「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅰ 章 3】発展例題~発展問題83

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発展例題

発展例題6 斜面上で静止する物体

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 別解1: 斜面に平行・垂直な方向で分解する解法
      • 主たる解法が鉛直・水平方向で力を分解するのに対し、この別解では斜面問題の定石である「斜面に平行な方向」と「斜面に垂直な方向」で力を分解します。
    • 別解2: 力のベクトル三角形を用いる解法
      • 上記2つの解法が、力を成分に分解して代数的に解くのに対し、この別解では3つの力がつりあって閉じた三角形を作るという幾何学的な性質を利用し、三角比を用いて直接的に力の大きさを求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: 1つの問題に対して、座標軸の取り方を変える2つのアプローチと、図形的に解くアプローチを学ぶことで、状況に応じて最適な解法を選択する能力が養われます。
    • 物理的本質の深化: どの解法を用いても同じ結論に至ることから、力のつりあいという物理法則の普遍性を確認できます。また、ベクトル三角形の解法は、力のベクトル的な性質を直感的に理解する助けとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「斜面上での3力のつりあい」です。物体にはたらく3つの力(重力、垂直抗力、外力)が静止している状況を扱います。この問題を解く鍵は、どの力をどの方向に分解するか、すなわち「どの座標軸で考えるか」という戦略の選択にあります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力の図示: 物体にはたらく全ての力(重力、垂直抗力、加えられた水平力)を漏れなく図示できること。
  2. 座標軸の選択と力の分解: 物理現象を解析するために、適切な座標軸(水平・鉛直、または斜面平行・垂直)を設定し、その軸に対して斜めを向いた力を三角比を用いて正しく成分に分解できること。
  3. 力のつりあいの条件: 物体が静止しているとき、設定した座標軸の各方向で、力の成分の和がゼロになる(力がつりあっている)ことを理解していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 主たる解法(水平・鉛直方向で分解): 鉛直・水平方向を座標軸とし、斜めを向いた垂直抗力を分解して、各方向の力のつりあいの式を立てます。
  • 別解1(斜面平行・垂直方向で分解): 斜面問題の定石通り、斜面に平行・垂直な方向を座標軸とし、重力と水平力を分解して、各方向の力のつりあいの式を立てます。
  • 別解2(力のベクトル三角形): 3つの力がつりあうとき、それらのベクトルが閉じた三角形をなすことを利用し、図形の性質から力の大きさを求めます。

思考の道筋とポイント
物体は「静止」しているので、物体にはたらく力はつりあっています。物体にはたらく力は、鉛直下向きの「重力」、水平右向きの「力 \(F\)」、そして斜面に垂直な向きの「垂直抗力 \(N\)」の3つです。これらの力をうまく分解し、力のつりあいの式を立てます。
主たる解法では、重力と力 \(F\) がすでに鉛直・水平方向を向いていることに着目し、垂直抗力 \(N\) のみを鉛直・水平方向に分解します。
この設問における重要なポイント

  • 座標軸を「鉛直方向」と「水平方向」に設定する。
  • 3つの力のうち、斜めを向いている「垂直抗力 \(N\)」を分解対象とする。
  • 垂直抗力 \(N\) と鉛直線のなす角が、斜面の傾斜角 \(\theta\) と等しくなることを見抜く。

具体的な解説と立式
物体にはたらく力は、重力(大きさ \(mg\)、鉛直下向き)、加えられた力(大きさ \(F\)、水平右向き)、垂直抗力(大きさ \(N\)、斜面に垂直)の3つです。
鉛直方向をy軸、水平方向をx軸とします。この座標軸に対して斜めを向いている垂直抗力 \(\vec{N}\) を分解します。
図より、\(\vec{N}\) が鉛直(y軸)となす角は \(\theta\) です。したがって、
– \(\vec{N}\) の鉛直成分: \(N\cos\theta\)(上向き)
– \(\vec{N}\) の水平成分: \(N\sin\theta\)(左向き)

物体は静止しているので、各方向で力がつりあっています。
– 鉛直方向のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
N\cos\theta &= mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
– 水平方向のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの力}) &= (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
F &= N\sin\theta \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあいの条件
  • 力の成分分解
計算過程

まず、式①を \(N\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{mg}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
次に、この結果を式②に代入して \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= \left( \frac{mg}{\cos\theta} \right) \sin\theta \\[2.0ex]
&= mg \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= mg\tan\theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物体にはたらく3つの力を、「上下方向の力」と「左右方向の力」に分けて考えます。斜めを向いている「垂直抗力」だけを、「上向きの分身」と「左向きの分身」に分解します。物体は静止しているので、上下方向では「垂直抗力の上向き分身」と「重力」が、左右方向では「加えられた右向きの力 \(F\)」と「垂直抗力の左向き分身」が、それぞれつりあっているはずです。この2つのつりあいの式を解くことで、答えを求めます。

結論と吟味

力 \(F\) の大きさは \(mg\tan\theta\)、垂直抗力 \(N\) の大きさは \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\) と求まりました。
もし \(\theta=0\)(斜面が水平)なら、\(\tan 0 = 0, \cos 0 = 1\) なので \(F=0, N=mg\) となり、物理的な直感と一致します。

解答 力の大きさ \(F\): \(mg\tan\theta\), 垂直抗力の大きさ \(N\): \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\)
別解1: 斜面に平行・垂直な方向で分解する解法

思考の道筋とポイント
斜面上の問題の定石通り、斜面に平行な方向と垂直な方向を座標軸として考えます。この場合、垂直抗力 \(N\) はすでに軸の方向を向いているため、分解する必要がありません。代わりに、鉛直下向きの「重力」と水平右向きの「力 \(F\)」を、この新しい座標軸に合わせて分解します。
この設問における重要なポイント

  • 座標軸を「斜面に平行」と「斜面に垂直」に設定する。
  • 「重力 \(mg\)」と「力 \(F\)」を、この座標軸の方向に分解する。

具体的な解説と立式
斜面に平行な方向をx軸、垂直な方向をy軸とします。
– 重力 \(mg\) の分解:

  • x成分: \(mg\sin\theta\)(斜面下向き)
  • y成分: \(mg\cos\theta\)(斜面を押し込む向き)

– 力 \(F\) の分解:

  • x成分: \(F\cos\theta\)(斜面上向き)
  • y成分: \(F\sin\theta\)(斜面を押し込む向き)

各方向で力がつりあっています。
– 斜面に平行な方向(x軸)のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{斜面上向きの力}) &= (\text{斜面下向きの力}) \\[2.0ex]
F\cos\theta &= mg\sin\theta \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
– 斜面に垂直な方向(y軸)のつりあい:
$$
\begin{aligned}
(\text{斜面から離れる向きの力}) &= (\text{斜面に押し込む向きの力}) \\[2.0ex]
N &= mg\cos\theta + F\sin\theta \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあいの条件
  • 力の成分分解
計算過程

まず、式③を \(F\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
F &= mg\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= mg\tan\theta
\end{aligned}
$$
次に、この結果を式④に代入して \(N\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
N &= mg\cos\theta + (mg\tan\theta)\sin\theta \\[2.0ex]
&= mg\cos\theta + mg\frac{\sin^2\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= mg \left( \cos\theta + \frac{\sin^2\theta}{\cos\theta} \right) \\[2.0ex]
&= mg \left( \frac{\cos^2\theta + \sin^2\theta}{\cos\theta} \right)
\end{aligned}
$$
ここで \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
N &= mg \left( \frac{1}{\cos\theta} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{mg}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

今度は、物差しを斜面に当てて、「斜面に沿った方向」と「斜面に垂直な方向」の力のつりあいを考えます。この場合、「重力」と「加えられた水平力 \(F\)」の両方が斜めを向いているので、これら2つを分解する必要があります。それぞれの方向で力のつりあいの式を立てて解くと、同じ答えが得られます。

結論と吟味

主たる解法と完全に一致した結果が得られました。分解する力は2つに増えますが、斜面上の問題ではこちらの考え方が基本となることが多いです。

解答 力の大きさ \(F\): \(mg\tan\theta\), 垂直抗力の大きさ \(N\): \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\)
別解2: 力のベクトル三角形を用いる解法

思考の道筋とポイント
物体にはたらく3つの力(重力 \(\vec{W}\)、水平力 \(\vec{F}\)、垂直抗力 \(\vec{N}\))はつりあっているので、これらのベクトルを矢印でつなぐと、閉じた三角形ができます。この「力のベクトル三角形」の辺の長さと角度の関係(三角比)から、未知の力の大きさを求めます。
この設問における重要なポイント

  • 3つの力ベクトルで閉じた三角形を描く。
  • 重力(鉛直)と水平力(水平)が直角をなすため、力のベクトル三角形が「直角三角形」になることを見抜く。
  • 垂直抗力と鉛直線のなす角が \(\theta\) であることを利用する。

具体的な解説と立式
3つの力ベクトル \(\vec{W}, \vec{F}, \vec{N}\) をつなぐと、閉じた三角形ができます。
– \(\vec{W}\) は鉛直下向き、\(\vec{F}\) は水平右向きなので、この2つのベクトルがなす角は \(90^\circ\) です。
– したがって、力のベクトル三角形は、辺の大きさが \(mg\) と \(F\) の2辺が直角をなす、直角三角形となります。斜辺の大きさは \(N\) です。
– 幾何学的な関係から、この直角三角形において、鉛直な辺(大きさ \(mg\))と斜辺(大きさ \(N\))のなす角は、斜面の傾斜角 \(\theta\) と等しくなります。

この直角三角形において、三角比の定義を適用します。
– \(\tan\theta\) の関係:
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{\text{対辺}}{\text{隣辺}} \\[2.0ex]
&= \frac{F}{mg}
\end{aligned}
$$
– \(\cos\theta\) の関係:
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &= \frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}} \\[2.0ex]
&= \frac{mg}{N}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい(ベクトル三角形)
  • 三角比の定義
計算過程

上記の2つの式を、それぞれ \(F\) と \(N\) について解きます。
– \(F\) の計算:
$$
\begin{aligned}
F &= mg\tan\theta
\end{aligned}
$$
– \(N\) の計算:
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{mg}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

3つの力の矢印を、しっぽに頭をつなぐように並べると、ちょうど元の場所に戻ってくる三角形ができます。今回は、重力(真下)と加えた力(真横)が直角なので、この三角形は直角三角形になります。この三角形の角度や辺の長さを、三角比を使って計算することで、答えを求めることができます。

結論と吟味

他の2つの解法と完全に一致した結果が得られました。3力のつりあいの問題で、特に力が直交している場合、この図形的な解法は非常に見通しが良く、計算も最もシンプルになります。

解答 力の大きさ \(F\): \(mg\tan\theta\), 垂直抗力の大きさ \(N\): \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 座標軸の任意性と力の分解
    • 核心: この問題の核心は、物体にはたらく力がつりあっているとき、そのつりあいの式は「どのような直交座標軸を選んで力を分解しても」等しく成り立つ、という物理法則の普遍性を理解することにあります。主たる解法(水平・鉛直分解)と別解1(斜面平行・垂直分解)は、まさにこの「座標軸の取り方は任意である」という原理を体現しています。どちらの座標軸を選ぶかによって計算の複雑さは変わりますが、物理的な結論は同じになることを学ぶのがこの問題の狙いです。
    • 理解のポイント:
      • なぜ分解するのか?: 力はベクトル量であり、向きを持ちます。複数の力がつりあう条件(ベクトル和がゼロ)を代数的に扱うためには、各ベクトルを共通の基準(座標軸)に沿った成分に分解し、成分ごとに和がゼロになる、というスカラー方程式に変換する必要があります。
      • 座標軸の選択戦略:
        • 戦略1(主たる解法): 分解する力の数が最も少なくなるように座標軸を選ぶ。この問題では、重力と外力\(F\)が既に水平・鉛直を向いているため、垂直抗力\(N\)の1つを分解するだけで済みます。
        • 戦略2(別解1): 注目する物理現象や未知の力が軸に沿うように座標軸を選ぶ。斜面上の問題では、物体の運動や垂直抗力が斜面に沿った方向に関わるため、斜面に平行・垂直な座標軸を選ぶのが定石です。この問題では、重力と外力\(F\)の2つを分解する必要があります。
      • 結論の不変性: どちらの戦略で計算を進めても、最終的に得られる \(F\) と \(N\) の答えは全く同じになります。これは、物理法則が人間が設定する座標系に依存しないことの現れです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 糸で斜めに引かれる物体: 「水平な床の上の物体を、斜め上方に糸で引いて静止させた。摩擦力と垂直抗力はいくらか?」という問題。この場合、水平・鉛直方向を座標軸に選ぶのが自然です。糸の張力を水平・鉛直成分に分解し、水平方向のつりあい(張力の水平成分 = 摩擦力)と鉛直方向のつりあい(張力の鉛直成分 + 垂直抗力 = 重力)を考えます。
    • 複数の力がはたらく斜面上の物体: 「斜面上に置かれた物体を、斜面に沿って上向きにばねで支え、さらに水平方向にも糸で引いて静止させた」といった複雑な問題。この場合でも、斜面に平行・垂直な座標軸を設定し、重力と水平方向の張力をその座標軸に沿って分解すれば、あとは機械的につりあいの式を立てることができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まずは全ての力を図示する: どんな問題でも、これが第一歩です。重力、垂直抗力、張力、外力など、物体にはたらく力を漏れなく描き出します。
    2. 最適な座標軸を見極める: 図示 した力のうち、分解する力の数が最も少なくなる座標軸はどれか、あるいは、求めたい未知の力(垂直抗力など)が軸に沿うような座標軸はどれか、を考えます。迷ったら、斜面問題の定石である「斜面に平行・垂直」な軸で試してみるのが良いでしょう。
    3. 角度の関係を正確に把握する: 力を分解する際に必要となる角度を、図形の性質(錯角、同位角、直角三角形の性質など)を使って慎重に特定します。ここが最も間違いやすいポイントです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 分解する力の選択ミス:
    • 誤解: 斜面問題だからという理由で、常に重力だけを分解するものだと思い込んでしまう。
    • 対策: どの力を分解するかは、自分がどの座標軸を選んだかによって決まります。水平・鉛直を軸に選んだなら、それに対して斜めを向いている力(この問題では垂直抗力)を分解します。斜面に平行・垂直を軸に選んだなら、それに対して斜めを向いている力(重力と外力\(F\))を分解します。「どの軸で考えるか」を最初に宣言する癖をつけましょう。
  • 角度の取り違え:
    • 誤解: 主たる解法で、垂直抗力\(N\)と水平線のなす角を \(\theta\) と勘違いし、水平成分を \(N\cos\theta\)、鉛直成分を \(N\sin\theta\) と逆にしてしまう。
    • 対策: 図を丁寧に描き、補助線を引いて角度の関係を確認することが不可欠です。垂直抗力の作用線(斜面に垂直)と鉛直線がなす角が \(\theta\) になること、あるいは、垂直抗力の作用線と水平線がなす角が \(90^\circ-\theta\) になることを、毎回図形的に確認しましょう。
  • 3力のつりあいを2力のつりあいと混同する:
    • 誤解: 例えば、重力の斜面成分 \(mg\sin\theta\) と外力 \(F\) がつりあっている、などと単純に考えてしまう。
    • 対策: 3つ以上の力がはたらくつりあいでは、ある2力が直接つりあうことはありません。必ず、「ある方向の力の成分の和がゼロになる」という形で考えます。別解1のように、\(F\cos\theta\) と \(mg\sin\theta\) がつりあうのは、これらが「斜面に平行」という一つの方向における全ての力の成分だからです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • アプローチ選択(座標軸の選択と力の分解):
    • 選定理由: 3つの力が異なる方向を向いてつりあっているため、ベクトル和がゼロになるという条件を直接扱うのは困難です。そこで、全ての力を共通のルール(座標系)の上で表現し、比較可能にするために「力の分解」という操作を行います。どの座標系を選ぶかは、計算の便宜上の問題であり、物理的な本質は変わりません。
    • 適用根拠: ベクトルで記述された物理法則は、任意の直交座標系において、各成分ごとに独立したスカラー方程式として表現できる、というベクトル解析の基本原理に基づいています。これにより、向きの情報を含む複雑なベクトル方程式を、向きの情報を含まない単純な代数方程式の組として解くことが可能になります。
  • 別解2のアプローチ選択(ベクトル三角形):
    • 選定理由: 「3力のつりあい」という条件は、幾何学的には「3つの力ベクトルを矢印でつなぐと、閉じた三角形ができる」という条件と完全に等価です。特に、この問題のように、つりあう3つの力のうち2つ(重力と外力\(F\))が直交している場合、このベクトル三角形は直角三角形になります。直角三角形の辺の長さの関係は三角比で簡単に表せるため、代数的な連立方程式を解くよりもはるかに簡単かつ直感的に解を得ることができます。
    • 適用根拠: 力のベクトル和がゼロになるという物理条件を、ベクトル図形の幾何学的性質に直接翻訳して解いています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の計算に慣れる: この問題は全て文字式で解くため、三角関数の扱いに慣れておく必要があります。特に、\(\tan\theta = \sin\theta / \cos\theta\) や \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) といった基本的な公式は、スムーズに使えるようにしておきましょう。
  • 答えの次元(単位)を確認する: 例えば、\(F\) と \(N\) の答えは、どちらも \(mg\) に三角関数の比を掛けた形になっています。\(mg\) は力の次元を持つので、三角関数(無次元量)を掛けても力の次元のままであり、答えが力の次元を持っていることが確認できます。もし答えが \(mg/\sin\theta\) のようになった場合、次元は合っていますが、\(\theta \to 0\) で発散するなど物理的におかしくないか、極端な場合を考えて吟味することが有効です。
  • 図を大きく丁寧に描く: 力を分解し、角度を書き込む際には、図が小さいと混乱しやすくなります。計算用紙に、問題の図を大きく描き写し、そこに補助線や分解した力、角度などを分かりやすく書き込むことが、ミスを防ぐ上で非常に効果的です。

発展例題7 力のつりあい

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)と(2)の別解: 「人と台を一体」とみなす解法
      • 主たる解法が、「人」と「台」を別々の物体として扱い、それぞれに働く力のつりあいの式を立て、連立させて解くのに対し、別解では「人と台」を一つの「系(システム)」とみなし、系全体にはたらく外力(系全体の重力、地面からの垂直抗力、人がひもから受ける力)のつりあいから、垂直抗力を直接計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の効率化: 人と台の間で及ぼしあう内力(人が台を押す力、台が人を支える力)を考える必要がなくなり、より少ないステップで直接答えを導くことができます。
    • 物理的本質の深化: 「系」という考え方を学ぶことで、どの力が内力でどの力が外力なのかを区別する訓練になり、より複雑な多体問題(例: 運動方程式)への応用力が養われます。特に、人がひもを引く力(内力)と、ひもが人を引く力(外力)の区別が重要になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「内力と外力が関わる複数物体のつりあい」です。人が自分自身を含むシステム(人と台)を持ち上げようとする、一見すると複雑な状況を扱います。この問題を解く鍵は、①「人」と「台」を別々に考える方法と、②「人と台を一体」と考える方法の2つの視点を理解することです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力の図示: 注目する物体(または系)にはたらく力を、接触力・非接触力ともに漏れなく図示できること。
  2. 力のつりあいの条件: 静止している物体(または系)にはたらく力の合力はゼロであること。
  3. 作用・反作用の法則: 「AがBに及ぼす力」と「BがAに及ぼす力」は、大きさが等しく向きが逆であること。人がひもを引く力とひもが人を引く力、人が台を押す力と台が人を支える力などがこれに該当します。
  4. 内力と外力: 複数の物体を一体の「系」として考えるとき、系内部の物体同士で及ぼしあう力を「内力」、系の外部から系にはたらく力を「外力」と区別すること。系の運動(または静止)を決めるのは外力のみです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 主たる解法(人、台を別々に考える):
    1. (1)では、「人」と「台」それぞれについて、はたらく力を図示し、力のつりあいの式を立てます。
    2. 人と台の間で及ぼしあう力(垂直抗力)を未知数として含む2つの式を連立させ、地面からの垂直抗力 \(N\) を求めます。
    3. (2)では、(1)で求めた \(N\) の式に、地面からはなれる条件 \(N=0\) を代入して、そのときの張力 \(T\) を求めます。
  • 別解(人と台を一体と考える):
    1. (1)では、「人と台」を一体の系とみなし、この系にはたらく「外力」のみを図示します。
    2. 系全体にはたらく外力のつりあいの式を立て、地面からの垂直抗力 \(N\) を直接求めます。
    3. (2)では、(1)と同様に、\(N=0\) の条件を系全体のつりあいの式に適用して、張力 \(T\) を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
台が地面から受ける垂直抗力の大きさ \(N\) を求めます。この問題は、「人」と「台」という2つの物体が関わっており、両者の間にも力が及ぼしあわれています。主たる解法では、それぞれの物体に注目し、個別に力のつりあいの式を立てて連立する方法をとります。
この設問における重要なポイント

  • 「人」と「台」それぞれについて、はたらく力を正確に図示する。
  • 人が台を押す力と、台が人を支える力は、作用・反作用の関係にある。
  • 人がひもを引く力と、ひもが人を引く力も、作用・反作用の関係にある。
  • ひもが台を引く力も、人がひもを引く力と同じ大きさ \(T\) である。

具体的な解説と立式
【人にはたらく力】
人にはたらく力は以下の3つです。

  1. 地球が人を引く力「重力」(大きさ \(W\)、下向き)
  2. ひもが人を引く力「張力」(大きさ \(T\)、上向き)
  3. 台が人を支える力「垂直抗力」(大きさ \(N’\)、上向き)

人は静止しているので、これらの力がつりあっています。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力の和}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
T + N’ &= W \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

【台にはたらく力】
台にはたらく力は以下の4つです。

  1. 地球が台を引く力「重力」(大きさ \(w\)、下向き)
  2. 人が台を押す力(大きさ \(N’\)、下向き)
  3. 地面が台を支える力「垂直抗力」(大きさ \(N\)、上向き)
  4. ひもが台を引く力「張力」(大きさ \(T\)、上向き)

台も静止しているので、これらの力がつりあっています。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力の和}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
T + N &= w + N’ \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
ここで、「人が台を押す力」は「台が人を支える力」の反作用なので、大きさは同じ \(N’\) となります。

使用した物理公式

  • 力のつりあいの条件
  • 作用・反作用の法則
計算過程

求めたいのは \(N\) ですが、式②には未知数 \(N’\) が含まれています。そこで、式①を \(N’\) について解き、式②に代入します。
式①より、
$$
\begin{aligned}
N’ &= W – T
\end{aligned}
$$
これを式②に代入すると、
$$
\begin{aligned}
T + N &= w + (W – T) \\[2.0ex]
N &= W + w – 2T
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

人と台を別々に考えます。
まず「人」に注目すると、人は自分の体重で下に、ひもと台に上に支えられています。
次に「台」に注目すると、台は自分の重さと人からの力で下に、地面とひもに上に支えられています。
この2つのつりあいの関係を連立方程式として解くことで、地面が台を支える力(垂直抗力)を計算します。

結論と吟味

垂直抗力 \(N\) は \(W+w-2T\) と求まりました。人がひもを引く力 \(T\) が大きくなるほど、垂直抗力 \(N\) は小さくなることがわかります。これは、ひもを引くことで、その力が自分自身と台の両方を持ち上げるのを助けているため、地面が支えるべき力が減るという物理的な直感と一致します。

解答 (1) \(W+w-2T\)

問(2)

思考の道筋とポイント
台が地面からはなれる「瞬間」の張力 \(T\) を求めます。「地面からはなれる」という物理的な現象を、「地面が台を支える必要がなくなる」、すなわち「垂直抗力 \(N\) がちょうどゼロになる」という数式的な条件に置き換えることが鍵です。この \(N=0\) という条件を、(1)で求めた \(N\) の式に代入します。
この設問における重要なポイント

  • 「地面からはなれる瞬間」の条件は、垂直抗力 \(N=0\) である。
  • (1)で求めた \(N\) と \(T\) の関係式に、\(N=0\) を代入する。

具体的な解説と立式
(1)で求めた垂直抗力 \(N\) の式は、
$$
\begin{aligned}
N &= W+w-2T
\end{aligned}
$$
です。台が地面からはなれる条件 \(N=0\) をこの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= W+w-2T
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあいの条件 (\(N=0\))
計算過程

上記で立式した式を \(T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2T &= W+w \\[2.0ex]
T &= \frac{W+w}{2}
\end{aligned}
$$
したがって、張力 \(T\) がこの値よりも大きくなれば、台は地面からはなれます。

この設問の平易な説明

台が地面から浮き上がる瞬間は、地面が台を支える力(垂直抗力)がちょうどゼロになるときです。(1)で求めた式に「垂直抗力=0」を当てはめて、そのときのひもを引く力 \(T\) を計算します。

結論と吟味

張力 \(T\) が、人と台の合計の重さの半分に等しくなるときに、台が浮き上がることがわかりました。これは、上向きの力 \(2T\) が、下向きの力 \(W+w\) とつりあう瞬間に対応しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{W+w}{2}\)
別解: 「人と台を一体」とみなす解法

思考の道筋とポイント
「人と台」を一つの「系」としてまとめて考えます。この系全体にはたらく「外力」のみに着目して、力のつりあいの式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 人と台を一体の「系」とみなす。
  • 系にはたらく「外力」を正しく特定する(系全体の重力、地面からの垂直抗力、ひもが系を引く力)。
  • 人がひもを引く力は「内力」、ひもが人を引く力は「外力」であることに注意する。

具体的な解説と立式
人と台を一体の系とみなします。この系にはたらく外力は以下の通りです。

  1. 系全体の重力(大きさ \(W+w\)、下向き)
  2. 地面が系(台)を支える力「垂直抗力」(大きさ \(N\)、上向き)
  3. ひもが系(人)を引く力(大きさ \(T\)、上向き)
  4. ひもが系(台)を引く力(大きさ \(T\)、上向き)

系全体は静止しているので、これらの外力がつりあっています。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力の和}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
N + T + T &= W+w \\[2.0ex]
N + 2T &= W+w
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあいの条件
計算過程

【設問(1)の計算】
上記で立式した式を \(N\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
N &= W+w-2T
\end{aligned}
$$

【設問(2)の計算】
台が地面からはなれる条件 \(N=0\) を、上記で立てた系全体のつりあいの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
0 + 2T &= W+w \\[2.0ex]
2T &= W+w \\[2.0ex]
T &= \frac{W+w}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

人と台を一つの大きな塊と見なします。この塊には、下向きに全体の重さ(\(W+w\))がかかっています。一方、上向きには、地面が支える力(垂直抗力 \(N\))と、ひもが人を引く力(\(T\))、さらにひもが台を引く力(\(T\))の合計3つの力がはたらいています。これらの力のつりあいを考えることで、問題を解くことができます。

結論と吟味

主たる解法と完全に一致した結果が得られました。人と台の間にはたらく内力を考える必要がないため、立式が非常にシンプルになります。

解答 (1) \(W+w-2T\)
解答 (2) \(\displaystyle\frac{W+w}{2}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 内力と外力が関わる複数物体のつりあい
    • 核心: この問題の核心は、人が自分自身を含むシステム(人と台)を持ち上げようとする、一見すると複雑な状況を、物理法則に基づいて正しく分析できるかどうかにあります。特に、①「人」と「台」を別々に考える方法と、②「人と台を一体」と考える方法の2つの視点を持ち、物体間にはたらく「内力」と、系の外部からはたらく「外力」を明確に区別することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 物体ごとの分析(主たる解法):
        • 人と台を別々の物体として扱い、それぞれにはたらく力をすべてリストアップします。
        • 人と台の間で及ぼしあう力(人が台を押す力/台が人を支える力)は、作用・反作用の関係にある内力です。
        • それぞれの物体について力のつりあいの式を立て、連立方程式として解きます。
      • 系全体の分析(別解):
        • 人と台を一つの「系」とみなします。
        • この系にはたらく「外力」のみに着目します。外力は、①系全体の重力(\(W+w\))、②地面からの垂直抗力(\(N\))、③天井の滑車を介して系を上向きに引く2本のひもの力(\(2T\))です。
        • 人と台の間にはたらく力は「内力」なので、系全体のつりあいを考える際には無視できます。
        • 外力のつりあいの式を立てることで、内力を介さずに直接 \(N\) と \(T\) の関係を導けます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 運動する2物体(運動方程式): この問題のつりあいが崩れ、人が自分と台を加速度 \(a\) で持ち上げる場合。系全体で考えれば、運動方程式は \( (M+m)a = 2T – (W+w) \) となります(\(M, m\) は質量)。各物体で考えれば、より複雑な連立方程式になります。
    • 動滑車を含む場合: 滑車が動滑車の場合、ひもを引く力と物体にかかる張力の関係が \(1:2\) になります。この関係を正しく適用した上で、力のつりあいを考えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まず物体を個別に認識し、それぞれにはたらく力を図示する: 「人」「台」「ひも」「地面」「地球」といった登場人物を明確にし、注目する物体が「何から」力を受けているかを漏れなく描き出します。
    2. 作用・反作用のペアを特定する: 「人が台を押す力」と「台が人を支える力」、「人がひもを引く力」と「ひもが人を引く力」など、作用・反作用の関係にあるペアを意識することで、力の大きさを正しく設定できます。
    3. 「系」として見ることができないか検討する: 複数の物体が一体となって静止または運動している場合、それらを一つの「系」とみなすことで、内力を消去し、立式を単純化できないか考えます。これは特に、物体間の力を問われていない場合に有効なテクニックです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 人がひもを引く力 \(T\) を、人にはたらく上向きの力としてしまう:
    • 誤解: 人が \(T\) の力で引いているのだから、人には \(T\) の力が上向きにはたらくと考えてしまう。
    • 対策: 力は必ず「何が」「何を」どうするか、という関係で成り立っています。人が受ける力は、「人が」及ぼす力ではなく、「他の物体が人に」及ぼす力です。人がひもを引く力の反作用として、「ひもが人を引く」力が上向きにはたらきます。その大きさは、人がひもを引く力と同じ \(T\) です。
  • 「人と台を一体」で考える際に、力を二重に数えてしまう:
    • 誤解: 系全体で考える際に、人がひもを引く力も考慮に入れてしまう。
    • 対策: 「系」で考えるときは、厳密に「外力」のみを数え上げます。人がひもを引く力は、系内部の「人」が系外部の「ひも」に及ぼす力であり、系全体にはたらく外力ではありません。この系にはたらく外力は、あくまで「ひもが人を引く力」と「ひもが台を引く力」の2つです。
  • (2)で \(T=W+w\) と考えてしまう:
    • 誤解: 持ち上げるのだから、全体の重さと同じ力で引けばよいと考えてしまう。
    • 対策: 図をよく見ると、ひもは2本(人が引く側と台につながる側)で系全体を支えています。したがって、2本のひもの張力の合計 \(2T\) が、全体の重さ \(W+w\) とつりあう瞬間に浮き上がります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • アプローチ選択(物体ごとのつりあい vs 系全体のつりあい):
    • 選定理由: この問題は、同じ物理現象を2つの異なる視点から解析できることを示しています。
      • 物体ごとのつりあい(主たる解法): 力学の最も基本的なアプローチです。どんな複雑な問題でも、個々の物体に分解してそれぞれに法則を適用すれば、原理的に解くことができます。内力(この場合は \(N’\))も計算の過程で現れます。
      • 系全体のつりあい(別解): より洗練されたアプローチです。問題の構造を見抜き、内力を考慮する必要がないと判断した場合に用いると、計算を大幅に簡略化できます。特に、物体間の力を問われていない場合に有効です。
    • 適用根拠: どちらのアプローチも、ニュートンの運動法則に基づいています。「系」で考える方法は、系内の各物体の運動方程式をすべて足し合わせると、作用・反作用の法則によって内力が相殺される、という数学的な性質を利用しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の計算に慣れる: この問題はすべて文字式で解くため、式の変形や代入を丁寧に行うことが重要です。特に、複数の未知数が登場するため、どの文字を消去し、どの文字を求めたいのかを明確に意識しながら計算を進めましょう。
  • 物理的な意味から答えを吟味する:
    • (1) \(N = W+w-2T\): \(T=0\) のとき、\(N=W+w\) となり、単に台の上に人が乗っているときの垂直抗力(台と人の重さの和)と一致します。正しい。
    • (2) \(T = (W+w)/2\): 持ち上げるべき重さ \(W+w\) を、2本のロープで分担して支えるイメージです。したがって、1本あたりの張力はその半分になる、という結果は直感的に妥当です。
  • 図を丁寧に描く: 主たる解法で解く場合、「人にはたらく力の図」と「台にはたらく力の図」を別々に、大きく丁寧に描くことが、力の数え忘れや向きの間違いを防ぐ上で非常に効果的です。別解で解く場合は、「人と台を一つの枠で囲み、その枠の外から内へ向かう矢印だけを描く」と、外力を明確に区別できます。
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発展問題

78 投げ上げられた物体にはたらく力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「運動状態と物体にはたらく力の関係」です。特に、アリストテレス的な直感的誤解(動いている物体には運動の向きに力がはたらき続ける)を排し、ニュートン力学の正しい考え方(物体にはたらく力は、その物体の運動状態そのものではなく、運動の変化(加速度)を生み出す原因である)を理解しているかを問います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 物体にはたらく力の特定: ある物体にはたらく力は、「重力」のような遠隔力と、「接触力」(張力、垂直抗力、空気抵抗など)に分類できること。
  2. 重力の性質: 地球上で物体にはたらく重力は、物体の質量が一定であれば、その物体の運動状態(上昇中、静止中、下降中)や位置によらず、常に一定の大きさで鉛直下向きにはたらくこと。
  3. 運動と力の関係: 物体にはたらく力(合力)の向きは、物体の速度の向きではなく、加速度の向きと一致すること。投げ上げ運動では、速度の向きは変化するが、加速度は常に鉛直下向きで一定(重力加速度)である。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、投げ上げられた後の物体にはたらく力を特定します。空気抵抗を無視すれば、物体に接触しているものはないため、はたらく力は地球からの重力のみです。
  2. 次に、重力の性質を思い出します。重力の大きさと向きは、物体の運動状態によらず常に一定です。
  3. したがって、P(上昇中)、Q(最高点、一瞬静止)、S(下降中)のどの点においても、物体にはたらく力はR点と同じ(重力のみ)であると結論付けます。

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