とは分けて計算し、最後にまとめるのが安全です。
    \(\displaystyle\frac{(2.0 \times 6.0) \times (10^5 \times 10^{-2})}{300} = \frac{12 \times 10^3}{300} = 40\)
  • 簡単な比に直す: 計算の途中で、大きな数字の割り算をする前に、簡単な比に直せないか考えます。
    \(\displaystyle\frac{P_1}{P_2} = \frac{2.0 \times 10^5}{4.0 \times 10^5} = \frac{1}{2}\)
    \(\displaystyle\frac{T_2}{T_1} = \frac{350}{300} = \frac{35}{30} = \frac{7}{6}\)
    これらを使って \(V_2 = V_1 \times \displaystyle\frac{P_1}{P_2} \times \frac{T_2}{T_1} = (6.0 \times 10^{-2}) \times \frac{1}{2} \times \frac{7}{6} = 3.5 \times 10^{-2}\) と計算すると、見通しが良くなり、計算ミスも減ります。
  • 物理的な妥当性の確認(検算): 圧力は2倍(体積を1/2にする効果)、絶対温度は7/6倍(体積を7/6倍にする効果)になっています。したがって、体積は元の \(V_1\) の \(\frac{1}{2} \times \frac{7}{6} = \frac{7}{12}\) 倍になるはずです。\(6.0 \times \frac{7}{12} = 3.5\) となり、計算結果と一致することを確認できます。

186 ボイル・シャルルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コックで連結された容器内の気体の状態変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ボイルの法則: 温度が一定のとき、気体の圧力\(P\)と体積\(V\)の積は一定になります (\(PV = \text{一定}\))。
  2. ボイル・シャルルの法則: 気体の量が一定のとき、圧力\(P\)、体積\(V\)、絶対温度\(T\)の間には \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\) という関係が成り立ちます。
  3. 絶対温度: 気体の状態を扱う計算では、セルシウス温度 \(t [^\circ\text{C}]\) ではなく、必ず絶対温度 \(T [\text{K}]\) を用います。関係式は \(T = t + 273\) です。
  4. 気体の混合: コックを開いて気体を混合させると、気体は容器全体の体積に広がります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、コックを開ける前後で温度が一定であるため、ボイルの法則を適用します。気体が広がる後の体積が、容器AとBの容積の和になる点に注意します。
  2. (2)では、コックを開けてさらに温度も変化させるため、ボイル・シャルルの法則を適用します。体積の変化と温度の変化を同時に考慮して計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
コックを開ける前の容器A内の空気を「初期状態」、コックを開けて容器AとB全体に広がった後を「最終状態」として考えます。問題文に「全体の温度を27℃に保つ」とあるため、初期状態から最終状態への変化は温度が一定の「定温変化」です。したがって、ボイルの法則を適用します。このとき、気体の体積が初期の容器Aの容積から、最終的には容器AとBを合わせた容積に変化することが最大のポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 定温変化ではボイルの法則 \(PV = \text{一定}\) が成り立つ。
  • コックを開くと、気体は容器AとBを合わせた全体の体積 (\(V_A + V_B\)) に広がる。
  • 初期状態の気体は容器Aにしか存在しないため、初期体積は \(V_A\) である。

具体的な解説と立式
初期状態(コックを開ける前)と最終状態(コックを開けた後)の状態量を整理します。
初期状態:

  • \(P_1 = 3.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
  • \(V_1 = V_A = 4.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)
  • \(t_1 = 27^\circ\text{C}\)

最終状態:

  • 求める圧力を \(p\)
  • \(V_2 = V_A + V_B = (4.0 + 8.0) \times 10^{-2} = 12.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)
  • \(t_2 = 27^\circ\text{C}\)

温度が一定(\(t_1 = t_2\))なので、ボイルの法則 \(P_1V_1 = pV_2\) が成り立ちます。
$$ (3.0 \times 10^5) \times (4.0 \times 10^{-2}) = p \times (12.0 \times 10^{-2}) $$

使用した物理公式

  • ボイルの法則: \(P_1V_1 = P_2V_2\)
計算過程

上記で立式した式を、求める圧力 \(p\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{(3.0 \times 10^5) \times (4.0 \times 10^{-2})}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= \frac{12.0 \times 10^3}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^{3 – (-2)} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^5 \text{ [Pa]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

温度が変わらないので、「圧力 × 体積」の値が一定になるというボイルの法則を使います。コックを開ける前、空気は体積 \(4.0 \times 10^{-2}\) の部屋にいました。コックを開けると、隣の \(8.0 \times 10^{-2}\) の部屋にも広がれるので、全体の体積は \(4.0 + 8.0 = 12.0\) (\(\times 10^{-2}\)) となり、元の3倍の広さになります。体積が3倍になったので、圧力は逆に3分の1になります。元の圧力 \(3.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) を3で割って、\(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) となります。

結論と吟味

コックを開けた後の圧力は \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) です。気体が広がる体積が3倍になったため、圧力が3分の1になるという計算結果は物理的に妥当です。

解答 (1) \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)と同様に、コックを開ける前の容器A内の空気を「初期状態」としますが、今回はコックを開けた後に全体の温度を \(127^\circ\text{C}\) に変化させます。このように、圧力・体積・温度の3つの状態量がすべて変化するため、ボイル・シャルルの法則を適用する必要があります。計算の前提として、セルシウス温度を絶対温度に変換することが不可欠です。
この設問における重要なポイント

  • 圧力・体積・温度がすべて変化する場合は、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\) を用いる。
  • 温度の計算は、必ず絶対温度 \(T [\text{K}]\) で行う。
  • 初期状態は(1)と同じく、容器A内の気体のみを考える。

具体的な解説と立式
初期状態(コックを開ける前)と最終状態(コックを開けて加熱後)の状態量を整理します。
初期状態:

  • \(P_1 = 3.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)
  • \(V_1 = 4.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)
  • \(t_1 = 27^\circ\text{C}\)

最終状態:

  • 求める圧力を \(p’\)
  • \(V_2 = V_A + V_B = 12.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3\)
  • \(t_2 = 127^\circ\text{C}\)

セルシウス温度を絶対温度に変換します。
$$ T_1 = 27 + 273 = 300 \text{ K} $$
$$ T_2 = 127 + 273 = 400 \text{ K} $$
これらの値を、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{p’V_2}{T_2}\) に代入して立式します。
$$ \frac{(3.0 \times 10^5) \times (4.0 \times 10^{-2})}{300} = \frac{p’ \times (12.0 \times 10^{-2})}{400} $$

使用した物理公式

  • ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\)
  • 絶対温度: \(T [\text{K}] = t [^\circ\text{C}] + 273\)
計算過程

上記で立式した式を、求める圧力 \(p’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p’ &= \frac{P_1V_1}{T_1} \times \frac{T_2}{V_2} \\[2.0ex]
&= \frac{(3.0 \times 10^5) \times (4.0 \times 10^{-2})}{300} \times \frac{400}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= \frac{12.0 \times 10^3}{300} \times \frac{400}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= 40 \times \frac{400}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= \frac{16000}{12.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{3} \times 10^4 \times 10^2 \\[2.0ex]
&= \frac{4}{3} \times 10^6 \approx 1.333… \times 10^5 \text{ [Pa]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(1.3 \times 10^5 \text{ Pa}\) となります。

計算方法の平易な説明

今度は温度も変わるので、ボイル・シャルルの法則「(圧力 × 体積) ÷ 絶対温度 = 一定」を使います。
(1)で、体積が3倍になって圧力が \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) になったのは、温度が \(27^\circ\text{C}\) (300K) のままだった場合の話です。
今回はそこからさらに温度を \(127^\circ\text{C}\) (400K) に上げます。体積が一定のまま温度を上げると、圧力は絶対温度に比例して上がります。温度が \(300\text{K}\) から \(400\text{K}\) へと \(\frac{400}{300} = \frac{4}{3}\) 倍になるので、圧力も \(\frac{4}{3}\) 倍になります。(1)で求めた圧力 \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) を \(\frac{4}{3}\) 倍して、約 \(1.3 \times 10^5 \text{ Pa}\) を求めます。

結論と吟味

コックを開けて加熱した後の圧力は、約 \(1.3 \times 10^5 \text{ Pa}\) です。(1)で求めた圧力 \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) からさらに加熱しているため、気体分子の運動が激しくなり、圧力が上昇します。計算結果は(1)の値より大きくなっており、物理的に妥当です。

解答 (2) \(1.3 \times 10^5 \text{ Pa}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ボイル・シャルルの法則とその特殊形:
    • 核心: 閉じ込められた一定量の気体の状態変化を記述する \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\) という法則を、問題の条件に応じて正しく使い分けることが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 問(1)のように温度が一定の状況では、ボイル・シャルルの法則はより単純なボイルの法則 \(PV = \text{一定}\) に帰着します。
      • 問(2)のように圧力・体積・温度がすべて変化する状況では、ボイル・シャルルの法則そのものを適用します。
  • 体積変化の正しい認識:
    • 核心: 「コックを開く」という操作が、物理的に「気体が占める体積が、容器AとBの合計容積にまで膨張する」ことを意味すると理解できるかが、式を正しく立てるための鍵となります。
    • 理解のポイント: 気体は、与えられた空間全体に一様に広がろうとする性質があります。したがって、コックを開けた後の体積は \(V_{\text{後}} = V_A + V_B\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 異なる気体の混合: 容器AとBに、それぞれ異なる状態(異なる圧力、温度、物質量)の気体が入っている状態でコックを開く問題。この場合、ボイル・シャルルの法則を直接使うのではなく、「混合の前後で物質量の合計は変わらない」という原則から、状態方程式 \(PV=nRT\) を用いて解きます。具体的には、\(n_{\text{後}} = n_{A\text{前}} + n_{B\text{前}}\) より、\(\displaystyle\frac{P_{\text{後}}V_{\text{後}}}{T_{\text{後}}} = \frac{P_{A\text{前}}V_{A\text{前}}}{T_{A\text{前}}} + \frac{P_{B\text{前}}V_{B\text{前}}}{T_{B\text{前}}}\) という式を立てます(気体定数Rは消去)。
    • 化学反応を伴う場合: 混合した気体が化学反応を起こす問題。化学反応式の係数比に従って物質量が変化するため、熱力学だけでなく化学の知識も必要になります。
    • 断熱変化: 容器が断熱材でできており、コックを「急に」開く場合。これは断熱自由膨張と呼ばれ、理想気体の場合は温度が変化しないという特徴があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 状態変化の種類を特定する: 問題文のキーワード「温度を…に保つ」→定温変化、「温度を…にする」→温度変化あり、を読み取り、ボイルの法則かボイル・シャルルの法則かを選択します。
    2. 初期状態と最終状態の体積を明確にする: 「コックを開ける前」の体積は気体が入っている容器の容積のみ。「コックを開けた後」の体積は、連結されたすべての容器の容積の和になることを確認します。
    3. 保存量を確認する: この問題では、容器に閉じ込められた気体の「物質量(モル数)」が、コックを開ける前後で変化していません。これが、ボイル・シャルルの法則が適用できる根拠です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 体積の扱いを間違える:
    • 誤解: コックを開けた後の体積を、容器Bの容積 \(V_B\) だけだと勘違いしたり、なぜか引き算をしてしまったりする。
    • 対策: 気体は「与えられた空間全体に広がる」という基本性質を常に念頭に置きます。簡単な図を描いて、コックを開けたら気体分子がどこまで動けるようになるかをイメージすれば、体積が \(V_A + V_B\) になることは直感的に理解できます。
  • (2)の初期状態を(1)の最終状態と勘違いする:
    • 誤解: (2)を解く際に、(1)で求めた圧力 \(1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\) を初期圧力として計算を始めてしまう。
    • 対策: 各設問は、特に断りがない限り、問題文の「初め」の状態からスタートすると考えます。設問ごとに、「どこからどこへの変化を問われているのか」を問題文で再確認する癖をつけましょう。
  • 絶対温度への変換忘れ:
    • 誤解: (2)で、温度の項に \(T_1=27\), \(T_2=127\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 「気体の計算では、温度は絶対温度(K)が絶対ルール」と肝に銘じましょう。問題文のセルシウス温度を見つけたら、即座に「+273」して絶対温度の値を横にメモする習慣が有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ボイルの法則 (\(PV = \text{一定}\)) とボイル・シャルルの法則 (\(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\)):
    • 選定理由: この問題は、閉じ込められた一定量の気体の状態変化を扱っており、気体の出入りがないため物質量 \(n\) が一定です。このような場合に、圧力・体積・温度の関係を記述するのがこれらの法則です。
    • 適用根拠:
      • 問(1): 「温度を27℃に保つ」という条件から、\(T\)が一定です。したがって、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) の分母 \(T_1, T_2\) が等しいため、これを消去した \(P_1V_1 = P_2V_2\)(ボイルの法則)を適用するのが最も効率的です。
      • 問(2): 今度は温度も \(27^\circ\text{C} \rightarrow 127^\circ\text{C}\) と変化します。圧力、体積、温度の3つすべてが変化するため、これらを包括的に扱えるボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}\) をそのまま用いる必要があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 比で考える:
    • 問(1): 体積が \(V_1 = 4.0 \times 10^{-2}\) から \(V_2 = 12.0 \times 10^{-2}\) へと「3倍」になる。温度は一定なので、ボイルの法則から圧力は「1/3倍」になるはず。よって \(p = (3.0 \times 10^5) \times \frac{1}{3} = 1.0 \times 10^5 \text{ Pa}\)。
    • 問(2): 体積は「3倍」に、絶対温度は \(T_1=300\text{K}\) から \(T_2=400\text{K}\) へと「4/3倍」になる。ボイル・シャルルの法則 \(p’ = P_1 \times \frac{V_1}{V_2} \times \frac{T_2}{T_1}\) から、圧力は元の \(p’ = (3.0 \times 10^5) \times \frac{1}{3} \times \frac{4}{3} = \frac{4}{3} \times 10^5 \approx 1.3 \times 10^5 \text{ Pa}\) となる。このように比で考えると、大きな桁の数値を扱う手間が省け、計算が速く正確になります。
  • 有効数字を意識する: (2)の計算結果は \(1.333…\times 10^5\) と割り切れません。問題文で与えられている数値(4.0, 8.0, 3.0, 27, 127)の有効数字は2桁または3桁です。解答では、最も信頼性の低い有効数字2桁に合わせて \(1.3 \times 10^5\) とするのが一般的です。解答の形式を問題の指示や慣例に合わせましょう。
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187 定圧変化

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