無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「自由落下と鉛直投げ上げのすれ違い」【高校物理対応】

問題の確認

dynamics#10

各設問の思考プロセス

この問題は、2つの物体が互いに反対方向に運動し、すれ違う(同じ高さになる)までの時間と、その時の高さを求める問題です。それぞれの物体の運動を鉛直方向の等加速度直線運動として記述し、すれ違うときの条件(同じ時刻に同じ高さにいる)を利用して解きます。

座標軸の設定:
地面を原点 (\(y=0\)) とし、鉛直上向きを正の向きとします。

  • 小球Aの初期位置: \(y_{A, \text{start}} = H\)
  • 小球Bの初期位置: \(y_{B, \text{start}} = 0\)

全体的な戦略:

  1. 時刻 \(t\) における小球Aの位置 \(y_A(t)\) を表す式を立てます。
  2. 時刻 \(t\) における小球Bの位置 \(y_B(t)\) を表す式を立てます。
  3. 2球がすれ違うとき、\(y_A(t) = y_B(t)\) となることを利用して、すれ違うまでの時間 \(t\) を求めます。
  4. 求めた時間 \(t\) を、\(y_A(t)\) または \(y_B(t)\) の式に代入し、すれ違う場所の地面からの高さ \(h’\) を求めます。

使用する主な物理公式:
鉛直方向の運動(鉛直上向きを正とする場合)の位置 \(y(t)\) は、初期位置を \(y_0\)、初速度を \(v_0\)、加速度を \(a\) とすると、

\(\displaystyle y(t) = y_0 + v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)

この問題では、重力による加速度は鉛直下向きなので、\(a = -g\) となります。

よって、時刻 \(t\) における位置の公式は、

\(\displaystyle y(t) = y_0 + v_0 t – \frac{1}{2} g t^2\)

(ここで \(y_0\) は各物体の初期位置、\(v_0\) は各物体の初速度を指します。)

各設問の具体的な解説と解答

1. 2球がすれ違うまでの時間 \(t\)

問われている内容の明確化:
小球Aと小球Bが同時に運動を開始してから、両者の高さが等しくなる(すれ違う)までの時間を求めます。

具体的な解説と計算手順:
小球Aの運動(自由落下):

鉛直上向きを正とします。

  • 初期位置: \(y_{A, \text{start}} = H\)
  • 初速度: \(v_{A0} = 0\) m/s (自由落下のため)
  • 加速度: \(a_A = -g\)

時刻 \(t\) における小球Aの地面からの高さ \(y_A(t)\) は、

使用した物理公式: 位置の式(鉛直上向き正)
$$y(t) = y_0 + v_0 t – \frac{1}{2} g t^2$$

$$y_A(t) = H + (0) \cdot t – \frac{1}{2}g t^2$$
$$y_A(t) = H – \frac{1}{2}g t^2 \quad — (式1)$$
小球Bの運動(鉛直投げ上げ):

鉛直上向きを正とします。

  • 初期位置: \(y_{B, \text{start}} = 0\)
  • 初速度: \(v_{B0} = v_0\) (問題文で与えられた初速度)
  • 加速度: \(a_B = -g\)

時刻 \(t\) における小球Bの地面からの高さ \(y_B(t)\) は、
$$y_B(t) = 0 + v_0 t – \frac{1}{2}g t^2$$
$$y_B(t) = v_0 t – \frac{1}{2}g t^2 \quad — (式2)$$
すれ違う条件:

2球がすれ違うとき、それらの高さは等しくなります。つまり \(y_A(t) = y_B(t)\) です。

(式1) と (式2) より、
$$H – \frac{1}{2}g t^2 = v_0 t – \frac{1}{2}g t^2$$
両辺にある \(-\frac{1}{2}g t^2\) の項は相殺されます。
$$H = v_0 t$$
したがって、すれ違うまでの時間 \(t\) は、
$$t = \frac{H}{v_0}$$

計算方法の平易な説明:
小球Aは高さ \(H\) の屋上から下向きに、小球Bは地面から上向きに同時に動き出します。すれ違うというのは、2つの小球が同じ時刻に同じ高さに来るということです。

時刻 \(t\) における小球Aの高さは、最初の高さ \(H\) から、重力によって落ちた距離 \(\frac{1}{2}gt^2\) を引いた \(H – \frac{1}{2}gt^2\) です。

一方、小球Bの高さは、初速度 \(v_0\) で時間 \(t\) の間に進む距離 \(v_0 t\) から、重力によって上昇が妨げられる距離 \(\frac{1}{2}gt^2\) を引いた \(v_0 t – \frac{1}{2}gt^2\) です。

これら2つの高さが等しくなるときにすれ違うので、方程式を立てます。

\(H – \frac{1}{2}g t^2 = v_0 t – \frac{1}{2}g t^2\)

この式を見ると、両辺に同じ \(-\frac{1}{2}g t^2\) があるので、これらは打ち消し合います。

残るのは \(H = v_0 t\) という簡単な式です。

これを時間 \(t\) について解くと、\(t = \frac{H}{v_0}\) となります。

この結果は、まるで重力が作用していない状況で、小球Bが一定の速さ \(v_0\) で距離 \(H\) を進むのにかかる時間と同じに見えます。これは、両方の小球が同じように重力の影響を受けているため、互いの相対的な位置関係を考える上では、重力の効果が相殺されるからです。

この設問における重要なポイント:

  • 鉛直上向きを正とするなど、座標軸(原点と正の向き)を明確に設定すること。
  • 自由落下(初速度 \(0\))と鉛直投げ上げ(初速度 \(v_0\))について、等加速度直線運動の位置の公式を正しく適用すること。
  • 「すれ違う」という条件を、同じ時刻に2つの物体の位置(高さ)が等しくなること (\(y_A(t) = y_B(t)\)) として数式で表現すること。
解答 (時間):
\(\displaystyle t = \frac{H}{v_0}\)

2. すれ違う場所の地面からの高さ \(h’\)

問われている内容の明確化:
2球がすれ違う瞬間の、地面からの高さを求めます。

具体的な解説と計算手順:
上で求めたすれ違うまでの時間 \(\displaystyle t = \frac{H}{v_0}\) を、小球Aまたは小球Bの高さの式((式1)または(式2))に代入します。ここでは小球Bの式 (式2) \(\displaystyle y_B(t) = v_0 t – \frac{1}{2}g t^2\) を用いて計算します。

すれ違う高さを \(h’\) とすると、

使用した物理公式: (式2) に \(t = \frac{H}{v_0}\) を代入
$$h’ = y_B\left(\frac{H}{v_0}\right)$$

$$h’ = v_0 \left(\frac{H}{v_0}\right) – \frac{1}{2}g \left(\frac{H}{v_0}\right)^2$$
$$h’ = H – \frac{1}{2}g \frac{H^2}{v_0^2}$$
$$h’ = H – \frac{gH^2}{2v_0^2}$$
この式を共通因子 \(H\) でくくると、
$$h’ = H \left(1 – \frac{gH}{2v_0^2}\right)$$
小球Aの式 (式1) \(\displaystyle y_A(t) = H – \frac{1}{2}g t^2\) に代入しても同じ結果が得られます。
$$h’ = H – \frac{1}{2}g \left(\frac{H}{v_0}\right)^2 = H – \frac{gH^2}{2v_0^2} = H \left(1 – \frac{gH}{2v_0^2}\right)$$

計算方法の平易な説明:
すれ違うまでの時間が \(\displaystyle t = \frac{H}{v_0}\) とわかったので、この時間を使って、すれ違う瞬間の地面からの高さを計算します。

例えば、小球Bの高さの式 \(\displaystyle y_B(t) = v_0 t – \frac{1}{2}gt^2\) に、求めた時間 \(\displaystyle t = \frac{H}{v_0}\) を代入します。

$$h’ = v_0 \times \left(\frac{H}{v_0}\right) – \frac{1}{2}g \times \left(\frac{H}{v_0}\right)^2$$

最初の項 \(\displaystyle v_0 \times \left(\frac{H}{v_0}\right)\) は、\(v_0\) が約分されて \(H\) となります。

二番目の項は、\(\displaystyle \left(\frac{H}{v_0}\right)^2 = \frac{H^2}{v_0^2}\) なので、\(\displaystyle -\frac{1}{2}g \frac{H^2}{v_0^2}\) となります。

したがって、すれ違う高さ \(h’\) は、

$$h’ = H – \frac{gH^2}{2v_0^2}$$

と求められます。

この設問における重要なポイント:

  • 前問で求めたすれ違うまでの時間 \(t\) を、いずれかの物体の位置の式に正確に代入すること。
  • 代数計算を丁寧に行い、式を整理すること。特に分数や文字の2乗の扱いに注意する。
解答 (高さ):
\(\displaystyle h’ = H – \frac{gH^2}{2v_0^2}\) (または \(\displaystyle H \left(1 – \frac{gH}{2v_0^2}\right)\))

 


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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 自由落下: 初速度が \(0\) で、重力のみの影響を受けて落下する運動。これは加速度が一定 (\(g\)) の等加速度直線運動の一種です。
  • 鉛直投げ上げ: 初速度 \(v_0\) を持って鉛直上向きに投げ上げられる運動。これも加速度が一定 (\(-g\)、上向きを正とした場合) の等加速度直線運動です。
  • 等加速度直線運動の公式: 時刻 \(t\) における物体の位置や速度を求めるための基本的な公式群。特に位置の式 \(\displaystyle y(t) = y_0 + v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) の理解と適用が重要です。
  • 座標軸の設定: 物理現象を数式で記述する際に、基準となる原点と正の向きを定めることの重要性。これにより、変位、速度、加速度の符号が一貫して扱えます。
  • 同時性の条件: 「同時に運動を開始する」、「同時にすれ違う(同じ位置に来る)」といった問題文中の時間や位置に関する条件を、数式に正確に反映させる能力。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 図の活用: 問題の状況(物体の初期位置、運動の向き、座標軸など)を簡単な図で視覚化すると、立式や条件の理解が助けられます。
  • 物体ごとの運動方程式: 複数の物体が登場する場合、まずそれぞれの物体について個別に運動方程式(あるいは位置や速度の式)を立てることが基本です。
  • 「出会う」「すれ違う」の数学的表現: 2つの物体がすれ違うとは、ある同じ時刻 \(t\) において、それらの位置座標が等しくなる (\(y_A(t) = y_B(t)\)) ことを意味します。この条件を立式に用います。
  • 解の物理的吟味: 得られた解(時間や位置など)が、物理的に妥当な範囲にあるか(例:時間は正の値か、すれ違う高さは初期の高さ \(H\) 以下で地面より上かなど)を確認する習慣をつけると、誤りを発見しやすくなります。例えば、すれ違うためには小球Bの初速度 \(v_0\) にある程度の大きさが必要であること(\(v_0 \ge \sqrt{gH/2}\))などが導かれます。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 加速度の符号の誤り: 座標軸の正の向きに対して、重力加速度 \(g\) の符号を間違えるケース。例えば、鉛直上向きを正とした場合、重力は下向きに作用するため、加速度は \(-g\) となります。
  • 初速度の混同や誤設定: 自由落下の場合は初速度が \(0\) であるのに対し、鉛直投げ上げの場合は指定された初速度 \(v_0\) があります。これらの初期条件を各物体の運動の式に正しく反映させることが重要です。
  • 相対速度の安易な適用: 相対速度の概念は有効な場合もありますが、定義や適用条件を誤ると間違った結果を導きやすいです。基本に立ち返り、各物体の絶対的な位置の式を立てて比較する方が確実な場合が多いです。
  • 代数計算のミス: 方程式を解く際の移項、約分、通分、特に分数や文字式の2乗の計算などでミスが起こりやすいので、計算過程を丁寧に見直すことが大切です。

 


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