無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「ピストン付き容器内の気体の状態変化」【高校物理対応】

今回の問題

thermodynamicsall#22

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ピストンで閉じ込められた気体の状態変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: ピストンが静止している状態では、ピストンに働く力の合計が0になります。
  2. ボイルの法則: 温度が一定の条件下(等温変化)で、気体の圧力と体積の積は一定です。
  3. シャルルの法則: 圧力が一定の条件下(定圧変化)で、気体の体積は絶対温度に比例します。
  4. 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q – W\)。内部エネルギーの変化、熱、仕事の関係を表します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、各状態におけるピストンの力のつりあいを考え、内部の気体の圧力を求めます。
  2. (1)では、おもりを追加する前後で気体が等温変化することから、ボイルの法則を適用してピストンの移動距離を求めます。
  3. (2)〜(4)では、気体を加熱してピストンを元の高さに戻す過程を考えます。この過程は圧力が一定の「定圧変化」であることを見抜き、シャルルの法則、仕事の公式、熱力学第一法則を順に適用していきます。解答には(1)で求めた \(l\) の値を代入して整理します。

問(1)

思考の道筋とポイント
質量 \(m\) のおもりを追加したときのピストンの移動距離 \(l\) を求める問題です。この過程は「温度は一定に保たれている」とあるので「等温変化」です。したがって、ボイルの法則 \(pV = \text{一定}\) が使えます。法則を適用するために、おもりを追加する前と後の気体の圧力と体積をそれぞれ求める必要があります。圧力はピストンに働く力のつりあいから、体積はピストンの高さから求めます。
この設問における重要なポイント

  • ピストンに働く力のつりあいを考えることで、内部の気体の圧力を求める。
  • 温度一定の変化なので、ボイルの法則が成り立つ。
  • 気体の体積は、断面積と高さの積で表される (\(V=Sh\))。

具体的な解説と立式
3つの状態を考えます。

  • 状態1: 質量 \(M\) のおもりのみ。ピストンの高さ \(L\)。
  • 状態2: 質量 \(M+m\) のおもり。ピストンの高さ \(L-l\)。
  • 状態3: 状態2から加熱後。ピストンの高さ \(L\)。

まず、状態1と状態2における気体の圧力と体積を求めます。
状態1:
圧力 \(p_1\) は、力のつりあい \(p_1 S = p_0 S + Mg\) より、
$$ p_1 = p_0 + \frac{Mg}{S} $$
体積 \(V_1\) は、
$$ V_1 = SL $$
状態2:
圧力 \(p_2\) は、力のつりあい \(p_2 S = p_0 S + (M+m)g\) より、
$$ p_2 = p_0 + \frac{(M+m)g}{S} $$
体積 \(V_2\) は、
$$ V_2 = S(L-l) $$
状態1から状態2への変化は等温変化なので、ボイルの法則が成り立ちます。
$$ p_1 V_1 = p_2 V_2 \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(F_{\text{上向き}} = F_{\text{下向き}}\)
  • ボイルの法則: \(p_1 V_1 = p_2 V_2\)
計算過程

式①に、求めた圧力と体積を代入します。
$$ \left( p_0 + \frac{Mg}{S} \right) (SL) = \left( p_0 + \frac{(M+m)g}{S} \right) S(L-l) $$
両辺の \(S\) を約分すると、
$$ \left( p_0 + \frac{Mg}{S} \right) L = \left( p_0 + \frac{(M+m)g}{S} \right) (L-l) $$
この式を \(l\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
L-l &= \frac{p_0 S + Mg}{p_0 S + (M+m)g} L \\
l &= L – \frac{p_0 S + Mg}{p_0 S + (M+m)g} L \\
&= \left( \frac{(p_0 S + (M+m)g) – (p_0 S + Mg)}{p_0 S + (M+m)g} \right) L \\
&= \frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g}
\end{aligned}
$$

結論と吟味

ピストンが下がった距離 \(l\) は \(\displaystyle\frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g}\) です。追加したおもりの質量 \(m\) が大きいほど \(l\) は大きくなり、物理的に妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
気体の温度を \(\Delta T\) だけ上昇させてピストンを元の高さ \(L\) に戻したときの、\(\Delta T\) を求める問題です。この過程(状態2→状態3)は圧力が一定の「定圧変化」です。シャルルの法則 \(\frac{V}{T} = \text{一定}\) を適用し、最後に(1)で求めた \(l\) を代入して整理します。
この設問における重要なポイント

  • 加熱の過程は、おもりが変わらないので「定圧変化」である。
  • 定圧変化では、シャルルの法則が成り立つ。
  • 温度は必ず「絶対温度」で考える。

具体的な解説と立式
状態2から状態3への変化は、圧力 \(p_2 = p_0 + \frac{(M+m)g}{S}\) で一定の定圧変化です。
シャルルの法則 \(\frac{V_2}{T_2} = \frac{V_3}{T_3}\) を適用します。

  • 状態2: 体積 \(V_2 = S(L-l)\)、温度 \(T_2 = T\)
  • 状態3: 体積 \(V_3 = SL\)、温度 \(T_3 = T + \Delta T\)

$$ \frac{S(L-l)}{T} = \frac{SL}{T+\Delta T} \quad \cdots ① $$
これを \(\Delta T\) について解くと、
$$ \Delta T = \frac{l}{L-l} T \quad \cdots ② $$
となります。ここに(1)で求めた \(l\) を代入します。

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(\frac{V_2}{T_2} = \frac{V_3}{T_3}\)
計算過程

まず、式②の分母 \(L-l\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
L-l &= L – \frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g} \\
&= \frac{L(p_0 S + (M+m)g) – mgL}{p_0 S + (M+m)g} \\
&= \frac{L(p_0 S + Mg)}{p_0 S + (M+m)g}
\end{aligned}
$$
次に、\(\displaystyle\frac{l}{L-l}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{l}{L-l} &= \frac{\frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g}}{\frac{L(p_0 S + Mg)}{p_0 S + (M+m)g}} \\
&= \frac{mg}{p_0 S + Mg}
\end{aligned}
$$
これを式②に代入して \(\Delta T\) を求めます。
$$ \Delta T = \frac{mg}{p_0 S + Mg} T $$

結論と吟味

温度上昇 \(\Delta T\) は \(\displaystyle\frac{mg}{p_0 S + Mg} T\) です。この式は、状態1の圧力 \(p_1 S = p_0 S + Mg\) を使うと \(\Delta T = \frac{mg}{p_1 S}T\) と書け、物理的な意味がより明確になります。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{mg}{p_0 S + Mg} T\)

問(3)

思考の道筋とポイント
ピストンを元の高さに戻すとき(状態2→状態3)に、内部の気体がピストンにした仕事 \(W\) を求める問題です。この過程は定圧変化なので、仕事は \(W = p \Delta V\) で計算できます。最後に(1)で求めた \(l\) を代入します。
この設問における重要なポイント

  • 状態2→状態3は圧力 \(p_2\) での定圧変化である。
  • 仕事の公式は \(W = p \Delta V = p (V_{\text{後}} – V_{\text{前}})\)。

具体的な解説と立式
この過程は圧力 \(p_2 = p_0 + \frac{(M+m)g}{S}\) での定圧変化です。
体積は \(V_2 = S(L-l)\) から \(V_3 = SL\) へと変化します。
気体がした仕事 \(W\) は、
$$
\begin{aligned}
W &= p_2 (V_3 – V_2) \\
&= \left( p_0 + \frac{(M+m)g}{S} \right) (SL – S(L-l)) \\
&= (p_0 S + (M+m)g)l \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
ここに(1)で求めた \(l\) を代入します。

使用した物理公式

  • 定圧変化における仕事: \(W = p \Delta V\)
計算過程

式①に \(l = \displaystyle\frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W &= (p_0 S + (M+m)g) \times \frac{mgL}{p_0 S + (M+m)g} \\
&= mgL
\end{aligned}
$$

結論と吟味

気体がした仕事は \(mgL\) です。これは、追加したおもり \(m\) を重力に逆らって距離 \(L\) だけ持ち上げる仕事と考えることもでき、興味深い結果です。(ただし、これは結果論であり、直接の物理的意味はあくまで「圧力 \(p_2\) で体積を \(Sl\) だけ膨張させた仕事」です。)

解答 (3) \(mgL\)

問(4)

思考の道筋とポイント
気体に与えた熱量を \(Q\) としたときの、気体の内部エネルギーの増加 \(\Delta U\) を求める問題です。熱力学第一法則 \(\Delta U = Q – W\) を使います。\(W\) には(3)で求めた最終結果を代入します。
この設問における重要なポイント

  • 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q – W\)。
  • \(Q\) は与えられた熱量、\(W\) は(3)で求めた仕事。

具体的な解説と立式
状態2→状態3の変化において、熱力学第一法則を適用します。
$$ \Delta U = Q – W $$
ここで、\(Q\) は気体に与えた熱量、\(W\) は(3)で求めた気体がした仕事です。
(3)の結果 \(W = mgL\) を代入すると、
$$ \Delta U = Q – mgL \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 熱力学第一法則: \(\Delta U = Q – W\)
計算過程

式①がそのまま答えとなります。

結論と吟味

内部エネルギーの増加 \(\Delta U\) は \(Q – mgL\) です。与えた熱量 \(Q\) のうち、気体が外部への仕事 \(W=mgL\) で消費した分を差し引いた残りが、内部エネルギーの増加になるというエネルギー保存則そのものを表しています。

解答 (4) \(Q – mgL\)

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