「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 11】Step3

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166 万有引力と遠心力

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、地球の自転によって生じる「遠心力」と、地球が物体を引く「万有引力」の関係を考察する問題です。我々が日常的に感じている「重力」が、実はこの2つの力の合力であることを深く理解することが求められます。
この問題の核心は、①万有引力と遠心力の基本的な関係式を立てる能力、②北極点での重力を基準として未知数を消去するテクニック、③異なる緯度での力のベクトル的な関係を正しく分析する能力、の3点です。

与えられた条件
  • 北極点での重力加速度: \(g\) [m/s²]
  • 地球の半径: \(R\) [m]
  • 地球の質量: \(M\) [kg]
  • 物体の質量: \(m\) [kg]
  • 万有引力定数: \(G\) [N·m²/kg²]
問われていること
  • (1) 赤道上で遠心力と万有引力が等しくなるときの、地球の自転周期\(T\)。
  • (2) (1)の周期\(T\)の具体的な数値。(\(g=9.8\), \(R=6.4\times 10^6\), \(\pi=3.14\))
  • (3) (1)のとき、北緯60度の地表で、合力(重力)が地表の垂線から傾く角度。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「万有引力と遠心力」です。地表にある物体が感じる「重力」が、実は地球の中心に向かう「万有引力」と、地球の自転によって生じる「遠心力」の合力であることを理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力の法則: 質量を持つ物体間に働く引力で、その大きさは \(F = G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) で与えられます。
  2. 遠心力: 地球の自転(回転運動)に伴い、地表の物体には回転軸から遠ざかる向きに遠心力が働きます。その大きさは \(F = mr\omega^2\) で、\(r\)は回転半径です。
  3. 重力と重力加速度: 「重力」は万有引力と遠心力の合力です。北極点では自転の影響(遠心力)がないため、重力は万有引力に等しくなります。この関係から、\(GM\)を\(g\)と\(R\)で表すことができます。
  4. 緯度と回転半径: 緯度\(\phi\)の地点での回転半径は、地球の半径\(R\)を用いて \(r = R\cos\phi\) と表されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 赤道上での力のつり合いの式(遠心力=万有引力)を立てます。次に、北極点での力の関係式(重力=万有引力)を用いて、未知の\(GM\)を既知の\(g, R\)で置き換え、周期\(T\)を求めます。
  2. (2) (1)で求めた式に、与えられた数値を代入して周期\(T\)を計算します。
  3. (3) 北緯60度での万有引力と遠心力の大きさを計算し、それらのベクトル的な関係から、合力が地表の垂線(万有引力の向き)からどれだけ傾くかを三角比などを用いて求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
赤道上にある物体に働く遠心力と万有引力が等しくなる、という条件を数式で表現します。この式には未知の物理量(地球の質量\(M\)、万有引力定数\(G\))が含まれますが、問題文で与えられている「北極点での重力加速度\(g\)」の情報を使ってこれらを消去することができます。
この設問における重要なポイント

  • 赤道上での力の等式: (遠心力)=(万有引力)。赤道上では回転半径は地球の半径\(R\)に等しい。
  • 北極点での力の関係: 北極では自転の影響がないため、物体に働く重力\(mg\)は万有引力と等しくなります。
  • 未知数の消去: 北極点での関係式 \(mg = G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\) から \(GM = gR^2\) という関係を導き、これを赤道上での力の等式に代入します。

具体的な解説と立式
Step 1: 赤道上での力の関係式を立てる

赤道上にある質量\(m\)の物体について考えます。

  • 万有引力: 地球の中心向きに \(F_{\text{引}} = G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)
  • 遠心力: 地球の中心から遠ざかる向きに \(F_{\text{遠心}} = mR\omega^2 = mR\left(\displaystyle\frac{2\pi}{T}\right)^2\)

問題の条件より、これらの大きさが等しいので、
$$ mR\left(\frac{2\pi}{T}\right)^2 = G\frac{Mm}{R^2} \quad \cdots ① $$

Step 2: 未知数\(GM\)を消去する

北極点にある質量\(m\)の物体には、重力\(mg\)が働きます。北極は自転軸上にあるため遠心力は0であり、この重力は万有引力そのものと等しくなります。
$$ mg = G\frac{Mm}{R^2} $$
この式から、
$$ GM = gR^2 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 万有引力の法則: \(F = G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)
  • 遠心力: \(F = mr\omega^2\)
  • 周期と角速度: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
計算過程

①式を周期\(T\)について整理します。
$$ T^2 = \frac{4\pi^2 mR^3}{GMm} = \frac{4\pi^2 R^3}{GM} $$
この式に②の関係 \(GM = gR^2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T^2 &= \frac{4\pi^2 R^3}{gR^2} \\[2.0ex]
&= \frac{4\pi^2 R}{g} \\[2.0ex]
T &= 2\pi\sqrt{\frac{R}{g}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、赤道上で「遠心力」と「万有引力」が釣り合うという条件を数式にします。この式には地球の質量Mなどが含まれていて直接計算できません。そこで、もう一つの情報「北極での重力」を使います。北極では自転の影響がないので、「重力」は純粋な「万有引力」です。この関係を使うと、地球の質量Mなどを、問題で与えられている重力加速度gで置き換えることができます。これにより、周期Tを計算できる形になります。

結論と吟味

自転周期は \(T = 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{R}{g}}\) となります。これは、長さ\(R\)の振り子が重力加速度\(g\)のもとで振動する単振り子の周期と同じ形をしており、興味深い結果です。

解答 (1) \(2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{R}{g}}\) [s]

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で導出した周期\(T\)の式に、与えられた物理量を代入して具体的な数値を計算します。単位系(メートル、秒)を正しく扱うことと、平方根や円周率の計算を丁寧に行うことが重要です。
この設問における重要なポイント

  • 数値の代入: \(g=9.8 \text{ m/s}^2\), \(R=6.4\times 10^6 \text{ m}\), \(\pi=3.14\) を代入する。
  • 計算の工夫: 平方根の中の数値を、平方数を見つけるなどして計算しやすく変形する。

具体的な解説と立式
(1)で求めた式に数値を代入します。
$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{R}{g}} $$

使用した物理公式

  • (1)で導出した周期の式
計算過程

$$
\begin{aligned}
T &= 2 \times 3.14 \times \sqrt{\frac{6.4 \times 10^6}{9.8}} \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \sqrt{\frac{64 \times 10^5}{9.8}} \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \sqrt{\frac{640}{98} \times 10^4} \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \frac{\sqrt{640}}{\sqrt{98}} \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \frac{8\sqrt{10}}{7\sqrt{2}} \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 6.28 \times \frac{8\sqrt{5}}{7} \times 10^2 \\[2.0ex]
&\approx 6.28 \times \frac{8 \times 2.236}{7} \times 10^2 \\[2.0ex]
&\approx 5098 \text{ [s]} \\[2.0ex]
&\approx 5.1 \times 10^3 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)で求めた周期を計算する公式に、問題文で与えられた地球の半径R、重力加速度g、円周率πの値を代入して、電卓を使わずに筆算で答えを求めます。

結論と吟味

周期は約 \(5.1 \times 10^3\) 秒(約85分)となります。これは現在の地球の自転周期(約24時間)よりもはるかに短い値です。赤道上の物体が浮き上がる(無重力になる)ためには、地球が現在より非常に高速で自転する必要があることを示しています。

解答 (2) \(5.1 \times 10^3\) [s]

問(3)

思考の道筋とポイント
(1)で考えた高速自転の状態のとき、北緯60度の地表での力の様子を分析します。この地点では、万有引力は地球の中心を向きますが、遠心力は自転軸に対して垂直に外向きに働きます。この2つのベクトルの合力(見かけの重力)が、地表の垂線(万有引力の向き)からどれだけ傾くかを問われています。
この設問における重要なポイント

  • 北緯60度での回転半径: 緯度が\(\phi=60^\circ\)なので、回転半径は \(r = R\cos 60^\circ = \displaystyle\frac{R}{2}\)。
  • 北緯60度での遠心力: 遠心力は回転半径に比例するため、赤道上の遠心力の半分になる。
  • 力のベクトル図: 「万有引力」と「遠心力」をベクトルとして図示し、その合力を考える。傾きの角度は、これらの力の大きさの比から求めることができる。

具体的な解説と立式
(1)の条件のとき、赤道上では万有引力と遠心力の大きさが等しく、これを \(F_0\) とおきます。
$$ F_0 = G\frac{Mm}{R^2} = mR\omega^2 $$
北緯60度の地点で働く力を考えます。

  • 万有引力: 大きさは地表のどこでもほぼ同じで \(F_0\)。向きは地球の中心向き。
  • 遠心力: 回転半径が \(r = R\cos 60^\circ = \displaystyle\frac{R}{2}\) となるため、遠心力の大きさ \(F’\) は、
    $$ F’ = mr\omega^2 = m\left(\frac{R}{2}\right)\omega^2 = \frac{1}{2}(mR\omega^2) = \frac{1}{2}F_0 $$
    向きは自転軸に垂直外向きです。

地表の垂線(万有引力の向き)と、遠心力\(F’\)のベクトルのなす角は \(60^\circ\) です。
この遠心力\(F’\)を、万有引力に平行な成分と垂直な成分に分解します。

  • 万有引力と逆向きの成分: \(F’\cos 60^\circ\)
  • 地表の垂線に垂直な成分: \(F’\sin 60^\circ\)

合力(重力)が垂線から傾く角度\(\alpha\)は、この垂直成分によって生じます。
合力の垂線方向成分と、垂線に垂直な方向成分の比から\(\tan\alpha\)が求まります。
$$ \tan\alpha = \frac{F’\sin 60^\circ}{F_0 – F’\cos 60^\circ} $$

使用した物理公式

  • 力のベクトル合成
計算過程

\(F’ = \displaystyle\frac{1}{2}F_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\tan\alpha &= \frac{\frac{1}{2}F_0 \sin 60^\circ}{F_0 – \frac{1}{2}F_0 \cos 60^\circ} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{1}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}}{1 – \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{\sqrt{3}}{4}}{1 – \frac{1}{4}} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{\sqrt{3}}{4}}{\frac{3}{4}} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{3} = \frac{1}{\sqrt{3}}
\end{aligned}
$$
\(\tan\alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) なので、傾く角度は \(\alpha = 30^\circ\) となります。

計算方法の平易な説明

北緯60度では、地球の中心に向かう「万有引力」と、斜め外側に向かう「遠心力」が働きます。この2つの力を合成したものが、その場所での「本当の重力」になります。この「本当の重力」が、もともとの万有引力の方向(地面に垂直な方向)からどれだけ傾いているかを、ベクトルの足し算(力の合成)で計算します。

結論と吟味

合力(重力)は地表の垂線に対して \(30^\circ\) 傾きます。これは、遠心力の影響で、見かけの重力が少しだけ赤道側にずれることを意味しています。この現象は「重力の偏角」として知られており、物理的に妥当な結果です。

解答 (3) \(30^\circ\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 万有引力の法則と遠心力の関係:
    • 核心: 地球の自転を考慮した場合、地表の物体が受ける「重力」は、地球の中心に向かう「万有引力」と、自転軸から遠ざかる向きの「遠心力」の合力として定義されます。この問題は、この3つの力の関係性を正しく理解しているかを問うています。
    • 理解のポイント:
      • 万有引力: 常に地球の中心を向く。大きさは \(G\frac{Mm}{R^2}\)。
      • 遠心力: 常に自転軸から垂直に遠ざかる向きを向く。大きさは \(m(R\cos\phi)\omega^2\)。(\(\phi\)は緯度)
      • 重力: 上記2つのベクトルの和。そのため、重力は厳密には地球の中心を向いていません(赤道と両極を除く)。
  • 基準点(北極点)との関係づけ:
    • 核心: 問題には地球の質量\(M\)や万有引力定数\(G\)が与えられていません。しかし、北極点では遠心力が0になるため、「重力=万有引力」という関係が成り立ちます。これを利用して、測定可能な量である重力加速度\(g\)と地球の半径\(R\)を用いて、未知の積\(GM\)を \(GM=gR^2\) と表すことができます。
    • 理解のポイント: このテクニックは、万有引力に関する問題を解く上での非常に重要な定石です。未知の定数を、既知の物理量で置き換えることで、具体的な計算が可能になります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 人工衛星の運動: 人工衛星の円運動では、万有引力が向心力として働きます。その速さや周期を求める問題は、この問題の(1)と類似した考え方で解けます。
    • 地表での重力加速度の緯度依存性: 遠心力は赤道で最大、高緯度になるほど小さくなるため、見かけの重力加速度も緯度によってわずかに変化します。その差を計算する問題などに応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 力のベクトル図を描く: まず、地表の物体に働く「万有引力」と「遠心力」を、向きと相対的な大きさを意識してベクトルで描きます。特に、緯度がある地点では、この2つの力が一直線上にないことが重要です。
    2. 回転半径を正しく求める: 遠心力の計算で最も重要なのは回転半径\(r\)です。緯度\(\phi\)の地点では、\(r=R\cos\phi\) となることを忘れないようにします。赤道なら\(\phi=0\)、北極なら\(\phi=90^\circ\)です。
    3. \(GM=gR^2\) の関係式を疑う: 問題に\(M\)や\(G\)がなく、代わりに\(g\)が与えられている場合、ほぼ確実に \(GM=gR^2\) の関係式を使うことになります。この関係式を導出、または利用する準備をしておきましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 重力と万有引力の混同:
    • 誤解: 日常的に使う「重力」と、物理学的な「万有引力」を同じものだと考えてしまう。
    • 対策: 自転を考慮する場合、この2つは明確に区別する必要があります。「重力=万有引力+遠心力(ベクトル和)」という定義をしっかり理解しましょう。自転を無視できる場合や、北極・南極でのみ「重力≒万有引力」となります。
  • 遠心力の向きの間違い:
    • 誤解: 遠心力が常に地球の中心から遠ざかる向き(動径方向)に働くと勘違いする。
    • 対策: 遠心力は、あくまで「自転軸」から垂直に遠ざかる向きに働きます。北緯60度の地点では、斜め外側を向くことになります。必ず図を描いて向きを確認しましょう。
  • (3)での力の分解のミス:
    • 誤解: (3)で、万有引力と遠心力のなす角を\(90^\circ\)として単純な三平方の定理で考えてしまう。
    • 対策: 北緯60度では、地球の中心を向く万有引力と、自転軸に垂直な遠心力のなす角は\(60^\circ\)です。この2つのベクトルを正しく図示し、ベクトルの合成(または分解)を行う必要があります。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 地球の断面図: 地球を北極と南極を通る面で切った断面図を描くのが最も有効です。この図に、中心、自転軸、赤道面、緯度\(\phi\)の点を描き込みます。
    • 力のベクトルを書き込む: 緯度\(\phi\)の点から、中心に向かって万有引力のベクトルを描き、自転軸に垂直外向きに遠心力のベクトルを描きます。この2つのベクトルで平行四辺形を作り、その対角線が「重力」のベクトルになります。地表の垂線(万有引力の向き)と、この重力ベクトルのなす角が「重力の偏角」です。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 回転半径\(r\)の明記: 断面図に、緯度\(\phi\)の点から自転軸に下ろした垂線を引き、これが回転半径\(r=R\cos\phi\)であることを明記します。
    • 角度の関係を正確に: 緯度\(\phi\)の定義(赤道面と動径のなす角)と、万有引力と遠心力のなす角(\(90^\circ-\phi\)や\(\phi\)など、図の取り方による)の関係を正確に把握することが、(3)を解く上での鍵となります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 万有引力の法則 (\(F=G\frac{Mm}{R^2}\)):
    • 選定理由: 地球と物体との間に働く根源的な引力を記述するため。
    • 適用根拠: ニュートンによって発見された、質量を持つ全ての物体の間に働く普遍的な法則です。
  • 遠心力の式 (\(F=mr\omega^2\)):
    • 選定理由: 地球の自転という回転運動に伴って、地表の物体に働く見かけの力を記述するため。
    • 適用根拠: 回転座標系(非慣性系)で運動を記述する際に導入される慣性力の一種です。
  • \(GM=gR^2\):
    • 選定理由: 直接測定が困難な\(G\)や\(M\)を、測定が容易な\(g\)と\(R\)で置き換えるため。これにより、具体的な計算が可能になります。
    • 適用根拠: 北極点において「重力=万有引力」が成り立つという物理的な事実に基づいた関係式です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 周期\(T\)の導出:
    • 戦略: 赤道での力の等式と、北極での関係式を連立させる。
    • フロー: ①赤道で「遠心力=万有引力」の式を立てる。②北極で「重力=万有引力」の式を立て、\(GM=gR^2\)を導く。③ ①の式に②を代入し、\(T\)について解く。
  2. (2) 数値計算:
    • 戦略: (1)の式に与えられた数値を代入する。
    • フロー: ①\(T=2\pi\sqrt{R/g}\)に\(R, g, \pi\)の値を代入。②平方根の計算などを工夫し、有効数字に注意して答えを求める。
  3. (3) 重力の傾き:
    • 戦略: 北緯60度での万有引力と遠心力をベクトルとして考え、その合力の向きを調べる。
    • フロー: ①北緯60度での回転半径\(r\)と遠心力\(F’\)の大きさを求める。②万有引力\(F_0\)と遠心力\(F’\)をベクトル図示する。③力のベクトルを分解し、地表の垂線方向とそれに垂直な方向の成分を求める。④2つの成分の比から\(\tan\alpha\)を計算し、角度\(\alpha\)を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式のまま計算を進める: (1)や(3)では、最後まで文字式のまま計算し、最終的な形にしてから数値を代入する((2))または結論を出す((3))方が、計算ミスが少なく、物理的な意味も見失いにくいです。
  • 比で考える: (3)では、万有引力と遠心力の「大きさの比」を先に求めると、計算が簡略化されます。(1)の条件から赤道上では \(F_0 : F_{\text{遠心}}=1:1\)。北緯60度では遠心力は赤道の半分になるので、\(F_0 : F’ = 1 : 1/2 = 2:1\) となり、この比を使って作図すると角度の関係が分かりやすくなります。
  • 概算の習慣: (2)の計算では、\(\sqrt{6.4/9.8} \approx \sqrt{0.65} \approx 0.8\) のように大まかな値を予測しておくと、計算結果が大きくずれていないかを確認できます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2)の周期(約85分)は、現在の自転周期(24時間)よりずっと短いです。これは「遠心力が万有引力に匹敵する」という極端な状況設定を反映しており、妥当な結果です。
    • (3)の傾き\(30^\circ\)は、物理的に意味のある角度です。遠心力は物体を赤道方向に引っ張る効果があるため、重力が赤道側に傾くのは直感に合っています。もし北極側に傾くような結果が出たら、計算ミスを疑うべきです。
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167 地球を貫通するトンネル

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